JP2015024373A - 無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜およびその製造方法 - Google Patents

無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特別な操作を行うことなく膜内にフィルター孔を設けることができ、いったん作製した膜の孔径を使用場面に応じて簡単に任意に調節することが可能で、それにより幅広いサイズの所望の物質の分離、抽出、除去などが可能となり、サイズの接近した対象物の分離も可能になる分離膜を提供する。【解決手段】珪酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物から選択される少なくとも一種の無機酸化物と、ポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物からなり、無機/有機ハイブリッド化合物が生成した時点でフィルター孔を有しており、フィルター孔により分離可能な分離対象物の大きさを加熱処理によって変えることが可能である特性を有する分離膜を構成する。【選択図】図1

Description

本発明は、無機/有機ハイブリッド化合物、特にはポリビニルアルコールと無機酸化物が化合したハイブリッド化合物からなる分離膜およびその製造方法に関するものである。
膜による分離・精製技術は、さまざまな分野で使用され、生活、産業において不可欠のものとなっている。
例えば、孔径が50nm〜10μmの精密濾過膜は、ミネラルウォーターの無菌化など微生物の除去や、浄水過程の濁質成分の除去などに使用されている。
例えば、孔径が10nm〜1nmの限外濾過膜は、細菌やウイルスの除去、蛋白質、酵素など熱に弱い物質の分離・濃縮、人工透析、生酒・生ビールの製造において酵母を分離除去して加熱殺菌することなく発酵を止めること、などに使用されている。
例えば、孔径が2nm以下の逆浸透膜は、海水淡水化、工業用純水・超純水の製造、果汁や牛乳の濃縮、排水の浄化などに使用されている。
また、このような孔径の小さな膜は、分子ふるいとして各種用途に使用され、例えば、パーベーパレーション法によるアルコールその他の濃縮や、あるいは気体の分離などにも使用される。
分離膜の材質としては、酢酸セルロース、ポリアミド、4フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリルなどの有機ポリマーが使用される。また、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどの無機酸化物が使用された分離膜もある。
分離膜は、当然、各用途に適合したサイズの貫通孔を多数持っていなければならないが、分離膜の材質そのものが元々細孔を有するわけではないため、何らかの特別な多孔質化プロセスを必要とする。
多孔質膜を得る方法としては、熱誘起相分離法、放射線トラック・エッチング法、延伸法などがある。
分離対象が非常に小さな逆浸透膜などでは、非対称な多孔質膜を製造するためのロブ・スリラーヤン法が有名である。このロブ・スリラーヤン法では、酢酸セルロースなどのキャスト膜を表面のみ乾いた状態で水に浸漬し、乾いていない部分だけに相分離によって孔ができる現象を利用して、膜中に非対称に孔を形成する。この時、最初に乾いていた表面の薄膜が緻密層となる。
従来の分離膜は薄いものであり、一般的に、分離膜単独で使用されるよりも、多孔質支持体と積層された形で使用される。分離膜は、表面積を多くするために、中空糸状あるいはスパイラル状に加工されて使用される場合が多く、また多くは最終的にそれらをカラム状の膜モジュールに加工する。
分離操作を行う時には、一般的に、それら膜モジュールに対象とする液体(場合によっては気体)を加圧導入して、分離処理能力を上げている。
さらに、特殊な分離膜の材質として、ゾル・ゲル法により形成された、ポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格とを有する、無機−有機複合体も提案されている(特許文献1を参照)。
また、−Si−X−Si−結合を有する無機有機ハイブリッド逆浸透膜(Xは一つ以上の水素が置換されていてもよい飽和又は不飽和アルキル鎖)を備えることを特徴とする逆浸透フィルターなども提案されている(特許文献2を参照)。
ところで、本発明の発明者は、これまでに簡単な水系プロセスで合成される新しいタイプの無機/有機ハイブリッド化合物を提案している。その化合物は、無機酸化物とポリビニルアルコールとが分子レベルで化合した無機/有機ハイブリッド化合物であって、無機酸化物の性質を反映して、低価格にもかかわらず化学的安定性や耐熱性に優れ、いくつかの分野(分離膜を含まない)に適用可能であることが示されている。
例えば、これらの無機/有機ハイブリッド化合物は、プロトン(あるいは水酸化物イオン)伝導性固体電解質として使用することができ、燃料電池、各種電解装置、センサー、電池、エレクトロクロミックデバイス、除湿機など、さまざまな用途への応用が提案されている。これら固体電解質として使用できる無機/有機ハイブリッド化合物は、詳しくは珪酸化合物とポリビニルアルコールからなる無機/有機ハイブリッド化合物(特許文献3を参照)、タングステン酸化合物又はモリブデン酸化合物とポリビニルアルコールからなる無機/有機ハイブリッド化合物(特許文献4を参照)、錫酸化合物とポリビニルアルコールからなる無機/有機ハイブリッド化合物(特許文献5を参照)、ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールからなる無機/有機ハイブリッド化合物(特許文献6、特許文献7を参照)などである。
