以下、本発明の一実施形態である車両用灯具(車両用前照灯)について、図面を参照しながら説明する。図1(a)は自動車等の車両の前部の左右に配置される車両用灯具のうち、左側に配置される車両用灯具10の上面図、図1(b)は正面図、図1(c)は斜視図、図1(d)は側面図である。左側に配置される車両用灯具10と右側に配置される車両用灯具とは、左右対称で実質的に同一の構成である。このため、以下、左側に配置される車両用灯具10を中心に説明し、右側に配置される車両用灯具の説明は省略する。
図1(a)〜図1(d)に示すように、車両用灯具10は、2つのハイビーム用光学モジュール20、2つのロービーム用光学モジュール30A、30Bの合計4つの光学モジュールを備えている。各光学モジュール20、30A、30Bは、灯具正面から見て、斜め右上がりの方向に一列に並んだ状態で配置され(図1(b)参照)、かつ、車両中心寄りのユニットほど車両前方側に配置されている(図1(c)、図1(d)参照)。各光学モジュール20、30A、30Bは、それぞれの発光領域間の距離が15mm以下となるように、ブラケット(図示せず)に固定されている。これにより、各光学モジュール20、30A、30Bの発光領域を全体で一つの発光領域として視認させることができる。
まず、ハイビーム用光学モジュール20について説明する。
図2(a)は、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成されるハイビーム用配光パターンPHiの例である。
各ハイビーム用光学モジュール20は、図2(a)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHi中の複数の照射パターンPb(Pb1〜Pb4)を形成する光学モジュールである。
図3は、ハイビーム用光学モジュール20の分解斜視図である。図4(a)はハイビーム用光学モジュール20の上面図、図4(b)は正面図、図4(c)は斜視図、図4(d)は側面図である。図5(a)は図4(b)に示したハイビーム用光学モジュール20のA−A断面図、図5(b)はB−B断面図である。
図3に示すように、ハイビーム用光学モジュール20は、光源22、光学部材24、光源22と光学部材24とを支持する支持部材26を含み、これらが図4、図5に示すように組み合わされて、いわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の光学モジュール(又は灯具ユニット)を構成している。
図6(a)は支持部材26の上面図、図6(b)は正面図、図6(c)は斜視図、図6(d)は側面図である。
支持部材26は、アルミダイカスト等の金属製で、図6(a)〜図6(d)に示すように、矩形板状のベース部26a、ベース部26aの前面の四隅にそれぞれ配置され、光学部材24が当接する台座部26b、ベース部26aの前面のうち左右方向の略中央に配置され、光源22が固定される台座部26c、ベース部26aの左右両端部に配置され、光学部材24の脚部30の係止穴30aに係合する爪部26d、ベース部26aの後面に水平方向に間隔をおいて配置される複数の放熱フィン26g等を備えている。
ベース部26aの前面は、四隅から前方に一段高く突出した、光学部材24が当接する台座部26b、左右方向の略中央部から前方に一段高く突出した、光源22が固定される台座部26c、台座部26cの左右両側に配置された第1領域26e、第2領域26fを含んでいる。
下側の2つの台座部26bの先端面は、位置決めピン26b1を含んでいる。位置決めピン26b1は、光学部材24に形成された位置決め穴28dに挿入されるピンで、光学部材24を支持部材26に対して位置決めするために用いられる。
台座部26cは、ベース部26aの下端縁からベース部26aの上端縁より所定距離h下方の位置まで延びている(図5(b)、図6(b)参照)。台座部26cの先端面は、位置決めピン26c1、ネジ穴26c2、熱伝導部材用溝部26c3を含んでいる。位置決めピン26c1は、光源22(基板22aの裏面)に形成された位置決め穴(図示せず)に挿入されるピンで、光源22を支持部材26に対して位置決めするために用いられる。
図7は、光源22の正面図である。
図3、図7に示すように、光源22は、水平方向に配置され、個別に点消灯制御される複数の発光部22b(22b1〜22b4)を含んでいる。
発光部22b(22b1〜22b4)は、例えば、発光色が青系のLEDとこれを覆う黄色系の蛍光体(例えば、YAG蛍光体)とを組み合わせた構造の半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面を含む発光ダイオード)で、金属製の基板22aの表面に所定間隔をおいて水平方向に一列に実装されて、横長矩形の発光面(発光部)を構成している。光源22(発光部22b(22b1〜22b4))から放出される光の指向特性は略ランバーシアンになる。
