JP2010240933A - プロピレン系表面保護用フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】フィッシュアイが非常に少なく、寸法安定性、表面硬度に優れ、剥離力の制御と繰り出し性能が改良された、プロピレン系表面保護用フィルムの提供。
【解決手段】基材層の一方の面に粘着層が形成され、他方の面に剥離処理層が形成された表面保護用フィルムで、基材層がメタロセン触媒を用いて重合され、特定のMFR、融解ピーク温度、Mw/Mn、TREF法の40℃以下の可溶分を有するプロピレン系樹脂で形成され、粘着層がメタロセン触媒を用い、第1工程でプロピレン単独又はプロピレン−エチレンランダム共重合体と第2工程でプロピレン−エチレンランダム共重合体が逐次重合して得られ、特定のMFR、DMA特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体で形成され、剥離処理層が剥離処理層表面の中心面平均粗さ(SRa)が特定の測定条件下において0.2〜1.5μmの範囲内であることを特徴とする表面保護用フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、プロピレン系表面保護用フィルムに関し、詳しくは、合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護用として好適に使用されるプロピレン系表面保護用フィルムに関する。
合成樹脂板等の建築部材や、光学機器部材の液晶表示部等は、加工時や輸送運搬時等の表面の傷つきや汚れ防止の観点から、表面保護フィルムが貼り付けられ、加工後又は輸送運搬後に係る表面保護フィルムを剥がして使用することが一般的である。
従来、表面保護フィルムとしては、エチレン系樹脂を主成分とした表面保護フィルムがある。例えば、メタロセン触媒より重合され、組成分布及び、分子量分布が狭く、フィッシュアイの存在しないエチレン系樹脂製の表面保護用フィルムが記載されている(例えば、特許文献1参照。)。また、特定の低密度ポリエチレン50〜90重量%と、重量平均分子量/数平均分子量との比が9〜15の特定の高密度ポリエチレン10〜50重量%とからなるポリエチレンと、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる粘着層とを共押出しした積層フィルムが記載されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、上記特許文献に記載の表面保護フィルムにおいては、ポリエチレンが主成分であるため、フィルム製膜時に成形機押出機等の内部に滞留が生じ、エチレン成分の劣化によるゲル化が起こり、フィルム中にフィッシュアイが発生するため、被保護物に貼付けた後、そのままの状態で段積み保管した場合、上記フィッシュアイの存在により、被保護物に凹みが生じる。したがって、たとえば液晶表示材として使用される偏光板や位相差板として上記積層フィルムを使用しようとしても、凹みがあることにより画像に歪みが生じるので、適用できないという問題があった。
また、ポリエチレンの耐熱性や耐傷つき性、剛性の問題点を鑑み、かつ、塩素イオンの影響による金属薄膜層の点状欠陥を改良した塩素含有量が5重量ppm以下であるポリプロピレンからなることを特徴とするプロピレン系樹脂を主成分にした表面保護フィルムも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、該特許文献に記載のプロピレン系樹脂においても、ポリエチレンのようなゲル化は起こらないものの、分子量分布が広く、つまり分子量の小さい低分子量のものと、分子量の大きい高分子量のものとが混在しているため、高分子量成分が、フィルムを成形する際に、未溶融の微細なかたまりがフィッシュアイとなってフィルム中に存在してしまい、被保護物に凹みが生じる結果となる。
さらに、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂とも結晶性分布を有するが、結晶性分布が広く、低結晶成分の存在が多いと、被保護物が汚染されるという問題点がある。また、ポリマーを製造する過程において、低結晶成分のベタツキにより重合槽等でポリマー付着が発生し、滞留によるポリマーの劣化が起こり、結果としてポリマー劣化物由来のフィッシュアイとなってフィルム中に存在してしまい、被保護物に凹みが生じる結果となり、表面保護用フィルムとして適用できないという問題が生じている。また、結晶性分布が広いと結晶性の低い成分と結晶性の高い成分との相溶性が不均一となり結晶性の高い成分が未溶融の微細なかたまりとなりフィッシュアイとなって存在しやすくなるため同様に表面保護用フィルムとして適用できないという問題がある。
本発明は、前述した従来の技術の問題点に鑑み、フィッシュアイが非常に少なく、寸法安定性、表面硬度に優れ、剥離力の制御と繰り出し性能が改良された、合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護用のフィルムとして好適なポリオレフィン系樹脂製の表面保護用フィルムを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するため種々の研究を重ねた結果、特定のメルトフローレート、示差熱走査熱量計による融解ピーク温度、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた重量平均分子量と数平均分子量との比、昇温溶離分別法で測定した40℃以下の可溶分量を有するポリプロピレン系樹脂を基材層に用い、特定の製法、MFR、一段目と二段目の量比を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体を粘着層に用い、表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.2〜1.5μmの範囲内である剥離処理層を用いることにより、フィッシュアイが少なく、寸法安定性、表面硬度に優れ、剥離力の制御と繰り出し性能が改良された表面保護用フィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、基材層の一方の面に粘着層が形成され、他方の面に剥離処理層が形成された表面保護用フィルムにおいて、基材層がメタロセン触媒を用いて重合され、かつ下記(a1)〜(a4)の特性を有するプロピレン単独重合体またはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のプロピレン系樹脂(A)で形成され、粘着層がメタロセン触媒を用いて重合され下記(b1)〜(b2)の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)で形成され、剥離処理層が剥離処理層表面の中心面平均粗さ(SRa)が下記の測定条件(c1)〜(c6)において0.2〜1.5μmの範囲内であることを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
(A)プロピレン系樹脂
(a1)メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜50g/10分
(a2)示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tmp)が120〜170℃
(a3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5
(a4)昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分(S40)が10重量%以下
(B)プロピレン−エチレンブロック共重合体
(b1)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)を30〜95重量%、第2工程で成分(B1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)を70〜5重量%逐次重合して得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体
(b2)メルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg)が1〜30g/10分
剥離処理層測定条件
(c1)触針先端曲率半径が5μm
(c2)カットオフ波長が0.80mm
(c3)カットオフ種別が2CR(位相補償)
(c4)測定速度が0.3mm/秒
(c5)測定方向がフィルムのMD方向
(c6)測定長さが2mm
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プロピレン系樹脂(A)が、さらに下記(a5)の特性を有することを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
(a5)昇温溶離分別(TREF)法により20重量%溶出したときの温度(T20)から100重量%溶出終了したときの温度(T100)の幅(T100−T20)が30℃以下
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、剥離処理層がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3の発明において、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b3)を満たすことを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
(b3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる分子量5,000以下の成分量W(Mw≦5,000)が、全体の0.8重量%以下
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b4)〜(b5)を満たすことを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
(b4)第1工程で得られる成分(B1)が、エチレン含量が0.5〜6重量%の範囲にあるプロピレン−エチレンランダム共重合体で、ブロック共重合体の全体における割合が30〜85重量%の範囲にあり、第2工程で得られる成分(B2)が(B1)よりも6〜20重量%多くのエチレン含量で、ブロック共重合体の全体における割合が70〜15重量%の範囲にあること
(b5)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での温度昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(dWt%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、高温側に観測されるピーク温度T(B1)が55℃〜96℃の範囲にあり、低温側に観測されるピーク温度T(B2)が45℃以下にあり、或いはピーク温度T(B2)が観測されず、プロピレン−エチレンブロック共重合体の99wt%が溶出する温度T(B4)が98℃以下であること
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b6)〜(b7)を満たすことを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
(b6)第1工程で得られる成分(B1)が、エチレン含量が1.5〜6重量%の範囲にあるプロピレン−エチレンランダム共重合体で、ブロック共重合体の全体における割合が30〜70重量%の範囲にあり、第2工程で得られる成分(B2)が(B1)よりも8〜15重量%多くのエチレン含量で、ブロック共重合体の全体における割合が70〜30重量%の範囲にあること
(b7)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での温度昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(dWt%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、高温側に観測されるピーク温度T(B1)が60℃〜88℃の範囲にあり、低温側に観測されるピーク温度T(B2)が40℃以下にあり、或いはピーク温度T(B2)が観測されず、プロピレン−エチレンブロック共重合体の99wt%が溶出する温度T(B4)が90℃以下であること
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b8)を満たすことを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
(b8)23℃キシレン可溶分の135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]cxsが1〜2dl/g
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b9)を満たすことを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
(b9)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用に使用されることを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護に使用されることを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
本発明の表面保護用フィルムは、樹脂の結晶性分布が狭く、低結晶成分の溶出量が少なく、かつ分子量分布が狭く、高分子量成分が少ない特定のプロピレン系樹脂を基材層に用いているので、フィルム成形時に未溶融のフィッシュアイが非常に少ない。このため、表面保護フィルムを被保護物に貼付けて段積み保管しても、被保護物に凹みが生じることがない。また、本発明の表面保護用フィルムは、アンチブロッキング剤を用いることなくブロッキング性に優れている。さらに、粘着層として、メタロセン触媒を用いて重合された特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いることにより、粘着層と基材層の層間剥離の恐れが無く、優れた粘着性を発現し、尚かつ被着体への耐汚染性に優れる。さらにまた、剥離処理層として剥離処理層表面を荒らすことにより、粘着層と剥離処理層の両方が固体状態で接するロール巻状態から、ロールを解くときにはスムースにはがれ、使用時には繰り出し性が向上するという特性を有する表面保護用フィルムとすることができる。
TREFによる溶出量及び溶出量積算を示す図である。
本発明は、基材層の1方の面に粘着層が形成され、粘着層と反対面に剥離処理層を有する表面保護用フィルムであって、基材層は、メタロセン触媒を用いて重合され、特性(a1)〜(a4)、必要に応じて、さらに特性(a5)を有するプロピレン単独重合体、または、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であるプロピレン系樹脂(A)からなり、粘着層は、メタロセン触媒を用いて重合され、かつ特性(b1)〜(b2)、必要に応じて、さらに特性(b3)〜(b9)を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)で形成され、剥離処理層は剥離処理層表面の中心面平均粗さ(SRa)が下記の測定条件(c1)〜(c6)において0.2〜1.5μmの範囲内であるプロピレン系樹脂からなる表面保護用フィルムである。以下、本発明の表面保護用フィルムの各層の構成成分、表面保護用フィルムの製造法について詳細に説明する。
1.基材層
本発明の表面保護用フィルムにおける基材層は、プロピレン系樹脂(A)から構成される。プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を使用することができる。ここで、共重合成分のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の具体例としては、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体等が挙げられる。好ましくは、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体等が挙げられる。更に好ましくはプロピレン・エチレンランダム共重合体が挙げられる。
本発明で用いるプロピレン系樹脂は、下記の特性(a1)〜(a4)を有し、必要に応じて、さらに特性(a5)を有する。
(a1)メルトフローレート
本発明で用いるプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1〜50g/10分であり、好ましくは2〜30g/10分であり、より好ましくは5〜20g/10分であり、最も好ましくは7〜15g/10分である。
MFRが1g/10分未満では押出特性が悪化し、生産性が低下するため好ましくなく、また、MFRが50g/10分を超えるとフィルム成形時の厚み精度が悪化しやすくなるため好ましくない。
MFRは、重合時の水素の量で調整することができる。例えば、水素の量を増やすとMFRは高くなる。
なお、本発明において採用しているメルトフローレート(MFR:単位g/10分)は、JIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重21.18N荷重で測定する値である。
(a2)融解ピーク温度
本発明で用いるプロピレン系樹脂の融解ピーク温度(Tmp)は、120〜170℃であり、好ましくは120〜165℃であり、さらに好ましくは120〜160℃であり、最も好ましくは120℃〜150℃である。
融解ピーク温度が120℃未満では、耐熱性が劣り、熱をかけて表面保護用フィルムを被保護物に貼り付ける加工工程時に表面保護用フィルムが変形し易くなる。融解ピーク温度が170℃より高いと、衝撃強度が劣り、表面保護用フィルムを被保護物に貼り付ける際に裂けが生じる恐れがある。
融解ピーク温度(Tmp)は、用いるα−オレフィンの量で調整することができる。例えば、α−オレフィンの量が増えれば融解ピーク温度(Tmp)は低下する。
なお、本発明において採用している融解ピーク温度(Tmp:単位℃)は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度(Tmp)を測定する値である。
(a3)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比
本発明で用いるプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5〜3.5であり、好ましくは1.7〜3.2であり、さらに好ましくは2.0〜3.0であり、最も好ましくは、2.3〜2.8である。(Mw/Mn)が1.5未満であると、溶融樹脂粘度が高くなって溶融流動性が悪くなり、押出成形が困難となる。一方、(Mw/Mn)が3.5を超えると、分子量の小さい分子および分子量の大きい分子の存在比率が高くなり、高分子量分はフィルム成形時に未溶融のフィッシュアイとなり、被保護物に貼付けた後、そのままの状態で段積み保管すると、被保護物に凹みを生じることになる。
(Mw/Mn)は、製造時の重合条件(重合温度、重合圧力)、用いる触媒の種類を変更することによって、調整することができる。
なお、本発明において採用している重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行う。測定条件は、次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリプロピレンの粘度式を用いてポリプロピレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリプロピレンはα=0.707、logK=−3.616である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
