本発明は、マイクロ波場中でポリマーの水溶液を等重合度エステル化(polymeranaloge Veresterung)することによって、酸基含有ポリマーを変性するための連続的な方法に関する。
疎水変性された水溶性合成ポリマーは、近年、益々工業的な重要性を増している。これらは、大概は、主として親水性基含有モノマーと小割合の疎水性基含有モノマーとから構成されるポリマーである。これらの水溶性ポリマーは、疎水性基の分子内及び/または分子間相互作用の故に水溶液中でミセル様構造をもって凝集する。そのため、疎水変成されたポリマーは、通常の水溶性ポリマーと比べて、低濃度において三次元網状構造を形成することによって粘度の上昇を引き起こし、この際、非常に大きいモル質量はこのためには必要ない。このような“会合性増粘剤”は、多くの工業的な用途における水性ベースの液体、または調合物、例えばペイント及びコーティング材、紙、掘削流体における調合物や石油生産での調合物のレオロジー性を効率よく制御する。これらのポリマーは、医薬用途または化粧料用途でも、例えばコロイド分散液、エマルション、リポゾームまたは(ナノ)パーティクルの安定化剤としても使用される。更に、これらは、顔料及び染料の分散剤としても使用され、この際、変性されたポリマーは、固体表面上に疎水性ポリマーセグメントが固定されることによって及び帯電した親水性基が体積相中に広がることによって、疎水性粒子の分散剤として働く。
疎水変性された水溶性ポリマーの特殊なケースはいわゆるLCST−ポリマー(下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature))であり、それの側鎖は温度が高まると水溶性を失い、それ故、温度上昇時にポリマーの凝集または析出を招く。この種のポリマーは、例えば石油の採掘の場合に、掘削泥水用添加剤として大きな関心が持たれる。
疎水変性水溶性合成ポリマーのレオロジー性は、例えば疎水性基の選択及び/または変性度の選択によって広い範囲で調節することができ、それ故、様々な分野に適合させることができる。
疎水会合性水溶性分子の一つの重要なグループは、疎水変性された合成ポリ(カルボン酸)である。これらは、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸と然るべき疎水性基含有モノマーとを共重合することによって製造することができる。この際、疎水性コモノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸のエステルが特に有用であることがわかっている。というのも、これらは、親水性モノマーに匹敵する共重合パラメータを有するためである。しかし、それらの工業的な利用可能性は、置換のバリエーションや数量に関して制限され、そしてそれらの合成は煩雑でコスト高である。通常は、これは、エチレン性不飽和カルボン酸の反応性誘導体、例えば酸無水物、酸塩化物または低級アルコールとのエステルとアルコールとの反応を介して行われ、この際、分離及び廃棄するべき副生成物が等モル量で生ずる。アルコールとエチレン性不飽和カルボン酸との直接的なエステル化、並びにその後の精製は、望ましくない不制御の重合を避けるために煩雑な措置を必要とする。更に、ランダムコポリマーの製造は、親水性及び疎水性モノマーの異なる溶解性の故に、しばしば困難性を招く。
代替的に、この種のポリマーは、工業的に多量に入手が可能な合成高分子量ポリ(カルボン酸)の等重合度反応によっても得ることができる。しかし、反応水を共沸させて除去しながらポリ(カルボン酸)をアルコールで直接縮合することは、通常は、有機溶剤中へのポリ(カルボン酸)の低い溶解性によって失敗に終わる。これは、通常は、非極性有機溶剤中に十分な溶解性を有するカルボン酸基含有コポリマーでしかうまくいかない。従来技術によると、ポリ(カルボン酸)とアルコールとの間のこの種の等重合度反応は、カップリング試薬、例えばN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いて行うことができる。この際に問題なのは、再び、方法に起因して生ずる副生成物並びに反応パートナーの異なる溶解性であり、これはしばしば不均一な生成物を招く。
カルボン酸エステルを合成するためのより新しい方策は、マイクロ波放射線の作用下でのエステルを生成するカルボン酸とアルコールとの直接的な反応である。その際、従来の方法とは対照的に、例えば酸塩化物、酸無水物、エステルまたはカップリング試薬を介したカルボン酸の活性化は必要ではない。このことは、この方法を経済的にかつエロコジー的に非常に興味深いものとする。
J.Org.Chem.56(1991),1313−1314(非特許文献1)は、マイクロ波放射線の作用下にプロパノールを酢酸でエステル化する時に反応速度が大きく加速されることを開示している。この際、反応体は、完全に互いに混合可能な液体である。
EP0437480(特許文献1)は、様々な化学反応を連続的に実施するための装置を開示している。この際、エステル化は過剰の反応体を溶剤として使用して行われる。
Macromolecular Chemistry and Physics 2008,209,1942−1947(非特許文献2)は、マイクロ波照射下に非極性溶剤中で酸基含有ポリ(エーテルスルホン)を1−ナフトールで等重合度エステル化することを開示している。
Macromol.Rapid Commun.2007,28,443−448(非特許文献3)は、20重量%のアクリル酸を含むポリ(エチレン−co−アクリル酸)をマイクロ波場中において様々なフェノール類でエステル化することを開示している。この際、過剰のフェノール類が溶剤として使用され、これはポリマーの析出を介して分離される。
JP2009/263497A(特許文献2)は、マイクロ波照射下でフマル酸とスチレンとのコポリマーをオクタノールでエステル化することを開示している。
しかしこれらの方法は、高分子量合成ポリ(カルボン酸)のエステル化には直接転用することはできない。高分子量合成ポリ(カルボン酸)は、室温で通常は固形の高粘性物質であり、これは、非極性溶剤、例えば脂肪族及び/または芳香族溶剤中に、並びに大概にエステル化に重要なアルコール中に溶解しない。それ故、エステル基をランダムな分布で有するポリマー鎖の部分的な変性に特に必要な、ポリ(カルボン酸)とアルコールとの均一な混合物の提供は、可能ではない
それに対して高分子量合成ポリ(カルボン酸)は水中に非常に良好に可溶性であるかまたは少なくとも膨潤可能であるが、この際、水は、通常は、縮合反応を実施するための適当な溶剤とは見なされない。加えて、工業規模での反応に必要な、高分子量合成ポリ(カルボン酸)の高濃縮された水溶液は非常に粘性が高く、等重合度反応の間に疎水性ドメインが生成することによって更に粘性が高まり得る。これは、一方では、アルコールとの均一な反応混合物の製造を困難にし、他方では例えば攪拌の時や、連続的プロセスでのポンプ輸送の時のそれの取り扱いを困難にする。しばしば、濃厚な溶液の搬送には強力なポンプでさえ十分ではなく、搬送装置、例えばスクリューまたはアルキメデス螺旋体などを用いて作業しなければならない。このような装置では、連続的に行われるマイクロ波援助反応の際には、機械的強度の他に、特別な要求、例えばマイクロ波透明性などがその素材に課せられ、それの遵守には大きな手間と高いコストが要求される。更に、このような機械的装置は、照射域の形状を制限する。
J.Org.Chem.56(1991),1313−1314
Macromolecular Chemistry and Physics 2008,209,1942−1947
Macromol.Rapid Commun.2007,28,443−448
D.Bogdal,Microwave−assisted Organic Synthesis,Elsevier 2005
K.Lange,K.H.Loecherer,Taschenbuch der Hochfrequenztechnik",第2巻,K21頁以降
従って、合成ポリ(カルボン酸)の性質を簡単かつ低廉に工業的に関心が持たれる量で変性することができる、合成ポリ(カルボン酸)の等重合度変性のための連続的な方法を提供するという課題があった。この際、特に、反応混合物には、特殊な搬送装置の使用を必要とする高い粘度は生じるべきではない。製造されるポリマーの溶解性及び凝集挙動には、広い範囲で影響を及ぼし得るべきである。この際、一つの反応バッチ内で並びに異なる反応バッチ間でも一定した生成物の性質を達成するためには、変性はできるだけ均一に、すなわちポリマー全体にわたってランダムな分布で行われるべきである。この際更に、毒学的及び/または生態学的に懸念のもたれる副生成物は顕著な量で生じるべきではない。
驚くべきことに、合成ポリ(カルボン酸)が、水及びある種の水と混合可能な溶剤からなる溶液中で、アルコールと、マイクロ波の作用下に100℃を超える温度において、連続的な方法でエステル化できることが見出された。この方法の過程では、粘度は、もし高まったとしても微々たる程度にしか上昇しない。このようにして、ポリ(カルボン酸)を例えば疎水性に並びに熱会合性に変性することができる。このように変性されたポリマーの溶解性は、より大きな親水性もしくは疎水性ポリマーブロックの存在についての示唆を与えない。多数の様々なアルコールが低廉にかつ工業的な量で入手が可能であるため、合成ポリ(カルボン酸)の性質を広い範囲で変性することができる。この方法では、(反応水の他には)、分離及び廃棄すべき副生成物が生じない。
それ故、本発明の対象は、次式(I)
[式中、
R
1は、水素、C
1〜C
4アルキル基または式−CH
2−COOHの基を意味し、
R
2は、水素またはC
1〜C
4アルキル基を意味し、
R
3は、水素、C
1〜C
4アルキル基または−COOHを意味する]
で表される繰り返し構造単位をポリマー鎖あたり少なくとも10個含む合成ポリ(カルボン酸)(A)と、以下の一般式(II)
R
4−(OH)
n (II)
[式中、
R
4は、C原子数1〜100の炭化水素残基を表し、これは置換されていてもよくまたはヘテロ原子を含んでいてもよく、そして
nは、1〜10の数を表す]
のアルコール(B)とを反応させるための連続的な方法であって、
水と、溶剤混合物の重量を基準に0.1〜75重量%の少なくとも一種の水と混合可能な有機溶剤とを含み、この際、前記有機溶剤は、25℃で測定して少なくとも10の誘電率を有する溶剤混合物中に少なくとも一種の合成ポリ(カルボン酸)(A)及び式(II)の少なくとも一種のアルコールを含む反応混合物を、反応区間に運び入れ、そしてこの反応区間中を通り流れる時に、マイクロ波放射線に曝し、そしてこの際、反応混合物は、この反応区間においてマイクロ波照射によって100℃を超える温度に加熱される前記方法である。
本発明の更に別の対象の一つは、本発明の方法に従い製造された等重合度変性された合成ポリ(カルボン酸)である。
好ましくは、R1は水素またはメチル基を表す。更に好ましくは、R2は水素を表す。更に好ましくは、R3は水素または−COOHを表す。具体的な実施形態の一つでは、R1、R2及びR3は水素を表す。更に別の具体的な実施形態の一つでは、R1はメチル基を表し、そしてR2及びR3は水素を表す。更に別の具体的な実施形態の一つでは、R1及びR2は水素を表し、そしてR3は式−COOHのカルボキシル基を表す。
合成ポリ(カルボン酸)(A)とは、エチレン性不飽和カルボン酸の付加重合によって製造することができるポリマーのことと解される。好ましい合成ポリ(カルボン酸)は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはそれらの混合物から誘導される構造単位を含む。誘導された構造単位という用語は、ポリマーが、上記の酸の付加重合の時に生じた構造単位を含むことを意味する。特に好ましくは、上記のエチレン性不飽和カルボン酸のホモポリマー、例えばポリ(アクリル酸)及びポリ(メタクリル酸)である。更に別の好ましいものは、二種またはそれ超、例えば三種またはそれ超のエチレン性不飽和カルボン酸から、特に二種またはそれ超、例えば三種またはそれ超の上記のエチレン性不飽和カルボン酸から、例えばアクリル酸とマレイン酸とから、またはアクリル酸とイタコン酸とからできたコポリマーである。
本発明の方法は、上記のエチレン性不飽和カルボン酸から誘導された構造単位の他に、50モル%までの副次的な量で更に別のエチレン性不飽和モノマーから誘導された構造単位を含むポリ(カルボン酸)の変性にも適している。好ましくは、更に別のエチレン性不飽和モノマーから誘導された構造単位の割合は0.1〜40モル%、特に好ましくは0.5〜25モル%、特に1〜10モル%、例えば2〜5モル%である。好ましい更に別のエチレン性不飽和モノマーは、例えば、更に別の酸基含有モノマー、特にカルボキシル基を持つモノエチレン性不飽和化合物、例えばビニル酢酸またはアリル酢酸、スルフェートまたはスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和化合物、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)または2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、並びにホスフェートまたはホスホン酸基を有するモノエチレン性不飽和化合物、例えばビニルリン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、メタクリルアミドメタンホスホン酸、2−アリールアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、3−ホスホノプロピルアクリレートまたは3−ホスホノプロピルメタクリレートである。C1〜C20−カルボン酸、特にC2〜C5−カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル、アクリル酸もしくはメタクリル酸とC1〜C20−アルコール、特にC2〜C6アルコールとのエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、並びにアクリルアミド及びメタクリルアミド並びに窒素のところでC1〜C20−アルキル基で置換されたそれらの誘導体、ビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、N−ビニル化合物、例えばN−ビニルカプロラクタム及びN−ビニルピロリドン、並びにオレフィン、例えばエチレン、スチレン及びブタジエンも、他のコモノマーとして適している。好ましいコポリマーは、水及び水と混合可能な有機溶剤の溶剤混合物中に、40℃を超える温度、例えば50℃、60℃、70℃、80℃または90℃で均一に可溶であるかまたは少なくとも膨潤可能である。更に好ましくは、これらは、少なくとも1重量%、特に5〜90重量%、例えば20〜80重量%の濃度で、40℃を超える温度、例えば50℃、60℃、70℃、80℃または90℃の温度において均一に溶剤混合物中に可溶であるかまたは膨潤可能である。好ましいコポリマーの例は、
−アクリル酸もしくはメタクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS(登録商標))Na塩とでできたコポリマー、
−アクリル酸と2−エチルヘキシルアクリレートとでできたコポリマー、
−アクリル酸とアクリルアミドとでできたコポリマー、
−アクリル酸とジメチルアクリルアミドとでできたコポリマー、
−メタクリル酸もしくはアクリル酸とtert.−ブチルメタクリレートとでできたコポリマー、
−マレイン酸とスチレンとでできたコポリマー、並びに
−マレイン酸と酢酸ビニルとでできたコポリマー、
である。
異なるエチレン性不飽和カルボン酸のコポリマー、並びにエチレン性不飽和カルボン酸と他のコモノマーとでできたコポリマーでは、エチレン性不飽和カルボン酸から誘導された式(I)の構造単位は、ブロック状、交互状またはランダム状に分布することができる。
本発明において好ましいポリ(カルボン酸)(A)は、それぞれの場合にポリ(スチレンスルホン酸)標準に対してゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定して、700g/モルを超える数平均分子量、特に好ましくは1,000〜500,000g/モル、特に2,000〜300,000g/モル、例えば2,500〜100,000g/モルの数平均分子量を有する。更に好ましくは、該ポリ(ポリカルボン酸)(A)は、ポリマー鎖あたり平均して少なくとも10個、特に少なくとも20個、例えば50〜8,000個のカルボキシル基を含む。これらは、ポリマー鎖当たり、式(I)の構造単位を好ましくは少なくとも20個、特に少なくとも50個含む。
第一の好ましい実施形態の一つでは、R4は脂肪族基を表す。これは、好ましくはC原子数が2〜50、特に好ましくは3〜24、就中4〜20である。この脂肪族基は線状、分枝状または環状であることができる。これは更に飽和または不飽和であることができ、好ましくは飽和である。この炭化水素残基は、置換基、例えばハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、C1〜C5アルコキシアルキル基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基及び/またはC5〜C20アリール基、例えばフェニル基を有することができる。前記C5〜C20アリール基は、それらが場合によっては、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C1〜C5アルコキシ基、例えばメトキシ基、エステル基、アミド基、シアノ基、ニトリル基及び/またはニトロ基で置換されていることができる。特に好ましい脂肪族基は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル及びtert.−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル及びメチルフェニルである。
