JP2015050953A - 海苔レーザー加工装置及び海苔レーザー加工方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ところが、海苔シートは、金属、樹脂などとは異なり、厚さ1mmにも満たない食品であり、凹凸面を有するとともに、燃え易いという性質を有していることから、レーザー加工に適した加工対象物とはいえない。
例えば、海苔レーザー加工装置では、レーザーの照射熱で海苔シートの一部を焼失させることにより所望する形状に切り抜くようになっているものの、この照射熱は単にレーザーの照射ポイントに留まらず照射ポイントの周りにも伝達されることから、意図しない範囲まで焼失してしまい、思い(移動データ)通りの形状に切り抜けないことがあった。
また、複数枚の海苔シートを重ねて加工すると、加工後に海苔シート同士を離間させるときに切り抜いた絵柄等が破壊されることがあるため、海苔シートを一枚ずつ加工する必要があり、歩留まりが悪く、量産に不向きな加工対象物でもある。
そこで、海苔シート一枚あたりの加工時間を短縮しようとして、例えば、レーザーの照射ポイントの移動速度を速くすると、焼失部と非焼失部とが点在する点線となってしまい、思い(移動データ)通りの形状に切り抜けないこともある。
レーザー加工装置は、通常、レーザーの出力値とレーザー照射ポイントの移動速度とをそれぞれ個別に設定可能に構成されている。
そこで、発明者らは、レーザーによって切り抜かれる形状の精度を向上させるとともに加工時間の短縮化を図ることができる、海苔シートにとって最適なレーザーの出力値とレーザー照射ポイントの移動速度との関係を見出し、これを加工条件とする海苔レーザー加工装置及び海苔レーザー加工方法の発明に至ったものである。
レーザー装置3は、電力量22.2Wを最大出力値として出力値を選択可能に構成され、例えば、7.0W〜22.2Wの範囲内において、段階的に出力値を選択できるようになっている。
また、レーザー装置3は、ミラーの回転速度を調整することにより、照射ポイントの移動速度を選択可能に構成され、例えば、50〜600mm/秒の範囲において、段階的に移動速度を選択できるようになっている。
なお、照射ポイントの移動速度とは、例えば、海苔シートS(X−Y平面)上の一の照射ポイントから他の照射ポイントまでレーザーを照射したときの照射ポイントの移動速度をいい、海苔シートS以外の部分を照射しているときの速度は含まない。
風洞室5は、レーザー加工室4に連通し、レーザー加工室4内の空気を外部に排出可能な風洞51を備えている。
レーザー加工室4は、両側面に開口された吸気孔42と、海苔シートSの載置される載置面となる金網43と、を備え、金網43の下部は、風洞室5に連通可能に開口されている。
金網43は、ステンレス製のメッシュ構造物であり、例えば、5mm×5mm以上の開口目合いを有するとともに、レーザー加工室4に対して着脱可能に形成されている。
海苔シートSの載置面をこのような金網43とすることにより、海苔シートSは金網43と点又は線接触することから、金網43から海苔シートSへの伝熱が抑制され、海苔シートSの焦げ等が防止される。
このような構成により、金網43に載置された海苔シートSは、上面のみならず下面側においても空気に曝された状態にあることから、レーザーによる照射熱が効率的に放熱されることになる。
風洞51は、連結ホース6a,6b及び消化室6などを介して吸気装置(不図示)と接続され、風洞51内の空気が下方に向かって排気される。さらに、風洞51内の空気の排気により吸気孔42を介してレーザー加工室4内に外気が流入する。
この外気により、海苔シートSが冷却されるとともに、切り抜かれた海苔片が金網43を通じて下方の風洞51に誘導される。
このような構成により、海苔シートSは下方に吸い寄せられて金網43に密着することから、凹凸のない平らな形状となるため、加工精度を向上させることができる。
また、載置された海苔シートSが外気により冷却されつつ、切り抜かれた海苔片が金網43を介して風洞51内に誘導されることから、海苔片が長い時間に亘って海苔シートS上に留まることによる影響を抑制することができる。すなわち、切り抜かれた海苔片は未だ燃焼中であり、これが海苔シートS上に長く滞在すると焼失範囲を無用に増大させることになるが、排気により海苔片を風洞51内にすばやく誘導することにより、焼失範囲の増大を抑制することができる。
図2(b)に示すように、消火室6は、吸気装置により吸気される空気の流路でありながら、連結ホース6aと連結ホース6bとをつなぐ中継バッファー室となっている。
金属通路61は、連結ホース6aと連結ホース6bとの間の空間を仕切るように配置され、例えば、断面コの字状のステンレス製レールが交互に対向配置された格子状部材で構成されている。
このような構成により、連結ホース6aを介して消火室6内に流入する海苔片は断面コの字状のレールの内側面に衝突する。これにより、海苔片から熱が奪われて燃焼中の海苔片が消火されることになる。
