JP2015059090A - イネ科植物用の細菌病防除剤および防除方法並びに該防除剤をコートした種子 - Google Patents

イネ科植物用の細菌病防除剤および防除方法並びに該防除剤をコートした種子 Download PDF

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Abstract

【課題】イネ科植物の育苗期や出穂期に発生するイネ苗立枯細菌病、イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)、イネもみ枯細菌病(もみ枯症)等の細菌病害の防除に有効であり、かつ、環境負荷の少ない微生物防除剤に関する技術を提供する。
【解決手段】非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液、培養上清液又は菌体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、イネ苗立枯細菌病、イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)又はイネもみ枯細菌病(もみ枯症)からなる群から選択される少なくとも1種のイネ科植物の細菌病害を防除するための細菌病防除剤、該細菌病防除剤を種子又は穂に付着させる防除処理工程を有するイネ科植物の細菌病害の防除方法、該細菌病防除剤をコートしたイネ科植物の種子により解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、パントエア アナナティス細菌を用いたイネ科植物の細菌病害の防除に有効な細菌病防除剤およびイネ科植物の細菌病害の防除方法並びに該防除剤をコートしたイネ科植物の種子に関する。
近代農業では、効率的に食糧を確保するため、いわゆる化学農薬を中心とした病害虫防除技術が発達してきた。しかしながら、化学農薬を長年にわたり過度に使用した結果、生態系の乱れ、残留農薬による食品の安全性、化学農薬を使用する農業者の健康被害、などの問題がクローズアップされ、安心・安全という観点から、毒性や残留性の低い農薬への転換が求められ、そこからさらに減農薬、無農薬への取り組みが求められつつある。
こうした流れの中、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した環境保全型農業に適合した病害虫防除技術(例えば微生物防除剤)が注目されている。「微生物防除剤」とは、自然界に生息する「病原菌から植物を守る微生物」や「害虫から植物を守る微生物」を活用して作物を病害虫などの被害から守る製剤のことであり、作物、人間や環境に対する負荷が少なく、食の安全・安心確保に大きく貢献するものと期待されている。
このような背景から、本発明者らは、微生物による病害虫の防除技術として、ハーバスピリラム(Herbaspirillum)属細菌を用いたイネ科植物の細菌病害の防除に有効な細菌病防除剤などに関する技術を開示した(特許文献1)。
一方、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌(旧名称:エルビニア アナナス(Erwinia ananas))を用いたイネ内穎褐変病の防除に関する技術が知られている(特許文献2)。
特開2012−92093号公報 特開2008−245621号公報
しかしながら、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌によるイネ内穎褐変病以外のイネ科植物の細菌病害に対する防除効果については全く知られていない。
本発明の目的は、イネ科植物の育苗期や出穂期に発生する様々な細菌病害に有効であり、かつ、環境負荷の少ないパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌を用いた微生物防除剤に関する技術を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌がイネ科植物の育苗期や出穂期に発生するイネ苗立枯細菌病、イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)、イネもみ枯細菌病(もみ枯症)等の細菌病害を効果的に防除できるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液、培養上清液又は菌体懸濁液からなる群から選択される少なくとも1種を含む、イネ苗立枯細菌病、イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)又はイネもみ枯細菌病(もみ枯症)からなる群から選択される少なくとも1種のイネ科植物の細菌病害を防除するための細菌病防除剤を提供するものである。
また、本発明は、上記細菌病防除剤をイネ科植物の種子又は穂に付着させる防除処理工程を有するイネ科植物の細菌病害の防除方法を提供するものである。
さらに、本発明は、上記細菌病防除剤をイネ科植物の種子にコートした種子を提供するものである。
さらにまた、本発明は、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株(寄託番号:MAFF311647)及びR32株(寄託番号:MAFF311648)を提供するものである。
本発明の細菌病防除剤および細菌病害の防除方法によれば、イネ科植物の育苗期における細菌病害であるイネ苗立枯細菌病及びイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)や、出穂期におけるイネもみ枯細菌病(もみ枯症)等の発病が効果的に抑制され、イネ科植物の育苗期や出穂期に発生する様々な細菌病害に高い防除効果が得られる。
また、本実施形態の種子によれば、イネ科植物の細菌病害の防除に有効な細菌病防除剤をイネ科植物の種子にコートしているため、イネ苗立枯細菌病又はイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)等に対して抵抗力を有し、育苗中の細菌病害の発病を抑制することができる。また、細菌病防除剤をコートした後は、その後も効果が持続するため、種子のまま流通させることができる。
パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌は、イネ科植物等から分離される細菌であり、当該細菌には、病原性を示す病原性菌株と病原性を示さない非病原性菌株の2種類が存在することが知られているが、本実施形態においては、非病原性のパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株を用いるため、イネ科植物の生育に悪影響を与えず、また、環境を汚染することなく、環境に配慮した環境保全型農業におけるイネ科植物の安定生産に貢献できる。
各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液、培養上清液又は菌体懸濁液で処理したイネ苗立枯細菌病汚染種籾の播種約2週間後における苗の生育状況を示す図である。 各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液を用いて各浸漬温度で処理したイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)汚染種籾の播種約2週間後における苗の生育状況を示す図である。 各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養上清液を用いて各浸漬温度で処理したイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)汚染種籾の播種約2週間後における苗の生育状況を示す図である。 各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液を用いて各浸漬温度で処理したイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)汚染種籾の播種約2週間後における苗の生育状況を示す図である。 各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液を出穂・開花期のイネ穂にイネもみ枯細菌病(もみ枯症)細菌を接種する前日に噴霧した場合のイネ穂におけるイネもみ枯細菌病(もみ枯症)の病の状況を示す図である。 各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液を出穂・開花期のイネ穂にイネもみ枯細菌病(もみ枯症)細菌を接種する同日に噴霧した場合のイネ穂におけるイネもみ枯細菌病(もみ枯症)の病の状況を示す図である。 各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液を出穂・開花期のイネ穂にイネもみ枯細菌病(もみ枯症)細菌を接種する翌日に噴霧した場合のイネ穂におけるイネもみ枯細菌病(もみ枯症)の病の状況を示す図である。
1.イネ科植物の細菌病害の防除剤
本発明の実施形態におけるイネ科植物の細菌病害に対する細菌病防除剤は、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液、培養液上清液又は菌体を含む懸濁液(菌体懸濁液)である。なお、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌は、病原性菌株と非病原性菌株の2種類が存在し、病原性のパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株を用いた場合にはイネ内穎褐変病を発病するなどイネ科植物の生育に悪影響を及ぼすため、非病原性のパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株を用いる。
本実施形態の細菌病防除剤は、イネ科植物の細菌病害の防除に効果を発揮し、具体的には、イネ苗立枯細菌病菌であるバークホルデリア プランタリー(Burkholderia plantarii)及びイネもみ枯細菌病(苗腐敗症及びもみ枯症)菌であるバークホルデリア グルメ(Burkholderia glumae)に対して発病抑制効果を発揮する。なお、本実施形態の細菌病防除剤は、病原細菌に対する競合作用と、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌が産生した物質による抵抗性誘導の複合的な作用によってこれら細菌病害の発病を抑制するものと推察される。
非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液を有効成分として細菌病防除剤に使用する場合は、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌を当該細菌が増殖できる液体培地(例えば、PPG液体培地など)で所定時間培養し、得られた培養液をそのまま又は希釈して或いは濃縮して使用することができる。
非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養上清液を有効成分として細菌病防除剤に使用する場合は、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌を当該細菌が増殖できる液体培地(例えば、PPG液体培地など)で所定時間培養し、得られた培養液を遠心分離、膜分離、濾過分離等によって培養液を菌体と培養上清液とに分離し、この培養上清液をそのまま又は希釈して或いは濃縮して使用することができる。
非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体を有効成分として細菌病防除剤に使用する場合は、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌を当該細菌が増殖できる液体培地(例えば、PPG液体培地など)で所定時間培養し、得られた培養液を遠心分離等によって菌体と培養上清液とに分離し、回収した菌体を水等の溶媒に懸濁して調製した菌体懸濁液を使用することができる。この場合、菌体懸濁液中の菌体濃度は、少なくとも10cfu/mL以上であることが好ましく、10cfu/mL以上であることがより好ましく、10cfu/mL以上であることがさらに好ましい。
