JP2015029926A - 中空糸膜への樹脂化合物の固定化方法 - Google Patents

中空糸膜への樹脂化合物の固定化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ポリオレフィン系の多孔質中空糸膜を親水化する方法において、複雑な装置等を必要とせずに、より安全で、簡便に水酸基を有する親水性樹脂を被覆する方法であって、親水化するための樹脂化合物を中空糸膜上に固定化量を多く、均一に固定化するための方法を提供すること。
【解決手段】 (1)前記樹脂化合物と樹脂化合物を溶解させる媒体で構成される溶液を前記オレフィン製中空糸に通液させる工程
(2)前記(1)工程で得られる中空糸を、前記樹脂化合物を溶解させる媒体により洗浄する工程
(3)前記(2)工程で得られる中空糸を水と接触させることにより前記樹脂化合物を中空糸表面に固定化せしめる工程からなる樹脂の固定化方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、中空糸膜への樹脂化合物の固定化方法に関し、更に詳しくは、水酸基を有する樹脂化合物をオレフィン製中空糸膜に固定化することにより、該中空糸膜の表面を親水化する方法に関する。
これまで報告されている前記ポリオレフィン系の多孔質中空糸膜を親水化する手法として代表的なものは、エタノール等のアルコール類や界面活性化剤などで処理する方法、親水性モノマーをグラフト重合させる方法、親水性重合体を被覆する方法等、報告されている。中でもエチレン−ビニルアルコールに代表されるような水酸基を有する親水性重合体を、延伸開孔したポリエチレン多孔質中空糸膜に被覆する方法が古くから報告されており、このように作製した中空糸は、血漿分離膜や水処理膜として広く使用されている。
樹脂を被覆する方法としては、例えば、加熱したエチレン−ビニルアルコール体のアルコール溶液に疎水性中空糸を浸漬し、樹脂溶液を中空糸細孔内に充填した後、溶液から中空糸を引き上げて、乾燥させる方法が報告されている。
この際、余分に樹脂が付着しないように過剰な樹脂溶液を脱液する設備や中空糸を連続して巻きだして、巻き取るなどの設備が必要となる。また、乾燥時には蒸気濃度などの条件を精密に制御するための複雑な装置が必要とされる。このような背景から、複雑な装置等を必要とせずに、より安全で、簡便に水酸基を有する親水性樹脂を被覆する方法が望まれている。
特にエチレン−ビニルアルコールなどは生体適合性も高いことから、エチレン−ビニルアルコールが被覆された多孔質膜へ機能性リガンドを固定化する手法はいくつか報告されているが、特別な設備を必要とせず、簡便な親水化方法は報告されていないのが現状である。
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系多孔性中空糸膜を、親水化重合体を水混和性有機溶剤またはその水との混合溶剤に溶解してなる親水性重合体溶液に浸漬する工程、脱液し保温する工程及び乾燥して巻き取る工程により連続的に親水化する工程において、中空糸膜の供給速度と巻き取り速度が一定の範囲内である方法が記載されている。
特許文献2には、親水化多孔質膜の製法であって、親水化剤としてエチレン系共重合体の溶液に、ポリオレフィン系多孔質膜を浸漬して該共重合体を該多孔質膜に吸着せしめた後、該多孔質膜の親水化に十分な該共重合体の付着量が得られ、かつ該共重合体の被膜が生じない程度まで脱液し、乾燥する方法が記載されている。
特許文献3には、膜基材に処理剤を保持させた半透膜の製造方法において、
前記膜基材の一方の膜表面側と他方の膜表面側との間に圧力差を付与することで、前記処理剤を所定濃度で含有する処理液を一方の膜表面側から他方の膜表面側へ向けて移動し、前記処理剤を膜基材に保持させる膜通液工程を経て製造されることを特徴とする半透膜の製造方法が記載されている。
特開平10−28852号公報 特開平4−346825号公報 特開2004−230375号公報
本発明で、従来技術を鑑み、ポリオレフィン系の多孔質中空糸膜を親水化する方法において、複雑な装置等を必要とせずに、より安全で、簡便に水酸基を有する親水性樹脂を被覆する方法であって、親水化するための樹脂化合物を中空糸膜上に、均一に且つより多く固定化するための方法を提供することにある。
本発明では、前記課題を解決するため、鋭意検討を行った結果本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)前記樹脂化合物と樹脂化合物を溶解させる媒体で構成される溶液を前記オレフィン製中空糸に通液させる工程
(2)前記(1)工程で得られる中空糸を、前記樹脂化合物を溶解させる媒体により洗浄する工程
(3)前記(2)工程で得られる中空糸を水と接触させることにより前記樹脂化合物を中空糸表面に固定化せしめる工程
を順次行うことにより、水酸基を有する樹脂化合物、又は水酸基を有し、更にアミノ基、糖類、若しくはエポキシ基を有する樹脂化合物をオレフィン製中空糸表面に固定化する方法を提供するものである。
本発明によれば、複雑な装置等を必要とせずに、より安全で、簡便に水酸基を有する親水性樹脂を被覆する方法を提供することができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
即ち、本発明は以下の各項目から構成されるものである。
1)水酸基を有する樹脂化合物をオレフィン製中空糸表面に固定化する方法であって、以下の各工程を有することを特徴とする方法、
(1)前記樹脂化合物と樹脂化合物を溶解させる媒体で構成される溶液を前記オレフィン製中空糸に通液させる工程
(2)前記(1)工程で得られる中空糸を、前記樹脂化合物を溶解させる媒体により洗浄する工程
(3)前記(2)工程で得られる中空糸を水と接触させることにより前記樹脂化合物を中空糸表面に固定化せしめる工程
