JP2015004694A - 回転機械系の異常診断方法 - Google Patents
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そこで、このような場合には、電動機の電流の実効値やピーク値などの有次元特徴パラメータによる状態監視方法が、一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
つまり、特徴パラメータによる回転機械系の診断においては、機械の負荷と運転状況が変わると、異常の判定と識別基準も変化させる必要が生じるため、統一的な判定基準と識別法の設定が困難であるといった問題があった。
前記電動機の稼働時の電流を計測してA/D変換し、その電流波形から点検時振幅確率密度関数ft(x)を求めて保存する第2工程と、
前記参照振幅確率密度関数fr(x)と前記点検時振幅確率密度関数ft(x)について、以下の式(1)及び式(2)によってそれぞれ表されるIDとKIのいずれか一方又は双方の値を算出する第3工程と、
a)前記値が前記IDの値であれば、予め設定した過検出率αと見逃し率βから式(3)によって算出されるRID(α、β)と比較してID≧RID(α、β)の場合、b)前記値が前記KIの値であれば、予め設定した過検出率αと見逃し率βから式(4)によって算出されるRKI(α、β)と比較してKI≧RKI(α、β)の場合、c)前記値が前記IDと前記KIの双方の値であれば、それぞれ前記RID(α、β)及び前記RKI(α、β)と比較して、前記ID≧RID(α、β)と前記KI≧RKI(α、β)のいずれか一方又は双方を満足する場合は、1)前記電動機と2)前記電動機によって駆動される機械系からなる回転機械系に異常があると判定する第4工程とを有する。
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記電流波形の側帯波解析による前記回転機械系の異常検出及び識別は、前記電動機の稼働時の電流信号を、高速フーリエ変換して対数変換することでスペクトルを求め、中心周波数の側帯波を検出することにより行うのがよい。
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記過度電流値のパターン分析による異常検出及びプロセス診断は、起動電流、遮断電流、又は操業電流の前記回転機械系の異常のない状態での電流実効値波形と前記電動機の稼働時の電流実効値波形とを比較することにより行うのがよい。
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記電流波形の歪解析による前記電動機の電源品質のモニタリング解析は、前記電動機の稼働時の電流信号の高調波成分と電源周波数成分の単調波比率及び全調波比率と相間電流の不平衡率を算出することにより行うのがよい。
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記電流の計測は、前記電動機に供給される三相電源の一相ごとについて順次切り換えて行うことが好ましい。
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、ハイパスフィルターによるフィルター処理を行った後、包絡線検波による包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換を行い、前記歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数近傍に現れるスペクトルのピーク群を検出することで、前記回転機械系の前記歯車の軸受又は該歯車の噛み合いに異常が発生したと判断する。
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、高速フーリエ変換した後、スペクトルを対数変換し、前記電動機の電源周波数のスペクトルピークのレベルと、該電源周波数を中心周波数として対称に、前記電動機の回転子の軸の回転周波数分だけ離れた周波数の位置に現れるスペクトルピークのレベルとの差が、予め設定した値以下となったことを条件として、前記回転機械系において伝動継手で連結されている前記電動機の前記回転子の軸と、負荷側の回転軸との間に、アライメントの異常が発生したと判断する。
従って、異常判定の基準と識別の設定が可能となり、従来よりも高感度な回転機械系の異常診断方法を提供できる。
また、電流の計測を、電動機に供給される三相電源の一相ごとについて順次切り換えて行う場合、電流の計測を全ての電流について実施でき、異常診断の精度の更なる向上が図れる。
まず、図2を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る回転機械系の異常診断方法を適用する回転機械系の異常診断装置(以下、単に異常診断装置ともいう)10について説明する。