発光部22b(22b1〜22b4)は、上記に限られず、RGB三色のLED(又はレーザーダイオード)を組み合わせた構造の半導体発光素子であってもよいし、その他構造の半導体発光素子であってもよい。また、発光部22bの個数は4つに限られず、2、3又は5以上であってもよい。
光源22は、支持部材26の台座部26cに支持されて、光学部材24と支持部材26との間に配置されている。具体的には、光源22は、基板22aの裏面に形成された位置決め穴(図示せず)に支持部材26の位置決めピン26c1を挿入することで、支持部材26に対して位置決めされている。そして、光源22は、図5(b)に示すように、基板22aに形成された貫通穴22a1に挿入されたネジN1が、支持部材26(台座部26c)のネジ穴26c2に螺合することで、支持部材26(台座部26c)に固定されている。
光源22(基板22aの裏面)と支持部材26(台座部26cの先端面に形成された熱伝導部材用溝部26c3)との間には、光源22と支持部材26との間の伝熱性を高める観点から、熱伝導グリス(サーマルグリス)、熱伝導シート等の熱伝導性部材(図示せず)が配置されている。これにより、光源22(発光部22b(22b1〜22b4))で発生する熱の放熱経路(すなわち、基板22a→熱伝導性部材→台座部26c→ベース部26a→放熱フィン26g)が構成されている。
なお、発光部22b(22b1〜22b4)の駆動電流は、基板22aの下端部に装着されるカプラ(図示せず)から基板22a上の配線パターン(図示せず)を介して供給されるように構成されている。
図8(a)は光学部材24の上面図、図8(b)は正面図、図8(c)は背面図、図8(d)は斜視図、図8(e)は側面図である。
光学部材24は、アクリルやポリカーボネイト等の透明樹脂製で、図8(a)〜図8(e)に示すように、光学部材本体28、光学部材本体28の左右両側から支持部材26に向かって延びる一対の脚部30等を含んでいる。光学部材24は、例えば、射出成形により一体成形されている。
光学部材24(光学部材本体28)は、光源22の前方に配置され、発光部22b(22b1〜22b4)の光源像を前方に投影して、発光部22b(22b1〜22b4)が個別に点消灯されることで個別に点消灯される照射パターンPb(Pb1〜Pb4)を形成するように構成されている。具体的には次のように構成されている。
図5(a)等に示すように、光学部材24(光学部材本体28)は、一対のレンズ部(第1後面28c1、第1前面28b1、一方の入光面28aを含むレンズ部28A、第2後面28c2、第2前面28b2、他方の入光面28aを含むレンズ部28B)、入光面28a側の光学設計上の基準点Fを含む透光部材(レンズ体)として構成されている。一対のレンズ部28A、28Bは、水平方向に隣接した状態で配置されている。
図9は、光学部材24(レンズ部28A、28B)に入光した光源22からの光の光路を説明するための図である。
光学部材24(レンズ部28A、28B)は、図9に示すように、入光面28aから光学部材24(レンズ部28A、28B)内部に入光し、前面28b(第1前面28b1及び第2前面28b2)の少なくとも一部で反射され、さらに、後面28c(第1後面28c1及び第2後面28c2)の少なくとも一部で反射された後、前面28b(第1前面28b1及び第2前面28b2)を構成する複数の領域(図10(a)〜図10(b)に示すレンズ上部、レンズ中央部、レンズ下部参照)それぞれから出射する光源22からの光による発光部22b(22b1〜22b4)の光源像が回転することなく前方に投影されて、図10(d)に示す照射パターン、図10(e)に示す照射パターン、図10(f)に示す照射パターン及びこれらが重畳された図11に示す照射パターンPb(Pb1〜Pb4)を形成するように構成されている。
図8(b)、図8(d)に示すように、光学部材本体28の前面28bは、第1後面28c1の前方に配置された第1前面28b1と、第2後面28c2の前方に配置された第2前面28b2と、第1前面28b1と第2前面28b2との間の中間領域28b3を含んでいる。
第1前面28b1及び第2前面28b2は、入光面28aから入光する光源22からの光の入射角が臨界角を超える領域で、入光面28aから入光する光源22からの光を後面28c(第1後面28c1及び第2後面28c2)に向けて全反射するとともに、後面28c(第1後面28c1及び第2後面28c2)からの反射光が出射する領域である。
中間領域28b3は、入光面28aから入光する光源22からの光の入射角が臨界角未満となる領域で、当該入光面28aから入光する臨界角未満の光を後面28c(第1後面28c1及び第2後面28c2)に向けて反射する領域である。入光面28aから入光する臨界角未満の光を後面28cに向けて反射するため、中間領域28b3には、アルミ蒸着等による鏡面処理が施されて反射膜が形成されている(図8(b)、図8(d)中のハッチング領域参照)。
