JP2014532887A5 - - Google Patents

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切迫妊娠高血圧腎症および/またはHELLP症候群の指標としてのsFlt−1またはエンドグリン/PlGF比の動態
本発明は、診断方法および診断ツールに関する。詳細には、本発明は、妊娠対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつかどうかを診断するための、下記を含む方法に関する:a)その対象の第1および第2試料中のバイオマーカーsFlt−1またはエンドグリンおよびPlGFの量を決定する;その際、第1試料は第2試料の前に得られている;b)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第1比、および第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第2比を計算する;そしてc)その第1比と第2比の数値を比較し、それにより、第2比の数値が第1比の数値と比較して少なくとも約3倍に(by a factor of at least 3)増大していれば、対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと診断する。本発明はさらに、早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊娠対象と早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象を鑑別するための方法に関する。さらに、本発明にはこれらの方法を実施するためのデバイスおよびキットが含まれる。本発明はまた、本明細書に開示する妊娠高血圧腎症発症の最適化リスク評価を実施するためのシステム、ならびに本明細書に開示する方法を実施する際に使用する試薬およびキットに関する。
妊娠はさまざまな合併症を伴なう可能性があり、それは一方では妊婦の妊娠関連死亡に関連し、他方では新生児の罹病率および死亡率の増大をも伴なう。母体死亡は100000例の出生につき14,5例の割合であり、39歳を超える妊婦ではより高頻度であり、出血、血栓性肺塞栓症、感染症、心筋障害、ならびに心血管状態および非−心血管状態により起きる可能性があり、また高血圧性障害により起きる可能性もあり、そのうち妊娠高血圧腎症が最も高頻度である(Berg 2010, Obstretics and Gynecology: 116: 1302 - 1309)。
妊娠高血圧腎症は妊娠全体の約2〜8パーセントで合併し、世界的に母体および胎児の死亡に対する主な要因である(Duley 2009, SeminPerinatol: 33: 130-37)。妊娠高血圧腎症は、一般に妊娠関連または妊娠誘発性の高血圧症と定義される。それは高血圧症およびタンパク尿症を特徴とする。これに関して、高血圧症は2回の独立した測定において140mmHg(収縮期)−90mmHg(拡張期)以上の血圧と定義され、その際、これらの2回の測定は少なくとも6時間空けて行なわれたものである。タンパク尿症は、24時間の尿試料における300mg/dL以上のタンパク質を指標とする。しかし、妊娠高血圧腎症の定義は論争中であり、学会間で異なる可能性がある。詳細は標準医学書および各種臨床学会のガイドライン中にも見られる;たとえば、ACOG Practice Bulletin, Clinical Management Guidelines for Obstetrician - Gynecologists, no.: 33, January 2002、またはLeitlinien, Empfehlungen, Stellungnahmenof the Deutschen Gesellschaftfuer Gynaekologie und Geburtshilfe e.V., August 2008。
妊娠高血圧腎症の病因はほとんど分かっていない。しかし、それはらせん動脈のリモデリング障害に関連する胎盤機能障害により引き起こされると考えられる。妊娠高血圧腎症の発症過程で起きる血流異常が虚血を随伴し、その結果、最終的に抗血管形成因子、たとえばsFlt−1およびエンドグリン(Endoglin)が循環中へ放出される。
現在までの妊娠高血圧腎症の唯一の治療法は、早期の経膣分娩または帝王切開分娩のいずれかによる妊娠終止である。前記のように、妊娠34週目以前の妊娠高血圧腎症の症例では母体のリスクおよび胎児生存率が著しく損なわれる。したがって、出産を遅らせて、それにより新生児の生存率を改善する試みを行なうべきである。
妊娠高血圧腎症、特に妊娠20〜34週目という早い時期に起きる早発型の妊娠高血圧腎症を早期に信頼性をもって診断することは、この疾患を臨床管理するために決定的に重要である。妊娠高血圧腎症に罹患している妊婦が緊密なモニタリング、支持療法措置など特別な配慮を必要とし、重篤な妊娠高血圧腎症に進行する症例では母体−胎児集中治療室(maternal fetal intensive care unit)(MFICU)を備えた専門病院への入院が必要であることは理解されるであろう。特に、早発性妊娠高血圧腎症は、重篤な副作用およびそれに付随する通常の有害な転帰からみて、臨床医にとって難題である。さらに、妊娠高血圧腎症の早期かつ信頼性のある診断および妊娠高血圧腎症の予測は、予防または治療介入試験の計画のために決定的に重要である(Ohkuchi 2011, Hypertension 58: 859-866)。
最近になって、血管形成因子およびそのアンタゴニストが妊娠高血圧腎症の指標であることが示唆された。特に、胎盤増殖因子(Placenta growth factor)(PlGF)、エンドグリン、および可溶性fsm様チロシンキナーゼ1(soluble fms-like tyrosine kinase 1)(sFlt−1)は妊娠高血圧腎症に罹患している患者において変化することが報告された。健康な個体および妊娠高血圧腎症に罹患している患者または妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ患者における個々の因子およびそれらの変化のレポート(たとえば、下記を参照:Rana 2007, Hypertension 50: 137-142; WO2004/008946)のほかに、sFlt−1とPlGFの比またはエンドグリンとPlGFの比が診断または予後のパラメーターとして報告された。
sFlt−1とPlGFの単一の比が妊娠初期の妊娠高血圧腎症に対する予後因子として報告された(Crispi 2008, Ultrasound Obstet Gynecol 31: 303-309)。さらに、異なる妊娠時点における個々のsFlt−1とPlGFの比が、妊娠高血圧腎症のリスクと個々に相関していた(DeVivo 2008, ActaObstetricia et Gynecologica87: 837-842; Ohkuchi 2011, 前掲; Kusanovic 2009, J of Maternal- Fetaland Neonatal Medicine 22(11): 1021-1038)。さらに、それらの変化度が妊娠高血圧腎症の予後に関して調査された(Kusanovic 2009, 前掲)。
しかし、これまでに調査された比は早発型と晩発型の妊娠高血圧腎症を識別できなかった(DeVivo 2008, 前掲)。妊娠の中3半期に決定したエンドグリンとPlGFの比の勾配が早発性妊娠高血圧腎症の発症と一般的に相関すると報告されたが、見掛け上は健康な妊婦における切迫妊娠高血圧腎症の指標の報告は先行技術にはなかった。
したがって、見掛け上は健康であって切迫妊娠高血圧腎症、特に切迫した早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊婦を同定するための信頼性のあるアッセイ法はまだ得られていないが、それにもかかわらず強く要望されている。
WO2004/008946
Berg 2010, Obstretics and Gynecology: 116: 1302 - 1309 Duley 2009, Semin Perinatol: 33: 130-37) ACOG Practice Bulletin, Clinical Management Guidelines for Obstetrician - Gynecologists, no.: 33, January 2002 Leitlinien, Empfehlungen, Stellungnahmen of the Deutschen Gesellschaft fuer Gynaekologie und Geburtshilfe e.V., August 2008 Ohkuchi 2011, Hypertension 58: 859-866 Rana 2007, Hypertension 50: 137-142 Crispi 2008, Ultrasound Obstet Gynecol 31: 303-309 DeVivo 2008, Acta Obstetricia et Gynecologica 87: 837-842 Kusanovic 2009, J of Maternal- Fetal and Neonatal Medicine 22(11): 1021-1038
本発明の基礎となる技術的課題は、上記の要望を満たす手段および方法を提供することであるとみることができる。この技術的課題は、特許請求の範囲および以下に明らかにする態様により解決される。
したがって、本発明は、妊娠対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつかどうかを診断するための、下記を含む方法に関する:
a)その対象の第1および第2試料中のバイオマーカーsFlt−1またはエンドグリンおよびPlGFの量を決定する;その際、第1試料は第2試料の前に得られている;
b)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第1比、および第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第2比を計算する;
c)その第1比と第2比の数値を比較し、それにより、第2比の数値が第1比の数値と比較して少なくとも約3倍に増大していれば、対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと診断する。
本発明の方法は、好ましくはエクスビボ法である。さらに、それは前記に明白に述べたものに追加した段階を含むことができる。たとえば、さらなる段階は試料の前処理または本方法により得られた結果の評価に関するものであってもよい。本方法は手動で実施でき、あるいは自動化により支援することができる。好ましくは、段階(a)、(b)および/または(c)の全部または一部を自動化により支援することができる:たとえば、段階(a)における決定に適したロボット装置およびセンサー装置、段階(b)におけるデータ処理デバイス上のコンピューター実装−計算アルゴリズム、あるいは段階(c)におけるデータ処理デバイス上の比較および/または診断アルゴリズム。
したがって本発明はまた、好ましくは、妊娠対象を分類するための臨床予測法則に基づいてリスク評価を最適化するための、下記のものを含むシステムに関する:
a)妊娠対象からの第2試料の一部分をsFlt−1および/またはエンドグリンに対して特異的な結合親和性を含むリガンドとインビトロで接触させるように構成され、かつ妊娠対象からの試料の一部分をPlGFに対して特異的な結合親和性を含むリガンドとインビトロで接触させるように構成された分析ユニット、