2)水酸基を有する樹脂化合物が、
エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)である1)に記載の方法。
3)水酸基を有する樹脂化合物が、更にアミノ基、糖類、カルボキシ基、又はエポキシ基を有する樹脂化合物である1)に記載の方法、
4)更にアミノ基を有する樹脂化合物が、
エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)と、エポキシ基を有する化合物(B)を反応させた後に、アミノ基を有する化合物(C)を反応させて得られる樹脂化合物である3)に記載の方法、
5)エポキシ基を有する化合物(B)が、エピクロロヒドリン、又はジエポキシ化合物である4)に記載の方法、
6)アミノ基を有する化合物(C)が、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、2−アミノエタノール、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、フェニレンジアミン、ポリアリルアミン、又はポリエチレンイミンである4)に記載の方法、
7)更に糖類を有する樹脂化合物が、
エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)と、エポキシ基を有する化合物(B)を反応させた後に、アミノ基を有する化合物(C)を反応させ、更に前記アミノ基と糖類を反応させて得られる樹脂化合物である1)に記載の方法、
8)エポキシ基を有する化合物(B)が、エピクロロヒドリン、又はジエポキシ化合物である7)に記載の方法、
9)アミノ基を有する化合物(C)が、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、2−アミノエタノール、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、フェニレンジアミン、ポリアリルアミン、又はポリエチレンイミンである7)に記載の方法、
10)糖類が、ヘパリン、ヘパリンの1級又は2級水酸基を硫酸エステル化したヘパリン誘導体、ヘパリンのN−アセチル基のアセチル基脱離体をN−硫酸エステル化したヘパリン誘導体、ヘパリンのN−硫酸基の硫酸基脱離体をN−アセチル化したヘパリン誘導体、低分子量ヘパリン、デキストラン硫酸、フコイダン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ヘパリン類似物質、ヘパラン硫酸、ラムナン硫酸、ケタラン硫酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、又はカルボキシメチルセルロースである7)に記載の方法、
11)更にエポキシ基を有する樹脂化合物が、
エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)と、エポキシ基を有する化合物(B)を反応させて得られる樹脂化合物である1)に記載の方法、
12)エポキシ基を有する化合物(B)が、エピクロロヒドリン、又はジエポキシ化合物である11)に記載の方法、
13)樹脂化合物を溶解させる媒体が、アルコール性水溶液である1)に記載の方法。
(樹脂化合物)
本発明に用いられる樹脂化合物は、水酸基、又は水酸基を有し、更にアミノ基、糖類、若しくはエポキシ基を有することに特徴がある。
・水酸基を有する樹脂化合物
より具体的には、水酸基を有する樹脂化合物として、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分けん化物、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロースの部分けん化物又はグリセリン誘導体等を挙げることができ、特に、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体を好ましく用いることができる。
・水酸基を有し、更にアミノ基を有する樹脂化合物
より具体的には、水酸基を有する樹脂化合物と、エポキシ基を有する化合物(B)を反応させた後に、アミノ基を有する化合物(C)を反応させて得られる樹脂化合物を挙げることができる。ここで用いられる水酸基を有する樹脂化合物としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)を挙げることができる。
これらの樹脂化合物は血液適合性が高く、好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体、又はエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体を用いる場合のエチレンとビニルアルコールのモル比としては、0.5〜1.0の範囲にあることが好ましい。エチレンとビニルアルコールのモル比が0.5より小さいと、樹脂の耐水性が低下する恐れがある。また、該モル比が1.0より大きいと、樹脂の親水性が低下するため、アミノ基含有樹脂の表面親水化効果が低下する恐れがあるため好ましくない。
親水性樹脂(A)の分子量分布としては、重量平均分子量として、10000〜300000が好ましい。重量平均分子量が10000よりも低い場合、樹脂の耐水性が低下する恐れがある。また、300000よりも大きい場合、溶剤への溶解性が低下する恐れがあるため好ましくない。
本発明に用いるエポキシ基を有する化合物(B)は、前記した親水性樹脂(A)と後述するアミノ基を有する化合物(C)とを架橋するために用いられる。そのため、前記親水性化合物(A)と反応した後に、アミノ基と反応する官能基を持つことが必要である。このような化合物としては、エピクロロヒドリン、ジエポキシ化合物、又はポリエポキシ化合物等が挙げられる。この中で好ましいものとしては、エピクロロヒドリンが挙げられる。