更に別の好ましい実施形態の一つでは、R4は、場合により置換されたC6〜C12アリール基または場合により置換された環員数5〜12のヘテロ芳香族基を表す。好ましいヘテロ原子は、酸素、窒素及び硫黄である。このC6〜C12アリール基または環員数5〜12のヘテロ芳香族基には、更に別の環が縮合していることができる。それ故、前記アリールまたはヘテロ芳香族基は、単環式または多環式であることができる。適当な置換基の例は、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、並びにアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ニトリル基及びニトロ基である。
アルコール(B)では、基R4は、一つまたはそれ超の、例えば二つ、三つ、四つまたはそれ超の更なるヒドロキシル基を有するが、基R4がC原子を有する数を超えてのヒドロキシル基またはアリール基が価数を有する数を超えてのヒドロキシル基は持たない。これらのヒドロキシル基は、隣接するC原子に、または炭化水素基の他の除去された炭素原子に結合することができ、ただし炭素原子一つあたり多くとも一つのOH基である。
具体的な実施形態の一つでは、nは2〜6の数を表す。
それで、本発明の方法は、ポリオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリトリトール、フルクトース及びグルコースによるポリ(カルボン酸)(A)のエステル化にも適している。ポリオールでのエステル化の時は、架橋反応が起こることがあり、これは分子量の大きな増大を招く。このような重縮合では、マイクロ波照射の間に上昇する反応混合物の粘度を、装置の設計において留意するべきである。格別好ましい実施形態の一つでは、アルコールは一つのヒドロキシル基を有する、すなわちnは1を表す。
更に別の好ましい実施形態の一つでは、R4は、ヘテロ原子が割り込んだアルキル基を表す。特に好ましいヘテロ原子は酸素及び窒素である。しかし、基R4が窒素原子を含む場合には、これらの窒素原子は酸性プロトンを持たない。
それで、R4は、好ましくは、以下の式(III)の基を表す。
−(R5−O)m−R6 (III)
式中、
R5は、C原子数2〜18、好ましくはC原子数2〜12、特に2〜4のアルキレン基、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはこれらの混合物を表し、
R6は、水素、C原子数1〜24の炭化水素残基、式−C(=O)−R9のアシル基(R9はC原子数1〜50の炭化水素残基を表す)、または式−R5−NR7R8の基を表し、
mは、1〜500、好ましくは2〜200、特に3〜50、例えば4〜20の数を表し、そして
R7、R8は、互いに独立して、C原子数1〜24、好ましくはC原子数2〜18の脂肪族基、環員数5〜12のアリールもしくはヘテロアリール基、ポリ(オキシアルキレン)単位数1〜50のポリ(オキシアルキレン)基(ここで、ポリオキシアルキレン単位はC原子数2〜6のアルキンオキシド単位から誘導される)を表すか、あるいはR7とR8は、それらが結合する窒素原子と一緒に、環員数4、5、6またはそれ超の環を形成する。
本発明において好適な式(III)のポリエーテルは、例えば、式R4−OHのアルコールまたは式R9−COOHの脂肪酸を2〜100モルのエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはこれらの混合物でアルコキシル化することによって得ることができる。好ましいポリエーテルは、300〜7,000g/モル、特に好ましくは500〜5,000g/モル、例えば800〜2,500g/モルの分子量を有する。R4が式(III)の基を表す場合には、nは1である。
適当なアルコール(B)の例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert.−ブタノール、ペンタノール、ネオペンタノール、n−ヘキサノール、iso−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、フェノール、ナフトール及びこれらの混合物である。更に別の好適なものは、天然原料から得られる脂肪アルコール混合物、例えばココ脂肪アルコール、パーム核脂肪アルコール及びタロー脂肪アルコール、並びにアルキレンオキシドとのこれらの反応生成物である。
本発明の方法においては、ポリ(カルボン酸)(A)及びアルコール(B)は、一般的に任意の比率で互いに反応させることができる。好ましくは、反応は、それぞれカルボキシル基とヒドロキシル基の当量を基準にして、ポリ(カルボン酸)(A)のカルボキシル基とアルコール(B)のヒドロキシル基との間のモル比を100:1〜1:5、好ましくは10:1〜1:1、就中5:1〜2:1として行われる。アルコールを過剰に使用する場合または完全に反応させない場合には、それの一部が未反応のままポリマー中に残り、これは、使用目的に応じて生成物中に残すかまたは分離することができる。この方法は、使用するアルコールが易揮発性であるかまたは水溶性の場合に特に有利である。ここで易揮発性とは、アルコールが、常圧で好ましくは250℃未満、例えば150℃未満の沸点を有し、それ故、場合によっては溶剤と一緒に、エステルから分離できることを言う。これは、例えば、蒸留、相分離または抽出を用いて行うことができる。ポリマーのカルボキシル基に対するヒドロキシル基の比率によって、変性度、それ故、生成物の性質を調節することができる。
本発明の方法は、ポリ(カルボン酸)(A)の部分的なエステル化に特に好ましく適している。この際、アルコール(B)は、カルボキシル基の総数を基準に、不足化学理論量で、特に1:100〜1:2の比率、就中1:50〜1:5の比率、例えば1:20〜1:8の比率で使用される。この際好ましくは、反応条件は、使用したアルコール(B)の少なくとも10モル%、特に20〜100モル%、就中25〜80モル%、例えば30〜70モル%が反応するように調節される。この部分的なエステル化では、非常に均一な生成物が生成し、これは、均一な溶解性に現れる。
ポリ(カルボン酸)(A)、アルコール(B)、水、水と混合可能な溶剤、並びに場合により更に別の助剤、例えば乳化剤、触媒及び/または電解質を含む、本発明の方法に使用される反応混合物の製造は、様々な方法で行うことができる。ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との混合は、連続的に、断続的にまたは半バッチプロセスで行うことができる。工業規模での方法のためには特に、原料を本発明の方法に液状の形態で供給することが有利であることが判明した。このためには、ポリ(カルボン酸)(A)は、好ましくは、水中の溶液として、または水及び水と混合可能な溶剤中の溶液として、本発明の方法に供給される。ポリ(カルボン酸)(A)は、ポンプ輸送が可能な場合に限り、ふやかした形態で使用することもできる。
アルコール(B)は、それが液状であるかまたは低温で、好ましくは150℃未満、特に100℃未満の温度で溶融可能である場合には、そのまま使用することができる。多くの場合に、アルコール(B)は、場合により溶融した状態で、水と及び/または水と混合可能な溶剤と混合して、例えば溶液、分散液またはエマルションとして使用することが有効であることが分かった。
ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との混合は、例えば別個の攪拌容器中で、各構成分を連続して装入することによって(半)バッチ式プロセスで行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、アルコール(B)は、水と混合可能な有機溶剤中に溶解し、次いで既に溶解もしくは膨潤したポリマーに加える。好ましくは、一方ではアルコールの均一な分布を保証し、他方で計量添加箇所へのポリマーの局所的な析出を避けるために、添加は、少しずつ比較的長い時間をかけて攪拌下に行われる。
特に好ましくは、ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)または上述したような溶液または分散物、場合によっては並びに更に別の助剤との混合は、混合区域で行い、そこから、反応混合物を、場合により中間冷却の後に、反応区域に運搬する。
触媒並びに更に別の助剤を使用する場合には、これらは、反応区域に入れる前に、反応体または反応体混合物に加えることができる。不均一システムも本発明の方法に従い反応させることができ、この場合は、反応物を搬送するための然るべき技術的装置が必要なだけである。
好ましくは、反応混合物は、水、及び水と混合可能な一種またはそれ超の有機溶剤からなる溶剤混合物を10〜99重量%、特に好ましくは20〜95重量%、特に25〜90重量%、例えば50〜80重量%含む。各々の場合に、反応体A及びBには、マイクロ波の照射の前に水を加えて、反応生成物が、エステル化の時に放出される反応水の量を超える量の水を含むようにする。
好ましい水と混合可能な有機溶剤は、極性プロトン性または極性非プロトン性液体である。好ましくは、これらは、25℃で測定して少なくとも12,特に少なくとも15の誘電率を有する。好ましい溶剤は、水中に少なくとも100g/L、特に好ましくは少なくとも200g/L、特に少なくとも500g/Lの程度で可溶性であり、特にこれらは水と完全に混合可能である。溶剤として特に好ましいものは、ヘテロ脂肪族化合物、特にアルコール、ケトン、末端キャップ型ポリエーテル、カルボン酸アミド、例えば第三カルボン酸アミド、ニトリル、スルホキシド並びにスルホンである。好ましい非プロトン性溶剤は、例えばホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトン、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルホラン及びジメチルスルホキシド(DMSO)である。好ましいプロトン性有機溶剤は、C原子数1〜10、特にC原子数2〜5の低級アルコールである。適当なアルコールの例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert.−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、2−メチル−2−ブタノール、エチレングリコール及びグリセリンである。特に好ましくは、第二及び第三アルコールが低級アルコールとして使用される。特に好ましいものは、C原子数が3〜5の第二及び第三アルコール、例えばiso−プロパノール、sec−ブタノール、2−ペンタノール及び2−メチル−2−ブタノール並びにネオペンチルアルコールである。上記の溶剤の混合物も本発明に従い好適である。
一般的に、水と混合可能な有機溶剤としては低沸点液体が好ましく、特に常圧で150℃未満、特に120℃未満、例えば100℃未満の沸点を有し、それ故少ない手間で反応生成物から再び除去できるものが好ましい。高沸点溶剤は、これらが、変性されたポリマーの更なる使用のために生成物中に残留し得る時に特に有効であることが分かった。溶剤混合物における水と混合可能な有機溶剤の割合は、それぞれ溶剤混合物の重量を基準にして好ましくは1〜60重量%、特に好ましくは2〜50重量%、特に5〜40重量%、例えば10〜30重量%である。水は、合計を100重量%にする量で溶剤混合物中に含まれる。
具体的な実施形態の一つでは、アルコール(B)は、同時に、水と混合可能な有機溶剤としても機能することができる。この実施形態では、好ましくは、低級第一アルコールが有効であることが判明した。ここで好ましい低級第一アルコールは、1〜10個のC原子、特に2〜5個のC原子を有する。この実施形態では、溶剤混合物中での低級アルコールの割合は、それぞれ溶剤混合物の重量を基準にして、好ましくは1〜60重量%、特に好ましくは2〜50重量%、特に5〜40重量%、例えば10〜30重量%である。水は、溶剤混合物中に合計を100重量%にする量で含まれる。
使用する反応混合物の粘度を更に低下させるために及び/または本発明の方法の過程で生ずる等重合度変性ポリマーの溶液の粘度を更に低下させるためには、反応混合物に電解質を加えることが多くの場合に有効であることが判明した。この際好ましいものは、濃度に左右されずに完全に解離して存在する強電解質が好ましい。好ましい強電解質は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩、例えばそれらの塩化物、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩及び炭酸水素塩である。好ましい強電解質の例は、NaCl、KCl、Na2CO3、Na2SO4及びMgSO4である。電解質の添加によって、反応媒体の誘電損が同時に高められて、単位時間または単位体積当たりより多くのエネルギーを反応混合物にカップリングすることができるようになる。本発明の連続的な方法には、これは、単位時間当たりで転化できる量の増加を意味する。なぜならば、流量の増加(及び同時に入射されるマイクロ波エネルギーの増加)の下に、より多量の反応混合物を、反応区域において所望の温度に加熱できるからである。
水中へのまたは水及び水と混合可能な有機溶剤からなる混合物中への溶解性が限られたアルコール(B)を使用する時には、好ましい実施形態の一つでは一種またはそれ超の乳化剤を反応混合物に加えることができる。この際、好ましくは、反応体及び生成物に対して化学的に不活性の乳化剤が使用される。特に好ましい実施形態の一つでは、乳化剤は、別の製造からの反応生成物である。
好ましい実施形態の一つでは、各反応体は、望ましい量比において、それぞれ別個の容器から反応区域に供給される。具体的な実施形態の一つでは、反応体は、反応区域に入る前に及び/または反応区域自体中で、適当な混合要素、例えばスタティックミキサー及び/またはアルキメデス螺旋体を用いて及び/または多孔性発泡体に貫流させることによって、更にホモジナイズする。
ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との反応は、本発明に従い、反応区域中でマイクロ波放射線の影響下に行われる。反応区域は、少なくとも一つの容器(そこで反応混合物がマイクロ波放射線に曝される(照射域))、場合により並びに、流れ方向でそれに後続する等温反応区域(そこで反応を完遂することができる)を含む。最も簡単なケースでは、反応区域は照射域からなる。照射域では、反応混合物は、マイクロ波放射線によって好ましくは110℃を超える温度、特に好ましくは120〜320℃の温度、特に130〜260℃の温度、特に140〜240℃の温度、例えば150〜220℃の温度に加熱される。これらの温度は、マイクロ波照射の間に達成される最大温度のことである。温度は、例えば照射容器の表面のところで測定することができる。好ましくは、温度は、照射域を出た直後に反応物について測定される。圧力は、反応混合物が液体の状態に留まって沸騰しない高さに反応区域において調節することが好ましい。好ましくは、1barを超える圧力、好ましくは3〜300barの圧力、特に好ましくは5〜200barの圧力、特に10〜100barの圧力、例えば15〜50barの圧力で作業する。
ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との反応を加速または完遂するためには、酸性触媒の存在下に作業することが多くの場合に有利であることが分かった。本発明において好ましい触媒は、酸性の無機、有機金属または有機触媒あるいは複数種のこのような触媒の混合物である。好ましい触媒は、液状である及び/または反応混合物中に可溶性である。
本発明の意味において酸性無機触媒としては、例えば硫酸、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、ミョウバン、酸性シリカゲル及び酸性水酸化アルミニウムが挙げられる。更に、例えば、一般式Al(OR15)3のアルミニウム化合物及び一般式Ti(OR15)4のチタネートが酸性無機触媒として使用可能であり、ここで、基R15は、それぞれ同一かもしくは異なることができ、そして互いに独立して、C1−C10−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec.−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、sec.−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニルもしくはn−デシル、C3−C12−シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシルから選択され;好ましいものは、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。好ましくは、Al(OR15)3、Ti(OR15)4中の基R15は、それぞれ同一であり、イソプロピル、ブチル及び2−エチルヘキシルから選択される。
好ましい酸性有機金属触媒は、例えば、ジアルキルスズオキシド(R15)2SnO(式中、R15は上記に定義した通りである)から選択される。酸性有機金属触媒の特に好ましい代表物の一つは、ジ−n−ブチルスズオキシドであり、これはいわゆるオキソ−スズとしてまたはFascat(登録商標)ブランドとして商業的に入手することができる。
