従来は、図1(a)に示すように排気ダクト等の流路100内に配置し、流路100の一方端から他方端に気体を送る流体機械の例として、換気ファン101がある。該換気ファン101は回転翼102を備え、該回転翼102を電動モータ103で矢印Aに示す方向へ回転駆動することにより、流路100の一方端から吸込んだ気流(風)を矢印Bに示すように他方端に送り、吐出している。
上記のような換気ファン101において、流路100内に換気ファン101の正常回転が維持できない圧力を有する気流(圧風)が、図1(b)、(c)の矢印C、Dに示すように、逆流方向、正流方向に侵入する場合がある。このような場合の対策として、従来は図2に示すように、圧力風遮断装置110と換気ファン保護制御装置202を備え、図3に示す制御フローにより、圧力風遮断装置110の閉鎖により流路100内に設置した換気ファン101に圧力風が及ばないように保護を行うようにしている。なお、図2は圧力風が吹かないときに通常の換気ファンの運転制御を行う換気ファン運転制御装置と、圧力風が侵入して通常の換気ファン運転制御ができなくなった時に換気ファンを圧力風から保護するための制御を行うための換気ファン保護装置からなるシステム構成を示す図で、図3は換気ファンの通常制御と保護制御を切換える条件と圧力風遮断装置110の制御方法を示す制御フローを示す図である。
図2において、110は流路100に作用する圧力風を遮断する圧力風遮断装置(ダンパ)、112は圧力風遮断装置110の開閉動作を駆動する電動モータ等の駆動機、111は換気ファン101の回転数を検出する回転数発信器、114は換気ファン101の通常制御に用いる流路100内の温度等の制御対象信号、115は通常制御に用いる遠方操作等外部からの通常制御の運転・停止の入力信号、116は通常制御に用いる遠方操作等外部からの強制的な回転数設定信号、113は通常制御と保護制御を切り換える判断に用いる流路100に作用する圧力、又は風量等の外力の状態量である。
換気ファン運転操作制御装置201は通常制御において換気ファン101の運転・停止に伴い圧力風遮断装置110への開・閉指令信号を発する圧力風遮断装置開・閉指令機能201aと、温度等の制御対象信号114の入力を得て、換気ファン101の必要回転数を演算し、求められる設定回転数信号を速度制御装置120に出力する制御機能201bを備えている。また、換気ファン保護装置202は流路100に作用する圧力、又は風量等の外力113の状態量を得て、通常制御と保護制御の切換を行う判断機能と、通常制御に優先する保護制御として圧力風遮断装置110への開・閉指令を発する圧力風遮断装置開・閉指令機能202aを備えている。また、補機盤130は圧力風遮断装置開・閉指令機能201a、或いは圧力風遮断装置開・閉指令機能202aの開・閉信号の入力を得て、圧力風遮断装置110の駆動機112へ開・閉動力を供給する。
換気ファン運転操作制御装置201は、制御対象信号発信器114、運転・停止指令信号発信器115、設定回転数を発信する設定回転数発信器116、及び回転数発信器111からの各信号を受け、圧力風遮断装置110の開・閉指令信号及び換気ファン101の設定回転数信号を生成し、それぞれの信号を圧力風遮断装置開・閉指令信号発信器201aから補機盤130へ、設定回転数発信器201bから速度制御装置120へと発信する。換気ファン保護制御装置202は外力状態量発信器113からの外力の状態量信号を受け圧力風遮断装置110を開・閉する開・閉指令信号を生成して補機盤130に発信する。補機盤130は換気ファン運転操作制御装置201の該開・閉指令信号又は換気ファン保護制御装置202からの圧力風遮断装置110の開・閉指令信号を受け、開・閉動力発信部130aから圧力風遮断装置110を駆動する電動モータ112に開・閉動力(電流)を供給する。また、速度制御装置120は換気ファン運転操作制御装置201の設定回転数発信器201bからの設定回転数信号を受け、換気ファン101の電動モータ103の回転数が設定回転数になるよう周波数の電力(電流)を電動モータ103に出力する。
図3に示す制御フローにおいて、ステップST1では換気ファン101を通常制御で運転、即ち換気ファン101の回転数が上記設定回転数になるよう運転制御している。この状態でステップST2では、外力状態量発信器113からの外力の状態量(圧力、又は風量等)Bと規定値を比較し、外力の状態量Bが許容の規定値範囲にあるかを判断し、規定値以上又は規定値以下(規定値範囲外)の場合はステップST3に移行する。ステップST3では、換気ファン保護制御を開始し、ステップST4に移行する。該ステップST4では、圧力風遮断装置110を閉とし、ステップST5に移行する。該ステップST5では、外力状態量発信器113からの外力の状態量Bと規定値を比較し、外力の状態量Bが規定値範囲内になるのを待ち、規定値範囲内になったらステップST6に移行し、圧力風遮断装置110を開き、ステップST7に移行し、換気ファン保護制御を終了する。
上記従来の換気ファン運転操作制御装置において、圧力風遮断装置110を閉じて流路100を遮断しても、換気ファン101の運転を継続する場合、換気ファン101の運転点は風量ゼロの締め切り運転となる。この場合、換気ファンの「風量−軸動力運転特性」において、軸動力を電動モータ103の定格軸動力と比較して、上回るか下回る場合について次の(1)、(2)の2つの対応に分かれる。
(1)換気ファン101の軸動力が電動モータ103の定格軸動力を上回る場合
換気ファン101の軸動力が電動モータ103の定格軸動力を上回る場合には、電動モータ103が過負荷となるため継続運転できない。換気ファン101の運転を停止せず継続運転するためには次の対応を必要としていた。
・図4に示すように、ダンパ108を備えたバイパス流路106を設置する。
圧力風遮断装置110を閉じて流路100を遮断した場合、ダンパ108を開いて送風経路を切り換え、循環送風とし、換気ファン101の定格締切運転を回避する。
・換気ファン101の回転翼102の翼形式が固定翼の場合は回転数制御により回転翼102の回転数を減じ、風量及び全圧力を減じることにより軸動力を強制的に許容範囲に減じる。
