JP2014509672A - 組成物をラジカル硬化する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、メタクリレート含有化合物(a1)と、5つの第3級芳香族アミン(c)およびペルアンヒドリド(d)の存在下にて前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーと、を含む組成物をラジカル硬化する方法であって、その組成物が、メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーとして、式(1)による化合物(b)(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C6〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)を含む、方法に関する。
Description
本発明は、メタクリレート含有化合物(a1)と、第3級芳香族アミン(c)およびペルアンヒドリド(d)の存在下にて前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーと、を含む組成物をラジカル硬化する方法に関する。
かかる方法は当技術分野で公知である。例えば、反応性希釈剤としてのスチレン中で希釈され、かつ第3級芳香族アミンで予備促進されたメタクリレート官能樹脂を含む組成物は、ペルアンヒドリドを用いて効率的にラジカル共重合(硬化)することができる。スチレンは、反応性希釈剤として使用されることが多い。スチレンは高い共重合能力および優れた切断力(コモノマーとしてスチレンを使用した場合、組成物の粘度を効率的に下げることができる)を有することから、スチレンは非常に有効な反応性希釈剤であるが、スチレンは揮発性であるため、より一層邪魔になる望ましくない臭気を有する。これを考慮して、良好な反応性および良好な切断力を有するが、臭気が少なく、かつ/または揮発性が低い(つまり、より高い沸点を有する)他のコモノマーと、スチレンを少なくとも一部置き換える必要がある。標準的な置き換えは、高沸点のメタクリレート含有化合物の使用である。しかしながら、一般にその化合物は切断力が低く、さらに酸素により激しく阻害され、つまり空気中で硬化すると、その表面が粘着性または濡れた(未硬化)状態になる。
本発明の目的は、臭気が少なく、かつ高い硬化効率(短いゲル化時間、短いピーク時間および/または高いピーク温度によって実証される)を有する方法を提供することである。
この目的は驚くべきことに、組成物が、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーとして、式(1)
(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)による化合物(b)
を含み、
(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)による化合物(b)
を含み、
さらに驚くべきことに、空気の存在下にて本発明による方法を行った場合に、硬化を向上することができ、特に空気面の粘着性が低減され、さらには不粘着面が得られることが判明した。その他の利点は、少なくとも600ダルトンの数平均分子量Mnを有するメタクリレート含有化合物(a1)を含む組成物において、化合物(b)は良好な切断力を有することである。
さらに驚くべきことに、本発明の方法によって、硬化網状構造のガラス転移温度(Tg)および/または架橋密度が高くなり、したがって、向上した硬化網状構造が得られることが判明した。
式(1)による化合物を使用する、更なる利点は、バイオベースの原料からその構造を製造することができることである。
本発明によるラジカル硬化プロセスは特に、
(i)メタクリレート含有化合物(a1)、式(1)による化合物(b)(前記メタクリレート含有化合物(a1)と共重合性)、第3級芳香族アミン(c)を含む組成物を提供する工程、
(ii)前記組成物にペルアンヒドリド(d)を添加する工程、
を含む。
(i)メタクリレート含有化合物(a1)、式(1)による化合物(b)(前記メタクリレート含有化合物(a1)と共重合性)、第3級芳香族アミン(c)を含む組成物を提供する工程、
(ii)前記組成物にペルアンヒドリド(d)を添加する工程、
を含む。
この組成物は、式(1)による化合物(b)を含む。
かかる化合物は、例えばTCI Europeから商業的に入手可能であり、かつ例えばGary M.Ksander、John E.McMurryおよびMark JohnsonによってA Method for the Synthesis of Unsaturated Carbonyl Compounds in J.Org.Chem.1977,vol.42,issue 7,pp.1180−1185に、またはMitsuru UedaおよびMasami TakahasiによってRadical−Initiated Homo− and Copolymerization of α−Methyl−γ−Butyrolactone in J.Pol.Sci.A 1982,vol.20,p.2819−2828に記述される方法で製造することができる。
