本発明の説明および請求の範囲において、以下の用語が下記の定義に従って使用される。
用語「オピオイド薬」および「オピオイドアゴニスト」は、本明細書において広範に使用され、典型的に、約1000ダルトン未満(および典型的に500ダルトン未満)の分子量を有し、そしてμ、δおよび/またはκアゴニストとしていくつかの程度の活性を有する有機、無機あるいは有機金属化合物を指す。オピオイドアゴニストは、オリゴペプチドおよび約1500未満の分子量を有する他の生体分子を包含する。
本明細書で使用する用語「オピオイドアゴニスト化合物」は、リンカーを介して水溶性オリゴマーに結合しているオピオイドアゴニスト(またはその残基)を、その薬学的に許容できる塩を含めて指す。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、式OPIOID−X−POLYを有する。オピオイドアゴニスト化合物のさらなる実施形態を本明細書に開示する。
用語「スペーサー部分」、「連結」、および「リンカー」は、ポリマーセグメントの末端およびオピオイド薬またはオピオイド薬の求電子部分もしくは求核部分などの相互接続部分を連結するために場合により使用される原子または原子集団を指すために本明細書で互換的に使用される。リンカー部分は、加水分解的に安定であっても、または生理学的に加水分解可能なもしくは酵素的に分解可能な連結を含んでもよい。文脈により明らかに他で指示されない限り、リンカー部分は、場合により、オピオイドアゴニスト化合物の任意の2つのエレメント間に存在する(例えば、リンカー部分を介して直接的にまたは間接的に結合することができるオピオイドアゴニストの残基と水溶性オリゴマーとを含む提供されたオピオイドアゴニスト化合物)。
「水溶性オリゴマー」は、室温で水において、少なくとも35(重量)%の可溶性、特定の実施形態では70(重量)%超、特定の実施形態では95(重量)%超の可溶性である非ペプチド性オリゴマーを示す。典型的には、「水溶性」オリゴマーの非ろ過水性調製物は、ろ過後に同じ溶液を透過する光の量のうちの少なくとも75%、特定の実施形態では少なくとも95%を透過する。特定の実施形態では、水溶性オリゴマーは、水に少なくとも95(重量)%可溶性であるか、または完全に可溶性である。「非ペプチド性」であることに関しては、オリゴマーが35(重量)%未満のアミノ酸残基を有する場合、それは非ペプチド性である。
本明細書に記載のように、オピオイドアゴニスト化合物には、オピオイドアゴニスト化合物それ自体だけでなく、オピオイドアゴニスト化合物の薬学的に許容できる塩または塩形態も含まれる。本明細書に記載するオピオイドアゴニスト化合物は、十分に酸性の基、十分に塩基性の基、または両方の官能基を有することができ、従って、いくつかの無機塩基ならびに無機酸および有機酸のいずれかと反応して塩を形成する。酸付加塩を形成させるために通常使用される酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、および例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニル−スルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸である。そのような塩の例として、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオアート、ヘキシン−1,6−ジオアート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩などが挙げられる。
塩基付加塩として、例えば、アンモニウムまたはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などの無機塩基に由来するものが挙げられる。従って、本発明の塩を調製するのに有用なそのような塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
用語「モノマー」、「モノマーサブユニット」および「モノマー単位」は、本明細書において同義的に使用され、そしてポリマーまたはオリゴマーの基本構造単位の1つを指す。ホモオリゴマーの場合、単一の反復構造単位がオリゴマーを形成する。コオリゴマーの場合、2つ以上の構造単位が、あるパターンかまたは無作為のいずれかで反復して、オリゴマーを形成する。特定の実施形態では、本発明に関連して使用されるオリゴマーは、ホモオリゴマーである。水溶性オリゴマーは、典型的に、連続的に結合して、モノマーの鎖を形成する1つ以上のモノマーを含んでなる。オリゴマーは、単一のモノマータイプ(即ち、ホモオリゴマー性である)または2つもしくは3つのモノマータイプ(即ち、コオリゴマー性である)から形成することができる。
本明細書で使用する場合、構造は、単結合または二重結合から選択することができる結合を表す。即ち、実線は結合を表し、点線は任意選択的結合を表す。任意選択的結合がない場合は、その結果は単結合である。任意選択的結合がある場合は、その結果は二重結合である。
「オリゴマー」は、約2〜約の50モノマー、特定の実施形態では、約2〜約30のモノマーを所有する分子である。オリゴマーの構成は変動し得る。本発明に使用するための具体的なオリゴマーとして、線状、分岐、またはフォーク状のような多様なジオメトリーを有するものが挙げられ、下記において、より詳細に説明する。
本明細書において使用する「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、任意の水溶性のポリ(エチレンオキシド)を包含することを意味する。他に示さない限り、「PEGオリゴマー」(また、オリゴエチレングリコールとも呼ばれる)は、実質的にすべての(および特定の実施形態では、すべての)モノマーサブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるものである。しかし、オリゴマーは、例えば、コンジュゲーションのための別個の末端キャッピング部分または官能基を含有してもよい。典型的に、本発明に使用するためのPEGオリゴマーは、次の2つの構造のうちの1つを含んでなる:「−(CH2CH2O)n−」または「−(CH2CH2O)n−1CH2CH2−」であって、例えば、合成変換中に末端の酸素が置き換えられているかどうかに依存する。PEGオリゴマーでは、「n」値は、約2〜50、特定の実施形態では、約2〜約30で変動し、そして、全体的なPEGの末端機および構成も変動し得る。PEGが、例えば、オピオイドアゴニストに連結するための官能基、Aをさらに含んでなる場合、官能基は、PEGオリゴマーに共有結合する場合、(i)酸素−酸素結合(−O−O−、過酸化連結)の形成も、または(ii)窒素−酸素結合(N−O、O−N)の形成も生じない。
「末端キャッピング基」は、一般的に、PEGオリゴマーの末端の酸素に結合した非反応性炭素含有基である。例示的な末端キャッピング基は、C1−5アルキル基、例えば、メチル、エチルおよびベンジル)、ならびにアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどを含んでなる。特定の実施形態では、キャッピング基は、メチルまたはエチルのような比較的低い分子量を有する。末端キャッピング基はまた、検出可能な標識を含んでなり得る。そのような標識として、蛍光物質(fluorescer)、化学発光物質(chemiluminescer)、酵素標識において使用される部分、比色標識(colorimetric label)(例えば、染料)、金属イオン、および放射性部分が挙げられるが、これらに限定されない。
オリゴマーのジオメトリーまたは全体的構造に関して、「分岐」は、分岐点から延在する別個の「アーム」を表す2つ以上のポリマーを有するオリゴマーを指す。
オリゴマーのジオメトリーまたは全体的構造に関して、「フォーク状」は、分岐点から延在する(典型的に、1個以上の原子を介して)2つ以上の官能基を有するオリゴマーを指す。
「分岐点」は、オリゴマーが、線状構造から1つ以上のさらなるアームへ分岐またはフォーク構造を形成する1個以上の原子を含んでなる分岐点を指す。
用語「反応性」または「活性化された」は、有機合成の従来の条件下で容易にまたは実際的な速度で反応する官能基を指す。これは、反応しないか、あるいは反応するためには強力な触媒または実際的ではない反応条件が必要であるかのいずれかである基(即ち、「非反応性」もしくは「不活な」基)とは対照的である。
反応混合物中の分子に存在する官能基に関して、「容易に反応しない」は、基が、反応混合物において所望される反応を生じるのに有効である条件下で主にインタクトの状態を保つことを指す。
「保護基」は、特定の反応条件下で分子中の特定の化学的な反応性官能基の反応を防止または阻止する部分である。保護基は、保護される化学反応性基のタイプならびに用いようとする反応条件および分子におけるさらなる反応性基または保護基の存在に依存して変動する。保護することができる官能基として、例えば、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。カルボン酸については、代表的な保護基として、エステル(例えば、p−メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジドが挙げられ;アミノ基については、カルバメート(例えば、tert−ブトキシカルボニル)およびアミドが挙げられ;ヒドロキシル基については、エーテルおよびエステルが挙げられ;チオール基については、チオエーテルおよびチオエステルが挙げられ;カルボニル基については、アセタールおよびケタールなどが挙げられる。そのような保護基は、当業者に周知であり、そして例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999、および本明細書において引用した参考文献に記載されている。
「保護された形態」の官能基は、保護基を有する官能基を指す。本明細書において使用する用語「官能基」またはその任意の類義語は、その保護された形態を包含する。
「生理学的に切断可能な」結合は、加水分解可能な結合または酵素的に分解可能な連結である。「加水分解可能な」または「分解可能な」結合は、通常の生理学的条件下で水と反応する(即ち、加水分解される)比較的変化を起こし易い結合である。通常の生理学的条件下で水中で結合が加水分解する傾向は、2個の中心原子を接続する一般的なタイプの連結だけではなく、これらの中心原子に結合する置換基にも依存する。そのような結合は、一般的に、当業者であれば認識することができる。適切な加水分解可能な不安定または弱い連結として、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチド、チオエステル、およびカルボネートが挙げられるが、これらに限定されない。
「酵素的に分解可能な連結」は、通常の生理学的条件下で1つ以上の酵素による分解に供される連結を意味する。
例えば、水溶性オリゴマーに可逆的に結合したオピオイド薬に関して、「可逆的に結合した」は、本明細書に記載の生理学的に切断可能なまたは分解可能な(酵素的に含む)連結を含むリンカーを介して共有結合したオピオイド薬を指し、ここで、(例えば、加水分解による)分解時に、オピオイド薬が遊離する。このようにして遊離したオピオイド薬は、典型的に、改変されていないオピオイドアゴニストに対応するか、または若干変更されていてもよく、例えば、例えば、典型的に、オピオイドアゴニスト化合物に直に隣接しない水溶性オリゴマーリンカーの切断から生じる約8個の原子の短い有機タグを所有する。特定の実施形態では、改変されていないオピオイド薬が遊離する。
「安定な」連結または結合は、水中で実質的に安定である、即ち、通常の生理学的条件下、任意の適切な程度で、長期間にわたって、加水分解を受けない化学部分または結合、典型的には、共有結合を指す。加水分解に安定な連結の例として次のものが挙げられるが、これらに限定されない:(例えば、脂肪族鎖における)炭素−炭素結合、エーテル、アミド、ウレタン、アミンなど。一般的に、安定な連結は、通常の生理学的条件下で1日あたり約1〜2%未満の加水分解の速度を示す連結である。代表的な化学結合の加水分解速度については、ほとんどの標準的な化学の教科書において見出すことができる。
所与の組成のオリゴマーの一貫性について説明する場合、「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼすべてまたは完全に、例えば、95%以上、特定の実施形態では、97%以上、特定の実施形態では、98%以上、特定の実施形態では、99%以上、特定の実施形態では、99.9%以上を意味する。
「単分散」は、オリゴマー組成物を指し、ここで、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーが、良好に限定された単一の分子量および限定された数のモノマーを有し、クロマトグラフィーまたは質量分析によって決定される。単分散オリゴマー組成物は、ある程度純粋であり、即ち、いくらかの異なる数のモノマー(即ち、3つ以上の異なるオリゴマーサイズを有するオリゴマー組成物)ではなく、単一かつ限定可能な数のモノマーを有する分子を実質的に含んでなる。特定の実施形態では、単分散オリゴマー組成物は、1.0005未満のMW/Mn値、特定の実施形態では、1.0000のMW/Mn値を所有する。拡大解釈すると、単分散オピオイドアゴニスト化合物からなる組成物は、組成物中のすべてのオピオイドアゴニスト化合物の実質的にすべてのオリゴマーが、分布しておらず、(整数として)単一かつ限定された数のモノマーを有し、そしてオリゴマーがオピオイドアゴニストの残基に結合しなかった場合、1.0005のMW/Mn値、特定の実施形態では、1.0000のMW/Mn値を所有することを意味する。しかし、単分散オピオイドアゴニスト化合物からなる組成物として、溶媒、試薬、賦形剤などのような1つ以上の追加の物質を挙げることができる。
オリゴマー組成物に関して、「二峰性」は、オリゴマー組成物を指し、ここで、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーは、分布ではなく、(整数として)2つの限定可能なかつ異なる数のモノマーのうちの1つを有し、そして多くの画分対分子量としてプロットした場合、その分子量の分布は、2つの個別の同定可能なピークとして出現する。特定の実施形態では、本明細書に記載の二峰性オリゴマー組成物について、各ピークは、一般的に、その平均について対称であるが、2つのピークのサイズは異なっていてもよい。理想的には、二峰性分布における各ピークの多分散指数、Mw/Mnは、1.01以下、特定の実施形態では、1.001以下、特定の実施形態では、1.0005以下、特定の実施形態では、1.0000のMW/Mn値である。拡大解釈すると、二峰性オピオイドアゴニスト化合物からなる組成物は、組成物中のすべてのオピオイドアゴニスト化合物の実質的にすべてのオリゴマーが、大きな分布ではなく、(整数として)2つの限定可能なかつ異なる数のモノマーのうちの1つを有し、そしてオリゴマーがオピオイドアゴニストの残基に結合しなかった場合、1.01以下のMW/Mn値、特定の実施形態では、1.001以下、特定の実施形態では、1.0005以下、特定の実施形態では、1.0000のMW/Mn値を所有することを意味する。しかし、二峰性オピオイドアゴニスト化合物からなる組成物として、溶媒、試薬、賦形剤などのような1つ以上の追加の物質を挙げることができる。
「生体膜」は、典型的に、少なくともいくつかの外来性の実体もしくはそうでなければ所望されない材料に対する関門として役立つ分化した細胞または組織から作製される任意の膜である。本明細書において使用する「生体膜」として、例えば、次のものを含む生理学的保護関門に関連するそれらの膜が挙げられる:血液脳関門(BBB);血液脳脊髄液関門;血液胎盤関門;血液乳関門;血液精巣関門;および膣粘膜、尿道粘膜、肛門粘膜、頬粘膜、舌下粘膜、直腸粘膜などを含む粘膜関門。ある文脈において、用語「生体膜」は、中間の胃腸間(例えば、胃および小腸)に関連する膜を含まない。例えば、場合によっては、本発明のオピオイドアゴニスト化合物の血液脳関門を横切る能力が限定されることを所望してもよく、なお、同じ化合物が中間の胃腸管を横切ることを所望してもよい。
本明細書において使用する「生体膜横断速度」は、生体膜(例えば、血液脳関門に関連する膜)を横断する化合物の能力の尺度を提供する。多様な方法を使用して、あらゆる所与の生体膜を横断する分子の輸送を評価することができる。あらゆる所与の生物学的関門(例えば、血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門、血液乳関門、腸関門など)に関連する生体膜横断速度を評価する方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書および/または関連文献に記載されており、ならびに/あるいは当業者によって決定することができる。
「アルキル」は、典型的には、長さが約1〜20個の原子の範囲にある炭化水素鎖を指す。そのような炭化水素鎖は、飽和していることが好ましいが、必ずしもそうである必要はなく、また分枝鎖であっても直鎖であってもよい。特定の実施形態では、炭化水素鎖は直鎖である。例示的なアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどが挙げられる。本明細書で使用する場合、「アルキル」は、3個以上の炭素原子に言及する場合、シクロアルキルを含む。特定の実施形態では、アルキルは、直鎖および例えばシクロブチルメチル、シクロプロピルメチルなどの環状アルキル部分の両方を含む。「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を伴う2〜20個の炭素原子のアルキルである。
用語「置換アルキル」または「置換Cq−rアルキル」(ここで、qおよびrは、アルキル基に含有される炭素原子の範囲を同定する整数である)は、1つ、2つもしくは3つのハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C1−7アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチルなど)、C1−7アルコキシ、C1−7アシルオキシ、C3−7ヘテロ環、アミノ、フェノキシ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシ、アシル、シアノによって置換された上記のアルキル基を示す。置換アルキル基は、同じまたは異なる置換基で1回、2回もしくは3回置換され得る。
「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基を指し、そしてメチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルによって例示されるように、直鎖であってもよく、または分岐鎖であってもよい。「低級アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する2〜6個の炭素原子の低級アルキル基である。
「非干渉置換基」は、分子中に存在する場合、典型的に、分子内に含有される他の官能基と非反応性である基である。
「アルコキシ」は、−O−R基を指し、ここで、Rは、アルキルまたは置換アルキル、特定の実施形態では、C1−C20アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ベンジルなど)、また特定の実施形態では、C1−C7である。
「アシル」は、−C(O)R基を指し、ここで、Rは有機ラジカルである。特定の実施形態では、Rは、アルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから選択することができる。
「薬学的に許容できる賦形剤」または「薬学的に許容できるキャリア」は、成分を含まない組成物より優れた利点(例えば、患者への投与にさらに適切である)を有し、そして患者に対して顕著な有害な毒性学的影響を生じないことが認識される組成物を提供するために、本発明の組成物に含めることができる成分を指す。
用語「アリール」は、14個までの炭素原子を有する芳香族基を意味する。アリール基として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニルなどが挙げられる。「置換フェニル」および「置換アリール」は、それぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(例えば、C1−6アルキル)、アルコキシ(例えば、C1−6アルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、アリールなどから選択される1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ(例えば、1−2、1−3もしくは1−4置換基)によって置換されたフェニル基およびアリール基を示す。
「芳香族含有部分」は、少なくともアリール、および場合により1個以上の原子含有する原子のコレクションである。適切な芳香族含有部分については、本明細書において説明する。
「薬理学的有効量」、「生理学的有効量」、および「治療有効量」は、本明細書において同義的に使用され、血流中あるいは標的組織中において、閾値レベルのオピオイドアゴニスト化合物および/または鎮痛剤を提供するのに必要な組成物中に存在するオピオイドアゴニスト化合物および/または鎮痛剤の量を意味する。正確な量は、多数の因子、例えば、組成物の特定の有効因子、成分および物理特性、意図される患者集団、患者の考慮事項などに依存し、そして本明細書において提供する情報、および関連文献において利用可能な情報に基づいて、当業者が容易に決定することができる。
「二官能性」オリゴマーは、典型的に、その末端において、2つの官能基がその中に含有されるオリゴマーである。官能基が同じである場合、オリゴマーは、ホモ二官能性と呼ばれる。官能基が異なる場合、オリゴマーは、ヘテロ二官能性と呼ばれる。
本明細書に記載の塩基性反応物質または酸性反応物質は、中性で荷電したもの、およびその任意の対応する塩形態を含む。
用語「患者」は、典型的には、必ずしもそうである必要はないが、オピオイドアゴニスト化合物と鎮痛薬とを含む組成物の形態で、本明細書に記載する組成物を投与することによって予防または治療することができる病態に罹患しているかまたは罹患しやすい生物体を指し、ヒトおよび動物の両方を含む。
