以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態のねじ締め装置1は、大きくは機械装置部1Mと、これを制御するための制御手段1Cとから構成されている。機械装置部1Mは、固定プレート27により、ロボットアーム等の装置本体BMに固定されて用いられるようになっており、機械装置部1Mを構成する各部は固定プレート27を基準として動作することにより装置本体BMに対して動作を行う。機械装置部1Mは、ねじSの頭部に係合した状態で回転することによりねじSの締め込みを行うためのビット3を備えている。
図2は、上記の機械装置部1Mを拡大して示したものである。機械装置部1Mは、概ね、ねじSに係合可能なビット3を回転可能に備えたねじ締めツール10と、このねじ締めツール10を支持するベースブロック31と、このベースブロック31を固定プレート27に対して上記ビット3の延在する方向に移動可能に支持する第1の往復移動機構としてのベースブロック移動機構20と、上記ベースブロック31に対してビット3をこのビット3の延在する方向に移動可能に支持する第2の往復移動機構としてのビット移動機構30とから構成されている。
なお、この図においては、ねじSを螺入する相手側の一例として、めねじPが形成されたベース部材W1と、めねじPに対応する位置に貫通孔Hを形成されており、貫通孔Hを介してねじSによりベース部材W1に締結される被締結部材W2とを記載している。本願では、これらベース部材W1と被締結部材W2を総称してワークWと称することにする。ワークWの形態は種々様々に変更することができ、ワークWを構成する部材の個数を変更することも可能であるとともに、ねじSをタッピンねじ等の違うタイプに変更することでめねじPや貫通孔Hの有無についても変更することも可能である。
ベースブロック移動機構20は、回転駆動手段の一例であるACサーボモータ(以下、ベースブロック移動モータ23という)と、このベースブロック移動モータ23に接続されたボールねじ21と、このボールねじ21に螺合し、ベースブロック移動モータ23の回転駆動に合わせて往復移動する可動ナット22と、上記ボールねじ21と平行に延びるシャフト25と、上記シャフト25に挿通されシャフト25に沿って摺動自在なスライドブッシュ26と、上記可動ナット22及び上記スライドブッシュ26に固定されたベースプレート24Aと、上記シャフト25の延びる方向に沿って配された固定プレート27とから構成される。また、上記ベースブロック移動モータ23は、自身の回転に対応する位置検出信号としてのパルス信号を出力可能な位置検出手段としてのエンコーダ23Eを備えており、このエンコーダ23Eの信号に基づいて駆動制御されるため、上記ベースプレート24Aを所定の高さまで移動できる。また、ベースプレート24Aを任意の位置で保持することを可能とするため、ベースブロック移動モータ23は電磁ブレーキ23Bをも備えている。
ベースブロック31は、ベースプレート24Aと、これに平行とされつつ上方に配されたモータ固定プレート24Bと、これらを上下方向に連結する一対のシャフト31a,31a(図5参照)によって構成されている。ベースプレート24Aには、上記スライドブッシュ26及び可動ナット22が一体的に設けられており、こうすることでベースブロック31はベースブロック移動モータ23の回転駆動に合わせて可動ナット22とともに上下に往復移動可能となっている。
ベースブロック31には、ねじ締めツール10と、このねじ締めツール10の一部を構成するビット3を往復移動可能とするビット移動機構30が支持されている。そのため、移動モータ23を回転駆動させることで、ねじ締めツール10及びビット移動機構30を動作させることができる。
ビット移動機構30は、ベースブロック31を構成するモータ固定プレート24Bに固定され、上記ビット回転モータ4に並んで配された回転駆動手段の一例であるACサーボモータ(以下、ビット移動モータ32という)と、このビット移動モータ32に一端を接続されるとともに他端を上述したベースプレート24Aによって回転自在に支持されたボールねじ33と、このボールねじ33に螺合し上記ビット移動モータ32の回転駆動に合わせて往復移動する可動ナット34と、この可動ナット34に固定され可動ナット34とともに往復移動する可動プレート35とから構成される。また、上記ビット移動モータ32は、自身の回転に対応する位置検出信号としてのパルス信号を出力することで、間接的にベースプレート31とビット3との相対位置を検出する位置検出手段としてのエンコーダ32Eを備えており、可動プレート35の昇降位置を所定の位置まで駆動できるようになっている。このビット移動機構30を構成するビット移動モータ32は、ベースブロック31に対してビット3の移動を行わせるための移動手段として機能するとともに、ねじSを締め付ける際にこのねじSをワークWに向かって押しつける推力を与えるための推力付与手段としても機能することになる。
ベースブロック移動機構20はベースブロック31を、ビット移動機構30は可動プレート35を、ともにビット3の延在する方向に沿って移動可能とするものの、両者の移動可能とするストロークは大きく異なって設定されている。すなわち、ベースブロック移動機構20はスクリューガイド5及びねじ締めツール10全体をワークWの位置に合わせて移動させて位置合わせを行うものであるため、そのストロークは大きく設定しており、ビット移動機構30はねじ締め時に必要十分な範囲でビット3の移動を行わせるのみで足りることから、そのストロークをベースブロック移動機構20よりも小さく設定している。ビット移動機構30はストロークが小さく設定されていることから、このストロークの範囲内における摺動抵抗を小さくできるため、ビット移動モータ32により与えられる推力の損失は少なくすることが可能になるとともに、ビット移動機構30によって支持する部材をほとんどビット3のみとして軽量化することが可能であることと相俟って、ビット移動モータ32によりビット3に与える推力を精度良く制御することが可能となる。
さらに、ベースブロック移動機構20を構成するベースブロック移動モータ23が備える電磁ブレーキ23Bによる保持トルクは、ビット移動機構30により生じ得るビット3の最大推力に耐え得るものになるように設定している。こうすることで、電磁ブレーキ23Bを作動させる場合には、ビット3に生じる推力による反力がベースブロック31に作用しても、ベースブロック31は十分な保持力で位置固定されており移動することがない。そのため、より高い精度でビットの推力を制御することが可能となっている。
ねじ締めツール10は、回転駆動手段の一例であるACサーボモータ(以下、ビット回転モータ4という)と、このビット回転モータ4の駆動軸4aと一体に回転し上記駆動軸4aに沿って摺動可能な回転部材2と、この回転部材2に接続されたビット3とを備えて成る。ねじ締めツール10のうち、ビット3以外の構成要素は、すなわち駆動軸4aを含むビット回転モータ4や回転部材2等は、協働してビット3を回転駆動させる点で、回転駆動手段10Mとして機能している。なお、ビット回転モータ4は、駆動軸4aの回転に対応する位置検出信号としてのパルス信号を出力可能な位置検出手段としてのエンコーダ4Eを備えている。なお、上述したベースプレート24Aは、回転部材2及びビット3が通過可能な通過孔を備えており、回転部材2及びビット3とは干渉しないようになっている。
回転部材2は、上述した可動プレート35によって回転可能に支持されており、ビット移動モータ32の回転駆動によって可動プレート35とともに往復移動するようになっている。上述したように、ビット回転モータ4はモータ固定プレート24Bに固定されていることから、ビット移動モータ32の回転駆動によって回転部材2とビット回転モータ4の駆動軸4aとはビット3の延在方向に沿って相対位置が変化することになる。
そのため、こうした相対位置変化にかかわらずビット回転モータ4の回転によって回転部材2を駆動することが可能となるよう、回転部材2とビット回転モータ4の駆動軸4aとの間に次のように構成されるトルク伝達部10Tを設けている。
