図1は、本発明の2つの実施例に関して、薬剤濃度の関数として、繊毛サイズを表した棒グラフである。
《発明の詳細な説明》
本発明による抗腫瘍性化合物は、2つの主要な種類に分類される:一般式(1)で表される化合物は、ヘッジホッグシグナル伝達を阻害することにより、腫瘍の成長を阻害する。亜属(II)は、ダイニンを選択的に阻害し、腫瘍の成長も阻害するが、異なったメカニズムを有する。ヘッジホッグシグナル伝達の阻害は、インビボにおける固形腫瘍、特に基底細胞癌、悪性腫瘍及び髄芽腫の治療に有効であることが示されてきた。例えば、Rudin et al.[N.Engl.J.Med 361,1173−1178(2009)]が示すところによると、ヘッジホッグ経路の小分子阻害剤であるGDC−0449を患者に投与すると、髄芽腫が退縮する結果となる。同様に、Von Hoff et al.[N.Engl.J.Med 361,1164−1172(2009)]は、基底細胞癌を有する33名のヒト患者にGDC−0449を投与して、臨床的に有意な応答を観察した。
或る観点においては、本発明は式(I)で表される化合物に関する。
これらの化合物ではR1及びR2は、それぞれ、独立して、水素原子、ハロゲン原子、(C1〜C10)炭化水素基、−O−(C1〜C6)アルキル基、フルオロ(C1〜C6)アルキル基、−O−(C1〜C6)フルオロアルキル基、水酸基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、−CN、ニトロ基、−S−(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、(C1〜C6)アシル基、アミノ基、(C1〜C6)アルキルアミノ基、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ基、(C1〜C6)アシルアミノ基、及び−A-R10から選択され;;、ここで、Aは、(C1〜C6)炭化水素であり、R10は、−O−(C1〜C6)アルキル基、フルオロ(C1〜C6)アルキル基、−O−(C1〜C6)フルオロアルキル基、水酸基、−CN、ニトロ基、−S−(C1〜C6)アルキル基、(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、(C1〜C6)アシル基、アミノ基、(C1〜C6)アルキルアミノ基、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ基及び(C1〜C6)アシルアミノ基から選択される。いくつかの実施態様においては、R2は、Hであり、そして、R1は、H、ハロゲン原子、メトキシ基、アミノプロパルギル基及びアセトアミドプロパルギル基から選択される。いくつかの実施態様においては、R1は、水素原子又はハロゲン原子である。
属(I)の化合物では、R3は、水素原子、シアノ基、ニトロ基、アセチル基又は−C(=O)NH2であることができる。いくつかの実施態様においては、R3は、シアノ基である。
属(I)の化合物では、R4及びR5は、水素原子又はメチル基であることができ;そして、多くの実施態様においては、ともに水素原子である。
式(I)で表される化合物は、Yの値により二種類の亜属に分類することができ、一方の亜属では、YはNR
8であり;もう一方の亜属においては、YはOである。
属(I)の化合物[例えば、構造式(Ia)及び(Ib)]では、Arは、場合により置換されていることのある単環式若しくは二環式アリール基又は単環式若しくは二環式ヘテロアリール基から選択される。場合により置換されていることのあるアリール基やヘテロアリール基の例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールがある。いくつかの実施態様においては、Arはフェニル基、ナフチル基、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、ピリジニル基から選択され、それらのうちのいくつかは、場合により、置換基がハロゲン原子、(C1〜C10)炭化水素基、フルオロ(C1〜C6)アルキル基、−O−(C1〜C6)フルオロアルキル基、−CN、ニトロ基、(C1〜C6)アルコキシカルボニル基及び(C1〜C6)アシル基から独立して選択された置換基1〜3個で置換されたものであることができる。いくつかの実施態様においては、Arは、ハロゲン原子1〜3個で置換されたフェニル基であることができる。いくつかの実施態様においては、Arは、2,4−ジクロロフェニル又は3,4−ジクロロフェニルである。(4)では、いくつかの実施態様においては、R8は水素原子又はメチル基である。
いくつかの実施態様においては、R
3は、CNであり;R
2、R
4及びR
5は、Hであり;R
1は、H及びハロゲン原子から選択される。いくつかの実施態様においては、R
3は、CNであり;R
2、R
4及びR
5は、Hであり;R
1は、H及びハロゲン原子から選択され、そして、Arは、ハロゲン原子1〜3個で置換されたフェニル基である。これらの中でも、式(II)
(式中、R
1aは、水素原子又はハロゲン原子であり;そしてR
6及びR
7がハロゲン原子である)
で表される化合物は、ダイニン阻害に関して選択的である。
前述の親属及びその亜属を含む全ての化合物は、ヘッジホッグ経路及び/又はダイニンのモジュレーターとして有用である。しかし、全ての化合物が新規であるわけではない。特に、文献調査によると、Arが、2,4−ジクロロフェニルであり、R1、R2、R4及びR5が、水素原子である場合は、R3が、シアノ基である化合物は、権利を請求することができない[PCT WO2009/102864,53ページ,構造式18参照]。審査の結果、本明細書で除外されていない追加の種や亜属が、本件発明者に対して特許可能でないことが見出されるかもしれない。この場合において、その結果生じた出願人の特許請求の範囲からの種や亜属の除外は、特許審査手続の人為的結果であり、本件発明者の発明に対する概念や記載を反映したものと見なされるべきではない。本発明は、構成物の態様において、公共の所有物であるものを除き、式(I)で表される全ての化合物を包含する。
《定義》
この明細書の全体にわたり、用語及び置換基は、その定義を保持する。
アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状炭化水素構造及びその組み合わせを含むことを意味する。組み合わせは、例えば、シクロプロピルメチル基であろう。全ての炭素が必ずsp3であり、sp2又はspである炭素が一つもない全ての炭化水素基は、アルキル基であるとみなされる。完全に明確にするために述べると、置換基が(C1〜C6)アルキル基であるとする場合、これは、直鎖(例えばメチル又はエチル)、分子鎖(例えばt−ブチル)、シクロアルキル(例えばシクロプロピル又はシクロブチル)又はこれらの組み合わせ(例えばメチルシクロプロピル)であることを意味する。しかしながら、置換基をより具体的に説明する場合には、以下の定義となる;例えば、シクロアルキル基との記載は、環状アルキル基を示し、直鎖状アルキル基又はこれらの組み合わせを含まない。低級アルキル基との記載は、炭素原子1〜6個のアルキル基を示す。低級アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、s−及びt−ブチル基、及びシクロブチル基などが挙げられる。好ましいアルキル基は、C20又はそれ未満のアルキル基である。シクロアルキル基はアルキル基の下位集合であり、シクロアルキル基としては炭素原子3〜8個の環状炭化水素基が挙げられる。シクロアルキル基の例としては、c−プロピル基、c−ブチル基、c−ペンチル基、及びノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
アルコキシ基又はアルコキシル基は、親構造に酸素原子を介して結合している炭素原子1〜8個の直鎖状、分岐状、又は環状構造及びその組み合わせのアルキル基を指す。例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。低級アルコキシ基は、1〜4個の炭素原子を含有する基を指す。
アリール基及びヘテロアリール基は、5若しくは6員の芳香環基又はO、N、若しくはSから選択されるヘテロ原子を0〜3個含有する5若しくは6員の芳香族複素環基;二環式9若しくは10員の芳香環系基又はO、N、若しくはSから選択されるヘテロ原子を0〜3個含有する二環式9若しくは10員の芳香族複素環系基;あるいは、三環式13若しくは14員の芳香環系基又はO、N、若しくはSから選択されるヘテロ原子を0〜3個含有する三環式13若しくは14員の芳香族複素環系基を意味する。芳香族6〜14員の炭素環式環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン、及びフルオレンが挙げられ、5〜10員の芳香族複素環式環としては、例えば、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールが挙げられる。本明細書で使用されるアリール基及びヘテロアリール基は、1以上の環が芳香族であるが、全てが芳香族である必要はない残基を指す。
アリールアルキル基は、アルキル残基と結合したアリール環を意味し、親構造体への結合地点がアルキルを介したものである。例としては、ベンジル、フェネチルなどが挙げられる。ヘテロアリールアルキル基は、アルキル残基を介して親構造体に結合したヘテロアリール環を意味する。例としては、例えば、ピリジニルメチル基、ピリジニルエチル基などが挙げられる。
C1〜C10炭化水素基は、元素構成としては水素原子及び炭素原子のみからなる直鎖状、分岐状又は環状の残基を意味し、アルキル基、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びその組み合わせが挙げられる。例としては、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、アリール基及びカンホリル基が挙げられる。
