JP2014514319A - ペプチド加水分解の方法、ペプチダーゼ、静菌剤および殺菌剤としての使用のための組成物、黄色ブドウ球菌からのLytMの活性型またはその誘導体のキットおよび使用 - Google Patents
ペプチド加水分解の方法、ペプチダーゼ、静菌剤および殺菌剤としての使用のための組成物、黄色ブドウ球菌からのLytMの活性型またはその誘導体のキットおよび使用 Download PDFInfo
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Abstract
【選択図】なし
Description
好ましくは、LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体である。好ましくは、開裂は、10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性で、及び/又は約0℃乃至約45℃の範囲、より好ましくは0℃乃至37℃の範囲、とりわけ10℃より下の温度で実行される。
特定の成分(例えば、タンパク質、テイコ酸およびリポテイコ酸)を消失した細胞壁の異なる調製に対する、リゾスタフィンおよびLytMの親和性、および市販の精製されたペプチドグリカンも、プルダウンアッセイにおいて比較された(図2)。すべての場合において、リソスタフィンは、様々な有効性を備える細胞壁の製剤と結合した(図2A)。LytM185−316は、超音波処理された、未精製の細胞壁の抽出物と効率的に結合しなかった。塩及び/又は最終的にいくつかの阻害剤のアクセスを恐らく排除した、細胞壁のさらなる洗浄後、LytM185−316は、プルダウンアッセイにおいて効率的に結合された。さらなる精製は、結合に大きな影響を及ぼさなかった。これらの結果は、LytM185−316が、細胞壁と直接的に結合し、細胞壁の他の成分よりもむしろペプチドグリカンと相互作用することを示す(図2B)。
ペプチドグリカン結合におけるLytMの様々なフラグメントの役割は、プルダウンアッセイにおいて試験された(図3A)。上清および結合された画分(fraction)におけるタンパク質の量は、全長のタンパク質(LytM26−316)がペプチドグリカンを結合しないことを示して比較された。アラニンへのZn2+リガンドAsn117の変異は、触媒ドメインの活性中心へのアクセスをブロックしないはずであるが、そのような変化は、ペプチドグリカン結合に対して有意な影響を与えなかった。分離されたN末端ドメイン(LytM24−105)もまた、ペプチドグリカンと結合しなかったが、LytM(LytM185−316)の活性型は、ペプチドグリカンと効果的に結合していた。2つの他のZn2+リガンドH210およびD214が、アラニンに別々に変異させられたときに、タンパク質は、結合する能力を失った。モチーフHxHからアラニンへの第4のZn2+リガンド、His293の交換は、結果的に、非可溶性タンパク質(Odintsov S. G. et al., 2004, J Mol Biol 335:775−85)をもたらし、これはアッセイを妨げた。HxHモチーフからアラニンへの第1のヒスチジンHis291の交換は、結果的に、それほど効果的ではなかったが、ペプチドグリカン結合を完全に無効にしなかった。
リソスタフィンおよびLytM185−316の両方は、黄色ブドウ球菌ペプチドグリカンにおいてペンタグリシンの相互架橋を結合する。両方のタンパク質は、恐らく少なくとも部分的に活性部位溝における相互作用によってなどで、相互架橋を認識する。リソスタフィンは、特異性を提供する細胞壁を結合する付加的なドメインを有する。全長のLytMおよびLytM185−316は、このようなドメインを欠き、それ故、特にSsaA(ブドウ球菌の分泌抗原A)に対する観察された高い相同性を考慮すると、全長のタンパク質のN末端ドメインが、そのような役割を果たす可能性があった。しかしながら、全長のタンパク質LytMも別々に生成されたN−末端ドメインLytM24−105も、ペプチドグリカンを結合しないため、実験はそのような可能性を反証している。
LytM(LytM185−316)の活性型は、精製されたペプチドグリカンをより効果的に結合する一方で、リソスタフィンは、粗抽出物により好適に結合し、これは、リソスタフィンが細胞壁の他の成分も認識することを示唆している。本発明の著者は、LytMの活性型が、ブドウ球菌のペプチドグリカンを直接的に結合し、塩及び/又は阻害剤のアクセスをより効果的に排除し得る、20mMのトリス(Tris)−HCl pH7.5で洗浄したペプチドグリカンを結合することを示した。
