JP2015040358A - 配向性セルロースナノファイバーシートおよびその調整方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡易に工業化への適用が可能で、一度の操作で自在に同一平面内に任意の数と方向にCNFを配向させることが可能な、配向性CNFシートの製造方法、およびかかる製造方法によって得られる配向性CNFシートを提供する。【解決手段】 本発明はCNFシートをCNF懸濁液の吸引濾過により調製する際、濾過フィルター上にプレートを立てた状態で行うことを特徴とする。この方法により得られたCNFシートは、吸引濾過の際に配置するプレート面に沿ってCNFが平行に配向する特徴を有する。配置するプレートを任意の形状にデザインすることにより一度の操作によって同一シート内に任意の数と方向にCNFが配向した配向性CNFシートを簡易に調製可能な調製方法である。【選択図】 図1
Description
本発明は同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性セルロースナノファイバーシートの調製方法に関する。
セルロースは、樹木や植物、ホヤに代表される一部の動物、および酢酸菌に代表される一部の菌類等により産生されることが知られており、このセルロースが繊維状に集合した構造を有するものをセルロースファイバーと呼ぶ。特に繊維幅が 100 nm 以下でアスペクト比が 100 以上のものは一般的にセルロースナノファイバー(以下CNFと表記する)と呼ばれ、軽量、高強度、低熱膨張等の優れた性質を有する。
天然においてCNFは、酢酸菌に代表される一部の菌類等により産生されたCNFを除くと単繊維として殆ど存在せず、CNF間の水素結合に代表される相互作用により強固に集合したマイクロサイズの繊維幅を有した状態で存在し、そのマイクロサイズの繊維幅を有した繊維もさらに高次の集合体として存在する。
天然においてCNFは、酢酸菌に代表される一部の菌類等により産生されたCNFを除くと単繊維として殆ど存在せず、CNF間の水素結合に代表される相互作用により強固に集合したマイクロサイズの繊維幅を有した状態で存在し、そのマイクロサイズの繊維幅を有した繊維もさらに高次の集合体として存在する。
製紙の過程では、これらの繊維集合体である木材をクラフト蒸解法に代表されるパルプ化により、マイクロサイズの繊維幅を有するパルプの状態にまで解繊し、これを原料に紙を製造している。このパルプの繊維幅は、原料により異なるが、広葉樹を原料とした晒クラフトパルプで 10 ~ 20 μm、針葉樹を原料とした晒クラフトパルプで 20 ~ 80 μm、竹を原料とした晒クラフトパルプで 10 ~ 20 μm 程度である。
これらマイクロサイズの繊維幅を有するパルプは、前述のとおりCNFが水素結合に代表される相互作用により強固に集合した繊維状の形態を有する繊維であり、さらに解繊を進めることによりナノサイズの繊維幅を有するCNFを単繊維として得ることができる。
かかる CNF の調製方法は多々報告されているが、酸加水分解法や TEMPO 触媒酸化法といった化学的処理により得る手法と、グラインダー法や高圧ホモジナイザー法、水中対向衝突法といった機械的処理により得る手法の2種類に大別される。
化学的処理によるCNFの調製方法であるTEMPO触媒酸化法は、木材の晒クラフトパルプに代表されるマイクロサイズの繊維幅を有するCNF集合体のCNF表面の水酸基を、TEMPO触媒を用いてカルボキシル基に変換しNa塩にすることにより、水中でCNF間の静電反発と浸透圧効果が作用し、簡単な水中解繊処理でCNFのナノ分散を可能にする。
物理的処理によるCNFの調製方法である水中対向衝突法は、木材の晒クラフトパルプに代表されるマイクロサイズの繊維幅を有するCNF集合体の懸濁水を高圧下で対向衝突させることにより、CNF間の相互作用のみを解裂させてナノ微細化を行う。
これらの手法等により得られたCNFは、その特徴を利用したさまざまなアプリケーションの提案がなされている。すなわち、軽量・高強度・低熱膨張といった繊維自体の特徴や、ナノサイズの繊維幅という形態的特徴を利用し、プラスチック等の樹脂の補強材や透明フィルム等への応用が期待されている。
