(i)用語
本開示をさらに詳細に記載する前に、この開示が具体的な組成物又は方法ステップに限定されるものでなく、それ自体変わり得ることが理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形の用語は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含むことに留意しなければならない。
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei−Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressが、この開示において使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。さらに、文脈上特に必要でない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。概して、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、並びにタンパク質化学及びオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションとの関連で利用される命名法、及びそれらの技術は、当該技術分野において周知され、且つ一般的に用いられているものである。
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換には、標準的な技術が用いられる(例えば、電気穿孔、リポフェクション)。酵素反応及び精製技術は、製造者の仕様に従い、又は当該技術分野で一般的に遂行されるとおりに、又は本明細書に記載されるとおりに実施される。前述の技術及び手順は、概して、当該技術分野において周知されている従来方法に従い、且つ本明細書全体を通して引用及び考察される種々の一般的な及びより専門的な参考文献に記載されるとおり実施される。例えば、参照により本明細書に援用されるSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001))を参照のこと。
用語「CXCR4」は、ヒトCD184、CD184抗原、C−X−Cケモカイン受容体4型、CXCR−4、CXCL−12、CXC−R4、D2S201E、FB22、フーシン(fusin)、フーシン(Fusin)、HM89、HSY3RR、LAP3、LCR1、LESTR、白血球由来7回膜貫通ドメイン受容体、NPY3R、NPYR、NPYRL、NPYY3R、SDF−1受容体、又はストロマ細胞由来因子1受容体を指す。
用語「中和」又は「〜を阻害する」は、本開示の抗体又は抗原結合断片に言及するとき、前記抗体又は抗原結合断片がCXCR4などの標的抗原の活性を、例えば、本開示の抗体又は抗原結合断片が存在しない場合の生物活性と比較して標的抗原の生物活性を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%低下させることにより、消失させ、低下させ、又は有意に低下させる能力に関し、ここでCXCR4生物活性の低下は、例えば、以下及び実施例に詳述するとおりの、又は当業者に周知されているインビトロ又はインビボアッセイのいずれか一つを用いて、計測することができる。
従って、本開示の抗CXCR4抗体又は抗原結合断片を「阻害」又は「中和」とは、CXCR4の生物活性を消失させるか、又は有意に低下させる能力を有することである。CXCR4の生物活性は、例えば、腫瘍成長及び/又は生存、SDF−1誘導細胞転移、Erk1及びErk2を含むホスホル(phosphor)−MAPキナーゼ及び/又はAKTキナーゼのリン酸化、SDF−1誘導MAPキナーゼリン酸化、(例えば、SDF−1リガンドに応答した)細胞増殖、細胞接着又は浸潤を含む数多くの活性のいずれか一つに対応する。CXCR4を特異的に結合する中和、拮抗又は阻害抗体は、例えば、SDF−1のCXCR4受容体への結合を遮断することにより作用し得る。理想的には、CXCR4に対する中和抗体は、細胞増殖、細胞接着及び浸潤を阻害する。
本明細書で言及される用語「選択的にハイブリダイズする」は、検出可能に且つ特異的に結合することを意味する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びその断片は、非特異的な核酸に対する検出可能な結合の認識可能な量を最小限に抑えるハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件を用いることで、当該技術分野において公知の、及び本明細書で考察されるとおりの選択的ハイブリダイゼーション条件を実現することができる。概して、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、又は抗原結合断片と目的の核酸配列との間の核酸配列相同性は少なくとも80%であり、より典型的には、好ましくはさらに高く少なくとも85%、90%、95%、99%、及び100%の相同性である。
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、限定はされないが、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)(0.9M NaCl/90mMクエン酸Na、pH7.0)中約45℃でのフィルタに結合したDNAとのハイブリダイゼーションと、続く0.2×SSC/0.1%SDS中約50〜65℃での1回以上の洗浄、高度にストリンジェントな条件、例えば6×SSC中約45℃でのフィルタに結合したDNAとのハイブリダイゼーションと、続く0.1×SSC/0.2%SDS中約60℃での1回以上の洗浄、又は当業者に公知の任意の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(例えば、Ausubel,F.M.et al.,eds.1989 Current Protocols in Molecular Biology,vol.1,Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley and Sons,Inc.,NYの6.3.1〜6.3.6頁及び2.10.3頁を参照のこと)が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、20個の標準アミノ酸及びそれらの略記は、従来の用法に従う。Immunology−A Synthesis(2nd Edition,E.S.Golub and D.R.Gren,Eds.,Sinauer Associates,Sunderland,Mass.(1991))(これは参照により本明細書に援用される)を参照のこと。20個の標準アミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、非天然アミノ酸、例えば、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、及び他の非標準アミノ酸もまた、本開示のポリペプチドに好適な構成要素であり得る。非標準アミノ酸の例としては、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、及び他の同様のアミノ酸及びイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で用いられるポリペプチドの表記法では、標準的な用法及び慣行に一致して、左手方向がアミノ末端方向であり、右手方向がカルボキシ末端方向である。
一般に、タンパク質のシステイン残基は、システイン−システインジスルフィド結合に関与しているか、或いはそれが折り畳みタンパク質領域の一部であるとき、ジスルフィド結合形成から立体的に保護されている。タンパク質におけるジスルフィド結合形成は複雑なプロセスであり、環境の酸化還元電位及び特殊なチオール−ジスルフィド交換酵素によって決定される(Creighton,Methods Enzymol.107,305−329,1984;Houee−Levin,Methods Enzymol.353,35−44,2002)。システイン残基は、それがタンパク質構造に対を有さず、且つ折り畳みによって立体的に保護されていない場合、ジスルフィドシャフリングとして知られるプロセスで溶液の遊離システインとジスルフィド結合を形成し得る。ジスルフィドスクランブリングとして知られる別のプロセスでは、遊離システインがまた天然に存在するジスルフィド結合(抗体構造に存在するものなど)に干渉し、低い結合性、低い生物活性及び/又は低い安定性をもたらし得る。
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体形成のための結合親和性を変化させ、(4)結合親和性を変化させ、及び(4)かかる類似体の他の物理化学的又は機能的特性を付与又は改変するものである。類似体には、天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々なムテインが含まれ得る。例えば、単一又は複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)が、天然に存在する配列(好ましくはポリペプチドのうち、分子間接触を形成するドメインの外側にある部分)に作製されてもよい。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させてはならない(例えば、置換アミノ酸が、親配列に現れるヘリックスを破壊する傾向を有したり、又は親配列を特徴付ける他の種類の二次構造を分断したりしてはならない)。当該技術分野において認識されているポリペプチド二次構造及び三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));及びThornton et at.Nature 354:105(1991)(これらの各々は、参照により本明細書に援用される)に記載されている。加えて、かかる方法を用いて、鎖内ジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換又は欠失を作製することにより、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合が欠損した抗体分子を産生してもよい。
用語「CDR領域」又は「CDR」は、抗体に抗原結合特異性を付与する、抗体の重鎖及び軽鎖の超可変領域を示すことが意図される。CDRは、カバット方式(Kabat,E.A.et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Edition.US Department of Health and Human Services,Public Service,NIH,Washington)、及び後の版に従い定義され得る。抗体は、典型的には3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDRとを含む。用語CDRは、本明細書では、場合に応じて、抗体とその抗体が認識する抗原又はエピトープとの親和性による結合に関与するアミノ酸残基の大部分を含むこれらの領域の一つ又はこれらの領域のいくつか、又はさらには全体を示すために用いられる。
重鎖の3番目のCDR(HCDR3)は、サイズのばらつきがより大きい(それを生じる遺伝子の配列機構に本質的に起因して、多様性がより大きい)。HCDR3は2アミノ酸ほどの短さであってよいが、知られている最も長いサイズは26アミノ酸である。CDRの長さはまた、特定の基礎にあるフレームワークが収容することのできる長さによっても異なり得る。機能上、HCDR3は、一つには、抗体の特異性を決定する役割を担う(Segal et al.,PNAS,71:4298−4302,1974、Amit et al.,Science,233:747−753,1986、Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901−917,1987、Chothia et al.,Nature,342:877−883,1989、Caton et al.,J.Immunol.,144:1965−1968,1990、Sharon et al.,PNAS,87:4814−4817,1990、Sharon et al.,J.Immunol.,144:4863−4869,1990、Kabat et al.,J.Immunol.,147:1709−1719,1991)。
本明細書で言及される用語「一組のCDR」は、CDR1、CDR2及びCDR3を含む。従って、一組のHCDRはHCDR1、HCDR2及びHCDR3を指し、一組のLCDRはLCDR1、LCDR2及びLCDR3を指す。
本開示のVH及びVLドメイン並びにCDRの変異体は、本明細書にアミノ酸配列が示されるもの、並びに結合剤及び抗体をCXCR4に標的化させるのに用いることのできるものを含め、配列の改変又は突然変異方法及び所望の特性を伴う抗原標的性のスクリーニングを用いて得ることができる。所望の特性の例としては、限定はされないが、その抗原に特異的な既知の抗体と比べた、抗原に対する結合親和性の増加;活性が知られている場合、その抗原に特異的な既知の抗体と比べた、抗原活性の中和の増加;特定のモル比の抗原に対する既知の抗体又はリガンドとの特定の競合能力;リガンド−受容体複合体を免疫沈降させる能力;特定のエピトープに結合する能力;線状エピトープ、例えば、例えば線状の及び/又は拘束されたコンホメーションでスクリーニングされたペプチドを用いるペプチド結合スキャンを用いて同定されるペプチド配列;不連続な残基により形成された、立体エピトープ;CXCR4、又は下流分子の新しい生物活性を調節する能力;CXCR4を結合及び/又は中和する能力及び/又は任意の他の所望の特性が挙げられる。CDR、抗体VH又はVLドメイン及び抗原結合部位のアミノ酸配列内に置換を作製するために必要な技術は、当該技術分野において利用可能である。本明細書に開示される抗体分子の変異体は、本開示において作製及び使用され得る。構造/特性−活性関係に対する多変量データ解析技術の適用における計算機化学の主導に従い(Wold,et al.Multivariate data analysis in chemistry.Chemometrics−Mathematics and Statistics in Chemistry(Ed.:B.Kowalski),D.Reidel Publishing Company,Dordrecht,Holland,1984)、統計的回帰、パターン認識及び分類などの周知の数学的手法を用いて抗体の定量的な活性−特性関係を求めることができる(Norman et al.Applied Regression Analysis.Wiley−Interscience;第3版(1998年4月);Kandel,Abraham & Backer,Eric.Computer−Assisted Reasoning in Cluster Analysis.Prentice Hall PTR(1995年5月11日);Krzanowski,Wojtek.Principles of Multivariate Analysis:A User’s Perspective(Oxford Statistical Science Series,No 22(Paper)).Oxford University Press;(2000年12月);Witten,Ian H.& Frank,Eibe.Data Mining:Practical Machine Learning Tools and Techniques with Java Implementations.Morgan Kaufmann;(1999年10月11日);Denison David G.T.(編者),Christopher C.Holmes,Bani K.Mallick,Adrian F.M.Smith.Bayesian Methods for Nonlinear Classification and Regression(Wiley Series in Probability and Statistics).John Wiley & Sons;(2002年7月);Ghose,Arup K.& Viswanadhan,Vellarkad N.Combinatorial Library Design and Evaluation Principles,Software,Tools,and Applications in Drug Discovery)。ある場合には、抗体の特性は、抗体配列の機能的及び三次元的構造の経験的及び理論的モデル(例えば、推定される接触残基の解析又は計算による物理化学的特性)から導き出すことができ、それらの特性を単独で、及び組み合わせで考慮することができる。
配列−構造の関係のこの研究は、既知の配列の、しかし三次元構造が未知の抗体における、そのCDRループの三次元構造の維持に重要な、従って結合特異性を維持する残基の予測に用いることができる。これらの予測は、予測を主要な最適化実験の結果と比較することにより裏付けることができる。構造的手法では、任意の無償で利用可能な又は市販のパッケージ、例えばWAMを使用して、抗体分子のモデルを作成することができる。次に、タンパク質の視覚化及び分析ソフトウェアパッケージ、例えばInsight II(Accelrys,Inc.)又はDeep Viewを使用して、CDRの各位置における可能な置換を評価してもよい。次にこの情報を使用して、活性に対して最小限の又は有益な作用を有するか、又は他の望ましい特性を付与する可能性が高い置換を作製してもよい。
本明細書で使用されるとき「抗体(antibody)」(免疫グロブリン)は、単独での、或いは公知の技術によって提供される他のアミノ酸配列との組み合わせでの、オリゴクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ラクダ科動物抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、触媒抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、抗イディオタイプ抗体及び可溶性の又は結合した形態で標識することのできる抗体並びにこれらの断片、変異体又は誘導体であってもよい。抗体は任意の種由来であってよい。天然の完全長抗体は、通常、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成される。各軽鎖は1つの共有結合性のジスルフィド結合により重鎖に連結され、一方、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間でジスルフィド結合の数は異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的間隔の鎖内のジスルフィド架橋も有する。各重鎖は一端に可変ドメイン(VH)を有し、それにいくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は一端に可変ドメイン(VL)を有し、その他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の1番目の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。軽鎖は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づきλ鎖又はκ鎖のいずれかに分類される。用語「可変領域」もまた、重鎖又は軽鎖の可変ドメインを記載するために用いられ得る。特定のアミノ酸残基が軽鎖及び重鎖可変ドメインの間の接合部を形成すると考えられる。各軽鎖/重鎖対の可変領域が抗体結合部位を形成する。かかる抗体は、限定はされないが、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス等を含む任意の哺乳類に由来し得る。
用語「抗原結合断片」は、本開示の抗体の結合断片を含み、例示的断片としては、単鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、Fv断片、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)2断片、所望の生物活性を呈する抗原結合断片、ジスルフィド安定化可変領域(dsFv)、二量体可変領域(ダイアボディ)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本開示の抗体に対する抗Id抗体を含む)、細胞内抗体、線状抗体、一本鎖抗体分子並びに上記のいずれかの抗原結合断片及びエピトープ結合断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。特に、抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち、抗原結合部位を含む分子が含まれる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであってよい。本発明の「抗体」又は「抗原結合断片」は、例えば、上記に考察したとおりのCXCR4の生物活性の少なくとも1つを阻害することができる。
全抗体の断片が抗原を結合する機能を果たし得ることは示されている。結合断片の例は、(Ward,E.S.et al.,(1989)Nature 341,544−546)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片;(McCafferty et al(1990)Nature 348,552−554)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(Holt et al(2003)Trends in Biotechnology 21,484−490)単一の抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片;(iv)dAb断片(Ward,E.S.et al.,Nature 341,544−546(1989)、McCafferty et al(1990)Nature 348,552−554、Holt et al(2003)Trends in Biotechnology 21,484−490]、これはVH又はVLドメインからなる;(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの連結されたFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片(vii)単鎖Fv分子(scFv)、ここではVHドメイン及びVLドメインがペプチドリンカーで連結されており、それによりこれらの2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成することが可能となっている(Bird et al,(1988)Science 242,423−426、Huston et al,(1988)PNAS USA,85,5879−5883);(viii)二重特異性単鎖Fv二量体(PCT/US92/09965号明細書)及び(ix)「ダイアボディ」、遺伝子融合により構築される多価又は多重特異性断片(国際公開第94/13804号パンフレット;Holliger,P.(1993)et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444−6448)である。Fv、scFv又はダイアボディ分子は、VH及びVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組み込みにより安定化し得る(Reiter,Y.et al,Nature Biotech 14,1239−1245,1996)。CH3ドメインにつなぎ合わされたscFvを含むミニボディもまた作製され得る(Hu,S.et al,(1996)Cancer Res.56,3055−3061)。結合断片の他の例は、Fab’(これは、抗体ヒンジ領域の1つ以上のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数個の残基が付加されている点がFab断片とは異なる)、及びFab’−SH(これは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’断片である)である。
用語「可変」は、抗体間で配列において可変ドメインの特定の部分が広範に異なり、各特定の抗体の、その特定の抗原に対する結合特異性に関与しているということを指す。しかしながら、この可変性は、抗体の可変ドメインにわたり均等に分布しているわけではない。可変性は、軽鎖及び重鎖可変ドメインの双方で相補性決定領域(CDR)と呼ばれる区間に集中している。可変ドメインのなかでより高度に保存されている部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、主としてβシート構成をとる、3つのCDRで接続された4つのFR領域を含み、CDRが形成するループがこのβシート構造を接続し、ある場合にはβシート構造の一部を形成する。各鎖のCDRはFR領域によって近接して一体に保持され、他方の鎖のCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、概して抗原結合に直接関与しないが、抗原結合親和性に影響を及ぼし得るとともに、ADCC、CDC、及び/又はアポトーシスにおける抗体の関与などの、様々なエフェクター機能を呈し得る。
用語「患者」又は「対象」には、ヒト対象及び獣医学対象が含まれる。
用語「mAb」は、モノクローナル抗体を指す。
用語「及び/又は」は、本明細書で使用されるとき、2つの指示される特徴又は構成要素の各々の、他方を伴う又は伴わない具体的な開示として解釈されるべきである。例えば「A及び/又はB」は、(i)A、(ii)B並びに(iii)A及びBの各々の具体的な開示として、それぞれが本明細書に個別に示されたかのように解釈されるべきである。
アミノ酸は、本明細書では、その一般に知られている三文字記号によるか、或いはIUPAC−IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨する一文字記号によって参照され得る。ヌクレオチドも同様に、その一般に認められた一文字コードによって参照され得る。
抗体の可変ドメイン、相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)におけるアミノ酸の付番は、特に指示されない限り、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に示されるとおりのカバットの定義に従う。この付番方式を使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮、又はそこへの挿入に対応するより少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(カバットに基づく残基52a)及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、カバットに基づく残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のカバット付番は、所与の抗体について、抗体の配列の相同性領域における「標準的な」カバット付番配列とのアラインメントにより決定され得る。フレームワーク残基の最大限のアラインメントには、多くの場合に付番体系における「スペーサー」残基の挿入をFv領域に用いる必要がある。加えて、任意の所与のカバット部位番号における特定の個別の残基のアイデンティティは、種間又は対立遺伝子の相違に起因して抗体鎖毎に異なり得る。
(ii)抗CXCR4抗体
本開示は、ヒトCXCR4に特異的に結合し、且つヒトCXCR4の1つ以上の活性を阻害する抗CXCR4抗体又は抗原結合断片を提供する。本明細書のこの節では、本開示の例示的CXCR4抗体又は抗原結合断片の機能的及び構造的特性について詳細に記載する。本開示の抗体又は抗原結合断片は、本明細書に記載される構造的及び/又は機能的特性の任意の1つ以上(2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ等)に基づき記載され得ることが理解されなければならない。本開示のこの部分全体を通して、本開示の抗体に関連して機能的又は構造的特性が記載されるとき、文脈上明らかに別段の解釈が示される場合を除き、かかる構造的又は機能的特性は同様に、本開示の抗原結合断片を記載するためにも用いられ得ることが理解されなければならない。
CXCR4阻害効果
本開示の実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、且つ腫瘍成長又は生存などのCXCR4の生物活性を阻害する抗体に関する。一実施形態では本開示の抗体は、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得る生物活性の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を阻害する。一例において、本開示の抗体はSCID異種移植モデルにおける乳癌腫瘍成長を阻害する。この例では、本開示の抗体、例えば6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8(又は6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8のいずれかのVH及び/又はVLドメイン、6つのCDR、又はCDR3を含む抗体)は、MDA−MB−231の腫瘍成長を50%超低減することができる。別の例において、本開示の抗体は、卵巣腫瘍の成長を阻害することによる卵巣癌の治療に用いることができる。この例では、本開示の抗体、例えば6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8(又は6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8のいずれかのVH及び/又はVLドメイン、6つのCDR、又はCDR3を含む抗体)は、腫瘍成長を例えば40%超低減し得る。さらに別の例では、本開示の抗体は、B細胞リンパ腫の治療に用いることができる。この例では、本開示の抗体、例えば6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8(又は6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8のいずれかのVH及び/又はVLドメイン、6つのCDR、又はCDR3を含む抗体)を用いて腫瘍成長を例えば45%超阻害することができる。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDR(CDR1、CDR2、CDR3)を有する抗体(又は抗原結合断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
本開示の実施形態は、ヒトCXCR4に特異的に結合し、それによりヒトCXCR4活性を阻害する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得るCXCR4活性の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を阻害する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又はその抗原結合断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又はその抗原結合断片)である。
本開示の実施形態は、ヒトCXCR4に特異的に結合し、それによりSDF−1結合活性を阻害する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得る、ヒトCXCR4をトランスフェクトしたHEK293T細胞に対するSDF−1の結合の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を阻害する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
本開示の実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、且つCXCR4によって媒介されるSDF−1誘導腫瘍増殖を阻害する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得るSDF−1誘導腫瘍増殖の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を阻害する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
本開示のさらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、それによりSDF−1誘導腫瘍細胞生存を阻害する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得るSDF−1誘導腫瘍細胞生存の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を阻害する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
本開示のさらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、それによりSDF−1誘導細胞転移を阻害する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得るSDF−1細胞転移の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を阻害する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
本開示のさらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、それによりErk1及びErk2を含むホスホル(phosphor)−MAPキナーゼ及び/又はAKTキナーゼのリン酸化を阻害する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得るErk及び/又はAKTキナーゼのリン酸化の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%を阻害する。一実施形態では、ジャーカット細胞において、本開示の抗体はCXCR4に特異的に結合し、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得るより少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%だけErk1及び/又はErk2のSDF−1誘導リン酸化を阻害する。別の実施形態では、MDA−MB−231細胞において、本開示の抗体はCXCR4に特異的に結合し、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得るより少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%だけAKTのSDF−1誘導リン酸化を阻害する。この実施形態において、本開示の抗体は、MDA−MB−231細胞においてErk1又はErk2リン酸化の有意な阻害を示さない。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
一実施形態では、本開示の抗体はSDF−1誘導MAPキナーゼリン酸化を阻害する。一例において、本開示の抗体は、ジャーカット細胞におけるSDF−1誘導MAPキナーゼリン酸化を5nM未満、例えば、4nM、3.5nM、3.0nM、2nM、又は1nMのIC50で阻害する。別の例において、6C7は、ジャーカット細胞におけるSDF−1誘導MAPキナーゼリン酸化を3.5nM未満のIC50で阻害する。
本開示のさらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、それによりSDF−1リガンドに応答した細胞増殖を阻害する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得る細胞増殖の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を阻害する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
本開示のさらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、且つCXCR4を発現する細胞においてアポトーシスを誘導する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が存在しない場合に生じ得る細胞アポトーシスの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を誘導する。一実施形態では、本開示の抗体は、ラモス細胞においてアポトーシスを10〜70%、30〜60%、又は20〜40%誘導する。一例において、6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8(又は6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8のいずれかのVH及び/又はVLドメイン、6つのCDR、又はCDR3を含む抗体)は、ラモス細胞においてアポトーシスを20〜40%誘導する。別の例において、6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8(又は6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8のいずれかのVH及び/又はVLドメイン、6つのCDR、又はCDR3を含む抗体)は、ラモス細胞においてアポトーシスを30〜60%誘導する。第3の例において、6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8(又は6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8のいずれかのVH及び/又はVLドメイン、6つのCDR、又はCDR3を含む抗体)は、HUVEC細胞においてアポトーシスを40〜60%誘導する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
本開示のさらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、且つジャーカット走化性を阻害する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、ジャーカット走化性を10nM未満、例えば、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nm、0.1nM、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、又は0.01nMのIC50濃度(その50%阻害を達成する濃度)で阻害する。例えば、一実施形態では、本開示の抗体は、ジャーカット走化性を0.01nM〜1nMのIC50濃度(その50%阻害を達成する濃度)で阻害する。さらに別の実施形態では、本開示の抗体は、ジャーカット走化性を1500ng/ml未満、例えば、750ng/ml、500ng/ml、250ng/ml、125ng/ml、100ng/ml、50ng/ml、40ng/ml、30ng/ml、20ng/ml、又は10ng/mlのIC50濃度(その50%阻害を達成する濃度)で阻害する。一実施形態では、本開示の抗体は、ジャーカット走化性を185、150、90、80、70、60、50、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10ng/ml未満のIC50で阻害する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
本開示のさらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、且つ引っ掻き傷創傷治癒アッセイにおけるHUVECの遊走を阻害する抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、HUVEC遊走を10nM未満、例えば、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、又は0.01nMのIC50濃度(その50%阻害を達成する濃度)で阻害する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