特に説明のない限り、用語「炭素環」は、環原子が全て炭素であるが、任意の酸化状態でなる環系を含むことを意味する。このように、(C3〜C10)炭素環とは、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、シクロヘキセン及びシクロヘキサジエンなどの系統を含む非芳香族及び芳香族の両方を意味し;(C8〜C12)多炭素環とは、ノルボルナン、デカリン、インダン、アダマンタン及びナフタレンなどの系統を意味する。炭素環は、他の方法で制限されない限りは、単環、二環及び多環を意味する。
複素環基は、1〜3個の炭素原子が、酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子などのヘテロ原子により置き換えられているシクロアルキル又はアリール残基を意味する。ヘテロアリール基は、複素環基の下位集合を形成する。複素環の例としては、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として存在するときは、一般にメチレンジオキシフェニル基という)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、ジオキサン、及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。
本明細書で用いる用語「場合により置換されていることのある」とは、「置換された又は置換されていない」のどちらででも用いることができる。用語「置換された」は、特定の基の水素原子の1以上が、特定の遊離基に置換されることを意味する。例えば、置換されたアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、そして、ヘテロシクリル基などは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基又はヘテロシクリル基の中の各残基中の水素原子の1以上が、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、カルボニル基、フェニル基、ヘテロアリール基、ベンゼンスルホニル基、水酸基、低級アルコキシ基、ハロアルコキシ基、オキサアルキル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基[−C(=O)O−アルキル基]、アルコキシカルボニルアミノ基[HNC(=O)O−アルキル基]、カルボキシアミド基[−C(=O)O−NH2]、アルキルアミノカルボニル基[−C(=O)NH−アルキル基]、シアノ基、アセトキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、(アルキル)(アリール)アミノアルカリ基、アルキルアミノアルキル基(シクロアルキルアミノアルキル基を含む)、ジアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルコキシ基、ヘテロシクリルアルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホキシド基、スルホン基、スルホニルアミノ基、アルキルサルフィニル基、アルキルサルフォニル基、アシルアミノアルキル基、アシルアミノアルコキシ基、アシルアミノ基、アミジノ基、アリール基、ベンジル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヒドロキシイミノ基、アルコキシイミノ基、オキサアルキル基、アミノスルホニル基、トリチル基、アミジノ基、グアニジノ基、ウレイド基、ベンジルオキシフェニル基、そして、ベンジルオキシ基に置換されたものを意味する。「オキソ」はまた、「場合により置換されていることのある」を意味する置換基の中に含まれる;オキソは、2価の遊離基であるので、置換基(例えばフェニル基)としては適切ではない状況があることを当業者は理解するであろう。「場合により置換されていることのある」残基の大抵のケースは、水素原子の1,2又は3個が、特定の遊離基に置き換えられているものであるが、フルオロアルキル残基のケースにおいては、水素原子の3個以上がフッ素に置換されることができ;加えて、全ての利用可能な水素原子が、フッ素に置換されることができる、例えばペルフルオロプロピルである。
本明細書に記載の化合物は、側鎖に1以上の不斉中心を含有し、従って、絶対立体化学の観点から(R)−又は(S)−と定義することのできる鏡像異性体、ジアステレオマー、及びその他の立体異性体を生じる可能性がある。本発明は、全てのそのような可能な異性体、並びにそれらのラセミ体及び光学的に純粋な形態を含むことを意味する。光学的に活性な(R)−、及び(S)−異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して調整することができ、又は従来技術を用いて分割することができる。本明細書に記載する化合物が、オレフィン二重結合又は他の幾何学的不斉中心を含む場合は、特に説明のない限り、その化合物は、E及びZの両方の幾何異性体を含むことを意味する。同様に、全ての互変異性体もまた含まれることを意味する。
本明細書で用いている「化合物」の記載は、明示的にさらに限定しない限りは、その化合物の塩を含むことを意味することを、当業者は理解するであろう。特定の実施形態では、用語「式(I)で表される化合物」は、化合物又はその化合物の薬学的に許容される塩を意味する。
本発明の化合物は、放射性同位体で標識された形で存在することができるものと理解されたい。すなわち、本発明の化合物は、通常天然で見出される原子量若しくは原子番号と異なる原子量若しくは原子番号を含む原子を1以上含むことができる。あるいは、単一構造の多くの分子は、天然で見出される同位体比とは異なる同位体比で発生する少なくとも1つの原子を含むことができる。水素、炭素、リン、フッ素、塩素及びヨウ素には、例えば、2H、3H、11C、13C、14C、15N、35S、18F、36Cl、123I、125I、131I、133Iが含まれる。これらの放射性同位体及び/又は他の原子の他の同位元素を含む化合物は、本発明の範囲内である。3H、14C及びヨウ素の放射性同位体を含む化合物は、それらの調整及び検出の容易さから、特に好ましい。11C、13N、15O及び18Fの同位体を含む化合物は、ポジトロン断層法に大変適している。本発明の式(I)及び式(II)で表される放射標識化合物は、一般的に、当業者にとって周知の方法によって調製することができる。容易に、入手可能な放射標識された試薬を放射標識されていない試薬に代えて使用することで、そのような放射標識化合物は、開示された実施例及びスキームの手順を行うことにより、簡便に調整することができる。
本発明は、多くの異なる形態にある実施態様になり得るが、本発明の好ましい実施態様を説明する。しかしながら、この開示は本発明の原理の例示とみなされるべきであり、説明される実施態様の説明に本発明を限定することを意図していないことは理解されるべきである。
インビボにおいて、式(I)及び式(II)で表される化合物が、抗腫瘍薬として用いられる場合に、それは未加工の化学物質として投与されるが、医薬組成物としてそれらを提供することが好ましい。更なる実施態様においては、本発明は、式(I)若しくは式(II)で表される化合物、又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、薬学的に許容可能な担体の1又はそれ以上、及び場合によっては、他の治療成分の1又はそれ以上を含む医薬組成物を提供する。担体は、製剤の他成分と適合し、その受容者にとって有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。組成物は、経口、局所又は非経口投与用に製剤化することができる。例えば、静脈内、動脈内、皮下、そして、直接、中枢神経系−髄腔内若しくは脳室内のどちらかに投与されてもよい。
製剤は、経口又は非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内及び関節内を含む)に適したもの、直腸又は局所(皮膚頬、舌下及び眼内を含む)投与に適したものを含む。化合物は、好ましくは経口で又は注射(静脈又は皮下)で投与される。患者への正確な投与量は、主治医が権限を有する。しかしながら、用いられる投与量は、患者の年齢及び性別、治療されている正確な疾患及び重症度など多くの要因に依存する。また、投与経路は、その重症度の状態に応じて変わる可能性がある。製剤は、便利なことに単位剤形で提供され、薬学の分野についての当業者にとって周知な方法で調整される。一般的には、活性成分を液体担体又は微粉個体担体と均一かつ十分に混合することにより製剤を製造し、次いで、必要であれば、望ましい製剤に形成する。
本発明の経口投与に適した製剤は、それぞれが活性成分の規定量を含むカプセル剤、カシェ剤、又は錠剤のように分離した単位で、又は水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョンとして提供することができる;粉末又は顆粒として提供でき;水性液体若しくは非水性液体中の液剤又は懸濁液として提供することができる;活性成分は、ボーラス、舐剤又はペーストとしても提供することができる。
錠剤は、場合により、補助成分の1つ以上とともに、圧縮又は成形によって作製することができる。圧縮錠は、場合により、結合剤、潤沢剤、不活性希釈剤、潤滑剤、表面活性剤若しくは分散剤と混合された流動型の粉剤又は顆粒剤を、適切な機械で圧縮することにより調整することができる。成形錠剤は、粉末化した化合物を不活性液体希釈剤で湿らせ、適切な機械において成形することにより調整することができる。錠剤は、場合により、その中の活性成分の放徐又は制御放出のために、コーティングし、又は割線を入れることができる。