図5(a)、図8(c)に示すように、光学部材本体28の後面28cは、支持部材26の台座部26cが対向する箇所に形成された矩形溝部28c3と、矩形溝部28c3の底面に形成された入光面28aを含むV溝部28c4と、矩形溝部28c3(V溝部28c4)の両側に配置された第1後面28c1、第2後面28c2と、を含んでいる。
第1後面28c1及び第2後面28c2は、前面28bからの反射光を前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)に向けて反射し、前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)から出射させる領域である。前面28bからの反射光を前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)に向けて反射し、前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)から出射させるため、第1後面28c1及び第2後面28c2には、アルミ蒸着等による鏡面処理が施されて反射膜が形成されている(図8(c)中のハッチング領域参照)。
矩形溝部28c3は、支持部材26の台座部26cの先端部が挿入される溝部で、光学部材本体28の後面28cのうち支持部材26の台座部26cが対向する箇所において上下方向に延びた状態で形成されている。
V溝部28c4は、矩形溝部28c3の底面において上下方向に延びた状態で形成されている。V溝部28c4を構成する左右の面(図8(c)参照)は、一対の入光面28aとして用いられる。なお、V溝部28c4を構成する左右の面(一対の入光面28a)は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
光学部材24(光学部材本体28)の基準点Fは、V溝部28c4内に位置していてもよいし、V溝部28c4外に位置していてもよい。本実施形態では、光学部材24への入光効率を高める観点から、光学部材24(光学部材本体28)の基準点Fは、V溝部28c4内に位置している(図5(a)参照)。
光学部材24(レンズ部28A、28B)の後面28c(第1後面28c1、第2後面28c2)及び前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)のうちの少なくとも一方は、発光部22b(22b1〜22b4)の光源像の鉛直方向の拡散の程度が複数の領域(図10(a)〜図10(c)に示すレンズ上部、レンズ中央部、レンズ下部参照)間で異なるように、その面形状が設計されている。
例えば、光学部材24(レンズ部28A、28B)の後面28c(第1後面28c1、第2後面28c2)及び前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)のうちの少なくとも一方は、複数の領域(図10(a)〜図10(c)に示すレンズ上部、レンズ中央部、レンズ下部参照)のうちレンズ中央部から出射する相対強度が強い光による発光部22b(22b1〜22b4)の光源像の鉛直方向の拡散の程度(図10(e)参照)がレンズ上部、レンズ下部から出射する相対強度が弱い光による発光部22b(22b1〜22b4)の光源像の鉛直方向の拡散の程度(図10(d)、図10(f)参照)より小さくなるように、その面形状が設計されている。
これにより、照射パターンPb(Pb1〜Pb4)を、周囲より光度が高い部分(高照度帯。図10(e)参照)を含むハイビーム用配光パターンに適した光度分布の照射パターンとすることができる。
これは、上記のように各面形状が形成されている結果、相対強度が強い光による発光部22b(22b1〜22b4)の光源像の鉛直方向の拡散の程度が相対強度が弱い光による発光部22b(22b1〜22b4)の光源像の鉛直方向の拡散の程度より小さくなることによるものである。
また、光学部材24(レンズ部28A、28B)の後面28c(第1後面28c1、第2後面28c2)及び前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)のうちの少なくとも一方は、発光部22b(22b1〜22b4)の光源像のうち相対強度が強い光による光源像ほど、水平線H寄りに投影されるように、その面形状が設計されている。
これにより、照射パターンPb(Pb1〜Pb4)を、周囲より水平線H寄りの光度が高い部分(高照度帯。図10(e)参照)を含むハイビーム用配光パターンに適した光度分布の照射パターンとすることができる。
これは、上記のように各面形状が形成されている結果、相対強度が強い光による光源像(図10(e)参照)ほど、水平線H寄りに投影されることによるものである。