本開示のさらなる実施形態は、B細胞数の減少を抑える抗体に関し、例えば、本開示の抗体は、末梢血白血球細胞調製物に10μg/mlの濃度で16〜18時間にわたり添加したときに生じるB細胞数の減少が60%以下であり得る。詳細な実施形態において抗体は、末梢血白血球細胞調製物に10μg/mlの濃度で16〜18時間にわたり添加したときに生じるB細胞数の減少が50%以下であり得る。特定の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖CDRを有する抗体(又は断片)、又は本明細書に記載される抗体のいずれかのVH鎖及び/又はVL鎖アミノ酸配列を有する抗体(又は断片)である。
抗体の機能的特性
本開示のさらなる実施形態は、CXCR4に対する結合について本開示の抗体と競合する抗体である。別の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4に対する結合について、6C7、2A4又は4C1を含む本明細書に記載される完全ヒトモノクローナル抗体のいずれか一つ、又は前述の抗体のいずれかのVH及びVLドメインのアミノ酸配列を含む抗体と競合する。「競合する」は、抗体がCXCR4に対する結合について、完全ヒトモノクローナル抗体6C7、2A4又は4C1のいずれか一つと競合することを示し、すなわち競合は一方向性である。
本開示の実施形態は、6C7、2A4、4C1、5C9、5E1又は7C8)を含む本明細書に記載される完全ヒトモノクローナル抗体のいずれか一つ、又は前述の抗体のいずれかのVH及びVLドメインのアミノ酸配列を含む抗体と、CXCR4に対する結合について交差競合する抗体を含む。「交差競合する」は、抗体がCXCR4に対する結合について、6C7、2A4又は4C1を含む本明細書に記載される完全ヒトモノクローナル抗体のいずれか一つと競合すること、及びその逆を示し、すなわち競合は双方向性である。「交差競合する」はまた、例えば、ある抗CXCR4抗体又は抗原結合断片が上記に考察したとおりのCXCR4の生物活性を、別の抗CXCR4抗体又は抗原結合断片と同程度に阻害又は中和する能力を指す。
本開示のさらなる実施形態は、本開示の抗体とCXCR4上の同じエピトープに結合する抗体又は抗原結合断片である。本開示の実施形態はまた、6C7、2A4又は4C1を含む本明細書に記載される完全ヒトモノクローナル抗体のいずれか一つ、又は前述の抗体のいずれかのVH及びVLドメインのアミノ酸配列を含む抗体とCXCR4上の同じエピトープに結合する抗体又は抗原結合断片も含む。本開示の特定の実施形態は、本発明の2つ以上の抗体(例えば、6C7、4C1、2A4、5C9、5E1、又は7C8)のオーバーラップエピトープに結合する抗体又は抗原結合断片を含む。
一実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、同じ又は異なるタンパク質上の少なくとも2つの異なるエピトープに結合特異性を有する抗体である。二重特異性抗体の作製方法は、当該技術分野において公知である(例えば、Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983);Traunecker et al.,EMBO J.,10:3655−3659(1991);Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986);Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992);Hollinger et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993);Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994);米国特許第4,474,893号明細書;同第4,714,681号明細書;同第4,925,648号明細書;同第5,573,920号明細書;同第5,601,81号明細書;同第95,731,168号明細書;同第4,676,980号明細書;及び同第4,676,980号明細書、国際公開第94/04690号パンフレット;国際公開第91/00360号パンフレット;国際公開第92/200373号パンフレット;国際公開第93/17715号パンフレット;国際公開第92/08802号パンフレット;及び欧州特許第03089号明細書を参照のこと)。
本明細書に記載される本開示の実施形態は、CXCR4に特異的に結合し、且つCXCR4機能に影響を及ぼすモノクローナル抗体に関する。他の実施形態は、CXCR4に対する高い結合親和性、CXCR4シグナル伝達の阻害に対する高い選択性、低い毒性、CXCR4に対するSDF−1結合を遮断する能力、CXCR4誘導増殖性疾患、血管新生疾患、細胞接着又は浸潤に関連する疾患、例えば腫瘍疾患を阻害する能力、及び/又はインビトロ及びインビボで腫瘍細胞成長を阻害する能力を含め、治療的観点から望ましい特性を有する、CXCR4に特異的に結合する完全ヒト抗体及びその製剤に関する。さらに他の実施形態は、有意なヒト抗キメラ抗体(HACA)反応を生じない、従って反復投与を可能にする、CXCR4に特異的に結合する完全ヒト抗体及びその製剤に関する。
CXCR4阻害の特異性
本開示の抗体は、ヒトCXCR4に結合する。一部の例において、本開示の抗体は、他の種由来のCXCR4タンパク質と交差反応性を示す。一実施形態では、本開示の抗体は、非ヒト霊長類由来のCXCR4と交差反応性を示す。一実施形態では、本開示の抗体は、非ヒト霊長類、例えばカニクイザルCXCR4と交差反応性を示す。別の実施形態では、本開示の抗体は、非ヒト霊長類、例えばカニクイザルCXCR4と交差反応性を示すが、他の種由来のCXCR4タンパク質とは弱い交差反応性しか示さないか、又は交差反応性を全く示さず、例えば、天然マウスCXCR4との交差反応性は検出されなかった。一実施形態では、本開示の抗体は、高親和性、例えば1nM未満のKdで、カニクイザルなどの非ヒト霊長類由来のCXCR4分子を結合する。
別の実施形態では、本開示の抗体はCXCR4に特異的であり、他のケモカイン受容体メンバーと交差反応しない。一例において、本開示の抗体はCXCR3及び/又はCCR4と交差反応しない。
さらに別の実施形態では、本開示の抗体は、CXCR4受容体に対するSDF−1リガンド結合を阻害する。一例において、抗体が有する活性は、10μM未満のIC50濃度(その50%阻害を達成する濃度)で実証され得る。別の例において、本開示の抗体は、50、40、30、20、10、5、4又は2nM未満のIC50濃度を有し得る。
本明細書に記載される抗体は、上記のとおりの活性の少なくとも1つを有し得る。一実施形態では、本開示の抗体は、アッセイを24時間実行したとき、CXCR4受容体に対するSDF−1リガンド結合を70%超阻害することができ、さらに、ジャーカット細胞走化性を少なくとも80%阻害することができる。別の実施形態では、本開示の抗体は、アッセイを24時間実行したとき、CXCR4受容体に対するSDF−1リガンド結合を20〜60%阻害することができ、さらに、ジャーカット細胞走化性を少なくとも80%阻害することができる。別の実施形態では、本開示の抗体はCXCR4受容体に対するSDF−1リガンド結合を阻害しないが、ジャーカット細胞走化性はなお、少なくとも80%阻害することができる。
さらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合する抗体であって、且つ表7及び/又は表8に示される相補性決定領域(CDR)配列の1つ以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)を含む配列を含む抗体である。本開示の実施形態は、表7に示されるとおりのCDR1、CDR2又はCDR3配列のいずれか一つを含む配列を含む抗体を含む。さらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合する抗体であって、且つ表7に示されるCDR配列のいずれか2つを含む配列を含む抗体である。別の実施形態では、抗体は、表7に示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む配列を含む。別の実施形態では、抗体は、表8に示されるCDR配列の1つ以上を含む配列を含む。本開示の実施形態は、表8に示されるとおりのCDR1、CDR2又はCDR3配列のいずれか一つを含む配列を含む抗体を含む。別の実施形態では抗体は、表8に示されるCDR配列のいずれか2つを含む配列を含む。別の実施形態では抗体は、表8に示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む配列を含む。別の実施形態では抗体は、表7に示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3配列と、表8に示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3配列とを含む配列を含み得る。特定の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。特定の他の実施形態では、抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体の結合断片である。
さらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合する抗体であって、且つ表7に示されるCDR3配列のうちの一つを含む配列を含む抗体である。さらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合する抗体であって、且つ表8に示されるCDR3配列のうちの一つを含む配列を含む抗体である。別の実施形態では、抗体は、表7に示されるとおりのCDR3配列と、表8に示されるとおりのCDR3配列とを含む配列を含み得る。
さらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合する抗体であって、且つ表7に示されるCDR3配列のうちの一つを含む配列を含む抗体である。さらなる実施形態において、抗体は、表8に示されるとおりのCDR3配列を含む配列をさらに含む。さらなる実施形態において、抗体は、表7に示されるとおりのCDR2及びCDR3配列を含む配列をさらに含む。さらなる実施形態において、抗体は、表7に示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3配列抗体を含む配列をさらに含む。
さらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合する抗体であって、且つ表7に示されるCDR2配列のうちの一つとCDR3配列のうちの一つとを含む配列を含む抗体である。さらなる実施形態において、抗体は、表8に示されるとおりのCDR3配列を含む配列をさらに含む。さらなる実施形態において、抗体は、表7に示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む配列をさらに含む。
さらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合する抗体であって、且つ表7に示されるCDR2配列のうちの一つとCDR3配列のうちの一つとを含む配列を含む抗体である。さらなる実施形態において、抗体は、表7に示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む配列をさらに含む。
さらなる実施形態は、CXCR4に特異的に結合する抗体であって、且つ表8に示されるCDR2配列のうちの一つとCDR3配列のうちの一つとを含む配列を含む抗体である。さらなる実施形態において、抗体は、表8に示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む配列をさらに含む。
当業者はCDRの決定を容易に達成し得ることが注記される。例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD(1991),vols.1−3を参照のこと。Kabatは、数多くの種の抗体アイソタイプに由来する免疫グロブリン鎖の多重配列アラインメントを提供している。アラインメントされた配列は、単一付番方式であるカバット付番方式に従い付番される。カバット配列は、1991年の発表以降更新されており、電子配列データベースとして利用可能である(現在、カバットデータベースウェブサイトから利用可能;Nucleic Acids Research,2000,28(1),214−218もまた参照のこと)。カバット参照配列とアラインメントを実施することにより、任意の免疫グロブリン配列をカバットに従い付番することができる。従って、カバット付番方式は、免疫グロブリン鎖の統一された付番方式を提供する。
抗体構造
天然抗体の基本的な構造単位は四量体を含むことが知られている。各四量体は同一の2対のポリペプチド鎖で構成され、各対が1つの「軽」鎖(約25kDa)と1つの「重」鎖(約50〜70kDa)とを有する。各鎖のアミノ端部分は、主として抗原認識に関与する約100〜110アミノ酸以上の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ端部分は、主としてエフェクター機能に関与する定常領域を画定する。ヒト軽鎖は、κ及びλ軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、又はεに分類され、それぞれIgM、IgD、IgA、及びIgEとして抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖及び重鎖のなかで、可変領域と定常領域とは約12個以上のアミノ酸の「J」領域により連結され、重鎖はまた、約10個のさらなるアミノ酸の「D」領域も含む。概して、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))(あらゆる目的から全体として参照により援用される)を参照のこと。各軽鎖/重鎖対の可変領域が抗原結合部位を形成する。
従って、インタクトな抗体は2つの結合部位を有する。二官能性又は二重特異性抗体以外では、これらの2つの結合部位は同じである。
鎖は全て、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)がCDRとも称される3つの超可変領域により連結されている同じ一般構造を呈する。各対の2本の鎖のCDRはフレームワーク領域によって整列し、特異的なエピトープへの結合を可能にしている。N末端からC末端へ、軽鎖及び重鎖の双方とも、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインに対するアミノ酸の割当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest)(国立衛生研究所(National Institutes of Health),Bethesda,Md.(1987 and 1991))、又はChothia & Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Chothia et al.Nature 342:878−883(1989)の定義に従う。
二重特異性又は二官能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対及び2つの異なる結合部位を有する人工のハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合又はFab’断片の連結を含む様々な方法により作製することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990)、Kostelny et al.J.Immunol.148:1547−1553(1992)を参照のこと。二重特異性抗体は、単一の結合部位を有する断片(例えば、Fab、Fab’、及びFv)の形態では存在しない。
典型的には、VHドメインはVLドメインと対になって抗体抗原結合部位を提供するが、VH又はVLドメイン単独でも抗原の結合に用いられ得る。VHドメイン(表7を参照のこと)はVLドメイン(表8を参照のこと)と対にしてもよく、従ってVH及びVLの両方のドメインを含む抗体抗原結合部位が形成される。
本開示の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。本開示の他の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
抗体、モノクローナル抗体及びヒトモノクローナル抗体には、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4アイソタイプ、例えばIgG2の抗体が含まれる。本開示の一実施形態では、抗体は、IgG2アイソタイプの完全ヒトモノクローナル抗体である。このアイソタイプは、他のアイソタイプと比較してエフェクター機能を誘発する潜在的能力が低く、これは毒性の低下をもたらし得る。本開示の別の実施形態では、抗体は、IgG1アイソタイプの完全ヒトモノクローナル抗体である。IgG1アイソタイプは、他のアイソタイプと比較してADCCを誘発する潜在的能力が高く、これは効力の向上をもたらし得る。IgG1アイソタイプは、他のアイソタイプ、例えばIgG4と比較して向上した安定性を有し、これはバイオアベイラビリティの向上/製造の容易さ/より長い半減期をもたらし得る。一実施形態では、IgG1アイソタイプの完全ヒトモノクローナル抗体は、z、za又はfアロタイプである。本開示の別の実施形態では、抗体は、IgG1アイソタイプの完全ヒトモノクローナル抗体であり、Fc領域に突然変異を導入することによりFc受容体結合及びエフェクター機能の関与が最小限に抑えられている。本開示の別の実施形態では、抗体は、CXCR4に対する高い結合親和性、インビトロ及びインビボでCXCR4活性を阻害する能力、及びCXCR4誘導細胞接着、増殖、運動性、浸潤、転移、腫瘍成長及び血管新生を阻害する能力の1つ以上から選択される望ましい治療特性を有する。
一実施形態では、本開示は、極めて高い親和性(Kd)でCXCR4に特異的に結合する抗体を含む。本開示の一部の実施形態では、抗体は、5ナノモル濃度(nM)未満の結合親和性(Kd)でCXCR4に結合する。他の実施形態では、標的結合剤は、4nM、3nM、2.5nM、2nM又は1nM未満のKdで結合する。本開示の一部の実施形態では、抗体は、950ピコモル濃度(pM)未満のKdでCXCR4に結合する。本開示の一部の実施形態では、抗体は、900pM未満のKdでCXCR4に結合する。他の実施形態では、抗体は、800pM、700pM又は600pM未満のKdでCXCR4に結合する。本開示の一部の実施形態では、抗体は、500pM未満のKdでCXCR4に結合する。他の実施形態では、抗体は、400pM未満のKdでCXCR4に結合する。さらに他の実施形態では、抗体は、300pM未満のKdでCXCR4に結合する。一部の他の実施形態では、抗体は、200pM未満のKdでCXCR4に結合する。一部の他の実施形態では、抗体は、100pM未満のKdでCXCR4に結合する。一部の他の実施形態では、抗体は、90pM、80pM、70pM、60pM、55pM又は50pM未満のKdでCXCR4に結合する。一部の他の実施形態では、抗体は、60pM未満のKdでCXCR4に結合する。一部の他の実施形態では、抗体は、55pM未満のKdでCXCR4に結合する。Kdは、本明細書に記載される、又は当業者に公知の方法を用いて評価され得る(例えば、BIAcoreアッセイ、ELISA)(Biacore International AB,Uppsala,スウェーデン)。一実施形態では、本開示の抗体は、FACS結合キネクサ(kinexa)解析により計測するとき、2.5nM、2.0nM、1.5nM、1nM、0.5nM未満のKDでヒトCXCR4に結合する。本開示の抗体は、先行技術に報告される抗体と比較して、CXCR4に対する結合親和性が著しく向上している。
本開示の抗体の結合特性はまた、解離速度又は会合速度(それぞれkoff及びkon)を参照することにより計測してもよい。
本開示の一実施形態では、抗体は、少なくとも104M−1s−1、少なくとも5×104M−1s−1、少なくとも105M−1s−1、少なくとも2×105M−1s−1、少なくとも5×105M−1s−1、少なくとも106M−1s−1、少なくとも5×106M−1s−1、少なくとも107M−1s−1、少なくとも5×107M−1s−1、又は少なくとも108M−1s−1のkon速度(抗体(Ab)+抗原(Ag)kon→Ab−Ag)を有し得る。
本開示の別の実施形態では、抗体は、5×10−1s−1未満、10−1s−1未満、5×10−2s−1未満、10−2s−1未満、5×10−3s−1未満、10−3s−1未満、5×10−4s−1未満、10−4s−1未満、5×10−5s−1未満、10−5s−1未満、5×10−6s−1未満、10−6s−1未満、5×10−7s1未満、10−7s−1未満、5×10−8s−1未満、10−8s−1未満、5×10−9s−1未満、10−9s−1未満、又は10−10s−1未満のkoff速度((Ab−Ag)koff→抗体(Ab)+抗原(Ag))を有し得る。
本開示の実施形態は、以下の表1に掲載する抗体を含む。この表は、各抗体の識別番号を、それぞれ対応する重鎖及び軽鎖遺伝子及びポリペプチドの可変ドメインの配列番号と共に報告する。各抗体に識別番号が付与されている。
例示的配列
一実施形態では、本開示の抗体は、表1に掲載されるか又は表7に示される重鎖配列(VH)のいずれか一つを含む配列を含む。別の実施形態では、抗体は、抗体2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8の重鎖配列のいずれか一つを含む配列を含む。軽鎖のプロミスキュイティ(promiscuity)は当該技術分野で十分に確立されており、従って、抗体2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8の重鎖配列のいずれか一つを含む配列を含む抗体が、表1に掲載されるか若しくは表8に示される、又は抗体2A4、4C1、5C9、5E1、6C7若しくは7C8の、軽鎖配列(VL)のいずれか一つをさらに含み得る。別の実施形態では、本開示の抗体は、抗体2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8の重鎖配列のいずれか一つを含む配列を含み、且つ抗体2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8の対応する軽鎖配列をさらに含む。一部の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体はCXCR4に特異的に結合し、且つ重鎖及び軽鎖を含み、ここで重鎖は、配列番号2、6、10、14、18又は22のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、抗体は、表8に示される軽鎖配列のいずれか一つを含む配列を含む。別の実施形態では、抗体は、抗体2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8の軽鎖配列のいずれか一つを含む配列を含む。一部の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体はCXCR4に特異的に結合し、且つ重鎖及び軽鎖を含み、ここで軽鎖は、配列番号4、8、12、16、20又は24のアミノ酸配列を含む。
他の実施形態では、抗体はCXCR4に特異的に結合し、且つ配列番号2、6、10、14、18又は22のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号4、8、12、16、20又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
別の実施形態では、抗体は、抗体4C1のいずれかの重鎖配列を含む配列を含み、且つ抗体4C1の軽鎖配列をさらに含む。別の実施形態では、抗体は、抗体2A4いずれかの重鎖配列を含み、且つ抗体2A4の軽鎖配列をさらに含む配列を含む。別の実施形態では、抗体は、抗体7C8のいずれかの重鎖配列を含み、且つ抗体7C8の軽鎖配列をさらに含む配列を含む。
一部の実施形態では、本開示の抗体は、表1に示されるとおりのモノクローナル抗体のいずれか一つである。一部の実施形態では、抗体は、4C1、2A4及び6C7からなる群から選択されるモノクローナル抗体である。一実施形態では、本開示の抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体4C1、2A4又は6C7の1つ以上を含む。特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体4C1である。特定の他の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体2A4である。さらに他の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体6C7である。さらなる実施形態において、本開示の抗体は、前述のモノクローナル抗体のいずれかから誘導することができる。
抗体4C1、2A4及び6C7の可変重鎖及び可変軽鎖は、Mab4C1VH、Mab4C1VL、Mab2A4VH、Mab2A4VL、Mab6C7VH及びMab6C7VLの命名に基づきアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)にプラスミドで寄託された。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9626、PTA−9627、又はPTA−9630として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託された、Mab4C1VH、Mab2A4VH、及びMab6C7VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる重鎖可変ドメイン配列のCDR1、CDR2又はCDR3のいずれか1つ、2つ又は3つを含む配列を含み得る。別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9629、PTA−9628、又はPTA−9631として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VL、Mab2A4VL、及びMab6C7VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる可変軽鎖配列のCDR1、CDR2又はCDR3のいずれか1つ、2つ又は3つを含む配列を含み得る。
一実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9626として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDR3を含む重鎖可変ドメイン配列を含む。
一実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9626として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチドによりコードされるCDR3を含む重鎖可変ドメイン配列と、番号PTA−9629として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDR3を含む軽鎖可変ドメイン配列とを含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9626として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む重鎖可変ドメイン配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9629として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む軽鎖可変ドメイン配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9626として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む重鎖可変ドメイン配列と、番号PTA−9629として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む軽鎖可変ドメイン配列とを含む。
一実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9627として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDR3を含む重鎖可変ドメイン配列を含む。
一実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9627として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチドによりコードされるCDR3を含む重鎖可変ドメイン配列と、番号PTA−9628として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDR3を含む軽鎖可変ドメイン配列とを含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9627として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体のCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む重鎖可変ドメイン配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9628として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む軽鎖可変ドメイン配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9627として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む重鎖可変ドメイン配列と、番号PTA−9628として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む軽鎖可変ドメイン配列とを含む。
一実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9630として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDR3を含む重鎖可変ドメイン配列を含む。
一実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9630として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDR3を含む重鎖可変ドメイン配列と、番号PTA−9631として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDR3を含む軽鎖可変ドメイン配列とを含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9630として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む重鎖可変ドメイン配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9631として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む軽鎖可変ドメイン配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9630として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む重鎖可変ドメイン配列と、番号PTA−9631として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされるCDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを含む軽鎖可変ドメイン配列とを含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9626として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の重鎖可変配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9627として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の重鎖可変配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9630として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の重鎖可変配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9629として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の可変軽鎖を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9628として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の可変軽鎖を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9631として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の可変軽鎖を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9626として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の重鎖可変配列と、番号PTA−9629として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab4C1VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の可変軽鎖とを含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9628として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の可変軽鎖と、番号PTA−9627として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab2A4VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の重鎖可変配列とを含む。
別の実施形態では、本開示の抗体は、番号PTA−9630として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VHと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の重鎖可変配列と、番号PTA−9631として2008年11月18日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されたMab6C7VLと命名されるプラスミドのポリヌクレオチド、又は同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる抗体の可変軽鎖とを含む。
特定の実施形態では、本開示の抗体は、表7に示される配列のいずれか一つから選択される重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)及び重鎖CDR3(HCDR3)を含む配列を含み得る。他の実施形態では、本開示の抗体は、表8に示される配列のいずれか一つから選択される軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)及び軽鎖CDR3(LCDR3)を含む配列を含み得る。他の実施形態では、本開示の抗体は、抗体2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8のCDRのいずれか一つから選択されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む配列を含み得る。別の実施形態では、本開示の抗体は、抗体2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8のCDRのいずれか一つから選択されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む配列を含み得る。
別の実施形態では、本開示の抗体は、表7に示されるとおりの、完全ヒトモノクローナル抗体4C1、2A4又は6C7のいずれか一つのCDR1、CDR2又はCDR3のいずれか一つを含む配列を含み得る。別の実施形態では、本開示の抗体は、表8に示されるとおりの、完全ヒトモノクローナル抗体4C1、2A4又は6C7のいずれか一つのCDR1、CDR2又はCDR3のいずれか一つを含む配列を含み得る。別の実施形態では、本開示の抗体は、表7に示されるとおりの、完全ヒトモノクローナル抗体4C1、2A4又は6C7のいずれか一つのCDR1、CDR2及びCDR3を含む配列を含み得る。別の実施形態では、本開示の抗体は、表8に示されるとおりの、完全ヒトモノクローナル抗体4C1、2A4又は6C7のいずれか一つのCDR1、CDR2及びCDR3を含む配列を含み得る。別の実施形態では、本開示の抗体は、表7に示されるとおりの、完全ヒトモノクローナル抗体4C1、2A4又は6C7のいずれか一つのCDR1、CDR2及びCDR3と、表8に示されるとおりの、完全ヒトモノクローナル抗体4C1、2A4又は6C7のいずれか一つのCDR1、CDR2及びCDR3配列とを含む配列を含み得る。一部の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
別の実施形態では、本開示の抗体は、表7に示されるとおりの完全ヒトモノクローナル抗体4C1のCDR1、CDR2及びCDR3配列と、表8に示されるとおりの完全ヒトモノクローナル抗体4C1のCDR1、CDR2及びCDR3配列とを含む配列を含む。別の実施形態では、本開示の抗体は、表7に示されるとおりの完全ヒトモノクローナル抗体2A4のCDR1、CDR2及びCDR3配列と、表8に示されるとおりの完全ヒトモノクローナル抗体2A4のCDR1、CDR2及びCDR3配列とを含む配列を含む。別の実施形態では、本開示の抗体は、表7に示されるとおりの完全ヒトモノクローナル抗体6C7のCDR1、CDR2及びCDR3配列と、表8に示されるとおりの完全ヒトモノクローナル抗体6C7のCDR1、CDR2及びCDR3配列とを含む配列を含む。一部の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
本開示のさらなる実施形態は、表7又は表8に示されるとおりの配列のいずれか一つのフレームワーク領域及びCDR、特にFR1〜FR4又はCDR1〜CDR3にわたる連続配列を含む配列を含む抗体である。本開示のさらなる実施形態は、表7及び表8に示されるとおりの配列のいずれか一つのフレームワーク領域及びCDR、特にFR1〜FR4又はCDR1〜CDR3にわたる連続配列を含む配列を含む抗体である。一実施形態では、本開示の抗体は、表7又は表8に示されるとおりのモノクローナル抗体4C1、2A4又は6C7の配列のいずれか一つのフレームワーク領域及びCDR、特にFR1〜FR4又はCDR1〜CDR3にわたる連続配列を含む配列を含む。本開示のさらなる実施形態は、表7及び表8に示されるとおりのモノクローナル抗体4C1、2A4又は6C7の配列のいずれか一つのフレームワーク領域及びCDR、特にFR1〜FR4又はCDR1〜CDR3にわたる連続配列を含む配列を含む抗体である。一部の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
