JP2015000021A - 細胞内cAMP濃度を制御する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞内cAMP濃度を時間的に自由自在に制御する方法を提供すること。
【解決手段】光活性化アデニル酸シクラーゼ遺伝子及び改変ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞であって、改変ルシフェラーゼ遺伝子によってコードされる改変ルシフェラーゼは、cAMP結合ドメインが挿入されており、cAMPのcAMP結合ドメインへの結合により、改変ルシフェラーゼがルシフェリンと反応可能となるようタンパク質構造が変化し、改変ルシフェラーゼの発光量が増大する、細胞を利用する。
【選択図】なし
【解決手段】光活性化アデニル酸シクラーゼ遺伝子及び改変ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞であって、改変ルシフェラーゼ遺伝子によってコードされる改変ルシフェラーゼは、cAMP結合ドメインが挿入されており、cAMPのcAMP結合ドメインへの結合により、改変ルシフェラーゼがルシフェリンと反応可能となるようタンパク質構造が変化し、改変ルシフェラーゼの発光量が増大する、細胞を利用する。
【選択図】なし
Description
本発明は、細胞内cAMP濃度を制御する方法に関する。
環状アデノシン一リン酸(cAMP)は、細胞内情報伝達におけるセカンドメッセンジャーとして重要な役割を果たしている。細胞内情報伝達の概略は以下の通りである。Gタンパク質共役受容体にリガンドが結合すると、Gタンパク質のGDP−GTP交換反応が起こり、Gタンパク質のGαサブユニットとGβγサブニットが分離する。Gαサブユニットはアデニル酸シクラーゼを活性化し、アデニル酸シクラーゼはcAMPを産生する。cAMPはAキナーゼを活性化し、活性化したAキナーゼは種々のタンパク質をリン酸化する他、低分子量Gタンパク質の活性調節因子であるEpac(グアニンヌクレオチド交換因子)の活性化に働き、またcAMP依存性イオンチャンネル(CNG−channel)の開閉も制御するなど、様々な細胞機能の調節に寄与することが知られている。
細胞内情報伝達のメカニズムを解明するため、細胞内cAMP濃度を強制的に上昇させる手段が考えられており、例えば、細胞膜透過性を向上させたcAMPアナログである8−Br−cAMP及びアデニル酸シクラーゼを直接活性化してcAMPの産生を高めるフォルスコリンが挙げられる。しかしながら、これらの試薬は、試薬を添加してから細胞内cAMP濃度が上昇するまで数分から数十分以上もの時間がかかる。また、ひとたび細胞内cAMP濃度を上昇させた場合、数時間待たないとcAMP濃度が減少せず、繰り返し実験を行うことができないという問題点がある。すなわち細胞内でのcAMP濃度とその存在時間の調節精度には限界が存在するのである。さらに上記試薬類はいずれも液性因子であるため、体液・培養液内での拡散が不可避で、特定の細胞だけを狙ってのcAMPの調節は難しい。
細胞内cAMP濃度を強制的に上昇させる別の手段としてcaged cAMPがある。細胞内にインジェクションされたcaged cAMPは、光照射により分解しcAMPを細胞内に放出するため、光照射後すぐにcAMP濃度を上昇させられるという利点がある。しかしながら、インジェクションは細胞へのストレスになるという問題点があり、また、最初にインジェクションした量しかcAMPを放出できないため、繰り返し実験を行うことができないという問題点がある。さらにcaged cAMPは水への溶解度が低く有機溶剤の併用が不可避だが、この溶剤の細胞毒性も無視できない。またcaged cAMPの開裂操作に用いる紫外線が細胞に傷害をもたらす危険も常に伴う。
Stierlら、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, VOL. 286, NO. 2, pp. 1181-1188,January 14, 2011
Isekiら、Nature, VOL. 415, pp. 1047-1051, February 28, 2002.
