JP2015004544A - 検査方法及び検査装置 - Google Patents

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聡一 松井
卓行 河合
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卓行 河合
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Abstract

【課題】複数の検査項目を一括して検査することができる検査技術を提供することを課題とする。【解決手段】回転式の検査装置10にて、回転手段34でデフサイドギヤ16を第1の回転数で回し、振動測定手段35で振動波形を得る。次に、回転手段34でデフサイドギヤ16を第1の回転数とは異なる第2の回転数で回し、振動測定手段35で振動波形を得る。全ての振動波形から、演算部37でマハラノビス−タグチ法を用いて解析し、製品10のマハラノビス距離を演算する。得られたマハラノビス距離を合否判定部38で合格基準と比較して合否判定を行う。【効果】複数の検査項目を一括して検査することができ、検査装置の集約化及び検査時間の短縮化が図れる。【選択図】図2

Description

本発明は、検査技術、特にディファレンシャル装置の検査に好適な検査技術に関する。
製品は検査項目に従って検査がなされ、合格水準にあるものが出荷される。
検査項目は製品により定められ、例えば、ディファレンシャル装置では、検査項目として打痕の有無が上げられる(例えば、特許文献1(請求項1)参照。)。
特許文献1は、ディファレンシャル装置の歯車機構が動作時に発生する振動又は音をセンサで検出し、この検出値を正常データ及び異常データと比較して打痕の有無を判別し、結果を表示手段へ表示するという技術である。
ところで、ディファレンシャル装置は、デフケース内にデフピニオン、デフサイドギヤ、ピニオンシャフト及びワッシャを組付けてなる装置であり、各要素を組立てた後の組立寸法の良否、ギヤのバックラッシ量の良否、ワッシャの欠品も検査項目にすることが望まれる。
しかし、打痕検査装置に加えて、組立寸法検査装置やバックラッシ測定装置を準備すると装置費用が嵩む。打痕検査工程に、寸法検査工程、バックラッシ測定工程及び欠品検査工程を加えると工程数が増し、検査工数が嵩む。
検査装置の簡略化や検査工数の低減が求められる中、複数の検査項目を一括して検査することができる検査技術が求められる。
実用新案登録第2591809号公報
本発明は、複数の検査項目を一括して検査することができる検査技術を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明は、使用状態で振動が発生する製品が合格基準を満たしているか否かを調べる検査方法であり、前記合格基準を作成する基準作成工程と、前記製品を検査する合否判定工程とを少なくとも含み、
前記基準作成工程は、
前記製品と同等品であって別の手法で合格が確認されているテスト品の振動波形を測定する工程と、得られた振動波形から特徴量を抽出する工程と、得られた特徴量をマハラノビス−タグチ法を用いて解析し前記テスト品に基づく単位空間を作成する工程と、作成された単位空間に基づいて前記合格基準を定める工程とを少なくとも含み、
前記合否判定工程は、
前記製品の振動波形を測定する工程と、得られた振動波形から特徴量を抽出する工程と、得られた特徴量をマハラノビス−タグチ法を用いて解析し前記製品のマハラノビス距離を演算する工程と、得られたマハラノビス距離と前記合格基準に基づいて合否判定を行う工程とからなる検査方法であって、
前記テスト品の振動波形及び前記製品の振動波形を、同一項目で異なる二つ以上の条件で測定することを特徴とする。
請求項2に係る発明では、同一項目は、前記製品を回転させる回転数であり、二つ以上の条件は、第1の回転数とこの回転数と異なる第2の回転数であることを特徴とする。
請求項3に係る発明では、製品及びテスト品は、デフケース内にデフピニオン、デフサイドギヤ、ピニオンシャフト及びワッシャを組付けてなるディファレンシャル装置であり、デフピニオンとデフサイドギヤが回され、このときにディファレンシャル装置の振動が計測されることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、使用状態で振動が発生する製品が合格基準を満たしているか否かを調べる検査装置であり、
前記製品と同等品であって別の手法で合格が確認されているテスト品の振動波形を同一項目で異なる二つ以上の条件で測定する工程と、得られた振動波形から特徴量を抽出する工程と、得られた特徴量をマハラノビス−タグチ法を用いて解析し前記テスト品に基づく単位空間を作成する工程と、作成された単位空間に基づいて前記合格基準を定める工程とを経て定められた前記合格基準を、保存する合格基準保存部と、