一実施形態は、抗体、又はその抗原結合部分を提供し、ここで抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12を含む配列を含む。
別の実施形態では、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号2の配列を含む重鎖配列を含む。他の実施形態では、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号4の配列を含む軽鎖配列をさらに含む。一部の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
別の実施形態では、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号2のアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメインを含み、且つ配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
別の実施形態は、抗体、又はその抗原結合部分を提供し、ここで抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号6の配列を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号8の配列を含む軽鎖配列をさらに含む。一部の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
別の実施形態では、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号6のアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメインを含み、且つ配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
別の実施形態では、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号10の配列を含む重鎖配列を含む。別の実施形態では、抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号12の配列を含む軽鎖配列をさらに含む。一部の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
別の実施形態では、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号10のアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメインを含み、且つ配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
他の実施形態では、本開示の抗体は、本明細書に開示されるCDR、フレームワーク領域及びCDR(特にFR1〜FR4又はCDR1〜CDR3)にわたる連続配列、本明細書に開示される軽鎖又は重鎖配列、又は本明細書に開示される抗体の変異体又は誘導体を含む。変異体は、表7又は表8に示されるとおりのCDR1、CDR2又はCDR3のいずれか1つ以上、表7又は表8に示されるとおりのフレームワーク領域及びCDR(特にFR1〜FR4又はCDR1〜CDR3)にわたる連続配列、本明細書に開示される軽鎖又は重鎖配列に、又は本明細書に開示されるモノクローナル抗体で、20、16、10、9個におよぶ、又はそれより少ない、例えば1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸付加、置換、欠失、及び/又は挿入を有する配列を含む抗体を含む。変異体は、表7又は表8に示されるとおりのCDR1、CDR2又はCDR3の任意の1つ以上、表7又は表8に示されるとおりのフレームワーク領域及びCDR(特にFR1〜FR4又はCDR1〜CDR3)にわたる連続配列、本明細書に開示される軽鎖又は重鎖配列に、又は本明細書に開示されるモノクローナル抗体で、1、2又は3個のアミノ酸付加、置換、欠失、及び/又は挿入を有する配列を含む抗体を含む。変異体は、表7又は表8に示されるとおりのCDR1、CDR2又はCDR3のいずれか、表7又は表8に示されるとおりのフレームワーク領域及びCDR(特にFR1〜FR4又はCDR1〜CDR3)にわたる連続配列、本明細書に開示される軽鎖又は重鎖配列と、又は本明細書に開示されるモノクローナル抗体と少なくとも約60、70、80、85、90、95、98又は約99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む抗体を含む。2つのアミノ酸配列の同一性パーセントは、当業者に公知の任意の方法により決定することができ、限定はされないが、ペアワイズタンパク質アラインメントが挙げられる。一実施形態では、変異体は、本明細書に開示されるCDR配列又は軽鎖若しくは重鎖配列に、天然に存在するか、又は組換えDNA技法若しくは突然変異生成技法を用いた天然配列のインビトロ操作により導入される変化を含む。天然に存在する変異体は、生体内で外来抗原に対する抗体の産生中に対応する生殖系列ヌクレオチド配列に生じるものを含む。一実施形態では、誘導体は、2つ以上の抗体が共に連結されている抗体である異種抗体であってよい。誘導体には、化学修飾されている抗体が含まれる。例としては、1つ以上のポリマー、例えば水溶性ポリマー、N−結合型、又はO−結合型炭水化物、糖類、リン酸塩、及び/又は他のかかる分子の共有結合が挙げられる。誘導体は、天然に存在する抗体又は出発抗体と、結合する分子の種類又は位置のいずれかが異なる形で修飾される。誘導体は、その抗体に天然に存在する1つ以上の化学基の欠失をさらに含む。
本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号6を含む配列を含む。本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号6を含む配列を含み、ここで配列番号6は、表7の各行により示される生殖系列及び非生殖系列残基のユニークな組み合わせのいずれか一つを含む。本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号6を含む配列を含み、ここで配列番号6は、表7に示されるとおりの生殖系列残基のいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ又は4つ全てを含む。
本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む配列を含む。本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む配列を含み、ここで配列番号8は、表8の各行により示される生殖系列及び非生殖系列残基のユニークな組み合わせのいずれか一つを含む。本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む配列を含み、ここで配列番号8は、表8に示されるとおりの生殖系列残基のいずれか1つ、いずれか2つ、又は2つ全てを含む。
本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号12を含む配列を含む。本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号12を含む配列を含み、ここで配列番号12は、表9の各行により示される生殖系列及び非生殖系列残基のユニークな組み合わせのいずれか一つを含む。本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号12を含む配列を含み、ここで配列番号12は、表9に示されるとおりの生殖系列残基のいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ、又は3つ全てを含む。
本開示の抗体はまた、腫瘍成長、細胞接着、運動性、浸潤、及び/又は細胞転移も阻害することができ、加えて、これらの標的結合剤は、腫瘍成長及び血管新生の低減に有用である。これが実現され得る機構としては、CXCR4活性の阻害及び/又はCXCR4受容体に対するSDF−1結合の遮断を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本開示のさらなる実施形態は、血管新生を阻害する本開示の抗体に関する。一実施形態では、本開示の抗体は、対照と比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のヒト血管形成を阻害する。一例において、6C7は、ヒト血管形成を少なくとも70%阻害する。以下に、本開示の抗CXCR4抗体(及び抗原結合断片)の機能的及び構造的特性のさらなる説明を提供する。本開示は、本開示の抗体がヒトCXCR4に特異的に結合し、且つ本明細書に記載されるCXCR4抗体の構造的及び/又は機能的特性のいずれか1つ以上(又はいずれか2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上等)を有することを企図する。本明細書のこの節全体を通して、用語「抗体」は、便宜上、CXCR4抗体又は抗原結合断片を指して用いられ、従って抗体の機能的及び構造的特性についての説明は全て、文脈上別段の指示がない限り、本開示の抗原結合断片に適用される。
特定の実施形態では、抗CXCR4抗体は単離及び/又は精製された及び/又はパイロジェンフリーの抗体である。用語「精製された」は、本明細書で使用されるとき、その天然環境の構成要素から同定及び分離及び/又は回収されている他の分子、例えばポリペプチド、核酸分子を指す。従って、一実施形態では本開示の抗体は精製抗体であり、ここで精製抗体は、その天然環境の1つ以上の構成要素から分離されている。用語「単離抗体」は、本明細書で使用されるとき、異なる抗原特異性を有する他の抗体分子を実質的に含まない抗体を指す(例えば、CXCR4に特異的に結合する単離抗体は、CXCR4以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない;しかしながら二重又は多重特異性抗体分子は、他の抗体分子を実質的に含まない場合に単離抗体である)。従って、一実施形態では、本開示の抗体は単離抗体であり、ここで単離抗体は、異なる特異性を有する抗体から分離されている。典型的には、単離抗体はモノクローナル抗体である。しかしながら、ヒトCXCR4のエピトープ、アイソフォーム又は変異体に特異的に結合する単離抗体は、例えば他の種由来の、他の関連抗原(例えばCXCR4種相同体)に対して交差反応性を有し得る。例えば、本開示の抗体は、ヒトCXCR4に特異的に結合し、且つカニクイザル(cynomolgous)CXCR4に特異的に結合し得る。さらに、本開示の単離抗体は、1つ以上の他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まないものであってよく、本明細書では、単離及び精製抗体と称される。本開示の一実施形態では、「単離された」モノクローナル抗体の組み合わせは、異なる特異性を有し、且つ十分に定義された組成で組み合わされた抗体に関する。産生及び精製/単離方法は、以下にさらに詳細に記載される。この定義は抗原結合断片にも同様に適用される。特定の実施形態では、本開示の抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体又はヒト抗体であってもよい。
本開示の単離抗体又は抗原結合断片は、任意の好適なポリヌクレオチドによりコードされる本明細書に開示される抗体アミノ酸配列、又は任意の単離抗体若しくは製剤化抗体を含む。一実施形態では、抗CXCR4抗体はヒトCXCR4に結合し、それによりCXCR4の少なくとも1つの生物活性を部分的に又は実質的に変化させる。抗体をコードする抗体産生細胞は、上記に記載したとおりアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC,10801 University Blvd.,Manassas,Va.20110−2209)に登録されている。これらの寄託物は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)の条項に基づき管理される。本開示の抗CXCR4抗体の例は、かかる細胞により産生される抗体である。さらなる例としては、寄託された抗体の任意のものと同じエピトープに結合する抗体又は抗原結合断片が挙げられる。
本開示の抗CXCR4抗体は、CXCR4タンパク質、ペプチド、サブユニット、断片、部分又はそれらの任意の組み合わせに特異的な少なくとも1つの特異的エピトープと特異的に結合し、且つ他のポリペプチドには特異的に結合しない。少なくとも1つのエピトープは、CXCR4タンパク質の少なくとも一部分を含む少なくとも1つの抗体結合領域を含み得る。用語「エピトープ」は、本明細書で使用されるとき、抗体に結合する能力を有するタンパク質決定基を指す。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。立体エピトープと非立体エピトープとは、変性溶媒の存在下で前者との結合は失われるが、後者との結合は失われない点で区別される。
特定の実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体又は抗原結合断片は、ヒトCXCR4の第2ループ(第2細胞外ループ)に結合する。従って、特定の実施形態では、抗体が結合するエピトープは、CXCR4の第2ループ内にある。ヒトCXCR4の第2ループは、ヒトCXCR4のアミノ酸177〜200を含む。CXCR4のこの領域は、マウスと比べてヒトにおいてより短い。
ヒトCXCR4のアミノ酸配列を以下に記載し、残基177〜200は下線及び太字で示す:
MEGISIYTSDNYTEEMGSGDYDSMKEPCFREENANFNKIFLPTIYSIIFLTGIVGNGLVILVMGYQKKLRSMTDKYRLHLSVADLLFVITLPFWAVDAVANWYFGNFLCKAVHVIYTVNLYSSVLILAFISLDRYLAIVHATNSQRPRKLLAEKVVYVGVWIPALLLTIPDFIFANVSEADDRYICDRFYPNDLWVVVFQFQHIMVGLILPGIVILSCYCIIISKLSHSKGHQKRKALKTTVILILAFFACWLPYYIGISIDSFILLEIIKQGCEFENTVHKWISITEALAFFHCCLNPILYAFLGAKFKTSAQHALTSVSRGSSLKILSKGKRGGHSSVSTESESSSFHSS(ヒトCXCR4;配列番号25)。
マウスCXCR4のアミノ酸配列を以下に記載し、第2ループの対応する残基は下線及び太字で示す:
MEPISVSIYTSDNYSEEVGSGDYDSNKEPCFRDENVHFNRIFLPTIYFIIFLTGIVGNGLVILVMGYQKKLRSMTDKYRLHLSVADLLFVITLPFWAVDAMADWYFGKFLCKAVHIIYTVNLYSSVLILAFISLDRYLAIVHATNSQRPRKLLAEKAVYVGVWIPALLLTIPDFIFADVSQGDISQGDDRYICDRLYPDSLWMVVFQFQHIMVGLILPGIVILSCYCIIISKLSHSKGHQKRKALKTTVILILAFFACWLPYYVGISIDSFILLGVIKQGCDFESIVHKWISITEALAFFHCCLNPILYAFLGAKFKSSAQHALNSMSRGSSLKILSKGKRGGHSSVSTESESSSFHSS(マウスCXCR4;配列番号26)。
CXCR4タンパク質の構造は当該技術分野において公知である。例示的な刊行物としては、Chabot et al.,(1999)Journal of Virology 73(8):6598−6609及びRoland et al.(2003)Blood 101:399−406が挙げられる。図14もまた、CXCR4の構造の表現を提供する。
特定の実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体又は抗原結合断片は、ヒトCXCR4に特異的に結合し、且つマウス、ラット、及びカニクイザル(cynomolgous monkey)の1つ以上に由来するCXCR4にも特異的に結合する。他の実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体又は抗原結合断片は、ヒトCXCR4に特異的に結合するが、マウス及び/又はラットCXCR4には特異的に結合しない。他の実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体又は抗原結合断片は、ヒトCXCR4に特異的に結合し、且つカニクイザル(cynomolgous)CXCR4にも特異的に結合する。
特定の実施形態では本開示の抗体は、CXCR4に特異的に結合し、且つ
FACS結合キネクサ(kinexa)解析により計測するとき2.5ナノモル濃度(nM)未満のKDでヒトCXCR4に結合する;
FACS結合キネクサ(kinexa)解析により計測するとき1nM未満のKDでカニクイザルCXCR4と交差反応する;
CXCR3又はCCR4に有意に結合しない;
CXCR4に対するSDF−1結合を阻害する;
SDF−1 pMAPKリン酸化を阻害する;
0.5nM未満のIC50でSDF−1誘導ジャーカット走化性を阻害する;
10nMを下回るIC50濃度でSDF−1 HUVEC遊走を阻害する;
ラモス細胞におけるアポトーシスを誘導する;及び
末梢血白血球細胞調製物に10μg/mlの濃度で16〜18時間にわたり添加したとき、60%を超えるB細胞数の低下を生じさせない
からなる群から選択される特性の1つ以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ又は9つ)を有する。
別の実施形態では、本開示の抗体は、前述の特性のいずれか1つ以上を有し、また本明細書に提供される例示的抗体のいずれかのVH又はVLドメインのアミノ酸配列を含むVH及び/又はVLドメインを含む。別の実施形態では、本開示の抗体は、前述の特性の任意の1つ以上を有し、また、本明細書に提供される例示的抗体のいずれかのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖、及び/又は本明細書に提供される例示的抗体のいずれかのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖を含む。
(iii)核酸分子及び宿主細胞
本開示はまた、本開示の抗体のいずれかをコードする核酸分子も提供する。特定の実施形態では、本開示は、本開示の抗体の軽鎖及び/又は重鎖をコードする核酸分子を提供する。別の実施形態では、本開示は、完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖及び/又は重鎖をコードする核酸分子を提供する。別の実施形態では、本開示は、6C7、2A4、及び4C1を含む本明細書に記載される完全ヒトモノクローナル抗体のいずれか一つの軽鎖及び/又は重鎖をコードする核酸分子を提供する。本開示はまた、本明細書に定義するとおりの、ストリンジェントな又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載される標的結合剤又は抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。
本開示の別の実施形態では、上記のとおりの核酸分子を含むベクターが提供され、ここでベクターは、本開示の抗体(又は抗原結合断片)をコードする。本開示の一実施形態では、上記のとおりの核酸分子を含むベクターが提供され、ここでベクターは、上記に定義するとおりの抗体の軽鎖及び/又は重鎖をコードする。一実施形態では、ベクターは、完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖及び/又は重鎖をコードする核酸分子を含む。一実施形態では、ベクターは、6C7、2A4、及び4C1を含む本明細書に記載されるヒトモノクローナル抗体のいずれか一つの軽鎖又は重鎖をコードする核酸分子を含む。別の実施形態では、ベクターは、6C7、2A4、及び4C1を含む本明細書に記載されるヒトモノクローナル抗体のいずれか一つの軽鎖及び重鎖をコードする核酸分子を含む。
さらなる実施形態では、上記のとおりの核酸分子のいずれかで形質転換された宿主細胞が提供される。本開示の別の実施形態では、上記のとおりの核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞が提供される。一実施形態では、宿主細胞は2つ以上のベクターを含み得る。
(iv)抗CXCR4抗体の産生
以下は、本開示において有用な抗体の例示的な産生技法を記載する。これらの技法のあるものは、実施例の節にさらに記載する。抗体の産生に用いるCXCR4抗原は、ヒトCXCR4又はその抗原断片であってよい。或いは、その細胞表面にCXCR4を発現する細胞又はかかる細胞から調製された膜を、抗体の産生に用いることができる。CXCR4、例えばヒトCXCR4のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は容易に入手可能である。CXCR4は、標準的な組換えDNA方法を用いて細菌細胞又は真核細胞から単離形態で組換え産生することができる。CXCR4をタグ付き(例えばエピトープタグ)又は他の融合タンパク質として発現させて、単離並びに様々なアッセイにおける同定を促進することができる。様々なタグ及び融合配列に結合する抗体又は結合タンパク質が、以下に詳説するとおり利用可能である。抗体の作成に有用な他の形態のCXCR4は、当業者に明らかであろう。
(a)タグ
様々なタグポリペプチド及びそれらのそれぞれの抗体は、当該技術分野において周知されている。例としては、ポリ−ヒスチジン(poly−his)タグ又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;インフルエンザHA(flu HA)タグポリペプチド及びその抗体12CA5(Field et al.,Mol.Cell.Biol.,8:2159−2165(1988));c−mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体(Evan et al.,Molecular and Cellular Biology,5:3610−3616(1985));及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体(Paborsky et al.,Protein Engineering,3(6):547−553(1990))が挙げられる。FLAGペプチド(Hopp et al.,BioTechnology,6:1204−1210(1988))は、抗FLAG M2モノクローナル抗体(Eastman Kodak Co.,New Haven,Conn.)により認識される。FLAGペプチドを含有するタンパク質の精製は、アガロースに共有結合した抗FLAG M2モノクローナル抗体(Eastman Kodak Co.,New Haven,Conn.)を含む親和性マトリックスを用いたイムノアフィニティークロマトグラフィーにより実施することができる。他のタグポリペプチドとしては、KT3エピトープペプチド(Martin et al.,Science,255:192−194(1992));α−チューブリンエピトープペプチド(Skinner et al.,J.Biol.Chem.,266:15163−15166(1991));及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz−Freyermuth et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6393−6397(1990))が挙げられる。
(b)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマの使用(Kohler et al.,Nature,256:495(1975);Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling,et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981)、組換え技術、及びファージディスプレイ技術、又はそれらの組み合わせを含めた、当該技術分野において公知の幅広い技術を用いて調製することができる。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用されるとき、実質的に同種の抗体又は単離抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個別の抗体が、少量存在し得る天然に存在する可能な突然変異を除いては同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位か、又は多重特異性の改変抗体の場合には複数の抗原部位を標的とする。さらに、異なる決定基(エピトープ)を標的とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤と対照的に、各モノクローナル抗体が抗原上の同じ決定基を標的とする。その特異性に加え、モノクローナル抗体は、他の抗体による汚染なしに合成され得る点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。以下はモノクローナル抗体の代表的な産生方法の説明であり(この説明は限定することを意図するものではない)、例えばモノクローナル哺乳類抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ドメイン、ダイアボディ、ワクチボディ、線状抗体及び多重特異性抗体の産生に用いることができる。
A.ハイブリドーマ技法
ハイブリドーマ技術を用いた特異的抗体の産生及びスクリーニング方法は、当該技術分野においてルーチンであり、周知されている。ハイブリドーマ法では、マウス又は他の適切な宿主動物、例えばハムスターを免疫して、免疫化に用いた抗原に特異的に結合し得る抗体を産生する又はその産生能を有するリンパ球を誘導する。或いは、ハイブリドーマ技術を用いてヒトモノクローナル抗体を産生する場合にときに行われるとおり、インビトロでリンパ球を免疫してもよい。免疫後(インビボ又はインビトロで)、リンパ球を単離し、次に好適な融剤又は融合パートナー、例えばポリエチレングリコールを使用して骨髄腫細胞株と融合することにより、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。特定の実施形態では、選択される骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高度な抗体産生を支持し、且つ融合しなかった親細胞を選択外にする選択培地に対して感受性を有するものである。一態様において、骨髄腫細胞株はマウス骨髄腫株、例えば、ソーク研究所細胞頒布センター(Salk Institute Cell Distribution Center),San Diego,Calif.USAから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍に由来するもの、並びにアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection),Rockville,Md.USAから入手可能なSP−2及び誘導体、例えばX63−Ag8−653細胞である。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒト異種骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);及びBrodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定されると、クローンを限界希釈手順によりサブクローニングし、標準方法により成長させることができる(Goding、前掲)。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D−MEM又はRPMI−1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、例えば細胞をマウスに腹腔内注射することにより、動物において腹水腫瘍としてインビボで成長させてもよい。
サブクローンにより選択されたモノクローナル抗体は、好適には、従来の抗体精製手順、例えば、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA又はプロテインGセファロース)又はイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティータグ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析等によって培養培地、腹水、又は血清と分離される。例示的な精製方法を以下にさらに詳細に記載する。
B.組換えDNA技法
組換えDNA技術を用いた特異的抗体の産生及びスクリーニング方法は、当該技術分野においてルーチンであり、周知されている(例えば米国特許第4,816,567号明細書)。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合する能力を有するオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離及び/又は配列決定することができる。単離後、DNAを発現ベクターに入れることができ、次にその発現ベクターが、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの、本来抗体タンパク質を産生しない宿主細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成が達成される。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関するレビュー論文としては、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256−262(1993)及びPluckthun,Immunol.Revs.,130:151−188(1992)が挙げられる。ファージディスプレイにより作成される抗体及び抗体のヒト化について以下に記載するとおり、組換え抗体用のDNA又は遺伝物質をハイブリドーマ以外の供給源から入手して、本開示の抗体を作成することができる。
抗体又はその変異体の組換え発現には、概して、抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築が必要である。従って本開示は、プロモーターに作動可能に連結された、抗体分子、抗体の重鎖若しくは軽鎖、抗体の重鎖若しくは軽鎖可変ドメイン若しくはその一部分、又は重鎖若しくは軽鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能ベクターを提供する。かかるベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むことができ(例えば、米国特許第5,981,216号明細書;同第5,591,639号明細書;同第5,658,759号明細書及び同第5,122,464号明細書を参照のこと)、抗体の可変ドメインが、重鎖全体、軽鎖全体、又は重鎖及び軽鎖全体の双方の発現用のかかるベクターにクローニングされてもよい。
従来技術によって発現ベクターが宿主細胞に移入されると、次にトランスフェクト細胞が従来技術によって培養され、抗体が産生される。従って、本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結された、本開示の抗体又はその断片、又はその重鎖又は軽鎖、又はその一部分、又は本開示の一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二重鎖抗体を発現させる特定の実施形態では、以下に詳述するとおり、重鎖及び軽鎖の双方をコードするベクターを、免疫グロブリン分子全体の発現用の宿主細胞で同時に発現させてもよい。
組換え抗体の発現用宿主として利用可能な哺乳類細胞株は、当該技術分野において周知されており、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株、限定はされないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒーラー細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、ヒト上皮腎293細胞、及び数多くの他の細胞株が挙げられる。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾について特徴的で特異的な機構を有する。発現させた抗体又はその一部分の正しい修飾及びプロセシングが確実となるように、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。このため、適切な一次転写物のプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が用いられ得る。かかる哺乳類宿主細胞としては、限定はされないが、CHO、VERY、BHK、ヒーラー、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0(いかなる機能性免疫グロブリン鎖も内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7O3O及びHsS78Bst細胞が挙げられる。一実施形態では、ヒトリンパ球を不死化することにより開発されたヒト細胞株を使用してモノクローナル抗体を組換え産生することができる。一実施形態では、ヒト細胞株PER.C6.(Crucell,オランダ)を使用してモノクローナル抗体を組換え産生することができる。
組換え抗体の発現用宿主として用いられ得るさらなる細胞株としては、限定はされないが、昆虫細胞(例えばSf21/Sf9、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)Bti−Tn5b1−4)又は酵母細胞(例えばS.セレビシエ(S.cerevisiae)、ピキア属(Pichia)、米国特許第7326681号明細書;他)、植物細胞(米国特許出願公開第20080066200号明細書);及びニワトリ細胞(国際公開第2008142124号パンフレット)が挙げられる。
特定の実施形態では、本開示の抗体は、抗体の安定発現を呈する細胞株で発現させる。安定発現は、組換えタンパク質の長期高収率産生に用いることができる。例えば、抗体分子を安定発現する細胞株を作成してもよい。宿主細胞を、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)と、選択可能なマーカー遺伝子とを含む適切に操作されたベクターで形質転換することができる。外来DNAの導入後、細胞を1〜2日間強化培地で成長させてもよく、次に選択培地に切り換える。組換えプラスミドにおける選択可能なマーカーが選択に対する耐性を付与し、プラスミドをその染色体に安定的に組み込んだ細胞の成長及びフォーカスの形成を可能にすることで、次にはそのフォーカスをクローニングし、細胞株へと拡大することができる。安定細胞株を高収率で作製する方法は当該技術分野において周知されており、概して試薬が市販されている。
特定の実施形態では、本開示の抗体は、抗体の一過性発現を呈する細胞株で発現させる。一過性トランスフェクションは、細胞に導入された核酸が当該細胞のゲノム又は染色体DNAに組み込まれないプロセスである。それは実際、染色体外要素、例えばエピソームとして細胞に維持される。エピソームの核酸の転写プロセスは影響を受けず、エピソームの核酸によりコードされるタンパク質が産生される。
細胞株は、安定的にトランスフェクトされるものも、或いは一過性にトランスフェクトされるものも、モノクローナル抗体の発現及び産生をもたらす当該技術分野において公知の細胞培養培地及び条件に維持される。特定の実施形態では、哺乳類細胞培養培地は、例えばDMEM又はHam F12を含む市販の培地製剤をベースとする。他の実施形態では、細胞培養培地は、細胞成長及び生物学的タンパク質発現の両方の増加を支援するように修飾される。本明細書で使用されるとき、用語「細胞培養培地」、「培養培地」、及び「培地製剤」は、多細胞生物又は組織の外部の人工インビトロ環境で細胞を維持し、成長させ、増殖させ、又は拡大するための栄養溶液を指す。細胞培養培地は、例えば、細胞の成長を促進するように配合された細胞培養成長培地、又は組換えタンパク質産生を促進するように配合された細胞培養産生培地を含め、特定の細胞培養用途に最適化され得る。用語「栄養素」、「成分」、及び「構成成分」は、本明細書では、細胞培養培地を構成する構成物を指して同義的に使用される。
一実施形態では、細胞株は流加法を用いて維持される。本明細書で使用されるとき、「流加法」は、初めに基礎培地でインキュベートされた後、流加細胞培養物にさらなる栄養素が供給される方法を指す。例えば、流加法は、所与の時間内に所定の補給スケジュールに従い補足培地を添加することを含み得る。従って、「流加細胞培養物」は、細胞、典型的には哺乳類細胞、及び培養培地が培養槽に最初に供給され、且つ培養終了前の定期的な細胞及び/又は産物の回収を伴い、又は伴わずさらなる培養栄養素が培養中に培養物に対して連続的に、又は不連続に徐々に補給される細胞培養物を指す。
使用される細胞培養培地及びそこに含まれる栄養素は、当業者に周知されている。一実施形態では、細胞培養培地は、基礎培地と、少なくとも1つの加水分解物、例えば、大豆ベースの加水分解物、酵母ベースの加水分解物、又はこれらの2種類の加水分解物の組み合わせとを含むことで、変法基礎培地をもたらす。別の実施形態では、さらなる栄養素は、濃縮基礎培地など、基礎培地のみを含んでもよく、又は加水分解物、若しくは濃縮加水分解物のみを含んでもよい。好適な基礎培地としては、限定はされないが、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、DME/F12、最小必須培地(MEM)、イーグル基礎培地(BME)、RPMI 1640、F−10、F−12、α−最小必須培地(α−MEM)、グラスゴー最小必須培地(G−MEM)、PF CHO(例えば、CHOタンパク質不含培地(Sigma)又はCHO細胞用タンパク質不含EX−CELL(商標)325 PF CHO無血清培地(SAFC Bioscience)を参照のこと、及びイスコフ改変ダルベッコ培地が挙げられる。本開示において用いられ得る基礎培地の他の例としては、BME基礎培地(Gibco−Invitrogen;Eagle,H(1965)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.89,36もまた参照のこと);ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、粉末)(Gibco−Invitrogen(#31600);Dulbecco and Freeman(1959)Virology 8,396;Smith et al.(1960)Virology 12,185.Tissue Culture Standards Committee,In Vitro 6:2,93もまた参照のこと);CMRL 1066培地(Gibco−Invitrogen(#11530);Parker R.C.et al(1957)Special Publications,N.Y.Academy of Sciences,5,303もまた参照のこと)が挙げられる。
特定の実施形態では、基礎培地は無血清、つまり培地は血清(例えば、ウシ胎仔血清(FBS)、ウマ血清、ヤギ血清、又は当業者に公知の任意の他の動物由来血清)を含有しないか、又は動物性タンパク質不含培地又は化学限定培地であってもよい。
基礎培地は、様々な無機及び有機緩衝剤、界面活性剤、及び塩化ナトリウムなどの、標準的な基礎培地に見られる特定の非栄養成分を除去するため、修飾され得る。基礎細胞培地からかかる構成成分を除去することにより、残りの栄養成分の濃度を高めることができ、細胞成長及びタンパク質発現が全体的に向上し得る。加えて、取り除いた構成成分を、細胞培養条件の要件に応じて、変法基礎細胞培地を含有する細胞培養培地に加え戻してもよい。特定の実施形態では、細胞培養培地は、変法基礎細胞培地と、以下の栄養素、すなわち、鉄源、組換え成長因子;緩衝剤;界面活性剤;容量オスモル濃度調節因子;エネルギー源;及び非動物性加水分解物の少なくとも1つとを含有する。加えて、変法基礎細胞培地は、場合により、アミノ酸、ビタミン、又はアミノ酸とビタミンとの両方の組み合わせを含有し得る。別の実施形態では、変法基礎培地は、グルタミン、例えば、L−グルタミン、及び/又はメトトレキサートをさらに含有する。