本実施形態における非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌は、本発明の作用効果が得られれば特に制限されないが、イネ科植物の細菌病害に高い防除効果を有する観点から、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株(寄託番号:MAFF311647)、R32株(寄託番号:MAFF311648)又はMAFF301722株を用いるのが好ましい。なお、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株(寄託番号:MAFF311647)及びR32株(寄託番号:MAFF311648)は、本発明者らが健全なイネの穂から分離したものであり、これら菌株の16S rRNA遺伝子が、国立遺伝学研究所が運営するDNA Data Bank of Japanに登録されているパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)(ACCESSION番号:AF364844他)の16S rRNA遺伝子と99%の相同性を示し、また、これら菌株がグラム陰性の通性嫌気性細菌であって黄色のコロニーを形成するといった生理・形態学的な特徴を有することなどからパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)と同定し、独立行政法人独立行政法人農業生物資源研究所に寄託したものである。また、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株(寄託番号:MAFF311647)、R32株(寄託番号:MAFF311648)及びMAFF301722株は、独立行政法人独立行政法人農業生物資源研究所で分譲が可能である。
2.イネ科植物の細菌病害の防除方法
本実施形態のイネ科植物の細菌病害の防除方法は、上述した細菌病防除剤をイネ科植物の種子又は穂に付着させる防除処理工程を有する。
イネ科植物の種子に細菌病防除剤を付着させる方法は特に制限はないが、より確実に種子に細菌病防除剤を付着させる観点から、細菌病防除剤にイネ科植物の種子を浸漬する防除処理工程であることが好ましい。
防除処理工程における種子の浸漬時間は、少なくとも12時間以上実施することが好ましく、種子が出芽する前であれば、浸種前、浸種中、浸種後(すなわち催芽中)のいずれの時期に実施してもよい。
ここで「浸種」とは、催芽を行なう前の処理工程であって、一斉に発芽するように種子に水分を吸収させる工程をいう。浸種は、例えば約15〜30℃の温水に約3〜4日浸漬することにより行う。通常、予め水選や塩水選(種子を水や塩水に入れて選別すること)などで充実度の低い種子を取り除いたり、消毒してから浸種させる。「催芽」とは、芽の新生や休眠芽の発育開始を促進させたり、発芽を斉一にする人工的処理をいう。催芽は、例えば約20〜35℃の温水に約12〜24時間浸漬することにより行う。
なお、イネ科植物の種子が出芽した後に防除処理を行っても一定の効果は得られるが、イネ苗立枯細菌病菌、イネもみ枯細菌病菌又はイネ褐条病菌を保菌している種子は健全に発芽することができない場合が多く、出芽前に防除処理した場合と比較して防除効果は低下する。
防除処理工程における種子の浸漬温度は、本発明の作用効果が得られれば特に制限されないが、イネ科植物の細菌病害に高い防除効果を有する観点から、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液を用いる場合には、15〜35℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。一方、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養上清液を用いる場合には、20〜30℃が好ましい。他方、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体を用いる場合には、15〜35℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
イネ科植物の穂に細菌病防除剤を付着させる方法は特に制限はないが、より確実に穂に細菌病防除剤を付着させる観点から、細菌病防除剤をイネ科植物の穂に噴霧する防除処理工程であることが好ましい。
防除処理工程における苗への噴霧時期は、本発明の作用効果が得られれば特に制限されないが、イネ穂が病原細菌に汚染される前又は汚染される直後に噴霧するのが好ましい。
3.種子
本実施形態の種子は、非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液、培養上清液又は菌体懸濁液を含み、イネ科植物の細菌病害の防除に有効な細菌病防除剤をイネ科植物の種子にコートしたものである。
細菌病防除剤のその他の構成は、上述した細菌病防除剤の構成に準ずる。また、細菌病防除剤を前記イネ科植物の種子にコートする方法は、上述したイネ科植物の細菌病害の防除方法に準ずる。
本実施形態の種子によれば、イネ科植物の細菌病害の防除に有効な細菌病防除剤をイネ科植物の種子にコートしているため、種子が出芽し発芽する過程において、イネ苗立枯細菌病又はイネもみ枯細菌病等に対して抵抗力を有し、育苗中にこれらの細菌病害の発病を抑制することができる。
また、細菌病防除剤をコートした後は、細菌病防除剤がコーティングされている限りその後も効果が持続するため、例えば細菌病防除剤をコートした種子をそのまま流通させることができる。
本実施形態に適用可能なイネ科植物とは、植物分類学上のイネ科に属する植物をいい、例えば、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、アワ、ヒエ等を挙げることができる。イネ科植物のうち、好ましくはイネ(Oryza sativa)である。
1.パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の病原性
パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌は、イネ内穎褐変病を発病させる病原性細菌であることが知られている。一方、当該細菌には、イネ内穎褐変病を発病しない非病原性菌株も存在することが知られている。そこで、2001年に茨城県で栽培されたイネ穂から分離されたパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株について、その病原性の有無を調べた。
(1)供試菌株
供試菌株として、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株を用いた。また、病原性を示すパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株として、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301720株を、病原性を示さないパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株として、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301722株を使用した。
(2)供試種籾
種籾は、コシヒカリを使用し、塩水選(比重1.13)および温湯消毒(60℃、10分間)を行った。
(3)菌体懸濁液の調製
パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株、MAFF301722株又はMAFF301720株を、常法に従い、PPG液体培地(Bacto−Pepton 5g,グルコース 5g,NaHPO・12HO 3g,KHPO 0.5g,NaCl 3g,ジャガイモ200gの煎汁 1000mL)に接種し、25℃で2日間振とう培養した。また、この培養液を遠心分離(8000rpm、7分間)によって菌体と培養上清液とに分離し、該培養上清液を除去することで菌体を回収し、この回収した菌体に除去した培養上清液と同量の滅菌水を加えることで菌体懸濁液を調製した。なお、菌体懸濁液の菌体濃度は、約10cfu/mLである。
(4)播種及び育苗方法
供試種籾を25℃の蒸留水に48時間浸種した後、再度、新たな蒸留水(25℃)に48時間浸種し、その後、32℃の蒸留水中で16時間保持することで催芽させた。次いで、この催芽した種籾をバランスディッシュ(44mm×44mm×15mm;アズワン株式会社製)に入れたイネ育苗用培土(井関農機製)に均一に蒔き、軽く覆土することで播種を行った。また、播種後はガラス温室内で育苗した。その後、ワグネルポット(1/5000a)に3〜5株を移植し、屋外で生育した。なお、肥料は、窒素として硫安(あかぎ園芸株式会社製及び/又はエア・ウォーター株式会社製)、リン酸として過リン酸石灰(あかぎ園芸株式会社製)及び/又は熔成燐肥(朝日工業株式会社製)並びにカリウムとして加里(あかぎ園芸株式会社製)を用いた。
(5)接種方法
前記(4)で育苗した苗の出穂・開花期に前記(3)で調製した菌体懸濁液を1穂あたり30mL噴霧することでパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌を接種した。また、噴霧から約3週間後にイネ内穎褐変症状の有無をそれぞれ調べた。
(6)結果
表1に示すように、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株又は非病原性菌株であることが確認されているパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301722株を接種した場合は、発病した籾は認められず、これら菌株によるイネ内穎褐変症状は認められなかった。一方、病原性菌株であることが確認されているパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301720株を接種した場合は、発病した籾数が73(発病籾率7.3%)と、当該菌株によるイネ内穎褐変症状が認められた。以上の結果から、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株は、非病原性のパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株であることが分かった。
2.パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)によるイネ苗立枯細菌病に対する発病抑制効果
(1)供試菌株
供試菌株として、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株、MAFF301722株及びMAFF301720株を使用した。また、イネ苗立枯細菌病菌として、バークホルデリア プランタリー(Burkholderia plantarii)MAFF301723株を用いた。
(2)供試種籾
種籾は、上記1.(2)と同様、コシヒカリを使用し、塩水選(比重1.13)および温湯消毒(60℃、10分間)を行った。
(3)イネ苗立枯細菌病菌の菌体懸濁液の調製
イネ苗立枯細菌病菌であるバークホルデリア プランタリー(Burkholderia plantarii)MAFF301723株を、常法に従い、PPG液体培地(Bacto−Pepton 5g,グルコース 5g,NaHPO・12HO 3g,KHPO 0.5g,NaCl 3g,ジャガイモ200gの煎汁 1000mL)に接種し、25℃で2日間振とう培養した。また、この培養液を遠心分離(8000rpm、7分間)によって菌体と培養上清液とに分離し、該培養上清液を除去することで菌体を回収した後、この回収した菌体に滅菌水を加えることでイネ苗立枯細菌病菌の菌体懸濁液を調製した。なお、この菌体懸濁液には、バークホルデリア プランタリー(Burkholderia plantarii)MAFF301723株が約10cfu/mL含まれている。
(4)汚染種籾の調製
前記イネ苗立枯細菌病菌(Burkholderia plantarii MAFF301723)の菌体懸濁液(約10cfu/mL)に供試種籾を浸漬し、これを真空減圧下で約1時間保持することで種籾に病原細菌を接種した。その後、水気を切った該種籾をラボタオル等に広げ、室温で一晩風乾した。これをイネ苗立枯細菌病菌(Burkholderia plantarii MAFF301723)汚染種籾として、以下の試験に使用した。