好ましい酸性有機触媒は、例えばスルホン酸基またはホスホン酸基を有する、酸性有機化合物である。特に好ましいスルホン酸は、少なくとも一つのスルホン酸基と、C原子数が1〜40、好ましくはC原子数が3〜24の飽和もしくは不飽和で線状、分枝状及び/または環状の少なくとも一つの炭化水素残基とを含む。特に好ましいものは、芳香族スルホン酸、特に一つもしくはそれ超のC1〜C28アルキル基、特に一つまたはそれ超のC3〜C22アルキル基を有するアルキル芳香族モノスルホン酸である。適当な例は、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、2−メシチレンスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、4−ブチルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸;ドデシルベンゼンスルホン酸、ジドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸である。
本発明方法の実施に特に好ましいものは酸性有機触媒、特にメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸である。
酸性の無機、有機金属または有機触媒を使用したい場合には、本発明では0.01〜10重量%、好ましくは0.02〜2重量%の触媒が使用される。
更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波照射は、酸性及び固形でかつ反応媒体中に溶解しないかまたは完全には溶解しない触媒の存在下に行われる。このような不均一系触媒は、反応混合物中に懸濁し、そして反応混合物と一緒にマイクロ波照射に曝すことができる。特に好ましい連続式実施形態の一つでは、場合により溶剤と混合される反応混合物は、反応区域中に、特に照射域中に固定された固定床触媒を通して導かれ、そこでマイクロ波放射線に曝される。適当な固形触媒は、例えばゼオライト類、シリカゲル、モンモリロナイト及び(部分)架橋されたポリスチレンスルホン酸であり、これらは触媒活性金属塩で含浸することができる。固定相触媒として使用することができるポリスチレンスルホン酸をベースとする適当な酸性イオン交換体は、例えば、Rohm & Haas社からAmberlyst(登録商標)の商品名で入手することができる。
多くの場合に、マイクロ波照射の後は反応混合物は更なる使用に直接供給することができる。溶剤不含の生成物を得るためには、水及び/または有機溶剤を、通常の分離方法、例えば蒸留、凍結乾燥または吸着によって粗製生成物から分離することができる。この際、過剰に使用されたアルコール、場合によっては並びに未反応のアルコールの残量も一緒に分離することもできる。特定の要求のためには、粗製生成物は、通常の精製方法、例えば洗浄、再析出、濾過、透析またはクロマトグラフィ法により更に精製することができる。
マイクロ波照射は、通常は、マイクロ波に対し非常に高い透過性を示す材料でできた照射容器を備えた装置中で行われ、前記照射容器中に、マイクロ波発生器中で発生させたマイクロ波放射線がカップリングされる。マグネトロン、クライストロン及びジャイロトロンなどのマイクロ波発生器が当業者に知られている。
本発明方法の実行に使用される照射容器は、好ましくは、マイクロ波に対しほぼ透明な高融点の材料から作られるか、またはこのような材料でできた部材、例えば窓を少なくとも含む。特に好ましくは、非金属製の照射容器が使用される。ここで、マイクロ波に対しほぼ透明とは、できるだけ少ないマイクロ波エネルギーを吸収しそして熱に変換する原材料と解される。マイクロ波エネルギーを吸収してこれを熱に変える物質の能力の目安としては、しばしば、誘電損失率tanδ=ε’’/ε’が用いられる。誘電損失率tanδは、誘電損失ε’’と誘電率ε’との比率と定義される。様々な材料のtanδ値の例は、例えばD.Bogdal,Microwave−assisted Organic Synthesis,Elsevier 2005(非特許文献4)に記載されている。本発明において適した照射容器には、2.45GHz及び25℃で測定して、0.01未満のtanδ値、特に0.005未満、就中0.001未満のtanδ値を有する材料が好ましい。マイクロ波に対し透明でかつ温度安定性の好ましい材料としては、先ず第一には、鉱物ベースの原材料、例えば石英、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素及び類似物が考慮される。温度安定性のプラスチック、例えば特にフルオロポリマー、例えばテフロン、及びエンジニアリングプラスチック、例えばポリプロピレン、またはポリアリールエーテルケトン、例えばガラス繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)も容器材料として適している。反応中の温度条件に耐えるためには、特に上記のプラスチックでコーティングされた鉱物、例えば石英または酸化アルミニウムが容器材料として有効であることが判明した。
約1cm〜1mの波長及び約300MHz〜30GHzの周波数を有する電磁放射線がマイクロ波と称される。原則的にこの周波数範囲が本発明方法に適している。好ましくは、本発明方法には、工業用、学術用、医学用の用途に許可されている周波数を有するマイクロ波放射線、例えば915MHz、2.45GHz、5.8GHzまたは24.12GHzの周波数を有するマイクロ波放射線が使用される。反応混合物のマイクロ波照射は、モノモードまたは疑似モノモードで作動するマイクロ波アプリケーター、並びにマルチモードで作動するマイクロ波アプリケーター中で行うことができる。相当する装置は当業者には既知である。
本発明方法の実施のために照射容器中に入射するべきマイクロ波出力は、特に、目的とする反応温度、照射容器の形状、それに伴う反応容積、並びに照射容器を通る際の反応物の流速に依存する。これは、通常は、100W〜数100kW、特に200W〜100kW、例えば500W〜70kWである。これは、照射容器の一つまたはそれ超の箇所で適用することができる。これは、一つまたはそれ超のマイクロ波発生器を介して発生させることができる。
マイクロ波照射時間は、様々なファクター、例えば反応容積、照射容器の形状、反応温度での反応混合物の所望の滞留時間、並びに所望とする転化率などに依存する。通常は、マイクロ波照射は、30分間未満の期間にわたって、好ましくは0.01秒間〜15分間、特に好ましくは0.1秒間〜10分間、特に1秒間〜5分間、例えば5秒間〜2分間の期間にわたって行われる。この際、マイクロ波放射線の強度(出力)は、反応物ができるだけ短い時間、目的の反応温度に達するように調節される。本発明方法の更に別の好ましい実施形態の一つでは、反応混合物を加温した形態で照射容器に供給することが有用であることが分かった。反応温度を保持するためには、反応物を、低めた及び/またはパルス状の出力で更に照射するかまたはその他の方法で温度を維持することができる。好ましい実施形態の一つでは、反応生成物は、マイクロ波照射の終了後直後に、できるだけ早く100℃未満の温度、好ましくは80℃未満の温度、就中50℃未満の温度に冷却する。
マイクロ波照射は、以下に反応管とも称する、照射容器として働く流通管中で行われるのが好ましい。これは、更に、半バッチプロセスで、例えば連続作動式攪拌反応器またはカスケード型反応器中で行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、反応は、密閉式の耐圧性でかつ化学的に不活性の容器中で行われ、この際、水、場合によっては並びにアルコール(B)、及び水と混合可能な溶剤が、圧力上昇を招く。反応の終了後、過剰圧は、放圧によって、水、有機溶剤、場合により並びに過剰のアルコール(B)の気化及び分離に、及び/または反応生成物の冷却に利用することができる。特に好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波照射の終了後にまたは照射容器を出た後に、できるだけ早いうちに水及び場合により存在する触媒活性種を反応混合物から除いて、生成したエステルの加水分解を防ぐようにする。水及び有機溶剤は、通常の分離方法、例えば凍結乾燥、蒸留または吸着によって分離することができる。
本発明方法の特に好ましい実施形態の一つでは、反応混合物は、耐圧性で、反応体に対し不活性で、マイクロ波に対しほぼ透明でかつマイクロ波アプリケーター中に取り付けられた、照射区域として役立つ反応管中を連続的に導通させる。この反応管は、好ましくは、1ミリメータ〜約50cm、就中2mm〜35cm、例えば5mm〜15cmの直径を有する。特に好ましくは、反応管の直径は、照射される反応物中へのマイクロ波の侵入深さよりも短い。特に、これは、侵入深さの1〜70%、特に5〜60%、例えば10〜50%である。ここで侵入深さとは、入射されるマイクロ波エネルギーが1/eに弱められる距離のことと解される。
ここで流通管または反応管とは、照射区域(これは、反応物がマイクロ波放射線に曝されるところの流通管の部分のことである)の直径に対する長さの比率が、5超、好ましくは10〜100,000、特に好ましくは20〜10,000、例えば30〜1,000である照射容器のことと解される。流通管または反応管は、例えば、真っ直ぐにまたは湾曲してあるいは蛇管として形成することができる。具体的な実施形態の一つでは、反応管は、ダブルジャケット管の形態に構成され、その内部または外部空間を介して反応混合物を次々に向流で流通させることができて、そうして例えば該方法の温度制御及びエネルギー効率を高めることができる。この際、反応管の長さとは、マイクロ波場において反応混合物によって貫流される距離全体と解される。反応管は、その長さに沿って、少なくとも一つ、しかし好ましくは複数の、例えば二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つまたはそれ超のマイクロ波放射器で囲まれる。マイクロ波の入射は、好ましくは、管ジャケットを介して行われる。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波入射は、少なくつとも一つのアンテナを用いて管末端を介して行われる。
反応区域は、通常は、その入口に計量添加ポンプ及びマノメータ、及びその出口に圧力保持装置及び熱交換器を備える。好ましくは、反応混合物は、100℃未満の温度、例えば10℃〜90℃の温度を持つ液状の形態で反応区域に供給される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、ポリマー(A)とアルコール(B)との溶液を、反応区域に入る少し前になって初めて、場合により適当な混合要素、例えばスタティックミキサー及び/またはアルキメデス螺旋体及び/または多孔性発泡体の貫流を利用して、混合する。更に別の好ましい実施形態の一つでは、前記溶液は、反応区域中で、適当な混合要素、例えばスタティックミキサー及び/またはアルキメデス螺旋体及び/または多孔性発泡体の貫流により更にホモジナイズする。
管の横断面、照射域の長さ、流速、マイクロ波放射器の形状、入射されるマイクロ波出力並びにその際達する温度を変えることによって、最大の反応温度が可能な限り速く達成されるように反応条件を調節する。好ましい実施形態の一つでは、最大温度時の滞留時間は、なるべく少ない副生成物または二次生成物が生じるように、短く選択される。
好ましくは、連続式マイクロ波反応器はモノモードまたは疑似モノモードで稼働される。この際、照射域中での反応物の滞留時間は、一般的に20分間未満、好ましくは0.01秒間〜10分間、好ましくは0.1秒間〜5分間、例えば1秒間〜3分間である。反応物は、反応を完遂するために、場合により中間冷却の後に、複数回にわたり照射域に流通させることができる。
特に好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波での反応物の照射は、モノモードマイクロ波アプリケーター内においてマイクロ波の伝播方向に長軸がある反応管中で行われる。この際、好ましくは、照射域の長さは、少なくとも波長の半分、特に好ましくは、入射するマイクロ波放射線の波長の少なくとも1倍及び20倍まで、特に2〜15倍、例えば3〜10倍である。このような形状を持って、管の長軸に対して並行に伝播するマイクロ波の複数の、例えば二つ、三つ、四つ、五つ、六つまたはそれ超の相次いて続く最大からのエネルギーを反応物に伝達することができ、これは、該方法のエネルギー効率を大きく改善する。
マイクロ波による反応物の照射は、好ましくは、マイクロ波に対してほぼ透明の直線状の反応管中で行われ、ここでこの反応管は、マイクロ波発生器に接続されておりかつマイクロ波アプリケーターとして機能する中空導体中にある。好ましくは、反応管は、中空導体の中央対称軸と軸状に整列される。中空導体は、好ましくは空洞共振器として構成される。好ましくは、空洞共振器の長さは、その中に定常波が生ずるように寸法決めされる。更に、好ましくは、中空導体に吸収されないマイクロ波はそれの端部で反射される。反射タイプの共振器としてマイクロ波アプリケーターを構成することによって、発生器から供給される同じ出力での電場強度の局所的強化、及び高められたエネルギー利用が達成される。
空洞共振器は、好ましくはE01n−モードで稼働され、ここでnは整数を表し、共振器の中央対称軸に沿うマイクロ波の電場最大点の数を示す。この稼働の際、電場は、空洞共振器の中央対称軸の方向に方向づけされる。これは、中央対称軸の範囲おいて最大を有し、そしてジャケット面に向かうにつれて0の値まで減少する。この場の形態は、中央対称軸の周りに回転対称的に存在する。nが整数である長さを有する空洞共振器を使用することによって、定常波の形成が可能となる。反応管中を流れる反応物の所望の流速、必要な温度、及び共振器中での必要な滞留時間に応じて、共振器の長さが、使用されるマイクロ波放射線の波長に相対して選択される。好ましくは、nは1〜200の整数、特に好ましくは2〜100の整数、特に3〜50の整数、就中4〜20の整数、例えば3、4、5、6、7、8、9または10である。空洞共振器のE01n−モードは、英語ではTM01n−モード(transversal−magnetisch)とも称される。例えば、K.Lange,K.H.Loecherer,Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”,第2巻,K21頁以降(非特許文献5)を参照されたい。
マイクロ波アプリケーターとして機能する中空導体中へのマイクロ波エネルギーの入射は、適当な寸法のホールまたはスリットを介して行うことができる。本発明方法の具体的な実施形態の一つでは、マイクロ波による反応物の照射は、マイクロ波の同軸変換(koaxialem Uebergang)を備えた中空導体中に存在する反応管中で行われる。この方法に特に好ましいマイクロ波装置は、空洞共振器、マイクロ波場を中空共振器にカップリングするためのカップリングデバイス、及び共振器に反応管を通すための二つの相対する末端壁上のそれぞれの一つの開口から構成される。空洞共振器中へのマイクロ波のカップリングは、好ましくは、空洞共振器中に突出するカップリングピンを介して行われる。好ましくは、カップリングピンは、カップリングアンテナとして機能する、好ましくは金属製の内部導体管として構成される。特に好ましい実施形態の一つでは、このカップリングピンは、末端開口部の一つを通って空洞共振器中に突出する。特に好ましくは、反応管は、同軸変換器の内部導体管に接続し、そして特にはそれの空洞を通って空洞共振器中に通される。好ましくは、反応管は、空洞共振器の中央対称軸と軸状に整列される。このためには、空洞共振器は、好ましくは、反応管を通すために相対する二つの末端壁上にそれぞれ一つの中央開口を有する。
カップリングピン中へのまたはカップリングアンテナとして機能する内部導体管中へのマイクロ波の伝送は、例えば、同軸線路を用いて行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波場は中空導体を介して共振器に伝送され、この際、空洞共振器から突出するカップリングピンの末端が、中空導体の壁中に存在する開口を介して中空導体中へ通じており、そして中空導体からマイクロ波エネルギーが取り出されてそして共振器中にカップリングされる。
具体的な実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を有するE01n円形中空導体中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われる。この際、反応管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞を通して空洞共振器中に通される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送(axialer Einspeisung)を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ超の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、ここで空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ超の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ超の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対し透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ超の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。