CNFを利用していくにあたり問題となるのがCNFの制御である。CNFは繊維幅が 100 nm 以下と小さいうえ、そのままではセルロース分子に由来する水酸基同士の水素結合により凝集等が促進される。そのためプラスチック等の樹脂の補強材として利用する際には分散し難く、CNF表面の化学修飾等による分散性向上の試みも行われている。また透明フィルム等の調製においては、フィルム内で3次元ネットワーク構造をとるCNF間に空隙が生じることにより空気を内包し、その空気とCNFの光の屈折率の差が透明性を悪化させてしまう。
CNFの特徴を最大限に利用するためにはCNFの制御は必要不可欠であり、研究者のみならずCNFを利用した工業製品生産においても重要な課題といえる。
CNFを制御する試みとしては、CNF表面の化学修飾による凝集性制御や、延伸や磁場・電場を用いたCNFの配向性制御の試みも行われている。配向性制御として、例えば非特許文献1によれば、ホヤの酸加水分解から調製した微結晶セルロース懸濁水をスライドガラス上に滴下し、7 T の磁場をかけることにより微結晶セルロースが一軸方向に配向したとの報告がある。また非特許文献2によれば、ホヤのセルロースウィスカー懸濁水をフォルムバールを貼った透過型電子顕微鏡観察用のグリッド上に滴下し、2000 Vcm-1, 1 kHz の電場を印加することによりセルロースウィスカーが一軸方向に配向したとの報告がある。また非特許文献3によれば、藻の酸加水分解より調整した微結晶セルロース懸濁水をバイアル瓶に入れ、水平に保った状態で中心を軸にして 500 rpm、12時間、室温で回転させながら乾燥させることにより微結晶セルロースが一軸方向に配向したとの報告がある。また非特許文献4によれば、木材パルプやホヤのTEMPO触媒酸化法により調整したCNF懸濁水をシリンジからアセトン浴槽中に押し出すことにより紡糸し、CNFが繊維軸方向に配向することを報告している。また非特許文献5によれば、バクテリアセルロースより調製したセルロースミクロフィブリルをPMMAと共にDMF/THF混合液中で混合したのち電解紡糸することにより、セルロースミクロフィブリルが得られたマイクロファイバー中で繊維軸方向に配向したとの報告がある。また非特許文献6によれば、コットンの酸加水分解により調整したセルロースウィスカーとPVAの混合懸濁水を、シリンジからメタノール浴槽中に押し出すことによりファイバーを調製し、それを210 ℃に加熱しながら引張ることでセルロースウィスカーが繊維軸方向に配向したとの報告がある。また非特許文献7によれば、針葉樹パルプのTEMPO触媒酸化法により調整したCNF懸濁水を吸引濾過することによりウェットシートを作成し、湿潤状態のまま延伸を加えることでCNFが一軸方向に配向したシートが調製できることを報告している。
上記のようにCNFの配向を制御する方法は多数報告されているが、非特許文献1の磁場や非特許文献2の電場を用いる方法は工業的な適用には困難を伴う。また非特許文献3 ~ 7のようなshear stress(せん断応力)を利用した方法においても、非特許文献4、5、6のようにCNFを繊維軸方向へ配向させることは出来ても形態が繊維状であり利用に際しては制限がある。CNFが一軸方向の配向性をもつシート作成が可能な非特許文献3は、工業的適用を考えると容器を常に回転させるための動力エネルギーが必要なうえCNF懸濁水が乾燥するまで時間がかかり実用的ではない。同様にCNFが一軸方向の配向性をもつシート作成が可能な非特許文献7は、濾過後のシートを延伸することによりCNFを配向させるが、延伸するための張力をシートの幅方向に均一にかけることが困難であり、広面積の配向性シートは作成し難い。
また上記の非特許文献1 ~ 7のいずれの方法においても、CNFの配向制御は一軸方向のみであり、同一平面内に2方向、3方向といった多数軸方向への配向性をもたせることは出来ない。
CNFの優れた特性を十分に生かしたアプリケーションへの利用を考えるにあたり、自在にCNFの配向性を操れることは必要不可欠だがこれらの方法では一方向のみに配向させることしかできず、CNFの応用展開を図るうえでの難点となりうる。
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本発明はCNFのアプリケーションへの利用を考えるにあたり必要となってくるCNFの配向性制御を、既存の方法では工業化への適用が困難という点および同一平面内に一方向のみにしかCNFの配向性が制御できないという点に鑑み、簡易に工業化への適用が可能で、一度の操作で自在に同一平面内に任意の数、方向に配向させることが可能な、配向性CNFシートの製造方法、およびかかる製造方法によって得られる配向性CNFシートを提供することを目的とするものである。