特定の実施形態では、抗体産生は、当該技術分野において公知の流加、バッチ、潅流又は連続供給バイオリアクター法を用いるバイオリアクタープロセスによって大量に行われる。大規模バイオリアクターは少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1,000〜100,000リットルの容量を有する。このようなバイオリアクターは撹拌機インペラを使用して酸素及び栄養素を分配し得る。小規模バイオリアクターは、概して容積が約100リットル以下の細胞培養を指し、約1リットル〜約100リットルの範囲であり得る。或いは、単回使用バイオリアクター(SUB)が、大規模培養又は小規模培養のいずれにも用いられ得る。
温度、pH、撹拌、曝気及び接種密度は、使用する宿主細胞及び発現させる組換えタンパク質に応じて異なり得る。例えば、組換えタンパク質細胞培養物は、摂氏30〜45度の温度に維持され得る。培養培地のpHは、培養プロセスの間、pHが至適レベルに保たれるように監視されてもよく、至適レベルは、ある種の宿主細胞に対して6.0〜8.0のpH範囲内であり得る。かかる培養方法での撹拌には、インペラ(impellor)駆動による混合が用いられ得る。インペラ(impellor)の回転速度は約50〜200cm/秒の先端速度であってよく、しかしながら培養される宿主細胞の種類に応じて、当該技術分野で公知の他のエアリフト又は他の混合/曝気システムが用いられてもよい。十分な曝気を提供することにより、ここでもやはり培養される特定の宿主細胞に応じて、培養物中約20%〜80%空気飽和の溶存酸素濃度が維持される。或いは、バイオリアクターにより空気又は酸素を培養培地中に直接拡散させてもよい。中空糸膜曝気装置を用いる無気泡曝気システムを含め、他の酸素供給方法が存在する。
C.ファージディスプレイ技法
別の実施形態では、モノクローナル抗体又は抗原結合断片は、例えば、McCafferty et al.,Nature,348:552−554(1990)、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載される技法を用いて作成される抗体ファージライブラリから単離することができる。かかる方法では、本開示の抗体は、ヒトリンパ球に由来するmRNAから調製されたヒトVL及びVH cDNAを使用して調製される組換えコンビナトリアル抗体ライブラリ、好ましくはscFvファージディスプレイライブラリのスクリーニングによって単離することができる。かかるライブラリの調製及びスクリーニング方法は、当該技術分野において公知である。ファージディスプレイライブラリ作成用の市販のキットに加えて(例えば、Pharmacia組換えファージ抗体システム、カタログ番号27−9400−01;及びStratagene SURFZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)、抗体ディスプレイライブラリの作成及びスクリーニングに特に適している方法及び試薬の例を、例えば、米国特許第6,248,516号明細書;米国特許第6,545,142号明細書;同第6,291,158号明細書;同第6,291,1591号明細書;同第6,291,160号明細書;同第6,291,161号明細書;同第6,680,192号明細書;同第5,969,108号明細書;同第6,172,197号明細書;同第6,806,079号明細書;同第5,885,793号明細書;同第6,521,404号明細書;同第6,544,731号明細書;同第6,555,313号明細書;同第6,593,081号明細書;同第6,582,915号明細書;同第7,195,866号明細書に見出すことができる。従って、これらの技術は、モノクローナル抗体の産生及び単離のための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技法に代わる実行可能な手法である。
ファージディスプレイ方法では、機能性抗体ドメインが、それをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面に提示される。詳細な実施形態において、かかるファージを利用して、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えば、ヒト又はマウスのもの)から発現する抗原結合ドメインを提示することができる。目的の抗原と結合する抗原結合ドメインを発現するファージを抗原により、例えば標識された抗原又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉されている抗原を使用して、選択又は同定することができる。これらの方法で用いられるファージは、典型的には、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかと組換え融合されたFab、Fv又はジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現するfd及びM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。
上記の参考文献に記載されるとおり、ファージ選択後、ファージから抗体コード領域を単離し、それを用いてヒト抗体、ヒト化抗体を含む全抗体、又は任意の他の所望の抗原結合断片を作成し、例えば以下に詳細に記載されるとおり、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む任意の所望の宿主で発現させることができる。例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片の組換え産生技法もまた、国際公開第92/22324号パンフレット;Mullinax et al.,BioTechniques 12(6):864−869(1992);及びBetter et al.,Science 240:1041−1043(1988)に開示されるものなどの、当該技術分野において公知の方法を用いて採用することができる。
単鎖Fv及び抗体の産生に用いることのできる技法の例としては、米国特許第4,946,778号明細書及び同第5,258,498号明細書に記載されるものが挙げられる。従って、上記の技法及び当該技術分野において公知の技法を用いて、組換え抗体を作成することができ、ここで結合ドメイン、例えばScFvは、ファージディスプレイライブラリから単離された。
(c)抗体の精製及び単離
組換え発現又はハイブリドーマ発現による産生後、抗体分子は、当該技術分野において公知の免疫グロブリン分子を精製する任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に特異的抗原プロテインA又はプロテインGに対する親和性によるもの、及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心、溶解度の差によるか、又は任意の他の標準的なタンパク質精製技法により精製され得る。さらに、本開示の抗体又はその断片は、上記の、又はその他当該技術分野において精製を促進することが知られる異種ポリペプチド配列(本明細書において「タグ」と称される)に融合されてもよい。
組換え技術を用いるとき、抗体は細胞内に産生されるか、細胞膜周辺腔に産生されるか、又は培地中に直接分泌され得る。抗体が細胞内に産生される場合、最初の工程として、宿主細胞又は溶解した断片のいずれかである粒子状デブリが、例えば遠心又は限外ろ過により除去される。Carter et al.,Bio/Technology,10:163−167(1992)は、大腸菌(E.coli)の細胞膜周辺腔に分泌される抗体の単離手順を記載している。抗体が培地中に分泌される場合、概して、初めにかかる発現系からの上清が、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外ろ過ユニットを使用して濃縮される。前述の工程のいずれかにPMSFなどのプロテアーゼ阻害薬を含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて外来性汚染物の成長を防止してもよい。
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び/又はアフィニティークロマトグラフィーを、単独で、或いは他の精製工程との組み合わせで用いて精製することができる。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存し、当業者は理解するであろう。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスが利用可能である。コントロールド・ポア・グラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成され得るより高い流量及びより短い処理時間を実現する。抗体がCH3ドメインを含む場合、精製にはBakerbond ABX樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)が有用である。他のタンパク質精製技術、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのセファロースクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿もまた、回収する抗体に応じて利用可能である。
任意の予備的精製工程の後、目的の抗体及び汚染物を含む混合物を、pH約2.5〜4.5の溶出緩衝液を使用する、且つ低塩濃度(例えば、約0〜0.25M塩)で実施される低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供することができる。
従って、特定の実施形態では、実質的に精製/単離された本開示の抗体が提供される。一実施形態では、このような単離/精製された組換え発現抗体を患者に投与してもよく、それにより予防又は治療効果が媒介され得る。別の実施形態では、このような単離/精製抗体を用いてCXCR4媒介性疾患を診断し得る。
(d)ヒト化抗体及びキメラ抗体
特定の実施形態では、本開示の抗体はヒト化抗体であり、これは当該技術分野において公知の方法を用いて作成される。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)を有する所望の抗原と結合する非ヒト種抗体(本明細書ではドナー抗体とも称される)と、ヒト免疫グロブリン分子(本明細書ではアクセプター抗体とも称される)由来のフレームワーク領域とに由来する抗体分子である。多くの場合に、好ましくは抗原結合性を向上させ、及び/又は免疫原性を低下させるため、ヒトフレームワーク領域のフレームワーク残基がCDRドナー抗体の対応する残基に置換される。このようなフレームワーク置換は、当該技術分野において周知の方法により同定され、例えば、CDR及びフレームワーク残基の相互作用をモデル化して抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定し、且つ配列比較により特定の位置にある異常なフレームワーク残基を同定することによる(例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)を参照のこと)。実際には、及び特定の実施形態では、ヒト化抗体は典型的にはヒト抗体であり、ここでは一部の超可変領域残基及び場合により一部のFR残基が、げっ歯類抗体における類似部位の残基によって置換されている。代替的実施形態において、FR残基は完全ヒト残基である。
ヒト化は、本質的にWinter及び共同研究者の方法に従い(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Reichmann et al.,Supra;Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988))、超可変領域配列をヒト抗体の対応する配列に代えて置換することにより実施することができる。具体的には、ヒト化抗体は、CDRグラフト手法(例えば、米国特許第6,548,640号明細書を参照のこと)、ベニヤリング(veneering)又はリサーフェシング(resurfacing)(米国特許第5,639,641号明細書及び同第6,797,492号明細書;Studnicka et al.,Protein Engineering 7(6):805−814(1994);Roguska.et al.,PNAS 91:969−973(1994))、鎖シャフリング戦略(例えば、米国特許第5,565,332号明細書;Rader et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998)95:8910−8915を参照のこと)、分子モデリング戦略(米国特許第5,639,641号明細書)などを含め、当該技術分野において公知の方法により調製され得る。これらの一般的な手法を標準的な突然変異生成及び組換え合成技術と組み合わせて、所望の特性を有する抗CXCR4抗体を作製してもよい。
CDRグラフトは、アクセプター抗体(例えばヒト抗体)の1つ以上のCDRを、ドナー抗体(例えば非ヒト抗体)の1つ以上のCDRに置き換えることにより実施される。アクセプター抗体は、候補アクセプター抗体とドナー抗体との間のフレームワーク残基の類似性に基づき選択されてもよく、さらなる修飾によって類似の残基が導入され得る。CDRグラフトの後、抗体結合及び機能性を最適化するため、ドナー配列及び/又はアクセプター配列にさらなる変化が加えられてもよい。
簡略CDR領域のグラフトは、関連する手法である。簡略CDR領域は、特異性決定残基と、軽鎖の27d〜34位、50〜55位及び89〜96位、及び重鎖の31〜35b位、50〜58位、及び95〜101位を含む隣接するアミノ酸とを含む。(Padlan et al.(1995)FASEB J.9:133−9)を参照のこと。特異性決定残基(SDR)のグラフトは、抗体結合部位の結合特異性及び親和性がCDR領域の各々のなかで最も可変性が高い残基により決定されるという理解を前提としている。抗体−抗原複合体の三次元構造の解析を、利用可能なアミノ酸配列データの解析と組み合わせて使用して、CDR内の各位置に現れるアミノ酸残基の構造的非類似性に基づく配列多様性がモデル化された。SDRと称される接触残基からなる最小限の免疫原性のポリペプチド配列が同定され、ヒトフレームワーク領域にグラフトされる。
ベニヤリング又はリサーフェシングは、抗体の溶媒接触可能外面をヒトアミノ酸配列に付け替えることにより、げっ歯類又は他の非ヒト抗体における潜在的に免疫原性のアミノ酸配列を低減するという概念に基づく。従ってベニヤリングされた抗体は、ヒト細胞にとって外来性が低いように見える。非ヒト抗体は、(1)非ヒト抗体において露出した外面のフレームワーク領域残基であって、ヒト抗体のフレームワーク領域における同じ位置のものと異なる残基を同定すること、及び(2)同定された残基を、典型的にヒト抗体においてそれらの同じ位置を占めるアミノ酸で置換することにより、ベニヤリングされる。
定義上、ヒト化抗体はキメラ抗体である。キメラ抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である一方、鎖の別の部分が、別の種に由来する、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びに所望の生物活性を呈する限りにおいて、かかる抗体の断片である(例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984))。本明細書における目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、例えばヒヒ、アカゲザル又はカニクイザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体が含まれる(米国特許第5,693,780号明細書)。
(e)ヒト抗体
ヒト化の代替例として、当該技術分野において公知の方法を用いてヒト抗体を作成することができる。ヒト抗体は、マウス又はラット可変及び/又は定常領域を有する抗体に付随する問題の一部を回避する。かかるマウス又はラット由来のタンパク質が存在すると、抗体の急速なクリアランスが引き起こされ得るか、又は患者による抗体に対する免疫応答の発生が引き起こされ得る。マウス又はラット由来の抗体の利用を回避するため、機能性ヒト抗体遺伝子座をげっ歯類、他の哺乳類又は動物に導入して、そのげっ歯類、他の哺乳類又は動物により完全ヒト抗体が産生されるようにすることにより、完全ヒト抗体を作成することができる。
例えば、免疫化することで、内因性免疫グロブリン産生の非存在下においてヒト抗体の完全レパートリーの産生能力を有するトランスジェニック動物(例えばマウス)を作製することが、ここで可能になる。例えば、キメラ及び生殖系列変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイをかかる生殖系列変異マウスに移すと、抗原チャレンジを受けたときにヒト抗体の産生がもたらされ得る。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993);米国特許第5,545,806号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,591,669号明細書(全てGenPharm);米国特許第5,545,807号明細書;及び国際公開第97/17852号パンフレットを参照のこと。実際には、1000kbサイズ以下の生殖系列を含むように操作されているXENOMOUSE(登録商標)系統のマウスの使用により、ヒト重鎖遺伝子座及びκ軽鎖遺伝子座の断片が構成された。Mendez et al.Nature Genetics 15:146−156(1997)及びGreen and Jakobovits J.Exp.Med.188:483−495(1998)を参照のこと。XENOMOUSE(登録商標)系統は、Amgen,Inc.(Fremont,Calif.)から入手可能である。
XENOMOUSE(登録商標)系統のマウスの作製及びそのようなマウスで産生される抗体については、米国特許第6,673,986号明細書;同第7,049,426号明細書;同第6,833,268号明細書;同第6,162,963号明細書、同第6,150,584号明細書、同第6,114,598号明細書、同第6,075,181号明細書、同第6,657,103号明細書;同第6,713,610号明細書及び同第5,939,598明細書;米国特許出願公開第2004/0010810号明細書;同第2003/0229905号明細書;同第2004/0093622号明細書;同第2005/0054055号明細書;同第2005/0076395号明細書;及び同第2006/0040363号明細書にさらに考察及び詳説される。
本質的に、XENOMOUSE(登録商標)系のマウスを目的の抗原(例えばCXCR4)で免疫し、過免疫マウスからリンパ細胞(B細胞など)を回収し、及び回収したリンパ球を骨髄系細胞株と融合することにより、上記に記載され及び当該技術分野において公知の技術を用いて不死化ハイブリドーマ細胞株が調製される。これらのハイブリドーマ細胞株をスクリーニングして選択することにより、目的の抗原に特異的な抗体を産生したハイブリドーマ細胞株が同定される。
代替的な手法では、GenPharm International,Inc.を含む他の者らが、「ミニ遺伝子座」の手法を利用している。ミニ遺伝子座手法では、外因性のIg遺伝子座が、Ig遺伝子座の部分片(個々の遺伝子)を包含することにより模倣される。従って、1つ以上のVH遺伝子、1つ以上のDH遺伝子、1つ以上のJH遺伝子、μ定常領域、及び通常第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)が、動物に挿入されるコンストラクト中に形成される。この手法については、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,625,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;同第5,661,016号明細書;同第5,770,429号明細書;同第5,789,650号明細書;同第5,814,318号明細書;同第5,877,397号明細書;同第5,874,299号明細書;同第6,255,458号明細書;同第5,591,669号明細書;同第6,023,010号明細書;同第5,612,205号明細書;同第5,721,367号明細書;同第5,789,215号明細書;同第5,643,763号明細書;及び同第5,981,175号明細書に記載されている。
Kirinもまた、マウスからのヒト抗体の作成を実証しており、ここではマイクロセル融合を用いて大きい染色体片、又は染色体全体が導入されている。米国特許第6,632,976号明細書を参照のこと。加えて、KirinのTcマウスをMedarexのミニ遺伝子座(Humab)マウスと異種交配して生まれたKM(商標)マウスが作成されている。これらのマウスは、KirinマウスのヒトIgHトランスクロモソームとGenpharmマウスのκ鎖トランス遺伝子とを有する(Ishida et al.,Cloning Stem Cells,(2002)4:91−102)。
ヒト抗体はまた、インビトロ方法によって得ることもできる。好適な例としては、限定はされないが、ファージディスプレイ(MedImmune(旧CAT)、Morphosys、Dyax、Biosite/Medarex、Xoma、Symphogen、Alexion(旧Proliferon)、Affimed)リボソームディスプレイ(MedImmune(旧CAT))、酵母ディスプレイなどが挙げられる。ファージディスプレイ技術(例えば、米国特許第5,969,108号明細書を参照のこと)を用いることにより、未免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロでヒト抗体又は抗原結合断片を作製することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子がM13又はfdなどの繊維状バクテリオファージの主要な或いはマイナーなコートタンパク質遺伝子にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能性抗原結合断片として提示される。この糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むため、抗体の機能特性に基づき選択すると、またそれらの特性を示す抗体をコードする遺伝子を選択することになる。従って、ファージはB細胞のいくらかの特性を模倣する。ファージディスプレイは様々なフォーマットで実施することができ、例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3:564−571(1993)にレビューされている。いくつかのV遺伝子セグメント供給源をファージディスプレイに用いることができる。Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)は、免疫化マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小規模なランダムコンビナトリアルライブラリーから、抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。本質的にMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)、又はGriffith et al.,EMBO J.12:725−734(1993)によって記載される技術に従い、非免疫ヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築することができ、及び抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体を単離することができる。米国特許第5,565,332号明細書及び同第5,573,905号明細書もまた参照のこと。
上記に考察したとおり、ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞により作成してもよい(米国特許第5,567,610号明細書及び同第5,229,275号明細書を参照のこと)。
免疫グロブリン遺伝子は、可変領域におけるV、D及びJ遺伝子セグメント間の組換え、アイソタイプスイッチング、及び超突然変異を含め、免疫応答が成熟する間に様々な修飾を受ける。組換え及び体細胞超突然変異は抗体多様性及び親和性成熟を生じる基礎であるが、それらはまた配列ライアビリティ(liability)も生じ得るために、かかる免疫グロブリンの治療剤としての商業生産は困難となり、又は抗体の免疫原性リスクが増加し得る。一般に、CDR領域における突然変異は親和性及び機能の向上に寄与するものと思われる一方、フレームワーク領域における突然変異は免疫原性リスクを増加させ得る。このリスクは、抗体の活性が悪影響を受けないことを確実にしながら、フレームワーク突然変異を生殖系列に復帰させることによって低減できる。多様化プロセスにより何らかの構造的ライアビリティが生じることもあり、又はそのような構造的ライアビリティが、重鎖及び軽鎖可変ドメインに寄与する生殖系列配列内に存在することもある。供給源にかかわらず、不安定性、凝集、産物の不均一性、又は免疫原性の増加をもたらし得る潜在的な構造的ライアビリティは除去することが所望され得る。望ましくないライアビリティの例としては、不対のシステイン(これはジスルフィド結合のスクランブリング、又は可変のスルフヒドリル付加物の形成を引き起こし得る)、N−結合型グリコシル化部位(構造及び活性の不均一性をもたらす)、並びにアミド分解(例えばNG、NS)、異性化(DG)、酸化(露出したメチオニン)、及び加水分解(DP)部位が挙げられる。
従って、本開示の抗体の免疫原性リスクを低減し、且つ薬学的特性を向上させるため、フレームワーク配列を生殖系列に復帰させ、CDRを生殖系列に復帰させ、及び/又は構造的ライアビリティを除去することが所望され得る。
(f)抗原結合断片
特定の実施形態では、本抗体は、抗原結合断片又はそれらの断片を含む抗体である。抗原結合断片は、完全長抗体のうち、概してその抗原結合領域又は可変領域である一部分を含む。抗原結合断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd及びFv断片が含まれる。ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号明細書);一本鎖抗体分子;及び多重特異性抗体は、これらの抗原結合断片から形成される抗体である。
伝統的には、これらの断片は、当該技術分野において公知の技法を用いたインタクトな抗体のタンパク質消化によって得られた。しかしながら、現在これらの断片は、組換え宿主細胞が直接産生することができる。Fab、Fv及びscFv抗原結合断片は全て、大腸菌(E.coli)又は他の細胞型で発現させて、そこから分泌させることができるため、これらの断片は大量産生が容易に可能である。一実施形態では、抗原結合断片は、上記で考察される抗体ファージライブラリから単離することができる。或いは、Fab’−SH断片を大腸菌(E.coli)から直接回収し、化学的にカップリングすることにより、F(ab’)2断片を形成することもできる(Carter et al.,Bio/Technology,10:163−167(1992))。別の手法によれば、F(ab’)2断片を組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗原結合断片を産生する他の技術が、当業者には明らかであろう。他の実施形態では、選択される抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。特定の実施形態では、抗体はFab断片でない。Fv及びscFvは、定常領域を欠いたインタクトな結合部位を有する唯一の種である;従ってこれらは、インビボで使用する間の非特異的結合を低減するのに好適である。scFvのアミノ端又はカルボキシ端のいずれかにエフェクタータンパク質の融合が生じるようにscFv融合タンパク質を構築してもよい。
特定の実施形態では、本抗体は、ドメイン抗体、例えば、ヒト抗体の重鎖可変(VH)又は軽鎖可変(VL)領域に対応する抗体の小さい機能的結合単位を含む抗体である。ドメイン抗体の例としては、限定はされないが、治療標的に特異的な、Domantisから入手可能なものが挙げられる(例えば、国際公開第04/058821号パンフレット;国際公開第04/081026号パンフレット;国際公開第04/003019号パンフレット;国際公開第03/002609号パンフレット;米国特許第6,291,158号明細書;同第6,582,915号明細書;同第6,696,245号明細書;及び同第6,593,081号明細書を参照のこと)。ドメイン抗体の市販のライブラリを使用して、抗CXCR4ドメイン抗体を同定することができる。特定の実施形態では、抗CXCR4抗体は、CXCR4機能結合単位及びFcγ受容体機能的結合単位を含む。
本開示の特定の実施形態では、本抗体はワクチボディである。ワクチボディは二量体ポリペプチドである。ワクチボディの各単量体は、APCの表面分子に対して特異性を有するscFvがヒンジ領域及びCγ3ドメインを介して第2のscFvに結合したものからなる。本開示の他の実施形態では、scFvの一つとして抗CXCR4抗原結合断片を含むワクチボディを使用して、破壊しようとする細胞とADCCを媒介するエフェクター細胞とを並べてもよい。例えば、Bogen et al.、米国特許出願公開第2004/0253238号明細書を参照のこと。
本開示の特定の実施形態では、本抗体は線状抗体である。線状抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。線状抗体は二重特異性又は単一特異性であってよい。Zapata et al.,Protein Eng.,8(10):1057−1062(1995)を参照のこと。
(g)二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、CXCR4タンパク質の2つの異なるエピトープに結合し得る。他のかかる抗体は、CXCR4結合部位を別のタンパク質に対する結合部位と組み合わせ得る。或いは、細胞防御機構をCXCR4発現細胞に集中及び局在化させるため、抗CXCR4アームが、白血球上のトリガー分子、例えばT細胞受容体分子(例えばCD3)、又はIgGに対するFc受容体(FcγR)、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わされてもよい。また二重特異性抗体を用いて、CXCR4を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化させることもできる。これらの抗体は、CXCR4結合アームと、細胞傷害剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン−α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサート又は放射性同位体ハプテン)を結合するアームとを有する。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗原結合断片(例えばF(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。二重特異性抗体の作製方法は当該技術分野において公知である(例えば、Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983);Traunecker et al.,EMBO J.,10:3655−3659(1991);Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986);Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992);Hollinger et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993);Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994);米国特許第4,474,893号明細書;同第4,714,681号明細書;同第4,925,648号明細書;同第5,573,920号明細書;同第5,601,819号明細書;同第5,731,168号明細書;同第4,676,980号明細書;同第5,897,861号明細書;同第5,660,827号明細書;同第5,811,267号明細書;同第5,849,877号明細書;同第5,948,647号明細書;同第5,959,084号明細書;同第6,106,833号明細書;同第6,143,873号明細書及び同第4,676,980号明細書、国際公開第94/04690号パンフレット;及び国際公開第92/20373号パンフレットを参照のこと)。
完全長二重特異性抗体の従来の作製は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づき、ここで2つの鎖は異なる特異性を有する(Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組み合わせにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、そのうち1つのみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製(これは通常アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われる)はやや厄介であり、産物収率は低い。同様の手順が国際公開第93/08829号パンフレット、及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655−3659(1991)に開示される。
別の手法によれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)が免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。好ましくは、この融合は、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含むIg重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖結合に必要な部位を含む第1重鎖定常領域(CH1)を、融合物の少なくとも1つに存在させることが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物をコードするDNA、及び必要であれば免疫グロブリン軽鎖は、別個の発現ベクターに挿入され、好適な宿主細胞にコトランスフェクトされる。これにより、構築に用いられる3つのポリペプチド鎖の均等でない比率により所望の二重特異性抗体の至適収率がもたらされるときの実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する際により高い柔軟性が提供される。しかしながら、等しい比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現により高収率がもたらされるとき、又は比率が所望の鎖の組み合わせの収率に何ら大きい効果を及ぼさないとき、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を単一の発現ベクターに挿入することが可能である。
この手法の一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにおける第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)とで構成される。免疫グロブリン軽鎖が二重特異性分子の片方のみに存在することで容易な分離方法が提供されるため、この非対称構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を促進し得る。二重特異性抗体の作成のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照のこと。
米国特許第5,731,168号明細書に記載される別の手法によれば、一対の抗体分子間の接合部を、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合が最大となるように操作することができる。好ましい接合部はCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の接合部からの1つ以上の小さいアミノ酸側鎖が、より大きい側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)に置き換えられる。大きい側鎖と同じ又は同程度のサイズの代償性の「キャビティ」が、大きいアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(例えばアラニン又はスレオニン)に置き換えることによって第2の抗体分子の接合部に作られる。これにより、ホモ二量体などの他の望ましくない最終産物に対するヘテロ二量体の収率を増加させる機構が提供される。
二重特異性抗体には、架橋抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方をアビジンと共役させ、他方をビオチンと共役させてもよい。かかる抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的化させるため(米国特許第4,676,980号明細書)、及びHIV感染の治療向けに(米国特許第5,897,861号明細書)提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の好都合な架橋方法を用いて作製され得る。好適な架橋剤は当該技術分野において公知であり、米国特許第4,676,980号明細書に、いくつかの架橋技法と共に開示されている。
抗原結合断片からの二重特異性抗体の作成技法はまた、文献にも記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。Brennan et al.,Science,229:81(1985)は、インタクトな抗体のタンパク質分解切断によりF(ab’)2断片を作成する手順を記載している。このような断片はジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元され、隣接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。作成されたFab’断片は、次にチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換される。次にFab’−TNB誘導体の一方が、メルカプトエチルアミンによる還元によってFab’−チオールに再変換され、等モル量の他方のFab’−TNB誘導体と混合されることにより、二重特異性抗体が形成される。作製された二重特異性抗体は、選択的な酵素固定化用薬剤として使用することができる。
最近の進歩により、大腸菌(E.coli)からFab’−SH断片を直接回収することが容易になっており、Fab’−SH断片は化学的カップリングにより二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217−225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の作製について記載している。各Fab’断片が大腸菌(E.coli)から別個に分泌され、インビトロで誘導的な化学的カップリングに供されることにより、二重特異性抗体が形成された。このように形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合する能力、並びにヒト乳房腫瘍標的に対してヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発する能力を有した。
