JP2014512141A - 無線システムにおける高平均スペクトル効率の達成方法 - Google Patents

無線システムにおける高平均スペクトル効率の達成方法 Download PDF

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Abstract

無線システムにおいて高平均スペクトル効率を達成する技術が開示される。特定の一実施形態では、その技術は、ビーム形成装置によって生成される複数のビームを定義し、前記複数のビームの各ビームが空間内の平面有限領域の異なる領域と交差することと、セットのビーム群を定義し、各ビーム群が前記複数のビームの異なるサブセットのビームであることと、前記セットのビーム群の中で各ビーム群を順次生成することによって前記セットのビーム群を繰り返し巡回することと、無線局との最適な通信リンクをもたらすビーム群を前記セットのビーム群の中から特定することと、前記特定されたビーム群の生成中に行われるように前記無線局との通信をスケジューリングすることと、を備える無線局との通信方法として実現することができる。

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年4月7日に出願された米国仮特許出願第61/472,900号に対する優先権を主張するものであり、これらの明細書および請求項は、参照により本出願に援用される。
本開示は概してセルラーまたは無線ローカルエリアネットワークなどの無線システムに関し、特に無線システムにおいて高平均スペクトル効率を達成する技術に関する。
デジタル無線通信リンクのスペクトル効率は、単位時間(秒)、単位当たり帯域幅(Hz)で所定のビット・エラー・レートを超えずに送信される情報のビット数として定義される性能指数である。スペクトル効率はビット/秒/ヘルツで測定され、「ビット/s/Hz」と表記されることが多い。無線リンクのスペクトル効率が高いほど、時間および帯域幅内に送信される情報がより多く詰め込まれている。情報理論の最も重要な結果は、通常は信号体雑音プラス干渉比、すなわちSNIRと表記されるスペクトル効率対通信チャネルの信号品質に関する。SNIRが大きいほど、スペクトル効率が高い。
論理的には、2つの局(たとえば、セルラーシステム内の基地局と移動局)間の各無線送信は、ゼロ(送信される情報なし)から始まり送信中の通信チャネルの品質によって決定される最大値に至るまですべてのスペクトル効率をサポートすることができる。実質上、デジタル無線システムは連続的なデータ転送速度ではなく、通常は基準によって明示される有限数のデータ転送速度をサポートする。各データ転送速度は特定のスペクトル効率に対応し、最大データ転送速度は検討されるシステムにおける送信にとって可能なピークまたは最大スペクトル効率を提供する。すべての送信にとってピークスペクトル効率で無線システムを動作させることで、システムでの無線接続を通じて最大量のデータを転送することができる。これがシステムの最大容量である。すべてのモバイルが基地局に隣接して配置され、常に高チャネル品質を有するとすれば、結果的に最大容量とピークスペクトル効率が得られる。通常、実際のシステム容量、すなわち、無線接続を通じて転送するデータの実際量は、後述するように最大容量よりもずっと少ない。
通常、無線システムでの無線チャネル品質は送信毎に変化する。モバイルが時間の経過と共に送信中であっても自らの物理的位置を変化させるセルラーシステムの場合、この作用が特に顕著である。この場合、実際のネットワーク容量の表示として送信毎のスペクトル効率に焦点を当てるよりも、期間全体にわたるセル全体の平均スペクトル効率を算出または測定することの方が意義深い。すべての送信は基地局で開始または終了するため、セル平均スペクトル効率は基地局平均無線データトラフィックに直接関連する。
当初から、商業用セルラーシステムは低平均スペクトル効率で動作してきた。しかしながら、従来の音声主要通信が求める適度なビットレートのおかげで、長年の間、無線搬送波はこのネットワークの欠点を隠してきた。加えて、平均スペクトル効率を向上させずに無線トラフィックの増加をサポートするうえで、余分なRFスペクトルが利用可能であった。
セルラーシステムにおけるスペクトル効率の当初の制限は、割り当てられたRFスペクトル毎に非常に少ないビットしか詰め込まれない極めて単純な変調技術の使用であった。ネットワークが次世代へと進化していくにつれ、より高性能で効率的な変調技術が導入されていき、ピークスペクトル効率を大幅に向上させたが、ネットワーク平均スペクトル効率は低いままであった。この低い平均パフォーマンスの理由こそ、まさに微細な信号、高ノイズ、妨害子の存在、マルチパスフェーディングなどの無線インタフェースの特徴である。
上述の傾向に続き、WiMaxやLTE(長期進化)などの第4世代(4G)無線システムは、特にモバイル装置にとってのコストとパワーの多大な犠牲なしにはさらなる向上が見込めないほどの高度化に向けて送信スキームを推し進めてきた。たとえば、4GシステムはMIMO(マルチ入力マルチ出力)スキームと称される複数のRFトランシーバスキームを使用する。これらのシステムは、特に超高ピークスペクトル効率を目指して、いくつかのアンテナ信号上で大量のデジタル信号処理を行う。にもかかわらず、これらのシステムの場合でも、平均スペクトル効率はピーク効率と比較して低いままである。上述したように、これは無線インタフェースの平均通信チャネルの低品質が原因である。いくつかのアンテナ信号上でのデジタル信号処理のみでは、平均スペクトル効率全体を大幅に増大させる実現可能なソリューションとはならない。
スマートフォン、無線タブレット、大量のデジタル情報を受信および生成することのできるその他のモバイル装置の導入は、無線ネットワークに大きな影響をもたらした。これは、データの頻繁な使用を要求する無線用途と組み合わせて、無線ネットワークの容量需要をいまだかつてないレベルまで推し進めている。既存の4Gシステムを含め従来の低平均効率方法による有限RFスペクトルの利用はもはや適切ではない。ピークスペクトル効率から遠く離れた平均スペクトル効率でネットワークを動作させることは、理論的には可能だが無駄が多すぎる。さらに、従来の無線ネットワークを、増大し続ける容量を収容するように拡張するのは非経済的である。
上記の点に鑑み、従来の無線ネットワークに付随する重大な問題と欠点があることが理解できる。
本開示の実施形態は、新たな基地局アーキテクチャおよび機能を使用することによって低平均スペクトル効率の問題を解決する技術を含む。その新しい基地局アーキテクチャは、プログラム可能な空間的走査にしたがい方位角および高度をステアリング可能なペンシルビームなどの複数のアジャイル・ビーム・パターンを生成する無線フロントエンドRF能力を含む。このフロントエンド能力は、電子ビーム形成、ステアリング、および走査のために複数のアンテナの使用を必要とする。新たな機能は、新たなモバイルスケジューリング能力と適切なチャネルマトリックス処理ソフトウェアの使用を含む。
概して、本開示の各種実施形態では、複数のアンテナを使用する従来の2方向無線通信スキームから以下の2つの基本的変更が行われる。a)基地局による複数のビームパターンでのセクタ走査の導入と、b)モバイル操作と基地局セクタ走査プロセスとの間の時間的調整の導入。加えて、従来のシステムと比較して、本開示の実施形態は、(1)さらに高い有効多アンテナゲインおよび空間的フィルタリング能力、(2)放射パターン変化におけるさらに高い敏捷性、(3)放射パターンの形成におけるさらに高い柔軟性、を利用することができる。
本開示の一実施形態によると、アンテナアレイに接続される信号処理ユニットを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。基地局システムは放射パターンのうちのいくつかで空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して放射パターンを通じてモバイルユニットとの間で情報を送受信する。
本開示の別の実施形態によると、フェーズドアレイに接続される信号処理ユニットを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。基地局システムは放射パターンのうちいくつかで空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して放射パターンを通じてモバイルユニットとの間で情報を送受信する。
本開示の別の実施形態によると、フェーズドアレイに接続される信号処理ユニットを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速で方位角および高度をステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。基地局システムは放射パターンのうちいくつかで空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して放射パターンを通じてモバイルユニットとの間で情報を送受信する。