本発明の方法に特に適したE01空洞共振器は、好ましくは、使用するマイクロ波放射線の少なくとも半分の波長に相当する直径を有する。好ましくは、空洞共振器の直径は、使用するマイクロ波放射線の半分の波長の1.0〜10倍、特に好ましくは1.1〜5倍、特に2.1〜2.6倍である。好ましくは、E01空洞共振器は丸い横断面を有し、これはE01円形中空導体とも称される。特に好ましくは、これは筒状の形状を有し、特に円筒状の形状を有する。
反応混合物の反応は、照射域を出たときには、多くの場合に未だ化学平衡にない。それ故、好ましい実施形態の一つでは、反応混合物は、照射域を通った後に直接、すなわち中間冷却無しで、等温反応区域に移し、そこで、或る一定期間、更に反応温度に維持される。等温反応区域を出てから初めて、反応混合物を場合により放圧しそして冷却する。照射域から等温反応区域への直接的な移送とは、照射域と等温反応区域との間に、熱の供給及び特に排除のための有効な措置が講じられないことと解される。好ましくは、照射域から出た時と、等温反応区域に入るまでの温度差は、±30℃未満、好ましくは±20℃未満、特に好ましくは±10℃未満、特に±5℃未満である。具体的な実施形態の一つでは、等温反応区域に入る時の反応物の温度は、照射域を出る時の温度に一致する。この実施態様は、部分的な過熱を起こすことなく反応物を所望の反応温度まで迅速にかつ的確に加熱すること、及びそれ故、それが冷却される前に定義された期間にわたってその反応温度で滞留することを可能にする。この実施形態では、反応物は、好ましくは、等温反応域を出た直後にできるだけ早く120℃未満、好ましくは100℃未満、特に60℃未満の温度に冷却する。
等温反応区域としては、照射域で調節された温度での反応混合物の滞留を可能にするものであれば、全ての化学的に不活性な容器が考慮される。等温反応区域とは、等温反応区域での反応物の温度を、入口温度に対して、±30℃、好ましくは±20℃、特に好ましくは±10℃、特に±5℃に一定に維持するものと解される。それにより、等温反応区域を出る時の反応物は、等温反応区域に入る時の温度から最大でも±30℃、好ましくは±20℃、特に好ましくは±10℃、特に±5℃しか異ならない温度を有する。
連続的に稼働する攪拌容器及び容器カスケードの他に、特に管が等温反応区域として適している。この反応区域は様々な材料、例えば金属、セラミック、ガラス、石英、またはプラスチックからなることができ、但し、これらが、選択された温度及び圧力条件において、機械的に安定しておりかつ化学的に不活性であることを条件とする。この際、断熱性の容器が特に有効であることが分かった。等温反応区域での反応物の滞留時間は、例えば、等温反応区域の体積によって調節することができる。攪拌容器及び容器カスケードの使用の際は、滞留時間は、容器の充填度によって調節することが同様に有効であることが分かった。好ましい実施形態の一つでは、等温反応区域には、能動的または受動的混合要素が備えられている。
好ましい実施形態の一つでは、等温反応区域として管が使用される。この際、これは、照射域と連続した形でのマイクロ波に対し透明な反応管の延長部分であるか、または反応管と接続されかつ同一のまたは異なる材料からなる別個の管であることができる。管の長さ及び/またはそれの断面を介して、所与の流速において、反応物の滞留時間を決めることができる。等温反応区域として機能する管は、最も簡単な場合では断熱性であり、それにより、等温反応区域に反応物が入る時に支配的な温度が、上記の範囲内で維持される。しかし、等温反応区域において、例えば熱媒体または冷却媒体を用いても、目的通りにエネルギーを反応物にまたは反応物から供給または排出することができる。この実施形態は、特に、装置もしくは方法の始動のために有効であることが分かった。それで、等温反応区域は、例えば、蛇管としてまたは管束として構成することができ、これらは、加熱または冷却浴中に存在するか、あるいはダブルジャケット管の形態で、加熱または冷却媒体が送り込まれている。等温反応区域は、他のマイクロ波アプリケーター中に存在することもでき、ここでは、反応物は再びマイクロ波で処理される。この際、モノモードまたはマルチモードで稼働するアプリケーターのどちらも使用できる。
等温反応区域中での反応物の滞留時間は、好ましくは、支配的な条件によって定義される熱平衡状態に達するように決められる。通常は、滞留時間は1秒間〜
10時間、好ましくは10秒間〜2時間、特に好ましくは20秒間〜60分間、例えば30秒間〜30分間である。更に好ましくは、等温反応区域中での反応物の滞留時間と照射域中での滞留時間との比率は1:2〜100:1、特に好ましくは1:1〜50:1、特に1:1.5〜10:1である。
特に高い転化率を達成するためには、得られた反応生成物を再びマイクロ波照射に曝すことが多くの場合に有効であることが分かった。この際、場合により、使用される反応体の比率を、消費されたもしくは不足の原料の分だけ補足することができる。
本発明の方法は、工業的に関心のもたれる量で連続的方法において、アルコールでの合成ポリ(カルボン酸)の等重合度変性を可能にする。この際、水の他には、廃棄する必要があって、環境の負荷となる副生成物は生じない。本発明方法の更に別の利点の一つは、等重合度縮合反応を水溶液中で行うことができるという事実にある。なぜならば、水は、ポリ(カルボン酸)にとって最も適した溶剤であり、加えて生態学的な観点からも有利であるからである。特定の極性有機溶剤を添加することによって、場合によりプロセスの過程で、疎水変性された構造単位の形成が始まることで生じる粘度の上昇に対して反対に作用することができ、そして水溶性が比較的低いアルコールとの反応も容易化される。そのため、連続的なプロセスでは反応混合物が照射域中を流動することが必要であるが、このような流動を保持するために特殊な搬送装置は必要ではない。このようにして、ポリ(カルボン酸)を、例えば疎水性にも、熱会合性にも変性することができる。特に、本発明の方法は、高分子量合成ポリ(カルボン酸)の部分的なエステル化に適している。というのも、該反応混合物は、ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との間の粘度及び溶解性の違いにもかかわらず、ポリマー(A)の全鎖長にわたって均一なアルコール(B)の分布をもたらすからである。この際、本発明の方法は、その鎖長に沿ってランダムに変性された生成物の再現性のある製造を可能にする。本発明方法のために工業的な量で利用可能なアルコールが多数あるということは、変性の可能性に大きな幅を開くものである。それ故、合成ポリ(カルボン酸)の性質を広い範囲で簡単に改良することができる。
マイクロ波での反応混合物の照射を、筒状空洞共振器(60×10cm)中に軸対称的に存在する酸化アルミニウムでできた反応管(60×1cm)中で行った。空洞共振器の末端側の一つのところで、上記の反応管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞中を通って延びていた。マグネトロンから発生される2.45GHzの周波数を有するマイクロ波場は、前記のカップリングアンテナを用いて空洞共振器中にカップリングし(E01空洞アプリケータ、モノモード)、ここで定常波が生じた。等温反応区域の使用の際には、加熱された反応混合物を、反応管を出た後直ぐに、断熱されたステンレススチール管(他に記載が無ければ3.0m×1cm)に通した。反応管を出た後または等温反応区域の使用の場合にはそれを出た後に、反応混合物を常圧に放圧し、その後直ぐに、強力熱交換器を用いて指定の温度に冷却しそして触媒を中和した。
マイクロ波の出力は、試験期間にわたりずっと、それぞれ、照射域の端部で反応物の所望の温度が一定に維持されるように調節された。それ故、試験の記載において挙げるマイクロ波出力は、入射されたマイクロ波出力の時間平均値を表す。反応混合物の温度測定は、照射域を出た後直ぐにPt100温度センサーを用いて行った。反応混合物によって直接吸収されないマイクロ波エネルギーは、カップリングアンテナとは反対側の空洞共振器末端で反射した。逆行時にも反応混合物に吸収されず、マグネトロンの方向に戻って反射するマイクロ波エネルギーは、プリズムシステム(サーキュレーター)を用いて、水を含む容器中に導いた。入射されたエネルギーとこの水負荷の加熱との差から、反応物中に取り入れられたマイクロ波エネルギーを計算した。
高圧ポンプ及び圧力逃し弁を用いて、全ての原料及び生成物もしくは縮合生成物を常に液状の状態に維持するのに十分な作業圧を、反応管中の反応混合物にかけた。反応混合物を、一定の流速で、装置中にポンプ輸送して通し、そして照射域中での滞留時間を流速を変更することによって調節した。
反応生成物の分析は、1H−NMR分光分析を用いてCDCl3中で500MHzで行った。
例1:メタノールでのポリ(アクリル酸)のエステル化
ガス導入管、攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、4kgの水中の2.0kgのポリ(アクリル酸)(分子量5,000g/モル)を仕込み、20gのp−トルエンスルホン酸と混合しそして40℃に加温した。この温度で、攪拌しながら10分間の期間にわたって、1kgのメタノール(ポリマーの酸官能基あたり1.1モルのメタノール)を加えた。
こうして得られた反応混合物を、35barの作業圧において、6L/hで連続的に、反応管中にポンプ輸送して通して2.5kWのマイクロ波出力に曝し、そのうち92%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約40秒間であった。反応管を出る時に、この反応混合物は235℃の温度を有し、そしてこの温度のまま等温反応区域に直接移した。等温反応区域の末端の所で、この反応混合物は221℃の温度を有した。この反応混合物は、反応区域を出た後直ぐに室温に冷却した。
反応生成物は、低粘度の均一で無色の溶液であった。溶剤を蒸留して除去した後に、粘性で吸湿性の材料が得られた。それのIRスペクトルは、エステルに特徴的な1735cm−1でのバンド、並びに1H−NMRスペクトルにおいて3.6ppmにメチルエステルに特徴的なシグナル(−CO−O−CH3)を示す。3.6ppmでのシグナルの積分値とポリアクリル酸の主鎖プロトン(−CH2−)及び(−CH−CO−)のシグナルの積分値とを比較することによって、35%のエステル化度が確定された。(触媒を考慮して)残留酸基をNaOHで滴定することによって、前記の値を正しいものと確認できた。予期し得るように、残留酸官能基の中和は、溶解性の明らかな向上をもたらす。このポリマーは、未中和の状態では水中では濁ってしか溶液にならないものの、少量のアルカリを添加した後には既に、直ぐに透明に溶解して、粘度の上昇もほぼ示さない。
例2:2−エチルヘキサノールでのポリ(アクリル酸)のエステル化
ガス導入管、攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、4kgの水中の2.0kgのポリ(アクリル酸、27.7モル)(分子量:1800g/モル)の溶液を仕込み、そして30gの硫酸と混合した。次いで、そして30℃に加温し、そしてこの温度下に、攪拌しながら1時間の期間にわたって、3kgのイソプロパノール中の1kgの2−エチルヘキサノール(7.7モル)の溶液を加えた。
こうして得られた反応混合物を、35barの作業圧において、5L/hで連続的に、反応管中にポンプ輸送して通して2.5kWのマイクロ波出力に曝し、そのうち90%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約48秒間であった。反応管を出る時に、この反応混合物は257℃の温度を有し、そしてこの温度のまま等温反応区域に直接移した。等温反応区域の末端の所で、この反応混合物は225℃の温度を有した。この反応混合物は、反応区域を出た後直ぐに室温に冷却し、そして苛性ソーダ溶液で触媒を中和した。
この反応生成物は、低粘度の淡黄色に着色された溶液であった。溶剤を蒸発して除去しそしてメタノールから再析出させた後に、粘性の材料が生じた。そのIRスペクトルは、1735cm−1でエステルに特徴的なバンドを、そして1H−NMRスペクトルでは0.9ppmに脂肪族−CH3基に特徴的なシグナルを示す。主鎖プロトンの積分値との比較により酸官能基の約13%の転化率が判明した。NaOHでの残留酸基の滴定によって、15モル%のエステル化度が確定された。
例3:メチル−テトラエチレングリコールでのポリ(アクリル酸)のエステル化
ガス導入管、攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、4kgの水中の2.0kgのポリ(アクリル酸)(分子量5,000g/モル)の溶液を仕込み、20gのメタンスルホン酸と混合し、そして35℃に加温した。この温度で、攪拌しながら1時間の期間にわたって、1kgのイソプロパノール中の1kgのメチル−テトラエチレングリコール(4.8モル)の溶液を加えた。
こうして得られた反応混合物を、33barの作業圧において、6.2L/hで連続的に、反応管中にポンプ輸送して通して2.3kWのマイクロ波出力に曝し、そのうち89%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約38秒間であった。反応管を出た時、この反応混合物は247℃の温度を有し、そしてこの温度のまま等温反応区域に直接移した。等温反応区域の末端で、この反応混合物は、234℃の温度を有した。この反応混合物を、反応区域を出たら直ぐに室温に冷却し、そして触媒を炭酸水素塩溶液で中和した。
この反応生成物は、淡黄色に着色された低粘性の溶液であった。溶剤を蒸留した除去しそして反応生成物をメタノール/アセトンから再析出すると、粘性で極めて粘着性の材料が生じた。それのIRスペクトルは、1735cm−1でエステルに特徴的なバンドを示す。未反応の酸基をNaOHで滴定することによって、カルボキシル基の8モル%のエステル化度が求められた。
例4:ココ脂肪アルコールエトキシレート(10EO)でのポリ(アクリル酸)のエステル化
ガス導入管、攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、4kgの水中の1.0kgのポリ(アクリル酸)(分子量50,000g/モル)の溶液を仕込み、15gのメタンスルホン酸と混合した。次いで、40℃において、攪拌しながら30分間の期間にわたって、2kgのイソプロパノール中の670gのココ脂肪アルコールエトキシレート(Genapol(登録商標)C100)約1モル)の溶液を加えた。
こうして得られた反応混合物を、35barの作業圧で5L/hで連続的に反応管中にポンプ輸送して通し、そして2.1kWのマイクロ波出力に曝した。そのうち93%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約48秒間であった。反応管を出た時に、反応混合物は227℃の温度を有し、そしてこの温度のまま直接、等温反応区域に移した。等温反応区域の端部において、この反応混合物は209℃の温度を有した。次いで、この反応混合物を炭酸ナトリウムで中和し、そして真空中で溶剤を除いた。ソックスレー装置を用いて、そのアリコート部について、ココ脂肪アルコールエトキシレートの未反応部分を沸騰t−ブタノールで抽出し、そして溶剤を除去した後に重量測定した。バッチの総量に換算すると、使用したココ脂肪アルコールエトキシレートの64%の転化率が求められた。
例5:水中での2−エチルヘキサノールによるポリ(アクリル酸)のエステル化試験(比較例)
試験2と同様に作業するが、有機溶剤は添加しなかった。初期仕込み物を強力に攪拌することによって、中程度の安定性を有する懸濁液だけが製造でき、これは、せん断終了後に再び直ぐに分離した。相分離が速いために、顕著な転化率は達成されなかった。
例6:水中でのメチル−テトラ(エチレングリコール)によるポリ(アクリル酸)のエステル化試験(比較例)
試験3と同様にして作業するが、有機溶剤は添加しなかった。反応混合物中に同等の有効物質濃度を調節するために、試験3で使用した溶剤の量を水に置き換えて、ポリ(アクリル酸)に加えた。55℃に加温したポリ(アクリル酸)溶液にメチル−テトラ(エチレングリコール)を添加すると、反応混合物の粘度が顕著に上昇したが、なおもポンプ輸送可能である。
マイクロ波放射線に曝された反応管中に反応混合物をポンプ輸送して通した時に、更なる大きな粘度上昇が起こり、これは、反応管の閉塞及び試験の中断を招いた。
本発明は、マイクロ波場中でポリマーの水溶液を等重合度エステル化(polymeranaloge Veresterung)することによって、酸基含有ポリマーを変性するための連続的な方法に関する。
疎水変性された水溶性合成ポリマーは、近年、益々工業的な重要性を増している。これらは、大概は、主として親水性基含有モノマーと小割合の疎水性基含有モノマーとから構成されるポリマーである。これらの水溶性ポリマーは、疎水性基の分子内及び/または分子間相互作用の故に水溶液中でミセル様構造をもって凝集する。そのため、疎水変成されたポリマーは、通常の水溶性ポリマーと比べて、低濃度において三次元網状構造を形成することによって粘度の上昇を引き起こし、この際、非常に大きいモル質量はこのためには必要ない。このような“会合性増粘剤”は、多くの工業的な用途における水性ベースの液体、または調合物、例えばペイント及びコーティング材、紙、掘削流体における調合物や石油生産での調合物のレオロジー性を効率よく制御する。これらのポリマーは、医薬用途または化粧料用途でも、例えばコロイド分散液、エマルション、リポゾームまたは(ナノ)パーティクルの安定化剤としても使用される。更に、これらは、顔料及び染料の分散剤としても使用され、この際、変性されたポリマーは、固体表面上に疎水性ポリマーセグメントが固定されることによって及び帯電した親水性基が体積相中に広がることによって、疎水性粒子の分散剤として働く。