異常診断装置10は、1)異常診断の対象となる交流の電動機11と(及び/又は)、2)この電動機11によって駆動される機械系12(負荷側)からなる回転機械系の診断を行う装置である。この機械系12には、例えば、ポンプや減速機(歯車装置)等があり、この機械系12に電動機11が接続され、電動機11が電力線13を介して電源(制御盤)14に接続されている。
ここで、電流検出器15には、例えば、検流器(CT:Current Transducer)等を使用できる。また、処理ユニット17は、RAM、CPU、ROM、I/O、及びこれらの要素を接続するバスを備えた従来公知の演算器(即ち、コンピュータ)で構成され、電動機11と(及び/又は)機械系12からなる回転機械系の診断結果を表示するモニタも有している。なお、処理ユニット17での処理は、CPUが所定のプログラムを実行することで実現される。
異常診断を行うに際しては、まず、図2に示すように、電動機11と電源14を接続する電力線13に電流検出器15を設置し、点検時(稼働時)の電動機11の電流を計測する。なお、電動機11は三相誘導電動機であるため、ここでは、3本の電力線13にそれぞれ電流検出器15を設置しているが、例えば、1本又は2本の電力線に電流検出器を設置して、電流の計測を、電動機11に供給される三相電源の一相について行ってもよい。また、電流の計測は、電動機11に供給される三相電源の一相ごとについて順次切り換えて行ってもよい。
そして、図1に示すステップ1(ST1)〜ステップ6(ST6)の簡易診断(異常検出)を行い、この簡易診断で異常が検出されたことを条件として、ステップ7(ST7)〜ステップ14(ST14)の精密診断(異常識別)を行う。以下、詳しく説明する。
このように、電流信号を用いることで、振動信号を用いた診断と比較して、診断精度の向上が図れる。振動信号を用いた診断の場合、機器が正常と思われる状態での振動信号を計測して基準信号とする必要があるが、実際には、その中に異常の振動が含まれている可能性があり、異常の検出精度に難がある。一方、電流信号を用いた診断の場合、基準正弦波信号を基準正弦波信号発生器又は計算によって取得できるので、基準信号に異常の信号が含まれない。
そして、この基準正弦波信号波形をA/D変換し、所定のサンプリング時間で得られる複数の点データにして、図3(F)に示す参照振幅確率密度関数fr(x)を求める(以上、第1工程)。
電動機11の稼働時の電流波形は、図3(B)〜(E)に示すように、回転機械系の状態によって、様々な形状となっている。なお、電動機の電流の計測時間は、例えば、1〜10秒間隔(好ましくは、下限を3秒、上限を7秒)で行われる。
そして、ステップ3(ST3)では、電動機11の稼働時の電流波形の複数の点データから、図3(G)〜(J)に示す点検時振幅確率密度関数ft(x)を求め、処理ユニット17の記憶手段に保存する。なお、点検時振幅確率密度関数ft(x)は、点検時のモータ電流信号を、算出した実効値で割った規格化電流信号である(以上、第2工程)。
一般に、設備状態が変化すると、その電流波形の振幅確率密度関数も変化する。そこで、二つの振幅確率密度関数の相違、即ち、「情報距離」を求めるためにIDとKIを用いる。特に、異常診断においては、IDとKIが、二つの振幅確率密度関数の相違を精度よく現すことができるため、より優れた異常検出精度をもつことが期待される。
ここで、参照振幅確率密度関数fr(x)と点検時振幅確率密度関数ft(x)が、どちらも正規分布関数となる場合は、各々の分散をσr2及びσt2とすると、σr2>σt2であればIDの感度がよく検出精度もよい。一方、σr2<σt2であれば、KIの感度がよく検出精度もよい。
また、参照振幅確率密度関数fr(x)と点検時振幅確率密度関数ft(x)のどちらかが正規分布関数とならない場合、又は正規分布関数であるか否か不明である場合は、IDとKIの双方の値を算出することで、検出精度が高められる。
ここで、規格化後の振幅xの電流信号に対して、fr(x)を参照分布、ft(x)をテスト分布とすると、IDの定義は、式(1)で表され、また、KIの定義は、式(2)で表される(以上、第3工程)。
具体的には、上記したIDとKIの定義により、二つの振幅確率密度分布が全く同一の場合、即ち、fr(x)=ft(x)の場合は、ID=0、KI=0となる。また、fr(x)とft(x)の偏移が大きくなる場合は、IDとKIも大きくなる。
帰無仮説 H0:x∈E0
対立仮説 H1:x∈E1
に対して、第一種のエラーα(過検出率)をProb(x∈E1|H0)、第二種のエラーβ(見逃し率)をProb(x∈E0|H1)とする。
α≧1−βのとき、RID(α,β)とRKI(α,β)は単調増加関数となる。
また、βを一定としてαが大きくなると、RID(α,β)とRKI(α,β)が小さくなり、αを一定としてβが大きくなると、RID(α,β)とRKI(α,β)が小さくなるため、判定基準が厳しくなる。
そこで、上記した参照振幅確率密度関数fr(x)と点検時振幅確率密度関数ft(x)から求めたID又はKIを用い、それぞれについて、前記した式(5)及び式(3)と、式(6)及び式(4)により、異常の有無を判断する。