組換え細胞培養物から直接二重特異性抗原結合断片を作製及び単離する様々な技法もまた記載されている。例えば、ロイシンジッパーを用いて二重特異性抗体が作製されている。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJunタンパク質のロイシンジッパーペプチドが遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元することにより単量体が形成され、次に再度酸化することにより、抗体ヘテロ二量体が形成された。この方法はまた、抗体ホモ二量体の作製にも利用することができる。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:6444−6448(1993)により記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗原結合断片を作製するための代替的な機構を提供している。この断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間で対を形成させるには短過ぎるリンカーによってVLに結合されたVHを含む。従って、一方の断片のVH及びVLドメインが別の断片の相補的なVL及びVHドメインと対を形成するよう強いられ、それにより2つの抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗原結合断片を作製する別の戦略もまた報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)及び米国特許第5,591,828号明細書;同第4,946,778号明細書;同第5,455,030号明細書;及び同第5,869,620号明細書を参照のこと。
3つ以上の結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)、及び多重特異性結合価、
米国特許第5,258,498号明細書を調製することができる。
(h)他のアミノ酸配列修飾
上述のヒト抗体、ヒト化抗体及び/又はキメラ抗体に加えて、本開示はまた、可変軽鎖(VL)ドメイン及び/又は可変重鎖(VH)ドメイン及び/又はFc領域における1つ以上のアミノ酸残基及び/又はポリペプチド置換、付加及び/又は欠失、及び翻訳後修飾を含む本開示の抗CXCR4抗体のさらなる修飾体、並びにその変異体及びその断片も包含する。これらの修飾体には、抗体がある部分に共有結合している抗体コンジュゲートが含まれる。抗体との結合に好適な部分としては、限定はされないが、タンパク質、ペプチド、薬物、標識、及び細胞毒素が挙げられる。このような抗体に対する変化は、CXCR4媒介性疾患の治療及び/又は診断に適切であるように抗体の(生化学的な、結合上の及び/又は機能的な)特性を改変し、又は微調整するために加えられ得る。コンジュゲートを形成し、アミノ酸及び/又はポリペプチド変化並びに翻訳後修飾を加える方法は、当該技術分野において公知であり、その一部を以下に詳述する。以下の記載は、限定することを意図するものではなく、むしろ一部の実施形態の非限定的な説明であり、当業者にはそのさらに多くが明らかとなるであろう。また、上記に記載されるヒト抗体、ヒト化抗体及び/又はキメラ抗体配列が以下の方法の一部を用いて開発されたことも理解される。最終的なコンストラクト(但し、その最終的なコンストラクトは所望の特性を有するものとする)を実現する任意の組み合わせの欠失、挿入、及び置換が作製される。
抗体に対するアミノ酸変化は、必然的に、上記に同定される抗体配列又は親抗体配列と100%未満の同一性の配列をもたらす。特定の実施形態では、これに関連して抗体は、本明細書に記載されるとおりの抗CXCR4抗体の重鎖又は軽鎖可変ドメインのいずれかのアミノ酸配列と約25%〜約95%の配列同一性を有し得る。従って、一実施形態では修飾抗体は、本明細書に記載されるとおりの抗CXCR4抗体の重鎖又は軽鎖可変ドメインのいずれかのアミノ酸配列と少なくとも25%、35%、45%、55%、65%、75%、80%、85%、90%、又は95%のアミノ酸配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態では、改変抗体は、本明細書に記載されるとおりの抗CXCR4抗体の重鎖又は軽鎖CDR1、CDR2、又はCDR3のアミノ酸配列と少なくとも25%、35%、45%、55%、65%、75%、80%、85%、90%、又は95%のアミノ酸配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態では、改変抗体は、本明細書に記載されるとおりの抗CXCR4抗体の重鎖又は軽鎖FR1、FR2、FR3又はFR4のアミノ酸配列と少なくとも25%、35%、45%、55%、65%、75%、80%、85%、90%、又は95%のアミノ酸配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を有し得る。
特定の実施形態では、改変抗体は、抗体の可変領域の1つ以上に導入された1つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、欠失及び/又は付加)により作成される。別の実施形態では、アミノ酸改変はフレームワーク領域に導入される。フレームワーク領域残基の1つ以上を改変すると、抗原に対する抗体の結合親和性の向上がもたらされ得る。これは特に、フレームワーク領域がCDR領域と異なる種から形成され得るヒト化抗体にそのような変化が加えられるときに該当し得る。修飾するフレームワーク領域残基の例には、抗原を直接非共有結合的に結合するもの(Amit et al.,Science,233:747−753(1986));CDRのコンホメーションと相互作用する/それを生じさせるもの(Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901−917(1987));及び/又はVL−VH接合部に関与するもの(米国特許第5,225,539号明細書及び同第6,548,640号明細書)が含まれる。一実施形態では、約1〜約5個のフレームワーク残基が改変され得る。ときにこれは、超可変領域残基が一つも改変されていない場合であっても、前臨床試験での使用に好適な抗体変異体を得るのに十分であり得る。しかしながら、通常は、改変抗体はさらなる超可変領域改変を含み得る。特定の実施形態では、特に第2の哺乳類種由来の抗原に対する抗CXCR4抗体の出発結合親和性が、ランダムに産生された抗体を容易にスクリーニングし得るようなものである場合に、超可変領域残基はランダムに変化させてもよい。
改変抗体の一つの有用な作成手順は、「アラニンスキャニング突然変異生成」と呼ばれる(Cunningham and Wells,Science,244:1081−1085(1989))。この方法では、超可変領域残基の1つ以上がアラニン又はポリアラニン残基に置換されることにより、CXCR4とのアミノ酸の相互作用が改変される。次に、置換に対して機能的感受性を示すそれらの超可変領域残基が、置換部位に、又は置換部位用の追加的な又は他の突然変異を導入することによって精緻化される。従って、アミノ酸配列変異の導入部位は予め決めておかれるが、突然変異の性質それ自体を予め決めておく必要はない。このように産生されたAla突然変異体は、本明細書に記載されるとおりのその生物活性についてスクリーニングされる。
特定の実施形態において置換変異体には、親抗体(例えばヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することが関わる。概して、さらなる展開用に選択される得られた変異体は、それが作成される元になった親抗体と比べて生物学的特性が向上したものであり得る。かかる置換変異体を作成するための好都合な方法には、ファージディスプレイを使用した親和性成熟が関わる(Hawkins et al.,J.Mol.Biol.,254:889−896(1992)及びLowman et al.,Biochemistry,30(45):10832−10837(1991))。簡潔に言えば、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7個の部位)を突然変異させることにより、各部位にあらゆる可能なアミノ酸置換が作成される。このように作成された抗体突然変異体が、繊維状ファージ粒子から、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物との融合物として一価の形で提示される。次に、ファージが提示する突然変異体が、本明細書に開示されるとおりその生物活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングされる。
抗体配列の突然変異には、置換、欠失(内部欠失を含む)、付加(融合タンパク質を生じる付加を含む)、又はアミノ酸配列内の及び/又はそれに隣接したアミノ酸残基の、但し変化が機能的に等価な抗CXCR4抗体を生じる点で「サイレント」な変化をもたらす保存的置換が含まれ得る。保存的アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質の類似性を基準として作製されてもよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが挙げられ;極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが挙げられ;正電荷(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが挙げられ;及び負電荷(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。加えて、グリシン及びプロリンは、鎖配向に影響を及ぼすことのできる残基である。非保存的置換は、これらのクラスのうちの一つのメンバーを別のクラスのメンバーに交換することを伴い得る。さらに、必要であれば、非古典的アミノ酸又は化学的アミノ酸類似体を置換又は付加として抗体配列に導入することができる。非古典的アミノ酸としては、限定はされないが、共通アミノ酸のD−異性体、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、γ−Abu、ε−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えばβ−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸s、Nα−メチルアミノ酸、及び一般にアミノ酸類似体が挙げられる。
別の実施形態では、抗CXCR4抗体の適切なコンホメーションの維持に関与しない任意のシステイン残基もまた、概してセリンと置換されてよく、それにより分子の酸化安定性を向上させ、異常な架橋を防止し得る。逆に、システイン結合を抗体に加えることで、その安定性を向上させてもよい(特に抗体がFv断片などの抗原結合断片である場合)。
本開示の特定の実施形態では、抗体を修飾して、融合タンパク質;すなわち、異種タンパク質、ポリペプチド又はペプチドと融合した抗体、又はその断片を作製することができる。特定の実施形態では、抗体のその部分に融合するタンパク質は、抗体指向性酵素プロドラッグ療法(Antibody−Directed Enzyme Prodrug Therapy:ADEPT)の酵素成分である。抗体との融合タンパク質として操作することのできる他のタンパク質又はポリペプチドの例としては、限定はされないが、毒素、例えば、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシンA、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリン毒素(diphtherin toxin)、緑膿菌外毒素、及び緑膿菌内毒素が挙げられる。例えば、Pastan et al.,Cell,47:641(1986)、及びGoldenberg et al.,Cancer Journal for Clinicians,44:43(1994)を参照のこと。用いることのできる酵素的に活性な毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトジェリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセン(tricothecene)が含まれ得る。例えば、国際公開第93/21232号パンフレットを参照のこと。
さらなる融合タンパク質を、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリング、及び/又はコドンシャフリング(まとめて「DNAシャフリング」と称される)の技法によって作成してもよい。DNAシャフリングを用いて抗体又はその断片の特性を改変し得る(例えば、より高い親和性及びより低い解離速度を有する抗体又はその断片)。一般的には、米国特許第5,605,793号明細書;同第5,811,238号明細書;同第5,830,721号明細書;同第5,834,252号明細書;及び同第5,837,458号明細書、及びPatten et al.,1997,Curr.Opinion Biotechnol.,8:724−33;Harayama,1998,Trends Biotechnol.16(2):76−82;Hansson et al.,1999,J.Mol.Biol.,287:265−76;及びLorenzo and Blasco,1998,Biotechniques 24(2):308−313を参照のこと。抗体は、さらには、米国特許出願公開第2003/0118592号明細書、及び国際公開第02/056910号パンフレットに記載されるとおりの結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質であってもよい。
A.変異Fc領域
Fc領域の変異体(例えば、アミノ酸置換及び/又は付加及び/又は欠失)は、抗体のエフェクター機能を増強又は減退させ(例えば、米国特許第5,624,821号明細書;同第5,885,573号明細書;同第6,538,124号明細書;同第7,317,091号明細書;同第5,648,260号明細書;同第6,538,124号明細書;国際公開第03/074679号パンフレット;国際公開第04/029207号パンフレット;国際公開第04/099249号パンフレット;国際公開第99/58572号パンフレット;米国特許出願公開第2006/0134105号明細書;同第2004/0132101号明細書;同第2006/0008883号明細書を参照)、及び抗体の薬物動態特性(例えば半減期)を改変し得る(米国特許第6,277,375号明細書及び同第7,083,784号明細書を参照)ことが知られている。従って、特定の実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体は、改変されたFc領域(本明細書では「変異Fc領域」とも称される)を含み、ここでは抗体の機能特性及び/又は薬物動態特性を変化させるため、Fc領域に1つ以上の改変が加えられている。かかる改変は、IgGに関して、Clq結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC)又はFcγR結合、及び抗体依存細胞傷害性(ADCC)、又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)の減少又は増加をもたらし得る。本開示は、エフェクター機能を増強するか又は減退させるかの微調整により所望のエフェクター機能が提供されるように変化を生じさせた変異Fc領域を有する本明細書に記載される抗体を包含する。従って、本開示の一実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体は、変異Fc領域(すなわち、以下で考察するとおり改変されているFc領域)を含む。変異Fc領域を含む本開示の抗CXCR4抗体はまた、本明細書では「Fc変異抗体」とも称される。本明細書で使用されるとき、天然とは、修飾されていない親配列を指し、天然Fc領域を含む抗体は、本明細書では「天然Fc抗体」と称される。Fc変異抗体は、当業者に周知されている数多くの方法で作成することができる。非限定的な例としては、抗体コード領域を(例えばハイブリドーマから)単離し、その単離した抗体コード領域のFc領域に1つ以上の所望の置換を作製することが挙げられる。或いは、抗CXCR4抗体の抗原(antigent)結合部分(例えば可変領域)を、変異Fc領域をコードするベクターにサブクローニングしてもよい。一実施形態では、変異Fc領域は、天然Fc領域と比較したとき同程度のエフェクター機能の誘導レベルを呈する。別の実施形態では、変異Fc領域は、天然Fcと比較したときより高いエフェクター機能の誘導を呈する。別の実施形態では、変異Fc領域は、天然Fcと比較したときより低いエフェクター機能の誘導を呈する。変異Fc領域のいくつかの具体的な実施形態を以下に詳述する。エフェクター機能の計測方法は、当該技術分野において周知されている。
抗体のエフェクター機能は、限定はされないが、アミノ酸置換、アミノ酸付加、アミノ酸欠失及びFcアミノ酸に対する翻訳後修飾(例えばグリコシル化)の変化を含め、Fc領域を変化させることにより修飾される。以下に記載される方法を用いることにより、本抗体のエフェクター機能、特定の疾患徴候に対する所望の特性を有する治療用抗体をもたらし、且つCXCR4の生物学を考慮した、FcRに対するFc領域の結合特性(例えば、親和性と特異性)の比率を微調整し得る。
本明細書で使用されるとおりのFc領域には、第1定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチドが含まれることが理解される。従ってFcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、及びIgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、及びこれらのドメインに対する可動性ヒンジN末端を指す。IgA及びIgMに関しては、FcはJ鎖を含み得る。IgGに関しては、Fcは免疫グロブリンドメインCガンマ2及びCガンマ3(Cγ2及びCγ3)、及びCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間のヒンジを含み得る。Fc領域の境界は変わり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226又はP230からそのカルボキシル端を含むように定義され、ここで付番は、Kabatに示されるとおりのEUインデックスに基づく。Fcは、単離におけるこの領域を指してもよく、又は抗体、抗原結合断片、若しくはFc融合タンパク質の文脈におけるこの領域を指してもよい。限定はされないが、EUインデックスにより付番するときの270位、272位、312位、315位、356位、及び358位を含む複数の異なるFc位置で多型が観察されており、従って提示される配列と先行技術の配列との間には、僅かな違いが存在し得る。
一実施形態では、本開示は、天然Fc抗体と比べてFcリガンド(例えば、Fc受容体、C1q)に対する改変された結合特性を有するFc変異抗体を包含する。結合特性の例としては、限定はされないが、結合特異性、平衡解離定数(Kd)、解離及び会合速度(それぞれkoff及びkon)、結合親和性及び/又はアビディティが挙げられる。平衡解離定数(Kd)がkoff/konとして定義されることは、当該技術分野において公知である。特定の態様において、高いKdの抗体には低いKdのFc変異領域を含む抗体がより望ましいこともある。しかしながら、ある場合には、Kdの値よりkon又はkoffの値のほうが関連性が高いこともある。当業者は、所与の抗体適用について、どの動態学的パラメータが最も重要であるかを決定することができる。例えば、ADCC活性を低下させるには、1つ以上の正の調節因子(例えば、FcγRIIIA)に対する結合を低下させる修飾、及び/又は抑制性Fc受容体(例えば、FcγRIIB)に対する結合の増強が好適であり得る。従って、異なる受容体に関する結合親和性の比率(例えば、平衡解離定数(Kd)の比率)は、本開示のFc変異抗体のADCC活性が増強されるか、それとも低下するかの指標となり得る。加えて、CDC活性を低下させ、又は消失させるには、C1qに対する結合を低下させる修飾が好適であり得る。
一実施形態では、Fc変異抗体は天然Fc抗体と比較したとき、限定はされないが、FcRn、アイソフォームFcγRIA、FcγRIB、及びFcγRICを含むFcγRI(CD64);FcγRII(CD32、アイソフォームFcγRIIA、FcγRIIB、及びFcγRIICを含む);及びFcγRIII(CD16、アイソフォームFcγRIIIA及びFcγRIIIBを含む)を含め、1つ以上のFc受容体に対して改変された結合親和性を呈する。
一実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べて1つ以上のFcリガンドに対する結合が増強されている。別の実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べて少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍、又は2倍〜10倍、又は5倍〜50倍、又は25倍〜100倍、又は75倍〜200倍、又は100〜200倍高い又は低いFcリガンドに対する親和性の増加又は減少を呈する。別の実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べて少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、又は少なくとも5%高い又は低いFcリガンドに対する親和性を呈する。特定の実施形態では、Fc変異抗体は、Fcリガンドに対する親和性が増加している。他の実施形態では、Fc変異抗体は、Fcリガンドに対する親和性が低下している。
具体的な実施形態において、Fc変異抗体は、Fc受容体FcγRIIIAに対して増強された結合性を有する。別の具体的な実施形態において、Fc変異抗体は、Fc受容体FcγRIIBに対して増強された結合性を有する。さらに具体的な実施形態において、Fc変異抗体は、Fc受容体FcγRIIIA及びFcγRIIBの双方に対して増強された結合性を有する。特定の実施形態では、FcγRIIIAに対して増強された結合性を有するFc変異抗体は、天然Fc抗体と比較したとき、FcγRIIB受容体との結合性の付随する増加を有しない。具体的な実施形態において、Fc変異抗体は、Fc受容体FcγRIIIAに対して低下した結合性を有する。さらに具体的な実施形態において、Fc変異抗体は、Fc受容体FcγRIIBに対して低下した結合性を有する。さらに別の具体的な実施形態において、FcγRIIIA及び/又はFcγRIIBに対して改変された親和性を呈するFc変異抗体は、Fc受容体FcRnに対して増強された結合性を有する。さらに別の具体的な実施形態において、FcγRIIIA及び/又はFcγRIIBに対して改変された親和性を呈するFc変異抗体は、天然Fc抗体と比べてC1qに対して改変された結合性を有する。
一実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べて少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍、又は2倍〜10倍、又は5倍〜50倍、又は25倍〜100倍、又は75倍〜200倍、又は100〜200倍高い又は低いFcγRIIIA受容体に対する親和性を呈する。別の実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べて少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、又は少なくとも5%高い又は低いFcγRIIIAに対する親和性を呈する。
一実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べて少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍、又は2倍〜10倍、又は5倍〜50倍、又は25倍〜100倍、又は75倍〜200倍、又は100〜200倍高い又は低いFcγRIIB受容体に対する親和性を呈する。別の実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べて少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、又は少なくとも5%高い又は低いFcγRIIBに対する親和性を呈する。
一実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べてC1qに対する親和性の増加又は低下を呈する。別の実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べて少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍、又は2倍〜10倍、又は5倍〜50倍、又は25倍〜100倍、又は75倍〜200倍、又は100〜200倍高い又は低いC1q受容体に対する親和性を呈する。別の実施形態では、Fc変異抗体は、天然Fc抗体と比べて少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、又は少なくとも5%高い又は低いC1qに対する親和性を呈する。さらに別の具体的な実施形態において、Ciqに対して改変された親和性を呈するFc変異抗体は、Fc受容体FcRnに対して増強された結合性を有する。さらに別の具体的な実施形態において、C1qに対して改変された親和性を呈するFc変異抗体は、天然Fc抗体と比べてFcγRIIIA及び/又はFcγRIIBに対して改変された結合性を有する。
当該技術分野においてまとめて抗体エフェクター機能として知られる複数のプロセスを介して標的抗原の攻撃及び破壊を誘導する能力が抗体にあることは、当該技術分野において公知である。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」として知られるこれらのプロセスの一つは、ある種の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を抗原保持標的細胞に特異的に結合させ、続いて標的細胞を細胞毒で死滅させることを可能にする細胞傷害性の一形態を指す。標的細胞の表面を指向する特異的高親和性IgG抗体が細胞傷害性細胞を「装備」し、かかる死滅には必須である。標的細胞の溶解は細胞外であり、直接的な細胞間接触が必要で、且つ相補体は関与しない。用語エフェクター機能に包含される別のプロセスは、補体依存性細胞傷害性(以下、「CDC」と称する)であり、これは、補体系による抗体媒介性標的細胞破壊の生化学的イベントを指す。補体系は、正常な血漿に認められるタンパク質の複合系であり、抗体と組み合わさって病原性細菌及び他の外来細胞を破壊する。用語エフェクター機能に包含されるさらに別のプロセスは、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)であり、これは、1つ以上のエフェクターリガンドを発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の食作用を生じる細胞媒介性反応を指す。
Fc変異抗体は、1つ以上のFcγR媒介性エフェクター細胞機能を決定するためのインビトロ機能アッセイにより特徴付けられることが企図される。特定の実施形態では、Fc変異抗体は、インビボモデル(本明細書に記載及び開示されるものなど)において、インビトロベースのアッセイの場合と同様の結合特性及びエフェクター細胞機能を有する。しかしながら、本開示は、インビトロベースのアッセイで所望の表現型を呈しないが、インビボで実に所望の表現型を呈するFc変異抗体を除外しない。
Fc領域を含むタンパク質の血清半減期は、FcRnに対するFc領域の結合親和性を増加させることにより、増加させることができる。用語「抗体半減期」は、本明細書で使用されるとき、抗体分子のその投与後の平均生存時間の尺度である抗体の薬物動態特性を意味する。抗体半減期は、例えば血清中(すなわち循環半減期)又は他の組織で計測するときに、既知量の免疫グロブリンの50パーセントを患者の体内(又は他の哺乳類)又はその特定のコンパートメントから排出するのに必要な時間として表すことができる。半減期は免疫グロブリン毎又は免疫グロブリンのクラス毎に異なり得る。一般に、抗体半減期が増加すると、投与された抗体についての循環中の平均滞留時間(MRT)が増加する。
半減期の増加により、患者に投与する薬物の量を低減するとともに投与頻度を低減することが可能になる。抗体の血清半減期を増加させるためには、例えば米国特許第5,739,277号明細書に記載されるとおり、抗体(特に抗原結合断片)にサルベージ受容体結合エピトープを組み込んでもよい。本明細書で使用されるとき、用語「サルベージ受容体結合エピトープ」は、IgG分子の生体内血清半減期の増加に関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)のFc領域のエピトープを指す。或いは、半減期が増加した本開示の抗体を、Fc受容体とFcRn受容体との間の相互作用に関与すると特定されたアミノ酸残基を修飾することにより作成してもよい(例えば、米国特許第6,821,505号明細書及び同第7,083,784号明細書;及び国際公開第09/058492号パンフレットを参照のこと)。加えて、本開示の抗体の半減期は、当該技術分野で広く利用されている技術によってPEG又はアルブミンとコンジュゲートすることにより増加させてもよい。一部の実施形態では、本開示のFc変異領域を含む抗体は、天然Fc領域を含む抗体と比較したとき、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約65%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約125%、約150%又はそれ以上の半減期の増加を有する。一部の実施形態では、Fc変異領域を含む抗体は、天然Fc領域を含む抗体と比較したとき、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍又はそれ以上、又は2倍〜10倍、又は5倍〜25倍、又は15倍〜50倍の半減期の増加を有する。
一実施形態では、本開示はFc変異体を提供し、ここではFc領域が、Kabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの221、225、228、234、235、236、237、238、239、240、241、243、244、245、247、250、251、252、254、255、256、257、262、263、264、265、266、267、268、269、279、280、284、292、296、297、298、299、305、308、313、316、318、320、322、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、339、341、343、370、373、378、392、416、419、421、428、433、434、435、436、440、及び443からなる群から選択される1つ以上の位置に修飾(例えば、アミノ酸置換、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失)を含む。場合により、Fc領域は、当業者に公知の追加的及び/又は代替的な位置に修飾を含み得る(例えば、米国特許第5,624,821号明細書;同第6,277,375号明細書;同第6,737,056号明細書;同第7,083,784号明細書;同第7,317,091号明細書;同第7,217,797号明細書;同第7,276,585号明細書;同第7,355,008号明細書;米国特許出願公開第2002/0147311号明細書;同第2004/0002587号明細書;同第2005/0215768号明細書;同第2007/0135620号明細書;同第2007/0224188号明細書;同第2008/0089892号明細書;国際公開第94/29351号パンフレット;及び国際公開第99/58572号パンフレットを参照のこと)。さらに、有用なアミノ酸位置及び特定の置換が、米国特許第6,737,056号明細書の表2、及び表6〜表10;米国特許出願公開第2006/024298号明細書の図41に提示される表;米国特許出願公開第2006/235208号明細書の図5、図12、及び図15に提示される表;米国特許出願公開第2006/0173170号明細書の図8、図9及び図10に提示される表、並びに国際公開第09/058492号パンフレットの図8〜図10、図13及び図14に提示される表に例示される。
具体的な実施形態において、本開示はFc変異体を提供し、ここではFc領域が、Kabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの221K、221Y、225E、225K、225W、228P、234D、234E、234N、234Q、234T、234H、234Y、234I、234V、234F、235A、235D、235R、235W、235P、235S、235N、235Q、235T、235H、235Y、235I、235V、235E、235F、236E、237L、237M、237P、239D、239E、239N、239Q、239F、239T、239H、239Y、240I、240A、240T、240M、241W、241L、241Y、241E、241R、243W、243L、243Y、243R、243Q、244H、245A、247L、247V、247G、250E、250Q、251F、252L、252Y、254S、254T、255L、256E、256F、256M、257C、257M、257N、262I、262A、262T、262E、263I、263A、263T、263M、264L、264I、264W、264T、264R、264F、264M、264Y、264E、265A、265G、265N、265Q、265Y、265F、265V、265I、265L、265H、265T、266I、266A、266T、266M、267Q、267L、268E、269H、269Y、269F、269R、270E、280A、284M、292P、292L、296E、296Q、296D、296N、296S、296T、296L、296I、296H、296G、297S、297D、297E、298A、298H、298I、298T、298F、299I、299L、299A、299S、299V、299H、299F、299E、305I、308F313F、316D、318A、318S、320A、320S、322A、322S、325Q、325L、325I、325D、325E、325A、325T、325V、325H、326A、326D、326E、326G、326M、326V、327G、327W、327N、327L、328S、328M、328D、328E、328N、328Q、328F、328I、328V、328T、328H、328A、329F、329H、329Q、330K、330G、330T、330C、330L、330Y、330V、330I、330F、330R、330H、331G、331A、331L、331M、331F、331W、331K、331Q、331E、331S、331V、331I、331C、331Y、331H、331R、331N、331D、331T、332D、332S、332W、332F、332E、332N、332Q、332T、332H、332Y、332A、333A、333D、333G、333Q、333S、333V、334A、334E、334H、334L、334M、334Q、334V、334Y、339T、370E、370N、378D、392T、396L、416G、419H、421K、428L、428F、433K、433L、434A、424F、434W、434Y、436H、440Y及び443Wからなる群から選択される少なくとも1つの置換を含む。場合により、Fc領域は、限定はされないが、米国特許第6,737,056号明細書の表2、及び表6〜表10;米国特許出願公開第2006/024298号明細書の図41に提示される表;米国特許出願公開第2006/235208号明細書の図5、図12、及び図15に提示される表;米国特許出願公開第2006/0173170号明細書の図8、図9及び図10に提示される表、並びに国際公開第09/058492号パンフレットの図8、図9及び図10に提示される表に例示されるものを含む当業者に公知の追加的及び/又は代替的なアミノ酸置換を含み得る。
具体的な実施形態において、本開示はFc変異抗体を提供し、ここではFc領域が、Kabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの228、234、235及び331からなる群から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの修飾(例えば、アミノ酸置換、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失)を含む。一実施形態では、修飾は、Kabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの228P、234F、235E、235F、235Y、及び331Sからなる群から選択される少なくとも1つの置換である。
別の具体的な実施形態において、本開示はFc変異抗体を提供し、ここではFc領域がIgG4 Fc領域であり、且つKabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの228及び235からなる群から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの修飾を含む。さらに別の具体的な実施形態において、Fc領域はIgG4 Fc領域であり、天然に存在しないアミノ酸は、Kabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの228P、235E及び235Yからなる群から選択される。
別の具体的な実施形態において、本開示はFc変異体を提供し、ここではFc領域が、Kabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの239、330及び332からなる群から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸を含む。一実施形態では、修飾は、Kabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの239D、330L、330Y、及び332Eからなる群から選択される少なくとも1つの置換である。
具体的な実施形態において、本開示はFc変異抗体を提供し、ここではFc領域が、Kabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの252、254、及び256からなる群から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸を含む。一実施形態では、修飾は、Kabatに示されるとおりのEUインデックスにより付番したときの252Y、254T及び256Eからなる群から選択される少なくとも1つの置換である。米国特許第7,083,784号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
特定の実施形態では、IgG抗体により誘発されるエフェクター機能は、タンパク質のFc領域に連結した炭水化物部分に強く依存する(Claudia Ferrara et al.,2006,Biotechnology and Bioengineering 93:851−861)。従って、Fc領域のグリコシル化を、エフェクター機能が増加又は低下するように修飾することができる(例えば、Umana et al,1999,Nat.Biotechnol 17:176−180;Davies et al.,2001,Biotechnol Bioeng 74:288−294;Shields et al,2002,J Biol Chem 277:26733−26740;Shinkawa et al.,2003,J Biol Chem 278:3466−3473;米国特許第6,602,684号明細書;同第6,946,292号明細書;同第7,064,191号明細書;同第7,214,775号明細書;同第7,393,683号明細書;同第7,425,446号明細書;同第7,504,256号明細書;米国特許出願公開第2003/0157108号明細書;同第2003/0003097号明細書;同第2009/0010921号明細書;POTILLEGENT(商標)技術(Biowa,Inc.Princeton,N.J.);GLYCOMAB(商標)グリコシル化操作技術(GLYCART biotechnology AG,Zurich,スイス)を参照のこと)。従って、一実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体のFc領域は、アミノ酸残基の改変されたグリコシル化を含む。別の実施形態では、アミノ酸残基の改変されたグリコシル化によりエフェクター機能が低下する。別の実施形態では、アミノ酸残基の改変されたグリコシル化によりエフェクター機能が増加する。具体的な実施形態において、Fc領域はフコシル化が低下している。別の実施形態では、Fc領域は非フコシル化型である(例えば、米国特許出願公開第2005/0226867号明細書を参照のこと)。一態様において、宿主細胞(例えば、CHO細胞、コウキクサ(Lemna minor))で作成されるとおりの、エフェクター機能、特にADCCが増加したこれらの抗体は、親細胞によって産生される抗体と比較して、100倍超高いADCCを有する高度に脱フコシル化した抗体を産生するように操作される(Mori et al.,2004,Biotechnol Bioeng 88:901−908;Cox et al.,2006,Nat Biotechnol.,24:1591−7)。