また、照射パターンPb(Pb1〜Pb4)を、光源間の明暗差を保ちつつ鉛直方向になだらかで自然に光度分布が変化する照射パターンとすることができる。
これは、上記のように各面形状が形成されている結果、相対強度が強い光による光源像(図10(e)参照)ほど、鉛直方向の拡散の程度が小さく、かつ、水平線H寄りに投影されることによるものである。
また、光学部材24(レンズ部28A、28B)の後面28c(第1後面28c1、第2後面28c2)及び前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)のうちの少なくとも一方は、発光部22b(22b1〜22b4)の光源像それぞれの水平方向の拡散の程度が略同一となりかつ水平方向の両端縁が一致する(図10(d)〜図10(f)参照)ように、その面形状が設計されている。
以上のように光学部材24(レンズ部28A、28B)の後面28c(第1後面28c1、第2後面28c2)及び前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)のうちの少なくとも一方の面形状を設計する手法については、例えば、米国特許第7460985号に詳しく記載されている。
この手法について簡単に説明すると次のとおりである。
図12(a)における、光源の両端に相当する点p33とそれと垂直な方向の端点p34を光学的な設計の基準点として3次元同時多重面(SMS−3D)法によって制御される。図12(b)は、3次元同時多重面(SMS−3D)法によって光源像を制御し、ロービーム用配光パターンを形成した例である。
SMS―3D法を用いて後面28c(第1後面28c1、第2後面28c2)及び前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)を設計することで、発光部22b(22b1〜22b4)の光源像が回転しない光学部材24(レンズ部28A、28B)を実現することができる。これに対して、リフレクタ、凸レンズ等の単一面設計では光源像が回転してしまう。
具体的には、米国特許第7460985号のコラム40〜42及びFig.42、46に記載されているパラメータφm(y),φM(y),θm(x),θM(x)を調整することにより、図10(d)〜図10(f)に示すように、レンズ部位ごとの配光を形成することが可能となる。図10(d)〜図10(f)の場合、φm(y) ,φM(y)の値をyが0に近いときはほかの位置と比べ小さくし、θm(x), θM(x)はxの値によらずほぼ一定とすることで、図10(d)〜図10(f)に示す配光が得られる。
上記構成の光学部材24(レンズ部28A、28B)によれば、図10(b)に示すレンズ中央部から出射する相対強度が強い光による発光部22b(22b1〜22b4)の光源像は、水平線H寄り(本実施形態では水平線H上)に投影されて、図10(e)に示す複数の照射パターンを形成する。
また、図10(a)、図10(c)に示すレンズ上部、レンズ下部から出射する相対強度が弱い光による発光部22b(22b1〜22b4)の光源像は、レンズ中央部から出射する相対強度が強い光による発光部22b(22b1〜22b4)の光源像より上方に投影されて、図10(d)、図10(f)に示す複数の照射パターンを形成する。
図10(d)〜図10(f)に示す照射パターンは重畳されて図11に示す照射パターンPb(Pb1〜Pb4)を形成する。
その結果、図11に示す照射パターンPb(Pb1〜Pb4)は、水平線H寄りの光度が周囲より高い遠方視認性に優れたハイビーム用配光パターンに適した光度分布の照射パターンとなる。
図11に示す照射パターンPb(Pb1〜Pb4)によれば、上方の看板等を照明することもできる。
また、上記構成の光学部材24(レンズ部28A、28B)によれば、光源22から前方へ向かう光を折り返して(二回反射して)制御する構成であるため、求められる大きさの光源像を従来の投影レンズに比べ奥行きが薄型の光学部材24(レンズ部28A、28B)で実現することができる。
さらに、上記構成の光学部材24(レンズ部28A、28B)によれば、光源22(発光部22b(22b1〜22b4)の発光面)を光軸方向(前方)に向け、光源22からの光を水平方向(又は鉛直方向)に分割し、各々の光学面で光を制御、取り込むことにより、光利用効率を向上させることができる。
次に、光学部材24(光学部材本体28)を、水平方向に隣接した状態で配置された一対のレンズ部28A、28Bで構成することの利点について説明する。
図13(a)はレンズ部28Aのみの横断面図、図13(b)はレンズ部28Aから出射して前方に照射される光源22からの光による発光部22b(22b1〜22b4)により形成される照射パターンの例、図13(c)は図13(b)に示す照射パターンの、水平線H上の光度分布を表すグラフである。