トルク伝達部10Tは、駆動軸4aの先端に接続された接続軸4bと、この接続軸4bに対しその軸線に直交するように圧入されたピン4cと、上記回転部材2に設けられた駆動軸4a及び接続軸4bを挿通可能な挿通穴2aと、この挿通穴2aに形成された溝2bとから構成されている。溝2bは挿通穴2aの延びる方向に沿って設けられており、上述した駆動軸4aとビット3との相対位置が変化する範囲において、溝2bにはピン4cが常時当接するようにしている。こうすることで、回転部材2は駆動軸4aに沿って摺動するとともに、ピン4Cを介してビット回転モータ4による駆動トルクを伝達されることで回転可能に構成されている。すなわち、ビット3の延在方向への回転部材2と駆動軸4aの相対変化を許容しつつ、両者の間で駆動トルクの伝達が可能となっている。
さらに、ビット3は、その一端が上述の回転部材2に接続され、他端がねじSの頭部の駆動穴(図示せず)と係合するよう形成されている。こうすることで、ビット回転モータ4の駆動によってビット3は回転可能となっている。
上記のように構成することにより、ベースブロック移動モータ23の駆動によりベースブロック31とともに上記ねじ締めツール10とビット移動機構30とが昇降する一方、上記ビット移動モータ32の駆動によりビット3が回転部材2とともに昇降するようになっており、さらにはビット回転モータ4の駆動によりビット3は回転可能となっている。
上記の構成に加え、ベースプレート24Aの下部には、上記ビット3を挿通自在に内包するスクリューガイド5と、このスクリューガイド5とビット3との隙間である吸引経路に接続された継手6とが配されており、継手6はエアを吸引するエア吸引手段(図示せず)と選択的に接続することが可能となっている。よって、エア吸引手段に接続した場合にはスクリューガイド5の先端よりエアが吸引され、エアとともにねじSを吸引することが可能となっている。
さらに、上記ベースブロック移動機構20の下端には、図3に示すように、ねじSを一時的に保持可能なチャックユニット13が配されており、このチャックユニット13は、上記ねじSを保持可能な案内溝を備えた一対の揺動爪11と、この揺動爪11の案内溝に連接する揺動パイプ12とを備えて成る。揺動爪11は、常時は図示しないばねにより閉じる方向へ付勢されており、閉じた状態において案内溝はその上部がねじSの頭部を通過可能であり、これに連通する下部が下方に向かって徐々に絞られ上記ねじSの軸部を挿通可能な寸法に形成されている。こうすることで、上記揺動爪11は、閉じた状態であれば図に示すようにねじSを吊り下げて保持することができる。
揺動パイプ12には、上記ねじSを供給するねじ供給機(図示せず)が接続されており、このねじ供給機からねじSが1つずつ供給される。よって、ねじ供給機から供給されたねじSは、上記揺動パイプ12を通過して上記揺動爪11の案内溝へ供給され、上記揺動爪11に吊り下げられて保持される。
上記揺動パイプ12は、その揺動を付勢するパイプばね(図示せず)を備えており、常時は上記揺動爪11の案内溝と連通しており、図4に示すようにスクリューガイド5が下降すると、スクリューガイド5の先端及び外周と当接するため、前述の付勢に抗して揺動するようになっている。さらに、スクリューガイド5が下降することで、揺動爪11も、スクリューガイド5の先端及び外周と当接することでばねによる付勢に抗して拡開するようになっている。
このようにスクリューガイド5を下降させる際に、上述したエア吸引手段によってスクリューガイド5の先端よりエアを吸引することで、揺動爪11に吊り下げられて保持されていたねじSをスクリューガイド5内部に吸引し、ビット3の先端に係合した状態で保持することが可能となっている。このような状態で、ビット3を内包したままスクリューガイド5を移動させることで、ビット3に係合させた状態でねじSを所望の位置に移動させることが可能となっている。
上記のように構成された機械装置部1Mを動作させるため、この実施形態のねじ締め装置1は、図1に示すような制御手段1Cを備えている。以下、図1を基に、制御手段1Cの構成について説明する。
制御手段1Cは、主として入力部51、主制御部52、記憶部53、ガイド位置コントローラ54、ビット位置コントローラ55、ビット回転コントローラ56及びエア吸引切換部57により構成されている。また、これら以外に図示しない表示部を備えることで、操作者に対して情報の伝達を行うことが可能となっている。
これらのうち、主制御部52は、制御手段1C全体のメインの動作をコントロールするものであり、CPU,メモリ及びインターフェースを備えた通常のマイクロプロセッサ等により構成され、後述する記憶部53に格納された複数のプログラムより、逐次必要なプログラムを取り出して実行し、周辺ハードリソースと協働して、所期の機能を実現するものとなっている。
入力部51は、キーボード又はタッチパネル等の入力機器となっており、これを介して操作者よりスタート信号や停止信号等の必要な情報が入力されるようになっている。また、入力部51は使用するねじSの仕様を入力するねじ仕様入力部51aを備えており、このねじ仕様入力部51aより入力されたねじ仕様は、主制御部52に伝達され、後述の処理がなされるようになっている。
記憶部53は、上述したように、主制御部52を動作させるためのプログラムを格納するとともに、ねじ締めに必要となるデータを多数保管している。ねじ締めのために必要なデータの中には後述する推力パラメータがあり、こうした推力パラメータを設定されて記憶している点で、この記憶部53はパラメータ設定部としても機能している。記憶部53の内部に記憶されているデータは、大きくは、ビット3やスクリューガイド5(ベースブロック31)の位置制御を行うために必要となる基準位置データと、これら以外のデータとしてデータテーブルとして記憶されるものに分けられる。これら、基準位置データや、データテーブルについては、後に詳述する。
ガイド位置コントローラ54は、ベースブロック移動機構20におけるベースブロック移動モータ23とこれに備えられたエンコーダ23E及び電磁ブレーキ23Bに接続されており、これらとの間で信号の授受を行いつつベースブロック移動モータ23に動作を行わせることが可能となっている。このガイド位置コントローラ54は、設定値を記憶するための記憶部54aと、その設定値に基づきベースブロック移動モータ23に駆動信号を与えることで回転制御を行うモータ回転制御部54bと、回転時の負荷電流により駆動トルクを検出するトルク検出部54cと、位置検出手段であるエンコーダ23Eからのパルス信号を基に回転位置を検出する回転位置検出部54dと、電磁ブレーキ23Bのオンオフを切換える電磁ブレーキ切換部54eとを備えている。そして、あらかじめ主制御部52より与えられた速度設定値、トルク設定値、移動位置等のデータを記憶部54aに記憶するとともに、主制御部52により与えられるスタート信号、停止信号に従いつつ、定められた設定値に基づいてベースブロック移動モータ23に動作を行わせることが可能となっている。こうすることで、主制御部52の制御下においてガイド位置コントローラ54は、ベースブロック31と、これに付随してスクリューガイド5や、ビット3を含むねじ締めツール10をビット3の延在する方向に沿って移動させることが可能となっている。
ビット位置コントローラ55は、ビット移動機構30におけるビット移動モータ32とこれに備えられたエンコーダ32Eに接続されており、これらとの間で信号の授受を行いつつビット移動モータ32に動作を行わせることが可能となっている。このビット位置コントローラ55も、上記ガイド位置コントローラ54と同様、設定値を記憶するための記憶部55aと、その設定値に基づきビット移動モータ32に駆動信号を与えることで回転制御を行うモータ回転制御部55bと、回転時の負荷電流により駆動トルクを検出するトルク検出部55cと、エンコーダ32Eからのパルス信号を基に回転位置を検出する回転位置検出部55dとを備えている。そして、あらかじめ主制御部52より与えられた速度設定値等のデータを記憶部55aに記憶するとともに、主制御部52により与えられる信号に従いつつ、定められた設定値に基づいてビット移動モータ32に動作を行わせることが可能となっている。こうすることで、主制御部52の制御下においてビット位置コントローラ55は、ビット3をその延在する方向に沿って移動させ、ベースブロック31に対する相対位置を変更させることが可能となっている。