疎水変性された水溶性ポリマーの特殊なケースはいわゆるLCST−ポリマー(下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature))であり、それの側鎖は温度が高まると水溶性を失い、それ故、温度上昇時にポリマーの凝集または析出を招く。この種のポリマーは、例えば石油の採掘の場合に、掘削泥水用添加剤として大きな関心が持たれる。
疎水変性水溶性合成ポリマーのレオロジー性は、例えば疎水性基の選択及び/または変性度の選択によって広い範囲で調節することができ、それ故、様々な分野に適合させることができる。
疎水会合性水溶性分子の一つの重要なグループは、疎水変性された合成ポリ(カルボン酸)である。これらは、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸と然るべき疎水性基含有モノマーとを共重合することによって製造することができる。この際、疎水性コモノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸のエステルが特に有用であることがわかっている。というのも、これらは、親水性モノマーに匹敵する共重合パラメータを有するためである。しかし、それらの工業的な利用可能性は、置換のバリエーションや数量に関して制限され、そしてそれらの合成は煩雑でコスト高である。通常は、これは、エチレン性不飽和カルボン酸の反応性誘導体、例えば酸無水物、酸塩化物または低級アルコールとのエステルとアルコールとの反応を介して行われ、この際、分離及び廃棄するべき副生成物が等モル量で生ずる。アルコールとエチレン性不飽和カルボン酸との直接的なエステル化、並びにその後の精製は、望ましくない不制御の重合を避けるために煩雑な措置を必要とする。更に、ランダムコポリマーの製造は、親水性及び疎水性モノマーの異なる溶解性の故に、しばしば困難性を招く。
代替的に、この種のポリマーは、工業的に多量に入手が可能な合成高分子量ポリ(カルボン酸)の等重合度反応によっても得ることができる。しかし、反応水を共沸させて除去しながらポリ(カルボン酸)をアルコールで直接縮合することは、通常は、有機溶剤中へのポリ(カルボン酸)の低い溶解性によって失敗に終わる。これは、通常は、非極性有機溶剤中に十分な溶解性を有するカルボン酸基含有コポリマーでしかうまくいかない。従来技術によると、ポリ(カルボン酸)とアルコールとの間のこの種の等重合度反応は、カップリング試薬、例えばN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いて行うことができる。この際に問題なのは、再び、方法に起因して生ずる副生成物並びに反応パートナーの異なる溶解性であり、これはしばしば不均一な生成物を招く。
カルボン酸エステルを合成するためのより新しい方策は、マイクロ波放射線の作用下でのエステルを生成するカルボン酸とアルコールとの直接的な反応である。その際、従来の方法とは対照的に、例えば酸塩化物、酸無水物、エステルまたはカップリング試薬を介したカルボン酸の活性化は必要ではない。このことは、この方法を経済的にかつエロコジー的に非常に興味深いものとする。
J.Org.Chem.56(1991),1313−1314(非特許文献1)は、マイクロ波放射線の作用下にプロパノールを酢酸でエステル化する時に反応速度が大きく加速されることを開示している。この際、反応体は、完全に互いに混合可能な液体である。
EP0437480(特許文献1)は、様々な化学反応を連続的に実施するための装置を開示している。この際、エステル化は過剰の反応体を溶剤として使用して行われる。
Macromolecular Chemistry and Physics 2008,209,1942−1947(非特許文献2)は、マイクロ波照射下に非極性溶剤中で酸基含有ポリ(エーテルスルホン)を1−ナフトールで等重合度エステル化することを開示している。
Macromol.Rapid Commun.2007,28,443−448(非特許文献3)は、20重量%のアクリル酸を含むポリ(エチレン−co−アクリル酸)をマイクロ波場中において様々なフェノール類でエステル化することを開示している。この際、過剰のフェノール類が溶剤として使用され、これはポリマーの析出を介して分離される。
JP2009/263497A(特許文献2)は、マイクロ波照射下でフマル酸とスチレンとのコポリマーをオクタノールでエステル化することを開示している。
EP−A−0134995(特許文献3)は、分子量500〜500,000のアクリル酸の重合体を、それぞれ1モル当たり20〜200モルのエチレンオキシドを含む脂肪酸またはアルキルフェノールのエトキシレートと、1:0.05〜0.5のモル比(a):(b)でエステル化し、及び反応混合物を200〜4000mPa.sの溶融粘度(120℃の温度でEpprechtプレート−コーン粘度計を用いて測定)まで縮合することによって製造された、アクリル酸の重合体の水溶性エステルを開示している。こうして得られた反応生成物は、水性系の増粘剤として及びポリ塩化ビニル用の滑剤として使用される。
US−2003/0021793(特許文献4)は、抗原に対する粘膜免疫応答の誘発または増強のための粘膜アジュバントの製造のための、水溶性ポリアニオン性ポリマーの使用を教示しており、この際、前記ポリアニオン性ポリマーは、二種の異なるアニオン性構造繰り返し単位からなり、ここで一方の単位はアクリル酸であり、そして他方の単位は、ビニルスルホン酸またはアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸から選択される。
EP−A−0992480(特許文献5)は、アクリル酸またはメタクリル酸と、モノヒドロキシもしくはポリヒドロキシ化合物とを、触媒及び重合開始剤の存在下に反応容器中で、溶剤の存在下または不存在下に、熱源としてのマイクロ波エネルギーの下に反応させることによって、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、ポリエステルアクリレートまたはポリエステルメタクリレートを製造するため改良された方法を教示している。
KARL G.KEMPF ET AL.,“A Procedure for Preparing Aryl Esters of Polyacids.The Conversion of Poly(methacrylic acid) to Poly(phenyl methacrylate)”,MACROMOLECULES Bd.11,Nr.5,1.September 1978(1978−09−01),1038−1041頁(非特許文献6)は、ポリ(メタクリル酸)とフェノール及びホスホリルクロライドとを反応させて、フェニルメタクレート及びメタクリル酸無水物からなるコポリマーとする方法を教示している。
しかしこれらの方法は、高分子量合成ポリ(カルボン酸)のエステル化には直接転用することはできない。高分子量合成ポリ(カルボン酸)は、室温で通常は固形の高粘性物質であり、これは、非極性溶剤、例えば脂肪族及び/または芳香族溶剤中に、並びに大概にエステル化に重要なアルコール中に溶解しない。それ故、エステル基をランダムな分布で有するポリマー鎖の部分的な変性に特に必要な、ポリ(カルボン酸)とアルコールとの均一な混合物の提供は、可能ではない
それに対して高分子量合成ポリ(カルボン酸)は水中に非常に良好に可溶性であるかまたは少なくとも膨潤可能であるが、この際、水は、通常は、縮合反応を実施するための適当な溶剤とは見なされない。加えて、工業規模での反応に必要な、高分子量合成ポリ(カルボン酸)の高濃縮された水溶液は非常に粘性が高く、等重合度反応の間に疎水性ドメインが生成することによって更に粘性が高まり得る。これは、一方では、アルコールとの均一な反応混合物の製造を困難にし、他方では例えば攪拌の時や、連続的プロセスでのポンプ輸送の時のそれの取り扱いを困難にする。しばしば、濃厚な溶液の搬送には強力なポンプでさえ十分ではなく、搬送装置、例えばスクリューまたはアルキメデス螺旋体などを用いて作業しなければならない。このような装置では、連続的に行われるマイクロ波援助反応の際には、機械的強度の他に、特別な要求、例えばマイクロ波透明性などがその素材に課せられ、それの遵守には大きな手間と高いコストが要求される。更に、このような機械的装置は、照射域の形状を制限する。
EP0437480
JP2009/263497A
EP−A−0134995
US−2003/0021793
EP−A−0992480
従って、合成ポリ(カルボン酸)の性質を簡単かつ低廉に工業的に関心が持たれる量で変性することができる、合成ポリ(カルボン酸)の等重合度変性のための連続的な方法を提供するという課題があった。この際、特に、反応混合物には、特殊な搬送装置の使用を必要とする高い粘度は生じるべきではない。製造されるポリマーの溶解性及び凝集挙動には、広い範囲で影響を及ぼし得るべきである。この際、一つの反応バッチ内で並びに異なる反応バッチ間でも一定した生成物の性質を達成するためには、変性はできるだけ均一に、すなわちポリマー全体にわたってランダムな分布で行われるべきである。この際更に、毒学的及び/または生態学的に懸念のもたれる副生成物は顕著な量で生じるべきではない。
驚くべきことに、合成ポリ(カルボン酸)が、水及びある種の水と混合可能な溶剤からなる溶液中で、アルコールと、マイクロ波の作用下に100℃を超える温度において、連続的な方法でエステル化できることが見出された。この方法の過程では、粘度は、もし高まったとしても微々たる程度にしか上昇しない。このようにして、ポリ(カルボン酸)を例えば疎水性に並びに熱会合性に変性することができる。このように変性されたポリマーの溶解性は、より大きな親水性もしくは疎水性ポリマーブロックの存在についての示唆を与えない。多数の様々なアルコールが低廉にかつ工業的な量で入手が可能であるため、合成ポリ(カルボン酸)の性質を広い範囲で変性することができる。この方法では、(反応水の他には)、分離及び廃棄すべき副生成物が生じない。
それ故、本発明の対象は、次式(I)
[式中、
R
1は、水素、C
1〜C
4アルキル基または式−CH
2−COOHの基を意味し、
R
2は、水素またはC
1〜C
4アルキル基を意味し、
R
3は、水素、C
1〜C
4アルキル基または−COOHを意味する]
で表される繰り返し構造単位をポリマー鎖あたり少なくとも10個含む合成ポリ(カルボン酸)(A)と、以下の一般式(II)
R
4−(OH)
n (II)
[式中、
R
4は、C原子数1〜100の炭化水素残基を表し、これは置換されていてもよくまたはヘテロ原子を含んでいてもよく、そして
nは、1〜10の数を表す]
のアルコール(B)とを反応させるための連続的な方法であって、
水と、溶剤混合物の重量を基準に0.1〜75重量%の少なくとも一種の水と混合可能な有機溶剤とを含み、この際、前記有機溶剤は、25℃で測定して少なくとも10の誘電率を有する溶剤混合物中に少なくとも一種の合成ポリ(カルボン酸)(A)及び式(II)の少なくとも一種のアルコールを含む反応混合物を、反応区間に運び入れ、そしてこの反応区間中を通り流れる時に、マイクロ波放射線に曝し、そしてこの際、反応混合物は、この反応区間においてマイクロ波照射によって100℃を超える温度に加熱される前記方法である。
本発明の更に別の対象の一つは、本発明の方法に従い製造された等重合度変性された合成ポリ(カルボン酸)である。
好ましくは、R1は水素またはメチル基を表す。更に好ましくは、R2は水素を表す。更に好ましくは、R3は水素または−COOHを表す。具体的な実施形態の一つでは、R1、R2及びR3は水素を表す。更に別の具体的な実施形態の一つでは、R1はメチル基を表し、そしてR2及びR3は水素を表す。更に別の具体的な実施形態の一つでは、R1及びR2は水素を表し、そしてR3は式−COOHのカルボキシル基を表す。
合成ポリ(カルボン酸)(A)とは、エチレン性不飽和カルボン酸の付加重合によって製造することができるポリマーのことと解される。好ましい合成ポリ(カルボン酸)は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはそれらの混合物から誘導される構造単位を含む。誘導された構造単位という用語は、ポリマーが、上記の酸の付加重合の時に生じた構造単位を含むことを意味する。特に好ましくは、上記のエチレン性不飽和カルボン酸のホモポリマー、例えばポリ(アクリル酸)及びポリ(メタクリル酸)である。更に別の好ましいものは、二種またはそれ超、例えば三種またはそれ超のエチレン性不飽和カルボン酸から、特に二種またはそれ超、例えば三種またはそれ超の上記のエチレン性不飽和カルボン酸から、例えばアクリル酸とマレイン酸とから、またはアクリル酸とイタコン酸とからできたコポリマーである。
本発明の方法は、上記のエチレン性不飽和カルボン酸から誘導された構造単位の他に、50モル%までの副次的な量で更に別のエチレン性不飽和モノマーから誘導された構造単位を含むポリ(カルボン酸)の変性にも適している。好ましくは、更に別のエチレン性不飽和モノマーから誘導された構造単位の割合は0.1〜40モル%、特に好ましくは0.5〜25モル%、特に1〜10モル%、例えば2〜5モル%である。好ましい更に別のエチレン性不飽和モノマーは、例えば、更に別の酸基含有モノマー、特にカルボキシル基を持つモノエチレン性不飽和化合物、例えばビニル酢酸またはアリル酢酸、スルフェートまたはスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和化合物、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)または2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、並びにホスフェートまたはホスホン酸基を有するモノエチレン性不飽和化合物、例えばビニルリン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、メタクリルアミドメタンホスホン酸、2−アリールアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、3−ホスホノプロピルアクリレートまたは3−ホスホノプロピルメタクリレートである。C1〜C20−カルボン酸、特にC2〜C5−カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル、アクリル酸もしくはメタクリル酸とC1〜C20−アルコール、特にC2〜C6アルコールとのエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、並びにアクリルアミド及びメタクリルアミド並びに窒素のところでC1〜C20−アルキル基で置換されたそれらの誘導体、ビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、N−ビニル化合物、例えばN−ビニルカプロラクタム及びN−ビニルピロリドン、並びにオレフィン、例えばエチレン、スチレン及びブタジエンも、他のコモノマーとして適している。好ましいコポリマーは、水及び水と混合可能な有機溶剤の溶剤混合物中に、40℃を超える温度、例えば50℃、60℃、70℃、80℃または90℃で均一に可溶であるかまたは少なくとも膨潤可能である。更に好ましくは、これらは、少なくとも1重量%、特に5〜90重量%、例えば20〜80重量%の濃度で、40℃を超える温度、例えば50℃、60℃、70℃、80℃または90℃の温度において均一に溶剤混合物中に可溶であるかまたは膨潤可能である。好ましいコポリマーの例は、
−アクリル酸もしくはメタクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS(登録商標))Na塩とでできたコポリマー、
−アクリル酸と2−エチルヘキシルアクリレートとでできたコポリマー、
−アクリル酸とアクリルアミドとでできたコポリマー、
−アクリル酸とジメチルアクリルアミドとでできたコポリマー、
−メタクリル酸もしくはアクリル酸とtert.−ブチルメタクリレートとでできたコポリマー、
−マレイン酸とスチレンとでできたコポリマー、並びに
−マレイン酸と酢酸ビニルとでできたコポリマー、
である。
異なるエチレン性不飽和カルボン酸のコポリマー、並びにエチレン性不飽和カルボン酸と他のコモノマーとでできたコポリマーでは、エチレン性不飽和カルボン酸から誘導された式(I)の構造単位は、ブロック状、交互状またはランダム状に分布することができる。
本発明において好ましいポリ(カルボン酸)(A)は、それぞれの場合にポリ(スチレンスルホン酸)標準に対してゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定して、700g/モルを超える数平均分子量、特に好ましくは1,000〜500,000g/モル、特に2,000〜300,000g/モル、例えば2,500〜100,000g/モルの数平均分子量を有する。更に好ましくは、該ポリ(ポリカルボン酸)(A)は、ポリマー鎖あたり平均して少なくとも10個、特に少なくとも20個、例えば50〜8,000個のカルボキシル基を含む。これらは、ポリマー鎖当たり、式(I)の構造単位を好ましくは少なくとも20個、特に少なくとも50個含む。