本開示のさらに別の実施形態によると、フェーズドアレイに接続される信号処理ユニットを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。放射パターンの少なくともいくつかは狭ペンシルビームである。基地局システムは放射パターンのうちのいくつかで空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して、放射パターンを通じてモバイルユニットとの間で情報を送受信する。
本開示のさらに別の実施形態によると、フェーズドアレイに接続される信号処理ユニットを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。放射パターンの少なくともいくつかは方位角および高度をステアリング可能な狭ペンシルビームである。基地局システムは放射パターンのうちいくつかで空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して、放射パターンを通じてモバイルユニットとの間で情報を送受信する。
本開示のさらに別の実施形態によると、フェーズドアレイに接続される信号処理ユニットを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。放射パターンの少なくともいくつかは狭ペンシルビームである。基地局システムは狭ペンシルビームで空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して、放射パターンを通じてモバイルユニットとの間で情報を送受信する。
本開示のさらに別の実施形態によると、フェーズドアレイに接続される信号処理ユニットを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。放射パターンの少なくともいくつかは狭ペンシルビームである。基地局システムは狭ペンシルビームで空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して、狭ペンシルビームを通じてモバイルユニットとの間でペイロード情報を送受信する。
本開示のさらに別の実施形態によると、フェーズドアレイに接続される信号処理ユニットを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。放射パターンの少なくともいくつかは狭ペンシルビームである。基地局システムは狭ペンシルビームで空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して、狭ペンシルビームを通じてモバイルユニットとの間でペイロード情報を送受信する。さらに、基地局システムは、狭ペンシルビームを通じてモバイルユニットと2方向制御情報を通信する。
本開示のさらに別の実施形態によると、信号処理ユニットとフェーズドアレイとを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。放射パターンの少なくともいくつかは狭ペンシルビームである。基地局システムは狭ペンシルビームを有する空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して、狭ペンシルビームを通じてモバイルユニットとの間でペイロード情報を送受信する。さらに、基地局システムは、静止放射パターンを通じてモバイルユニットと2方向制御情報を通信する。
本開示のさらに別の実施形態によると、信号処理ユニットとフェーズドアレイとを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。放射パターンは数が十分な狭ペンシルビームであり、すべてのビームが検討される場合、基地局システムによって走査される全空間が常に少なくとも低レベルの放射到達範囲を有するように設計される。言い換えると、十分に狭いペンシルビームがあり、常に全空間を覆う各狭ペンシルビームからの十分な流出放射がある。基地局システムは狭ペンシルビームで空間を走査し、それぞれの走査プロセスと同期して狭ペンシルビームを通じてモバイルユニットとの間でペイロード情報を送受信する。さらに、基地局システムは、すべての狭ペンシルビームを通じてモバイルユニットと2方向制御情報を通信する。
本開示のさらに別の実施形態によると、信号処理ユニットとアンテナアレイまたはフェーズドアレイとを備える無線基地局システムが提供される。基地局システムは、個別に形状をプログラム可能で、かつ個別に高速でステアリング可能である、少なくとも1つだが通常は多数の同時放射パターンを生成し、各放射パターンを利用して独立した情報を送受信することができる。基地局システムは放射パターンのうちいくつかで空間を走査し、その他の放射パターンを静止させ、それぞれの走査プロセスと同期して、放射パターンを通じてモバイルユニットとの間で情報を送受信する。また、放射パターンを通じて送受信された情報は、チャネル−マトリックス処理アルゴリズムにより基地局システムの信号処理ユニットで処理されて、放射パターン間の相互干渉を排除する。
本開示を、添付図面に示されるように具体的な実施形態を参照して以下より詳細に説明する。本開示は具体的な実施形態を参照して説明したが、それに限定されないものと理解すべきである。ここの教示にアクセスする当業者であれば、追加の実施例、変更、実施形態、ならびにその他の使用分野がここに記載の開示の範囲に含まれ、本開示が非常に有用であることを認識するであろう。
本開示のより完全な理解を深めるために、添付図面を以下参照するが、類似の構成要素には類似の参照符号を付す。これらの図面は本開示を限定するものと解釈すべきではなく、単に例示的であることを目的とする。
無線セルを示す図。
3つの120度セクタに分割された無線セルを示す図。
典型的なセクタアンテナ放射パターン:(a)水平「x−y」面でのセクタ到達範囲と、(b)垂直「z−接地」面での放射パターンを示す図。
単独のアンテナを有する基地局システムを示す図。
従来の無線セル内の信号強度分布の概略図。
1次元アンテナアレイを有する基地局システムを示す図。
2×2MIMO動作を示す概略図。
従来のビーム形成/ステアリングシステムの放射パターン:(a)水平「x−y」面でのセクタ到達範囲、(b)垂直「z−接地」面での放射パターンを示す図。
従来のビーム形成/ステアリングシステムの無線セル内の信号強度分布を示す概略図。
本開示の一実施形態に係る2次元アンテナアレイを有する基地局システムを示す図。
本開示の一側面に係るペンシルビームを有するシステムの放射パターン:(a)水平「x−y」面でのセクタ到達範囲、(b)垂直「z−接地」面での放射パターンを示す図。
本開示の一側面に係るペンシルビームを有するシステムの無線セル内での信号強度分布を示す概略図。
本開示の一側面に係る最大出力密度点を通過するセクタ内の線に沿った、ペンシルビームにおけるRF信号出力密度を示す図。
本開示の一実施形態に係る2次元フェーズドアレイを有する基地局システムを示す図。
20個の円による120度セクタの近似を示す図。
本開示の一側面に係る4つのペンシルビームを有する5つの可能なビームパターン:(a)第1のビームパターン、(b)第2のビームパターン、(c)第3のビームパターン、(d)第4のビームパターン、(e)第5のビームパターンを示す図。
本開示の一実施形態に係る基地局サブシステムを示す図。
本開示の一側面に係る非ビーム領域によって分離された2つのペンシルビーム:(a)適切なペンシルビームのケースと(b)狭すぎるペンシルビームのケース、を横断するセクタ内の線に沿った信号強度の概略図。
本開示の一側面に係る非ビーム領域によって分離された2つのペンシルビーム:(a)適切なペンシルビームのケースと(b)広すぎるペンシルビームのケース、を横断するセクタ内の線に沿った信号強度の概略図。
本開示の一側面に係る空間内の有限平面を交差する3つのビームを示す図。
本開示の一実施形態に係る基地局サブシステムを示す図。
ここで使用される見出しは単に組織化を目的としており、明細書または請求項の範囲を限定することを目的としていない。本願全体を通じて使用されるように、「できる」という文言は義務的な意味(すなわち、でなければならないという意味)ではなく許容的な意味(すなわち、そうする能力を有するという意味)で使用されている。同様に、「含む」という文言は、含むが限定はされないことを意味する。
従来のモバイル無線システム
携帯電話やWifiなどの現代のモバイルデジタル無線システムの構成要素は、図1に示されるようにセル3である。基地局システムと称される基地局1は、合わせて無線クライアントと称される局2などのセル内の移動局または固定局に無線アクセスを提供する。無線アクセスとは、基地局と無線クライアント間の2方向無線通信のシステム能力を意味する。基地局は最終的には世界電話ネットワークやインターネットなどを含む大ネットワークに階層的に接続することができ(図1には示さず)、無線クライアントとこれらのネットワークとをリンクさせる。
簡潔にするため、図1の基地局システムがセル到達範囲領域3の中心に位置し、セルの形状は円形である。これは理想的な状況であり、セルラー動作の原理と制限を例示するためにのみ使用される。ごく実際的なケースでは、丘、岩、木、建物、橋などの天然または人工の妨害物が非常に不規則で複雑な無線伝播路を形成する。最適到達範囲を得るために基地局を位置決めする際、これらが検討に入れられ、結果的にセルは概して不規則形状を有する。