本発明はCNFシートをCNF懸濁液の吸引濾過により調製する際、濾過フィルター上にプレートを立てた状態で行うことを特徴とする。この方法により得られたCNFシートは、吸引濾過の際に配置するプレート面に沿ってCNFが平行に配向する特徴を有する。配置するプレートを任意の形状にデザインすることにより一度の操作によって同一シート内に任意の数と方向にCNFが配向した配向性CNFシートを簡易に調製可能な特徴を有する。
CNF懸濁液の吸引濾過の際に濾過フィルター上に立てるプレートについては次の特徴を有する。プレートの材質は表面が滑らかで隙間のない構造のものであれば特に制限がないことを特徴とする。また、プレートの濾過フィルターに接する面は、平坦かつ滑らかで濾過フィルターに隙間なく接するように配置することを特徴とする。今後プレートを徐々に引き上げ(引き抜く)ることも視野に検討すると思われるので制限しないほうが良いと思われる。
上記特徴を有するCNF懸濁液の吸引濾過の際に濾過フィルター上に立てるプレートを、任意の形状にデザインし、濾過フィルター上に自由に配置することにより同一シート内に任意の数、方向にCNFが配向した配向性CNFシートを簡易に一度の操作によって製造可能な特徴を有する。すなわち直線方向、曲線方向、直線方向と曲線方向を組み合わせた方向や、直線方向の配向を途中で任意の角度で方向を変えたり、曲線方向の配向を途中で任意の角度で方向を変えたり、直線方向と曲線方向を組み合わせた方向を途中で任意の角度で方向を変えるといった作成者の任意の方向、数の配向を同一シート内に一度の操作でデザイン可能なことを特徴とする。
本発明によれば、簡易に一度の操作によって同一シート内に任意の数、方向に配向した配向性CNFシートの製造ができ、かかる製造方法によって同一シート内に任意の数、方向に配向した配向性CNFシートが容易に得られる。CNFの応用展開を図るうえでの難点と思われるCNFの配向性を自在に制御できる本発明は、CNFの優れた特性を十分に発揮することを可能にし、CNFシートの強度向上のほか透明性の向上や、CNFが配向することによる偏光特性の付加など、その利用や応用は多岐にわたる。
以下に本発明の同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性セルロースシートの調製方法について詳細に説明する。
流動性を有する濃度に調製したCNFの懸濁液を濾過フィルターを通して吸引濾過を行う。この吸引を始める前に濾過フィルター上にプレートを配置してから吸引を開始し、濾過フィルター上にウェット状のシートが形成されるまで吸引濾過を行い、ウェット状シートの表面から見た目で水分が完全に無くなったことを確認したのち、吸引濾過を停止して器具から外し、任意の方法で乾燥させることにより、本発明の同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性CNFシートが調製できる。
流動性を有する濃度に調製したCNFの懸濁液を濾過フィルターを通して吸引濾過を行う。この吸引を始める前に濾過フィルター上にプレートを配置してから吸引を開始し、濾過フィルター上にウェット状のシートが形成されるまで吸引濾過を行い、ウェット状シートの表面から見た目で水分が完全に無くなったことを確認したのち、吸引濾過を停止して器具から外し、任意の方法で乾燥させることにより、本発明の同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性CNFシートが調製できる。
使用するCNFの原料としては、セルロースを含むものであれば特に限定されず、例えば各種木材パルプ、非木材パルプ、バクテリアセルロース、古紙パルプ、コットン、バロニアセルロース、ホヤセルロース等が挙げられる。また、市販されている各種セルロース粉末も使用できる。
本発明に使用するプレートの材質はガラスやプラスチック、金属板など表面が滑らかな構造のものであれば特に制限はない。
本発明に使用するプレートの形状は、吸引濾過により調整されるCNFシート上のCNFの配向に直接関係する。すなわち吸引濾過時に濾過フィルター上に配置したプレートに沿ってCNFが配向するため、CNFを配向させたいデザインの形状に合わせてプレートを配置することが大事になる。例えば図1-(c) に示すようにCNFを配向させたい場合は、図1-(b) のような形状のプレートを前述の材質、大きさを満たす条件で図1-(a) のように配置してから吸引濾過を行うことにより調整できる。この際、プレートの濾過フィルターに接する面が平坦且つ滑らかで濾過フィルターに隙間なく接するようにプレートを濾過フィルター上に準備することにより、CNFをより良好に配向させることができる。