粘度式:log[η]=logK+α×logM
(a4)昇温溶離分別(TREF)法による40℃以下の可溶分(S40
本発明で用いるプロピレン系樹脂の昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分(S40)は、10重量%以下であり、好ましくは8重量%以下であり、さらに好ましくは6重量%以下であり、最も好ましくは4重量%以下である。
昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分(S40)が10重量%より多いと低結晶成分のベタツキ成分により被保護物が汚染されるという問題点がある。また、ポリマーを製造する過程において、低結晶成分のベタツキにより重合槽等でポリマー付着が発生し、滞留によるポリマーの劣化が起こり、結果としてポリマー劣化物由来のフィッシュアイとなってフィルム中に存在してしまう。
40℃以下の可溶分(S40)は、製造時の重合条件(重合温度、重合圧力)、用いる触媒およびα−オレフィンの種類と量、組成を変更することによって調整することができる。
(a5)昇温溶離分別による(T100−T20
本発明で用いるプロピレン系樹脂の昇温溶離分別(TREF)法により20重量%溶出したときの温度(T20)から100重量%溶出終了したときの温度(T100)の幅(T100−T20)は、30℃以下が好ましく、より好ましくは25℃以下、さらに好ましくは20℃以下、最も好ましくは15℃以下である。(T100−T20)が30℃を超えると、プロピレン系樹脂の中に結晶性の高い成分と結晶性の低い成分とが同時に存在することになり、結晶成分の大きさや質が不均一となって、溶融樹脂粘度にムラが存在し、未溶融の微細なかたまりがフィッシュアイとなってフィルム中に存在してしまう。
昇温溶離分別による(T100−T20)は、製造時の重合条件(重合温度、重合圧力)、用いる触媒およびα−オレフィンの種類と量、組成を変更することによって調整することができる。
なお、本発明において採用している昇温溶離分別(TREF)法とは、以下に示す方法である。
すなわち、試料を140℃でオルトジクロロベンゼンに溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却後、10分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼンを1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
上記条件に従って得た溶出曲線から40℃で溶出する成分の全量に対する割合(重量%)を算出する。また、20重量%溶出したときの温度(T20)から100重量%溶出終了したときの温度(T100)の幅(T100−T20)を算出する。用いるカラム、溶媒、温度等の条件は以下の通りである。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒:オルトジクロロベンゼン
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.2mL
溶媒流速:1mL/分
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
測定波長:3.42μm
このようなプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて重合されたものであることを必須条件とする。メタロセン触媒により重合されたプロピレン単独重合体、またはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、結晶性分布及び、分子量分布が狭いため、前記記述どおり、フィッシュアイになる成分が少ないものとなる。
一方、マグネシウム、チタン、ハロゲン、電子供与体を必須成分とするいわゆるチーグラーナッタ触媒などのメタロセン触媒以外の触媒により重合されたプロピレン単独重合体、またはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いると、分子量分布が広く、高分子量成分が多く含まれるため、しかも、結晶分布も広く、低結晶成分が多い上、さらに、結晶性分布が不均一なため、フィルム中に未溶融の微細なかたまりが発生し、フィッシュアイとなって存在しやすくなる。
本発明で用いられるメタロセン触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。各成分について説明する。
(i)メタロセン化合物としては、例えば、特開昭60−35007号、特開昭61−130314号、特開昭63−295607号、特開平1−275609号、特開平2−41303号、特開平2−131488号、特開平2−76887号、特開平3−163088号、特開平4−300887号、特開平4−211694号、特開平5−43616号、特開平5−209013号、特開平6−239914号、特表平7−504934号、特開平8−85708号の各公報に開示されている。
更に、具体的には、メチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−(4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[4−(1−フェニル−3−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,(1−ナフチル)−インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(3−フルオロビフェニリル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することもできる。また、クロリドは他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることが出来る。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。特にアズレニル基を有するメタロセン化合物と粘土鉱物を組み合わせた触媒で得られる重合体は、製膜性、低フィッシュアイのバランスに優れている。
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が挙げられる。
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
重合法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。本発明で用いるプロピレンを得る方法としては、例えば、重合温度やコモノマー量を調節して、分子量および結晶性の分布を適宜制御することにより、所望のポリマーを得ることができる。
かかるポリプロピレンは、メタロセン系ポリプロピレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製「ウィンテック」等を挙げることができる。
なお、本発明のプロピレン系樹脂は、前記特性を満足する限り一種類もしくは二種類以上の組み合わせからなっても良い。
2.粘着層
本発明の表面保護用フィルムは、上記プロピレン系樹脂よりなる基材層の一方の面に粘着層が形成される。粘着層は、下記プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を用いる。
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)(以下、成分(B1)ということがある。)と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)(以下、成分(B2)ということがある。)から構成され、下記条件(b1)〜(b2)、さらに必要に応じて、(b3)〜(b9)を満たすものである。
(b1)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)を30〜95重量%、第2工程で成分(B1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)を70〜5重量%逐次重合して得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体
なお、このようなプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)は、いわゆるブロック共重合体と通称されているものであるが、成分(B1)と成分(B2)のブレンド状態にあり、双方が重合で結合しているものではない。
(b2)メルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg)が1〜30g/10分
(b3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる分子量5,000以下の成分量W(Mw≦5,000)が、全体の0.8重量%以下
(b4) 第1工程で得られる成分(B1)が、エチレン含量が0.5〜6重量%の範囲にあるプロピレン−エチレンランダム共重合体で、ブロック共重合体の全体における割合が30〜85重量%の範囲にあり、第2工程で得られる成分(B2)が(B1)よりも6〜20重量%多くのエチレン含量で、ブロック共重合体の全体における割合が70〜15重量%の範囲にあること
(b5)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での温度昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(dWt%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、高温側に観測されるピーク温度T(B1)が55℃〜96℃の範囲にあり、低温側に観測されるピーク温度T(B2)が45℃以下にあり、或いはピーク温度T(B2)が観測されず、プロピレン−エチレンブロック共重合体の99wt%が溶出する温度T(B4)が98℃以下であること
(b6)第1工程で得られる成分(B1)が、エチレン含量が1.5〜6重量%の範囲にあるプロピレン−エチレンランダム共重合体で、ブロック共重合体の全体における割合が30〜70重量%の範囲にあり、第2工程で得られる成分(B2)が(B1)よりも8〜15重量%多くのエチレン含量で、ブロック共重合体の全体における割合が70〜30重量%の範囲にあること
(b7)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での温度昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(dWt%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、高温側に観測されるピーク温度T(B1)が60℃〜88℃の範囲にあり、低温側に観測されるピーク温度T(B2)が40℃以下にあり、或いはピーク温度T(B2)が観測されず、プロピレン−エチレンブロック共重合体の99wt%が溶出する温度T(B4)が90℃以下であること
(b8)23℃キシレン可溶分の135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]cxsが1〜2dl/g
(b9)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する
以下、特性(b1)〜(b9)について詳細に説明する。
(1)成分(B1)中のエチレン含量([E]B1
第1工程で製造される成分(B1)は、フィルムのべたつきを抑制し、耐熱性を発現するために、融点が比較的高く、結晶性を有するプロピレン単独重合体、もしくはプロピレン−エチレンランダム共重合体である必要がある。[E]B1は、好ましくは7重量%以下であり、より好ましくは6重量%以下、さらに好ましくは0.5〜6重量である。[E]B1が7重量%を超えると融点が低くなりすぎ、フィルムの耐熱性を悪化させる恐れがある。
なお、成分(B1)はプロピレン単独重合体でも改良された粘着性や耐熱性を示すが、成分(B1)がプロピレン単独重合体の場合には充分な粘着性を発揮させるために後述する成分(B2)の割合を極端に増加させる必要が生じ、これにより耐熱性及びベタツキやブロッキングなどの顕著な悪化を招くことが懸念される。
一方、成分(B1)をプロピレン−エチレンランダム共重合体とすると、成分(B1)自体の融点は低下することで耐熱性は悪化するように見えるが、充分な粘着性を発揮するために必要な成分(B2)の量を抑制できることで、ブロック共重合体全体としての耐熱性はむしろ向上し、かつ、ベタツキやブロッキングの悪化が小さいため好ましい。
さらに融点を低下させられることで、フィルム成形時の成形温度を低下させても充分な押出安定性等が得られることで臭気性などが極めて優れたフィルムを得ることができる。
これらの観点から、成分(B1)中のエチレン含量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上である
(2)成分(B2)中のエチレン含量([E]B2
第2工程で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の粘着性と耐衝撃性を向上させるのに必要な成分である。
ここで、成分(B2)は上記効果を充分発揮するために特定範囲のエチレン含量であることが必要である。すなわち、本発明のブロック共重合体において、成分(B1)に対し成分(B2)の結晶性は低い方が、粘着性改良効果が大きく、結晶性はプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量で制御されるため、成分(B2)中のエチレン含量[E]B2は、成分(B1)中のエチレン含量[E]B1Eよりも3重量%以上多いことが好ましく、より好ましくは6重量%以上、更に好ましくは8重量%以上、成分(B1)よりも多くのエチレンを含む。
ここで、成分(B1)と成分(B2)のエチレン含量の差を[E]gap([E]B2−[E]B1)と定義すると、[E]gapは、3〜20重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは6〜20重量%、更に好ましくは8〜15重量%である。
[E]gapが、3重量%未満の場合、ゴム弾性が不足し好ましくない。また、20重量%を超えると第1工程で製造される成分(B1)と成分(B2)とのマトリクスとドメインに分かれた相分離構造を取り相溶性が悪くなるため、フィッシュアイが発生する恐れがある。これは、これは元来、ポリプロピレンはポリエチレンとの相溶性が低く、プロピレン−エチレンランダム共重合体においても、エチレン含量が異なるものの相互の相溶性は、エチレン含量の違いが大きくなると低下するためである。
(3)成分(B1)および成分(B2)の割合
プロピレン−エチレンブロック共重合体を構成する成分(B1)の割合(W(B1))および成分(B2)の割合(W(B2))の含有量比は、W(B1)が30〜95重量%であり、W(B2)が70〜5重量%の範囲にある必要があり、好ましくは、W(B1)の割合が30〜85重量%、更に好ましくは30〜70重量%の範囲である。
W(B1)の割合が30重量%未満であると、フィルムのべたつき発生、かつ耐熱性が低下する恐れがある。他方、W(B1)の割合が95重量%を超えるとプロピレン−エチレンブロック共重合体の粘着性や耐衝撃性の改良効果を充分に発揮することができない。
成分(B2)の割合が多過ぎるとベタツキが増加しブロッキングに悪化が生じ、耐熱性の低下も顕著になる。一方、成分(B2)の割合が少なくなり過ぎると粘着性と耐衝撃性の改良効果が得られない。
(4)[E]B1と[E]B2及びW(B1)とW(B2)の測定
[E]B1と[E]B2及びW(B1)とW(B2)の測定は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを特定するためには、以下の分析を用いることが望ましい。
(i)温度昇温溶離分別(TREF)によるW(B1)とW(B2)の特定
プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
本発明におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、成分(B1)と(B2)の各々の結晶性に大きな違いがあり、また、メタロセン触媒を用いて製造されることで各々の結晶性分布が狭くなっていることから双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く判別することが可能である。
具体的な方法を図1のTREFによる溶出量及び溶出量積算を示す図を用いて説明する。TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、成分(B1)と(B2)は結晶性の違いにより各々T(B1)とT(B2)にその溶出ピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(C)(={T(B1)+T(B2)}/2)においてほぼ分離が可能である。
また、TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では−15℃であるが、成分(B2)の結晶性が非常に低いあるいは非晶性成分の場合には本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(この場合には、測定温度下限(すなわち−15℃)において溶媒に溶解した成分(B2)の濃度は検出される。)
このとき、T(B2)は測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することが出来ないため、このような場合にはT(B2)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(C)までに溶出する成分の積算量をW(B2)重量%、T(C)以上で溶出する部分の積算量をW(B1)重量%と定義すると、W(B2)は結晶性が低いあるいは非晶性の成分(B2)の量とほとんど対応しており、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(B1)は結晶性が比較的高い成分(B1)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線と、そこから求められる上記の各種の温度や量の算出の方法は図1に例示するように行う。
(ii)TREF測定方法
本発明においては、TREFの測定は具体的には以下のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
(iii)各成分中のエチレン含量[E]B1と[E]B2の特定
(イ)成分(B1)と成分(B2)の分離
上述のTREF測定により求めたT(C)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(C)にける可溶成分(B2)とT(C)における不溶成分(B1)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules、21 314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本発明において以下の方法を用いる。
(ロ)分別条件
直径50mm、高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(C)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(C)に保持したまま、T(C)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(C)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒(o−ジクロロベンゼン)を20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(C)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーをろ過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
