JP2015012133A - 発光素子用反射基板および白色系発光ダイオード装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】反り、および、クラックの発生を低減できる発光素子用反射基板およびその製造方法の提供。【解決手段】金属基材と、金属基材の表面の少なくとも一部に設けられた無機反射層とを有し、金属基材の0.2%耐力が、25℃で150MPa以上であり、かつ、205℃で70MPa以上である、発光素子用反射基板およびその製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、発光素子に用いられる光反射基板、より具体的には、発光ダイオード(以下、LEDという)等の発光素子に用いられる発光素子用反射基板およびこれを用いる白色系発光ダイオード装置に関する。
一般的に、LEDは、蛍光灯と比較して、電力使用量が1/100、寿命が40倍(40000時間)と言われている。このような省電力かつ長寿命という特徴が、環境重視の流れの中でLEDが採用される重要な要素となっている。
特に白色LEDは、演色性に優れ、蛍光灯に比べて電源回路が簡便であるというメリットもあることから、照明用光源としての期待が高まっている。
近年、照明用光源として要求される発光効率の高い白色LED(30〜150Lm/W)も続々と登場し、実用時における光の利用効率の点では、蛍光灯(20〜110Lm/W)を逆転している。
これにより、蛍光灯にかわり白色LEDの実用化の流れが一気に高まり、液晶表示装置のバックライトや照明用光源として白色LEDが採用されるケースも増えつつある。
このような白色LEDに使用できる基材として、特許文献1には、「表面のうち、少なくともLED発光素子が実装される部分以外の表面が、算術平均粗さRaが0.50〜1.00μmであり、かつ、凹凸の平均間隔Psmが10〜20μmであるLED発光素子用反射基板。」が記載されている(請求項1参照)。
また、「表面が、金属基板上に設けられる反射層の表面であり、反射層が、平均粒子径が0.1〜5μmの無機粒子を用いて形成される」ことが記載されている(請求項2参照)。
特開2013−062500号公報
本発明者は、特許文献1に記載の発光素子用反射基板について検討を行った結果、金属基材上に無機反射層を形成すると、無機反射層形成時の残留応力や体積収縮に起因して反りが発生することが分かった。
本発明者は、金属基材を柔軟にすることで、無機反射層の伸縮に追従させて、反射基板の反りを抑制できることを見出した。
しかしながら、無機反射層は硬質なものであるため、金属基材を柔軟にして無機反射層の伸縮に追従させると、無機反射層にクラックが生じるという問題があることを明らかとした。さらに、反射基板に他の機能層(例えば、陽極酸化皮膜層など)を形成する場合にも、この機能層にもクラックが生じるおそれがあることを明らかとした。
本発明は、反り、および、クラックの発生を低減できる発光素子用反射基板およびこれを用いる白色系発光ダイオード装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、金属基材の0.2%耐力を、25℃で150MPa以上であり、かつ、205℃で70MPa以上とすることで、金属基材上に無機反射層を形成した反射基板の反りおよびクラックを抑制できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
(1) 金属基材と、金属基材の表面の少なくとも一部に設けられた無機反射層とを有し、金属基材の0.2%耐力が、25℃で150MPa以上であり、かつ、205℃で70MPa以上である発光素子用反射基板。
(2) 金属基材は、バルブ金属であり、表面の少なくとも一部に陽極酸化皮膜を有する(1)に記載の発光素子用反射基板。
(3) 陽極酸化皮膜層、金属基材、無機反射層の順に積層されている(2)に記載の発光素子用反射基板。
(4) 金属基材、陽極酸化皮膜層、無機反射層の順に積層されている(2)に記載の発光素子用反射基板。
(5) バルブ金属が、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマスおよびアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種の金属である(2)〜(4)のいずれかに記載の発光素子用反射基板。
(6) バルブ金属が、アルミニウムである(2)〜(5)のいずれかに記載の発光素子用反射基板。
(7) 金属基材の厚さが、0.1〜3mmである(1)〜(6)のいずれかに記載の発光素子用反射基板。
(8) 無機反射層が、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよびケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一つの無機結着剤と、屈折率1.5以上1.8以下、平均粒径0.1μm以上5μm以下の無機粒子とを含有する(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子用反射基板。
(9) 無機反射層が、100℃〜300℃の温度で低温焼成されて得られる(1)〜(8)のいずれかに記載の発光素子用反射基板。
(10) 反射基板の表面に、さらに金属配線層が設けられている(1)〜(9)のいずれかに記載の発光素子用反射基板。
(11) (1)〜(10)のいずれかに記載の発光素子用反射基板の上に青色発光素子を有し、その周りおよび上部の少なくとも1方に蛍光発光体を備える白色系発光ダイオード装置。
本発明によれば、金属基材上に無機反射層を形成した反射基板の反りおよび無機反射層のクラックを抑制できる、発光素子用反射基板および白色系発光ダイオード装置が提供される。
また、金属基材上に陽極酸化皮膜層等の機能層をさらに備える態様では、陽極酸化皮膜層等の機能層のクラックも抑制できる。