IgG分子上のオリゴ糖類に対するシアル酸の付加は、その抗炎症活性を増進し、且つその細胞傷害性を改変し得る(Keneko et al.,Science,2006,313:670−673;Scallon et al.,Mol.Immuno.2007 Mar;44(7):1524−34)。上記に参照する研究は、シアリル化を増加させたIgG分子が抗炎症特性を有する一方、シアリル化を低減したIgG分子は免疫賦活特性が増加する(例えば、ADCC活性が増加する)ことを実証している。従って、抗体を、特定の治療適用に適切なシアリル化プロファイルで修飾することができる(米国特許出願公開第2009/0004179号明細書及び国際公開第2007/005786パンフレット)。
一実施形態では、本開示の抗体のFc領域は、天然Fc領域と比較して改変されたシアリル化プロファイルを含む。一実施形態では、本開示の抗体のFc領域は、天然Fc領域と比較して増加したシアリル化プロファイルを含む。別の実施形態では、本開示の抗体のFc領域は、天然Fc領域と比較して減少したシアリル化プロファイルを含む。
一実施形態では、本開示のFc変異体は、Ghetie et al.,1997,Nat Biotech.15:637−40;Duncan et al,1988,Nature 332:563−564;Lund et al.,1991,J.Immunol 147:2657−2662;Lund et al,1992,Mol Immunol 29:53−59;Alegre et al,1994,Transplantation 57:1537−1543;Hutchins et al.,1995,Proc Natl.Acad Sci U S A 92:11980−11984;Jefferis et al,1995,Immunol Lett.44:111−117;Lund et al.,1995,Faseb J 9:115−119;Jefferis et al,1996,Immunol Lett 54:101−104;Lund et al,1996,J Immunol 157:4963−4969;Armour et al.,1999,Eur J Immunol 29:2613−2624;Idusogie et al,2000,J Immunol 164:4178−4184;Reddy et al,2000,J Immunol 164:1925−1933;Xu et al.,2000,Cell Immunol 200:16−26;Idusogie et al,2001,J Immunol 166:2571−2575;Shields et al.,2001,J Biol Chem 276:6591−6604;Jefferis et al,2002,Immunol Lett 82:57−65;Presta et al.,2002,Biochem Soc Trans 30:487−490);米国特許第5,624,821号明細書;同第5,885,573号明細書;同第5,677,425号明細書;同第6,165,745号明細書;同第6,277,375号明細書;同第5,869,046号明細書;同第6,121,022号明細書;同第5,624,821号明細書;同第5,648,260号明細書;同第6,528,624号明細書;同第6,194,551号明細書;同第6,737,056号明細書;同第7,122,637号明細書;同第7,183,387号明細書;同第7,332,581号明細書;同第7,335,742号明細書;同第7,371,826号明細書;同第6,821,505号明細書;同第6,180,377号明細書;同第7,317,091号明細書;同第7,355,008号明細書;米国特許出願公開第2004/0002587号明細書;及び国際公開第99/58572号パンフレットに開示されるものなどの他の公知のFc変異体と組み合わされてもよい。Fcドメインの他の修飾及び/又は置換及び/又は付加及び/又は欠失が、当業者には容易に明らかであろう。
特定の実施形態では、変異Fc領域を含む抗CXCR4抗体は、表1に掲載されるか、又は表7若しくは表8に開示される抗体の可変重鎖及び/又は可変軽鎖を含むことができる。詳細な実施形態において、変異IgG1 Fc領域を含む抗CXCR4抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、以下に対応する:
抗CXCR4 IgG1 TM重鎖(6C7−TM):
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSNYVMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLSLQMNSLRAEDTAVYYCERGEGYYGSGSRYRGYYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号27)
抗CXCR4軽鎖(6C7−TM):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRTDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQHNSYPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号28)
B.グリコシル化
グリコシル化が抗体のエフェクター機能を改変する能力に加えて、可変領域の修飾されたグリコシル化は、標的抗原に対する抗体の親和性を改変することができる。一実施形態では、本抗体の可変領域におけるグリコシル化パターンが修飾される。例えば、非グリコシル化(aglycoslated)抗体を作製することができる(すなわち、この抗体はグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば標的抗原に対する抗体の親和性が増加するように改変することができる。かかる炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1つ以上のグリコシル化部位を改変して達成することができる。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらし、それにより当該部位のグリコシル化を除去する1つ以上のアミノ酸置換を作製することができる。かかる非グリコシル化により、抗原に対する抗体の親和性が増加し得る。かかる手法は、米国特許第5,714,350号明細書及び同第6,350,861号明細書にさらに詳細に記載されている。Fc領域に存在するグリコシル化部位(例えば、IgGのアスパラギン297)の除去をもたらす1つ以上のアミノ酸置換もまた作製することができる。さらには、非グリコシル化抗体は、必須のグリコシル化機構を欠く細菌細胞において産生され得る。
C.抗体コンジュゲート
特定の実施形態では、本開示の抗体は、当該技術分野において公知の方法を用いて物質とコンジュゲート又は共有結合される。一実施形態では、結合される物質は、治療剤、検出可能標識(本明細書ではレポーター分子とも称される)又は固体支持体である。抗体との結合に好適な物質としては、限定はされないが、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ハプテン、薬物、ホルモン、脂質、脂質集合体、合成高分子、高分子マイクロパーティクル、生体細胞、ウイルス、フルオロフォア、発色団、色素、毒素、ハプテン、酵素、抗体、抗原結合断片、放射性同位元素、固体マトリックス、半固体マトリックス及びそれらの組み合わせが挙げられる。別の物質を抗体にコンジュゲート又は共有結合する方法は、当該技術分野において公知である。
特定の実施形態では、本開示の抗体は固体支持体にコンジュゲートされる。抗体は、スクリーニング及び/又は精製及び/又は製造プロセスの一部として固体支持体にコンジュゲートされてもよい。或いは本開示の抗体は、診断方法又は組成物の一部として固体支持体にコンジュゲートされてもよい。本開示での使用に好適な固体支持体は、典型的には液相に対して実質的に不溶性である。多数の支持体が利用可能であり、当業者には周知されている。従って、固体支持体には、固体及び半固体マトリックス、例えばエーロゲル及びハイドロゲル、樹脂、ビーズ、バイオチップ(薄膜被覆バイオチップを含む)、マイクロ流体チップ、シリコンチップ、マルチウェルプレート(マイクロタイタープレート又はマイクロプレートとも称される)、膜、導電性及び非導電性金属、ガラス(顕微鏡スライドを含む)及び磁気支持体が含まれる。固体支持体のより具体的な例には、シリカゲル、高分子膜、粒子、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲル、多糖、例えばセファロース、ポリ(アクリレート)、ポリスチレン、ポリ(アクリルアミド)、ポリオール、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、デンプン、フィコール(FICOLL)、ヘパリン、グリコーゲン、アミロペクチン、マンナン、イヌリン、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン(ポリ(エチレングリコール)を含む)、ナイロン、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、デンプンなどが含まれる。
一部の実施形態では、固体支持体は、限定はされないが、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、チオール、アルデヒド、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミド、尿素、カーボネート、カルバメート、イソシアネート、スルホン、スルホネート、スルホンアミド、スルホキシド等を含めた、本開示の抗体を結合するための反応性官能基を含み得る。
好適な固相支持体は、所望の最終用途及び様々な合成プロトコルの適合性を基準として選択することができる。例えば、本開示の抗体を固体支持体に結合するのにアミド結合形成が望ましい場合、ポリスチレン(例えば、Bachem Inc.、Peninsula Laboratories等から入手可能なPAM樹脂)、POLYHIPE(商標)樹脂(Aminotech,カナダから調達可能)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratoriesから調達可能)、ポリエチレングリコールにグラフトされたポリスチレン樹脂(TENTAGEL(商標)、Rapp Polymere,Tubingen,ドイツ)、ポリジメチルアクリルアミド樹脂(Milligen/Biosearch,Californiaから入手可能)、又はPEGAビーズ(Polymer Laboratoriesから調達可能)などの、概してペプチド合成に有用な樹脂が用いられ得る。
特定の実施形態では、本開示の抗体は、診断及びその他の、抗体及び/又はその会合リガンドが検出され得るアッセイを目的として、標識にコンジュゲートされる。抗体にコンジュゲートされ、且つ本明細書に記載される本方法及び組成物で用いられる標識は、任意の化学的部分である。標識としては、限定なしに、発色団、フルオロフォア、蛍光タンパク質、リン光色素、タンデム色素、粒子、ハプテン、酵素及び放射性同位元素が挙げられる。
特定の実施形態では、抗CXCR4抗体はフルオロフォアにコンジュゲートされる。このように、本開示の抗体を標識するのに用いられるフルオロフォアには、限定なしに;ピレン(米国特許第5,132,432号明細書に開示される対応する誘導体化合物のいずれかを含む)、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール又はベンズインドール、オキサゾール又はベンゾオキサゾール、チアゾール又はベンゾチアゾール、4−アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)、シアニン(米国特許第6,977,305号明細書及び同第6,974,873号明細書における任意の対応する化合物を含む)、カルボシアニン(米国特許出願第09/557,275号明細書;米国特許第4,981,977号明細書;同第5,268,486号明細書;同第5,569,587号明細書;同第5,569,766号明細書;同第5,486,616号明細書;同第5,627,027号明細書;同第5,808,044号明細書;同第5,877,310号明細書;同第6,002,003号明細書;同第6,004,536号明細書;同第6,008,373号明細書;同第6,043,025号明細書;同第6,127,134号明細書;同第6,130,094号明細書;同第6,133,445号明細書;及び国際公開第02/26891号パンフレット、国際公開第97/40104号パンフレット、国際公開第99/51702号パンフレット、国際公開第01/21624号パンフレット;欧州特許出願公開第1 065 250 A1号明細書における任意の対応する化合物を含む)、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチル酸塩、アントラニル酸塩、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダセン(米国特許第4,774,339号明細書;同第5,187,288号明細書;同第5,248,782号明細書;同第5,274,113号明細書;及び同第5,433,896号明細書に開示される任意の対応する化合物を含む)、キサンテン(米国特許第6,162,931号明細書;同第6,130,101号明細書;同第6,229,055号明細書;同第6,339,392号明細書;同第5,451,343号明細書;同第5,227,487号明細書;同第5,442,045号明細書;同第5,798,276号明細書;同第5,846,737号明細書;同第4,945,171;米国特許出願第09/129,015号明細書及び同第09/922,333号明細書に開示される任意の対応する化合物を含む)、オキサジン(米国特許第4,714,763号明細書に開示される任意の対応する化合物を含む)又はベンゾキサジン、カルバジン(米国特許第4,810,636号明細書に開示される任意の対応する化合物を含む)、フェナレノン、クマリン(米国特許第5,696,157号明細書;同第5,459,276号明細書;同第5,501,980号明細書及び同第5,830,912号明細書に開示される対応する化合物を含む)、ベンゾフラン(米国特許第4,603,209号明細書及び同第4,849,362号明細書に開示される対応する化合物を含む)及びベンズフェナレノン(米国特許第4,812,409号明細書に開示される任意の対応する化合物を含む)及びこれらの誘導体が含まれる。本明細書で使用されるとき、オキサジンには、レゾルフィン(米国特許第5,242,805号明細書に開示される任意の対応する化合物を含む)、アミノオキサジノン、ジアミノオキサジン、及びこれらのベンゾ置換類似体が含まれる。
具体的な実施形態において、本明細書に記載される抗体にコンジュゲートされるフルオロフォアには、キサンテン(ロドール(rhodol)、ローダミン、フルオレセイン及びこれらの誘導体)、クマリン、シアニン、ピレン、オキサジン及びボラポリアザインダセンが含まれる。他の実施形態では、かかるフルオロフォアは、スルホン化キサンテン、フッ素化キサンテン、スルホン化クマリン、フッ素化クマリン及びスルホン化シアニンである。また、Alexa Fluor、DyLight、Cy Dyes、BODIPY、オレゴングリーン(Oregon Green)、パシフィックブルー(Pacific Blue)、IRDyes、FAM、FITC、及びROXの商標で販売され、且つそのように一般に知られている色素も含まれる。
抗CXCR4抗体に結合するフルオロフォアの選択が、コンジュゲート抗体の吸収及び蛍光発光特性を決定し得る。抗体及び抗体結合リガンドに用いることのできるフルオロフォア標識の物理的特性としては、限定はされないが、スペクトル特性(吸収、発光及びストークスシフト)、蛍光強度、寿命、偏光及び光退色速度、又はそれらの組み合わせが挙げられる。これらの物理的特性は全て、あるフルオロフォアを別のフルオロフォアと区別するために用いることができ、従って多重化解析を可能にする。特定の実施形態では、フルオロフォアは480nmより大きい波長に吸収極大を有する。他の実施形態では、フルオロフォアは、488nm〜514nm若しくはその近傍(アルゴンイオンレーザー励起源の出力による励起に特に好適)又は546nm近傍(水銀アークランプによる励起に特に好適)を吸収する。他の実施形態ではフルオロフォアは、組織又は全生物体適用にNIR(近赤外領域)で発光することができる。蛍光標識の他の望ましい特性としては、例えば抗体の標識が細胞又は生物体(例えば、生きている動物)で実施される場合に、細胞透過性及び低毒性を挙げることができる。
特定の実施形態では、酵素が標識であり、抗CXCR4抗体にコンジュゲートされる。酵素は、検出可能なシグナルの増幅を達成することができ、アッセイ感度の増加がもたらされるため、望ましい標識である。酵素それ自体は検出可能な反応を生じないが、適切な基質を接触させると基質を分解する働きをし、それにより変換された基質が蛍光、比色又は発光シグナルを生じる。標識試薬の一つの酵素が複数の基質についての検出可能なシグナルへの変換をもたらし得るため、酵素は検出可能なシグナルを増幅する。酵素基質は、好ましい計測可能な生成物、例えば比色、蛍光又は化学発光生成物が得られるように選択される。かかる基質は当該技術分野で広範に用いられており、当業者には周知されている。
一実施形態では、比色基質又は蛍光発生基質及び酵素の組み合わせは、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのオキシドレダクターゼと、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)及び3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)などの識別性のある色(それぞれ褐色及び赤色)を生じる基質とを使用する。検出可能な生成物を生じる他の比色オキシドレダクターゼ基質としては、限定はされないが、2,2−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、o−ジアニシジン、5−アミノサリチル酸、4−クロロ−1−ナフトールが挙げられる。蛍光発生基質としては、限定はされないが、ホモバニリン酸又は4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸、還元型フェノキサジン及び還元型ベンゾチアジン、例えばAMPLEX(登録商標)レッド試薬及びその変種(米国特許第4,384,042号明細書)及び還元型ジヒドロキサンテン、例えばジヒドロフルオレセイン(米国特許第6,162,931号明細書)及びジヒドロローダミン、例えばジヒドロローダミン123が挙げられる。チラミドであるペルオキシダーゼ基質(米国特許第5,196,306号明細書;同第5,583,001号明細書及び同第5,731,158号明細書)は、酵素が作用する前に本質的に検出可能であり得るが、チラミドシグナル増幅(TSA)として記載される過程でペルオキシダーゼの作用によって「その場に固定」される点で、ペルオキシダーゼ基質のユニークなクラスに相当する。これらの基質は、細胞、組織又はアレイである試料中の標的を、後に顕微鏡法、フローサイトメトリー、光学走査及び蛍光定量法によって検出するために標識するのに広範に利用されている。
別の実施形態において、比色(及びある場合には蛍光発生)基質と酵素との組み合わせは、ホスファターゼ酵素、例えば酸性ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ又はかかるホスファターゼの組換え型を、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、6−クロロ−3−インドリルリン酸、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルリン酸、p−ニトロフェニルリン酸、又はo−ニトロフェニルリン酸などの比色基質と組み合わせて、又は4−メチルウンベリフェリルリン酸、6,8−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリニルリン酸(DiFMUP、米国特許第5,830,912号明細書)、フルオレセイン二リン酸、3−O−メチルフルオレセインリン酸、レゾルフィンリン酸、9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)リン酸(DDAOリン酸)、又はELF 97、ELF 39若しくは関連するリン酸(米国特許第5,316,906号明細書及び同第5,443,986号明細書)などの蛍光発生基質と組み合わせて用いる。
グリコシダーゼ、特にβ−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ及びβ−グルコシダーゼが、さらなる好適な酵素である。適切な比色基質としては、限定はされないが、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−D−ガラクトピラノシド(X−gal)及び同様のインドリルガラクトシド、グルコシド、及びグルクロニド、o−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(ONPG)及びp−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシドが挙げられる。一実施形態では、蛍光発生基質には、レゾルフィンβ−D−ガラクトピラノシド、フルオレセインジガラクトシド(FDG)、フルオレセインジグルクロニド及びこれらの構造的変種(米国特許第5,208,148号明細書;同第5,242,805号明細書;同第5,362,628号明細書;同第5,576,424号明細書及び同第5,773,236号明細書)、4−メチルウンベリフェリルβ−D−ガラクトピラノシド、カルボキシウンベリフェリルβ−D−ガラクトピラノシド及びフッ素化クマリンβ−D−ガラクトピラノシド(米国特許第5,830,912号明細書)が含まれる。
さらなる酵素としては、限定はされないが、コリンエステラーゼ及びペプチダーゼなどのヒドロラーゼ、グルコースオキシダーゼ及びシトクロムオキシダーゼなどのオキシダーゼ、及びそれに対する好適な基質が知られるレダクターゼが挙げられる。
一部のアッセイには、化学発光を生じる酵素及びその適切な基質が好ましい。それらとしては、限定はされないが、天然及び組換え形態のルシフェラーゼ及びエクオリンが挙げられる。ホスファターゼ、グリコシダーゼ及びオキシダーゼに対する化学発光生成基質、例えば、安定ジオキセタン、ルミノール、イソルミノール及びアクリジニウムエステルを含有するものが、さらに有用である。
別の実施形態では、ビオチンなどのハプテンもまた標識として利用される。ビオチンは、酵素系において検出可能なシグナルをさらに増幅するよう機能することができ、且つ単離目的でアフィニティークロマトグラフィーにおいて使用するタグとして機能することができるため、有用である。検出目的では、アビジン−HRPなどの、ビオチンに対して親和性を有する酵素コンジュゲートが用いられる。続いてペルオキシダーゼ基質を添加すると、検出可能なシグナルが生成される。
ハプテンにはまた、ホルモン、天然に存在する及び合成の薬物、汚染物、アレルゲン、作用因子分子、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、ペプチド、化学的中間体、ヌクレオチドなども含まれる。
特定の実施形態では、蛍光タンパク質が標識として抗体にコンジュゲートされてもよい。蛍光タンパク質の例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びフィコビリタンパク質及びこれらの誘導体が含まれる。蛍光タンパク質、特にフィコビリタンパク質は、タンデム色素で標識された標識試薬を作り出すのに特に有用である。このようなタンデム色素は、より大きいストークスシフトの達成を目的として蛍光タンパク質及びフルオロフォアを含み、ここでは発光スペクトルが蛍光タンパク質の吸収スペクトルの波長からさらに遠くにシフトする。これは、試料中の低量の標的を検出するのに特に有利であり、ここでは放たれる蛍光の光が最大限最適化され、換言すれば、放たれる光がほとんど乃至全く蛍光タンパク質に再吸収されない。これが機能するには、蛍光タンパク質とフルオロフォアとがエネルギー伝達対として働き、ここで蛍光タンパク質はフルオロフォアが吸収する波長で発光し、次にそのフルオロフォア(fluorphore)が、その蛍光タンパク質のみで達成され得た蛍光タンパク質からさらに遠い波長を発光する。特に有用な組み合わせは、米国特許第4,520,110号明細書;同第4,859,582号明細書;同第5,055,556号明細書に開示されるフィコビリタンパク質と、米国特許第5,798,276号明細書に開示されるスルホローダミンフルオロフォア、又は米国特許第6,977,305号明細書及び同第6,974,873号明細書に開示されるスルホン化シアニンフルオロフォア;又は米国特許第6,130,101号明細書に開示されるスルホン化キサンテン誘導体、及び米国特許第4,542,104号明細書に開示されるそれらの組み合わせである。或いは、フルオロフォアがエネルギー供与体として働き、且つ蛍光タンパク質がエネルギー受容体である。
特定の実施形態では、標識は放射性同位体である。好適な放射性物質の例としては、限定はされないが、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(111In,、112In、113mIn、115mIn)、テクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(135Xe)、フッ素(18F)、153SM、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re,142Pr、105Rh及び97Ruが挙げられる。
(v)使用方法
(a)診断的使用方法
特定の実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体(断片を含む)及びその組成物は、インビボ及び/又はインビトロで細胞及び組織におけるCXCR4発現の検出又はCXCR4発現細胞及び組織のイメージングに使用され得る。特定の実施形態では、抗体はヒト抗体であり、かかる抗体は、ヒト患者の生体におけるCXCR4発現のイメージングに用いられる。本明細書に記載される抗CXCR4抗体又は抗原結合断片がヒトCXCR4に特異的に結合することを考えれば、これらの抗体は、患者生体におけるCXCR4発現の検出又はイメージングに用いることができる。
例として、例えば試験する試料を、場合により対照試料と共に、抗体とCXCR4との間での複合体形成を可能にする条件下で抗体と接触させることにより、診断用途を実現することができる。次に複合体形成が(例えばELISAを用いて、又は抗体に結合した部分を検出するイメージングにより)検出される。試験試料と共に対照試料を用いる場合、複合体は両方の試料で検出され、試料間で複合体形成に統計的に有意な差があれば、試験試料中にCXCR4が存在することが示される。
一実施形態では、本開示は、CXCR4を含む疑いがある試料におけるCXCR4の存在を決定する方法を提供し、前記方法は、試料を本開示の抗CXCR4抗体に曝露する工程と、抗体と試料中のCXCR4との結合を決定する工程とを含み、ここで抗体と試料中のCXCR4との結合が、試料中にCXCR4が存在することを示す。一実施形態では、試料は生体試料である。
特定の実施形態では、抗CXCR4抗体を使用することにより、インビボ診断アッセイを用いてCXCR4の過剰発現又は増幅を検出してもよい。一実施形態では、抗CXCR4抗体が試料に添加され、ここで抗体は検出しようとするCXCR4と結合し、検出可能標識(例えば放射性同位体標識又は蛍光標識)でタグ標識されることで、患者が標識の局在化について体外走査される。
或いは、又は加えて、ホルマリン固定パラフィン包埋組織でINFORM(商標)(Ventana,Ariz.により販売される)又はPATHVISION(商標)(Vysis,Ill.)などのFISHアッセイを実行して、試料におけるCXCR4発現又は過剰発現の程度(ある場合には)を決定してもよい。
(b)治療的使用法
特定の態様において、本開示の抗CXCR4抗体(抗原結合断片を含む)及びその組成物は、それを必要とする対象における癌の予防及び/又は治療のために投与され得る。本開示は、抗CXCR4抗体の治療有効量を哺乳類に投与する工程を含む、癌を予防、治療、管理、改善、又は阻害する方法及び/又は哺乳類における疾患の1つ以上の症状を予防及び/又は緩和する方法を包含する。症状には、例えば、癌に伴う痛み、又は癌の存在により破壊された生理学的機能の徴候が含まれ得る。症状は、例えば、生理学的機能の計測にルーチンに用いられる実験室アッセイか、又は痛みなどの症状の計測に用いられる標準的な患者質問表により、計測することができる。
特定の態様において、本開示は、それを必要とする対象におけるヒト癌又は癌細胞成長又は腫瘍成長又は腫瘍転移を治療及び/又は予防する方法を提供し、これは、本開示の抗体又は抗原結合断片の治療有効量を前記対象に投与する工程を含む。特定の実施形態では、癌は卵巣癌である。他の実施形態では、癌は乳癌である。さらに他の実施形態では、癌は前立腺癌又は肺癌である。さらに他の実施形態では、癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBL)、濾胞性リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫又は慢性リンパ性白血病(CLL)又は慢性骨髄性白血病(CML)である。他の実施形態では、この方法は、骨転移性癌、特に骨転移性前立腺癌又は乳癌を治療することを含む。特定の実施形態では、この方法は、卵巣癌、又は前述の癌のいずれかを治療するための治療レジメンの一部である。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片が投与されることにより、血管新生、例えば癌又は腫瘍に関連する血管新生が阻害される。本開示は、これらの癌が、抗CXCR4抗体を単剤療法として用いて、又は抗CXCR4を、1つ以上の他の薬剤又は治療モダリティが投与される併用療法の一部として用いて治療され得ることを企図する。併用療法の場合、他の薬剤又はモダリティは、同じ又は異なる時点で投与され得る。特定の実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体は、特定の癌の標準治療との併用で(投与が前、後又は同時であるにしろ)用いられる。
特定の態様において、本開示は、ヒトCXCR4を発現する癌細胞の細胞成長及び/又は転移を阻害する方法を提供し、これは、細胞を本開示の抗体又は抗原結合断片と接触させるか、又はその他、抗体又は抗原結合断片を、それを必要とする患者に投与する工程を含む。
他の態様において、本開示は、幹細胞動員を増加させる方法を提供する。かかる方法は、移植前又は移植後に用いられる。
本明細書に記載される構造的及び機能的特徴の任意の1つ以上を有する抗CXCR4抗体又は抗原結合断片のいずれかを、それを必要とするヒト又は動物患者を治療する方法において用いることができる。本明細書のこの部分全体を通して、本開示は、本明細書に記載される構造的及び/又は機能的特徴の任意の1つ以上を有する抗体を含め、本明細書に開示されるCXCR4抗体又は抗原結合断片のいずれも、それを必要とする患者の治療方法において用い得ることを企図することは理解されなければならない。
抗体は、単独で用いられても、又は治療される特定の根底にある癌に特異的な治療レジメンの一部として用いられてもよい。例えば、用いられ得るさらなる治療モダリティとしては、限定はされないが、他の薬剤、放射線、手術、鍼、マッサージ、ホルモン療法、麻薬、鎮痛薬などが挙げられる。それに加えて又は代えて、抗体は、単独で用いられても、又は癌の症状、例えば痛みを管理するためのレジメンの一部として用いられてもよい。
本明細書で定義される抗腫瘍治療は、単独療法として適用されてもよく、又は本開示の化合物に加えて、他の薬剤、従来の手術、骨髄及び末梢血幹細胞移植又は放射線療法若しくは化学療法を含んでもよい。
特定の実施形態では、好適な治療レジメンは、本開示の抗CXCR4抗体に加えて、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤、COX−2剤、及び抗生物質剤並びにそれらの組み合わせから選択される薬学的特性を有する1つ以上の薬剤を含む。例として、特定の実施形態では、薬物は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害薬、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗代謝産物、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制薬、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、オキサリプラチン、ドキソルビシン及びこれらの類似体、及びこれらの組み合わせの群から選択され得る。
本明細書に記載される癌性病態のいずれかなどの、癌性病態を治療するための治療レジメンの一部として有用な薬剤のさらなる非限定的な例には、アントラサイクリン、例えばドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、イダルビシン、デトルビシン、カミノマイシン(caminomycin)、エピルビシン、エソルビシン、及びモルホリノ並びにその置換誘導体、組み合わせ及び修飾体が含まれる。本明細書に記載される癌性病態のいずれかなどの、癌性病態を治療するための治療レジメンの一部として有用な薬剤のさらなる例には、シスプラチナム、タキソール、カリケアマイシン、ビンクリスチン、シタラビン(Ara−C)、シクロホスファミド、プレドニゾン、ダウノルビシン、イダルビシン、フルダラビン、クロラムブシル、インターフェロンα、ヒドロキシウレア、テモゾロミド、サリドマイド、及びブレオマイシン、並びにこれらの誘導体、組み合わせ及び修飾体が含まれる。特定の実施形態では、薬剤は、ドキソルビシン、モルホリノドキソルビシン、又はモルホリノダウノルビシンである。本明細書で指摘するとおり、治療レジメンは、任意の1つ以上のさらなる薬剤及び/又は任意の1つ以上のさらなる治療モダリティを含み得る。しかしながら、特定の実施形態では、本開示の抗CXCR4抗体は単剤療法として投与され、レジメンはさらなる治療法を含まない。
簡潔に示すため、以下に、単独で、又は互いに及び/又は他の治療法と組み合わせて併用方法の一部として用いることのできる他の薬剤のリストを提供する。
好適な薬剤には、以下が含まれる:
(i)内科的腫瘍学で用いられるとおりの、他の抗増殖薬/抗悪性腫瘍薬及びそれらの組み合わせ、例えば、アルキル化剤(例えばシスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド(temozolamide)及びニトロソウレア);抗代謝産物(例えばゲムシタビン及び抗葉酸薬、例えば5−フルオロウラシル及びテガフールなどのフルオロピリミジン類、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、及びヒドロキシウレア);抗腫瘍抗生物質(例えば、アドリアマイシンなどのアントラサイクリン類、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン及びミトラマイシン);抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビンなどのビンカアルカロイド類及びタキソール及びタキソテールなどのタキソイド類及びポロキナーゼ阻害薬);及びトポイソメラーゼ阻害薬(例えば、エトポシド及びテニポシドなどのエピポドフィロトキシン類、アムサクリン、トポテカン及びカンプトテシン);
(ii)細胞増殖抑制薬、例えば、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン及びイドキシフェン(iodoxyfene))、抗アンドロゲン薬(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド及び酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニスト又はLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、リュープロレリン及びブセレリン)、プロゲストーゲン類(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害薬(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール(vorazole)及びエキセメスタン)及びフィナステリドなどの5−α−レダクターゼの阻害薬;
(iii)抗浸潤剤(例えば、4−(6−クロロ−2,3−メチレンジオキシアニリノ)−7−[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エトキシ]−5−テトラヒドロピラン−4−イルオキシキナゾリン(AZD0530;国際公開第01/94341号パンフレット)及びN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−{6−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ}チアゾール−5−カルボキサミド(ダサチニブ、BMS−354825;J.Med.Chem.,2004,47,6658−6661)などのc−Srcキナーゼファミリー阻害薬、及びマリマスタットなどのメタロプロテイナーゼ阻害薬、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体機能の阻害薬、又はカテプシン類の阻害薬、セリンプロテアーゼ類、例えばマトリプターゼ、ヘプシン、ウロキナーゼの阻害薬、ヘパラナーゼの阻害薬;
(iv)フルダラビン、2−クロロデオキシアデノシン、クロラムブシル又はドキソルビシンなどの細胞傷害剤、及びそれらの組み合わせ、例えばフルダラビン+シクロホスファミド、CVP:シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾン、ACVBP:ドキソルビシン+シクロホスファミド+ビンデシン+ブレオマイシン+プレドニゾン、CHOP:シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン、CNOP:シクロホスファミド+ミトキサントロン+ビンクリスチン+プレドニゾン、m−BACOD:メトトレキサート+ブレオマイシン+ドキソルビシン+シクロホスファミド+ビンクリスチン+デキサメタゾン+ロイコボリン、MACOP−B:メトトレキサート+ドキソルビシン+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾン固定用量+ブレオマイシン+ロイコボリン、又はProMACE CytaBOM:プレドニゾン+ドキソルビシン+シクロホスファミド+エトポシド+シタラビン+ブレオマイシン+ビンクリスチン+メトトレキサート+ロイコボリン;