第一の好ましい実施形態の一つでは、R4は脂肪族基を表す。これは、好ましくはC原子数が2〜50、特に好ましくは3〜24、就中4〜20である。この脂肪族基は線状、分枝状または環状であることができる。これは更に飽和または不飽和であることができ、好ましくは飽和である。この炭化水素残基は、置換基、例えばハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、C1〜C5アルコキシアルキル基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基及び/またはC5〜C20アリール基、例えばフェニル基を有することができる。前記C5〜C20アリール基は、それらが場合によっては、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C1〜C5アルコキシ基、例えばメトキシ基、エステル基、アミド基、シアノ基、ニトリル基及び/またはニトロ基で置換されていることができる。特に好ましい脂肪族基は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル及びtert.−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル及びメチルフェニルである。
更に別の好ましい実施形態の一つでは、R4は、場合により置換されたC6〜C12アリール基または場合により置換された環員数5〜12のヘテロ芳香族基を表す。好ましいヘテロ原子は、酸素、窒素及び硫黄である。このC6〜C12アリール基または環員数5〜12のヘテロ芳香族基には、更に別の環が縮合していることができる。それ故、前記アリールまたはヘテロ芳香族基は、単環式または多環式であることができる。適当な置換基の例は、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、並びにアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ニトリル基及びニトロ基である。
アルコール(B)では、基R4は、一つまたはそれ超の、例えば二つ、三つ、四つまたはそれ超の更なるヒドロキシル基を有するが、基R4がC原子を有する数を超えてのヒドロキシル基またはアリール基が価数を有する数を超えてのヒドロキシル基は持たない。これらのヒドロキシル基は、隣接するC原子に、または炭化水素基の他の除去された炭素原子に結合することができ、ただし炭素原子一つあたり多くとも一つのOH基である。
具体的な実施形態の一つでは、nは2〜6の数を表す。
それで、本発明の方法は、ポリオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリトリトール、フルクトース及びグルコースによるポリ(カルボン酸)(A)のエステル化にも適している。ポリオールでのエステル化の時は、架橋反応が起こることがあり、これは分子量の大きな増大を招く。このような重縮合では、マイクロ波照射の間に上昇する反応混合物の粘度を、装置の設計において留意するべきである。格別好ましい実施形態の一つでは、アルコールは一つのヒドロキシル基を有する、すなわちnは1を表す。
更に別の好ましい実施形態の一つでは、R4は、ヘテロ原子が割り込んだアルキル基を表す。特に好ましいヘテロ原子は酸素及び窒素である。しかし、基R4が窒素原子を含む場合には、これらの窒素原子は酸性プロトンを持たない。
それで、R4は、好ましくは、以下の式(III)の基を表す。
−(R5−O)m−R6 (III)
式中、
R5は、C原子数2〜18、好ましくはC原子数2〜12、特に2〜4のアルキレン基、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはこれらの混合物を表し、
R6は、水素、C原子数1〜24の炭化水素残基、式−C(=O)−R9のアシル基(R9はC原子数1〜50の炭化水素残基を表す)、または式−R5−NR7R8の基を表し、
mは、1〜500、好ましくは2〜200、特に3〜50、例えば4〜20の数を表し、そして
R7、R8は、互いに独立して、C原子数1〜24、好ましくはC原子数2〜18の脂肪族基、環員数5〜12のアリールもしくはヘテロアリール基、ポリ(オキシアルキレン)単位数1〜50のポリ(オキシアルキレン)基(ここで、ポリオキシアルキレン単位はC原子数2〜6のアルキンオキシド単位から誘導される)を表すか、あるいはR7とR8は、それらが結合する窒素原子と一緒に、環員数4、5、6またはそれ超の環を形成する。
本発明において好適な式(III)のポリエーテルは、例えば、式R4−OHのアルコールまたは式R9−COOHの脂肪酸を2〜100モルのエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはこれらの混合物でアルコキシル化することによって得ることができる。好ましいポリエーテルは、300〜7,000g/モル、特に好ましくは500〜5,000g/モル、例えば800〜2,500g/モルの分子量を有する。R4が式(III)の基を表す場合には、nは1である。
適当なアルコール(B)の例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert.−ブタノール、ペンタノール、ネオペンタノール、n−ヘキサノール、iso−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、フェノール、ナフトール及びこれらの混合物である。更に別の好適なものは、天然原料から得られる脂肪アルコール混合物、例えばココ脂肪アルコール、パーム核脂肪アルコール及びタロー脂肪アルコール、並びにアルキレンオキシドとのこれらの反応生成物である。
本発明の方法においては、ポリ(カルボン酸)(A)及びアルコール(B)は、一般的に任意の比率で互いに反応させることができる。好ましくは、反応は、それぞれカルボキシル基とヒドロキシル基の当量を基準にして、ポリ(カルボン酸)(A)のカルボキシル基とアルコール(B)のヒドロキシル基との間のモル比を100:1〜1:5、好ましくは10:1〜1:1、就中5:1〜2:1として行われる。アルコールを過剰に使用する場合または完全に反応させない場合には、それの一部が未反応のままポリマー中に残り、これは、使用目的に応じて生成物中に残すかまたは分離することができる。この方法は、使用するアルコールが易揮発性であるかまたは水溶性の場合に特に有利である。ここで易揮発性とは、アルコールが、常圧で好ましくは250℃未満、例えば150℃未満の沸点を有し、それ故、場合によっては溶剤と一緒に、エステルから分離できることを言う。これは、例えば、蒸留、相分離または抽出を用いて行うことができる。ポリマーのカルボキシル基に対するヒドロキシル基の比率によって、変性度、それ故、生成物の性質を調節することができる。
本発明の方法は、ポリ(カルボン酸)(A)の部分的なエステル化に特に好ましく適している。この際、アルコール(B)は、カルボキシル基の総数を基準に、不足化学理論量で、特に1:100〜1:2の比率、就中1:50〜1:5の比率、例えば1:20〜1:8の比率で使用される。この際好ましくは、反応条件は、使用したアルコール(B)の少なくとも10モル%、特に20〜100モル%、就中25〜80モル%、例えば30〜70モル%が反応するように調節される。この部分的なエステル化では、非常に均一な生成物が生成し、これは、均一な溶解性に現れる。
ポリ(カルボン酸)(A)、アルコール(B)、水、水と混合可能な溶剤、並びに場合により更に別の助剤、例えば乳化剤、触媒及び/または電解質を含む、本発明の方法に使用される反応混合物の製造は、様々な方法で行うことができる。ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との混合は、連続的に、断続的にまたは半バッチプロセスで行うことができる。工業規模での方法のためには特に、原料を本発明の方法に液状の形態で供給することが有利であることが判明した。このためには、ポリ(カルボン酸)(A)は、好ましくは、水中の溶液として、または水及び水と混合可能な溶剤中の溶液として、本発明の方法に供給される。ポリ(カルボン酸)(A)は、ポンプ輸送が可能な場合に限り、ふやかした形態で使用することもできる。
アルコール(B)は、それが液状であるかまたは低温で、好ましくは150℃未満、特に100℃未満の温度で溶融可能である場合には、そのまま使用することができる。多くの場合に、アルコール(B)は、場合により溶融した状態で、水と及び/または水と混合可能な溶剤と混合して、例えば溶液、分散液またはエマルションとして使用することが有効であることが分かった。
ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との混合は、例えば別個の攪拌容器中で、各構成分を連続して装入することによって(半)バッチ式プロセスで行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、アルコール(B)は、水と混合可能な有機溶剤中に溶解し、次いで既に溶解もしくは膨潤したポリマーに加える。好ましくは、一方ではアルコールの均一な分布を保証し、他方で計量添加箇所へのポリマーの局所的な析出を避けるために、添加は、少しずつ比較的長い時間をかけて攪拌下に行われる。
特に好ましくは、ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)または上述したような溶液または分散物、場合によっては並びに更に別の助剤との混合は、混合区域で行い、そこから、反応混合物を、場合により中間冷却の後に、反応区域に運搬する。
触媒並びに更に別の助剤を使用する場合には、これらは、反応区域に入れる前に、反応体または反応体混合物に加えることができる。不均一システムも本発明の方法に従い反応させることができ、この場合は、反応物を搬送するための然るべき技術的装置が必要なだけである。
好ましくは、反応混合物は、水、及び水と混合可能な一種またはそれ超の有機溶剤からなる溶剤混合物を10〜99重量%、特に好ましくは20〜95重量%、特に25〜90重量%、例えば50〜80重量%含む。各々の場合に、反応体A及びBには、マイクロ波の照射の前に水を加えて、反応生成物が、エステル化の時に放出される反応水の量を超える量の水を含むようにする。
好ましい水と混合可能な有機溶剤は、極性プロトン性または極性非プロトン性液体である。好ましくは、これらは、25℃で測定して少なくとも12,特に少なくとも15の誘電率を有する。好ましい溶剤は、水中に少なくとも100g/L、特に好ましくは少なくとも200g/L、特に少なくとも500g/Lの程度で可溶性であり、特にこれらは水と完全に混合可能である。溶剤として特に好ましいものは、ヘテロ脂肪族化合物、特にアルコール、ケトン、末端キャップ型ポリエーテル、カルボン酸アミド、例えば第三カルボン酸アミド、ニトリル、スルホキシド並びにスルホンである。好ましい非プロトン性溶剤は、例えばホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトン、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルホラン及びジメチルスルホキシド(DMSO)である。好ましいプロトン性有機溶剤は、C原子数1〜10、特にC原子数2〜5の低級アルコールである。適当なアルコールの例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert.−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、2−メチル−2−ブタノール、エチレングリコール及びグリセリンである。特に好ましくは、第二及び第三アルコールが低級アルコールとして使用される。特に好ましいものは、C原子数が3〜5の第二及び第三アルコール、例えばiso−プロパノール、sec−ブタノール、2−ペンタノール及び2−メチル−2−ブタノール並びにネオペンチルアルコールである。上記の溶剤の混合物も本発明に従い好適である。
一般的に、水と混合可能な有機溶剤としては低沸点液体が好ましく、特に常圧で150℃未満、特に120℃未満、例えば100℃未満の沸点を有し、それ故少ない手間で反応生成物から再び除去できるものが好ましい。高沸点溶剤は、これらが、変性されたポリマーの更なる使用のために生成物中に残留し得る時に特に有効であることが分かった。溶剤混合物における水と混合可能な有機溶剤の割合は、それぞれ溶剤混合物の重量を基準にして好ましくは1〜60重量%、特に好ましくは2〜50重量%、特に5〜40重量%、例えば10〜30重量%である。水は、合計を100重量%にする量で溶剤混合物中に含まれる。
具体的な実施形態の一つでは、アルコール(B)は、同時に、水と混合可能な有機溶剤としても機能することができる。この実施形態では、好ましくは、低級第一アルコールが有効であることが判明した。ここで好ましい低級第一アルコールは、1〜10個のC原子、特に2〜5個のC原子を有する。この実施形態では、溶剤混合物中での低級アルコールの割合は、それぞれ溶剤混合物の重量を基準にして、好ましくは1〜60重量%、特に好ましくは2〜50重量%、特に5〜40重量%、例えば10〜30重量%である。水は、溶剤混合物中に合計を100重量%にする量で含まれる。
使用する反応混合物の粘度を更に低下させるために及び/または本発明の方法の過程で生ずる等重合度変性ポリマーの溶液の粘度を更に低下させるためには、反応混合物に電解質を加えることが多くの場合に有効であることが判明した。この際好ましいものは、濃度に左右されずに完全に解離して存在する強電解質が好ましい。好ましい強電解質は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩、例えばそれらの塩化物、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩及び炭酸水素塩である。好ましい強電解質の例は、NaCl、KCl、Na2CO3、Na2SO4及びMgSO4である。電解質の添加によって、反応媒体の誘電損が同時に高められて、単位時間または単位体積当たりより多くのエネルギーを反応混合物にカップリングすることができるようになる。本発明の連続的な方法には、これは、単位時間当たりで転化できる量の増加を意味する。なぜならば、流量の増加(及び同時に入射されるマイクロ波エネルギーの増加)の下に、より多量の反応混合物を、反応区域において所望の温度に加熱できるからである。
水中へのまたは水及び水と混合可能な有機溶剤からなる混合物中への溶解性が限られたアルコール(B)を使用する時には、好ましい実施形態の一つでは一種またはそれ超の乳化剤を反応混合物に加えることができる。この際、好ましくは、反応体及び生成物に対して化学的に不活性の乳化剤が使用される。特に好ましい実施形態の一つでは、乳化剤は、別の製造からの反応生成物である。
好ましい実施形態の一つでは、各反応体は、望ましい量比において、それぞれ別個の容器から反応区域に供給される。具体的な実施形態の一つでは、反応体は、反応区域に入る前に及び/または反応区域自体中で、適当な混合要素、例えばスタティックミキサー及び/またはアルキメデス螺旋体を用いて及び/または多孔性発泡体に貫流させることによって、更にホモジナイズする。
ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との反応は、本発明に従い、反応区域中でマイクロ波放射線の影響下に行われる。反応区域は、少なくとも一つの容器(そこで反応混合物がマイクロ波放射線に曝される(照射域))、場合により並びに、流れ方向でそれに後続する等温反応区域(そこで反応を完遂することができる)を含む。最も簡単なケースでは、反応区域は照射域からなる。照射域では、反応混合物は、マイクロ波放射線によって好ましくは110℃を超える温度、特に好ましくは120〜320℃の温度、特に130〜260℃の温度、特に140〜240℃の温度、例えば150〜220℃の温度に加熱される。これらの温度は、マイクロ波照射の間に達成される最大温度のことである。温度は、例えば照射容器の表面のところで測定することができる。好ましくは、温度は、照射域を出た直後に反応物について測定される。圧力は、反応混合物が液体の状態に留まって沸騰しない高さに反応区域において調節することが好ましい。好ましくは、1barを超える圧力、好ましくは3〜300barの圧力、特に好ましくは5〜200barの圧力、特に10〜100barの圧力、例えば15〜50barの圧力で作業する。
ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との反応を加速または完遂するためには、酸性触媒の存在下に作業することが多くの場合に有利であることが分かった。本発明において好ましい触媒は、酸性の無機、有機金属または有機触媒あるいは複数種のこのような触媒の混合物である。好ましい触媒は、液状である及び/または反応混合物中に可溶性である。