好ましくは、nは1または2である。さらに好ましくは、nは1である。Xは好ましくはOである。好ましくは、R1およびR2はそれぞれ個々に、HまたはCH3を表す。さらに好ましくは、R1およびR2はどちらもHであるか、またはR1はHであり、R2はCH3である。本発明の好ましい実施形態において、組成物は、式(2)
(式中、R1はHまたはCH3である)による化合物(b)を含む。
(式中、R1はHまたはCH3である)による化合物(b)を含む。
この組成物は好ましくは、少なくとも225ダルトンの数平均分子量Mnを有するメタクリレート含有化合物(a1)を含む。本明細書で使用される、数平均分子量(Mn)は、ポリスチレン標準物質を用いたGPCを使用して、テトラヒドロフラン中で決定される。好ましくは、メタクリレート含有化合物(a1)は、最大で10000ダルトンの数平均分子量Mnを有する。
好ましくは、組成物中に存在するメタクリレート含有化合物(a1)の少なくとも一部は、少なくとも2のメタクリレート官能価を有する。本明細書で使用される、メタクリレート官能価は、メタクリレート含有化合物1分子当たりのCH2=CMeCOO−数として定義される。好ましい実施形態において、この組成物はメタクリレート含有化合物(a1)の混合物を含み、その混合物は、1を超える、好ましくは1.5を超える、さらに好ましくは1.7を超えるメタクリレート平均官能価を有する。平均官能価の上限は重要ではない。好ましくは、平均官能価は、4より低く、さらに好ましくは3より低い。
好ましくは、メタクリレート含有化合物(a1)はさらに、少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのヒドロキシル基および/または少なくとも1つのウレタン基を含有する。好ましい一実施形態において、メタクリレート含有化合物(a1)はさらに、エーテル基を含有する。エーテル基をさらに含有する、好ましいメタクリレート含有化合物(a1)は、アルコキシル化ビスフェノールAジメタクリレートである。
他の好ましい実施形態において、メタクリレート含有化合物(a1)はさらに、エーテル基およびヒドロキシル基を含有する。エーテル基およびヒドロキシル基をさらに含有するメタクリレート含有化合物(a1)は好ましくは、エポキシオリゴマーまたはポリマーをメタクリル酸またはメタクリルアミド、好ましくメタクリル酸と反応させることによって得られる。エーテル基およびヒドロキシル基をさらに含有する、好ましいメタクリレート含有化合物(a1)は、ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレートである。
さらに他の好ましい実施形態において、メタクリレート含有化合物(a1)はさらに、ウレタン基を含有する。ウレタン基をさらに含有する、メタクリレート含有化合物(a1)は好ましくは、ヒドロキシル官能性メタクリレートをイソシアネートと反応させることによって得られる。
組成物中に存在するメタクリレート含有化合物(a1)は、上述のメタクリレート含有化合物の混合物であってもよい。
組成物が少なくとも600ダルトンの数平均分子量Mnを有するメタクリレート含有化合物(a1)を含む場合には、組成物はさらに、最大で300ダルトンの数平均分子量を有するエチレン性不飽和化合物(a2)を含む。非限定的な好ましい例は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ラウリルメタクリレートまたはその混合物である。
化合物(a)と(b)の総量に対する化合物(b)の量は、好ましくは少なくとも1重量%、さらに好ましくは少なくとも5重量%、またさらに好ましくは少なくとも10重量%、またさらに好ましくは少なくとも25重量%である。本明細書で使用される、化合物(a)の量は、化合物(a1)と(a2)の合計量である。化合物(a)と(b)の総量に対する化合物(b)の量は、好ましくは最大で99重量%、さらに好ましくは最大で95重量%、さらに好ましくは最大で90重量%、またさらに好ましくは最大で70重量%、またさらに好ましくは最大で65重量%である。好ましくは、化合物(a)と(b)の総量に対する化合物(b)の量は、1〜95重量%、さらに好ましくは25〜65重量%である。
好ましくは、その第3級芳香族アミンは以下の構造:
を有し、
式中、R4=H、C1〜C5アルキル、O(C1〜C5)アルキルであり;R5およびR6は独立して、ヒドロキシルまたは(ポリ)エーテル基で任意に置換されているC1〜C4アルキルから選択される。好ましくは、R4=HまたはCH3である。好ましくは、R5および/またはR6は、CH3、C2H5、C2H4OH、C3H7およびCH2CH(OH)CH3である。
を有し、