前記製品の振動波形を同一項目で異なる二つ以上の条件で測定する振動測定手段と、
得られた振動波形から特徴量を抽出し、得られた特徴量をマハラノビス−タグチ法を用いて解析し前記製品のマハラノビス距離を演算し、得られたマハラノビス距離を前記合格基準保存部に保存されている前記合格基準に基づいて合否判定を行う合否判定部とを備えていることを特徴とする。
請求項1に係る発明では、基準作成工程で定めた合格基準は、複数の検査項目をカバーする基準である。ただし、マハラノビス−タグチ法による場合、合否判定工程で合格品を不合格、不合格品を合格と誤判定する心配がある。
そこで、本発明では、同一項目で異なる二つ以上の条件で振動波形を測定することにより、合格基準を作成すると共に検査を実施する。結果、検査の精度が上がるため、誤判定の心配が無くなる。
よって、本発明によれば、複数の検査項目を一括して検査することができ、検査装置の集約化及び検査時間の短縮化が図れる。
請求項2に係る発明では、二つの異なる回転数により合格基準を作成すると共に検査を実施する。
回転手段は、電動モータが一般に採用される。電動モータであれば、極数変換や周波数変換で容易に回転速度を変更することができる。よって、同一項目に回転数を採用することで、検査装置の装置コストを低減することができる。
請求項3に係る発明では、製品はディファレンシャル装置である。本発明は複数の検査項目を一括して検査することができるため、複数の要素から構成されるディファレンシャル装置の検査に好適であって、ディファレンシャル装置の検査コストを低減することができる。
請求項4に係る発明では、検査装置は、合格基準保存部と、振動測定手段と、合否判定部とを備える。複数の検査項目を一括して検査することができ、検査装置の集約化が図れる。
ディファレンシャル装置の断面図である。 本発明に係る検査装置の原理図である。 標本線(1)を用いて特徴量を抽出する例を説明する図である。 標本線(2)を用いて特徴量を抽出する例を説明する図である。 単位空間を説明するグラフである。 テスト品K〜Mのマハラノビス距離を説明するグラフである。 同一項目に一つの条件を設定して求めた、良品と不良品のマハラノビス距離を示すグラフである。 同一項目に二つの条件を設定して求めた、良品と不良品のマハラノビス距離を示すグラフである。 本発明に係る基準作成工程を説明するフロー図である。 本発明に係る合否判定工程を説明するフロー図である。
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
本発明が検査対象とする製品は、使用状態で振動を発生する物であれば種類は問わないが、ディファレンシャル装置を具体例として、以下説明する。
図1に示すように、製品としてのディファレンシャル装置10は、デフケース11の球形室12に、一対のデフピニオン13、14及び、一対のデフサイドギヤ15、16を収納し、デフピニオン13とデフケース11の間にピニオンワッシャ17を介在させ、デフピニオン14とデフケース11の間にピニオンワッシャ18を介在させ、デフサイドギヤ15とデフケース11の間にサイドワッシャ19を介在させ、デフサイドギヤ16とデフケース11の間にサイドワッシャ20を介在させ、一対のデフピニオン13、14をピニオンシャフト21でデフケース11に回転自在に支持した装置である。
なお、ピニオンシャフト21は、ローラピン22でデフケース11からの抜け止めが施される。また、デフケース11は、図示せぬ外部構造物に連結するためのフランジ23を有する。
次に製品を検査する検査装置の構成を説明する。
図2に示すように、検査装置30は、デフケース11に形成される一方のインボード24をチャックするチャック爪31と、デフケース11に形成される他方のインボード25、特に段部に押圧する押圧片32と、デフサイドギヤ16に設けられる雌スプライン16aまで挿入される軸部材33と、軸部材33を回転させる回転手段34と、振動波形を測定する振動測定手段35と、合格基準を保存する合格基準保存部36と、振動測定手段35で得た測定データに基づいてマハラノビス距離を求めるなどの処理及び演算を行う演算部37と、この演算部37で演算した値を合格基準保存部36で保存する合格基準に基づいて合否判定する合否判定部38と、合否判定結果を表示する表示部41と、合否判定結果、特に不合格情報を音情報又は光情報で発するアナウンス部42とからなる。
なお、演算部37は、合否判定部38と別置きすることも、合否判定部38に内蔵することも可能である。