本発明の同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性セルロースシートの調製方法におけるCNFシートを作成する方法としては、濾過フィルターに相当するフィルターを通してCNF懸濁液を吸引もしくは圧搾しながらフィルター上にマットを形成できる方式の方法であれば特に制限はなく、例えば研究室スケールのメンブレンフィルターを用いた吸引濾過でも、工業生産スケールのドラムフィルターやフィルタープレスのようなものでもよい。CNFは繊維幅こそ 100 nm 以下と小さいが繊維長は長く、繊維状のためフィルターの孔径が繊維幅よりも多少大きくても濾過を開始した直後にはフィルター孔を閉塞する。そのため用いるフィルターの孔径は濾過に供するCNFがフィルターを通過しない大きさであれば特に制限はない。ただし、CNFのより良好な配向性を得るにはフィルター孔径は小さい方が好ましい。
本発明の同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性セルロースシートの調製方法におけるCNFシートを作成する方法である吸引濾過の吸引力は、濾過フィルターが損傷を受けない程度の吸引力であれば特に制限はない。
本発明の同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性セルロースシートの調製方法である吸引濾過では、濾過に供したCNF懸濁液の吸引濾過により濾過フィルター上に形成されるウェット状CNFシートの媒体が見た目で完全になくなるまで吸引を続けなければならない。媒体が多く残るゲル状態で吸引を停止し乾燥させても配向は得られない。すなわちCNFが配向を形成する律速段階は、ゲル状のウェット状シートが形成されてから見た目で媒体がなくなるまで(不動化するまで)の間と推測しており、この間に刺激を与えたり操作を中断したりすると良好な配向は得られにくい。またCNFのより良好な配向を得るためにはウェット状シート上に見た目で媒体がなくなってもなお吸引を継続する方が良い。
本発明の同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性セルロースシートの調製方法において吸引濾過により形成されるウェット状シートの乾燥方法は特に限定されず、シートを加圧した状態で加熱したり、室温で乾燥させたり、減圧条件下で乾燥させてもよい。
本発明の同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性セルロースシートの調製方法において得られるCNFの配向は、配置したプレートに沿ってプレート面に平行な方向に得られる。プレート面からの距離が離れるに連れ配向性は崩れていくが、プレート面より約 6 mm の範囲においては偏光顕微鏡に鋭敏式検板を挿入した観察において良好な配向性を示すことを確認している。ただし、前述の通り各条件を調製することにより良好な配向を示す範囲を拡大することは可能である。また、図2-(b) に示すような直線状のプレートを任意の角度で折り曲げたようなデザインを配置するプレートに施すことにより、任意の方向に任意の数の配向を有した配向性CNFシートを同一シート内に調製することができる。この際、配向方向の変曲点では、良好な配向を示す範囲内であれば両方向の中間点できれいにCNFの配向方向が変わる。
本発明の同一シート内に任意の数の配向を任意の方向に配向させた配向性セルロースシートの調製方法により得られる配向性CNFシートには、配置するプレートをデザインすることにより任意の方向に任意の数の配向をCNFに与えることが可能なため、CNFの配向性を自在に制御することができる方法といえる。CNFの優れた性能を十分に生かしたアプリケーションへの利用を行うに際し、本発明の調製方法を用いてCNFの配向性を自在に制御することにより、CNFの優れた特性を十分に発揮することを可能にし、CNFシートの強度向上や透明性の向上といった現行性能の向上に加え、CNFが配向することによる偏光特性の付加のような応用展開に至るまで、その利用や応用は多岐にわたる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