「任意選択的」または「場合により」は、後に説明する状況が生じてもよいが、必ずしもその必要があるわけではなく、そのため、その説明には、状況が生じる場合と、それが生じない場合とが含まれることを意味する。
文脈が明らかに他を指示しない限り、用語「約」が数値の前にある場合、数値は、上述の数値およびまた上述の数値の±10%を意味するものと理解される。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物と鎮痛性化合物とを含む組成物を提供する。
特定の実施形態では、式
(式中、OPIOIDはオピオイドアゴニストの残基であり、Xは生理学的に安定なリンカーであり、POLYは水溶性オリゴマーである)およびその薬学的に許容できる塩から選択されるオピオイドアゴニスト化合物と鎮痛性化合物とを含む組成物を提供する。
特定の実施形態では、式
(式中、OPIOIDはオピオイドアゴニストの残基であり、Xは生理学的に安定なリンカーであり、nは2〜10の整数であり、Yは水素、末端キャッピング基、および保護基から選択される)およびその薬学的に許容できる塩から選択されるオピオイドアゴニスト化合物と鎮痛性化合物とを含む組成物を提供する。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、構造
(式中、
R
1は、水素、アシル、および低級アルキルから選択され;
R
2は、水素およびヒドロキシルから選択され;
R
3は、水素およびアルキルから選択され;
R
4は、水素であり;
「−−−」は、任意選択的結合を表し;
Y
1は、OおよびSから選択され;
Xは、生理学的に安定な連結であり;
nは、2〜10の整数であり;かつ
Yは、末端キャッピング基である)およびその薬学的に許容できる塩から選択される。
特定の実施形態では、R1は水素およびメチルから選択され;R3は水素、メチル、およびシクロブチルメチルから選択され;R4は水素であり;Y1はOであり;nは2〜10の整数であり;かつYは低級アルキルである。
特定の実施形態では、Yはキャッピング基である。特定の実施形態では、Yはアルキル基である。特定の実施形態では、Yは低級アルキル基である。特定の実施形態では、Yはメチルである。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、
(式中、nは2〜10の中から選択される整数である)およびその薬学的に許容できる塩である。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、構造:
(式中、nは2〜10の中から選択される整数である)およびその薬学的に許容できる塩から選択される。
特定の実施形態では、nは2である。特定の実施形態では、nは3である。特定の実施形態では、nは4である。特定の実施形態では、nは5である。特定の実施形態では、nは6である。特定の実施形態では、nは7である。特定の実施形態では、nは8である。特定の実施形態では、nは9である。特定の実施形態では、nは10である。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、
(式中、
N*は、窒素であり;
Arは、シクロヘキシル、フェニル、ハロフェニル、メトキシフェニル、アミノフェニル、ピリジル、フリル、およびチエニルからなる群から選択され;
Alkは、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択され;
R
IIは、低級アルキル、低級アルコキシ、ジメチルアミノ、シクロプロピル、1−ピロリジニル、モルホリノからなる群から選択され;
R
II’は、水素、メチル、およびメトキシからなる群から選択され;
R
II”は、水素であり;
Xは、リンカー(例えば、共有結合「−」または1つもしくは複数の原子)であり;かつ
POLYは、水溶性の非ペプチド性オリゴマーである)およびその薬学的に許容できる塩から選択される構造を有する。
式II−Caの化合物の特定の実施形態では、RIIは低級アルキルである。式II−Caの化合物の特定の実施形態では、RIIはエチルである。式II−Caの化合物の特定の実施形態では、Arはフェニルである。式II−Caの化合物の特定の実施形態では、Alkはエチレンである。式II−Caの化合物の特定の実施形態では、RII’は水素である。式II−Caの化合物の特定の実施形態では、POLYはアルキレングリコールオリゴマーである。式II−Caの化合物の特定の実施形態では、POLYはエチレングリコールオリゴマーである。
式II−Caに関しては、条件に応じて、アミンの一方または両方−−より典型的には、式II−Caのアスタリスク(「N*」)の印があるアミン−−がプロトン化される可能性があると理解されよう。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、
(式中、
N*は、窒素であり;
Arは、シクロヘキシル、フェニル、ハロフェニル、メトキシフェニル、アミノフェニル、ピリジル、フリル、およびチエニルからなる群から選択され;
Alkは、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択され;
R
IIは、低級アルキル、低級アルコキシ、ジメチルアミノ、シクロプロピル、1−ピロリジニル、モルホリノからなる群から選択され;
R
II’は、水素、メチル、およびメトキシからなる群から選択され;
R
II”は、水素であり;
Xは、リンカー(例えば、共有結合「−」または1つもしくは複数の原子)であり;かつ
POLYは、水溶性の非ペプチド性オリゴマーである)およびその薬学的に許容できる塩から選択される構造を有する。
式II−Cbの化合物の特定の実施形態では、RIIは低級アルキルである。式II−Cbの化合物の特定の実施形態では、RIIはエチルである。式II−Cbの化合物の特定の実施形態では、Arはフェニルである。式II−Cbの化合物の特定の実施形態では、Alkはエチレンである。式II−Cbの化合物の特定の実施形態では、RII’は水素である。式II−Cbの化合物の特定の実施形態では、POLYはアルキレングリコールオリゴマーである。式II−Cbの化合物の特定の実施形態では、POLYはエチレングリコールオリゴマーである。
式II−Cbに関しては、条件に応じて、アミンの一方または両方−−より典型的には、式II−Cbのアスタリスク(「N*」)の印があるアミン−−がプロトン化される可能性があると理解されよう。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、
(式中、
N*は、窒素であり;
Arは、シクロヘキシル、フェニル、ハロフェニル、メトキシフェニル、アミノフェニル、ピリジル、フリル、およびチエニルからなる群から選択され;
Alkは、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択され;
R
IIは、低級アルキル、低級アルコキシ、ジメチルアミノ、シクロプロピル、1−ピロリジニル、モルホリノからなる群から選択され;
R
II’は、水素、メチル、およびメトキシからなる群から選択され;
R
II”は、水素であり;
各Xは独立して、リンカー(例えば、共有結合「−」または1つもしくは複数の原子)であり;かつ
各POLYは独立して、水溶性の非ペプチド性オリゴマーである)およびその薬学的に許容できる塩から選択される構造を有する。
式II−Ccの化合物の特定の実施形態では、RIIは低級アルキルである。式II−Ccの化合物の特定の実施形態では、RIIはエチルである。式II−Ccの化合物の特定の実施形態では、Arはフェニルである。式II−Ccの化合物の特定の実施形態では、Alkはエチレンである。式II−Ccの化合物の特定の実施形態では、RII’は水素である。式II−Ccの化合物の特定の実施形態では、POLYはアルキレングリコールオリゴマーである。式II−Ccの化合物の特定の実施形態では、POLYはエチレングリコールオリゴマーである。
式II−Ccに関しては、条件に応じて、アミンの一方または両方−−より典型的には、式II−Ccのアスタリスク(「N*」)の印があるアミン−−がプロトン化される可能性があると理解されよう。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、
(式中、「n」は、1〜30の整数である)およびその薬学的に許容できる塩から選択される構造を有する。特定の実施形態では、「n」は1〜10の整数である。特定の実施形態では、nは2である。特定の実施形態では、nは3である。特定の実施形態では、nは4である。特定の実施形態では、nは5である。特定の実施形態では、nは6である。特定の実施形態では、nは7である。特定の実施形態では、nは8である。特定の実施形態では、nは9である。特定の実施形態では、nは10である。
特定の実施形態では、鎮痛性化合物は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。特定の実施形態では、鎮痛性化合物は解熱薬である。特定の実施形態では、単一の鎮痛性化合物は組成物の中に存在する。
特定の実施形態では、鎮痛性化合物は、ケトロラク、イブプロフェン、オキサプロジン、インドメテシン(indomethecin)、エトドラック、メロキシカム、スリンダク、ジクロフェナク、フルフェナム酸、ジフニサル(difunisal)、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、およびアセトアミノフェンから選択される。
特定の実施形態では、組成物は単位剤形である。
特定の実施形態では、本明細書に開示する組成物は、医薬投与に適していると理解される。特定の実施形態では、組成物は医薬組成物である。
上記に示すように、本開示は、(とりわけ)、式
(式中、OPIOIDはオピオイドアゴニストの残基であり、Xは生理学的に安定なリンカーであり、POLYは水溶性オリゴマーである)およびその薬学的に許容できる塩から選択されるオピオイドアゴニスト化合物と鎮痛性化合物とを含む組成物(組み合わせ)に関する。オピオイドアゴニスト化合物および鎮痛薬は両方とも、個々に投与された場合、疼痛を緩和すると考えられるが、本組み合わせは、疼痛治療のために投与された場合、相加効果を提供する。特定の実施形態では、疼痛治療のために投与された場合に、相乗効果を観察することがある。即ち、組み合わせの鎮痛効果は、単独投与の場合における、個々の成分それぞれの鎮痛効果の合計よりも大きい。
本明細書に開示する組成物および組み合わせの疼痛治療能力は、当業者に公知のアッセイにより測定することができる。特定のアッセイとして、酸苦悶アッセイ(例えば、酢酸、フェニルキノン)、カラゲナンアッセイ、完全フロイントアジュバントアッセイ、ホルマリン足アッセイ、および放射熱テールフリックアッセイを挙げることができるが、これらに限定されない。本明細書に開示する組成物および組み合わせは、適切な鎮痛アッセイで試験することができる。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物および鎮痛薬のそれぞれを、いくつかの投与量で個々に投与し、適切なアッセイを使用して鎮痛効果を測定する。個々の投与の結果に基づいて、各成分(オピオイドアゴニスト化合物および鎮痛薬)の適切な用量を組み合わせて試験することができる。
オピオイドと鎮痛薬との特定の組み合わせが、相加効果およびおそらくは相乗効果を提供することが当技術分野では公知であるが、文献には、そのような効果を予測するのは困難な場合があるとの指摘がある。Zelcer et al.,Brain Research,1040(2005),pp.151−156。報告によれば、併用効果に関連し得る因子には、投与される鎮痛薬、投与されるオピオイド、疼痛のタイプ、および/またはそのような組み合わせ投与の効果の測定に使用される特定の疼痛モデルがある。
本明細書に開示する組み合わせおよび組成物には、いくつかの治療上の利点があると考えられる。併用により、投与の減量、従って、いずれかの成分(オピオイドアゴニスト化合物および鎮痛性化合物)による副作用の低減が可能になり、それ故、併用のための全体的な治療濃度域が改善される。そのような併用はまた、連用に対する組成物/組み合わせの適合性を向上させることができる。
本明細書に記載する組成物はまた、1つ以上の医薬賦形剤を含むことができる。例示的な賦形剤として、炭水化物、無機塩類、抗微生物剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、酸、塩基、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
炭水化物、例えば、糖、誘導糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーを、賦形剤として存在させることができる。特定の炭水化物賦形剤として、例えば:単糖類、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなど;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖類、例えば、ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;およびアルジトール類、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどが挙げられる。
賦形剤としてはまた、無機塩類または緩衝剤、例えば、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
調製物はまた、微生物増殖の防止または抑止のための抗微生物剤を含むことができる。本発明に適した抗微生物剤の非限定例として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロソール(thimersol)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
抗酸化剤も、調製物中に存在させることができる。抗酸化剤は、酸化を防止するために使用し、それによってオピオイドアゴニスト化合物または調製物の他の成分(例えば、鎮痛薬)の劣化を防止する。本発明で使用するのに適切な抗酸化剤として、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、プロピルガレート、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
界面活性剤を賦形剤として存在させることができる。例示的な界面活性剤として、ポリソルベート、例えば、「Tween20」および「Tween80」ならびにプルロニック、例えば、F68およびF88(両方とも、BASF,Mount Olive,New Jerseyから入手可能である);ソルビタンエステル;脂質、例えば、リン脂質、例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(但し、好ましくは、リポソーム形態ではない)、脂肪酸および脂肪酸エステル;ステロイド、例えば、コレステロール;ならびにキレート剤、例えば、EDTA、亜鉛および他のそのような適切なカチオンが挙げられる。
薬学的に許容できる酸または塩基を、調製物中に賦形剤として存在させることができる。使用することができる酸の非限定例として、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸が挙げられる。適切な塩基の例として、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
組成物中のオピオイドアゴニスト化合物および鎮痛薬の量は、いくつかの因子に依存して変動するが、組成物が単位用量容器内に保存される場合には、治療有効用量であることが最適である。治療有効用量は、臨床的に所望されるエンドポイントをもたらす量を決定するために、有効成分量を漸増しながら反復投与することによって、実験的に決定することができる。一般的に、各成分(例えば、オピオイドアゴニスト化合物および/または鎮痛薬)の治療有効量は、約0.001mg〜1000mgの範囲、特定の実施形態では、約0.01mg〜約750mgの範囲、また特定の実施形態では、約0.10mg〜約500mgの範囲になる。
組成物中の個々のいかなる賦形剤の量も、賦形剤の活性および組成物の特定の必要性に依存して変動する。典型的には、個々のいかなる賦形剤の最適量も、日常的な実験を介して、即ち、(低量から高量の範囲の)賦形剤の種々の量を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを検討し、次いで、重大な有害作用を伴わずに最適な性能が達成される範囲を決定することによって決定される。
しかしながら、一般的に、賦形剤は、約1%〜約99重量%、特定の実施形態では、約5%〜98重量%、特定の実施形態では、約15〜95重量%の量で、また特定の実施形態では、30重量%未満の濃度で組成物中に存在する。
他の賦形剤および医薬組成物に関する一般的教示内容と共に、これらの上記の医薬品賦形剤については、“Remington:The Science & Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams & Williams,(1995)、the“Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
医薬組成物には、取り得る形態がいくらでもあり、本発明は、この点に関して限定されない。特定の実施形態では、調製物は、経口投与に適切な形態、例えば、錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、トローチ、分散体、懸濁液、溶液、エリキシル、シロップ、ロゼンジであるが、他の形態、例えば、経皮パッチ、スプレー、坐剤、および粉末であってもよい。
経口用剤形が好ましく、それらには、錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、懸濁液、溶液、エリキシル、およびシロップが含まれ、また、場合によりカプセル化される複数の顆粒、ビーズ、粉末、またはペレットが含まれ得る。そのような剤形は、医薬製剤分野の技術者に公知の、関連文書に記載されている従来の方法を使用して調製される。
錠剤およびカプレットは、例えば、標準的な錠剤処理手順および装置を使用して製造することができる。本明細書に記載する組成物を含有する錠剤またはカプレットを調製する場合、直接圧縮および造粒技術が好ましい。有効成分に加えて、錠剤およびカプレットは、一般的に、不活性で薬学的に許容できるキャリア材料、例えば、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、着色剤などを含有する。結合剤は、粘着の性質を錠剤に付与し、それ故、錠剤がそのままの状態を保持することを確実にするために使用される。適切な結合剤材料として、デンプン(トウモロコシデンプンおよびアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース、およびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、蝋、ならびに天然および合成のガム、例えば、アカシアアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)、ならびにVeegumが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤は、錠剤製造を容易にし、粉末の流動を促進し、また圧力が軽減した場合の粒子のキャッピング(即ち、粒子破砕)を防止するために使用される。有用な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸である。崩壊剤は、錠剤の崩壊を容易にするために使用され、一般的に、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガム、または架橋ポリマーである。充填剤として、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および結晶セルロースなどの材料、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールなどの可溶性材料が挙げられる。安定剤は、同様に当技術分野において公知であり、例えば、酸化的反応を含む薬物分解反応を阻害または妨害するために使用される。
特定の実施形態では、経口用剤形はカプセルであり、そこでは、組成物は、液体またはゲル(例えば、ゲルキャップの場合)または固体(顆粒、ビーズ、粉末、もしくはペレットなどの粒状物を含む)の形態でカプセル化することができる。適切なカプセルには、ハードおよびソフトカプセルが含まれるが、それらは、一般的に、ゼラチン、デンプン、またはセルロース材料から作製される。ツーピースハードゼラチンカプセルは、好ましくは、ゼラチンの帯などで封止される。
実質的に乾燥形態の非経口製剤(典型的には、粉末またはケーキの形態であり得る凍結乾燥物または沈殿物として)、ならびに典型的には液体であり、乾燥形態の非経口製剤を再構成する工程を必要とする注射用に調製された製剤が挙げられる。注射前に固体組成物を再構成するのに適切な希釈剤の例として、注射用静菌水、水中5%デキストロース、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
場合によって、非経口投与を目的とした組成物は、非水溶液、懸濁液、またはエマルジョンの形態をとることができ、典型的には、それぞれは無菌的である。非水溶媒またはビヒクルの例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油などの植物油、ゼラチン、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。
本明細書に記載する非経口製剤はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含有することができる。製剤は、滅菌剤、細菌を保持するフィルターを介するろ過、照射、または加熱を組み入れることによって滅菌される。