図2に示すように、チャック爪31、31で、デフケース11の下部(インボード24)をチャックし、押圧片32でデフケース11の上部(インボード25)を押圧する。これでデフケース11は上端及び下端が固定される。反面、上端及び下端から遠い部位(ピニオンシャフト21の近傍やフランジ23)は、拘束力が低く、振幅が大きくなる。
次に、軸部材33をデフケース11に挿入し、回転手段34により軸部材33を回すと、上方のデフサイドギヤ16が回転する。このデフサイドギヤ16に噛み合うデフピニオン13、14も連れ回り、こられのデフピニオン13、14に噛み合うデフサイドギヤ15も連れ回わり、使用状態となる。
回転させるとギヤの噛み合い部位が変化するため、不可避的に振動が発生する。この振動はディファレンシャル装置10全体を振動させ、この振動がフランジ23を介して振動測定手段35で検出される。
このような検査装置30を用いて、マハラノビス−タグチ法に基づくマハラノビス距離を導き出す。この導出過程を詳しく説明する。
○良品準備:
図1で説明したディファレンシャル装置10と同じ構造で且つ部品検査、バックラッシ検査など既存の検査方法で検査され、良品と確認されたディファレンシャル装置10を、10個準備する。準備した10個を、テスト品A〜Jと呼ぶ。
○良品の振動波形の測定:
テスト品Aを図2の要領で検査したところ、図3に示す波形図Aが得られた。テスト品Bを検査したところ、図3に示す波形図Bが得られた。同様に、テスト品C〜Jを検査したところ波形図C〜Jが得られた。
○良品の特徴量の抽出:
図3の波形図Aに、複数の標本線を引く。この例では、2本の標本線(1)、(2)を引く。標本線(1)は振動波に2箇所で交わっている(交点を小丸で示す。)。標本線と振動波の交点の数を「変化量」と定義する。この変化量は2となる。
交点間の距離(ただし、波形の下側のみ。複数の場合は累積)を、「存在量」と定義する。2つの小丸の間の距離は16である。
よって、波形図Aの右側にテーブルで示すように、テスト品Aは、標本線(1)にて、変化量が2、存在量が16であった。
すなわち、特徴量は、この例では、変化量と存在量からなる。
図3の波形図Bについて、同様に調べると、テスト品Bは、標本線(1)にて、変化量が3、存在量が20であった。
テスト品C〜Jについても図3に示すような変化量と存在量が得られた。
テスト品A〜Jの変化量を合計し、10で割ると、2.2となった。この2.2は平均値xaveである。テスト品A〜Jの変化量に対する標準偏差σは0.75であった。
存在量では、平均値xaveが17.4で、標準偏差σが3.41であった。
次に、図4に示すように、波形図Aに標本線(2)を引き、この標本線(2)に対する変化量と存在量を調べる。テスト品Aでは変化量が10で存在量が300であった。
詳しい説明は省略するが、テスト品B〜Jについても波形図B〜Jに標本線(2)を引き、変化量と存在量を調べる。
○基準化:
ところで、図3では変化量の標準偏差σが0.75であり、存在量の標準偏差σが3.41であって、変化量と存在量が検査するための同じ土俵に乗っているとは言い難い。
そこで、変化量については、標準偏差が1.00になるように、10個の変化量を調整することにする。この調整は、((テスト品A〜Jの何れかの変化量−テスト品A〜Jの変化量の平均値xave)/テスト品A〜Jの変化量の標準偏差σ)の計算で実施できる。例えば、テスト品Aの変化量2については、(2−2.2)/0.75=−0.267となり、基準化された変化量は、−0.267となる。
同様に、存在量についても、標準偏差が1.00になるように、10個の存在量を調整することにする。この調整は、((テスト品A〜Jの何れかの存在量−テスト品A〜Jの存在量の平均値xave)/テスト品A〜Jの存在量の標準偏差σ)の計算で実施できる。例えば、テスト品Aの存在量16については、(16−17.4)/3.41=−0.410となり、基準化された存在量は、−0.410となる。
以上の基準化処理を、(テスト品B〜J)にも施す。結果を表1に示す。
Figure 2015004544
表1のテスト品Aの行には、変化量に−0.267が記載され、存在量に−0.410が記載されている。
表1は標本線(1)に係るものであった。標本線(2)についても同様の基準化処理を施す。結果を表2に示す。
Figure 2015004544
○相関係数の算出:
表2では変化量と存在量が同じ土俵に載っていると見なせる。
さらに相関係数rを求めることで、変化量と存在量の相関が明らかになる。相関係数rの演算式を次に示す。
Figure 2015004544