・換気ファン101の回転翼102の翼形式が可動翼方式の場合は翼角度をねかせて風量及び全圧力を減じることにより、軸動力を強制的に許容範囲に減じる。
(2)換気ファンの軸動力が電動モータ103の定格軸動力を下回る場合
換気ファン101の軸動力が電動モータ103の定格軸動力を下回る場合には、電動モータ103は過負荷とはならないので、継続運転は制約されない。但し、締切運転は換気ファン101内部で気流が大きく乱れて強制的に循環されている状態のため、流体力のアンバランスが生じ、振動が大きくなるなどの悪影響により軸受等を劣化させる等の原因となるため好ましくない。従って、時間的な制限を設ける等の処置を必要としていた。
上記従来の対応には、下記のような問題がある。
・流路100に外部から気流(風)が侵入するたびに圧力風遮断装置110を閉鎖する必要があるため、制御的に外部からの気流の侵入と、気流の影響低下を検知し、時間的余裕を確保して圧力風遮断装置110を開閉制御する必要がある。
・圧力風遮断装置110の閉鎖時には流路100は全く遮断状態となるため、換気機能が全く停止してしまう。
・圧力風遮断装置110が誤操作や故障した場合においては流路100を遮断できなくなる。この場合には程度により換気ファン101が損傷に至る。気流の方向よりそれぞれ以下の問題が発生する。
(a)逆流方向に過大な気流が侵入した場合
図5に示すように、矢印Aに示す方向に正常回転し、矢印Bに示す正流方向に気流を送っている換気ファン101に時刻t2で矢印Cに示す逆流方向の気流が侵入すると、換気ファン101の運転点(風量、圧力)は締め切り方向に移り、必要とする軸動力も換気ファン101の特性によって変化していく。更に時刻t3、t4と気流が強まると換気ファン101の内部を矢印Dに示すように逆流する領域に入り、相前後して電動モータ103の軸動力は定格軸動力値以上に達し、過負荷電流状態に至る。この過負荷状態になると、電路の保護装置により電路開閉器が開放され、以後、換気ファン101の回転体は気流の大きさに応じて無拘束にE方向に逆転し、ランナウエイ回転数に(換気ファン101が気流により回転させられる飽和回転数)に達する。
換気ファン101の逆回転数が過大になりランナウェイ回転数に至った場合には、過大な遠心力が回転部に発生し、回転翼102や回転翼102の取付部の許容強度を超えて破損に至る可能性や、軸受の破損や、主軸の回転数が固有振動数に合致して過度な振動発生による回転体の破損等に至る可能性がある。
(b)正流方向に過大な気流が侵入した場合
図6に示すように、矢印Aに示す方向に正常回転し、矢印Bに示す気流を送っている換気ファン101に時刻t2で矢印Dに示すように正流方向に気流(風)が侵入すると、換気ファン101の運転点(風量、圧力)は過大風量方向に移り、必要とする軸動力も換気ファン101の特性によって変化していく。更に時刻t3、t4と気流が強まると該気流による強制回転力が換気ファン101に回転力として作用しはじめ、著しくなると電動モータ103は発電機として仕事を始める。発電された電力は開閉器を通して逆送電(回生)を開始してしまう。回生を許容しない装置であれば、保護装置により電路開閉器が開放され、以後換気ファン101の回転体は無拘束に過回転し、ランナウェイ回転数(換気ファン101が気流により回転させられる飽和回転数)に達する。
換気ファン101の回転数が過大になった場合には、過大な遠心力が回転部に発生し、回転翼102や回転翼102の取付部の許容強度を超えて破損に至る可能性や、軸受の破損や、主軸の回転数が固有振動数に合致して過度な振動発生による回転体の破損等に至る可能性がある。
また、侵入する過大な気流が逆流方向であっても、正流方向であっても、電路開閉器が開放されてしまうと、過大な気流がおさまって速度制御装置による換気ファン101の運転が可能になっても、電路開閉器を閉じて速度制御装置をリセットしなければならないため、迅速な運転再開が阻害されることがある。更に、過大な気流が繰返し起こるような場合は、電路開閉器の開閉が繰り返され、電路開閉器の寿命を減らしてしまう。
また、圧力風遮断装置110の誤操作や故障した場合の問題を回避するためには、圧力風遮断装置110のバックアップ施設(圧力風遮断装置110の2重化等)を設ける必要がある。
図7(a)は圧力風遮断装置110としての逆止ダンパの正面図、図7(b)はA−A断面図である。圧力風遮断装置110は正面矩形状の胴体131内に上下方向に所定間隔で複数個(図では3個)の弁体132を配置した構成である。弁体132は弁体軸133に固定され、該弁体軸133の両端は胴体131に取り付けられた軸受134、134に回動自在に支持されている。図示しない換気ファンに設置された風路に該換気ファンによるファン風又は該ファン風と同方向の気流(正風)が侵入した場合、弁体132は図7(b)の矢印Bに示すように回動し、破線で示す位置となる。風路内が無風の場合は弁体132は自重により矢印Bと反対方向に回動し、図7(b)の実線で示す閉鎖位置となる。風路に逆風が侵入するとその風圧に応じた圧力で弁体132は弁座135に当接する。これにより逆風圧は換気ファン101に作用しない。
図8(a)は圧力風遮断装置110としての強制開閉機構(ここでは電動モータを備えた強制開閉機構)を有する圧力風遮断装置の正面図、図8(b)はA−A断面図である。圧力風遮断装置110は正面矩形状の胴体131内に上下方向に所定間隔で複数個(図では3個)の弁体132を配置した構成である。弁体132は弁体軸133に固定され、該弁体軸133の両端は胴体131に取り付けられた軸受134、134に回動自在に支持されている。各弁体軸133の一端には弁体開度レバー136の一端が固定され、各弁体開度レバー136の他端は弁体開度リンク137に回動自在に枢着されている。138は電動モータであり、該電動モータ138の回転軸138aの一端には駆動レバー140が固定され、該駆動レバー140の一端が弁体開度リンク137の一端に回動自在に枢着されている。
上記構成の圧力風遮断装置110において、電動モータ138を起動して駆動レバー140を矢印Cに示すように回動させることにより、弁体開度リンク137が矢印Dに示すように移動し、弁体132を弁体軸133を中心に回動させ、圧力風遮断装置110を開閉させる。風路に逆風が侵入した場合はそれを検知し、電動モータ138を起動して圧力風遮断装置110を閉鎖することにより、該逆風圧は換気ファンに作用しなくなる。