これらのハイブリッド化合物から成る固体電解質は、無機酸化物の塩とポリビニルアルコールが共存する溶液中で、無機酸化物の塩を酸あるいはアルカリで中和し、溶媒と不要塩を除去して、成形体とすることによって得られる。
無機酸化物の成分が珪酸化合物、タングステン酸化合物、モリブデン酸化合物、錫酸化合物の場合には、これらの塩とポリビニルアルコールが共存する溶液中で、これらの塩を酸で中和する。
一方、無機酸化物の成分がジルコン酸化合物の場合には、ジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩をポリビニルアルコールの共存下、アルカリで中和する。ただし、ジルコン酸化合物の場合、原料液の中和工程の前に溶媒を除去して成形してしまい、成形後にアルカリと接触させることによって中和を行う方法も考案されている(特許文献8を参照)。
いずれの場合も、中和反応によって生成した生まれたての無機酸化物の反応活性が高く、その近傍のポリビニルアルコールと結合が生じる現象を基本としている。すなわち、中和反応時にポリビニルアルコールが共存していることが重要である。
本発明の発明者は、また、これら無機/有機ハイブリッド化合物が、医薬品、香料、農薬、その他の化学品の合成反応に使用される触媒に適用できることも見出している。
例えば、前述した固体電解質と同様の無機/有機ハイブリッド化合物は、不斉配位子を持つ立体選択性金属錯体触媒を多量に固定することができ、固定化触媒として使用することができる(特許文献9を参照)。
さらに、これら無機/有機ハイブリッド化合物中に、パラジウムなどの金属ナノ粒子を多量に導入することが可能であり、そのようなタイプの触媒も開示されている(特許文献10を参照)。
特開2000−5578号公報 特開2012−254449号公報 特許第4832670号明細書 特許第3889605号明細書 特許第3856699号明細書 特許第3848882号明細書 特許第4081343号明細書 特開2008−243682号公報 国際特許公開第2011/121797号 国際特許公開第2012/176341号
従来の分離膜は、構成材料そのものには元々孔があるわけではなく、孔を開ける特別な操作を必要とする。孔を開ける操作は、多くの場合、上記ロブ・スリラーヤン法に代表されるように複雑である。
また、分離膜は、孔のサイズによって分離を行うものであり、本来意図する分離対象に適合した所望の孔径に任意に制御できることが好ましいが、従来の分離膜はサイズを自在に変えて孔を開けることは難しい。また、いったん作製した孔のサイズを使用場面に応じて調節することも難しいため、意図したサイズのものを分離するためには、孔のサイズが段階的に異なる、多くの種類の膜をあらかじめ作製しておく必要があり、高コストとなってしまう。
従来の分離膜には、化学的安定性、熱的安定性の問題もある。例えば、ポリアミド薄膜は、親水性が高く、フィルター操作を行う場合の圧力が低くて済むメリットがあるため、水処理用逆浸透膜としてよく使用されるが、水道水の殺菌に一般的に用いられる次亜塩素酸などの塩素化合物に対する耐性が低いという問題がある。
また、分離膜全般の問題として、ファウリング(目詰まり)の問題があり、その問題を回避する方法として、膜の高温スチーム処理、オゾン、次亜塩素酸などによる薬品洗浄処理が有効であるが、多くの膜は有機ポリマーの性質としてこれらに対する耐性が低く、膜の劣化が起こってしまう。
これらのファウリング防止策を適用可能にするためには、膜の化学的安定性、熱的安定性を高める必要があり、その方法として4フッ化エチレンなど特殊な有機ポリマーであるフッ素樹脂を使用することが考えられるが、フッ素樹脂の使用により膜は高価となってしまい、また廃棄時に膜を燃焼させると有毒のフッ化水素が出るという問題もある。
また、特殊な材質として、先に示したような、ゾル・ゲル法により形成された、ポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格とを有する、無機−有機複合体からなる分離膜があるが、テトラエトキシシランなど高価なアルコキシドなどの原料を使用する特殊なゾル・ゲル法を使用する必要があり、高コストとなってしまう。
これらゾル・ゲル法に使用する特殊原料は、高価であると共に不安定であるために、取り扱いが難しく、毒性のあるものも多い。
また、−Si−X−Si−結合を有する無機有機ハイブリッド逆浸透膜を備えた逆浸透フィルターも、−Si−X−Si−結合を形成するためには、当然ビスエトキシシリルエタンなどのさらに特殊で高価なアルコキシド原料を用いて、ゾル・ゲル法を使用して合成するしかない。実際にも、合成方法としてゾル・ゲル法しか開示されていないが、ゾル・ゲル法である限りは、上記の無機−有機複合体と同様に、高コスト、不安定な原料の取り扱い、原料の有毒性などの問題がある。
