温度補償機能付プレーナアレイ導波路回折格子(AWG)のための改良されたフォーマットによって、性能を犠牲にすることなく、加工の低コスト化とフットプリントの縮小が可能となる。AWGは、アレイの両端にスラブ導波路を備えるプレーナ導波路アレイを有する。スラブ導波路は光の空間分散という重要な機能を実行し、それによってビームの発散および/または信号の干渉を提供して空間波長分離が行われるようにする。寸法は、かなりの程度、光学的要求によって決まるが、AWGの寸法は、ミラーを使ってスラブ導波路内の光路を折り返すことにより大幅に縮小できることがわかっており、スラブ導波路の物理的な大きさを縮小しながらも、スラブ導波路内の経路全体の長さは基本的に維持される。さらに、本明細書で説明する改良を利用することによって、導波路において、望ましい入力と出力アクセスをコアの回折光子に隣接させてルーティングすることができる。このような改良がなければ、AWGの構造は、アクセス導波路がコア回折格子から遠くにルーティングされたものとなる。アクセス導波路を隣接させてルーティングすると、光回路の面積の利用が格段に効率的となり、それによってAWGデバイスの実際の大きさが実質的に縮小される。それゆえ、大きさの望ましい縮小は、スラブ導波路の小型化のほか、入力および出力アクセス導波路の位置決めの改善によっても実現される。
この小面積フォーマットでは、無動力の、すなわち「受動的」温度調整を利用して、実際の温度範囲での温度補償機能を有する小フットプリントのAWGを作製でき、それによって、AWGの性能が事実上、温度非依存性となる。当該技術分野では、受動的温度補償機能を備える構成部品は、たとえそのデバイス内の機能材料に温度変化が生じても、アサーマル構成部品と呼ぶことができるが、受動的温度補償は、より正確には、その構成部品の機能性を説明する。代替的実施形態において、手動アクチュエータを使ってAWGを通る中心波長の光路を調整でき、それと同時に、本明細書に記載の改良型設計で得られるコンパクトなフォーマットも利用できる。このような場合、それに加えて、受動的温度補償機能も実行できる。あるいは、手動で調整可能なアクチュエータを用いた構成は、その他の公知の温度特性補償手段を使用してもよく、例えば、デバイスに積極的に一定の温度を供給する方法があり、用途によってこのような他の手段のほうが好ましい。本明細書に記載の改良型デバイスの、より小さなフットプリントによって、より多くのデバイスをシリコンウェハ等の基板上にパターニングすることができ、このようなより多くのデバイスは同じ加工能力で相応に形成でき、デバイス1つ当たりのコストは相応に削減される。
AWGを通じた光信号の伝送は、温度変化によって損なわれる可能性がある。温度変化は光回路の寸法と屈折率を変化させ、これによって、中心波長(CW)、すなわち、光集積回路(PIC)のあるチャネルのピーク伝送の波長をシフトさせる。本明細書では、温度が変化した時に信号精度が保持されるように有効な温度補償を行うAWGが組み込まれた光アセンブリを説明する。AWGの一方または両方のスラブ導波路を通る光路を変更して、回折格子内の温度変化の影響を受動的に補償することが可能である。いくつかの実施形態において、AWGの温度調整では、温度によりその位置および/または向きを変化させ、信号がAWGを通って伝送される際にその経路を変化させる可動式ミラーで信号を反射させる。可動式ミラーのいくつかの実施形態は、温度変化に感応するアクチュエータによって移動される旋回可能な反射体またはミラーを含む。AWGと温度補償のための関連構成部品は、当該技術分野ではアサーマルAWGと呼ぶことができ、これはこれらが有効かつ自然に、温度管理された室内または箱体の外でのネットワーク応用で遭遇しうる温度変化を補償して、信号伝送が完遂されることを意味する。AWGの用途は、ネットワーク内での信号の方向付けである。
反射体またはミラーを旋回させることによって温度調整が行われる一方で、ミラーはまた、相応にデバイスの全体的大きさを縮小できる、スラブ導波路の大幅な小型化も可能にする。チャネル導波路の、AWG構成部品へのアクセスエッジの位置決めに基づいて、スラブ導波路を通る光路は2つの部分に分割される。アクセスエッジを、アクセスエッジでの光路とミラーに対する法線との間の角度が約45度以下となるように設置することによって、スラブ導波路を大幅に小型化でき、それに対応して、光路の2つの分枝を、約2以下の係数で相互に異なるように調整できる。それゆえ、デバイスのフットプリントを大幅に小型化でき、その一方で温度補正を提供できる。
本明細書で説明するように、AWGは、より長距離の光伝送ネットワークに適切に接続可能なプレーナ光波回路の中に組み付けられる。プレーナ光回路は一般に、適当な光学材料、一般にはシリカ系ガラスの平坦な基板上に形成され、その基板の上に積層およびパターニングされて所望の光路が形成される。適当な波長範囲の光を、当該技術分野で従来行われているように、異なる光学材料間の屈折率の差が適当であるような屈折率導波に基づいてパターニングされた光路に限定することができる。
ネットワークは一般に、送信者から受信者へと信号をルーティングするための適当な切替機能を含む。効率的な伝送およびルーティングシステムとするために、個々の信号は一般に、1本の光ファイバに沿って、より長距離にわたり伝送するために合成され、後に、意図された受信者へと適正にルーティングするために分離される。個別信号は、各個別信号に関連付けられる別の波長の数値または範囲を使って識別できる。このような一般的な主題は様々な伝送技術に適用できるが、ここでは特に光信号に関心を向ける。光信号は大量の情報を伝送する能力を有するが、光信号には、光信号の取扱いに関する明らかな課題も伴う。本明細書に記載のAWGデバイスは一般に、少なくとも約8種類の波長まで、および多くは約100種類の波長を合成または分離するという現在の要求に合わせて設計され、その波長群は一般に、波長範囲のだいたい約40nm〜60nmの領域内に入る。しかしながら、本明細書に記載の改良型の光チップ設計は、現在使用されているものより広い性能範囲を有するAWGに、より広く適用可能である。集合(group)の中心波長の数値は光ネットワークのパラメータに合わせて設計され、現在は一般に、約1250nm〜約1650nmの範囲内に入るが、将来のネットワーク設計は他の波長範囲にわたることもある。
複数の信号、例えば光信号を共通に伝送するために合成することは、波長多重と呼ぶことができ、これは、異なる波長の信号を共通の信号内に合成することを示す。合成された、異なる波長を有する信号、例えば光信号を分離することは、波長分離と呼ぶことができる。デバイスの中には、1つの方向に伝送される光信号を使用する波長多重と反対方向に伝送される光信号に関する波長分離を行うものがあり、それによって共通のデバイスを両方の機能に使用できる。MUXとdeMUXという表現は、本明細書において、それぞれ波長多重および波長分離機能の代わりに使用され、本明細書において使用される「D/MUX」の表現は、あるデバイスの波長多重および/または波長分離の複合的もしくは選択可能な機能、またはこれらの機能を実行する構造を示す。