本発明に用いるアミノ基を有する化合物(C)は、前記した親水性樹脂(A)とエポキシ基を有する化合物(B)との反応物にアミノ基を導入するために用いられる。このような化合物としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、2−アミノエタノール、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、フェニレンジアミン、ポリアリルアミン、又はポリエチレンイミン等が挙げられる。多価アミノ化合物は樹脂のゲル化を引き起こし易いため、この中で好ましいものとして、ゲル化を引き起こし難いアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、2−アミノエタノール等が挙げられる。
親水性樹脂(A)とエポキシ基を有する化合物(B)との反応、及び親水性樹脂(A)と化合物(B)との反応生成物とアミノ基を有する化合物(C)との反応は公知各種の反応条件で行うことができる。その中でも好ましい条件としては、反応基質を溶解する溶媒中で、均一反応によって反応させることが好ましい。このような条件で反応を行うことによって、アミノ基含有樹脂に導入されるアミノ基の量を適切に制御することが可能となる。アミノ基含有樹脂に導入されるアミノ基の量としては、アミン価が15〜150mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、30〜80mgKOH/gの範囲にあることがさらに好ましい。
前記反応基質を溶解する溶媒を具体的に例示するならば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、といった非プロトン性極性溶媒や、エタノールと水、n−プロパノールと水、メタノールと水、イソプロピルアルコールと水、といったアルコールと水との混合溶媒、ピリジン、フェノール、クレゾールなどが挙げられる。反応条件としては、40〜100℃で10分〜20時間反応させることで生成物を得ることができる。
また、親水性樹脂(A)としてエチレン−ビニルアルコール共重合体または、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体を用いる場合、親水性樹脂(A)とエポキシ基を有する化合物(B)との反応における溶媒は、溶解性が高い点と副反応が起こりにくい点から、ジメチルスルホキシドを用いることが好ましい。この場合、反応を促進させるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムといった塩基触媒を添加することが好ましく、添加する量としては、親水性樹脂(A)1g当り、0.38〜3.8mmolの範囲が好ましく、0.75〜2.0mmolの範囲がさらに好ましい。これらの範囲で塩基触媒を添加することで、前記した好ましいアミン価の範囲のアミノ基含有樹脂を得ることができる。
次に、親水性樹脂(A)とエポキシ基を有する化合物(B)との反応生成物とアミノ基を有する化合物(C)との反応に用いる溶媒は、沸点が低く、塗工後の乾燥が容易である点から、アルコールと水との混合溶媒を用いることが好ましい。
・水酸基を有し、更に糖類を有する樹脂化合物
より具体的には、水酸基を有する樹脂化合物と、エポキシ基を有する化合物(B)を反応させた後に、アミノ基を有する化合物(C)を反応させ、更に前記アミノ基と糖類を反応させて得られる樹脂化合物を挙げることができる。ここで用いられる水酸基を有する樹脂化合物としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)を挙げることができる。
エポキシ基を有する化合物(B)、親水性樹脂(A)とエポキシ基を有する化合物(B)との反応、アミノ基を有する化合物(C)は、前記と同様である。
本発明における親水性樹脂(A)と化合物(B)との反応生成物と、アミノ基を有する化合物(C)との反応は、公知各種の方法で行うことができる。その中でも好ましい条件としては、親水性樹脂(A)及び化合物(B)の反応生成物と、アミノ基を有する化合物(C)の両方を溶解する溶媒中で均一に反応させることが好ましい。そのような溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、といった非プロトン性極性溶媒や、エタノールと水、n−プロパノールと水、メタノールと水、イソプロピルアルコールと水、といったアルコールと水との混合溶媒、ピリジン、フェノール、クレゾールなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いることも可能である。この中でも、沸点が低く、塗工後の乾燥が容易である点から、アルコールと水との混合溶媒を用いることが好ましい。反応条件としては、40〜100℃で10分〜20時間反応させることで生成物を得ることができる。表面処理用樹脂に導入されるアミノ基の量としては、アミン価が15〜150mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、30〜80mgKOH/gの範囲にあることがさらに好ましい。
本発明に用いられる糖類は、公知各種のものを用いることができる。
例示するならば、ヘパリン、ヘパリンの1級又は2級水酸基を硫酸エステル化したヘパリン誘導体、ヘパリンのN−アセチル基のアセチル基脱離体をN−硫酸エステル化したヘパリン誘導体、ヘパリンのN−硫酸基の硫酸基脱離体をN−アセチル化したヘパリン誘導体、低分子量ヘパリン、デキストラン硫酸、フコイダン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ヘパリン類似物質、ヘパラン硫酸、ラムナン硫酸、ケタラン硫酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、又はカルボキシメチルセルロースを挙げることができる。