(ハ)13C−NMRによるエチレン含量の測定
上記分別により得られた成分(B1)と(B2)それぞれについてのエチレン含有量はプロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400または、同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔: 15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules,17 1950(1984)等を参考に行えばよい。
上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下表1の通りである。表1中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules,10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 2010240933
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の式(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。従って、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1
…(7)
である。
また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)は、Tββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記式(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明のプロピレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/または1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
Figure 2010240933
正確なエチレン含有量を求めるにはこれら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本願発明のエチレン含有量は実質的に異種結合を含まないチーグラー触媒で製造された共重合体の解析と同じく式(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量[E]は、上記より測定された成分(B1)と(B2)それぞれのエチレン含量[E]B1と[E]B2及びTREFより算出される各成分の重量比率W(B1)とW(B2)重量%から以下の式により算出される。
[E]={[E]B1×W(B1)+[E]B2×W(B2)/100 (重量%)
(4)ブロック共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)
本発明で使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、1〜30g/10分であり、好ましくは2〜20g/10分であり、より好ましくは4〜15である。MFRが1g/10分未満ではフィルムの表面にシャークスキンやメルトフラクチャと呼ばれる表面あれが発生し外観を著しく損なう。一方で、MFRが30を超えると成形時の安定性が悪化し、フィルムの幅や厚みが変動し製品を得ることができない。
ここで、MFRは、JIS K7210 A法 条件Mに準拠し、加熱温度230℃、荷重21.2Nで測定する値である。
(5)tanδ曲線のピークによる規定
本発明においては、フィルムの相溶性を良好に保ち、また、フィッシュアイの発生を抑制するために、使用するプロピレン−エチレンブロック共重合体を構成する成分(B1)と成分(B2)とが相分離していないことが好ましい。相分離の条件は、エチレン含量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、上記のエチレン含量に関する規定に加えて、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線のピークに関する規定が必要となる。
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)においては、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが好ましい。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が相分離構造を取る場合には、成分(B1)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(B2)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。この場合には、フィッシュアイが発生しやすくなるという問題が生じる。
相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定におけるtanδ曲線において判別可能であり、耐衝撃性やフィッシュアイの発生を左右する層分離構造の回避は、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することによりもたらされる。
固体粘弾性測定とは、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは、周波数は1Hzを用い測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
(6)分子量
本発明で使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合体のゲルパーミエーション(GPC)法により測定される重量平均分子量の5,000以下の成分量は、0.8重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。本発明におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)は、低分子量成分が少ないことを付加的な特徴とし、低分子量成分、特に、その分子量が絡み合い点間分子量に満たない成分は、成形体の表面にブリードアウトし、ベタツキ性や被着体への耐汚染性などを悪化させると考えられる。
なお、ポリプロピレンの絡み合い点間分子量は、Journal of Polymer Science:Part B:Polymer Physics; 37 1023−1033(1999)に記載されるように、約5,000である。
ここで、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。 F380,F288,F128,F80,F40,F20,F10,F4,F1,A5000,A2500,A1000
各々が0.5mg/mlとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する、粘度式の[η]=K×Mα は以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10−4 α=0.7
PE : K=3.92×10−4 α=0.733
PP : K=1.03×10−4 α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:WATERS社製 GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製 MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/min
注入量:0.2ml
試料の調製 試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定により得られた分子量に対する溶出割合のプロットから、分子量5,000以下の成分量も求めることができる。
(7)固有粘度[η]cxs
プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)において、ベタツキやブリードアウトや被着体への汚染が特に問題となるのは、常温のキシレンに可溶な成分(CXS成分)であるため、固有粘度[η]cxsの測定は、CXS成分に対して行うことが好ましい。
ここで、CXS成分は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)をp−キシレンに130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置し、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させることにより得られ、得られたCXS成分の固有粘度[η]cxsを、デカリンを溶媒として用い、温度135℃でウベローデ型粘度計を用いて測定することができる。
このとき、本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)は、ブリードアウトしやすい分子量5,000以下の成分の生成を増加させることが無いため、従来のチーグラー・ナッタ系触媒では、製造上の問題やブロッキングなどの悪化により実用上問題のあった、CXS成分の固有粘度[η]cxsが2以下の領域であっても、格別な物性の悪化を引き起こすことなく、製造し利用することができる。
このようなCXS成分の固有粘度を下げながら分子量5,000以下の成分を増加させないプロピレン−エチレンブロック共重合体は、引張破断伸びが大きく、引張破断強度が高いという物性面での特徴を持ち、ブツやフィッシュアイと称される外観不良の発生が少なく、更に表面保護フィルムの粘着層として用いた場合被着体への耐汚染性に優れるという効果を示す。
(8)TREF溶出曲線による結晶性分布の付加的要件
各成分の量を特定するために用いたTREF溶出曲線を用いることで、本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体に、結晶性分布において付加的な特徴を見出すことができる。
(i)溶出ピーク温度T(B1)
TREF溶出曲線における成分(B1)の溶出ピーク温度T(B1)が高いほど、成分(B1)は結晶性が高くなるが、このとき、成分(B1)の結晶性が高くなるとプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の粘着性を改良するために必要な成分(B2)を多くしなくてはならない。
一方で、成分(B2)の割合が多くなり過ぎるとベタツキや耐熱性の悪化が生じるため、粘着性とのバランスを向上させるためには、T(B1)は高過ぎないほうがよい。さらに、臭気性などは成形温度の上昇と共に悪化する傾向があるが、T(B1)を低下させることで、押出温度を低下させても安定した可塑化が得られる点でも好ましい。
本発明において成分(B1)はプロピレン単独又はプロピレン・エチレンランダム共重合体であるが、T(B1)はエチレン含量の増加により低下させることができる。このとき、充分な粘着性と耐熱性のバランスを発揮するためには、T(B1)は96℃以下であることが好ましく、最も好ましい範囲は88℃以下であることが好ましい。
一方、ピーク温度T(B1)が55℃未満である場合には、成分(B1)の結晶が融解する温度は低く、ブロック共重合体が充分な耐熱性を発揮することができずブロッキングが悪化するため、本発明においては、ピーク温度T(B1)は55℃以上であることが好ましく、より好ましくは、60℃以上である。
(ii)溶出終了温度T(B4)
T(B1)が低くとも高結晶側に結晶性分布を持つ場合にはフィッシュアイの悪化が生じる場合がある。この原因は定かではないが、高結晶側に結晶性分布があると溶融押出時、特に低温での押出時に溶融状態と未溶融状態の樹脂が混在するためと推察される。
そこで、TREF溶出曲線において高温側への結晶性の広がりは抑制されることが好ましい。この高結晶側へ結晶性の広がりはTREF測定により評価可能であり、ピーク温度T(B1)に対し、成分プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)全体の溶出終了温度T(B4)(但し、TREF測定における誤差を考えると全て溶出する温度を定義することは困難であるので、本発明においては全体の99wt%が溶出する温度を溶出終了温度T(B4)と定義する)は高くないほうが好ましく、高温側に溶出成分があるとその成分の結晶化度が増加してしまうので、本発明の好ましい要件としてT(B4)は98℃以下、好ましくは90℃以下である。
さらに、溶出ピークから終了までの温度差ΔT(T(B4)−T(B1))は好ましくは5℃以下、より好ましくは4℃以下、さらに好ましくは3℃以下の範囲にあればよい。
(iii)溶出ピーク温度T(B2)
成分(B2)の結晶性が充分に低下していないとプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の粘着性を確保することができないため、T(B2)は好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下である。
(9)プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の製造
本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を製造する方法は、メタロセン系触媒の使用を必須とするものである。プロピレン−エチレンブロック共重合体において分子量及び結晶性分布が広いとベタツキやブリードアウトが悪化することは当業者に広く知られるところであるが、本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体においても、ベタツキ及びブリードアウトを抑制するため、かつ、フィルム成形においてより少ないフィッシュアイの発生を達成するために、分子量及び結晶性分布を狭くできるメタロセン系触媒を用いて重合されることが必要であり、チーグラー・ナッタ系触媒では本発明の優れたプロピレン−エチレンブロック共重合体が得られないのは、後記の実施例と比較例との対比からも明らかである。
ここで、メタロセン系触媒の種類は、本発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(x)と(y)及び必要に応じて使用する成分(z)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(x):一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(y):下記(y−1)〜(y−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(y−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(y−2)成分(x)と反応して成分(x)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(y−3)固体酸微粒子
(y−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(z):有機アルミニウム化合物
成分(x)
成分(x)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C4−a−aR)(C4−b−bR)MeXY …(1)
[ここで、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。R及びRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基を示す。a 及びb は置換基の数である。]
詳しくは、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基或いはオリゴシリレン基又は炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
及びRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したR及びRは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
以上において記載した成分(x)の中で、本発明のプロピレン系重合体の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基或いはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
成分(y)
成分(y)としては、上述した成分(y−1)〜成分(y−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808号公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(y−1)及び成分(y−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(y)の非限定的な具体例としては、成分(y−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(y−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(y−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウムなどを、成分(y−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(y)の中で特に好ましいものは、成分(y−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
成分(z)
必要に応じて成分(z)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式
AlR3−a
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)
で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
触媒の形成は、成分(x)と成分(y)及び必要に応じて成分(z)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
(i)成分(x)と成分(y)を接触させる
(ii)成分(x)と成分(y)を接触させた後に成分(z)を添加する
(iii)成分(x)と成分(z)を接触させた後に成分(y)を添加する
(iv)成分(y)と成分(z)を接触させた後に成分(x)を添加する
(v)三成分を同時に接触させる
本発明で使用する成分(x)と(y)及び(z)の使用量は任意である。例えば、成分(y)に対する成分(x)の使用量は、成分(y)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5〜500μmolの範囲である。成分(y)に対する成分(z)の使用量は、成分(z)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。したがって、成分(x)に対する成分(z)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは10−5〜50、特に好ましくは10−4〜5の範囲内である。
本発明の触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(y)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
