JP2015027207A - 光励起熱電子エミッター - Google Patents
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Abstract
【課題】光励起熱電子発電において、電子放出面の形状及び結晶面を工夫することにより、電子の放出効率を向上させ、発電効率を向上させる。
【解決手段】電子を放出する光励起熱電子エミッター1であって、p型半導体から成る基板2と、基板の電子を放出する側の基板面に形成された凹凸構造4,5と、凹凸構造の表面に形成されたアルカリ金属を含む活性層3と、を有し、p型半導体は立方晶の結晶であるとともに、結晶の単位格子の対角方向が基板面に対して垂直方向であり、凹凸構造の各面の表面は前記結晶の(100)面又は(111)面で形成されている。凹凸構造は、結晶の(111)面又は(100)面を表面加工することにより形成されたものである。また、光励起電子エミッターの近傍にコレクター電極を設け、光励起熱電子エミッターと、コレクター電極との間の起電力により発電を行う。
【選択図】図1
【解決手段】電子を放出する光励起熱電子エミッター1であって、p型半導体から成る基板2と、基板の電子を放出する側の基板面に形成された凹凸構造4,5と、凹凸構造の表面に形成されたアルカリ金属を含む活性層3と、を有し、p型半導体は立方晶の結晶であるとともに、結晶の単位格子の対角方向が基板面に対して垂直方向であり、凹凸構造の各面の表面は前記結晶の(100)面又は(111)面で形成されている。凹凸構造は、結晶の(111)面又は(100)面を表面加工することにより形成されたものである。また、光励起電子エミッターの近傍にコレクター電極を設け、光励起熱電子エミッターと、コレクター電極との間の起電力により発電を行う。
【選択図】図1
Description
p型半導体を用いた、電子を放出する光励起熱電子エミッター、及び、該光励起熱電子エミッターを用いた光励起熱電子発電素子に関する。
光エネルギーを用いて発電する素子としては太陽電池が知られている。半導体中の価電子帯の電子が光を吸収して伝導帯に励起されることにより発電を行うが、光を吸収しても価電子帯と伝導帯のバンドギャップに相当する起電力しか生じず、それ以上のエネルギー(短波長)の光を吸収してもその分は熱エネルギーに変換されて発電には寄与しなくなってしまう。したがって、発電効率には限界があり、理論値でも30%程度であり、実際には10%台である。
一方、熱エネルギーにより熱電子を取り出して電気に変換する熱電子発電が知られている(特許文献1、特許文献2)。エミッター電極を加熱して熱電子を発生させ、コレクター電極で熱電子を受け取ることで、エミッター電極の仕事関数とコレクター電極の仕事関数の差が起電力として取り出される。このような熱電子発電素子の場合、起電力を取り出すためにエミッター電極は仕事関数の大きな物質を用いる必要があり、熱電子を放出させるためにはエミッター電極を高温にする必要がある。例えば、現在提案されているものは、エミッター電極を1500℃〜3000℃に加熱する必要があり、熱源が限定されてしまうとともに、耐久性にも問題がある。また、発電効率も理論値で20%程度であり、実用化されているものは7%程度である。なお、特許文献2にはエミッター電極の表面に凹凸構造を設けることが記載されている。
太陽電池発電と熱電子発電の欠点を補うものとして、光励起熱電子発電(PETE、Photon Enhanced Thermionic Emission)が提案されている(特許文献3、非特許文献1)。これは、光エネルギーによる電子と熱エネルギーによる電子をエミッターから取り出し、発電に用いるものである。光励起による光電子のほか、バンドギャップ以上の光エネルギーを吸収して熱エネルギーに変換された分も熱電子としてエミッターから取り出すことにより、理論的には40%程度の発電効率が得られる。
NATURE MATERIALS, September 2010, Vol.9, p.762-767
上述のように太陽電池発電ではバンドギャップに相当するエネルギー分しか起電力を生じさせることができず発電効率に限界がある。また、熱電子発電では、熱電子を発生させるためにエミッター電極を高温にする必要があり、耐久性に問題があるとともに、変換効率にも限界がある。両者の欠点を補うものとして光励起熱電子発電(PETE)があるが、エミッターから電子を効率よく放出させるための具体的な構成については十分に検討されていない。光励起熱電子発電では、エミッターから電子を効率よく放出させることが発電効率向上のためには必要であるが、特許文献3及び非特許文献1では十分な検討がなされていない。
本発明は上記問題点を解決するものであり、光励起熱電子発電において、電子放出面の形状及び結晶面を工夫することにより、電子の放出効率を向上させ、発電効率を向上させることを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