本発明の著者は、大腸菌において組換えタンパク質として効果的に生成された、LytM、とりわけLytM185−316の活性型が、ブドウ球菌のプロテアーゼの存在下で非常に安定していることを示した。
著者は、外部から適用された(externally applied)LytMの活性型が、グラム陽性細菌、とりわけ黄色ブドウ球菌の生細胞を、低い伝導性の条件でそれらの細胞壁のペプチド基質を結合および溶解することによって、効果的に溶解することを示した。外部から適用されたLytMは、ブドウ球菌の成長を阻害しており、黄色ブドウ球菌細胞の溶菌につながる静菌剤または殺菌剤として作用し、これは、細胞懸濁液の光学密度の変化によってモニタリングされた細胞溶解の実施された試験において証明された。初期の実験は、インビトロでの実験においてテトラグリシンおよびペンタグリシンを消化する、LytM185−316の能力のみを示した。細菌の生細胞の溶液に外部から適用されたLytMの活性型が、即座に分解されず、黄色ブドウ球菌の生細胞の細胞壁においてペプチド基質を効果的に結合し分解することができることは明白ではなかった。
ペプチドグリカンヒドロラーゼの活性は、細胞懸濁液の光学密度の変化のモニタリングによって黄色ブドウ球菌の細胞壁の溶解試験において決定された。光学密度の有意でない減少が、恐らく細胞壁酵素の残余の酵素活性が原因で、酵素が加えられることなく、対照において観察された。それ故、595nmでのODのすべての値は、対照の1パーセントとして表わされる。100%に近い値は低い活性を示す一方で、低いパーセンテージは、酵素の高活性を示している。リソスタフィンおよびLytM185−316の両方は、約6pH(50mMのリン酸緩衝液)でわずかに効果的であったが、約7pHではより効果的であった。pH7乃至9(50mMのトリス−HCl)のさらなる増加は、リソスタフィンの活性に影響がほとんどなかったが、LytM185−316活性の増加に影響を及ぼした(図5)。本発明の著者は、LytMの活性型が、約6乃至約9pHの範囲で、とりわけ約7乃至約9pHの範囲で、効果的に作用することを示した。
思いがけず、LytMの活性型による細菌の溶解の有効性が、反応緩衝液に略依存することが分かった。例えば、LytM185−316の活性は、50mMのトリス−HClにおけるよりも20mMのトリス−HClにおける方が高く(両方ともpH8.0で)、トリスがpH8.0でグリシンと交換されたときにさらに高かった。しかしながら、グリシンは、異なる組成物のバッファーの存在下で加えられるときに活性を増強しないため、アロステリック活性化剤として作用しない。伝導性への活性の依存性の類似した結果も、異なる組成物のバッファーに関して観察された(図8)。
LytMの活性型が、約0℃から約50℃の広範囲の温度にわたって、とりわけ約0℃から約45℃の範囲の温度で、好ましくは0℃から37℃の温度で、より好ましくは0℃から25℃、とりわけ10℃より下の温度で、効果的に作用する安定したタンパク質であることが示された。特に驚くべきことは、LytM185−316がリソスタフィンより数倍活性である約4℃の温度でのLytMの活性型が、高活性であることである。
<LytMタンパク質の様々な形態の生成>
LytM24−105、LytM185−316およびLytM26−316のタンパク質に対応するDNAのフラグメントを、以前に記載された全長のLytMクローン(Odintsov et al., 2004, J. Mol. Biol. 335:775−785)からPCRによって増幅し、pET15modベクトルに挿入し、それぞれ、pET15modLytM24−105、pET15modLytM185−316、pET15modLytM26−316と呼んだヒスチジンのタグを、LytMフラグメントのためにコード化された構成物のN末端部分へ融合した。続く配列MGHHHHHHEFのHistagは、LytM185−316のコード配列に先行した。LytM24−105、LytM185−316 i LytM26−316の可溶型を、Odintsov S.G. et al., 2004, J.Mol. Biol. 335:775−785においてLytM185−316に関して記載される方法で、大腸菌株BL21(DE3)中で構成物を発現させることによって得た。タンパク質発現を、細菌増殖(0.8のOD595)の対数増殖期中に、1mMのIPTGの付加によって誘発し、25℃で4時間継続した。組換えタンパク質を、Ni2+負荷(loaded)の、ニトリロトリ酢酸(NTA)アガロースカラム(Qiagen)上の親和性クロマトグラフィーによって精製し、製造業者の記載に従った、Sephacryl S200カラム(Amersham Bioscience)上のゲル濾過が続いた。以下に提示される実施例において、安定した、Histagを有する活性型LytM185−316を使用したが、Histagを有するまたは有さない活性型LytMの結合および活性に違いは観察されなかった。
