JP2015046846A - アンテナ装置設計方法及びアンテナ装置 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1のアンテナ装置では、上述のような周期配列構造により形成されるメタマテリアル反射板が用いられている。このメタマテリアル反射板は、例えば、板面が導体(金属)で皮膜された誘電体基板(プリント基板)の導体被膜部分を所定の格子状周期配列パターンでパターニングすることで作製される。このようなメタマテリアル反射板は、人工的な周期配列構造により負の誘電率を実現し、その格子状の周期配列構造の周期間隔や形状に対応したバンドギャップ帯域を有している。バンドギャップ帯域とは、当該メタマテリアル反射板に入射する電磁波が所定の比率以上で反射する場合における当該電磁波の周波数帯域のことである。
特に、ある周波数の電磁波のビーム幅を調整しようとして、当該周波数に対応するメタマテリアル反射板の形状を調整した場合に、他の周波数の電磁波のビーム幅も意図せずに変動してしまうことが想定される。このような場合、アンテナ設計者は、電磁界シミュレーション等でトライアンドエラーを繰り返しながら所望のビーム幅に合わせ込む必要があり、設計に多大な労力を費やすこととなる。
以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置を、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。この図において、符号1はアンテナ装置である。なお以降の説明に用いる各図面においては、それぞれの図に図示した空間において互いに直交するx軸、y軸、z軸の方向を規定して説明する。
放射素子10は、異なる複数の周波数からなる電磁波を大気中への放射するアンテナ素子である。放射素子10の給電点10aには、図示しない高周波電源が接続されており、当該高周波電源から入力される高周波信号に基づいて電磁波を大気中へ放射する。なお放射素子10は、大気中を伝搬する異なる複数の周波数からなる電磁波を吸収して受信する受信素子としても機能する。
本実施形態に係る放射素子10は、例として、800MHz、2GHz、4GHzの3つの異なる周波数からなる電磁波を大気中へ放射する。
なお、メタマテリアル反射板110と、メタマテリアル反射板111とは、それぞれ異なる周期配列パターンが付されており、これにより、メタマテリアル反射板110、111は、互いに異なる特性を有している。メタマテリアル反射板110、111の周期配列パターン及びその特性の例については後述する。
なお、メタマテリアル反射板110、111は、後述するアンテナ装置1の構成及びメタマテリアル反射板110、111それぞれの反射特性に基づき、放射素子10が放射する電磁波のうち、互いに異なる一の周波数の電磁波のみを反射するように構成されている。例えば、メタマテリアル反射板110は、放射素子10が放射する電磁波(4GHz、2GHz、800MHz)のうち、4GHzの電磁波のみを反射するように構成され、メタマテリアル反射板111は、放射素子10が放射する電磁波のうち、2GHzの電磁波のみを反射するように構成されている。
なお金属反射板12は、後述するように、アンテナ装置1において、放射素子10が放射する電磁波のうち、メタマテリアル反射板110、111から透過されてきた最も低い周波数(800MHz)の電磁波のみを反射するように構成されている。
図1に示すように、メタマテリアル反射板110、111及び金属反射板12は、放射素子10と、それぞれ一定の離間距離をもって、放射素子10に対して同一方向(−x方向)に設置されている。また、メタマテリアル反射板110、111及び金属反射板12は、いずれもその板面が互いに平行になるように配されている。
なお、メタマテリアル反射板110、111及び金属反射板12の配列順については、以下に説明する。
次に、メタマテリアル反射板110、111、及び、金属反射板12の配列順について、図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、4GHzの電磁波を反射するメタマテリアル反射板110は、放射素子10から距離S1だけ−x方向に離間された位置に配されている。また、2GHzの電磁波を反射するメタマテリアル反射板111は、放射素子10から、距離S1よりも大きい距離S2だけ−x方向に離間された位置に配されている。