電子を放出する光励起熱電子エミッターであって、
p型半導体からなる基板と、
前記基板の電子放出側の基板面に形成された凹凸構造と、
前記凹凸構造の表面に形成されたアルカリ金属を含む活性層と、を有し、
前記p型半導体は立方晶の結晶であり、
前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(100)面で形成されている、
又は、前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(111)面で形成されている、
光励起熱電子エミッター。
電子を放出する光励起熱電子エミッターであって、
p型半導体からなる基板と、
前記基板の電子放出側の基板面に形成された凹凸構造と、
前記凹凸構造の表面に形成されたアルカリ金属を含む活性層と、を有し、
前記p型半導体は立方晶の結晶であり、
前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(100)面で形成されている、
又は、前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(111)面で形成されている、
光励起熱電子エミッター。
前記p型半導体としては、p型Si、p型SiC、p型GaN又はp型GaAsが好適に用いられ、特にp型Siが好適に用いられ得るが、これに限定されず、立方晶の結晶構造を有するp型半導体であれば何でも良い。
前記アルカリ金属は、Cs又はRbが好適に用いられ得るがこれに限定されず、条件が合えば他のアルカリ金属(例えば、KやNa)でも構わない。また、アルカリ金属は単体で用いても良いが、、酸素と一緒に用いるとさらに好ましい。
前記活性層の厚さは特に限定されないが、原子1〜2層、特に単層が好ましい。
前記p型半導体は、例えば表面が(111)面となっているものを用い、エッチングや切削などの表面加工をすることにより凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(100)面となる凹凸構造を形成する。または、表面が(100)面となっているp型半導体をものを用い、エッチングや切削などの表面加工をすることにより凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(111)面となる凹凸構造を形成する。結晶成長などにより同様な構造を形成しても良い。いずれの場合でも、p型半導体が立方晶であるので、前記凹凸構造は底面が正三角形で3つの側面が直角二等辺三角形である三角錐の集合体になる。凹凸構造は規則的に並んでいても良いし、不規則に並んでいても構わない。または、三角錐の立体配列によって、凹凸構造として、平行に配置したV溝を形成することも可能である。
「(100)面」という記載は、慣例に従って結晶面を代表的に記載したもので、当然、(010)面や(001)面などを含んだ記載である。「凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(100)面で形成されている」という記載は、凹凸構造の各面が(100)面、(010)面、(001)面など、(100)面で代表される結晶面で形成されていることを意味している。便宜的に「全ての面」という表現を用いているが、実際には表面加工の精度などにより一部条件を満たさないこともあり、実質的に全ての面が所定の結晶面であるということを意味している。
同様に、「(111)面」という記載も、慣例に従って結晶面を代表的に記載したもので、当然、(−111)面、(1−11)面、(11−1)面などを含んだ記載である。「凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(111)面で形成されている」という記載についても、凹凸構造の各面が(111)面で代表される結晶面で形成されていることを意味している。
前記アルカリ金属は、Cs又はRbが好適に用いられ得るがこれに限定されず、条件が合えば他のアルカリ金属(例えば、KやNa)でも構わない。また、アルカリ金属は単体で用いても良いが、、酸素と一緒に用いるとさらに好ましい。
前記活性層の厚さは特に限定されないが、原子1〜2層、特に単層が好ましい。