本発明の課題は、細胞内cAMP濃度を時間的に自由自在に制御する方法を提供することである。すなわち、細胞内cAMP濃度を上昇させたいときに上昇させ、減少させたいときに減少させ、一定の範囲に維持したいときに維持する、といったことが可能となる方法を提供することが本発明の課題である。
本発明者らは、光活性化アデニル酸シクラーゼ遺伝子及び改変ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞を利用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
光活性化アデニル酸シクラーゼは、ミドリムシの光逃避行動の光センサーとして発見されたタンパク質であり、暗所においては不活性な状態であり、光照射時のみアデニル酸シクラーゼ活性を有しcAMPを産生できる。また、上記改変ルシフェラーゼはcAMP結合ドメインが挿入されており、cAMPのcAMP結合ドメインへの結合により、改変ルシフェラーゼがルシフェリンと反応可能となるようタンパク質構造が変化し、改変ルシフェラーゼの発光量が増大するよう設計されている。この2つのタンパク質をコードする遺伝子が導入された細胞に光を照射すると、光の照射量に応じて光活性化アデニル酸シクラーゼがcAMPを産生する。産生されたcAMPは改変ルシフェラーゼを活性化し、改変ルシフェラーゼが発光する。改変ルシフェラーゼの発光量をリアルタイムに測定することで、細胞内cAMP濃度をリアルタイムに検出することができる。検出したcAMP濃度に基づいて、細胞に照射する光の強度及び照射間隔を調整することで、細胞内cAMP濃度を自由自在に制御することが可能となる。
すなわち、本発明は、光活性化アデニル酸シクラーゼ遺伝子及び改変ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞であって、改変ルシフェラーゼ遺伝子によってコードされる改変ルシフェラーゼは、cAMP結合ドメインが挿入されており、cAMPのcAMP結合ドメインへの結合により、改変ルシフェラーゼがルシフェリンと反応可能となるようタンパク質構造が変化し、改変ルシフェラーゼの発光量が増大する、細胞を提供する。
上記改変ルシフェラーゼ遺伝子は、配列番号4又は5のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、cAMP存在下でルシフェラーゼの発光量が増大する性質を有するタンパク質をコードする遺伝子であってよく、また、配列番号6、7又は8のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、cAMP存在下でVenusの発光量が増大する性質を有するタンパク質をコードする遺伝子であってよい。
また、本発明は、細胞内cAMP濃度を制御するための光照射条件を決定する方法であって、上記細胞を準備する工程と、上記細胞に光を照射する工程であって、光照射により光活性化アデニル酸シクラーゼはcAMPを産生し、産生されたcAMPに応じて改変ルシフェラーゼは発光する、工程と、改変ルシフェラーゼの発光量を測定する工程と、改変ルシフェラーゼの発光量に基づいて細胞内cAMP濃度変化を計測し、光照射条件と当該光照射条件下における細胞内cAMP濃度変化とを関連付けることにより、細胞内cAMP濃度を制御するための光照射条件を決定する工程と、を含む方法を提供する。
さらに、本発明は、細胞内cAMP濃度を制御する方法であって、上記方法で決定された光照射条件で、上記細胞に光を照射する工程を含む方法を提供する。
本発明によれば、細胞内のcAMP濃度を自由自在に制御することが可能となる。
(光活性化アデニル酸シクラーゼ遺伝子)
光活性化アデニル酸シクラーゼ(PAC:Photoactivatedadenylyl cyclase又はPhotoactivated adenylate cyclase)遺伝子の由来は特に限定されず、真核生物由来でも、原核生物由来でもよい。真核生物として、例えば、ミドリムシ(Euglena gracilis)、Eutreptirlla,Eutreptia,Colacium及びKhawkinea等のユーグレナ目藻類、並びに鞭毛性アメーバNeagleria gruberi 等のNeagleria属微生物が挙げられる。原核生物として、例えば、Beggiatoa等のガンマプロテオバクテリア、Oscillatoria及びPseudanabaena等のシアノバクテリア、並びにTurneriella等のスピロヘータが挙げられる。
光活性化アデニル酸シクラーゼ(PAC:Photoactivatedadenylyl cyclase又はPhotoactivated adenylate cyclase)遺伝子の由来は特に限定されず、真核生物由来でも、原核生物由来でもよい。真核生物として、例えば、ミドリムシ(Euglena gracilis)、Eutreptirlla,Eutreptia,Colacium及びKhawkinea等のユーグレナ目藻類、並びに鞭毛性アメーバNeagleria gruberi 等のNeagleria属微生物が挙げられる。原核生物として、例えば、Beggiatoa等のガンマプロテオバクテリア、Oscillatoria及びPseudanabaena等のシアノバクテリア、並びにTurneriella等のスピロヘータが挙げられる。