ヘパリンは、通常公知のものを制限なく使用することができる。ヘパリンは、小腸、筋肉、肺、脾や肥満細胞など体内で幅広く存在し、化学的にはグリコサミノグリカンであるヘパラン硫酸の一種であり、β−D−グルクロン酸、或いはα−L−イズロン酸とD−グルコサミンが1,4−結合により重合した高分子であって、ヘパラン硫酸と比べて硫酸化の度合いが特に高いという特徴を有する。
また、ヘパリンの平均分子量についても特に制限はないが、平均分子量が大きい場合には化合物(C)との反応性が低くなる為、ヘパリンの固定化の効率が悪いと考えられる。従って、ヘパリンの分子量は、概ね、500から500,000ダルトン、より好ましくは1,200から50,000ダルトン、更に好ましくは5,000〜30,000ダルトンであることが好ましい。
本発明で用いられるヘパリン誘導体としては、前記ヘパリンの1級又は2級水酸基を硫酸エステル化したヘパリン誘導体、前記ヘパリンのN−アセチル基のアセチル基脱離体をN−硫酸エステル化したヘパリン誘導体、又はヘパリンのN−硫酸基の硫酸基脱離体をN−アセチル化したヘパリン誘導体を好ましく用いることができる。
ヘパリンの1級又は2級水酸基を硫酸エステル化したヘパリン誘導体を合成する場合には、例えば、前記ヘパリンのアルカリ塩類をイオン交換樹脂(H)等に通じ、アミン類と処理することによりヘパリンアミン塩を調製する。その後に、硫酸化剤で処理して目的とするヘパリン誘導体とすることができる。硫酸化剤としては、公知慣用のSO・ピリジン等が好ましい。
ヘパリンのN−アセチル基のアセチル基脱離体をN−硫酸エステル化したヘパリン誘導体を合成する場合には、例えば、ヘパリンのN−アセチル基をヒドラジン等で脱アセチル化した後に、硫酸化剤で処理して目的とするヘパリン誘導体とすることができる。硫酸化剤としては、公知慣用のSO・NMe等が好ましい。
ヘパリンのN−硫酸基の硫酸基脱離体をN−アセチル化したヘパリン誘導体を合成する場合には、例えば、ヘパリンのピリジニウム塩を調製後、窒素原子上の硫酸基のみを脱硫酸化し、公知慣用の方法でN−アセチル化すればよい。
また、低分子量ヘパリン、デキストラン硫酸(イオウ含量3〜6%)、デキストラン硫酸(イオウ含量15〜20%)、フコイダン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ヘパリン類似物質、ヘパラン硫酸、ラムナン硫酸、ケタラン硫酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースは公知慣用の化合物を用いることができる。
デキストラン硫酸の硫酸化度は、高硫酸化度(イオウ含量15〜20%)であっても、低硫酸化度(イオウ含量3〜6%)であっても良く、公知慣用の方法で得られるものであれば、特に硫酸化度に制限はない。
ヘパリン類似物質は、一般に日本薬局方外医薬品成分規格等に収載されている硫酸化多糖類を指すものである。しかし、公知慣用の抽出方法や調製方法で得られるものであれば、日本薬局方外医薬品成分規格に収載されているものに限定されるものではない。
このような糖類の中で、ウイルスの吸着を目的とする場合には、その吸着性能が高いことから、ヘパリン、ヘパリン誘導体及びヘパリン類似物質が挙げられる。アポリポタンパク、抗DNA抗体や免疫複合体などを吸着する場合には、デキストラン硫酸などが挙げられる。
アミノ基を有する化合物(C)を介して糖類が固定化されるためには、化合物(C)と糖類が共有結合により結合されることが必要である。このような結合は公知慣用の反応を適宜行うことにより形成することができる。
糖類の固定化に好ましい反応として、アミド化反応もしくは還元アミノ化反応を挙げることができる。アミド化方法は、例えば、活性エステルによるアミド化、縮合剤によるアミド化、これらの併用、混合酸無水物法、アジド法、酸化還元法、DPPA法、ウッドワード法など、ペプチド合成などで用いられている公知慣用のアミド化反応を適宜行えばよい。還元アミノ化反応は、化合物(C)のアミノ基と糖類の還元末端を反応させる公知慣用の方法を用いればよい。
活性エステルによるアミド化としては、例えば、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)、ニトロフェノール、ペンタフルオロフェノール、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)、HOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HOAT(ヒドロキシアザベンゾトリアゾール)等を用いて、脱離能の高い基をカルボキシ基と一旦縮合させた活性エステルを形成させておき、これにアミノ基を反応させる方法が挙げられる。縮合剤によるアミド化は、それ単独で用いても良いが、前記活性エステルと併用することができる。