また、ゾル・ゲル法を用いた無機/有機ハイブリッド材料は、一般に、実用的な大面積の膜を作製するのが困難である。
本発明の分離膜は、珪酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物から選択される少なくとも一種の無機酸化物と、ポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物からなり、その無機/有機ハイブリッド化合物が生成した時点でフィルター孔を有しておりフィルター孔により分離可能な分離対象物の大きさを加熱処理によって変えることが可能である特性を有する。
本発明の一の分離膜の製造方法(第1の製造方法)は、無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜を製造する方法であって、珪酸塩またはタングステン酸塩とポリビニルアルコールが共存する状態で、珪酸塩またはタングステン酸塩を酸で中和することによって、無機/有機ハイブリッド化合物を得る工程を含み、無機/有機ハイブリッド化合物からなり、無機/有機ハイブリッド化合物が生成した時点でフィルター孔を有している、分離膜を製造する。
本発明の他の分離膜の製造方法(第2の製造方法)は、無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜を製造する方法であって、ジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩とポリビニルアルコールが共存する状態で、ジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩をアルカリで中和することによって、無機/有機ハイブリッド化合物を得る工程を含み、無機/有機ハイブリッド化合物からなり、無機/有機ハイブリッド化合物が生成した時点でフィルター孔を有している、分離膜を製造する。
上述の本発明の分離膜は、珪酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物から選択される少なくとも一種の無機酸化物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物からなる。そして、この無機/有機ハイブリッド化合物が生成した時点で、フィルター孔として、元々適当なサイズの分子間隙間を持つため、従来の分離膜とは異なり、特別な操作を行うことなく分離膜内にフィルター孔を設けることができる。
また、本発明の分離膜は、加熱処理によって、分子間隙間の孔径を広範囲かつ任意に制御できるため、いったん作製した膜の孔径を、使用場面に応じて簡単に調節することが可能となる。これにより、所望の物質の分離、抽出、除去などが可能となり、サイズの接近した対象物の分離も可能になる。
そして、製造した一種類の分離膜から加熱処理だけで多種類の孔径の分離膜を得ることができるため、従来の分離膜のように、孔径の異なる多種類の分離膜を一から製造する必要がないため、従来の分離膜と比較して大幅にコストを低減することができる。
本発明の分離膜を構成する無機/有機ハイブリッド化合物は、従来燃料電池など過酷な環境で使用できるために開発されたものであり、無機酸化物の性質を反映して、極めて高い耐酸化性、ラジカル耐性などの化学的安定性を持つ。従って、オゾン、次亜塩素酸などによる薬品洗浄処理を実施することができ、そのような処理によってファウリングを防止することができる。従来のフッ素樹脂もこれらの薬品洗浄処理に耐えるが、本発明の分離膜はフッ素樹脂よりも安価であり、またフッ素樹脂と異なり、廃棄時に膜を燃焼させても有毒なものは排出されない。
さらに、本発明の分離膜を構成する無機/有機ハイブリッド化合物は、200℃以上にも耐えるだけの高い耐熱性があり、ファウリング防止のため高温スチーム処理を行うことも可能である。
本発明の分離膜を構成する無機/有機ハイブリッド化合物は、無機成分として珪酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物などの無機酸化物を選択し、有機成分としてポリビニルアルコールを選択している。従って、前述した従来のゾル・ゲル法により形成されたポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格とを有する無機―有機複合体、あるいは−Si−X−Si−結合を有する無機有機ハイブリッド逆浸透膜と異なり、製造するのにアルコキシドなど特殊で高価、不安定、有毒な原料を用いたゾル・ゲル法を用いる必要がなく、安価で、かつ安定であるために取り扱い容易で毒性もない一般的な材料だけを原料として作製することができる。さらにまた、そのような選択をしたために、珪酸塩またはタングステン酸塩とポリビニルアルコールが共存する状態で、珪酸塩またはタングステン酸塩を酸で中和するだけで、あるいはまたジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩とポリビニルアルコールが共存する状態で、ジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩をアルカリで中和するだけで簡単に無機/有機ハイブリッド化合物を得ることができる。
また、本発明の分離膜を構成する無機/有機ハイブリッド化合物は、実用的な大面積の膜を作製することが容易である。