ビット回転コントローラ56は、ねじ締めツール10を構成するビット回転モータ4とこれに備えられたエンコーダ4Eに接続されており、これらとの間で信号の授受を行いつつビット回転モータ4に動作を行わせることが可能となっている。このビット回転コントローラ56も、上記ガイド位置コントローラ54やビット位置コントローラ55と同様、設定値を記憶するための記憶部56aと、その設定値に基づきビット回転モータ4に駆動信号を与えることで回転制御を行うモータ回転制御部56bと、回転時の負荷電流により駆動トルクを検出するトルク検出部56cと、エンコーダ4Eからの信号を基に回転位置を検出する回転位置検出部56dとを備えている。そして、あらかじめ主制御部52より与えられた速度設定値等のデータを記憶部56aに記憶するとともに、主制御部52により与えられる信号に従いつつ、定められた設定値に基づいてビット回転モータ4に動作を行わせることが可能となっている。こうすることで、主制御部52の制御下においてビット回転コントローラ56は、ビット3を回転動作させることが可能となっている。
また、エア吸引切換部57は、一端を図示しないエア吸引手段に接続され、他端を上述した継手6に接続された電磁弁として構成されている。そして、主制御部52よりエア吸引信号が入力されている場合には連通状態とすることでエア吸引手段によりスクリューガイド5の内部を吸引し、主制御部52よりエア吸引信号が入力されていない場合には非連通状態とすることでエア吸引手段によるスクリューガイド5の内部の吸引を停止するようになっている。
ここで、ねじSと、ワークWとの相対位置関係の考え方について説明を行う。
図9(a)は、ワークWの表面WSに先端が当接する際のスクリューガイド5の位置を示しており、この位置をワークWに対するスクリューガイド5の相対位置を制御するための基準となるスクリューガイド基準位置としている。そして、このスクリューガイド基準位置は、事前に行うティーチング作業によって、この際のベースブロック31の位置をベースブロック移動モータ23が備えるエンコーダ23E(図2参照)により検出させることで得るようにしている。なお、ティーチング作業とは、モータ23による保持力をゼロにした状態で手動にて各部の位置合わせを行い、エンコーダ23Eによる信号を基にして位置を検出させる作業をいう。
また、図9(b)は、スクリューガイド5の先端とビット3の先端が高さ方向に合致する際の、スクリューガイド5に対するビット3の相対位置を示しており、これをスクリューガイド5に対するビット3の相対位置を制御するための基準となるビット基準位置としている。そして、このビット基準位置も、事前に行うティーチング作業によって、スクリューガイド5とビット3とを同時に同じ平面に押しつけ、この際のビット3の位置をビット移動モータ32が備えるエンコーダ32E(図2参照)により検出させることで得るようにしている。
これらスクリューガイド基準位置とビット基準位置とは、基準位置データとして前述の記憶部53(図1参照)に記憶される。
図10(a)は、ねじ締め開始位置(図11におけるB点を参照)を示すものであり、スクリューガイド5の先端はワークW(被締結部材W2)の表面よりオフセット量Of1だけ離間した位置にあり、ビット3に係合するねじSの先端はめねじPの形成されるワーク(ベース部材W1)に対してオフセット量Of2だけ離間した位置にある。なお、この場合におけるスクリューガイド5の位置は、ねじ締め時ガイド位置(図11におけるA点を参照)とも同一である。
このようなビット3やスクリューガイド5のねじ締め開始位置はあらかじめ記憶部53(図1参照)に記憶させておけば、必要に応じて読み出して位置制御に用いることも可能である。さらに、被締結部材W2の厚みtとともに、オフセット量Of1,Of2を入力すれば、上述したスクリューガイド基準位置やビット基準位置より、ビット3やスクリューガイド5のねじ締め開始位置を算出して位置制御に用いることも可能である。また、これらの位置を、スクリューガイド基準位置やビット基準位置と同様に、ティーチング作業を行うことで予め設定しておくことも可能である。
図10(b)は、ワークWに対してねじSが正しく取り付けられたねじ締め完了位置を示すものである(図11におけるF点を参照)。この位置では、ワークWの表面WSよりねじSの頭部のみが突出した状態となるとともに、ねじ締め込み時の残留トルクによって僅かながらワークWやねじSに変形が生じた状態となる。このようなねじ締め完了位置にあるビット3の位置は、上述したスクリューガイド基準位置及びビット基準位置とねじSの寸法より算出して、これをもとにビット3の位置制御を行うことも可能である。また、より精度良くビット3のねじ締め完了位置を得るためには、図10(b)のような状態とするティーチング作業を行うことも好適である。
また、ねじ締め開始位置よりねじ締め完了位置までの間は、ねじ締め込みの過程において、図12のように分けることができる。この図12は、ねじSやスクリューガイド5をワークWに近接させる前の待機位置にある状態より、ねじ締め完了位置までの間を模式的に示したものである。
ワークWに螺入させるねじSは、ワークWに予め形成されためねじPにねじ込まれる一般的なねじ(以下、一般ねじという)と、ワークWに予め形成された下穴にめねじPを成形しながらねじ込まれるめねじ成形タイプのねじ(以下、タッピンねじという)と、ワークWに下穴とめねじPとを成形しながらねじ込まれる下穴・めねじ成形タイプのねじ(以下、ドリルねじという)とに大別することができる。そして、これらのねじSを締め付ける作業の過程の中には、図12に示したようにねじSの種類に応じた特徴点がある。
同図に示すように、ねじ締め作業の過程における特徴点には、O点:スクリューガイド5及びビット3が原点にある待機位置、A点:ビット3を待機位置にしたままスクリューガイド5先端をワークWの手前にした位置(ねじ締め時ガイド位置)、B点:ねじ先端をめねじPを形成するワーク(ベース部材W1)に当接する手前にした位置=ねじ込み開始位置、C点:ドリルねじにおいてワーク(被締結部材W2)に下穴成形が終わる位置、D点:ドリルねじ及びタッピンねじにおいてワーク(ベース部材W1)にめねじ成形(タップ加工)が終わる位置、E点:ねじSの頭部座面がワークに着座する付近の位置、F点:ねじが最終的に正しく締め付けられた位置(ねじ締め完了位置)、G点:ねじ締め装置からねじSに付与される推力等によりワークWが撓んだ状態におけるねじ締め完了位置がある。
本ねじ締め装置では、これらねじ締め過程上の特徴点をビット3の推力及び移動速度の切換ポイントとし、これら切換ポイントのうち、ねじSの種類に応じて必要なポイントを設定してねじ締めを行うようにしている。
そのため、前述した記憶部53(図1参照)には、基準位置データ以外に、図12に示す、寸法データ設定テーブル、トルクテーブル、速度テーブル、ねじ種登録テーブル及びねじ締めポイントテーブルの5つが記憶されている。
寸法データ設定テーブルには、図12(a)に示すように、ねじ種コード、ねじ長さ、ねじ穴手前オフセットOf2、F−C間距離、F−D間距離、F−E間距離及びF−G間距離の各フィールドが設けられており、ねじ種コード毎に、ねじの長さ、ねじ穴手前のオフセット量、F点からC点までの距離、F点からD点までの距離、F点からE点までの距離及びF点からG点までの距離を設定できるようになっている。ここで、ねじ穴手前オフセットとは、上述したオフセット量Of2に対応するものとなっている。
また、上記トルクテーブルには、図12(b)に示すように、トルクコード、第1制限トルク、第2制限トルク、第3制限トルク、第4制限トルク、第5制限トルクの各フィールドが設けられており、トルクコード毎に、A−B点間でのビット移動モータ32(図1参照)の駆動トルクである第1制限トルク、B−C点間でのビット移動モータ32の駆動トルクである第2制限トルク、C−D点間でのビット移動モータ32の駆動トルクである第3制限トルク、D−E点間でのビット移動モータ32の駆動トルクである第4制限トルク、E−F(又はG)点間でのビット移動モータ32の駆動トルクである第5制限トルクをそれぞれ設定できる。これらの制限トルクでビット移動モータ32が駆動されることにより、ねじ締めツール10を通じてねじSに付与される推力は制限トルクに応じて変更されることとなる。つまり、本実施の形態では、このトルクテーブルに設定されるパラメータが前述した推力パラメータとしてのねじ締め推力パラメータとなっている。
また、上記速度テーブルには、図12(c)に示すように、速度コード、第1速度、第2速度、第3速度の各フィールドが設けられており、速度コードに応じて、A−B点間での移動速度である第1速度、B−F(又はG)点間での移動速度である第2速度及びF(又はG)点から原点、すなわち待機位置O点に復動する時の移動速度である第3速度をそれぞれ設定できるようになっている。