(v)成長因子機能の阻害薬、例えばかかる阻害薬には、成長因子抗体及び成長因子受容体抗体(例えば抗erbB2抗体トラスツズマブ[ハーセプチン(Herceptin)(登録商標)]、抗EGFR抗体パニツムマブ、抗erbB1抗体セツキシマブ[エルビタックス(Erbitux)]及びStern et al.Critical reviews in oncology/haematology,2005,Vol.54,pp 11−29により開示される任意の成長因子又は成長因子受容体抗体)が含まれる;かかる阻害薬にはまた、チロシンキナーゼ阻害薬、例えば上皮成長因子ファミリーの阻害薬(例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、ZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI−774)及び6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(CI 1033)などのEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害薬、ラパチニブなどのerbB2チロシンキナーゼ阻害薬、肝実質細胞成長因子ファミリーの阻害薬、イマチニブなどの血小板由来成長因子ファミリーの阻害薬、セリン/スレオニンキナーゼの阻害薬(例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬などのRas/Rafシグナル伝達阻害薬、例えばソラフェニブ(BAY 43−9006))、MEK及び/又はAKTキナーゼを介した細胞シグナル伝達の阻害薬、肝実質細胞成長因子ファミリーの阻害薬、c−kit阻害薬、ablキナーゼ阻害薬、IGF受容体(インスリン様成長因子)キナーゼ阻害薬、オーロラキナーゼ阻害薬(例えばAZD1152、PH739358、VX−680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX−528及びAX39459)、CDK2及び/又はCDK4阻害薬などのサイクリン依存性キナーゼ阻害薬、並びにBcl−2、Bcl−XL、例えばABT−737などの生存シグナル伝達タンパク質の阻害薬も含まれる;
(vi)抗血管新生剤、例えば血管内皮増殖因子の効果を阻害するもの[例えば抗血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ(アバスチン(Avastin)(登録商標))並びに4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474;国際公開第01/32651号パンフレットの実施例2)、4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン−1−イルプロポキシ)−キナゾリン(AZD2171;国際公開第00/47212号パンフレットの実施例240)、バタラニブ(PTK787;国際公開第98/35985号パンフレット)及びSU11248(スニチニブ;国際公開第01/60814号パンフレット)などのVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬、国際公開第97/22596号パンフレット、国際公開第97/30035号パンフレット、国際公開第97/32856号パンフレット、国際公開第98/13354号パンフレット、国際公開第00/47212号パンフレット及び国際公開第01/32651号パンフレットに開示されるものなどの化合物、並びに他の機構により作用する化合物(例えばリノミド、インテグリンαvβ3機能の阻害薬及びアンジオスタチン)]又はコロニー刺激因子1(CSF1)若しくはCSF1受容体の効果を阻害するもの;
(vii)血管損傷剤、例えばコンブレタスタチンA4並びに国際公開第99/02166号パンフレット、国際公開第00/40529号パンフレット、国際公開第00/41669号パンフレット、国際公開第01/92224号パンフレット、国際公開第02/04434号パンフレット及び国際公開第02/08213号パンフレットに開示される化合物;
(viii)アンチセンス療法、例えば、抗bcl2アンチセンスであるG−3139(ゲナセンス(Genasense))などの、上記に列挙した標的を対象とするもの;
(ix)遺伝子療法アプローチ、例えば、異常なp53又は異常なBRCA1若しくはBRCA2などの異常な遺伝子を置換するアプローチ、GDEPT(gene directed enzyme pro drug therapy:遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)アプローチ、例えば、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼ又は細菌性ニトロレダクターゼ酵素を用いるもの、及び多剤耐性遺伝子療法などの、化学療法又は放射線療法に対する患者の忍容性を高めるアプローチが含まれる;及び
(x)免疫療法アプローチ、例えば、CD52を標的とするモノクローナル抗体であるアレムツズマブ(キャンパス1H(campath−1H)(登録商標))による治療、又はCD22を標的とする抗体による治療、患者腫瘍細胞の免疫原性を高めるエキソビボ及びインビボアプローチ、インターロイキン2、インターロイキン4又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインによるトランスフェクション、CTLA−4機能を阻害するモノクローナル抗体による治療などのT細胞アネルギーを低下させるアプローチ、サイトカイントランスフェクト樹状細胞などのトランスフェクト免疫細胞を用いるアプローチ、サイトカイントランスフェクト腫瘍細胞株を用いるアプローチ及び抗イディオタイプ抗体を用いるアプローチを含む;
(xi)ベルケイド(Velcade)(ボルテゾミブ(bortezomid))などのプロテアソーム阻害薬など、タンパク質分解の阻害薬。
薬剤及び/又は治療法の組み合わせの投与を伴う任意の治療方法について、かかるコンジョイント治療は、治療の個々の構成要素を同時に、逐次的に又は個別に投与することで実現され得る。かかる併用生成物は、以上に記載される投薬量範囲内の本開示の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、及びその承認された投薬量範囲内の他の薬学的に活性な作用剤を用いる。
本開示のなおもさらなる実施形態は、本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することにより、動物における増殖性疾患、血管新生疾患、細胞接着又は浸潤に関連する疾患を治療する方法を含む。特定の実施形態では、この方法は、増殖性疾患、血管新生疾患、細胞接着又は浸潤に関連する疾患の治療を必要とする動物を選択すること、及び本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、動物はヒトである。特定の実施形態では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、抗体は、2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8からなる群から選択される本開示の抗体である。他の実施形態では、抗体は、本明細書に開示されるCXCR4抗体の機能的及び/又は構造的特性の任意の1つ以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ等)を有する本開示の抗体である。
本開示のなおもさらなる実施形態は、本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することにより、動物におけるCXCR4により誘導される細胞増殖、血管新生、細胞接着及び/又は浸潤に関連する疾患を阻害する方法を含む。特定の実施形態では、この方法は、CXCR4により誘導される細胞増殖、血管新生、細胞接着及び/又は浸潤に関連する疾患の治療を必要とする動物を選択すること、及び本開示の抗体の治療有効用量を前記動物に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、動物はヒトである。特定の実施形態では、本開示の抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、本開示の抗体は、2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8からなる群から選択され得る。他の実施形態では、抗体は、本明細書に開示されるCXCR4抗体の機能的及び/又は構造的特性の任意の1つ以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ等)を有する本開示の抗体である。
本開示のなおもさらなる実施形態は、本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することにより、動物における腫瘍細胞の接着、運動性、浸潤、細胞転移、腫瘍成長又は血管新生を阻害する方法を含む。特定の実施形態では、この方法は、腫瘍細胞の接着、運動性、浸潤、細胞転移、腫瘍成長又は血管新生の治療を必要とする動物を選択すること、及び本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、動物はヒトである。特定の実施形態では、本開示の抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、本開示の抗体は、2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8からなる群から選択される。他の実施形態では、抗体は、本明細書に開示されるCXCR4抗体の機能的及び/又は構造的特性の任意の1つ以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ等)を有する本開示の抗体である。
本開示のなおもさらなる実施形態は、本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することにより、新生物疾患に罹患している動物を治療する方法を含む。特定の実施形態では、この方法は、新生物疾患の治療を必要とする動物を選択すること、及び本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することにより、非新生物疾患に罹患している動物を治療する方法を含む。特定の実施形態では、この方法は、非新生物疾患の治療を必要とする動物を選択すること、及び本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することにより、悪性腫瘍に罹患している動物を治療する方法を含む。特定の実施形態では、この方法は、悪性腫瘍の治療を必要とする動物を選択すること、及び本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することにより、CXCR4発現を伴う疾患又は病態に罹患している動物を治療する方法を含む。特定の実施形態では、この方法は、CXCR4発現を伴う疾患又は病態の治療を必要とする動物を選択すること、及び本開示の抗体の治療有効用量を動物に投与することをさらに含む。CXCR4発現は、例えば、末梢血単核球(PBMC)などの単離細胞に対するFACS分析によるか、又は抗CXCR4抗体を用いた単離細胞に対する免疫染色により、決定することができる。
治療可能な増殖性疾患、血管新生疾患、細胞接着又は浸潤に関連する疾患には、新生物疾患が含まれる。疾患に関連する細胞接着及び/又は浸潤及び/又は血管新生及び/又は増殖は、任意の異常な、望ましくない又は病的な細胞接着及び/又は浸潤及び/又は血管新生及び/又は増殖、例えば腫瘍に関連する細胞接着及び/又は浸潤及び/又は血管新生及び/又は増殖であり得る。
一実施形態では、本開示は、専らCXCR4に、又は一部でそれに依存する腫瘍を有する患者において、CXCR4の阻害に用いるのに好適である。特定の実施形態では、腫瘍は乳癌又は卵巣癌を伴う。
特定の実施形態では、この方法は、乳房、卵巣、肺、前立腺、CL、NHL、又はMMから選択される癌又は悪性腫瘍を治療する方法である。特定の実施形態では、この方法は、骨転移性前立腺癌又は乳癌を治療する方法である。
特定の実施形態では、本開示は、乳癌、卵巣癌、肺癌、又は前立腺癌を治療する方法を提供し、この方法は、本開示の抗CXCR4抗体を単剤療法として投与することを含む。他の実施形態では、本開示は、乳癌、卵巣癌、肺癌、又は前立腺癌を治療する方法を提供し、この方法は、本開示の抗CXCR4抗体を併用療法の一部として、特定の癌及び疾患病期に対する標準治療をなす1つ以上の薬剤と共に投与することを含む。特定の実施形態では、乳癌の併用療法は、パクリタキセル又はドセタキセルなどのタキサンを含む。特定の実施形態では、前立腺癌の併用は、パクリタキセル又はドセタキセルなどのタキサンを含む。特定の実施形態では、肺癌の併用療法は、シスプラチン、カルボプラチン又はオキサリプラチンなどの白金系薬物を含む。
特定の実施形態では、本開示は、CLL、NHL又はMMを治療する方法を提供し、この方法は、本開示の抗CXCR4抗体を単剤療法として投与することを含む。他の実施形態では、本開示は、CLL、NHL又はMMを治療する方法を提供し、この方法は、本開示の抗CXCR4抗体を併用療法の一部として、特定の癌及び疾患病期に対する標準治療をなす1つ以上の薬剤と共に投与することを含む。標準治療剤の例はリツキサン(Rituxan)(登録商標)である。
特定の実施形態では、本開示は、骨転移性前立腺癌又は乳癌を治療する方法を提供し、この方法は、本開示の抗CXCR4抗体を単剤療法として投与することを含む。他の実施形態では、本開示は、骨転移性前立腺癌又は乳癌を治療する方法を提供し、この方法は、本開示の抗CXCR4抗体を併用療法の一部として、特定の癌及び疾患病期に対する標準治療をなす1つ以上の薬剤と共に投与することを含む。
特定の実施形態では本開示は、専らCXCR4に、又は一部でそれに依存する炎症を有する患者において、CXCR4の阻害に用いるのに好適である。
本開示のなおもさらなる実施形態は、増殖性疾患、血管新生疾患、細胞接着又は浸潤に関連する疾患に罹患している動物の治療用医薬の調製における本開示の抗体の使用を含む。特定の実施形態では、この使用は、増殖性疾患、血管新生疾患、細胞接着又は浸潤に関連する疾患の治療を必要とする動物を選択することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、動物におけるCXCR4により誘導される細胞増殖、血管新生、細胞接着及び/又は浸潤に関連する疾患の治療用医薬の調製における本開示の抗体の使用を含む。特定の実施形態では、この使用は、CXCR4により誘導される増殖性疾患、血管新生疾患、細胞接着及び/又は浸潤に関連する疾患の治療を必要とする動物を選択することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、動物における腫瘍細胞の接着、運動性、浸潤、細胞転移、腫瘍成長又は血管新生の治療用医薬の調製における本開示の抗体の使用を含む。特定の実施形態では、この使用は、腫瘍細胞の接着、運動性、浸潤、細胞転移、腫瘍成長又は血管新生の治療を必要とする動物を選択することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、新生物疾患に罹患している動物の治療用医薬の調製における本開示の抗体の使用を含む。特定の実施形態では、この使用は、新生物疾患の治療を必要とする動物を選択することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、非新生物疾患に罹患している動物の治療用医薬の調製における本開示の標的結合剤又は抗体の使用を含む。特定の実施形態では、この使用は、非新生物疾患の治療を必要とする動物を選択することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、悪性腫瘍に罹患している動物の治療用医薬の調製における本開示の標的結合剤又は抗体の使用を含む。特定の実施形態では、この使用は、悪性腫瘍の治療を必要とする動物を選択することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、CXCR4発現を伴う疾患又は病態に罹患している動物の治療用医薬の調製における本開示の標的結合剤又は抗体の使用を含む。特定の実施形態では、この使用は、CXCR4発現を伴う疾患又は病態の治療を必要とする動物を選択することをさらに含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、増殖性疾患、血管新生疾患、細胞接着又は浸潤に関連する疾患に罹患している動物の治療用医薬として用いる本開示の標的結合剤又は抗体を含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、動物における腫瘍細胞の接着、運動性、浸潤、細胞転移、腫瘍成長又は血管新生に罹患している動物の治療用医薬として用いる本開示の標的結合剤又は抗体を含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、新生物疾患に罹患している動物の治療用医薬として用いる本開示の標的結合剤又は抗体を含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、悪性腫瘍に罹患している動物の治療用医薬として用いる本開示の標的結合剤又は抗体を含む。
本開示のなおもさらなる実施形態は、CXCR4発現を伴う疾患又は病態に罹患している動物の治療用医薬として用いる本開示の標的結合剤又は抗体を含む。
一実施形態では、増殖性疾患、血管新生疾患、細胞接着又は浸潤に関連する疾患;新生物疾患;悪性腫瘍;又はCXCR4発現を伴う疾患又は病態の治療は、前述の疾患又は病態のいずれかを管理、改善、予防することを含む。
一実施形態では、新生物疾患の治療は、腫瘍成長の阻害、腫瘍成長遅延、腫瘍の退縮、腫瘍の縮小、治療中止後腫瘍が再成長するまでの時間の増加、腫瘍再発までの時間の増加、疾患の進行の緩徐化を含む。
一実施形態では、CXCR4発現を伴う疾患又は病態の治療は、CXCR4を発現する細胞の成長を阻害することを含む。
いかなる特定の理論にも限定されないが、作用機構には、限定はされないが、CXCR4に対するSDF−1結合の防止と、それによる細胞増殖、接着及び浸潤の阻害が含まれ得る。
本開示の一部の実施形態では、治療される動物はヒトである。
本開示の一部の実施形態では、標的結合剤は完全ヒトモノクローナル抗体である。
本開示の一部の実施形態では、標的結合剤は、完全ヒトモノクローナル抗体2A4、4C1、5C9、5E1、6C7又は7C8又は前述の抗体のいずれかのVH及び/又はVLドメインを含む抗体からなる群から選択される。
本開示の標的結合剤又は抗体は、単独で投与することもでき、又はさらなる抗体若しくは化学療法薬若しくは放射線療法との併用で投与することもできる。標的結合剤は、例えば手術を含む治療レジメンの一部として投与することができる。
本開示のCXCR4抗体(又は抗原結合断片)のいずれかを、前述の方法の任意の1つ以上において使用することができる。例として、本明細書に示される機能的及び/又は構造的特性の任意の1つ以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ等)を有する本開示のCXCR4抗体(又は抗原結合断片)のいずれかを、本明細書に開示される方法のいずれかで使用することができる。
(vi)製剤
特定の実施形態では、本開示のCXCR4抗体(又は抗原結合断片)は、薬学的に許容可能な担体と共に医薬組成物/調製物として製剤化されてもよく、当該技術分野において周知されている様々な方法により投与されてもよい。当業者により理解されるであろうとおり、投与の経路及び/又は方式は、所望の結果に応じて異なり得る。本明細書で使用されるとき、本開示の抗CXCR4抗体を含む医薬製剤は、本開示の製剤(又は調製物)と称される。用語「薬学的に許容可能な担体」は、活性成分の生物活性の有効性を妨げない1つ以上の無毒性材料を意味する。かかる調製物は、ルーチン的に、塩、緩衝剤、保存剤、適合性の担体、及び場合により他の治療剤を含有し得る。かかる薬学的に許容可能な調製物はまた、ルーチン的に、ヒトへの投与に好適な適合性の固体又は液体充填剤、希釈剤又は封入用物質を含有し得る。用語「担体」は、天然又は合成の、適用を容易にするため活性成分と共に組み合わせる有機又は無機成分を指す。医薬組成物の構成成分はまた、所望の薬学的効力を実質的に損ない得る相互作用がない形で、本開示の抗体と、及び互いに、混合可能である。
本開示の製剤は、当該技術分野において公知の、且つ治療、診断及び/又は研究用途に許容される形態で存在する。特定の実施形態では、本開示の製剤は液体製剤である。別の実施形態では、本開示の製剤は凍結乾燥製剤である。さらなる実施形態において、本開示の製剤は、再構成液体製剤である。別の実施形態では、本開示の製剤は安定液体製剤である。別の実施形態では、本開示の液体製剤は水性製剤である。別の実施形態では、液体製剤は非水溶性である。別の実施形態では、本開示の液体製剤は、水性担体が蒸留水である水性製剤である。
本開示の製剤は、本開示の抗CXCR4抗体を、所望の用量に適切なw/vをもたらす濃度で含む。特定の実施形態では、抗CXCR4抗体(又は抗原結合断片)は、本開示の製剤中に約1mg/ml〜約500mg/mlの濃度で存在する。
本開示の実施形態は、疾患の治療として有用な抗CXCR4抗体の無菌医薬製剤を含む。特定の実施形態では、かかる製剤は、CXCR4がその基質に結合するのを阻害し、それにより、例えば、血清中又は組織中CXCR4が異常に高い病理学的状態を治療し得る。本開示の抗体は、好ましくは、CXCR4活性を強力に阻害する、又はCXCR4のその基質との結合を阻害するのに十分な親和性を有する。特定の実施形態では、本開示の抗体は、ヒトにおける低頻度の投与を可能にするのに十分な作用持続時間を有する。加えて、本開示は、インビトロ、動物試験、及び診断での使用に好適な、好適な担体中にある無菌製剤を含む他の製剤を提供する。
抗体投与経路は、公知の方法、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内、髄腔内、吸入又は病巣内経路等による注射若しくは注入に一致する。
治療で用いられる抗体の有効量は、例えば、治療目的、投与経路、及び患者の状態に依存し得る。
本明細書に記載されるとおりの抗体は、目的の用途(例えば、診断、インビトロ実験、治療等)に好適な薬学的に許容可能な担体と共に混合物中に調製することができる。
注射用無菌組成物を、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed,Lippincott Williams & Wilkens Publishers(2003))に記載されるとおりの従来の薬務に従い製剤化することができる。
所与の患者(ヒト又は動物)に対する抗体製剤の投薬量は、主治医により、疾患の重症度及び種類、体重、性別、食事、投与時間及び経路、他の薬物療法及び他の関連する臨床的要因を含め、薬物の作用を修飾することが知られる様々な要因を考慮して決定されることになる。治療上有効な投薬量は、インビトロ又はインビボのいずれの方法でも決定することができる。さらに、診断用途などの他の用途に適切な投薬量を、同様にインビトロ試験から推定することができる。
本明細書の組成物及び方法に従う治療実態の投与が、移入、送達、忍容性などの向上を提供するため製剤に組み込まれる好適な担体、賦形剤、及び他の薬剤と共に投与され得ることは理解されるであろう。
(vii)製品及びキット
本明細書のこの節は、本開示の抗CXCR4抗体(抗原結合断片を含む)を含む様々な例示的キット及びパッケージについて記載する。本明細書に記載される抗CXCR4抗体又は抗原結合断片はいずれも、本願全体を通して詳細に記載される構造的及び機能的特徴の任意の1つ以上を有する抗体又は抗原結合断片を含め、本節に記載されるとおりキット又はパッケージの一部として包装、販売、及び/又は使用され得ることは理解されなければならない。本節には抗体を含むものとして様々なキット及びパッケージが記載されるが、かかる抗体は、本明細書に記載される抗CXCR4抗体又は抗原結合断片の特性のいずれか1つ以上を有する抗体又は抗原結合断片であってよいことが理解される。本開示は、本開示の態様及び実施形態のいずれかのあらゆる組み合わせを企図する。
本開示は、本開示の液体製剤又は凍結乾燥製剤(例えば、本開示の抗CXCR4抗体又は抗原結合断片を含む製剤)が充填された1つ以上の容器を含む医薬品パッケージ又はキットを提供する。特定の実施形態では、本開示の液体製剤が充填された容器は、プレフィルドシリンジである。別の実施形態では、本開示の製剤は、限定はされないが、異種タンパク質、異種ポリペプチド、異種ペプチド、巨大分子、小分子、マーカー配列、診断剤又は検出可能な薬剤、治療用部分、薬物部分、放射性金属イオン、二次抗体、及び固体支持体を含む別の部分と組換え融合された、又はそれと化学的にコンジュゲートされた抗CXCR4抗体を含む。具体的な実施形態において、本開示の製剤は、単回投与バイアルに滅菌液として製剤化される。本開示の製剤は、例えば、3cc USP I型ホウケイ酸アンバーバイアル(West Pharmaceutical Serices−品番6800−0675)に目標容積1.2mLで供給され得る。場合により、医薬品又は生物学的製剤の製造、使用又は販売を規制する行政機関が規定する形式の通知が、任意のかかる容器に付随してもよく、この通知は、その機関による、ヒト投与又は獣医学的投与に対する製造、使用又は販売の承認を反映する。別の実施形態では、本開示の製剤はプレフィルドシリンジに供給され得る。
特定の実施形態では、本開示の液体製剤が充填される容器は、プレフィルドシリンジである。本開示の液体製剤と組み合わせて、当業者に公知の任意のプレフィルドシリンジが用いられ得る。用い得るプレフィルドシリンジは、例えば、限定はされないが、国際公開第05/032627号パンフレット、国際公開第08/094984号パンフレット、国際公開第99/45985号パンフレット、国際公開第03/077976号パンフレット、米国特許第6792743号明細書、米国特許第5607400号明細書、米国特許第5893842号明細書、米国特許第7081107号明細書、米国特許第7041087号明細書、米国特許第5989227号明細書、米国特許第6807797号明細書、米国特許第6142976号明細書、米国特許第5899889号明細書、米国特許出願公開第20070161961A1号明細書、米国特許出願公開第20050075611A1号明細書、米国特許出願公開第20070092487A1号明細書、米国特許出願公開第20040267194A1号明細書、米国特許出願公開第20060129108A1号明細書に記載されている。プレフィルドシリンジは様々な材料で作製され得る。一実施形態ではプレフィルドシリンジはガラスシリンジである。別の実施形態では、プレフィルドシリンジはプラスチックシリンジである。当業者は、シリンジの製造に用いられる材料の性質及び/又は品質が、そのシリンジに保存されるタンパク質製剤の安定性に影響を及ぼし得ることを理解する。例えば、シリンジチャンバの内表面に堆積させたシリコンベースの潤滑剤がタンパク質製剤における粒子形成に影響し得ることが理解される。一実施形態では、プレフィルドシリンジはシリコーンベースの潤滑剤を含む。一実施形態では、プレフィルドシリンジは焼付けシリコーンを含む。別の実施形態では、プレフィルドシリンジはシリコーンベースの潤滑剤を含まない。当業者はまた、シリンジバレル、シリンジ先端キャップ、プランジャ又は栓から製剤に浸出する少量の汚染元素もまた、製剤の安定性に影響を及ぼし得ることも理解する。例えば、製造過程で取り込まれたタングステンが製剤安定性に悪影響を与え得ることは理解される。一実施形態では、プレフィルドシリンジは、500ppbを上回るレベルのタングステンを含み得る。別の実施形態では、プレフィルドシリンジは低タングステンシリンジである。別の実施形態では、プレフィルドシリンジは、約500ppb〜約10ppb、約400ppb〜約10ppb、約300ppb〜約10ppb、約200ppb〜約10ppb、約100ppb〜約10ppb、約50ppb〜約10ppb、約25ppb〜約10ppbのレベルのタングステンを含み得る。
特定の実施形態では、様々な目的、例えば、細胞からのCXCR4の精製又は免疫沈降、CXCR4の検出等を含め、研究及び診断に有用な抗CXCR4抗体を含むキットもまた提供される。CXCR4を単離及び精製するため、キットは、ビーズ(例えば、セファロースビーズ)にカップリングされた抗CXCR4抗体を含み得る。インビトロでの、例えばELISA又はウエスタンブロットにおけるCXCR4の検出及び定量化用の抗体を含むキットが提供されてもよい。製品と同様に、キットは、容器と、容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書とを含む。容器は、本開示の少なくとも1つの抗CXCR4抗体(又は抗原結合断片)を含む組成物を保持する。例えば、希釈剤及び緩衝液、対照抗体が入ったさらなる容器が含まれてもよい。ラベル又は添付文書は、組成物の説明並びに意図されるインビトロ又は診断用途の指示を提供し得る。
本開示はまた、完成品の包装され且つラベルが貼付された医薬製品も包含する。この製品は、ガラスバイアル、プレフィルドシリンジ又は密封される他の容器などの適切なベッセル又は容器に入った適切な単位剤形を含む。一実施形態では、単位剤形は、非経口投与に好適な、抗CXCR4抗体を含む無菌粒子状物質不含溶液として提供される。別の実施形態では、単位剤形は、再構成に好適な、抗CXCR4抗体を含む無菌凍結乾燥粉末として提供される。
特定の実施形態では、単位剤形は、静脈内、筋肉内、鼻腔内、経口、局所又は皮下送達に好適である。従って、本開示は、各送達経路に好適な無菌溶液を包含する。本開示は、再構成に好適な無菌凍結乾燥粉末をさらに包含する。
任意の医薬製品と同様に、包装材料及び容器は、保管及び輸送中の製品の安定性を保護するように設計される。さらに、本開示の製品は、当該疾患又は障害の適切な予防又は治療方法、並びにその医薬品を投与する方法及び頻度に関して医師、技師又は患者に助言する使用説明書又は他の情報資料を含む。換言すれば、製品は、限定はされないが、実際の用量、モニタリング手順、及び他のモニタリング情報を含む投与レジメンを指示又は提案する指示手段を含む。
特定の実施形態では、本開示は、包装材料、例えば、箱、瓶、管、バイアル、容器、プレフィルドシリンジ、噴霧器、吸入器、静脈注射用(i.v.)バッグ、薬包などと;前記包装材料内に収容された医薬品の少なくとも1つの単位剤形とを含む製品を提供し、ここで前記医薬品は、本開示のCXCR4抗体を含有する液体製剤を含む。包装材料は、どのように抗体を使用して疾患又は障害に伴う1つ以上の症状を予防、治療及び/又は管理することができるかを示す指示手段を含み得る。
(VIII)CXCR4抗体の効力試験
CXCR4抗体は、様々な疾患の治療に有効であり得る。CXCR4抗体の治療効力は、当該技術分野において周知されている疾患モデルで評価されてもよい。本開示の抗体又は抗原結合断片の効力は、以下に記載される、又はその他の当該技術分野において公知のアッセイの任意の1つ以上で評価されてもよい。例示的アッセイ及び治療レジメンを以下に要約する。
i.抗血管新生効力
本開示のCXCR4抗体(又は断片)の抗血管新生効力は、スフェロイドベースのインビボ血管新生アッセイでアッセイされ得る。このアッセイでは、以前記載されているとおり(Korff and Augustin:J.Cell.Biol.143:1341−52,1998)、プラスチック皿上の懸滴中の100個の内皮細胞(EC)をピペッティングすることにより一晩スフェロイド形成させて、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)スフェロイドを調製する。翌日、過去に記載されている方法(Alajati et al.,Nature Methods 5:439−445,2008)を用いてECスフェロイドを回収し、注入プラグあたりの最終的な数がスフェロイドとして100,000個のEC及び200,000個の単一ECに達するように、マトリゲル/フィブリン溶液中に単一HUVECと共に混合する。VEGF−A及びFGF−2を1000ng/mlの終濃度で添加する。10匹の雄性SCIDマウス(5〜8週齢)のコホートに500μlの細胞/マトリックス懸濁液を皮下注入し得る。翌日(1日目)、処置を開始し得る。一実施形態では、6C7抗体を25mg/kgで週2回投与する。媒体のみを対照として使用する。21日目に試験を終了し得る。マトリックスプラグを除去し、4%PFAに固定する。全てのマトリックスプラグをパラフィン包埋し、組織学的検査のため8〜10μmの厚さに切る。血管を可視化して、ヒトCD34の染色により定量化し、平滑筋アクチン(SMA)の染色により周皮細胞被覆率を決定する。
ii.卵巣癌
本開示のCXCR4抗体(又は断片)はまた、卵巣癌のSCID異種移植モデルにおいてヒト腫瘍成長を阻害するその能力について試験され得る。ヒト卵巣癌株、例えばHeyA8又はIGROV−1を、10%ウシ胎仔血清及び1%L−グルタミンを含有するRPMI1640培地中、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養する。6〜7週齢のSCID雌性マウス(Charles River Lab,Wilmington,MA)に、FBS不含RPMI 1640培地中の細胞[例えばIGROV−1(3×106個、20%マトリゲルを伴う)]を100μlの総容積で右側腹部に皮下注入する。腫瘍を100〜200mm3に成長させ、10匹の動物のコホートを腫瘍サイズに基づき無作為に対照群と処置群とに分けた後、投与を開始する。腫瘍サイズを週2回、キャリパー計測によりモニタし、容積=0.5×長さ×幅2の式を用いて腫瘍容積を概算する。抗体を、滅菌生理食塩水の溶液中において週2回、指示される用量で腹腔内投与する。
腫瘍の治療におけるCXCR4抗体の有用性をさらに探るため、上記のとおりの異種移植モデルにおいて抗体を投与し得るが、但し予防的方式で投与される(腫瘍の移植1日後に投与が開始される)。
この種のモデルはまた、薬剤の併用投与効果、並びに異なる用量、治療開始時の異なる腫瘍サイズ等の効果を調べるためにも用いられ得る。さらに、異なる乳癌細胞株を用いて、異なるタイプの卵巣癌における効力を試験することができる。
iii.B細胞リンパ腫
本開示のCXCR4抗体(及び断片)はまた、B細胞リンパ腫のSCID異種移植モデルにおいてヒト腫瘍成長を阻害する能力についても試験され得る。ヒトB細胞リンパ腫株を、10%ウシ胎仔血清及び1%L−グルタミンを含有するRPMI1640培地中、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養する。100μlの血清不含DMEM培地中の1×106細胞を、6〜7週齢のSCID雌性マウス(Charles River Lab,Wilmington,MA)の右側腹部に皮下移植する。腫瘍を100〜200mm3に成長させ、10匹の動物のコホートを腫瘍サイズに基づき無作為に対照群と処置群とに分けた後、投与を開始する。腫瘍サイズを週2回、キャリパー計測によりモニタし、容積=0.5×長さ×幅2の式を用いて腫瘍容積を概算する。抗体を、滅菌生理食塩水の溶液中において週2回、指示される用量で腹腔内投与する。
腫瘍の治療における本開示のCXCR4抗体の有用性のさらなる探索では、上記のとおりの皮下異種移植モデルにおいて本明細書に記載される抗体が、但し予防的方式で、投与される(腫瘍の移植1日後に投与が開始される)。
この種のモデルはまた、薬剤の併用投与効果、並びに異なる用量、治療開始時の異なる腫瘍サイズ等の効果を調べるためにも用いられ得る。さらに、異なる乳房B細胞株を用いて、異なるタイプのB細胞癌における効力を試験することができる。
iv.末梢血白血球
本開示のCXCR4抗体の効果はまた、末梢血白血球でも評価され得る。CXCR4はヒト末梢血白血球(PBL)で遍在的に発現する。従って、抗CXCR4抗体による治療は、白血球集団の機能に影響を及ぼす潜在的リスクがある。ヒト白血球におけるCXCR4阻害の潜在的安全性リスクを評価するため、ヒトPBLが単離され、エキソビボで処置することにより、白血球集団に対する抗CXCR4抗体の効果が決定される。
末梢血白血球を、健常ドナーから採取した全血から単離する。全血を遠心して細胞をペレット化し、赤血球を塩化アンモニウム緩衝液で溶解する。PBSで数回洗浄した後、PBLを回収し、10%ヒト血清を含有するRPMI培地に再懸濁する。細胞を96ウェル丸底ポリスチレンプレートに100,000細胞/ウェルで播き、10μg/mL抗体で処理し、5%CO2インキュベーターにおいて37℃で一晩(約16〜18時間)インキュベートする。細胞を白血球マーカー(CD3、CD19、CD56)で染色し、試料をフローサイトメトリー(FACSCantoII)により分析し、ここでは各試料について一定容積を回収して絶対細胞数を決定する。顆粒球、単球、及びリンパ球集団を前方及び側方散乱プロファイルに基づき分離する。リンパ球をさらにゲーティングして、B細胞(CD19+)、T細胞(CD3+)、及びNK細胞(CD56+)を分離する。
特定の実施形態では、この種類の試験は、治療上有効な抗体の潜在的安全性リスクを評価するカウンタースクリーニングとして行われる。
v.HUVEC細胞の遊走
他の実施形態では、HUVEC細胞の遊走に対するCXCR4阻害の効果が決定され得る。CXCR4抗体の作用機構が、血管新生に寄与し得る内皮前駆細胞の遊走及び移動度を阻害し得る。これの実験モデルとして、引っ掻き傷創傷治癒実験においてSDF−1がHUVEC細胞の遊走を刺激する能力を試験し、続いてCXCR4抗体がこの遊走を阻害する能力を決定する。HUVEC細胞(Lonza)をヒト内皮細胞(Endothlial Cell)成長培地2(補助剤を含む)に播き、継代7代目まで増殖させる。引っ掻き傷創傷治癒アッセイのため、細胞を、Essen Imagelok 24ウェルプレートにおいて血清不含又は2%血清内皮細胞成長培地(添加剤を含まない)中2×105細胞/mlで播き、一晩培養する。培地を無血清基礎培地に交換し、細胞を再び一晩培養する。Essenの引っ掻き用具を用いて各ウェルに引っ掻き傷を作り、離れた細胞をPBSで洗浄し、培地を試験培地(基礎培地±SDF−1、±抗体)に交換し、位置をIncucyteシステムで培養してさらに培養し、1時間毎又は2時間毎にイメージングする。製造者のソフトウェアで画像を分析して創傷治癒(露出した創傷範囲を被覆する細胞)の割合を決定する。
以下の例は、本開示の実施を示すために提供される。これらの例は、本開示の範囲全体を限定したり、又は定義したりするよう意図するものではない。
実施例1:免疫化及び力価測定
免疫原
ヒトCXCR4を一過性にトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(CHO、アメリカン・タイプ・ティシュー・コレクション(American Type Tissue Collection)、カタログ番号CCL−61)細胞、又はジャーカットヒトT細胞白血病細胞を、XenoMouse(登録商標)の免疫化の免疫原として使用した。CHOトランスフェクタントを作成するため、ヒト完全長CXCR4 cDNA(EMBL受託番号M99293;Loetscher M,et al.,J Biol Chem,269:232−237,1994)をpcDNA3.1ベクターに挿入し、CHO細胞にリポフェクション処理した。細胞表面においてヒトCXCR4が免疫化の目的に好適なレベル(30〜50%のトランスフェクション効率、バックグラウンドを約10〜100倍上回る幾何学的平均蛍光)で発現したことが、蛍光活性化セルソーター(FACS)分析により確認された。トランスフェクトが成功した細胞のバッチを凍結し、必要に応じて使用した。
免疫化
約6週齢のXenoMouse(登録商標)マウス[XenoMouse系統:XMG2(IgG2κ/λ)及びXMG4(IgG4κ/λ)Amgen,Inc.Vancouver,British Columbia,カナダ]を、100万個のジャーカット細胞又はCXCR4をトランスフェクトしたCHO細胞のいずれかで免疫することにより、CXCR4に対するモノクローナル抗体を生じさせた。10匹のXenoMouse動物群は腹腔内及び尾基底部経路で免疫した。細胞をPBS又はリン酸アルミニウムゲルアジュバント、HCL Biosector(カタログ番号1452−250)に懸濁した。3〜6日おいて動物をブーストし、総数11〜17回ブーストした。
力価による摘出用動物の選択
蛍光定量的微量アッセイ技術(Fluorometric microvolume assay technology:FMAT)細胞検出機器(Applied Biosystems)を用いて、HEK293T細胞で一過性に発現させたヒト及びマウスCXCR4との結合を試験することにより、ヒトCXCR4に対する抗体の力価を評価した。この分析から、CXCR4をトランスフェクトしたHEK293T細胞のFMATシグナルを親HEK293T細胞のシグナルと比較して分かるとおり、一部の、主にCHO免疫化群のマウスが、その血清中で抗CXCR4特異的抗体の有意な力価を有したことが示された。従って、免疫化プログラムの終了時、8匹のマウスを摘出用に選択し、以下の実施例2に記載するとおり、免疫化マウスの脾臓及びリンパ節からリンパ球を単離した。