さらに、消火された海苔片は、金属通路61を通り抜けて消火室6から流出し、連結ホース6bを介して図示しない集塵室に導かれるようになっている。
このように吸気装置により吸気される空気の流路に迷路状の金属通路61を設けることにより、例えば、海苔片が集塵室に流入して捕集されるときには、既に消火された状態にあることから、集塵室からの出火(例えば、フィルター等の燃焼)が防止される。
フィルターは活性炭を有するとともに積層タイプの多段式(例えば、6段)で構成され、脱臭が図られるようになっている。
また、集塵室は、下部から吸い上げた空気が多段式フィルターを通って上方へ向けて流通する吸気流路を備え、自重を利用して海苔片を捕集できるようになっている。
吸気流量は、例えば、1〜15m3/分の範囲で調整可能であり、吸気により切り抜き形状が破壊されることなく海苔片を迅速に回収するためには、10〜15m3/分の範囲での使用が好ましい。
例えば、図2(a)に示すように、金網43の上に載置された一枚の海苔シートSにレーザーRを照射する。レーザー装置3は、出力をオンオフさせることなくある出力値を維持したままミラーの回転角度を連続的に変更することにより、レーザーRの照射方向を、例えば、R1からR3まで連続的に変化させる。これにより、焦点となる照射ポイントは、例えば、海苔シートS上のP1からP3までに連続して移動する。このような制御により、例えば、海苔シートSにはP1からP3までに亘るスリット状の切り抜き孔が形成されることになる。
焼失範囲は、レーザーの出力値が大きいほど広くなり、レーザーの出力値が小さいほど狭くなる傾向がある。また、レーザーの出力値が同じであっても照射ポイント間の移動速度が速いほど狭くなり、遅いほど広くなる傾向がある。
また、レーザーの出力値がある値以下のときは、照射ポイント間の移動速度が遅いほど広くなる傾向はあるが、加工時間が長くなるという弊害も生じる。
具体的には、図3に示すように、レーザーの出力値と照射ポイントの移動速度の組合せからなる複数の加工条件を設定し、それぞれ異なる一枚の海苔シートSに対して各加工条件でレーザーによる切り抜き加工を行った。
レーザーの出力値は、14.0W〜22.2Wの範囲内において段階的に6通り設定し、これに対して照射ポイントの移動速度は、100mm/秒〜400mm/秒の範囲内において50mm/秒単位で段階的に7通り設定し、これらを組合せて同一の移動データに基づいて切り抜き加工を行った。
焼失の成否は、切り抜き加工の正確さ(切り抜かれているか否か)を左右する重要な判断基準であり、例えば、レーザーを連続照射しながら移動させたときには、焼失ラインが連続線となる方が好ましく、焼失部と非焼失部とが点在する点線となってしまう場合には、レーザー照射量の不足する量産に不向きな加工条件であると判断し、図中「△2」をマークした。
一方、加工時間の長短は、量産性の適否を左右する重要な判断基準であり、加工時間が短い方が好ましく、加工時間が長い場合には、焼失ラインが連続線となったとしても、量産に不向きな加工条件であると判断し、図中「△1」をマークした。図中「△1」をマークしたときの海苔シート一枚あたりの加工時間は、例えば、1分以上であった。この時間は移動データのデータ量に左右されるものの、量産前提の移動データを用いて加工したため、実用上好ましくないと判断した。
図中「〇」は、加工時間が短く、かつ、焼失ラインが連続線となる良好な加工条件の組合せを示している。
なお、「−」は、切り抜き加工を行っていない組合せを示している。
この結果から、レーザーの出力値が増加するほど、照射ポイントの移動速度を速くしても焼失ラインが連続線となる傾向が見られる。
ただし、本実施形態の加工条件では、各数値を段階的に設定していることから、「〇」と「△」との間の値においても「〇」がマークされる可能性がある。
そこで、明らかに「△1」又は「△2」のマークされている組合せ以外を、加工時間が短く、かつ、焼失ラインが連続線となる良好な加工条件の組合せ、すなわち「〇」とみなすことにする。
そうすると、良好な加工条件の組合せは、レーザーの出力値が16.8Wを超える値であるとともに、レーザー照射ポイントの移動速度が下限値と上限値とを有する所定の速度範囲内の値となる。
このときの下限値は、100mm/秒を超え150mm/秒以下の値となり、上限値は、200mm/秒を最低値としながら、レーザーの出力値の増加に応じて最低値よりも速い速度に変移する値となる。
第一に、照射ポイントの移動速度が100mm/秒以下では、焼失ラインが連続線となったとしても、タクトタイムが長く生産効率が悪いことから、レーザーの出力値の大小にかかわらず、加工条件としては採用に至らないこと。
第二に、照射ポイントの移動速度を100mm/秒を超える値に設定したときでは、レーザーの出力値を少なくとも16.8Wを超える値に設定する必要があること。