前記p型半導体は、例えば表面が(111)面となっているものを用い、エッチングや切削などの表面加工をすることにより凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(100)面となる凹凸構造を形成する。または、表面が(100)面となっているp型半導体をものを用い、エッチングや切削などの表面加工をすることにより凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(111)面となる凹凸構造を形成する。結晶成長などにより同様な構造を形成しても良い。いずれの場合でも、p型半導体が立方晶であるので、前記凹凸構造は底面が正三角形で3つの側面が直角二等辺三角形である三角錐の集合体になる。凹凸構造は規則的に並んでいても良いし、不規則に並んでいても構わない。または、三角錐の立体配列によって、凹凸構造として、平行に配置したV溝を形成することも可能である。
「(100)面」という記載は、慣例に従って結晶面を代表的に記載したもので、当然、(010)面や(001)面などを含んだ記載である。「凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(100)面で形成されている」という記載は、凹凸構造の各面が(100)面、(010)面、(001)面など、(100)面で代表される結晶面で形成されていることを意味している。便宜的に「全ての面」という表現を用いているが、実際には表面加工の精度などにより一部条件を満たさないこともあり、実質的に全ての面が所定の結晶面であるということを意味している。
同様に、「(111)面」という記載も、慣例に従って結晶面を代表的に記載したもので、当然、(−111)面、(1−11)面、(11−1)面などを含んだ記載である。「凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(111)面で形成されている」という記載についても、凹凸構造の各面が(111)面で代表される結晶面で形成されていることを意味している。
本発明は上記構成を採用したことにより、光エネルギー及び熱エネルギーを効率よく電子の放出エネルギーに変換することができ、高効率な光励起熱電子発電を実現することができる。基板の電子放出面が凹凸構造を有しているため、表面積が大きく、平坦面に比べて効率よく電子を放出させることができる。凹凸構造が三角錐の集合体またはV溝になるため、凹凸構造の表面が基板面の垂直方向から所定の角度で傾斜している。電子放出面から光を照射する構造を採用した場合、この傾斜面により光の照射方向に戻る反射を低減することが可能になり、光エネルギーを効率よく吸収することができる。
本発明では基板表面にアルカリ金属を含む活性層を形成しており、これにより基板表面での電子親和力を低下させ、電子を放出しやすくしている。特に、凹凸構造の表面として結晶の(100)面を採用した場合、この面に活性層を形成することにより、他の結晶面に比べて活性層の効果が向上することが発明者の知見によりわかっている。(100)面に活性層を形成した場合、条件さえ整えば、負の電子親和力(Negative Electron Affinity、NEA)を実現することも可能である。
また、凹凸構造の表面として(111)面を採用した場合、他の面に比べて凹凸構造が形成しやすい。さらに、他の面を表面にした場合に比べて、熱に強く、仕事関数が大きいため、光励起熱電子発電において大きな起電力を生じさせることが可能である。さらに、安定で均質な表面を形成できるので、放出される電子はエネルギーがそろった特性の良いものになる。
本発明では基板表面にアルカリ金属を含む活性層を形成しており、これにより基板表面での電子親和力を低下させ、電子を放出しやすくしている。特に、凹凸構造の表面として結晶の(100)面を採用した場合、この面に活性層を形成することにより、他の結晶面に比べて活性層の効果が向上することが発明者の知見によりわかっている。(100)面に活性層を形成した場合、条件さえ整えば、負の電子親和力(Negative Electron Affinity、NEA)を実現することも可能である。
また、凹凸構造の表面として(111)面を採用した場合、他の面に比べて凹凸構造が形成しやすい。さらに、他の面を表面にした場合に比べて、熱に強く、仕事関数が大きいため、光励起熱電子発電において大きな起電力を生じさせることが可能である。さらに、安定で均質な表面を形成できるので、放出される電子はエネルギーがそろった特性の良いものになる。
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記凹凸構造は、光が照射される側の基板面に形成されている。
前記凹凸構造は、光が照射される側の基板面に形成されている。
電子を放出する側の基板面から光を照射することにより、p型半導体の表面付近で光電子を励起することができ、より効率よく電子を放出することができる。
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(100)面であり、前記凹凸構造は、前記結晶の(111)面を表面加工することにより形成されたものである。