本発明の好適な態様の発光素子用反射基板の構成を説明する概略図である。 本発明の発光素子用反射基板の別の態様を説明する概略図である。 本発明の発光素子用反射基板の別の態様を説明する概略図である。 本発明の発光素子用反射基板の別の態様を説明する概略図である。 図4の発光素子用反射基板を用いる白色系発光ダイオード装置の構成を説明する概略図である。
〔発光素子用反射基板〕
本発明の発光素子用反射基板(以下、「反射基板」ともいう)は、金属基材と、金属基材の表面の少なくとも一部に設けられた無機反射層とを有し、金属基材の0.2%耐力が、25℃で150MPa以上であり、かつ、205℃で70MPa以上である発光素子用反射基板である。
以下に、本発明の反射基板について図1〜図4に示す好適例を用いて説明する。
図1に示す態様の反射基板30は、金属基材1に、陽極酸化皮膜層2と無機反射層3とが積層されている。図1において、説明のために陽極酸化皮膜層2と無機反射層3とは別々の層で記載しているが、無機反射層3は、陽極酸化皮膜層2上に層として形成されるが、一部が多孔質な陽極酸化皮膜層2中に入っていてもよい。
図2は、本発明の発光素子用反射基板の別の態様を示す断面図である。図2に示す態様の反射基板30aは、金属基板1に、無機反射層3が積層されている。
図3は、本発明の発光素子用反射基板の別の態様を示す断面図である。図3に示す態様の反射基板30bは、金属基材1の一方の面に陽極酸化皮膜層2が積層され、金属基材1の他方の面に無機反射層3が積層されている態様を示す。
図4は、本発明の発光素子用反射基板の別の態様を示す断面図である。図4に示す態様の反射基板30cは、金属基板11に窪み(凹部)が形成されており、凹部を含む金属基板11の表面に、陽極酸化皮膜層2および無機反射層3が積層されている。
本発明の反射基板は、図1〜4に示す態様に限定はされない。
図1〜図4に示す態様では、金属基材1上に陽極酸化皮膜層2と無機反射層3とを全面に有するが、金属基材1上の一部に陽極酸化皮膜層2と無機反射層3とを有していてもよく、陽極酸化皮膜層2だけの部分が存在してもよい。
また、陽極酸化皮膜層2上に無機反射層3を有する態様の場合には、無機反射層3は、陽極酸化皮膜層2の一部の上にあってもよく全部の上にあってもよい。
また、金属基材1上に無機反射層3を有する態様の場合には、無機反射層3は金属基材1の一部の上にあってもよく全部の上にあってもよい。
実装する素子の形や配線の位置によって陽極酸化皮膜層である絶縁層や、無機反射層の必要な位置が異なり、各種のデザインで配置される必要があるからである。
<1.金属基材>
本発明において、金属基材の0.2%耐力は、25℃で150MPa以上であり、かつ、205℃で70MPa以上である。
このような金属基材を用いることにより、無機反射層形成時の残留応力や体積収縮に起因する反りを抑制することができ、かつ、無機反射層や他の機能層にクラックが生じることを防止することができる。
ここで、単に、常温(25℃)での0.2%耐力が大きいのみで、高温(205℃)での0.2%耐力が十分でない場合には、無機反射層を形成するために熱を加えられた際や、LEDを実装するために熱を加えられた際(例えば、はんだリフロー)などに、金属基材が変形してしまうので、やはり、反りやクラックが発生してしまうおそれがある。
反りを抑制し、クラックが生じることを防止する観点から、金属基材の0.2%耐力は、25℃で180MPa以上であることが好ましく、250MPa以上であることがさらに好ましい。また、205℃では、100MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがさらに好ましい。
また、前述のとおり、無機反射層と金属基材との伸縮率の差に起因して反りが発生するため、金属基材を柔軟にすることで、無機反射層の伸縮に追従させて、反射基板の反りを抑制することが考えられる。しかしながら、無機反射層は硬質なものであるため、金属基材を柔軟にして無機反射層の伸縮に追従させると、無機反射層にクラックが生じるという問題があることが分かった。
これに対して、本発明では、常温(25℃)、および、高温(205℃)での0.2%耐力を大きくするので、無機反射層形成の際などに熱を加えられても、金属基材の変形を抑制し、反りやクラックが発生することを防止することができる。
これにより、熱を加えられた場合でも無機反射層の収縮を金属基材が抑制して反りが発生することを防止することができ、また、金属基材の伸縮が小さいので、無機反射層にクラックが生じることを防止することができる。
金属基材の材料としては特に限定はなく、アルミニウム、ステンレス、鋼、銅等の種々の金属が挙げられる。
本発明においては、金属基材として、陽極酸化皮膜を形成可能なバルブ金属を用いることが好ましい。
バルブ金属としては、具体的には、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等が挙げられる。
これらのうち、寸法安定性がよく、比較的安価であることからアルミニウムであるのが好ましい。
金属基材は、単独の板であってもよい。
金属基材は、必要な場合は鋼板等の他の金属板、ガラス板、セラミック板、樹脂製板等に積層して設けられる。
他の板材と金属基材とを積層して用いる場合には、可撓性があり、耐熱性の高い鋼板や金属板との積層板が好ましい。
(アルミニウム板)
前述のとおり、本発明においては、金属基材としてアルミニウムを用いることが好ましい。
アルミニウムは熱伝導率が非常に高いので放熱性に優れる点で、他の金属に勝るだけでなく、表層に陽極酸化皮膜層を形成させることで絶縁性を付与する事も可能である点で好ましい。
本発明の発光素子用反射基板に好適に用いるアルミニウム板としては、0.2%耐力が、25℃で150MPa以上であり、かつ、205℃で70MPa以上であることを満たせば、特に限定はないが、0.2%耐力を大きくするために、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることが好ましい。さらに、0.2%耐力を大きくするために、熱処理等の調質処理が施されている合金板を用いることが好ましい。