非経口投与用製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤及び意図されたレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含むことができる水性及び非水性の滅菌注射剤、並びに、沈殿防止剤や増粘剤を含むことができる水性及び非水性の滅菌懸濁液を含むことができる。製剤は、単位用量又は複数回用量容器、例えば、密封アンプル及びバイアルに入れてもよく、滅菌液体担体、例えば、生理食塩液、リン酸緩衝水溶液(PBS)などを使用直前に加えるだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時調合注射溶液及び懸濁液は、前述の種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製してもよい。
直腸投与用製剤には、カカオバター又はポリエチレングリコールのような標準的な担体を含む坐剤を含むことができる。
口内への、例えば口腔内又は舌下への局所投与用製剤には、ショ糖及びアカシア又はトラガカントのような着香基剤に活性成分を含むトローチ剤、並びにゼラチンとグリセリン又はショ糖とアカシアのような基剤に活性成分を含む香錠が含まれる。
好ましい単位投与製剤は、下記に引用するように、活性成分の有効量又はその適当な分画を含む製剤である。
上記で特に言及した成分の他に、本発明の製剤には、当該製剤のタイプに関して当技術分野において通常の他の薬剤が含まれてもよいと理解すべきであり、例えば経口投与に適した製剤は、着香料を含んでもよい。
本明細書中で使用される用語「治療すること」若しくは「治療」、又は「緩和すること」又は「改善すること」は、有益な又は望んだ結果を獲得するためのアプローチを意味しており、治療効果や予防効果に限られるものではない。治療効果によってとは、治療されている基礎疾患の根絶又は改善を意味する。また、改善が患者において観察されるような基礎疾患に関連付けられた生理学的システムのうちの1以上の根絶又は回復で、治療効果が達成される。それにもかかわらず、患者は基礎疾患に苦しむことになる可能性がある。この疾患の診断がなされていない場合でも、予防効果のために、組成物は、特定の疾患を発症するリスクのある患者に、又は疾患の生理学的なシステムの1つ以上を報告する患者に投与することができる。
《略語》
以下の略語及び用語は、全体にわたり指示された意味を有する:
Ac = アセチル
Boc = t−ブチルオキシカルボニル
BOP = ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)
ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
Bu = ブチル
BSA = ウシ血清アルブミン
c− = シクロ
DCM = ジクロロメタン=塩化メチレン=CH2Cl2
DIEA = ジイソプロピルエチルアミン
DMEM = ダルベッコ変法イーグル培地
DMF = N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルホキシド
DTT = ジチオトレイトール
EtOH = エタノール
GC = ガスクロマトグラフィー
HOAc = 酢酸
Me = メチル
MTBE = メチルt−ブチルエーテル
PBS = リン酸緩衝水溶液
PEG = ポリエチレングリコール
PMSF = フッ化フェニルメタンスルホニル
Ph = フェニル
PhOH = フェノール
PVDF = ポリフッ化ビニリデン
rt = 室温
sat’d = 飽和
s− = 第二級
SDS = ドデシル硫酸ナトリウム
t−又はtert−= 第三級
TBDMS = t−ブチルジメチルシリル
TFA = トリフルオロ酢酸
THF = テトラヒドロフラン
TMS = トリメチルシリル
tosyl = p−トルエンスルホニル
AAA+ATPaseによる、化学ポテンシャルエネルギーの機械的な力への変換は、背景の部分で述べたように、無数の細胞プロセスに不可欠である。このタンパク質ファミリーの動的な機能の調査は、小分子モジュレーターに利するであろうが、これらの複合体、オリゴマーの機械酵素の阻害剤は、とらえどころのないままである。本出願では、AAA+ATPaseファミリーの一部の選択的阻害剤として働く4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2(1H)−イリデン誘導体について述べる。モータータンパク質である細胞質ダイニンの選択的阻害剤である、発明者が「シリオブレビン(ciliobrevins)」と呼ぶ亜属についても述べる。シリオブレビンは、一次繊毛内の輸送を攪乱させ、これが繊毛の形成異常とヘッジホッグ経路の調節のような繊毛に依存した機能を抑止させることを、我々は開示する。シリオブレビンはまた、有糸分裂における紡錘体極への微小管の集中や、黒色細胞中のメラノソーム凝集を阻害する。これらの細胞表現型は、細胞質ダイニン1及び2の薬学的阻害と一貫しており、本明細書では、インビトロにおけるダイニンに依存した微小管上滑走運動を選択的に阻害するシリオブレビンの能力について述べる。それらは、インビトロにおける抗腫瘍剤として有用である他、シリオブレビンは、この微小管のマイナス末端方向への分子モーターを用いて細胞プロセスを研究するための有用な試薬であり、そしてそれが、さらなるAAA+ATPaseファミリー阻害剤の開発につながる可能性がある。
セルベースの小分子の表現型スクリーニングは、複雑な細胞機能の小分子モジュレーターを発見するための効果的なテクニックである。胚発生、幹細胞の自己複製及び腫瘍形成の鍵となる媒介物であるヘッジホッグ経路(Hh)阻害剤のためのハイスループットスクリーニングは、Gタンパク質結合受容体様HhシグナルトランスデューサーであるSMoothened(Smo)の下流で作用する化合物を特定するために設計されており、多くのジヒドロキナゾリノンが、Hh標的遺伝子発現を誘導するGli転写因子の負調節因子であるSuppressor of Fused(Sufu)を欠いた細胞内でHh経路活性を遮断することを確認した。
《合成》
実施例24のベンゾイルジヒドロキナゾリノンは、Chembridgeから購入し;他の全ての構造誘導体は、下記の方法によって合成された。有機合成に使用された全ての化学物質は、Sigma−Aldrich又はAcrosから購入し、さらに精製をせずに使用された。無水条件は、シュレンクライン技術とオーブン乾燥ガラスを用いて、窒素条件下で維持された。1H NMRスペクトルは、Varian Inova 300、400及び500スペクトラメーターを用いて、重溶媒としてDMSO−d6を使用して得られた。化学シフトは、溶媒であるDMSOのピークのダウンフィールドとして、百万分率(ppm)単位で報告された。高分解能質量分析(HRMS)データは、スタンフォード大学の質量分析施設において、MicromassのQ−TOF型ハイブリッド四重極液体クロマトグラフィー質量分析装置により得られた。
実施例1:3−(2,4−ジクロロフェニル)−3−オキソ−2−(4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2(1H)−イリデン)プロパンニトリル[シリオブレビンA]
2−シアノエタンチオアミド(1.00g,10.0mmol)とブロモエタン(821μL,11.0mmol)に、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液(11.5mmol,5.3mL)が添加された。得られた混合物は、6時間撹拌され、2−アミノ安息香酸(1.50g,10.9mmol)を添加され、撹拌しながら一晩還流された。反応混合物の冷却時に混合形成された固体沈殿物は、真空濾過により回収され、エタノール、水、エタノール、及びジエチルエーテルで順次洗浄された。固体は、次いで、2−(4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(872mg,47%)を得るために乾燥された。1NMR(400MHz,DMSO−d6)σppm4.17(s,2H)、7.53(t,J=7.5Hz,1H)、7.68(d,J=7.9Hz,1H)、7.83(t,J=7.8Hz,1H)、8.10(dd,J1=7.9Hz,J2=1.2Hz,1H)。
ジオキサン(8mL)中に2−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(202mg,1.09mmol)及びトリエチルアミン(167μL,1.20mmol)を含む溶液に、塩化2.4−ジクロロベンゾイル(152μL,1.09mmol)を加え、得られた混合物を、撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に形成された固体沈殿物は、真空濾過により回収され、メタノール、水、メタノール、及びジクロロメタンで順次洗浄された。固体を次いで、シリオブレビンA(1)(213mg,53%)を得るために乾燥させた。1H NMR(400MHz,DMSO−d6)σppm7.46−7.50(m,1H)、7.52(d.1=8.2Hz,1H)、7.56(dd,J1=8.2,J2=1.9Hz,1H)、7.77(d,J=2.0Hz,1H)、7.83−7.88(m,2H)、8.07(d,J=8.1Hz,1H).13C NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm71.74、117.43、117.54、118.71、125.92、126.68、127.66、129.21,129.66、130.49、134.85、135.85、138.15、139.25、155.01、158.3、188.75.HRMS(m/z):[M+理論値C17H9N3O2Cl2Na,379.9970;実測値379.9967。