さらに、ほとんどの場合、360度領域を3つの120度セクタに分割することが、基地局の到達範囲領域を最大化するために非常に有効である。これを図2に示す。通常、120度の到達範囲を有する別々の基地局アンテナが各セクタ4に供する。セルタワー5上のセクタアンテナ11は図3(a)に示す。
典型的なセクタアンテナは、図3(a)および3(b)に示される放射パターンを有する。水平面では、放射接地到達範囲12はセクタ全体にわたる。垂直面では、アンテナ放射セクション13によって示されるように、放射はほとんど地面へと向かう。これにより、エネルギーが無線クライアントのいない上方向に向かって浪費されるのが防止される。セクタアンテナ放射パターン全体は、水平面で120度の広さを有し、垂直面ではずっと狭くなるビームとして説明することができる。この放射パターンは送受信共に有効であることを強調しておくことが重要である。たとえば、図3(b)の放射セクション13は、アンテナが送信モードでRF力を送信し、受信モードでRF力を受信する領域である。放射パターン外のどのモバイルも基地局に到達できないし、基地局からも到達できない。
図4は、セクタアンテナ11と、ワン−RFプロセッサと称される信号処理サブシステム100と、ワン−RF全二重インタフェースと称される相互接続ネットワーク101とを備える基地局システムを示す。セクタアンテナ11はワン−RFプロセッサ100を始点または終点とするRFエネルギーを送受信する。サブシステム100は無線基地局において必要なすべてのRF、アナログ、デジタル処理機能を含む。このサブシステムの必須の側面は、単独のアンテナとの間で信号を処理することであり、したがってワン−RFプロセッサの名称が付される。同様に、ワン−RF全二重インタフェース101は送受信両方向(よって、全二重という名称)で単独のアンテナ(よって、ワン−RFという名称)との間で信号を担持する。
実際上、無線搬送波は送受信に別々のセクタアンテナを使用し、多様性のために2つの受信セクタアンテナを使用することが非常に多い。他の類似の構成も可能である。しかしながら、従来のシステムでは、これらの複数のアンテナはワン−RFプロセッサにまだ接続されており、原則的には図4のような単独のアンテナの機能を実行する。生来、セクタ毎にいくつかのアンテナを使用するワン−RFプロセッサは、セクタ毎に単独のアンテナを使用するワン−RFプロセッサと比較して追加のRF回路(無線など)を有するが、この実際的な詳細はワン−RFプロセッサの定義には含まれない。ワン−RFプロセッサの基本的な定義上の特性は、実際の配備ではいくつかの物理セクタアンテナを介するにもかかわらず単独のRF信号を送受信することである。このため、および本明細書の目的上、ワン−RFプロセッサは以下の説明では、一般性を失うことなく図4のように単独のセクタアンテナに接続されるとみなすだけで十分であろう。
加えて、本明細書の以下の部分で、システムのコンセプトをある事例ではセクタに関して、別の事例では全セルに関して説明する。これは単に説明の明瞭化のためであって、それぞれのコンセプトを限定するものではなく、コンセプトはいずれかのケースにおいても有効である。
従来の無線システムのスペクトル効率
上述したように、スペクトル効率は所定のビット・エラー・レートを超えずに秒およびヘルツ当たりに送信される情報のビット数として定義される性能指数である。無線システムでは、ピークスペクトル効率として知られる最大スペクトル効率は、基準によって明示される変調フォーマットに従い設定される。
実際上、モバイル無線システムはごく稀にしかピークスペクトル効率で動作しない。実際には、平均スペクトル効率はピーク効率よりもずっと低い。この大きな差の主な理由はまさに無線送信の性質による。通信信号のSNIRはセル内で大きく変動する。タワーアンテナに近い、および/または直接見通し内のモバイルは通常、セルの縁部または建物などの「RFシャドウ」内のモバイルよりもずっと高い信号品質を享受する。さらに、マルチパス効果が、時間と共に変動するフェーディングと称される大きなSNIR変動を生成する。
図5は、信号品質を低下させる3つの領域:小さな強信号領域40、わずかに大きな中信号領域41、大きな弱信号領域42を示すことによって簡易にセル内の大SNIR変動を示す。現実の場合、セル全体にわたる非均一な連続的信号品質変動は起こらない。しかしながら、平均スペクトル効率がピークスペクトル効率よりも低いことを証明するには、図5の簡易化で十分である。
典型的な無線システムは、低SNIRで起こりうる超低レートから高SNIRが得られるときのみ起こりうるピークレートまで様々なデータ転送速度をサポートすることによってセル内のSNIRの大きな変動に対処する。図5に関しては、ピークまたは略ピークレートは小さな強信号領域40でのみ使用され、低〜中レートは中信号領域41で使用され、低〜超低レート(コールドロップ前に基準によって許容される最低レート)は大きな弱信号領域42で使用される。明らかに、平均スペクトル効率はピーク論理効率よりも低く、後者は強信号領域がセル全体をカバーすると推定して算出される。言い換えると、大部分のモバイルはほとんどの時間、低データ転送速度で通信するため、結果的に低平均スペクトル効率となる。変調などの他のスペクトル効率パラメータの代わりではなく、それに加えてこの点に着目することが重要である。
単アンテナシステムでのスペクトル効率の向上
図5に示される信号−品質問題にかかわらず、a)情報トラフィックが低ビットレートしか要しない音声が中心を占めていた、b)搬送波が利用可能な余分のRFスペクトルを備えていた、c)より効率的な変調技術を通じて利用可能なスペクトルの使用が可能であったため、これまで無線搬送波は十分な通信サービスを提供してくることができた。最初の2つの節減状況は一時的なものであった。今日および予測可能な未来においては、無線トラフィックは映像送信などデータを多量に使用する用途が中心を占めており、いまだかつてないレートで増え続けている。加えて、RFスペクトルは不足しており、基本的には有限なリソースである。
次世代(たとえば、1G、2G、3G、4Gセルラーシステム世代)へとより効率的な変調技術を有する無線システムにアップデートすることはスペクトル効率の向上問題に対処するが、拡張性が制限された単に一時的なソリューションでもあった。というのは、よりスペクトル的に効率的な変調技術はさらに高いSNIRを必要とするからである。セル全体にわたる基本的なSNIR変動問題に加えて、上述したように、モバイルコストと電力損失もSNIRの増加と共に増大する。4Gで既に高レベルのシステムSNIR要件をさらに引き上げることは、この事実のみを考えてみても可能性が極めて低い。さらに、基本的に、SNIRの上昇(より高度な変調)を通じてシステムスペクトル効率を高めることは、シャノンの情報理論が課す緩やかに増大する対数法則に制限される。したがって、変調を通じてより高いスペクトル効率を得るというオプションは、4G無線システムを超えるリターンを減少させる点に達している。
予測されるように、図5に示されるセルSNIR問題のため、非常にスペクトル的に効率的な変調を使用するにもかかわらず、4G無線システムなどのLTE(長期進化)などの平均スペクトル効率は低い。たとえば、4G Americasフォーラム(元3G Americas)は従来の単独のアンテナ(図4を参照して定義)配備の場合、わずか1.4ビット/s/HzのLTE平均スペクトル効率を予測しているが、それぞれのピーク効率は4ビット/s/Hzである。これは4G Americas白書「LTEおよびHSPAネットワークのMIMO送信スキーム」、2009年6月、図22、40ページに示されている。モバイル上に4つのアンテナを有する最も高度な多アンテナLTE配備でさえ、スペクトル効率はわずか2.5ビット/s/Hzであるが(同じ4G Americas白書を参照)、このシステムの理論的ピーク効率は16ビット/s/Hzである。現実には、4つのアンテナを有するモバイルはほとんどなく、標準的な4Gセルの実際の平均スペクトル効率は2ビット/s/Hz未満である。
MIMOシステムでのスペクトル効率の向上
無線通信における低スペクトル効率問題に対処する周知のアプローチは、少数の複数アンテナを使用することである。よく使用される用途の1つが空間的多様性MIMO(マルチ入力マルチ出力)システムであり、散乱する信号を利用してRFスペクトルを複数並列送信のために再利用する。LTEによってサポートされる4×4のMIMOは基地局に4つのアンテナ、モバイルに4つのアンテナを有し、理想的な状態では、従来の非MIMOシステムの4倍のデータを同一のRFスペクトル上で送信する(最大スペクトル効率が4倍増加)。
MIMO動作に適した基地局システムを図6に示す。このシステムは、N個のアンテナを有する1次元アンテナアレイ21、N−RFプロセッサと称される信号処理サブシステム200、N−RF全二重相互接続と称される相互接続ネットワーク201を備え、信号をアンテナアレイのN個のアンテナとN−RFプロセッサとの間で信号を行き来させる。図4のワン−RFプロセッサにあるような標準的機能に加えて、N−RFプロセッサはN−1個の追加のRF回路(無線)およびそれぞれのインタフェースと、MIMO動作に関する必要なリアルタイム計算を実行する「チャネルマトリックス処理」と称される複雑なデジタル処理能力とを含む。事実上、チャネルマトリックス処理はRF信号伝播の空間的多様性を使用して、同一のRFスペクトル上で送信されるN個の個別のRF信号を相互に分離させる。MIMOは無線クライアントが単独のアンテナを有するとき特別な形状をとる。この場合、RFスペクトルは複数の並列送信によって再利用されず、単独の送信からのSNIRは複数の経路を通じて伝播する信号を適切に結合することによって向上される。