図13(a)に示すように、光学部材24(光学部材本体28)が片側のレンズ部(例えばレンズ部28A)のみで構成されている場合、一方の入光面28aから光学部材24(例えばレンズ部28A)内部に入光し、前面28b(例えば第1前面28b1)の少なくとも一部で反射され、さらに、後面28c(例えば第1後面28c1)の少なくとも一部で反射された後、前面28b(例えば第1前面28b1)を構成する複数の領域(図10(a)〜図10(b)に示すレンズ上部、レンズ中央部、レンズ下部参照)それぞれから出射して前方に照射される光源22からの光による発光部22b(22b1〜22b4)の光源像により形成される照射パターンPb(Pb1〜Pb4)は、図13(b)、図13(c)に示すように、水平方向の一端縁側から他端縁側に向かうに従って徐々に暗い照射パターンとなる。
これは、光源22(発光部22b(22b1〜22b4))から放出される光の指向特性が略ランバーシアンであるため、例えば、図13(a)に示すように、一方の入光面28aのうち、光源22の光軸AX22近傍の位置p1から入光する光が相対的に明るく、光源22の光軸AX22から遠い位置p2から入光する光が相対的に暗いことによるものである。
この明るさの不均一は、図14(a)に示すように、一方のレンズ部28A(を構成する入光面28a、第1前面28b1、第1後面28c1)と他方のレンズ部28B(を構成する入光面28a、第2前面28b2、第2後面28c2)とを、両者の間の鉛直線に対して左右対称に構成することで改善される。
図14(a)はレンズ部28A、28Bの横断面図、図14(b)はレンズ部28Aから出射して前方に照射される光源22からの光による発光部22b(22b1〜22b4)により形成される照射パターンと、レンズ部28Bから出射して前方に照射される光源22からの光による発光部22b(22b1〜22b4)により形成される照射パターンと、を重畳させることで形成された照射パターンPb(Pb1〜Pb4)の例、図14(c)は図14(b)に示す照射パターンの、水平線H上の光度分布を表すグラフである。
図14(c)を参照すると、図14(b)に示す照射パターンPb(Pb1〜Pb4)は、水平方向の一端縁側と他端縁側との間の明るさが略均一の照射パターンとなることが分かる。
光学部材24は、支持部材26に支持されて、光源22の前方に配置されている。具体的には、光学部材24は、光学部材24に形成された位置決め穴28dに支持部材26の位置決めピン26b1を挿入し、かつ、光学部材24の矩形溝部28c3に光源22が固定された支持部材26の台座部26cの先端部を挿入することで、支持部材26に対して位置決めされている。そして、光学部材24は、脚部30の係止穴30aに支持部材26のベース部26aの爪部26dが係合することで、支持部材26に固定されている(図4(c)、図5(a)参照)。光源22(横長矩形の発光面)は、光学部材24(光学部材本体28)の基準点F(又はその近傍)に位置している。なお、光学部材24と支持部材26とは、上記フック構造に代えて、ネジで固定してもよい。
図5(a)、図5(b)に示すように、光学部材24は、V溝部28c4と支持部材26の台座部26cとの間に、空気が対流する空間としての筒部S1(上下方向に貫通している)が構成された状態で、支持部材26に固定されている。そして、光源22は、筒部S1内に配置された状態で支持部材26の台座部26c(先端面)に固定されている。
図5(b)に示すように、光学部材本体28の上端部は、上方に向かうに従って支持部材26のベース部26a側へ近づくように延びて、光学部材本体28の上端部とベース部26aの上端部との間に筒部S1が連続する空間S2を構成するとともに、前方斜め上方から筒部S1の上端開口が視認されないように、筒部S1の上端開口を覆っている。
図5(a)に示すように、光学部材24の後面(第1後面28c1及び第2後面28c2)とベース部26aの前面(第1領域26e及び第2領域26f)との間には、空気が対流する空間S3、S4が構成されている。
上記構成のハイビーム用光学モジュール20においては、光源22(発光部22b(22b1〜22b4))で発生する熱は、空気が対流する空間としての筒部S1及びこれに連続する空間S2において空気が上下方向に対流する(煙突効果)ことで、効率よく放熱される。なお、筒部S1における空気の対流特性を高める観点から、V溝部28c4を構成する左右の面(一対の入光面28a)は、平面(例えば、鉛直面)であるのが望ましい。
また、光源22(発光部22b(22b1〜22b4))で発生する熱(特に、光源22で発生し、光学部材24へ伝わる熱)は、空気が対流する空間S3、S4において空気が上下方向に対流することで、「さらに」効率よく放熱される。