本発明の意味において酸性無機触媒としては、例えば硫酸、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、ミョウバン、酸性シリカゲル及び酸性水酸化アルミニウムが挙げられる。更に、例えば、一般式Al(OR15)3のアルミニウム化合物及び一般式Ti(OR15)4のチタネートが酸性無機触媒として使用可能であり、ここで、基R15は、それぞれ同一かもしくは異なることができ、そして互いに独立して、C1−C10−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec.−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、sec.−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニルもしくはn−デシル、C3−C12−シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシルから選択され;好ましいものは、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。好ましくは、Al(OR15)3、Ti(OR15)4中の基R15は、それぞれ同一であり、イソプロピル、ブチル及び2−エチルヘキシルから選択される。
好ましい酸性有機金属触媒は、例えば、ジアルキルスズオキシド(R15)2SnO(式中、R15は上記に定義した通りである)から選択される。酸性有機金属触媒の特に好ましい代表物の一つは、ジ−n−ブチルスズオキシドであり、これはいわゆるオキソ−スズとしてまたはFascat(登録商標)ブランドとして商業的に入手することができる。
好ましい酸性有機触媒は、例えばスルホン酸基またはホスホン酸基を有する、酸性有機化合物である。特に好ましいスルホン酸は、少なくとも一つのスルホン酸基と、C原子数が1〜40、好ましくはC原子数が3〜24の飽和もしくは不飽和で線状、分枝状及び/または環状の少なくとも一つの炭化水素残基とを含む。特に好ましいものは、芳香族スルホン酸、特に一つもしくはそれ超のC1〜C28アルキル基、特に一つまたはそれ超のC3〜C22アルキル基を有するアルキル芳香族モノスルホン酸である。適当な例は、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、2−メシチレンスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、4−ブチルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸;ドデシルベンゼンスルホン酸、ジドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸である。
本発明方法の実施に特に好ましいものは酸性有機触媒、特にメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸である。
酸性の無機、有機金属または有機触媒を使用したい場合には、本発明では0.01〜10重量%、好ましくは0.02〜2重量%の触媒が使用される。
更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波照射は、酸性及び固形でかつ反応媒体中に溶解しないかまたは完全には溶解しない触媒の存在下に行われる。このような不均一系触媒は、反応混合物中に懸濁し、そして反応混合物と一緒にマイクロ波照射に曝すことができる。特に好ましい連続式実施形態の一つでは、場合により溶剤と混合される反応混合物は、反応区域中に、特に照射域中に固定された固定床触媒を通して導かれ、そこでマイクロ波放射線に曝される。適当な固形触媒は、例えばゼオライト類、シリカゲル、モンモリロナイト及び(部分)架橋されたポリスチレンスルホン酸であり、これらは触媒活性金属塩で含浸することができる。固定相触媒として使用することができるポリスチレンスルホン酸をベースとする適当な酸性イオン交換体は、例えば、Rohm & Haas社からAmberlyst(登録商標)の商品名で入手することができる。
多くの場合に、マイクロ波照射の後は反応混合物は更なる使用に直接供給することができる。溶剤不含の生成物を得るためには、水及び/または有機溶剤を、通常の分離方法、例えば蒸留、凍結乾燥または吸着によって粗製生成物から分離することができる。この際、過剰に使用されたアルコール、場合によっては並びに未反応のアルコールの残量も一緒に分離することもできる。特定の要求のためには、粗製生成物は、通常の精製方法、例えば洗浄、再析出、濾過、透析またはクロマトグラフィ法により更に精製することができる。
マイクロ波照射は、通常は、マイクロ波に対し非常に高い透過性を示す材料でできた照射容器を備えた装置中で行われ、前記照射容器中に、マイクロ波発生器中で発生させたマイクロ波放射線がカップリングされる。マグネトロン、クライストロン及びジャイロトロンなどのマイクロ波発生器が当業者に知られている。
本発明方法の実行に使用される照射容器は、好ましくは、マイクロ波に対しほぼ透明な高融点の材料から作られるか、またはこのような材料でできた部材、例えば窓を少なくとも含む。特に好ましくは、非金属製の照射容器が使用される。ここで、マイクロ波に対しほぼ透明とは、できるだけ少ないマイクロ波エネルギーを吸収しそして熱に変換する原材料と解される。マイクロ波エネルギーを吸収してこれを熱に変える物質の能力の目安としては、しばしば、誘電損失率tanδ=ε’’/ε’が用いられる。誘電損失率tanδは、誘電損失ε’’と誘電率ε’との比率と定義される。様々な材料のtanδ値の例は、例えばD.Bogdal,Microwave−assisted Organic Synthesis,Elsevier 2005(非特許文献4)に記載されている。本発明において適した照射容器には、2.45GHz及び25℃で測定して、0.01未満のtanδ値、特に0.005未満、就中0.001未満のtanδ値を有する材料が好ましい。マイクロ波に対し透明でかつ温度安定性の好ましい材料としては、先ず第一には、鉱物ベースの原材料、例えば石英、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素及び類似物が考慮される。温度安定性のプラスチック、例えば特にフルオロポリマー、例えばテフロン、及びエンジニアリングプラスチック、例えばポリプロピレン、またはポリアリールエーテルケトン、例えばガラス繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)も容器材料として適している。反応中の温度条件に耐えるためには、特に上記のプラスチックでコーティングされた鉱物、例えば石英または酸化アルミニウムが容器材料として有効であることが判明した。
約1cm〜1mの波長及び約300MHz〜30GHzの周波数を有する電磁放射線がマイクロ波と称される。原則的にこの周波数範囲が本発明方法に適している。好ましくは、本発明方法には、工業用、学術用、医学用の用途に許可されている周波数を有するマイクロ波放射線、例えば915MHz、2.45GHz、5.8GHzまたは24.12GHzの周波数を有するマイクロ波放射線が使用される。反応混合物のマイクロ波照射は、モノモードまたは疑似モノモードで作動するマイクロ波アプリケーター、並びにマルチモードで作動するマイクロ波アプリケーター中で行うことができる。相当する装置は当業者には既知である。
本発明方法の実施のために照射容器中に入射するべきマイクロ波出力は、特に、目的とする反応温度、照射容器の形状、それに伴う反応容積、並びに照射容器を通る際の反応物の流速に依存する。これは、通常は、100W〜数100kW、特に200W〜100kW、例えば500W〜70kWである。これは、照射容器の一つまたはそれ超の箇所で適用することができる。これは、一つまたはそれ超のマイクロ波発生器を介して発生させることができる。
マイクロ波照射時間は、様々なファクター、例えば反応容積、照射容器の形状、反応温度での反応混合物の所望の滞留時間、並びに所望とする転化率などに依存する。通常は、マイクロ波照射は、30分間未満の期間にわたって、好ましくは0.01秒間〜15分間、特に好ましくは0.1秒間〜10分間、特に1秒間〜5分間、例えば5秒間〜2分間の期間にわたって行われる。この際、マイクロ波放射線の強度(出力)は、反応物ができるだけ短い時間、目的の反応温度に達するように調節される。本発明方法の更に別の好ましい実施形態の一つでは、反応混合物を加温した形態で照射容器に供給することが有用であることが分かった。反応温度を保持するためには、反応物を、低めた及び/またはパルス状の出力で更に照射するかまたはその他の方法で温度を維持することができる。好ましい実施形態の一つでは、反応生成物は、マイクロ波照射の終了後直後に、できるだけ早く100℃未満の温度、好ましくは80℃未満の温度、就中50℃未満の温度に冷却する。
マイクロ波照射は、以下に反応管とも称する、照射容器として働く流通管中で行われるのが好ましい。これは、更に、半バッチプロセスで、例えば連続作動式攪拌反応器またはカスケード型反応器中で行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、反応は、密閉式の耐圧性でかつ化学的に不活性の容器中で行われ、この際、水、場合によっては並びにアルコール(B)、及び水と混合可能な溶剤が、圧力上昇を招く。反応の終了後、過剰圧は、放圧によって、水、有機溶剤、場合により並びに過剰のアルコール(B)の気化及び分離に、及び/または反応生成物の冷却に利用することができる。特に好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波照射の終了後にまたは照射容器を出た後に、できるだけ早いうちに水及び場合により存在する触媒活性種を反応混合物から除いて、生成したエステルの加水分解を防ぐようにする。水及び有機溶剤は、通常の分離方法、例えば凍結乾燥、蒸留または吸着によって分離することができる。
本発明方法の特に好ましい実施形態の一つでは、反応混合物は、耐圧性で、反応体に対し不活性で、マイクロ波に対しほぼ透明でかつマイクロ波アプリケーター中に取り付けられた、照射区域として役立つ反応管中を連続的に導通させる。この反応管は、好ましくは、1ミリメータ〜約50cm、就中2mm〜35cm、例えば5mm〜15cmの直径を有する。特に好ましくは、反応管の直径は、照射される反応物中へのマイクロ波の侵入深さよりも短い。特に、これは、侵入深さの1〜70%、特に5〜60%、例えば10〜50%である。ここで侵入深さとは、入射されるマイクロ波エネルギーが1/eに弱められる距離のことと解される。
ここで流通管または反応管とは、照射区域(これは、反応物がマイクロ波放射線に曝されるところの流通管の部分のことである)の直径に対する長さの比率が、5超、好ましくは10〜100,000、特に好ましくは20〜10,000、例えば30〜1,000である照射容器のことと解される。流通管または反応管は、例えば、真っ直ぐにまたは湾曲してあるいは蛇管として形成することができる。具体的な実施形態の一つでは、反応管は、ダブルジャケット管の形態に構成され、その内部または外部空間を介して反応混合物を次々に向流で流通させることができて、そうして例えば該方法の温度制御及びエネルギー効率を高めることができる。この際、反応管の長さとは、マイクロ波場において反応混合物によって貫流される距離全体と解される。反応管は、その長さに沿って、少なくとも一つ、しかし好ましくは複数の、例えば二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つまたはそれ超のマイクロ波放射器で囲まれる。マイクロ波の入射は、好ましくは、管ジャケットを介して行われる。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波入射は、少なくとも一つのアンテナを用いて管末端を介して行われる。
反応区域は、通常は、その入口に計量添加ポンプ及びマノメータ、及びその出口に圧力保持装置及び熱交換器を備える。好ましくは、反応混合物は、100℃未満の温度、例えば10℃〜90℃の温度を持つ液状の形態で反応区域に供給される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、ポリマー(A)とアルコール(B)との溶液を、反応区域に入る少し前になって初めて、場合により適当な混合要素、例えばスタティックミキサー及び/またはアルキメデス螺旋体及び/または多孔性発泡体の貫流を利用して、混合する。更に別の好ましい実施形態の一つでは、前記溶液は、反応区域中で、適当な混合要素、例えばスタティックミキサー及び/またはアルキメデス螺旋体及び/または多孔性発泡体の貫流により更にホモジナイズする。
管の横断面、照射域の長さ、流速、マイクロ波放射器の形状、入射されるマイクロ波出力並びにその際達する温度を変えることによって、最大の反応温度が可能な限り速く達成されるように反応条件を調節する。好ましい実施形態の一つでは、最大温度時の滞留時間は、なるべく少ない副生成物または二次生成物が生じるように、短く選択される。
好ましくは、連続式マイクロ波反応器はモノモードまたは疑似モノモードで稼働される。この際、照射域中での反応物の滞留時間は、一般的に20分間未満、好ましくは0.01秒間〜10分間、好ましくは0.1秒間〜5分間、例えば1秒間〜3分間である。反応物は、反応を完遂するために、場合により中間冷却の後に、複数回にわたり照射域に流通させることができる。
特に好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波での反応物の照射は、モノモードマイクロ波アプリケーター内においてマイクロ波の伝播方向に長軸がある反応管中で行われる。この際、好ましくは、照射域の長さは、少なくとも波長の半分、特に好ましくは、入射するマイクロ波放射線の波長の少なくとも1倍及び20倍まで、特に2〜15倍、例えば3〜10倍である。このような形状を持って、管の長軸に対して並行に伝播するマイクロ波の複数の、例えば二つ、三つ、四つ、五つ、六つまたはそれ超の相次いて続く最大からのエネルギーを反応物に伝達することができ、これは、該方法のエネルギー効率を大きく改善する。
マイクロ波による反応物の照射は、好ましくは、マイクロ波に対してほぼ透明の直線状の反応管中で行われ、ここでこの反応管は、マイクロ波発生器に接続されておりかつマイクロ波アプリケーターとして機能する中空導体中にある。好ましくは、反応管は、中空導体の中央対称軸と軸状に整列される。中空導体は、好ましくは空洞共振器として構成される。好ましくは、空洞共振器の長さは、その中に定常波が生ずるように寸法決めされる。更に、好ましくは、中空導体に吸収されないマイクロ波はそれの端部で反射される。反射タイプの共振器としてマイクロ波アプリケーターを構成することによって、発生器から供給される同じ出力での電場強度の局所的強化、及び高められたエネルギー利用が達成される。
空洞共振器は、好ましくはE01n−モードで稼働され、ここでnは整数を表し、共振器の中央対称軸に沿うマイクロ波の電場最大点の数を示す。この稼働の際、電場は、空洞共振器の中央対称軸の方向に方向づけされる。これは、中央対称軸の範囲おいて最大を有し、そしてジャケット面に向かうにつれて0の値まで減少する。この場の形態は、中央対称軸の周りに回転対称的に存在する。nが整数である長さを有する空洞共振器を使用することによって、定常波の形成が可能となる。反応管中を流れる反応物の所望の流速、必要な温度、及び共振器中での必要な滞留時間に応じて、共振器の長さが、使用されるマイクロ波放射線の波長に相対して選択される。好ましくは、nは1〜200の整数、特に好ましくは2〜100の整数、特に3〜50の整数、就中4〜20の整数、例えば3、4、5、6、7、8、9または10である。空洞共振器のE01n−モードは、英語ではTM01n−モード(transversal−magnetisch)とも称される。例えば、K.Lange,K.H.Loecherer,Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”,第2巻,K21頁以降(非特許文献5)を参照されたい。
マイクロ波アプリケーターとして機能する中空導体中へのマイクロ波エネルギーの入射は、適当な寸法のホールまたはスリットを介して行うことができる。本発明方法の具体的な実施形態の一つでは、マイクロ波による反応物の照射は、マイクロ波の同軸変換(koaxialem Uebergang)を備えた中空導体中に存在する反応管中で行われる。この方法に特に好ましいマイクロ波装置は、空洞共振器、マイクロ波場を中空共振器にカップリングするためのカップリングデバイス、及び共振器に反応管を通すための二つの相対する末端壁上のそれぞれの一つの開口から構成される。空洞共振器中へのマイクロ波のカップリングは、好ましくは、空洞共振器中に突出するカップリングピンを介して行われる。好ましくは、カップリングピンは、カップリングアンテナとして機能する、好ましくは金属製の内部導体管として構成される。特に好ましい実施形態の一つでは、このカップリングピンは、末端開口部の一つを通って空洞共振器中に突出する。特に好ましくは、反応管は、同軸変換器の内部導体管に接続し、そして特にはそれの空洞を通って空洞共振器中に通される。好ましくは、反応管は、空洞共振器の中央対称軸と軸状に整列される。このためには、空洞共振器は、好ましくは、反応管を通すために相対する二つの末端壁上にそれぞれ一つの中央開口を有する。
カップリングピン中へのまたはカップリングアンテナとして機能する内部導体管中へのマイクロ波の伝送は、例えば、同軸線路を用いて行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波場は中空導体を介して共振器に伝送され、この際、空洞共振器から突出するカップリングピンの末端が、中空導体の壁中に存在する開口を介して中空導体中へ通じており、そして中空導体からマイクロ波エネルギーが取り出されてそして共振器中にカップリングされる。