式中、R4=H、C1〜C5アルキル、O(C1〜C5)アルキルであり;R5およびR6は独立して、ヒドロキシルまたは(ポリ)エーテル基で任意に置換されているC1〜C4アルキルから選択される。好ましくは、R4=HまたはCH3である。好ましくは、R5および/またはR6は、CH3、C2H5、C2H4OH、C3H7およびCH2CH(OH)CH3である。
第3級芳香族アミンの非常に適した例は、例えば4−メトキシ−N,N−ジメチルアニリン(R4=OCH3、R5およびR6=CH3)、N,N−ジメチルアニリン(R4=H、R5およびR6=CH3)、Ν,Ν−ジエチルアニリン(R4=H、R5およびR6=C2H5)、N,N−ジエタノールアニリン(R4=H、R5およびR6=CH2CH2OH)、N−メチルN−エタノールアニリン(R4=H、R5=CH3、R6=CH2CH2OH)、N,N−ジエタノールトルイジン(R4=CH3、R5およびR6=CH2CH2OH)、Ν,Ν−ジエタノールアニリンモノ−メチルエーテル(R4=H、R5=CH2CH2OH、R6=CH2CH2OCH3)、Ν,Ν−ジエタノールアニリンジメチルエーテル(R4=H、R5、R6=CH2CH2OCH3)、Ν,Ν−ジイソプロパノールアニリン(R4=H、R5およびR6=CH2CH(OH)CH3)、Ν,Ν−ジメチルトルイジン(R4、R5およびR6=CH3)、N,N−ジエチルトルイジン(R4=CH3、R5およびR6=C2H5)、Ν,Ν−ジイソプロパノールトルイジンDIPT(R4=CH3、R5およびR6=CH2CH(OH)CH3)、Ν,Ν−ジイソプロパノールトルイジンモノメチルエーテル(R4=CH3、R5=CH2CH(OCH3)CH3、R6=CH2CH(OH)CH3)、N,N−ジイソプロパノールトルイジンジメチルエーテル(R4=CH3、R5およびR6=CH2CH(OCH3)CH3)、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン(R4=OCH2CHOCH2、R5およびR6=OCH2CHOCH2)およびN,N−ジグリシジルアニリン(R4=H、R5およびR6=OCH2CHOCH2)である。Ν,Ν−エトキシ化またはN,N−プロポキシル化アニリン、それぞれエトキシ化またはプロポキシル化トルイジンもまた、適切に使用することができ、適切な群に包含されるとみなされる。特にヒドロキシル官能性第3級芳香族アミンがポリマーに組み込まれ得ることは明らかである。好ましい芳香族アミンはアニリンおよびトルイジンである。
化合物(a)と化合物(b)の総量に対する第3級芳香族アミン(化合物(c))の量は、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
芳香族ペルアンヒドリドの非常に適した例は過酸化ジベンゾイルである。脂肪族ペルアンヒドリドの非常に適した例は過酸化ジラウロイルである。
化合物(a)と化合物(b)の総量に対するペルアンヒドリド(化合物(d))の量は、好ましくは0.01〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。
第3級芳香族アミン(化合物(c))のモル量に対するペルアンヒドリド(化合物(d))のモル量は、好ましくは0.05〜10、さらに好ましくは0.1〜5である。
組成物は好ましくは、ラジカル阻害剤をさらに含む。これらのラジカルは好ましくは、フェノール化合物、ベンゾキノン、ヒドロキノン、カテコール、安定性ラジカルおよび/またはフェノチアジンの群から選択される。添加され得るラジカル阻害剤の量は、やや広い範囲内で変動し、達成が望まれるゲル化時間の第1の指標として選択され得る。
本発明による組成物において使用することができるラジカル阻害剤の適切な例は、例えば2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチル−フェノール、2,4,6−トリス−ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−メチレンジ−p−クレゾール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、カテコール、4−t−ブチルカテコール、4,6−ジ−t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(TEMPOLとも呼ばれる化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(TEMPONとも呼ばれる化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−カルボキシル−ピペリジン(4−カルボキシ−TEMPOとも呼ばれる化合物)、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチル−3−カルボキシルピロリジン(3−カルボキシ−PROXYLとも呼ばれる)、ガルビノキシル、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジンおよび/またはこれらの化合物のいずれかの誘導体または組み合わせである。