また、上記構成のハイビーム用光学モジュール20においては、光源22(発光部22b(22b1〜22b4))で発生する熱は、基板22a→熱伝導性部材→台座部26c→ベース部26a→放熱フィン26gの経路を経て、放熱フィン26gから周辺空気へ放出される。その際、図4(c)に示すように、複数の放熱フィン26gは支持部材26のベース部26aの後面に水平方向に間隔をおいて配置されている(すなわち、複数の放熱フィン26gは、筒部S1が開口している方向(図4(c)中上下方向)と平行の方向へ延伸している)ため、光源22(発光部22b(22b1〜22b4))で発生する熱は、複数の放熱フィン26g間の空間において空気が上下方向に対流することで、「さらに」効率よく放熱される。
次に、ロービーム用光学モジュール30Aについて説明する。
図2(b)は、仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLoの例である。
ロービーム用光学モジュール30Aは、ロービーム用配光パターンPLo中の集光領域P2(図2(b)参照)を形成する光学モジュールである。
ロービーム用光学モジュール30Aは、ハイビーム用光学モジュール20と同様、光源22、光学部材24、光源22と光学部材24とを支持する支持部材26を含み、これらが図4、図5に示すように組み合わされて、いわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の光学モジュール(又は灯具ユニット)を構成している。
一方、ロービーム用光学モジュール30Aは、ハイビーム用光学モジュール20と比べ、光学部材本体28の入光面28a、前面28b及び後面28c(第1後面28c1及び第2後面28c2)のうち少なくとも一つが、入光面28aから光学部材本体28内部に入光し、前面28b及び後面28c(第1後面28c1及び第2後面28c2)で反射された後に、前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)から出射して前方に照射される光源22からの光(半導体発光素子の光源像)が、仮想鉛直スクリーン上に、ロービーム用配光パターンPLo中の集光領域P2(図2(b)参照)を形成するように、その面形状が設計されている点で異なっている。
次に、ロービーム用光学モジュール30Bについて説明する。
ロービーム用光学モジュール30Bは、ロービーム用配光パターンPLo中の拡散領域P3(図2(b)参照)を形成する光学モジュールである。
ロービーム用光学モジュール30Bは、ハイビーム用光学モジュール20と同様、光源22、光学部材24、光源22と光学部材24とを支持する支持部材26を含み、これらが図4、図5に示すように組み合わされて、いわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の光学モジュール(又は光学モジュール)を構成している。
一方、ロービーム用光学モジュール30Bは、ハイビーム用光学モジュール20と比べ、光学部材本体28の入光面28a、前面28b及び後面28c(第1後面28c1及び第2後面28c2)のうち少なくとも一つが、入光面28aから光学部材本体28内部に入光し、前面28b及び後面28c(第1後面28c1及び第2後面28c2)で反射された後に、前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)から出射して前方に照射される光源22からの光(半導体発光素子の光源像)が、仮想鉛直スクリーン上に、ロービーム用配光パターンPLo中の拡散領域P3(図2(b)参照)を形成するように、その面形状が設計されている点で異なっている。
次に、各光学モジュール20、30A、30Bの動作例(ハイビーム用配光パターンPHi又はロービーム用配光パターンPLoに切り換える動作例)について説明する。
ハイビーム用配光パターンPHi又はロービーム用配光パターンPLoの切り換えは、各光学モジュール20、30A、30B(それぞれの光源22)が電気的に接続されたECU等の制御回路(図示せず)によって行われる。
制御回路は、各光学モジュール20、30A、30B(それぞれの光源22)の点灯状態(点灯又は消灯)を個別に制御することで、ハイビーム用配光パターンPHi又はロービーム用配光パターンPLoに切り換える。
例えば、ハイビーム用配光パターンPHiを形成する場合(後述のADBの場合も同様)、制御回路は、図15(c)に示すように、各光学モジュール20、30A、30B(それぞれの光源22)が点灯するように、各光学モジュール20、30A、30B(それぞれの光源22)を制御する。図15(c)中、ハッチングされていない白色の領域は、各光学モジュール20、30A、30B(それぞれの光源22)が点灯されて発光している発光領域を表している。