Yは表2に示す変化量又は存在量である。pは1〜n(この例ではn=10)である。iは行番号、jは列番号であり、i、jに自然数を代入すると表3に示すようになる。
Figure 2015004544
11は、表2における列番号1に示す値同士の積の和をnで割ったものである。すなわち、Σ((−0.267)×(−0.267)+1.069×1.069+・・・)/10=1となる。
12は、表2における列番号1と列番号2の値の積の和をnで割ったものである。すなわち、Σ((−0.267)×(−0.410)+1.069×0.762+・・・)/10=0.830となる。
21は、列番号2と列番号1の値の積の和をnで割ったものであって、r12と同じで0.830になる。
結果、次に示す行列を得ることができる。
○相関行列:
対称行列である相関行列Rを次に示す。
Figure 2015004544
○逆行列:
行列Rには、掛けると単位行列となる逆行列R−1が存在する。
簡単な行列の例を次に示す。
Figure 2015004544
この行列の逆行列を次に示す。
Figure 2015004544
この簡単な例に示すように、行列から逆行列を求める(決める)ことができる。
上述した相関行列Rに対する逆行列R−1は次に示すとおりである。
Figure 2015004544
○マハラノビス距離:
測定項目をk、基準化した判別データをY、このYの転置行列をYとすると、マハラノビス距離は次式で定義される。
Figure 2015004544
○良品のマハラノビス距離:
例えば、テスト品Aは、表2にて特徴量の数が4であるため、kは4となり、Yは表2から与えられる。よって、テスト品Aのマハラノビス距離は、次のように求められる。
Figure 2015004544
○単位空間:
テスト品B〜Jも同様にマハラノビス距離を求めることができる。
良品であるテスト品A〜Jのマハラノビス距離群で構成される空間を単位空間と呼ぶ。
図5に示すように、テスト品A〜Jで単位空間が構成された。
○不良品(1)を準備:
次に、部品検査、バックラッシ検査など既存の検査方法で検査され、不良品と確認されたディファレンシャル装置10を、3個準備する。準備した3個を、テスト品K〜Mと呼ぶ。
○不良品(1)の振動波形測定及び特徴量抽出:
これらのテスト品K〜Lについて、良品と同手順で、振動波形を測定し、特徴量である変化量と存在量を調べた。結果を表4に示す。
Figure 2015004544
○基準化:
基準化には、平均値と標準偏差が必要であるが、ここでは上述の良品の基準化に使用した平均値と標準偏差を使用する。平均値と標準偏差を表5に示す。
Figure 2015004544
基準化処理を行った後の変化量及び存在量を表6に示す。
Figure 2015004544
○不良品(1)のマハラノビス距離:
例えば、テスト品Kは、表6にて特徴量の数が4であるため、kは4となり、Yは表6から与えられる。よって、テスト品Kのマハラノビス距離は、次のように求まる。
Figure 2015004544
テスト品L、Mについても同様の手順でマハラノビス距離を求めた。結果を表7に示す。
Figure 2015004544
図6に示すように、単位空間でのマハラノビス距離が1以下であるのに対して、テスト品K〜Mのマハラノビス距離は格段に大きい。よって、この例に限っては、良品と不良品の差別化が図れそうである。
○不良品(2)を準備:
上述の不良品の数は3であったため、単位空間と比較対照するには少なすぎる。そこで、人為的不良品を作成すると共に数を大幅に増やすことにした。不良品(2)は、テスト品1〜テスト品19からなり、不良箇所は表8に示すとおりである。
Figure 2015004544
例えば、ケース球径は、図1に示す球形室12の径を意味し、過大は球形室12の径が基準寸法より大きいことを意味する。また、上下は図2に示す試験姿勢での向きを意味する。
○不良品(2)のマハラノビス距離:
詳細は省くが、テスト品1〜テスト品19について、振動波形を測定し、特徴量を抽出し、基準化し、マハラノビス距離を求めた。結果を次図に示す。
図7で、上向き矢印は、マハラノビス距離が6を越えていることを示す。
テスト品2、3、8、15は、マハラノビス距離が1未満であって、単位空間との差別化が困難であることが判明した。
すなわち、同一項目に一つの条件を設定して求めた場合、良品と不良品の判別が困難になった。
その対策を提供することが、本発明の目的となる。
本発明者らは、この目的を達成するために、種々の試みを行ったところ、同一項目で異なる二つ以上の条件で振動波を測定し、処理し、マハラノビス距離を求めることで、目的を達成することができることを知見した。以下、その内容を説明する。
○同一項目:
項目は、図2に示す軸部材33の回転数とする。