第三に、レーザーの出力値を少なくとも16.8Wを超える値に設定したときでは、レーザーの出力値ごとに異なる所定の照射ポイントの移動速度を超えると、レーザーの移動軌跡において焼失部と非焼失部とが点在する点線となることから、レーザーの出力値に応じて照射ポイントの移動速度の上限値があること。つまり、加工条件となる照射ポイントの移動速度にはレーザーの出力値に応じた上限値があり、その上限値はレーザーの出力値の増加に応じて徐々に速い速度に変移すること。なお、このことから22.2Wを超えるレーザー出力値でも22.2W以下と同様な傾向を有しているものと推測され、レーザーの出力値が22.2Wを超える場合においても上限値はレーザーの出力値の増加に応じて徐々に速い速度に変移することが予測される。
以上のことから、レーザーによる海苔シートSの切り抜き加工にあたり、レーザーの出力値を16.8Wを超える値に設定するとともに、レーザー照射ポイントの移動速度を下限値と上限値とを有する所定の速度範囲内の値に設定して、海苔シートSにレーザーを照射することが好ましく、下限値を、100mm/秒を超え150mm/秒以下の値とし、上限値を、200mm/秒を最低値としながら、レーザーの出力値の増加に応じて最低値よりも速い速度に変移する値とすることが好ましい。
例えば、海苔レーザー加工装置1は、レーザー装置3を制御可能な制御部7(コンピュータ)を有し、この制御部7のハードディスク等の記憶手段に、移動データとともに上記の好ましい加工条件がデータとして記憶され、このデータに基づいてレーザー装置3(例えば、出力値制御用インバータ、ミラー制御用モータ)が制御されるようになっている。
その結果、レーザー装置3は、レーザーの出力値を16.8Wを超える値としながら、レーザー照射ポイントの移動速度を上記の下限値と上限値とを有する速度範囲内の値に設定して、海苔シートSにレーザーを照射するという海苔レーザー加工方法を実行する。
これにより、加工時間が短く、かつ、焼失ラインが連続線となる海苔シートSを製造することができる。
また、照射ポイントの移動速度には、実速度のみならず平均速度を含むこともできる。
このようにスリット幅にムラができるのは、レーザーの照射熱が単にレーザーの照射ポイントに留まらず照射ポイントの周りに急速に伝達されることで起こる現象である。このような現象の発生は、単位面積あたりのレーザー照射量の多少に左右され、現象の発生を回避するためには、レーザー出力値と照射ポイントの移動速度とのバランスが重要となる。
特に、レーザー出力値が高く、照射ポイントの移動速度が遅いほど焼失範囲の安定性が損なわれるものと考えられることから、焼失範囲の安定性を、加工条件の組合せの良否の判断基準に加えた場合、例えば、図3中において、「○」の範囲は、レーザー出力値が増加するほど照射ポイントの移動速度が速い方へシフトしていくものと予想される。
つまり、加工条件の組合せの良否の判断にあたり、加工時間の長短と焼失の成否を判断基準としたときには、照射ポイントの移動速度の下限値を、100mm/秒を超え150mm/秒以下の値としたが、判断基準に焼失範囲の安定性を加えた場合では、下限値は、100mm/秒を超え150mm/秒以下の値を最低値としながら、レーザーの出力値の増加に応じてこの最低値よりも速い速度に変移する値となることが予測され、これを加工条件として加えることもできる。
2 本体フレーム
3 レーザー装置
4 レーザー加工室
41 扉
42 吸気孔
43 金網
5 風洞室
6 消火室
61 金属通路
7 制御部
Claims (4)
- 一枚の海苔シートにレーザーを照射して所定の形状に切り抜く海苔レーザー加工装置であって、
前記レーザーの出力値を16.8Wを超える値に設定するとともに、
レーザー照射ポイントの移動速度を、下限値と上限値とを有する所定の速度範囲内に設定して、海苔シートにレーザーを照射し、
前記下限値を、100mm/秒を超え150mm/秒以下の値とし、
前記上限値を、200mm/秒を最低値としながら、前記レーザーの出力値の増加に応じて前記最低値よりも速い速度に変移する値とする
ことを特徴とする海苔レーザー加工装置。 - 前記海苔シートの載置される網状の載置面と、
前記載置面の下部側に所定の空間を有して形成される風洞と、
前記風洞内を吸気する吸気手段と、を備える
ことを特徴とする請求項1記載の海苔レーザー加工装置。 - 前記吸気手段により吸気された空気の流路に、
燃焼物の衝突する迷路状の金属通路を設けた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の海苔レーザー加工装置。 - 一枚の海苔シートにレーザーを照射して所定の形状に切り抜く海苔レーザー加工方法であって、
前記レーザーの出力値を16.8Wを超える値に設定するとともに、
レーザー照射ポイントの移動速度を、下限値と上限値とを有する所定の速度範囲内に設定して、海苔シートにレーザーを照射し、
前記下限値を、100mm/秒を超え150mm/秒以下の値とし、
前記上限値を、200mm/秒を最低値としながら、前記レーザーの出力値の増加に応じて前記最低値よりも速い速度に変移する値とする
ことを特徴とする海苔レーザー加工方法。
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