温度補償AWGは、あるネットワーク内のMUX、deMUX、またはD/MUXデバイスとして使用するように設計できる。AWGは、光信号源、例えば光ファイバに容易に接続できるアセンブリの中にあってもよい。代替的または追加の実施形態において、AWGは、対応する光信号源に直結(hard connected)することができ、その後、ハウジングから延ばして光ネットワークに組み込んでもよい。このアセンブリを、多重波長信号キャリアと分散型光信号キャリアとの接続を受け入れるか、これらとの接続を有する1つのハウジング内に設置してもよい。第一と第二のキャリアは入力または出力であってもよく、ここで、入力と出力という用語はAWGのD/MUX機能を鑑み、どちらでもよい点に留意する。光信号キャリアという用語は、この文脈において、広い意味であり、光ファイバ、ファイバ束、ファイバリボン、導波路またはその他の信号伝送用構成部品を指す。光信号キャリアはネットワークの一部であってもよく、AWGに動作的に接続可能であってもよい。
温度補償AWGを提供する1つの方法は、Purchaseらの、“Athermal AWG and AWG With Low Power Consumption Using Groove of Changeable Width”と題する米国特許第7,062,127号に記載されており、同特許を参照によって本明細書に援用する。‘127号特許の構造では、2つの部品片からなり、これらの部品片間に溝またはギャップがあるベースにAWGを設置することができる。アクチュエータは、温度変化に応答して長さが変化し、それによってベースの部品片の相対的な位置を調整し、温度補正を行う。ミラーをAWGの中に組み込むことができ、それとともにAWGのスラブ導波路のための特定の折り返し方式が採用された。折り返し方式は一般に、1つの面が光信号の受信を専門に行う多面形のスラブ導波路と、他の面を通る信号を反射するミラーと、を含んでいた。これらの面は離間され、相互に異なる方向を向き、入射光と反射光の間の角度は略垂直であり、スラブ導波路に関する空間要求はかなり大きかった。温度調整は、ミラーとスラブ導波路をヒンジにより結合されるベースの別々の部品片に取り付け、アクチュエータがヒンジの周囲でベースの各部品片を相互に関して移動させ、ミラーとスラブ導波路の相対的な位置を変更できるようにすることによって提供された。
比較的コンパクトなAWGを形成する別の方法は、Zirngoblの、“Waveguide Grating Router and Method of Making Same Having Relatively Small Dimensions”と題する米国特許第5,745,616号において提示されており、同特許を参照によって本明細書に援用する。‘616号特許に記載されているように、自由空間領域は、導波路アレイの端に隣接する光を拡散させるために使用される。ミラーが、自由空間領域を折り返すものとして提案された。これらの折り返し方式には一般に、前述のような略垂直な2つの面を使用することか、またはスラブ導波路に1つのミラーではなく2つのミラーを使用する方式が含まれていた。これに対して、本明細書に記載の方法では、導波路内の2つのミラーを不要とすることができる。さらに、いくつかの実施形態によれば、スラブ導波路をより急峻に折り返すことができ、その結果、より大幅に小型化することが可能となる。また、本明細書で教示される構成にはまた、旋回式ミラーを使用した効率的な温度補正の提供も含まれる。
さらに特記すべき点として、‘616号特許はInP導波路に関しており、これは約3.5という非常に大きな数値の屈折率とそれに対応する高屈折率差に基づく。屈折差の数値か大きいと、法線から斜めに離れる表面を通じた伝送に関して大きな損失が生じる可能性があり、それによって、設計上考慮すべき点が、それに対応するシリカ系ガラスに関して考慮すべき点と大きく異なる。‘616号特許の教示はそれゆえ、旋回式ミラー等の、離間された光構成部品との関係(interface)からはかけ離れている。本明細書に記載の設計により、スラブ導波路の周囲に配置された構成部品の改良された相互作用と、旋回式ミラーまたはその他を収容するために、光構成部品の縁辺を越えて延びる構成部品の使用が可能になるという、複合的な利点が得られる。本明細書に記載のデバイスでは、例えばスラブ導波路とミラーとの間の自由空間には、ミラーの旋回を妨げない屈折率の一致する組成物、例えばゲル、グリースまたは接着剤を充填することができる。本明細書に記載のデバイスにおいて、チップの外部の光路を十分に短くして、導波路信号のビームウェストの範囲内に入るようにすることができ、それによってビーム管理に使用される光構成部品を追加することなく、回折損失をなくせる。
AWGの中で温度補正を行う他の方法は、米国特許第6,701,043号に示されている。光ファイバが、AWGに光を供給するレンズに接続される。レンズは温度変化に応答して移動可能なミラーを有する。AWGのための余分なレンズは、コストと製造の複雑さの原因となる。レンズは余分な光学素子であり、これが光学系の効率を低下させうる。さらに、スラブ導波路を通る光路はそれほど折り返されないため、‘043号特許はスラブ導波路の大幅な小型化について教示していない。これに対して、本明細書では、導波路から光を受け、この光を導波路へと直接、すなわち光学素子を介さずに反射する反射面を備える折り返し型スラブ導波路が提供され、本明細書に記載のスラブ導波路を通る光路では、スラブ導波路を通る光路を大きく折り返し、スラブ導波路のフットプリントの大幅な削減を実現する。
図1は、温度補償AWGのある実施形態を示しており、これは、レンズを使用せず、スラブ導波路の縁辺から非常に小さい間隔を空け、その一方で、温度補償の動作を提供するために調整のための十分な距離を保持しながらミラーを設置することによる、スラブ導波路を通るコンパクトな折り返し光路と低損失に基づき、大幅な改善を提供する。チップ100は、基板104の上の光アセンブリ102を含み、デュアルコネクタ106が第一のネットワーク光信号キャリア108と第二のネットワーク光信号キャリア110の間を光学的に接続する。光アセンブリ102は、第一のスラブ導波路112と、第二のスラブ導波路114と、アレイ導波路116と、を有し、これらが光学的に接続されて、アレイ導波路回折格子を提供している。スラブ導波路114は、アクセスエッジ113と反射エッジ115を有する。光アセンブリ102はさらに、反射面119を有するミラー118とアクチュエータ120を含むミラーアセンブリ117を有する。