濾過に供したCNF懸濁液は以下の手順で調製した。
濃度 0.10 wt% の湿潤状態の広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプ懸濁水を、特許文献1に示される水中対向衝突法を用いて噴射圧力 180 MPa、処理回数 90 Pass の条件で処理を行い、広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプを原料とした 0.10 wt% のCNF懸濁水を得た。同様の手順で水中対向衝突前の広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプ懸濁水濃度を 0.05 wt%、および 0.50 wt% に変えて処理を行い、広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプを原料とした 0.05 wt% と 0.50 wt% のCNF懸濁水を得た。以下、広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプを原料としたCNF懸濁水をCNF懸濁水とする。
濃度 0.10 wt% の湿潤状態の広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプ懸濁水を、特許文献1に示される水中対向衝突法を用いて噴射圧力 180 MPa、処理回数 90 Pass の条件で処理を行い、広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプを原料とした 0.10 wt% のCNF懸濁水を得た。同様の手順で水中対向衝突前の広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプ懸濁水濃度を 0.05 wt%、および 0.50 wt% に変えて処理を行い、広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプを原料とした 0.05 wt% と 0.50 wt% のCNF懸濁水を得た。以下、広葉樹由来の製紙用晒クラフトパルプを原料としたCNF懸濁水をCNF懸濁水とする。
上記手法により得られた各濃度のCNF懸濁水を絶乾重量が 0.07 g になるように計量し、減圧濾過用ホルダー(KG-47 : ADVANTEC製)を用いMEMBRANE FILTER(0.22 μm、GV type :MILLIPORE製)を濾過フィルターとしてアスピレーターで吸引しながら濾過に供した。すなわち 0.05 wt% 濃度のCNF懸濁水の場合だと 140 g、0.10 wt% 濃度のCNF懸濁水の場合だと 70 g、0.50 wt% 濃度のCNF懸濁水の場合だと 14g のCNF懸濁水を吸引濾過に供した。
CNF懸濁水を吸引濾過に供する前に、濾過フィルター上に例えば図1-(b)に示したようなプレートを配置してからCNF懸濁水を注ぎ、吸引濾過を行い、濾過フィルター上に形成されたウェット状シートの水分が見た目で完全に無くなってから吸引を停止し、配置したプレートを外してからウェット状シートを濾過フィルターごと取り出し、乾燥による収縮を防ぎつつ室温で3日以上乾燥させ、CNFシートを得た。
得られたCNFシートを偏光顕微鏡(OLYMPUS BHA :オリンパス(株)製)に鋭敏式検板を挿入した状態で40 倍で観察し、CNFの配向により生じる偏光屈折のレタデーションからCNFの配向方向と配向程度を確認した。
<実施例1> 図1に示すように、0.10 wt% 濃度のCNF懸濁水2を使用し、図1-(b) に示すガラス製プレート1を図1-(a) のように濾過フィルター3上に配置して上記処理を実施したところ、図1-(c) に示すプレート跡4に沿ってCNFの配向性5が確認された。また同様の操作をプラスチック製(ポリスチレン製)プレートを使用して行ったところ、同様の結果が得られた。この結果より、CNFは配置したプレートに沿ってプレート面に平行に配向することが示された。
<実施例2> ウェット状シートの乾燥を室温で3 日以上乾燥させる手順を、 130 ℃乾燥機内で24 時間乾燥させる手順に変更し、実施例1のガラス製プレートを使用した操作と同様の処理を行ったところ、実施例1と同様のCNFの配向性が確認された。この結果より、本発明の配向性CNFシートの製造方法において、ウェット状シートを加熱して急速に乾燥させても室温で穏和に乾燥させても、同様にCNFが配向した配向性CNFシートが得られることが示された。