組成物はまた、従来の経皮パッチまたは他の経皮送達システムを使用して、皮膚を介して投与することもでき、ここで、組成物は、皮膚に固定される薬物送達デバイスとして役立つ積層構造内に含有される。そのような構造では、オピオイドアゴニスト化合物および/または鎮痛薬は、上部支持層の下側にある層、または「貯蔵器」に含有される。積層構造は、単一の貯蔵器を含有することができるか、または複数の貯蔵器を含有することができる。
組成物はまた、直腸投与のための坐剤に製剤化することができる。坐剤に関しては、オピオイドアゴニスト化合物および鎮痛薬は、ココアバター(カカオ脂)、ポリエチレングリコール、グリセリンゼラチン、脂肪酸、およびそれらの組み合わせなど(例えば、室温では固体のままであるが、体温では軟化、融解、または溶解する賦形剤)の坐剤基剤材料と混合される。坐剤は、例えば、以下の工程を実施する(必ずしも示された順序ではない)ことによって調製することができる:坐剤基剤材料を融解して、融解物を形成させる工程;アゴニスト化合物および/または鎮痛薬を(坐剤基剤材料の融解前または後のいずれかに)組み入れる工程;融解物を鋳型に注ぐ工程;融解物を冷却して(例えば、融解物を含有する鋳型を室温環境に置く)、それによって、坐剤を形成させる工程;および鋳型から坐剤を取り出す工程。
本発明はまた、疼痛など、オピオイドアゴニスト化合物および/または鎮痛薬による治療に応答する病態に罹患している患者に本明細書に提供する組成物を投与するための方法を提供する。この方法は、通常経口的に、治療有効量の組成物を投与することを含む。この方法は、具体的には、本明細書に開示する任意のオピオイドアゴニスト化合物と本明細書に開示する任意の鎮痛性化合物との組み合わせを含む組成物を含む。また、肺、鼻、口内、直腸、舌下、経皮、および非経口などの他の投与様式も考慮される。本明細書で使用する用語「非経口」は、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、髄腔内、および筋肉内注射、ならびに点滴注射を含む。
本発明はまた、疼痛など、オピオイドアゴニスト化合物および/または鎮痛薬による治療に応答する病態に罹患している患者に、本明細書に提供するオピオイドアゴニスト化合物と少なくとも1つの鎮痛性化合物とを投与するための方法を提供する。この方法は、本明細書に開示する任意のオピオイドアゴニスト化合物と本明細書に開示する任意の鎮痛性化合物との組み合わせを含む。そのような方法において、特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物と少なくとも1つの鎮痛性化合物とは、同じ組成物の一部として投与されない。この方法は、通常経口的に、治療有効量のオピオイドアゴニスト化合物と少なくとも1つの鎮痛性化合物とを投与することを含む。それぞれは、別々の組成物中に存在してもよく、特定の実施形態では、別々の組成物はそれぞれ別々の単位剤形中に存在する。また、肺、鼻、口内、直腸、舌下、経皮、および非経口などの他の投与様式も考慮される。本明細書で使用する用語「非経口」は、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、髄腔内、および筋肉内注射、ならびに点滴注射を含む。
非経口投与を利用する場合には、約500〜30キロダルトンの範囲の分子量を有する(例えば、約500ダルトン、1000ダルトン、2000ダルトン、2500ダルトン、3000ダルトン、5000ダルトン、7500ダルトン、10000ダルトン、15000ダルトン、20000ダルトン、25000ダルトン、30000ダルトン、またはそれも超える分子量を有する)、先に記載のものより若干大きいオリゴマー(例えば、ポリマー)を使用する必要がある場合がある。
これらの投与方法を使用して、特定のオピオイドアゴニスト化合物と鎮痛薬とを投与することによって、治療または予防することができる任意の病態を治療することができる。最も一般的には、本明細書に提供する組成物および組み合わせは、慢性疼痛の管理のために投与される。そこで、本明細書に開示する方法は、例えば、本明細書に提供する組成物および組み合わせの投与により、疼痛を治療するための方法を含む。当業者は、特定のオピオイドアゴニスト化合物および鎮痛薬が効果的に治療することができる病態を認識している。投与することになる実際の用量は、被験体の年齢、体重、および全身状態、ならびに治療される病態の重症度、医療従事者の判断、投与されるオピオイドアゴニスト化合物および鎮痛薬に応じて変動する。治療有効量は、当業者に公知であり、かつ/または関連する参考文書および文献に記載されている。一般的に、各成分(例えば、オピオイドアゴニスト化合物および/または鎮痛薬)の治療有効量は、約0.001mg〜1000mgの範囲であり、特定の実施形態では、0.01mg〜750mgの用量、また特定の実施形態では、0.10mg〜500mgの用量である。
特定の実施形態では、組成物は単位剤形であり、それによって、単位剤形中の各有効成分の量を単回投与に適した単位投薬量で提供することになる。適切な医薬組成物および剤形は、医薬製剤分野の技術者に公知の、関連する文書および文献、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences:18th Edition,Gennaro,A.R.,Ed.(Mack Publishing Company;Easton,Pennsylvania;1990)に記載される従来の方法を使用して調製することができる。
組成物の単位投薬量は、臨床医の判断、患者の必要性などに応じて、種々の投薬スケジュールで投与することができる。特定の投薬スケジュールは、当業者に公知であるか、または日常的な方法を使用して実験的に決定することができる。例示的な投薬スケジュールとして、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一旦、臨床的なエンドポイントが達成されると、組成物の投与は停止される。
オピオイドアゴニスト分子の共有結合修飾に基づいて、開示する組成物および組み合わせの中に存在するオピオイドアゴニスト化合物は、従来技術のオピオイドアゴニスト製剤を超える改善を示す。即ち、小さな水−オリゴマー(small water−oligomers)を含有するオピオイドアゴニスト化合物は、変化した薬物動態プロファイルを有するが、経皮パッチなどの特定の代替的送達製剤に関連する、即効性オピオイドアゴニストの回収および乱用を可能にする物理的タンパリングの危険性を受けない。米国特許出願公開第2010/0048602号明細書、国際公開第2008/112288号パンフレット、国際公開第2010/033195号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0237614号明細書、国際公開第2011/011543号パンフレット、米国特許出願公開第2012/0184581号明細書、国際公開第2011/088140号パンフレット、および米国特許出願第13/521,556号明細書。オピオイドアゴニスト化合物それ自体は、改変されていないオピオイドと同等の鎮痛効果を依然として維持しながら、オピオイドの投与に付随する多幸感を除去するのに有用である可能性がある。オピオイドアゴニスト化合物はまた、オピオイドの使用に付随するCNS副作用の低減または除去に、またそれに関する常習性および/または常習性に伴う乱用可能性の低減に有用である。そこで、本発明の組成物および組み合わせには、これらおよび他の有益な特性も存在するであろう。
従って、OPIOIDは、ミュー(μ)、カッパ(κ)、またはデルタ(δ)オピオイド受容体と相互作用する任意の化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む、任意のオピオイドアゴニストであってよい。特定の実施形態では、オピオイドは、ミュー(μ)オピオイド受容体に対して選択的である。特定の実施形態では、オピオイドは、カッパ(κ)オピオイド受容体に対して選択的である。特定の実施形態では、オピオイドは、デルタ(δ)オピオイド受容体に対して選択的である。使用に適切なオピオイドは、天然に存在する分子、半合成分子または合成分子であってもよい。
特定の実施形態では、OPIOIDは、式:
(式中、
R
1は、水素、アシル、および低級アルキルから選択され;
R
2は、水素およびヒドロキシルから選択され;
R
3は、水素およびアルキルから選択され;
R
4は、水素であり;
「−−−」は、任意選択的結合を表し;
Y
1は、OおよびSから選択され;かつ
R
5は、
からなる群から選択され(立体化学に配慮せず)、ここで、R
6は有機ラジカルである[C(O)CH
3を含む])のオピオイドアゴニストの残基であってもよい。例示的なR
3基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピルなどの低級アルキル、および以下のもの:
が挙げられる。
特定の実施形態では、OPIOIDは、式:
(式中、
N*は、窒素であり;
Arは、シクロヘキシル、フェニル、ハロフェニル、メトキシフェニル、アミノフェニル、ピリジル、フリル、およびチエニルから選択され;
Alkは、エチレンおよびプロピレンから選択され;
R
IIは、低級アルキル、低級アルコキシ、ジメチルアミノ、シクロプロピル、1−ピロリジニル、モルホリノから選択され;
R
II’は、水素、メチル、およびメトキシから選択され;かつ
R
II”は、水素および有機ラジカルから選択される)のオピオイドアゴニストの残基であってもよい。
式IIに関しては、条件に応じて、アミンの一方または両方−−より典型的には、式IIのアスタリスク(「N*」)の印があるアミン−−がプロトン化される可能性があると理解されよう。
特定の実施形態では、RIIは低級アルキルから選択される。特定の実施形態では、RIIはエチルである。
使用することができるオピオイド化合物として、アセトルフィン、アセチルジヒドロコデイン、アセチルジヒドロコデイノン、アセチルモルヒノン、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ビファリン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、ダイノルフィン(ダイノルフィンAおよびダイノルフィンBを含む)、エンドルフィン(β−エンドルフィンおよびα/β−ネオエンドルフィンを含む)、エンケファリン(Met−エンケファリンおよびLeu−エンケファリンを含む)、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、フェンタニルおよび誘導体、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナンシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナノルフィン、ナルブフィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェノドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、ならびにトラマドールが挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニストは、ヒドロコドン、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシコドン、コデイン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、オキシモルホン、ブプレノルフィン、フェンタニル、ジピパノン、ヘロイン、トラマドール、ナルブフィン、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ブトルファノール、およびレボルファノールから選択される。
他の実施形態では、オピオイドアゴニストは、フェンタニル、ヒドロモルホン、ナルブフィン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、およびオキシモルホンから選択される。
オピオイドアゴニスト活性を有する他のいずれのオピオイド化合物もまた、使用してもよい。所与の化合物(化合物が本明細書に開示するオピオイドアゴニスト化合物であるかその親形態であるかにかかわらず)が、オピオイド受容体に対してアゴニストとして作用できるかどうかを決定するためのアッセイについては、本明細書に記載されており、当該技術分野において公知である。
場合によっては、オピオイドアゴニストは、商業的供給源から入手することができる。加えて、オピオイドアゴニストは、合成有機化学の標準的な技術を使用して、合成することができる。オピオイドアゴニストを調製するための合成アプローチについては、参考文献ならびに例えば、米国特許第2,628,962号明細書、同第2,654,756号明細書、同第2,649,454号明細書、および同第2,806,033号明細書に記載されている。
これら(および他の)オピオイドアゴニスト(またはその残基)のそれぞれは、(直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって)水溶性オリゴマーに共有結合させることができる。そのようなオピオイドアゴニスト化合物を調製するための方法は、米国特許出願公開第2010/0048602号明細書、国際公開第2008/112288号パンフレット、国際公開第2010/033195号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0237614号明細書、国際公開第2011/011543号パンフレット、米国特許出願公開第2012/0184581号明細書、国際公開第2011/088140号パンフレット、および米国特許出願第13/521,556号明細書に記載されており、それらのそれぞれは、参照により組み込まれる。具体的かつ例示的な合成法が、以下に実施例1〜6で列挙されている。
本発明において有用なオピオイドアゴニストは、一般的に、約1500Da(ダルトン)未満、および特定の実施形態では、約1000Da未満の分子量を有する。オピオイドアゴニストの例示的分子量として、約950Da未満;約900Da未満;約850Da未満;約800Da未満;約750Da未満;約700Da未満;約650Da未満;約600Da未満;約550Da未満;約500Da未満;約450Da未満;約400Da未満;約350Da未満;および約300Da未満の分子量が挙げられる。
本発明において使用されるオピオイドアゴニストは、キラルの場合、ラセミ混合物、もしくは光学活性形態、例えば、単一の光学活性エナンチオマーであってもよく、または任意の組み合わせもしくは比率のエナンチオマー(即ち、スケールミック混合物)であってもよい。加えて、オピオイドアゴニストは、1つ以上の幾何異性体を所有してもよい。幾何異性体に関して、組成物は、単一の幾何異性体、または2つ以上の幾何異性体の混合物を含んでなり得る。本発明に使用するためのオピオイアゴニストは、その慣習的な活性形態であり得るか、またはある程度の改変を所有してもよい。例えば、オピオイドアゴニストは、水溶性オリゴマーの共有結合の前もしくは後に、それに結合させたターゲティング剤、タグ、またはトランスポーターを有してもよい。あるいは、オピオイドは、リン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンもしくは「DSPE」、ジパルミトイルジホスファチジルエタノールアミンもしくは「DPPE」など)または小さな脂肪酸のようなそれに結合させた親油性部分を所有してもよい。しかし、場合によっては、特定の実施形態では、オピオイドは、親油性部分への結合を含まない。
水溶性オリゴマーに結合するためのオピオイドアゴニストは、オリゴマーへの共有結合に適切な遊離のヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、チオ、アミノ基など(即ち、「ハンドル」)を所有する。加えて、オピオイドアゴニストは、反応基の導入によって、例えば、その既存の官能基の1つを、オリゴマーとオピオイドアゴニストとの間の安定な共有結合の形成に適切な官能基へ変換することによって、改変することができる。
従って、各オリゴマーは、次のものからなる群から選択される3つまでの異なるモノマータイプからなる:アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド;オレフィン性アルコール、例えば、ビニルアルコール、1−プロペノールまたは2−プロペノール;ビニルピロリドン;ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはヒドロキシアルキルメタクリレートであって、ここで、アルキルは、特定の実施形態では、メチルである;α−ヒドロキシ酸、例えば、乳酸またはグリコール酸;ホスファゼン、オキサゾリン、アミノ酸、炭水化物、例えば、単糖類、糖類またはマンニトール;およびN−アクリロイルモルホリン。特定の実施形態では、モノマータイプとして、アルキレンオキシド、オレフィン性アルコール、ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはメタクリレート、N−アクリロイルモルホリン、およびα−ヒドロキシ酸が挙げられる。特定の実施形態では、各オリゴマーは、独立して、この基から選択される2つのモノマータイプのコオリゴマーであるか、または、特定の実施形態では、この基から選択される1つのモノマータイプのホモオリゴマーである。
コオリゴマーにおける2つのモノマータイプは、同じモノマータイプ、例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのような2つのアルキレンオキシドであってもよい。特定の実施形態では、オリゴマーは、エチレンオキシドのホモオリゴマーである。通常、必ずしも必要ではないが、オピオイドアゴニストに共有結合していないオリゴマーの末端(または複数の末端)は、キャッピングされて非反応性にされる。あるいは、末端は、反応基を含んでもよい。末端が反応基である場合、反応基は、最終的なオリゴマーの形成条件下で、もしくはオリゴマーのオピオイドアゴニストへの共有結合中に非反応性になるように、または必要に応じて、保護されるように、選択される。1つの一般的な末端官能基は、特に、オリゴエチレンオキシドに対して、ヒドロキシルまたは−OHである。
水溶性オリゴマー(例えば、本明細書において提供される構造における「POLY」)は、異なる多くのジオメトリーのいずれかを有することができる。例えば、それは、線状、分岐状、またはフォーク状であり得る。最も典型的に、水溶性オリゴマーは、線状であるか、または分岐しており、例えば、1つの分岐点を有する。本明細書における考察の多くが、例示的なオリゴマーとしてポリ(エチレンオキシド)に集中しているが、本明細書に示す考察および構造は、上記の水溶性オリゴマーのいずれをも包含するように容易に拡張することができる。
リンカー部分を除く水溶性オリゴマーの分子量は、一般的に、比較的低い。例えば、水溶性オリゴマーの分子量は、典型的に、約2200ダルトン未満であり、そしてより典型的には、約1500ダルトン以下である。特定の他の実施形態では、水溶性オリゴマーの分子量は、800ダルトン未満であってもよい。
特定の実施形態では、水溶性オリゴマーの分子量の例示的値として、約500ダルトン以下、または約420ダルトン以下、または約370ダルトン以下、または約370ダルトン以下、または約325ダルトン以下、約280ダルトン以下、約235ダルトン以下、または約200ダルトン以下、約175ダルトン以下、または約150ダルトン以下、または約135ダルトン以下、約90ダルトン以下、または約60ダルトン以下、またはなお約45ダルトン以下が挙げられる。
特定の実施形態では、リンカー部分を除く水溶性オリゴマーの分子量の例示的値として:約1500ダルトン未満;約1450ダルトン未満;約1400ダルトン未満;約1350ダルトン未満;約1300ダルトン未満;約1250ダルトン未満;約1200ダルトン未満;約1150ダルトン未満;約1100ダルトン未満;約1050ダルトン未満;約1000ダルトン未満;約950ダルトン未満;約900ダルトン未満;約850ダルトン未満;約800ダルトン未満;約750ダルトン未満;約700ダルトン未満;約650ダルトン未満;約600ダルトン未満;約550ダルトン未満;約500ダルトン未満;約450ダルトン未満;約400ダルトン未満;および約350ダルトン未満が挙げられる;但し、各場合とも約250ダルトンを超える。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニストは、オリゴマーに結合するのではなく、水溶性ポリマー、即ち、50を超える反復サブユニットを有する部分に共有結合する。例えば、リンカー部分を除く水溶性ポリマーの分子量は、約80,000ダルトン未満;約70,000ダルトン未満;約60,000ダルトン未満;約50,000ダルトン未満;約40,000ダルトン未満;約30,000ダルトン未満;約20,000ダルトン未満;約10,000ダルトン未満;約8,000ダルトン未満;約6,000ダルトン未満;約4,000ダルトン未満;約3,000ダルトン未満;および約2,000ダルトン未満であってもよい;但し、各場合とも約250ダルトンを超える。
特定の実施形態では、水溶性オリゴマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約45〜約225ダルトン;約45〜約175ダルトン;約45〜約135ダルトン;約45〜約90ダルトン;約90〜約225ダルトン;約90〜約175ダルトン;約90〜約135ダルトン;約135〜225ダルトン未満;および約175〜約225ダルトンが挙げられる。
他の代替実施形態では、水溶性オリゴマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約250〜約1500ダルトン;約250〜約1200ダルトン;約250〜約800ダルトン;約250〜約500ダルトン;約250〜約400ダルトン;約250〜約500ダルトン;約250〜約1000ダルトン;および約250〜約500ダルトンが挙げられる。