(5)培養液処理液の調製
パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株、MAFF301722株又はMAFF301720株を、常法に従い、PPG液体培地(Bacto−Pepton 5g,グルコース 5g,NaHPO・12HO 3g,KHPO 0.5g,NaCl 3g,ジャガイモ200gの煎汁 1000mL)に接種し、25℃で2日間振とう培養することで培養液を得た。また、該培養液を培養液処理液として、以下の試験に使用した。
(6)培養上清液処理液の調製
パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株、MAFF301722株又はMAFF301720株を、前記(5)と同様に培養することで得た培養液を遠心分離(8000rpm、7分間)し、得られた培養上清液を再度遠心分離(10000rpm、10分間)した後、回収した上清液を滅菌フィルターでろ過することで培養上清液を調製した。また、この培養上清液を培養上清液処理液として、以下の試験に使用した。
(7)菌体懸濁液処理液の調製
パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株、MAFF301722株又はMAFF301720株を、前記(5)と同様に培養することで得た培養液を遠心分離(8000rpm、7分間)し、菌体と培養上清液とに分離した後、該培養上清液を除去することで菌体を回収した。この回収した菌体に除去した培養上清液と同量の滅菌水を加えることで菌体懸濁液を調製した。また、該菌体懸濁液を菌体懸濁液処理液として、以下の試験に使用した。
(8)種籾の処理及び育苗方法
前記イネ苗立枯細菌病菌汚染種籾を重量比で1%を含む種籾約2.8gを、前記(5)〜(7)で調製した各種処理液にそれぞれ浸漬し、25℃、48時間の浸漬処理を行った。その後、これらを25℃の蒸留水に48時間浸種した後、32℃の蒸留水中で16時間保持することで催芽させた。次いで、これら催芽した種籾をバランスディッシュ(44mm×44mm×15mm;アズワン株式会社製)に入れたイネ育苗用培土(井関農機製)に均一に蒔き、軽く覆土することで播種を行った。また、播種後はガラス温室内でそれぞれ育苗し、播種から約2週間後に発病調査を行った。なお、処理液の代わりに蒸留水を用いた場合を対照とした。
(9)調査方法
各区の全苗について発病程度を調査し、程度別に指数を与え、発病度および防除価を以下の式から算出した。また、指数は、枯死苗:5、枯死以外の発病苗(白化・わい化・抽出異常):3、健全苗:0とした。
発病度={Σ(発病程度別苗数×指数)/(5×調査苗数)}×100
防除価=(1−処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
(10)結果
各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株の培養液、培養上清液又は菌体懸濁液をそれぞれ処理液として用いた場合のイネ苗立枯細菌病の発病苗率、発病度及び防除価を表2〜4に示した。また、その時のイネ苗の様子を図1に示した。
表2に示したように、種籾を各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株の培養液で処理した場合は、イネ苗立枯細菌病に対する防除価が94.9〜99.2と高い値を示し、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌の培養液がイネ苗立枯細菌病の発病を抑制することが分かった。
一方、表3に示したように、各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株の培養上清液で種籾を処理した場合は、イネ苗立枯細菌病菌に対する防除価が0.3〜47.9であった。
他方、表4に示したように、各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株の菌体懸濁液で種籾を処理した場合は、イネ苗立枯細菌病菌に対する防除価が21.0〜64.1であった。
以上のように、培養液、培養上清液及び菌体懸濁液のいずれの場合でもイネ苗立枯細菌病菌に対する発病抑制効果が認められ、特に、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株を用いた場合に高い防除効果が得られた。また、例えば、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株では、その培養液で処理した場合の防除価が99.2、培養上清液で処理した場合の防除価が47.9、菌体懸濁液で処理した場合の防除価が64.1であり、培養上清液で処理した場合の防除価の値と菌体懸濁液で処理した場合の防除価の値の合計が培養液で処理した場合の防除価の値とほぼ一致することから、イネ苗立枯細菌病菌に対する発病抑制効果は、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌とイネ苗立枯細菌間での競合作用およびパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌が産生した物質による抵抗性誘導の複合的な作用によるものと推察された。
3.パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)によるイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)に対する発病抑制効果及び該効果に及ぼす浸漬処理温度の影響
(1)供試菌株
供試菌株として、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株、MAFF301722株及びMAFF301720株を使用した。また、イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)菌として、バークホルデリア グルメ(Burkholderia glumae)MAFF301441株を用いた。
(2)供試種籾