<ポリクローナル抗体−LytM185−316抗体の生成>
LytM185−316に対するポリクローナル抗体を、ラビット(Pineda Antibody Service, Berlin, Germany)において育てた。抗体精製を、製造業者の指示に従って、CNBr−活性化セファロース4B(Amersham Bioscience)に結合されたLytM185−316タンパク質に対する親和性によって行った。洗浄後、抗体を、100mMのグリシン pH2.7によって溶出した。溶出剤のpHを、2Mのトリス−HCl pH8.0の1/10の容積を加えることによってすぐに中和した。溶出剤中の抗体の濃度を、OD280での吸収に基づいて推測した。
<黄色ブドウ球菌からの細胞壁のフラグメントおよびペプチドグリカンの生成>
37℃でCASO培養液の培地において成長した黄色ブドウ球菌の後期の対数期の培養物を、遠心分離によって採取し、バッファーA(20mMのトリス−HCl pH7.5)中で再懸濁し、20分間オートクレーブ滅菌した。粗抽出物を、3分間細胞を超音波処理した後に得た。付属のウォールポリマー(accessory wall polymers)を、下記の方法によって取り除いた:
− SDS処置した壁を、30分間4%のSDS中で沸騰させた、
− トリプシン処理した壁を、37℃で8時間のトリプシン消化(0.5mg/ml)によって調製した。
− トリクロロ酢酸(TCA)処置を、4℃での10%のTCA中の48時間のインキュベーションによって行った。
− 精製されたペプチドグリカンを、上に記載されるすべての方法を組み合わせることによって、以前にOdintsov S.G. et al., 2004, J. Mol. Biol. 335:775−785に記載されたように調製した。
これらの処置の各々の後に、細胞壁を、20mMのトリス−HCl pH7.5中で広範囲に洗浄した。
<プルダウンアッセイにおけるペプチドグリカンへのLytMおよびリソスタフィンの様々な形態の結合>
結合を評価するために、実施例1において生成された2μgのタンパク質およびリソスタフィン(Sigma)を、細胞壁または実施例3において生成されたペプチドグリカン(100μg)および市販の精製されたペプチドグリカン(Fluka Biochemika,77140)と混合し、15分間室温でインキュベートした。その後、可溶性および不溶性の画分を、遠心分離によって分離し、ペプチドグリカンを、バッファー 20mMのトリス−HCl pH7.5、50mMのNaClによって洗浄した。可溶性画分および洗浄したペプチドグリカンを、ローディングバッファーと混合し、SDS−PAGEによって分離した。SDS−PAGEによって分離したタンパク質を、セミドライ式転写によってECL細胞膜(Amersham Bioscience)上に転写し、その後、実施例2において生成されたLytM185−316タンパク質に対する0.5μg/mlの精製された抗体によってインキュベートした。ヤギ抗ラビットのペルオキシダーゼ共役の第2抗体(Sigma)を、製造業者の推奨に従って、ウェスタンブロットのルミノール試薬(Santa Cruz Biotechnology)を使用して検出した。リソスタフィンも抗体によって認識した。結果を図2に示す。LytM(LytM185−316)の活性型は、リソスタフィンより細胞壁の異なる成分を認識する。即ち、リソスタフィンおよび活性型LytM185−316の親和性が、細胞壁の様々な製剤とプルダウンアッセイにおいて比較され、該細胞壁から、ペプチドグリカンとは別に、異なる成分を取り除いた(図2)。
<LytMの様々なフラグメントを有する精製された黄色ブドウ球菌のペプチドグリカンのプルダウンアッセイ>