上記ねじ種登録テーブルには、図12(d)に示すように、ねじ種コード、ねじ種類の各フィールドが設けられており、ねじ種コードフィールドには、前述の寸法データ設定テーブルにおけるねじ種コードと同じねじ種コードが登録され、ねじ種類フィールドには、一般ねじ、タッピンねじ、ドリルねじといった所定のねじの大別種類が設定される。このねじ種登録テーブルは、上述の寸法データ設定テーブルとねじ種コードをキーとしてリレーションシップが組まれている。これにより、ねじ締め制御において、ねじ締めポイントテーブルの所定のレコードのデータを取得する際、寸法データ設定テーブルを通じてねじ種登録テーブルが参照され、寸法データ設定テーブルのねじ種コードに応じたねじの種類データを取得することができる。
また、上記ねじ締めポイントテーブルは、ワークW上のねじSを締め付ける位置毎に異なるねじ締め情報を設定するために設けられているものであり、図12(e)に示すように、最大99箇所のねじ締めポイントについて、F点位置データ、ねじ寸法、制限トルク、速度、完了幅(+)及び完了幅(−)の各フィールドにパラメータを設定できるようになっている。なお、F点位置データは、上述したように別途行うティーチング作業により得るようにすることも好適である。このねじ締めポイントテーブルは、上記寸法データ設定テーブルのねじ種コード、トルクテーブルのトルクコード、速度テーブルの速度コードをそれぞれキーとして、各テーブルとリレーションシップが組まれている。これにより、上述した「ねじ寸法」フィールドにはねじ種コード、「制限トルク」フィールドにはトルクコード、「速度」フィールドには速度コード、の各キーをそれぞれ設定しておくことにより、ねじ締め制御時、寸法データ設定テーブル、トルクテーブル、速度テーブルのそれぞれにおける対応レコード、すなわち、ねじ締めポイントテーブルに設定されたキーと同一のキーがあるレコード、の値が参照され取得されるようになっている。なお、本実施の形態では、99箇所のねじ締めポイントを設定するようにしているが、設定可能なねじ締めポイント数はこれに限定されるものではない。
制御手段1Cを構成する主制御部52は、ねじ締め動作を行うに際し、図13及び図14に示すメイン制御としてのねじ締め処理を行うように構成されている。以下、図1を参照しつつ図13及び図14を用いて説明を行う。
なお、ここで説明するねじ締め処理については、ねじSの供給やねじSの頭部をビット3に係合させるためのエア吸引に関する処理については省略し、主な動作のみを記載している。
まず、主制御部52は、記憶部53に記憶された基準位置データとオフセット量Of1より、スクリューガイド5におけるねじ締め時ガイド位置を算出する(ステップSA01)。次に、このねじ締め時ガイド位置をガイド位置コントローラ54に出力する(ステップSA02)。さらに、ビット回転コントローラ56に、トルクチャンネル(以下、トルクCHという)を指定し(ステップSA03)、ビット位置コントローラ55へねじ締めポイントコードを出力し、これを保持する(ステップSA04)。
次に、ガイド位置コントローラ54にスタート信号を出力し、ベースブロック31及びスクリューガイド5の移動を実行させる(ステップSA05)。ガイド位置コントローラ54より移動完了信号が得られるまで待機状態となり(ステップSA06)、移動完了信号が得られると次のステップSA07に移行する。ステップSA07では、ベースブロック移動モータ23に電磁ブレーキ23Bを作動させるべく、ガイド位置コントローラ54にブレーキ作動命令を出力する。
こうして、スクリューガイド5を設定した位置に移動させた後に、ビット回転コントローラ56にスタート信号を出力して回転を開始させ(ステップSA08)、ビット位置コントローラ55にもスタート信号を出力して移動を開始させる(ステップSA09)。
次に、ビット回転コントローラ56からOK信号又はNG信号のうちの何れかが入力されるのを待つ(ステップSA10)。ビット回転コントローラ56より入力された信号がOK信号であるか否かを判定し(ステップSA11)、OK信号である場合には次のステップSA12に移行し、NG信号である場合には後述のステップSA19に移行する。ステップSA12では、さらに、ビット位置コントローラ55からF点完了信号、G点完了信号又はNG信号のうちの何れかが入力されるのを待つ。そして、ビット位置コントローラ55からの信号がF点完了信号又はG点完了信号の何れかであるかを判定し(ステップSA13)、これらの何れかである場合には次のステップSA14に移行し、F点完了信号及びG点完了信号の何れでもないNG信号である場合には後述のステップSA20に移行する。ステップSA14では、完了信号がF点完了信号であるか否かを判定し、F点完了信号である場合には次のステップSA15に移行し、F点完了信号でない場合(G点完了信号である場合)には後述のステップSA20に移行する。
ステップSA15では、制御手段1Cに設けられた図示しない表示部にねじ締めOK表示指令信号を出力し、続くステップSA16では、ねじ高さOK表示指令信号を出力する。
そして、スクリューガイド5及びビット3を原点位置に戻すべく、ガイド位置コントローラ54及びビット位置コントローラ55に復帰信号を出力する(ステップSA17)。その後は、ガイド位置コントローラ54及びビット位置コントローラ55より復帰完了信号が入力されるまで待機状態となり(ステップSA18)、これらより復帰完了信号が入力されることで全ての処理が完了する。
なお、上述したステップSA11においてNG信号と判定された場合に移行するステップSA19においては、表示部にねじ締めNG表示指令信号を出力して、ステップSA17に復帰するようになっている。さらに、ステップSA13及びステップSA14より分岐して移行したステップSA20では表示部にねじ締めOK表示指令信号を出力し、続くステップSA21ではねじ高さOK表示指令信号を出力して、ステップSA17に復帰するようになっている。
上記主制御部52によるメイン制御下において、ガイド位置コントローラ54を構成するモータ回転制御部54bは、図15に示すようなサブのねじ締め処理を行うように構成されている。以下、図1を参照しつつ図15を用いて説明を行う。
まず、ガイド位置コントローラ54におけるモータ回転制御部54bは、主制御部52からスタート信号が入力されるのを待つ(ステップSB01)。スタート信号の入力により次のステップに移行し、予め入力されたねじ締め時ガイド位置(A点)に対応するポイントデータを記憶部54aより読み込み、あるいは記憶されたデータより算出する(ステップSB02)。そして、得られたポイントデータに基づいてベースブロック移動モータ23へ駆動信号を出力する(ステップSB03)。この際のベースブロック移動速度は定常速度(高速度)に設定している。
そして、エンコーダ23Eによるパルス信号を基に回転位置検出部54dを通じて得られる位置変化量が所定時間内で0となっていないか、すなわちストール状態となっていないかを判定し(ステップSB04)、ストール状態でないと判定した場合には次のステップSB05に移行し、ストール状態であると判定した場合には後述するステップSB14に移行する。
ステップSB05では、回転位置検出部54dにより得られる位置データによって、スクリューガイド5がA点に到達したか否かを判定し、A点に到達したと判定した場合には次のステップSB06に移行する。なお、A点に到達していないと判定する場合には、ステップSB04に戻り、ストール状態であるか、あるいは、A点に到達したと判定されるまでの間、ステップSB04、SB05の処理をループして行うことになる。
ステップSB06ではベースブロック移動モータ23へ停止信号を出力して、続くステップSB07では主制御部52へ移動完了信号を出力する。さらに、主制御部52からのブレーキ作動命令を待ち(ステップSB08)、ブレーキ作動命令が入力されるとこれに対応して、ベースブロック移動モータ23に電磁ブレーキ23Bを作動させるべくブレーキ信号を出力する(ステップSB09)。
そして、主制御部52より復帰信号が入力されるまで待機状態となり(ステップSB10)、復帰信号が入力されることにより、ベースブロック移動モータ23へ定常速度での逆転駆動信号を出力する(ステップSB11)。さらに、回転位置検出部54dにより得られる位置データにより原点であるO点に到達したと判定されるまで待機状態となり(ステップSB12)、O点に到達したと判定した場合には、ベースブロック移動モータ23を停止させて主制御部52に復帰完了信号を出力し(ステップSB13)、全ての処理を完了する。