本明細書においては、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基材をアルミニウム板と総称して用いる。上記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、アルミニウムの純度は特に問わないが、陽極酸化皮膜を形成する際には,その皮膜形成性から、1000系、3000系、5000系、6000系、7000系の合金を用いることができる。しかしながら、耐力の条件を満たすためには、3000系、5000系、6000系、7000系の合金であることが好ましく、さらに、調質処理を行うことがより好ましい。
具体的には、A3004−H34,A3004−H38,F3S−O,F3SH−O,F552−O,572S−O(F3S/F552/572S:日軽金フレックスキャスター),A5083−O,A5086−O,A5154−,A5254−,A5454−O,A5454−H32,A5454−H34,A5652−H34,A5652−H38,A6061−T6,A6151−T6,A7075−T6,A7075−T73,A7178−T6等を用いることができる。
具体的には、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
JIS1050材、JIS1070材に関しては、国際公開WO2010/150810号の段落[0032]〜[0033]に記載の公報に記載されている。
Al−Mg系合金、Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金、Al−Mg−Si系合金に関しては、国際公開WO2010/150810号の段落[0034]〜[0038]に記載の公報に記載されている。
アルミニウム合金を板材に製造する方法、DC鋳造法、連続鋳造法、アルミニウム板の表面の結晶組織、アルミニウム板の金属間化合物については、国際公開WO2010/150810号の段落[0039]〜[0050]に記載されている。
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程等において、積層圧延、転写等により凹凸を形成させて粗面化処理して用いることもできる。基材表面を予め粗面化処理しておけば、陽極酸化皮膜層を形成した後に、その上に形成される無機反射層と基材との密着性を向上させることができる。その他の粗面化処理方法は後に説明する。
本発明に用いられるアルミニウム板は、アルミニウムウェブであってもよく、枚葉状シートであってもよい。
本発明に用いられる金属基材の厚みは、0.1〜3.0mmが好ましい。特にアルミニウム板の厚みは、0.1〜3.0mm程度であり、0.15〜1.5mmであるのが好ましく、0.2〜1.0mmであるのがより好ましい。この厚さは、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
(粗面化処理)
本発明の反射基板を製造する際に、金属基材の表面に粗面化処理を行ってもよい。
例えば、金属基材の表面を予め粗面化処理することで、無機反射層との密着性を向上させることができる。また、陽極酸化皮膜層を形成する場合にも、陽極酸化皮膜層と金属基材との密着性を向上させることができる。粗面化処理は、金属基材に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、金属基材に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法、金属基材にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、金属基材にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。これらの方法において、上記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。
各粗面化処理の詳細については、国際公開WO2010/150810号の段落[0055]〜[0083]に記載されている。
(スルーホール加工)
本発明の発光素子用反射基板においては、発光素子を実装するにあたり、金属基材に、適宜配線部を設けるためのスルーホール加工、並びに、最終製品を想定してのチップ化を行うためのルーティング加工(最終製品に個別化するための加工)を行うこともできる。スルーホール加工は、必要な個所への穴あけ加工であるが、加工されるスルーホールの形状については、配線が必要な複数の層の間の長さで、その断面は必要な配線をその中に入れて確保できる大きさ/形状であれば特に制限されないが、最終的なチップの大きさ、及び、確実な配線の形成を考えると、円形であることが好ましく、大きさは、0.01mmφ〜2mmφが好ましく、0.05mmφ〜1mmφがより好ましく、0.1mmφ〜0.8mmφが特に好ましい。
(ルーティング加工)
ルーティング加工は、最終製品に個別化された発光素子用反射基板(以下チップという)の大きさに切り離す個別切り離し加工または、予めチップに切り離しやすい形状にする加工であり、パターン加工、チップ化ともいう。ルーティング加工には、ルーターと呼ばれる装置で金属基材の厚み方向に貫通した切込みを入れたり、ダイサーを用いて厚み方向に切断しない程度に切り込み(切り欠き)を入れるような加工を含む。
<2.陽極酸化皮膜層>
本発明の発光素子用反射基板においては、好ましい態様として、図1、図3に示すように、金属基材の表面に陽極酸化皮膜層を有する。
なお、本発明の反射基板においては、図1に示すように、金属基材と無機反射層との間に陽極酸化皮膜層を形成してもよいし、図3に示すように、金属基材の、無機反射層が形成された面とは反対側の面に陽極酸化皮膜層を形成してもよい。
陽極酸化皮膜層は、金属基材として、アルミニウム等のバルブ金属を用いて、陽極酸化処理を施すことで得ることができる。例えば、金属基材がアルミニウム板の場合には、陽極酸化処理により、アルミナからなる陽極酸化皮膜層がアルミニウム板の表面に形成され、多孔質、あるいは、非孔質の表面絶縁層が得られる。
また、陽極酸化皮膜層は、金属基材を陽極酸化処理して積層する方法に限定はされず、金属基材とは別に形成した陽極酸化皮膜層を、金属基材に接着して積層してもよい。