N=2の場合(基地局システムに2つのアンテナと無線クライアントに2つのアンテナ)の空間的多様性MIMOのコンセプトを概念的に図7に示す。基地局6は2つの独立した信号を2つのアンテナ(1信号につき1つのアンテナ)で同一スペクトル上で送信する。基地局アンテナの物理的位置の差(たとえば、空間的多様性)により、各信号は異なる経路を通って伝播し無線クライアント7に至る。後者は異なる位置に物理的に配置された独自の2つのアンテナで2つの信号を受信する。したがって、各無線クライアントアンテナは2つの基地局信号の重畳を受信し、その各信号は図7に無線路として示される独自の物理チャネルを通って伝播されている。無線信号路8は4つの無線信号路のうちの1つである。2×2のMIMOは4つのチャネルパラメータ(第1の基地局アンテナから第1のクライアントアンテナ、第1の基地局アンテナから第2のクライアントアンテナ、第2の基地局アンテナから第1のクライアントアンテナ、第2の基地局アンテナから第2のクライアントアンテナ)を有する。信号伝搬における特定の散乱状況を想定し、無線クライアントは基地局から送信される2つの信号を計算によって分離させることができる。
空間的多様性MIMOシステムは、携帯電話では実現しづらい、モバイルが複数のアンテナを要するという根本的な欠点を備えている。さらに、モバイルは複数の消費電力の大きなRF回路(無線)とMIMO計算にとっての相当多いデジタル処理要件を有するため、バッテリ駆動時間が短い。加えて、ピークレートのMIMO処理には、チャネルノイズに対して大きな信号を必要とする。モバイルが基地局にさほど近くない場合、起こりうるMIMOレートとMIMOスペクトル効率が急激に低下する。上述のLTE例が示すように、アンテナの数が4倍になると(1つのアンテナから4つのアンテナ)、平均スペクトル効率が2倍よりも小さくなるだけでなく、4×4のMIMOの場合の平均効率とピーク効率間の比が従来の非MIMOシステムよりもずっと小さくなる。
従来のビーム形成およびステアリングシステムでのスペクトル効率の向上
複数のアンテナの異なる用途は、従来のビーム形成/ステアリングシステムでの利用である。このアプローチの利点の1つは、モバイルが従来の無線システムで使用される規格であり、基地局のみが複数のアンテナとRF回路(無線)を有することである。基地局側では、従来のビーム形成/ステアリングはMIMOと類似しており、複数のRF回路(無線の数はアンテナの数に等しい)を必要とし、「ビーム処理」と称される重い信号処理を採用している。図6に示される基地局システムの図は従来のビーム形成/ステアリングシステムにも適用される。しかしながら、ビーム処理はチャネルマトリックス処理と異なる。ビーム処理では、N個のアンテナとの間のRF信号は、構造上所望の信号を追加し不所望の信号(妨害子)をキャンセルするように結合することができる。
図8(a)および8(b)は、アンテナアレイ21を使用する従来のビーム形成/ステアリングシステムの有効な放射パターンを示す。水平面では、放射接地到達範囲22は扇状ビームと称されるセクタの狭い部分である。垂直面では、放射は従来のセクタアンテナと同一である。図8(b)の垂直セクション23は図3(b)の垂直セクション13と同一である。上記の「有効放射」という文言は、扇状ビームが実際には送信モードにのみ存在し、受信モードでは仮想的であるという事実を扱っている。これを以下に説明する。
送信モードでは、図8(a)のアンテナアレイ21中のN個のアンテナはN個の別個だが干渉性のRF信号を送信し、該RF信号は送信される情報を含む別々のRFバージョンの同一のベースバンド信号である。概して、各RFバージョンは他と異なるRF位相および異なるRF大きさを有する。アンテナアレイ21中の各アンテナは従来のセクタアンテナであるため、N個のRF信号はセクタ全体にわたって送信されるが、互いにコヒーレントに干渉する。このコヒーレント干渉が設計上生じるのは、すべてのRF信号が同一のソースから発生し、従来のビーム形成/ステアリングシステムがこのコヒーレント動作にために特別に設計および較正されているからである。最終結果として、N個の送信されたRF信号は到達範囲領域22内で建設的に干渉し、セクタの残りで破壊的に干渉する。したがって、送信モードでは、従来のビーム形成/ステアリングシステムは実際の狭扇状ビームを生成する。
受信モードでは、図8(a)のアンテナアレイ21のN個のアンテナは、(モバイルおよび妨害子からの)N個のバージョンのセクタ信号を表すN個の別々のRF信号を受信し、各バージョンは異なる空間位置で受信される。従来のビーム形成/ステアリングシステムは各信号を別々にデジタル化し、デジタル領域でコヒーレントにそれらの信号を結合して、到達範囲領域22とセクタのその他の場所にゼロ到達範囲とを有効に生成する。したがって、受信モードでは、従来のビーム形成/ステアリングシステムは仮想上の狭扇状ビームのみを生成する。
セクタにわたって大きな信号孔を形成するビーム形成システムに関して起こり得る問題(ビーム外の信号なし)はモバイル追跡である。モバイルがカバーされる領域から外に出ると、無線リンクは見かけ上切断される。従来のビーム形成/ステアリングシステムの重要な特徴は、放射パターンが有効に狭いという事実にもかかわらず、常にセクタ全体を監視できるという能力である。これは、受信されるビームが算出を通じた仮想であって現実ではないからである。システムはセクタ内の全モバイルに関する完全な情報(N個のバージョンの情報)を有する。この情報は、セルを通過する無線クライアントを追跡し、ビーム(またはヌル−後述)を動的に対象の無線クライアントへと向けるために使用される。
図9は、25などのいくつかの狭扇状ビーム内でのモバイルとの間の信号を増強し、これらの扇状ビーム外のモバイルとの間の信号を有効に排除する理想的な従来のビーム形成/ステアリングシステム24によってサービスを提供されるセルを示す。有効に、ビーム形成/ステアリングを有する基地局24は、図5の従来の基地局1と比べてビーム領域内のSNIRを向上させる。
図9の無線到達範囲のための方法は図5の方法と異なる。前者の方法は、一度にセクタの一部のみをカバーする複数の(この場合2つ)扇状ビームを含む。このアンテナ放射の集中は、2つの手段によってビーム内のRF信号のSNIRを高める役割を果たす。第1に、SNIRの信号部がノイズおよび妨害子のレベルに対して増大される。第2に、RF信号がセルの一部でのみ伝播するためマルチパスフェーディングの可能性が低減する。ビーム内の向上SNIRとビーム外のゼロSNIR間のトレードオフには、無線通信プロセスとの協調が必要である。このため、システムはビームを対象の無線クライアントへと向ける。
図9にあるような扇状ビームは生来、N個の通常のセクタアンテナが相互に隣接して配置される1次元アンテナアレイで生成される。小サイドローブの扇状ビームを生成するには各アンテナのRF信号を適切に位相調整することで十分であり、アンテナ信号の大きさを変動させることでさらにサイドローブを低減させることができる。アンテナの数が多いほど、ビームはより狭い方位角で広がる。しかしながら、ビーム形状は常に細長く、基地局アンテナからセクタの端部まで放射方向にセクタにまたがる。様々な方位角でノッチを配置して妨害子を低減するなどのその他の放射パターンも極めて有効であり、N個のアンテナ信号の類似の位相および大きさを変動させることで可能である。しかしながら、上述の1次元アレイ(任意数のアンテナ)を有することは放射方向にビームを成形するには十分ではないかもしれないことを強調しておく。1次元アンテナアレイは、ペンシルビームとしても知られるスポットを生成することができない。言い換えると、1次元アンテナアレイによって生成されるパターンは放射方向に不変である。
スペクトル効率の向上などの魅力的な論理的特性にもかかわらず、従来のビーム形成/ステアリングシステムは重大な実際的制限を有する。無線セルラーシステムにとって重要な制限は、少数のアンテナを超えてシステムを拡大するのが困難なことである(8個以上のアンテナは稀である)。加えて、ハードウェアのコストが過剰になり(多すぎる高品質無線)、必要なベースバンド処理の複雑度が高まり、高価なデジタルプロセッサおよびソフトウェアを必要とする。ごく少数のアンテナの使用により、どの方向への最大アンテナゲインも、システムの空間フィルタリング効果も制限される。このため、実際上、図9に理想的に示されるような扇状ビームを使用するのではなく、妨害子の方向にヌル/ノッチを配置することによって共チャネル妨害子(同一のRFスペクトル内の信号)を排除することが通常は好ましい。各モバイル信号は異なる複数路で基地局と通信するため、モバイル追跡を含め実世界の無線トラフィックの処理は複雑である。実際、8アンテナビームステアリングシステムはスペクトル効率の2分の1未満の向上しか達成せず、平凡なパフォーマンス対コスト比となる。