このステップ6においては、前記したステップ4でIDのみの値を算出した場合、ID≧RID(α,β)の条件を満足するか否か、またステップ4でKIのみの値を算出した場合、KI≧RKI(α,β)の条件を満足するか否かの判断を行う(以上、第4工程)。
具体的には、1)電流波形の高周波成分解析による回転機械系の異常検出及び識別、2)電流波形の側帯波解析による回転機械系の異常検出及び識別、3)過度電流値のパターン分析による異常検出及びプロセス診断、4)電流波形の歪解析による電動機の電源品質のモニタリング解析のいずれか1又は2以上(好ましくは、全て)の処理を行う。以下、各処理について説明する。
ここでは、図4(A)〜(C)にそれぞれ示す正常時の電流波形(電流信号:図4中の太線)と点検時の電動機の電流波形(電流信号:図4中の細線)に対し、1000Hz(例えば、500〜1500Hzの範囲内)のハイパスフィルターによるハイパスフィルター処理を行った後、包絡線検波による包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換(FFT変換:Fast Fourier Transform)を行う。なお、高速フーリエ変換は、信号を周波数領域に変換する方法であり、周波数成分や位相を観察するのに用いる従来公知の方法である(以下、同様)。
歯車の軸受が正常な場合、図5(A)〜(C)に示すように、高周波電流スペクトルは、電源周波数のほとんど偶数倍の周波数(ここでは、120Hzと240Hz)にだけピークが現れる。一方、歯車の軸受又は歯車の噛み合いに異常が発生した場合は、図6(A)〜(C)に示す長円で囲まれた領域、即ち歯車の軸の回転周波数が29.7Hzの場合、その偶数倍の周波数付近(この場合、59.4Hz、118.8Hz、178.2Hz、237.6Hz、及び297Hz)に、高周波電流スペクトルのピーク群が現れる。なお、正常な場合にも現れる電源周波数のほとんど偶数倍のピークと重なる周波数では、ピークは確認できない。また、偶数倍の周波数付近とは、滑りを考慮した歯車の軸の回転周波数(ここでは、29.7Hz)の偶数倍の周波数を中心として、例えば、±10Hz(好ましくは、±5Hz)の範囲内を意味する。
従って、歯車軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近に、高周波電流スペクトルのピーク群を検出することにより、回転機械系の異常の精密診断を実施できる。
なお、上記した歯車の軸受又は歯車の噛み合いに異常が発生したか否かの判断は、前記したステップ1〜ステップ6の簡易診断(異常検出)を行うことなく、実施してもよい。即ち、電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、フィルター処理を行った後、包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換を行い、歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近に現れるスペクトルのピーク群を検出する。
ここでは、図4(A)〜(C)にそれぞれ示す正常時の電流波形(電流信号)と点検時の電動機の電流波形(電流信号)に対し、高速フーリエ変換した後、対数変換(log10Z)を行う。これにより、図7(A)〜(C)に示すように、大きな値は小さなピークのスペクトルにでき、一方、小さな値は大きなピークのスペクトルにできる。
そして、電源周波数を中心周波数として対称に、この電源周波数の側帯波が存在するかどうか、また、そのスペクトルレベルがいくらかを確認する。なお、中心周波数は、例えば、固定子のスロット通過周波数や回転子バーの磁極部の通過周波数でもよく、この場合、電源周波数の側帯波の代わりに、中心周波数から回転周波数や極通過周波数分だけ離れた周波数のスペクトルのピークのレベルを確認する。
例えば、図7(A)〜(C)に示すように、電源周波数fL(ここでは、60Hz)を中心として、極通過周波数fp(ここでは、60Hzを中心として±1〜5Hzずれた周波数)の側帯波が存在すると共に、そのピークレベルと中心周波数のピークレベルとの差が予め設定した差を超えた場合に、回転子バーに異常が発生したと判断する。
また、電源周波数を中心周波数として対称に、電動機の回転子の軸の回転周波数分、即ち電動機の回転子の回転数(ここでは、滑りを考慮して1760回/分)を電源周波数(ここでは、60Hz)で除した値だけ離れた周波数(ここでは、30.7Hzと89.3Hz)の位置では、カップリング(伝動継手)で繋がれて(連結されて)いる電動機の回転子の軸と負荷側の回転軸の軸芯がずれている場合に、ピークが現れる。
ここで、dBとは、20log(Iline/Ishaft)で表される。なお、Ilineは電流スペクトル電源周波数部の電流成分であり、Ishaftは電流スペクトル電源周波数を中心とした軸回転周波数側帯波部の電流成分である。
従って、回転機械系の異常の精密診断を実施できる。