陽極酸化皮膜層を形成することで、絶縁性を持たせることができる、耐薬品性等の点で陽極酸化皮膜層を積層するのが好ましい。
また、陽極酸化処理により陽極酸化皮膜層を形成できる点で、金属基材として、バルブ金属を用いることが好ましい。
また、バルブ金属基材の少なくとも一部の表面を陽極酸化して陽極酸化皮膜層を設けることが、絶縁性を向上させる観点で好ましい。バルブ金属基材の陽極酸化皮膜層は、電気抵抗率(1014Ω・cm程度)を有する耐熱性の高い絶縁被膜である。
陽極酸化皮膜を形成し絶縁性を担保するためにはバブル金属基材は、厚さ10μm以上であるのが好ましい。
(陽極酸化処理)
陽極酸化処理は、従来行われている方法で行うことができる。例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の水溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜層を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、マロン酸、クエン酸、酒石酸、ホウ酸、等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜層量となるように調整される。
硫酸、シュウ酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、金属基材と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。金属基材に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、金属基材の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/dm2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、金属基材への給電方式は液給電方式により行うのが好ましい。液給電方式は、コンダクタロールを用いない間接給電方式であり、電解液を介して給電する。
陽極酸化皮膜層は、多孔質であっても無孔質であってもよい。多孔質である場合、その平均ポア径が5〜1000nm程度であり、平均ポア密度が1×106〜1×1010/mm2程度である。
陽極酸化処理のその他の詳細については、国際公開WO2010/150810号の段落[0091]〜[0094]に記載されている。
陽極酸化皮膜層の厚さは1〜200μmであるのが好ましい。1μm未満であると絶縁性に乏しく耐電圧が低下し、一方、200μmを超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜層の厚さは、20μm以上が好ましく、40μm以上がさらに好ましい。
(封孔処理)
本発明においては、得られた陽極酸化皮膜層に、封孔処理を行ってもよく、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特開平5−202496号公報、特開平5−179482号公報等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
また、他の封孔処理としては、例えば、特開平6−35174号公報の段落[0016]〜[0035]に記載されているようなゾルゲル法による封孔処理等も好適に挙げられる。
なお、絶縁性を発現する機能層としては、陽極酸化皮膜層を積層する構成に限定はされず、絶縁性有するものであればよく、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂など樹脂層であってもよい。
<3.無機反射層>
本発明において無機反射層の構成には、特に限定はないが、後述する無機粒子と無機結着剤とを含有し、無機結着剤によって互いの一部が結着した多数の無機粒子からなる集合体であることが好ましい。無機反射層は、構成材料が無機成分であれば、特に限定されない。有機成分を含まないことが好ましい。無機反射層を無機材料のみで構成すれば、耐熱性、耐光性が高く、経年変化にも強い。
無機反射層は、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよびケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一つの無機結着剤と、屈折率1.5以上1.8以下、平均粒径0.1μm以上5μm以下の無機粒子とを含有する層であることが好ましい。
なお、本明細書で用いる粒径は特に断らない限り、積算値50%の粒度を「平均粒径」とし,d50の値を言う。粒径の測定は、例えば、粒子を液体に分散させ,透過度分布を求めて測定する。レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される。
(無機粒子)
無機粒子の種類は特に限定されず、例えば、従来公知の金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸化物などを用いることができ、中でも、金属酸化物を用いるのが好ましい。
無機粒子としては、具体的には、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、極微細炭酸カルシウムなど)、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムなどの炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸化物;また、その他に、カルシウムカーボネート、方解石、大理石、石膏、カオリンクレー、焼成クレー、タルク、セリサイト、光学ガラス、ガラスビーズなどが挙げられる。
この中でも、後述する熱硬化性樹脂や無機系結着剤との親和性が良好となる理由から、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウムが好ましい。
本発明においては、無機粒子は、2種類以上の粒子や、2種類以上の平均粒子径を有する粒子を併用してもよい。