以上のように、各光学モジュール20、30A、30B(それぞれの光源22)が点灯することで、図2(a)に示すように、2つのハイビーム用光学モジュール20により形成されるハイビーム用配光パターンPHi中の照射パターンPb(Pb1〜Pb4)と、ロービーム用光学モジュール30Aにより形成される集光領域P2と、ロービーム用光学モジュール30Bにより形成される拡散領域P3とが重畳されたハイビーム用配光パターンPHiが形成される。
一方、ロービーム用配光パターンPLoを形成する場合、制御回路は、図15(b)に示すように、光学モジュール20(光源22)が消灯し、光学モジュール30A、30B(それぞれの光源22)が点灯するように、各光学モジュール20、30A、30B(それぞれの光源22)を制御する。図15(b)中、ハッチングされていない白色の領域は、光学モジュール30A、30B(それぞれの光源22)が点灯されて発光している発光領域を表している。
以上のように、光学モジュール20(光源22)が消灯し、光学モジュール30A、30B(それぞれの光源22)が点灯することで、図2(b)に示すように、ロービーム用光学モジュール30Aにより形成される集光領域P2と、ロービーム用光学モジュール30Bにより形成される拡散領域P3とが重畳されたロービーム用配光パターンPLoが形成される。
次に、各ハイビーム用光学モジュール20を、自車両前方の物体の検出結果に基づいて、配光を変化させることができる配光可変型の車両用灯具(ADB:Adaptive Driving Beam)として機能させるためのシステム構成例について説明する。
図16は、各ハイビーム用光学モジュール20を、配光可変型の車両用灯具として機能させるためのシステム構成例である。
図16に示すように、このシステムは、CPUやRAM等を含んで構成されるECU等の制御手段40を備えている。制御手段40には、CCD等の固体撮像素子を使用したCCDカメラ等の、自車両前方の物体を検知する検知手段42、各ハイビーム用光学モジュール20の発光部22b(22b1〜22b4)等が電気的に接続されている。
制御手段40は、所定プログラムを実行することで、発光部22b(22b1〜22b4)を個別に点消灯制御する手段として機能する。
例えば、制御手段40は、検知手段42の検知結果に基づいて、発光部22b(22b1〜22b4)からの光の照射エリア(すなわち照射パターンPb1〜Pb4)内に照射禁止対象(例えば対向車又は歩行者)が存在しているか否かを判定し、照射禁止対象が存在していると判定した場合、その照射禁止対象が存在する照射エリアを照射する発光部22b(22b1〜22b4)を消灯する等の制御を行う。なお、自車両前方の物体を検知する検知手段、検知手段の検知結果に基づいて、複数の発光部を個別に点消灯制御する制御手段については、例えば、特開2008−37240号公報等に詳しく説明されている。
図17(a)〜図17(h)は、配光可変型の車両用灯具としてのハイビーム用光学モジュール20の動作を説明するための図である。
例えば、制御手段40は、自車両の前方に照射禁止対象(例えば対向車又は歩行者)を検知しない場合、図17(a)に示すように、発光部22b(22b1〜22b4)を全て点灯するように制御する。この場合、図17(e)に示すように、点灯された全ての発光部22b(22b1〜22b4)に対応する照射パターンPb1〜Pb4が形成される。
一方、制御手段40は、自車両の遠方に照射禁止対象(例えば対向車又は歩行者)を検知した場合、図17(b)に示すように、照射禁止対象が存在する照射エリアを照射する発光部(例えば発光部22b2、22b3)を消灯し、それ以外の発光部(例えば発光部22b1、22b4)を点灯するように制御する。この場合、図17(f)に示すように、点灯された発光部(例えば発光部22b1、22b4)に対応する照射パターンPb1、Pb4のみが形成される。
一方、制御手段40は、自車両の前方中距離の位置に照射禁止対象(例えば対向車又は歩行者)を検知した場合、図17(c)に示すように、照射禁止対象が存在する照射エリアを照射する発光部(例えば発光部22b2〜22b4)を消灯し、それ以外の発光部(例えば発光部22b1)を点灯するように制御する。この場合、図17(g)に示すように、点灯された発光部(例えば発光部22b1)に対応する照射パターンPb1のみが形成される。
一方、制御手段40は、自車両の前方近距離の位置に照射禁止対象(例えば対向車又は歩行者)を検知した場合、図17(d)に示すように、照射禁止対象が存在する照射エリアを照射する発光部(例えば発光部22b3、22b4)を消灯し、それ以外の発光部(例えば発光部22b1、22b2)を点灯するように制御する。この場合、図17(h)に示すように、点灯された発光部(例えば、発光部22b1、22b2)に対応する照射パターンPb1、Pb2のみが形成される。
