JP2014237783A - ポリアミドイミド樹脂組成物及び塗料 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温での焼成に耐えられないアルミ等の基材に対して、200℃程度で焼成した際に高耐溶剤性及び高強度性を有する塗膜を形成することができ、室温、経日で粘度変化のない耐熱性樹脂組成物を提供する。【解決手段】ジアミン及び/又はジイソシアネートと、ジカルボン、ジオール、三塩基酸無水物、三塩基酸無水物モノクロライド及び/又は四塩基酸無水物とを共重合させて得られるポリアミドイミド樹脂溶液に多官能型ブロックイソシアネート(1)を配合する。【選択図】なし

Description

本発明は耐熱性樹脂組成物及びこれを用いた塗料に関する。
ポリアミドイミド樹脂は高絶縁性、高耐熱性、高強度性、高耐摩耗性及び高耐溶剤性などの優れた特性を多数有することから、各種工業分野の様々な用途において優れた保護コート材として使用されている。ポリアミドイミド樹脂がこれらの優れた特性を発現するには、被塗物に塗布された後に250から270℃程度での高温で十分に焼成される必要がある。しかし、アルミなどの基材は高温での焼成中に基材の変形が懸念され、200から230℃程度での焼成が望まれている。しかし、200℃程度の焼成では塗膜の硬化が不十分であるため耐溶剤性及び強度が低下してしまい、この改善が強く求められている。
低温硬化時の耐溶剤性及び強度を改善する手法としては、ポリアミドイミド樹脂にトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルを配合する手法が特許文献1に示されているが、この手法によって得られる耐熱性樹脂組成物は室温で保管した際に経日で塗料粘度が増大する問題があった。
特開2011−236382号公報
本発明の目的は、200℃程度で焼成した際に高耐溶剤性及び高強度性を有する塗膜を形成することができ、また室温で保管した際に経日で粘度変化のない耐熱性樹脂組成物、及びこの耐熱性樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料を提供することにある。
上記の200℃程度で焼成した際に高耐溶剤性及び高強度性を有する塗膜を形成することができ、また室温で保管した際に経日で粘度変化のない耐熱性樹脂組成物に関して検討した結果、ポリアミドイミド樹脂溶液に一般式(I)
Figure 2014237783
(ただし、一般式(I)中、複数個のXはそれぞれ独立に、フェニル基、1個のメチル基で置換されているフェニル基または2個のメチル基で置換されているフェニル基を示す)で表される多官能型ブロックイソシアネートを配合することによって耐溶剤性及び強度の低下を抑制させることが可能であり、また室温で塗料粘度の増大が抑制できることを見出して本発明に至った。
すなわち、本発明は、塩基性極性溶媒中で、アミン成分としてジアミン化合物及び/又はジイソシアネート化合物と、酸成分としてジカルボン酸化合物、ジオール化合物、三塩基酸無水物、三塩基酸無水物モノクロライド及び/又は四塩基酸無水物とを共重合させて得られるポリアミドイミド樹脂溶液に、多官能型ブロックイソシアネートとして上記一般式で表される化合物を配合してなる耐熱性樹脂組成物に関する。