前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(111)面であり、前記凹凸構造は、前記結晶の(100)面を表面加工することにより形成されたものである。
前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(100)面であり、前記凹凸構造は、前記結晶の(111)面を表面加工することにより形成されたものである。
前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(111)面であり、前記凹凸構造は、前記結晶の(100)面を表面加工することにより形成されたものである。
前記表面加工は、基板面に凹凸構造を形成できるものであれば何でも良く、例えば、ドライエッチング、化学エッチング、イオンビーム加工、切削加工などが用いられ得る。
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記凹凸構造は、複数のV溝を平行に配列したものである。
前記凹凸構造は、底面が正三角形の三角錐を複数個配列したものである。
前記凹凸構造は、複数のV溝を平行に配列したものである。
前記凹凸構造は、底面が正三角形の三角錐を複数個配列したものである。
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記基板は、p型Si、p型SiC、p型GaN又はp型GaAsからなる。
前記基板は、p型Si、p型SiC、p型GaN又はp型GaAsからなる。
p型半導体としては、p-Si(バンドギャップ:1.17eV)、p-SiC(同3.05eV)、p-GaN(同3.4eV)又はp-GaAs(同1.4eV)が好適に用いられ得る。
p-Siはバンドギャップが小さいため広範囲の波長域の光を吸収することが可能であり効率が高い。一方、p-GaNは短波長域の光しか吸収できないが、熱に強いため熱電子放出の効率が高い。
p-Siはバンドギャップが小さいため広範囲の波長域の光を吸収することが可能であり効率が高い。一方、p-GaNは短波長域の光しか吸収できないが、熱に強いため熱電子放出の効率が高い。
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記基板はp型Siからからなる。
前記基板はp型Siからからなる。
p-Siはバンドギャップが小さいことから、より広い範囲の波長の光(1.06μm以下)を吸収することができる。また、Siの(100)面とアルカリ金属との親和性が高く、電子親和力を小さくすることができるため、電子をより効率よく放出することが可能になる。
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記アルカリ金属は、Cs又はRbである。
前記アルカリ金属は、Cs又はRbである。
基板表面の電子親和力を低下させるために、Cs又はRb、特にCsが好適に用いられ得る。
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記光励起熱電子エミッターの近傍にコレクター電極を設け、
前記光励起熱電子エミッターと、前記コレクター電極との間の起電力により発電を行う。
前記光励起熱電子エミッターの近傍にコレクター電極を設け、
前記光励起熱電子エミッターと、前記コレクター電極との間の起電力により発電を行う。
光励起電子エミッターから放出された電子をコレクター電極で受け取ることにより起電力が生じ発電をすることができる。コレクター電極の配置は、光励起熱電子エミッターからの電子を受け取ることができる位置であればどこでも良い。光励起熱電子エミッターの電子放出面側から光を照射する構成の場合は、例えば、コレクター電極は光の通過の妨げにならない位置に配置される。
本発明は上記構成を採用したことにより、光励起熱電子発電において、電子放出面の形状及び結晶面を工夫することにより、電子の放出効率を向上させ、発電効率を向上させることができる。
以下、図面とともに本発明に係る光励起熱電子エミッターの好適な実施形態について説明する。なお図面は、理解しやすいように縮尺や形状を調整して記載している。
図1は本実施形態の光励起熱電子エミッターの断面図、図2は本実施形態の光励起熱電子エミッターの上面図、図3は、本実施形態の立方晶の結晶方位の説明図である。
光励起熱電子エミッター1は、p型半導体(好適にはp-Si)からなる基板2と、基板2の表面に形成された活性層3から構成される。基板2のp型半導体は立方晶のものが用いられ、立方晶の単位格子の対角方向である<111>方向が基板2の垂直方向になっている。基板2の表面は山4と谷5が平行に並ぶ複数のV溝からなる凹凸構造になっており、V溝のそれぞれの傾斜面は、(100)面、(010)面、(001)面のいずれかの面になっている。基板2は立方晶であるので、基板の表面は、図3における頂点9、底辺10、稜線11の三角錐の集合体で形成される。したがって、V溝の傾斜面と基板面との間の角度は、図1に示すように約54.7度になる。これらの形状は、表面が(111)面のp型半導体結晶に選択エッチング等の表面加工を施すことに形成される。凹凸構造の横方向のピッチに関しては表面加工の仕方により適宜設定可能で、μm単位でもmm単位でも構わない。