縮合剤としては、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル−3−エチル−カルボジイミドヒドロクロライド)、HONB(エンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキサミド)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、BOP(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、TBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HOOBt(3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン)、ジ−p−トリオイルカルボジイミド、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、BDP(1−ベンゾトリアゾールジエチルホスフェート−1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニルエチル)カルボジイミド)、フッ化シアヌル、塩化シアヌル、TFFH(テトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスホスフェート)、DPPA(ジフェニルホスホラジデート)、TSTU(O−(N−スクシニミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)、HATU(N−[(ジメチルアミノ)−1−H−1,2,3−トリアゾロ[4,5,6]−ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウム・ヘキサフルオロホスフェート・N−オキシド)、BOP−Cl(ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィンクロライド)、PyBOP((1−H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−トリス(ピロリジノ)ホスホニウム・テトラフルオロホスフェート)、BrOP(ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート)、DEPBT(3−(ジエトキシホスホリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン)、PyBrOP(ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート)などが挙げられる。
これらのアミド化方法において利用できる溶媒としては、水及びペプチド合成に用いられる有機溶媒を使用することができ、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、エタノールと水、n−プロパノールと水、メタノールと水、イソプロピルアルコールと水、といったアルコールと水との混合溶媒、ピリジン、フェノール、クレゾール等、更にはこれらの混合溶媒やこれらを含む水溶液が挙げられる。
還元アミノ化反応に用いられる還元剤の例としては、ソディウムボロシアノトリハイドライドや、ソディウムトリアセトキシボロハイドライド、ピリジンボラン、ピコリンボラン等の還元剤が挙げられる。
また、これらの反応の条件としては、20〜100℃で10分〜100時間程度行うことで目的の反応物を得ることができる。高い温度だと糖類の加水分解反応等が進行する恐れがあるため、20〜60℃程度で反応させることがより好ましい。
・アミノ基のアミド化反応
本発明で得られた糖鎖を有する樹脂化合物は、未反応のアミノ基が残留していると、未反応アミノ基と糖鎖中のカルボキシル基または硫酸基との相互作用によってイオンコンプレックスを形成し、その効果を最大限に発揮できないと推測される。そのため、残存した未反応のアミノ基をアミド化することが好ましい。
このようなアミド化反応としては、公知各種の方法を用いることができるが、例示するならば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水ヘキサン酸、無水クエン酸、無水フタル酸、無水マレイン酸といった無水酸を作用させてアミノ基をアミド化する方法や、酢酸クロリド、プロピオン酸クロリド、ブタン酸クロリド、ヘキサン酸クロリドといったハロゲン化カルボン酸化合物を用いる方法が挙げられる。また、カルボン酸を用いて、糖鎖固定化法で記述したような活性エステルを用いる方法や縮合剤を用いる方法でアミド化することも可能である。
この中でも、ハロゲン化カルボン酸化合物を用いてアミド化を行う場合、生成するハロゲン化水素をトラップして反応を円滑に進めるために、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンといった塩基化合物を加えることが好ましい。
このような反応を例示するならば、糖鎖固定化樹脂化合物をDMSO中に溶解させ、0℃〜40℃で、酢酸クロリドを添加して1〜3時間反応させることによりアミド化を行うことができる。
本発明の糖鎖固定化樹脂中に含まれる糖鎖(D)の含有量としては、1〜40wt%の範囲が好ましく、1〜20wt%の範囲がさらに好ましい。1wt%より小さいと、糖類の量が少なすぎて発明の効果を発揮できない恐れがあるし、40wt%以上だと樹脂の耐水性が低下する恐れがある。
エポキシ基を有する水酸基を有する樹脂化合物は、前記アミノ基、又は糖類を有する水酸基を有する樹脂化合物の作製に用いられるエポキシ基を有する水酸基を有する樹脂化合物を挙げることができる。
・更にカルボキシ基を有する樹脂化合物
カルボキシル基を有する樹脂化合物を調製する方法として、以下のようなものが挙げられる。より具体的には、親水性樹脂化合物(A)にセリウム塩存在下アクリル酸やメタクリル酸などを重合させる方法、親水性樹脂化合物(A)にカルボン酸無水物を反応させる方法、エポキシ基を有する化合物(B)にポリカルボン酸などの多官能カルボン酸を反応させる方法、アミノ基を有する樹脂化合物(C)に公知慣用の反応でポリカルボン酸などの多官能カルボン酸を反応させる方法が挙げられる。また、親水性樹脂化合物中に1級水酸基が存在している場合は、公知慣用の方法で酸化してカルボン酸に変換する方法でも良い。ただし、これらの方法に限定されるものではなく、目的に応じて適宜最適な方法で調製すれば良い。