ミラーアセンブリ117は、ヒンジ122により、基板104に隣接するようにチップ100に接続される。アクチュエータ120は固定具124で支持される。固定具は、直接または間接に支持手段104、チップ100に取り付けられても、またはアクチュエータ120を保持するようにその他の方法で固定されてもよい。ヒンジおよび/またはミラーアセンブリおよび/または固定具は、チップまたは基板に直接固定されてもよい。光集積回路は、単独の材料で作製されてもよく(モノリシック)、ミラーアセンブリが直接その材料に固定される。例えば、図1の実施形態において、ミラーアセンブリとアクチュエータはどちらも基板104だけに接続され、PICはモノリシックである。導波路128は、ネットワークキャリア108と、スラブ導波路114のアクセスエッジ113との光学的接続のための接続点129に光学的に接続される。代替的実施形態において、導波路128は複数の、いくつかの導波路、例えば2〜5の導波路と置き換えることによって、波長多重された光信号を供給または受信できる。内部キャリア130は、スラブ導波路112に光学的に接続される。ネットワークキャリア108を通る光信号は、内部キャリア128に、そしてアクセスエッジ113を通ってスラブ導波路114の中に伝えられる。光信号は素子114の中を、矢印132a、132bで例示される経路に沿って反射エッジ115に入り、また出るように通過し、ミラー118が反射面119で信号を反射して、スラブ導波路114を通り、アレイ導波路116の中に至らせる。信号はアレイ導波路116を通り、スラブ導波路112を通り、波長分離された(分散された)信号134として生成され、これらが分散信号導波路130の集合によって受信され、これが今度は、光ファイバのリボンとすることのできる外部キャリア110にその信号を伝える。光信号は、AWGが波長分離(統合)モード(de−multiplexing (integrative) mode)にある時、同様に逆の順序をたどることができる。図1の実施形態は、デュアルコネクタ106を結合する光信号キャリア108と110を示している。デュアルコネクタは一体であってもよく、これは、外部光信号キャリアに固定されて、これらを、AWGアセンブリを含むパッケージの内部の信号キャリアに光学的に連結する単独のハウジングを有することを意味するが、必要に応じて他のコネクタの設計も使用できる。
ミラー118はヒンジ122の周囲で旋回可能であり、アクチュエータ120を圧迫するように付勢されていてもよい。ミラーアセンブリ117は、ミラー118用のマウント121を有し、例えばスロットまたはその他の凹部にアクチュエータ120の遠位部136を受ける。いくつかの実施形態において、遠位部136はミラーに固定され、ヒンジ122はその分、付勢されない。アクチュエータ120は温度応答性材料を含み、これは温度変化に応答して、ミラー118の遠位端138を矢印Aで示されるように旋回させる。アクチュエータ材料は、AWGを通過する光の経路を変化させるのに必要な量だけ膨張または収縮させるような熱膨張津を有するように選択されてもよい。矢印132aと132bの間の角度αは、ミラー118に入射する光線とそこから反射される光線の間の角度を示す。角度αは、ミラー118が回転すると変化する。パッケージ100の内側の温度が変化すると、アクチュエータ120の長さが変化して、ミラー118を回転させる。ミラーの回転は、例えば約0.1〜約100ミリラジアンの間、また別の実施形態では約1〜約25ミリラジアンの間であってもよい。当業者であればすぐにわかるように、明記された角度範囲内に入るすべての範囲と数値が考えられる。
図1の実施形態は、折り返し光路型スラブ導波路を示しており、これは光信号の進入と放出のための1つのアクセスエッジ113を有する。矢印132a、132bは、アクセスエッジ113を通る光信号の入射と出射を示し、光の入射と出射の間の角度は記号α(アルファ)で示される。アルファを制限することによって、折り返し型スラブ導波路とそれに伴う筐体(パッケージ)のフットプリントをより小さくすることができ、実施形態は約80度以下の角度、またいくつかの実施形態では約3〜約70度、別の実施形態では約5〜約60度の角度を含み、当業者であればすぐにわかるように、明記された範囲内に含まれるすべての範囲と数値が考えられる。アルファの角度を小さくすることにより、信号品質を低下させることなく、コンパクトなAWGフォーマットを提供できる。共通のアクセスエッジ113がチャネル導波路129への光学的接続と導波路アレイ116への光学的接続の両方のために使用されているため、光路の各々の部分から、すなわちチャネル導波路129からミラーまでの距離と導波路アレイからミラーまでの距離は基本的に等しい。
折り返し光路型スラブ導波路の別の実施形態が図2A、2B、2Cに示されている。図2Aを参照すると、折り返し光路型スラブ導波路160はミラー162に隣接する状態で示されており、これは温度変化に応答して旋回しても、しなくてもよい。スラブ導波路160はさらに、チャネル導波路164と導波路アレイ166に光学的に接続される。チャネル導波路164は、アクセスエッジ168においてスラブ導波路160と接続し、導波路アレイ166は、アレイエッジ170においてスラブ導波路160と接続する。チャネル導波路164からの光路はミラー162により反射され、角度アルファの反射を通じて導波路アレイ166に到達する。代替的実施形態が図2Bに示されている。図2Bに示されるように、折り返し光路は、チャネル導波路174間を、アクセスエッジ176を通じてスラブ導波路178に入り、ミラー180により角度アルファで反射され、アレイエッジ182を通って導波路アレイ184の中へと進む。この実施形態において、アクセスエッジ176はアレイエッジ182に関してミラー180に向かって移動されている。折り返し光路型スラブ導波路の別の代替的実施形態が図2Cに示されている。この実施形態では、折り返し光路はチャネル導波路186の間を、アクセスエッジ188を通ってスラブ導波路190に入り、ミラー192により角度アルファで反射され、アレイエッジ194を通って導波路アレイ196の中へと進む。この実施形態において、アクセスエッジ188はアレイエッジ194に関してミラー192から離れるように移動されている。
図2Aと2Bのスラブ導波路の実施形態では、図1に関して説明した角度の範囲は依然として適当であり、これらはスラブ導波路のこれらの構成にも同様に適用される。これらの実施形態において、光路の2つの分枝は概して等しい長さではない。具体的には、チャネル導波路がスラブ導波路と接続するアクセスエッジからの距離は、ミラーから、導波路アレイがスラブ導波路と接続するアレイエッジまでの距離と異なる。一般に、アクセスエッジからミラーまでの距離とアレイエッジからミラーまでの距離の比は約0.5〜約2、別の実施形態では約0.7〜約1.5、別の実施形態では約0.8〜約1.25である。当業者であればわかるように、上記の明確な範囲内のその他の距離の比の範囲も考えられ、本願の範囲に含まれる。図1、2A、2B、2Cに示されるチャネル導波路は1つの合成信号導波路として示されているが、これらは複数の合成信号導波路または分散信号導波路の集合に置き換えることができ、これについては代替的実施形態に関して以下に詳しく説明する。