種類や平均粒子径の異なる粒子を併用することにより、無機反射層の強度の向上や、無機反射層と金属基材との密着強度の向上を図ることができる。
また、本発明においては、無機粒子の形状は特に限定はされず、例えば、球状、多面体状(例えば、20面体状、12面体状等)、立方体状、4面体状、表面に凹凸状ないし凸状の突起を複数有する形状(以下、「コンペイトウ形状」ともいう。)、板状、針状等いずれであってもよい。
これらのうち、断熱性に優れる理由から、球状、多面体状、立方体状、4面体状、コンペイトウ形状が好ましく、入手が容易で断熱性により優れる理由から、球状であるのがより好ましい。
更に、本発明においては、正反射率および拡散反射率がより良好となる理由から、屈折率が1.5〜1.8の無機粒子を用いることが好ましい。
上記屈折率を満たす無機粒子としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、大理石、石膏、カオリンクレー、タルク、セリサイト、光学ガラス、ガラスビーズなどが挙げられる。
(無機系結着剤)
無機反射層は、無機反射層の強度が向上し、また、無機反射層と金属基材または陽極酸化皮膜層との密着強度も向上する理由から、さらに、リン酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウムおよび塩化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機系結着剤を用いて形成されるのが好ましい。
無機反射層には、上述した無機粒子、無機系結着剤以外に、他の化合物を含有してもよい。
他の化合物としては、例えば、分散剤(水、有機溶媒)、光重合可能なモノマー、光重合開始剤、架橋剤、架橋促進剤、界面活性剤等が挙げられる。
(形成方法)
本発明においては、無機反射層の形成方法は特に限定されず、例えば、金属基材上に、無機粒子と無機系結着剤とを含有する塗布液(組成物)を塗布し、乾燥させる方法等により形成することができる。
塗布方法は特に限定されず、種々の方法を用いることができるが、例えば、スクリーン印刷、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
ここで、無機反射層の製造方法として、無機反射層の塗布液を塗布した後に、加熱処理(低温焼成)するのが好ましい。
(低温焼成)
無機反射層の塗布液を金属基材(陽極酸化皮膜層)上に塗布後、反応を進め反応により生成する無機結着剤により無機粒子を結着するために低温焼成を行なうことが好ましい。
低温焼成温度は100℃〜300℃であり、150℃〜300℃であるのが好ましく、205℃〜250℃である事がより好ましい。
100℃未満では水分の除去が適わず、300℃超では金属基材の強度変化が起こるおそれがあるので望ましくない。また、無機結着剤間の反応を進め、結着させるには150℃以上の温度が望ましく、さらに得られる無機結着剤に残存する吸着水を完全に除去するためには180℃以上であることが望ましい。250℃を超えた温度で長時間処理を行なうと金属基材の強度が変化するおそれがあるため、250℃以下で処理する事が望ましい。
焼成時間は10分〜60分であり、20分〜40分が更に好ましい。短時間では反応の進捗が不十分であり、長時間になると焼成温度との関係で金属基材の強度変化をきたす。60分以上では製造コスト的にも望ましくない。この理由から、焼成時間は20分〜40分がもっとも好ましい。
塗布液は水分を含む液であるため、塗布後上記低温焼成処理の前に乾燥工程を入れてもよい。リン酸アルミ生成反応や結着反応を起こさない100℃以下の温度で乾燥させてもよい。
(無機反射層の形成)
また、無機反射層は、予めチップまたは複数のチップを含むパーツに分解できるような加工を施した金属基材に、各種の印刷手法例えばスクリーン印刷等によって光反射が必要な部分にのみ形成してもよい。この方法で無機反射層を形成すれば、無機反射層に用いる原料を節約できる。
<4.表面被覆層>
本発明の発光素子用反射基板は、無機反射層上にさらにケイ素を含む表面被覆層を有してもよい。無機反射層を形成した後、その表層に無機反射層の空隙を覆い隠せるような表面被覆層を設ければ、表面の平滑性が上がり、無機反射層の高反射率を確保しながらLEDチップの実装時に接着剤の滲み込みを防げて無用な接着材を消費することがなく、接着力も高くダイボンディング性に優れる。
本発明の表面被覆層は、ケイ素を含む処理液で表面処理して形成する。ケイ素を含む処理液は、ケイ酸ソーダ水溶液、シリコーン樹脂等が例示できる。シリコーン樹脂は有機溶媒で希釈して用いてもよい。このような処理液で表面を処理する方法は、処理液中への浸漬、処理液の塗布、処理液のスプレーコート等が挙げられる。塗布にはロール塗布、カーテンコーター塗布、スピンコーター塗布、刷毛塗り等が挙げられる。得られる表面被覆層は、ケイ酸ガラス質コーティング、シリコーン樹脂コーティングである。
表面被覆層は無機反射層の表面の凹凸を滑らかにし、表面欠陥を消滅させ、LEDチップの実装に用いられる接着剤の浸透を抑制し接着剤量を減らすことができる。一方で無機反射層内の内部空隙は確保できるので光反射率を下げない。
上記の表面被覆層は、表面における空中水滴の接触角が30°以上であるのが好ましい。本明細書での接触角は、θ/2法で測定される値である。θ/2法は、液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を求め、それを2倍した値θである。
接触角は得られた表面被覆層の材料及び表面形状に依存する。シリコーン樹脂系の材料を用いる場合は、表面に存在する官能基のため分子間の凝集力が弱く(約20dyne/cm)、水(約73dyne/cm)との間で強い撥水性が発現し、およそ40〜90°の接触角を示す。本発明の表面被覆層は一般的に分子間の凝集力の強い無機粒子を含有しており、材料全体としてはシリコーン樹脂系のみの材料の接触角よりも低い。すなわち親水的な傾向を示す。無機粒子とシリコーン樹脂系の接触角として、およそ30°〜70°の値を示す。