種籾は、上記1.(2)と同様、コシヒカリを使用し、塩水選(比重1.13)および温湯消毒(60℃、10分間)を行った。
(3)イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)菌の菌体懸濁液の調製
イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)菌であるバークホルデリア グルメ(Burkholderia glumae)MAFF301441株を用い、上記2.(3)同様の方法によってイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)菌の菌体懸濁液を調製した。なお、この菌体懸濁液には、バークホルデリア グルメ(Burkholderia glumae)MAFF301441株が約10cfu/mL含まれている。
(4)汚染種籾の調製
前記イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)菌(Burkholderia glumae MAFF301441)の菌体懸濁液(約10cfu/mL)を用い、上記2.(4)と同様の方法によってイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)菌(Burkholderia glumae MAFF301441)に汚染された汚染種籾を調製した。また、調製した該汚染種籾を以下の試験に使用した。
(5)各種処理液の調製
上記2.(5)〜(7)と同様の方法で各種処理液を調製した。
(6)各種処理液で処理した種籾の播種及び育苗方法
前記イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)菌汚染種籾を重量比で10%を含む種籾約2.8gを用い、上記2.(8)と同様の方法によって種籾の処理を行った。なお、各種処理液で種籾を処理する際の浸漬処理温度は、10、15、20、25又は30℃とした。また、この処理した種籾を上記2.(8)と同様の方法によって播種及び育苗した。なお、処理液の代わりに蒸留水を用いた場合を対照とした。
(7)調査方法
発病程度の調査は、上記2.(10)と同様の方法によって行い、発病度及び防除価を算出した。
(8)結果
各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株の培養液、培養上清液又は菌体懸濁液をそれぞれ処理液として用いた場合のイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)の発病苗率、発病度及び防除価を表5〜16に示した。また、その時のイネ苗の様子を図2〜4に示した。
表5〜8に示したように、各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株の培養液で種籾を処理した場合、イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)に対する防除価が43.0〜100であり、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株の培養液がイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)の発病を抑制することが分かった。
また、各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液で種籾を処理する場合の最適処理温度について、表5〜8に示したように、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株では、処理温度が25℃の場合に防除価が100と最も高い値を示し、30℃の場合に防除価が98.3であった(表5)。また、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R32株では、処理温度が30℃の場合に防除価が98.1と最も高い値を示し、25℃の場合に防除価が93.3であった(表6)。
一方、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301722株では、処理温度が20℃の場合に防除価が100と最も高い値を示し、25℃の場合に防除価が98.7であった(表7)。また、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301720株では、処理温度が20℃の場合に防除価が99.3と最も高い値を示し、15℃の場合に防除価が94.1であった(表8)。
このように、非病原性菌株であるパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株及びMAFF301722株の培養液で種籾を処理する場合の最適処理温度は、20〜30℃の範囲であった。なお、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株では、最適処理温度が25℃以上であったのに対し、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301722株及びMAFF301720株では最適処理温度が20℃と、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株と比べて最適処理温度が低温であることが分かった。
一方、各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株の培養上清液で種籾を処理した場合、表9〜12に示したように、イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)に対する防除価が32.8〜99.0であった。
また、各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養上清液で種籾を処理する場合の最適処理温度について、表9〜12に示したように、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株共に処理温度が30℃の場合に防除価が86.5及び92.3と最も高い値を示した(表9及び10)。