本発明の成分プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を製造は、実施するに際しては、結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)と低結晶性或いは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)を逐次重合することが必要である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体が単にプロピレンにエチレンを共重合させたランダム共重合体のときには、エチレン含量が少ない場合には柔軟性と耐衝撃性が充分でなく、これらの物性を向上させるためにエチレン含量を増加させると耐熱性が極めて悪化し製造が困難になるばかりでなく、要求される品質の全てを満たすことは困難である。
そこで、本発明においてプロピレン−エチレンブロック共重合体は、第1工程と第2工程でエチレン含量が異なる成分を逐次重合したブロック共重合体であることが柔軟性と耐熱性をバランスさせるために必要である。
また、本発明は成分(B2)として分子量が低く単独ではべたつきやすい共重合体を用いる場合があるので、反応器への付着などの問題を防止するために、成分(B1)を重合した後で成分(B2)を重合する方法を用いることが望ましい。
(i)逐次重合
本発明の成分プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を製造実施するに際しては、結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)と低結晶性或いは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)を逐次重合することが前述した理由により必要である。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には時間と共に重合条件を変化させることにより単一の反応器を用いて成分(B1)と成分(B2)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には成分(B1)と成分(B2)を個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本発明の効果を阻害しない限り成分(A1)、成分(A2)のそれぞれについて複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いても良い。
(ii)重合プロセス
重合プロセス(重合方法)は、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
低結晶性或いは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)は炭化水素などの有機溶媒や液化プロピレンに溶け易いため、成分(B2)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。
結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)の製造に対してはどのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(B1)を製造する場合には、付着などの問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
したがって、連続法を用いて、まず結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き低結晶性あるいは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体エラストマー成分(B2)を気相法にて重合することが最も望ましい。
(iii)その他の重合条件
重合温度は通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際、窒素などの不活性ガスを共存させることもできる。
第一工程で成分(B1)、第二工程で成分(B2)の逐次重合を行う場合、第二工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する場合には、第二工程のエチレン−プロピレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については各種技術検討がなされており、一例として特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などの各公報を例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
なお、本発明のポリプロピレン系フィルムに用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の各要素は、以下のように制御され、本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)に必要とされる構成要件を満たすよう製造することができる。
(イ)成分(B1)について
結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)については、エチレン含量([E]B1)とT(A1)を制御する必要がある。
本発明では、[E]B1を所定の範囲に制御するためには、第1工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量の関係は、用いるメタロセン系触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするエチレン含量[E]B1を有する成分(B1)を製造することができる。例えば、[E]B1を0〜7wt%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0〜0.3の範囲、好ましくは0〜0.2の範囲とすればよい。
このとき、成分(B1)は結晶性分布が狭く、T(A1)は[E]B1の増加に伴い低下する。そこで、T(A1)が本発明の範囲を満たすようにするためには、[E]B1とこれらの関係を把握し、目標とする範囲を取るよう調整する。
(ロ)成分(B2)について
低結晶性或いは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)については、エチレン含量[E]B2とT(A2)と[η]cxsを制御する必要がある。
本発明では、[E]B2を所定の範囲に制御するためには、[E]B1と同様に、第二工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。例えば、[E]B2を5〜20wt%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.01〜5の範囲、好ましくは0.05〜2の範囲とすればよい。このとき、成分(B2)もエチレン含量の増加に伴い若干結晶性分布の増加が見られるものの、成分(B1)と同様に、T(A2)は[E]B2の増加に伴い低下する。
そこでT(A2)が本発明の範囲を満たすようにするためには、[E]B2とT(A2)との関係を把握し、[E]B2を所定の範囲になるように制御すればよい。なお、[η]cxsについては、後述する。
(ハ)W(B1)とW(B2)について
成分(B1)の量W(B1)と成分(B2)の量W(B2)は、成分(B1)を製造する第一工程の製造量と成分(B2)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。例えば、W(B1)を増やしてW(B2)を減らすためには、第一工程の製造量を維持したまま第二工程の製造量を減らせばよく、それは、第二工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。その逆も又同様である。
実際に条件を設定する際には、活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、本発明にて実施するエチレン含有量[E]B1及び[E]B2の範囲においては、一般にエチレン含有量を高くするためにプロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると重合活性が高くなり、同時に活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第二工程の活性を維持するために第一工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、 第一工程にて生産量W(B1)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げる及び/又は重合時間(滞留時間)を短くする、あるいは第二工程にてエチレン含有量[E]B2を上げ、生産量W(B2)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げる及び/又は重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
(ニ)ガラス転移温度Tgについて
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)では、ガラス転移温度Tgは、単一のピークを持つことが好ましい。Tgが単一のピークを持つためには、成分(B1)中のエチレン含有量[E]B1と成分(B2)中のエチレン含有量[E]B2の差の[E]gap、すなわち[E]B2−[E]B1を20wt%以下、好ましくは18wt%、より好ましくは15wt%以下にし、実際の測定においてTgが単一のピークとなる範囲まで[E]gapを小さくすればよい。
結晶性の共重合体成分(B1)のエチレン含有量[E]B1に応じて、低結晶性或いは非晶性の共重合体成分(B2)のエチレン含量[E]B2を適正範囲に入るよう、成分(B2)の重合時のプロピレンに対するエチレンの供給重量比を設定することで、所定の[E]gapを有する重合体を得ることが可能である。
また、本発明のような相分離構造を取らないブロック共重合体のTgは、成分(B1)中のエチレン含有量[E]B1と成分(B2)中のエチレン含有量[E]B2、及び両成分の量比の影響を受ける。本発明においては、成分(B2)の量は5〜70wt%であるが、この範囲においてTgは成分(B2)中のエチレン含有量[E]B2の影響をより強く受ける。すなわち、Tgは非晶部のガラス転移を反映するものであるが、本発明のブロック共重合体成分(B)において成分(B1)は結晶性を持ち比較的非晶部が少ないのに対し、成分(B2)は低結晶性あるいは非晶性であり、そのほとんどが非晶部であるためである。
したがって、Tgの値は、ほぼ[E]B2によって制御され、[E]B2の制御法は前述したとおりである。
(ホ)メルトフローレート(MFR)について
本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)では、フィッシュアイの発生を抑制するために結晶性の共重合体成分(B1)と低結晶性或いは非晶性の共重合体エラストマー成分(B2)が相溶していることが好ましいので、成分(B1)の粘度[η]B1、成分(B2)の粘度[η]B2、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)全体の粘度[η]Wを適宜制御することが好ましい。成分(B1)の粘度[η]B1、成分(B2)の粘度[η]B2、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)全体の粘度[η]Wの間には、見かけ上の粘度の混合則が概ね成立する。すなわち、
Log[η]W={W(B1)×Log[η]B1+W(B2)×Log[η]B2}/100
が概ね成立する。一般にMFRと[η]の間には一定の相関があるから、最初に柔軟性や耐熱性などの観点から、[η]B2、W(B1)、W(B2)を設定しておけば、上記の式に従って[η]B1を変化させることによって、MFRを自在に制御することができる。
(ヘ)T(B4)について
T(B)は結晶性分布を示す指標である。成分(B1)の結晶性分布が狭いほどT(B4)はT(B1)に近くなるため(低くなり)、(B4)を低く制御することは、成分(B1)と成分(B2)の結晶性分布を狭く制御することに他ならない。
一般的には、メタロセン系触媒を用いることにより、チーグラー・ナッタ系触媒を用いる場合より、結晶性分布の狭いポリマーを得ることができるが、本発明のような逐次重合を行う系においては、結晶性分布を狭くするためにはメタロセン系触媒を用いるだけでは必要充分ではない。
最終的なプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を望ましい物性を持ったものに調整するためには、成分(B1)と成分(B2)はそれぞれ異なった特定のポリマー組成を有する必要がある。つまり、第一工程と第二工程ではそれぞれのポリマー組成に対応する重合条件、特にモノマーガス組成をそれぞれ異なる特定の値に保つ必要がある。したがって、採用するプロセスにおいて成分(B2)の結晶性分布が広い場合は、第一工程から、第一工程に対応する特定のモノマーガス混合物を第二工程に持ち込まないように、移送工程を調整するなどの工夫も必要である。具体的には、移送工程に於けるパージ量を増加し、あるいは窒素などの不活性ガスで希釈もしくは置換することにより、成分(B2)の結晶性分布を狭くすることができる。
(ト)W(Mw≦5,000)について
一般的に、メタロセン系触媒を用いることによりチーグラー・ナッタ系触媒の場合より分子量分布の狭いポリマーを得ることができる。しかし、本発明のような逐次重合を行う系においては、分子量分布を狭くするためにはメタロセン系触媒を用いるだけでは必ずしも充分ではない。特に、低分子量成分の生成を防ぐためには、第一工程から第二工程へ移送する時間を短くしたり、移送工程に於いて第一工程に対応するモノマーガス混合物を窒素などの不活性ガスで完全に置換したりすることにより、重合条件とは独立に、W(Mw≦5,000)を小さく制御することができる。
(チ)固有粘度について
[η]cxsについては、本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)はメタロセン系触媒を用いることで、成分(B1)中に殆んどCXS成分を含まないため、成分(B2)の分子量を変化させる事により制御することができる。[η]cxsを制御するためには、常法通り第二工程におけるモノマーに対する水素の供給量比を制御すればよい。また、一般にメタロセン系触媒は重合温度が高いほど得られるポリマーの分子量が低くなる傾向があるため、重合温度を変化させることによっても[η]cxsを制御することが可能である。また、水素供給量比と重合温度の両方を組み合わせて[η]cxsを制御することもできる。
3.剥離処理層
本発明の表面保護フィルムは、上記プロピレン系樹脂よりなる基材層の一方に形成される粘着層の他方の面に剥離処理層が形成される。剥離処理層としては、フィルムの剥離処理層側表面を荒らして凹凸を形成し剥離性を向上させた層を挙げることができる。剥離処理層表面を荒らすことは、粘着層と剥離処理層の両方が固体状態で接するロール巻状態から、ロールを解くときにはスムースにはがれ、使用時には繰り出し性が向上するという特性を有する表面保護用フィルムとすることができる。
フィルムの剥離処理層側表面を荒らして凹凸を形成し剥離性を向上させた層は、剥離処理層表面の中心面平均粗さ(SRa)が下記の測定条件(c1)〜(c6)において0.2〜1.5μmの範囲内であれば、使用される樹脂は特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、またはそれらの混合物でもよい。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂からなる層がよい。具体的には、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体単独、あるいは、プロピレン単独重合体にプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体を配合したもの、あるいは、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体にプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体を配合したもの、あるいは、低密度ポリエチレン単独、高密度ポリエチレン単独、あるいは、低密度ポリエチレンに高密度ポリエチレンを配合したもの、あるいは、プロピレン単独重合体に低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンを配合したもの、あるいは、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体に低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンを配合したもの、あるいは、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体に低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンを配合したもの、あるいは、これらポリオレフィン系樹脂を2種以上配合したもの、あるいはこれらポリオレフィン系樹脂に相溶性の異なる熱可塑性樹脂などを配合したものを挙げることができる。さらに好ましくは、本発明の基材層に用いられるプロピレン系樹脂にプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、または低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンを配合したものがフィッシュアイおよび層間剥離性の観点からもよい。
(c1)触針先端曲率半径が5μm
(c2)カットオフ波長が0.80mm
(c3)カットオフ種別が2CR(位相補償)
(c4)測定速度が0.3mm/秒
(c5)測定方向がフィルムのMD方向
(c6)測定長さが2mm
フィルム表面を荒らして凹凸を形成し剥離性を向上させるには、フィルム表面の凹凸は、中心面平均粗さ(SRa)で0.2〜1.5μmである。好ましくは0.3〜1.2μm、さらに好ましくは0.5〜1.0μm、もっとも好ましくは0.8〜1.0μmである。中心面平均粗さが0.2μm未満では十分な剥離性能を発揮させることが出来ず、1.5μmを大きく越えると剥離面の凸凹が粘着層に転写やすくなるため好ましくない。
ここで、中心面平均粗さ(SRa)の測定法は、測定方法や測定条件によって得られる値が異なるので、本発明では、JIS−B−0651(1976)で規定されている触針式表面粗さ測定器で測定する。測定器の測定条件は、触針先端曲率半径を5μm、カットオフ波長を0.80mm、カットオフ種別を2CR(位相補償)、測定速度を0.3mm/秒、測定方向をフィルムMD方向、測定長さを2mmとし、得られた値で表面粗度の範囲を規定した。測定方向であるMD方向とは、押出し成形するときのフィルムの送り方向、すなわちフィルムの長手方向と平行な方向をいう。
剥離処理層に用いるポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の低密度ポリエチレンや、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂が挙げられる。
プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂は、一般的にチーグラー触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、それら触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等の重合法で製造される。また、共重合成分のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。α−オレフィンは単独で使用してもよいが2種類以上を併用して使用してもかまわない。