水溶性ポリマー結合オピオイドアゴニストに関連する他の実施形態では、水溶性ポリマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約2,000〜約80,000ダルトン;約2,000〜約70,000ダルトン;約2,000〜約60,000ダルトン;約2,000〜約50,000ダルトン;約2,000〜約40,000ダルトン;約2,000〜約30,000ダルトン;約2,000〜約20,000ダルトン;約2,000〜約10,000ダルトン;約2,000〜約8,000ダルトン;約2,000〜約6,000ダルトン;約2,000〜約4,000ダルトン;約2,000〜約3,000ダルトン;約10,000〜約80,000ダルトン;約10,000〜約60,000ダルトン;約10,000〜約40,000ダルトン;約30,000〜約80,000ダルトン;約30,000〜約60,000ダルトン;約40,000〜約80,000ダルトン;および約60,000〜約80,000ダルトンが挙げられる。
水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、約1〜約1825の間(1および1825を包含する)であってもよく、この範囲内のすべての整数値を含む。
特定の実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲のうちの1つ以上に当てはまる:1〜5の間(即ち、1、2、3、4、および5から選択される);1〜4の間(即ち、1、2、3、または4であり得る);1〜3の間(即ち、1、2、または3から選択される);1〜2の間(即ち、1または2であり得る);2〜5の間(即ち、2、3、4、および5から選択され得る);2〜4の間(即ち、2、3、および4から選択される);2〜3の間(即ち、2または3のいずれかである);3〜5の間(即ち、3、4または5のいずれかである);3〜4の間(即ち、3または4である);ならびに4〜5の間(即ち、4または5である)。特定の場合において、オリゴマー中の連続するモノマーの数(および対応するオピオイドアゴニスト化合物)は、1、2、3、4、または5から選択される。それ故、例えば、水溶性オリゴマーがCH3−(OCH2CH2)n−を含む場合、「n」は、整数であり、1、2、3、4、または5であり得る。
特定の実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲のうちの1つ以上に当てはまる:6〜30の間(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30から選択される);6〜25の間(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25から選択される);6〜20の間(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択される);6〜15の間(6、7、8、9、10、11、12、13、14、15から選択される);6〜10の間(即ち、6、7、8、9、および10から選択される);10〜25の間(即ち、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25から選択される);ならびに15〜20の間(即ち、15、16、17、18、19、および20から選択される)。ある場合において、オリゴマー中の連続するモノマーの数(および対応するオピオイドアゴニスト化合物)は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25のうちの1つである。それ故、例えば、水溶性オリゴマーがCH3−(OCH2CH2)n−を含む場合、「n」は、整数であり、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25であり得る。
さらに別の実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲内:1〜10の間に入る、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10から選択される。
特定の他の実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲のうちの1つ以上に当てはまる:35〜1825の間;100〜1800の間;200〜1600の間;400〜1400の間;600〜1200の間;800〜1000の間;35〜1000の間;35〜600の間;35〜400の間;35〜200の間;35〜100の間;1000〜1825の間;1200〜1825の間;1400〜1825の間;および1600〜1825の間。
水溶性オリゴマーが1、2、3、4、または5のモノマーを有する場合、これらの値は、それぞれ、約75、119、163、207、および251ダルトンの分子量を有するメトキシ末端キャップ化オリゴ(エチレンオキシド)に対応する。オリゴマーが6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のモノマーを有する場合、これらの値は、それぞれ、約295、339、383、427、471、515、559、603、647、および691ダルトンの分子量を有するメトキシ末端キャップ化オリゴ(エチレンオキシド)に対応する。
(オピオイドアゴニスト上へオリゴマーを効果的に「成長させる」ために、1つ以上のモノマーを段階的に付加することとは対照的に)水溶性オリゴマーが、オピオイドアゴニストに結合させる場合、水溶性オリゴマーの活性型を含有する組成物は、単分散され得る。しかし、それらの場合では、二峰性の組成物を用いる場合、組成物は、モノマーの上記の数のうちのいずれか2つを中心とする二峰性分布を所有する。理想的には、二峰性分布の各ピークの多分散指数、Mw/Mnは、1.01以下であり、特定の実施形態では、1.001以下であり、特定の実施形態では、1.0005以下である特定の実施形態では、各ピークは、1.0000のMW/Mn値を所有する。例えば、二峰性リゴマーは、モノマーサブユニットの次の例示的な組み合わせのいずれか1つを有してもよい:1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、1−9、1−10など;2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8、2−9、2−10など;3−4、3−5、3−6、3−7、3−8、3−9、3−10など;4−5、4−6、4−7、4−8、4−9、4−10など;5−6、5−7、5−8、5−9、5−10など;6−7、6−8、6−9、6−10など;7−8、7−9、7−10など;および8−9、8−10など。
場合によっては、水溶性オリゴマーの活性型を含有する組成物は、三峰性またはなお四峰性でもあり、先に記載のようなある範囲のモノマー単位を所有する。オリゴマーの良好に定義された混合物を所有するオリゴマー組成物(即ち、二峰性、三峰性、四峰性などである)は、オリゴマーの所望のプロファイル(モノマーの数だけが異なる2つのオリゴマーの混合物は二峰性であり;モノマーの数だけが異なる3つのオリゴマーの混合物は三峰性であり;モノマーの数だけが異なる4つのオリゴマーの混合物は四峰性である)を得るように、精製された単分散オリゴマーを混合することによって調製することができるか、あるいは、所望および定義された分子量範囲のオリゴマーの混合物を得るように、「センターカット」を回収することによって、多分散オリゴマーのカラムクロマトグラフィーから得ることができる。
特定の実施形態では、水溶性オリゴマーは、単分子または単分散である組成物から得る。即ち、組成物中のオリゴマーは、分子量の分布ではなく、同じ別個の分子量値を所有する。いくつかの単分散オリゴマーは、Sigma−Aldrichから入手可能なもののように、商業的供給源から購入することができるか、あるいは、Sigma−Aldrichのような市販の出発物質から直接調製することができる。水溶性オリゴマーは、Chen and Baker,J.Org.Chem.6870−6873(1999)、国際公開第02/098949号パンフレット、および米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されているように調製することができる。
存在する場合、スペーサー部分(これを介して、水溶性オリゴマーはオピオイドアゴニストに結合される)は、単結合、酸素原子もしくは硫黄原子のような単一の原子、2個の原子、または多くの原子であってもよい。特に、「X」は、OPIOIDとPOLYとの間の共有結合を表してもよく、あるいは、それは、OPIOIDおよび/またはPOLY単独上には存在しない化学部分を表してもよい。スペーサー部分は、必ずしもその必要はないが、典型的に、事実上線状である。特定の実施形態では、スペーサー部分、「X」は、加水分解的に安定であり、そして特定の実施形態ではまた、酵素的に安定である。特定の実施形態では、スペーサー部分、「X」は、生理学的に切断可能であり、即ち、加水分解的に切断可能であるかまたは酵素的に分解可能である。特定の実施形態では、スペーサー部分「X」は、約12個未満の原子、特定の実施形態では、約10個未満の原子、特定の実施形態では、約8個未満の原子、特定の実施形態では、約5個未満の原子の鎖長を有するものであり、ここで、長さは、置換基を数に入れない、単一鎖内の原子の数を意味する。例えば、このRオリゴマー−NH−(C=O)−NH−R’OPのような尿素連結は、3個の原子(−NH−C(O)−NH−)の鎖長を有するものと見なされる。特定の実施形態では、スペーサー部分の連結は、さらなるスペーサー基を含まない。
場合によっては、スペーサー部分「X」は、エーテル、アミド、ウレタン、アミン、チオエーテル、尿素、または炭素−炭素結合を含んでなる。官能基は、典型的に、連結を形成するために使用される。以下にさらに説明するように、スペーサー部分はまた、スペーサー基を含んでなる(またはそれに隣接するか、もしくは側面にある)こともある。
より具体的には、特定の実施形態では、スペーサー部分、Xは、次のもののいずれであってもよい:「−」(即ち、共有結合、安定であっても、または分解性であってもよく、オピオイドアゴニストの残基と水溶性オリゴマーとの間にある)、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−CH2−C(O)O−、−CH2−OC(O)−、−C(O)O−CH2−、−OC(O)−CH2−、C(O)−NH、NH−C(O)−NH、O−C(O)−NH、−C(S)−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−NH−C(O)−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、−NH−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−CH2−、−NH−CH2−、−NH−CH2−CH2−、−CH2−NH−CH2−、−CH2−CH2−NH−CH2−、−C(O)−CH2−、−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、二価のシクロアルキル基、−N(R6)−、ここで、R6は、H、またはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリールおよび置換アリールからなる群から選択される有機ラジカルである。例示的なリンカーは酸素である。
しかし、本開示の目的のために、一群の原子は、それがオリゴマーセグメントに直接隣接している場合、スペーサー部分とはみなされず、そしてその一群の原子は、その群がオリゴマー鎖の単なる伸長を表すように、オリゴマーのモノマーと同じとされる。
水溶性オリゴマーとオピオイドアゴニストとの間の連結「X」は、典型的に、オリゴマーの末端上の官能基(またはオピオイドアゴニスト上でオリゴマーを「成長させる」ことが所望される場合、1つ以上のモノマー)と、オピオイドアゴニスト内の対応する官能基との反応によって形成される。例えば、オリゴマー上のアミノ基を、アミド連結を生成するように、オピオイドアゴニスト上のカルボン酸もしくは活性化カルボン酸誘導体と反応させてもよく、またはその逆でもよい。あるいは、オリゴマー上のアミンとオピオイドアゴニスト上の活性化カルボネート(例えば、スクシンイミジルもしくはベンゾトリアジルカルボネート)、またはその逆の反応は、カルバメート連結を形成する。オリゴマー上のアミンとオピオイドアゴニスト上のイソシアネート(R−N=C=O)、またはその逆の反応は、尿素連結(R−NH−(C=O)−NH−R’)を形成する。さらに、オリゴマー上のアルコール(アルコキシド)基と、オピオイドアゴニスト内のハロゲン化アルキル、もしくはハライド基、またはその逆の反応は、エーテル連結を形成する。なおもう1つの結合アプローチでは、アルデヒド機能を有するオピオイドアゴニストを、還元的アミノ化によってオリゴマーアミノ基に結合させ、オリゴマーとオピオイドアゴニストとの間の第二級アミン連結の形成を生じさせる。
特定の実施形態では、水溶性オリゴマーは、アルデヒド官能基を有するオリゴマーである。これに関して、オリゴマーは、次の構造を有する:CH3O−(CH2−CH2−O)n−(CH2)p−C(O)H[式中、(n)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10のうちの1つであり、そして(p)は、1、2、3、4、5、6および7のうちの1つである]。特定の実施形態では、(n)値として、1、2、3、4、7、8、9、および10が挙げられ、そして(p)値として、2、3および4が挙げられる。加えて、−C(O)H部分に対する炭素原子αは、場合により、アルキルで置換することができる。
典型的に、官能基を有さない水溶性オリゴマーの末端は、キャッピングされて、非反応性にされる。オリゴマーがオピオイドアゴニスト化合物の形成を目的とする以外に、末端にさらなる官能基を含む場合、その基は、連結「X」の形成条件下で非反応性であるか、または連結「X」の形成中に保護されるように、選択される。そのような例示的なオリゴマー末端としては、ヒドロキシル、アルコキシ、および/または保護基が挙げられる。
上記のように、水溶性オリゴマーは、コンジュゲーションの前に、少なくとも1つの官能基を含む。官能基は、典型的に、オピオイドアゴニスト内に含有されるか、もしくはオピオイド化合物に導入される反応基に依存して、オピオイドアゴニストへの共有結合のための求電子または求核基を含んでなる。オリゴマーまたはオピオイドアゴニストのいずれかに存在し得る求核基の例として、ヒドロキシル、アミン、ヒドラジン(−NHNH2)、ヒドラジド(−C(O)NHNH2)、およびチオールが挙げられる。好適な求核剤として、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、およびチオール、好ましくは、アミンが挙げられる。オリゴマーへの共有結合のためのほとんどのオピオイドアゴニストは、遊離のヒドロキシル、アミノ、チオ、アルデヒド、ケトン、またはカルボキシル基を所有する。
オリゴマーまたはオピオイドアゴニストのいずれかに存在し得る求電子官能基の例として、カルボン酸、カルボキシルエステル、特に、イミドエステル、オルトエステル、カルボネート、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、スルホネート、チオスルホネート、シラン、アルコキシシラン、およびハロシランが挙げられる。これらの基のさらなる具体例として、スクシンイミジルエステルまたはカルボネート、イミダゾイルエステルまたはカルボネート、ベンゾトリアゾールエステルまたはカルボネート、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレート(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)が挙げられる。
また、チオン、チオン水和物、チオケタール、2−チアゾリジンなどのようなこれらの基のうちのいくらかの硫黄アナログ、ならびに上記の部分のいずれかの水和物または保護された誘導体(例えば、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタール)も挙げられる。
カルボン酸の「活性化誘導体」は、一般的に、非誘導体化カルボン酸より極めて容易に求核剤と反応するカルボン酸誘導体を指す。活性化カルボン酸として、例えば、酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)、無水物、カルボネートおよびエステルが挙げられる。そのようなエステルとして、一般形が−(CO)O−N[(CO)−]2であるイミドエステル;例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルまたはN−ヒドロキシフタルイミジルエステルが挙げられる。また、イミダゾリルエステルおよびベンゾトリアゾールエステルもまた挙げられる。共同所有の米国特許第5,672,662号明細書に記載の活性化プロピオン酸またはブタン酸エステルが特に好適である。これらは、−(CH2)2−3C(=O)O−Qの形態の基を含み、ここで、Qは、N−スクシンイミド、N−スルホスクシンイミド、N−フタルイミド、N−グルタルイミド、N−テトラヒドロフタルイミド、N−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ベンゾトリアゾール、7−アザベンゾトリアゾール、およびイミダゾールから選択される。
他の求電子基として、スクシンイミジルカルボネート、マレイミド、ベンゾトリアゾールカルボネート、グリシジルエーテル、イミダゾイルカルボネート、p−ニトロフェニルカルボネート、アクリレート、トレシレート、アルデヒド、およびオルトピリジルジスルフィドが挙げられる。
これらの求電子基は、求核剤、例えば、ヒドロキシ、チオ、またはアミノ基との反応に供されて、さまざまな結合型を生成する。求電子官能基のいくらかは、チオールのような求核基を添加して、例えば、チオエーテル結合を形成することができる求電子二重結合を含む。これらの基として、マレイミド、ビニルスルホン、ビニルピリジン、アクリレート、メタクリレート、およびアクリルアミドが挙げられる。他の基は、求核剤によって置き換えることができる脱離基を含んでなり、これらには、クロロエチルスルホン、ピリジルジスルフィド(切断可能なS−S結合を含む)、ヨードアセトアミド、メシレート、トシレート、チオスルホネート、およびトレシレートが含まれる。エポキシドは、求核剤による開環によって反応して、例えば、エーテルまたはアミン結合を形成する。オリゴマーおよびオピオイドアゴニスト上に上記のような相補的な反応基に関与する反応を利用して、本発明のオピオイドアゴニスト化合物を調製する。
特定の実施形態では、反応は加水分解的に安定な連結を形成し易い。例えば、オルトエステル、スクシンイミジルエステル、イミダゾリルエステル、およびベンゾトリアゾールエステルを含むカルボン酸およびその活性化誘導体は、上記のタイプの求核剤と反応して、それぞれ、エステル、チオエステル、およびアミドを形成するが、それらのうちアミドが最も加水分解的に安定である。スクシンイミジル、イミダゾリル、およびベンゾトリアゾールカルボネートを含むカルボネートは、アミノ基と反応して、カルバメートを形成する。イソシアネート(R−N=C=O)は、ヒドロキシルまたはアミノ基と反応して、それぞれ、カルバメート(RNH−C(O)−OR’)または尿素(RNH−C(O)−NHR’)連結を形成する。アルデヒド、ケトン、グリオキサール、ジオン、およびそれらの水和物またはアルコール付加物(即ち、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、およびケタール)は、アミンと反応し、続いて、得られるイミンを還元して、所望であれば、アミン連結を提供する(還元的アミノ化)。
特定の実施形態では、反応は生理学的に切断可能な連結を形成し易い。放出可能な連結は、必ずしもその必要はないが、オピオイドアゴニストに結合した水溶性オリゴマー(および/または任意のスペーサー部分もしくはリンカー)のいずれのフラグメントも放出することなく、インビボで(およびいくつかの場合、インビトロで)オピオイド化合物から脱離される水溶性オリゴマー(および任意のスペーサー部分)を生じ得る。例示的な放出可能な連結として、炭酸塩、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、特定のカルバミン酸塩、およびオルトエステルが挙げられる。そのような連結は、当該技術分において一般に用いられるカップリング方法を使用するオピオイドおよび/またはポリマー性試薬の反応によって、容易に形成することができる。加水分解可能な連結は、しばしば、適切に活性化されたオリゴマーと、オピオイド内に含有される改変されていない官能基との反応によって、容易に形成される。
場合によっては、オピオイドアゴニストは、コンジュゲーションに適した官能基を有していなくてもよい。この場合、「本来の」オピオイドアゴニストが所望される官能基を有するように、それを改変することが可能である。例えば、オピオイドアゴニストはアミド基を有するが、アミン基が所望される場合、Hofmann転位、Curtius転位(一旦、アミドがアジドに変換される)またはLossen転位(一旦、アミドがヒドロキサミドに変換され、続いて、トリエン(tolyene)−2−塩化スルホニル/塩基により処理される)によって、アミド基をアミン基に改変することが可能である。
カルボキシル基を有する親オピオイドアゴニスト(ここで、カルボキシル基を有するオピオイドアゴニストは、アミノ末端化オリゴマー性エチレングリコールに結合される)のオピオイドアゴニスト化合物を調製して、オピオイドアゴニストをオリゴマーに共有結合させるアミド基を有するオピオイドアゴニスト化合物を提供することが可能である。これは、例えば、無水の有機溶媒中で(ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは「DCC」のような)カップリング試薬の存在下で、カルボキシル基を有するオピオイドアゴニストを、アミノ末端化オリゴマー性エチレングリコールに結合させることによって、実施することができる。
さらに、ヒドロキシル基を有する親オピオイドアゴニスト(ここで、ヒドロキシル基を有するオピオイドアゴニストは、オリゴマー性エチレングリコールハロゲン化物に結合される)のオピオイドアゴニスト化合物を調製して、エーテル(−O−)連結オピオイド化合物コンジュゲートをもたらすことが可能である。これは、例えば、水素化ナトリウムを使用して、ヒドロキシル基を脱プロトン化し、続いて、ハライド末端化オリゴマー性エチレングリコールと反応させることによって、実施することができる。