特許文献2の無機有機ハイブリッド逆浸透膜は、加水分解を防止するために−Si−X−Si−結合の無機有機ハイブリッドとしたとあるが、後述するように、珪酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物などの無機酸化物とポリビニルアルコールを選択し、それらを結合させた本発明のハイブリッド化合物にすれば、−Si−X−Si−結合でなくとも熱水中においても加水分解することなく安定である。
本発明に係る無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜の製造工程の第1実施形態を概略的に示すシステム図である。 本発明に係る無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜の製造工程の第2実施形態を概略的に示すシステム図である。
以下、本発明に係る無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜およびその製造方法の実施形態を説明する。
本発明は、珪酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物から選択される少なくとも一種の無機酸化物と、ポリビニルアルコールが化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物からなり、その無機/有機ハイブリッド化合物が生成した時点でフィルター孔を有しており、フィルター孔により分離可能な分離対象物のサイズを加熱処理によって変えることができる特徴を持つ分離膜を基本とする。
また、珪酸塩またはタングステン酸塩とポリビニルアルコールが共存する状態で、珪酸塩またはタングステン酸塩を酸で中和することによって、無機/有機ハイブリッド化合物を得ることを基本とする。あるいは、ジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩とポリビニルアルコールが共存する状態で、ジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩をアルカリで中和することによって、無機/有機ハイブリッド化合物を得ることを基本とする。
本発明における無機/有機ハイブリッド化合物は、不可欠な成分として、珪酸化合物,タングステン酸化合物あるいはジルコン酸化合物を構成成分とする。
珪酸とは、SiOを基本単位とし、それがHOを含んでいる化合物であり、一般式SiO・xHOで表せるものであるが、本発明における珪酸化合物は、珪酸及びその誘導体、或いは珪酸を主体とした化合物全般のことを示す。
タングステン酸とは、WOを基本単位とし、それがHOを含んでいる化合物であり、一般式WO・xHOで表せるものであるが、本発明におけるタングステン酸化合物は、タングステン酸及びその誘導体、或いはタングステン酸を主体とした化合物全般のことを示す。
ジルコン酸とは、ZrOを基本単位とし、それがHOを含んでいる化合物であり、一般式ZrO・xHOで表せるものであるが、本発明におけるジルコン酸化合物は、ジルコン酸及びその誘導体、或いはジルコン酸を主体とした化合物全般のことを示す。
よって、珪酸、タングステン酸、ジルコン酸の特性が損なわれない範囲で、一部別の元素に置換されていてもよく、化学量論組成からのずれ、或いは添加物を加えることも許容される。例えば、珪酸、タングステン酸、ジルコン酸の塩や水酸化物も、SiO,WO,ZrOを基本単位としたものであり、塩や水酸化物を基本とした誘導体、或いはそれを主体とした化合物も、本発明における、珪酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物に含まれる。
本発明における固体電解質に含まれるハイブリッド化合物は、不可欠な成分として、ポリビニルアルコールを構成成分とする。
このポリビニルアルコールは、完全なものである必要がなく、本質的にポリビニルアルコールとして機能するものであれば、使用することができる。例えば、ヒドロキシル基の一部が他の基で置換されているもの、一部分に他のポリマーが共重合されているものも、ポリビニルアルコールとして機能することができる。
また、製造時の途中の反応過程でポリビニルアルコールを経由すれば、同様な効果が得られるので、ポリビニルアルコールの原料となるポリ酢酸ビニルなどを出発原料とすることができる。
ポリビニルアルコールは、その機能が十分発現する範囲であれば、他のポリマー、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリエチレンオキシド,ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン,ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、メチルセルロース等の糖鎖系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、エポキシ樹脂系ポリマー、或いはその他の有機添加物や無機添加物などを混合することもできる。