b)対象からの試料の上記リガンドと接触した部分からの信号を検出するように構成された分析ユニット、
c)プロセッサーを備え、かつ操作可能な状態で上記の分析ユニット類と連絡する、コンピューティングデバイス、ならびに
d)非一時性(non-transient)の機械可読媒体であって、プロセッサーにより実行可能な複数の指示、すなわち実行した際にsFlt−1および/またはエンドグリンの量を計算し、PlGFの量を計算し、試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量から第2比を計算し、こうして計算した比を第1試料から得た第1比と比較し、それにより妊娠対象を分類するための臨床予測法則に基づいてリスク評価を最適化する指示を含む媒体。
図1は、妊娠高血圧腎症(PE)転帰患者グループおよび健康な対照に関する試験の個々の対象について、妊娠週の分布を示す。1回目の来院、2回目の来院、および来院間の日数差をボックスプロットで示す。 図2は、PEグループおよび健康な対照に関して異なる来院時のsFlt−1/PlGF比を標準目盛と対数目盛で示す。 図3は、胎齢および測定時点と比較したsFlt−1/PlGF比の差を示す。 図4は、PE/HELLPの診断までの時間をsFlt−1/PlGF比の両数値に対してプロットしたもの(左)、およびPE/HELLPグループの患者からの1回目の来院と2回目の来院におけるsFlt−1/PlGF比の勾配を示す。 図5は、異なる妊娠週におけるsFlt−1/PlGF比(A)および異なる妊娠週におけるエンドグリン(sEng)/PlGF比(B)を示す。 図6は、PEグループおよび健康な対照に関して異なる来院時のsEng/PlGF比を標準目盛と対数目盛で示す。 図7は、胎齢および測定時点と比較したsEng/PlGF比の差を示す。 図8は、PE/HELLPの診断までの時間をsEng/PlGF比の両数値に対してプロットしたもの(左)、およびPE/HELLPグループの患者からの1回目の来院と2回目の来院におけるsEng/PlGF比の勾配を示す。
本明細書中で用いる用語“妊娠高血圧腎症”は、高血圧症およびタンパク尿症を特徴とする病的状態を表わす。妊娠高血圧腎症は妊婦対象において起き、この高血圧症は妊娠誘発性高血圧症とも呼ばれる。好ましくは、妊娠誘発性高血圧症は、2回の血圧測定が140mmHg(収縮期)−90mmHg(拡張期)以上であることにより対象に存在すると同定され、その際、これらの2回の測定は少なくとも6時間空けて行なわれたものである。タンパク尿症は、好ましくは24時間の尿試料における300mg/dL以上のタンパク質により存在すると同定される。妊娠高血圧腎症は子癇、すなわち強直−間代発作または昏睡状態の出現を特徴とする致命的障害にまで進行する可能性がある。重篤な妊娠高血圧腎症に関連する症状は、24時間以内に500ml未満の乏尿、脳障害または視覚障害、肺浮腫またはチアノーゼ、心窩部痛または右上4分の1痛、肝機能障害、血小板減少症、胎児成長制限である。肝併発を伴なう妊娠高血圧腎症に罹患している対象は、さらにHELLP症候群を発症する可能性がある。したがって、本発明による妊娠高血圧腎症発症のリスクをもつ対象は、好ましくは潜在的にHELLP症候群を発症するリスクも伴なう。HELLP症候群は、有害な転帰、たとえば胎盤剥離、腎不全、肝被膜下血腫、再発性妊娠高血圧腎症、早期産に関連し、あるいは母体および/または胎児の死亡の高リスクすら伴なう。妊娠高血圧腎症および随伴症状ならびに事後疾患、たとえばHELLP症候群または子癇のさらなる詳細は、標準医学書および関連医学会のガイドライン中に見られる。詳細は、たとえばACOG Practice Bulletin, Clinical Management Guidelines for Obstetrician - Gynecologists, no.: 33, January 2002、またはLeitlinien, Empfehlungen, Stellungnahmenof the Deutschen Gesellschaftfuer Gynaekologie und Geburtshilfe e.V., August 2008中に見ることができる。妊娠高血圧腎症は最大で妊娠の10%において通常は第2または第3の3半期に起きる。しかし、若干の女性は妊娠20週目という早い時期に既に妊娠高血圧腎症を発症する。
妊娠20〜34週以内では妊娠高血圧腎症は早発性妊娠高血圧腎症とも呼ばれ、一方、妊娠34週以後に起きる妊娠高血圧腎症は遅発性妊娠高血圧腎症とも呼ばれる。早発性妊娠高血圧腎症は、通常は比較的軽症である遅発性妊娠高血圧腎症と比較して、通常はより重篤な副作用および有害な転帰を伴なうことは理解されるであろう。
妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ”という句は、妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象と比較して統計的に有意に高い可能性で、将来、予後時間ウインドウ以内に妊娠高血圧腎症を発症するであろう妊娠対象を表わす。好ましくは、その可能性は少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または最大で100%である。統計についてのさらなる詳細は本明細書の他の箇所にある。
本明細書中で用いる用語“対象”は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに関する。本発明による対象は、妊娠対象、すなわち妊婦のはずである。好ましくは、本発明による対象は、妊娠高血圧腎症の症状を示していないはずである。そのような妊娠高血圧腎症の症状は、好ましくは本明細書の他の箇所に詳述した妊娠高血圧腎症の臨床症状である。より好ましくは、それらの症状は下記のものからなる群から選択される少なくとも1つの症状を含む:心窩部痛、頭痛、視覚障害、および浮腫。しかし、本発明による対象は前記症状のうち少なくとも1つを示しており、したがって既に妊娠高血圧腎症に罹患している可能性もある。
より好ましくは、本発明による妊娠対象は妊娠の約15〜約34週目、好ましくは妊娠の約15〜約30週目である。
本発明の方法は、見掛け上は健康な妊娠対象のルーティンなスクリーニング法に使用できる。しかし、本発明により考慮される妊娠対象は、より高い妊娠高血圧腎症の罹患率をもつリスクグループに属する可能性もある。脂肪症、高血圧症、自己免疫疾患、たとえばエリテマトーデス(紅斑性狼瘡)、血栓形成傾向(栓友病)、または糖尿病に罹患している妊娠対象は、一般に妊娠高血圧腎症の有症率が高い。先の妊娠で妊娠高血圧腎症、子癇および/またはHELLP症候群に罹患した対象についても同じことが言える。さらに、初めて妊娠した高齢の女性も、妊娠高血圧腎症を発症する素因を実際に示す。しかし、妊娠高血圧腎症を発症する可能性は妊娠回数に伴なって低下する。
本明細書中で用いる用語“診断”は、対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつか否かを評価することを意味する。好ましくは、その短期間は、4週間未満、好ましくは約2〜約3週間の期間、より好ましくは約16日間の期間である。当業者に理解されるように、そのような評価は通常は、診断すべき対象の100%について正確であることを意図するものではない。しかしこの用語は、その評価が統計的に有意部分の対象(たとえば、コホート試験におけるコホート)について正確であることを要求する。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、多様な周知の統計学的評価ツール、たとえば信頼区間の決定、p−値の決定、スチューデントのt−検定、マン−ホイットニー検定などを用いて当業者がさらなる労苦なしに判定できる。詳細はDowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983中に見られる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p−値は、好ましくは0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。
用語“試料”は、体液の試料、分離された細胞の試料、または組織もしくは臓器からの試料を表わす。体液の試料は周知の手法により得ることができ、好ましくは血液、血漿、血清または尿の試料、より好ましくは血液、血漿または血清の試料を含む。組織または臓器の試料は、いずれかの組織または臓器から、たとえば生検により得ることができる。分離された細胞は、体液または組織もしくは臓器から、遠心または細胞選別などの分離法により得ることができる。好ましくは、細胞、組織または臓器の試料は、本明細書中で述べるペプチドを発現または産生する細胞、組織または臓器から得られる。
本発明の方法による“第1試料”は、“第2試料”の前に得られている。第1試料と第2試料が同じタイプの試料材料の試料であること、すなわち同じタイプの体液、細胞、組織または臓器からのものであることは理解されるであろう。さらに、第1試料は第2試料の前に、好ましくは妊娠中の2回の連続した正規の医学的検査において得られ、その際、第1試料は早い方の検査において採取され、第2試料は遅い方の検査において採取されている。
好ましくは、第1試料は第2試料の約1〜約15週間前、好ましくは約2〜約6週間前、より好ましくは約4〜約5週間前に得られている。
本明細書中で用いる用語“sFlt−1”は、可溶性形態のfms様チロシンキナーゼ1であるポリペプチドを表わす。このポリペプチドは、当技術分野で可溶性VEGF受容体1(sVEGF R1)とも呼ばれる(たとえば、下記を参照:Sunderji 2010, Am J Obstet Gynecol 202: 40e1-7)。それは、ヒト臍帯静脈内皮細胞の調整培地中で同定された。内因性sFlt1受容体は、クロマトグラフィーおよび免疫学的に組換えヒトsFlt1に類似し、[125I]VEGFを同等な高い親和性で結合する。ヒトsFlt1は、インビトロでKDR/Flk−1の細胞外ドメインとVEGF安定化された複合体を形成することが示された。好ましくは、sFlt1はKendall 1996, Biochem BiophsRes Commun 226(2): 324-328に記載されたヒトsFlt1を表わす;アミノ酸配列については、たとえば下記も参照:ヒトについてはGenebank寄託番号P17948,GI:125361、およびマウスsFlt−1についてはBAA24499.1,GI:2809071(GenebankはNCBI,USAから、www.ncbi.nlm.nih.gov/entrezで入手できる)。この用語には、前記のヒトsFlt−1ポリペプチドのバリアントも含まれる。そのようなバリアントは、前記のsFlt−1ポリペプチドと少なくとも同じ本質的な生物学的および免疫学的特性をもつ。特に、本明細書中に述べる同じ特異的アッセイ法、たとえばELISAアッセイにより、そのsFlt−1ポリペプチドを特異的に認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いてそれらを検出できれば、それらは同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を共有する。