また、本発明は、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して上記一般式(I)で表される多官能型ブロックイソシアネートを1〜50質量部含有させる耐熱性樹脂組成物に関する。
さらに、本発明は前記の耐熱性樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料に関する。
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物を用いれば、比較的低温(例えば200℃程度)で焼成した際に高耐溶剤性及び高強度性を有する塗膜を形成することが可能であり、かつ室温で保管した際に経日での粘度変化を抑制することができる。これらは高温での焼成に耐えられないアルミ等の基材に対して、多大な有益性を有している。
本発明に用いるポリアミドイミド樹脂溶液は、塩基性極性溶媒中で、アミン成分としてジアミン化合物及び/又はジイソシアネート化合物と、酸成分としてジカルボン酸化合物、ジオール化合物、三塩基酸無水物、三塩基酸無水物モノクロライド及び/又は四塩基酸無水物とを共重合させて得られるものである。上記製造法に用いられる代表的な化合物を次に列挙する。
ジアミン化合物としては、トリジン、ジヒドロキシベンジジン、ジアニシジン、ジアミノジフェニルメタン、ジメチルジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、トルエンジアミン、ビス(トリフルオロメチル)ジアミノジフェニル、トリジンスルホン、ジアミノベンゾフェノン、チオジアニリン、スルホニルジアニリン、ジアミノベンズアニリド、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ジアミノベンジジン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
ジイソシアネート化合物としては、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、ジカルボン酸化合物、ジオール化合物、三塩基酸無水物、三塩基酸無水物モノクロライド及び四塩基酸無水物としては、ナフタレンジカルボン酸、ヒドロキシナフトエ酸、オキシナフトエ酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド、セバシン酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヒドロキシビフェニルカルボン酸、エチレングリコール、1,4‐ブタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、ポリカーボネートジオール、ドデカン二酸、12‐アミノドデカン酸、ブラシル酸、シュウ酸(無水物)、イタコン酸、3,3’‐ジチオジプロピオン酸、3,3’‐チオジプロピオン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水クエン酸、グルコン酸、乳酸、フマル酸、DL‐リンゴ酸、キシリトール、D‐ソルビトール、DL‐アラニン、無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
なお、本発明のポリアミドイミド樹脂の製造に使用されるジアミン化合物、ジイソシアネート化合物、ジカルボン酸化合物、ジオール化合物、三塩基酸無水物、三塩基酸無水物モノクロライド及び四塩基酸無水物は上記の化合物に制限されるものではなく、多種多様な化合物を使用出来ることは言うまでもない。
前記ジイソシアネート化合物又はジアミン化合物と、酸成分の使用量は、生成されるポリアミドイミド樹脂の分子量、架橋度の観点から酸成分の総量1.0モルに対して、ジイソシアネート成分又はジアミン成分を0.8〜1.2モルとすることが好ましく、0.95〜1.1モルとすることがより好ましい。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、ジイソシアネート成分又はジアミン成分と、酸成分とを塩基性極性溶媒中で反応させる。ここで、塩基性極性溶媒としては、N‐メチル‐2‐ピロリドン、ジメチルアセトアミド又はジメチルホルムアミドなどを用いることが出来るが、ポリアミドイミド化反応を高温で短時間に行うためには、N‐メチル‐2‐ピロリドンなどの高沸点溶媒を用いることが好ましい。また、溶媒の使用量には得に制限はないが、ジイソシアネート成分又はジアミン成分と酸成分の総量100質量部に対して50〜500質量部とすることが好ましい。ポリアミドイミド樹脂の合成条件は多様であり、一概に特定できないが、通常、120〜155℃の温度で行われ、空気中の水分の影響を低減するため、窒素などの雰囲気下で行うことが好ましい。
このようにして得られたポリアミドイミド樹脂溶液は、使用する際に必要に応じて適当な濃度に希釈される。希釈溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、キシレン、ジメチルスルホキサイド、N‐メチル‐2‐ピロリドンなどの極性溶媒の他に、助溶媒として、ポリオール類、これらの低級アルキルエーテル化物、アセチル化物などを用いても良い。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、イソプロピルアルコール又はそれらのモノメチルエーテル化物、モノエチルエーテル、モノイソプロピルエーテル化物、モノブチルエーテル化物、ジメチルエーテル化物及びこれらのモノアセチル化物等が使用される。
本発明の耐熱性樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂溶液に上記一般式(I)で表される多官能型ブロックイソシアネートを配合してなる。この化合物としては、日本ポリウレタン工業(株)製CORONATE 2503として入手可能である。上記一般式(I)で現される多官能型ブロックイソシアネートの添加量はポリアミドイミド樹脂100質量部に対して、1〜50質量部とすることが好ましく、5〜20質量部とすることがより好ましい。この配合量が1質量部未満だと耐溶剤性及び強度の向上効果が十分に得られず、50質量部を超えると得られる塗膜の柔軟性が低下する傾向がある。
上記一般式(I)で現される多官能型ブロックイソシアネートのポリアミドイミド樹脂溶液への配合は60℃以下の温度にて行うことが好ましい。また、この配合後の耐熱性樹脂組成物及び/又は塗料は40℃以下の温度にて保管されることが好ましい。40℃以下の条件ならば経日での塗料粘度の増大はほぼ抑制できる。
本発明による耐熱性樹脂組成物、およびこの耐熱性樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料は、被塗物に塗布、硬化させて、被塗物表面に塗膜を形成する。特に本発明による耐熱性樹脂組成物は、200℃程度で焼成した際に高耐溶剤性及び高強度性を有する塗膜を形成することができることから、高温での焼成に耐えられないアルミ等の基材に対して、多大な有益性を有している。
次に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではなく、発明の主旨に基づいたこれら以外の多くの実施態様を含むことは言うまでもない。