実施例2:3−(4−クロロフェニル)−3−オキソ−2−(4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2(1H)−イリデン)プロパンニトリル
ジオキサン(7mL)中に2−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(54.2mg,293μmol)及びトリエチルアミン(49.0μL,351μmol)を含む溶液に、塩化4−クロロベンゾイル(45.1μL,351mmol)を加え、得られた混合物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に形成された固体沈殿物は、真空濾過により回収され、メタノール、水、メタノール、及びジクロロメタンで順次洗浄された。固体を次いで、類似体(8)(59.9mg,63%)を得るために乾燥させた。1H NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm7.47(t,J=7.6Hz.11−1)、7.57−7.60(m,2H)、7.72−7.75(m,2H)、7.84(t.J=7.8Hz,1H)、7.89(d,J=8.2Hz,1H)8.06(d,J=8.1Hz,1H).13C NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm69.44、117.31、118.68、118.73、125.73、126.65、128.29、129.54,135.79、135.88、137.96、156.02、158.37、189.76.HRMS(m/z):[M+Na]+理論値C17H10N3O2ClNa,346.0359;実測値346.0359。
実施例10:3−(2−クロロフェニル)−3−オキソ−2−(4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2(1H)−イリデン)プロパンニトリル
ジオキサン(3mL)中に2−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(22.0mg,119μmol)及びトリエチルアミン(18.2μL,131μmol)を含む溶液に、塩化2−クロロベンゾイル(20.8μL,164mmol)を加え、得られた混合物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に形成された固体沈殿物を真空濾過により回収し、メタノール、水、メタノール、及びジクロロメタンで順次洗浄した。固体を次いで、類似体(6)(12.5mg,33%)を得るために乾燥させた。1H NMR(300MHz,DMSO−d6)σppm7.43−7.52(m,4H)、7.52−7.57(m,1H)、7.81−7.87(m,2H)、8.06(d,J=8.1Hz,1H).13C NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm71.7、117.41、117.62、118.73、125.81、126.68、127.33、128.22,129.18、129.57、131.1、135.81、139.33、155.12、158.36、189.89.HRMS(m/z):[M+Na]+理論値C17H10N3O2ClNa,346.0359;実測値346.0373。
実施例16:3−オキソ−2−(4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2(1H)−イリデン)−3−フェニルプロパンニトリル
ジオキサン(4mL)中に2−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(42.8mg,231μmol)及びトリエチルアミン(38.7μL,277μmol)を含む溶液に、塩化ベンゾイル(32.2μL,277μmol)を加え、得られた混合物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に形成された固体沈殿物を真空濾過により回収し、メタノール、水、メタノール、及びジクロロメタンで順次洗浄した。固体を次いで、類似体(2)(36.4mg,54%)を得るために乾燥させた。1H NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm7.47(t,J=7.5Hz,1H)、7.49−7.53(m,2H)、7.54−7.58(m,1H)、7.70−7.73(m,2H)、7.84(td,J1=7.7Hz,J2=1.5Hz,1H)、7.89(br.d,J=8.1Hz,1H)、8.06(dd,J1=8.1,J2=1.5Hz,1H).13C NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm69.3、117.26、118.57、118.81、125.65、126.65、127.59、128.14、131.22、135.77、139.26、139.33、156.12、158.39、191.18.HRMS(m/z):[M+Na]+理論値C17H11N3O2Na,312.0749;実測値312.0735。
実施例17:3−(3−クロロフェニル)−3−オキソ−2−(4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2(1H)−イリデン)プロパンニトリル
ジオキサン(10mL)中に2−(4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(152mg,0.820mmol)及びトリエチルアミン(126μL,0.904mmol)を含む溶液に、塩化3−クロロベンゾイル(116.3μL,0.904mmol)を加え、得られた混合物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に形成された固体沈殿物を真空濾過により回収し、メタノール、水、メタノール、及びジクロロメタンで順次洗浄した。固体を次いで、類似体(7)(172mg,65%)を得るために乾燥させた。1H NMR(400MHz,DMSO−d6)σppm7.48(t,J=7.5Hz,1H)、7.55(t,J=7.8Hz,1H)、7.61−7.87(m,3H)、7.85(t,J=7.6Hz,1H)、7.90(d,J=8.2Hz,1H)、8.07(d,J=8.2Hz,1H).13C NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm69.62,117.34,118.62,118.73,25.78,126.23,26.65,127.28,130.22,130.9,132.88,135.81,141.15,155.96,158.36,189.3.HRMS(m/z):[M+Na]+理論値C17H10N3O2ClNa,346.0359;実測値346.0368。
実施例25:2−(5−クロロ−4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2(1H)−イリデン)−3−(2,4−ジクロロフェニル)−3−オキソ−プロパンニトリル[シリオブレビンB]
2−シアノエタンチオアミド(300mg,3.00mmol)とブロモエタン(261μL,3.50mmol)を、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液(3.50mmol,2.5mL)に添加した。得られた混合物を6時間撹拌し、6−クロロアントラニル酸(500mg,2.91mmol)を添加し、反応物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に混合形成された固体沈殿物を真空濾過により回収し、エタノール、水、エタノール、及びジエチルエーテルで順次洗浄した。固体を次いで、2−(5−クロロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(148mg,22%)を得るために乾燥させた。1H NMR(400MHz,DMSO−d6)σppm4.15(s,2H)、7.54(dd,J1=7.8Hz,J2=1.1Hz,1H)、7.61(dd,J1=8.2Hz,J2=1.1Hz,1H)、7.74(t,J=8.0Hz,1H)。
ジオキサン(4mL)中に2−(5−クロロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(26.4mg,120μmol)及びトリエチルアミン(18.4μL,132μmol)を含む溶液に、塩化2,4−ジクロロベンゾイル(116.3μL,0.904mmol)を加え、得られた混合物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に形成された固体沈殿物を真空濾過により回収し、メタノール、水、メタノール、及びジクロロメタンで順次洗浄した。固体を次いで、シクロブレビンB(3)(12.8mg,27%)を得るために乾燥させた。1H NMR(400MHz,DMSO−d6)σppm7.46(dd,J1=7.5Hz,J2=1.4Hz,1H)、7.50(d,J=8.2Hz,1H)、7.55(dd.J1=8.2Hz,J2=1.9Hz,1H)7.68−7.79(m,3H).13C NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm71.69、114.6、117.63、118.45、127.65、128.1、129.2、129.65、130.49、133.35、134.8、135.47、138.2、154.81、156.48、188.71.HRMS(m/z):[M+Na]+理論値C17H8N3O2Cl3Na,413.9580;実測値413.9582。