さらに、本発明に従って述べるバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失および/または付加のため異なるアミノ酸配列をもつはずであり、そのバリアントのアミノ酸配列はなお、好ましくはそれぞれその特定のsFlt−1ポリペプチドのアミノ配列と、好ましくはヒトsFlt−1の全長にわたって、少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一であることを理解すべきである。2つのアミノ酸配列間の同一度は当技術分野で周知のアルゴリズムにより決定できる。好ましくは、同一度は最適状態でアラインさせた2つの配列を比較ウインドウにわたって比較することにより決定すべきであり、その際、その比較ウインドウ内のアミノ酸配列フラグメントは、最適アラインメントのために、基準配列(付加または欠失を含まないもの)と比較して付加または欠失(たとえば、ギャップまたはオーバーハング)を含むことができる。パーセントは、両配列中に同一アミノ酸残基が現われる位置の数を決定して一致位置の数を求め、その一致位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で割り、その商に100を掛けて配列同一パーセントを求めることにより計算される。比較のための最適な配列アラインメントは、下記により実施できる: Smith 1981, Add. APL. Math. 2:482により示された局所相同アルゴリズム(local homology algorithm)、Needleman 1970, J. Mol. Biol. 48:443の相同アラインメントアルゴリズム(homology alignment algorithm)、Pearson 1988, Proc. Natl. Acad Sci. (USA) 85: 2444の類似性検索法(search for similarity method)、これらのアルゴリズムのコンピューター化実装(GAP、BESTFIT、BLAST、FAST、PASTA、およびTFASTA;Wisconsin Genetics Software Package中, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WI)、または目視検査。比較のための2つの配列が同定されると、好ましくはGAPおよびBESTFITを用いてそれらの最適アラインメントを決定し、こうして同一度を決定する。好ましくは、ギャップ重みにつき5.00、ギャップ重み長さにつき0.30のデフォルト値を用いる。前記のバリアントは、対立遺伝子バリアント、または他のいずれかの種特異的なホモログ(homolog)、パラログ(paralog)もしくはオルソログ(ortholog)であってもよい。前記のバリアントは、対立遺伝子バリアント、または他のいずれかの種特異的なホモログ、パラログもしくはオルソログであってもよい。さらに、本明細書中で述べるバリアントには、特定のsFlt−1ポリペプチドまたは前記タイプのバリアントのフラグメントまたはサブユニットが含まれる;ただし、これらのフラグメントが前記の本質的な免疫学的および生物学的特性をもつ限りにおいてである。そのようなフラグメントは、たとえばsFlt−1ポリペプチドの分解生成物であってもよい。バリアントは、本明細書中に述べる同じ特異的アッセイ法、たとえばELISAアッセイにより、そのsFlt−1ポリペプチドを特異的に認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いてそれらを検出できれば、同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を共有するとみなされる。好ましいアッセイ法を、付随する実施例に記載する。さらに、翻訳後修飾、たとえばリン酸化またはミリスチル化のため異なるバリアントが含まれる。sFlt−1は、試料において結合形もしくは遊離形で、または総sFlt−1量として検出される可能性がある。
本明細書中で用いる用語“エンドグリン”は、非還元形態で180kDa、還元後形態で95kDa、それの還元およびN−脱グリコシルされた形態で66kDaの分子量をもつポリペプチドを表わす。このポリペプチドは二量体を形成することができ、TGF−βおよびTGF−β受容体に結合する。好ましくは、エンドグリンはヒト−エンドグリンを表わす。より好ましくは、ヒト−エンドグリンはGenebank寄託番号AAC63386.1,GI:3201489に示されるアミノ酸配列をもつ。2つのエンドグリンイソ型、S−エンドグリンおよびL−エンドグリンが記載されている。L−エンドグリンはアミノ酸47個の細胞質テイルを備えた合計633個のアミノ酸からなり、一方、S−エンドグリンはアミノ酸14個の細胞質テイルを備えた600個のアミノ酸からなる。好ましくは、本発明に用いるエンドグリンは可溶性エンドグリンである。本明細書中で述べる可溶性エンドグリンは、好ましくはEP 1 804 836 B1に記載されている。さらに、本発明に従って述べるバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失および/または付加のため異なるアミノ酸配列をもつ可能性があり、そのバリアントのアミノ酸配列はなお、好ましくはその特定のエンドグリンのアミノ酸配列と、少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一であることを理解すべきである。バリアントは、対立遺伝子バリアント、スプライスバリアント、または他のいずれかの種特異的なホモログ、パラログもしくはオルソログであってもよい。さらに、本明細書中で述べるバリアントには、特定のエンドグリンまたは前記タイプのバリアントのフラグメントが含まれる;ただし、これらのフラグメントが前記の本質的な免疫学的および生物学的特性をもつ限りにおいてである。そのようなフラグメントは、たとえばエンドグリンの分解生成物であってもよい。バリアントは、本明細書中に述べる同じ特異的アッセイ法、たとえばELISAアッセイにより、そのエンドグリンポリペプチドを特異的に認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いてそれらを検出できれば、同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を共有するとみなされる。好ましいアッセイ法を、付随する実施例に記載する。さらに、翻訳後修飾、たとえばリン酸化またはミリスチル化のため異なるバリアントが含まれる。エンドグリンは、試料において結合形もしくは遊離形で、または総エンドグリン量として検出される可能性がある。
本明細書中で用いる用語“PlGF(胎盤性増殖因子)”は胎盤由来の増殖因子を表わし、それは、アミノ酸149個の長さをもち、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)の胎盤由来増殖因子様領域との相同性が高いポリペプチドである。VEGFと同様に、PlGFはインビトロおよびインビボで血管形成活性をもつ。たとえば、形質転換したCOS−1細胞に由来するPlGFの生化学的特性解明および機能特性解明により、それはインビトロで内皮細胞増殖を刺激することができるグリコシル化された二量体型の分泌タンパク質であることが明らかになった(Maqlione 1993, Oncogene8(4): 925-31)。好ましくは、PlGFはヒトPlGF、より好ましくはGenebank寄託番号P49763,GI:17380553に示されるアミノ酸配列をもつヒトPlGFを表わす。この用語には、その特定のヒトPlGFのバリアントが含まれる。そのようなバリアントは、その特定のPlGFポリペプチドと同じ本質的な免疫学的および生物学的特性をもつ。バリアントは、本明細書中に述べる同じ特異的アッセイ法、たとえばELISAアッセイにより、そのPlGFポリペプチドを特異的に認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いてそれらを検出できれば、同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を共有するとみなされる。好ましいアッセイ法を、付随する実施例に記載する。さらに、本発明に従って述べるバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失および/または付加のため異なるアミノ酸配列をもつはずであり、そのバリアントのアミノ酸配列はなお、好ましくはその特定のPlGFポリペプチドのアミノ酸配列と、少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一であることを理解すべきである。2つのアミノ酸配列間の同一度は、当技術分野で周知である本明細書の他の箇所に記載するアルゴリズムにより決定できる。前記のバリアントは、対立遺伝子バリアント、または他のいずれかの種特異的なホモログ、パラログもしくはオルソログであってもよい。さらに、本明細書中で述べるバリアントには、特定のPlGFポリペプチドまたは前記タイプのバリアントのフラグメントが含まれる;ただし、これらのフラグメントが前記の本質的な免疫学的および生物学的特性をもつ限りにおいてである。そのようなフラグメントは、たとえばPlGFポリペプチドの分解生成物またはスプライスバリアントであってもよい。さらに、翻訳後修飾、たとえばリン酸化またはミリスチル化のため異なるバリアントが含まれる。PlGFは、試料において結合形もしくは遊離形で、または総PlGF量として検出される可能性がある。
本明細書中で述べるペプチドまたはポリペプチドの量の決定は、量または濃度を、好ましくは半定量的または定量的に測定することに関する。測定は直接または間接的に行なうことができる。直接測定は、ペプチドまたはポリペプチド自体から得られる信号であってその強度が試料中に存在するペプチドの分子数と直接相関する信号に基づいて、ペプチドまたはポリペプチドの量または濃度を測定することに関する。そのような信号−本明細書中で時には強度信号と呼ぶ−は、たとえばペプチドまたはポリペプチドの特定の物理的または化学的特性の強度値を測定することによって得ることができる。間接測定には、二次成分(すなわち、そのペプチドまたはポリペプチド自体ではない成分)または生物学的読出し系、たとえば測定可能な細胞応答、リガンド、標識、または酵素反応生成物から得られる信号を測定することが含まれる。
本発明によれば、ペプチドまたはポリペプチドの量の決定は、試料中のペプチドの量を決定するためのあらゆる既知手段により達成できる。それらの手段は、標識分子を多様なサンドイッチ、競合その他のアッセイ様式で利用できるイムノアッセイの機器および方法が含まれる。そのようなアッセイは、ペプチドまたはポリペプチドの存在または非存在の指標となる信号を発するであろう。さらに、信号強度を、好ましくは試料中に存在するポリペプチドの量に直接または間接的(たとえば、反比例)に相関させることができる。さらに他の適切な方法は、ペプチドまたはポリペプチドに特異的な物理的または化学的特性、たとえばそれの厳密な分子質量またはNMRスペクトルを測定することを含む。それらの方法は、好ましくはバイオセンサー、イムノアッセイに連携した光学機器、バイオチップ、分析機器、たとえば質量分析計、NMR分析器、またはクロマトグラフィー機器を含む。さらに、方法にはマイクロプレートELISAに基づく方法、全自動またはロボット式イムノアッセイ(たとえば、Elecsys(商標)分析器で得られる)、CBA(酵素コバルト結合アッセイ(enzymatic Cobalt Binding Assay)、たとえばRoche−Hitachi(商標)分析器で得られる)、およびラテックス凝集アッセイ(たとえば、Roche−Hitachi(商標)分析器で得られる)が含まれる。