一方、表面形状の影響については凹凸が大きいほど撥水性を強調する効果があるといわれている。よって撥水性の材料を凹凸表面にコーティングするとより高い撥水性が発現する。表面被覆層には好ましい塗布量が存在する。クラック、ピンホール等の表面欠陥を被覆するためには厚さとして1μm以上あれば十分である。基材の凹凸(Ra)との関係から、この程度の厚さで被覆すると被覆層の表面はRaが小さくなり凹凸による強調のないほぼ素材材料の撥水性を示し、接触角は30°〜50°を示す。
さらに厚い表面被覆層を用いた場合には表面被覆層自身が光を反射してしまうようになり無機反射層の効果が得られなくなる。厚さが10μmを越えると光反射率はほぼ表面被覆層自身の特性に依存するようになり、無機反射層の光反射率が90%を超えるのに対し、90%未満の値しか得られなくなってしまい、光反射板としての機能が劣化する。表面被覆層の厚さは2μm〜5μmであるのがより好ましい。
<5.金属配線層>
本発明の発光素子用反射基板は、さらに金属配線層を形成してもよい。金属配線層は発光素子が実装される陽極酸化皮膜層と無機反射層との上、または必要な場合は表面被覆層の上に設けられてもよい。発光素子を実装する部分に相当する電極部に金属層を設ける加工を施して、金属配線層の端部に電極部を形成してもよい。また、発光素子が実装される無機反射層とは反対側の裏面側に設けられて発光素子実装面とはスルーホールを介して電気的に接続されてもよい。表面被覆層のない無機反射層上に設けられれば、金属インクの液体成分が無機反射層にしみ込むので配線形成性に優れている。
金属配線層の材料は、電気を通す素材(以下、「金属素材」ともいう。)であれば特に限定されず、その具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等が挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらのうち、電気抵抗が低い理由からCuを用いるのが好ましい。なお、Cuによる金属配線層の表層には、ワイヤボンディングの容易性を高める観点から、Au層やNi/Au層を設けていてもよい。
また、金属配線層は、これらの材料を用いた多層構造であってもよく、例えば、最下層からAg層、Ni層およびAu層をこの順で設ける態様が好適に挙げられる。
また、金属配線層の厚さは、目的や用途に応じて所望の厚さとすればよいが、導通信頼性およびパッケージのコンパクト性の観点から、0.5〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、5〜250μmが特に好ましい。
(金属配線層の形成)
金属配線層の形成方法としては、例えば、金属素材および液体成分(例えば、溶媒、樹脂成分など)を含有する金属インクをインクジェット印刷法、スクリーン印刷法等によりパターン印刷する方法等が挙げられる。
このような形成方法により、凹凸のある無機反射層の表面に多くの工程を必要とせずに簡易にパターンを有する金属配線層を形成することができる。
また、その他の金属配線層の形成方法としては、例えば、電解めっき処理、無電解めっき処理、置換めっき処理などの種々めっき処理の他、スパッタリング処理、蒸着処理、金属箔の真空貼付処理、接着層を設けての接着処理等が挙げられる。
このようにして形成される金属配線層は、発光素子実装の設計に応じ、公知の方法でパターン形成される。また、実際に発光素子が実装される箇所には、再度金属層(半田も含む)を設け、熱圧着や、フリップチップ、ワイヤボンディング等で、接続しやすいように適宜加工することができる。
好適な金属層としては、半田、または、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等の金属素材が好ましく、加熱により発光素子を実装する場合は、半田、または、Niを介してのAu、Agを設ける方法が接続信頼性の観点から好ましい。
金属配線層の形成方法として金属インクを用いてインクジェット印刷法またはスクリーン印刷法により無機反射層上にパターンを形成すれば、凹凸のある表面に多くの工程を必要とせずに簡易にパターンを有する金属配線層を形成することができ、無機反射層の凹凸によるアンカー効果が高いので金属配線層と無機反射層との密着性にも優れる。無電解メッキなどを組み合わせれば金属配線層上に再度金属層(半田も含む)を設け、熱圧着や、フリップチップ、ワイヤボンディング等で、配線間や、電極との接続がしやすいように適宜金属配線層を加工することができる。
〔白色系発光ダイオード装置〕
図5は、本発明の反射基板を利用する、本発明の白色系発光ダイオード装置の一構成例を示した概略図である。
図5に示す白色系発光ダイオード装置100は、図4に示す反射基板30cに発光素子を実装したものである。
白色系発光ダイオード装置100において、反射基板30cの凹部に、発光素子110であるLED素子が実装され、反射基板30c上の金属配線層(図示せず)とワイヤボンディング9で電気的に接続されている。また、発光素子110は、蛍光体(蛍光粒子)150を含む樹脂材料160により封止されている。
白色系発光ダイオード装置100では、LED素子からの発光と、蛍光体150からの励起光との混色によって所望の波長光を得ることができる。白色系発光装置として用いられる場合、LED素子として青色発光のLED素子を使用し、YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)などの蛍光体(蛍光粒子)150を含んだ樹脂で封止し、LED素子からの青色発光と、蛍光体(蛍光粒子)150からの黄色領域の励起光との混色によって、擬似白色光が発光面側に発光される。
LED素子は、発光層として、GaAlN、ZnS、ZnSe、SiC、GaP、GaAlAs、AlN、InN、AlInGaP、InGaN、GaN、AlInGaN等の半導体を用いたものを用いることができる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合を有したホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構造のものが挙げられる。半導体の材料やその混晶度によって発光波長を紫外光から赤外光まで種々選択することができる。