もう1つの実施例では、最初にケトン基を還元して、対応するヒドロキシル基を形成することによって、ケトン基を有する親オピオイドアゴニストのオピオイドアゴニスト化合物を調製することが可能である。その後、その段階でヒドロキシル基を有するオピオイドアゴニストを、本明細書に記載のように結合させることができる。
なお別の場合、アミン基を有する親オピオイドアゴニストのオピオイドアゴニスト化合物を調整することが可能である。1つのアプローチでは、アミン基を有するオピオイドアゴニストおよびアルデヒドを有するオリゴマーを、適切な緩衝液に溶解し、その後、適切な還元剤(例えば、NaCNBH3)を添加する。還元後、結果として、アミン基含有オピオイドアゴニストのアミン基とアルデヒドを有するオリゴマーのカルボニル炭素との間に、アミン連結が形成される。
アミン基を有する親オピオイドアゴニストのオピオイドアゴニスト化合物を調製するためのもう1つのアプローチでは、典型的に、カップリング試薬(例えば、DCC)の存在下で、カルボン酸を有するオリゴマーとアミン基を有するオピオイドアゴニストとが組み合わされる。結果として、アミン基含有オピオイドアゴニストのアミン基とカルボン酸を有するオリゴマーのカルボニルとの間に、アミド連結が形成される。
特定の例示的なオピオイドアゴニスト化合物の合成を、実施例1、実施例2、および実施例3に詳細に記載する。実施例1では、オリゴマー性mPEG
n−モルヒネ化合物の合成を記載する。モルヒネには2つのヒドロキシル官能基があるので、使用する合成では、非標的ヒドロキシル基(即ち、芳香族性ヒドロキシル)を、最初にβ−メトキシエトキシメチルエーテル、MEMなどの適切な保護基で保護した後、強塩基である水素化ナトリウムの存在下で、MEM保護モルヒネをオリゴマー性PEGメシレート(PEG
n−OMs)と反応させて、オリゴマー性ポリエチレングリコール部分を導入する。次いで、MEM保護基を酸、例えば塩酸で処理して除去し、以下に示す一般構造を有する、所望の6−mPEG
n−O−モルヒネ化合物(n=1、2、3、4、5、6、7、9)を得る。
例示的なmPEG
n−O−コデイン化合物の合成は、実施例2で詳細に記載する。使用するアプローチでは、単一の標的ヒドロキシ官能基を有するコデインを、強塩基、例えば水素化ナトリウムの存在下で、mPEG
nメシレートと反応させて、所望の化合物を得る。生成物は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して精製することができる。調製されるオリゴマー性mPEG
n−O−コデイン化合物(n=1、2、3、4、5、6、7、9)は、以下に示す一般構造を有する。
同様の方法で、mPEG
n−O−ヒドロキシコドン化合物を、実施例3(n=1、2、3、4、5、6、7、および9)に詳細に記載するように調製した。化合物は以下の一般構造を有する。
さらなる化合物を同様に調製することができる。
本発明の特定の実施形態では、Xは安定なリンカーである。先に開示のように、安定な連結を介して小さな水溶性オリゴマーに結合した特定のオピオイドアゴニストは、血液脳関門を横断する能力を保持しながら、親オピオイドアゴニストと比べて、低減したBBB横断速度で横断することが見出されている。特定の理論に束縛されるつもりはないが、BBB膜横断速度の低減は、親オピオイドアゴニストに対する、この分子の固有のBBB透過特性の変化に関する一次関数であると考えられる。さらに、任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、そのようなオピオイドアゴニスト化合物は、BBBの横断が緩徐で、親オピオイドアゴニストおよび潜在的な依存性陶酔に関連する迅速なピーク濃度が回避されるために、低い常習性を有すると推定される。さらに、オピオイドアゴニスト化合物は、インビボでのオピオイドの組織分布の変化または末梢のオピオイド受容体での活性の低減のために、親オピオイドと比べて、改善された副作用プロファイルを示し得る。そこで、本発明の組成物および組み合わせは、これらの特性を共有すると考えられる。
それ故、オピオイドアゴニスト化合物にBBBを横断する能力があれば、オピオイドアゴニスト、リンカー、および水溶性オリゴマーの任意の組み合わせを使用することができる。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、親オピオイドアゴニストと比べて、低減した速度でBBBを横断する。特定の実施形態では、水溶性オリゴマーはPEG部分である。特定の実施形態では、PEG部分は1〜10個のポリエチレングリコール単位からなる。典型的には、PEG部分は、1〜3(即ち、1、2、または3)個のポリエチレングリコール単位からなる小さなモノマー性PEGである。特定の実施形態では、PEG部分は、4または5または6個のポリエチレングリコール単位であってもよい。
血液脳関門(「BBB」)に関して、この関門は、薬物の血液から脳への輸送を制限する。この関門は、タイトジャンクションによって接続される独特の内皮細胞の連続層からなる。BBBの全表面積の95%超を含んでなる脳毛細血管は、ほとんどの溶質および薬物の中枢神経系への主要な進入経路である。
当業者によって理解されるように、分子サイズ、親油性、およびPgP相互作用は、所与の分子の固有のBBB透過特性に影響を及ぼす主要なパラメータに属する。即ち、これらの因子は、組み合わせて採用する場合、所与の分子がBBBを介して通過するかどうか、そしてそうである場合、どれだけの速度で通過するかを制御する。
BBB内の小さなポアサイズのため、分子サイズは、所与の分子がBBBを通過するかどうかの決定に重要な役割を果たす。極めて大きな分子、例えば、5,000ダルトンの分子量を有する分子は、BBBを横断せず、小さな分子の方が、BBBを透過する可能性が高い。しかし、他の因子もまた、BBB横断において役割を果たす。アンチピリンおよびアテノロールは、両方とも、小分子薬物であり;アンチピリンは容易にBBBを通過するが、アテノロールの通過は、極めて制限されるか、または効果的には存在していない。アンチピリンは、高BBB透過の産業的標準であり;アテノロールは、BBBの低透過の産業的標準である。例えば、Summerfield et al.,J Pharmacol Exp Ther322:205−213(2007)を参照のこと。従って、本発明に従えば、Xが安定なリンカーである場合、1〜3個のポリエチレングリコール単位を有する、開示の組成物および組み合わせの一部としてのオピオイドアゴニスト化合物は、一般的に、BBBを横断すると予想することができる。特定の環境では、固有のBBB透過特性が全体として適切である場合、4または5個のポリエチレングリコール単位を有する特定のオピオイドアゴニスト化合物もまた、BBBを横断し得る。
親油性もまた、BBB透過の因子である。親油性は、logP(分配係数)または場合によっては、logD(分布係数)として表現することができる。所与の分子のlogP(またはlogD)については、当業者が容易に評価することができる。logPの値は、負の数(より親水性の分子)であっても、または正の数(より疎水性の分子)であってもよい。logPについて言及する場合、本明細書において使用する「より負」は、logPの尺度上で、正から負のlogPの方向に移動すること(例えば、2.0のlogPは4.0のlogP「より負」であり、−2.0のlogPは−1.0のlogP「より負」である)。負のlogPを有する分子(親水性分子)は、一般的に、BBBを透過しない。特定の実施形態では、本発明のオピオイドアゴニスト化合物は、約0〜約4.0の間のlogPを有する。特定の実施形態では、本発明のオピオイドアゴニスト化合物は、約1.0〜約3.5の間のlogPを有する。特定の実施形態では、本発明のアゴニスト化合物は、約4.0、約3.5、約3.0、約2.5、約2.0、約1.5、約1.0、約0.5、もしくは約0のlogPを有するか、またはそれらは、約0〜約3.5、約0〜約3.0、約0〜約2.0、約0〜約1.0、約1.0〜約4.0、約1.0〜約3.0、約1.0〜約2.0、約2.0〜約4.0、約2.0〜約3.5、約2.0〜約3.0、約3.0〜約4.0、もしくは約3.0〜約3.5の範囲のlogPを有してもよい。
BBBに対する透過性はまた、P−糖タンパク質、またはPgP、BBBにおいて高度に発現されるATP依存的流出トランスポーターに依存する。当業者は、インビトロ方法を使用して、化合物がPgPの基質であるかどうかを容易に決定することができる。インビトロでPgPの基質である化合物は、おそらく、インビボでBBBを透過しない。対照的に、インビトロで評価されるように、PgPの不良な基質は、化合物が、本明細書において考察され、そして当業者に公知である他の基準を満たせば、一般的に、BBBのインビボでの透過性を示す。例えば、Tsuji,NeuroRx 2:54−62(2005)およびRubin and Staddon,Annu.Rev.Neurosci.22:11−28(1999)を参照のこと。
特定の実施形態では、水溶性オリゴマーを、オピオイドアゴニスト化合物の所望される薬物動態プロファイルに従って選択してもよい。言い換えれば、オピオイドの水溶性オリゴマーへのコンジュゲーションにより、BBB膜横断速度の低減が生じるが、しかし、低減速度は、使用するオリゴマーのサイズに依存して変動し得る。一般的に、BBB横断速度の低減を最小にすることを所望する場合、より小さなオリゴマーを使用してもよく;BBB横断速度のより広範な低減を所望する場合、より大きなオリゴマーを使用してもよい。特定の実施形態では、異なる2つ以上のオピオイドアゴニスト化合物の組み合わせを同時に投与してもよく、ここで、各アゴニスト化合物は、異なるサイズの水溶性オリゴマー部分を有し、そしてここで、各アゴニスト化合物のBBB横断の速度は、異なるオリゴマーサイズのため、異なる。この様式では、オピオイドアゴニスト化合物のBBB横断の速度および期間は、多様な薬物動態プロファイルを伴う複数のオピオイドアゴニスト化合物の同時投与を介して、特異的に制御することができる。
血液脳関門横断脳の程度が容易に分からない化合物については、インサイチュでのラット脳灌流(「RBP」)モデルのような適切な動物モデルを使用して、そのような能力を決定することができる。簡単に説明すると、RBP技術は、頸動脈のカニューレ挿入と、それに続く、制御された条件下での化合物溶液による灌流と、それに続く、脈管空間に残留する化合物を取り出すための洗浄段階とに関与する。(そのような分析は、例えば、Absorption Systems,Exton,PAのような契約研究機関で行うことができる)。より具体的には、RBPモデルにおいて、カニューレを左頸動脈に配置し、そして側枝を結紮する。分析物を含有する生理緩衝液(典型的には、5マイクロモル濃度レベルであるが、必ずしもこれに限らない)を、シングルパス灌流実験において約10mL/分の流速で灌流する。30秒後、灌流を停止し、そしてさらに30秒間、化合物を含まない緩衝液で脳脈管内容物を洗い流す。次いで、脳組織を取り出し、そしてタンデム質量分析検出(LC/MS/MS)による液体クロマトグラフを介して、化合物濃度を分析する。あるいは、血液脳関門透過性は、分子における極性原子(通常、酸素、窒素および結合水素)の表面の寄与の合計として定義される、化合物の分子極性表面積(「PSA」)の計算に基づいて、推定することができる。PSAは、血液脳関門輸送のような化合物輸送特性との相関関係があることが示されている。化合物のPSAを決定するための方法は、例えば、Ertl,P.,et al.,J.Med.Chem.2000,43,3714−3717;およびKelder,J.,et al.,Pharm.Res.1999,16,1514−1519において見出すことができる。
特定の実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、オピオイドアゴニスト化合物の分子量は、2000ダルトン未満、特定の実施形態では、1000ダルトン未満である。特定の実施形態では、コンジュゲートの分子量は、950ダルトン未満、900ダルトン未満、850ダルトン未満、800ダルトン未満、750ダルトン未満、700ダルトン未満、650ダルトン未満、600ダルトン未満、550ダルトン未満、500ダルトン未満、450ダルトン未満、または400ダルトン未満である。
特定の実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、X−POLY(即ち、存在する場合、リンカーと組み合わされた水溶性オリゴマー)の分子量は、2000ダルトン未満である。特定の実施形態では、X−POLYの分子量は、好ましくは、1000ダルトン未満である。特定の実施形態では、X−POLYの分子量は、950ダルトン未満、900ダルトン未満、850ダルトン未満、800ダルトン未満、750ダルトン未満、700ダルトン未満、650ダルトン未満、600ダルトン未満、550ダルトン未満、500ダルトン未満、450ダルトン未満、400ダルトン未満、350ダルトン未満、300ダルトン未満、250ダルトン未満、200ダルトン未満、150ダルトン未満、100ダルトン未満、または50ダルトン未満である。
特定の実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、オピオイドアゴニスト化合物(即ち、OPIOID−X−POLY)は、親オピオイドほど疎水性ではない。言い換えれば、オピオイドアゴニスト化合物のlogPは、親オピオイドアゴニストのlogPより負である。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物のlogPは、親オピオイドアゴニストのlogPより約0.5単位負である。いくつかの実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物のlogPは、親オピオイドアゴニストのlogPと同じであるか、またはそれより正である。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物のlogPは、親オピオイドアゴニストより約4.0単位負、約3.5単位負、約3.0単位負、約2.5単位負、約2.0単位負、約1.5単位負、約1.0単位負、約0.9単位負、約0.8単位負、約0.7単位負、約0.6単位負、約0.4単位負、約0.3単位負、約0.2単位負または約0.1単位負である。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物のlogPは、親オピオイドアゴニストより約0.1単位〜約4.0単位負、約0.1単位〜約3.5単位負、約0.1単位〜約3.0単位負、約0.1単位〜約2.5単位負、約0.1単位〜約2.0単位負、約0.1単位〜約1.5単位負、約0.1単位〜約1.0単位負、約0.1単位〜約0.5単位負、約0.5単位〜約4.0単位負、約0.5単位〜約3.5単位負、約0.5単位〜約3.0単位負、約0.5単位〜約2.5単位負、約0.5単位〜約2.0単位負、約0.5単位〜約1.5単位負、約0.5単位〜約1.0単位負、約1.0単位〜約4.0単位負、約1.0単位〜約3.5単位負、約1.0単位〜約3.0単位負、約1.0単位〜約2.5単位負、約1.0単位〜約2.0単位負、約1.0単位〜約1.5単位負、約1.5単位〜約4.0単位負、約1.5単位〜約3.5単位負、約1.5単位〜約3.0単位負、約1.5単位〜約2.5単位負、約1.5単位〜約2.0単位負、約2.0単位〜約4.0単位負、約2.0単位〜約3.5単位負、約2.0単位〜約3.0単位負、約2.0単位〜約2.5単位負、約2.5単位〜約4.0単位負、約2.5単位〜約3.5単位負、約2.5単位〜約3.0単位負、約3.0単位〜約4.0単位負、約3.0単位〜約3.5単位負、または約3.5単位〜約4.0単位負である。
オピオイドアゴニスト化合物の血液脳関門の相対透過性および脳血漿比は、例えば国際公開第2011/088140号パンフレットに記載されている。
特定の実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、オピオイドアゴニスト化合物は、その標的受容体に対する適切な親和性、ひいては、脳内での適切な濃度および有効性を保持する。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、親オピオイドアゴニストが結合するのと同じ受容体に、少なくとも部分的に結合する。親オピオイドアゴニストまたはオピオイドアゴニスト化合物が、μ、κ、またはδオピオイド受容体アゴニストとしての活性を有するかどうかを決定するために、例えば、そのような化合物を試験することが可能である。例えば、組み換えヒトμ、κ、またはδオピオイド受容体を異種発現するCHO細胞における放射性リガンド結合アッセイを使用することができる。簡単に説明すると、細胞を24ウェルプレートにプレート化し、そしてアッセイ緩衝液で洗浄する。競合結合アッセイは、適切な濃度の放射性リガンドの存在下で、漸増濃度のオピオイドアゴニスト化合物と共にインキュベートした全付着細胞上で行われる。[3H]ナロキソン、[3H]ジプレノルフィンおよび[3H]DPDPEを、それぞれ、μ、κおよびδ受容体の競合放射性リガンドとして使用する。インキュベーション後、細胞を洗浄し、NaOHで可溶化し、そしてシンチレーションカウンターを使用して、結合放射能を測定する。
特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物のKi値は個々に、0.1〜900nMの範囲内、特定の実施形態では、0.1〜300nMの範囲内、また特定の実施形態では、0.1〜50nMの範囲内に入る。特定の実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、OPIOIDのその標的受容体に対する親和性と比べて、オピオイドアゴニスト化合物(即ち、OPIOID−X−POLYのOPIOID)の親和性の損失はなく、また特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物の親和性は、OPIOIDのその標的受容体に対する親和性より大きくなり得る。特定の実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、オピオイドアゴニスト化合物(即ち、OPIOID−X−POLYのOPIOID)の親和性は、OPIOIDのその標的受容体の親和性と比べて、低減が最小限であり、またいくつかの場合では、親和性の増加または親和性の無変化が示されることもある。特定の実施形態では、親オピオイドアゴニストのその標的受容体に対する親和性と比べて、オピオイドアゴニスト化合物の親和性は約1/2超である。特定の実施形態では、親オピオイドアゴニスト化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、オピオイドアゴニスト化合物の親和性は約1/5超、約1/10超、約1/20超、約1/30超、約1/40超、約1/50超、約1/60超、約1/70超、約1/80超、約1/90超、または約1/100超である。
Xが安定なリンカーである特定の他の実施形態では、親オピオイドアゴニストのその標的受容体に対する親和性と比べて、オピオイドアゴニスト化合物の親和性の低減は、20%未満である。特定の実施形態では、親オピオイドと比べて、オピオイドアゴニスト化合物の親和性における低減は、10%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、または95%未満である。
Xが安定なリンカーである特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物のBBB横断速度、または透過性は、OPIOID単独の横断速度より小さい。特定の実施形態では、横断の速度は、OPIOID単独の速度の少なくとも約50%未満である。特定の実施形態では、OPIOID単独の横断の速度と比べて、オピオイドアゴニスト化合物のBBB横断速度において少なくとも約10%の低減、少なくとも約15%の低減、少なくとも約20%の低減、少なくとも約25%の低減、少なくとも約30%の低減、少なくとも約35%の低減、少なくとも約40%の低減、少なくとも約45%の低減、少なくとも約55%の低減、少なくとも約60%の低減、少なくとも約65%の低減、少なくとも約70%の低減、少なくとも約75%の低減、少なくとも約80%の低減、少なくとも約85%の低減、少なくとも約90%の低減、少なくとも約95%の低減、または少なくとも約99%の低減が認められる。他の実施形態では、本発明のオピオイドアゴニスト化合物は、OPIOID単独の横断の速度と比べて、オピオイドアゴニスト化合物のBBB横断速度における10〜99%の低減、10〜50%の低減、50〜99%の低減、50〜60%の低減、60〜70%の低減、70〜80%の低減、80〜90%の低減、または90〜99%の低減を示し得る。
本発明の組成物および組み合わせで使用されるオピオイドアゴニスト化合物は、Xが安定なリンカーである場合、BBB横断速度が、OPIOID単独の横断速度と比べて、1〜1/100の低減であることが示され得る。特定の実施形態では、親オピオイドアゴニストのBBB横断速度と比べて、オピオイドアゴニスト化合物のBBB横断速度が約1/2以下、約1/5以下、約1/10以下、約1/20以下、約1/30以下、約1/40以下、約1/50以下、約1/60以下、約1/70以下、約1/80以下、約1/90以下、または約1/100以下であり得る。
オピオイドアゴニスト化合物のBBB横断の速度はまた、Xが安定なリンカーである場合、アンチピリン(高透過性の標準)および/またはアテノロール(低透過性の標準)のBBB横断速度と比較検討することができる。アンチピリンおよび/またはアテノロールのBBB横断速度と比べた本発明のオピオイドアゴニスト化合物のBBB横断速度についてのいかなる言及も、同じ条件下の同じアッセイにおいて速度を評価したことを意味するものと当業者によって理解されよう。それ故、特定の実施形態では、本明細書で使用するオピオイドアゴニスト化合物は、アンチピリンのBBB横断速度と比べて、BBB横断速度が約1/2以下、約1/5以下、約1/10以下、約1/20以下、約1/30以下、約1/40以下、約1/50以下、約1/60以下、約1/70以下、約1/80以下、約1/90以下、または約1/100以下の速度であることを示し得る。他の実施形態では、本発明のオピオイドアゴニスト化合物は、アテノロールのBBB横断速度と比べて、BBB横断速度が少なくとも約2倍超、少なくとも約5倍超、少なくとも約10倍超、少なくとも約20倍超、少なくとも約30倍超、少なくとも約40倍超、少なくとも約50倍超、少なくとも約60倍超、少なくとも約70倍超、少なくとも約80倍超、少なくとも約90倍超、または少なくとも約100倍超の速度であることを示し得る。