PACとは、BLUF(sensor of Blue Light Using FAD)ドメイン及びシクラーゼ触媒ドメインを有する、天然又は人工的なタンパク質をいう。様々な生物においてPACをコードする遺伝子が見つかっており、PACのアミノ配列全体の同一性は低く、例えば30%以下の場合もあるが、すべてのPACは、BLUFドメイン及びシクラーゼ触媒ドメインを保有している。
BLUFドメインは、FADが結合するドメインであり、FADを利用した青色光の感知に関与するドメインである。様々な生物のPACのBLUFドメインのアミノ酸配列アライメントを図1に示す。BLUFドメイン中に、すべての生物において共通したアミノ酸(保存アミノ酸)を見出すことができ(非特許文献2)、図1において星印で表されている。BLUFドメイン全体の同一性は低くとも、保存アミノ酸が正しく配置されている限りBLUFドメインの機能を維持される。したがって、BLUFドメインとは、これらの保存アミノ酸の一部又は全部が正しく配置されたドメインを意味する。BLUFドメインの保存アミノ酸は、図1に示すように15個存在する。BLUFドメインは、好ましくは10個、11個、12個、13個、14個又は15個の保存アミノ酸が正しく配置されており、最も好ましくは15個の保存アミノ酸が正しく配置される。
シクラーゼ触媒ドメインは、ATPをcAMPに変換するドメインである。様々な生物のPACのシクラーゼ触媒ドメインのアミノ酸配列アライメントを図2に示す。シクラーゼ触媒ドメイン中に、すべての生物において共通したアミノ酸(保存アミノ酸)を見出すことができ(非特許文献2)、図2において星印で表されている。シクラーゼ触媒ドメイン全体の同一性は低くとも、保存アミノ酸が正しく配置されている限りシクラーゼ触媒ドメインの機能を維持される。したがって、シクラーゼ触媒ドメインとは、これらの保存アミノ酸の一部又は全部が正しく配置されたドメインを意味する。シクラーゼ触媒ドメインの保存アミノ酸は、図2に示すように10個存在する。シクラーゼ触媒ドメインは、好ましくは7個、8個、9個又は10個の保存アミノ酸が正しく配置されており、最も好ましくは10個の保存アミノ酸が正しく配置される。
PACの具体例として、ベギアトアのPACについて説明する。ベギアトアのPAC(bPAC又はBsPACとも呼称)は、350アミノ酸からなり、1つのBLUFドメイン及び1つのシクラーゼ触媒ドメインを有している。bPACのアミノ酸配列を配列番号1に示す。配列番号1の2〜95番目のアミノ酸がbPACのBLUFドメインであり、配列番号1の151〜281番目のアミノ酸がbPACのシクラーゼ触媒ドメインである。配列番号1の5、7、9、31、38、40、47、49、52、53、65、68、70、71及び86番目のアミノ酸がBLUFドメイン中で保存されている保存アミノ酸である。配列番号1の192、193、197、205、215、230、247、251、259及び270番目のアミノ酸がシクラーゼ触媒ドメイン中で保存されている保存アミノ酸である。
PACの別の具体例として、ミドリムシのPACについて説明する。ミドリムシのPACは2つのαサブユニットと2つのβサブユニットからなるヘテロ4量体である。αサブユニット(PACa)は1019アミノ酸からなり、βサブユニット(PACb)は859アミノ酸からなる。PACa及びPACbのアミノ酸配列を配列番号2及び3にそれぞれ示す。αサブユニット及びβサブユニットは、2つのBLUFドメインF1及びF2と、2つのシクラーゼ触媒ドメインC1及びC2と、を有している。
配列番号2の55〜148番目のアミノ酸がPACaのF1ドメインであり、配列番号2の467〜559番目のアミノ酸がPACaのF2ドメインである。また、配列番号2の204〜332番目のアミノ酸がPACaのC1ドメインであり、配列番号2の615〜744番目のアミノ酸がPACaのC2ドメインである。配列番号2の58、60、62、86、93、95、102、104、107、108、120、123、125、126及び140番目のアミノ酸がF1ドメイン中で保存されている主要アミノ酸であり、配列番号2の470、472、474、496、503、505、512、514、517、518、530、533、535、536及び550番目のアミノ酸がF2ドメイン中で保存されている主要アミノ酸である。配列番号2の245、246、250、258、268、283、300、304、312及び323番目のアミノ酸がC1ドメイン中で保存されている保存アミノ酸であり、配列番号2の655、656,660,668,678,693,711,715,723及び734番目のアミノ酸がC2ドメイン中で保存されている保存アミノ酸である。
配列番号3の56〜149番目のアミノ酸がPACbのF1ドメインであり、配列番号3の471〜563番目のアミノ酸がPACbのF2ドメインである。また、配列番号3の205〜333番目のアミノ酸がPACbのC1ドメインであり、配列番号2の619〜748番目のアミノ酸がPACbのC2ドメインである。配列番号3の59、61、63、87、94、96、103、105、108、109、121、124、126、127及び141番目のアミノ酸がF1ドメイン中の保存アミノ酸であり、配列番号3の474、476、478、500、507、509、516、518、521、522、534、537、539、540及び554番目のアミノ酸がF2ドメイン中の保存アミノ酸である。配列番号3の246、247、251、259、269、284、301、305、313及び324番目のアミノ酸がC1ドメイン中の保存アミノ酸であり、配列番号3の659、660、664、672、682、697、715、719、727及び738番目のアミノ酸がC2ドメイン中の保存アミノ酸である。