しかしながら、上記のように風路に逆止ダンパ又は強制開閉ダンパとしての圧力風遮断装置110を設けて逆風圧を遮断する方法は下記のような問題がある。
(1)逆止ダンパである圧力風遮断装置110の設置による問題点
図7に示す上記逆止ダンパである圧力風遮断装置110の構造は、ダンパ閉鎖時に逆風を許容しない構造となっている。即ち、閉鎖時に弁体132の弁座135部が合わさる(接触する)ことにより密閉性を確保する構造となっている。更に、正風側、逆風側共に無風の場合には弁体132が自重F等により自然に図9の破線で示す閉鎖位置となるようにしている。このような構造であるため、下記のような問題点がある。
・問題点1
過大な逆風が図10の矢印Eに示すように、短時間に発生する場合、弁体132の閉鎖動作が激しくなり、弁体132と弁座135が激しく衝突することになり、過大な衝撃と衝撃音が発生する。
・問題点2
逆風の発生頻度が多いと、衝撃と衝撃音を伴う閉鎖の頻度も多くなり、弁座135に該当する部分や荷重支持部が消耗・劣化して故障の確率が高くなる。
・問題点3
正風時において弁体132が風量、風圧の変動により弁体軸133を中心に揺動するため、弁体132の角度が閉鎖方向にある場合には通風抵抗を発生し、換気ファンの送風効率を阻害する。
(2)強制開閉ダンパである圧力風遮断装置110の設置による問題点
図8に示す強制開閉機構(電動、空圧、油圧等)を有する強制開閉ダンパである圧力風遮断装置110の設置の場合は、弁体132の閉鎖動作を強制的に行うため、開閉動作は強制開閉機構によって所定の開閉速度に制御することができる。よって、弁体132の閉鎖速度は一定に保てるために逆止ダンパのように衝撃を伴う弁体132の閉鎖の問題はなくなる。また、弁体開度が常に制動されているため風量、圧力の変動に対して弁体が揺動することなく固定できる。しかしながら、開閉動作を強制開閉機構により行うため下記の問題点がある。
・問題点
強制開閉ダンパである圧力風遮断装置110を動作させるためには、計装設備により逆風を検知し、制御装置により圧力風遮断装置110の動作を制御し、強制開閉機構により弁体を駆動する必要があるため、計装設備、制御設備、駆動設備のいずれかに故障が生じた場合、圧力風遮断装置110は正規の閉鎖動作に至らず、換気ファンに逆風が及んで著しい場合は破壊に至ってしまう。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図11は本発明に係る流体機械運転制御装置としての換気ファン運転操作制御装置のシステム構成を示す図である。なお、本実施例では流体機械として換気ファンを例に説明するが、本発明は流路内に配置され、該流路の一方端から他方端に流体を送る流体機械運転制御装置に適用できる。図11に示すように、流体機械運転制御装置は、換気ファン運転操作制御装置1、換気ファン保護制御装置2、速度制御装置3、機械式自動逆風圧抑制装置4を備え、風路11内に配置された換気ファン10の運転制御を行うようになっている。ここで換気ファン10は一般的な固定翼を備えた換気ファンである。換気ファン運転操作制御装置1は換気ファン10の通常の運転操作制御を行う装置で、換気ファン保護制御装置2は換気ファン10等の保護を行う装置であり、該換気ファン運転操作制御装置1と換気ファン保護制御装置2は同種類の制御装置であるが機能をわかりやすくするためにここでは区分している。
換気ファン運転操作制御装置1は、制御対象信号発信器31からの風路11内の温度等の制御対象検出信号、運転・停止指令信号発信器32からの運転・停止指令信号、設定回転数発信器(遠方操作部)33からの設定回転数信号、及び回転数発信器27からの換気ファン10の実測回転数信号を受け、換気ファン10の設定回転数信号を生成し、設定回転数発信器1aから速度制御装置3に該設定回転数信号を送信するようになっている。
換気ファン保護制御装置2は、フリーラン指令信号発信器2a、再起動指令(増速)信号発信器2b、保護制御開始信号発信器2c、保護制御終了信号発信器2dを備え、外力状態量発信器37からの圧力、又は風量等の外力の状態量検出信号、回転数発信器27からの換気ファン10の実測回転数信号、インバータ制御部36からの出力回転数信号、及びインバータ出力部35から電動モータ17に出力される電力(電流)信号を受けるようになっている。
また、換気ファン保護制御装置2は、換気ファン10の電動モータ17の電力(電流)の回生や、過負荷になる等電気的な障害が発生した場合において、電動モータ17や速度制御装置3や電路等の設備を保護する必要がある場合に、フリーラン指令信号発信器2aから速度制御装置3にフリーラン指令信号を出力して電気的障害から設備を保護する制御を行う。更に換気ファン保護制御装置2は、速度制御装置3に電力を供給する動力配線上流部の電路開閉器を開放しない状態を維持する制御を行う。
また、換気ファン保護制御装置2は、換気ファン運転操作制御装置1に保護制御開始信号発信器2cを介して保護制御を開始したことを知らせ通常制御を中断させる機能や、外力状態量発信器37で検出した圧力、又は風量の外力の状態量からフリーランを終了することを可能とする条件が整ったことを確認して、再起動指令信号発信器2bから再起動指令信号を速度制御装置3に出力して、換気ファン10の電動モータ17を通常制御時の設定回転数の運転に復帰させる機能や、回転数発信器27で検出した換気ファン10の実測回転数信号により換気ファン10が通常制御時の回転数に復帰したことを検知して保護制御終了信号発信器2dを介して保護制御終了信号を換気ファン運転操作制御装置1に出力する機能を備えている。
速度制御装置3はインバータ出力部35を備え、換気ファン運転操作制御装置1の設定回転数発信器1aの設定回転数信号を受けて、インバータ制御部36で換気ファン10の回転数が設定回転数になる周波数信号を生成してインバータ出力部35に出力する。インバータ出力部35は該周波数信号を受けて設定回転数になる周波数の電力(電流)を換気ファン10の電動モータ17に供給する。これにより換気ファン10の回転翼15は正回転(矢印Aに示す方向に回転)し、換気ファン10のケーシング内を通って、該ケーシングに接続された風路11の一方端から他方端に向って矢印Bに示すように風(気流)を送る。