有利には、組成物中のラジカル阻害剤の量(組成物の総量に対する)は、0.0001〜10重量%の範囲にある。さらに好ましくは、組成物中の阻害剤の量は、0.001〜1重量%の範囲にある。選択される阻害剤の種類に応じて、そのどの量が、本発明に従って良い結果を生じるかを当業者は容易に推定することができる。
好ましい実施形態において、この方法は、化合物(a1)、(b)および(c)を含む組成物にペルアンヒドリドを添加することを含む。前記添加は好ましくは、化合物(a1)、(b)および(c)を含む組成物中にペルアンヒドリドを混合することによって行われる。
本発明による方法は、好ましくは−20〜+150℃の範囲、さらに好ましくは−20〜+100℃の範囲、またさらに好ましくは−20〜+40℃の範囲の温度で行われる。
本発明はさらに、メタクリレート含有化合物(a1)、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマー、第3級芳香族アミン(c)およびペルアンヒドリド(d)を含む多成分系であって、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーとして、式(1)
(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)による化合物を含む、多成分系に関する。
(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)による化合物を含む、多成分系に関する。
好ましい化合物(a1)、(b)および(c)ならびにその量は上述のとおりである。この系はさらに、上述の量で更なる化合物を含み得る。
本発明による多成分系の使用には、硬化網状構造を得るために、ペルアンヒドリドと共に少なくとも化合物(a1)、(b)および(c)を混合することが必要とされる。本明細書で使用される、多成分系とは、少なくとも2つの空間的に分離された成分を有する系を意味し、硬化網状構造を得るため多成分系を使用する前に、化合物(a1)および(b)の早期ラジカル共重合を防ぐため、化合物(a1)および(b)などのラジカル共重合性化合物を含まない1つの成分中にペルアンヒドリドが存在する。化合物(a1)および(b)のラジカル共重合が望まれるその瞬間に、上述の少なくとも1種類のペルアンヒドリドがこの組成物に添加される。好ましくは、前記添加は、化合物(a1)および(b)を含む組成物中にペルアンヒドリドを混合することによって行われる。本発明による多成分系は、少なくとも2つの成分を含む。
一実施形態において、多成分系は、少なくとも3つの成分I、IIおよびIIIを含み、成分Iは、化合物(a1)および(b)を含む組成物からなり、成分IIは、化合物(c)を含む組成物からなり、成分IIIはペルアンヒドリド(d)を含む。
他の実施形態において、系は、少なくとも2つの成分IおよびIIを含み、成分Iは、化合物(a1)、(b)および(c)を含む組成物からなり、成分IIはペルアンヒドリド(d)を含む。
本発明はさらに、メタクリレート含有化合物(a1)、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマー、第3級芳香族アミン(c)含む熱硬化性組成物であって、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーとして、式(1)
(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)による化合物(b)を含み、かつ有機(無機)充填剤を含み、かつペルアンヒドリドを用いて硬化可能である、熱硬化性組成物に関する。
(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)による化合物(b)を含み、かつ有機(無機)充填剤を含み、かつペルアンヒドリドを用いて硬化可能である、熱硬化性組成物に関する。
好ましい化合物(a1)、(b)および(c)ならびにその量は上述のとおりである。この系はさらに、上記の量でラジカル阻害剤など更なる化合物を含み得る。
化合物(a)、(b)および(c)の総量に対する有機(無機)充填剤の量は、好ましくは10〜90重量%である。好ましくは、熱硬化性組成物は、充填剤として繊維を含む。適切な充填剤は、アルミニウム三水和物、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス、微晶質シリカ、石英、重晶石および/またはタルクである。これらの充填剤は、砂状、粉状または成形物の状態で、特に繊維または球状で存在し得る。繊維の例は、ガラス繊維および炭素繊維である。
本発明はさらに、上述の方法によって得られる、または上述の多成分系の化合物を混合することによって得られる、またはペルアンヒドリドを用いて、上述の熱硬化性組成物を硬化することによって得られる硬化物に関する。
本発明はさらに、自動車、ボート、化学的アンカリング、屋根材、建築物、容器、裏地、パイプ、タンク、床張り材または風車の羽根におけるかかる硬化物の使用に関する。