珪酸化合物、タングステン酸化合物、又はジルコン酸化合物などの無機化合物と、ポリビニルアルコールとは、無機/有機ハイブリッド化合物を形成している。即ち、ハイブリッド化合物中において、ポリビニルアルコールとこれら無機化合物は、分子レベルでお互いに絡み合い、ポリビニルアルコールの水酸基を介して両者は水素結合、脱水縮合によって強固に結びついている。
ハイブリッド化合物は、化合物であって、ポリビニルアルコールと無機化合物との物理的な混合による混合物とは区別される。即ち、混合物と異なり、ハイブリッド化合物において、複合化後は、各構成成分の化学的性質が必ずしも保持されない。例えば、本発明の場合、ハイブリッド化合物の構成成分であるポリビニルアルコールは、単独では水溶性(熱水溶解性)であるが、珪酸化合物、タングステン酸化合物又はジルコン酸化合物とのハイブリッド化合物形成後は熱水には溶解しない。このように、ハイブリッド化後に化学的性質が変化していることにより、これらは物理的な混合による混合物とは異なるハイブリッド化合物である、と言うことができる。
ハイブリッド化合物においては、ポリビニルアルコールに対する無機化合物の量が少なすぎると、十分な耐水性、耐熱性、化学的安定性或いは強度が得られない。一方、無機化合物の量が多すぎると、柔軟性が損なわれ、脆性の点で問題が生じる。
従って、複合化合物における無機化合物を、各基本単位であるSiO,WO,ZrOのみの重量に換算した場合に、その重量の総和のポリビニルアルコール重量に対する重量比が0.01〜1になるように制御するのが好ましい。
また、珪酸化合物、タングステン酸化合物及びジルコン酸化合物は、組み合わせて使用することができる。
本発明のハイブリッド化合物では、ポリビニルアルコール分子の水酸基の部分に、ナノレベルの無機酸化物が結合している。ポリビニルアルコール分子は、無機酸化物によって架橋される部分もあるが、架橋されていない部分も生じ、架橋と架橋の間が分子隙間であり、フィルター孔となる。こうしてハイブリッド化合物は、製造した時点で、ある程度の孔径のフィルター孔を持っている。そして、ハイブリッド化合物膜を製造した時点で架橋があまり進まないように調節すれば、孔径はかなり大きなものとなる。
ポリビニルアルコールに結合している無機酸化物は、ナノレベルの大きさであり、比較的反応性が高く、架橋に寄与していなかったものも200℃以下の加熱処理で新たに結合を生じて架橋に寄与するようになり、結果として孔径が小さくなっていく。
なお、例えば、無機酸化物だけでできた粉末粒子を結合しようとすると、1000℃近い温度を必要とする。これに対して、本発明では、無機/有機ハイブリッド化合物を使用しており、無機酸化物がナノ粒子であるため、200℃以下の加熱処理であっても結合反応が起こり、孔径制御ができるようになる。
本発明のハイブリッド化合物では、さらに別のメカニズムによっても、孔径の変化が起こる。ポリビニルアルコールは、加熱された場合に、水酸基と隣の水素とから分子内脱水が起こり、炭素−炭素二重結合が生じるという反応が起こる。この炭素−炭素二重結合の生成した部分は、ポリビニルアルコールが疎水性となり、水中で分離膜として使用する場合には閉じた状態となり、この部分が架橋点と同じようにふるまい、孔径を小さくする。
この分子内脱水反応は、ポリビニルアルコール単独では200℃以上の加熱でないと起こらないが、本発明のようにナノレベルの無機酸化物が共存する場合、触媒的に反応を促進するため、200℃以下の加熱でも起こるようになる。
次に、本発明に係る無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜の製造工程を説明する。
図1は、ハイブリッド化合物からなる分離膜の製造工程の第1実施形態を概略的に示すシステム図である。
先ず、原料として、ステップ1で水を含む溶媒を、ステップ2で珪酸塩、タングステン酸塩などの無機酸化物の塩を、ステップ3でポリビニルアルコールを、それぞれ準備し、ステップ4でこれらの原料を混合して、水を含む溶媒中で無機酸化物の塩とポリビニルアルコールが共存する原料溶液を得る。
珪酸塩、タングステン酸塩などの無機酸化物の塩は、水に溶解するものであれば、どのような種類のものでもよく、酸素や金属イオンの比率、含水率も、どのようなものでもよい。
後の製膜工程において、生産上の実際的な時間範囲の中で、原料溶液中の溶媒を飛ばして無機/有機ハイブリッド化合物の成形体の製造を効率的に行えるようにするためには、原料溶液は、ポリビニルアルコール濃度にして5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であることが望ましい。
次に、ステップ5で原料溶液中の珪酸塩、タングステン酸塩を、酸に接触させることによって中和し、ステップ6で中和後の原料溶液を得る。
その後、ステップ7で溶媒を除去し、ステップ8でハイブリッド化合物成形体(膜)を得る。さらに、ステップ9で成形体中の不要塩を除去するために、熱水等で洗浄する。
このようにして、本発明に係る無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜を製造することができる。
図2は、ハイブリッド化合物からなる分離膜の製造工程の第2実施形態を概略的に示すシステム図である。