図1においてαとして示されているこの角度を小さくすることによって、ミラーの小さな動きで角度を変えることにより温度補正を提供することが可能となる。折り返し型スラブ導波路のためのミラーは、ミラーの反射面で光を反射して、光が大幅な損失なくスラブ導波路に再び入るように選択され、位置付けられる。大幅な、という用語は、この文脈では、その損失がいずれも信号伝送の達成を阻止せず、好ましい実施形態において、本明細書で説明する改良された小型設計を用いずに構成された同等のデバイスと比較して、光損失の増加分が1−dB未満であることを意味する。温度補正のための調整角度を小さくすることができるため、ミラーは、ミラーの反射面と、スラブ導波路のうち、光をその反射面へと通過させる面(反射エッジと呼ぶ)の間に小さなギャップを設けて設置してもよい。ギャップは、約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲であってもよく、当業者であればすぐにわかるように、明記された範囲内のすべての範囲と数値、例えば約2マイクロメートル〜約20マイクロメートルまたは約10マイクロメートル未満も考えられる。流体、ゲル、可撓性接着剤またはその他を、ミラーの旋回を大きく阻止することなく膨張率の差を補うためにギャップに充填でき、そのための適当な組成物は当該技術分野で周知であり、時間をかけて商業的改良が加えられる。温度補正を実現するために、ミラーの反射面を小さな量だけ、すなわち基準位置から約+50ミリラジアン〜約−50ミリラジアンだけ旋回させてもよいが、当業者であればすぐにわかるように、明記された範囲内のすべての範囲と数値、例えば基準位置から約+10ミリラジアン〜約−10ミリラジアン、またはいくつかの実施形態においては、基準位置から約+3ミリラジアン〜約−3ミリラジアンも考えられる。旋回という用語は、反射面で反射された光の角度を変化させる運動を意味する。
ミラーという用語は、所望の動作波長範囲の光信号の反射に適した反射材料を含む。したがって、ミラーという用語は、光反射体、金属コーティングされたミラー、例えば銀メッキされたミラー、反射鏡基板、全反射ミラー、周期的反射板、多層干渉ミラー等を含む。干渉ミラーはしばしば、積層薄膜蒸着方法、例えば物理的気相成長法(蒸着またはイオンビーム援用蒸着を含む)、化学的気相成長法、イオンビーム蒸着、分子ビームエピタキシ、スパッタ蒸着等に基づく。干渉ミラーのための一般的な材料は、フッ化マグネシウム、二酸化シリコン、五酸化タンタル、硫化亜鉛、オキシ窒化シリコン、化合物半導体、二酸化チタンである。
ミラーは、アクチュエータで移動されてもよく、これは一般に、受動的に温度調整しても、または手動で調整してもよい。いくつかの実施形態において、アクチュエータは温度応答性材料を含んでいてもよく、これは、ガラスまたはシリコンと比較して、温度変化に応答して大きく膨張/収縮する材料を意味し、それによって温度応答性材料の運動を、本明細書で説明するような温度補正を行わせるために使用してもよい。温度応答性材料は、金属、金属合金、セラミック、硬質プラスチック材料またはこれらの複合材料または、流体駆動ピストン等の複合アセンブリであってもよい。金属および金属合金の例としては、アルミニウム、真鍮、青銅、クロム、銅、金、鉄、マグネシウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銀、ステンレススチール、錫、チタン、タングステン、亜鉛、ジルコニウム、Hastelloy(登録商標)、Kovar(登録商標)、Invar、Monel(登録商標)、Inconel(登録商標)およびその他の1つまたは複数がある。温度応答性材料は、PICまたはAWG材料に関して、または別の支持構造に関して熱膨張率の差が生じ、その熱膨張の差が、アクチュエータの膨張/収縮によってミラーの相対的運動を誘導となるように選択されてもよい。1つの実施形態において、(例えば、アクチュエータの温度応答性部材とモノリシックに形成されたPICおよび/またはAWGとの間の)熱膨張率の差は少なくとも約100%である。他の実施形態において、熱膨張率の差は少なくとも約200%である。また別の実施形態において、熱膨張率の差は少なくとも約300%であり、当業者であればすぐにわかるように、明記された範囲内のすべての範囲と数値も考えられる。手動で調整するアクチュエータは、ねじ、楔またはその他、所望の温度で動作するためにコンパクトなデバイスフォーマットを利用するためにAWGを通る所望の光路を提供するようにミラーを位置付けるために使用できるその他の調整手段を含む。手動で調整可能な実施形態に関して、関連する構造的構成部品は相互に同じ材料でも、または同等の熱膨張率を有する材料でも製造できる。
アクチュエータは組成においてモノリシックとすることができ、これは、基本的に1つの材料で作製されることを意味し、基本的にこの文脈において、他の材料が存在しても、温度補償AWGにおいてそのアクチュエータの機能を実行するように設計された温度によるアクチュエータの寸法の変化を大きく変えないことを意味する。あるいは、アクチュエータは、独立して膨張および収縮することができ、それによって一方または他方がミラーの回転を制御できるような、複数の統合された、または異なる材料を含んでいてもよい。例えば、2種類の温度応答性材料を、明確に異なる温度応答係数を有する材料で分離してもよい。
あるいは、複数の温度応答性材料を接続して、それらの寸法変化がアクチュエータの運動に影響を与えるようにしてもよい。バイメタルストリップはこのような実施形態の一例である。例えば、実質的にまっすぐなバイメタルストリップは、温度変化に応答して折れ曲がるか湾曲できる。
アクチュエータは、温度によって引き起こされるミラーの回転を実現するのに適したどのような形状で提供されてもよい。したがって、これは実質的に直線的、実質的に平坦であっても、あるいはコイル状であってもよい。例えば、材料が三次元で熱膨張/収縮しても、アクチュエータは、熱膨張/収縮を利用して、1つの次元の運動を起こさせるように設計されてもよい。例えば、モノリシック材料の円柱形ロッドは一般に、その中心軸の周囲で膨張、収縮し、それによって、長さという1つの寸法が制御し、その設計に基づいて、ロッドの直径の温度による変化は重要ではないものとなる。あるいは、アクチュエータは、例えば1つの平面等の二次元、または3次元すべてにおける、温度により駆動される有益な運動を提供するように設計されてもよい。