上述の説明が示すように、少数のアンテナとデジタル信号処理のみを使用してスペクトル効率を高める方法は有効性が限られている。たとえば、LTE基準は16ビット/s/Hzのピークスペクトル効率を可能にするが、平均効率は最も利用可能な高度な処理でも2ビット/s/Hz未満と予想される。
これらのパフォーマンスの限界を超える方法の1つは、本開示の一側面によると、基地局システムのRFフロントエンドに新たなハードウェア能力を導入して、デジタル化前に信号SNIRを増強することである。これにより、処理アルゴリズムが平均スペクトル効率を最適化する可能性が生まれる。当然ながら、向上したシステムは経済的でもあるべきである。
大アンテナアレイでのスペクトル効率の向上
商業用無線システムでの大アンテナアレイの使用は、上述したように上記システムの高コストにより実現していない。しかしながら、理論的には,上述のビーム形成/ステアリングのコンセプトは、アンテナの数を増やすことで大いに恩恵を受ける。図6のシステムの一般化である可能なそれぞれの基地局システムを図10に示す。アンテナアレイ31はN×Mサイズの2次元である。これらのN×M個のアンテナはN×M個の別個のRF信号を送受信する。図6のシステムの別の一般化として、N×M個のRF信号は特定の方法で結合されてK個のRF信号を生成し、それらの信号はK−RF全二重インタフェースと称される全二重相互接続ネットワーク301を通じて送信される。K−RFプロセッサと称されるRF/アナログ/デジタル信号プロセッサ300はK個のRF信号を処理して、向上されたセクタ/セル全体の平均スペクトル効率を得る。このK−RFプロセッサ機能の詳細をさらに以下に説明する。
アンテナアレイに2次元を追加することで、放射方向ならびに方位角に関して放射全体を成形するという新しい基本的な能力が得られる。その結果、このシステムはペンシルビームを生成することができる。図11(a)および11(b)は2次元アンテナアレイ31を使用する上記システムの放射パターンを示す。水平面では、放射接地到達範囲32はゼロ信号領域によって囲まれる円形信号領域である。垂直面では、放射は図11(b)のセクション33によって示されるように狭い。ペンシルビーム34全体を図11(a)に示す。
図12は、本開示の一側面に係る、2次元アンテナアレイとペンシルビームとを使用する、基地局35がサービスを供給する無線セルを示す。基地局35はペンシルビーム34などの3つのペンシルビームによってカバーされる3つの強信号領域内のモバイルとの間の信号を増強し、これらの強信号領域外のモバイルとの間の信号を除去する。有効には、ペンシルビームを有する基地局35は、図5の基地局1、また図9の基地局24と比較してもビーム領域内のSNIRを向上させる。理論的には、ペンシルビーム34などのペンシルビームを配置し、N×MRF信号の位相と大きさを変更することによってセクタ内の任意の位置に電子的に移動させることができると言及することが重要である。
図11および12は、急角度で定義されたビームを示す(たとえば、RF信号の大きさはビーム縁線上で有限値からゼロに急激に変化する)。これは図13に示される実際のケースの単純な図解化である。実際上、ビーム変化内のRF出力密度50は途切れなく連続的に変化する。必然的に、セクタ内の点52ではRF出力密度が最大となる。その点から直線上の任意の方向に離れると、RF出力密度はピーク値からの3dBの変動となる点53で最大値の半分に至るまで減少する。この点53は、本開示にしたがいビーム縁を任意に定義できる場所である。この領域外で、ビーム出力密度は使用される空間フィルタリング設計により点51でゼロへと減衰する。アンテナアレイのサイズが大きくなるにつれ、実現され得る空間フィルタの移行領域は急になる。
したがって、慣習上、一般性を失うことなく、ここに記載されるビームカバー領域(たとえば、強信号領域40)は−3dB出力密度縁線内と考えられる。加えて、ビーム幅はビーム開始点(すなわち、アンテナアレイの中心)からの視野角として定義される。たとえば、「15度ビーム」はピーク出力密度点を囲む領域であって、出力密度がその点から3dB以上である領域とすることができ、この領域はアンテナアレイの中心から15度の視野角を有する。
ペンシルビームは方位角と放射方向の両方に関して狭いため、必然的にRFスペクトルを再使用することができ、これは無線ネットワークのスペクトル効率を向上させる重要な能力である。言い換えると、セクタ内で相互に十分離れて配置されるペンシルビームは安全に同一のRFスペクトルを使用して(ビーム対ビーム干渉がほとんどか全くない)、独立した並列ストリームで情報を送信することができる。理論的には、ビームが狭いほど、より多くのビームを同一のRFスペクトルでの並列送信のために使用することができ、より高いスペクトル効率が達成される。しかしながら、独立した信号の並列送信の数はK、図10のK−RF全二重インタフェース301のサイズに限定される。概して、この相互接続ネットワークを通じて流れる信号はビーム信号の線形組合せである。重要な特定のケースは、K個のビームが存在し、K−RF全二重インタフェースの各チャネルが単独のビームの信号を担持する状況である。
図10のパラメータKのサイズとシステムのハードウェア方法はシステムのコストに重要な役割を果たす。これを以下より詳細に説明する。
フェーズドアレイ(Phased Array)の使用
図10の基地局システムのRF/アナログセクションは、N×M個のアレイ31、K−RF全二重インタフェース301、およびK−RFプロセッサ300内の無線回路を備える重要なサブシステムである。実際上、このRF/アナログセクションはフェーズドアレイで実現することができる。アナログアレイ、デジタルアレイ、広範なハイブリッドソリューション、研究開発段階の新規なアレイなど、多数の種類の装置がある。
第1の例として、Kが1(単独の無線システム)である場合、図10のシステムのRF/アナログセクションは、すべてのアンテナ信号が共同フィードを用いて単独のRF信号に結合される従来のアナログ・フェーズド・アレイである(たとえば、R.Mailloux著「フェーズド・アレイ・アンテナ・ハンドブック」第2版、Artech House、2005年を参照)。現在、これらの従来のアナログ・フェーズド・アレイは、携帯電話などの商業用無線システム用途にとっては非常に高額である。
第2の例として、KがN×M(N×M個の無線システム)である場合、図10のシステムのRF/アナログセクションは、各アンテナ信号がデジタル領域で個別に生成または処理される現代のデジタル・フェーズド・アレイである。アナログアレイと同様、軍事用レーダで使用されるこれらの汎用システムも、商業用無線システムにとっては非常に高額である。部分アナログおよび部分デジタル・フェーズド・アレイを使用する従来のハイブリッドソリューションもまた高額である。
ペンシルビーム能力を有する基地局システムのRF/アナログセクションの低コスト・フェーズド・アレイ・ソリューションは米国特許出願第13/173,300号に開示されており、引用により全文を本明細書に組み込む。このフェーズドアレイは小さなKパラメータ(たとえば、K=2〜8)と中間周波数(IF)インタフェースを使用する。上記フェーズド・アレイ・ソリューションを利用するペンシルビームシステムを図14に示す。フェーズドアレイ36はN×Mサイズの2次元であり、等角(たとえば、非平面)とすることができる。K個のIF信号は、K−IF全二重インタフェースと称される全二重相互接続ネットワーク401を通じて、K−IFプロセッサと称されるIF/アナログ/デジタル信号プロセッサ400との間で送受信される。このフェーズド・アレイ・ソリューションにおけるコスト面の突破口は、米国特許出願第13/173,300号に記載されるようなRF同期化方法によって可能になるシリコン集積回路と低コストアセンブリとの使用から生じる。使用されるハードウェア方法のため、このフェーズドアレイはビーム形成およびステアリング能力において極めて迅速である(すなわち、1つのビーム構成から次のビーム構成に非常に迅速に切り替わることができる)。実際上、このビームスイッチング速度は、送信されるデータの転送速度によって表される情報流の速度と同時とみなすことができる。当然ながら、その他のビームステアリングに対する従来のアプローチを採用することができるが、通常は複雑度とコストが増大し、速度が低下するというペナルティを負う。
アジャイルビーム(Agile Beams)法
図10の基地局システムと図14の基地局システムは、理論的には上述したようにスペクトル効率を高めることのできる、複数のペンシルビームを生成する基本能力を備える。しかしながら、追加の考慮が実用化に必要である。これらの考慮の主目的は、最適セクタ到達範囲および最適無線クライアント接続性のためのシステム動作技術を開示することである。アジャイルビーム法と称される新規の動作技術をここで紹介する。アジャイルビーム法は送信にも受信にも同じく有効である。したがって、それぞれのケースを個々に説明する必要はなく、以下の考慮はいずれのケースにも適用される。
図10の基地局システムまたは図14の基地局システムは、モバイルクライアントとの間のK個以下の並列する独立データ転送をサポートすることができる。上述の低コスト・フェーズド・アレイ・ソリューションと一致するKの小さな値とK個の狭ペンシルビームの使用を前提とすると、セクタの大部分がビーム外にとどまることは明白である。アジャイルビーム法はこの欠点を軽減する。