好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドの量の決定は、下記の段階を含む:(a)その強度がペプチドまたはポリペプチドの量の指標となる細胞応答を誘発できる細胞を、適切な期間、そのペプチドまたはポリペプチドと接触させ、(b)細胞応答を測定する。細胞応答を測定するために、試料または処理済み試料を、好ましくは細胞培養物に添加し、細胞内または細胞外応答を測定する。細胞応答には、測定可能なレポーター遺伝子発現、または物質、たとえばペプチド、ポリペプチドもしくは小分子の分泌を含めることができる。この発現または物質は、ペプチドまたはポリペプチドの量に相関する強度信号を発すべきである。好ましい態様によれば、接触、分離および測定の段階は、本明細書に開示するシステムの分析ユニットにより実施できる。ある態様によれば、それらの段階は前記システムの単一の分析ユニットにより、または互いに操作可能な状態で連絡する2以上の分析ユニットにより実施できる。たとえば、特定の態様によれば、本明細書に開示するシステムは、接触および分離の段階を実施するための第1分析ユニット、ならびに第1分析ユニットに輸送ユニット(たとえば、ロボットアーム)によって操作可能な状態で接続して測定段階を実施する第2分析ユニットを含むことができる。
同様に好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドの量の決定は、試料中のペプチドまたはポリペプチドから得られる特異的な強度信号を測定する段階を含む。前記のように、そのような信号は、質量スペクトルにみられるペプチドもしくはポリペプチドに特異的なm/z変数で観察される信号強度、またはペプチドもしくはポリペプチドに特異的なNMRスペクトルであってもよい。
ペプチドまたはポリペプチドの量の決定は、好ましくは下記の段階を含むことができる:(a)ペプチドを特異的リガンドと接触させ、(b)好ましくは、結合していないリガンドを分離し、(c)結合したリガンドの量を測定する。結合したリガンドは強度信号を発するであろう。本発明による結合には、共有結合および非共有結合の両方が含まれる。本発明によるリガンドは、本明細書に記載するペプチドまたはポリペプチドに結合するいずれかの化合物、たとえばペプチド、ポリペプチド、核酸、または小分子であってもよい。好ましいリガンドには、抗体、核酸、ペプチドまたはポリペプチド、たとえば前記のペプチドまたはポリペプチドおよびそのフラグメントに対する受容体または結合パートナー(該ペプチドに対する結合ドメインを含むもの)、ならびにアプタマー、たとえば核酸アプタマーまたはペプチドアプタマーが含まれる。そのようなリガンドを作成する方法は、当技術分野で周知である。たとえば、適切な抗体またはアプタマーの同定または作成は供給業者によっても提供される。当業者は、より高い親和性または特異性を備えたそのようなリガンドの誘導体を開発する方法に精通している。たとえば、核酸、ペプチドまたはポリペプチドにランダム変異を導入することができる。これらの誘導体を、次いで当技術分野で既知のスクリーニング法、たとえばファージディスプレー法に従って、結合について試験することができる。本明細書中で述べる抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方、ならびに抗原またはハプテンを結合できるそのフラグメント、たとえばFv、FabおよびF(ab)フラグメントが含まれる。本発明には、一本鎖抗体、および目的とする抗原特異性を示す非ヒト−ドナー抗体のアミノ酸配列をヒト−アクセプター抗体の配列と組み合わせたヒト化ハイブリッド抗体も含まれる。ドナー配列は通常は少なくともドナーの抗原結合性アミノ酸残基を含むであろうが、ドナー抗体の他の構造関連および/または機能関連アミノ酸残基も含むことができる。そのようなハイブリッドは、当技術分野で周知である幾つかの方法で作成できる。好ましくは、リガンドまたは作用剤は前記のペプチドまたはポリペプチドに特異的に結合する。本発明による特異的結合は、リガンドまたは作用剤が、分析すべき試料中に存在する他のペプチド、ポリペプチドまたは物質に実質的に結合(すなわち、それらと“交差反応”)すべきではないことを意味する。好ましくは、特異的に結合されるペプチドまたはポリペプチドは、他のいずれかの関連ペプチドまたはポリペプチドより少なくとも3倍高い、より好ましくは少なくとも10倍高い、よりさらに好ましくは少なくとも50倍高い親和性で結合されるべきである。非特異的結合は、たとえばウェスタンブロット上でのそれのサイズに従って、または試料中での相対的に高いそれの存在量によって、それをなお明白に区別および測定できるならば許容できる。リガンドの結合は、当技術分野で周知であるいずれかの方法により測定できる。好ましくは、その方法は半定量的または定量的である。ポリペプチドまたはペプチドの決定に適したさらに他の手法を以下に記載する。
第1に、リガンドの結合は、直接的に、たとえばNMRまたは表面プラズモン共鳴により測定できる。リガンドの結合の測定は、好ましい態様によれば、本明細書に開示するシステムの分析ユニットにより実施される。その後、測定した結合の量を、本明細書に開示するシステムのコンピューティングデバイスにより計算することができる。第2に、リガンドが、目的とするペプチドまたはポリペプチドの酵素活性の基質としても作用するならば、その酵素反応生成物を測定してもよい(たとえば、プロテアーゼの量は開裂した基質の量をたとえばウェスタンブロットで測定することにより測定できる)。あるいは、リガンドが酵素特性そのものを示す場合があり、その“リガンド/ペプチドまたはポリペプチド”複合体、すなわちそれぞれペプチドまたはポリペプチドが結合したリガンドを、強度信号の発生により検出できる適切な基質と接触させることができる。酵素反応生成物の測定のためには、好ましくは基質の量は飽和状態である。反応前に基質を検出可能な標識で標識化することもできる。好ましくは、適切な期間、試料を基質と接触させる。適切な期間は、検出可能な、好ましくは測定可能な量の生成物が生成するのに必要な期間を表わす。生成物の量を測定する代わりに、特定の(たとえば、検出可能な)量の生成物が出現するのに必要な時間を測定することができる。第3に、リガンドを検出および測定できる標識にリガンドを共有結合または非共有結合により結合させてもよい。標識化は、直接法または間接法により実施できる。直接標識化は、標識をリガンドに直接(共有結合または非共有結合により)結合させることを伴なう。間接標識化は、二次リガンドを一次リガンドに(共有結合または非共有結合により)結合させることを伴なう。二次リガンドは一次リガンドに特異的に結合すべきである。この二次リガンドは適切な標識と結合させることができ、および/または二次リガンドに結合する三次リガンドのターゲット(レセプター)であってもよい。二次、三次またはよりさらに高次のリガンドの使用は、信号を増強するためにしばしば採用される。適切な二次およびより高次のリガンドには、抗体、二次抗体、および周知のストレプトアビジン−ビオチン系(Vector Laboratories,Inc.)を含めることができる。リガンドまたは基質に、当技術分野で既知である1以上のタグで“タグ付け”することもできる。その際、そのようなタグはより高次のリガンドにとってのターゲットであってもよい。適切なタグには、ビオチン、ジゴキシゲニン、His−タグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、myc−タグ、インフルエンザAウイルス−ヘマグルチニン(HA)、マルトース結合タンパク質などが含まれる。ペプチドまたはポリペプチドの場合、タグは好ましくはN末端および/またはC末端にある。適切な標識は、適切な検出法により検出できるいずれかの標識である。代表的な標識には、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダン(acridan)エステル、ルミノール、ルテニウム、酵素活性標識、放射性標識、磁性標識(常磁性および超常磁性標識を含む、“たとえば、磁性ビーズ”)、および蛍光性ビーズが含まれる。酵素活性標識には、たとえば西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびその誘導体が含まれる。検出に適した基質には、ジ−アミノ−ベンジジン(DAB)、3,3’−5,5’−テトラメチルベンジジン、NBT−BCIP(4−ニトロブルーテトラゾリウムクロリドおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェート;既製原液としてRoche Diagnosticsから入手できる)、CDP−Star(商標)(Amersham Biosciences)、ECF(商標)(Amersham Biosciences)が含まれる。適切な酵素−基質の組合わせは有色反応生成物、蛍光または化学発光を生じることができ、それらを当技術分野で既知の方法に従って測定できる(たとえば、感光性フィルムまたは適切なカメラシステムを用いて)。酵素反応の測定については、前記に挙げた基準を同様に適用する。代表的な蛍光標識には、蛍光タンパク質(たとえば、GFPおよびそれの誘導体)、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセイン、およびAlexa色素(たとえば、Alexa 568)が含まれる。さらに他の蛍光標識を、たとえばMolecular Probes(オレゴン州)から入手できる。蛍光標識としての量子ドットの使用も考慮される。代表的な放射性標識には、35S、125I、32P、33Pなどが含まれる。放射性標識は、いずれか既知の適切な方法、たとえば感光性フィルムまたはホスホイメージャー(phosphor imager)により検出できる。本発明による適切な測定法には、下記のものも含まれる:沈降法(特に免疫沈降法)、電気化学発光(電気的に発生する化学発光)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、サンドイッチ酵素免疫試験、電気化学発光サンドイッチイムノアッセイ(electrochemiluminescence sandwich immunoassay)(ECLIA)、解離増強型ランタニド蛍光イムノアッセイ(dissociation-enhanced lanthanide fluoro immuno assay)(DELFIA)、シンチレーション近接アッセイ(SPA)、濁度測定、ネフェロメトリー(比濁分析)、ラテックス増強型の濁度測定もしくはネフェロメトリー、または固相免疫試験。当技術分野で周知であるさらに他の方法(たとえば、ゲル電気泳動、2Dゲル電気泳動、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、ウェスタンブロット法、および質量分析)を、単独で、または前記の標識法もしくは他の検出法と組み合わせて使用できる。