アクチュエータは、温度応答性部分と温度非応答性部分を有するアセンブリとして提供されてもよい。例えば、非応答性材料のホルダが、自由に運動できる温度応答性材料に固定されてもよい。ホルダは同様にミラーまたはミラーアセンブリの非可動部分に関して動かない位置に固定される。
代替的なアクチュエータの実施形態と、2つの折り返し光路型スラブ導波路を有する温度補償AWGのある実施形態が図3Aと3Bに示されている。光アセンブリ200は、光学ガラスまたはその他の適当な材料で作製されるモノリシック部材202の上の光回路201を含む。光回路はアレイ導波路回折格子204を含み、これは導波路アレイ210によって結合された第一のスラブ導波路206と第二のスラブ導波路208からなる。第一のアクセスエッジ212は第一のスラブ導波路206に光学的に接続され、第二のアクセスエッジ214は第二のスラブ導波路素子208に光学的に接続される。図3Aにおいて、第一のアクセスエッジ212は回路201の統合側213に結合され、第二のアクセスエッジ214は回路201の分散側215に結合される。第一のスラブ導波路206はミラー216を含み、第二の光誘導素子208はミラー218を含む。温度補正アクチュエータ220は第一と第二の温度応答性アクチュエータ部材222、224を有し、これらは、温度非応答性で、部材222と224の熱膨張率より実質的に低い熱膨張率を有する材料で作製された連結部材(ストラットとも呼ばれる)226、228によって結合される。ストラット部材228は、直接または間接にモノリシック部材202に固定される。連結用ストラット部材226はミラー218に接続され、ストラット部材226は少なくとも1自由度で移動でき、その運動がミラー218を旋回させる。したがって、ストラット部材226は、ミラー218に糊付けされ、融着され、またはそれと一体に形成され、または張力により対抗される静的接触を形成してもよい。
使用時に、アセンブリ200は、アレイ導波路回折格子204の性能を変化させる可能性のある温度変化に曝されるかもしれない。しかしながら、温度変化によって温度応答性部材222および/または224の寸法が変化し、ストラット部材226を回転させ、それによってミラー218を旋回させるための力が生成される。ミラーは、ミラーとモノリシック部材202の間のヒンジ(図示せず)の周囲で旋回してもよく、または動かない固定点により制約されない。1つの実施形態において、ミラーはその中心の周囲で旋回する。あるいは、部材222、224のうちの一方だけを、熱膨張率が比較的大きい温度応答性材料で作製してもよく、それによって温度変化が、部材222、224のうちの一方の寸法を変化させ、旋回を制御する。これにより、ミラーが応答性部材の接触部と反対の縁辺を中心に旋回する実施形態が提供される。
ミラー216は、図3Aに示される実施形態では、移動しない。しかしながら、その代わりに、温度補正用ミラー218の代用としてミラー216に温度補正を適用してもよい。または、AWGの、ミラー216、218を備える両端で温度補正を行ってもよく、これらはどちらも、温度変化に応答する移動によって温度補正される。
図3AのAWGの実施形態は、AWGの改良されたコンパクトなフォーマットにつながる多くの特徴を含み、これは、AWGをウェハから加工する際に、また適当なパッケージ内の光学的デバイスのために有利に使用できる。具体的には、AWGは2つの折り返し光路型スラブ導波路を含み、これによってデバイス全体のための特に小型のフォーマットが実現する。両方のスラブ導波路を、上述のようなミラーからの光学的角度範囲と、上述のような光路の別々の分枝の距離の比の範囲で構築することができる。2つの折り返し光路型スラブ導波路を用いた場合、合成信号と分散信号のためのチャネル導波路は同じ方向に向けられる。順方向導波路と逆方向導波路を、スラブ導波路を通る光路の角度によって、隣接する光路に沿って方向付けることが可能であるために、導波路アレイの周囲の導波路の、より小型の構成により、大幅な小型化を行うことができる。それゆえ、デバイスは、デバイスのフットプリント、すなわち平面の面積が、例えば約500mm2〜約7000mm2、別の実施形態では約500mm2〜約6000mm2、他の実施形態では約500mm2〜約5000mm2の範囲となるように構成できる。これに対応する寸法は、約25mm×40mm〜約65mm×85mm、別の実施形態では約30mm×45mm〜約55mm×75mmの範囲とすることができる。これらの寸法は、だいたい80mm×120mmの現在の市販のデバイスの大きさに匹敵する。本明細書に記載の設計技術はまた、PIC技術の通常の発展について予想される今後の小型化を補い、さらに促進することになり、将来はデバイスのフットプリントをはるかに小型化できる。当業者であればわかるように、明記された上記の範囲内に含まれるその他の寸法も考えられ、本開示に含まれる。
小型化により、デバイスは、プレーナ光回路の基板として一般的に使用される円形のシリコンウェハ上に、より有効に設置できる。より小型のデバイスを円形のウェハの上に効率的に設置することによって、廃棄材料が減り、デバイスをウェハのスライスに好都合な向きとすることができる。ウェハを不規則に切り出す技術が開発されており、例えば、Coleらの、“Apparatus and Method to Dice Integrated Circuits from a Wafer Using a Pressurized Fluid Jet”と題する米国特許第6,705,925号に記載されている。このような流体ジェットによる流体噴射切断技術を本明細書に記載のデバイスに使用できるが、効率的な直線エッジ切断方式を本明細書に記載の、より小型のデバイスに使用でき、不要に大きな量のウェハ空間を無駄にせずにすむ。それゆえ、本明細書に記載の、より小型のデバイスにより、ブレードダイシング、傷入れ作業と劈開作業またはエッチング作業と劈開作業の一体化を、デバイスの切り出しに有効に使用でき、これによってシリコンウェハ材料を大量に無駄にすることなく、大きな製造上の利点が提供される。
次に、接続する導波路のすべてを、効率的な態様として、PLCの共通の縁辺に集めることができ、この縁辺は図3Aの縁辺240である。この設計により、最終的なデバイスで使用するための光ファイバまたはその他が適当にまとめられるため、加工中の導波路の合理的なパターニングとPLCとの好都合な接続が可能となる。