高密度ポリエチレンは、一般的にチーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスで、エチレンまたはエチレンと少量のプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを(共)重合させて製造される。
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンは、パーオキサイドなどのラジカル発生剤を重合開始剤として、高圧ラジカル重合法等のプロセスで、エチレン又はエチレンと少量のプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを(共)重合させて製造される。
直鎖状低密度ポリエチレンは、一般的にチーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスでエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを共重合させて製造される。α−オレフィンは単独で使用してもよいが2種類以上を併用して使用してもかまわない。
低密度ポリエチレンは、成形性の点から高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。
また、剥離処理層に用いられるポリオレフィン系樹脂は、単独または、ポリオレフィン系樹脂を二種以上組み合わせた樹脂組成物を用いることができる。その配合量および樹脂の基本物性は、本発明のフィルムの剥離処理層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.2〜1.5μmの範囲内であれば特に限定されないが、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの組み合わせでは、好ましくは、低密度ポリエチレン100〜5重量%、高密度ポリエチレン0〜95重量%、より好ましくは、低密度ポリエチレン100〜20重量%、高密度ポリエチレン0〜80重量%、さらに好ましくは、低密度ポリエチレン100〜50重量%、高密度ポリエチレン0〜50重量%を含むポリエチレン樹脂組成物である。ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS−K6922−2:1997に準拠し、190℃、21.18N荷重で測定する値)は0.1〜40g/10分であり、好ましくは0.3〜25g/10分、さらに好ましくは1.0〜10g/10分である。
また、プロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂を混合して剥離処理層として使用する場合、好ましくは、プロピレン系樹脂99〜50重量%、ポリエチレン系樹脂1〜50重量%、より好ましくは、プロピレン系樹脂95〜70重量%、ポリエチレン系樹脂5〜30重量%を含む樹脂組成物である。
また、プロピレン系樹脂同士の組み合わせでは、好ましくは、プロピレン単独重合体95〜0重量%、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体5〜100重量%、より好ましくは、プロピレン単独重合体95〜50重量%、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体5〜50重量%を含む樹脂組成物である。また、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体95〜0重量%、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体5〜100重量%、より好ましくは、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体95〜50重量%、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体5〜50重量%を含む樹脂組成物である。
剥離処理層に用いられるプロピレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR;JIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重21.18N荷重で測定する値)は基材層との界面荒れを抑制するため基材層に使用されるプロピレン系樹脂に近いメルトフローレート(MFR)が好ましく、メルトフローレート(MFR)は、1〜50g/10分であり、好ましくは2〜30g/10分であり、より好ましくは5〜20g/10分であり、最も好ましくは7〜15g/10分である。また、剥離処理層に用いられるプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の組み合わせでは、プロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)とポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS−K6922−2:1997に準拠し、190℃、21.18N荷重で測定する値)はそのMFRに差がありすぎると相溶性が極端に悪くなり、フィッシュアイの原因となるため、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、0.1〜40g/10分であり、好ましくは0.3〜25g/10分、さらに好ましくは1.0〜10g/10分である。
なお、剥離処理層に用いられる低密度ポリエチレンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.0〜8.0であることが好ましい。Mw/Mnが4.0〜8.0であると、剥離処理層−粘着層間剥離性に優れる。
特に、剥離処理層に用いられるポリオレフィン樹脂等は、輸送運搬時にフィルム表面の傷つきを防ぐために、D硬度は50以上のものが好ましい。
ここで、D硬度は、JIS K7215に準拠して測定する値である。
ポリオレフィン系樹脂のD硬度は、ポリオレフィン系樹脂メーカーやポリオレフィン系樹脂販売会社作成の商品パンフレットに掲げられているので、それら市販品の中から選択することが可能である。ポリオレフィン系樹脂を二種以上組み合わせた樹脂組成物のD硬度は、各ポリオレフィン系樹脂のD硬度と組成割合から加成則計算で予測することができる。一般に、D硬度はポリオレフィン系樹脂の結晶化度に応じて変化すると考えられる。ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂では高密度ポリエチレンが高く、密度が小さくなるにつれて低くなる傾向がある。また、プロピレン系樹脂ではプロピレン単独重合体が高く、共重合成分の量が増加するにつれて低くなる。
本発明においては、D硬度が50以上を満たす範囲内で、他の性能(成形性、中間層との層間強度等)を勘案しつつ選ぶことが好ましい。成形加工性の点から高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン5〜100重量%、高密度ポリエチレン0〜95%を含む樹脂組成物であることが好ましい。成形性が優れる高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンと高いD硬度の高密度ポリエチレンとのブレンドにより、成形性が良好な硬度の高い外層とすることができる。その他の好ましい態様としては、密度が0.925g/cm以上の直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。その利点はフィルム強度が強くなることである。
また、剥離処理層にシリコーン系又は長鎖アルキル系等の剥離処理剤を併用して用いると、ロールを解くときのスムース感が向上し、さらなる繰り出し性効果が得られる。
シリコーン系剥離処理剤としては、ジメチルポリシロキサンを主体とする通常用いられるシリコーン系剥離処理剤も使用可能である。上記シリコーン系剥離処理剤に3次元化オルガノポリシロキサンを含有させたものも使用可能である。具体的には、オルガノポリシロキサンを主成分とし、これにメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース誘導体やアルキッド樹脂等を配合したシリコーン系剥離処理剤が好適に使用される。セルロース誘導体やアルキッド樹脂等を配合することにより、シリコーン系離型剤の離型性をコントロールすることができる。セルロース誘導体やアルキッド樹脂は、シリコーン系剥離処理剤中、好ましくは5〜50重量%配合される。
オルガノポリシロキサンの硬化反応(架橋反応)の形式により、縮合反応型と付加反応型に大別されるが、本発明においては、いずれの反応型であってもよい。
例えば、縮合反応型シリコーン系離型剤としては、例えば、分子末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンに、セロルース誘導体やアルキッド樹脂を配合したシリコーン系離型剤が挙げられる。ここで分子末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンとしては、側鎖の官能基としてメチル基やエチル基等のアルキル基やフェニル基が導入されたポリシロキサン(例えば、ジメチル・ジフェニルポリシロキサン)を使用することが好ましく、これにより、セルロース誘導体やアルキッド樹脂との相溶性が良好となり、剥離特性が安定した離型剤を得ることができる。またこの分子末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンには、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン等の架橋剤や、ジブチルすずジラウレート、ジブチルすずジアセテート、ジブヂルすずジオクテート、オクチル酸亜鉛等の触媒を適宜配合してもよい。また必要に応じて第三成分としてアクリル樹脂等の樹脂も適宜配合できる。シリコーン系離型剤中、上記架橋剤は、好ましくは4〜20重量%、触媒は、好ましくは5〜10重量%、第3成分としての樹脂は好ましくは5〜26重量%配合される。
付加反応型シリコーン系離型剤としては、例えば、1分子中にケイ素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンに、セロルース誘導体やアルキッド樹脂を配合したシリコーン系離型剤が挙げられる。ここで上記のオルガノポリシロキサンとしては、側鎖の官能基として、メチル基やエチル基等のアルキル基やフェニル基が導入されたオルガノポリシロキサンを使用することが好ましく、これにより、セルロース誘導体やアルキッド樹脂との相溶性が良好となり、剥離特性が安定した離型剤を得ることができる。また上記オルガノポリシロキサンには、オルガノハイドロジエンポリシロキサン等の架橋剤や、塩化第一白金酸等の白金系化合物等の触媒を適宜配合してもよい。
上記のシリコーン系剥離処理剤は、市販されているものの中から適宜選択して使用することができ、例えば、縮合反応型シリコーン系離型剤としては、信越化学工業(株)から入手できる、KS−723A/B(ジメチル・ジフェニルポリシロキサン、メトキシシリコーンおよびエチルセルロースからなる)が、付加反応型シリコーン離型剤としては、信越化学工業(株)から入手できる、X−62−9201A/Bを使用することができる。
また、長鎖アルキル系剥離処理剤としては、炭素数12以上の長鎖アルキルアクリレートの重合物や、長鎖アルキルアクリレートと他のビニルモノマーとの共重合物、あるいはポリビニルアルコールに長鎖アルキルイソシアネートなどの長鎖アルキル成分を反応させて得られる反応物等から得られる離型剤が挙げられる。
例えば、日東電工株式会社製BPタイプ、アシオ産業株式会社製アシオレジン、一方社油脂株式会社製ピーロイルなどを用いることができる。
剥離処理層にシリコーン系又は長鎖アルキル系等の剥離処理剤を併用して用いる手段としては、公知の方法で、剥離処理層に塗布、硬化する方法、あらかじめ剥離処理層樹脂に配合する等の方法を挙げることができる。
剥離処理層に塗布する方法としては、剥離処理層の面に対し、トルエン溶液等の有機溶剤に溶かしたシリコーン系又は長鎖アルキル系等の剥離処理剤をロールコーター等により塗布後、乾燥して剥離処理剤を硬化させて剥離処理層を形成する方法を挙げることができる。その際、親和力を向上させるため、剥離処理層の面に、従来公知のコロナ放電処理、プラズマ放電処理、プライマー処理などが施されていてもよい。
また、剥離処理層にあらかじめ配合する方法としては、押出機により、剥離処理層樹脂にシリコーン系又は長鎖アルキル系等の剥離処理剤を配合して加熱溶融させて、Tダイよりフィルム状に、基材層の片面に積層する方法、あるいは、押出機により加熱溶融させて、基材層と共にTダイよりフィルム状に共押出しする方法などを挙げることができる。
本発明では、シリコーン系又は長鎖アルキル系剥離処理剤を剥離処理層樹脂に配合し、基材層と共にTダイよりフィルム状に共押出し形成する方法を採用すると、汚染性の問題、経済上の点で有利である。
シリコーン系又は長鎖アルキル系剥離処理剤を、後工程で塗布して剥離処理樹脂層に形成する方法の場合、剥離処理剤の塗布量は、通常、シリコーン系の場合、0.01〜10g/m、好ましくは0.5〜0.7g/m、さらに好ましくは0.1〜0.4g/mである。また長鎖アルキル系の場合、0.005〜10g/m、好ましくは0.02〜0.3g/m、特に好ましくは0.01〜0.1g/mが好ましい。
また、剥離処理剤を剥離処理層樹脂に配合し、押出機より加熱溶融させてなる剥離処理層を形成する方法の場合、剥離処理剤の配合量は、剥離処理層樹脂および剥離処理剤の合計を100重量%としたとき、剥離処理層樹脂の含有量が90〜99.95重量%であり、剥離処理剤の含有量が10〜0.05重量%である。好ましくは、剥離処理層樹脂の含有量が95〜99.9重量%であり、剥離処理剤の含有量が5〜0.1重量%である。
4.各層で用いることのできる樹脂配合剤
本発明におけるプロピレン系樹脂よりなる基材層、粘着層および必要に応じて用いられる剥離処理層には、フィルムの製膜安定性、2次加工時の取り扱い及び表面保護用フィルムとしての品質維持から、本発明の目的が損なわれない範囲で、公知の樹脂配合剤として使用される各種添加剤、例えば、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、核剤、中和剤、光安定剤、帯電防止剤、粘着付与剤等を含有していてもよい。各種添加剤について以下に詳しく述べる。
(1)酸化防止剤
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
これら酸化防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
酸化防止剤の配合量は、基材層、粘着層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部である。酸化防止剤の配合量が前記範囲内では熱安定性が向上し、フィッシュアイの原因となる樹脂の劣化が抑制される。
(2)アンチブロッキング剤
アンチブロッキング剤の平均粒子径は、1〜7μm、好ましくは1〜5μm、さらに好ましくは、1〜4μmである。平均粒子径が1μm未満では、得られるフィルムの滑り性、開口性が劣り好ましくない。一方、7μmを越えると、傷つき性が著しく劣り好ましくない。ここで平均粒子径は、コールターカウンター計測による値である。
アンチブロッキング剤の具体例としては、たとえば無機系としては、合成または天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム等が使用される。
また、有機系としては、ポリメチルメタクリレート、ホリメチルシリルトセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂等を用いることができる。
特に合成シリカ、ポリメチルメタクリレートが分散性、耐ブロッキング性、傷つき性のバランスから好適である。
また、アンチブロッキング剤は表面処理されたものを用いてもよく、表面処理剤としては、界面活性剤、金属石鹸、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、フッソ樹脂、シランカップリング剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸ソーダ等の縮合リン酸塩等を用いることができ、特に有機酸処理なかでもクエン酸処理されたものが好適である。処理方法は特に限定されるものではなく、表面噴霧、浸漬等公知の方法を採用することができる。
アンチブロッキング剤はいかなる形状であってもよく球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状等任意の形状とすることができる。
これらアンチブロッキング剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
アンチブロッキング剤を配合する場合の配合量は、基材層、粘着層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。アンチブロッキング剤の配合量が前記範囲内ではブロッキング性が向上し、繰り出し性が向上する。
(3)スリップ剤
スリップ剤としては、モノアマイド類、置換アマイド類、ビスアマイド類等が挙げられ、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
モノアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸モノアマイドとして、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
不飽和脂肪酸モノアマイドとしては、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド等が挙げられる。
置換アマイド類の具体例としては、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルチミン酸アマイド等が挙げられる。
ビスアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸ビスアマイドとして、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
不飽和脂肪酸ビスアマイドとしては、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
芳香族系ビスアマイドとしては、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイドなどが挙げられる。
これらの中では、特に、脂肪酸アマイドのうち、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイドが好適に使用される。
スリップ剤を配合する場合の配合量としては、基材層、粘着層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。スリップ剤の配合量が前記範囲内では滑り性が向上し、繰り出し性が向上する。
(4)核剤
核剤の具体例としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウム、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物((株)ADEKA製、商品名NA21)等が挙げられる。
上記核剤を配合する場合の配合量としては、基材層、粘着層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して、0.0005〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.005〜0.05重量部である。核剤の配合量が前記範囲内では結晶化速度が速くなり、透明性が向上する。