具体的な実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を有するE01n円形中空導体中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われる。この際、反応管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞を通して空洞共振器中に通される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送(axialer Einspeisung)を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ超の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、ここで空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ超の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ超の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対し透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ超の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。
本発明の方法に特に適したE01空洞共振器は、好ましくは、使用するマイクロ波放射線の少なくとも半分の波長に相当する直径を有する。好ましくは、空洞共振器の直径は、使用するマイクロ波放射線の半分の波長の1.0〜10倍、特に好ましくは1.1〜5倍、特に2.1〜2.6倍である。好ましくは、E01空洞共振器は丸い横断面を有し、これはE01円形中空導体とも称される。特に好ましくは、これは筒状の形状を有し、特に円筒状の形状を有する。
反応混合物の反応は、照射域を出たときには、多くの場合に未だ化学平衡にない。それ故、好ましい実施形態の一つでは、反応混合物は、照射域を通った後に直接、すなわち中間冷却無しで、等温反応区域に移し、そこで、或る一定期間、更に反応温度に維持される。等温反応区域を出てから初めて、反応混合物を場合により放圧しそして冷却する。照射域から等温反応区域への直接的な移送とは、照射域と等温反応区域との間に、熱の供給及び特に排除のための有効な措置が講じられないことと解される。好ましくは、照射域から出た時と、等温反応区域に入るまでの温度差は、±30℃未満、好ましくは±20℃未満、特に好ましくは±10℃未満、特に±5℃未満である。具体的な実施形態の一つでは、等温反応区域に入る時の反応物の温度は、照射域を出る時の温度に一致する。この実施態様は、部分的な過熱を起こすことなく反応物を所望の反応温度まで迅速にかつ的確に加熱すること、及びそれ故、それが冷却される前に定義された期間にわたってその反応温度で滞留することを可能にする。この実施形態では、反応物は、好ましくは、等温反応域を出た直後にできるだけ早く120℃未満、好ましくは100℃未満、特に60℃未満の温度に冷却する。
等温反応区域としては、照射域で調節された温度での反応混合物の滞留を可能にするものであれば、全ての化学的に不活性な容器が考慮される。等温反応区域とは、等温反応区域での反応物の温度を、入口温度に対して、±30℃、好ましくは±20℃、特に好ましくは±10℃、特に±5℃に一定に維持するものと解される。それにより、等温反応区域を出る時の反応物は、等温反応区域に入る時の温度から最大でも±30℃、好ましくは±20℃、特に好ましくは±10℃、特に±5℃しか異ならない温度を有する。
連続的に稼働する攪拌容器及び容器カスケードの他に、特に管が等温反応区域として適している。この反応区域は様々な材料、例えば金属、セラミック、ガラス、石英、またはプラスチックからなることができ、但し、これらが、選択された温度及び圧力条件において、機械的に安定しておりかつ化学的に不活性であることを条件とする。この際、断熱性の容器が特に有効であることが分かった。等温反応区域での反応物の滞留時間は、例えば、等温反応区域の体積によって調節することができる。攪拌容器及び容器カスケードの使用の際は、滞留時間は、容器の充填度によって調節することが同様に有効であることが分かった。好ましい実施形態の一つでは、等温反応区域には、能動的または受動的混合要素が備えられている。
好ましい実施形態の一つでは、等温反応区域として管が使用される。この際、これは、照射域と連続した形でのマイクロ波に対し透明な反応管の延長部分であるか、または反応管と接続されかつ同一のまたは異なる材料からなる別個の管であることができる。管の長さ及び/またはそれの断面を介して、所与の流速において、反応物の滞留時間を決めることができる。等温反応区域として機能する管は、最も簡単な場合では断熱性であり、それにより、等温反応区域に反応物が入る時に支配的な温度が、上記の範囲内で維持される。しかし、等温反応区域において、例えば熱媒体または冷却媒体を用いても、目的通りにエネルギーを反応物にまたは反応物から供給または排出することができる。この実施形態は、特に、装置もしくは方法の始動のために有効であることが分かった。それで、等温反応区域は、例えば、蛇管としてまたは管束として構成することができ、これらは、加熱または冷却浴中に存在するか、あるいはダブルジャケット管の形態で、加熱または冷却媒体が送り込まれている。等温反応区域は、他のマイクロ波アプリケーター中に存在することもでき、ここでは、反応物は再びマイクロ波で処理される。この際、モノモードまたはマルチモードで稼働するアプリケーターのどちらも使用できる。
等温反応区域中での反応物の滞留時間は、好ましくは、支配的な条件によって定義される熱平衡状態に達するように決められる。通常は、滞留時間は1秒間〜
10時間、好ましくは10秒間〜2時間、特に好ましくは20秒間〜60分間、例えば30秒間〜30分間である。更に好ましくは、等温反応区域中での反応物の滞留時間と照射域中での滞留時間との比率は1:2〜100:1、特に好ましくは1:1〜50:1、特に1:1.5〜10:1である。
特に高い転化率を達成するためには、得られた反応生成物を再びマイクロ波照射に曝すことが多くの場合に有効であることが分かった。この際、場合により、使用される反応体の比率を、消費されたもしくは不足の原料の分だけ補足することができる。
本発明の方法は、工業的に関心のもたれる量で連続的方法において、アルコールでの合成ポリ(カルボン酸)の等重合度変性を可能にする。この際、水の他には、廃棄する必要があって、環境の負荷となる副生成物は生じない。本発明方法の更に別の利点の一つは、等重合度縮合反応を水溶液中で行うことができるという事実にある。なぜならば、水は、ポリ(カルボン酸)にとって最も適した溶剤であり、加えて生態学的な観点からも有利であるからである。特定の極性有機溶剤を添加することによって、場合によりプロセスの過程で、疎水変性された構造単位の形成が始まることで生じる粘度の上昇に対して反対に作用することができ、そして水溶性が比較的低いアルコールとの反応も容易化される。そのため、連続的なプロセスでは反応混合物が照射域中を流動することが必要であるが、このような流動を保持するために特殊な搬送装置は必要ではない。このようにして、ポリ(カルボン酸)を、例えば疎水性にも、熱会合性にも変性することができる。特に、本発明の方法は、高分子量合成ポリ(カルボン酸)の部分的なエステル化に適している。というのも、該反応混合物は、ポリ(カルボン酸)(A)とアルコール(B)との間の粘度及び溶解性の違いにもかかわらず、ポリマー(A)の全鎖長にわたって均一なアルコール(B)の分布をもたらすからである。この際、本発明の方法は、その鎖長に沿ってランダムに変性された生成物の再現性のある製造を可能にする。本発明方法のために工業的な量で利用可能なアルコールが多数あるということは、変性の可能性に大きな幅を開くものである。それ故、合成ポリ(カルボン酸)の性質を広い範囲で簡単に改良することができる。
マイクロ波での反応混合物の照射を、筒状空洞共振器(60×10cm)中に軸対称的に存在する酸化アルミニウムでできた反応管(60×1cm)中で行った。空洞共振器の末端側の一つのところで、上記の反応管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞中を通って延びていた。マグネトロンから発生される2.45GHzの周波数を有するマイクロ波場は、前記のカップリングアンテナを用いて空洞共振器中にカップリングし(E01空洞アプリケータ、モノモード)、ここで定常波が生じた。等温反応区域の使用の際には、加熱された反応混合物を、反応管を出た後直ぐに、断熱されたステンレススチール管(他に記載が無ければ3.0m×1cm)に通した。反応管を出た後または等温反応区域の使用の場合にはそれを出た後に、反応混合物を常圧に放圧し、その後直ぐに、強力熱交換器を用いて指定の温度に冷却しそして触媒を中和した。
マイクロ波の出力は、試験期間にわたりずっと、それぞれ、照射域の端部で反応物の所望の温度が一定に維持されるように調節された。それ故、試験の記載において挙げるマイクロ波出力は、入射されたマイクロ波出力の時間平均値を表す。反応混合物の温度測定は、照射域を出た後直ぐにPt100温度センサーを用いて行った。反応混合物によって直接吸収されないマイクロ波エネルギーは、カップリングアンテナとは反対側の空洞共振器末端で反射した。逆行時にも反応混合物に吸収されず、マグネトロンの方向に戻って反射するマイクロ波エネルギーは、プリズムシステム(サーキュレーター)を用いて、水を含む容器中に導いた。入射されたエネルギーとこの水負荷の加熱との差から、反応物中に取り入れられたマイクロ波エネルギーを計算した。
高圧ポンプ及び圧力逃し弁を用いて、全ての原料及び生成物もしくは縮合生成物を常に液状の状態に維持するのに十分な作業圧を、反応管中の反応混合物にかけた。反応混合物を、一定の流速で、装置中にポンプ輸送して通し、そして照射域中での滞留時間を流速を変更することによって調節した。
反応生成物の分析は、1H−NMR分光分析を用いてCDCl3中で500MHzで行った。
例1:メタノールでのポリ(アクリル酸)のエステル化
ガス導入管、攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、4kgの水中の2.0kgのポリ(アクリル酸)(分子量5,000g/モル)を仕込み、20gのp−トルエンスルホン酸と混合しそして40℃に加温した。この温度で、攪拌しながら10分間の期間にわたって、1kgのメタノール(ポリマーの酸官能基あたり1.1モルのメタノール)を加えた。
こうして得られた反応混合物を、35barの作業圧において、6L/hで連続的に、反応管中にポンプ輸送して通して2.5kWのマイクロ波出力に曝し、そのうち92%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約40秒間であった。反応管を出る時に、この反応混合物は235℃の温度を有し、そしてこの温度のまま等温反応区域に直接移した。等温反応区域の末端の所で、この反応混合物は221℃の温度を有した。この反応混合物は、反応区域を出た後直ぐに室温に冷却した。
反応生成物は、低粘度の均一で無色の溶液であった。溶剤を蒸留して除去した後に、粘性で吸湿性の材料が得られた。それのIRスペクトルは、エステルに特徴的な1735cm−1でのバンド、並びに1H−NMRスペクトルにおいて3.6ppmにメチルエステルに特徴的なシグナル(−CO−O−CH3)を示す。3.6ppmでのシグナルの積分値とポリアクリル酸の主鎖プロトン(−CH2−)及び(−CH−CO−)のシグナルの積分値とを比較することによって、35%のエステル化度が確定された。(触媒を考慮して)残留酸基をNaOHで滴定することによって、前記の値を正しいものと確認できた。予期し得るように、残留酸官能基の中和は、溶解性の明らかな向上をもたらす。このポリマーは、未中和の状態では水中では濁ってしか溶液にならないものの、少量のアルカリを添加した後には既に、直ぐに透明に溶解して、粘度の上昇もほぼ示さない。
例2:2−エチルヘキサノールでのポリ(アクリル酸)のエステル化
ガス導入管、攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、4kgの水中の2.0kgのポリ(アクリル酸、27.7モル)(分子量:1800g/モル)の溶液を仕込み、そして30gの硫酸と混合した。次いで、そして30℃に加温し、そしてこの温度下に、攪拌しながら1時間の期間にわたって、3kgのイソプロパノール中の1kgの2−エチルヘキサノール(7.7モル)の溶液を加えた。
こうして得られた反応混合物を、35barの作業圧において、5L/hで連続的に、反応管中にポンプ輸送して通して2.5kWのマイクロ波出力に曝し、そのうち90%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約48秒間であった。反応管を出る時に、この反応混合物は257℃の温度を有し、そしてこの温度のまま等温反応区域に直接移した。等温反応区域の末端の所で、この反応混合物は225℃の温度を有した。この反応混合物は、反応区域を出た後直ぐに室温に冷却し、そして苛性ソーダ溶液で触媒を中和した。
この反応生成物は、低粘度の淡黄色に着色された溶液であった。溶剤を蒸発して除去しそしてメタノールから再析出させた後に、粘性の材料が生じた。そのIRスペクトルは、1735cm−1でエステルに特徴的なバンドを、そして1H−NMRスペクトルでは0.9ppmに脂肪族−CH3基に特徴的なシグナルを示す。主鎖プロトンの積分値との比較により酸官能基の約13%の転化率が判明した。NaOHでの残留酸基の滴定によって、15モル%のエステル化度が確定された。
例3:メチル−テトラエチレングリコールでのポリ(アクリル酸)のエステル化
ガス導入管、攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、4kgの水中の2.0kgのポリ(アクリル酸)(分子量5,000g/モル)の溶液を仕込み、20gのメタンスルホン酸と混合し、そして35℃に加温した。この温度で、攪拌しながら1時間の期間にわたって、1kgのイソプロパノール中の1kgのメチル−テトラエチレングリコール(4.8モル)の溶液を加えた。
こうして得られた反応混合物を、33barの作業圧において、6.2L/hで連続的に、反応管中にポンプ輸送して通して2.3kWのマイクロ波出力に曝し、そのうち89%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約38秒間であった。反応管を出た時、この反応混合物は247℃の温度を有し、そしてこの温度のまま等温反応区域に直接移した。等温反応区域の末端で、この反応混合物は、234℃の温度を有した。この反応混合物を、反応区域を出たら直ぐに室温に冷却し、そして触媒を炭酸水素塩溶液で中和した。
この反応生成物は、淡黄色に着色された低粘性の溶液であった。溶剤を蒸留した除去しそして反応生成物をメタノール/アセトンから再析出すると、粘性で極めて粘着性の材料が生じた。それのIRスペクトルは、1735cm−1でエステルに特徴的なバンドを示す。未反応の酸基をNaOHで滴定することによって、カルボキシル基の8モル%のエステル化度が求められた。
例4:ココ脂肪アルコールエトキシレート(10EO)でのポリ(アクリル酸)のエステル化
ガス導入管、攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、4kgの水中の1.0kgのポリ(アクリル酸)(分子量50,000g/モル)の溶液を仕込み、15gのメタンスルホン酸と混合した。次いで、40℃において、攪拌しながら30分間の期間にわたって、2kgのイソプロパノール中の670gのココ脂肪アルコールエトキシレート(Genapol(登録商標)C100)約1モル)の溶液を加えた。
こうして得られた反応混合物を、35barの作業圧で5L/hで連続的に反応管中にポンプ輸送して通し、そして2.1kWのマイクロ波出力に曝した。そのうち93%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約48秒間であった。反応管を出た時に、反応混合物は227℃の温度を有し、そしてこの温度のまま直接、等温反応区域に移した。等温反応区域の端部において、この反応混合物は209℃の温度を有した。次いで、この反応混合物を炭酸ナトリウムで中和し、そして真空中で溶剤を除いた。ソックスレー装置を用いて、そのアリコート部について、ココ脂肪アルコールエトキシレートの未反応部分を沸騰t−ブタノールで抽出し、そして溶剤を除去した後に重量測定した。バッチの総量に換算すると、使用したココ脂肪アルコールエトキシレートの64%の転化率が求められた。
例5:水中での2−エチルヘキサノールによるポリ(アクリル酸)のエステル化試験(比較例)
試験2と同様に作業するが、有機溶剤は添加しなかった。初期仕込み物を強力に攪拌することによって、中程度の安定性を有する懸濁液だけが製造でき、これは、せん断終了後に再び直ぐに分離した。相分離が速いために、顕著な転化率は達成されなかった。
例6:水中でのメチル−テトラ(エチレングリコール)によるポリ(アクリル酸)のエステル化試験(比較例)
試験3と同様にして作業するが、有機溶剤は添加しなかった。反応混合物中に同等の有効物質濃度を調節するために、試験3で使用した溶剤の量を水に置き換えて、ポリ(アクリル酸)に加えた。55℃に加温したポリ(アクリル酸)溶液にメチル−テトラ(エチレングリコール)を添加すると、反応混合物の粘度が顕著に上昇したが、なおもポンプ輸送可能である。
マイクロ波放射線に曝された反応管中に反応混合物をポンプ輸送して通した時に、更なる大きな粘度上昇が起こり、これは、反応管の閉塞及び試験の中断を招いた。