<実施例3> 図2 と図3 に示すように、0.10 wt% 濃度のCNF懸濁水2を使用し、ガラス製プレート1を図2-(b) や図3-(b) に示すような複雑な配置デザインで図2-(a) や図3-(a) のように濾過フィルター3上に配置して上記処理を実施したところ、図2-(c) や 図3-(c) に示すプレート跡4に沿ってCNFの配向性5が確認された。この結果より、配置するプレートのデザインを変えることにより同一シート内に任意の数の配向を任意の方向にCNFを配向させることが可能なことが示された。
<実施例4> 図4 に示すように、0.10 wt% 濃度のCNF懸濁水2を使用し、図4-(b)に示すアルミ製プレート1を図4-(a) のように濾過フィルター3上に配置して上記処理を実施したところ、図4-(c) に示すプレート跡4に沿ってCNFの配向性5が確認された。この際、使用したプレート1の高さは 3 mm で、図4-(a)に示すようにCNF懸濁水2の液面よりも低く、図4-(b) に示した吸引濾過後に形成されたウェット状シート6の厚みよりも高かった。また、図5に示すように、0.10 wt% 濃度のCNF懸濁水2を使用し、図5-(b) に示すようなデザインが同じで高さが低い鉛製プレート1 ’ を図5-(a) のように濾過フィルター3上に配置して同様の処理を実施したところ、今までとは異なり図5-(c) に示すプレート跡4 ’ に沿ってCNFの垂直方向の配向性5 ’ がわずかに確認された。この際、使用したプレート1 ’ の高さは 1 mm で、図5-(b) に示すように吸引濾過後に形成されたウェット状シート6 ’ の厚みより低く、プレート1 ’ をウェット状シート6 ’ が覆うような状態であった。この結果より、使用するプレートの高さは濾過フィルター上に形成されるウェット状シートの厚みよりも高く且つ吸引濾過後に得られるウェット状シートがプレートを覆わない高さ以上がないと、CNFが配置したプレートに沿ってプレート面に平行に配向しないことが示された。
<実施例5> 0.05 wt%、0.10 wt%、0.50 wt% 濃度の各CNF懸濁水を使用し、図1-(b) に示すガラス製プレート1を用いて濾過に供するCNF懸濁水の濃度が配向程度に及ぼす影響を比較した。その結果、図6に示すように濾過に供するCNF懸濁水の濃度によりCNFの配向強度が異なった。0.05 wt% 濃度よりも 0.10 wt% 濃度を使用した方がCNFの配向性のムラが少なく、0.50 wt% 濃度を使用するとCNFの配向性のムラも少なく偏光の透過率も高かった。このことより濾過に供するCNF懸濁水の濃度が高い方がCNFはより良好に配向することが示された。
Claims (6)
- セルロースを水性媒体中に分散させて水性分散液を調製し、前記水性分散液を濾過シート上にプレートを立てた状態で貯留して吸引濾過を行い、脱水乾燥させる工程を有することを特徴とする配向性セルロースシートの調製方法。
- セルロースとしてセルロースナノファイバーを含む請求項1に記載の配向性セルロースシートの調製方法。
- 立てるプレートの向きを変えることにより配向方向を制御する請求項1に記載の配向性セルロースシートの調製方法。
- 層毎に配向角度を変えて配向した積層フィルムを作成する請求項1または3に記載の配向性セルロースシートの調製方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の配向性セルロースシートの調製方法によって調製された配向性セルロースシート
- 用いるプレートおよびろ過シートについて、親水性基材でも疎水性基材でも利用することが出来る請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の配向性セルロースシートの調製方法および調製された配向性セルロースシート
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WO2022250010A1 (ja) * | 2021-05-25 | 2022-12-01 | 三菱ケミカル株式会社 | 配向繊維ウェブの製造方法、繊維ウェブ形成装置および配向繊維ウェブ製造装置 |
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