特定の実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、オピオイドアゴニスト化合物(即ち、OPIOID−X−POLY)は、親オピオイド(即ち、OPIOID)と比べて、オピオイドアゴニスト生体活性のすべてまたはいくつかを保持し得る。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、親オピオイドと比べて、すべてのオピオイドアゴニスト生体活性を保持するか、またはいくつかの状況では、親オピオイドよりも活性である。特定の実施形態では、本明細書で使用するオピオイドアゴニスト化合物は、親オピオイドアゴニストと比べて、生体活性が約1/2超、約1/5超、約1/10超、約1/20超、約1/30超、約1/40超、約1/50超、約1/60超、約1/70超、約1/80超、約1/90超、または約1/100超であることを示す。いくつかの実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、親オピオイドと比べて、オピオイドアゴニスト生体活性の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を保持する。
本明細書に列挙した値は、例示的かつ非限定的であり、また特定のオピオイドアゴニストでは、本明細書に列挙した範囲以外に入ることもあるが、本発明の精神と範囲の中にとどまることを、当業者ならば理解されよう。オピオイドアゴニスト化合物は、当業者にとって日常的な実験として調製および試験することができる。特に、安定な連結を介して水溶性オリゴマーに結合したオピオイドアゴニストは、上記のように、血液脳関門の透過について試験することができる。それ故、当業者は、オピオイドアゴニスト化合物がBBBを横断することが可能であるかどうかを容易に確かめることができる。
本発明のこれらの実施形態のオピオイドアゴニスト化合物のすべての範囲について説明してきたと考えられるが、最適な大きさのオリゴマーについては、以下の通りに決定することができる。
まず、単分散または二峰性水溶性オリゴマーから得られたオリゴマーを、安定な連結を介して、オピオイドアゴニストに結合する。次に、インビトロでの活性の保持を分析する。次いで、オピオイドアゴニスト化合物が血液脳関門を横断する能力を、適切なモデルを使用して決定し、改変されていない親オピオイドアゴニストの能力と比較する。結果が良好である場合、即ち、例えば、横断の速度が適切な程度まで低減する場合、オピオイドアゴニスト化合物の生体活性について、さらに評価する。特定の実施形態では、本発明の化合物は、親オピオイドアゴニストと比べて、有意な程度の生体活性を維持する、即ち、親オピオイドアゴニストの生体活性の約30%超を維持するか、または親オピオイドアゴニストの生体活性の約50%超を維持する。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、経口で生物学的に利用可能である。
同じモノマータイプであるが、異なる数のサブユニットを有するオリゴマーを使用して、上記の工程を1回以上反復して、結果を比較する。
次いで、血液脳関門を横断する能力が、親オピオイドアゴニストと比較して適切に低減する各オピオイドアゴニスト化合物について、その経口バイオアベイラビリティを評価する。これらの結果に基づき、即ち、多様なサイズのオリゴマーを有するオピオイドアゴニスト化合物と、オピオイドアゴニスト内の所与の位置または局在における所与のオピオイドアゴニストとの比較に基づき、生体膜横断の適切な低下、経口バイオアベイラビリティ、および生体活性の間の最適な均衡を有するオピオイドアゴニスト化合物の提供において最も有効なオリゴマーのサイズを決定することが可能である。オリゴマーのサイズが小さいため、そのようなスクリーニングが可能であり、そして得られるオピオイドアゴニスト化合物の特性を有効に整えることが可能である。オリゴマーのサイズを少しずつ、漸進的に変化させ、そして実験計画を利用することによって、生体膜横断速度の低下、生体活性、および経口バイオアベイラビリティの良好な均衡を有するオピオイドアゴニスト化合物を効果的に同定することができる。場合によっては、本明細書に記載のオリゴマーの結合は、オピオイドアゴニストの経口バイオアベイラビリティを実際に増加するのに有効である。
例えば、日常的な実験を使用する当業者は、最初に、異なる重量および官能基を伴う一連のオリゴマーを調製し、次いで、患者にオピオイドアゴニスト化合物を投与し、そして定期的に血液および/または尿採取を行うことにより必要なクリアランスプロファイルを入手することによって、経口バイオアベイラビリティを改善するのに最も適切な分子サイズおよび連結を決定することができる。一旦、試験した各オピオイドアゴニスト化合物の一連のクリアランスプロファイルが得られたら、適切なオピオイドアゴニスト化合物を同定することができる。
また、動物モデル(げっ歯類およびイヌ)を使用して、経口薬物輸送を研究することができる。加えて、非インビボ方法として、げっ歯類反転腸切除組織およびCaco−2細胞単層組織−培養モデルが挙げられる。これらのモデルは、経口薬物バイオアベイラビリティを推定するのに有用である。
本発明の特定の実施形態では、Xは、生理学的に切断可能なリンカーである。当技術分野で開示されているように、切断可能な連結を介して小さな水溶性オリゴマーに結合した特定のオピオイドは、BBBを横断することができず、従って、水溶性オリゴマーからのオピオイドの生理学的切断が緩徐であるため、正味のBBB膜横断速度が低減することが示されることが見出された。特に、Xは、親オピオイドアゴニストの所望される薬物動態プロファイルに従って選択することができる。言い換えれば、オピオイドの水溶性オリゴマーへのコンジュゲーションにより、BBB膜横断速度の正味の低減が生じるが、低減速度は、使用するリンカーに依存して変動し得る。BBB横断速度の低減を最小限にすることを所望する場合には、Xは、迅速に分解されるリンカーとすることができ、BBB横断速度の広範な低減を所望する場合には、Xは、より緩徐に分解されるリンカーとすることができる。特定の実施形態では、異なる2つ以上のオピオイドアゴニスト化合物の組み合わせを同時に投与してもよく、ここで、各オピオイドアゴニスト化合物は異なるリンカーXを有し、かつ各Xの分解速度は異なる。言い換えれば、各異なる化合物について、オピオイドは、異なる速度で水溶性オリゴマーから切断され、異なる正味のBBB膜横断速度が生じる。オピオイド結合の2つ以上の部位を有する多官能性水溶性オリゴマーの使用を介して、類似の効果を達成することもでき、各オピオイドは、多様な分解速度を有するリンカーを介して水溶性オリゴマーに連結されている。この様式では、オピオイドアゴニスト化合物のBBB横断の速度および期間は、多様な薬物動態プロファイルを有する複数のオピオイドアゴニスト化合物の同時投与を介して、具体的に制御することができる。
任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、そのようなオピオイドアゴニスト化合物は、BBBの正味の緩徐な横断のため(オピオイドアゴニスト化合物の投与後の生理学的切断が緩徐であるため)、親オピオイドアゴニストおよび潜在的な依存性陶酔に関連する迅速なピーク濃度が回避されて、低い常習性を有すると推定される。さらに、任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、本発明のオピオイドアゴニスト化合物は、血漿中を循環し、使用する特異的に切断可能なリンカー(ならびに酵素的に分解可能なリンカーでは、酵素濃度および親和性)に依存する速度で、インビボで切断され、その結果、緩徐な切断速度のために、末梢を循環する親オピオイドの濃度が、一般的に、極めて低くなると考えられる。一旦、切断が生じると、親オピオイドは、脳に移動して、BBBを横断し得る;切断を介する親オピオイドの緩徐な放出により、親オピオイドの脳への正味の緩徐な送達が生じる。さらに、本発明のオピオイドアゴニスト化合物は、インビボでのオピオイドの組織分布の変化および末梢での受容体相互作用の変化のため、親オピオイドと比べて、改善された副作用プロファイルを示す。
さらに、本発明のこれらの実施形態に従って、オピオイドアゴニスト化合物がBBBを横断することができないか、またはオピオイドアゴニスト化合物の小さな割合しか、特定の実施形態では、投与されたオピオイドアゴニスト化合物の5%未満しかBBBを横断することができないならば、オピオイド、リンカー、および水溶性オリゴマーの任意の組み合わせを使用することができる。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、BBBを横断することができない。特定の実施形態では、分子のオピオイド部分は、オピオイドアゴニスト化合物の生理学的切断のため、親オピオイドアゴニストと比べて、正味の低減した速度でBBBを横断する。特定の実施形態では、水溶性オリゴマーはPEG部分である。特定の実施形態では、PEG部分は、少なくとも6個のポリエチレングリコール単位、好ましくは、6〜35個のポリエチレングリコール単位からなる小さなモノマー性PEGである。特定の実施形態では、PEG部分は、6〜1825個のポリエチレングリコール単位であってもよい。
特定の実施形態では、Xが生理学的に切断可能なリンカーである場合、オピオイドアゴニスト化合物(即ち、OPIOID−X−POLY)は生体活性であっても、または生体活性でなくてもよい。特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、生体活性ではない。それにもかかわらず、投与後にオピオイドアゴニスト化合物からオピオイドが放出されるため、インビボでそれを必要とする哺乳動物被験体に投与する場合、そのようなオピオイドアゴニスト化合物は有効である。特定の実施形態では、本発明のオピオイドアゴニスト化合物は、親オピオイドと比べて、生体活性が約1/10未満、約1/20未満、約1/30未満、約1/40未満、約1/50未満、約1/60未満、約1/70未満、約1/80未満、約1/90未満、約1/95未満、約1/97未満、または約1/100未満であることを示す。いくつかの実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は、親オピオイドと比べて、1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、または90%未満のオピオイドアゴニスト生体活性を保持する。
Xが生理学的に切断可能なリンカーである特定の実施形態では、OPIOID−X−POLYのオピオイド標的受容体に対する親和性は、OPIOIDのその標的受容体に対する親和性と比べて、実質的に低減している。特定の実施形態では、親オピオイドのその標的受容体に対する親和性と比べて、オピオイドアゴニスト化合物の親和性は約1/2以下である。特定の実施形態では、親オピオイドアゴニスト化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、オピオイドアゴニスト化合物の親和性は約1/5以下、約1/10以下、約1/20以下、約1/30以下、約1/40以下、約1/50以下、約1/60以下、約1/70以下、約1/80以下、約1/90以下、または約1/100以下である。
Xが生理学的に切断可能なリンカーである特定の実施形態では、親オピオイドのその標的受容体に対する親和性と比べて、オピオイドアゴニスト化合物の親和性の低減は、少なくとも20%である。特定の実施形態では、親オピオイドと比べて、オピオイドアゴニスト化合物の親和性の低減は、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。
先に記載のように、Xが生理学的に切断可能なリンカーである特定の実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物は生体活性ではない。そのようなオピオイドアゴニスト化合物としてプロドラッグがあり、この場合、投与される化合物は不活性であり、投与後に生理学的プロセスを介して活性になる。それ故、特定の実施形態では、本発明は、放出可能な部分に共有結合を介して可逆的に結合したオピオイドアゴニストを含むプロドラッグであって、患者に投与される所与のモル量のプロドラッグが、哺乳動物の中枢神経系において、オピオイドアゴニストがプロドラッグの部分として投与されなかった場合の等モル量のオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxより小さいオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxを示す、プロドラッグを提供する。放出可能な部分は、水溶性オリゴマーであってもよく、特定の実施形態では、ポリエチレングリコールオリゴマーである。アゴニストは、μ、κ、またはδオピオイドアゴニストであってもよい。
本発明の特定の実施形態では、Xは、生理学的に切断可能なリンカーであり、POLYは、1〜5(即ち、1、2、3、4、または5)個のポリエチレングリコール単位、特定の実施形態では、1〜3(即ち、1、2、または3)個のポリエチレングリコール単位からなる小さなモノマー性PEGである。そのような化合物は、血液脳関門を横断するのに十分小さいが、親オピオイドと比べて、低減した膜横断速度で横断し、そのため、先に考察されたように、低い常習性を有する。特定の実施形態では、Xは、BBB横断後のリンカーの切断およびオピオイドアゴニストの放出に対応するように選択される。あるいは、リンカーの切断を、BBBの横断の前、および後の両方で生じさせることができ;この様式では、オピオイド化合物のBBB横断の速度および期間を具体的に制御することができる。
世界保健機構(World Health Organization)の名の下で、依存症候群(禁断症候群とも呼ばれる)は、その精神的効果を経験するために、また時としてその欠乏による不快感を回避するために、薬物を継続的または断続的に服用するという強迫行為を常に伴う、行動応答および他の応答を特徴とする、生体と薬物との間の相互作用から生じる精神的かつ時として身体的でもある状態として定義される(WHO Expert Committee on Drug Dependence.28th Report.Geneva,Switzerland:WHO 1993)。国際疾病分類(International Classification of Diseases)またはICD−10は、若干異なる基準を使用して依存症候群を評価する(WHO.The ICD−10 Classification of Mental and Behavioral Disorders:Clinical Descriptions and Diagnostic Guidelines.Geneva,Switzerland:WHO,1992)。6つの特徴のうちの少なくとも3つが依存症候群と同定される場合に、ICD−10では用語「依存症候群」を使用する。6つの基準のうち、4つは強迫性に関連する:i)薬物の服用に対する持続的かつ強力な願望;ii)薬物使用を制御することの困難さ;iii)楽しみおよび興味に対する無関心を含む機能障害;およびiv)自傷行為。残りの2つの因子は、禁断症状および耐性の証拠に関連する。
ヒトにおける潜在的なオピオイド誤用を評価する試験は、例えば、オピオイドのそのような薬物誤用リスクをスクリーニングするために設計された1つ以上のスクリーニング質問表を使用して実施することができる。薬物誤用またはオピオイド薬に関する現行の誤用、乱用、もしくは追加に対する患者の感受性を評価するために、いくつかのスクリーニング試験が開発されている。そのようなスクリーニング試験の概要は、Manchikanti,L.,et al.,Pain Physician 2008;Opioids Special Issue:11:S155−S180に提供されている。その中に記載される1つ以上の任意のスクリーニング試験が、疼痛の管理および治療におけるオピオイド薬に対する患者の性向または現行の乱用を評価するのに有用であり得る。疼痛患者における潜在的な物質誤用を予測するのに特に有用なツールの1つが、AtluriおよびSudarshan(Atluri SL,Sudarshan,G.Pain Physician 2004;7:333−338)に記載されている。有用なスクリーニングツールの別の例は、とりわけ鎮痛薬質問表(Pain Medication Questionnaire)またはPMQ(Adams,L.,27 et al.,J.Pain and Symptom Management,(5),440−459(2004))である。薬物乱用の一般に使用される評価基準には、過度のオピオイド要求性(例えば、複数回の用量エスカレーション、複数回の緊急処置室訪問、より多くのアヘン製剤を得るための複数回の要求など)、規制薬物を入手するための欺瞞または虚偽、現在または以前の医者めぐりなどの評価が含まれる。さらに、常習性または乱用の可能性を示唆するのは、被験体による疼痛の誇張または疼痛の不明瞭な病因である。
オピオイド使用をスクリーニングまたはモニタリングするための生物学的方法の1つは検尿である。オピオイド試験は尿、血清、または例えば毛髪で実施することができるが、典型的には、その比較的良好な特異性、感度、投与の容易さ、およびコストのために、検尿が実施される。そのようなスクリーニングは、治療の開始時に、ベースラインを確立するために、かつ/またはオピオイドおよび/もしくは他の薬物の存在を検出するために実施することができ、また治療期間の間には、服薬遵守を確認するために(即ち、処方された薬物を検出するために)、または処方された薬物の誤用(即ち、濫用)を確認するために、かつ尿中に予想されない物質を同定するために実施することができる。使用することができる2つの例示的な尿中薬物試験には、イムノアッセイ薬物試験(「尿試験紙検査」)およびガスクロマトグラフィー/質量分析および高速液体クロマトグラフィーを使用する実験室ベースの特異的な薬物同定が挙げられる。種々の許容されるモニタリング方法はいずれも、対象オピオイドアゴニスト化合物および対象オピオイドアゴニスト化合物を含む組成物の乱用/常習可能性の潜在性を評価するために使用することができる。
鎮痛活性の実証に加えて、本明細書で使用するオピオイドアゴニスト化合物は、有利なことには、国際公開第2011/088140号パンフレットに記載される、自己投与および薬物弁別プロトコールを使用する、サルおよびラットでの前臨床試験で乱用可能性が極めて少ないことが示される。その中に記載されるように、静脈内(IV)カテーテルが留置されたリスザルを、90分間の毎日のセッションに強化スケジュールを使用し、被験物質による試験の前にモルヒネを使用する標準レバープレス法で訓練した。各単位用量(またはビヒクル)を単位用量の変更前に2つの連続セッションで使用する二重交代スケジュールにおいて、3〜4被験体に各薬物を2用量以上使用して、被験物質の用量関連効果を検討した。サルの自己投与試験では、例示的なオリゴマー性PEGオピオイドアゴニスト化合物であるmPEG6−O−ヒドロキシコドンは、オキシコドンおよびモルヒネより有効性が顕著に低いことを示し、試験した最高用量の3.2mg/kg/注射で強化力が顕著に低減していることを示した。具体的には、モルヒネおよびオキシコドンはそれぞれ、0.03mg/kg/注射および0.1mg/kg/注射の用量で100%の注射レバー応答(%ILR)をもたらした。これに対して、オリゴマー性mPEG−オピオイドアゴニスト化合物は、試験した最高用量の3.2mg/kg/注射で、2被験体のみにもっぱら注射レバー応答をもたらした。この化合物は、0.32、1.0、および3.2mg/kgでそれぞれ、22%、39%、および50%のILRをもたらした。
さらに、国際公開第2011/088140号パンフレットに記載されるように、3日間のラット置換試験では、コカインを自己投与するように訓練されたラットを、3日連続の1時間セッションで静脈内ボーラス注入を介して生理食塩水または被験物質に曝露した。動物が3回の連続セッションにわたり20%未満の変動でレバープレス応答を維持した場合、化合物は強化特性を示すとみなした。比率累進試験を、薬物送達をもたらすために必要とされるレバープレスの数を累進的に増加させることにより実施し、限界点を、薬物報酬を達成するために動物がもはや押さないレバープレスの数として定義する。
ラットの自己投与試験では、例示的な化合物であるmPEG6−O−ヒドロキシコドンは、コカインで訓練された動物において、3日間の置換試験および比率累進試験を使用して、最大3.2mg/kg/注射の用量で試験した場合、陽性強化の行動的証拠をもたらさなかった。PEG−オピオイドアゴニスト化合物は、強化特性を示さず、ラットの比率累進試験で、生理食塩水のように作用した。化合物の試験した6用量のうちの5用量で、生理食塩水がもたらしたものよりも少ない比率累進限界点が得られた。これに対して、コカイン(0.56mg/kg/注入)の維持量は、薬物の単回ボーラス送達に対して128応答の限界点をもたらした。同様に、ヒドロコドンは、0.18mg/kg/注入の用量で、114の限界点をもたらし、一方、オキシコドンは、0.01および0.032mg/kg/注入の試験用量でそれぞれ、56および79の平均限界点をもたらした。
それ故、本明細書で使用するオピオイドアゴニスト化合物は、抗侵害受容特性の実証に加えて、霊長類において、薬物の乱用傾向の重要な指標である自己投与の顕著な低減を実証する。第2の鎮痛薬と組み合わせた場合、これらの特性はそのまま残ることが予想される。本明細書に提供する1つ以上の方法において、鎮痛薬と組み合わせたオピオイドアゴニスト化合物は、国際公開第2011/088140号パンフレットに記載されるように、げっ歯類または霊長類におけるインビボ自己投与モデルで評価されると、親オピオイドアゴニストに比べ、常習可能性の計測可能な低減をもたらすものとして特徴づけられる。