ミドリムシのPAC遺伝子を細胞に導入する場合、ヘテロ4量体、αサブユニット及びβサブユニットのいずれをコードする遺伝子であってよい。
また導入する細胞の種類に応じて、コドンの最適化を行ってもよい。例えば、導入する細胞が哺乳類由来の細胞である場合、哺乳類に最適化したコドンとなるよう遺伝子配列を改変することが好ましい。コドンの最適化方法は当業者にとって周知であり、種々のソフトウェアを利用することが可能である。
(改変ルシフェラーゼ遺伝子)
改変ルシフェラーゼはルシフェラーゼのN末端ドメインとC末端ドメインの間にcAMP結合ドメインが挿入されている。cAMPの非存在下では、ルシフェリンとルシフェラーゼが反応しない構造となっている。cAMPがcAMP結合ドメインへ結合することにより、改変ルシフェラーゼのタンパク質構造が変化し、ルシフェリンとルシフェラーゼが反応可能となり、ルシフェラーゼの発光量が増大する。このような改変ルシフェラーゼは、例えば、特表2011−520466号公報に記載されている。
改変ルシフェラーゼはルシフェラーゼのN末端ドメインとC末端ドメインの間にcAMP結合ドメインが挿入されている。cAMPの非存在下では、ルシフェリンとルシフェラーゼが反応しない構造となっている。cAMPがcAMP結合ドメインへ結合することにより、改変ルシフェラーゼのタンパク質構造が変化し、ルシフェリンとルシフェラーゼが反応可能となり、ルシフェラーゼの発光量が増大する。このような改変ルシフェラーゼは、例えば、特表2011−520466号公報に記載されている。
ルシフェラーゼの由来は特に限定されず、例えば、甲虫、コメツキムシ、ホタル、ウミシイタケ及びバクテリアのいずれであってもよい。cAMP結合ドメインの由来は特に限定されず、例えば、AキナーゼのcAMP結合ドメインであるRI−α、RI−β、RII−α及びRIIβB、並びにグアニンヌクレオチド交換因子であるEpac1及びEpac2を用いることができる。
cAMP結合ドメインとルシフェラーゼのN末端ドメイン及び/又はC末端ドメインとは、適切なペプチドリンカーで結合されていてもよい。
このような改変ルシフェラーゼ遺伝子は、例えば、特表2011−520466号公報の記載に基づいて作製することができ、また、市販されている製品pGloSensor 22F cAMP Plasmid又はpGloSensor 20F cAMP Plasmid(いずれもプロメガ社)を利用することも可能である。これらのプラスミドのGenBank登録番号は、それぞれ、GU174434及びEU770615である。
pGloSensor 22F cAMP Plasmid及びpGloSensor 20F cAMP Plasmidに由来する改変ルシフェラーゼのアミノ酸配列を配列番号4及び5にそれぞれ示す。
改変ルシフェラーゼを導入する場合、配列番号4又は5のアミノ酸配列と90%以上、95%以上、98%以上又は100%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、cAMP存在下でルシフェラーゼの発光が増大する性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を利用することが好ましい。
別の改変ルシフェラーゼとして、Saito et al., "Luminescentproteins for high-speed single-cell and whole-body imaging", NatureCommunications, Vol. 3, pp.1262 (2012)に記載のNano−lantern(cAMP)を利用することもできる。Nano−lantern(cAMP)は、黄色蛍光タンパク質Venus及びウミシイタケ ルシフェラーゼの融合タンパク質であり、cAMP結合ドメインがルシフェラーゼ中に挿入されている。cAMPがcAMP結合ドメインへ結合することにより、Nano−lantern(cAMP)のルシフェラーゼのタンパク質構造が変化し、ルシフェリンとルシフェラーゼが反応可能となる。活性化したルシフェラーゼとVenusの間でBRET(生物発光共鳴エネルギー移動)が生じ、Venusの発光量が増大する。
Nano−lantern(cAMP)は、Nano−lantern(cAMP−0.4)、Nano−lantern(cAMP−1.6)及びNano−lantern(cAMP−3.3)の3種類が存在し、GenBnak登録番号は、それぞれ、JN859499.1、JN859500.1及びJN859501.1である。Nano−lantern(cAMP)のアミノ酸配列を、配列番号6、7及び8にそれぞれ示す。
改変ルシフェラーゼを導入する場合、配列番号6、7又は8のアミノ酸配列と90%以上、95%以上、98%以上又は100%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、cAMP存在下でVenusの発光が増大する性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を利用することが好ましい。
(PAC遺伝子及び改変ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞)
上記遺伝子の細胞への導入は、公知の方法で行うことができる。遺伝子導入の技術として、直接注入法、粒子衝撃法、エレクトロポレーション、レーザー照射法、ソノポレーション及びマグネトフェクション等の物理的方法、カチオン性ポリマー、リン酸カルシウム及びカチオン性脂質等を利用した化学的方法並びにウイルスを利用した生物学的方法が挙げられる。