光励起熱電子エミッター1は、p型半導体(好適にはp-Si)からなる基板2と、基板2の表面に形成された活性層3から構成される。基板2のp型半導体は立方晶のものが用いられ、立方晶の単位格子の対角方向である<111>方向が基板2の垂直方向になっている。基板2の表面は山4と谷5が平行に並ぶ複数のV溝からなる凹凸構造になっており、V溝のそれぞれの傾斜面は、(100)面、(010)面、(001)面のいずれかの面になっている。基板2は立方晶であるので、基板の表面は、図3における頂点9、底辺10、稜線11の三角錐の集合体で形成される。したがって、V溝の傾斜面と基板面との間の角度は、図1に示すように約54.7度になる。これらの形状は、表面が(111)面のp型半導体結晶に選択エッチング等の表面加工を施すことに形成される。凹凸構造の横方向のピッチに関しては表面加工の仕方により適宜設定可能で、μm単位でもmm単位でも構わない。
活性層3はアルカリ金属を含み、基板2の表面の電子親和力を小さくし、表面から電子を放出しやすくする。特に、セシウム(Cs)と酸素(O)の組み合わせが好適に用いられ得る。さらに、活性層3がp型半導体の(100)面に形成されることにより、より電子親和力を低減でき、効率よく表面から電子を放出することができる。条件さえ合えば、負の電子親和力(Negative Electron Affinity、NEA)も実現可能である。活性層3の厚さは例えば数nm程度である。
図4を用いて、基板2の凹凸構造の別の実施形態について説明する。本実施形態では、基板2の表面の凹凸構造は、立方晶の(100)面、(010)面及び(001)面が各表面となっている三角錐形状の集合体になっている。この三角錐は、図3に示すように、底面が正三角形で、3つの側面が底辺10と2つの稜線11からなる直角二等辺三角形になっていて、頂点9を有している。これらが、図4のように基板2の表面に配列している。これらの形状は、表面が(111)面のp型半導体結晶に選択エッチング等の表面加工を施すことに形成される。基板2の表面を三角錐の集合体にすることで、V溝に比べて表面積を大きくすることができ、電子放出の効率を向上させることができる。
図5を用いて、凹凸構造の表面を(111)面にする別の実施形態について説明する。基板2のp型半導体は立方晶のものが用いられ、立方晶の単位格子の対角方向である<100>方向が基板2の垂直方向になっている。基板2の表面は山4と谷5が平行に並ぶ複数のV溝からなる凹凸構造になっており、V溝のそれぞれの傾斜面は、(111)面、(1−11)面、(11−1)面のいずれかの面になっている。図1と同様に、V溝の傾斜面と基板面との間の角度は約54.7度になる。これらの形状は、表面が(100)面のp型半導体結晶に選択エッチング等の表面加工を施すことに形成される。また図4と同様に、表面の凹凸構造を、立方晶の(111)面、(1−11)面及び(11−1)面が各表面となっている三角錐形状の集合体で形成しても良い。
図6を用いて、本実施形態の光励起熱電子エミッターの基板表面付近のエネルギー凖位について説明する。EVは価電子帯、EFはフェルミ準位、ECは伝導帯、EVACは真空のエネルギー凖位、Egはバンドギャップ、χは電子親和力を表す。価電子帯にある電子は光エネルギー又は熱エネルギーにより伝導帯に励起される。伝導帯に励起された電子は所定時間後には正孔にトラップされてしまうが、その前に熱エネルギー等で励起されてEVACを超えることができれば外部に放出される。電子親和力χは基板の表面状態により決まり、条件さえ合えば、図7に示すように、負の電子親和力(Negative Electron Affinity、NEA)にすることもできる。この場合、基板の表面付近で伝導帯に励起された電子は、さらなるエネルギーを必要とせずに外部に放出される。
図8を用いて、基板2の表面への光の入射について説明する。図8のように光が基板面に対して垂直に入射すると、凹凸構造の側面への入射角θは約36度になる。光が屈折率の異なる面に入射するとき、電気ベクトルが入射面に対して平行なS波と、電気ベクトルがS波に対して垂直なP波に分けて考えられる。シリコンのブリュスター角は約16度であり、この近傍ではP波は表面に反射しないでシリコン内に入射される。入射角θが36度ではP波の反射率は0.1以下になる。S波の反射率はθが小さくなることにより大きくなるが、P波の反射率が小さくなることから、トータルでは垂直入射の場合とほぼ同じになり、反射率は約30%程度になる。図8に示すように、基板2の表面における光の入射面が傾斜していることから、垂直に入射した光は基板表面で複数回反射することになる。1回の反射の反射率が約30%だとすると吸収率は約70%であり、図8のように2回反射が行われると、反射率が約30%×30%=約9%となり、吸収率は約91%となる。したがって、図8のように基板表面に斜面を形成することにより約90%以上の光を吸収することが可能になり、光励起熱電子エミッターの電子放出効率を向上させることが可能になる。