LytMの様々なフラグメントの結合を評価するために、実施例1において生成された2μgのタンパク質を、実施例3において生成された、精製されたペプチドグリカンと混合し、15分間室温でインキュベートした。その後、可溶性および不溶性の画分を、遠心分離によって分離した、ペプチドグリカンを、1mlのバッファーA(20mMのトリス−HCl pH7.5;50mMのNaCl)によって洗浄した。可溶性分画(S)および洗浄したペプチドグリカン(PG)を、試験されたLytMフラグメントである対照(C)の存在下でSDS−PAGEによって分離したローディングバッファーと混合した。
<プロテアーゼ阻害剤が存在下でのLytMの活性型のプルダウンアッセイ>
試験を実施例4でのように行ったが、ペプチドグリカン結合に対するプロテアーゼ阻害剤の効果を確認するために、タンパク質LytM185−316を、終末濃度での様々な阻害剤の存在下で、精製されたペプチドグリカンによってインキュベートした:(1)10mMのEDTA、(2)1mMの1,10−フェナントロリン、(3)10mMのN‐アセチルグルコサミン、(4)10mMのグリシンヒドロキサマート、(5)1mMのPMSFおよび(6)1mMのE−64 システインプロテアーゼ阻害剤(トランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド(4−グアニジノ)ブタン)、(C)阻害剤のない制御。結果を図3Bに示す。得た結果は、金属イオンキレート剤、EDTAおよび1,10−フェナントロリンが、ペプチドグリカンへの活性型LytM185−316の結合に効果がある(図3B、レーン1−2)一方で、グリシンヒドロキサマートおよびプロテアーゼ阻害剤のような、Zn2+イオンの弱いキレート剤が、ペプチドグリカン結合に対する効果がなかった(図3B、レーン3−6)ことを示す。
<細菌プロテアーゼの存在下でのLytMの活性型の安定性>
実施例1で得た3μgのLytM185−316を、37℃で1時間および4時間、黄色ブドウ球菌の〜106の細胞によってインキュベートした。37℃でインキュベートしていないLytM185−316を、対照として使用した。インキュベーション後、サンプルを、SDS−PAGEによって分離し、実施例4に記載される方法に従う、サンプル2で得た抗体とのウェスタンブロット・ハイブリッド形成が続いた。得た結果を図4に示す。検出されたバンドは、LytM185−316に相当する。より低いバンドがすべてのサンプルの中に存在し、その強度はそれらの間に違いはない。バンドは対照において検出されるため、その存在は黄色ブドウ球菌細胞の存在が原因で、LytM185−316の分解に起因しない。それ故、著者は、黄色ブドウ球菌細胞の存在下で活性型LytM185−316の高い安定性を示した。
<細胞懸濁液の光学密度の変化によって測定されるような細胞壁溶解アッセイ(混濁除去のアッセイ(turbidity clearance assay))>
a)LytMの活性型およびリソスタフィンの効力に対するpHの効果
振とうしながら37℃でCASO培地上で成長した黄色ブドウ球菌細胞を、対数期に採取し、200μg/mlのエリスロマイシンを補足された約1.8のOD595に対する、50mMのトリス pH7.0または50mMのトリス pH8.0または50mMのトリス pH9.0の試験バッファー中で洗浄し、懸濁した。実施例1で得たLytM185−316およびリソスタフィン(Sigma)を、18nMの終末濃度まで加え、200μlの反応混合物を、マイクロタイタープレートに移動した。プレートを、5分ごとに2秒間振とうしながら、37℃でインキュベートした。懸濁液のODを、インキュベーションの0、20、40、60、90および120分後に595nmで測定した。酵素のない対照においてODがいくらか減少したことが観察されたため、図5でのすべての値は、酵素のない対照のパーセントとして示される。約7乃至約9の範囲のpH(50mMのトリス−HCl)の増加は、リソスタフィン活性にほとんど効果がなかったが、LytM185−316の活性を増強したことが実証された。
a)溶解反応を、(A)100mMのグリシン−NaOH pH8.0,50mMのトリス−HCl pH8.0および50mMのトリス HCl pH8.0中の100mMのグリシンのバッファー中の反応に対するグリシンの効果を確認するために、(B)NaOHでの8.0に調節されたpHでの50mMのバッファー中および蒸留水中の細胞溶解に対するモノグリシン、ジグリシンおよびトリグリシンの効果を確認するために、(C)様々なアミノ酸:50mMのL−アルギニン−HCl、D,L−アラニン−NaOH、L−アルギニン−HCl、L−グルタミン酸−NaOH、ジアミノピメリン酸−NaOH(すべてpH8.0)の効果を確認するために行ったことを例外として、実験を行った。得た結果を図8に示す。すべての試験したバッファーは異なる組成物のバッファーであったが、8.0の同じpHであった。