実施例2:リンパ球の回収、B細胞単離、ハイブリドーマの融合及び作成
免疫化マウスを頸椎脱臼により犠牲にし、各コホートから流入領域リンパ節を摘出してプールした。4匹の動物は脾臓も摘出し、リンパ球採取用に含めた。DMEM中で粉砕して細胞を組織から離すことによりリンパ系細胞を解離し、細胞をDMEMに懸濁した。CD19標識Dynalビーズを用いたポジティブ選択によりB細胞を濃縮した。上記による洗浄した濃縮B細胞を非分泌性骨髄腫P3X63Ag8.653細胞(ATCCカタログ番号CRL 1580)(Kearney et al.,J.Immunol.123,1979,1548−1550)と1:1の比で混合することにより、融合を実施した。細胞混合物を800×gで遠心することにより、穏やかにペレット化した。上清を完全に取り除いた後、細胞を2〜4mlのプロナーゼ溶液(CalBiochem、カタログ番号53702;PBS中0.5mg/ml)で2分以下にわたり処理した。次に3〜5mlのFBSを添加して酵素活性を停止させ、電気細胞融合溶液ECFS(0.3Mスクロース、Sigma、カタログ番号S7903、0.1mM酢酸マグネシウム、Sigma、カタログ番号M2545、0.1mM酢酸カルシウム、Sigma、カタログ番号C4705)を使用して懸濁液を40mlの総容積に調整した。遠心後、上清を除去し、細胞を40mlのECFSに再懸濁した。この洗浄工程を繰り返し、細胞を2×106細胞/mlの濃度となるように再びECFSに再懸濁した。融合発生装置のモデルECM2001、Genetronic,Inc.,San Diego,CAを使用して、電気細胞融合を実施した。使用した融合チャンバサイズは2.0mlであり、以下の機器設定を用いた:整列条件:電圧:50V、時間:50秒;膜破壊:電圧:3000V、時間:30μ秒;融合後保持時間:3秒。ECF後、無菌条件下で細胞懸濁液を融合チャンバから慎重に取り出し、同容積のハイブリドーマ培養培地(2mMのL−グルタミン(Sigma、カタログ番号G2150)、10U/mlペニシリン/0.1mg/mlストレプトマイシン(Sigma、カタログ番号P7539)、1バイアル/LのOPI(オキサロ酢酸塩、ピルビン酸塩、ウシインスリン;Sigma カタログ番号O5003)及び10U/ml組換えヒトIL−6(Boehringer Mannheim、カタログ番号1131567)を補足したDMEM(JRH Biosciences)、15%FBS(Hyclone)が入った滅菌チューブに移した。細胞を37℃で15〜30分間インキュベートし、次に400×gで5分間遠心した。少量のハイブリドーマ選択培地(0.5×HA(Sigma、カタログ番号A9666)を補足したハイブリドーマ培養培地)に細胞を穏やかに再懸濁し、最終プレーティングを96ウェルプレートあたり合計5×106個のB細胞及びウェルあたり200μlとすることに基づき、さらなるハイブリドーマ選択培地で容積を適宜調整した。細胞を穏やかに混合し、96ウェルプレートにピペッティングして成長させた。潜在的に抗CXCR4抗体を産生する細胞から一切の上清を回収し、以下に例証するとおり、続くスクリーニングアッセイに供した。
実施例3:ヒト、マウス及びカニクイザルCXCR4に対する結合
採取した細胞から回収された上清を試験して、完全長ヒト、マウス又はカニクイザルCXCR4のいずれかを一過性に過剰発現するHEK293T細胞に対して分泌抗体が結合する能力を評価した。モックをトランスフェクトした293T細胞株を陰性対照として使用した。2%FBSを含有するPBS中に希釈した細胞を、384ウェルプレート(Corning Costar、カタログ番号3712)にウェルあたり3000個の発現細胞及び15000個のモックトランスフェクト細胞の密度で播種した。播いた後直ちに、15又は20μl/ウェルのハイブリドーマ上清及び10μl/ウェルの二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG Fc Cy5、終濃度750ng/ml)を添加し、プレートを室温で3時間インキュベートした後、FMAT 8200機器(Applied Biosystems)で蛍光を読み取った。陽性イベント数と蛍光強度との積を結合強度の尺度として使用した。ハイブリドーマ上清のヒト/カニクイザルCXCR4との結合を示す6つのハイブリドーマ上清の結果を表2に示す。6つ全てのモノクローナル抗体が、ヒト及びカニクイザルCXCR4染色について陽性であった。5C9は、マウストランスフェクタントに一般的な細胞バックグラウンド染色を示し、陽性とは見なされなかった。6C7は、マウスCXCR4トランスフェクタントに実質的な染色を示し、マウスCXCR4陽性抗体と見なされた。しかしながら、マウスリンパ球及びマウスB細胞株EL4によるさらなる試験からは、マウスCXCR4に再現性のある染色は示されなかった。
カニクイザル(cynomolgous)T細胞株HSC−Fを使用して、抗体6C7のカニクイザルCXCR4に対する交差反応性のさらなる調査を行った。カニクイザルT細胞株HSC−Fを使用するKinexaベースの親和性計測(実施例8を参照)において、カニクイザルCXCR4に対する6C7親和性は221pMと推定された。125nM SDF−1で刺激したHSC−F細胞を使用する走化性アッセイで、カニクイザルCXCR4に対する抗体6C7の機能的活性が実証された。用いた方法は本明細書に記載される。抗体6C7は、推定された親和性と同等のIC50でHSC−F細胞の遊走を有効に阻害した。6C7はまた、HSC−F細胞株におけるシグナル伝達も阻害することが示された。
実施例4:ジャーカット走化性及びSDF−1結合の阻害
採取した細胞から回収された上清を試験して、分泌抗体がSDF−1刺激に応答したジャーカット細胞の走化性を阻害する能力を評価した。ジャーカット細胞を血清不含RPMIで2回洗浄し、RPMI 1%BSAに再懸濁した。細胞を、被験上清、所望の精製抗体希釈物、又は対照抗体と共に4℃で1時間インキュベート(RPMI+1%BSA中2.5×105細胞/mL)した後、3μm HTS 96ウェルトランスウェル膜インサートの上部の区画に移した。100μLの血清不含RPMI+1%BSA中50ng/mlのSDF−1α(Peprotech)を下側のチャンバに使用し、試料を5%CO2インキュベーターにおいて37℃で3.5時間インキュベートした。インキュベーションの終了時にインサートを取り出し、製造者の推奨により25μLのCellTiterGlo(Promega)を添加して室温で10分間インキュベートし、黒色プレートに移し、発光を読み取ることにより、下側のチャンバの遊走細胞を定量化した。このアッセイを3回繰り返し、60%超の走化性阻害を示したハイブリドーマをさらなる試験へと進めた。
CXCR4受容体に対する抗体の潜在的な代替作用機構を調べるため(例えば下方制御、脱感作又はインターナリゼーション)、ジャーカット細胞の抗体試料との37℃で24時間の予備的なインキュベーションを用いて、上記の走化性阻害アッセイを繰り返した。短期及び長期の双方の走化性アッセイの平均的結果を表3に要約し、走化性曲線の例を図1に示す。
ヒトCXCR4をトランスフェクトしたHEK293T細胞に対するSDF−1の結合を阻害するその能力により、上清をさらに特徴付けた。1mg/ml濃度のSDF−1を、625nMから始めてAlexa−647標識試薬と混合した。Alexa試薬の作業用希釈は、CXCR4発現細胞に4℃で1時間結合させるとき、標識SDF−1がバックグラウンドと比較して2倍の幾何学的蛍光平均の増加を生じるように、実験的に決定した。SDF−1結合の阻害を決定するため、CXCR4をトランスフェクトしたHEK293T細胞を被験上清及び抗体と共に氷上で1時間予備インキュベートし、次にAlexa標識SDF−1を氷上でさらに1時間添加し、3回洗浄し、FACS Caliberで蛍光強度を読んだ。
走化性の短期及び長期阻害、並びにSDF−1結合のパターンの阻害に基づき、限界希釈サブクローニング、拡大、及び精製用に複数のハイブリドーマを選択した。
ジャーカット細胞のSDF−1誘導走化性の阻害におけるその効力に基づき、精製モノクローナル抗体をさらに特徴付けた。以下の変更を伴い、上記の実施例4にあるとおり、1時間バージョンの走化性実験を実施した:BSAの代わりに1%熱失活ウシ胎仔血清を含むRPMI培地を使用した;及びSDF−1の濃度を25ng/mlに低下させた。一部の実験では、上部トランスウェルをバーゼン(Versene)が入ったプレートに10分間移し、膜の底に緩く付着した細胞を剥がし、試料の両部分からのCellTiterGloシグナルを合わせて合計の走化性シグナルを得た。OriginPro7グラフ計算ソフトウェアにおいて、ヒルの傾き(Hill slope)を1に設定した4パラメータPharmacology Dose Response(薬理用量反応)機能を用いてデータを抗体濃度に対してプロットした。曲線あてはめにより決定するときの各抗体のIC50値を表4に要約し、代表的な用量反応曲線を図1に示す。U937株による比較可能な結果を図2に示す。
さらなる実験を行い、ジャーカット走化性阻害におけるCXCR4抗体の効力を決定した。IgG2及びIgG1TMの両フォーマットで抗体6C7を試験し(上記に6C7−TMとして記載されるIgG1 TMフォーマットの重鎖及び軽鎖アミノ酸配列)、一方、参照抗体Ref1はIgG4及びIgG1TMフォーマットで試験した。複数の実験の結果を表5に要約する:
ジャーカット細胞に加えて、U937リンパ腫細胞もまた走化性アッセイで試験した。この実験の結果は図2Aに示す。双方のアイソフォームの抗体6C7とも、U937細胞の遊走を完全に阻害することができた一方、IgG4フォーマットにおける参照抗体Ref1は、試験した濃度範囲で部分的な阻害及びより低い効力を示す。カニクイザルT細胞株HSC−Fで同様の実験を行った。6C7は、走化性の用量反応性の阻害を示し、最大阻害はほぼ100%であった一方、参照抗体Ref1はこの設定下では一貫した阻害を示さなかった(図2B)。さらなる実験を行い、抗CXCR4抗体がSDF−1とナマルバ細胞上のその受容体CXCR4との結合を阻害する能力をFACSにより調べた。予備実験では、ナマルバ細胞を1%緩衝ホルマリンで10分間固定した場合に、より一貫した結果が達成され得ることが決定され、これらの条件を実験で使用した。固定した細胞を10nMビオチン化SDF−1と共に4℃で15分間インキュベートし、PBSで洗浄し、続いて様々な濃度のCXCR4抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。第2の洗浄後、細胞を1μg/mlストレプトアビジン−PEで染色し、FACS Caliber血球計算器でFACSにより分析した。図3に示すとおり、6C7は、そのCXCR4に対する親和性と同等のIC50でビオチン化SDF−1の結合にとって代わることができた。
実施例5:SDF−1の駆動によるCXCR4シグナル伝達の阻害
抗体を、CXCR4媒介性シグナル伝達を阻害するその能力について試験した。このシグナル伝達には、Gタンパク質共役、Ca2+放出の誘導、並びにリン酸化によるMAPキナーゼ及びAKT経路の活性化が関わることが知られている。予備実験では、ジャーカット細胞がホスホ−MAPキナーゼ(Erk1及びErk2)の誘導を示すが、ホスホ−AKTの顕著な誘導は示さないことが観察された。ジャーカット細胞を無血清培地で一晩培養してから、100ng/mlのSDF−1で刺激した。30分後、細胞をホスホセーフ(PhosphoSafe)緩衝液に溶解し、トリス−グリシンゲルに負荷し、ニトロセルロースに移して、ホスホ−MAPK特異的抗体でプローブした。5又は20μg/mlの抗体6C7及び2A4は、SDF−1誘導MAPKリン酸化の阻害(上述のアッセイを用いて検出不能なレベルのホスホル(phosphor)−MAPKにより示されるとおりのほぼ完全な阻害)を実証した一方、他の抗体では実証されなかった。
SDF−1誘導MAPKリン酸化に対する抗体処置の効果を、定量的ウエスタンブロット及びELISAによりさらに評価した。ジャーカット細胞を無血清培地で一晩培養し、抗CXCR4抗体により氷上で30分間処理し、次に10ng/mLのSDF−1により37℃で30分間刺激した。ウエスタンブロット(上記のとおり)によるか、又はELISA(Cell Signaling Technology)により、ホスホ−MAPKレベルを決定した。図4に例示されるウエスタンブロットの結果は、SDF−1刺激ウィンドウ、並びに6C7によるpMAPKの用量反応性の阻害を示す。さらに、6C7抗体単独ではpMAPKレベルは増加しなかったことから、抗体処置そのものは、このモデルにおいて作動性の効果をもたらさないことが示される。いくつかの実験のpMAPK ELISAの結果から、6C7がSDF−1駆動MAPKリン酸化を約3nMのIC50値で用量依存的に阻害することが示された(要約については表6を参照のこと)。
MDA−MB−231細胞による同様の実験では、SDF−1で刺激したときホスホ−AKTの有意な増加(約2倍)が検出された一方、ホスホ−MAPKの変化はなかった。細胞を10μg/mlの6C7抗体で処理したとき、検出不能な(undectable)レベルのホスホ−AKT(phopho−AKT)によって示されるとおり、SDF−1誘導リン酸化が阻害された。これらの結果は、抗体6C7及び2A4がCXCR4受容体を介したSDF−1媒介性シグナル伝達を阻害することを示している。
ホスホ−AKTの計測をカニクイザル細胞株HSC−Fでも実施した。図5に示すとおり、この設定下でSDF−1刺激はAKTリン酸化をもたらした。CXCR4抗体単独ではいかなるpAKT誘導も示さなかったことから、作動活性の欠如が確認された。10μg/mlの6C7はAKTリン酸化の阻害をもたらした一方、参照抗体Ref1は部分的な阻害をもたらした。
実施例6:抗CXCR4抗体の構造解析
抗体の重鎖可変配列及び可変軽鎖をコードするcDNAクローンを配列決定した。抗CXCR4抗体についての可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメインのヌクレオチド及びアミノ酸配列は、本実施例の節の後ろに提供する。重鎖可変ドメイン配列を解析してVH遺伝子セグメント、各可変ドメインにより用いられるD遺伝子及びJH遺伝子を決定した。次に配列を翻訳して、リード抗体で発現するときの可変ドメインの一次アミノ酸配列を決定し、生殖系列VH、D及びJ領域配列と比較することにより生殖系列からの突然変異を評価した。同様に、軽鎖可変ドメイン配列を解析してκ又はλV遺伝子使用を決定し、対応してJk又はJL遺伝子使用を決定した。翻訳された発現配列を生殖系列配列と比較することにより、生殖系列に対する突然変異を評価した。
表7及び表8は、抗体重鎖領域をそれらのコグネイト生殖系列重鎖領域と比較し、且つκ軽鎖領域をそれらのコグネイト生殖系列軽鎖領域と比較する表である。
免疫グロブリン鎖の可変(V)領域は、B細胞個体発生中に機能性の可変領域(VHDJH、VKJK又はVLJL)に連結される複数の生殖系列DNAセグメントによりコードされる。CXCR4に対する抗体反応の分子及び遺伝子の多様性を詳細に研究した。
また、特定の抗体がそのそれぞれの生殖系列配列とアミノ酸レベルで異なる場合、抗体配列を生殖系列配列に復帰変異させ得ることもまた理解されなければならない。かかる修正的な突然変異は、1つ、2つ、3つ以上の位置、又はそれらの変異位置のいずれかの組み合わせに、標準的な分子生物学的技術を用いて生じさせることができる。非限定的な例として、4C1の重鎖は、アミノ酸97でAに対してTである点が、対応する生殖系列配列と異なる(表10を参照のこと)。従って、ここでアミノ酸97に97位のAが組み込まれるように重鎖アミノ酸配列を修飾することができる。以下の表9〜11は、mAb 4C1、2A4、及び6C7について生殖系列からのかかる変異の位置を示す。各行は、太字で示される位置の生殖系列及び非生殖系列残基のユニークな組み合わせを表す。
別の実施形態では、本開示は、本開示の抗体の不均一性に影響を及ぼし得る配列中の任意の構造的ライアビリティを置換することを含む。かかるライアビリティには、グリコシル化部位、不対のシステイン、表面露出したメチオニン(methinone)等が含まれる。かかる不均一性のリスクを低減するため、かかる構造的ライアビリティの1つ以上を取り除くような変化を設けることが提案される。
本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号4を含む配列を含む。特定の実施形態では、配列番号4は、表9の各行に示される生殖系列及び非生殖系列残基の組み合わせのいずれか一つを含む。一部の実施形態では、配列番号4は、表9に示されるとおりの生殖系列残基のいずれか1つ、いずれか2つ、又は2つ全てを含む。特定の実施形態では、配列番号4は、表9の各行により示される生殖系列及び非生殖系列残基のユニークな組み合わせのいずれか一つを含む。他の実施形態では、抗体は、VK A30J及びJK4ドメインを含む生殖系列配列に由来し、ここでは1つ以上の残基の突然変異により、当該位置に、対応する生殖系列残基が得られている。
本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号6を含む配列を含む。特定の実施形態では、配列番号6は、表10の各行に示される生殖系列及び非生殖系列残基の組み合わせのいずれか一つを含む。一部の実施形態では、配列番号6は、表10に示されるとおりの生殖系列残基のいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、又は4つ全てを含む。特定の実施形態では、配列番号6は、表10の各行により示される生殖系列及び非生殖系列残基のユニークな組み合わせのいずれか一つを含む。他の実施形態では、抗体は、VH3〜33、D3〜10及びJH6ドメインを含む生殖系列配列に由来し、ここでは1つ以上の残基の突然変異により、当該の位置に、対応する生殖系列残基が得られている。一つの具体例では、配列番号6は、80位でYをSに変異させることにより、且つ97位でAをEに変異させることにより、生殖系列配列に復帰するよう修飾される。
本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む配列を含む。特定の実施形態では、配列番号8は、表11の各行に示される生殖系列及び非生殖系列残基の組み合わせのいずれか一つを含む。一部の実施形態では、配列番号8は、表11に示されるとおりの生殖系列残基のいずれか1つ、いずれか2つ、又は2つ全てを含む。特定の実施形態では、配列番号8は、表11の各行により示される生殖系列及び非生殖系列残基のユニークな組み合わせのいずれか一つを含む。他の実施形態では、抗体は、VK、A30及びJK1ドメインを含む生殖系列配列に由来し、ここでは1つ以上の残基の突然変異により、当該位置に、対応する生殖系列残基が得られている。
本開示の一部の実施形態では、抗体は、配列番号12を含む配列を含む。特定の実施形態では、配列番号12は、表12の各行に示される生殖系列及び非生殖系列残基の組み合わせのいずれか一つを含む。一部の実施形態では、配列番号12は、表12に示されるとおりの生殖系列残基のいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ、又は3つ全てを含む。特定の実施形態では、配列番号12は、表11の各行により示される生殖系列及び非生殖系列残基のユニークな組み合わせのいずれか一つを含む。他の実施形態では、抗体は、VK、A30及びJK4ドメインを含む生殖系列配列に由来し、ここでは1つ以上の残基の突然変異により、当該位置に、対応する生殖系列残基が得られている。
実施例7:CXCR4抗体の選択性
CXCR4はGPCRであり、ヒトGPCRのファミリーにおいて近い相同体は僅かである。そのなかには、CXCR3及びCCR4がある。本開示のCXCR4抗体がCXCR4に対して選択的であることを確実にするため、ヒトCXCR3をトランスフェクトしたHEK293細胞及びCCR4をトランスフェクトしたCHO細胞に対する結合を調べた。精製した2A4、4C1、6C7及び7C8抗体を10及び100μg/mlの濃度で試験し、FACS分析により、親細胞株を対照として使用して幾何学的平均蛍光強度を決定した。細胞を一次抗体及び対応するアイソタイプ対照と共に氷上で1時間インキュベートし、続いて1:50のロバ抗ヒトIgG−FITC(Jackson 709 095 149)と共にインキュベートした。FACS Caliber血球計算器で試料を分析した。試験した試料のいずれでも、バックグラウンドを上回る染色は観察されなかった。
実施例8:精製抗体の結合親和性の決定
抗原制限条件下でのFACS結合を利用して、CXCR4受容体に対する抗体の親和性を推定した。RPMI1640培地においてジャーカット細胞を洗浄し、150,000〜0.143pMの範囲で、デュプリケートで4倍希釈系列の抗体と共にインキュベートするため、デュプリケートでウェルあたり50,000細胞で播いた。インキュベーションを4℃で一晩実施し、続いて洗浄工程(PBS中で3回)、ヤギ抗ヒトFc−Cy5二次抗体+5μg/mLの7−アミノ−アクチノマイシン(7AAD)による4℃で40分間の染色を行った。さらなる3回のPBS中での洗浄ラウンドの後、FACSCaliberで試料を分析した。5000個の細胞イベントの幾何学的平均蛍光強度(幾何平均)を用いて親和性を推定した。陰性の幾何平均を、制限抗原条件下での抗体「欠乏」の推定値としてKinexa分析ソフトウェアに入力し、曲線あてはめから平衡解離定数(KD)を推定した。これらの推定値を表13に示す。異なる抗体バッチを用いた2つの異なる実験における6C7親和性計測はいくらか異なる結果を生じたことに留意されたく、ナノモル濃度以下の親和性範囲の区別に対するKinexa法の限界を反映したものであり得る。6C7の代表的な結果を、参照抗体Ref1と共に図6に示す。
カニクイザルT細胞株HSC−Fを使用して同様の実験を行った。6C7は、ここでも、カニクイザルCXCR4に対するナノモル濃度以下の結合親和性を実証した。Kinexaデータの親和性モデルあてはめを図7に示す。
実施例9:抗CXCR4抗体によるアポトーシス誘導
抗CXCR4抗体を、ヒトB細胞リンパ腫株ラモスにおいてアポトーシスを誘導するその能力について試験した。10%熱失活ウシ胎仔血清及び2mMのL−グルタミンを含有するRPMI1640中、5%CO2において37℃で細胞を培養した。精製抗体を10μg/mlの終濃度で培養細胞に添加した。さらに一晩インキュベートした後、細胞を洗浄し、アネキシンV発現及び生存能力に対して(ToProヨウ化物を使用して)染色した。細胞をFACSによりFACSCaliberで分析した。ToPro陽性細胞は概してアネキシンVも陽性であり、従ってこれを、より感受性の高いアポトーシス誘導尺度として使用した。未処理の細胞は、アネキシンVで5〜10%の染色を示した。独立した実験において、抗体6C7による処理で30〜60%のアポトーシス誘導がもたらされた一方、2A4抗体による処理では20〜40%のアポトーシスがもたらされた。72時間目に評価した反復実験では、抗体6C7で〜50%のアポトーシス誘導が観察され、評価対象の他のリード抗体によるアポトーシスの程度は様々であった。これらの結果を図8に示す。
実施例10:スフェロイドベースのインビボ血管新生アッセイにおけるCXCR4抗体の抗血管新生効力の評価
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)スフェロイドを、以前記載されているとおり(Korff and Augustin:J.Cell.Biol.143:1341−52,1998)、プラスチック皿上の懸滴中の100個の内皮細胞(EC)をピペッティングすることにより一晩スフェロイド形成させて調製した。翌日、過去に記載されている方法(Alajati et al.,Nature Methods 5:439−445,2008)を用いてECスフェロイドを回収し、注入プラグあたりの最終的な数がスフェロイドとして100,000個のEC及び200,000個の単一ECに達するように、マトリゲル/フィブリン溶液に単一HUVECと共に混合した。VEGF−A及びFGF−2を1000ng/mlの終濃度で添加した。10匹の雄性SCIDマウス(5〜8週齢)のコホートに500μlの細胞/マトリックス懸濁液を皮下注入した。翌日(1日目)処置を開始した。6C7抗体を25mg/kgで週2回投与した。媒体のみを対照として使用した。21日目に試験を終了した。マトリックスプラグを除去し、4%PFAに固定した。全てのマトリックスプラグをパラフィン包埋し、組織学的検査のため8〜10μmの厚さに切った。血管を可視化して、ヒトCD34の染色により定量化し、平滑筋アクチン(SMA)の染色により周皮細胞被覆率を決定した。得られたデータから、未処置対照と比較して、6C7抗CXCR4抗体による処置がヒト血管形成を実質的に阻害(約80%)したが、周皮細胞被覆率には(同様にαSMA発現が陽性の細胞に関連したヒトCD34陽性血管の割合により評価するとき)影響を与えなかったことが示唆される。データから、抗体が血管新生のインビボアッセイで活性であることが示された。続く一連の実験では、血管形成の阻害の用量反応を調べた。20〜1mg/kgの抗体処置(週2回)で最大阻害が観察された。このレベルは、マウスKDRを遮断する対照抗体33C3による阻害と同等であった。これらの結果を図9に示す。
実施例11:卵巣癌異種移植モデルにおける効力
抗CXCR4抗体6C7を、卵巣癌のヌード異種移植モデルにおけるヒト腫瘍成長を阻害するその能力についても試験した。ヒト卵巣癌株HeyA8Luc+クローン4を、10%ウシ胎仔血清及び1%L−グルタミンを含有するRPMI1640培地中、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。これらの実験の結果を以下に詳細に記載する。異なるヒト卵巣癌株:IGROV−1を使用して同様の実験一式も実施した。しかしながら、この株を使用して複数の実験にわたり得られた結果の不整合をふまえ、本発明者らは、これらの実験及びそのデータが不確定であり、従ってここに含めるのは適当ではないと判断した。
4〜6週齢のヌード雌性マウス(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN)に、HeyA8Luc+クローン4(5×106個、PBS中50%マトリゲルを伴う)を200μlの総容積で右側腹部に皮下注入した。腫瘍を190〜250mm3に成長させ、10匹の動物のコホートを腫瘍サイズに基づき無作為に対照群と処置群とに分けた後、投与を開始した。腫瘍サイズを週2回、キャリパー計測によりモニタし、容積=0.5×長さ×幅2の式を用いて腫瘍容積を概算した。抗体を、滅菌PBSの溶液中において週2回、指示される用量で腹腔内投与した。図10に示すとおり、樹立した腫瘍を6C7抗体で処置すると、腫瘍成長の低下(約37%)がもたらされた。腫瘍の治療におけるCXCR4抗体の潜在的有用性のさらなる探索において、上記の異種移植モデルで6C7抗体をトポテカン(0.6mg/kg)と組み合わせて投与した。抗体6C7は、トポテカンとの組み合わせでTGIの改善を示し、3mg/kg用量で約81%の阻害をもたらした(図10)。さらには、6C7の活性は用量依存的で、10mg/kgの用量で最大活性を示した。加えて、この卵巣異種移植片で6C7をドキソルビシンと組み合わせたとき、同様にTGIが改善される、約72%の阻害をもたらす結果が観察された。
実施例12:末梢血白血球に対するCXCR4抗体処置の効果
CXCR4はヒト末梢血白血球(PBL)で遍在的に発現する。従って、抗CXCR4抗体による処置には、白血球集団の機能に影響を及ぼす潜在的リスクがある。ヒト白血球におけるCXCR4阻害の潜在的安全性リスクを評価するため、ヒトPBLを単離し、エキソビボで処置することにより、白血球集団に対する抗CXCR4抗体の効果を決定した。
末梢血白血球を、健常ドナーから採取した全血から単離した。全血を遠心して細胞をペレット化し、赤血球を塩化アンモニウム緩衝液で溶解した。PBSで数回洗浄した後、PBLを回収し、10%ヒト血清を含有するRPMI培地に再懸濁した。細胞を96ウェル丸底ポリスチレンプレートに100,000細胞/ウェルで播き、10μg/mL抗体で処理し、5%CO2インキュベーターにおいて37℃で一晩(約16〜18時間)インキュベートした。細胞を白血球マーカー(CD3、CD19、CD56)で染色し、試料をフローサイトメトリー(FACSCantoII)により分析し、ここでは各試料について一定容積を回収して絶対細胞数を決定した。顆粒球、単球、及びリンパ球集団を前方及び側方散乱プロファイルに基づき分離した。リンパ球をさらにゲーティングして、B細胞(CD19+)、T細胞(CD3+)、及びNK細胞(CD56+)を分離した。
顆粒球、単球、T細胞、又はNK細胞集団に、未処置対照と比較して、抗CXCR4抗体処置による有意な変化は認められなかった(データは示さず)。抗CXCR4処置では、未処置対照と比べてB細胞の損失が観察された(表14を参照のこと)。この観察は、B細胞生存因子としてのSDF−1の報告される活性と一致している。6C7処置はB細胞数の約50%の低下をもたらした一方、参照抗体Ref1による処置は、IgG1TM又はIgG4のいずれのフォーマットでも、B細胞数が〜80%減少したことに留意されたい。
実施例13:HUVEC細胞の遊走に対するCXCR4阻害の効果
CXCR4抗体の別の作用機構は、血管新生に寄与し得る内皮前駆細胞の遊走及び移動度の阻害であり得る。これの実験モデルとして、本発明者らは、引っ掻き傷創傷治癒実験でSDF−1がHUVEC細胞の遊走を刺激する能力を試験し、続いてCXCR4抗体がこの遊走を阻害する能力を試験した。HUVEC細胞(Lonza)をヒト内皮細胞(Endothlial Cell)成長培地2(補助剤を含む)に播き、継代7代目まで増殖させた。引っ掻き傷創傷治癒アッセイのため、細胞を、Essen Imagelok 24ウェルプレートにおいて血清不含又は2%血清内皮細胞成長培地(添加剤を含まない)中2×105細胞/mlで播き、一晩培養した。培地を無血清基礎培地に交換し、細胞を再び一晩培養した。Essenの引っ掻き用具を用いて各ウェルに引っ掻き傷を作った。離れた細胞をPBSで洗浄し、培地を試験培地(基礎培地±SDF−1、±抗体)に交換し、プレートをIncucyteシステムで培養してさらに培養し、1時間又は2時間毎にイメージングした。製造者のソフトウェアで画像を分析して創傷治癒(露出した創傷範囲を被覆する細胞)の割合を決定した。3つの実験のうちの一つの代表的な結果を図11に示す。SDF−1は基礎レベルを上回ってHUVEC遊走を刺激し、6C7 IgG1TM抗体処置はこの遊走を、ときに基礎レベル未満に、用量依存的に抑制した。実験に依存して、参照抗体Ref1はIgG1TMフォーマットでは同等か又はそれより低い創傷治癒の阻害を生じたが、IgG4フォーマットでは活性を最小限しか又は全く示さなかった。
実施例14:多発性骨髄腫モデル
ルシフェラーゼをトランスフェクトしたMM1.S細胞(多発性骨髄腫細胞株)を、10%FBS、2mMのL−グルタミン、及び250μg/mlのG418を補足したRPMI1640培地で培養した。2000万個の細胞を各雌性CB−17 SCIDマウスに尾静脈を介して静脈内移植した。21日目、Xenogen IVIS 100イメージングシステムを使用して腫瘍量を評価した。マウスを仰臥位及び腹臥位で撮像した。バイオルミネセンスシグナルはXenogen Living Imageソフトウェアを使用して決定する。背側及び腹側の値を足し合わせて全身の総バイオルミネセンスを求めた。この総全身バイオルミネセンス値に基づき、マウスを無作為に処置群に割り当てた。マウスが人道的なエンドポイント、通常は後肢の完全麻痺を示し始めるまで、媒体対照、陰性抗体対照、6C7及び/又はベルケイドでマウスを週2回処置した。上記のとおりのバイオルミネセンスイメージングにより、4〜7日の間隔をおいて腫瘍量をモニタした。人道的なエンドポイントを呈したことに伴い、マウスを安楽死させた。エンドポイントとして腫瘍量及び生存の双方を評価した。
図12は、この実験の結果を示す。観測されるバイオルミネセンスレベルの低下により、腫瘍量の減少が示される。示されるとおり、6C7による処置は、80%のTGIで有意な単剤活性を有する。最適以下の用量のベルケイド(Velcade)と併用すると、6C7は92%TGIに改善する。
このモデルは、予め樹立された骨への転移に良好なモデルであり、現存する転移の減少又は消失の効力が評価される。
実施例15:バーキットリンパ腫異種移植モデルにおける効力
抗CXCR4抗体6C7を、バーキットリンパ腫の異種移植モデルにおいてヒト腫瘍成長を阻害するその能力についても試験した。ラモス(ヒトバーキットリンパ腫)細胞株を、10%ウシ胎仔血清及び2%L−グルタミンを含有するRPMI1640培地中、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。4〜6週齢のヌード雌性マウス(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN)に皮下注入した。腫瘍を約100mm3に成長させ、動物を腫瘍サイズに基づき無作為に対照群と処置群とに分けた後、投与を開始した。キャリパー計測により腫瘍サイズをモニタし、容積=0.5×長さ×幅2の式を用いて腫瘍容積を概算した。抗体を、滅菌PBSの溶液中において週2回、指示される用量で腹腔内投与した。図13に示すとおり、樹立した腫瘍を6C7抗体で処置すると、腫瘍成長の低下がもたらされた。
実施例16:肺への卵巣癌播種性静脈内モデルにおける効力
抗CXCR4抗体6C7を、肺における播種性卵巣癌モデルを使用して、SCIDマウスにおけるヒト腫瘍成長を阻害するその能力について試験した。ヒト卵巣癌株HeyA8Luc+クローン4を、10%ウシ胎仔血清及び1%L−グルタミンを含有するRPMI1640培地中、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。この実験の結果を以下に詳細に記載する。
4〜6週齢のSCID雌性マウス(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN)に、HeyA8Luc+クローン4(PBS中1×106個)を200μlの総容積で静脈内注入した。10匹の動物のコホートを、体重に基づき無作為に対照群と処置群とに分けた後、投与を開始した。IVIS(登録商標)スペクトルで毎週イメージングすることにより、腫瘍発生をモニタした。イメージングの15分前に、マウスには滅菌XenoLight(商標)D−ルシフェリン−K+塩を15mg/mLの濃度で腹腔内投与した。
6C7を滅菌PBSの溶液で週2回、指示される用量で腹腔内投与した。マウスには予防的に、或いは治療的に投与した。6C7抗体による播種性腫瘍の処置は、HeyA8卵巣癌細胞を用いた肺腫瘍成長を阻止した(図14A)。予防的及び治療的投与は等しく有効であった。治療的投薬スケジュールを用いて6C7で処置したマウスは33日目のみイメージングした。処置開始後33日目に採取したエキソビボでの個々の肺の散布図(図14B)及びこれらの肺のH&E染色(暗褐色=肺転移)(図14C)から、6C7がHeyA8卵巣細胞株を使用した肺転移を阻止したことが示される。
実施例17:慢性リンパ性白血病(CLL)静脈内腫瘍モデルを使用した生存の増加
抗CXCR4抗体6C7を、CLLの播種性静脈内モデルを使用したhuCXCR4 SCIDマウスの生存を増加させるその能力について試験した。ヒトCLL癌株JVM−2を、20%ウシ胎仔血清及び1%L−グルタミンを含有するRPMI1640培地中、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。これらの実験の結果を以下に詳細に記載する。
4〜6週齢のhuCXCR4 SCID雌性マウス(Taconic,Germantown,New York)に、JVM−2 CLL細胞(PBS中10×106個)を200μlの総容積で静脈内注入した。10匹の動物のコホートを、体重に基づき無作為に対照群と処置群とに分けた後、投与を開始した。抗体を滅菌PBSの溶液で週2回、6日目に開始して21日目に終了して、指示される用量で腹腔内投与した。6C7抗体による処置により、未処置動物と比べて生存の増加がもたらされた(図15A)。腫瘍細胞動員を誘導するCXCR4抗体の潜在的有用性のさらなる探索において、同じ投与スキームを用いて播種性JVM−2モデルで6C7(10mg/kg)抗体をリツキサン(Rituxan)(登録商標)(3.0mg/kg)と組み合わせて投与した。リツキサン(Rituxan)(登録商標)と組み合わせた6C7は、未処置マウスと比べて〜135日の生存期間中央値の増加を示す(図15A)。
抗CXCR4抗体6C7は、CLLの第2の播種性静脈内モデルを使用したSCIDマウスの生存を増加させるその能力についても試験した。ヒトCLL癌株JVM−13を、20%ウシ胎仔血清及び1%L−グルタミンを含有するRPMI1640培地中、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。これらの実験の結果を以下に詳細に記載する。4〜6週齢のSCID雌性マウス(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN)に、JVM−13 CLL細胞(PBS中10×106個)を200μlの総容積で静脈内注入した。10匹の動物のコホートを、体重に基づき無作為に対照群と処置群とに分けた後、投与を開始した。抗体を滅菌PBSの溶液で週2回、6日目に開始して21日目に終了して、指示される用量で腹腔内投与した。6C7抗体による処置により、未処置動物と比べて生存の僅かな増加がもたらされた(図15B)。腫瘍細胞動員を誘導するCXCR4抗体の潜在的有用性のさらなる探索において、同じ投薬スケジュールを用いて播種性JVM−13モデルで6C7(10mg/kg)抗体をリツキサン(Rituxan)(登録商標)(3.0mg/kg)と組み合わせて投与した。リツキサン(Rituxan)(登録商標)と組み合わせた6C7は、未処置マウスと比べて約30日の生存期間中央値の増加を示す(図15B)。
実施例18:エピトープマッピング
CXCR4のエピトープマッピングを行い、抗体6C7に対する結合部位を同定した。
A.ヒト/マウスキメラCXCR4変異体の構築及び発現
ヒト及びマウスCXCR4間で細胞外ループを交換することにより、スワップ突然変異体を構築した。マウスCXCR4は抗体6C7により認識されなかったが、ヒトCXCR4と高い配列同一性を共有する。ヒトCXCR4の以下の領域をマウスの対応領域に置き換えることにより、7個のキメラ変異体を構築した:N末端ペプチド、第1細胞外ループ、第2細胞外ループ、第3細胞外ループ、N末端ペプチド及び第2細胞外ループ、N末端ペプチド及び第3細胞外ループ、第2及び第3細胞外ループ。全ての変異体をコードするcDNAを構築し、オーバーラップ伸長PCRにより、インハウスの完全長ヒト及びマウスCXCR4プラスミドを鋳型として用いて増幅した。構築されたcDNAを哺乳類発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)にクローニングし、リポフェクタミンLTXトランスフェクション試薬(Invitrogen)を製造者の指示に従い使用して変異体をCHO懸濁細胞にトランスフェクトすることにより、一過性に発現させた。
B.これらのキメラ変異体に対する抗体6C7の結合のフローサイトメトリー特性決定
ヒト/マウスCXCR4キメラ変異体コンストラクトをトランスフェクトした細胞を、0.5μg/mLの抗体6C7と共に氷上で1時間インキュベートした。結合した抗体6C7の検出のため、細胞を冷温のPBSで3回洗浄し、1μg/mLの抗ヒトIgG抗体Alexa Fluor(登録商標)488(Invitrogen)と共に氷上で30分間インキュベートし、次にLSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。マウス第2細胞外ループを含む変異体のタンパク質発現を、検出用のラット抗マウスCXCR4(R&D Systems)mAbと、続いて抗ラットIgG抗体Alexa Fluor(登録商標)488(Invitrogen)でモニタした。ヒト第2細胞外ループを含む全ての変異体の発現レベルを、PEコンジュゲート抗ヒトCXCR4クローン12G5(Biolegend)を使用してモニタした。これらの実験の結果を図16に示す。
ヒトCXCR4のマウスCXCR4とのドメインスワップから、抗体6C7がCXCR4の第2ループに結合することが示された。ヒトCXCR4における第2ループはマウスCXCR4より5アミノ酸短い。また、第2ループは7個の個別的な残基の違いを有する。これらの単一アミノ酸の違いの第1のものが、ヒトに存在してマウスに存在しないN−グリコシル化コンセンサス配列の欠損をもたらす。
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