図9は、本実施形態の光励起熱電子エミッターを発電に用いた場合の概略図である。密閉容器8の中に、光励起熱電子エミッター1とコレクター電極7が配置される。密閉容器8の中は、例えばアルゴン+セシウムが封入されている。また、密閉容器8の少なくとも光が入射する部分は透明になってる。コレクター電極7は、光励起熱電子エミッター1の近傍に設けられるとともに、光励起熱電子エミッター1への光の入射が妨げられないような配置及び構造になっている。例えば、メッシュ状の電極を用いるなどが考えられる。光励起熱電子エミッター1から放出された電子はコレクター電極7に捉えられて起電力を生じる。
光源は光を照射できるものであれば何でも良いが、太陽光のほか、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、水銀ランプ、LED、レーザー、半導体レーザーなどが用いられ得る。半導体エミッターを用いることにより、500℃〜800℃の中温域で高い発電効率を実現できる。光励起熱電子エミッター1に光を照射することにより熱電子の放出が促進され、発電効率が向上する。
光源は光を照射できるものであれば何でも良いが、太陽光のほか、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、水銀ランプ、LED、レーザー、半導体レーザーなどが用いられ得る。半導体エミッターを用いることにより、500℃〜800℃の中温域で高い発電効率を実現できる。光励起熱電子エミッター1に光を照射することにより熱電子の放出が促進され、発電効率が向上する。
なお、図9では光励起熱電子エミッター1の電子放出面側に光を照射したが、基板2が十分に薄い場合には図10のように電子放出面とは反対側から光を照射しても良い。
続いて図11及び図12を用いて、基板2の表面の凹凸構造の各面が(100)面となる凹凸構造の作成方法の一例について説明する。図11(a)のように、基板面に垂直な方向が結晶の<111>方向になっている基板2を用いる。基板2の表面に対して、図12(a)のように<110>方向に平行な複数のV溝を形成するように、カッター刃等を用いて切り出し切削をする。切り出し切削を行うと、図11(b)のように切削面の凹凸は大小さまざまになることがあるが、各面が(100)面等になっていれば問題はない。切削面は歪及び傷が多く存在するので、化学エッチング等により取り除く。
表面の凹凸を三角錐にしたい場合は、さらに図12(b)や図12(c)のように、<110>方向に対して+60度及び−60度方向で切り出し切削を行う。
表面の凹凸を三角錐にしたい場合は、さらに図12(b)や図12(c)のように、<110>方向に対して+60度及び−60度方向で切り出し切削を行う。
続いて図13を用いて、基板2の表面の凹凸構造の各面が(100)面となる凹凸構造の作成方法の別の例について説明する。この方法では、ドライエッチングにより表面の凹凸構造を作成する。図13(a)のような基板の垂直方向が<111>方向になっている基板の表面に、<110>方向に平行に複数の縞状のマスク12を形成し、特にこのマスク12の厚さを厚くして、斜め方向からのイオン照射に対する影ができるようにする。アルゴン等のイオンを傾斜角度を持たせて基板2の表面に照射するとき、マスク12の影により図13(b)のようにエッチングの傾斜ができる。この傾斜が(100)面となるようにエッチングの条件を調整する。
次に、マスク12を除去して、さらにエッチングを行った後、図13(c)のように傾斜面にマスク12を形成して、前回とは反対方向からイオン照射を行うことで、前回とは反対側の傾斜面に(100)面((010)面)が形成される。これにより図13(d)のような凹凸構造が形成される。凹凸構造の表面を完全に(100)面にすることは難しいが、ほとんど全ての表面が実質的に(100)面になっていれば構わない。また、<110>方向のマスクのみを行えば、V溝が形成できるし、図12のように±60度の方向にも同様の処理を行うことで複数の三角錐の表面を形成することができる。