また、上記以外の核剤として高密度ポリエチレン樹脂を挙げることができる。高密度ポリエチレン樹脂としては、密度が、0.94〜0.98g/cm、好ましくは、0.95〜0.97g/cmである。密度がこの範囲を外れると核剤としての効果が得られにくい。高密度ポリエチレン樹脂の190℃メルトフローレイト(MFR)は、5g/10分以上、好ましくは7〜500g/10分、さらに好ましくは、10〜100g/10分である。MFRが5g/10分より小さいときは高密度ポリエチレン樹脂の分散径が充分に小さくならず、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。また、高密度ポリエチレン樹脂が微分散するためには好ましくは高密度ポリエチレン樹脂のMFRが本発明のプロピレン系樹脂のMFRより大きい方がよい。
核剤として使用される高密度ポリエチレン樹脂の製造は、目的の物性を有する重合体を製造し得る限りその重合方法や触媒について特に制限はない。触媒については、チーグラー型触媒(すなわち、担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせに基づくもの)、カミンスキー型触媒(すなわち、担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンの組み合わせに基づくもの)が挙げられる。高密度ポリエチレン系樹脂の形状については制限がなく、ペレット状であってもよく、また、粉末状であってもよい。
核剤として使用する場合、高密度ポリエチレンの配合量としては基材層、粘着層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。高密度ポリエチレンの配合量が前記範囲内では結晶化速度が速くなり、透明性が向上する。また、共押出成形の場合、スイーパーロールの転写がなくなる。
(5)中和剤
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学工業(株)製)などを挙げることができる。
中和剤を配合する場合の配合量は、基材層、粘着層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部である。中和剤の配合量が前記範囲内では内部滑剤としての効果が向上し、押出機内部の劣化物の掻き出しを抑制する。
(6)光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が好適に使用され、従来公知のピペリジンの2位および6位の炭素に結合しているすべての水素がメチル基で置換された構造を有する化合物が特に限定されることなく用いられるが、具体的には以下のような化合物が用いられる。
具体例としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などを挙げることができる。
これらのヒンダードアミン系安定剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
ヒンダードアミン系安定剤を配合する場合の配合量は、基材層、粘着層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが望ましい。
ヒンダードアミン系安定剤の含有量が、前記範囲内では耐熱性、耐老化性等の安定性が向上する。
(7)帯電防止剤
帯電防止剤としては、従来から静電防止剤または帯電防止剤として使用されている公知のものであれば特に限定されることなく使用でき、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
上記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸またはロジン酸セッケン、N−アシルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミン塩等のカルボン酸塩;スルホコハク酸塩、エステルスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩;硫酸化油、硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、硫酸エーテル塩、硫酸アミド塩等の硫酸エステル塩;リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸エーテル塩、リン酸アミド塩等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩等のアミン塩;アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウム塩、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)ジアルキルアンモニウム塩、N−アルキルアルカンアミドアンモニウムの塩等の第4級アンモニウム塩;1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−1−アルキル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体;イミダゾリニウム塩、ピリジニウム塩、イソキノリニウム塩などが挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、p−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル等のエーテル形;脂肪酸ソルビタンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ソルビトールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセリンポリオキシエチレンエーテル等のエーテルエステル形;脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、2価アルコールエステル、ホウ酸エステル等のエステル形;ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミド、アルカノールアミンエステル、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミン、アミンオキシド、アルキルポリエチレンイミン等の含窒素形などが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、モノアミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸等のアミノ酸形;N−アルキルアミノプロピオン酸塩、N,N−ジ(カルボキシエチル)アルキルアミン塩等のN−アルキル−β−アラニン形;N−アルキルベタイン、N−アルキルアミドベタイン、N−アルキルスルホベタイン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン等のベタイン形;1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシ−1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−スルホエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
これらの中では、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、中でもモノグリセリド、ジグリセリド、ホウ酸エステル、ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、アミド等のエステル形または含窒素形の非イオン性界面活性剤;ベタイン形の両性界面活性剤が好ましい。
なお、帯電防止剤としては、市販品を使用することができ、例えば、エレクトロストリッパーTS5(花王(株)製、商標、グリセリンモノステアレート)、エレクトロストリッパーTS6(花王(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA(花王(株)製、商標、ラウリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA−7(花王(株)製、商標、ポリオキシエチレンラウリルアミンカプリルエステル)、デノン331P(丸菱油化(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート)、デノン310(丸菱油化(株)製、商標、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル)、レジスタットPE−139(第一工業製薬(株)製、商標、ステアリン酸モノ&ジグリセリドホウ酸エステル)、ケミスタット4700(三洋化成(株)製、商標、アルキルジメチルベタイン)、レオスタットS(ライオン(株)製、商標、アルキルジエタノールアミド)などが挙げられる。
帯電防止剤を配合する場合の配合量は基材層、粘着層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部、もっとも好ましくは0.2〜0.5重量部である。これら帯電防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。帯電防止剤の配合量が、前記範囲内では帯電を防止し埃等の付着物を抑制することができる。
(8)粘着性付与剤
粘着性付与剤としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5系石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、タッキファイヤー等が挙げられ、これらは、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
粘着性付与剤を配合する場合の配合量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではないが、基材層、粘着層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対し、0.0001〜200重量部である。好ましくは0.01〜150重量部、さらに好ましくは1〜150重量部、もっとも好ましくは10〜100重量部である。粘着性付与剤の配合量が0.0001重量部未満では粘着性付与効果が発現されず、逆に200重量部を超えると凝集力がなくなる。
また、前記に例示した粘着性付与剤以外の粘着性付与剤としては、エチレン・α−オレフィン共重合体、水添スチレン系エラストマーなど、公知の粘着性付与剤が挙げられる。エチレン・α−オレフィン共重合体としては、日本ポリエチレン(株)製「カーネル」シリーズや「ハーモレックス」シリーズ、ダウ・ケミカル日本(株)製「アフィニティ」シリーズや「エンゲージ」シリーズ等が例示でき、また、水添スチレン系エラストマーとしてはJSR(株)製「ダイナロン」シリーズ等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
(9)その他
さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、柔軟性、粘着性を適宜調整する成分としてエラストマーを配合したり、紫外線吸収剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤、防曇剤、難燃剤、着色剤、顔料、天然油、合成油、ワックスなどを配合することができ、その配合割合は適宜量である。
上記の各種添加剤の配合は、重合により得られた本発明のプロピレン系樹脂中に直接添加し溶融混練して使用することも可能であるし、溶融混練中に添加してもよい。さらには溶融混練後に直接添加、或いは、本発明の効果を著しく損なわない範囲においてマスターバッチとして添加することも可能である。また、これらの複合的な手法により添加してもよい。
一般的には、酸化防止剤や中和剤などの添加剤を配合して、混合、溶融、混練された後、製品に成形され使用される。成形時に本発明の効果を著しく損なわない範囲で他樹脂、或いは、その他の付加的成分(マスターバッチを含む)を添加し使用することも可能である。
上記の混合、溶融、混練は、従来公知のあらゆる方法を用いることができるが、通常、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の混練押出機にて実施することができる。これらの中でも一軸又は二軸の混練押出機により混合或いは溶融混練を行なうことが好ましい。
5.表面保護用フィルムの製造
本発明の表面保護用フィルムは、公知の積層フィルムの製造方法で製造することができる。
例えば、Tダイキャスト法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法等の公知の技術によって製造する。
Tダイキャスト法としては、押出機で溶融混練された樹脂がTダイから押し出され、水等の冷媒を通したロールに接触させられることにより冷却されて、一般に透明性が良く、厚み精度の良いフィルムを製造することができる。この様な方法はフィルムにとって好ましい製造方法である。
ここで、表面保護用フィルムの厚みは、特に限定されないが、10〜500μm、好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは30〜100μm、もっとも好ましくは40〜80μmである。厚みがこの範囲外では加工が困難となる。
粘着層を基材層の片面に設ける手段としては、溶液塗工法等で塗布により得る方法として、基材層の片面に対し、トルエン溶液等の有機溶剤に溶かした粘着剤をロールコーター等により塗布後、乾燥して粘着層を形成する方法を挙げることができる。その際、基材層と粘着層との親和力を向上させるため、基材層の片面(粘着層との接着面)に、従来公知のコロナ放電処理、プラズマ放電処理、プライマー処理などが施されていてもよい。
また、粘着層を積層により得る方法として、押出機により、粘着剤を加熱溶融させて、Tダイよりフィルム状に押し出し、基材層の片面に積層する方法、あるいは、押出機により、基材層及び粘着剤を加熱溶融させて、基材層と共にTダイよりフィルム状に共押出しする方法などを挙げることができる。
本発明では、粘着層を基材層と共にTダイよりフィルム状に共押出し形成する方法を採用すると、汚染性の問題、経済上の点で有利である。
粘着層の厚さは、用途により粘着強度が異なることから、特に限定されないが、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは5〜30μm、最も好ましくは10〜20μmである。
本発明の表面保護フィルムの粘着層とは他方の面に設ける剥離処理層の形成手段としては、塗布、硬化、積層などの公知の方法を挙げることができる。
剥離処理層を塗布により得る方法としては、基材層の片面に対し、トルエン溶液等の有機溶剤に溶かした剥離処理剤をロールコーター等により塗布後、乾燥して剥離処理剤を硬化させて剥離処理層を形成する方法を挙げることができる。その際、基材層と剥離処理層との親和力を向上させるため、基材層の片面(剥離処理層との接着面)に、従来公知のコロナ放電処理、プラズマ放電処理、プライマー処理などが施されていてもよい。
また、剥離処理層を積層により得る方法としては、押出機により、剥離処理層を加熱溶融させて、Tダイよりフィルム状に、基材層の片面に積層する方法、あるいは、押出機により、基材層及び剥離処理層を加熱溶融させて、基材層と共にTダイよりフィルム状に共押出しする方法などを挙げることができる。
本発明では、剥離処理層の表面を荒らして凹凸を形成し、剥離性を付与する方法を採用すると、汚染性の問題、経済上の点で有利であるため、該剥離処理層の製造に適した、Tダイにより共押出し、積層する方法が好ましい。
上記剥離処理層の厚さは、特に限定されないが、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは5〜30μm、最も好ましくは10〜20μmである。
6.表面保護フィルムの用途
本発明の表面保護用フィルムの用途としては、公知のあらゆる表面保護を必要とする製品が含まれ、分野別では、例えば、電子部品搬送用保護用フィルムおよびプリント基板用保護フィルム等のエレクトロニクス分野、窓ガラス保護用フィルム、焼付塗装用フィルム、自動車をユーザーにわたるまで保護するためのガードフィルム、表示用マーキングフルム、装飾用マーキングフィルムおよび緩衝・保護・断熱・防音用のスポンジフィルム等の自動車分野、絆創膏や経皮吸収貼付薬等の医療・衛生材料分野、ならびに電気絶縁用、識別用、ダクト工事用、窓ガラス保護用、養生用、包装用、梱包用、事務用、家庭用、固定用、結束用および、補修用の保護フィルム等の住宅・建設分野が挙げられる。
これらの中では、特に合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護用に好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた物性測定法、特性評価法、樹脂材料は以下の通りである。
1.物性測定法、特性評価法
(1)MFR:プロピレン系樹脂およびプロピレン−エチレンブロック共重合体は、JIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重21.18N荷重で測定し、ポリエチレン系樹脂は、JIS K−6922−2:1997付属書に準拠し、190℃、荷重21.18N荷重で測定した。
(2)融解ピーク温度:示差走査型熱量計(セイコー社製DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度(Tmp)を測定した。
(3)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn):基材層および粘着層の説明で述べた方法で測定した。
(4)基材層樹脂の昇温溶離分別(TREF)法:基材層の説明の項で述べた方法で測定した。
(5)粘着層樹脂のTREF測定:
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後に8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を1ml/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。(イ)装置
(イ−1)TREF部
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(イ−2)試料注入部
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(イ−3)検出部
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(イ−4)ポンプ部
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
(ロ)測定条件
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)
試料濃度:5mg/ml
試料注入量:0.1ml
溶媒流速 :1ml/分
(6)固体粘弾性測定
試料は、下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
試験片の作成条件
規格番号:JIS−7152(ISO294−1)
成形機:東洋機械金属社製TU−15射出成形機
成形機設定温度:ホッパ下から 80,80,160,200,200,200℃
金型温度:40℃
射出速度:200mm/秒(金型キャビティー内の速度)
射出圧力:800kgf/cm
保持圧力:800kgf/cm
保圧時間:40秒
金型形状:平板(厚さ2mm 幅30mm 長さ90mm)
(7)常温キシレン可溶成分(CXS)の極限粘度(固有粘度と同義)