(中空糸膜)
本発明に用いられる中空糸膜は、公知慣用のものを挙げることができる。
例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スルホン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、フルオロカーボン樹脂、エーテル系樹脂又はセルロース混合エステル等からなるものが挙げられる。より具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリ−4−メチルペンテン等を例示できるが、特にオレフィン系樹脂からなるものが好ましい。
(固定化方法)
本発明の固定化方法は、以下の工程を順次行うことに特徴を有する。
(1)前記樹脂化合物と樹脂化合物を溶解させる媒体で構成される溶液を前記オレフィン製中空糸に通液させる工程
(2)前記(1)工程で得られる中空糸を、前記樹脂化合物を溶解させる媒体により洗浄する工程
(3)前記(2)工程で得られる中空糸を水と接触させることにより前記樹脂化合物を中空糸表面に固定化せしめる工程。
本発明の製造方法では、まず、中空糸に樹脂化合物溶液を吸引、もしくは加圧により通液させることにより、強制的に溶液を中空糸外表面から内表面、もしくは内表面から外表面に通過させ、中空糸全体に浸透させることが出来る。例えば、ポリエチレン中空糸の場合は、親水性樹脂中に含まれるエチレン部分がポリエチレンと疎水性相互作用によって吸着され、水酸基等が水素結合などで絡み合い、弱い状態ではあるが、中空糸表面に吸着される。
次に、中空糸表面に吸着されなかった余分な樹脂を洗浄する工程を行う。ここでも、吸引、もしくは加圧して通液しながら洗浄することにより余分な樹脂をまんべんなく除去することが可能となり、表面に吸着している樹脂のみが存在する状態になる。最後に、水と接触させることにより表面に弱く吸着している樹脂が固化し、強く固着する。
このような通液する工程を経ることで、中空糸全体に均一に樹脂を固定化することが出来ると推測できる。
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
<多孔性高分子基材の孔径の測定>
ASTM F316−86およびASTM E1294−89に準拠し、Porous Materials,Inc.社製「パームポロメータCFP−200AEX」を用いてハーフドライ法により平均流量孔径(膜の一方から他方に向けて貫通する孔の窄み部分の平均孔径)を測定した。試液はパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」)を用いた。
<樹脂中の官能基および糖鎖固定化量>
樹脂中に含まれるエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基などの官能基は、公知慣用の酸化還元および酸塩基滴定方法を用いて行なった。糖鎖固定化樹脂に固定化された糖類の量は、1,9−ジメチルメチレンブルーの色素吸着量より算出した。検量線の作成:色素水溶液を調製し、糖類を所定量添加し、糖類と色素の複合体を形成させる。そこへ、ヘキサンを加えて色素と糖類の複合体を水相から分離し、残った水溶液中の色素量を吸光度(650nm)で測定し、糖類の添加量と吸光度を用いて検量線を作成した。サンプル測定:糖鎖固定化樹脂サンプル所定量をエタノール/水中に溶解させた後、蒸留でエタノール分を留去し、糖鎖固定化樹脂の水分散液を得た。この水分散液中に1,9−ジメチルメチレンブルーを加えて、色素吸着量より糖類固定化量を算出した。
<中空糸に固定化された樹脂および官能基量の算出>
中空糸に固定化された樹脂の量は、処理前と処理後の重量増加の差により算出した。導入された官能基の量は、重量増加から算出する方法や公知慣用の酸化還元および酸塩基滴定方法を用いて行なった。糖類の量は、1,9−ジメチルメチレンブルーの色素吸着量より算出した。検量線の作成:色素水溶液を調製し、糖類を所定量添加し、糖類と色素の複合体を形成させる。そこへ、ヘキサンを加えて色素と糖類の複合体を水相から分離し、残った水溶液中の色素量を吸光度(650nm)で測定し、糖類の添加量と吸光度を用いて検量線を作成した。サンプル測定:色素溶液に、中空糸を所定の長さに裁断して浸漬し、色素の吸着量から換算して糖類の固定化量を算出した。
(合成例1)エポキシ基を有する樹脂化合物の合成
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学製品、エチレン含量44モル%、重量平均分子量90000)の170部、及びジメチルスルホキシド(和光純薬製品)の2380部を仕込んで90℃に昇温し、エチレン−ビニルアルコール共重合体を溶解させた。その後50℃まで温度を下げて、攪拌しながらエピクロロヒドリンの2550部を加えて溶解させた。そこに、5%水酸化ナトリウム水溶液を85部加えて、50℃にて1時間加熱攪拌した。その後、再沈殿法にて樹脂分を析出させ、濾過、洗浄、乾燥を行い、エポキシ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(1)を得た。エポキシ当量は2146g/mol、重量平均分子量は126000であった。
(合成例2)アミノ基を有する樹脂化合物の合成