実施例27:2−(6−クロロ−4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2(1H)−イリデン)−3−(2,4−ジクロロフェニル)−3−オキソプロパンニトリル[シリオブレビンC]
2−シアノエタンチオアミド(501mg,5.00mmol)とブロモエタン(448μL,6.00mmol)に、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液(6.00mmol,3.0mL)を添加した。得られた混合物を6時間撹拌し、5−クロロアントラニル酸(858mg,5.00mmol)を添加し、反応物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に混合形成された固体沈殿物を真空濾過により回収し、エタノール、水、エタノール、及びジエチルエーテルで順次洗浄した。固体を次いで、2−(6−クロロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(314mg,29%)を得るために乾燥させた。1H NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm4.18(s,2H)、7.70(d,J=8.8Hz,1H)、7.85(dd,J1=8.7Hz,J2=2.0Hz,1H)8.03(d,J=2.4Hz,1H)。
ジオキサン(4mL)中に2−(6−クロロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(52.0mg,237μmol)及びトリエチルアミン(36.3μL,260μmol)を含む溶液に、塩化2,4−ジクロロベンゾイル(33.1μL,237μmol)を加え、得られた混合物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に形成された固体沈殿物を真空濾過により回収し、メタノール、水、メタノール、及びジクロロメタンで順次洗浄した。固体を次いで、シクロブレビンC(4)(6.4mg,7%)を得るために乾燥させた。1H NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm7.50(d,J1=8.3Hz,1H)、7.56(dd,J1=8.3Hz,J2=1.9Hz,1H)、7.77(d,J=1.9Hz,1H)、7.83(d,J,=8.8Hz,1H)、7.88(dd,J1=8.9Hz,J2=2.3Hz,1H)、8.00(d,J2=2.4Hz,1H).13C NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm72.1,117.52,118.98,121.22,125.61,127.67,129.22,129.66,129.99,130.49,134.88,135.64,38.11,138.58,155.05,157.52,188.76.HRMS(m/z):[M+Na]+理論値C17H8N3O2Cl3Na,413.9580;実測値413.9583。
実施例31:2−(7−クロロ−4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−2(1H)−イリデン)−3−(2,4−ジクロロフェニル)−3−オキソ−プロパンニトリル[シリオブレビンD]
2−シアノエタンチオアミド(300mg,3.00mmol)とブロモエタン(299μL,4.00mmol)に、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液(4.00mmol,3mL)を添加した。得られた混合物を6時間撹拌し、4−クロロアントラニル酸(500mg,2.91mmol)を添加し、反応物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に混合形成された固体沈殿物を真空濾過により回収し、エタノール、水、エタノール、及びジエチルエーテルで順次洗浄した。固体を次いで、2−(7−クロロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(118mg,18%)を得るために乾燥させた。1H NMR(400MHz,DMSO−d6)σppm4.19(s,2H)、7.57(dd,J1=8.5Hz,J2=2.1Hz,1H)、7.74(d,J=2.0Hz,1H)、8.09(d,J=8.4Hz,1H)。
ジオキサン(4mL)中に2−(7−クロロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル)アセトニトリル(24.9mg,113μmol)及びトリエチルアミン(17.4μL,125μmol)を含む溶液に、塩化2,4−ジクロロベンゾイル(15.9μL,113μmol)を加え、得られた混合物を撹拌しながら一晩還流した。反応混合物の冷却時に形成された固体沈殿物を真空濾過により回収し、メタノール、水、メタノール、及びジクロロメタンで順次洗浄した。固体を次いで、シクロブレビンD(5)(11.4mg,26%)を得るために乾燥させた。1H NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm7.47−7.52(m,2H)、7.56(dd,J1=8.2Hz,J2=1.8Hz,1H)、7.77(d,J1=1.8Hz,1H)、7.90(br s,1H)、8.04(d,J=8.5Hz,1H).13C NMR(500MHz,DMSO−d6)σppm72.44,116.56,118.79,118.85,125.74,127.65,128.66,129.2,129.65,130.49,134.81,138.21,140.03,155.62,157.98,188.6.HRMS(m/z):[M+Na]+理論値C17H8N3O2Cl3Na,413.9580;実測値,413.9583。
同様に下記の表1記載の他の化合物が合成された。
アッセイ
Hh経路活性のShh−LIGHT2アッセイ
Shh−N−馴化培地が、Chen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99,14071(2002)に示された方法で調整された。Shh−LIGHT2細胞[J.Taipale et al.,Nature 406,1005(2000)]は、Gli応答性ホタルルシフェラーゼレポーター及び構成的なチミジンキナーゼプロモーターにより活性化されるRenillaルシフェラーゼ発現コンストラクト(pRLTK,Promega)を安定的に組み込まれたNIH−3T3を基にした細胞株であり、10%コウシ血清、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシンを含有するDMEM内で培養された。細胞は、30000細胞/ウエルの濃度になるよう96穴ウエルプレートに注入され、翌日に、0.5%コウシ血清、10%Shh馴化培地及び上記の抗体を含むDMEMとともに、それぞれの化合物又はDMSOを処理された。さらに24時間の培養の後、細胞は溶解され、それらのホタル及びRenillaルシフェラーゼ活性は、デュアルルシフェラーゼレポーターキット(Promega)及びマイクロプレートルミノメーター(Veritas)によって測定された。3サンプルからのホタルルシフェラーゼ活性とRenillaルシフェラーゼ活性の比を表す平均値が、各化合物の用量反応図を構築するために用いられた。3つの別々の実験からの用量反応データは、独立して、Prismソフトウェアを使用して、可変勾配、シグモイド曲線、用量反応アルゴリズムとして描かれ、得られたIC50値は、各化合物のIC50平均値を測定するために使用された。
繊毛形成の定量的評価
Shh−EGFP細胞[J.Hyman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,(2009)]は、Gli応答性green fluorescent proteinレポーターを安定的に組み込まれたNIH−3T3を基にした細胞株であり、10%コウシ血清、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシンを含有するDMEM内で維持された。細胞は、30000細胞/ウエルの濃度になるようポリ−D−リジンでコーティングされた12mmのカバーガラスを含む24穴ウエルプレートに注入され、36時間培養された。細胞は、0.5%コウシ血清及び上記抗体を含むDMEM内に、それぞれの化合物が、30μM又は0.3%DMSOとなるように移された。さらに24時間の培養の後、細胞は、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSを用いて室温で10分間固定され、PBSを用いて5分間3回洗浄され、0.3%Triton−X−100を含むPBSに5分間浸漬され、5%正常ヤギ血清、0.1%Triton−X−100及び0.05%アジ化ナトリウムを含むPBSを用いて、4℃で一晩ブロックされた。カバーガラスは、次いで、ウサギポリクローナル抗Arl13b抗体(1:3000希釈)を含むブロッキング緩衝液とともに、室温で90分間インキュベートされ、0.1%Triton−X−100を含むPBSを用いて5分間4回洗浄され、Alexa Fluor 488で標識されたヤギポリクローナル抗ウサギIgG抗体(1:300希釈;Invitrogen,A−11034)を含むブロッキングバッファとともに、室温で60分間インキュベートされた。二次抗体のインキュベーションの後、核は、0.1%Triton−X−100及び0.51Ag/mL 4’,6−diamidino−2−phenylindole(DAPI)を含むPBSとともに、10分間2回インキュベーションされた後に、PBSを用いて5分間2回洗浄することによって染色された。その後、カバーガラスは、Prolong Gold Antifade Reagent(Invitrogen)を使用したスライドに固定され、Photmeric Cool SNAP HQ CCDカメラ及びMetamorphソフトウェアを搭載したライカDMI6000B複合顕微鏡HC Plan Apochlomat CS 20x/0.70 NA油浸対物レンズを用いて画像化された。DMSO処理されたArl13bの画像を、繊毛染色強度の最小閾値を確立するために手動で検討した。次いでImageJソフトウェアが、個々の画像内の閾値以上の信号強度を有する2以上の隣接する画素から構成されるオブジェクトを定義するために使用され、それぞれの画像内の総被写体領域が、一次繊毛の全画素面積を推定するために使用された。DAPI染色の対応する画像は、各画像あたりの核の数を確認するためのCellProfilerソフトウェアを使用して、並行して処理された。各画像内の細胞あたりの平均繊毛サイズは、次いで、核の数で合計繊毛画素領域を割ることによって決定された。約150の細胞を含む10の各画像が、それぞれの実験条件での平均繊毛サイズを決定するために使用された。