次に、マスク12を除去して、さらにエッチングを行った後、図13(c)のように傾斜面にマスク12を形成して、前回とは反対方向からイオン照射を行うことで、前回とは反対側の傾斜面に(100)面((010)面)が形成される。これにより図13(d)のような凹凸構造が形成される。凹凸構造の表面を完全に(100)面にすることは難しいが、ほとんど全ての表面が実質的に(100)面になっていれば構わない。また、<110>方向のマスクのみを行えば、V溝が形成できるし、図12のように±60度の方向にも同様の処理を行うことで複数の三角錐の表面を形成することができる。
続いて図14を用いて、基板2の表面の凹凸構造の各面が(111)面となる凹凸構造の作成方法の一例について説明する。半導体では化学エッチングによって、ある結晶面で選択的にエッチングが進む現象がある。この現象を利用すると、結晶学的に選択的に表面を形成することができる。図14(a)のような基板面に垂直な方向が結晶の<100>方向になっている基板2を用いて、基板2の表面に<110>に平行に複数の縞状のマスク12を形成し、例えば希釈したKOHにより化学エッチングを行う。化学エッチングにより図14(b)のように(100)面のみがエッチングされ(111)面はエッチングされないので、図14(c)のように表面が(111)面である凹凸構造が形成される。また、<110>方向のマスクのみを行えば、V溝が形成できるし、図12のように±60度の方向にも同様の処理を行うことで複数の三角錐の表面を形成することもできる。
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。
1:光励起熱電子エミッター、 2:基板(p型半導体)、 3:活性層、 4:V溝の山、 5:V溝の谷、 7:コレクター電極、 8:密閉容器、 9:頂点、 10:底辺、 11:稜線、 12:マスク
Claims (10)
- 電子を放出する光励起熱電子エミッターであって、
p型半導体からなる基板と、
前記基板の電子放出側の基板面に形成された凹凸構造と、
前記凹凸構造の表面に形成されたアルカリ金属を含む活性層と、を有し、
前記p型半導体は立方晶の結晶であり、
前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(100)面で形成されている、
又は、前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が前記結晶の(111)面で形成されている、
光励起熱電子エミッター。 - 前記凹凸構造は、光が照射される側の基板面に形成されている、
請求項1記載の光励起熱電子エミッター。 - 前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(100)面であり、
前記凹凸構造は、前記結晶の(111)面を表面加工することにより形成されたものである、
請求項1又は2記載の光励起熱電子エミッター。 - 前記凹凸構造の実質的に全ての面の表面が(111)面であり、
前記凹凸構造は、前記結晶の(100)面を表面加工することにより形成されたものである、
請求項1又は2記載の光励起熱電子エミッター。 - 前記凹凸構造は、複数のV溝を平行に配列したものである、
請求項1乃至4いずれか記載の光励起電子エミッター。 - 前記凹凸構造は、底面が正三角形の三角錐を複数個配列したものである、
請求項1乃至4いずれか記載の光励起電子エミッター。 - 前記基板は、p型Si、p型SiC、p型GaN又はp型GaAsからなる、
請求項1乃至6いずれか記載の光励起熱電子エミッター。 - 前記基板はp型Siからからなる、
請求項1乃至6いずれか記載の光励起熱電子エミッター。 - 前記アルカリ金属は、Cs又はRbである、
請求項1乃至8いずれか記載の光励起熱電子エミッター。 - 請求項1乃至9いずれか記載の光励起熱電子エミッターの近傍にコレクター電極を設け、
前記光励起熱電子エミッターと、前記コレクター電極との間の起電力により発電を行う、
光励起熱電子発電素子。
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EP3291283A1 (fr) * | 2016-09-05 | 2018-03-07 | Commissariat à l'Energie Atomique et aux Energies Alternatives | Surface d'emission de rayonnement infrarouge ir a emissivite thermique elevee et a grande duree de vie et son procede de fabrication |
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-
2013
- 2013-07-26 JP JP2013156175A patent/JP2015027207A/ja active Pending
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