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、合成例1で得たエポキシ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(1)の120部、及びエタノールの1602部、イオン交換水の678部を仕込んで90℃に昇温し、エポキシ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(1)を溶解させた後、40℃まで温度を下げた。上述のエポキシ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体を、28%アンモニア水の675部及びエタノールの830部の混合溶媒物中に滴下後、40℃にて4時間加熱攪拌した。その後、蒸留によって余剰のアンモニア分を留去し、不揮発分および溶剤組成を調整して、アミノ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(2)を得た。(アミン価25mgKOH/g、不揮発分2.5wt%、溶剤組成エタノール79wt%、水21wt%)
(合成例3)糖類を有する樹脂化合物の合成
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、合成例1で得たエポキシ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(1)の120部、及びエタノールの1602部、イオン交換水の678部を仕込んで90℃に昇温し、エポキシ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(1)を溶解させた後、40℃まで温度を下げた。上述のエポキシ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(1)を、28%アンモニア水の675部及びエタノールの830部の混合溶媒物中に滴下後、40℃にて4時間加熱攪拌した。その後、ジメチルスルホキシドを376部加え、蒸留によって余剰のアンモニア分及びエタノール、水を留去し、アミノ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体のジメチルスルホキシド溶液(固形分アミン価25mgKOH/g、不揮発分5.9%)を得た。
次に、温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、前記で得たアミノ基を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体のジメチルスルホキシド溶液(不揮発分5.9%)の370部に、ヘパリン(LDO社製品)の8.7部及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムの0.87部、イオン交換水の44.6部、ジメチルスルホキシドの103部の混合物を加え、40℃にて70時間加熱攪拌した。その後、アセチルクロリドの32.8部とトリエチルアミンの48.2部を加えて20℃にて3時間反応させた。その後、再沈殿法にて樹脂分を析出させ、濾過、洗浄、乾燥を行い、糖類を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(3)を得た。糖類固定化樹脂中に含まれる糖類の量を色素吸着法により測定したところ、6.3wt%であった。
(実施例1)アミノ基を有する樹脂化合物の固定化
合成例2で得られたアミノ基を有するEVOH(2)を75vol%EtOH水溶液に0.5wt%になるように溶解させた。この樹脂溶液を内径1.5cm、長さ13cmの試験管に入れ、中空糸モジュールを浸漬した。コネクター部分に取り付けた注射筒で溶液を吸い上げて、吐き出した。この操作を数回繰り返して、樹脂溶液を中空糸内部に通液した。モジュールを取り出して、別の試験管に入れてあった75%EtOH水溶液に浸漬し、その後、さらに別の試験管に入れてあった75%EtOH水溶液に浸漬した。コネクター部分に取り付けた注射筒で溶液を吸い上げ、吐き出すことによって中空糸内部に残っている余分な樹脂溶液を洗浄した。
その後、中空糸モジュールを水中に浸漬し、コネクター部分に取り付けた注射筒で水を吸い上げ、吐き出すことによって、樹脂を固化し、被膜した。中空糸を乾燥し、重量を測定したところ重量増加が13%であった。このときの平均流量孔径は149nmであった。SEMによる表面観察により、フィブリルの結束も確認できた。この中空糸は、水への濡れ性が良好であった。また、アミノ基を有するEVOHを被膜した中空糸に硫酸化多糖であるヘパリンを固定化したところ、内表面積換算で13μg/cm固定化できた。
SEM−EDSにより、ヘパリンの分布を測定したところ、内表面から外表面まで均一に糖鎖由来の元素が観測された。したがって、元のアミノ基を有する樹脂化合物が均一に固定化されていることを示唆している。
(実施例2)糖鎖を有する樹脂化合物の固定化
合成例3で得られたヘパリン固定化EVOH(2)を75vol%EtOH水溶液に1.5wt%になるように溶解させた。この樹脂溶液を内径1.5cm、長さ13cmの試験管に入れ、中空糸モジュールを浸漬した。コネクター部分に取り付けた注射筒で溶液を吸い上げて、吐き出した。この操作を数回繰り返して、樹脂溶液を中空糸内部に通液した。モジュールを取り出して、別の試験管に入れてあった75%EtOH水溶液に浸漬し、その後、さらに別の試験管に入れてあった75%EtOH水溶液に浸漬した。コネクター部分に取り付けた注射筒で溶液を吸い上げ、吐き出すことによって中空糸内部に残っている余分な樹脂溶液を洗浄した。このとき糖鎖の固定化量は4μg/cmであった。SEM−EDSにより、糖鎖の分布を測定したところ、内表面から外表面まで均一にヘパリン由来の元素が観測され、均一に固定化されていることがわかった。この中空糸に、C型肝炎ウイルスを含む溶液を通液したところ66%ウイルスが吸着されることがわかった。
(作製例1)モジュールの作製
延伸開孔したポリエチレン中空糸を約15cmで50本束ね、片側をエポキシ樹脂で封止した。もう片側を内径8mm長さ2cmのプラスチックパイプ(スチロール樹脂製)に通した。中空糸をパイプから適当な長さを出しておき、中空糸とパイプをエポキシ樹脂で硬化させた。パイプから通液を行うためにカッターで端面を出し、コネクターを取り付けて、有効長約12cmのモジュールを作製した。