ペプチドまたはポリペプチドの量は、同様に好ましくは下記により決定できる:(a)前記に明記したペプチドまたはポリペプチドに対するリガンドを含む固体支持体を、そのペプチドまたはポリペプチドを含む試料と接触させ、(b)好ましくは、結合していないペプチドまたはポリペプチドおよび残りの試料材料を除去し、そして(c)支持体に結合しているペプチドまたはポリペプチドの量を測定する。リガンドは、好ましくは核酸、ペプチド、ポリペプチド、抗体およびアプタマーからなる群から選択され、好ましくは固体支持体に固定化された形態で存在する。固体支持体を作成するための材料は当技術分野で周知であり、特に市販のカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁性ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンのチップおよび表面、ニトロセルロースのストリップ、膜、シート、デュラサイト(duracyte)、反応トレーのウェルおよび壁、プラスチックチューブなどを含む。リガンドまたは作用剤を多種多様なキャリヤーに結合させることができる。周知のキャリヤーの例には、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および改質セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、および磁鉄鉱が含まれる。本発明の目的について、キャリヤーの性質は可溶性または不溶性のいずれであってもよい。リガンドを固定/固定化するのに適した方法は周知であり、イオン性、疎水性、共有結合性の相互作用などを含むが、これらに限定されない。本発明によるアレイとして“懸濁アレイ”を用いることも考慮される(Nolan 2002, Trends Biotechnol. 20(1): 9-12)。そのような懸濁アレイ中に、キャリヤー、たとえばマクイロビーズまたはマイクロスフェアが懸濁状態で存在する。アレイは、種々のリガンドを保有する、おそらく標識された、種々のマクイロビーズまたはマイクロスフェアからなる。そのようなアレイを調製する方法、たとえば固相化学および光不安定保護基に基づくものが一般に知られている(US 5,744,305)。
本明細書中で用いる用語“量”は、ポリペプチドまたはペプチドの絶対量、そのポリペプチドまたはペプチドの相対量または濃度、およびそれらに相関するかまたはそれらから誘導できるいずれかの数値またはパラメーターを包含する。そのような数値またはパラメーターは、それらのペプチドから直接測定により得られるあらゆる特異的な物理的または化学的特性からの強度信号値、たとえば質量スペクトルまたはNMRスペクトルにおける強度値を含む。さらに、本明細書の他の箇所に明記する間接測定により得られるすべての数値またはパラメーター、たとえばペプチドに応答した生物学的読出し系から決定される応答レベル、または特異的に結合したリガンドから得られる強度信号が包含される。前記の量またはパラメーターに相関する数値はあらゆる標準的数学操作により得られることも理解すべきである。本発明の好ましい態様によれば、“量”の決定は好ましくは開示するシステムにより行なわれ、それによればそのシステムの1以上の分析ユニットにより実施される接触および測定の段階に基づいてコンピューティングデバイスが“量”を決定する。
本明細書中で述べる用語“第1比を計算する”または“第2比を計算する”は、sFlt−1またはエンドグリンの量とPlGFの量の比を、下記により計算することに関する;それらの量を割るか、あるいはそれに匹敵する他のいずれかの数学計算であってsFlt−1またはエンドグリンの量をPlGFの量に関連づける計算を実施する。好ましくは、その比を計算するためにsFlt−1またはエンドグリンの量をPlGFの量で割る。この計算は第1および第2試料において別個に決定したそれぞれの量について実施され、これによりそれぞれ第1および第2比が得られる。
本明細書中で用いる用語“比較する”は、上記に定義した第1比を第2比と比較することを包含する。本明細書中で用いる比較は、第1比について計算した数値と第2比について計算した数値との間で行なわれるあらゆる種類の比較を表わすことを理解すべきである。本発明の基礎となる研究において、妊娠高血圧腎症を発症するリスクの増大は、第2比の数値が第1比の数値の約3倍以上に増大することと相関することが見出された。本発明の方法において述べる比較は、手動で、またはコンピューティングデバイス(たとえば、本明細書に開示するシステムの)により実施できる。
本発明の方法の段階(c)で述べる比較は、手動で、またはコンピューター支援により実施できる。これらの比の数値をたとえば互いに比較することができ、その比較は比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータープログラムにより自動的に実施できる。これらの数値の比較の結果として、第2比の数値が第1比の数値と相異する倍数(factor)を示す勾配値が得られる。比較のさらなる段階で、その勾配値が3倍に等しいか、より大きいか、またはより小さいかを決定する。勾配値が約3以上である場合(すなわち、約200%以上の増大がみられる場合)、短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクが診断されるであろう(“包含(rule-in)”)。同様に、3倍未満の勾配値(すなわち、200%未満の増大、本質的に変化のない数値、または低下がみられる場合)は、その対象は短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクがないと診断されることの指標となるはずである(“除外(rule-out)”)。この第1比と第2比の数値の比較の結果の評価も自動的に実施できる。その評価を実施するコンピュータープログラムは、目的とする評価を適切な出力フォーマットで提供するであろう。たとえば、比較の結果を生データ(絶対量または相対量)として、またある場合には言語、字句、記号または数値の形の指標として得ることができ、それらを特定の診断の指標にすることができる。この包含および/または除外診断は、本明細書に開示するシステムのコンピューティングデバイスにより、本明細書に記載するように第1比または第2比に対して計算された比の比較に基づいて得ることができる。たとえば、システムのコンピューティングデバイスは、包含または除外のうちのいずれかの指標となる言語、記号または数値の形の指標を提供できる。
本発明に関して用語“約”は、示したパラメーターまたは数値から±20%、±10%、±5%、±2%または±1%を意味する。これは、測定技術などにより生じる通常の偏差も考慮に入れる。
有利なことに、本発明の基礎となる研究において、調査した試料を採取した時点で妊娠高血圧腎症の臨床顕性症状を全くまたはわずかしか示していない妊娠対象におけるsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量の比(sFlt1/PlGF比、またはエンドグリン/PlGF比)の著しい増大は、切迫妊娠高血圧腎症、すなわち数週間という短期間以内の妊娠高血圧腎症発症、および/または切迫HELLP症候群の指標であることが見出された。さらに、リスクをもつその対象が発症する妊娠高血圧腎症は、通常はより重篤な早発性妊娠高血圧腎症タイプの妊娠高血圧腎症であることが見出された。特に、約3倍以上に増大するのは、上記の切迫妊娠高血圧腎症について、98%を超える妥当な感度および特異度で作動する信頼性のある予測指標であることが見出された。しかし、より弱い増大は、切迫妊娠高血圧腎症の発症とさほど良好には相関しなかった。注目すべきことに、上記に特定した強い増大は、前記バイオマーカーの実際の絶対量または比に関係なく予測的であった。
本発明のおかげで、切迫妊娠高血圧腎症、特に切迫した早発性妊娠高血圧腎症のリスクを、信頼性のある指標に基づいてより信頼性をもって診断することができ、この指標は対象にみられる前記バイオマーカーの実際の絶対量に依存しないと思われる。さらに、本発明の方法を診断の補助として適用すると、現在のスコアリング方式のような時間のかかる高額でやっかいな診断手段を避けることができる。妊娠高血圧腎症に罹患している妊婦に要求される集中的な特別な配慮の必要性をより良好に推測して健康管理目的のために考慮に入れることができるので、本発明の方法は健康管理に著しい有益性をもたらすはずである。
前記および下記で行なう用語の定義および説明は、本明細書および付随する特許請求の範囲に記載するすべての態様にそれに応じて適用されることを理解すべきである。
本発明方法の好ましい態様において、妊娠高血圧腎症は早発性妊娠高血圧腎症である。
したがって、本発明の方法は、特に妊娠対象が妊娠15〜30週である場合に、対象が短期間以内に早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクが高いかどうかを診断できる。前記に述べたように、早発性妊娠高血圧腎症は通常は遅発性妊娠高血圧腎症より重篤な結果をもたらし、それに罹患している対象は妊娠高血圧腎症の結果を改善するために支持措置を必要とする。たとえば、リスクをもつ対象を母体−胎児集中治療室を備えた病院に早い段階で収容することができる。
本発明方法の他の好ましい態様において、その方法はさらに、対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクが高いと診断された場合、妊娠高血圧腎症に対する少なくとも1つの支持措置を推奨することを含む。
本明細書中で用いる用語“推奨する”は、その対象に適用できると思われる支持措置またはその組合わせに関する提案を確立することを意味する。しかし、いかなるものであっても実際の療法の適用はこの用語により網羅されないことを理解すべきである。
前記に述べたように、妊娠高血圧腎症に罹患している対象には特別な医療が要求される。したがって、対象が妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと診断された場合、そのような診断はその対象に対する適切な支持措置を、予め、すなわち妊娠高血圧腎症が臨床顕性になる前に確立するのに役立つ。好ましくは、その少なくとも1つの支持措置は緊密なモニタリング、入院、降圧薬の投与、および/または生活様式推奨事項からなる群から選択される。胎児に関して、その後の早産の場合には新生児の呼吸機能改善のためにベタメタゾン投与も推奨できる。
本発明はさらに、早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊娠対象と早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象を鑑別するための、下記を含む方法に関する:
a)その対象の第1および第2試料中のバイオマーカーsFlt−1またはエンドグリンおよびPlGFの量を決定する;その際、第1試料は第2試料の前に得られている;
b)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第1比、および第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第2比を計算する;
c)その第1比と第2比の数値を比較し、それにより、第2比の数値が第1比の数値と比較して少なくとも約3倍に増大していれば、対象が早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと診断する。
好ましくは、その早発性妊娠高血圧腎症は本明細書の他の箇所に詳細に述べたように、短期間以内に発症する。
同様に好ましくは、第2試料は、妊娠の約30週目以前、すなわち妊娠の30週目より前または30週目に得られたものである。
前記で既に述べたように、早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ対象を信頼性をもって診断することは、健康管理においてきわめて重要な課題である。特に、妊娠高血圧腎症に罹患している妊婦には特別な配慮が要求され、本発明のおかげでそのような配慮の必要性をより良好に推測して健康管理の目的で考慮に入れることができる。特に、前記方法は、第2試料を妊娠30週目付近で得た場合には早発型の妊娠高血圧腎症すら同定できる。臨床顕性である妊娠高血圧腎症は普通は妊娠34週目以後に起きるので、妊娠30週目まで、すなわち第2試料を採取した時点まで妊娠高血圧腎症の症状を全くまたはわずかしか示していない妊娠対象における妊娠高血圧腎症は、おそらく非早発性の妊娠高血圧腎症と診断されるであろうということは理解されるであろう。前記方法はバイオマーカーの動態を考慮に入れるので、より信頼性をもって妊娠高血圧腎症の正確なタイプを診断できる。