なお、上述したステップSB04においてストール状態であると判定した場合に移行するステップSB14においては、ベースブロック移動モータ23を停止させた上で主制御部52へNG信号を出力し、処理を終了するようになっている。
また、ビット回転コントローラ56を構成するモータ回転制御部56bは、図16に示すようなサブのねじ締め処理を行うように構成されている。以下、図1を参照しつつ図16を用いて説明を行う。
まず、ビット回転コントローラ56におけるモータ回転制御部56bは、主制御部52からスタート信号が入力されるのを待つ(ステップSC01)。スタート信号の入力により次のステップに移行し、主制御部52より送られたトルクCHを読み込み、このトルクCHに予め設定された最終締付けトルクに相当する完了トルクを設定する(ステップSC02)。
そして、ビット3の回転を開始させるべくビット回転モータ4に駆動信号を出力する(ステップSC03)。なお、この処理と同時にタイマをスタートする。次に、ビット回転モータ4の負荷電流値を基にトルク検出部56cにより得られる出力トルクが完了トルクに達する、すなわちトルクアップするか、タイマがタイムアップするかの何れかの状態となるかを待つ(ステップSC04)。そして、トルクアップ又はタイムアップの何れかの状態と判定することにより、ビット回転モータ4を停止させるべく停止信号を出力する(ステップSC05)。
上記のように検出した状態がトルクアップであるか否かを判定し(ステップSC06)、トルクアップの場合には主制御部52にOK信号を出力して(ステップSC07)、全ての処理を終了する。また、ステップSC06においてトルクアップでないと判定した場合、すなわちタイムアップである場合には、主制御部52にNG信号を出力して(ステップSC08)、全ての処理を終了する。
さらに、ビット位置コントローラ55を構成するモータ回転制御部55bは、図17〜20に示すようなサブのねじ締め処理を行うように構成されている。以下、図1を参照しつつ図17〜20を用いて説明を行う。
まず、ビット位置コントローラ55におけるモータ回転制御部55bは、主制御部52からスタート信号が入力されるのを待つ(ステップSD01)。スタート信号が入力されることで、主制御部52から送られたねじ締めポイントコードを読み込み、同コードに基づいてねじ締めポイントテーブル、寸法データ設定テーブル、トルクテーブル、速度テーブル、ねじ種登録テーブルの各対応レコードのデータ(制御パラメータ)を記憶部55aに記憶する(ステップSD02)。さらに、記憶した制御パラメータに基づき、B点、C点、D点、E点、G点を順次算出して、記憶部55aに記憶する(ステップSD03〜SD07)。
次に、ビット3を移動させるために、設定された第1速度、第1制限トルクでビット移動モータ32を駆動するべく駆動信号を出力する(ステップSD08)。
そして、エンコーダ32Eによるパルス信号を基に回転位置検出部55dを通じて得られる位置変化量が所定時間内で0となっていないか、すなわちストール状態となっていないかを判定し(ステップSD09)、ストール状態でないと判定した場合には次のステップSD10に移行し、ストール状態であると判定した場合には後述するステップSD33に移行する。
ステップSD10では、回転位置検出部55dにより得られる位置データによって、ビット3がB点に到達したか否かを判定し、B点に到達したと判定した場合には次のステップSD11に移行する。なお、B点に到達していないと判定する場合には、ステップSD09に戻り、ストール状態であるか、あるいは、B点に到達したと判定されるまでの間、ステップSD09、SD10の処理をループして行うことになる。
ステップSD11では、設定された第2速度、第2制限トルクでビット移動モータ32を駆動するべく駆動信号を出力する。これにより、速度がねじ締め用に減速されるとともに、ビット3を通じてねじSに付与される推力が変更される。そして、ねじSの種類がドリルねじであるか否かを判定し(ステップSD12)、ドリルねじと判定した場合には次のステップSD13に移行し、ドリルねじでないと判定(一般ねじか、タッピンねじと判定)した場合にはステップSD13〜SD15を飛ばしてステップSD16に移行する。
ステップSD13では、回転位置検出部55dを通じて得られる位置データを基にストール状態となっていないかを判定し、ストール状態でないと判定した場合には次のステップSD14に移行し、ストール状態であると判定した場合には後述するステップSD33に移行する。ステップSD14では、回転位置検出部55dにより得られる位置データを基にビット3がC点に到達したか否かを判定し、C点に到達したと判定した場合には次のステップSD15に移行する。なお、C点に到達していないと判定する場合には、ステップSD13に戻り、ストール状態であるか、あるいは、C点に到達したと判定されるまでの間、ステップSD13,SD14の処理をループして行うことになる。
ステップSD15では、設定された第3制限トルクでビット移動モータ32を駆動するべく駆動信号を出力する。これにより、ビット3を通じてねじSに付与される推力が変更される。そして、ねじSの種類がドリルねじ又はタッピンねじの何れかであるか否かを判定し(ステップSD16)、これらの何れかであると判定した場合には次のステップSD17に移行し、ドリルねじ及びタッピンねじの何れでもでないと判定(一般ねじと判定)した場合には、ステップSD17〜SD19を飛ばしてステップSD20に移行する。
ステップSD17では、回転位置検出部55dを通じて得られる位置データを基にストール状態となっていないかを判定し、ストール状態でないと判定した場合には次のステップSD18に移行し、ストール状態であると判定した場合には後述するステップSD33に移行する。ステップSD18では、回転位置検出部55dにより得られる位置データを基にビット3がD点に到達したか否かを判定し、D点に到達したと判定した場合には次のステップSD19に移行する。なお、D点に到達していないと判定する場合には、ステップSD17に戻り、ストール状態であるか、D点に到達したと判定されるまでの間、ステップSD17、SD18の処理をループして行うことになる。
ステップSD19では、設定された第4制限トルクでビット移動モータ32を駆動するべく駆動信号を出力する。これにより、ビット3を通じてねじSに付与される推力が変更される。
そして、回転位置検出部55dを通じて得られる位置データを基にストール状態となっていないかを判定し(ステップSD20)、ストール状態でないと判定した場合には次のステップSD21に移行し、ストール状態であると判定した場合には後述するステップSD33に移行する。ステップSD21では、回転位置検出部55dにより得られる位置データを基にビット3がE点に到達したか否かを判定し、E点に到達したと判定した場合には次のステップSD22に移行する。なお、E点に到達していないと判定する場合には、ステップSD20に戻り、ストール状態であるか、あるいは、E点に到達したと判定されるまでの間、ステップSD20,SD21の処理をループして行うことになる。
ステップSD22では、設定された第5制限トルクでビット移動モータ32を駆動するべく駆動信号を出力する。これにより、ビット3を通じてねじSに付与される推力が変更される。
そして、回転位置検出部55dを通じて得られる位置データを基にストール状態となるか、ビット3がG点に到達するかを待ち(ステップSD23)、これらの何れかの状態となった場合には、ビット移動モータ32に停止信号を出力してビット3の移動を停止させる(ステップSD24)。ビット3が停止した際に回転位置検出部55dを通じて得られる位置データを基に、ビット3の停止位置がF点の完了幅(+)、(−)の範囲内にあるか否かを判定し(ステップSD25)、完了幅の範囲内にあると判定した場合には次のステップSD26に移行し、完了幅の範囲内でないと判定した場合には後述のステップSD31に移行する。