本発明は、一連の実施例および比較例によって実証される。すべての例は、特許請求の範囲を支持する。しかしながら、本発明は、実施例に示す特定の実施形態に限定されない。
[ゲルタイマー(Gel timer)実験]
以下に示す実施例および比較実験の一部において、標準ゲル化時間装置を使用して硬化が測定されたことが言及される。これは、実施例および比較例で示すように過酸化物を用いて樹脂を硬化する場合、DIN16945の方法に従った発熱測定によって、ゲル化時間(TgelまたはT25−>35℃およびピーク時間(TpeakまたはT25−>Peak)およびピーク温度が決定されたことを意味することが意図される。したがって使用された装置は、PeakproソフトウェアパッケージおよびNational Instrumentsハードウェアを備えたSoform gel timerであり;使用された水浴およびサーモスタットはそれぞれ、Haake W26、およびHaake DL30であった。
以下に示す実施例および比較実験の一部において、標準ゲル化時間装置を使用して硬化が測定されたことが言及される。これは、実施例および比較例で示すように過酸化物を用いて樹脂を硬化する場合、DIN16945の方法に従った発熱測定によって、ゲル化時間(TgelまたはT25−>35℃およびピーク時間(TpeakまたはT25−>Peak)およびピーク温度が決定されたことを意味することが意図される。したがって使用された装置は、PeakproソフトウェアパッケージおよびNational Instrumentsハードウェアを備えたSoform gel timerであり;使用された水浴およびサーモスタットはそれぞれ、Haake W26、およびHaake DL30であった。
[実施例1]
α−メチレンブチロラクトン(MBL)96g、ブタンジオールジメタクリレート(BDDMA)2g、DIPT(Ν,Ν−ジイソプロパノールトルイジン)2gの混合物に、Perkadox 20S(タルク上の20%過酸化ジベンゾイル)10gを添加した。得られた混合物の一部を直径10cmのアルミニウム皿に高さ1mmまで注いだ。30分後に、硬化されたキャスティングを検査した。キャスティングの表面は硬く、乾燥しており、完全性(手作業で評価された)は良好であった。
α−メチレンブチロラクトン(MBL)96g、ブタンジオールジメタクリレート(BDDMA)2g、DIPT(Ν,Ν−ジイソプロパノールトルイジン)2gの混合物に、Perkadox 20S(タルク上の20%過酸化ジベンゾイル)10gを添加した。得られた混合物の一部を直径10cmのアルミニウム皿に高さ1mmまで注いだ。30分後に、硬化されたキャスティングを検査した。キャスティングの表面は硬く、乾燥しており、完全性(手作業で評価された)は良好であった。
[比較実験A1〜A6]
MBLの代わりに、以下の化合物:
A1)メチルメタクリレート(MMA)、
A2)2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、
A3)ラウリルメタクリレート(LMA)、
A4)BDDMA、
A5)エチルアクリレート(EA)
A6)スチレン(St)、
を使用したことを除いては、実施例1を繰り返した。
MBLの代わりに、以下の化合物:
A1)メチルメタクリレート(MMA)、
A2)2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、
A3)ラウリルメタクリレート(LMA)、
A4)BDDMA、
A5)エチルアクリレート(EA)
A6)スチレン(St)、
を使用したことを除いては、実施例1を繰り返した。
すべての場合において、1mmキャスティングの表面は濡れており、激しい酸素阻害を示している。さらに比較実験A6において、混合物全体が硬化しなかった(24時間後も硬化しなかった)。
比較実験A1〜A5と組み合わされた実施例1から、これによって空気の存在下にて不粘着硬化が生じることから、ペルアンヒドリド/第3級芳香族アミン系と併せてα−メチレンブチロラクトンを適切に使用できることがはっきりと実証されている。この結果は、(メタ)アクリレートでもスチレンでも達成することができなかった。
α−メチレンブチロラクトンの有用性はさらに、特にスチレン(bp=145℃)およびメチルメタクリレート(bp=100℃)と比較した場合に、MBLの沸点(bp=88℃,12mmHg)によって説明される。これは、式(1)による化合物が不揮発性化合物であり、かつラウリルメタクリレート(bp=142C,4mmHg)または2−ヒドロキシプロピルメチルアクリレート(bp=97C,12mmHg)などの高沸点メタクリレートと同じ範囲の沸点を有することを意味する。
[実施例2〜4および比較実験B1〜B12]
プラスチック製ビーカー内のSR540(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート,サートマー社(Sartomer))50gとMBL50gの混合物に、種々のアミン(表1参照)1gを添加し、5分間攪拌した後に、ビーカー内の混合物を硬化させるために種々の過酸化物(表1参照)1gを添加した。その硬化の結果を表1に示す。