上記遺伝子の細胞への導入は、公知の方法で行うことができる。遺伝子導入の技術として、直接注入法、粒子衝撃法、エレクトロポレーション、レーザー照射法、ソノポレーション及びマグネトフェクション等の物理的方法、カチオン性ポリマー、リン酸カルシウム及びカチオン性脂質等を利用した化学的方法並びにウイルスを利用した生物学的方法が挙げられる。
遺伝子を導入する細胞は特に限定されず、ヒトを含む哺乳類の細胞等の興味のある細胞であってよい。
遺伝子導入は、安定的発現及び/又は一過性発現を目的としたものであってよい。また、安定的発現は、宿主細胞のゲノムへ上記遺伝子を組み込むものであってもよく、宿主細胞のゲノムへ上記遺伝子を組み込まず、宿主細胞中にプラスミドとして存在するが、宿主細胞の細胞分裂後に娘細胞に分配されるものを用いてもよい。後者の例として、Epstein−Barr Virus(EBV)由来の複製起点OriPとEBV Nuclear Antigen 1(EBNA1)遺伝子の働きを利用したエピソーマル型ベクターが挙げられ、pEBMultiベクター(和光純薬)等の市販の製品を利用することが可能である。
(細胞内cAMP濃度の制御に用いる装置)
細胞内cAMP濃度の制御方法に使用する装置は、細胞を観察するための顕微鏡、細胞に光を照射する光源及びルシフェラーゼの発光を検出する検出器から構成される。光源は、PACを活性化できる波長を含む光を照射できるものであれば特に限定されない。PACは青色光で活性化されcAMP産生が促進されるため、例えば400〜500nmの領域の波長を含む光を照射できる光源であればよく、具体的には青色発光ダイオード等が挙げられる。また、細胞内cAMP濃度を適切に制御するために、光源は光強度を変更できることが好ましい。ルシフェラーゼの発光を検出する検出器は、ルシフェラーゼの発光の波長領域に感度があるものであれば特に限定されない。例えば、ホタルルシフェラーゼの極大発光波長は550〜560nm付近であるため、これらの領域に感度を有する検出器を利用可能である。細胞内cAMP濃度を高感度に検出し、それによって細胞内cAMP濃度を制御し易くするために、検出器として、イメージインテンシファイア及びインテリジェントビジョンセンサーカメラを組み合わせたフォトンカウンティングシステム又はEM−CCD(電子増倍型CCD)カメラを用いたフォトンカウンティングシステムを使用することが好ましい。
細胞内cAMP濃度の制御方法に使用する装置は、細胞を観察するための顕微鏡、細胞に光を照射する光源及びルシフェラーゼの発光を検出する検出器から構成される。光源は、PACを活性化できる波長を含む光を照射できるものであれば特に限定されない。PACは青色光で活性化されcAMP産生が促進されるため、例えば400〜500nmの領域の波長を含む光を照射できる光源であればよく、具体的には青色発光ダイオード等が挙げられる。また、細胞内cAMP濃度を適切に制御するために、光源は光強度を変更できることが好ましい。ルシフェラーゼの発光を検出する検出器は、ルシフェラーゼの発光の波長領域に感度があるものであれば特に限定されない。例えば、ホタルルシフェラーゼの極大発光波長は550〜560nm付近であるため、これらの領域に感度を有する検出器を利用可能である。細胞内cAMP濃度を高感度に検出し、それによって細胞内cAMP濃度を制御し易くするために、検出器として、イメージインテンシファイア及びインテリジェントビジョンセンサーカメラを組み合わせたフォトンカウンティングシステム又はEM−CCD(電子増倍型CCD)カメラを用いたフォトンカウンティングシステムを使用することが好ましい。
(細胞内cAMP濃度を制御するための光照射条件を決定する方法)
細胞内cAMP濃度を制御するための光照射条件の決定は、以下の手順で行う。
細胞内cAMP濃度を制御するための光照射条件の決定は、以下の手順で行う。
1.細胞の培地に発光基質であるルシフェリンを添加し、30分から3時間程度室温で静置する。
2.上記装置に細胞をセットする。
3.細胞に光を照射する。光照射により光活性化アデニル酸シクラーゼはcAMPを産生し、産生されたcAMP濃度に応じて改変ルシフェラーゼは発光する。光の照射条件は、細胞の種類及び遺伝子の導入効率等によって異なるが、例えば、0.2〜200μmol/m2/sの強度の光を0.1〜60秒間、細胞に照射することで、改変ルシフェラーゼの発光が観測できる程度のcAMPを産生させることが可能である。
4.改変ルシフェラーゼの発光量を検出器で測定する。改変ルシフェラーゼの発光量は光活性化アデニル酸シクラーゼが産生したcAMP量に応じて変化する。光の照射条件によって異なるが、光照射の直後から改変ルシフェラーゼの発光量すなわちcAMP濃度は上昇を開始し、2〜5分後に改変ルシフェラーゼの発光量は最大となり、5〜15分後には改変ルシフェラーゼの発光量はほぼ観測されなくなる。
5.改変ルシフェラーゼの発光量に基づいて産生されたcAMP濃度変化を計測し、光照射条件と当該光照射条件下における細胞内cAMP濃度変化とを関連付けることにより、細胞内cAMP濃度を制御するための光照射条件を決定する。cAMP濃度の算出は相対値でも絶対値でもよい。相対値である場合、改変ルシフェラーゼの発光量をそのまま利用できる。絶対値を算出する場合、既知濃度のcAMPを用いた検量線を利用することができる。光照射及び改変ルシフェラーゼの発光量の測定を複数回繰り返すことで、所望の細胞内cAMP濃度に制御するための光の照射条件を決定することがより容易となる。光の照射条件は、光強度、照射時間及び照射間隔を変更することが可能であり、例えば、光強度は0.2〜200μmol/m2/sの範囲で、照射時間は0.1〜60秒間の範囲で、照射間隔は1〜15分間の範囲で変更することが可能である。