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具10を構成する各ハイビーム用光学モジュール20によれば、個別に点消灯制御される発光部22b(22b1〜22b4)を含む光源22と、発光部22b(22b1〜22b4)の光源像を前方に投影して、発光部22b(22b1〜22b4)が個別に点消灯されることで個別に点消灯される照射パターンPb1〜Pb4を形成するように構成された光学部材24(光学部材本体28)とを組み合わせた構造の車両用灯具において、発光部22b(22b1〜22b4)が個別に点消灯されることで個別に点消灯され、かつ、ハイビーム用配光パターンに適した光度分布の照射パターンPb1〜Pb4を形成することができる。
これは、発光部22b(22b1〜22b4)の光源像の鉛直方向の拡散の程度が複数の領域(図10(a)〜図10(c)に示すレンズ上部、レンズ中央部、レンズ下部参照)間で異なるように、光学部材24(レンズ部28A、28B)の後面28c(第1後面28c1、第2後面28c2)及び前面28b(第1前面28b1、第2前面28b2)のうちの少なくとも一方の面形状が設計されていることによるものである。
また、本実施形態の車両用灯具10を構成する各光学モジュール20、30A、30Bによれば、V溝部28c4と台座部26cとの間に空気が上下方向に対流する空間としての筒部S1(及びこれに連続する空間S2)が構成され、当該筒部S1(及びこれに連続する空間S2)において空気が上下方向に対流することで、光源22で発生する熱が効率よく放熱される結果、発光部22b(22b1〜22b4)を含む光源22と光学部材24とを組み合わせた構造の車両用灯具10において、光源22の熱の影響により光学部材24が黄変及び/又は変形するのを抑制することができる。
また、本実施形態の車両用灯具10を構成する各光学モジュール20、30A、30Bによれば、光学部材24の第1後面28c1及び第2後面28c2とベース部26aの前面の第1領域26e及び第2領域26fとの間に空気が上下方向に対流する空間S3、S4が構成され、当該空間S3、S4において空気が上下方向に対流することで、光源22で発生する熱(特に、光源22で発生し、光学部材24へ伝わる熱)が「さらに」効率よく放熱される結果、発光部22b(22b1〜22b4)を含む光源22と光学部材24とを組み合わせた構造の車両用灯具10において、光源22の熱の影響により光学部材24が黄変及び/又は変形するのを「さらに」抑制することができる。
また、本実施形態の車両用灯具10を構成する各光学モジュール20、30A、30Bによれば、複数の放熱フィン26gが、筒部S1が開口している方向と平行の方向へ延伸して、複数の放熱フィン26g間に空気が上下方向に対流する空間が構成され、当該空間において空気が上下方向に対流することで、光源22で発生する熱が「さらに」効率よく放熱される結果、発光部22b(22b1〜22b4)を含む光源22と光学部材24とを組み合わせた構造の車両用灯具10において、光源22の熱の影響により光学部材24が黄変及び/又は変形するのを「さらに」抑制することができる。
次に、変形例について説明する。
上記実施形態では、一対のレンズ部28A、24Bを、図5(a)等に示すように、水平方向に隣接した状態で配置した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、一対のレンズ部28A、24Bを、鉛直方向に隣接した状態で配置してもよい。
また、上記実施形態では、一対のレンズ部28A、24Bを用いてハイビーム用光学モジュール20を構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図18に示すように、鉛直方向に隣接した状態で配置された一対のレンズ部28A、24Bのうち下側のレンズ部(例えばレンズ部28A)のみを用いてハイビーム用光学モジュール20を構成してもよい。
この場合、下側のレンズ部(例えばレンズ部28A)への入光効率が高くなるように、光源22(発光部22b(22b1〜22b4)の発光面)を斜め前方下向きに向けるのが望ましい(図18参照)。
また、上記実施形態では、複数の領域がレンズ上部、レンズ中央部、レンズ下部(図10(a)〜図10(b)参照)の3つである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、複数の領域は、レンズ上部、レンズ中央部、レンズ下部以外の部分を含んでいてもよい。あるいは、レンズ上部、レンズ中央部、レンズ下部の少なくとも一つをさらに細かい部分に分けてもよい。
これにより、照射パターンPb(Pb1〜Pb4)を、光源間の明暗差を保ちつつ鉛直方向に「さらに」なだらかで自然に光度分布が変化する照射パターンとすることができる。
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。