また、速度制御装置3は、換気ファン保護制御装置2のフリーラン指令信号発信器2aからのフリーラン指令信号を受け、インバータ出力部35から換気ファン10の電動モータ17に供給する電力を無くして無拘束とし、電動モータ17の回転部を含む換気ファン10の回転体を自由に回転できる状態、即ち回転体をフリーラン状態とするフリーラン機能を備えている。また、速度制御装置3は、換気ファン保護制御装置2の再起動指令信号発信器2bからの再起動指令信号を受けてインバータ出力部35の出力電力を換気ファン10の電動モータ17に供給する。
機械式自動逆風圧抑制装置4は、風路11に矢印Cに示す方向の過大逆風圧が侵入し、換気ファン10が許容値以上の過回転(逆転)とならないように、逆風の侵入があれば風圧により自動的に作動し、風圧に応じた通風抵抗を設定する装置であり、後に詳述するように風圧を得て機械的に動作する機構、即ち動作のための動力と制御を外部から必要としない機構を備えている。なお、風路11において、逆風圧が換気ファン10に許容値以上の過回転(逆転)を起すほどの圧力にならないことが明らかな場合には、機械式自動逆風圧抑制装置4の設置を省略することもできる。また、過大な逆風圧に対して風路11を遮断してしまってよい場合には、前記背景技術において説明したような圧力風遮断装置を設置しても良い。また、図11において、矢印Dは正風の方向を示す。
図12は上記換気ファン運転操作制御装置の制御フローを示す図である。先ずステップST11では、換気ファン10の通常制御、即ち速度制御装置3は換気ファン10の回転数が換気ファン運転操作制御装置1の設定回転数発信器1aからの設定回転数になる周波数の電力(電流)をインバータ出力部35から換気ファン10の電動モータ17に供給する制御を行う。ステップST12では、回転数発信器27からの換気ファン10の実測回転数をNとし、該実測回転数Nに対するフリーラン移行基準、即ち図13(a)、(b)に示すように、許容電力(電流)値範囲を演算して、低電力(電流)側規定値ALと高電力(電流)側規定値AHを求める。
ステップST13では、インバータ出力部35から電動モータ17に供給される電力値(電流値)をAとし、“フリーラン”の移行基準処理、即ち回生電流自体の検知、若しくは、回生を回避すべき電流値条件の検知A<AL、そして、過負荷(過電流)を回避すべき電流値条件の検知A>AHを調べ、いずれかが成立する(OR)場合にはステップST14に移行する。該ステップST14では、換気ファン10の保護制御を開始し、ステップST15に移行する。これと同時に換気ファン10の通常制御は中断する。
ステップST15では、換気ファン保護制御装置2のフリーラン指令信号発信器2aから速度制御装置3にフリーラン指令信号を送信してステップST16に移行する。ステップST16では、外力状態量発信器37で検出した外力の状態量(圧力、又は風量)Bを規定値と比較し、外力の状態量Bが規定値内に復帰するのを待って、規定値内に復帰したら、即ち図13(c)に示すように外力の状態量Bが低圧側外力基準値(−)BLと高圧側外力基準値(+)BHの間内になったらステップST17に移行する。
ステップST17では、換気ファン10の回転方向を検出し、該回転方向によって、フローを分岐する。回転方向が逆転の場合にはステップST18に移行する。ステップST18では、換気ファン10の回転数(逆転)が規定値内まで減速したことを検出した後、ステップST20に移行し、フリーランを終了し、その後、ステップST21に移行する。該ステップST21では、換気ファン保護制御装置2はその再起動指令信号発信器2bから再起動指令信号を速度制御装置3に出力して換気ファン10の再起動を行い、ステップST23に移行する。前記ステップST17で換気ファン10の回転方向が正転の場合にはステップST19に移行し、フリーランを終了し、その後、ステップST22に移行する。該ステップST22では、換気ファン10が回転中であってもその回転数から再起動を行い、ステップST23に移行する。該ステップST23では、換気ファン10の増速を行い、ステップST24に移行する。ステップST24では、換気ファン10の回転数を設定回転数にする制御を行い通常制御へ復帰すると共に、ステップST25に移行して換気ファンの保護制御を終了する。
また、速度制御装置3には電力回生機能が付属されているものもあり、この場合には回生側(回転体側)のフリーランの移動基準値を回生可能な容量までとし、正転側の過回転時には可能な範囲の動力(電力)回収を行うこともできる。この場合、ステップST13では、回生電流の検知は基準から除外し、ALは負の電流値(回生可能な電流値)として設定される。
また、フリーランが終了した時点で再起動可能な回転数に低回転数側に制約がある場合には、自由に回転している換気ファン10の回転翼15を迅速に停止させるため、回生制動により回転翼15及び電動モータ17の回転部からなる回転体の回転を停止させることもできる。
また、圧力、又は風量の状態量の変動状況が著しく、規定値の範囲内外に大きく振れる場合には、保護制御の移行とその終了が繰り返されるハンチング現象に陥る可能性もあるため、この場合にはハンチング現象を回避する手段としてフリーラン指令から通常制御に復帰のための外力の状態量確認までに保持時間を設ける等の処置も付加することができる。
図14は本発明に係る換気ファン運転操作制御装置のシステム構成例を示す図である。図14に示す換気ファン運転操作制御装置が図11に示す換気ファン運転操作制御装置と異なる点は、図14の換気ファン運転操作制御装置では換気ファン保護制御装置2に、フリーラン制動指令信号発信器2eを設け、フリーランによる換気ファン10の回転体の回転数が規定範囲内に復帰したらフリーラン終了として速度制御装置3にフリーラン制動指令信号を送信するようになっている点である。他は図11の換気ファン運転操作制御装置と同一である。