後述の例では、4つの15度ビーム(K=4)を1度に使用することを検討しているが、単に一例であり、一般性を失うものではない。開示される技術が他の多くのビーム数またはビーム幅に対しても有効であることは自明であろう。これらの技術は、たとえビームが概してペンシルビームでなくても有効である。
図15が示すように、120度のセルラーセクタは、簡略化のため「円」と称する20個の均等な円形領域を含む2つの隣接する正三角形によって近似させることができる。円形領域60は20個の円のうちの1つである。円61などの周辺円はセルタワー位置から約15度の視野角(正三角形の角度60度を4つの周辺円で割った角度が15度)を有する。慣習上、および簡略化のため、20個の円のいずれもセルタワーから開始される15度ビームの接地面を有する交点とみなすことができる。これはタワー近傍のビーム拡張効果、タワー長効果、ビーム傾斜効果を無視している。しかしながら、これらの詳細は限定することを目的としていない。原則的には、図10または14のシステムは、まさに図15に図示されるように20個の円のうちのいずれも覆うようにサイズを変えられるペンシルビームを生成することができる。加えて、図15はすべてのビームに対する見通し内((LOS)伝播を推定している。後で、システム実行可能性とパフォーマンスに重大な影響を及ぼさないこの理想的状況については排除する。
4つの15度ペンシルビームの使用はセクタ領域の約5分の1(20個の円のうち4つ)をカバーする。セクタ全体に到達範囲を拡張するには、複数のビームセットが必要である。図16の図が示すように、このような到達範囲はビーム間干渉が最小限か全くない場合に可能である。図15に示されるようなセクタに近似する5セットの円が図16(a)〜16(e)にそれぞれ示されている。各セットの円は、強信号を有する4つのそれぞれの領域をカバーする異なる構成の4つのペンシルビームに対応する。たとえば、図16(a)では、アンテナアレイ62によって生成される第1のビームが強信号を有する領域63を提供し、第3のビームが強信号を有する領域65を提供する。同様に、図16(b)では、第2のビームと第4のビームが強信号を有する領域64および66をそれぞれ提供する。強信号を有する4つのそれぞれの領域をカバーする4つのビームの各構成はビーム群と称される。
図16(a)〜16(e)の強信号を有する4つの円の各セットはビームパターンと称する。5つのビームパターンのアンサンブルはセクタ全体をカバーし、各ビームパターンはビーム群の4つの15度ペンシルビームによってカバーされる4つの強信号領域を含む。したがって、図16(a)〜16(e)では、5つの対応するビーム群:群1、群2、群3、群4、群5によって生成される5つのビームパターンがある。各ビーム群中のビームは相互に干渉しないように互いに離して配置される。同一の特性を有する(それぞれのビーム群によって生成される)ペンシル・ビーム・パターンのその他類似のアンサンブルも可能である。また、ペンシルビームではなく細長ビームや星形ビームなどのビームで上記のパターンアンサンブルを生成することもできる。
図16の5つのビームパターンを一例として使用して、セクタ全体をカバーする1つの方法には、1回で1つのみのビームパターン、何回かですべてのビームパターンとなるようにビームパターンのオンオフを切り替えることである。最大スペクトル効率を得るには、ビームパターンのない時間が必要である。言い換えると、最大スペクトル効率を得るには、情報が基地局と無線クライアントとの間を常時流れているべきである。
実行可能な無線通信システムを入手するため、基地局と無線クライアント間の情報転送は、ビーム・パターン・スイッチングのプロセスと協調させなければならない。このビーム・パターン・スイッチングと協調された情報転送との組合せはアジャイルビーム法と称される。「アジャイル」という文言は、ビームパターンが情報転送レートと比較して非常に迅速に切り替わり、ビームスイッチング中の情報ロスが防止されるという暗黙の要件を指す。
アジャイルビーム法の協調スケジューリング戦略は基本的に、従来のビームステアリング技術の処理戦略と異なる。上述したように、従来のビーム・ステアリング・ケースでは、システムは常にセクタ全体を完全に掌握しており、ある方向では最大値で(クライアントがサービスを提供される)、別の方向ではヌルで(干渉相殺)「ビーム」構成を形成する。この戦略は「基地局追跡モバイル」と称される。アジャイルビーム法では、ビームでモバイルを追跡するのではなく、モバイルは基地局によって生成されるアジャイルビームでセクタ到達範囲のプロセスにしたがい基地局と通信するようにスケジューリング/プログラミングされる。したがって、この戦略は「基地局追跡モバイル」と称することができる。
アジャイルビームシステムの例
最も一般的なケースでは、アジャイルビーム法は、ビームパターンの不規則かつ動的なスイッチングと、変動するビームパターン(ビームの数とビームのサイズ)と共に使用することができる。たとえば、セクタの特定領域に一定期間、無線クライアントがいない場合、その領域をカバーするそれぞれのビームは他のビームパターンをオンにするのに有利なようにオフにしておくことができる。同様に、特定領域で大量の無線トラフィックがある場合、それぞれのビームを常にオンにしておくことができる。あまり一般的でないがより簡易なアジャイルビーム法の適用では、図16の5つのビームパターンまたはその等価を不定に繰り返すことができ、各ビーム群は時間の5分の1オンになるビームパターンを生成する。事実上、この簡易なプロセスは、別個のステップで4つのビームでセクタを走査することと等価である。
ビーム・パターン・スイッチングと情報転送間の適切な協調がアジャイルビーム法にとっては重要である。図17は、マルチビーム走査の単純なケースでこの機能を提供する実現可能な基地局サブシステムを示す。このサブシステムは図10の基地局システムまたは図14の基地局システムに含めることができる。図17のN×M個のフェーズドアレイ37は、信号70を介して物理層処理71との間を行き来する、K個のRF信号を送信または受信するK個のアジャイルビームを生成する。フェーズド・アレイ・ビームは、MAC(メディアアクセス制御)ソフトウェアによって制御されるK−ビーム形成および走査モジュールと称されるモジュール73を通じてプログラミングされる。このモジュールは、高レベルMACコマンドを要求されるビームパターンを生成するためにフェーズドアレイによって使用される位相および大きさに、およびビームスイッチング/走査プログラムに変換する。制御信号74はビーム形成情報をフェーズドアレイに転送する。
ビームスイッチング/走査と情報転送間の協調が行われるのはMAC層である。時間/周波数通信リソースを無線クライアントに割り当てるMACの一部であるスケジューラ72は、ビームがそれぞれのクライアントのいる領域に到達範囲を提供する期間中、無線クライアントの送受信時間をスケジューリングする。物理層処理ブロック71は調整されたアナログフォーマットへの/からのデジタルデータへの/からのRF信号を変換する標準動作を提供する。
図17に開示され上述された機能は、1つまたはそれ以上のプロセッサと、各種機能用の適切なプログラムコードを記憶するメモリ(たとえば、ROM、ディスク記憶装置、永久記憶装置など)と、プログラムコードの実行中に使用されるRAMおよび/またはアクティブメモリとを含むファームウェアまたは処理システム、または両者の組合せによって通常は実現することができると理解すべきである。
上述の例にあるような4つのビームパターンを有するアジャイルビーム法はLTE基準に合致する。後者はMIMOのために最大4つの基地局アンテナを許容するため、物理層とインタフェースとを通じて4つの独立したストリームのデータ送信をサポートする。加えて、LTE MAC層スケジューリングは時間および周波数スロット割当が極めて柔軟で、協調スケジューリングを可能にする。さらに、アジャイルビーム法は生来LTEのデータフレーム構造に組み込まれるため、高い平均スペクトル効率をもたらす。
一実施形態では、図16を参照して説明される走査スキームは5ms毎に不定に繰り返すことができ、各4ビームパターンは1度に1ms作動される。これは、アンテナ・ビーム・パターン(またはビーム群)がLTEサブフレーム(1ms)毎に変動して、アンテナの焦点を各サブフレームでセクタの別の20%に合わせることに相当する。10msのLTEフレーム中、セクタ内の各点は計2ms間、2回カバーされ、短サイクリックプレフィックス(サブフレームにつき14パケット)を含む28パケットまたは長サイクリックプレフィックス(サブフレームにつき12パケット)を含む24パケットに相当する。
250Km/hで移動するモバイル(LTEフレーム毎に0.7mの位置変化)の場合、7mの位置変化(各ビーム領域に関し、10個のLTEフレーム、サブフレームにつき14パケット、フレームにつき供される2つのサブフレーム)内に少なくとも280個のLTEパケットが生じる。この位置変化は各ビームによってカバーされる領域の半径よりも小さい。たとえば、半径500mの小さなセクタの場合、各ビームは半径64.5mの円形領域をカバーする。5Kmの半径のセクタの場合、各ビームは半径が645mの円形領域をカバーする。ゆっくりと移動するモバイルは各所定のビーム位置に関しさらに良好な到達範囲を得ることができ、静止するモバイルはビーム位置から連続的な到達範囲を得ることができる。これらの単純な計算が示すように、複数のアジャイル・ペンシル・ビームでセクタをカバーする利点は、セクタ到達範囲が事実上連続しており、基地局がモバイルに接触していない長い期間がない点である。
