JP2015010024A - 鉄筋モルタル供試体および鉄筋コンクリート製品の評価方法 - Google Patents

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香織 根岸
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Abstract

【課題】遠心力締固め法により作製した鉄筋コンクリート製品の特性をより正確に評価することができる鉄筋モルタル供試体および鉄筋コンクリート製品の評価方法を提供する。
【解決手段】鉄筋モルタル供試体1は、遠心力締固め法によりセメント、細骨材、水および混和剤を締め固めることにより形成されている。この鉄筋モルタル供試体1には、円周方向に等間隔で、かつ、軸線方向に沿った6本の鉄筋2が埋設されている。このような鉄筋モルタル供試体1に対して各種試験を行い、この試験結果に基づいて鉄筋モルタル供試体1が模した鉄筋コンクリート製品を評価する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鉄筋モルタル供試体および鉄筋コンクリート製品の評価方法に関するものである。
従来より、建築物などの部材として鉄筋コンクリートが用いられている。この鉄筋コンクリートとは、鉄筋とコンクリートの複合材料であり、引っ張りに弱いコンクリートの強度を補うために、鉄筋が埋設されたものである。コンクリートと鉄筋の熱膨張率がほぼ等しいこと、圧縮に耐えるコンクリートと引張に耐える鉄筋との組合せが力学特性上有利なこと、ともに原材料が廉価であることなどから、鉄筋コンクリートは建設材料や土木材料として広く用いられてきた。なかでも、鉄筋コンクリートポールや鉄筋コンクリートパイルなど遠心力締固め法により作製した鉄筋コンクリート構造物は広く用いられている。この遠心力締固め法とは、図6に示すように、円筒状の側板と中心部に孔を開けた2個の端板とからなる型枠10を車輪11の上に載せ、その型枠10内にセメント、粗骨材、細骨材、混和剤および水からなるコンクリートの材料を入れ、型枠10を回転させながら型枠内のコンクリート材料を締固めるものである(例えば、非特許文献2参照。)。
このようなコンクリート製品において、近年では、混和剤にフライアッシュ、高炉スラグ、減水剤などを用いることにより、水密性等の特性を改善して環境への負荷を低減することが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。そのような混和剤を含むコンクリートなど、新たなコンクリート製品を生産する場合には、まず試作品としてその構造体の形状を模擬したコンクリート供試体を作製し、この供試体に対して各種試験を行うことにより特性を評価し、所望の特性が得られることを確認した後に実際の製品の生産に移行することが一般的である。
このため、鉄筋コンクリートポールや鉄筋コンクリートパイルなどの遠心力締固め法により作製される鉄筋コンクリート製品に上述したような混和剤を用いる場合にも、まず、その鉄筋コンクリート製品を模擬したコンクリート供試体を遠心力締固め法により作製することが行われる。そして、作製したコンクリート供試体に対して、透水試験や強度試験等の各種試験を行い、この試験結果に基づいて耐環境性能等を評価する。なお、各種試験には圧縮強度の測定も含まれるため、コンクリート供試体には鉄筋が埋設されていないことが一般的である。
福沢公夫、他、遠心力締固めコンクリートの特性に及ぼす各種要因の影響、コンクリート工学年次論文報告集、Vol.20, No.2, 1998 日本規格協会、日本工業規格 遠心力締固めコンクリートの圧縮強度試験方法 JIS A 1136、1993年
しかしながら、上述したコンクリート供試体では遠心力締固め法により作製された鉄筋コンクリート製品の特性を正確に評価することが困難であった。その理由は以下の通りである。
まず、作製時の遠心力により粗骨材が供試体の外周部に集まるため、耐環境性能など外部からの影響を評価する場合には、評価結果に粗骨材の影響が大きく現れ、モルタル成分の影響が現れにくい。混和剤はモルタル成分中に存在するので、その評価結果に混和剤の影響が反映されにくいことになり、結果として、混和剤を用いることによる供試体への特性の影響を正確に評価することが困難であった。
また、応力等により発生したひびが製品の寿命等に及ぼす原因を評価するために供試体にひびを導入して試験を行うことがあるが、ひびは粗骨材を避けるように形成されるので供試体ごとにひびの形状が異なってしまう。このため、ひびが混和剤を含む製品の寿命等に及ぼす影響を正確に評価することが困難であった。
さらに、供試体に鉄筋が埋設されていないので、混和剤による鉄筋腐食の抑制効果についても評価することができなかった。