(細胞内cAMP濃度の制御方法)
細胞内cAMP濃度の制御は、以下の手順で行う。
細胞内cAMP濃度の制御は、以下の手順で行う。
1.細胞の培地に発光基質であるルシフェリン又はセレンテラジンを添加し、2時間程度室温で静置する。
2.上記装置に細胞をセットする。
3.上記の細胞内cAMP濃度を制御するための光照射条件を決定する方法により決定された光照射条件で、細胞に光を照射する。
上記細胞内cAMP濃度の制御方法は、単一細胞において繰り返しcAMP濃度の増加及び減少を行うことが可能である。また、光の照射条件をうまく設定することで、一定範囲のcAMP濃度を維持することも可能である。
材料及び方法
(1)cAMP発光プローブ安定発現細胞株の樹立
細胞内cAMPの定量にはcAMP感受性発光プローブGloSensor(プロメガ社)を利用した。これはホタルルシフェラーゼの改変タンパク質である。本実験ではpGloSensor 22F cAMP PlasmidよりGlosensor遺伝子のORFを切り出し、これを安定発現ベクター(pEBmulti;和光純薬)にクローニングし、ヒト胎児腎臓細胞HEK293に導入し、Glosensor遺伝子を安定発現する細胞株を作製した。
細胞内cAMPの定量にはcAMP感受性発光プローブGloSensor(プロメガ社)を利用した。これはホタルルシフェラーゼの改変タンパク質である。本実験ではpGloSensor 22F cAMP PlasmidよりGlosensor遺伝子のORFを切り出し、これを安定発現ベクター(pEBmulti;和光純薬)にクローニングし、ヒト胎児腎臓細胞HEK293に導入し、Glosensor遺伝子を安定発現する細胞株を作製した。
(2)光活性化アデニル酸シクラーゼ発現ベクターの作成
ミドリムシ由来の光活性化アデニル酸シクラーゼのαサブユニット遺伝子(PACa)及びベギアトア由来の光活性化アデニル酸シクラーゼ遺伝子(bPAC)に基づき、コドンを哺乳類に最適化した遺伝子を合成した。これらの遺伝子を、EF1aプロモータを持つ哺乳類細胞用発現ベクター(pBApo−EF1a;タカラバイオ)に組み込んでPAC発現ベクター(pBApo−EF1a−mPACa及びpBApo−EF1a−mbPAC)を作製した。
ミドリムシ由来の光活性化アデニル酸シクラーゼのαサブユニット遺伝子(PACa)及びベギアトア由来の光活性化アデニル酸シクラーゼ遺伝子(bPAC)に基づき、コドンを哺乳類に最適化した遺伝子を合成した。これらの遺伝子を、EF1aプロモータを持つ哺乳類細胞用発現ベクター(pBApo−EF1a;タカラバイオ)に組み込んでPAC発現ベクター(pBApo−EF1a−mPACa及びpBApo−EF1a−mbPAC)を作製した。
(3)cAMP発光プローブ及びPAC発現細胞の調製
光照射実験の2日前にガラスボトムディシュに播種したGlosensor安定発現HEK293(1×104cells/ml)に遺伝子導入試薬Lipofectamine LTX;Invitrogen Life Technologies)を用いて、上記のPAC発現ベクター導入し、PACを一過性に発現させた。光照射実験の当日、GloSensor Reagent(発光計測のための基質:ルシフェリン)を細胞培地添加し、室温にて2時間程度静置し、細胞をcAMPの発光計測の可能な状態に整えた。
光照射実験の2日前にガラスボトムディシュに播種したGlosensor安定発現HEK293(1×104cells/ml)に遺伝子導入試薬Lipofectamine LTX;Invitrogen Life Technologies)を用いて、上記のPAC発現ベクター導入し、PACを一過性に発現させた。光照射実験の当日、GloSensor Reagent(発光計測のための基質:ルシフェリン)を細胞培地添加し、室温にて2時間程度静置し、細胞をcAMPの発光計測の可能な状態に整えた。
(4)計測機器構成及び条件
倒立顕微鏡(TE300;Nikon)のサイドポートにGaAs光電面イメージインテンシファイア(I.I.)ユニット2741−52CH及びリレーレンズA4539(浜松ホトニクス)を介してインテリジェントビジョンセンサー(IVS)カメラH327(フレームレート250fps、アレイサイズ512×512、ADコンバータ16bit;浜松ホトニクス)を用い、フォトンカウンティングシステムを構築した。対物レンズCFI S Fluor 20×/NA0.75を通して得られた像はI.I.光電面に対物レンズ倍率にて映され、さらに蛍光面の像は、1:1のリレーレンズを介してCMOSセンサーにて撮像される。
倒立顕微鏡(TE300;Nikon)のサイドポートにGaAs光電面イメージインテンシファイア(I.I.)ユニット2741−52CH及びリレーレンズA4539(浜松ホトニクス)を介してインテリジェントビジョンセンサー(IVS)カメラH327(フレームレート250fps、アレイサイズ512×512、ADコンバータ16bit;浜松ホトニクス)を用い、フォトンカウンティングシステムを構築した。対物レンズCFI S Fluor 20×/NA0.75を通して得られた像はI.I.光電面に対物レンズ倍率にて映され、さらに蛍光面の像は、1:1のリレーレンズを介してCMOSセンサーにて撮像される。