上述の例では、システムは連続的かつ規則的に繰り返しビーム群を巡回する(すなわち、群1、群2、群3、群4、群5のシーケンスが連続的に繰り返されて、各ビーム群が同一長の時間生成される)。しかしながら、反復的なビーム群の巡回は、状況の求めに応じて不規則または不定期にも実行することができる。たとえば、異なるビーム群を異なる長さの時間生成することができる、および/または順不同に生成することができる、および/または1サイクル中にいくつかの群を2度以上生成することができる。この問題に関するより詳細な点を以下に説明する。
無線クライアント制御
上記のアジャイルビーム法の説明では、基地局は時間スケジューリング情報を含む無線クライアント制御情報を通信することができると暗黙に仮定されていた。この通信は通常、特別な制御チャネルを通じて行われ、普通は高速データチャネルよりもかなり低いSNIRを要する。制御チャネルを確定し維持する単純な方法は、別々の静止する120度ビームでセクタ全体をカバーすることである。しかしながら、このアプローチは1つのビームを浪費する場合があり、現行の無線基準の修正を要する可能性が高い。代替アプローチを以下に説明する。
ビーム数とビームサイズは以下のようにして選択することができる。a)ビームは、ビーム間の中間点で、アンテナの空間フィルタリングが阻止帯域に達するように十分細くあるべきである、b)ビーム幅は、セクタの相当部分がわずかなアンテナ放射でカバーされないほど狭くてはならない。システムが狭ビーム(たとえば、十分に大きなフェーズドアレイ)を生成する能力を有すると仮定すると、これは正しいビーム幅とビーム数を選択することによって可能である。図18および19はこの点を示す。適切な設計を図18(a)および19(a)に示す。ここで、第1のビーム54の強度はビーム中心から離れた半径1.5のビーム幅外では無視できるほど小さく、第2のビーム55を実質上干渉しない。しかしながら、低エネルギーにもかかわらず、ビーム間の領域はまだカバーされている。少なくとも2つのビームがこの領域をどの方向でもカバーしているため、基地局は低SNIRでモバイル制御情報と通信できる可能性を維持する。概して、ビーム間領域は静穏であることを目的とし、すなわち、それらの領域内のモバイルはペイロードデータを送受信できないが、基地局はネットワーク管理のためにモバイルとの低レート制御信号をまだ維持することができる。これにより、アジャイルビーム法を使用せずに従来の配備と同様に効率的にモバイルを制御することができる。
図18(b)のように最適ビームよりも細いビームを使用すると、ビーム間領域は第1のビーム56によっても第2のビーム57によってもカバーされていないため、モバイル制御能力が妨害される。図19(b)のように最適ビームよりも広いビームを使用すると、第1のビーム58と第2のビーム59は自らのパワー配分を相互に向けて拡張しているため、ビーム間の干渉の可能性が生じる。
見通し外(Non Line of Site,NLOS)ケース
これまでの考慮では、明瞭化のためLOS(見通し内)無線接続を推定した。実際には、セルラー無線通信がLOS状況でのみ発生するのは、あったとしてもごくわずかなケースである。典型的な状況では、数個のみのモバイルがLOSにあり、大部分のモバイルは建物やその他の人口構造物および木や大岩などの天然障害物上の信号反射を通じて基地局と通信する。加えて、同一の信号の多くの反射は異なる時間に到着することが多く、マルチパス干渉やフェーディングを引き起こす。
LOSおよびNLOS伝播は通信システム全体にとって重要な考慮事項であるが、基地局アンテナの観点からは、重要なのはRFエネルギーをソースまたはシンクする空間能力のみであって、入射または出射がどのようにセクタ内を移動するかではない。したがって、概して、たとえば、全LOSケースまたは全NLOSケースまたはその組合せの場合、図14のフェーズドアレイによって生成される図16のパターンは実際まさにフェーズドアレイの正面に来る。言い換えると、フェーズドアレイの正面に配置されたフェーズドアレイと平行な面を考える場合、この面を通る4つのビームのRFソーシングまたはシンキングパターンは図16に示されるようなものになる。これは、その面が近接効果場を回避するほど十分に遠く、フェーズドアレイと面との間に物理的妨害物がないことを前提としている。この論理的考慮を3つのビームに関して図20に例示する。有限平面81はアンテナアレイ80の正面に配置され、図16のパターンと同様に3つのビーム82、83、84は3つの対応領域85、86、87で有限平面81と交差する。
先に推定したような全LOSケースでは、有限平面上のビームパターンは単純な幾何学的突起(円錐)を介して対応するセクタ領域に直接マッピングされて位相特性を保持する。すなわち、連続領域が連続領域などにマップされる。NLOSケースでは、このマッピングは一層複雑になる可能性があり、概して位相特性を保持しない。すなわち、アンテナの正面の有限平面上の連続円形領域はいくつかのばらばらな領域にマップされる場合がある(たとえば、物理的に近すぎないモバイルはまだ同一のビーム上で基地局と最適に通信することができる)。当然ながら、フェーズド・アレイ・ビームが狭くなるにつれ、アンテナ放射に対してより簡易なセクタマッピングができる可能性が高まる。以下では、2つのNLOSケースはアジャイルビーム法で、単純なケースと一般的なケースと特定される。
単純なNLOSケースは「1モバイル対1ビーム」ケースである。アンテナ放射へのセクタマッピングの複雑度に関係なく、具体的なスケジューリングのために、各モバイルが3つのビームのうち1つのみを通じて基地局と通信する場合、アジャイルビーム法ではこのNLOSケースはLOSケースと略同一である。言い換えると、たとえばスケジューラ72が、どの単独のビームがすべてのモバイルをカバーするのかを常に掌握している場合、モバイルの実際の物理的位置は無関係である。当然ながら、この場合、高速で移動するモバイルはLOSケースの場合よりもずっと高速に小さなNLOSカバースポットを横断することができる。しかしながら、おそらくこの状況は、同一のタワー配備を備えるその他の無線システムよりもずっと優れてはいないであろう。この状況は適切なネットワークプランニングとアンテナ配置によって適切に緩和される(到達範囲下の全領域が妥当に「照らされるように」確保する)。
繁華街などの非常に分散的な環境では、単純なNLOSケースを有するようにモバイルを常にスケジューリングできるとは限らない。これは一般的なNLOSケースである。この状況で、ビームパターン中の少なくとも2つのビームはいくつかのモバイルをカバーする。しかしながら、これは、単独のアンテナを有するクライアントでの従来の空間的多様性MIMOと異なるものではなく、同一の処理ソリューションで対処することができる。図21は、図17のサブシステムと類似するが標準的MIMO処理75で増強されているサブシステムを示す。従来のMIMOシステムと比較して、アジャイルビーム法は、フェーズドアレイが顕著でプログラム可能な空間フィルタリング効果をRFフロントエンドにおいて生成し、RF信号のSNIRを向上させるという利点を追加する。
ビーム割当アルゴリズム
上記説明では、スケジューラ72は、どのビームが各モバイルに適するかを常に掌握していると仮定した。このような場合、スケジューラ72がこの知識を入手し保持する方法はいくつかある。単純なサーチに基づく技術を以下に説明する。
まず、アジャイルビーム法にしたがい動作するシステムがオンになった後の特定の時間に、すべてのモバイルが図16に示されるようなセクタ走査と協調してビームを矯正し基地局と通信するように割り当てられると想定する。モバイルがセクタ周囲を移動すると、そのうちいくつかは、異なるビームによって異なる時間に、割り当てられたカバー領域から離れて異なる領域に向かって移動する。しかしながら、システムは高速走査によって頻繁に各モバイルと通信するため、1つのビームからの「離脱」はチャネル品質の単調な劣化として示される。これにより、スケジューラ72がトリガされて、他のビームパターンに対応する時間スロットで制御データの送信を開始するようにモバイルに要求する。基地局が(適切に設計された複数のビームおよび走査により)セクタ全体との連絡を常時維持することができる能力を備えることを思い起こしてもらいたい。検討してきたLTE例の場合、わずか5msの間に、スケジューラ72は、モバイルが別のビーム内に「出現する」か否か、それがどのビームであるかを知るべきである。また、スケジューラ72はモバイルチャネル品質を監視することができ、適切な時間に(新ビームのチャネル品質は旧ビームよりも高い)モバイルを新ビームに切り替える。