2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、23℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥しCXSを回収して、秤量する。得られたCXS成分の極限粘度をウベローデ型粘度計を用いてデカリンを溶媒として用い温度135℃で測定した。
(8)エチレン含有量の算出
粘着層の説明で述べた方法で測定した。
(9)n−デカン可溶分量:サンプル5gにn−デカン200mlを加え、撹拌しながら加熱して試料を完全に溶解させた。約3時間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物をろ別した。ろ液を1000mlのアセトン中に入れ、n−デカン中に溶解していた成分を析出させた。析出物とアセトンをろ別し、析出物を乾燥した。なお、ろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。n−デカン可溶分量は、以下の式によって求めた。
n−デカン可溶分量(重量%)=[析出物重量/サンプル重量]×100
(10)引張弾性率:フィルムをISO527に準拠し、下記の条件にて、フィルムの流れ方向(MD)についての引張弾性率を測定した。
得られた数値が高い方がフィルムの剛性が高く、表面保護用のフィルムとして取り扱いやすい。
サンプル長さ:150mm
サンプル幅:10mm
チャック間距離:100mm
クロスヘッド速度:25mm/min
(11)フィッシュアイ:フィルムを20cm×15cmのサイズに切り出し、目視にて評価した。フィッシュアイが非常に少ないもの○、やや散見されるものを△、多いものを×とした。
フィッシュアイが少ない方が、表面保護フィルムを被保護物に貼付けて段積み保管しても、被保護物に凹みが生じることがなく表面保護フィルムとして良好である。
(12)粘着性:フィルムのタテ方向を長手方向にとり、幅25mm、長さ20cmに切断し、予め60℃に加温したアクリル樹脂板(鏡面状のアクリル板(三菱レイヨン(株)製『アクリライトL001』3mm板)に貼りつけた。貼りつけたフィルムを温度23℃湿度50%の中で12時間エージングした後、JIS Z0237に準拠して引張速度300mm/min、引きはがし角度180℃にて25mm幅あたりの粘着強度を測定した。
数値が高ければ粘着強度が高い。粘着強度は被着体により目標の強度は異なるが、一般的には1〜400g/25mmの範囲で使用される。粘着強度低すぎると、被着体への貼りあわせができない。また、粘着強度が高すぎると被着体から容易に剥離することができない。
(13)剥離処理層−粘着層間剥離性:通常表面保護フィルムは、剥離処理層と粘着層が接した形で紙管に巻き取られ、繰り出されて製品に接着して使用される。繰り出し性の評価として、成形したフィルムを3インチの紙管に剥離処理層と粘着層が接した形で巻き取り、繰り出し機に取り付け20m/分で繰り出した際にシワ、たるみ等入らずに滑らかに繰り出せるかを目視で確認し、滑らかに繰り出せるものを○、滑らかに繰り出せないものを×とした。
(14)被着体耐汚染性:前記粘着性評価に於いて、アクリル板からフィルムを剥がした際、剥離痕が残らないものを○、剥離痕や、粘着層樹脂がアクリル板に残るものを×とした。
(15)中心面平均粗さ(SRa):株式会社東京精密製表面粗さ形状測定機「サーフコム1500DX」を用いて前記条件にて測定した。
2.樹脂材料
(1)基材層樹脂
基材層のプロピレン系樹脂として、メタロセン触媒による製造例1〜4で得られたプロピレン系樹脂(PP−1〜4)、メタロセン触媒によるプロピレン・エチレンランダム共重合体(ウィンテックWFX4(日本ポリプロ(株)製)、ウィンテックWFW4(日本ポリプロ(株)製)、ウィンテックWFX6(日本ポリプロ(株)製)、ウィンテックWSX02(日本ポリプロ(株)製))、チーグラー触媒によるプロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体(ノバテックPP FX4G(日本ポリプロ(株)製)、ノバテックPP FW4B(日本ポリプロ(株)製))、チーグラー触媒によるプロピレン・エチレンランダム共重合体(ノバテックPP FX3A(日本ポリプロ(株)製))、チーグラー触媒によるプロピレン単独重合体(ノバテックPP FB3C(日本ポリプロ(株)製))を用いた。表3に物性を示す。
(製造例1)
(i)メタロセン化合物の合成
(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11−240909号公報に記載の方法に準じて行った。
(ii)化学処理イオン交換性層状珪酸塩の調製
10リットルの攪拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、ろ過した。この洗浄操作を、洗浄液(ろ液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は、705gの化学処理珪酸塩を得た。
先に化学処理した珪酸塩を、キルン乾燥機によりさらに乾燥した。乾燥機の仕様、条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状、内径50mm、加湿帯550mm(電気炉)、かき上げ翼付き
回転数:2rpm、傾斜角;20/520、珪酸塩の供給速度;2.5g/分、ガス流速;窒素、96リットル/時間、向流
乾燥温度:200℃(粉体温度)
(iii)固体触媒の調製
内容積13リットルの攪拌機の付いた金属製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩0.20kgと日石三菱社製ヘプタン(以下、ヘプタンという。)0.74リットルの混合物を導入し、さらにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.04M)1.26リットルを加え、系内温度を25℃に維持した。1時間の反応後、ヘプタンにて十分に洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調製した。
(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム2.44g(3.30mmol)にヘプタンを0.80リットル加え、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ミリリットル加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、ヘプタンを追加して5.0リットルに調整した。
続いて、温度40℃にて、プロピレンを100g/時間の速度で供給し、4時間予備重合を行った。さらに1時間、後重合した。
予備重合終了後、残モノマーをパージした後、触媒をヘプタンにて十分に洗浄した。続いて、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.17L添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により、乾燥した予備重合触媒0.60kgを得た。
(iv)重合
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、トリイソブチルアルミニウム24g、水素0.4gを加え、これに十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。40℃に昇温した。その後上記予備重合触媒を1.6gをアルゴンで圧入し、40分かけて75℃まで昇温し、3時間重合を行った。その後エタノール100mlを圧入して反応を停止し、残ガスをパージし、生成物を乾燥して、プロピレン単独重合体(PP1)を得た。
(vi)プロピレン系樹脂
得られたプロピレン単独重合体(PP1パウダー)100重量部に対し、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガノックス1010)を0.05重量部、トリス−(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガフォス168)を0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーにて750rpm、1分間混合後、50mmφ単軸押出機を用い、押出温度230℃にてペレット化し、プロピレン系樹脂(PP−1)を得た。得られたプロピレン系樹脂(PP−1)の物性を表1にまとめた。
(製造例2)
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘキサン溶液を500ml(0.12mol)、水素を0.8NLを加え、エチレンを1.94kg加え、これに十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。40℃に昇温し、製造例1で調製した予備重合触媒2.8gをアルゴンで圧入した。40分間かけて62℃まで昇温し、本条件で2時間重合を行った。その後、エタノール100mlを圧入して反応を停止し、残ガスをパージし、生成物を乾燥して、プロピレン・エチレンランダム共重合体(PP2)を得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体(PP2パウダー)を製造例1と同様の添加剤配合および方法にてペレット化し、プロピレン系樹脂(PP−2)を得た。
(製造例3)
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘキサン溶液を500ml(0.12mol)、水素を8.0NLを加え、エチレンを1.92kg加え、これに十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。40℃に昇温し、製造例1で調製した予備重合触媒1.6gをアルゴンで圧入した。40分間かけて62℃まで昇温し、本条件で2時間重合を行った。また、この間水素を0.48g/hrの定速で導入した。その後エタノール100mlを圧入して反応を停止し、残ガスをパージし、生成物を乾燥して、プロピレン・エチレンランダム共重合体(PP3)を得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体(PP3パウダー)を製造例1と同様の添加剤配合および方法にてペレット化し、プロピレン系樹脂(PP−3)を得た。
(製造例4)
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘキサン溶液を500ml(0.12mol)、水素を2.3NLを加え、エチレンを1.94kg加え、これに十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。40℃に昇温し、製造例1で調製した予備重合触媒2.2gをアルゴンで圧入した。40分間かけて62℃まで昇温し、本条件で2時間重合を行った。その後エタノール100mlを圧入して反応を停止し、残ガスをパージし、生成物を乾燥して、プロピレン・エチレンランダム共重合体(PP4)を得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体(PP4パウダー)を製造例1と同様の添加剤配合および方法にてペレット化し、プロピレン系樹脂(PP−4)を得た。
Figure 2010240933
(2)粘着層樹脂
粘着層樹脂のプロピレン−エチレンブロック共重合体として、後述の製造例5〜10で得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(PEB−1〜6)を用いた。重合条件及び重合結果を表4に、物性を表5に示す。
(製造例5)
(i)予備重合触媒の調製
(イ)珪酸塩の化学処理
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm 粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(ロ)珪酸塩の乾燥
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉) かき上げ翼付き回転数:2rpm 傾斜角:20/520 珪酸塩の供給速度:2.5g/分 ガス流速:窒素 96リットル/時間 向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(ハ)触媒の調製
撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。ここに、乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71ML)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
(ニ)予備重合/洗浄
続いて、槽内温度を40℃昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71ML)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mモル/リットル、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71ML)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
(ii)第一工程
第一工程では、内容積0.4mの攪拌装置付き液相重合槽を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。液化プロピレンと液化エチレン、トリイソブチルアルミニウムをそれぞれ90kg/時、4.2kg/時、21.2g/時で連続的に供給した。水素供給量は第一工程のMFRが目標の値となるように調節した。
さらに、上記の予備重合触媒を、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)、6.9g/時となるように供給した。また、重合温度が45℃となるように重合槽を冷却した。
第一工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、BD(嵩密度)は0.46g/cc、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は3.7wt%であった。
(iii)第二工程
第二工程では、内容積0.5mの攪拌式気相重合槽を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。第一工程の液相重合槽より重合体粒子を含んだスラリーを連続的に抜き出し、液化プロピレンをフラッシングした後、窒素で昇圧して気相重合槽へ連続的に供給した。
重合槽は温度が80℃、プロピレンとエチレンと水素の分圧の合計が1.5MPaとなるように制御した。その際にプロピレンとエチレンと水素の分圧の合計に占めるプロピレンとエチレン及び水素の濃度は、それぞれ66.97vol%、32.99vol%、420volppmとなるように制御した。
さらに、活性抑制剤としてエタノールを気相重合槽に供給した。エタノールの供給量は、気相重合槽に供給される重合体粒子に随伴して供給されるTIBA中のアルミニウムに対して、0.3mol/molとなるようにした。
こうして得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体を分析したところ、活性は8.7kg/g−触媒、BDは0.41g/cc、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は8.7wt%であった。
(iv)造粒
上記で得られたブロック共重合体パウダーにブレンダーに下記の酸化防止剤を添加し、充分に撹拌混合した。
酸化防止剤:テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガノックス1010)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、イルガホス168)0.10重量部
添加剤を加えた共重合体パウダーをヘンシェルミキサーにより750rpmで1分間室温で高速混合した後、スクリュー口径30mmの池貝製作所製PCM二軸押出機にて、スクリュー回転数200rpm、吐出量10kg/hr、押出機温度190℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでプロピレン−エチレンブロック共重合体の原料ペレット(PEB−1)を得た。
(製造例6)
(i)第一工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。ポリプロピレン粉体床の存在下、回転数30rpmで攪拌しながら、反応器の上流部に製造例B−1と同様の方法で調整した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.444g/hr、トリイソブチルアルミニウムを15.0mmol/hrで連続的に供給した。反応器の温度を65℃、圧力を2.00MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.058、水素濃度が150ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は10.0kg/hrであった。
第一工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、BD(嵩密度)は0.47g/cc、MFRは9.0g/10分、エチレン含有量は1.7wt%であった。
(ii)第二工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)に、第一工程より抜き出したプロピレン−エチレン共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで攪拌しながら、反応器の温度を70℃、圧力を1.88MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.450、水素濃度が300ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が18.0kg/hrになるように活性抑制剤として酸素を供給し、第二工程での重合反応量を制御した。
こうして得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体を分析したところ、活性は40.5kg/g−触媒、BDは0.48g/cc、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は6.3wt%であった。
得られた重合体パウダーから、製造例5と同様の添加剤配合、造粒条件により、(PEB−2)原料ペレットを得た。
(製造例7〜9)
製造例5と同様にして重合条件を変化させプロピレン−エチレンブロック共重合体を製造した。重合条件及び重合結果を表4に示す。
得られた重合体パウダーから、製造例5と同様の添加剤配合、造粒条件により、(PEB−3〜5)原料ペレットを得た。
(製造例10)
(i)固体触媒成分の調製
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素したn−ヘプタン2,000ミリリットルを導入し、次いでMgClを2.6モル、Ti(O−n−Cを5.2モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を320ミリリットル導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを4,000ミリリットル導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で1.46モル導入した。次いでn−ヘプタン25ミリリットルにSiCl 2.62モルを混合して30℃において30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン25ミリリットルにフタル酸クロライド0.15モルを混合して、70℃において30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでTiCl 11.4molを導入して110℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄して固体成分を得た。この固体成分のチタン含有量は2.0wt%であった。