本明細書に記載するオピオイドアゴニスト化合物は、鎮痛特性を有することおよびオピオイドの投与に伴う常習/乱用可能性を低減する能力を有することに加えて、オピオイド薬の投与に典型的に付随する1つ以上のCNS副作用を低減することも発見された。そこで、オピオイドアゴニスト化合物が鎮痛薬と組み合わせて投与される場合も、それらの特性は変わらないと考えられる。それ故、鎮痛薬と組み合わせて本明細書に提供するオピオイドアゴニスト化合物を投与することにより、オピオイド鎮痛薬の投与に関連する1つ以上のCNS副作用を低減するための方法を本明細書に提供する。また、鎮痛薬と組み合わせて本明細書に提供するオピオイドアゴニスト化合物の治療有効量を、疼痛に罹患する被験体に投与することにより、常習可能性を低減し、かつオピオイド鎮痛薬の投与に関連する1つ以上のCNS副作用を同時に低減するための方法も本明細書に提供する。
この方法の1つ以上の実施形態では、本明細書に提供するオピオイドアゴニスト化合物は、マウスまたは他の適切な動物モデルにおいて、等用量で評価すると、親オピオイドアゴニストの投与に付随する少なくとも1つのCNS関連副作用が1/10以下になることを示す場合、オピオイド鎮痛薬の投与に関連する1つ以上のCNS関連副作用を低減するのに有効であるとみなされる。ここで、1つ以上のCNS関連副作用/誘発行動は、ストラウブ挙尾反応、歩行運動失調、振戦、活動亢進、活動低下、痙攣、後肢開脚、筋硬直、耳介反射、正向反射、および定位反応から選択される。そこで、オピオイドアゴニスト化合物が鎮痛薬と組み合わせて投与される場合も、これらの特性は変わらないと考えられる。CNS活性について特に有用な指標の1つはストラウブ挙尾反応であるが、本明細書に記載する他のいずれの指標も同様に使用することができる。特定の実施形態では、化合物は、所与の行動についてのCNS活性が1/10〜1/100になることを示し、例えば、観察する指定行動の1つについてのCNS活性が1/15以下、または1/20以下、または1/25以下、または1/30以下、または1/40以下、または1/50以下、または1/60以下、または1/70以下、または1/80以下、または1/90以下、または1/100以下になることを示す。国際公開第2011/088140号パンフレットは、検討した特定のオリゴマー性PEGオピオイドアゴニスト化合物について、所与の行動に関連するCNS活性の低減に関する概要を提供する。その中に提示されたデータからわかるように、CNS関連行動の顕著な低減が、オリゴマー性PEGオピオイドのそれぞれについて観察された。
参照として、国際公開第2011/088140号パンフレットにおいて評価された例示的なPEG−オピオイドアゴニスト化合物は、最大の鎮痛効果に関連する用量で投与された場合でも、CNS副作用が顕著に低減している点から際立った利点を実証する。オピオイドの投与に付随し得るCNS副作用としては、とりわけ、認知障害、器官幻覚、呼吸抑制、鎮静状態、ミオクローヌス(不髄意攣縮)、およびせん妄が挙げられる。前述の副作用の1つ以上を評価する場合、医師は、理想的には、他の内在する病因を排除するように患者を評価すべきである。そこで、鎮痛薬と組み合わせてオピオイドアゴニスト化合物を投与することによって、オピオイド鎮痛薬の投与に関連する1つ以上のCNS副作用を低減するために、本明細書に記載する組成物および組み合わせを使用することができる。この方法の一実施形態では、オピオイドアゴニスト化合物の投与量は、哺乳類被験体において、鎮痛効果と、親オピオイドアゴニストの投与に関連する1つ以上の中枢神経系副作用の低減の両方をもたらす。1つ以上の関連実施形態では、この方法は、治療期間にわたって、オピオイド鎮痛薬の投与に関連する1つ以上のCNS副作用の存在および/または欠如をモニターすることをさらに含む。1つ以上のCNS副作用の存在が観察される事象では、モニタリングはCNS副作用の程度の評価をさらに含む。また、モニタリングは、改変されていないオピオイドアゴニストの投与に付随するそのようなCNS副作用の程度または大きさに対する、低減したCNS副作用の程度または大きさの比較をさらに含む。
本発明の組成物および組み合わせを投与することの利点の1つは、オピオイドアゴニストの送達速度の低減が達成され、それ故、親オピオイドアゴニストおよび潜在的な依存性陶酔に関連する迅速なピーク濃度が回避されることである。さらに、オピオイドアゴニスト分子の共有結合修飾に基づいて、本発明の化合物は、インビボで、低減したBBB横断速度を提供することを意図する特定の代替的送達に関連する、即効性オピオイドアゴニストの回収および乱用を可能にする物理的タンパリングの危険性を受けない。そこで、本発明のオピオイドアゴニスト化合物は、低い常習性、抗乱用特性を有する。オピオイドアゴニスト化合物の所望される薬物動態特性は、オリゴマー分子のサイズ、連結、およびオピオイドアゴニストへの共有結合の位置を選択することによって調節することができる。当業者は、本明細書の教示内容に基づいて、オリゴマーの理想的な分子サイズを決定することができる。
先に記載のように、本開示は、オピオイドアゴニスト化合物(例えば、式:OPIOID−X−POLY)と鎮痛性化合物とを含む組成物および組み合わせに関する。鎮痛性化合物は、一般的に、疼痛を緩和するために使用される特定の薬物を指し、またそれを包含することを意味する。本明細書に記載した特定の鎮痛薬は、例示的なものであり、それ自体として本発明を限定するものではないことが意図される。
特定の実施形態では、鎮痛性化合物は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。NSAIDは、一般的に、筋骨格痛などの症候性疼痛の軽減、炎症軽減、および頭痛、熱、術後痛などの他の疾患または病態のために使用される。特定の実施形態では、鎮痛薬は解熱薬である。特定の実施形態では、鎮痛薬は、アセチルサリチル酸、サリチル酸コリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール、ジフルニサル、エトドラック、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサラート、サリチル酸ナトリウム、スリンダク、トルメチンナトリウム、バルデコキシブ、コリンマグネシウムトリサリチル酸、およびケトロラクから選択される。特定の実施形態では、鎮痛薬は、ケトロラク、イブプロフェン、オキサプロジン、インドメタシン、エトドラック、メロキシカム、スリンダク、ジクロフェナク、フルフェナム酸、ジフルニサル、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、およびフェノプロフェンから選択される。特定の実施形態では、鎮痛薬は、ケトロラク、イブプロフェン、オキサプロジン、インドメタシン、エトドラック、スリンダク、ジクロフェナク、フルフェナム酸、ジフルニサル、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、およびアセトアミノフェンから選択される。特定の実施形態では、鎮痛性化合物はジクロフェナクである。
特定の実施形態では、鎮痛性化合物はオピオイドアンタゴニストではない。特定の実施形態では、鎮痛性化合物はオピオイドアゴニストではない。
先に開示のように、本組成物は、オピオイドアゴニスト化合物(例えば、式:OPIOID−X−POLY)と鎮痛性化合物とを含む。特定の実施形態では、鎮痛性化合物は、OPIOID(またはその残基)により表される親オピオイド以外の鎮痛性化合物である。言い換えれば、例えば、特定の実施形態では、OPIOIDがX−POLYに結合したコデイン部分である場合、鎮痛薬はコデイン(またはその残基)ではない。
本明細書に提供する組成物および組み合わせは、疼痛の治療に有用である。一般的に、治療は、鎮痛薬として有効な量のオピオイドアゴニスト化合物(例えば、式OPIOID−X−POLYを有する化合物)と本明細書で上記に開示する鎮痛薬とを、組成物の一部または組み合わせのいずれかとして投与することを含む。一般的に、そのような治療は、疼痛(例えば、急性または慢性の疼痛)の管理を目的としたものである。本明細書に提供する組成物および組み合わせは、例えば、侵害受容性疼痛を治療するために使用することができる。本明細書に提供する組成物および組み合わせは、例えば、内臓痛、筋骨格痛、神経痛、および/または交感性疼痛を治療するために使用することができる。オピオイドアゴニスト化合物の疼痛を軽減または防止する能力を実証する代表的な試験が、少なくとも米国特許出願公開第2010/0048602号明細書、国際公開第2008/112288号パンフレット、国際公開第2010/033195号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0237614号明細書、国際公開第2011/011543号パンフレット、米国特許出願公開第2012/0184581号明細書、国際公開第2011/088140号パンフレット、および米国特許出願第13/521,556号明細書に提供されている。本明細書に提供する組成物および組み合わせの投与は、神経障害性疼痛を含む、中等度から重度の範囲の慢性疼痛の治療に使用することができる。神経障害性疼痛は、神経損傷、神経疾患、または他の疾患進行による神経の関与による疼痛である。本明細書に記載する組成物および組み合わせは、例えば癌、線維筋痛、腰痛、頚部痛、坐骨神経痛、骨関節炎などのいくつかの病態のいずれかに伴う疼痛の治療に使用することができる。この組成物および組み合わせはまた、突出痛の軽減のために使用することができる。
本明細書で参照された論文、書籍、特許、特許公開、および他の刊行物はすべて、それら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
所定および特定の実施形態と関連させて本発明を説明してきたが、上記の説明ならびに以下の実施例は、例示することを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点、および変更は、本発明に関係する当業者には明らかであろう。
別途明記しない限り、添付の実施例において言及したすべての化学試薬は、市販のものである。PEG−mersの調製については、例えば、米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されている。さらに、オピオイドアゴニスト化合物は、米国特許出願公開第2010/0048602号明細書に開示されるように調製することができる。実施例1〜3は、米国特許出願公開第2010/0048602号明細書の実施例15〜17の再現である。実施例4〜6は、米国特許出願公開第2010/0048602号明細書の実施例11〜13の再現である。
実施例1
mPEG
n−O−モルヒネ化合物の調製
以下に、市販のモルヒネ硫酸塩水和物を使用する遊離塩基の調製について説明する(一般的手順)。
Spectrum由来の硫酸モルヒネ(USP)(510mg)を水(70ml)に溶解した。次いで、K2CO3水溶液を使用して、溶液をpH10まで塩基性にして、白色の懸濁液を得た。白色の懸濁液にDCM(ジクロロメタン、50ml)を添加したが、固体を溶解することはできなかった。1MのHClで混合物を酸性にして、2相の澄明な溶液を得た。有機相を分離し、そして上記と同じK2CO3の溶液を使用して、水相を注意深くpH9.30にした(pHメーターでモニターした)。再度、白色の懸濁液が得られた。不均一な混合物を、DCM(5×25ml)で抽出し、そして不溶性の白色固体が、有機層および水層の両方に混入していた。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターにより、160mgのモルヒネ遊離塩基(56%回収率)を得た。MeOHを使用して、フィルターケーキからさらなる生成物は回収されなかったが、EtOAcによる2×50mlの抽出によって、水相から別の100mgを回収して、260mg(68%)の合わせた収量を得た。
モルヒネ遊離塩基のMEM保護
モルヒネの遊離塩基を保護基β−メトキシエトキシメチルエーテル(「MEM」)で保護するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す:
遊離塩基モルヒネ(160mg、0.56mmol)を、20mlのアセトン/トルエン(2/1混合物)に溶解した。得られた溶液にK2CO3(209mg、1.51mmol、2.7eq)を添加し、続いて、MEMCl(96μl、0.84mmol、1.5eq)を添加し、そして得られた不均一な混合物を、1晩、室温で撹拌した。室温で5時間後、LC−MSにより、反応は完了したと思われた。モルヒネ遊離塩基の標準的な6分間の勾配稼働条件(標準で6分間、Onyx Monolyth C18カラム、50×4.6mm、水、0.1%TFA中0〜100%アセトニトリル、0.1%TFA、1.5ml/分;検出:UV254,ELSD,MS;UV254検出器に対して保持時間を表し、ELSDは約0.09分間の遅延を有し、そしてMSはUVに対して約0.04分間の遅延を有する)下での保持時間は、1.09分間;生成物の保持時間は1.54分間(標準で6分間)、主な不純物は1.79分間であった。反応混合物をエバポレートして乾燥させ、水に溶解し、EtOAcで抽出し(3×、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターで処理して)、無色のオイルとして160mg(77%)の所望する生成物を得た。生成物の純度を、UV254により約80%と見積もった。
硫酸モルヒネの直接的なMEM保護(一般的手順)
硫酸モルヒネを保護基β−メトキシエトキシメチルエーテル(「MEM」)で保護するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。以下のスキームには、明らかには示されていないが、モルヒネは、実際には、モルヒネ硫酸塩水和物、モルヒネ.0.5H
2SO
4.2.5H
2Oである。
10mlの2:1アセトン:トルエン溶媒混合物中103mgのモルヒネ硫酸水和物(0.26mmol)の懸濁液に、135mg(1mmol、3.7eq)のK2CO3を添加し、そして懸濁液を、室温で25分間、撹拌した。得られた懸濁液に、60μl(0.52mmol)のMEMClを添加し、そして混合物を室温で反応させた。1時間後(38%の名目上の変換、1.69分および2.28分においてさらなるピーク)、3時間後(40%の名目上の変換、1.72分においてさらなるピーク(M+1=493.2))、4時間半後(56%の名目上の変換、1.73分においてさらなるピーク)、および23時間後(>99%の名目上の変換、1.79分においてさらなるピーク−UV254における高さより約23%の生成物ピーク)に、サンプル採取を行った;その後、反応をMeOHでクエンチし、エバポレートし、EtOAcで抽出して、160mgの澄明なオイルを得た。
同じ反応を、100mlの溶媒混合物中2g(5.3mmol)のモルヒネ硫酸水和物、2.2g(16mmol、3eq)のK2CO3、1.2ml(10.5mmol、2eq)のMEMClで開始して、反復した。2時間後(61%の名目上の変換、1.72分において余分なピーク(M+1=492.8))、1日後(80%の名目上の変換、1.73分において余分なピーク)、3日後(85%の名目上の変換、ごく小さな不純物、12分間の勾配稼働)、および6日後(91%変換)にサンプル採取を行った;その後、反応をクエンチし、エバポレートし、EtOAcで抽出し、40gカラム、DCM:MeOH0〜30%移動相を使用するcombi−flash上で精製した。3つのピーク(2つではない)が同定され、ここで、中央のピークを回収した、1.15g(58%収率)の淡黄色のオイル、UV254純度は約87%。
MEM−保護モルヒネコンジュゲートを提供するためのMEM−保護モルヒネの化合物
MEM−保護モルヒネと水溶性オリゴマーとをコンジュゲートしてMEM−保護モルヒネPEG−オリゴマー化合物を提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
トルエン/DMFの溶液(2:1混合物、合計で10容積)に、MEM−モルヒネ遊離塩基をチャージし、続いて、NaH(4〜6eq)をチャージし、次いで、予め調製したPEGnOMs(1.2〜1.4eq.)をチャージした。反応混合物を55〜75℃にまで加熱し、そして反応の完了がLC−MS分析によって確認されるまで(PEG鎖長に依存して、12〜40時間)、撹拌した。反応混合物を、メタノール(5容積)でクエンチし、そして反応混合物を減圧下でエバポレートして、乾燥させた。残渣をメタノール(3容積)に再溶解し、そしてCombiflashシステム(0〜40%MeOH/DCM)を使用して、クロマトグラフィーを行った。大量の生成物を含有する画分を回収し、合わせ、そしてエバポレートして乾燥させた。次いで、この材料をRP−HPLCによって精製して、黄色〜橙色のオイルとして生成物を得た。
モルヒネ化合物を提供するためのMEM−保護モルヒネ化合物の脱保護
MEM−保護モルヒネ化合物を脱保護して、モルヒネ化合物を提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
DCM(8容積)に懸濁させたMEM−保護モルヒネ化合物TFA塩の溶液に、6容積のジエチルエーテル中2MのHClをチャージした。反応混合物を、室温で2時間、撹拌し、次いで、低圧下でエバポレートして乾燥させた。オイル状の残渣をMeOH(8容積)に溶解し、ガラスウールを介してろ過し、次いで、低圧下でエバポレートして、粘稠な橙色〜黄色のオイルを定量的収量で得た。この方法によって作製された化合物として、次のものが挙げられる:α−6−mPEG3−O−モルヒネ(化合物A、n=3)217mgのHCl塩、純度97%(UV254では95%;ELSDでは98%);α−6−mPEG4−O−モルヒネ(化合物A、n=4)275mgのHCl塩、純度98%(UV254では97%;ELSDでは98%);α−6−mPEG5−O−モルヒネ(化合物A、n=5)177mgのHCl塩、純度95%(UV254では93%;ELSDでは98%);α−6−mPEG6−O−モルヒネ(化合物A、n=6)310mgのHCl塩、純度98%(UV254では98%;ELSDでは99%);α−6−mPEG7−O−モルヒネ(化合物A、n=7)541mgのHCl塩、純度96%(UV254では93%;ELSDでは99%);およびα−6−mPEG−O9−モルヒネ(化合物A、n=9)466mgのHCl塩、純度98%(UV254では97%;ELSDでは99%)。さらに、単一のPEGモノマーが結合したモルヒネ化合物、α−6−mPEG1−O−モルヒネ(化合物A、n=1)、124mgのHCl塩、純度97%(UV254では純度95%;ELSDでは98%)、ならびにα−6−mPEG2−O−モルヒネ(化合物A、n=2)、485mgのHCl塩、純度97%(UV254では純度95%;ELSDでは98%)も同様に調製した。
実施例2
mPEG
n−O−コデイン化合物の調製
コデインと水溶性オリゴマー(代表的なオリゴマーとしてmPEG
3OMsを使用する)の活性化スルホン酸エステルとをコンジュゲートして、コデイン化合物を提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
コデイン(30mg、0.1mmol)をトルエン/DMF(75:1)溶媒混合物に溶解し、続いて、HO−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OMs(44ml、2eq)およびNaH(鉱油中60%懸濁液、24mg、6eq)を添加した。得られた均一な黄色溶液を、45℃にまで加熱した。1時間後、反応は、11%の変換(2.71分において余分なピーク、12分間稼働)を示し、18時間後、反応は、7%の変換(3.30分において余分なピーク、12分間稼働)を示し、そして24時間後、反応は、24%の変換(複数の余分なピーク、1.11分および2.79分において最も高い2つのピーク)を示した。この時点で、さらなる16mgのNaHを添加し、そして加熱を6時間継続し、その後、さらなる16mgのNaHを添加し、続いて、66時間、加熱を継続した。その後、出発物質は残留せず、そして分析により、多くの余分なピークが示されたが、最も高い2つのピークは2.79分および3分に対応する(生成物のピークは、少なくとも7つのピークのうち2番目に高いピークである)。
10×スケールを使用して、この合成を反復し、ここで、30mlの溶媒混合物を使用した。18時間後、分析により、71%の名目上の変換が示され、UVにおいてさらなるピークを伴った(3.17分において1つの高いピークおよび多くの小さなピーク;ここで、所望されるピークは、UVでの3.43分に対応する)。その後、80mg(2mmol)のNaHを添加し、続いて、加熱を継続した。3時間後、分析により、85%の名目上の変換が示された(いくらかの余分なピーク、3.17分において主要なピーク)。反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出して(3×、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターで処理した)、黄色のオイルを得た(LC−MSにおいて出発物質(sm)は認められない、ELSDでは純度90%、UVでは純度50%−3.2分において主要な不純物)。粗生成物をDCMに溶解し、230〜400メッシュSiO2を充填した小さなカートリッジに適用し、乾燥し、溶媒A=DCMおよび溶媒B=MeOH、Bの勾配0〜30%を伴う4gのプレパックカラムカートリッジを介するCombi−flash上で溶出させた。分析により、対称性が不良な2つのピークが示された:小さな先行するピークおよびテールを伴うより大きなピーク。LC−MSを使用して、純粋な生成物を含有することが同定されていない画分を分析した。任意の生成物(tt番号22〜30)を含有する合わせた画分から、溶媒エバポレーション後、150mg(34%収率)の不純な生成物が得られた(UV254では3.35分においてLC−MS純粋であって、ここで、約25%は、12分間の稼働のうち主要な不純物3.11分、3.92分、4.32分、5.61分を示した)。15〜60%B、70分間、10ml/分に対応する勾配を用いるHPLC(溶媒A=水、0.1%TFA;溶媒B=アセトニトリル、0.1%TFA)による第2の精製では、隣接するピークからの分離が不良であった。2つの画分のみが不純物を含まず、そして21mgのTFA塩(純度>95%、4.7%収率)を生じた。所望される生成物を含有する画分の前および後のさらなる3つの画分(合計でさらなる6つの画分)を合わせて、TFA塩として70mgの純度約50%の生成物を得た。