一方、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301722株では、処理温度が25℃の場合に防除価が96.8と最も高い値を示した(表11)。他方、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301720株では、処理温度が30℃の場合に防除価が99.0と最も高い値を示した(表12)。
このように、非病原性菌株であるパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株及びMAFF301722株の培養上清液で種籾を処理する場合の最適処理温度は、25〜30℃の範囲であった。なお、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株では、最適処理温度が30℃であったのに対し、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301722株では最適処理温度が25℃と、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株と比べて最適処理温度が低温であることが分かった。一方、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301720株では最適処理温度が30℃とパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株と同様であった。
他方、各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)菌株の菌体懸濁液で種籾を処理した場合、表13〜16に示したように、イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)に対する防除価が40.2〜98.0であった。
また、各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液で種籾を処理する場合の最適処理温度について、表13〜16に示したように、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株では、処理温度が20℃の場合に防除価が95.4と最も高い値を示し、15℃の場合に防除価が92.8であった(表13)。また、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R32株では、処理温度が20℃の場合に防除価が98.0と最も高い値を示し、15℃の場合に防除価が95.5であった(表14)。
一方、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301722株では、処理温度が15℃の場合に防除価が95.7と最も高い値を示し、10℃の場合に防除価が90.4であった(表15)。他方、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301720株では、処理温度が10℃の場合に防除価が92.9と最も高い値を示した(表16)。
このように、非病原性菌株であるパントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株及びMAFF301722株の菌体懸濁液で種籾を処理する場合の最適処理温度は、15〜20℃の範囲であった。なお、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株では、最適処理温度が20℃であったのに対し、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)MAFF301722株及びMAFF301720株では最適処理温度が15℃及び10℃と、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株及びR32株と比べて最適処理温度が低温であることが分かった。
4.パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)によるイネもみ枯細菌病(もみ枯症)に対する発病抑制効果
(1)供試菌株
供試菌株として、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株、MAFF301722株及びMAFF301720株を使用した。また、イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌として、バークホルデリア グルメ(Burkholderia glumae)MAFF301441株を用いた。
(2)供試種籾
種籾は、コシヒカリ又はキヌヒカリを使用し、塩水選(比重1.13)および温湯消毒(60℃、10分間)を行った。なお、コシヒカリは2011年、キヌヒカリは2012年の試験において使用した。
(3)イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌の菌体懸濁液の調製
イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌であるバークホルデリア グルメ(Burkholderia glumae)MAFF301441株を用い、前記2.(3)と同様の方法によってイネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌の菌体懸濁液を調製した。なお、この菌体懸濁液には、バークホルデリア グルメ(Burkholderia glumae)MAFF301441株が約10cfu/mL含まれている。
(4)菌体懸濁液処理液の調製
パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株、R32株、MAFF301722株又はMAFF301720株を用い、上記2.(6)と同様の方法で各種菌体懸濁液処理液を調製した。
(5)播種及び育苗方法
前記供試種籾を用い、上記1.(4)と同様の方法で行った。