<LytMおよびリソスタフィンの反応条件、および溶解作用の効果>
a)様々なバッファーの効果
振とうしながら37℃でCASO培地上で成長した黄色ブドウ球菌細胞を、対数期に遠心分離によって採取し、8.0に設定されたpHで50mMのバッファー中、または200μg/mlのエリスロマイシンを補足された再蒸留水中で洗浄し、懸濁した。細胞を、1.8のOD595に対して試験したバッファー中で希釈した。実施例1で得たLytM185−316およびリソスタフィン(Sigma)を、18nMの終末濃度まで加え、200μlの反応混合物を、マイクロタイタープレートに移動した。プレートを、5分ごとに2秒間振とうしながら、37℃でインキュベートした。試験の最初に、適切なバッファーまたは水中で懸濁された細胞の伝導性を、伝導度計MeteLab CDM230(Radiometer Analytical, France)を使用して測定した。伝導度測定を、黄色ブドウ球菌細胞の付加後に室温で行った。懸濁液のODを、反応の60分後に595nmの波長で測定した。溶解作用を、対照OD595(反応に対するのと同じであるが、酵素が加えられていないサンプル)のパーセントとして示す。生細胞上でエリスロマイシンを加えることなく同じ反応は終了した。各実験を、4つの類似(paralleles)とともに2回行った。結果を図6に示す。同じ結果を、エリスロマイシンを補足した及びエリスロマイシンのないサンプルのために得た。LytM(LytM185−316)の活性型が、低い伝導性のバッファーに非常に効果的である一方で、低い伝導性の条件でのリソスタフィンによる黄色ブドウ球菌の細胞壁の分解が僅かであることが思いがけず分かった。
a)溶解反応を、0乃至500mMのNaClを補足した、20mMのグリシンバッファー pH8.0中で行ったことを例外として、部分的に実験を行った。伝導度測定の結果を図7に示す。著者は、リソスタフィンとは対照的に、LytM(LytM185−316)の活性型が、とりわけ10mS/cm未満、好ましくは5mS/cm未満、より好ましくは2mS/cm未満の伝導性の反応条件下で、低い伝導性のバッファー中で効果的であることを示した。
<LytM(LytM185−316)の活性型およびリソスタフィン(Lss)の効力に対する温度の効果>
振とうしながら37℃でCASO培地上で成長した黄色ブドウ球菌細胞を、対数期に遠心分離によって採取し、LytMに対して50mMのグリシンバッファー pH7.5中で、およびリソスタフィンに対して150mMのNaClを補足した同じバッファー中で、OD595での1.8の最終的な光学密度まで懸濁した。実施例1で得たLytM185−316およびリソスタフィン(Sigma)を、通用した、18nM(等しいモル量)の終末濃度まで加え、200μlの反応混合物を、60分間試験した温度でインキュベートした。その後、光学密度の変化を、OD595で測定した。図9および図10に示される結果を、黄色ブドウ球菌の細胞懸濁液の最初のODのパーセントとして示す。LytM(LytM185−316)の活性型は、0℃乃至45℃までの広範囲の温度にわたって細菌を溶解していた。4℃で、LytM185−316は、リソスタフィンよりも4倍以上活性である。
− SEQ ID No:1は、黄色ブドウ球菌からの全長のLytMのアミノ酸配列に相当する。
− SEQ ID No:2は、黄色ブドウ球菌からのLytM185−316のアミノ酸配列に相当する。
Claims (37)
- 好ましくはグラム陽性細菌の細胞壁の、ペプチド加水分解の方法であって、LytMの活性型またはその誘導体は、10mS/cm未満の伝導性の水性環境において、ペプチド基質、好ましくはグラム陽性細菌の細胞壁と接触することを特徴とする方法。
- 伝導性は、2mS/cm未満であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド加水分解の方法。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のポリペプチドLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項1または2に記載のペプチド加水分解の方法。