撮像条件は、I.I.コントローラのゲイン8、またIVSカメラのゲイン7、オフセット180に設定。細胞内のcAMP発光プローブ(Glosensor)が発する微弱な光を10秒ごとに積算しながら長時間にわたり観測・記録した。
さらにPACの光照射用に当該顕微鏡の光路内に青色LED(460nm)を装着し、コンデンサレンズを介してこの青色照射光を細胞に照射するシステムを作成した。LEDのオン/オフ制御(PACの光活性化操作)はIVSカメラの制御用PCのRS−232c通信ポートを介して実施した。光照射とフォトンカウンティングの制御と1台のPCに集約し、光照射と計測との間の時間差を最小に留めた。照射光の強度はコンデンサレンズ先端に挿入したNDフィルター(透過率50%,25%,12.5%,6.25%,3%)により実施した。
また、I.I.及びIVSカメラに代えて、EM−CCDカメラImagEM(C9100−13、水冷−80℃、有効画素数512×512ピクセル、暗電流0.001エレクロトン/ピクセル/秒;浜松ホトニクス)を用いたフォトンカウンティングシステムを構築した。実施例1〜5は、I.I.+IVSカメラを用いたフォトンカウンティングシステムで計測を行い、実施例6は、EM−CCDカメラを用いたフォトンカウンティングシステムで計測を行った。
(5)cAMP発光プローブ及びPAC発現細胞の光照射実験
cAMP発光計測の準備か整ったcAMP発光プローブ及びPAC発現細胞が成育するガラスボトムディッシュを暗室内の顕微鏡にセットし、赤色の安全光(>640nm)を用いて目視で焦点を合わせた。光路をカメラ側に切り替え、青色LEDにて細胞を光照射した後、すぐさまフォトンカウンティングを開始し細胞内cAMPの濃度をモニターした。フォトンカウンティングの継続時間は個々の実験目的に合わせて調節した。光照射・計測の繰り返し回数も実験目的に合わせて調節した。
cAMP発光計測の準備か整ったcAMP発光プローブ及びPAC発現細胞が成育するガラスボトムディッシュを暗室内の顕微鏡にセットし、赤色の安全光(>640nm)を用いて目視で焦点を合わせた。光路をカメラ側に切り替え、青色LEDにて細胞を光照射した後、すぐさまフォトンカウンティングを開始し細胞内cAMPの濃度をモニターした。フォトンカウンティングの継続時間は個々の実験目的に合わせて調節した。光照射・計測の繰り返し回数も実験目的に合わせて調節した。
(6)細胞内cAMP濃度の数値解析
フォトンカウンティングで取得した細胞の微弱発光画像は、ImageJ(Wayne Rasband,National Institute of Health,USA)の専用マクロプログラムによって細胞単位で自動的に数値化され解析された。
フォトンカウンティングで取得した細胞の微弱発光画像は、ImageJ(Wayne Rasband,National Institute of Health,USA)の専用マクロプログラムによって細胞単位で自動的に数値化され解析された。
実施例1
細胞を光照射(5μmol/m2/s,30秒間)し、その直後から細胞内cAMP濃度の増減をフォトンカウンティング撮影し、発光画像から単一細胞に由来する細胞内cAMP濃度の経時変化を定量した。その結果を図3に示す。縦軸は発光量すなわちcAMP濃度を表し、横軸は光照射後の時間(分)を表す。図3から明らかなように、照射直後からcAMP濃度が上昇し、約3分後にcAMP濃度が最大となり、その後cAMP濃度は減少し、約7分後にcAMP濃度は光照射前と同じレベルとなった。数分の間に細胞内cAMP濃度を増減させた事例は今までになく、非常に驚くべき結果が得られた。
細胞を光照射(5μmol/m2/s,30秒間)し、その直後から細胞内cAMP濃度の増減をフォトンカウンティング撮影し、発光画像から単一細胞に由来する細胞内cAMP濃度の経時変化を定量した。その結果を図3に示す。縦軸は発光量すなわちcAMP濃度を表し、横軸は光照射後の時間(分)を表す。図3から明らかなように、照射直後からcAMP濃度が上昇し、約3分後にcAMP濃度が最大となり、その後cAMP濃度は減少し、約7分後にcAMP濃度は光照射前と同じレベルとなった。数分の間に細胞内cAMP濃度を増減させた事例は今までになく、非常に驚くべき結果が得られた。
なお、図3は、bPAC遺伝子を導入した細胞の結果を示したが、PACa遺伝子を導入した細胞でも同様の結果が得られた。以下の実施例では、bPAC遺伝子を導入した細胞を用いた。
実施例2
同一の細胞に対して複数回の光照射を行い、単一細胞内のcAMP濃度をモニターした。光照射(2μmol/m2/s,30秒間)を10分間隔で3回繰り返したときの細胞内cAMP濃度の変化を図4に示す。図4から明らかなように、同一の細胞に光照射を複数回繰り返してもcAMP濃度の増減を制御することができ、しかも光照射のたびに同一のcAMP濃度変化のパターンを示した。
同一の細胞に対して複数回の光照射を行い、単一細胞内のcAMP濃度をモニターした。光照射(2μmol/m2/s,30秒間)を10分間隔で3回繰り返したときの細胞内cAMP濃度の変化を図4に示す。図4から明らかなように、同一の細胞に光照射を複数回繰り返してもcAMP濃度の増減を制御することができ、しかも光照射のたびに同一のcAMP濃度変化のパターンを示した。
実施例3
同一の細胞に対して複数回の光照射を行い、単一細胞内のcAMP濃度をモニターした。ただし、照射光の強度を変化させ、0.2,0.4,0.9,1.9及び5.0μmol/m2/sの強度の光を30秒間、順に10分間隔で照射を行った。その結果を図5に示す。図5から明らかなように、照射する光の強度が強いほど、cAMP濃度の最大値も大きくなった。