○異なる二つ以上の条件:
第1の回転数
第2の回転数は、第1の回転数より大きな回転数とする。
○良品での特徴量:
テスト品A〜Jについて、振動波形を測定し、特徴量(変化量と存在量)を抽出し、表9を得た。
Figure 2015004544
この表に基づいて、基準化し、相関係数を算出し、相関行列を求め、この相関行列から逆行列を求める。
Figure 2015004544
○良品のマハラノビス距離:
テスト品Aのマハラノビス距離は次の手順で求めることができる。
Figure 2015004544
同様に、テスト品B〜Jについてもマハラノビス距離を求める。結果を表10に示す。
Figure 2015004544
○単位空間:
テスト品A〜Jのマハラノビス距離群から、新しい単位空間を構成する。この単位空間は図8で説明する。
○不良品(2)での特徴量:
テスト品1〜19について、振動波形を測定し、特徴量(変化量と存在量)を抽出し、表11を得た。
Figure 2015004544
○不良品(2)のマハラノビス距離:
テスト品2のマハラノビス距離は次の手順で求めることができる。
Figure 2015004544
同様に、テスト品1〜19についてもマハラノビス距離を求める。結果を表12に示す。
Figure 2015004544
表10と表12をグラフ化する。
図8に示すように、単位空間では、マハラノビス距離は0.5程度であった。一方、テスト品1〜テスト品19では、全てが10を遥かに越えている。内、テスト品5と、テスト品9のマハラノビス距離が、比較的小さくて92であった。
○合格基準の設定:
単位空間のマハラノビス距離約0.5と、テスト品1〜19の最小マハラノビス距離92の間に合格基準を設定すればよいことになる。
ただし、不良品の形態によってはマハラノビス距離が、10程度になる可能性はある。
そこで、合格基準を4.0又は5.0とすることが推奨される。
なお、仮に、表9及び表11に、第3の回転数を加えると、列の数は4×3=12で、12に増加し、単位空間とテスト品1〜nの差別化の信頼性が高まることが予想される。
同一項目(この例では回転数)は、異なる二つ以上(少なくとも二つ)の条件であればよい。
以上の検査に基づいて完成させた試験方法を次に説明する。
図9は基準作成工程を示すフロー図であり、製品と同等品であって別の手法で合格が確認されたテスト品を複数個準備する(ST01)。なお、良品テスト品は、合格が確認された製品であってもよく、便宜上、テスト品と呼称する。
テスト品の1つを検査装置にセットし(ST02)、第1の回転数で回し、図2に示す振動測定手段35により振動波形を測定する(ST03)。
得られた振動波形から、図2に示す演算部37で特徴量(変位量、存在量)を抽出する。これを第1の特徴量として記憶させる(ST04)。
続いて、第1の回転数と異なる回転数である第2の回転数で回し、振動波形を測定する(ST05)。
得られた振動波形から、特徴量(変位量、存在量)を抽出する。これを第2の特徴量として記憶させる(ST06)。
ST07により、準備したテスト品の全数が終わるまでは、テスト品を交換しつつST02〜ST06を繰り返す。
ST07がNOになったら、図2に示す演算部37で単位空間を求める(ST08)。単位空間を求める方法は、第1の特徴量及び第2の特徴量を基準化し、相関係数を算出し、相関行列Rを求める。
演算部37で、この相関行列Rに基づく逆行列R−1を求め、逆行列R−1を用いてテスト品毎のマハラノビス距離を演算する。この逆行列R−1は、図10で説明する合否安定工程でも使用される重要な値である。
この単位空間に検査実績を加味して、合格基準(例えば、マハラノビス距離4.0)を定め、図2の合格基準保存部36に保存する(ST09)。
以上で合格基準が定まったので、この合格基準に基づいて、製品の合否判定が可能となった。
図10は合否判定工程のフロー図であり、逆行列R−1を読込み(ST21)、合格基準を読込む(ST22)。
製品を検査装置にセットし(ST23)、第1の回転数で回し、図2に示す振動測定手段35により振動波形を測定する(ST24)。
得られた振動波形から、図2に示す演算部37で特徴量(変位量、存在量)を抽出する。これを第1の特徴量として記憶させる(ST25)。
続いて、第1の回転数と異なる回転数である第2の回転数で回し、振動波形を測定する(ST26)。
得られた振動波形から、特徴量(変位量、存在量)を抽出する。これを第2の特徴量として記憶させる(ST27)。
次に、図2に示す演算部37で、製品の第1の特徴量及び第2の特徴量を基準化し、読込んだ逆行列R−1を用いてマハラノビス距離Dを演算する(ST28)。