先ず、原料として、ステップ1で水を含む溶媒を、ステップ2でジルコニウム塩又はオキシジルコニウム塩を、ステップ3でポリビニルアルコールを、それぞれ準備し、ステップ4でこれらの原料を混合して、水を含む溶媒中でジルコニウム塩又はオキシジルコニウム塩とポリビニルアルコールが共存する原料溶液を得る。
ジルコニウム塩又はオキシジルコニウム塩は、水に溶解するものであればどのような種類のものでもよく、酸素や金属イオンの比率、含水率もどのようなものでもよい。
その後、ステップ5で溶媒を除去し、ステップ6で成形体(膜)を得る。
ステップ4の混合溶液やステップ6の成形体を加熱することで、ジルコニウム塩又はオキシジルコニウム塩の加水分解がある程度進み、ジルコン酸化合物となって共存するポリビニルアルコールとのハイブリッド化も進むが、ステップ6の時点ではまだジルコニウム塩又はオキシジルコニウム塩も残存している。
次に、ステップ7で成形体をアルカリに接触させることによって中和を完結させる。さらに、ステップ8で成形体中の不要塩を除去するために、熱水等で洗浄する。
このようにして、本発明に係る無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜を製造することができる。
第1および第2実施形態は本発明の最小限の基本構成を示したものであり、例えば、ステップ4で作製した原料液、あるいは第1実施形態のステップ6の操作で得られる中和後の原料液に、適宜添加物を混入させることによって、複合化合物中にその添加物を導入することなどのバリエーションも可能である。
本発明の製造方法において、ハイブリッド化の反応は、水の存在する溶媒中で進行するため、上記した各製造工程において、溶媒中に水が存在することが好ましいが、純粋な水だけの溶媒である必要はない。ただし、珪酸塩、タングステン酸塩、ジルコニウム塩、オキシジルコニウム塩、或いはポリビニルアルコールの溶解性から、水が最も好ましい溶媒である。
上記した各製造工程において、中和に用いる酸又はアルカリは、酸又はアルカリとして機能するものであれば、どのようなものでもよい。
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの一般的な酸の他、固体状の基体にスルホン酸基、カルボキシル基などを固定したイオン交換樹脂なども使用できる。
アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの一般的なアルカリの他、固体状の基体に四級アンモニウム基を固定したイオン交換樹脂なども使用できる。
上記方法で作製した無機/有機ハイブリッド化合物からなる膜は、前述したように、既にフィルター孔を有しており、そのまま分離膜として使用することができる。
しかし、この無機/有機ハイブリッド化合物からなる膜は、加熱処理によって孔径を制御することも可能である。加熱処理は、作製した膜を大気中でただ加熱するだけで行うことができる。
前述した第2の実施形態の方法で膜を作製する場合には、ステップ6の中和操作前の時点の膜を加熱処理することによっても、孔径を制御することが可能である。孔径の制御は、加熱の温度と時間によって行うが、加熱時間とともに孔径は収縮していき、その収縮速度は加熱温度が高いほど速い。
生産上の実際的な時間範囲の中で所望の孔径にするには、ある程度高い温度で加熱処理する必要があるが、あまり温度が高すぎると、孔径の変化が急速であるため所望の孔径に調節するのが難しくなり、また場合によっては、膜の酸化が始まって燃焼してしまう可能性がある。従って、加熱処理の温度は100〜180℃の範囲で行うのが好ましい。また、加熱処理の時間は、温度、孔径、膜の組成によっても異なるが、一般的には、0.5〜5時間程度の範囲で行う。
本発明の分離膜は、単独で使用することも、従来の分離膜のように適当な多孔質支持体と積層された形で使用することもできる。
多孔質支持体を使用する場合、第1実施形態のステップ6で作製される原料液、あるいは、第2実施形態のステップ4で作製される原料液を、多孔質支持体上に塗布して、積層膜を形成することが可能である。
また、本発明の分離膜は、従来の分離膜と同様に、表面積を多くするため中空糸状あるいはスパイラル状に加工し、それらをカラム状の膜モジュールに加工して使用することも可能である。
そして、上述した製造工程を経て製造された、無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜は、孔径を広範囲に変えることができ、従来の精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜などが使用されていた、あらゆる用途、例えば微生物、細菌、ウイルスの除去、蛋白質、酵素などの分離・濃縮、人工透析、生酒・生ビールの製造における酵母分離除去、海水淡水化、工業用純水・超純水の製造、果汁や牛乳の濃縮、排水の浄化などに使用可能である。また、その他にも、分子ふるいとして各種用途に使用でき、パーベーパレーション法によるアルコールその他の濃縮や気体の分離などにも使用できる。
以下に、本発明に係る無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜およびその製造方法の具体的な実施例を説明する。
なお、これら実施例は、本発明の基本構成を例示したものにすぎず、本発明はこれら実施例の記載内容に限定されるものではない。