(比較例1)
合成例2で得られるアミノ基を有するEVOH(2)を75vol%EtOH水溶液に0.5wt%になるように溶解させて、50℃に保温した。この溶液に延伸開孔したポリエチレン中空糸を100秒間浸漬し、50℃のエタノール飽和蒸気下で80秒保温した後、さらに80秒かけて溶剤を乾燥した。このようにして調製した中空糸の重量を測定したところ、重量増加は5%であった。このときの平均流量孔径は、149nmであった。この中空糸は、水への濡れ性が悪かった。また、アミノ基を有するEVOHを被膜した中空糸に硫酸化多糖であるヘパリンを固定化したところ、内表面積換算で7μg/cm固定化できた。SEM−EDSにより、ヘパリンの分布を測定したところ、外表面側にヘパリン由来の元素が多く検出され、内表面側でほとんど検出がされなかった。したがって、元のアミノ基を有する樹脂化合物が均一に固定化されていないことを示唆している。
以上にように、本発明の固定化方法により得られる中空糸膜は、アミノ基の固定化量も高く、濡れ性が良好であった。また、中空糸全体に、均一に固定化されていることがわかった。したがって、従来の浸漬による方法よりも糖鎖の固定化量も多く、ウイルスの吸着能が高くなった。
本発明の固定化方法により得られる表面が親水化された中空糸膜は、ウイルスや悪性物質を捕捉する糖鎖を均一に多く固定化できるので、例えばウイルスの精製、或いは血液浄化装置として用いることができる。

Claims (13)

  1. 水酸基を有する樹脂化合物をオレフィン製中空糸表面に固定化する方法であって、以下の各工程を有することを特徴とする方法。
    (1)前記樹脂化合物と樹脂化合物を溶解させる媒体で構成される溶液を前記オレフィン製中空糸に通液させる工程
    (2)前記(1)工程で得られる中空糸を、前記樹脂化合物を溶解させる媒体により洗浄する工程
    (3)前記(2)工程で得られる中空糸を水と接触させることにより前記樹脂化合物を中空糸表面に固定化せしめる工程
  2. 水酸基を有する樹脂化合物が、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)である請求項1に記載の方法。
  3. 水酸基を有する樹脂化合物が更にアミノ基、糖類、カルボキシ基、又はエポキシ基を有する樹脂化合物である請求項1に記載の方法。
  4. 更にアミノ基を有する樹脂化合物が、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)と、エポキシ基を有する化合物(B)を反応させた後に、アミノ基を有する化合物(C)を反応させて得られる樹脂化合物である請求項3に記載の方法。
  5. エポキシ基を有する化合物(B)が、エピクロロヒドリン、又はジエポキシ化合物である請求項4に記載の方法。
  6. アミノ基を有する化合物(C)が、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、2−アミノエタノール、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、フェニレンジアミン、ポリアリルアミン、又はポリエチレンイミンである請求項4に記載の方法。
  7. 更に糖類を有する樹脂化合物が、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)と、エポキシ基を有する化合物(B)を反応させた後に、アミノ基を有する化合物(C)を反応させ、更に前記アミノ基と糖類を反応させて得られる樹脂化合物である請求項1に記載の方法。
  8. エポキシ基を有する化合物(B)が、エピクロロヒドリン、又はジエポキシ化合物である請求項7に記載の方法。
  9. アミノ基を有する化合物(C)が、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、2−アミノエタノール、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、フェニレンジアミン、ポリアリルアミン、又はポリエチレンイミンである請求項7に記載の方法。
  10. 糖類が、ヘパリン、ヘパリンの1級又は2級水酸基を硫酸エステル化したヘパリン誘導体、ヘパリンのN−アセチル基のアセチル基脱離体をN−硫酸エステル化したヘパリン誘導体、ヘパリンのN−硫酸基の硫酸基脱離体をN−アセチル化したヘパリン誘導体、低分子量ヘパリン、デキストラン硫酸、フコイダン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ヘパリン類似物質、ヘパラン硫酸、ラムナン硫酸、ケタラン硫酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、又はカルボキシメチルセルロースである請求項7に記載の方法。
  11. 更にエポキシ基を有する樹脂化合物が、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体、及びエチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる親水性樹脂(A)と、エポキシ基を有する化合物(B)を反応させて得られる樹脂化合物である請求項1に記載の方法。
  12. エポキシ基を有する化合物(B)が、エピクロロヒドリン、又はジエポキシ化合物である請求項11に記載の方法。
  13. 樹脂化合物を溶解させる媒体が、アルコール性水溶液である請求項1に記載の方法。
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