本発明の白色系発光ダイオード装置100は、反射基板30cとして、金属基材11上に膜強度と基材への密着性に優れる、陽極酸化皮膜層2と無機反射層3とが設けられていて、反射層の光反射率も高い点で好ましく、室内外の照明、自動車ヘッドライト、ディスプレイ装置のバックライトユニットなど様々な分野に利用可能である。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1]
実施例1として、図3に示す態様の発光素子用反射基板を作製した。
〔金属基材〕
金属基材として、日本軽金属社製のA52S(A5052−H34)で、厚さ800μm、大きさ100×100mmのアルミニウム板を用いた。
このアルミニウムの25℃および205℃での0.2%耐力を、JIS2241:金属材料引張試験方法に基づき、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAGS−H)を用いて測定した。なお、耐力測定の試験片は13B号試験片を使用した。
測定の結果、0.2%耐力は、25℃で191MPa、205℃で105MPaであった。
〔陽極酸化皮膜層〕
上記のアルミニウム板に下記の処理を行い、アルミニウム板の一方の面の全面に厚さ40μmの陽極酸化皮膜層を積層した。
(アルカリ水溶液中での脱脂処理)
アルミニウム板に、水酸化ナトリウム濃度27質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液をスプレー管から20秒間吹き付けた。その後、ニップローラで液切りし、更に、後述する水洗処理を行った後、ニップローラで液切りした。
水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを80mm間隔で有する構造を有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理した。
(酸性水溶液中でのデスマット処理)
上記脱脂処理の後、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸1質量%水溶液を用い、液温35℃でスプレー管から5秒間吹き付けて行った。その後、ニップローラで液切りした。更に、上記の水洗処理に用いたのと同様の構造のスプレー管を用いて水洗処理を行った後、ニップローラで液切りした。
(陽極酸化処理)
上記の脱脂処理およびデスマット処理を行ったアルミニウム板を陽極とし、陽極酸化処理装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解液としては、30g/Lシュウ酸水溶液にシュウ酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を5g/Lとした電解液(温度20℃)を用いた。陽極酸化処理は、アルミニウム板がアノード反応する間の電圧を80Vとなるように定電圧で電解を行なった。最終的な陽極酸化皮膜層厚みが40μmとなるようにした。
その後、ニップローラで液切りし、更に、上記の水洗処理に用いたのと同様の構造のスプレー管を用いて水洗処理を行った後、ニップローラで液切りした。
〔無機反射層〕
上記のアルミニウム板に下記の処理を行い、アルミニウム板の陽極酸化皮膜層とは反対側の面の全面に、厚さ75μmの無機反射層を積層した。
<反射層用混合液の調製>
リン酸と水酸化アルミニウム及び水を混合したバインダー液100g中に対し下記の粒子粉末をそれぞれ100gの比率で添加し、攪拌したものを反射層用の混合液(塗布液)とした。
バインダー液の処方は以下の通りであった。
(バインダー液)
リン酸85% (和光純薬工業株式会社) 48g
水酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社) 11g
水 41g
計 100g
(無機粒子)
無機粒子としては、下記に示すアルミナ粒子を用いた。
昭和電工株式会社製のAL-160SG-3(粒子径0.52μm、純度99.9%)を用いた。
<基材への反射層の形成>
上記の無機反射層混合液を、塗布膜厚を調整可能なコーターにより、基材上の陽極酸化皮膜層とは反対側の面に塗布した。その後、180℃×30分加熱し低温焼成した。乾燥後の無機反射層の厚さは、75μmであった。
[実施例2]
陽極酸化処理を行わず、陽極酸化皮膜層を形成しない以外は、実施例1と同様にして発光素子用反射基板の作製を行った。
[実施例3]
金属基材として、以下に記載するアルミニウム板を用いた以外は、実施例2と同様にして、発光素子用反射基板の作製を行った。
〔金属基材〕
金属基材として、日本軽金属社製のA52S(A5052−H24)のアルミニウム板を用いた。
このアルミニウムの25℃および205℃での0.2%耐力を測定したところ、0.2%耐力は、25℃で178MPa、205℃で80MPaであった。
[実施例4]
金属基材として、以下に記載するアルミニウム板を用いた以外は、実施例2と同様にして、発光素子用反射基板の作製を行った。
〔金属基材〕
金属基材として、日本軽金属社製のF3S(A3003−H24)のアルミニウム板を用いた。
このアルミニウムの25℃および205℃での0.2%耐力を測定したところ、0.2%耐力は、25℃で275MPa、205℃で220MPaであった。
[実施例5]
金属基材として、実施例4と同様のアルミニウム板を用いた以外は、実施例1と同様にして、発光素子用反射基板の作製を行った。
[比較例1]
金属基材として、以下に記載するアルミニウム板を用いた以外は、実施例2と同様にして、発光素子用反射基板の作製を行った。
〔金属基材〕
金属基材として、日本軽金属社製のA85(A1085−H18)のアルミニウム板を用いた。
このアルミニウムの25℃および205℃での0.2%耐力を測定したところ、0.2%耐力は、25℃で115MPa、205℃で24MPaであった。
[比較例2]