次いで、撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換し、ここへ、上記と同様に精製したn−ヘプタンを5,000ミリリットル導入して上記で合成した固体成分を100グラム導入し、SiCl 0.875molを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、さらに(CH=CH)Si(CH 0.15mol、(t−C)(CH)Si(OCH 0.075mol及びAl(C 0.4molを順次導入して30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする固体触媒成分を得た。このもののチタン含有量は、1.8wt%であった。
(ii)予備重合
撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。ここへ、上記で調製した固体触媒成分のn−ヘプタンスラリーを固体触媒成分として100g導入し、更にn−ヘプタンを導入して液レベルを5,000ミリリットルに調整した。次に、槽内温度を15℃に調節し、トリエチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液(10wt%)をAl(Cとして0.1mol添加した。その後、プロピレンを50g/時間の速度で2時間供給して予備重合を行った。予備重合終了後、残モノマーをパージし、固体触媒をn−ヘプタンで充分に洗浄した。洗浄終了後、減圧乾燥を行い、予備重合触媒を得た。この予備重合触媒中には、触媒1g当たり2.0gのポリプロピレンが含まれていた。
(iii)重合
こうして得られた予備重合触媒を用い、かつ、トリイソブチルアルミニウムの代わりにトリエチルアルミニウムを10g/時で連続的に供給し、更に、表4に示す重合条件を用いた以外は製造例5と同様にしてプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造を行った。重合結果を表4に示す。
得られた重合体パウダーから、製造例5と同様の添加剤配合、造粒条件により、(PEB−6)原料ペレットを得た。
Figure 2010240933
Figure 2010240933
(3)剥離処理層
剥離処理層樹脂としてポリオレフィン系樹脂を使用した。プロピレン系樹脂として、プロピレン・エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)製、銘柄名;ウィンテックWFW4)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(日本ポリプロ(株)製、銘柄名;ノバテックBC3HF)、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、銘柄名;ノバテックLD LC600A、MFR:7.0g/10分、密度:0.918g/cm、 Mw/Mn:7.9)、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、銘柄名;ノバテックLD LF240、MFR:0.7g/10分、密度:0.924g/cm、Mw/Mn:4.9)低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、銘柄名;ノバテックLD LF441B、MFR:2.0g/10分、密度:0.924g/cm、Mw/Mn:4.4)、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、銘柄名;ノバテックHD HJ560、MFR:7g/10分、密度:0.964g/cm)を用いた。
(実施例1)
基材層として、メタロセン触媒を用いて重合したプロピレン系樹脂のWFW4を、粘着層としてPEB−1を、剥離処理層としてLC600Aを用いた。
剥離剤層の押出機20mmφ、基材層の押出機35mmφ、粘着層の押出機20mmφを有する多層Tダイ成形機を使用して成形温度230℃で剥離処理層厚み20μm、基材層厚み20μm、粘着層厚み10μmの多層Tダイフィルムからなる表面保護フィルムを作製した。得られた表面保護フィルムの評価結果を表6に示す。
(実施例2)
実施例1において用いた基材層樹脂WFW4を、WFX4に、粘着層樹脂PEB−1をPEB−2に代えた以外は実施例1と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例3)
実施例2において用いた基材層樹脂WFX4を、WFW4に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例4)
実施例2において用いた基材層WFX4を、PP−1に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例5)
実施例2において用いた基材層WFX4を、WFX6に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例6)
実施例2において用いた基材層WFX4を、WSX02に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例7)
実施例2において用いた粘着層樹脂PEB−2をPEB−2(50重量%)と水添スチレン系エラストマー(JSR(株)製ダイナロン1320P)(50重量%)のペレット混合物に変えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例8)
実施例3において用いた剥離処理層樹脂LC600Aを、LC600Aを80重量%とHJ560を20重量%の混合組成物に代えた以外は実施例3と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例9)
実施例3において用いた剥離処理層樹脂LC600Aを、BC3HFに代えた以外は実施例3と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例10)
実施例3において用いた剥離処理層樹脂LC600Aを、BC3HFを60重量%とLF240を40重量%の混合組成物に代えた以外は実施例3と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例11)
実施例3において用いた剥離処理層樹脂LC600Aを、WFW4を80重量%とLF441Bを20重量%の混合組成物に代えた以外は実施例3と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例12)
実施例3において用いた剥離処理層樹脂LC600Aを、WFW4を80重量%とHJ560を20重量%の混合組成物に代えた以外は実施例3と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表6に示す。
(比較例1)
実施例2において用いた基材層樹脂WFX4を、FX4Gに代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例2)
実施例2において用いた基材層樹脂WFX4を、FX3Aに代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例3)
実施例2において用いた基材層樹脂WFX4を、FW4Bに代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例4)
実施例2において用いた基材層樹脂WFX4を、FB3Cに代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例5)
実施例2において用いた基材層樹脂WFX4を、PP−2に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例6)
実施例2において用いた基材層樹脂WFX4を、PP−3に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例7)
実施例2において用いた基材層樹脂WFX4を、PP−4に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例8)
実施例2において用いた粘着層樹脂PEB−2を、PEB−3に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例9)
実施例2において用いた粘着層樹脂PEB−2を、PEB−4に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例10)
実施例2において用いた粘着層樹脂PEB−2を、PEB−5に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例11)
実施例2において用いた粘着層樹脂PEB−2を、PEB−6に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例12)
実施例2において用いた粘着層樹脂PEB−2を、WFX4に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例13)
実施例2において用いた剥離処理層樹脂LC600Aを、WFX4に代えた以外は実施例2と同じ方法で製膜し評価を行った。結果を表7に示す。
Figure 2010240933
Figure 2010240933
表6および表7の結果から本発明の表面保護用フィルムは、剛性、表面硬度が優れ、フィッシュアイが少ないことがわかる。特に、粘着層のプロピレン−エチレンブロック共重合体の組成を適宜調整することや、更には粘着性付与剤を適宜配合することにより目的の粘着強度を付与することができ、さらに、繰り出し性に優れ、被粘着体への汚染が無いまたは少ない表面保護用フィルムになることがわかる(実施例1〜12)。一方、基材層としてチーグラー触媒で得られたプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体を用いた場合は、フィッシュアイが多くなる(比較例1〜4)。また、基材層としてメタロセン触媒を用いて得られたMFR、Mw/Mnが本発明の範囲外であるプロピレン・エチレンランダム共重合体を用いた場合は、フィルムが製膜できないか、フィッシュアイが多すぎる(比較例5〜7)。また、粘着層として、MFRや[η]が本発明の範囲外であるプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いるとフィルムが製膜出来ないか、外観が著しく悪化する(比較例9,10)。また、粘着層として、(B1)と(B2)の量比が本発明の範囲外のものは、被着体への耐汚染性が劣ったり、粘着性が発現しないなどの問題を有する(比較例8、12)また、粘着層にメタロセン触媒以外で製造された樹脂を用いると、被着体への耐汚染性やフィッシュアイが劣る(比較例11)。さらに、剥離処理層の表面粗さが本発明の範囲外になると剥離処理層と粘着層間の剥離性が劣り、繰り出し性が悪い(比較例13)。
本発明の表面保護用フィルムは、特定のプロピレン系樹脂を基材層に用い、特定のプロピレン・エチレン共重合体を粘着層に用い、特定の中心面平均粗さ(SRa)の範囲内になるようにポリプロピレン系樹脂および、またはポリエチレン系樹脂を剥離処理層に用いているので、フィルム成形時に未溶融のフィッシュアイが非常に少なく、表面保護フィルムを被保護物に貼付けて段積み保管しても、被保護物に凹みが生じることがなく、かつ、被着体への耐汚染性に優れる。さらにまた、剥離処理層として剥離処理層表面を荒らすことにより、粘着層と剥離処理層の両方が固体状態で接するロール巻状態から、ロールを解くときにはスムースにはがれ、使用時には繰り出し性が向上するという特性を有する表面保護用フィルムとすることができ、合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護のフィルムとして好適に使用することができる。
特開平9−111208号公報 特開昭54−133578号公報 特開2006−282761号公報

Claims (10)

  1. 基材層の一方の面に粘着層が形成され、他方の面に剥離処理層が形成された表面保護用フィルムにおいて、基材層がメタロセン触媒を用いて重合され、かつ下記(a1)〜(a4)の特性を有するプロピレン単独重合体またはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のプロピレン系樹脂(A)で形成され、粘着層がメタロセン触媒を用いて重合され下記(b1)〜(b2)の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)で形成され、剥離処理層が剥離処理層表面の中心面平均粗さ(SRa)が下記の測定条件(c1)〜(c6)において0.2〜1.5μmの範囲内であることを特徴とする表面保護用フィルム。
    (A)プロピレン系樹脂
    (a1)メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜50g/10分
    (a2)示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tmp)が120〜170℃
    (a3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5
    (a4)昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分(S40)が10重量%以下
    (B)プロピレン−エチレンブロック共重合体
    (b1)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)を30〜95重量%、第2工程で成分(B1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)を70〜5重量%逐次重合して得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体
    (b2)メルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg)が1〜30g/10分
    剥離処理層測定条件
    (c1)触針先端曲率半径が5μm
    (c2)カットオフ波長が0.80mm
    (c3)カットオフ種別が2CR(位相補償)
    (c4)測定速度が0.3mm/秒
    (c5)測定方向がフィルムのMD方向
    (c6)測定長さが2mm
  2. プロピレン系樹脂(A)が、さらに下記(a5)の特性を有することを特徴とする請求項1に記載の表面保護用フィルム。
    (a5)昇温溶離分別(TREF)法により20重量%溶出したときの温度(T20)から100重量%溶出終了したときの温度(T100)の幅(T100−T20)が30℃以下
  3. 剥離処理層がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護用フィルム。
  4. プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b3)を満たすことを特徴とする請求項1〜3に記載の表面保護用フィルム。
    (b3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる分子量5,000以下の成分量W(Mw≦5,000)が、全体の0.8重量%以下
  5. プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b4)〜(b5)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面保護用フィルム。
    (b4)第1工程で得られる成分(B1)が、エチレン含量が0.5〜6重量%の範囲にあるプロピレン−エチレンランダム共重合体で、ブロック共重合体の全体における割合が30〜85重量%の範囲にあり、第2工程で得られる成分(B2)が(B1)よりも6〜20重量%多くのエチレン含量で、ブロック共重合体の全体における割合が70〜15重量%の範囲にあること
    (b5)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での温度昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(dWt%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、高温側に観測されるピーク温度T(B1)が55℃〜96℃の範囲にあり、低温側に観測されるピーク温度T(B2)が45℃以下にあり、或いはピーク温度T(B2)が観測されず、プロピレン−エチレンブロック共重合体の99wt%が溶出する温度T(B4)が98℃以下であること
  6. プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b6)〜(b7)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面保護用フィルム。
    (b6)第1工程で得られる成分(B1)が、エチレン含量が1.5〜6重量%の範囲にあるプロピレン−エチレンランダム共重合体で、ブロック共重合体の全体における割合が30〜70重量%の範囲にあり、第2工程で得られる成分(B2)が(B1)よりも8〜15重量%多くのエチレン含量で、ブロック共重合体の全体における割合が70〜30重量%の範囲にあること
    (b7)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での温度昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(dWt%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、高温側に観測されるピーク温度T(B1)が60℃〜88℃の範囲にあり、低温側に観測されるピーク温度T(B2)が40℃以下にあり、或いはピーク温度T(B2)が観測されず、プロピレン−エチレンブロック共重合体の99wt%が溶出する温度T(B4)が90℃以下であること
  7. プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b8)を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面保護用フィルム。
    (b8)23℃キシレン可溶分の135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]cxsが1〜2dl/g
  8. プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が、さらに下記(b9)を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表面保護用フィルム。
    (b9)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する
  9. 合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用に使用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表面保護用フィルム。
  10. 偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護に使用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表面保護用フィルム。
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