本発明は一般に、妊娠対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつかどうかを診断するための、妊娠対象の第1および第2試料中のバイオマーカーsFlt−1もしくはエンドグリンおよびPlGF、またはそれに特異的に結合する検出剤の使用を考慮する。
好ましくは、これらのバイオマーカーまたはそれの検出剤は、前記方法において指摘したように、妊娠対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつかどうかを妊娠対象において診断するために使用できる。より好ましくは、第1および第2試料についてsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの比を計算し、次いでこれら2つの比間の増大または変化の倍数を決定するためにそれらの比を互いに比較すべきであり、その際、約3倍以上に増大したものを、対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと診断するための指標として使用すべきである。
さらに本発明は、一般に、早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊娠対象と早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象を鑑別するための、妊娠対象の第1および第2試料中のバイオマーカーsFlt−1もしくはエンドグリンおよびPlGF、またはそれに特異的に結合する検出剤の使用も考慮する。
好ましくは、これらのバイオマーカーまたはそれの検出剤は、前記方法において指摘したように、早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊娠対象と早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象を鑑別するために使用できる。より好ましくは、第1および第2試料についてsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの比を計算し、次いでこれら2つの比間の増大または変化の倍数を決定するためにそれらの比を互いに比較すべきであり、その際、約3倍以上に増大したものを、対象が早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつことの指標として使用すべきである。
本発明のある観点において、妊娠対象を分類するための臨床予測法則に基づくリスク評価を最適化する補助を確立するための方法が考慮され、この方法は下記を含む:
a)下記により第1比を求める:(i)第1試料と、sFlt−1、エンドグリンおよび/またはPlGFに特異的に結合する検出剤(複数の検出剤)を、検出剤と試料からのマーカーとの複合体を形成させるのに十分な期間、接触させる、(ii)形成された複合体(単数または複数)の量を測定し、その際、形成された複合体(単数または複数)の量は試料中に存在するそれらのマーカーの量に比例する、(iii)形成された複合体(単数または複数)の量を、試料中に存在するマーカーの量を反映するマーカー量に換算する、そして(iv)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量から第1比を計算する;
b)下記により第2比を求める:(i)第2試料と、sFlt−1、エンドグリンおよび/またはPlGFに特異的に結合する検出剤(複数の検出剤)を、検出剤と試料からのマーカーとの複合体を形成させるのに十分な期間、接触させる、(ii)形成された複合体(単数または複数)の量を測定し、その際、形成された複合体(単数または複数)の量は試料中に存在するそれらのマーカーの量に比例する、(iii)形成された複合体(単数または複数)の量を、試料中に存在するマーカーの量を反映するマーカー量に換算する、そして(iv)第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量から第2比を計算する;
c)第1比と第2比を比較する;そして
d)段階c)で行なった比較の結果に基づいて、妊娠対象を分類するための臨床予測法則に基づくリスク評価を最適化するための補助を確立する。
本発明の他の観点において、妊娠対象を分類するための臨床予測法則に基づくリスク評価を最適化する補助を確立するための、下記のものを含むシステムが考慮される:
a)妊娠対象からの第2試料の一部分をsFlt−1および/またはエンドグリンに対して特異的な結合親和性を含むリガンドとインビトロで接触させるように構成され、かつ妊娠対象からの試料の一部分をPlGFに対して特異的な結合親和性を含むリガンドとインビトロで接触させるように構成された分析ユニット、
b)対象からの試料の上記リガンドと接触した部分からの信号を検出するように構成された分析ユニット、
c)プロセッサーを備え、かつ操作可能な状態で上記の分析ユニット類と連絡する、コンピューティングデバイス、ならびに
d)非一時性の機械可読媒体であって、プロセッサーにより実行可能な複数の指示、すなわち実行した際にsFlt−1および/またはエンドグリンの量を計算し、PlGFの量を計算し、試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量から第2比を計算し、こうして計算した比を第1試料から得た第1比と比較し、それにより妊娠対象を分類するための臨床予測法則に基づいてリスク評価を最適化する指示を含む媒体。
適切な検出剤は、ある観点において、本発明の方法により調査すべき対象の試料中の少なくとも1種類のマーカーに特異的に結合する抗体、すなわちsFlt−1に、エンドグリンに、またはPlGFに結合する検出剤であってもよい。適用できる他の検出剤は、ある観点において、試料中の少なくとも1種類のマーカーに特異的に結合するアプタマーであってもよい。さらにある観点において、検出剤と少なくとも1種類のマーカーの間で形成された複合体から、形成された複合体の量を測定する前に試料を分離する。したがって、ある観点において、検出剤を固体支持体に固定化してもよい。さらにある観点において、固体支持体上に形成された複合体から、洗浄溶液の適用により試料を分離することができる。形成された複合体は試料中に存在する少なくとも1種類のマーカーの量に比例するはずである。適用する検出剤の特異度および/または感度が、試料に含まれる特異的に結合されうる少なくとも1種類のマーカーの比例度を規定することは理解されるであろう。この決定を実施できる方法についてのさらなる詳細も、本明細書の他の箇所にある。形成された複合体の量を、試料中に実際に存在する量を反映する少なくとも1種類のマーカーの量に換算すべきである。そのような量は、ある観点において、本質的に試料中に存在する量であってもよく、あるいは他の観点において、形成された複合体と元の試料中に存在する量との関係のため、それの一定割合の量であってもよい。
前記方法のさらに他の観点において、段階a)は分析ユニットにより、ある観点において本明細書の他の箇所に定める分析ユニットにより実施できる。
リスク評価を最適化するための補助は、本明細書の他の箇所に述べるように、段階d)で実施される比較に基づいて、対象を高リスクまたは低リスクの対象グループに割り当てることにより確立される。本明細書の他の箇所で既に述べたように、調査対象の割り当ては調査症例の100%において正確でなければならないわけではない。さらに、調査対象が割り当てられる対象グループは、それらが統計学的考慮、すなわち本発明をそれに基づいて操作すべき特定の前選択した尤度に基づいて確立されるという点で、人為的グループである。本発明のある観点において、本明細書に記載および開示するように、リスク評価を最適化するための補助は自動的に、たとえばコンピューティングデバイスなどにより支援して確立される。
本発明方法のある観点において、その方法はさらに、本明細書の他の箇所に詳細に述べるように、段階d)で確立された結果に従って対象を推奨および/または管理し、ならびに/あるいは疾患モニタリングの集中度を調節する段階を含む。
本発明の他の観点において、肺炎を伴なう対象を分類するための臨床予測法則に基づくリスク評価を最適化する補助を確立するための、下記のものを含むシステムが考慮される:
a)妊娠対象からの第2試料の一部分をsFlt−1および/またはエンドグリンに対して特異的な結合親和性を含むリガンドとインビトロで接触させるように構成され、かつ妊娠対象からの試料の一部分をPlGFに対して特異的な結合親和性を含むリガンドとインビトロで接触させるように構成された分析ユニット、
b)対象からの試料の上記リガンドと接触した部分からの信号を検出するように構成された分析ユニット、
c)プロセッサーを備え、かつ操作可能な状態で上記の分析ユニット類と連絡する、コンピューティングデバイス、ならびに
d)非一時性の機械可読媒体であって、プロセッサーにより実行可能な複数の指示、すなわち実行した際にsFlt−1および/またはエンドグリンの量を計算し、PlGFの量を計算し、試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量から第2比を計算し、こうして計算した比を第1試料から得た第1比と比較し、それにより妊娠対象を分類するための臨床予測法則に基づいてリスク評価を最適化する指示を含む媒体。
本発明の好ましい態様は、妊娠を分類するための臨床予測法則に基づくリスク評価を最適化するためのシステムを含む。システムの例には、化学反応もしくは生物反応の結果を検出するために、または化学反応もしくは生物反応の進行をモニターするために用いる、臨床化学分析器、凝固化学分析器、免疫化学分析器、尿分析器、核酸分析器が含まれる。より具体的には、ここに開示する代表的システムは、RocheのElecsys(商標)システムおよびCobas(登録商標)eイムノアッセイ分析器、AbbottのArchitect(商標)およびAxsym(商標)分析器、SiemensのCentaur(商標)およびImmulite(商標)分析器、ならびにBeckmanのCoulter UniCel(商標)およびAcess(商標)分析器などを含むことができる。
システムの態様は、本発明を実施するための1以上の分析ユニットを含むことができる。本明細書に開示するシステムの分析ユニットは、既知のように有線接続、Bluetooth(登録商標)、LANS、または無線信号のいずれかにより、本明細書に開示するコンピューティングデバイスと操作可能な状態で連絡している。さらに、この開示によれば、分析ユニットは独立型装置、または大型機器内のモジュールを含むことができ、これは診断目的での検出、たとえば試料の定性および/または定量評価のうち一方または両方を実施する。たとえば、分析ユニットは、試料および/または試薬のピペッティング、装入、混合を実施または支援することができる。分析ユニットは、アッセイを実施するための試薬を保持する試薬保持ユニットを含むことができる。試薬は、たとえば個々の試薬または一群の試薬を収容した容器またはカセットの形態で、貯蔵コンパートメントまたはコンベヤー内の適切なレセプタクルまたは位置に置かれた状態に配置することができる。検出試薬は固体支持体に固定化された形態であってもよく、これを試料と接触させる。さらに、分析ユニットは、個々の分析に最適化できる処理用および/または検出用の構成要素を含むことができる。