このように、アンテナ装置1のメタマテリアル反射板110、111は、放射素子10から所定距離だけ離間されながら、それぞれの板面が平行となって、各板面の法線ベクトルの向きが+x方向に一致するように配されている。
このような配列順により、金属反射板12には、メタマテリアル反射板110、111が反射する4GHz及び2GHzの電磁波が投射されず、メタマテリアル反射板110、111がともに透過する800MHzの電磁波のみが投射されることとなる。したがって、金属反射板12は、放射素子10が放射する電磁波のうち、最も低い周波数であるf3=800MHzのみを反射する反射板として機能する。
なお、本実施形態に係るアンテナ装置1の放射素子10は、図1に示すように、±z軸に沿って延在したダイポールアンテナとして図示しているが、他の実施形態に係るアンテナ装置1によっては、このような態様に限定されない。例えば、放射素子10は、モノポールアンテナ、パッチアンテナ、またはホーンアンテナ等であってもよい。
次に、メタマテリアル反射板110、111の板面に付された周期配列パターンの例、及び、その周期配列パターンによって得られるメタマテリアル反射板110、111の特性について、図3、図4を参照しながら説明する。
図3(a)に示すメタマテリアル反射板110の周期配列パターンは、各パラメータをd1=115.0mm、a11=40.1mm、a12=105.0mm、w11=2.6mm、w12=11.3mmとしている。
また、図3(b)に示すメタマテリアル反射板111の周期配列パターンは、d2=115.3mm、a2=105.3mm、w2=11.5mmとしている。
なお、メタマテリアル反射板110、111は、ともに基板厚1.6mm、比誘電率2.6 (誘電正接tanδ at 12GHz) のプリント基板を用いている。
ここで、反射特性S11とは、メタマテリアル反射板110、111に対し、特定の強度の電磁波を入射した場合において、どの程度の強度の電磁波がメタマテリアル反射板110、111から反射するか、を表す数値(反射率)である。
図4に示すグラフは、横軸に電磁波の周波数f(GHz)を、縦軸に反射特性S11(dB)を示している。すなわち、図4に示すグラフは、反射特性S11の周波数fに対する依存性を示している。
すなわち、メタマテリアル反射板110は、放射素子10が放射する電磁波(4GHz、2GHz、800MHz)のうち、最大周波数の4GHzの電磁波のみを反射可能とし、それ以外の周波数である2GHz、800MHzの電磁波を透過する特性を有するように周期配列パターンが形成される。
ここで、「透過する」とは、メタマテリアル反射板110、111が特定の周波数帯域に属する周波数の電磁波を完全に透過するという意味ではなく、メタマテリアル反射板110の反射特性S11が所定値以下(例えば−10dB以下)であることを表している。
よって、メタマテリアル反射板111は、放射素子10から自身に投射される周波数(2GHz、800MHz)のうち最大周波数の2GHzの電磁波のみを反射可能とし、それ以外の周波数である800MHzの電磁波を透過する特性を有するように、周期配列パターンが形成される。
このように、メタマテリアル反射板110、111のそれぞれは、自身に投射される電磁波のうち最大の周波数以外の周波数の全てが、反射率が低くなる特定の周波数帯域に属するように、格子状周期配列パターンが形成されている。
以上に述べたメタマテリアル反射板110、111、金属反射板12の構成(図1、図2、図3)およびその特性(図4)からなるアンテナ装置1は、以下のような手順で設計することで、放射素子10が放射する電磁波のビーム幅を、その周波数ごとに独立して設定することができる。
図5(b)に示す800MHzのビーム幅の反射板サイズ依存性によれば、特にL3/λ3が1以上の範囲において、ビーム幅[deg]は単調増加する傾向を示している。設計者は、このビーム幅の反射板サイズ依存性を利用して、800MHzの電磁波のビーム幅を、金属反射板12のサイズ(L3)に基づいて所望の値に設定することができる。例えば、800MHzのビーム幅を90°としたい場合、設計者は、L3/λ3=1となるように、金属反射板12の辺の長さL3を決定する。