金属基材として、比較例1と同様のアルミニウム板(A85)を用いた以外は、実施例1と同様にして、発光素子用反射基板の作製を行った。
[比較例3]
金属基材として、以下に記載するアルミニウム板を用いた以外は、実施例2と同様にして、発光素子用反射基板の作製を行った。
〔金属基材〕
金属基材として、日本軽金属社製の3003(A3003−H24)のアルミニウム板を用いた。
このアルミニウムの25℃および205℃での0.2%耐力を測定したところ、0.2%耐力は、25℃で200MPa、205℃で60MPaであった。
[比較例4]
金属基材として、比較例3と同様のアルミニウム板(3003)を用いた以外は、実施例1と同様にして、発光素子用反射基板の作製を行った。
[比較例5]
金属基材として、以下に記載するアルミニウム板を用いた以外は、実施例1と同様にして、発光素子用反射基板の作製を行った。
〔金属基材〕
金属基材として、日本軽金属社製のA85(A1085−O)のアルミニウム板を用いた。
このアルミニウムの25℃および205℃での0.2%耐力を測定したところ、0.2%耐力は、25℃で71MPa、205℃で24MPaであった。
[比較例6]
金属基材として、以下に記載するアルミニウム板を用いた以外は、実施例1と同様にして、発光素子用反射基板の作製を行った。
〔金属基材〕
金属基材として、日本軽金属社製のA52S(A1085−O)のアルミニウム板を用いた。
このアルミニウムの25℃および205℃での0.2%耐力を測定したところ、0.2%耐力は、25℃で90MPa、205℃で75MPaであった。
[評価]
作製した実施例、比較例の発光素子用反射基板の、反り量およびクラックを評価した。
(反り量)
非接触式平坦度計(キーエンス社製)を用い、100×100mmのエリアを測定し、1cmあたりの反り量を算出した。
(クラック)
無機反射層および陽極酸化皮膜層の表面を、光学顕微鏡で40倍に拡大して観察し、クラックの有無を評価した。
A:光学顕微鏡での観察でクラックが見られなかった。
B:光学顕微鏡でクラックが確認された。
評価の結果を表1に示す。
第1表に示す結果から、金属基材と金属基材の表面の少なくとも一部に設けられた無機反射層とを有し、金属基材の0.2%耐力が、25℃で150MPa以上であり、かつ、205℃で70MPa以上である、本発明の実施例1〜5は、比較例1〜6に対して、反り量を低減し、かつ、クラックの発生を抑制できることがわかる。
また、実施例2,4と比較例2,4,5,6の比較から、硬質の陽極酸化皮膜層を積層した場合でも、反りを抑制し、かつ、この陽極酸化皮膜層にクラックが発生することを抑制できることがわかる。
ここで、比較例5から、金属基材を柔軟に(0.2%耐力を低く)すると、反り量は低減できるものの、クラックが発生してしまうことがわかる。
また、比較例3,4から、常温(25℃)での0.2%耐力が高くても、高温(205℃)での0.2%耐力が低いと、反り量が大きくなり、クラックが発生してしまうことがわかる。
また、比較例6から、高温(205℃)での0.2%耐力が高くても、常温(25℃)での0.2%耐力が低いと、反り量が大きくなり、クラックが発生してしまうことがわかる。
以上の結果から本発明の効果は明らかである。
1、11 バルブ金属基材
2 陽極酸化皮膜層
3 無機反射層
9 ワイヤボンディング
30 発光素子用反射基板
100 白色系発光ダイオード装置
110 発光素子
150 蛍光体
160 樹脂材料

Claims (11)

  1. 金属基材と、前記金属基材の表面の少なくとも一部に設けられた無機反射層とを有し、
    前記金属基材の0.2%耐力が、25℃で150MPa以上であり、かつ、205℃で70MPa以上である発光素子用反射基板。
  2. 前記金属基材は、バルブ金属であり、表面の少なくとも一部に陽極酸化皮膜を有する請求項1に記載の発光素子用反射基板。
  3. 前記陽極酸化皮膜層、前記金属基材、前記無機反射層の順に積層されている請求項2に記載の発光素子用反射基板。
  4. 前記金属基材、前記陽極酸化皮膜層、前記無機反射層の順に積層されている請求項2に記載の発光素子用反射基板。
  5. 前記バルブ金属が、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマスおよびアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種の金属である請求項2〜4のいずれか1項に記載の発光素子用反射基板。
  6. 前記バルブ金属が、アルミニウムである請求項2〜5のいずれか1項に記載の発光素子用反射基板。
  7. 前記金属基材の厚さが、0.1〜3mmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光素子用反射基板。
  8. 前記無機反射層が、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよびケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一つの無機結着剤と、屈折率1.5以上1.8以下、平均粒径0.1μm以上5μm以下の無機粒子とを含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光素子用反射基板。
  9. 前記無機反射層が、100℃〜300℃の温度で低温焼成されて得られる請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光素子用反射基板。
  10. 前記反射基板の表面に、さらに金属配線層が設けられている請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光素子用反射基板。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光素子用反射基板と、
    前記発光素子用反射基板の表面に実装される発光素子とを有する白色系発光ダイオード装置。
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