ある態様によれば、試料について被験体、たとえばマーカーの光学検出のために、分析ユニットを構成することができる。光学検出のために構成された代表的な分析ユニットは、電磁エネルギーを電気信号に変換するように構成されたデバイスを含み、それには単一および多重の素子またはアレイ状の光学検出器が共に含まれる。この開示によれば、光学検出器は、光電磁信号をモニターし、光路に配置された試料中の被験体の存在および/または濃度の指標となる電気出力信号または応答信号をベースライン信号に対比して提供することができる。そのようなデバイスには、たとえば下記のものも含まれる:アバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode)を含むフォトダイオード、フォトトランジスター、光伝導検出器、リニアセンサーアレイ、CCD検出器、CMOSアレイ検出器を含むCMOS検出器、光電子増倍管、および光電子増倍管アレイ。特定の態様によれば、光学検出器、たとえばフォトダイオードまたは光電子増倍管は、信号の調整または処理用の追加エレクトロニクスを含むことができる。たとえば、光学検出器は少なくとも1つの前置増幅器、フィルター回路、または集積回路を含むことができる。適切な前置増幅器には、たとえば積分型、トランスインピーダンス型、および電流利得(current gain)(カレントミラー(current mirror))型の前置増幅器が含まれる。
さらに、この開示による1以上の分析ユニットは、光を発するための光源を含むことができる。たとえば、分析ユニットの光源は、被験試料について被験体濃度を測定するための、またはエネルギー移動(たとえば、蛍光共鳴エネルギー移動により、または酵素の触媒作用により)を可能にするための、少なくとも1つの発光素子(たとえば、発光ダイオード、電源付き輻射線源、たとえば白熱電球、エレクトロルミネセントランプ、気体放電ランプ、高輝度放電ランプ、レーザー)からなることができる。
さらに、このシステムの分析ユニットは、1以上の保温ユニット(たとえば、試料または試薬を特定した温度または温度範囲に保持するためのもの)を含むことができる。ある態様において、分析ユニットは、試料に反復温度サイクルを施してその試料について増幅生成物の量の変化をモニターするためのサーモサイクラー(リアルタイムサーモサイクラーを含む)を含むことができる。
さらに、本明細書に開示するシステムの分析ユニットは、反応器またはキュベットへの供給ユニットを含むことができ、あるいはそれに操作可能な状態で接続していてもよい。代表的な供給ユニットには、試料および/または試薬を反応器へ送達するための液体操作ユニット、たとえばピペッティングユニットが含まれる。ピペッティングユニットは、再利用可能な可洗ニードル、たとえばスチールニードル、または使い捨てピペットティップを含むことができる。分析ユニットは、さらに1以上の混合ユニット、たとえば液体を入れたキュベットを振とうするためのシェーカー、またはキュベットもしくは試薬容器内の液体を混合するための混合パドルを含むことができる。
本発明はさらに、前記方法を実施することにより妊娠対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつかどうかを診断するために適合させた、下記のものを含むデバイスに関する:
a)sFlt−1および/またはエンドグリンに特異的に結合する検出剤、ならびにPlGFに特異的に結合する検出剤を含む分析ユニットであって、妊娠対象の第1および第2試料中のsFlt−1および/またはエンドグリンの量ならびにPlGFの量を決定するために適合させた分析ユニット;ならびに
b)下記の段階を実施するためのアルゴリズムを実装したデータプロセッサーを含む評価ユニット:
i)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第1比、および第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第2比を計算する;そして
ii)その第1比と第2比の数値を比較し、それにより、第2比の数値が第1比の数値と比較して少なくとも約3倍に増大していれば、対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと診断する。
本明細書中で用いる用語“デバイス”は、本発明の方法による診断が可能になるように互いに操作可能な状態で連結した前記ユニットを含むシステムに関する。分析ユニットに使用できる好ましい検出剤は本明細書の他の箇所に開示されている。分析ユニット(analyzing unitまたはanalyzer unit)は、好ましくは、その量を決定すべきバイオマーカーを含む試料に接触させる固体支持体に固定化された形態で、それらの検出剤を含む。さらに、分析ユニットはバイオマーカー(単数または複数)に特異的に結合した検出剤の量を決定する検出器をも含むことができる。決定された量を評価ユニットへ伝達することができる。その評価ユニットはデータ処理素子、たとえばコンピューターを含み、それには、本明細書の他の箇所に詳細に述べた本発明方法の段階を実施するコンピューターベースのアルゴリズムの実装により比の計算、計算されたそれらの比の比較、およびその比較の結果の評価を行なうためのアルゴリズムが実装されている。結果をパラメトリック診断生データの出力として得ることができる。これらのデータは通常は臨床医による解釈を必要とすることを理解すべきである。しかし、出力が処理済みの診断生データを含み、その解釈に専門的な臨床医を必要としない専門のシステムデバイスも想定される。
本発明のある態様によれば、本明細書に開示する第1比と第2比の比較を行なうためのアルゴリズムは、前記の指示を実行することにより具体化および実施される。結果をパラメトリック診断生データの出力として、または絶対量もしくは相対量として得ることができる。本明細書に開示するシステムの種々の態様によれば、“診断”は、計算された前記の比の比較に基づいて、本明細書に開示するシステムのコンピューティングデバイスにより提供できる。たとえば、あるシステムのコンピューティングデバイスは、特定の診断の指標となる言語、字句、記号または数値の形の指標を提供することができる。
本発明はさらに、前記方法を実施することにより早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊娠対象と早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象を鑑別するために適合させた、下記のものを含むデバイスに関する:
a)sFlt−1および/またはエンドグリンに特異的に結合する検出剤、ならびにPlGFに特異的に結合する検出剤を含む分析ユニットであって、妊娠対象の第1および第2試料中のsFlt−1および/またはエンドグリンの量ならびにPlGFの量を決定するために適合させた分析ユニット;ならびに
b)下記の段階を実施するためのアルゴリズムを実装したデータプロセッサーを含む評価ユニット:
i)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第1比、および第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第2比を計算する;そして
ii)その第1比と第2比の数値を比較し、それにより、第2比の数値が第1比の数値と比較して少なくとも約3倍に増大していれば、対象が早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと診断する。
さらに本発明には、妊娠対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつかどうかを診断する方法を実施するために適合させたキットであって、バイオマーカーsFlt−1またはエンドグリンおよびPlGFの量を決定するための検出剤、ならびにその方法を実施するための指示を含むキットが含まれる。
本明細書中で用いる用語“キット”は、好ましくは個別に、または単一容器内で提供される、前記構成要素の集合体を表わす。容器は本発明の方法を実施するための指示も含む。これらの指示は、マニュアルの形であってもよく、あるいはコンピューターまたはデータ処理デバイスに実装した際に本発明の方法において述べた計算および比較を実施してそれに従って診断を確立することができるコンピュータープログラムコードにより提供されてもよい。コンピュータープログラムコードは、データ記憶媒体またはデバイス、たとえば光学記憶媒体(たとえば、コンパクトディスク)において、または直接にコンピューターまたはデータ処理デバイスにおいて提供することができる。さらに、キットは好ましくは本明細書の他の箇所に詳細に記載するバイオマーカーの基準量を検量の目的で含むことができる。
本発明にはさらに、早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊娠対象と早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象を鑑別する方法を実施するために適合させたキットであって、バイオマーカーsFlt−1またはエンドグリンおよびPlGFの量を決定するための検出剤、ならびにその方法を実施するための指示を含むキットが含まれる。
本明細書に引用するすべての参考文献を、それらの開示内容全体および本明細書中で具体的に言及した開示内容に関して本明細書に援用する。
以下の実施例は本発明を説明するものにすぎない。それらが本発明の範囲を限定すると決して解釈すべきではない。
実施例1:PlGF、sFLT1およびエンドグリンの血中レベルの測定
市販のイムノアッセイによりsFLT1、PlGFおよびエンドグリンの血中レベルを決定した。特に下記のアッセイを用いた。
sFlt1は、RocheからのElecsys(商標)−またはcobas e(商標)−シリーズの分析器を用いるサンドイッチイムノアッセイで決定された。このアッセイは、各ポリペプチドに特異的な2種類のモノクローナル抗体を含む。これらの抗体のうちの第1はビオチニル化され、第2のものはトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)−錯体で標識されている。最初のインキュベーション段階で両抗体を試料と共にインキュベートする。測定すべきペプチドおよび2種類の異なる抗体を含むサンドイッチ複合体が形成される。次のインキュベーション段階において、ストレプトアビジンでコートしたビーズをこの複合体に添加する。ビーズはこのサンドイッチ複合体に結合する。この反応混合物を次いで測定セル内へ吸引し、そこでビーズは電極の表面に磁気捕獲される。次いで電圧を印加するとルテニウム錯体からの化学発光が誘導され、これを光電子増倍管により測定する。発光量は電極上のサンドイッチ複合体の量に依存する。このsFlt−1試験は、Roche Diagnostics GmbH(ドイツ、マンハイム)から市販されている。このアッセイについてのさらなる詳細はパッケージ挿入物にある。sFlt1の測定範囲には、10〜85,000pg/mlの量が含まれる。