設計者は、800MHzのビーム幅を所望の値とするようにL3を決定した後、図6(a)に示すように、放射素子10に対し、メタマテリアル反射板111を対向して配置し、メタマテリアル反射板111の板面の大きさ(辺の長さL2)を決定する。
ここで、図6(a)に示す状態における2GHzのビーム幅は、メタマテリアル反射板111の辺の長さL2に対して図6(b)に示すような依存性を有する。なお、図6(b)の横軸は、L2/λ2(λ2は、周波数2GHzの電磁波の波長)で示している。また、図6(b)において、放射素子10とメタマテリアル反射板111との離間距離s2は43.5mmとしている。
したがって、設計者は、このビーム幅の反射板サイズ依存性を利用して、メタマテリアル反射板111の辺の長さL2を調整して2GHzの電磁波のビーム幅のみを独立して所望の値に設定することができる。例えば、2GHzのビーム幅を90°としたい場合、設計者は、L2/λ2=2.0となるように、メタマテリアル反射板111の辺の長さL2を決定する。一方、800MHzのビーム幅は、L2に対する依存性が小さいため、図5の段階で設定したビーム幅90°が維持される。
設計者は、2GHzのビーム幅を所望の値となるようにL2を決定した後、図7(a)に示すように、放射素子10に対しさらにメタマテリアル反射板110を対向して配置し、メタマテリアル反射板110の板面の大きさ(辺の長さL1)を決定する。
ここで、図7(a)に示す状態における4GHzのビーム幅は、メタマテリアル反射板110の辺の長さL1に対して図7(b)に示すような依存性を有する。なお、図7(b)の横軸は、L1/λ1(λ1は、周波数4GHzの電磁波の波長)で示している。また図7(b)において、放射素子10とメタマテリアル反射板110との離間距離s1は18.8mmとしている。
したがって、設計者は、このビーム幅の反射板サイズ依存性を利用して、メタマテリアル反射板110の辺の長さL1を調整して4GHzの電磁波のビーム幅のみを独立して所望の値に設定できる。例えば、4GHzのビーム幅を90°としたい場合、設計者は、L1/λ1=0.72となるように、メタマテリアル反射板110の辺の長さL1を決定する。一方、800MHz及び2GHzのビーム幅は、L1に対する依存性が小さいため、図5、図6の段階で設定したビーム幅90°が維持される。
すなわち、メタマテリアル反射板110、111は、それぞれが反射する一の周波数(4GHz、2GHz)の電磁波のビーム幅のみに基づきながら、そのビーム幅が所望のビーム幅となるようにメタマテリアル反射板110、111それぞれの板面の大きさが決定されている。
図8には、上述の図5〜図7それぞれの段階において、800MHz、2GHz、4GHzのビーム幅がそれぞれ90°となるようなL3、L2、L1の値を決定した場合におけるアンテナ装置1の放射特性を示している。すなわち、図8は、アンテナ装置1のL3、L2、L1を、それぞれL3=λ3、L2=2.0λ2、L1=0.72λ1と決定した場合の放射特性である。
図8(a)〜(c)に示す水平放射特性の水平面は、xy平面(図1等を参照)であり、アンテナ装置1が配された位置を中心として、その水平面(xy平面)に沿った全方位についての電磁波の放射強度を図示したものである。
図8(a)〜(d)に示すように、図5〜図7それぞれの段階において、半値ビーム幅が90°となるように各板面のサイズを決定したアンテナ装置1は、全てのメタマテリアル反射板110、111を配置した後も、各周波数において半値ビーム幅90°が維持されている。すなわち、アンテナ装置1の設計者は、低周波数側の電磁波を反射する反射板から順に、各々が反射する周波数の半値ビーム幅(反射板のサイズ)を決定していくことで、他の周波数のビーム幅への影響を最小限に抑えながら、各周波数のビーム幅を独立して設定することができる。
また、金属反射板12は、金属板で構成されるため、アンテナ素子10が放射する全周波数の電磁波について反射可能である。よって、本実施形態に係るアンテナ装置1のように最後方の反射板を金属反射板12とすることによって、放射素子10が放射する周波数の電磁波のうち、意図しない不要な周波数の電磁波が後方(−x方向)に放射されることを防止することができる。
これにより、当該他の実施形態に係るアンテナ装置1は、より多くの周波数からなる電磁波の各々のビーム幅を独立して設定することができる。