演算で得たマハラノビス距離Dが、合格基準以下であるかを調べ(ST29)、YESであれば、合格と判定し、図2の表示部41に「合格」と表示させる(ST30)。又は、NOであれば、表示部41に「不合格」と表示させ(ST31)、アナウンス部42で合図音を吹鳴させるかパトライト(登録商標)を点滅させる。
以上により、製品1個毎に合否判定が行える。
表8に示す19種の不良要素について、検査を実施する場合、従来であれば、多数の検査装置を並べ、多数の検査員で検査する必要があった。これに対して、本発明では、1基の検査装置で、第1・第2の回転数で検査を施すことで、合否判定が可能となり、検査装置の数の大幅な削減と、検査員の大幅な削減と、検査時間の大幅な低減が図れる。
なお、本発明は、表8に示すような極めて多数の不良要素が想定されるディファレンシャル装置の検査に好適であるが、歯車減速機やロータリーポンプなどの回転式製品であれば、何れも検査対象物とすることができる。
また、ピストン及びピストンロッドを往復移動させるシリンダユニットも検査対象とすることができ、使用状態で振動が発生する製品であればよく、検査対象物は任意である。
また、実施例では同一項目を、回転数としたが、シリンダユニットであればピストンの移動速度が、それに相当する。すなわち、同一項目は、製品毎に適宜決定され、回転数に限定されるものではない。
本発明は、極めて多数の不良要素が想定されるディファレンシャル装置の検査に好適である。
10…製品としてのディファレンシャル装置(テスト品)、11…デフケース、13、14…デフピニオン、15、16…デフサイドギヤ、17〜20…ワッシャ、21…ピニオンシャフト、30…検査装置、31…チャック爪、33…押圧片、39…筒部材、42…回転手段、44…振動測定手段、46…合格基準保存部、47…演算部、48…合否判定部、51…表示部。

Claims (4)

  1. 使用状態で振動が発生する製品が合格基準を満たしているか否かを調べる検査方法であり、前記合格基準を作成する基準作成工程と、前記製品を検査する合否判定工程とを少なくとも含み、
    前記基準作成工程は、
    前記製品と同等品であって別の手法で合格が確認されているテスト品の振動波形を測定する工程と、得られた振動波形から特徴量を抽出する工程と、得られた特徴量をマハラノビス−タグチ法を用いて解析し前記テスト品に基づく単位空間を作成する工程と、作成された単位空間に基づいて前記合格基準を定める工程とを少なくとも含み、
    前記合否判定工程は、
    前記製品の振動波形を測定する工程と、得られた振動波形から特徴量を抽出する工程と、得られた特徴量をマハラノビス−タグチ法を用いて解析し前記製品のマハラノビス距離を演算する工程と、得られたマハラノビス距離と前記合格基準に基づいて合否判定を行う工程とからなる検査方法であって、
    前記テスト品の振動波形及び前記製品の振動波形を、同一項目で異なる二つ以上の条件で測定することを特徴とする検査方法。
  2. 前記同一項目は、前記製品を回転させる回転数であり、前記二つ以上の条件は、第1の回転数とこの回転数と異なる第2の回転数であることを特徴とする請求項1記載の検査方法。
  3. 前記製品及び前記テスト品は、デフケース内にデフピニオン、デフサイドギヤ、ピニオンシャフト及びワッシャを組付けてなるディファレンシャル装置であり、
    前記デフピニオンと前記デフサイドギヤが回され、このときに前記ディファレンシャル装置の振動が計測されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の検査方法。
  4. 使用状態で振動が発生する製品が合格基準を満たしているか否かを調べる検査装置であり、
    前記製品と同等品であって別の手法で合格が確認されているテスト品の振動波形を同一項目で異なる二つ以上の条件で測定する工程と、得られた振動波形から特徴量を抽出する工程と、得られた特徴量をマハラノビス−タグチ法を用いて解析し前記テスト品に基づく単位空間を作成する工程と、作成された単位空間に基づいて前記合格基準を定める工程とを経て定められた前記合格基準を、保存する合格基準保存部と、
    前記製品の振動波形を同一項目で異なる二つ以上の条件で測定する振動測定手段と、
    得られた振動波形から特徴量を抽出し、得られた特徴量をマハラノビス−タグチ法を用いて解析し前記製品のマハラノビス距離を演算し、得られたマハラノビス距離を前記合格基準保存部に保存されている前記合格基準に基づいて合否判定を行う合否判定部とを備えていることを特徴とする検査装置。
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