同一の細胞に対して複数回の光照射を行い、単一細胞内のcAMP濃度をモニターした。ただし、照射光の強度を変化させ、0.2,0.4,0.9,1.9及び5.0μmol/m2/sの強度の光を30秒間、順に10分間隔で照射を行った。その結果を図5に示す。図5から明らかなように、照射する光の強度が強いほど、cAMP濃度の最大値も大きくなった。
別の同一細胞を用いて同様の実験を複数回行ったところ、同様の結果が得られた。cAMP濃度の最大値は、照射光の強度の対数に対して直線的に増加することが分かった。
実施例4
同一の細胞に対して複数回の光照射を行い、単一細胞内のcAMP濃度を一定範囲に保持することを試みた。光照射(5μmol/m2/s,30秒間)を4分間隔で繰り返したときの細胞内cAMP濃度の変化を図6に示す。図6から明らかなように、細胞内cAMP濃度は小さな周期的変動を繰り返しながら、一定範囲で持続的に保持できることが確認された。
同一の細胞に対して複数回の光照射を行い、単一細胞内のcAMP濃度を一定範囲に保持することを試みた。光照射(5μmol/m2/s,30秒間)を4分間隔で繰り返したときの細胞内cAMP濃度の変化を図6に示す。図6から明らかなように、細胞内cAMP濃度は小さな周期的変動を繰り返しながら、一定範囲で持続的に保持できることが確認された。
実施例5
照射光の強度及び照射間隔を制御することによって、種々の濃度範囲において、細胞内cAMP濃度を保持することを試みた。同一の細胞に対して、0.2μmol/m2/s,30秒間の光照射を1分間隔で行い、次に0.9μmol/m2/s,30秒間の光照射を2分間隔で行い、最後に5.0μmol/m2/s,30秒間の光照射を4分間隔で行った。各照射条件のcAMP濃度の変化を図7に示す。
照射光の強度及び照射間隔を制御することによって、種々の濃度範囲において、細胞内cAMP濃度を保持することを試みた。同一の細胞に対して、0.2μmol/m2/s,30秒間の光照射を1分間隔で行い、次に0.9μmol/m2/s,30秒間の光照射を2分間隔で行い、最後に5.0μmol/m2/s,30秒間の光照射を4分間隔で行った。各照射条件のcAMP濃度の変化を図7に示す。
実施例6
同一の細胞に対して、光強度を固定し照射時間を変化させて光照射を行い、単一細胞内のcAMP濃度をモニターした。光強度を200μmol/m2/sとし、照射時間を1、2、4、8、16又は32秒間としたときの、細胞内cAMP濃度の変化を図8に示す。図8から明らかなように、照射時間が長いほど、cAMP濃度の最大値も大きくなった。また、照射時間8秒間の光刺激を3回繰り返したが、cAMP濃度の変化パターンは一致した。
同一の細胞に対して、光強度を固定し照射時間を変化させて光照射を行い、単一細胞内のcAMP濃度をモニターした。光強度を200μmol/m2/sとし、照射時間を1、2、4、8、16又は32秒間としたときの、細胞内cAMP濃度の変化を図8に示す。図8から明らかなように、照射時間が長いほど、cAMP濃度の最大値も大きくなった。また、照射時間8秒間の光刺激を3回繰り返したが、cAMP濃度の変化パターンは一致した。
Claims (5)
- 光活性化アデニル酸シクラーゼ遺伝子及び改変ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞であって、改変ルシフェラーゼ遺伝子によってコードされる改変ルシフェラーゼは、cAMP結合ドメインが挿入されており、cAMPのcAMP結合ドメインへの結合により、改変ルシフェラーゼがルシフェリンと反応可能となるようタンパク質構造が変化し、改変ルシフェラーゼの発光量が増大する、細胞。
- 改変ルシフェラーゼ遺伝子は、配列番号4又は5のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、cAMP存在下でルシフェラーゼの発光量が増大する性質を有するタンパク質をコードする遺伝子である、請求項1に記載の細胞。
- 改変ルシフェラーゼ遺伝子は、配列番号6、7又は8のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、cAMP存在下でVenusの発光量が増大する性質を有するタンパク質をコードする遺伝子である、請求項1に記載の細胞。
- 細胞内cAMP濃度を制御するための光照射条件を決定する方法であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞を準備する工程と、
前記細胞に光を照射する工程であって、光照射により光活性化アデニル酸シクラーゼはcAMPを産生し、産生されたcAMPに応じて改変ルシフェラーゼは発光する、工程と、
改変ルシフェラーゼの発光量を測定する工程と、
改変ルシフェラーゼの発光量に基づいて細胞内cAMP濃度変化を計測し、光照射条件と当該光照射条件下における細胞内cAMP濃度変化とを関連付けることにより、細胞内cAMP濃度を制御するための光照射条件を決定する工程と、
を含む方法。 - 細胞内cAMP濃度を制御する方法であって、
請求項4に記載の方法で決定された光照射条件で、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞に光を照射する工程
を含む方法。
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