温度補償AWGはパッケージの一部であってもよい。図4は、筐体302の内部に温度補償AWG 200とアクチュエータ220を備えるパッケージ300を示す。筐体は適当な温度特性を有することができ、その結果、チップに熱をゆっくりと伝えることを通じてAWGチップを有効に均一な温度とすることにより、過渡的な温度応答がデバイスの性能を変化させる可能性が低くなる。AWGは、反対の端にも他の光通信デバイスに接続するためのコネクタ(図示せず)を有する内部コネクタ304を介して光信号キャリア306、例えば光ファイバ集合またはリボンを介して接続される。ファイバリボンは、ゴムガスケットまたはその他のような弾性ブートを通じて筐体302の外に出すことができ、それによって剛性の筐体とファイリボンとの間の相互作用が減少する。パッケージ300はネットワークに容易に接続でき、光信号キャリアと接続してD/MUX機能を提供する。AWG 200の質量は他の構成部品より比較的軽くすることができ、それによってAWGは、パッケージの内部で浮動状態となるように設計してもよく、モノリシック構造202はコネクタ302に接続される以外には、パッケージに直接接続されていない。キャリア304は、回路201の分散側215と統合側213の両方のための光信号キャリアを含んでいてもよい。
本明細書に記載の温度補償AWGアセンブリは、AWGの中の光スラブ導波路(またはその他の光誘導用構成部品)の折り返し構成の結果として、堆積を縮小できる。折り返し光学系は、隣接する面に沿ってスラブ導波路に入る、またはそこから出る光信号を誘導することによって、さらに寸法を小さくすることができ、これは図3Aに示されており、この図は、面230、232とこれらの面の法線230’、232’を有し、α(アルファ)で示されるそれらの間の角度が約45度であるスラブ導波路を示している。すると、光は面を通って、表面に対して略垂直に入射および出射し、その表面でのあらゆる散乱損失が縮小される。角度アルファが比較的小さいため、スラブ導波路の光伝播領域の多くが折り返され、面128、130が隣接していることにより、スラブ導波路の小型のフォーマットが可能となる。角度アルフチァが小さいため、図1に示されるように、1つの平坦な面140を使用でき、信号の大きな損失は発生しない。これらの、またはその他の折り返し構成は、温度補正を行うためのアクチュエータのフットプリントを小さくできる構成によって補われてもよい。さらに、AWGとD/MUX回路は、蒸着とダイシング工程により形成される最小限の寸法のモノリシック構造であってもよい。
図5は、AWGの温度補正用ミラーアセンブリの代替的実施形態を示す。ミラーアセンブリ400は、マウント404に取り付けられた反射面402を有し、マウントは第一のアーム406と第二のアーム408に結合され、アーム自体はストラット410に結合される。アームの一方または、図の実施形態では、各アームは、それぞれアーム406、408のスロット412、414を有する。アーム406、408の、スロット412、414に隣接する部分はヒンジ416、418である。アセンブリ400は、反射面402がスラブ導波路に入る、およびそこから出る光を反射する位置となるように取り付けられる。温度が上昇すると、アセンブリは第一の位置420から第二の位置422に移動し、これは、アーム408がアーム406より膨張する傾向があるからであり、反射面402は、図4Cにおいて矢印Aで示されているように回転する。スロット412、414の寸法は、アーム414、412の寸法が変わると変化する。温度が低下すると、ミラーとスロットは位置420を通過して、アーム408がアーム406より収縮し、それによって反射面402は矢印Aで示される方向と反対に旋回する。材料と寸法は、アームが所望の量だけ旋回するように選択されてもよい。アームは、異なる熱膨張率を有するように選択されてもよく、より応答性の高い方の熱膨張率はシステムの中のもう一方または他の膨張率の105%〜300%の間であるが、当業者であればすぐにわかるように、明記された範囲内に含まれるすべての範囲と数値も考えられる。
プレーナ光回路は、化学的気相成長法(CVD)またはその他の蒸着工程を使ってウェハ上に形成でき、これについては後述する。光回路の形成が完了した後、ウェハは一般にダイシングされ、ミラー(適当な反射材料を備える)がダイシングされた縁辺に取り付けられてもよく、その縁辺はミラーを取り付ける前に研磨することができる。ウェハまたはその他の基板のダイシングは、ソー、ウォータジェット、レーザまたはその他適当な切断用具または技術を使って行うことができる。あるいは、ミラーアセンブリは、アクチュエータとともにAWGおよび回路と構成され、それらと統合されてもよい。一般に、複数の回路が1枚のウェハ上に形成され、本明細書に記載の小さなフットプリントにより、1枚のウェハにより多くのAWG回路を形成できる。このように1枚のウェハ上にAWG回路を高密度にパッキングすることで、そのウェハに関わる各AWGの材料費が削減され、また、一度により多くの回路を加工でき、これは、加工費が一般にウェハ数で償却されるからであり、このことにより、より多数のAWGにわたる堆積室などの製造設備の加工コストと資本コストが償却される。つまり、光回路のフットプリントの縮小は、生産効率の向上につながり、それにコスト削減と製造に関わる節約が伴う。
温度補償AWGの他の実施形態が図6Aに示されている。図3aのチップと同様のモノリシックプレーナ光波回路(PLC)500は、ベース502に取り付けられている。PLC 500は、温度補償AWG 504を有し、これはAWG 504に取り付けられた第一のミラーアセンブリ506とベース502に取り付けられた第二のミラーアセンブリ508を含む。ミラーアセンブリ506、508は、折り返し型導波路510、512の部材として形成された反射面を備えるミラーからなる。ミラーアセンブリ506は、位置が変わらない。外部光学導波路514、516は、PLC 502のためのネットワークまたはその他の構成部品との光通信を提供する。ベース502は、例えばスレッドナット(thread and nut)524でベースに固定されたアクチュエータ520を含む。ベース502はまた、第一のネック526と第二のネック528を有する。穴530は、両方のネックに隣接し、各ネックの少なくとも片側を画定する。アクチュエータ520は温度応答性材料を含む。温度が変化すると、アクチュエータ520は、矢印Xに示されるように膨張または収縮する。この運動によって、ミラーアセンブリ508は矢印Yに示されるように旋回する。ネック526、528によって、アクチュエータにより生成される力の作用を受ける断面積が比較的小さくなり、また、小さな面積であるために、ネックでの旋回/屈曲が可能となり、それがミラーアセンブリ508を相応に旋回させる。AWG 504と折り返し型スラブ導波路512が小さいことが特に、ミラーアセンブリ508の中のミラーの小さな回転で温度補正の提供を可能にする。アクチュエータ520の膨張/収縮による力はベース502全体に分散するだけでなく、ネックに集中し、その結果、温度によるスムーズで予想可能な変化が実現する。