ステップSD26では、主制御部52へF点完了信号を出力し、次のステップSD27では主制御部52から復帰信号が入力されるのを待つ。復帰信号が入力されると、ビット移動モータ32に逆転駆動信号を出力し、第3速度、定格トルク値でビット移動モータ32を逆転駆動させる(ステップSD28)。そして、回転位置検出部55dにより得られる位置データを基にビット3がA点に再び到達したか否かを待ち(ステップSD29)、A点に到達したと判定した場合には、主制御部52へ復帰完了信号を出力し(ステップSD30)、全ての処理を完了する。
なお、ステップSD25においてビット3の停止位置が完了幅の範囲内にないと判定した場合に移行するステップSD26では、ビット3の停止位置がG点に到達しているか否かを判定し(ステップSD31)、G点に到達していると判定した場合には主制御部52へG点完了信号を出力し(ステップSD32)、前述のステップSD27に移行する。また、ステップSD31においてビット3の停止位置がG点に到達していないと判定した場合には、ステップSD33に移行する。
ステップSD33は、前述のステップSD09、SD13、SD17、SD20、SD31より分岐して移行してくるものであり、正常なねじ締めが完了できなかった場合の処理を行うものである。そのため、主制御部52へNG信号を出力して、前述のステップSD27に移行するようにしている。
なお、この図17〜図20においては省略したが、このビット位置コントローラ55におけるねじ締め処理においては、主制御部52からの復帰信号入力を常時監視するようになっており、復帰信号が入力された場合には処理を中止し、ステップSD28からの処理に移行するようになっている。
本実施形態におけるねじ締め装置1は、上記のように構成されていることにより、図5〜8に示すような動作を行うことが可能となっている。なお、これらの図は、図2に示す機械装置部1Mよりチャックユニット13を省略しつつ模式的に表したものであり、各部に用いた符号は図2と共通のものとしている。以下、図5〜図8を用いて、詳細な動作の説明を行う。
図5に示すように、ねじ締め装置1は、装置本体BMの動作によりビット3の延在する方向が、ワークWに形成されためねじPの軸方向に合致するように位置合わせを行う。この際、ベースブロック31及びビット3が待機位置に位置するように、ベースブロック移動機構20を構成するベースブロック移動モータ23は原点位置において保持されるとともに、ビット移動機構30を構成するビット移動モータ32も原点位置において保持される(図11におけるO点を参照)。なお、この図では、矢印で示すように継手6よりエア(Air)が吸引されており、ビット3の先端にねじSが係合した状態で保持された状態を示している。
図5に示す状態より、ベースブロック移動機構20を構成するベースブロック移動モータ23を動作させることで、図6に示すように、ベースブロック31はベースブロック移動モータ23に接続されたボールねじ21とこれに係合する可動ナット22によって推力を与えられつつ、シャフト25に沿って定常速度で移動を行う。そして、ベースブロック31により支持されたねじ締めツール10及びスクリューガイド5はベースブロック31と一体となってワークWに向けて移動を行い、スクリューガイド5の先端が、ワークWの表面WSよりも所定のオフセット量Of1離間したねじ締め時ガイド位置にて停止する(図11におけるA点を参照)。このオフセット量Of1は、ビット3とこれに係合するねじSをワークWに形成されためねじPに向かって案内できるように十分に小さな値とするとともに、位置精度の悪化や振動等が生じた場合でもワークWにスクリューガイド5が当接して、ワークWの表面WSに傷を生じさせないよう十分に大きな値となるように設定している。
さらに、図6に示す状態より、ビット移動機構30を構成するビット移動モータ32を動作させることで、図7に示すように、可動プレート35はビット移動モータ32に接続されたボールねじ33とこれに係合する可動ナット34によって推力を与えられつつ、シャフト31aに沿って移動を行う。そして、可動プレート35により支持された回転部材2とこれに接続されたビット3は、可動プレート35と一体となってワークWに向けて設定された第1速度にて移動を行い、ビット3の先端に係合するねじSの先端が、ワークWのめねじPの上側、具体的にはベース部材W1よりも所定のオフセット量Of2離間したねじ穴手前位置にて停止する。なお、この位置は、ビット3の回転によるねじ締め込みを開始するねじ締め込み開始位置としても定義される(図11におけるB点を参照)。
図7に示す状態より、ビット移動機構30によってさらにビット3を移動させつつ、ねじ締めツール10を構成するビット回転モータ4によってビット3を介しねじSに回転力を与えることによって、図8に示すように、ねじSを完全に螺入させた状態とすることができる。なお、図7の状態よりねじSがめねじPに螺入され始め、図8の状態に至るまでの段階で、継手6によるエアの吸引は停止するようにしている。ねじ締め込み時において、ビット移動機構30によってビット3に所定の推力を与えることでねじSに押圧力を付与し、ビット回転モータ4による回転を行わせることで、ビット3がねじSの頭部から外れるカムアウトを抑制することができる。また、この推力を、ねじ種に合わせて適切に制御することにより、より適切なねじ締め込み作業を可能として、ねじSやワークWの変形や破損を防ぐとともに、ねじ締結を精度良く行うことが可能となっている。
さらに、上述したように、ビット移動機構30によって移動する部分は、ほとんど回転部材2とビット3のみに限られ、ビット移動モータ32により移動する部材が軽量となっていることから、駆動力を与えるための分解能をより高めることができるため、極めて低いビットの推力をより高精度に制御できる。また、上述したようにビット移動機構30により移動するストロークが小さく設定されていることから、可動プレート35を移動可能に支持するシャフト31aやボールねじ33等の部材同士の平行度などの相対位置調整が容易となり、可動プレート35の移動に際しての摺動抵抗を小さくすることができ、より一層ビット3の推力制御の高精度化を図ることが可能となっている。
加えて、可動プレート35の移動にかかわらず、回転部材35と接続軸4bとの間でピンCを介してトルク伝達が行うことが可能となっており、ビット3を回転させるためのトルク伝達も好適に与えることが可能となっている。
さらに、上述したねじ締め装置1を用いたねじ締め作業の詳細な手順について図1及び図11を基に説明する。まず、ねじ締め装置1によりねじSを締め付ける場合には、予め、ティーチング作業を行うことで、スクリューガイド基準位置及びビット基準位置を得て記憶部53に記憶させておく。さらに、制御手段1Cを構成する記憶部53に寸法データ設定テーブル、トルクテーブル、速度テーブル、ねじ種登録テーブル及びねじ締めポイントテーブルに必要な制御パラメータを設定する。この時、締付け対象がタッピンねじであって、C点での推力変更が不要になる場合には、トルクテーブルにおける第3制限トルクの設定は省略することができ、また、一般ねじの場合には、C点及びD点での推力変更が不要になるため、トルクテーブルにおける第3制限トルク及び第4制限トルクの設定を省略することができる。なお、この制御パラメータの入力設定は制御手段1Cに備えられた入力部51より行う。
締め付けるねじSの種類及びワークWのねじ締めポイントに対応した制御パラメータを設定した後、制御手段1Cの図示しないスタートスイッチが押され、これにより主制御部52にねじ締めスタート信号が入力されると、これに応じてガイド位置コントローラ54にはスクリューガイド5のねじ締め時ガイド位置(A点)が、ビット回転コントローラ56にはトルクCH、ビット位置コントローラ55にはねじ締めポイント番号がそれぞれ指定されるとともに、ガイド位置コントローラ54、ビット回転コントローラ56、ビット位置コントローラ55、エア吸引切換部57にそれぞれスタート信号が出力される。なお、ねじSはビット3の移動路上に設けられたチャックユニット13(図2参照)によって予め保持されている。
ガイド位置コントローラ54においては、主制御部52より指定されたねじ締め時ガイド位置(A点)に基づき、ベースブロック移動モータ23に駆動信号が出力される。これにより、ベースブロック31とともに、スクリューガイド5をねじ締めガイド位置(A点)まで移動する。このスクリューガイド5がねじ締め時ガイド位置(A点)へ移動する過程において、ねじSがスクリューガイド5の内部に吸引され、その頭部がビット3先端に係合する。