そこで、本発明は、遠心力締固め法により作製した鉄筋コンクリート製品の特性をより正確に評価することができる鉄筋モルタル供試体および鉄筋コンクリート製品の評価方法を提供することを目的とする。
上述したような課題を解決するために、本発明に係る鉄筋モルタル供試体は、遠心力締固め法によりセメント、細骨材、混和剤および水を締め固めることにより作製され、鉄筋が埋設されていることを特徴とするものである。
また、上記鉄筋モルタル供試体において、ひびが形成されているようにしてもよい。
また、本発明に係る鉄筋コンクリート製品の評価方法は、鉄筋コンクリート製品を模した供試体に対して試験を行う第1のステップと、この第1のステップによる試験結果に基づいて、鉄筋コンクリート製品の評価を行う第2のステップとを有し、供試体は、上記鉄筋モルタル供試体からなることを特徴とするものである。
上記鉄筋コンクリート製品の評価方法において、第2のステップは、混和剤による前記鉄筋コンクリート製品への特性の影響を評価するようにしてもよい。
本発明によれば、遠心力締固め法により作製した鉄筋コンクリート製品の特性をより正確に評価することができる。
図1は、本実施の形態に係る鉄筋モルタル供試体の構成を示す斜視図である。 図2は、本実施の形態に係るひびを導入した鉄筋モルタル供試体の構成を示す斜視図である。 図3は、本発明の実施の形態に係る鉄筋モルタル供試体の製造方法を示すフローチャートである。 図4は、鉄筋モルタル供試体の作製に用いる型枠の端板の正面図である。 図5は、本実施の形態に係るコンクリート製品の試験方法を示すフローチャートである。 図6は、遠心力締固め法を説明するための図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態では、遠心力締固め法により作製される鉄筋コンクリート製品に模した鉄筋モルタル供試体を作製し、この鉄筋モルタル供試体に各種試験を行うことにより、その鉄筋コンクリート製品の各種特性を評価する場合を例に説明する。
<供試体の構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る鉄筋モルタル供試体1は、遠心力締固め法によりセメント、細骨材、水および混和剤を締め固めることにより円筒状に形成され、円周方向に等間隔で、かつ、軸線方向に沿った6本の鉄筋2が埋設された鉄筋モルタル構造体である。この鉄筋モルタル供試体1は、遠心力締固め法により作製される鉄筋コンクリート製品を模したものである。
なお、一般的に、モルタルの構成材料は、セメント、細骨材、混和剤および水であり、コンクリートの構成材料は、そのモルタルの構成材料にさらに粗骨材を加えたものである。
鉄筋モルタル供試体1は、図2に示すように、その鉄筋モルタル供試体1の軸線を通る2つの平面で切断することにより、少なくとも1本以上の鉄筋2を含む断面略扇状の柱状の鉄筋モルタル供試体3として用いるようにしてもよい。この鉄筋モルタル供試体3には、外周面の中央部にひび4を形成するようにしてもよい。
<供試体の製造方法>
次に、図3を参照して、本実施の形態に係る鉄筋モルタル供試体の製造方法について説明する。
はじめに、鉄筋モルタル供試体の型枠を組み立てる(ステップS1)。この型枠は、JISA1136の規格に沿ったものであり、円筒状の側板と、この側板の両端にそれぞれ取り付けられ、中心部に孔が形成された2個の端板とから構成されている。本実施の形態では、図4に示すように、端板5には円周方向に等間隔に6個の孔6が形成されており、この孔6には鉄筋が挿通されている。孔6は、外縁部から20[mm]の位置に形成し、鉄筋の直径は10[mm]である。
鉄筋が配設された型枠を組み立てると、この型枠を車輪の上に載せ、その型枠内に所定の配合のセメント、細骨材、水および混和剤を入れ、型枠を回転させながら型枠内のモルタルペースト(セメント、細骨材、水および混和剤の混合物)を締固める(ステップS2)。
型枠を所定の時間で所定の回転数だけ回転させることにより供試体の成形が終了すると、所定の時間だけ供試体を型枠のまま静置した後、型枠を取り外し、所定の養生を行う(ステップS3)。これにより、図1に示すように、鉄筋2が埋設された円筒状の鉄筋モルタル供試体1が作製されることとなる。
このような円筒状の鉄筋モルタル供試体1にひびを導入する場合、まず、図2に示したように、その鉄筋モルタル供試体1を軸線を通る2つの平面で切断することにより、少なくとも1本以上の鉄筋2を含む断面略扇状の柱状の鉄筋モルタル供試体3を形成し、例えばアムスラー型耐圧試験機などの載荷装置により鉄筋モルタル供試体3に荷重をかける。これにより、鉄筋モルタル供試体3にひび4が形成される。