本発明に係る製造方法で無機/有機ハイブリッド化合物を作製するため、重合度が3100〜3900でケン化度が86〜90%のポリビニルアルコール10重量%水溶液100gに、タングステン酸ナトリウム二水和物(NaWO・2HO)2g、および珪酸ナトリウム4gを加えて、原料溶液水とした。
さらに、この原料溶液水に、攪拌しながら2.4N塩酸を10cc加えて中和し、原料溶液を作製した。
その後、この原料溶液を、マイクロメータを用いて台座とのギャップを調節できるブレードが装着されたコーティング装置(R K Print Coat Instruments Ltd.製 Kコントロールコータ202)の平滑な台座の上に敷いたポリエステルフィルム上に流延した。このとき、台座を70℃になるように制御しながら加熱した。
原料溶液を台座の上に流延した後、すぐにギャップを0.8mmに調節したブレードを一定速度で原料溶液上を掃引させて、原料溶液を一定の厚みにならした。さらに、70℃で加熱しながら放置することによって、水分を飛ばし、流動性がほぼ消失した段階で台座の温度を135℃まで引き上げ、その状態を保って1.5時間の加熱処理を行った。
その後、台座の上に生成した膜を剥離した。
得られた無機/有機ハイブリッド化合物の膜は、60℃〜70℃の熱水中で30分程度洗浄した。
作製した膜は、80℃でフェントン試薬に浸漬し、化学的安定性を確認した。フェントン試薬は、過酸化水素(3重量%)と塩化第二鉄(2ppm)の含まれる溶液であり、オゾンを上回る極めて高い酸化力を持つヒドロキシラジカルが生成し、フッ素樹脂以外の大半の有機ポリマーは、この溶液中では短時間で分解してしまうため、耐酸化性を評価する加速試験に利用できる。
上述の方法で作製した膜は、このフェントン試薬の溶液の中で3時間浸漬しても分解することなく耐えることを確認した。すなわち、上述の方法で作製した膜は、ファウリングを防止するための薬剤処理に、十分耐えることが確認できた。
また、耐熱水性を確認する加速試験として、膜を圧力容器の中で120℃の水中に5時間浸漬する試験を行ったが、特に膜が劣化することはなかった。
従って、本発明の分離膜は熱水に耐え、ファウリングを防止するための熱水処理、スチーム処理等にも十分耐えることが確認できた。
次に、上述した方法で作製した、本発明の無機/有機ハイブリット化合物からなる分離膜による、物質の透過特性を測定した。
本発明の分離膜(厚さ40μm)で二室に隔てられた、ガラス容器の一方の室にポリエチレングリコール(PEG)の30重量%水溶液を入れ、他方の室に純水を入れた。
各室の容量は約50ccであり、それを隔てる分離膜の面積は4.9cmであった。測定は室温(約25℃)で行い、測定の間、各室の液をマグネットスターラーで攪拌した。
24時間後、純水側の液を0.2ml採取し、FT−IRのC−O結合に対応するピーク強度から、PEG透過濃度を求めた。
PEGは、分子量200のもの、分子量600のもの、分子量1000のもの、の3種類を用意した。
各分子量のPEGを、製造後加熱処理を行わない膜、製造後130℃、150℃、170℃でそれぞれ3時間加熱処理した膜について、測定を行った。なお、測定は、加熱処理を行わない膜(加熱処理無し)、130℃加熱、150℃加熱、170℃加熱の順序で行い、PEGが透過しなかった(濃度0%)場合には、次の測定は省略した。測定結果を表1に示す。
次に、PEGの透過特性の測定と同様の方法で、NaClの透過特性を測定した。
本発明の分離膜で二室に隔てられた、ガラス容器の一方の室にNaClの3.5重量%水溶液を入れ、他方の室に純水を入れた。
各室の容量及び分離膜の面積は、PEGの場合と同様とした。測定は室温(約25℃)で行い、測定の間、各室の液をマグネットスターラーで攪拌した。
24時間後、純水側の液を0.2ml採取し、キャピラリー電気泳動法で塩化物イオンに対応するピーク強度から塩化物イオン濃度を求めた。
製造後加熱処理を行わない膜、製造後130℃、150℃、170℃でそれぞれ3時間加熱処理した膜について、測定を行った。この測定結果も、表1に併せて示す。
Figure 2015024373
分子量1000のPEGはどの膜も透らなかったが、分子量600のPEGの場合、加熱処理を行わない膜は透ったが、130℃で3時間加熱した膜には透らなかった。分子量200のPEGは130℃で3時間加熱した膜は透ったが、150℃で3時間加熱した膜は透らなかった。
製造後加熱処理をしていない膜、130℃あるいは150℃で3時間加熱した膜は、NaClを透したが、170℃で3時間加熱した膜はNaClを透さなかった。
本発明に係る製造方法で無機/有機ハイブリッド化合物を作製するため、重合度が3100〜3900でケン化度が86〜90%のポリビニルアルコール10重量%水溶液90gに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrClO・8HO)4gを加えて、撹拌しながら50℃で1時間加熱したものを、原料溶液とした。
次に、この原料溶液を、マイクロメータを用いて台座とのギャップを調節できるブレードが装着されたコーティング装置(R K Print Coat Instruments Ltd.製 Kコントロールコータ202)の平滑な台座の上に敷いたポリエステルフィルム上に流延した。このとき、台座を70℃になるように制御しながら加熱した。