図6aに示されるプレーナ光波回路には、手動で調整するアクチュエータを利用できる。手動で調整するアクチュエータを備えるプレーナ光波回路が、部分図である図6bに示され、図6aのデバイスと共通する特徴は描かれていない。図6bを参照すると、ベース540は、ベースに例えばスレッドナット544によって固定されたアクチュエータ542を含む。ベース540はまた、第一のネック546と第二のネック548を有する。穴550は、両方のネックに隣接し、各ネックの少なくとも片側を画定する。アクチュエータ542は、ベース540の他の部分と同じ材料から、または同様の熱膨張率の材料から形成することができる。アクチュエータはヘッド552を含むことができ、これはねじ回しまたはその他と係合するためのフランジ等の係合要素554を有する。当業者であればわかるように、手動による調整の他の設計も、当該技術分野の知識に基づいて使用し、受動的温度調整を行うことなく、AWGデバイスのコンパクトな設計を利用できる。
ネックは旋回点であり、それによってアクチュエータの膨張または収縮時にベースが移動される。したがって、本発明の実施形態は、複数の旋回点、例えば2つの点で結合された複数の部分を有するベースに搭載されたPLCを含み、1つまたはそれ以上のアクチュエータもまた、これらの部分を結合する。
温度補償AWGの他の実施形態が図7Aに示されている。モノリシックPLC 600がベース602に取り付けられている。PLC 600は温度補償AWG 604を有し、これはAWG 604に取り付けられた第一のミラーアセンブリ606とベース602に取り付けられた第二のミラーアセンブリ608を含む。ミラーアセンブリ606、608は、折り返し型導波路610、612の1部材として設置された、反射面を備えるミラーからなる。外部光導波路614、616は、PLC 600のためのネットワークまたはその他の部品との光通信を可能にする。ベース602は、任意選択的にスレッド620でベースに固定されたアクチュエータ622、622’を含む。ベース602はまた、第一のネック626と第二のネック628を有する。穴630は両方のネックに隣接し、各ネックの少なくとも片側を画定しており、穴631はネック626に隣接する。アクチュエータ622、622’は、温度応答性材料を含み、アクチュエータは同じまたは異なる材料を有していてもよい。アクチュエータ622、622’の一方または両方は、圧縮された状態で取り付けられてもよく、ベース部分644、646は押し広げられ、したがって、部材644、646はそれゆえ、相互に向かって収縮するように付勢されていることになる。しかしながら、あるいは、収縮されて補正するアクチュエータを644と646の両方に固定して、644と646が収縮されて相互に向かって押されるようにしてもよい。
温度が変化すると、アクチュエータ622、622’は矢印Aで示されるように膨張または収縮する。この移動により、ミラーアセンブリ608は矢印Bで示されるように回転する。ネック626、628によって、アクチュエータにより生成される力の作用を受ける断面積が比較的小さくなる。AWG 604と折り返し型スラブ導波路612が小さいことが特に、ミラーアセンブリ608の中のミラーの小さな回転で温度補正の提供を可能にする。アクチュエータ622、622’の膨張/収縮による力はベース602全体に分散するだけでなく、ネックに集中し、その結果、温度によるスムーズで予想可能な変化が実現する。校正用ねじ640、642で、距離設定のため校正を行うことができる。
温度補償AWGは複数のアクチュエータを備えていてもよく、アクチュエータのうちの1つの熱膨張率は他より大きく、例えば約5%〜約300%大きいが、当業者であればすぐにわかるように、明記された範囲内のすべての範囲と数値が考えられ、例えば少なくとも約5%または、約10%〜約50%大きくてもよい。アクチュエータの少なくとも1つは、それに加えて、またはその代わりに、他のアクチュエータとは異なる機械的利点を有して、アクチュエータの膨張によるミラーの回転速度がアクチュエータ同士で異なるようになっていてもよい。アクチュエータは協働して、アクチュエータのうちの1つが第一の温度範囲にわたる選択された温度補正を専門に行い、他のアクチュエータが第二の温度範囲にわたる選択された温度補正を専門に行うようにしてもよく、これらの温度範囲は相互に異なる。例えば、第一のアクチュエータは、室温(約20℃)に関する温度上昇に対して選択的補正を行ってもよく、第二のアクチュエータが室温に関する温度下降に対して選択的補正を行う。
それゆえ、例えば、図7Aの温度補正AWG 604には、異なる温度範囲について動作するように設計されたアクチュエータ622、622’が設けられてもよい。デュアルアクチュエータ温度補償の動作の概略図が図7Aに示されている。一般に、アクチュエータ622、622’は、同等の熱膨張率を有するように設計できるが、旋回点に関するレバーアームの違いから、アクチュエータは異なる熱応答で動作できる。温度T0は、熱応答が2つのアクチュエータの制御間で切り替えられる温度である。図7Bのパネル(b)は、校正された温度T0、例えば室温で中立位置にあるシステムを示す。温度が校正温度より下降すると、アクチュエータ622b、622b’は両方とも収縮し、ベース部分646a、644aが相互に近づく。レバーアームの違いによって、アクチュエータ622bだけがこの温度範囲でのミラーの旋回を制御する。したがって、ミラーアセンブリ608は、バー622bの収縮によって決まる時計方向に回転する。温度がT0より上昇すると、両方のアクチュエータが膨張する。レバーアームの違いによって、アクチュエータ622b’がミラー608の運動を制御し、これは図7Bのパネル(c)の中でバー622b’が644aと係合していることによって示される。622b’の膨張によって、ミラーアセンブリ608は反時計回り方向に回転する。それゆえ、個々のアクチュエータアームが異なる温度範囲についてミラーの運動を制御する、すなわち622bはT<T0、622b’はT>T0について制御する。
図8は、前述のような温度により旋回するミラーと折り返し型スラブ導波路を備えるように作製された温度補償AWGのモデルのグラフ700である。横軸は摂氏で表される温度である。縦軸はそのアセンブリによって提供される理想的な伝送条件からの偏差を示し、例えば、ITUオフセットがピコメートルで表される。ITUは、国際電気通信連合(International Telecommunications Union)の略であり、これは高密度波長分割多重方式のための理想的なグリッド波長の標準を提供している。容認可能なITUオフセットの絶対値は用途に依存する。それゆえ、用途によっては許容されるITUの絶対値が約50pm以下、またある実施形態では約20または約30pm以下であってもよい。曲線702は、1つのアクチュエータ520で補正されるAWG 504に関して理論的に推定されるオフセットである。AWGは、20℃(曲線の最下点)で調整され、AWGが有効に温度補償されると、理想からの偏差は−40〜80℃の範囲でITUオフセットpm0〜約35pmである。曲線の最下点は、AWGの調整によって必要に応じて移動してもよく、他の範囲での他の偏差を得ることができる。曲線704はAWG 604に関して理論的に推定されるオフセットで、曲線706、708の合成であり、デュアルアクチュエータシステムで得られる制御を示している。曲線706は、AWGが温度の上昇に応答して第一のアクチュエータ622’により補正されたことを示し、曲線708は、温度下降に応答して第二のアクチュエータ622によって補正されたことを示す。曲線706、708は図のように基準温度に調整してもよく、または曲線を別の基準温度に基づいてシフトさせてもよい。