「ブラインド」サーチに基づく上述の簡易なアルゴリズムは、システムが迅速であり、モバイルと基地局との間で情報を交換する機会が多いために実現可能である。一般的なNLOSケースでも、これらのサーチはモバイルの最適割当に向けてビームに迅速に収束する。このアルゴリズムの高レベルな解釈とは、チャネル品質の高いモバイルがセクタ走査プロセスと同期して維持される一方、新たな最適割当が発見されるまで、チャネル品質が劣化しているモバイルが走査パターンとの決定性非同期動作(ほとんどが制御データ)下に置かれることである。
システムの開始は、モバイルを漸進的に1つずつ引き入れ、追加のモバイルを引き入れる前に各モバイルを対応する最適ビーム内に配置するように設計することができる。たとえば、モバイルによるGPS座標報告と基地局に記憶され動的に更新されるGPSマップとに基づく、より高機能なモバイル−割当原理も可能である。さらに別の実行可能なビーム割当アルゴリズム原理は、隣接チャネル品質について報告するモバイルを使用することである。
要約すると、本開示は、ピークスペクトル効率に近い平均スペクトル効率を達成する技術について説明している。これは低コストネットワークのアップグレードで無線システム容量を最大10倍に増大させることを表す。
現時点では、上述の本開示にしたがい無線システムにおける高平均スペクトル効率を達成する技術は、ある程度まで入力データの処理と出力データの生成とを含むということに注目すべきである。この入力データ処理と出力データ生成は、ハードウェアまたはソフトウェアで実行することができる。たとえば、特定の電子部品を、上述の本開示にしたがい無線システムにおいて高平均スペクトル効率を達成することに関連する機能を実行する基地局あるいは類似または関連の回路で採用することができる。もしくは、指示に従い動作する1つまたはそれ以上のプロセッサが、上述の本開示にしたがい無線システムにおいて高平均スペクトル効率を達成することに関連する機能を実行することができる。上記のことが当てはまる場合、上記指示を1つまたはそれ以上の非一時的プロセッサ読取り可能媒体(たとえば、磁気ディスクまたはその他の記憶媒体)に記憶させることができる、あるいは1つまたはそれ以上の搬送波に組み込まれる1つまたはそれ以上の信号を介して1つまたはそれ以上のプロセッサに送信することができることも本開示の範囲に含まれる。
本開示は、ここに記載される特定の実施形態によって範囲を限定されない。事実、ここに記載の実施形態に加えてその他の各種実施形態および本開示の変形は、上記の説明と添付図面から当業者にとって自明であろう。よって、上記のその他の実施形態および変形は本開示の範囲に属すると意図される。さらに、本開示は少なくとも1つの具体的な目的のための少なくとも1つの具体的な環境における少なくとも1つの具体的な実施例を背景として説明したが、当業者であれば、その有効性は該実施例に限定されず、本開示が多数の目的のための多数の環境下で有益に実現可能であると理解するであろう。したがって、後述する請求項は、本明細書に記載される開示の範囲および精神全体に鑑み解釈されるべきである。

Claims (21)

  1. ビーム形成装置によって生成される複数のビームを定義し、前記複数のビームの各ビームが空間内の平面有限領域の異なる領域と交差するステップと、
    セットのビーム群を定義し、各ビーム群が前記複数のビームの異なるサブセットのビームであるステップと、
    前記セットのビーム群の中で各ビーム群を順次生成することによって前記セットのビーム群を繰り返し巡回するステップと、
    無線局との最適な通信リンクをもたらすビーム群を前記セットのビーム群の中から特定するステップと、
    前記特定されたビーム群の生成中に行われるように前記無線局との通信をスケジューリングするステップと、
    を含むことを特徴とする無線局との通信方法。
  2. 前記特定されたビーム群の生成中に前記特定されたビーム群を介して前記無線局と通信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記無線局との最適な通信リンクをもたらすビームを前記特定されたビーム群内で特定するステップをさらに含み、
    前記無線局と通信するステップが、前記特定されたビーム群の生成中に前記特定されたビームを介して前記無線局と通信することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 通信をスケジューリングするステップが、スケジューリング情報を前記無線局に通信することを含み、前記スケジューリング情報が、前記特定されたビーム群が前記無線局によって利用可能になる時を表すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 前記セットのビーム群を繰り返し巡回するステップが、前記セットのビーム群内のいずれのビーム群も生成されていない時間が巡回中に存在しないように実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 前記ビーム形成装置がアンテナ素子の2次元アレイを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 前記ビーム形成装置がフェーズドアレイであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  8. 各ビーム群が、前記複数のビームから選択される4つのビームから成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  9. 前記セットのビーム群が5つのビーム群から成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  10. 前記セットのビーム群の各ビーム群に関して、そのビーム群のビームが交差する前記平面有限領域の異なる領域が、前記セットのビーム群の中の別のビーム群のビームが交差する少なくとも1つの領域によって相互に分離させられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  11. 各ビーム群のビームが、その他のビーム群のビームが交差する領域と異なる前記平面有限領域の領域と交差することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. 前記特定されたビーム群の生成中以外の時点で前記無線局と制御情報を交換するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  13. 前記セットのビーム群を繰り返し巡回する間もとどまり続ける静止ビームを生成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  14. 前記静止ビームを使用して前記無線局と通信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. アンテナアレイと接続されるマルチトランシーバ無線システムであって、前記アンテナアレイによって複数のビームを生成するように構成され、前記複数のビームの各ビームが空間内の平面有限領域の異なる領域と交差し、前記複数のビームがセットのビーム群を形成するように使用され、前記セットのビーム群の各ビーム群が前記複数のビームの対応する異なるサブセットのビームであるマルチトランシーバ無線システムと、
    前記マルチトランシーバ無線システムシステムを制御するスケジューリングシステムであって、(1)前記マルチトランシーバ無線システムシステムに前記アンテナアレイから前記セットのビーム群の中の各ビーム群を順次生成させることによって、前記セットのビーム群を繰り返し巡回し、(2)前記無線局との最適な通信リンクをもたらすビーム群を前記セットのビーム群の中から特定し、(3)前記特定されたビーム群の生成中、前記特定されたビーム群を介して前記無線局との通信が行われるようにスケジューリングするように構成されるスケジューリングシステムと、
    を備えることを特徴とする無線局との通信装置。
  16. 前記スケジューリングシステムが、前記無線局との最適な通信リンクをもたらすビームを前記特定されたビーム群から特定し、前記特定されたビーム群の生成中、前記特定されたビームを介して前記無線局との通信が行われるようにスケジューリングするようにさらに構成されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
  17. 前記アンテナアレイをさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の装置。
  18. 前記特定されたビーム群の生成中、前記無線局と通信する通信システムをさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の装置。
  19. 前記アンテナアレイがアンテナ素子の2次元アレイであることを特徴とする請求項17に記載の装置。
  20. 前記マルチトランシーバ無線システムと前記アンテナアレイとがフェーズドアレイに備えられることを特徴とする請求項17に記載の装置。
  21. 各ビーム群が、前記複数のビームから選択された4つのビームから成ることを特徴とする請求項15に記載の装置。
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