- 接触は、約0℃乃至約45℃の範囲、より好ましくは0℃乃至37℃の範囲、およびとりわけ10℃より下の温度で行われることを特徴とする、請求項1乃至3に記載のペプチド加水分解の方法。
- 反応のpHは、約6乃至約9、好ましくは約7乃至約9の範囲であることを特徴とする、請求項1乃至4に記載のペプチド加水分解の方法。
- グラム陽性細菌は、スタフィロコッカス属またはミクロコッカス属、より好ましくは、黄色ブドウ球菌、表面ブドウ球菌、スタフィロコッカス−ロゼウス、スタフィロコッカス−カルノーサス、スタフィロコッカス−ラクティス、スタフィロコッカス−サプロフィティクス、およびミクロコッカス−カゼオリチカス、ミクロコッカス−カンディカンス、ミクロコッカス−ノーシナス、ミクロコッカス−ベルナエを含む群から選択される種に属する細菌であることを特徴とする、請求項1乃至5に記載のペプチド加水分解の方法。
- 好ましくはグラム陽性細菌に対する、より好ましくはスタフィロコッカス属またはミクロコッカス属に対する、静菌剤または殺菌剤としての使用のための組成物であって、該組成物は、LytMの活性型またはその誘導体を含み、10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性の水性環境での使用のためのものであることを特徴とする組成物。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
- 表面の殺菌に使用するための、請求項7または8に記載の組成物。
- 液体、エマルジョン、ゲル、噴霧剤、ローション剤またはウェットワイプの形態である、請求項7乃至9に記載の組成物。
- 好ましくはグラム陽性細菌に対する、具体的にはスタフィロコッカス属またはミクロコッカス属に対する、静菌剤または殺菌剤として、または表面を殺菌するための、LytMの活性型またはその誘導体を含む組成物の使用であって、該組成物は、10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性の水性環境で使用されることを特徴とする組成物の使用。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のポリペプチドLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物の使用。
- 食品産業における静菌剤または殺菌剤としての、LytMの活性型またはその誘導体の使用であって、該静菌剤または殺菌剤は、10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性の反応条件で使用されることを特徴とする使用。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
- 静菌剤または殺菌剤は、ヒトおよび動物性の食品に対して添加剤として、または表面を浄化するために使用されることを特徴とする、請求項13または14に記載の使用。
- 静菌剤または殺菌剤は、好ましくはスタフィロコッカス属またはミクロコッカス属に属する、グラム陽性細菌に対して使用されることを特徴とする、請求項13乃至15に記載の使用。
- 医療、獣医、診断における、及び/又は化粧品産業における、静菌剤または殺菌剤としての、LytMの活性型またはその誘導体の使用であって、該静菌剤または殺菌剤は、10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性の反応条件で使用されることを特徴とする使用。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
- 静菌剤または殺菌剤は、医療、獣医、診断において、及び/又は化粧品産業において使用されるツールおよび機器の表面を殺菌するために、または病院および研究室での表面を殺菌するために使用されることを特徴とする、請求項17または18に記載の使用。
- 静菌剤または殺菌剤は、好ましくはスタフィロコッカス属またはミクロコッカス属に属する、グラム陽性細菌に対して使用されることを特徴とする、請求項17乃至19に記載の使用。
- 10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性の反応条件で、グラム陽性細菌から細胞成分を分離するための、LytMの活性型またはその誘導体の使用。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項21に記載の使用。