プラスチック製ビーカー内のSR540(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート,サートマー社(Sartomer))50gとMBL50gの混合物に、種々のアミン(表1参照)1gを添加し、5分間攪拌した後に、ビーカー内の混合物を硬化させるために種々の過酸化物(表1参照)1gを添加した。その硬化の結果を表1に示す。
これらの実施例および比較実験から、メタクリレート含有化合物およびMBL含む組成物の良好な、かつ効率的な硬化のために、ペルアンヒドリドおよび第3級芳香族アミンを使用する必要があることがはっきりと分かる。
[実施例5および比較実験C1〜C3]
SR540 30.6gおよび種々のモノマー(表2参照)14.4gに、Ν,Ν−ジエチルアニリン840mgを添加した。これらの混合物の粘度を決定した(ブルックフィールド(Brookfield)CAP1000,25℃,750rpm,円錐1)。その後、Perkadox CH50 L 840mgを添加した。バーコル硬さを決定するために、混合物12gをアルミニウム皿に注いだ。25gのさらに、標準ゲルタイマー装置を使用して、硬化をモニターした。DIN EN59に従って、バーコル硬さを測定した。その結果を表2に示す。
SR540 30.6gおよび種々のモノマー(表2参照)14.4gに、Ν,Ν−ジエチルアニリン840mgを添加した。これらの混合物の粘度を決定した(ブルックフィールド(Brookfield)CAP1000,25℃,750rpm,円錐1)。その後、Perkadox CH50 L 840mgを添加した。バーコル硬さを決定するために、混合物12gをアルミニウム皿に注いだ。25gのさらに、標準ゲルタイマー装置を使用して、硬化をモニターした。DIN EN59に従って、バーコル硬さを測定した。その結果を表2に示す。
比較実験と組み合わされた実施例5から、良好な切断力(低い粘度値によって示される)、揮発物質なし(高沸点によって示される)、高反応性(ゲル化時間データによって示される)、優れた構造完全性(亀裂なし)の組み合わせが単に、本発明による配合物を使用することによって達成することができることがはっきりと示されている。
実施例5および比較実験C1のキャスティングをASTM D5026に準拠したDMA分析にかけた。その結果は:
比較例C1:23℃でのモジュラス:2612MPa;Tg95℃
実施例5:23℃でのモジュラス:3089MPa;Tg112℃
である。
比較例C1:23℃でのモジュラス:2612MPa;Tg95℃
実施例5:23℃でのモジュラス:3089MPa;Tg112℃
である。
これらの結果から、本発明による配合物を用いた場合に、x結合(x−linked)網状構造がより良く形成されることが示されている。
[実施例6および比較実験D]
実施例6において、MBL5gおよびスチレン5gをDaron XP−45(エポキシメタクリレート樹脂)40gに添加した。次に、NL−64−10P(10%Ν,Ν−ジメチルアニリン溶液,アクゾノーベル社(Akzo Nobel))1gを添加し、5分間攪拌した後、Perkadox CH 50 L 1gを添加した。厚さ4mmのキャスティングを作製するために、アルミニウム皿に混合物を注いだ。室温で3時間静置した後、150Cのオーブン内でさらに4時間、キャスティングを後硬化させた。次に、動的機械分析(DMA)測定にそのキャスティングを使用した。
実施例6において、MBL5gおよびスチレン5gをDaron XP−45(エポキシメタクリレート樹脂)40gに添加した。次に、NL−64−10P(10%Ν,Ν−ジメチルアニリン溶液,アクゾノーベル社(Akzo Nobel))1gを添加し、5分間攪拌した後、Perkadox CH 50 L 1gを添加した。厚さ4mmのキャスティングを作製するために、アルミニウム皿に混合物を注いだ。室温で3時間静置した後、150Cのオーブン内でさらに4時間、キャスティングを後硬化させた。次に、動的機械分析(DMA)測定にそのキャスティングを使用した。
比較実験Dにおいて、MBLの代わりにスチレンを使用し、したがってスチレン10gを使用した。
その結果を表3に示す。
本発明による配合物を使用することによるTgの増加は既に驚くべきことである。特にゴムのモジュラス(つまり、250℃でのモジュラス)と併せてのTgの増加は、本発明による配合物の非常に驚くべき特徴を示しており、すなわち本発明による配合物を使用することによる、x結合密度の増加は、硬化網状構造のより良い形成の強い指標であることを示している。
Claims (17)
- メタクリレート含有化合物(a1)と、第3級芳香族アミン(c)およびペルアンヒドリド(d)の存在下にて前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーと、を含む組成物をラジカル硬化する方法において、前記組成物が、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーとして、式(1)