ビット回転コントローラ56においては、主制御部52から指定されたトルクCHに予め登録されている完了トルクが内部設定されるとともに、ビット回転モータ4に駆動信号が出力される。これにより、ねじ締めツール10のビット回転モータ4が駆動し、ビット3を回転させる。なお、完了トルクに代わり、完了トルクに対応する電流値を記憶させ、これを用いて制御を行わせるようにすることも可能である。
また、ビット位置コントローラ55においては、主制御部52から指定されたねじ締めポイント番号に一致するポイント番号を持つねじ締めポイントテーブルのレコードが選択され、同レコードの制御パラメータが取得される。この時、詳細な制御パラメータは、リレーションが組まれている寸法データ設定テーブル、トルクテーブル、速度テーブル、ねじ種登録テーブルの対応レコードからそれぞれ取得される。そして、取得された制御パラメータのうち、F点ポイントデータ、F−C間距離、F−D間距離、F−E間距離、F−G間距離、ねじ穴手前オフセットに基づいて、ビット3の推力及び移動速度の切換ポイントとなるB点、C点、D点、E点、G点が算出される。なお、これらの各点はF点ポイントデータを基準に算出される。つまり、本実施の形態においては、F点を示すF点ポイントデータがねじ締め基準位置として、前述のF−C間距離、F−D間距離、F−E間距離、F−G間距離、ねじ穴手前オフセットを寸法パラメータとして考えることができる。
上述のようにビット3の推力及び移動速度の切換ポイントが算出された後、ビット移動モータ32は第1制限トルクと第1速度で回転駆動するため、ビット3がその先端前方方向へ可動プレート35とともに高速で前進移動する。
ビット3が前進してねじSがB点に到達すると、これを受けてビット移動モータ32が第2制限トルクと第2速度で駆動されるようビット移動モータ32の駆動切換が行われる。これにより、ビット3の下降速度は、ねじSの種類に関係なく所定の低速度に切り換えられ、ねじ先端が高速でワークに衝突してワークW及びねじSを破損してしまう不具合が防止される。
また、第2制限トルク以降の制限トルクは、ねじSの種類に応じてその設定値が異なる。したがって、それらの制限トルクでビット移動モータ32が駆動されることによってビット3からねじSに負荷される推力もねじSの種類に応じて異なるものとなる。そこで、ここからは、ねじSの種類毎にB点以降のねじ締め動作について、それぞれ最も一般的な例を紹介していくこととする。
まず、一般ねじの場合について、図2を参照しつつ、図21(a)及び図22(a)を用いて説明を行う。
一般ねじの場合、予めワークWにはめねじPが形成されているので、最初からねじSを高い推力で押圧しておかなくても、ワークWにねじSを螺入していくことができる。逆に、最初からあまり高い推力を負荷すると、ねじS又はめねじPの破壊を招く恐れがある。したがって、一般ねじの場合、第2制限トルクは比較的低い値に設定され、よって、ねじSにはビット3を通じて低推力が負荷される。この時、ビット3はビット回転モータ4の駆動で回転しているため、ねじSは低推力が負荷された状態でワークWにねじ込まれる。
この一般ねじの場合、ねじ締めの過程で、下穴成形、めねじP成形は共に存在しないため、C点、D点は設定されず(図18のステップSD12及びSD16を参照)、ねじSがE点に達した時点、つまり、ねじSがワークWに着座する付近位置に達した時点、で次の推力への切換が行われる。
ねじSがE点に達して後は、締付けトルクの増大にともなってビット3がねじSの頭部から外れるカムアウトが生じやすくなる。したがって、このカムアウトを防止するため、ねじ込み位置がE点に到達すると、ビット移動モータ32が第5制限トルクにより駆動され、これによってねじSには高推力が負荷される。
次に、タッピンねじの場合について、図2を参照しつつ、図21(b)及び図22(b)を用いて説明を行う。
タッピンねじの場合、ワークWへのねじ込み開始直後から予め成形されている下穴にめねじPが成形され始め、これによって締付けトルクが増大する。この締付けトルクによるカムアウトを防止するため、タッピンねじの場合には、第2制限トルクが一般ねじの場合よりも高めの値に設定され、これにより、ねじSにはビット3を通じて中推力が負荷される。なお、このタッピンねじの場合、ねじ締めの過程で、下穴成形は必要ないため、C点は設定されない(図18のステップSD12を参照)。
ねじSがワークWの下穴にめねじPを成形し終わるD点までねじ込まれると、ビット移動モータ32は第4制限トルクで駆動される。これにより、ねじSにはビット3を通じて低推力が負荷される。ねじSがD点に達して後、E点に達するまでは、ワークWにめねじPが成形し終わっているので、締付けトルクも低い。したがって、D点からE点までの間は、一般ねじと同様に低推力でねじ込むのが最適なのである。ただし、下穴が有底である場合等には、ねじSを締め終わるまでめねじP成形が継続されるため、D点で推力を低推力に切換えることは好ましくない。この場合には、E点まで同じ中推力が維持されるか、あるいはD点で高推力に切り換えられるよう、第4制限トルクを設定しておくのがよい。こうして、ねじSがE点に達して後は、一般ねじの場合と同様に高推力がねじに負荷されてねじSの締め付けが行われる。
次に、ドリルねじの場合について、図2を参照しつつ、図21(c)及び図22(c)を用いて説明を行う。
ドリルねじの場合、ワークWへのねじ込み開始直後から下穴が成形され始めるため、この時に最終締付けトルクよりも大きな締付けトルクが発生する。従って、ドリルねじの場合には、第2制限トルクが他の制限トルクと比べて最も高い値に設定される。よって、B点を過ぎると、ドリルねじにはビット3を通じて超高推力が負荷される。これにより、下穴成形時に発生する締付けトルクによってビット3がカムアウトするのを防止しつつ良好に下穴成形を行うことができる。
ドリルねじがワークWに下穴を成形し終わるC点に到達すると、次に制限トルクは第3制限トルクに切り換えられる。ここからは下穴にめねじPを成形する工程になるため、この第3制限トルクでビット移動モータ32が駆動されることにより、ねじSには前述のタッピンねじの場合と同様、中推力が負荷される。これにより、ビット3のカムアウトを防止しつつ良好なめねじP成形を行うことができる。この後の推力変更は、基本的にタッピンねじと同様であるが、このドリルねじを締付ける際にも、ワークWが厚い場合にはC点及びD点で各適用される第3,第4制限トルク値を中推力以上の高い推力が負荷される値に設定しておくとよい。
上記のように、ねじSの種類に応じてビット3を介して与えられる推力が変更されつつねじSの締付けが行われる。その際、ねじSの締め付け状態の良否は、ビット回転モータ4の負荷電流値を基にトルク検出部56cにより得られる出力トルクを見ることにより判別される。つまり、ビット回転モータ4の出力トルクを完了トルクと比較することにより、ねじSが所定のトルクまで締付けられたかどうかを判別できるのである。こうして、ビット回転モータ4の出力トルクが完了トルクに達すると、ビット回転モータ4の駆動が停止されるとともに、ビット回転コントローラ56から主制御部52にOK信号が出力される。この時、所定時間経ってもビット回転モータ4の出力トルクが完了トルクに達しない場合には、ビット回転モータ4の駆動が停止されるとともに、ビット回転コントローラ56から主制御部52にNG信号が送られる。
また、ビット位置コントローラ55においては、エンコーダ22のパルス信号数を基にビット移動モータ32の移動量が0になった(ねじ締めツール10の移動速度が0になる)こと、又はねじSがG点に到達したことの何れかが判明すると、ビット移動モータ32の駆動が停止される。ここで、ビット移動モータ32の駆動を停止した位置が制御パラメータのうちのF点ポイントデータ、完了幅(+)及び完了幅(−)とで決定されるF点の許容範囲内に収まっている場合には、ビット位置コントローラ55から主制御部52にF点完了信号が送られる。また、G点に到達している場合には、主制御部52にG点完了信号が送られる。さらに、ビット移動モータ32の駆動停止位置が上記の何れにも該当しない場合には、主制御部52にNG信号が送信される。
主制御部52では、ビット回転コントローラ56及びビット位置コントローラ55から入力される前述の各信号を受け、ねじSの締付けトルク、ねじ込み高さの良否が判定され、これらに基づいた結果表示がなされる。このようにして、ねじ締め作業が完了すると、ビット移動モータ32及びベースブロック移動モータ23は逆転駆動され、これにより、ねじ締めツール10は待機位置O点に復帰して次の作業に備える。