図15は図14に示す換気ファン運転操作制御装置の制御フローを示す図である。先ずステップST31では、換気ファン10の通常制御を行う。ステップST32では、回転数発信器27からの実測回転数をNとし、該実測回転数Nに対する許容電力(電流)値範囲の低電力側規定値ALと高電力側規定値AHを演算して求め(図13(a)、(b)参照)、ステップST33に移行する。ステップST33では、インバータ出力部35から電動モータ17に供給される電力値(電流値)をAとし、“フリーラン”の移行基準処理、即ち回生電流自体の検知、若しくは、回生を回避すべき電流値条件の検知A<AL、そして、過負荷(過電流)を回避すべき電流値条件の検知A>AHを調べ、いずれかが成立する(OR)場合にはステップST34に移行する。該ステップST34では、換気ファン10の保護制御を開始し、ステップST35に移行する。これと同時に換気ファン10の通常制御は中断する。
ステップST35では、換気ファン保護制御装置2のフリーラン指令信号発信器2aから速度制御装置3にフリーラン指令信号を送信してステップST36に移行する。ステップST36では、保護制御の移行とその終了が繰り返されるハンチング現象を防止するため、タイマー等で所定のフリーラン保持時間を設定し、該フリーラン保持時間経過後にステップST37に移行する。ステップST37では、外力状態量発信器37で検出した外力の状態量Bを規定値と比較し、規定値内に復帰したか、即ち外力の状態量Bが低圧側外力基準値(−)BLと高圧側外力基準値(+)BHの間に復帰(図13(c)参照)したかを判断し、規定値内に復帰したら、ステップST38に移行する。
ステップST38では、フリーラン終了し、ステップST39に移行する。該ステップST39では、換気ファン10の回転方向を検出し、回転方向によって、フローを分岐する。回転方向が逆転の場合にはステップST40に移行する。該ステップST40では、換気ファン保護制御装置2のフリーラン制動指令信号発信器2eから速度制御装置3にフリーラン制動指令信号を送信し、惰性回転している換気ファン10の回転数制動(減速動作)を行いステップST42に移行する。ステップST42では、換気ファン10の回転数が規定値内まで減速したことを検出した後、ステップST43に移行する。ステップST43では、換気ファン保護制御装置2の再起動指令信号発信器2bから再起動指令信号を速度制御装置3に出力して換気ファン10の再起動を行い、ステップST44に移行する。また、前記ステップST39で、換気ファン10の回転方向が正転の場合にはステップST41に移行する。該ステップST41では、換気ファン10が回転中であってもその回転数から再起動を行い、ステップST44に移行する。
ステップST44では、換気ファン10の増速を行い、ステップST45に移行する。ステップST45では、換気ファン10の回転数を設定回転数にする制御を行い、通常制御へ復帰すると共に、ステップST46に移行して換気ファンの保護制御を終了する。
図16は換気ファン10が矢印A方向に定格回転数で回転し、矢印B方向に100%の正風が風路11を流れている状態にある風路11に矢印B方向と同方向の正風(気流)が侵入した場合の換気ファン10に及ぶ圧力(ファンに及ぶ圧力)(Pa)、換気ファン10の風量(ファン風量)(m3/min)、換気ファン10の回転数(ファン回転数)(min-1)、換気ファン10の軸動力(kW)、換気ファン10のトルク(N・m)、及び換気ファン10の電動モータ17の電流値であるファン電流値(A)の関係を示す図である。図示するように、ファンに及ぶ圧力(Pa)が負圧側に時刻t1から時刻t2、時刻t3、時刻t4と増大し、時刻T5で最大となり、時刻t6、時刻t7、時刻t8と減少し、時刻t9で収束している。
ファン風量(m3/min)は時刻t1では通常状態であり、ファンの正流側に外部から付加される圧力の強さが大きくなる時刻t2、時刻t3につれて増大する。これと同時に、換気ファン10に必要なファン軸動力は外部から圧力がマイナス側に付加されることにより逆に軽減される方向へ作用する。ファン回転数が一定に維持されていることによりファントルク(N・m)もファン軸動力と同様に軽減される方向へ作用する。ファン電流値(A)もファン軸動力(kW)の低下に応じて低下する方向へ作用する。ここで下限の規定電流値(AL)より下回るG点に達すると通常制御は中断され、保護制御が開始され、換気ファン10はフリーラン状態となる。フリーラン状態にある間は換気ファン10の回転体は無拘束状態にあり、ファンに及ぶ圧力(Pa)に応じたランナウェイ回転数で回転し、時刻t4で増大し、時刻t5のE点で最大となる。同様に時刻t6、時刻t7とファンに及ぶ圧力(Pa)の低下に応じて減少していく。保護制御下にある時刻t3から時刻t7間は換気ファン10への電力供給が停止されるためファン軸動力(kW)、ファントルク(N・m)、ファン電流値(A)は0であるが、この間はインバータのフリーラン機能により電源の開閉器を開放せずに継続することが可能である。外力の状態量であるファンに及ぶ圧力がF点で規定値より低下すると、保護制御は終了され、通常制御に復帰する。回転数は任意に有するものがインバータから電力供給により再起動・再加速され規定回転数に復帰する。時刻t8でファンに及ぶ圧力(Pa)は減少し、全ての状態量が時刻t9で定格値、或いは、+100%に復帰する。
図17は換気ファン10が矢印A方向に定格回転数で回転し、矢印B方向の100%の正風が風路11を流れている状態にある風路11に、矢印Cに示す正風と逆方向の逆風が侵入した場合の換気ファン10に及ぶ圧力(ファンに及ぶ圧力)(Pa)、換気ファン10の風量(ファン風量)(m3/min)、換気ファン10の回転数(ファン回転数)(min-1)換気ファン10の軸動力(kW)、換気ファン10のトルク(N・m)、及び換気ファン10の電動モータ17の電流値であるファン電流値(A)の関係を示す図である。図示するように、ファンに及ぶ圧力(Pa)が正圧側に時刻t1から時刻t2、時刻t3、時刻t4と増大し、時刻t5で最大となり、時刻t6、時刻t7、時刻t8と減少し、時刻t9で収束する。