これらの研究の代表的な結果を表1において概説する。
Hhシグナル伝達は主に、転写因子であるGli2及びGli3により媒介され、基本条件の下で、これらのタンパク質は、プロテアソーム及び繊毛依存的にN末端リプレッサー(Gli2/3R)を発生させるために、部分的に分解される。Hhリガンドと膜結合型受容体であるPatchedl(Ptchl)との結合は、Smoの活性化及びGliのタンパク質分解過程阻害へと導く;次いで全長Gli2及びGli3(Gli2/3FL)は、Sufuから分離し、転写活性因子(Gli2/3A)へと変換される。Gli2/3処理のように、Gli2/3A形成は一次繊毛を必要とする。
Hhリガンドに依存したGli3処理の量的評価
Shh−EGFP細胞は、10%コウシ血清、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシンを含有するDMEMを含む12穴ウエルプレートに、30000細胞/ウエルの濃度になるよう注入された。24時間の培養の後、細胞は、0.5%コウシ血清、10%Shh条件培地、上記抗体、及び各化合物又はDMSOを含むDMEMに移された。細胞は、さらに16時間培養され、PBSで洗浄され、8%グリセロール、20m MTris−HCl、pH6.8 2%SDS、100mM DTT、1mM PMSF、20mMフッ化ナトリウム、2mMオルトバナジン酸ナトリウム及びEDTAフリープロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)からなるSDS−PAGEローディング緩衝液と氷上でインキュベートすることによって溶解させた。溶解させたサンプルは、100℃で7分間加熱され、3−8%Criterion XT Trisアセテートポリアクリルアミドゲル(Bio−Rad)にロードされ、XTトリシン緩衝液内で電気泳動され、PVDEメンブレン上に移された。メンブレンは、メタノールで脱水され、4%無脂肪粉乳及び0.1%Tween−20(イムノブロットブロッキング緩衝液)を含むPBSにおいて、4℃でヤギポリクローナル抗Gli3抗体(0.4μg/mL:R&D Systems,AF3690)をプローブとして反応させ、次いで、ブロットをPBSで1分間4回洗浄され、イムノブロットブロッキング緩衝液内で、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ウシポリクローナル抗ヤギIgG抗体(0.04μg/mL,Jackson ImmunoResearch,805−035−180)とともに、室温で1時間インキュベートされた。メンブレンは、次いで、PBSで1分間4回洗浄され、SuperSignal West Dura Extended Duration substrate(Thermo Scientific)及びChemiDoc XRS imaging system(Bio−Rad)を用いて可視化された。Quantity Oneソフトウェア(Bio−Rad)を用いて定量化したGli3FL及びGli3Rバンド強度、及び5回の独立した実験が、各化合物のGli3FL/Gli3R率の平均を決定するために用いられた。シリオブレビン(実施例1,25,27及び31の化合物)は、Smo阻害剤であるシクロパミンと同様に、Sonic Hedgehog(Shh−N)のN末端ドメインで刺激された細胞内のGli3FL/Gli3R率を変化させた。Shh−N依存性Gli3FLのリン酸化もまたこれらの化合物によって減少するか、あるいは、Gli3Aの損失を反映している。試験された他の類似体はGli3FL/Gli3R率又はGli3FLのリン酸化状態に有意な影響を示さなかった。
Hhリガンド依存性Gli2輸送の定量的評価
上述の薬学的な結果は、一次繊毛の機能、Gliプロセシング及びGli活性をつなぎ合わせて確認された遺伝学的な結果と一致する。Hh経路活性化は、一次繊毛の遠端におけるGli2局在化と一致しているので、我々は,シリオブレビンが、どのようにして繊毛を攪乱するのかについての理解をさらに深めるため、試験化合物のGli2局在化の影響を調査した。
Shh−EGFP細胞は、ポリ−D−リジンでコーティングされた12mmのカバーガラスを含む24穴ウエルプレートに、65000細胞/ウエルの濃度になるよう注入され、10%コウシ血清、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシンを含有するDMEM内で24時間培養された。次いで、細胞は、一次繊毛形成を促進するために、0.5%コウシ血清及び上記抗体を含むDMEM内に移され、16時間保持された。次いで、24時間の培養の後、細胞は、0.5%コウシ血清、抗体、及び30μM濃度の各化合物又は0.3%DMSOを含むDMEMに移された。各化合物又はコントロールの処理は、それぞれ、10%Shh−N−馴化培地が存在又は欠乏している状態で行われ、これらの条件で細胞は、4時間培養された。次いで、細胞は、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSを用いて室温で10分間固定され、50mMグリシンを含むPBSを用いて5分間3回洗浄され、0.3%Triton−X−100を含むPBSに5分間浸漬され、次いで、5%正常ロバ血清、0.1%Triton−X−100及び0.05%アジ化ナトリウムを含むPBSを用いて、4℃で一晩ブロックされた。ブロッキングが完了した後、次いで、ウサギポリクローナル抗Arl13b抗体(1:3000希釈)、ヤギポリクローナル抗Gli2抗体(1:50希釈:R&D Systems,AF3635)及びマウスモノクローナル抗γチューブリン(1:200希釈;Sigma−Aldrich,T5326)を含むブロッキング緩衝液内で、カバーガラスは、室温で90分間インキュベートされた。次いで、0.1%Triton−X−100を含むPBSで、細胞は、5分間4回洗浄され、DyLight488標識ロバポリクローナル抗ヤギIgG抗体(3μg/mL;JacksonImmunoResearch,705−485−147)、DyLight594標識ロバポリクローナル抗マウスIgG抗体(3μg/mL;JacksonImmunoResearch,715−515−151)及びDy、ight649標識ロバポリクローナル抗マウスIgG抗体(3μg/mL;JacksonImmunoResearch,711−495−152)を含むブロッキング緩衝液とともに、60分間インキュベートされた。二次抗体のインキュベーションの後、核は、0.1%Triton−X−100及び0.5μg/mL DAPIを含むPBSとともに10分間2回インキュベーションされた後に、PBSを用いて5分間2回洗浄することによって染色された。次いで、カバーガラスは、Prolong Gold Antifade Reagent(Invitrogen)を使用したスライドに固定され、LSM700共焦点レーザー走査ヘッドを搭載したZeiss Axiolmager Z1正立顕微鏡Plan Apochlomat 63x/1.4NA油浸対物レンズを用いて画像化された。軸糸の遠端においての直径0.69μmの範囲内で総画素強度を決定し、同等の大きさの隣接領域での背景の蛍光を差し引くことによって、繊毛のGli2レベルを定量化した。少なくとも25の繊毛を、各実験条件での繊毛の平均Gli2レベルを決定するために分析した。基底培地及びShh−N−誘導培地において、繊毛形成を有意に攪乱しない誘導体(16及び2)によっては、繊毛のGli2レベルの変化はなかった。一方、化合物1及び31は、Shh−Nによって誘導されたものと比較して、シグナリング細胞小器官における基本培地のGli2濃度が上昇した。
IFT88輸送の定量的評価
シリオブレビンがHhリガンド非依存的に繊毛のGli2レベルを増加させる能力は、これらの化合物が一次繊毛内タンパク質輸送メカニズムを標的にする可能性があることを示唆している。微小管依存性コンパートメントとして、繊毛は、その軸糸に沿って高分子を移動させるために、特定のモータータンパク質を活用している。貨物の繊毛内輸送(IFT)は、プラス末端方向へのキネシン2モーター及びIFTBマルチサブユニット複合体を必要とする順行性輸送、そして、マイナス末端方向への細胞質ダイニン2モーター及びIFTAを活用する逆行性輸送として説明できる。キネシン2、細胞質ダイニン2、又はIFT複合体サブユニットのそれぞれの遺伝子を破壊した場合には、繊毛が欠失し、Hhシグナル伝達の攪乱が誘導されることが見出された。例えば、マウス胚発生において、一次繊毛特有のcytoplasmic dynein 2 heavy chain(Dync2hl)の欠失が、繊毛の形態を変化させ、Hh標的遺伝子発現を減少させることが示されている。また、Dync2hlの機能を失っている細胞は、Hh経路活性化の非存在下において、繊毛Gli2レベルの増加を示す。シリオブレビンがHh経路特有のプロセスよりもむしろ一般的な繊毛輸送を標的とすることを確かめるために、IFTBの構成要素であり、繊毛の基底小体に戻るための細胞性ダイニン2に依存した逆行性輸送に必要となるIFT88の、細胞レベル下においての局在に対するシリオブレビンの影響を検証した。