この同じアプローチを使用して、エチレンオキシド単位の数(n=4、5、6、7、および9)が異なる他の化合物を、上記のこれらのNaH条件を使用して、作製した。
コデイン−オリゴマー化合物TFA塩のコデイン−オリゴマー化合物HCl塩への変換
コデイン−オリゴマーTFA塩をコデイン−オリゴマーHCl塩に変換するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
DCM(8容積)に懸濁させたコデイン−オリゴマー化合物TFA塩の溶液に、6容積のジエチルエーテル中2MのHClをチャージした。反応混合物を、室温で2時間、撹拌し、次いで、低圧下でエバポレートして乾燥させた。オイル状の残渣をMeOH(8容積)に溶解し、ガラスウールを介してろ過し、次いで、低圧下でエバポレートして、粘稠な橙色〜黄色のオイルを定量的収量で得た。一般的手順に従って、次の化合物を合成した:α−6−mPEG
3−O−コデイン(化合物B、n=3)HCl塩の235mg、純度98%;α−6−mPEG
4−O−コデイン(化合物B、n=4)HCl塩の524mg、純度98%;α−6−mPEG
5−O−コデイン(化合物B、n=5)HCl塩の185mg、純度98%+HCl塩の119mg、純度97%、α−6−mPEG
6−O−コデイン(化合物B、n=6)HCl塩の214mg、純度97%;α−6−mPEG
7−O−コデイン(化合物B、n=7)HCl塩の182mg、純度98%;α−6−mPEG
9−O−コデイン(化合物B、n=9)HCl塩の221mg、純度97%;α−6−mPEG
1−O−コデイン(化合物B、n=1)HCl塩の63mg、純度90%;およびα−6−mPEG
2−O−コデイン(化合物B、n=2)HCl塩の178mg、純度90%。
実施例3
mPEG
n−O−ヒドロキシコドン化合物の調製
ヒドロキシコドンと水溶性オリゴマー(代表的なオリゴマーとして「mPEG
nOMs」を使用する)の活性化スルホン酸エステルとをコンジュゲートして、ヒドロキシコドン化合物を提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
オキシコドンのα−6−ヒドロキシコドンへの還元
−20℃で冷却した窒素下乾燥THF中オキシコドン遊離塩基の溶液に、水素化トリ−sec−ブチルホウ素カリウムの1.0MのTHF溶液を15分間、添加した。溶液を、−20℃、窒素下で1.5時間、撹拌し、次いで、水(10mL)を緩徐に添加した。反応混合物を、さらに10分間、−20℃で撹拌し、次いで、室温まで加温した。すべての溶媒を、低圧下で取り出し、そしてCH2Cl2を残留する残渣に添加した。CH2Cl2相を0.1NのHCl/NaCl水溶液で抽出し、そして合わせた0.1NのHCl溶液抽出物をCH2Cl2で洗浄し、次いで、Na2CO3を添加して、pH=8に調整した。溶液をCH2Cl2で抽出した。CH2Cl2抽出物を、無水Na2SO4上で乾燥させた。低圧下で溶媒を取り出した後、所望するα−6−HO−3−ヒドロキシコドンが得られた。
mPEGnOMsのα−6−ヒドロキシコドンへのコンジュゲーション:
トルエン/DMFの溶液(2:1混合物、合計で10容積)に、ヒドロキシコドン(先の段落において記載のように調製した)をチャージし、続いて、NaH(4eq)、次いで、mPEGnOMs(1.3e.)をチャージした。反応混合物を60〜80℃にまで加熱し、そして反応の完了がLC−MS分析によって確認されるまで(PEG鎖長に依存して、12〜40時間)、撹拌した。反応混合物を、メタノール(5容積)でクエンチし、そして反応混合物を減圧下でエバポレートして、乾燥させた。残渣をメタノール(3容積)に再溶解し、そしてCombiflash(0〜40%MeOH/DCM)を使用して、クロマトグラフィーを行った。大量の生成物を含有する画分を回収し、合わせ、そしてエバポレートして乾燥させた。次いで、この材料をRP−HPLCによって精製して、黄色〜橙色のオイルとして最終生成物を得た。
ヒドロキシコドン化合物TFA塩のヒドロキシコドン化合物HCl塩への変換
DCM(8容積)に懸濁させたヒドロキシコドン化合物TFA塩の溶液に、6容積のジエチルエーテル中2MのHClをチャージした。反応混合物を、室温で2時間、撹拌し、次いで、低圧下でエバポレートして乾燥させた。オイル状の残渣をMeOH(8容積)に溶解し、ガラスウールを介してろ過し、次いで、低圧下でエバポレートして、粘稠な橙色〜黄色のオイルを定量的収量で得た。一般的手順に従って、次の化合物を合成した:α−6−mPEG3−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG3−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=3)HCl塩の242mg、純度96%;α−6−mPEG4−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG4−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=4)HCl塩の776mg、純度94%;α−6−mPEG5−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG5−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=5)HCl塩の172mg、純度93%;α−6−mPEG6−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG6−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=6)HCl塩の557mg、純度98%;α−6−mPEG7−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG7−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=7)HCl塩の695mg、純度94%;およびα−6−mPEG9−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG9−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=9)HCl塩の435mg、純度95%。次の化合物、α−6−mPEG1−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG1−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=1)HCl塩の431mg、純度99%;およびα−6−mPEG2−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG2−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=2)454mg HCl塩、純度98%も同様に調製した。
実施例4
オリゴマー−フェンタニル化合物の調製
mPEGn−O−フェンタニル化合物は、以下にスキームで示すアプローチに従って調製することができる。従来の有機合成手法がこの合成アプローチを実施するのに使用される。
PEGオリゴマーがN−(1−(2−フェニルエチル)ピペリジン−4−イル)フェニル基に位置する、即ち共有結合する、以下の構造:
[式中、mPEG
nは、−(CH
2CH
2O)
n−CH
3であり、nは1〜9の整数である]を調製するための例示的なアプローチを以下に提供する。
上記のアプローチでは、出発物質は(ハロエチル)ヒドロキシベンゼンであり、ここで水酸基はPEGオリゴマーに対する結合部位を形成する。(ハロエチル)ヒドロキシベンゼン、即ち、(ブロモエチル)ヒドロキシベンゼンを、メシル化またはハロゲン化により活性化されたmPEGオリゴマーと反応させて、所望のPEG−オリゴマー修飾(ハロエチル)ベンゼン中間体を形成させる。次いで、相関移動触媒の存在下で、この中間体をピペリジン−4−オンと反応させる;ブロモ基はピペリジン−4−オン窒素に反応して、次の中間体である1−(mPEGolig−フェニルエチル)ピペリジン−4−オンが形成する。次いで、ケトン官能性を、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤の存在下で還元し、アニリンとの反応により、アミノ基、即ち、N−フェニル−ピペリジン−4−アミンに変換する。最終的に、上記のスキームに示すように、第二級アミノ基を、プロピオン酸クロライドと反応させて、第三級アミンに変換し、所望の生成物を形成させる。
N−(1−(2−フェニルエチル)ピペラジン−4−イル)フェニル基に位置するPEGオリゴマーを有する対象mPEG
n−O−フェンタニル化合物を、以下のスキーム4−Bに図示するように、上記スキーム4−Aを若干改変した反応スキームを使用して合成した:
上記のアプローチは、合成の種々の工程でトシル(p−トルエンスルホネート)脱離基を使用する。所望のPEGオリゴマー化合物(n=1〜9)は、ジトシル化3−(2−ヒドロキシエチル)フェノールをN−フェニル−N−(ピペリジン−4−イル)プロピオンアミドと反応させて、トシル化形態のN−(1−(3−ヒドロキシフェニルエチル)ピペリジン−4−イル)−N−フェニルプロピオンアミドを形成させ、その後トシル基を除去することにより構築する。次いで、N−(1−(3−ヒドロキシフェニルエチル)ピペリジン−4−イル)−N−フェニルプロピオンアミドをモル過剰量のmPEGolig−トシレートと反応させて、所望のmPEGn−O−フェンタニル化合物を形成させることにより、この分子にPEGオリゴマー基をフェニルヒドロキシル位置で導入した。一般的に使用される反応物の比および反応条件を上記の反応スキームに示す。
PEGオリゴマーがN−フェニル基に位置する、即ち共有結合する、以下の構造を提供する例示的アプローチを以下に示す:
N−フェニル環に位置するPEGオリゴマーを有するmPEGn−O−フェンタニル化合物を形成させるための上記の例示的なアプローチは、例えば、2−ブロモエチルベンゼンを出発物質として開始する。相関移動触媒の存在下で、2−ブロモエチルベンゼンをピペリジン−4−オンと反応させて、その結果として1−フェネチルピペリジン−4−オンを形成させる。N−保護ヒドロキシアニリンを得て、それをブロモメトキシPEGoligまたはmPEGoligoメシレートなどの活性化mPEGオリゴマーと反応させることにより調製されるmPEGolig−置換アニリンに、1−フェネチルピペリジン−4−オンを結合させ、その後保護基を除去する(上記の工程(b)を参照のこと)。上記の反応工程(c)に示すように、還元剤の存在下で、1−フェネチルピペリジン−4−オンをmPEGolig−置換アニリンと反応させて、ケト基をアミンに変換して、中間体1−フェネチルピペリジン−4−イルアミノ−mPEGoligoベンゼンを形成させる。最終的に、上記のスキームに示すように、第二級アミノ基を、プロピオン酸クロライドと反応させて、第三級アミンに変換し、所望の生成物を形成させる。
N−フェニル基に位置するPEGオリゴマーを有する対象mPEG
n−O’−フェンタニル化合物を、以下のスキーム4−Dに図示するように、上記スキーム4−Cを若干改変した反応スキームを使用して合成した:
上記のスキーム4−Dに示すように、所望のmPEGn−O−フェンタニル化合物は、最初に、還元条件下で、1−フェネチルピペリジン−4−オンを3−アミノフェノールと反応させて、ケト官能性をアミンに変換することによって、即ち、3−アミノフェノールのアミノ基との反応によって調製した。次いで、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N−(1−フェネチルピペリジン−4−イル)プロピオンアミドの形成に有効な条件下で、生成物の3−(1−フェネチルピペリジン−4−イルアミノ)フェノールを塩基(例えば、トリエチルアミン)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下、無水プロピオン酸と反応させた。最終的に、オリゴマー性PEG官能性の導入は、所望の化合物を形成させるのに有効なカップリング条件下で、前駆体のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N−(1−フェネチルピペリジン−4−イル)プロピオンアミドをモル過剰量のmPEGoligoトシレートと反応させることにより実施した。一般的に使用される反応物の比および反応条件を上記の反応スキームに示す。
実施例4A
m−mPEG
n−O−フェンタニル化合物の調製
m−mPEG
1−O−フェンタニル化合物(n=1)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
m−mPEG
2−O−フェンタニル化合物(n=2)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
m−mPEG
3−O−フェンタニル化合物(n=3)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
m−mPEG
4−O−フェンタニル化合物(n=4)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
m−mPEG
5−O−フェンタニル化合物(n=5)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
m−mPEG
6−O−フェンタニル化合物(n=6)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
m−mPEG
7−O−フェンタニル化合物(n=7)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
m−mPEG
7−O−フェンタニル化合物(n=7)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載した類似のアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
m−mPEG
8−O−フェンタニル化合物(n=8)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
m−mPEG
9−O−フェンタニル化合物(n=9)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Bに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。
上記のmPEG1〜9−O−フェンタニル化合物のそれぞれは、1H NMR(200MHz Bruker)およびLC/MSにより特徴づけられた。
実施例5
m−mPEG
n−O’−フェンタニル化合物の調製
m−mPEG
1−O’−フェンタニル化合物(n=1)の合成:
実施例4に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して、上記化合物を調製した。この系列では、オリゴマー性mPEGは、N−フェニル基のメタ位に共有結合した。
m−mPEG
2−O’−フェンタニル化合物(n=2)の合成:
上記化合物は、実施例4に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して調製した。
m−mPEG
3−O’−フェンタニル化合物(n=3)の合成:
上記化合物は、実施例4に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して調製した。
m−mPEG
4−O’−フェンタニル化合物(n=4)の合成:
上記化合物は、実施例4に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して調製した。
m−mPEG
5−O’−フェンタニル化合物(n=5)の合成:
上記化合物は、実施例4に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して調製した。
m−mPEG
6−O’−フェンタニル化合物(n=6)の合成:
上記化合物は、実施例4に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して調製した。
m−mPEG
7−O’−フェンタニル化合物(n=7)の合成:
上記化合物は、実施例4に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して調製した。
m−mPEG
8−O’−フェンタニル化合物(n=8)の合成:
上記化合物は、実施例4に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して調製した。
m−mPEG
8−O’−フェンタニル化合物(n=8)の合成:
上記化合物は、実施例4に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して調製した。
m−mPEG
9−O’−フェンタニル化合物(n=9)の合成:
上記化合物は、実施例11に示し、スキーム4−Dに概略的に記載したアプローチを使用して調製した。
上記のmPEG1〜9−O’−フェンタニル化合物のそれぞれは、1H NMR(200MHz Bruker)およびLC/MSにより特徴づけられた。
実施例6
パラ−mPEG
n−O’−フェンタニル化合物の調製
p−mPEG
1−O’−フェンタニル化合物(n=1)の合成:
上記化合物は、実施例4に示したアプローチを使用して調製することができる。この系列では、オリゴマー性mPEGは、N−フェニル基のパラ位に共有結合している。
p−mPEG
4−O’−フェンタニル化合物(n=4)の合成:
パラ置換化合物は、以下に示す反応スキームに従って調製した:
所望のpPEG4−O−フェンタニル化合物は、最初に、還元条件下で、1−フェネチルピペリジン−4−オンを4−アミノフェノールと反応させて(例えば、NaBH(OAc)3などの還元剤の存在下で)、ケト官能性をアミンに変換することによって、即ち、4−アミノフェノールのアミノ基との反応によって調製した。次いで、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N−(1−フェネチルピペリジン−4−イル)プロピオンアミドの形成に有効な条件下で、生成物の4−(1−フェネチルピペリジン−4−イルアミノ)フェノールを塩基(例えば、トリエチルアミン)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下、無水プロピオン酸と反応させた。最終的に、オリゴマー性PEG官能性の導入は、所望の化合物を形成させるのに有効なカップリング条件下で、前駆体のN−(4−ヒドロキシフェニル)−N−(1−フェネチルピペリジン−4−イル)プロピオンアミドをmPEG4トシレートと反応させることにより実施した。一般的に使用される反応物の比および反応条件を上記の反応スキームに示す。
さらなるpPEGoligo−O−フェンタニル化合物は同様に調製することができる。
実施例7
インビボ鎮痛アッセイ:マウスにおける酢酸苦悶
ジクロフェナクと組み合わせた、特定のオリゴマー性PEG−オピオイド化合物であるmPEGn−O−ヒドロキシコドン(例えば、α−6−mPEGn−O−ヒドロキシコドン、実施例3を参照のこと)の鎮痛有効性を、マウスにおける酢酸苦悶アッセイを使用して決定した。
0.5%酢酸(0.1mL/10g体重)の腹腔内投与の30分前に、単回用量のコントロール溶液または2つの別々の経口用量(小容量の投与直後に大容量)のPEG−オピオイドアゴニスト化合物(α−6−mPEGn−O−ヒドロキシコドン(n=4、5、6))およびジクロフェナクをマウスに投与した。酢酸は、腹部の収縮、胴体のねじれおよびひねり、背部の反り返り、および後肢の進展を含む「苦悶」を誘発する。注射後、動物を観察ビーカーの中に置き、その行動を観察した。収縮は、酢酸注射後、0〜20分間の間に、4回の5分間セグメントでカウントした。動物は1回使用し、試験の完了直後に安楽死させた。各化合物は1〜100mg/kgの用量範囲で試験した。
表1に、ジクロフェナク(3mg/kg)と組み合わせた試験化合物について、酢酸苦悶の平均苦悶総数の要約を示す。
図1に、それぞれ別々に投与された、α−6−mPEGn−O−ヒドロキシコドン(n=5)およびジクロフェナクについての酢酸苦悶アッセイの用量応答グラフを示す。図2に、mPEGn−ヒドロキシコドン(α−6−mPEGn−O−ヒドロキシコドン)(n=5)とジクロフェナク(3mg/kg)との組み合わせについての酢酸苦悶アッセイの結果を示す。図2からわかるように、mPEGn−ヒドロキシコドン(α−6−mPEGn−O−ヒドロキシコドン)(n=5)とジクロフェナクとの組み合わせにより、各化合物が個々に投与された場合の苦悶の数より大きな苦悶の低減が測定される。
机上の実施例8
インビボ鎮痛アッセイ:ホットプレート潜時アッセイ
ホットプレート潜時アッセイは、本明細書に開示する組成物および組み合わせのインビボ生体活性の測定として使用することができる。この実験は、熱刺激からの引き込みの潜時を試験化合物の投与後に測定する、標準ホットプレート引き込みアッセイを使用する。化合物を動物に投与し、30分後に熱刺激を後肢に与える。モルヒネの存在下での後肢引き込みの潜時を、十分な鎮痛の測定として使用する一方、生理食塩水の存在下での潜時を、鎮痛のネガティブコントロールとして使用する。試験化合物のアゴニスト効果を、ネガティブコントロール(生理食塩水)と比較して、引き込むまでの時間を測定することによって評価する。
机上の実施例9
炎症のラットモデルにおける、オピオイドアゴニスト化合物およびNSAIDSの評価
NSAIDSおよびPEG−オピオイドアゴニスト化合物単独の効果ならびに組み合わせとしての効果を、炎症性疼痛のラットモデルで評価する。50%完全フロイントアジュバント(CFA)の注入をラットの後肢に足底内注射で行い、炎症を誘発する。2日後に、試験化合物を、一連の指定用量内でラットに経口投与する。CFA誘発の機械的痛覚過敏を、足圧試験(paw pressure test)(Randall Sellito)を使用して、ベースライン時に、また試験化合物による処置後の種々の時間に測定する。CFAは足引き込み閾値(ベースライン)の顕著な低下を引き起こし、足引き込み閾値のベースラインからの顕著な増大をもたらす試験化合物または組み合わせの用量は、このモデルにおいて効果的であるとみなされる。