ファン風量(m3/min)は時刻t1では通常状態であり、換気ファン10の逆流側に外部から付加される風圧(ファンに及ぶ圧力(Pa))の強さが大きくなる時刻t2、時刻t3につれて増大する。これと同時に、換気ファン10に必要なファン軸動力は外部から風圧が付加されることにより増大する方向へ作用する。ファン回転数が一定に維持されることによりファントルク(N・m)もファン軸動力と同様に増大する方向へ作用する。ファン電流値(A)も軸動力の増大に応じて増大する方向へ作用する。ここでファン電流値が上限側の規定電流値(AH)を上回るK点に達すると通常制御は中断され、保護制御が開始され、換気ファン10はフリーラン状態となる。フリーラン状態にある間は換気ファン10の回転体は無拘束状態にある。ここで機械式自動逆風抑制制御装置4が備わっている場合には、換気ファン10はファンに及ぶ圧力(Pa)から機械式自動風圧抑制装置4にて減圧された圧力に応じたランナウェイ回転数で回転し、時刻t4で増大し、時刻t5のH点で最大となる。同様に時刻t6、時刻t7と換気ファン10に及ぶ圧力の低下に応じて減少していく。保護制御下にある時刻t3から時刻t7間は換気ファン10への電力供給が停止されるためファン軸動力、ファントルク、ファン電流値は0であるが、この間はインバータ出力部35のフリーラン機能により電源の開閉器を開放せずに継続することが可能である。外力の状態量37である換気ファン10に及ぶ圧力がJ点で規定値より低下すると、保護制御は終了され、通常制御に復帰する。回転数はインバータ出力部35からの電力供給により再起動・再加速され規定回転数に復帰する。時刻t8でファンに及ぶ圧力(Pa)は減少し、全ての状態量が時刻t9で定格値、或いは、+100%に復帰する。また、機械式自動逆風圧抑制装置4の通風抵抗値を調整することで、換気ファン10の逆転側の回転数は0、或いは、極めて低速な範囲に抑制することが可能となる。
以上、本発明に係るフリーラン制御機能を用いた流体機械の運転制御について詳細に説明した。本発明では、このフリーラン機能を用いることで、流路内部に外部から過大な圧力流体が侵入した場合の電気的な障害の発生を電路開閉器を開放することなく回避することができ、圧力流体が落ち着いた時点で速やかに流体機械を通常運転に復帰させ流体流を送ることができる。更に、通常運転に戻る際も、過大な圧力流体が正風方向であった場合は、無拘束で回転していた換気ファンの回転を生かして運転が始められるし、逆転方向であった場合も、換気ファンに対する制動を速やかにかけることができ、通常運転へ速やかに復帰することができる。また、フリーラン制御機能を用いた流体機械の運転制御には、以下に詳細に説明する逆風圧抑制装置を組み合わせることで、更なる効果を奏することができる。
図18、図19は本発明に係る機械式自動逆風圧抑制装置4の構成例を示す図であり、図18は逆風圧が作用する前の逆風圧抑制装置を、図19は逆風圧が作用した後(通風抵抗が最大)の逆風圧抑制装置をそれぞれ示す。なお、図18及び図19において、(b)は(a)のB−B断面を、(c)は(a)のA−A断面を示す。本機械式自動逆風圧抑制装置4は、逆風圧抑制機構40と、弁体開度自動制御機構50を備えている。
逆風圧抑制機構40は、断面矩形状で両端にフランジ41aを設けた胴体41を備え、該胴体41の内部に複数本(図では5本)の弁体42が配置された構成である。各弁体42にはそれぞれ弁体軸43が固定されている。各弁体軸43は該弁体軸43が胴体41を貫通する貫通部に設けた弁体軸受44により、その両端部が支承され胴体41に対して回動自在になっている。弁体42の断面における断面重心は、弁体42の軸芯に一致しているのが望ましく、これにより、弁体42の回動が円滑になり、また弁体42の翼の自重による余計な回転モーメントが弁体軸43にかかることを抑制できる。各弁体軸43の両端部にはそれぞれ弁体開閉レバー45の一端が固定され、更に各弁体開閉レバー45の他端はそれぞれ弁体開閉リンク46に回動自在に取り付けられている。
弁体開度自動制御機構50はバネ材51を備え、バネ材51の一端は弁体開閉リンク46の一端に固定され、バネ材51の他端はブラケット52を介して胴体41に固定された支持部材53に固定されている。矢印Cに示す方向の逆風が無く、換気ファン10による矢印Bに示す方向のファン風と矢印Dに示す方向の正風のみの場合は、各弁体42は図18(b)に示すようにファン風と同じ方向(図では上下方向)に向く姿勢となって、並列する。この状態では、逆風圧抑制機構40の通風抵抗は最小となり、ファン風は最小の通風抵抗を受けて風路11内を流れる。なお、逆風圧抑制機構40の設置方向により、どの部材の自重等により通風抵抗最少となる方向に弁体42が並ぶのかは異なってくる。本実施形態例では、通風抵抗最少時の弁体42は鉛直方向に向くように(つまりファン風の通風方向も鉛直方向)なっている。設置方向によって、逆風がないときに弁体42が通風抵抗最少の方向になるように、弁体開閉レバー45、や弁体開閉リンク46の自重、バネ材51の反力が調整される。
図18の状態から、図19に示すように逆風が風路11に侵入すると、後述するように各弁体42は逆風圧を受け、各弁体42、弁体開閉レバー45及び弁体開閉リンク46は弁体開度自動制御機構50のバネ材51の弾性力に抗して回動する。風圧が所定値以上となると各弁体42は図19(a)、(b)に示すように、それぞれ逆風に直交する方向(図では水平方向)に向く姿勢となって並列する。この状態で逆風圧抑制機構40の通風抵抗は最大となり、換気ファン10に作用する逆風圧は最大に抑制される。この通風抵抗が最大となっても弁体42と弁体42の間には所定寸法の隙間Gがあり、弁体42と弁体42とは互いに接触することがない。
図20(a)〜(d)はそれぞれ逆風圧抑制機構40の弁体42の断面形状例を示す図である。図20(a)は弁体42の後端部に逆風の方向に対して所定の角度で傾斜する傾斜部42aを設けた形状の弁体、図20(b)は弁体42の片側に逆風の方向に対して所定の角度で傾斜した傾斜面部42bを設けた形状の弁体、図20(c)は弁体42の断面を翼形状とした弁体、図20(d)は弁体42を逆風の方向に対して所定角度αだけ傾斜して配置された弁体を示す。このように、弁体42に傾斜部42a、傾斜面部42bを設けるか、或いは弁体42の断面を翼形状とするか、又は弁体42を逆風の方向に対して所定角度αだけ傾斜させることにより、風路11内に無風又はファン風が流れている状態から逆風が侵入した場合、弁体軸43を中心に矢印Fに示す方向に回動する初期回動力を速やかに発生する。