また、上述したアンテナ装置1は、入出力可能な電磁波の周波数を4GHz、2GHz、800MHzの3種とし、メタマテリアル反射板110、111及び金属反射板12が、各周波数の電磁波に対応する反射板として機能するものとして説明した。しかし、各反射板の反射可能な周波数は、上記4GHz、2GHz、800MHzのみに限定されることはなく、例えば、メタマテリアル反射板110、111は、その導体、誘電体の周期配列構造に基づいて、反射可能とする周波数帯域を任意の周波数に設定可能である。
このようにすることで、アンテナ装置1が搭載される装置によって、アンテナ装置1全体としての形状またはサイズに制限が課せられる場合であっても、L1、L2、L3若しくはs1、s2、s3、またはこの両方を調整することで柔軟に対応することができる。
10・・・放射素子
10a・・・給電点
110、111・・・メタマテリアル反射板
12・・・金属反射板
Claims (6)
- 異なる複数の周波数からなる電磁波を放射する放射素子と、
前記放射素子が放射する電磁波のうち、一の周波数からなる電磁波のみを反射する複数のメタマテリアル反射板と、を有するアンテナ装置の設計方法であって、
前記複数のメタマテリアル反射板それぞれが反射する前記一の周波数の電磁波のビーム幅のみに基づきながら、そのビーム幅が所望のビーム幅となるように当該メタマテリアル反射板それぞれの板面の大きさ、または、前記放射素子からの離間距離を決定する
ことを特徴とするアンテナ装置設計方法。 - 前記複数のメタマテリアル反射板の板面の大きさ、または、前記放射素子からの離間距離を、反射する電磁波の周波数が低いメタマテリアル反射板から順に決定していく
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置設計方法。 - 前記複数のメタマテリアル反射板のうち、前記放射素子から最も離間されて配されるべきメタマテリアル反射板の位置に、当該メタマテリアル反射板の代わりに、板面が導体のみからなる金属反射板を配する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置設計方法。 - 異なる複数の周波数からなる電磁波を放射する放射素子と、
前記放射素子が放射する電磁波のうち、一の周波数の電磁波のみを反射する複数のメタマテリアル反射板と、を有するアンテナ装置であって、
前記複数のメタマテリアル反射板は、それぞれが反射する前記一の周波数の電磁波のビーム幅のみに基づきながら、そのビーム幅が所望のビーム幅となるように当該メタマテリアル反射板それぞれの板面の大きさ、または、前記放射素子からの離間距離が決定されている反射板である
ことを特徴とするアンテナ装置。 - 前記複数のメタマテリアル反射板は、
誘電体または導体の少なくともいずれか一方の格子状周期配列パターンに基づいて定まる特定の周波数帯域に属する電磁波のみを透過し、それ以外の電磁波を反射する反射板であって、
前記放射素子から所定距離だけ離間されながら、それぞれの板面の法線ベクトルの向きが一致するように配されるとともに、メタマテリアル反射板のそれぞれは、自身に投射される電磁波のうち最大の周波数以外の周波数の全てが前記特定の周波数帯域に属するように、前記格子状周期配列パターンが形成される
ことを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。 - 前記複数のメタマテリアル反射板のうち、前記放射素子から最も離間されて配されるべきメタマテリアル反射板の位置に、当該メタマテリアル反射板の代わりに、板面が導体のみからなる金属反射板が配されている
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のアンテナ装置。
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Legal Events
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A521 | Request for written amendment filed |
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A02 | Decision of refusal |
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