エンドグリンは、R&D Systems,Inc(米国ミネアポリス)から市販されているQuantikine(商標)ヒト−エンドグリン/CD105イムノアッセイを用いて測定された。このアッセイは定量サンドイッチ酵素イムノアッセイ法を用いる。エンドグリンに対して特異的なモノクローナル抗体がマイクロプレート上にプレコートされていた。標準品および試料をピペットでウェルに入れると、存在するエンドグリンはいずれも固定化抗体により結合される。結合しなかった物質をいずれも洗浄除去し、エンドグリンに対して特異的な酵素連結型モノクローナル抗体をウェルに添加する。結合しなかった抗体−酵素試薬をいずれも洗浄除去した後、基質溶液をウェルに添加すると、最初の段階で結合したエンドグリンに比例して発色する。この発色を停止し、色の強度を測定する。このアッセイについてのさらなる詳細はパッケージ挿入物にある。エンドグリンの測定範囲には、0.001ng/L〜10ng/mlの量が含まれる。
PlGFは、2種類のPlGF特異的抗体を用いて、Elecsys(商標)−またはcobas e(商標)−シリーズの分析器で実施するサンドイッチイムノアッセイで試験された(詳細については前記を参照)。このPlGF試験は、Roche Diagnostics GmbH(ドイツ、マンハイム)から市販されている。このアッセイについてのさらなる詳細はパッケージ挿入物にある。PlGFの測定範囲には、3〜10,000pg/mlの量が含まれる。
実施例2:妊娠高血圧腎症を発症した転帰患者および健康な対照におけるバイオマーカーsFlt−1およびPlGFの分析
欧州の異なる地域で募集した総数286人の患者を調査した。この試験に含まれていたのは、胎齢が少なくとも15+0週、最大30+0週の妊婦であった。sFlt−1/PlGF比の基準値は通常は約28週目までわずかに低下するので、この期間中の数値の生理的増大は予想できなかった。この試験に含まれたそれぞれの患者来院時の診断は、“妊娠高血圧腎症またはHELLP(PE/HELLP)なし”、または“PE/HELLPの疑い”であった。これらの患者の転帰における診断はPE/HELLPとなる可能性があり、この試験では増大する数値が切迫PE/HELLP診断の指標となるかどうかを分析した。それぞれの妊婦は2回の来院に関与した:30+0週目以前の最終来院(来院2)とそれより前の1回の来院(来院1)。来院1について1より多い選択肢がある場合、来院2の3週間前に最も近いものを選択する。
PlGFおよびsFlt−1の血中レベルを前記の実施例1に従って決定し、そして評価した。結果を下記の表1〜11にまとめた:
表中の記号の意味:
Min. : 最小値、Median : 中央値、Max. : 最大値、Mean : 平均値、SD : 標準偏差、N : 人数
Figure 2014532887
Figure 2014532887
Figure 2014532887
Figure 2014532887
この欧州PE試験により、sFlt−1/PlGF比の強い増大(この提唱において3倍以上)は切迫PE/HELLPの明瞭な指標であると思われるという所見が得られる。
実施例3:妊娠高血圧腎症を発症した転帰患者および健康な対照におけるバイオマーカー、エンドグリンおよびPlGFの分析
実施例2に述べたものと同様な患者試料を、PlGFおよびエンドグリン(s−Eng)の血中レベルについて調査し、そして評価した。結果は下記のとおりであった:
表中の記号の意味:
Min. : 最小値、Median : 中央値、Max. : 最大値、Mean : 平均値、SD : 標準偏差、N : 人数
Figure 2014532887
Figure 2014532887
100%/200%の利得(gain)をカットオフとして用いて、これを臨床感度/特異度に換算することができる:
Figure 2014532887
妊娠高血圧腎症を伴なう患者および健康な対照のsFlt−1とPlGFについて異なる妊娠時点で決定した比の差を、図5Aにグラフによっても示す。エンドグリン/PlGF比についても同じグラフを示した;図5B。sFlt−1/PlGF比とエンドグリン/PlGF比は類似の分布を示し、したがって妊娠高血圧腎症の発症について類似の予測子であることは明らかである。

Claims (17)

  1. 妊娠対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつかどうかを決定するための、下記を含む方法:
    a)その対象の第1および第2試料中のバイオマーカーsFlt−1またはエンドグリンおよびPlGFの量を決定する;その際、第1試料は第2試料の前に得られている;
    b)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第1比、および第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第2比を計算する;
    c)その第1比と第2比の数値を比較し、それにより、第2比の数値が第1比の数値と比較して少なくとも3±20%倍に増大していれば、対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと決定する。
  2. 第1試料が第2試料の約4〜約5週間前に得られている、請求項1に記載の方法。
  3. 妊娠対象が、妊娠の約15〜約34週目、好ましくは妊娠の約15〜約30週目である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 短期間が、4週間未満、好ましくは約2〜約3週間の期間である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 妊娠高血圧腎症が早発性妊娠高血圧腎症である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクが高いと決定された場合、その方法がさらに、妊娠高血圧腎症に対する少なくとも1つの支持措置を推奨することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 少なくとも1つの支持措置が、緊密なモニタリング、入院、降圧薬の投与、および/または生活様式推奨事項からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊娠対象と早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象を鑑別するための、下記を含む方法:
    a)その対象の第1および第2試料中のバイオマーカーsFlt−1またはエンドグリンおよびPlGFの量を決定する;その際、第1試料は第2試料の前に得られている;
    b)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第1比、および第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第2比を計算する;
    c)その第1比と第2比の数値を比較し、それにより、第2比の数値が第1比の数値と比較して少なくとも約3倍に増大していれば、対象が早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと鑑別する。
  9. 第1試料が第2試料の約4〜約5週間前に得られている、請求項8に記載の方法。
  10. 妊娠対象が、妊娠の約15〜約34週目、好ましくは妊娠の約15〜約30週目である、請求項8または9に記載の方法。
  11. 第1および第2試料が、血液、血清または血漿の試料である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 妊娠対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつかどうかを決定するための、妊娠対象の第1および第2試料中のバイオマーカーsFlt−1もしくはエンドグリンおよびPlGF、またはそれに特異的に結合する検出剤の使用。
  13. 早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊娠対象と早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象を鑑別するための、妊娠対象の第1および第2試料中のバイオマーカーsFlt−1もしくはエンドグリンおよびPlGF、またはそれに特異的に結合する検出剤の使用。
  14. 請求項1〜7および11のいずれか1項に記載の方法を実施することにより妊娠対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつかどうかを診断するために適合させた、下記のものを含むデバイス:
    a)sFlt−1および/またはエンドグリンに特異的に結合する検出剤、ならびにPlGFに特異的に結合する検出剤を含む分析ユニットであって、妊娠対象の第1および第2試料中のsFlt−1および/またはエンドグリンの量ならびにPlGFの量を決定するために適合させた分析ユニット;ならびに
    b)下記の段階を実施するためのアルゴリズムを実装したデータプロセッサーを含む評価ユニット:
    i)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第1比、および第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第2比を計算する;そして
    ii)その第1比と第2比の数値を比較し、それにより、第2比の数値が第1比の数値と比較して少なくとも約3倍に増大していれば、対象が短期間以内に妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと診断する。
  15. 請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法を実施することにより早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつ妊娠対象と早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもたない妊娠対象を鑑別するために適合させた、下記のものを含むデバイス:
    a)sFlt−1および/またはエンドグリンに特異的に結合する検出剤、ならびにPlGFに特異的に結合する検出剤を含む分析ユニットであって、妊娠対象の第1および第2試料中のsFlt−1および/またはエンドグリンの量ならびにPlGFの量を決定するために適合させた分析ユニット;ならびに
    b)下記の段階を実施するためのアルゴリズムを実装したデータプロセッサーを含む評価ユニット:
    i)第1試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第1比、および第2試料において決定したsFlt−1またはエンドグリンとPlGFの量からの第2比を計算する;そして
    ii)その第1比と第2比の数値を比較し、それにより、第2比の数値が第1比の数値と比較して少なくとも約3倍に増大していれば、対象が早発性妊娠高血圧腎症を発症するリスクをもつと診断する。
  16. バイオマーカーsFlt−1またはエンドグリンおよびPlGFの量を決定するための検出剤、ならびにその方法を実施するための指示を含む、請求項1〜7および11のいずれか1項に記載の方法を実施するために適合させたキット。
  17. バイオマーカーsFlt−1またはエンドグリンおよびPlGFの量を決定するための検出剤、ならびにその方法を実施するための指示を含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法を実施するために適合させたキット。
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