上記初期回動力により各弁体42が速やかに所定開度回転した後は、大きい逆風の圧力を受け大きい回動力が発生する。この回動力と各弁体42、弁体開閉レバー45及び弁体開閉リンク46の重量とバネ材51の弾性力とのバランスにより、各弁体42の開度が決まり、これにより弁体42と弁体42との間隔が決まり、逆風圧抑制機構40に所定の通風抵抗が発生する。
換気ファン10が設置される風路11に上記構成の逆風圧抑制機構40を設けることにより、逆風の風圧に応じて逆風圧抑制機構40の通風抵抗が変化して、換気ファン10への逆風力を抑制できる。更に逆風圧力が所定値を超え、逆風圧抑制機構40の弁体42の弁開度が最大となり通風抵抗が最大となっても、弁体42と弁体42の間に所定寸法の間隙Gがあり、風路11は完全に閉鎖された状態とならない。また、通風抵抗が最大となっても、弁体42と弁体42とが互いに接触(衝突)しない。これにより風路11に強い圧力の逆風が頻繁に侵入しても弁体42と弁体42の接触(衝突)による騒音や破損という問題が発生しない。また、風路11も完全閉鎖とならない。
上記構成の逆風圧抑制機構40において、弁体軸43に弁体開度自動制御機構50から弁体開閉リンク46及び弁体開閉レバー45を具備するリンク機構を介して機械的なねじり力(回転力)(ここではバネ材51の弾性力)を加えている。抑制する逆風の圧力(逆風力)の大きさ(弁体42の前後の圧力差)と弁体42の動きと開度特性が一定となるようにする。図21は弁体軸のトルク特性を説明するための図で、同図(a)は弁体42の弁開度θを示し、同図(b)は弁体42の前後の差圧を一定とした時の弁体軸トルク特性例を示す。また、図22は逆風の風量Qに対する弁開度θをA、B、C(%)(C>B>A)の一定とした場合の弁体軸トルク特性を示す。弁体開度自動制御機構50は弁体42の変位によって発生する制御力が一定となる機構とする。ここではバネ材51の弾性力で制御力が一定な特性となるようにしている。
本弁体開度自動制御機構50では、各弁体軸43を対偶とする弁体開閉レバー45及び弁体開閉リンク46を備えたリンク機構を構成することで、各弁体42の動作角度(弁体開度θ)を統一することが可能となる。ここでは弁体軸43の開度θに変換された弁体開閉リンク46の変位を制御する。過渡的な弁体42の変位速度変動を抑制したい場合にはショックアブソーバー等の抑制機構を附加する。弁体開度自動制御機構50の取付位置は、逆風圧抑制機構40や弁体開度自動制御機構50の大きさや維持管理性を考慮し、弁体開度自動制御機構50の胴体41の外部に独立して設置することも可能な構成とする。風路11を通る風の風量が零の状態においても、弁体開度自動制御機構50の拘束力により弁体42の初期角度を強制的に保持することが可能な構成とする。
弁体開度自動制御機構50に風路11の密閉性を求められない場合には、図23に示すように通風抵抗が最大となる弁体開度、即ち弁体42が逆風に対して直交する位置であっても、弁体42と弁体42の間に所定寸法の間隙Gがあり、風路11は完全に閉鎖された状態とならない構造としている。
また、弁体開度自動制御機構50の弁体42に固定する弁体軸43の位置の弁体42の中心からのずれ、即ちオフセットの度合いを調整することにより、弁体開度自動制御機構50にて支持する弁体42の発生回転力を加減することを可能としている。図24は弁体軸のオフセット位置による弁体42の回転力の関係を示す図で、図24(a)はオフセットの大きい場合を、図24(b)はオフセットの小さい場合を示す。
図24(a)において、Lは弁体42の全長を、L1は弁体軸43の中心から弁体42前端までの長さを、L2は弁体軸43の中心から弁体42後端までの長さを示す。相殺範囲Laでは弁体軸43の中心とする左右で発生する回転力が相殺されるから、該相殺範囲を除いた範囲が回転力発生有効範囲Lbとなる、ここで発生する回転力(トルク)Taは、
L2
Ta=∫ P・W・l・dl
-L1
=(1/2)P・W・(L2 2−L1 2)
となる。
図24(b)において、Lは弁体42の全長を、L3は弁体軸43の中心から弁体42前端までの長さを、L4は弁体軸43の中心から弁体42後端までの長さを示す。相殺範囲では弁体軸43の中心とする左右で発生する回転力が相殺されるから、該相殺範囲を除いた範囲が回転力発生有効範囲となる、ここで発生する回転力(トルク)Tbは、
L4
Tb=∫ P・W・l・dl
-L3
=(1/2)P・W・(L4 2−L3 2)
となる。但し、Pは逆風Cの圧力(Pa)、Wは弁体42の幅を示す。回転力の関係はTa>Tbとなる。このように弁体42に逆風Cが作用して発生する回転力は弁体42に固定する弁体軸43の位置の弁体42の中心からのずれ、即ち弁体軸43のオフセット位置を調整することにより調整できる。
本発明に係る機械式自動逆風抑制装置の逆風圧抑制機構は、図18〜図24に示す構成のものに限らず、急激で過大な逆風圧が及んだ場合に遅れを生じさせることなく、その逆流の換気ファンへの作用を十分に抑制する機構であれば、他の構成の逆風圧抑制機構でもよい。以下に逆風圧抑制機構の他の構成例を説明する。
図25、図27は、本発明に係る機械式自動逆風抑制装置の逆風圧抑制機構の他の構成例を示す図である。図25、図27において、(b)は(a)のB−B断面を、(c)は(a)のA−A断面を示す。また、図25、図27は弁体閉状態を示す。本機械式自動逆風圧抑制装置4’の逆風圧抑制機構40’は、断面矩形形状で両端にフランジ41aを設けた胴体41を備え、該胴体41の内部に複数本(図では5本)の弁体42が配置され、各弁体42には弁体軸43が固定され、各弁体軸43は弁体軸受44により胴体41に対して回動自在に支持されている点は、図18〜図24に示す逆風圧抑制機構40と同じである。また、弁体42の断面における断面重心は、弁体軸43の軸芯に一致していること、弁体42が弁体軸43を中心に通風方向に対して開閉動作を行うことにより、逆風圧を抑制する機能と、逆風圧が及んだ場合、弁体42の断面形状、傾斜角度等により所定の回転方向に初動回転力が加わる構造である点も、逆風圧抑制機構40と同じである。