原料溶液を台座の上に流延した後、すぐにギャップを0.4mmに調節したブレードを一定速度で原料溶液上を掃引して一定の厚みにならした。さらに、そのまま70℃で加熱しながら放置することによって、水分を飛ばし、流動性がほぼ消失した段階で再度上から重ねて原料溶液を流延し、すぐに再びギャップを0.4mmに調節したブレードを一定速度で原料溶液上を掃引して一定の厚みにならした。その後、台座の温度を130℃〜140℃まで引き上げ、その状態を保って1.5時間の加熱処理を行った。
その後、台座の上に生成した膜を剥離し、1.67重量%のアンモニア水溶液に常温で18時間浸漬した後、60℃〜70℃の熱水中で30分、その後90℃の熱水中で5時間熱水中洗浄した。
作製した膜は、実施例1と同様のフェントン試験と熱水試験を行ったが、いずれの場合も特に劣化は起こらなかった。従って、ファウリングを防止するための薬剤処理、熱水処理、スチーム処理等にも十分耐えることが確認できた。
孔径制御のための加熱処理は、上記の製造工程において台座から剥離した膜をアンモニア水溶液に浸漬する前に、150℃、170℃でそれぞれ3時間加熱することによって行った。
各膜の透過特性は、分子量200のPEGおよびNaClについて、実施例1と同じ方法にて行った。ただし、PEGの透過測定は、24時間後ではなく6時間後に行った。
それぞれの測定結果を、表2に併せて示す。
Figure 2015024373
加熱処理をしていない膜は分子量200のPEGを透したが、150℃で3時間加熱した膜は透さなかった。
また、150℃で3時間加熱した膜はNaClを透したが、170℃で3時間加熱した膜はNaClを透さなかった。
以上の結果より、いずれの膜も、無機/有機ハイブリッド化合物からなる膜を製造するだけで、特にフィルター孔を設ける特別な操作をしなくてもある程度の大きさの分子を透す孔を持っていることがわかる。
また、加熱処理だけで、分子量1000の大きな分子からNa、Clなどの小さなイオンに至る広範囲のサイズの物質に対して、透過性を制御することができ、かつ加熱条件を変えることで、ほぼ任意に孔径制御が可能であることがわかる。
以上記載した本発明によれば、従来の分離膜が有している問題点を解決して、特別な操作を行うことなく膜内にフィルター孔を設けることができ、加熱等の簡単な方法で孔径を広範囲かつ任意に制御できるとともに、低価格にもかかわらず熱的安定性、化学的安定性に優れ、ファウリングを防止するための高温処理や薬剤処理を適用することができる分離膜およびその製造方法を提供する。そして、本発明の分離膜は、従来の精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜などが使用されていたあらゆる用途、例えば微生物、細菌、ウイルスの除去、蛋白質、酵素などの分離・濃縮、人工透析、生酒・生ビールの製造における酵母分離除去、海水淡水化、工業用純水・超純水の製造、果汁や牛乳の濃縮、排水の浄化などに適用可能である。その他、分子ふるいとして各種用途に使用でき、パーベーパレーション法によるアルコールその他の濃縮や気体の分離などにも使用できる。
従って、本発明の無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜及びその製造方法は、産業上の利用可能性を有する。

Claims (3)

  1. 珪酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物から選択される少なくとも一種の無機酸化物と、ポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物からなり、
    前記無機/有機ハイブリッド化合物が生成した時点でフィルター孔を有しており、
    前記フィルター孔により分離可能な分離対象物の大きさを加熱処理によって変えることが可能である特性を有する
    分離膜。
  2. 無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜を製造する方法であって、
    珪酸塩またはタングステン酸塩とポリビニルアルコールが共存する状態で、前記珪酸塩または前記タングステン酸塩を酸で中和することによって、前記無機/有機ハイブリッド化合物を得る工程を含み、
    前記無機/有機ハイブリッド化合物からなり、前記無機/有機ハイブリッド化合物が生成した時点でフィルター孔を有している、前記分離膜を製造する
    分離膜の製造方法。
  3. 無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜を製造する方法であって、
    ジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩とポリビニルアルコールが共存する状態で、前記ジルコニウム塩または前記オキシジルコニウム塩をアルカリで中和することによって、前記無機/有機ハイブリッド化合物を得る工程を含み、
    前記無機/有機ハイブリッド化合物からなり、前記無機/有機ハイブリッド化合物が生成した時点でフィルター孔を有している、前記分離膜を製造する
    分離膜の製造方法。
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