いくつかの実施形態において、1つのチップの上に2つまたはそれ以上のAWGを集積して、1つのチップ上に複数の光構成部品を集積するPLC技術の強力な能力を利用することが望ましい。2つのAWGを備える代表的なPLCが図9に示されている。具体的には、チップ740は、第一のAWG 742と、第二のAWG 744と、光切替素子746と、を含み、例えば、再構成可能追加削除多重化(reconfigurable add−drop multiplexing)機能を提供する。第一のAWG 742は、第一の折り返し型スラブ導波路750と、第二の折り返し型スラブ導波路752と、導波路アレイ754と、を含み、第二のAWG 744は、第一の折り返し型スラブ導波路760と、第二の折り返し型スラブ導波路762と、導波路アレイ764と、を含む。各折り返し型スラブ導波路750、752、760、762は適当なミラーに関連付けられ、これらは、温度補償動作を提供するための旋回を行っても、行わなくてもよい。いくつかの実施形態において、各AWGに関連付けられる少なくとも1つのミラーが旋回して温度補償を行う。光学的切替素子746の詳細な設計は本明細書の説明には関係がなく、当業者がデバイスの特定の目的を達成するように選択できる。しかしながら、各AWGの温度補償では、各AWGの中で個別に基準反射角度をずらすことによって各AWGの中心波長の調整が行われ、必要に応じたデバイス全体のエラー削減が実現される。1つのチップに調整された2つのAWGを設置できることから、多重AWG回路の実質的な小型化とチップの高密度パッケージが可能となる。
一般に、1つまたは複数のアクチュエータはそれゆえ、ベースの第一の部分と第二の部分を結合することができる。ベースの一方の部分はミラーを有し、これはベースの他方の部分の中に直接形成されるPLCに含まれる。あるいは、PLCが、ベースの他方の部分に搭載される構造の一部である。動作的な結合は、1つまたは複数のアクチュエータを一方および/または両方の部分に固定することによって行うことができる。固定は、接着剤、ねじ、またはその他の好都合な手段で行ってもよい。部分は、アクチュエータまたはその他の構造のいずれかによって付勢されてもよい。アクチュエータの運動によって、ベースの部分が相互に関して移動し、ミラーを旋回させる。この旋回が、温度補正を提供する。
PLCを形成するための材料は、CVD、その変形版、火炎堆積法またはその他適当な蒸着方法を使って基板上に堆積させることができる。適当な基板としては、例えば、より高い加工温度に対する適当な耐性を有する材料、例えばシリコン、セラミックス、例えばシリカまたはアルミナ、またはその他がある。いくつかの実施形態において、適当な二酸化シリコン前駆体を導入することができ、シリカガラスをドープして、所望の屈折率と加工特性を持たせることができる。パターニングは、フォトリソグラフィまたはその他適当なパターニング技術で実行できる。例えば、PLC用の最上部クラッド層として使用するために、Ge、P、Bをドープしたシリカガラスをプラズマ助長CVD(PECVD)に基づいて形成することが、Zhongらの、“GEBPSG Top Clad for a Planar Lightwave Circuit”と題する米国特許第7,160,746号明細書に記載されており、これは参照によって本明細書に援用される。同様に、光プレーナ導波路のためのコアの形成が、例えばZhongらの“GEPSG Core for a Planar Lightwave Circuit”と題する米国特許第6,615,615号明細書に記載されており、これは参照によって本明細書に援用される。適当な導波路アレイ形成のためのパラメータは、当該技術分野で公知である。
温度補償AWGは、ネットワークの一部であってもよい。光ネットワークは、ネットワーク接続と、複数の使用者光サービス接続と、ネットワーク接続と複数の使用者光サービス接続を光学的に接続するD/MUX構造、例えばアレイ導波路回折格子と、を含むことができる。ネットワーク接続は、1つまたは複数の共通光学接続を含む。共通接続は一般に、ネットワーク上で複数の波長の光信号を伝送する共通チャネルに光学的に接続され、これには、いくつかの実施形態において、長い距離が関わることがある。いくつかの実施形態において、使用者光接続は、使用者からの入力および出力信号と関連する別々の接続を含むことができるが、出力信号は広帯域信号とすることができ、その結果、波長多重動作によってその使用者に伝送するのに適した波長が選択される。
一般に、本明細書に記載のD/MUX構造は受動光ネットワーク(PON)の構成部品として有効に使用でき、それによって例えば、ネットワーク内の分枝、例えばネットワーク終端でのインタフェースを提供する。受動光ネットワークでは、受動的光構成部品が、中央オフィスと、使用者/顧客の宅内であってもよい端末点の間のトラフィックルーティングを行う。一般に、ネットワークは、音声、映像、データサービスの1つまたは複数を提供することができ、これらは複数のサービスプロバイダにより提供可能である。例えば、光ネットワークは、インターネットサービスプロバイダによって提供される広帯域インターネットサービスを伝送できる。しかしながら、本明細書に記載のD/MUX構造は、直接的な使用者/顧客チャネルとのインタフェースを提供することに加えて、またはその代わりに、別のネットワーク分枝セグメントの接続のために使用可能である。使用者接続に直接インタフェースが提供される実施形態において、使用者接続は、直接または間接に適当な送信機と受信機に接続することができ、これらはそれぞれ信号を発信し、または終了させる。
プレーナ光回路は、光通信用構成部品のための、好都合な、容易に集積できるコンパクトなフォーマットを提供する。アレイ導波路回折格子(AWG)は、プレーナ光回路フォーマット内にD/MUX機能を提供する。プレーナAWG構造は、その他のプレーナデバイスと集積することも、および/または、必要に応じてネットワークに組み込むための適当な外部光学素子と接続することもできる。
上記の実施形態は例示のためであり、限定するものではない。他の実施形態は特許請求の範囲の中にある。これに加えて、本発明を特定の実施形態に関して説明したが、当業者であればわかるように、本発明の主旨と範囲から逸脱することなく、形態や詳細を変更してもよい。前述の文献の参照による援用は、本明細書における明確な開示内容と相容れない主旨が援用されないように限定される。