- 細胞成分の分離は、約0℃乃至約45℃の範囲、好ましくは0℃乃至37℃の範囲、より好ましくは10℃より下の温度で実行されることを特徴とする、請求項21または22に記載の使用。
- グラム陽性細菌は、スタフィロコッカス属またはミクロコッカス属、好ましくは、黄色ブドウ球菌、表面ブドウ球菌、スタフィロコッカス−ロゼウス、スタフィロコッカス−カルノーサス、スタフィロコッカス−ラクティス、スタフィロコッカス‐サプロフィティクス、およびミクロコッカス−カゼオリチカス、ミクロコッカス−カンディカンス、ミクロコッカス−ノーシナス、ミクロコッカス−ベルナエを含む群から選択される種に属する細菌であることを特徴とする、請求項21乃至23に記載の使用。
- 10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性の反応条件での、グラム陽性細菌、好ましくはスタフィロコッカス属またはミクロコッカス属に属する細菌の診断における、LytMの活性型またはその誘導体の使用。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項25に記載の使用。
- グラム陽性細菌に曝された表面を含浸する又はコーティングするための、LytMの活性型またはその誘導体の使用であって、前記LytMの活性型またはその誘導体が表面の含浸として又はコーティングとして使用される条件は、10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性を有していることであることを特徴とする使用。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項27に記載の使用。
- LytMの活性型またはその誘導体を含むグラム陽性細菌の溶解のためのキットであって、LytMの活性型またはその誘導体は、10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性の環境で使用されることを特徴とするキット。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項29に記載のキット。
- 細菌の溶解は、グラム陽性細菌から細胞成分、好ましくは、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、グリコペプチド、脂質、細胞要素および代謝物を分離するために実行されることを特徴とする、請求項29または30に記載のキット。
- 融合タンパク質であるタンパク質基質からタグの酵素開裂によってタンパク質を調製する方法であって、該方法は、以下の:a)タンパク質をコード化する配列を、連続する少なくとも4つ以上のグリシンを有するリンカーをコード化する配列と関連付けることによって融合タンパク質を形成する工程、b)LytMの活性型またはその誘導体によって融合タンパク質を開裂する工程、を含むことを特徴とする方法。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項32に記載の方法。
- 工程b)は、10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性で、及び/又は約0℃乃至約45℃の範囲、より好ましくは0℃乃至37℃の範囲、とりわけ10℃より下の温度で行われることを特徴とする、請求項32または33に記載の方法。
- タンパク質基質から、好ましくは融合タンパク質からのタグの開裂のための、LytMの活性型またはその誘導体の使用であって、該開裂は、連続する少なくとも4つ以上のグリシンを含む配列のタンパク質基質の位置にあることを特徴とする使用。
- LytMの活性型は、配列SEQ ID NO:2のLytM185−316、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項35に記載の使用。
- 開裂は、10mS/cm未満、好ましくは2mS/cm未満の伝導性で、及び/又は約0℃乃至約45℃の範囲、より好ましくは0℃乃至37℃の範囲、とりわけ10℃より下の温度で行われることを特徴とする、請求項35または36に記載の使用。
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