(6)イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌の接種及び処理液の噴霧
前記育苗した苗の出穂・開花期に1穂あたりイネ内穎褐変病菌の菌体懸濁液約30mL及び菌体懸濁液処理液約30mLをそれぞれ噴霧した。なお、菌体懸濁液処理液の噴霧は、イネ内穎褐変病菌の菌体懸濁液を噴霧する前日に行う場合(前日処理)、イネ内穎褐変病菌の菌体懸濁液を噴霧する同日に行う場合(同日処理)又はイネ内穎褐変病菌の菌体懸濁液を噴霧した翌日に行う場合(翌日処理)の3種の処理方法でそれぞれ行い、それぞれの場合について、噴霧から約2〜3週間後に発病調査を行った。
(7)調査方法
各区の全穂について発病程度を調査し、程度別に区分し、発病度および防除価を以下の式から算出した。また、区分は、1穂中の罹病籾率が61%以上の穂数:A、1穂中の罹病籾率が31〜60%の穂数:B、1穂中の罹病籾率が11〜30%の穂数:C、1穂中の罹病籾率が10%以下の穂数:Dとした。
発病度={(4A+3B+2C+1D)/4×調査穂数}×100
防除価=(1−処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
(8)結果
各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液処理液をイネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌の菌体懸濁液を噴霧する前日、同日又は翌日に噴霧した場合のイネもみ枯細菌病(もみ枯症)の発病度及び防除価を表17〜19に示した。また、その時のイネの穂の様子を図5〜7に示した。
表17に示したように、イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌の菌体懸濁液を噴霧する前日に各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液処理液をそれぞれ噴霧した場合(前日処理)は、イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌に対する防除価が34.4〜42.2であった。
一方、表18に示したように、イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌の菌体懸濁液を噴霧する同日に各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液をそれぞれ噴霧した場合(同日処理)は、イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌に対する防除価が37.2〜42.2であった。
他方、表19に示したように、イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌の菌体懸濁液を噴霧する翌日に各種パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液をそれぞれ噴霧した場合(翌日処理)は、イネもみ枯細菌病(もみ枯症)菌に対する防除価が44.4であった。
以上のように、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の菌体懸濁液を、イネの出穂期に、穂に対して噴霧することでイネもみ枯細菌病(もみ枯症)に対する発病抑制効果が認められた。また、噴霧する時期については、前日処理、同日処理および翌日処理のいずれの場合においても同程度の防除価が得られることが分かった。

Claims (11)

  1. 非病原性パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌の培養液、培養上清液又は菌体懸濁液からなる群から選択される少なくとも1種を含む、イネ苗立枯細菌病、イネもみ枯細菌病(苗腐敗症)又はイネもみ枯細菌病(もみ枯症)からなる群から選択される少なくとも1種のイネ科植物の細菌病害を防除するための細菌病防除剤。
  2. 前記パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)細菌が、パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株(寄託番号:MAFF311647)、R32株(寄託番号:MAFF311648)又はMAFF301722株である、請求項1に記載の細菌病防除剤。
  3. 請求項1又は2に記載の細菌病防除剤をイネ科植物の種子に付着させる防除処理工程を有するイネ苗立枯細菌病及び/又はイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)の防除方法。
  4. 前記防除処理工程が、前記細菌病防除剤に前記種子を浸漬する工程である、請求項3に記載のイネ苗立枯細菌病及び/又はイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)の防除方法。
  5. 前記種子浸漬工程における浸漬処理温度が、10〜30℃である、請求項4に記載のイネ苗立枯細菌病及び/又はイネもみ枯細菌病(苗腐敗症)の防除方法。
  6. 請求項1又は2に記載の細菌病防除剤をイネ科植物の穂に付着させる防除処理工程を有するイネもみ枯細菌病(もみ枯症)の防除方法。
  7. 前記防除処理工程が、イネ科植物の穂に前記細菌病防除剤を噴霧する工程である、請求項6に記載のイネもみ枯細菌病(もみ枯症)の防除方法。
  8. 前記防除処理工程が、イネ科植物の出穂開花期に行われる、請求項6又は7に記載のイネもみ枯細菌病(もみ枯症)の防除方法。
  9. 請求項1又は2に記載の細菌病防除剤をイネ科植物の種子にコートした種子。
  10. 請求項1又は2に記載の細菌病防除剤を含む液にイネ科植物の種子を浸漬処理することによって該細菌病防除剤を該種子にコートした種子。
  11. パントエア アナナティス(Pantoea ananatis)R31株(寄託番号:MAFF311647)及びR32株(寄託番号:MAFF311648)。
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