コンクリートからなる供試体に荷重をかけることでひびを導入する場合、ひびは粗骨材を避けるように入るため、粗骨材の大きさや配置によってひびの入る位置や形状が変化していた。これに対して本実施の形態では、鉄筋モルタル供試体3に粗骨材が含まれていないので、鉄筋モルタル供試体3の特定の位置に特定の形状のひびを導入することができる。また、鉄筋2が埋設されていることにより耐荷重性能が向上しているので、鉄筋モルタル供試体3が破断せずにひびを導入することができる。
<コンクリート製品の評価方法>
次に、図5を参照して、本実施の形態に係る鉄筋コンクリート製品の評価方法について説明する。
まず、上述した方法により作製された鉄筋モルタル供試体1または鉄筋モルタル供試体3に対して、透水試験や強度試験などの各種試験を行う(ステップS11)。
各種試験が行われると、この試験結果に基づいて、鉄筋モルタル供試体1により模された鉄筋コンクリート製品の評価を行う(ステップS12)。
従来のコンクリート供試体の場合、混和剤がモルタルペースト中のみに存在するので、粗骨材が多い箇所ではモルタルペーストが少ないために混和剤の影響が小さい一方、粗骨材が少ない箇所ではモルタルペーストが多いために混和剤の影響が大きくなっており、混和剤が及ぼす影響が供試体中で均一ではなかった。
これに対して鉄筋モルタル供試体1には粗骨材が含まれていないので、混和剤が及ぼす影響が供試体中で均一である。したがって、混和剤を用いることによる鉄筋コンクリート製品への特性の影響を正確に評価することができる。
例えば、混和剤による鉄筋腐食の抑制効果を調べるためにひびの幅や混和剤を変えた供試体を複数用意して中性化促進試験や塩水噴霧試験を行う場合、本実施の形態に係る鉄筋モルタル供試体1では、混和剤が及ぼす影響が供試体中で均一なので、試験結果の差がひびの幅や混和剤に起因するものであると解釈することができる。これにより、より正確に鉄筋コンクリート製品の評価を行うことができる。
また、応力等により発生したひびが製品の寿命等に及ぼす原因を評価するために供試体にひびを導入して試験を行うときも、上述したように鉄筋モルタル供試体3では特定の位置に特定の形状のひびを導入することができるので、ひびが混和剤を含む製品の寿命等に及ぼす影響を正確に評価することできる。
さらに、鉄筋モルタル供試体1には鉄筋2が埋設されているので、混和剤による鉄筋腐食の抑制効果についても評価することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、遠心力締固め法により作製した鉄筋コンクリート製品の特性をより正確に評価することができる。
なお、本実施の形態において、鉄筋2を鉄筋モルタル供試体3の外縁部から20[mm]の位置に埋設する場合を例に説明したが、鉄筋2を埋設する位置はこれに限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、製品であるコンクリートポール等を模した鉄筋かぶり深さおよび鉄筋本数にする場合や、鉄筋同士の間隔やかぶり深さがコンクリート製品の特性に及ぼす影響を評価する為に、これらを連続的に変化させた複数の供試体を用意する場合など、試験の目的に応じて適宜設定するようにしてもよい。
本発明は、鉄筋コンクリート製品に適用することができる。
1,3…鉄筋モルタル供試体、2…鉄筋、4…ひび、5…端板、6…孔。

Claims (4)

  1. セメント、細骨材、混和剤および水を遠心力締固め法で締め固めることにより作製され、鉄筋が埋設されていることを特徴とする鉄筋モルタル供試体。
  2. 請求項1記載の鉄筋モルタル供試体において、
    ひびが形成されている
    ことを特徴とする鉄筋モルタル供試体。
  3. 遠心力締固め法で作製された鉄筋コンクリート製品を模した供試体に対して試験を行う第1のステップと、
    この第1のステップによる試験結果に基づいて、前記鉄筋コンクリート製品の評価を行う第2のステップと
    を有し、
    前記供試体は、請求項1または2記載の鉄筋モルタル供試体からなる
    ことを特徴とする鉄筋コンクリート製品の評価方法。
  4. 請求項3記載の鉄筋コンクリート製品の評価方法において、
    前記第2のステップは、混和剤による前記鉄筋コンクリート製品への特性の影響を評価する
    ことを特徴とする鉄筋コンクリート製品の評価方法。
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JPN6016023669; 佐伯竜彦他: '中性化によるモルタルの強度変化' 土木学会論文集 No.451, 199208, PP.69-78 *

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