Shh−EGFP細胞は、ポリ−D−リジンでコーティングされた12mmのカバーガラスを含む24穴ウエルプレートに、30000細胞/ウエルの濃度になるよう注入され、10%コウシ血清、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシンを含有するDMEM内で24時間培養された。次いで、細胞は、一次繊毛形成を促進するために、0.5%ウシ血清及び上記抗体を含むDMEM内に移され、16時間保持された。細胞は、次に、0.5%コウシ血清、抗体、及び50μM濃度の各化合物又は0.25%DMSOを含むDMEMに移され、1時間保持された。各化合物又はコントロールの処理は、それぞれ、10%Shh−N−馴化培地が存在又は欠乏している状態で行い、これらの条件で細胞を4時間培養した。次いで、細胞は、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSを用いて室温で10分間固定され、50mMグリシンを含むPBSを用いて5分間3回洗浄され、0.3%Triton−X−100を含むPBSに5分間浸漬され、次いで、5%正常ヤギ血清、0.1%Triton−X−100及び0.05%アジ化ナトリウムを含むPBSを用いて、4℃で一晩ブロックされた。ブロッキングが完了した後、細胞は、次いで、マウスモノクローナル抗アセチル化チューブリン(1:4000希釈;Sigma−Aldrich,T6793)、ウサギポリクローナル抗IFT88抗体(1:70希釈:Protein Tech Group,13967−1−AP)及びマウスモノクローナル抗γチューブリン(1:200希釈;Sigma−Aldrich,T5326)を含むブロッキング緩衝液内で、カバーガラスを室温で90分間インキュベートされた。次いで、細胞は、0.1%Triton−X−100を含むPBSで、5分間4回洗浄され、Alexa Fluor 488標識ヤギポリクローナル抗ウサギIgG抗体(1:300希釈;Invitrogen,A−11034)及びAlexa Fluor 647標識ヤギポリクローナル抗マウスIgG抗体(1:300希釈;Invitrogen,A−21235)を含むブロッキング緩衝液でインキュベートされた。二次抗体のインキュベーションの後、核は、0.1%Triton−X−100及び0.5μg/mL DAPIを含むPBSとともに10分間2回インキュベーションされた後に、PBSを用いて5分間2回洗浄することによって染色された。次いで、カバーガラスは、Prolong Gold Antifade Reagent(Invitrogen)を使用したスライドに固定され、LSM700共焦点レーザー走査ヘッドを搭載したZeiss Axiolmager Z1正立顕微鏡Plan Apochlomat 63x/1.4NA油浸対物レンズを用いて画像化された。背景を差し引かなかったものの、Gli2で記載したように繊毛のIFTレベルは、本質的に定量化された。少なくとも25の繊毛を、各実験条件での繊毛の平均IFT88レベルを決定するために分析した。シクロブラビンD(実施例31)を用いて細胞を1時間処理することにより、DMSO又は化合物16を用いた場合と比較して、一次繊毛の遠端においてIFT88レベルの有意な増加が生じた。これは、シリオブレビンが細胞質ダイニン2の機能を阻害することのさらなる証拠となる。
紡錘体形成の画像化
一次繊毛外への小分子輸送に加えて、細胞質ダイニン複合体は、異なった細胞機能を有している。例えば、細胞質ダイニン1は、ダイナクチン及び核タンパク質であるNuMAと複合体を形成し、有糸分裂の紡錘体の内部に微小管のマイナス末端を集中させるという働きを行う。これらの働きが紡錘状の形状を形成し、γ−チューブリン及び微小管と核の複合体を紡錘体極へ局在させる。抗体のブロック又はドミナントネガティブ構築を原因とする細胞質内ダイニン1の阻害は、有糸分裂を攪乱し、γ−チューブリンの漸増が止まり、微小管末端の規則正しさが失われる結果となる。シクロブレビンがこれらの表現型を再現することができるかどうかを決定するために、有糸分裂中期の細胞を多く含むNIH−3T3細胞を、実施例31又は実施例2で50μM濃度で一時間処理し、有糸分裂の構造を共焦点免疫蛍光顕微鏡によって検証した。
Shh−EGFP細胞は、密集度約70%に至るまで培養され、ポリ−D−リジンでコーティングされた12mmのカバーガラスを含む24穴ウエルプレートに1:5となるよう分割され、10%コウシ血清、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシンを含有するDMEM内で24時間培養された。これらの条件で一晩培養された後、細胞は、15μM MG132を含む増殖培地で90分間培養され、続いて、0.5%コウシ血清、15μM MG132、及び50μMのそれぞれの化合物又は同量のDMSO溶媒のいずれかを含むDMEMとともに、60分間インキュベートされた。細胞は、−20℃に冷やされたメタノールとともに、氷上でインキュベーションされることにより固定され、PBSで5分間3回洗浄され、次いで、5%正常ヤギ血清、0.1%Triton−X−100及び0.05%アジ化ナトリウムを含むPBSを用いて室温で、一晩ブロックされた。ブロッキング完了後、カバーグラスは、マウスモノクローナル抗α−チューブリン抗体(1:2000希釈;Sigma−Aldrich,T6199)、ウサギポリクローナル抗γ−チューブリン抗体(1:500希釈:;Sigma−Aldrich,T3559)を含むブロッキング緩衝液内で、室温で90分間インキュベートされた。細胞は、0.1%Triton−X−100を含むPBSで5分間4回洗浄され、Alexa Fluor 488標識ヤギポリクローナル抗ウサギIgG抗体(1:300希釈;Invitrogen,A−11034)及びAlexa Fluor 594標識ヤギポリクローナル抗マウスIgG抗体(1:300希釈;Invitrogen,A−11032)を含むブロッキング緩衝液で60分間インキュベートされた。
二次抗体のインキュベーションの後、核は、0.1%Triton−X−100及び0.5μg/mL DAPIを含むPBSとともに10分間2回インキュベーションされた後に、PBSを用いて5分間2回洗浄することによって染色された。次いで、カバーガラスは、Prolong Gold Antifade Reagent(Invitrogen)を使用したスライドに固定され、LSM700共焦点レーザー走査ヘッドを搭載したZeiss Axiolmager Z1正立顕微鏡Plan Apochlomat 63x/1.4NA油浸対物レンズを用いて画像化された。細胞質ダイニン1の薬理学的な阻害と一致して、実施例31で処理された細胞は、γ−チューブリン−陽性極と紡錘体を形成することができなかった。実施例16又は溶媒のみで処理された細胞は、通常の紡錘体形成を示した。
メラノソーム凝集アッセイ
もう一つの細胞質ダイニン1に依存したプロセスは、色素細胞内のメラニンを含む小胞の凝集である。そのメカニズムは、特定の生物が環境的な合図に応答して、配色を適応させるものである。例えば、細胞質ダイニン1は、小分子メラトニンで刺激したXenopusの黒色素胞の中心に向けてメラノソームを輸送する。これは、キネシン−2及びミオシン−5によって活性化されるメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)に応答しての細胞の周縁部に対する色素顆粒の分散と平衡する。メラノソーム輸送がシリオブレビンに対して敏感であるかどうかを決定する目的で、我々は、メラノソームを均等に分散させるために、Xenopus黒色素胞をMSHとともに培養し、次いで、それらをメラトニン及び様々な濃度の試験化合物で処理した。
不死化したXenopus黒色素胞は、10%ウシ胎児血清、30mg/L L−グルタミン、及び5mg/Lインスリンを追加した0.7X L15培地で培養された。メラノソーム凝集アッセイの前に、細胞は、ポリ−D−リジンでコーティングされた12mmのカバーガラスを含む12穴ウエルプレートで、12時間から24時間培養された。実験の日に、黒色素胞は、30分間無血清培地で培養され、メラノソームを均等に分散させるため、100nM MSHで刺激され、次いで、それぞれの化合物又はDMSOのいずれかを含む培地とともに、10分間インキュベートされた。メラノソーム凝集は、次いで、試験化合物存在下において、10nMメラトニンで細胞を処理することにより誘導された。黒色素胞は、経時的顕微鏡検査法又は4%パラホルムアルデヒドを含む0.7X PBSによる30分間処理のいずれかにより、直ちに画像化された。
シリオブレビンの可逆性を実証するため、黒色素胞は、30分間無血清培地で培養され、メラノソームを均等に分散させるため、100nMメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)で刺激され、次いで、それぞれの化合物及び10nMメラトニンを含む培地とともに、30分間インキュベートされた。細胞は、次いで、メラトニンのみを含む培地で数回洗浄され、画像化された。実施例31が、10nM濃度で、有意にメラノソーム凝集を阻害する一方、繊毛を攪乱しなかった実施例16は、40μMを超えても効果を認識することができなかった。シリオブレビンD(実施例31)の効果は、黒色素胞が、最初に実施例31及びメラトニンで処理され、次いで、メラトニンのみを含む培地で培養されたウオッシュアウト実験によって実証され、完全に可逆的であった。全てをまとめると、これらの結果は、シクロブレビンは、繊毛形成、繊毛輸送、紡錘体形成、及びメラノソームの輸送を含む異種の細胞質ダイニンの依存するプロセス特異的な可逆的阻害剤であることを示している。