(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)による化合物(b)を含むことを特徴とする、方法。 - 前記メタクリレート含有化合物(a1)が、少なくとも225ダルトンおよび最大で10000ダルトンの数平均分子量Mnを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
- 前記組成物中に存在する前記メタクリレート含有化合物(a1)の少なくとも一部が、少なくとも2のメタクリレート官能価を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記メタクリレート含有化合物(a1)の平均官能価が、1より高い、好ましくは1.5より高い、さらに好ましくは1.7より高いことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記メタクリレート含有化合物(a1)の平均官能価が、4未満、さらに好ましくは3未満であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記メタクリレート含有化合物(a1)が、少なくとも1つのエーテル基および少なくとも1つのヒドロキシル基をさらに含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記メタクリレート含有化合物(a1)が、少なくとも1つのウレタン基をさらに含有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組成物が、少なくとも600ダルトンの数平均分子量Mnを有するメタクリレート含有化合物(a1)を含み、かつ前記組成物がさらに、最大で300ダルトンの数平均分子量Mnを有するエチレン性不飽和化合物(a2)を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
- 化合物(a)と化合物(b)の総量に対する化合物(b)の量が、25〜65重量%であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
- 化合物(a)と(b)の総量に対する第3級芳香族アミン(化合物(c))の量が、0.01〜10重量%であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
- 第3級芳香族アミン(化合物(c))のモル量に対するペルアンヒドリド(化合物(d))のモル量が、0.05〜10であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
- 化合物(a)と(b)の総量に対するペルアンヒドリド(化合物(d))の総量が0.01〜30重量%であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
- メタクリレート含有化合物(a1)と、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーと、第3級芳香族アミン(c)と、ペルアンヒドリド(d)と、を含む多成分系において、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーとして、式(1)
(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)による化合物(b)を含むことを特徴とする、多成分系。 - メタクリレート含有化合物(a1)と、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーと、第3級芳香族アミン(c)と、を含む熱硬化性組成物であって、前記メタクリレート含有化合物と共重合性のモノマーとして、式(1)
(式中、n=0〜3であり;R1およびR2はそれぞれ個々に、H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキルを表し;X=O、SまたはNR3であり、R3=H、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、ポリマー鎖の一部であるか、またはポリマー鎖に結合されている)による化合物(b)を含み、かつ有機(無機)充填剤を含み、かつペルアンヒドリドを用いて硬化可能であることを特徴とする、熱硬化性組成物。 - 請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって得られる、または請求項14に記載の多成分系の前記化合物を混合することによって得られる、またはペルアンヒドリドを用いて、請求項15に記載の熱硬化性組成物を硬化することによって得られる、硬化物。
- 自動車、ボート、化学的アンカリング、屋根材、建築物、容器、裏地、パイプ、タンク、床張り材または風車の羽根における請求項16に記載の硬化物の使用。
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