本逆風圧抑制機構40’が、逆風圧抑制機構40と異なる点は、弁体開閉リンク46の両端近傍に配置された衝撃吸収機構(開側)54、衝撃吸収機構(閉側)55、弁体42に初期閉鎖方向回転力を付与する初期閉鎖方向回転力付加装置57、ストッパープレート58、ストッパー支持バー60を備えたストッパー機構が設けられている点である。本逆風圧抑制機構40’では、弁体軸43の回転範囲を連結している弁体開閉リンク46の回転動作を逆風圧抑制機構40のように弁体開度自動制御機構50等で拘束することなく、弁体42の断面重心と弁体軸43の軸芯が図26に示すように一致していることにより、無風圧状態においては弁体42の回転位置は可動回転範囲内で無拘束浮遊の状態となっている。そして弁体42の可動範囲の最端位置(全閉・全開)では、弁体開閉リンク46の端部で衝撃吸収機構(開側)54及び衝撃吸収機構(閉側)55で拘束されるようになっている。
弁体42の断面形状は図26に示すように、断面長手方向において片側(上流側翼長L1)が短く、反対側(下流側翼長L2)が長いこと、即ち弁体軸43の軸芯を挟んで片側と反対側の寸法が異なる(L2>L1)構造である。弁体42をこの構造とすることにより、矢印Cに示す方向の逆風圧が弁体42に及んだ場合、弁体軸43の軸芯を境として弁体42の長手方向の受圧面積が異なる。これにより弁体42の回転モーメントは受圧面積の広い側(下流側)が狭い側(上流側)に勝り、強制回転力が生じ弁体42は閉じる方向に回動する。弁体42は開方向の端部位置(開側の衝撃吸収機構54の拘束位置)にあっても、初期閉鎖方向回転力付加装置57によりその断面長手方向の軸が正風/逆風に対して初期傾斜角度θだけ傾いているが、弁体42の断面形状は矢印Dに示す正風方向においては大きな抵抗とはならない極力抵抗を低減した弁体断面形状である。
衝撃吸収機構(開側)54及び衝撃吸収機構(閉側)55は、弁体開閉リンク46が逆風圧によって、又は逆風圧から正風圧に戻って急激に動作し、該衝撃吸収機構(開側)54又は衝撃吸収機構(閉側)55に衝突した際、衝突衝撃力や、衝突衝撃音を吸収・抑制する衝撃吸収作用を奏するもので、弁体開閉リンク46の端部と可動回転範囲の両最端位置近辺で当接(係合)し、弁体開閉リンク46の可動回転範囲を拘束する位置に設けている。この衝撃吸収機構(開側)54及び衝撃吸収機構(閉側)55は、バネ部材54a、バネ部材55a等を有する減衰機構を組み合わせた構造となっており、弁体開閉リンク46の端部が衝突してから最端位置までの範囲において、弁体開閉リンク46に当接(係合)し、その動きを抑制する。
逆風圧抑制機構40’は、上記のように構成されていることから、図18〜図24に示す逆風圧抑制機構40では逆風圧の大きさに応じて弁体42の開度(角度)が自動調整されるのに対して、逆風圧の大きさに係わらず弁体42の開度を完全閉鎖位置まで閉鎖する。逆風圧抑制機構40’では、弁体42の断面における断面重心が弁体軸43の軸芯に一致していることに加え、可動範囲内の殆どの範囲で弁体42の回動が抑制されないため、急激な逆風圧の流入に対して応答が速い。
また、逆風圧抑制機構40’には、想定以上の圧力風により弁体軸43に過大なねじり応力が付加される。この過大なねじり応力を抑制するために、ストッパー機構が設けられている。このストッパー機構は、各弁体42に3箇所ずつ、六角形状のストッパープレート58が弁体軸43に対して長手方向に設けられていて、その一角(弁体42の正風方向下流側で、弁体42の閉動作回動方向にある角)に弁体側ストッパー62が設けられている。また、胴体41には、ストッパープレート58と同じ面上に配置されるようにストッパー支持バー60が設けられ、弁体側ストッパー62と係合(当接)する位置に胴体側ストッパー61が設けられている。衝撃吸収機構(閉側)55に弁体開閉リンク46の端部が衝突し、最大変位位置近傍で弁体の一部として弁体と一体に回動する弁体側ストッパー62と胴体側ストッパー61が当接(係合)してそれ以上のストッパープレート58の変位を拘束することで、弁体軸43への過大なねじり応力が及ぶことを抑制することができる。また、両ストッパー61、62の当接(係合)位置は、弁体開閉リンク46と衝撃吸収機構(閉側)55とが係合して弁体42の急激な制動による衝撃を吸収した後、弁体42の開度が最大となる位置までの間にあることが望ましい。なお、このストッパ機構の構成は、図18〜図24に示す逆風圧抑制機構40にも適用できる。
また、逆風圧抑制機構40’には、急激で過大な圧力風が及んだ場合に弁体42の閉鎖側への回転動作に遅れが生じないようにするために、弁体42の断面形状、傾斜角度等により所定の回転方向に初動回転力を加える構造に加え、無風状態から逆流方向の風流が生じたと同時に弁体42を閉鎖動作に強制的に導く装置として初期閉鎖方向回転力付加装置57を設けている(図25参照)。この初期閉鎖方向回転力付加装置57は、弁体42の閉鎖位置から若干閉じる方向の位置までの変位に対して強制的な閉鎖力が加わるものである。この閉鎖力の大きさは換気ファン10の定格正流風において図26に示すように弁体42に生じる開方向への力により開側へ適切な角度まで戻される程度の大きさであるものとする。
初期閉鎖方向回転力付加装置は、図25に示す逆風圧抑制機構40’に限らず、図27に示す逆風圧抑制機構40’のように弁体42以外の空力により回転力を付加する初期回転力付加装置64でもよい。この初期回転力付加装置64では、ストッパープレート58上に、弁体42とは方向を違えて翼板が取り付けられた構成であり、この翼板が逆風圧を受けると弁体42の閉方向に初期回転力が発生する構成となっている。
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、逆風圧抑制機構40においては、各弁体が逆風圧に応じた弁開度になり、また、逆風圧抑制機構40’においては各弁体の動作に対する衝撃吸収が機能する構成であれば、弁体開閉リンク46により各弁体を連結せず、各弁体が独立して回転動してもよい。また、弁体の数も、本実施形態では複数としたが、流路形状や想定される逆風圧の大きさなどによっては、弁体を1つだけ設ける構成で十分な効果が得られる場合もある。なお、直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用効果を奏する以上、本願発明の技術範囲である。