以上のように、本実施形態におけるねじ締め装置1は、ねじSの頭部に係合可能なビット3とこのビット3を回転駆動させる回転駆動手段10Mを備えて成るねじ締めツール10と、このねじ締めツール10を支持するとともにビット3を内包しねじSを吸引するスクリューガイド5を設けたベースブロック31と、装置本体BMに対してベースブロック31をビット3の延在する方向に沿って移動可能に支持する第1の往復移動機構としてのベースブロック移動機構20と、ベースブロック31に対してビット3をこのビット3の延在する方向に沿って移動可能に支持する第2の往復移動機構としてのビット移動機構30と、回転駆動手段10M、ベースブロック移動機構20及びビット移動機構30の制御を行う制御手段1Cとを備えており、ビット移動機構30が、ベースブロック31とビット3の相対位置を間接的に検出して位置検出信号を出力する位置検出手段としてのエンコーダ32Eと、ビット3をねじSに押圧するべくビット3に推力を付与しつつこの推力の大きさを変更可能にした推力付与手段としてのビット移動モータ32とを備え、制御手段1Cは、ねじSを締め付ける際に、ビット移動機構30によってベースブロック31を移動させることでスクリューガイド5をその先端がワークWの表面WSに近接するねじ締め時ガイド位置(A点)に移動させ、ねじ締め時ガイド位置(A点)を維持した状態としてビット移動機構30によりビット3を移動させるとともに、エンコーダ32Eにより検出した位置検出信号に基づきビット移動モータ32によってビット3に与える推力を変更しつつ、回転駆動手段10Mによりビット3を回転させるべく制御を行うように構成したものである。
このように構成しているため、ベースブロック移動機構20によってベースブロック31とともにスクリューガイド5及びねじ締めツール10を移動させ、スクリューガイド5をワーク表面WSに近接させた状態とすることで、ねじSをワーク表面WSに近接させた状態として、ビット移動機構30によってねじSを移動させつつ、エンコーダ32Eによって検出可能なベースブロック31とビット3の相対位置に応じてビット移動モータ32によりねじSに推力を変更しつつ与えることで、回転駆動手段10Mによって締め込まれるねじSの締め込み過程に応じた適切な推力を与えるように制御することができる。この際、ねじSを回転させるためのビット3の動作をベースブロック移動機構20及びビット移動機構30によって2段階で行うようにしており、1段階目でねじSの位置合わせを行い、2段階目でねじSを締めるための推力を変更するように制御することで、よりねじ締めに適した精密な推力の制御を行うことができる。そのため、ねじSの締め込み過程においてねじSやワークWの破損を生じること無く、適切にねじSの締め込みを行うことが可能である。
また、ねじ締めツール10を構成する回転駆動手段10Mが、ベースブロック31に設けられたモータであるビット移動モータ4と、ビット移動モータ4とビット3におけるビット3の延在方向への相対変化を許容しつつビット移動モータ4の駆動軸4aよりビット3に回転トルクを伝達可能に構成したトルク伝達部10Tを備えるように構成していることから、ビット3を回転させるためのビット移動モータ4をベースブロック31側に設けることで、ビット移動機構30によって移動させる部分をより軽量化して、ねじ締め込みのためにビット3に与える推力をより精密に制御することが可能である
また、ビット移動機構30による移動可能なストロークを、ベースブロック移動機構20により移動可能なストロークよりも小さく設定するように構成していることから、ベースブロック移動機構20によりビット3の位置合わせを大きく行わせるとともに、ビット移動機構30のストローク範囲内における摺動抵抗の変化を小さくして推力の誤差を少なくすることができ、ねじSの締め込み過程における推力をより精密に制御することができる。
さらに、制御手段1Cが、ビット3に取り付けられたねじSの先端がめねじPの形成されるワークW2に近接するねじ締め開始位置(B点)と、ねじSが最終的に正しく取り付けられたねじ締め完了位置(F点)と、これらのねじ締め開始位置(B点)とねじ締め完了位置(F点)との間に設定された推力切換ポイントとを、スクリューガイド5がねじ締め時ガイド位置(A点)にある場合のベースブロック31に対するビット3の相対位置として設定するとともに、ねじ締め開始位置(B点)よりねじ締め完了位置(F点)に至るまでを推力切換ポイントによって区分した複数のねじ締め領域ごとに所定の推力パラメータを設定するパラメータ設定部として機能する記憶部52aを備えており、記憶部52aにより得られるねじ締め開始位置(B点)よりねじ締め完了位置(F点)に至る範囲内において、エンコーダ32Eにより得られる検出信号を基にして、推力切換ポイントに到達したと判断した場合に次の推力パラメータを読み込んでビット移動モータ32により与える推力を変更するべく制御を行うよう構成していることから、ねじ締め開始位置(B点)よりねじ締め完了位置(F点)までの間で、各推力切換ポイントに達するごとに、設定された推力パラメータに応じて推力付与手段により生じる推力を変更することができるため、締め付け過程に応じた適切な推力をねじSに与えることが可能である。
また、記憶部52aが、ねじ締め完了位置(F点)を基準とした推力切換ポイントの相対位置データを、ねじ種と関連づけて記憶しており、ねじ種を入力されることで、ねじ締め完了位置(F点)と相対位置データに基づいて推力切換ポイントの位置を設定するように構成していることから、ねじ種を入力するのみで推力切換ポイントを自動的に設定することができるため、多くのデータの入力を行うことなく簡便に設定を完了することが可能である。
そして、ベースブロック移動機構20及びビット移動機構30が、ACサーボモータと、このACサーボモータに接続したボールねじ21,33と、ボールねじ21,33の回転により往復移動する可動ナット22,34とを備えるように構成していることから、より簡単な構成で上述した機能を実現することが可能となっている。
さらに、ベースブロック移動機構20を構成するベースブロック移動モータとしてのACサーボモータ23に電磁ブレーキ23Bが設けられており、この電磁ブレーキ23Bを作動させることでビット移動モータ32により生じる推力以上の保持力で装置本体BMに対するベースブロック31の位置を保持可能に構成していることから、ビット移動モータ32によって推力を付与させつつねじSの締め込みを行う場合に、ベースブロック31の位置を安定化させることができ、より精度良くねじSの締め込みを行うことが可能である。
加えて、推力付与手段が、前記ビット移動機構30を構成するビット移動モータ32としてのACサーボモータであり、位置検出手段を、ACサーボモータに設けられたエンコーダ32Eとして構成していることから、推力付与手段及び位置検出手段を汎用的な装置を利用して簡単且つ安価に構成することができる。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、ねじ締め時ガイド位置(A点)においてスクリューガイド5の先端をワークWの表面WSよりオフセット量Of1だけ離間させるように設定していたが、ワークWに対してスクリューガイド5を当接させることによるワークWの損傷や変形が問題とならない場合にはオフセット量Of1をゼロ、すなわちスクリューガイド5の先端をワークWの表面WSに当接させた位置をねじ締め時ガイド位置(A点)としてもよい。
また、上述の実施形態では、ビット3によってねじSの締め込みを行う際に、スクリューガイド5をねじ締め時ガイド位置(A点)において保持するため、ベースブロック移動モータ23に設けられた電磁ブレーキ23Bを作動させるようにしていたが、ベースブロック移動モータ23による保持力がねじSに作用させる推力に対して十分に大きい場合には、電磁ブレーキ23Bを用いない構成としても差し支えない。
さらに、上述の実施形態では、ベースブロック31とビット3の相対位置を検出する位置検出手段として、ビット移動モータ32に設けられたエンコーダ32Eを利用し、これによって間接的に相対位置を検出するようにしていたが、レーザを用いた変位センサや、リニアエンコーダ等、他の検出装置を基に構成することも可能である。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。