なお、上記したアライメントの異常が発生したか否かの判断は、前記したステップ1〜ステップ6の簡易診断(異常検出)を行うことなく、実施してもよい。即ち、電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、高速フーリエ変換した後、スペクトルを対数変換し、電動機の電源周波数のスペクトルピークのレベルと、電源周波数から電動機の回転子の軸の回転周波数分だけ離れた周波数の位置に現れるスペクトルピークのレベルとの差を求める。
ここでは、図9(A)〜(C)に示す起動電流解析や操業電流解析、また図9(D)〜(F)に示す遮断電流解析や操業電流解析を行う。この起動電流解析とは、回転機械系に異常のない正常状態での起動電流パターン(電流実効値波形、以下同様)と、電動機の稼働時の電流実効値波形とを照合(比較)する方法であり、遮断電流解析とは、正常状態の遮断電流パターンと、電動機の稼働時の電流実効値波形とを照合する方法であり、操業電流解析とは、正常状態の操業電流パターンと、電動機の稼働時の電流実効値波形とを照合する方法である。
ここで、点検時の電動機の電流波形が、正常状態の電流パターンに対して±10%(好ましくは±5%)を超える場合に、回転機械系に異常が発生したとして精密診断できる。
ここでは、図4(A)〜(C)にそれぞれ示す正常時の電流波形(電流信号)と電動機の稼働時の電流波形(電流信号)に対し、図10(A)〜(C)に示すように、電動機の電源周波数の50次(50倍)までの高調波(歪)解析を実施する。なお、図10(A)〜(C)の縦軸は、基本波に対する各高調波の比率である。
理想的な電源の品質は、電流(電圧)信号の電源周波数fL成分が圧倒的に強く、電源周波数の高調波成分がほとんど現れないものである。
idis={n次高調波電流の実効値(In)}/{基本電流(I1)}×100(%)
・・・(7)
idis={高調波電流の実効値}/{基本電流(I1)}×100(%)・・・(8)
なお、ステップ12も、ステップ8〜10と同時又は順次行うことができる。
以上の方法により、異常判定の基準と識別の設定が可能であり、従来よりも高感度に回転機械系の異常診断を実施できる。
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、ハイパスフィルターによるフィルター処理を行った後、包絡線検波による包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換を行い、前記歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数近傍に現れるスペクトルのピーク群を検出することで、前記回転機械系の前記歯車の軸受又は該歯車の噛み合いに異常が発生したと判断する。
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、高速フーリエ変換した後、スペクトルを対数変換し、前記電動機の電源周波数のスペクトルピークのレベルと、該電源周波数を中心周波数として対称に、前記電動機の回転子の軸の回転周波数分だけ離れた周波数の位置に現れるスペクトルピークのレベルとの差が、予め設定した値以下となったことを条件として、前記回転機械系において伝動継手で連結されている前記電動機の前記回転子の軸と、負荷側の回転軸との間に、アライメントの異常が発生したと判断する。
Claims (2)
- 電動機の負荷側が歯車で構成される回転機械系の異常診断方法において、
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、ハイパスフィルターによるフィルター処理を行った後、包絡線検波による包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換を行い、前記歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近に現れるスペクトルのピーク群を検出することで、前記回転機械系の前記歯車の軸受又は該歯車の噛み合いに異常が発生したと判断することを特徴とする回転機械系の異常診断方法。 - 電動機で駆動される回転機械系の異常診断方法において、
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、高速フーリエ変換した後、スペクトルを対数変換し、前記電動機の電源周波数のスペクトルピークのレベルと、該電源周波数を中心周波数として対称に、前記電動機の回転子の軸の回転周波数分だけ離れた周波数の位置に現れるスペクトルピークのレベルとの差が、予め設定した値以下となったことを条件として、前記回転機械系において伝動継手で連結されている前記電動機の前記回転子の軸と、負荷側の回転軸との間に、アライメントの異常が発生したと判断することを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
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