微小管表面滑走アッセイ
シクロブレビンが作用する多様な細胞コンテキストは、このマルチサブユニットモータータンパク質を収束するための上流のシグナル伝達よりもむしろ、標的の細胞質ダイニンそれ自体を標的とすることを強く示唆している。細胞質ダイニンがシクロブレビンの直接の標的であるかどうかを、より直接的に調べるために、我々は、インビトロにおけるダイニン依存性微小管滑走へのそれらの影響を評価した。細胞質ダイニンは、ウシの脳組織から精製され、スライドグラス上に吸着され、蛍光標識された微小管及びATPとともに、これらの化合物の存在下又は非存在下のいずれかの条件においてインキュベートされた。我々は、次いで、落射蛍光顕微鏡を用いて微小管滑走速度の結果を画像化し、定量化した。
細胞質ダイニンは、Bingham et al.,[Methods Enzymol.298,171(1998)]により示された方法で、ウシの脳組織から精製された。C末端Hisタグを有するヒトキネシン(kinesin−1)の560アミノ酸残基からなるN末端断片であるK560は細菌内で発現され、Woehlke et al,[Cell 90,207(1997)]で示されたように精製された。運動性アッセイは、Zeiss 100x/1.45 NA α−Plan−Fluar対物レンズを搭載したZeiss Axiovert 200M広視野顕微鏡上で行われた。データは、0.3秒の露光時間及び0.5/秒のフレームレートで、EM−CCDカメラ(iXon DU−897,Andor Technology)に捉えられた。微小管表面滑走アッセイは、Kapoor and Mitchison[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96,9106(1999)]により示された方法に、修正をいくつか加えて行われた。約6μLのフローチャンバーは、モータータンパク質(100μg/mLダイニン又は50μg/mL K560)を含むモーター希釈緩衝液(80mM Pipes,1mM EGTA,2mM MgCl2,2mM DTT,50μM ATP,水酸化カリウムでpH6.8に調整)で満たされた。2分間のインキュベーションの後、余分なタンパク質は、20μL PEM80緩衝液(80mM Pipes,1mM EGTA,2mM MgCl2,水酸化カリウムでpH6.8に調整)で洗い落とされ、チャンバーをブロッキングタンパク質(0.5mg/mLダイニン実験用α−カゼイン及び1mg/mL K560実験用BSA)を含むモーター希釈タンパク質で満たすことによって、表面は非特異的な微小管結合に対してブロックされた。チャンバーは、2分後に18μLの反応混合物[PEM80,40mM KCl,ブロッキングタンパク質(1mg/mLダイニン実験用α−カゼイン;1mg/mL K560実験用BSA),2mM MgATP,20μMタキソール,0.1μMローダミン標識微小管,酸素欠乏システム(4mM DTT,2mMグルコース,40μg/mLグルコースオキシダーゼ,35μg/mLカタラーゼ),2.5%DMSO,適切な試験化合物]で灌流された。フローチャンバーは、次いで、バラップ(valap)により密閉された。微小管を表面に5分間結合させた後、滑走微小管は経時的顕微鏡法によって可視化された。速度は、Metamorphソフトウェア(Molecular Devices)を用いたキモグラフィによって計測され、それぞれの微小管の速度は観測時間中における合計距離から決定された。
ウオッシュアウト実験のために、阻害剤を含む最初の反応混合物が加えられた後、チャンバーは、密封ではない状態にされた。微小管を表面に5分間結合させた後、次いで、微速度撮影動画が得られた。阻害剤は、次いで、追加の微小管又は阻害剤なしの新しい反応混合物(PEM80,40mM KCl,1mg/mL α−カゼイン,2mM MgATP,20μMタキソール,酸素欠乏システム,2.5%DMSO)を流し込むことにより、チャンバー外へ洗い落とされた。チャンバーは密封され、追加の微速度撮影動画が得られた。
全ての化合物は、最初に、このアッセイにおいて微小管の動きを妨害する濃度の少なくとも5倍の濃度のシクロブレビンA及びシクロブレビンD(実施例1及び31)とともに100μMで調査された;我々のセルベースアッセイにおいて、細胞質ダイニン依存的なプロセスを阻害しなかった類似体(実施例2及び16)では、この濃度でも、極小の影響しか及ぼさなかった。Xenopus小胞細胞におけるメラノソーム凝集と同様に、シリオブレビンによる微小管滑走阻害は、30μM及び40μMのIC50値を示す2つの化合物のそれぞれにおいて、可逆的であり、用量依存的であった。いずれのシリオブレビンも、インビトロにおいて、100μM濃度でK560/キネシン−1依存的微小管滑走に対して有意な影響を及ぼさなかった。このように、これらのジヒドロキナゾリノンは、特異的に細胞質ダイニンを標的とし、ATP依存性微小管運動の包括的な拮抗物質ではなかった。
繊毛形成の定量的評価
Shh−EGFP細胞は、Gli応答性green fluorescent proteinレポーターを安定的に組み込まれたNIH−3T3を基にした細胞株であり、10%(v/v)コウシ血清、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシンを含むDMEM内で維持された。細胞は、30000細胞/ウエルの濃度になるようポリ−D−リジンでコーティングされた12mmのカバーガラスを含む24穴ウエルプレートに注入され、36時間培養された。細胞は、0.5%(v/v)コウシ血清及び上記抗体を含むDMEM内に、それぞれのジヒドロキナゾリノンが30μM又は等量のDMSO溶媒(0.3%,v/v)となるように移された。さらに24時間の培養の後、細胞は、4%(w/v)パラホルムアルデヒドを含むPBSを用いて室温で10分間固定され、PBSを用いて5分間3回洗浄され、0.3%(v/v)Triton−X−100を含むPBSに5分間浸漬され、5%(v/v)正常ヤギ血清、0.1%(v/v)Triton−X−100及び0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを含むPBSを用いて、4℃で一晩ブロックされた。カバーガラスは、次いで、ウサギポリクローナルanti−Arl13b抗体(1:3000希釈)を含むブロッキング緩衝液とともに、室温で90分間インキュベートされ、0.1%Triton(v/v)X−100を含むPBSを用いて5分間4回洗浄され、Alexa Fluor 488で標識ヤギポリクローナル抗ウサギIgG抗体(1:300希釈;Invitrogen,A−11034)を含むブロッキングバッファとともに、室温で60分間インキュベートされた。二次抗体のインキュベーションの後、核は、0.1%(v/v)Triton−X−100及び0.5μM/mL 4’,6−diamidino−2−phenylindole(DAPI)を含むPBSとともに、10分間2回インキュベーションされた後に、PBSを用いて5分間2回洗浄することによって染色された。その後、カバーガラスは、Prolong Gold Antifade Reagent(Invitrogen)を使用したスライドに固定され、Photmeric Cool SNAP HQ CCDカメラ及びMetamorphソフトウェア(Molecular Devices)を搭載したライカDMI6000B複合顕微鏡HC Plan Apochlomat CS 20x/0.70 NA油浸対物レンズを用いて画像化された。DMSO処理されたArl13bの画像は、繊毛染色強度の最小閾値を確立するために手動で検討された。次いで、ImageJソフトウェアが、個々の画像内の閾値以上の信号強度を有する2以上の隣接する画素から構成されるオブジェクトを定義するために使用され、それぞれの画像内の総被写体領域が、一次繊毛の全画素面積を推定するために使用された。DAPI染色の対応する画像が、各画像あたりの核の数を確認するためのCellProfilerソフトウェアを使用して、並行して処理された。各画像内の細胞あたりの平均繊毛サイズは、次いで、核の数で合計繊毛画素領域を割ることによって決定された。約150の細胞を含む10の各画像が、それぞれの実験条件での平均繊毛サイズを決定するために使用された。結果は、図1に示されている。繊毛サイズには、実施例1の化合物の濃度上昇に反応して、用量依存的な減少が見られ、ヘッジホッグシグナル伝達を阻害するがダイニンの阻害剤ではない実施例16の化合物では、濃度上昇に反応した繊毛サイズの用量依存的な減少は見られなかった。
本明細書により開示される化合物は、インビトロ及び生細胞における細胞質ダイニンの特異的な阻害剤である最初の小分子である。ATPの類似体であるエリトロ−9[−3−(2−ヒドロキシノニル)]アデニン及び抗酸化ノルジヒドログアイヤレチン酸は、以前からダイニンの機能を抑制すると報告されており、これらの化合物は、様々な酵素の拮抗物質である。天然産物プレアリン(purealin)は、インビトロでダイニンモータードメインのATPase活性を部分的に阻害することができるが、細胞質ダイニン依存的細胞プロセスをブロックする能力が実証されていない。上述の調査は、シクロブレビンが細胞質ダイニン1及び2の両方を阻害することができることを示し、従って、本化合物がEg5の抑制剤であるモナストロール(monastrol)、及びミオシンIIの拮抗物質であるブレビスタチン(blebbistatin)のようなモータータンパク質の他の小分子モジュレーターを補完し、ダイニン依存的プロセスに広く応用できるプローブになるであろう。