ジイソシアネート化合物として4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート1.05モル、酸成分として無水トリメリット酸1.0モル、塩基性極性溶媒としてN‐メチル‐2‐ピロリドン(N‐メチル‐2‐ピロリドンの使用量はジイソシアネート成分及び酸成分の総量100質量部に対して150質量部とした)を、温度計、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら約1時間かけて徐々に昇温して120℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら120℃を保持し、このまま約7時間加熱を続けた後反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
上記のポリアミドイミド樹脂溶液に60℃で多官能型ブロックイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製CORONATE 2503)をポリアミドイミド樹脂100質量部に対して20質量部となるように添加して攪拌溶解させ耐熱性樹脂組成物を得た。
ジイソシアネート化合物として4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート0.8モル、トリジンジイソシアネート0.25モル、酸成分として無水トリメリット酸1.0モル、塩基性極性溶媒としてN‐メチル‐2‐ピロリドン(N‐メチル‐2‐ピロリドンの使用量はジイソシアネート成分及び酸成分の総量100質量部に対して120質量部とした)を、温度計、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら約2時間かけて徐々に昇温して130℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら130℃を保持し、このまま約8時間加熱を続けた後反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
上記のポリアミドイミド樹脂溶液に60℃で多官能型ブロックイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製CORONATE 2503)をポリアミドイミド樹脂100質量部に対して15質量部となるように添加して攪拌溶解させ耐熱性樹脂組成物を得た。
(比較例)
ジイソシアネート化合物として4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート1.0モル、酸成分として無水トリメリット酸1.0モル、塩基性極性溶媒としてN‐メチル‐2‐ピロリドン(N‐メチル‐2‐ピロリドンの使用量はイソシアネート成分及び酸成分の総量100質量部に対して120質量部とした)を、温度計、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら約1時間かけて徐々に昇温して120℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら120℃を保持し、このまま約8時間加熱を続けた後反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
[試験例]
実施例1及び2、及び比較例で得られた耐熱性樹脂組成物(実施例1、2)とポリアミドイミド樹脂溶液(比較例)を鋼板(SPCC)に塗布し、80℃で10分間硬化させた後に200℃で30分間硬化させて、膜厚約20μmの塗膜板を形成した。この塗膜板をジメチルホルムアミド中に浸漬させ、20℃から30℃の温度で1時間超音波処理を行い、浸漬前後での重量を比較し塗膜の重量減少率(%)を算出した。この測定結果を纏めて表1に示した。
Figure 2014237783
表1において、実施例1及び2の重量減少率が0%というのはジメチルホルムアミドの浸漬後に塗膜の重量減少が見られなかったことを示し、比較例1の100%は塗膜がジメチルホルムアミドに完全に溶解したことを示す。
表1から、実施例1及び2で得られた耐熱性樹脂組成物から得られた塗膜は、比較例のポリアミドイミド樹脂溶液から得られた塗膜と比較して、耐溶剤性が著しく優れていることがわかる。
更に、実施例1及び2、及び比較例で得られた耐熱性樹脂組成物(実施例1、2)とポリアミドイミド樹脂溶液(比較例)からフィルムを作製し機械的特性を測定した。それぞれの測定条件を纏めて表3に、引張り強度及び引張り弾性率の測定結果を纏めて表2に、それぞれ示した。
Figure 2014237783
Figure 2014237783
表2より実施例1及び2で得られた耐熱性樹脂組成物から作製されたフィルムは、比較例のポリアミドイミド樹脂溶液から作製されたフィルムと比較して、引張り強度及び引張り弾性率が向上していることが分かった。
更に、実施例1及び2、及び比較例で得られた耐熱性樹脂組成物(実施例1、2)とポリアミドイミド樹脂溶液(比較例)を密閉容器内にそれぞれ入れ、この容器を40℃に設定した乾燥器内で1週間保管し、40℃保管前後での粘度変化率を測定した。この測定結果を纏めて表4に示した。
Figure 2014237783
表4より実施例1及び2で得られた耐熱性樹脂組成物は、比較例のポリアミドイミド樹脂溶液と比較して、粘度変化率はほぼ同等であり、経日での塗料粘度の安定性が低下していないことが分かった。
本結果より、本発明による耐熱性樹脂組成物が比較例に代表される従来のポリアミドイミド樹脂溶液と比較して、優れた耐溶剤性及び強度を有する塗膜を形成することができ、また経日での塗料粘度の安定性が低下していないことが分かった。このことから高温での焼成に耐えられないアルミ等の基材向けの塗料として、多大な有益性を有していることは明らかである。

Claims (3)

  1. 塩基性極性溶媒中で、アミン成分としてジアミン化合物及び/又はジイソシアネート化合物と、酸成分としてジカルボン酸化合物、ジオール化合物、三塩基酸無水物、三塩基酸無水物モノクロライド及び/又は四塩基酸無水物とを共重合させて得られるポリアミドイミド樹脂溶液に、多官能型ブロックイソシアネートとして一般式(I)
    Figure 2014237783
    (ただし、一般式(I)中、複数個のXはそれぞれ独立に、フェニル基、1個のメチル基で置換されているフェニル基または2個のメチル基で置換されているフェニル基を示す)で表される化合物を配合してなる耐熱性樹脂組成物。
  2. ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して上記一般式(I)で現される多官能型ブロックイソシアネートを1〜50質量部含有させる請求項1に記載の耐熱性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の耐熱性樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料。
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