JP2014229602A - 面状発熱体及びその製造方法 - Google Patents

面状発熱体及びその製造方法 Download PDF

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Ryo Tanaka
諒 田中
敏夫 鵜飼
Toshio Ukai
敏夫 鵜飼
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Abstract

【課題】発熱効率と遠赤外線の放射効率とを同時に高めた面状発熱体及びその製造方法を提供する。【解決手段】炭素繊維TFとパルプ繊維PFとを所定の割合で混抄した炭素繊維混抄シート1の両側端にそれぞれ電極2を形成した面状発熱体10であって、炭素繊維TFは、短繊維状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状繊維であること、炭素繊維混抄シート1の片面全体又は両面全体には、カーボン被膜3を形成した。【選択図】図1

Description

本発明は、融雪、暖房、乾燥等に使用される面状発熱体及びその製造方法に関する。特
に、炭素繊維とパルプ繊維とを混抄した炭素繊維混抄シートの表面にカーボン被膜等を形
成して、発熱効率と遠赤外線の放射効率を高めた面状発熱体及びその製造方法に関する。
一般に、面状発熱体は、ニクロム線ヒータやカーボンヒータのような線状発熱体と異な
り、広い範囲を均一に加熱できる点で、例えば、融雪マット、床暖房、野菜乾燥機など多
くの用途に使用されている。そのため、以下に説明するような各種構成の面状発熱体が発
明されている。
例えば、抵抗発熱材としての炭素繊維を方形形状の和紙の面全体に均一に分布して発熱
体シート(炭素繊維混抄シート)を形成し、炭素繊維混抄シート表面の両側端に溶射皮膜
からなる銅電極をそれぞれ形成し、発熱体シートの両面をFRP等の樹脂で被覆した面状
発熱体の発明が開示されている(特許文献1を参照)。この発熱体シートは、和紙を抄く
ときに炭素繊維が一緒に入れられて形成されている。
また、長さ3mm以上5mm未満及び5mm以上10mm以下の少なくとも2種類以上
の異なる長さを有するピッチ系炭素繊維及び/又はPAN系炭素繊維3〜20重量%と、
植物パルプ97〜80重量%とを含有する厚さ150μm以下、坪量55g/m以下の
炭素繊維混抄発熱シートの発明が開示されている(特許文献2を参照)。
また、ピッチ系炭素繊維及び/又はPAN系炭素繊維と、パルプ繊維シートとから成る
炭素繊維混抄シートに、導電性ペーストを規則的な配列パターンとなって印刷して成るこ
とを特徴とする炭素繊維混抄自由抵抗シートの発明が開示されている(特許文献3を参照
)。
特開平5−258842号公報 特開平2−154099号公報 特開2010−123452号公報
しかしながら、上述した特許文献1−3の発明においては、以下のような問題があった

まず、特許文献1の発明では、和紙を抄くときに炭素繊維を一緒に入れて発熱体シート
を形成するが、炭素繊維を和紙の面全体に均一に分布させることは、必ずしも容易ではな
い。
すなわち、炭素繊維は、1本1本の繊維自体に捲縮性を持たず、滑りやすいので、炭素
繊維同士が絡みにくいという性質がある。炭素繊維同士が絡みにくいので、略同一方向を
向いた炭素繊維は、紙抄き時に束状に集合して植物繊維の一部に偏析する傾向がある。こ
の偏析を回避して炭素繊維を植物繊維に均一に分散させるため、紙抄きの際に、炭素繊維
と植物繊維とを混合した水溶液を長時間攪拌すると、炭素繊維のフィラメント径は6〜8
μm程度と非常に細いので、炭素繊維が折り曲げられて折損する恐れがあった。そのため
、紙抄き時において、炭素繊維と植物繊維とを混合した水溶液を長時間攪拌することもで
きなかった。
したがって、紙抄きによって和紙の面全体に炭素繊維を均一に分布させる発熱体シート
を形成することは、必ずしも容易ではなく、発熱体シートにおける発熱効率を高める上で
、大きな障壁となっていた。
さらに、和紙の面全体に均一に炭素繊維を分布させることが困難であるため、発熱体シ
ートにおける炭素繊維の含有率を一定量以下に抑える必要があり、発熱効率と共に遠赤外
線の放射効率を高めることもできなかった。
また、特許文献2の発明では、長さ3mm以上5mm未満及び5mm以上10mm以下
の少なくとも2種類以上の異なる長さを有するピッチ系炭素繊維及び/又はPAN系炭素
繊維を使用するが、2種類以上の炭素繊維をそれぞれに均一に分散させるためには、炭素
繊維と植物繊維を混合した水溶液を長時間攪拌するか、2回以上に分けて攪拌する必要が
あり、結局、特許文献1の発明と同様の問題が生じることになる。また、2種類以上の異
なる長さの炭素繊維を使用するので、生産コストや生産効率も低下する問題もあった。
また、特許文献3の発明では、ピッチ系炭素繊維及び/又はPAN系炭素繊維と、パル
プ繊維シートとから成る炭素繊維混抄シートに、導電性ペーストを規則的な配列パターン
となって印刷して成るが、炭素繊維混抄シートの面全体で炭素繊維が絡み合って分散して
いないと、その上に規則的な配列パターンの導電性ペーストを印刷しても、結局、不均一
な温度分布となって、炭素繊維混抄自由抵抗シートにおける発熱効率を高めることは困難
であり、その結果、遠赤外線の放射効率も高めることができなかった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、発熱効率と
遠赤外線の放射効率とを同時に高めた面状発熱体及びその製造方法を提供することである
上記課題を解決するために、本発明の面状発熱体及びその製造方法は、次のような構成
を有している。
(1)炭素繊維とパルプ繊維とを所定の割合で混抄した炭素繊維混抄シートの両側端にそ
れぞれ電極を形成した面状発熱体であって、
前記炭素繊維は、短繊維状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状繊維であること

前記炭素繊維混抄シートの片面全体又は両面全体には、カーボン被膜を形成したことを
特徴とする。
本発明においては、炭素繊維は、短繊維状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状
繊維であるので、1本1本の短尺状の炭素繊維同士が互いに綿状に交絡している。そのた
め、炭素繊維とパルプ繊維とを混抄する紙抄き時に、炭素繊維同士が綿状に絡み合った状
態で、パルプ繊維と混ざり合うことができる。したがって、略同一方向を向いた炭素繊維
が束状に集合してパルプ繊維の一部に偏析する恐れが少ない。よって、炭素繊維混抄シー
トの面全体には、短尺状の炭素繊維を綿状に絡み合った状態のままパルプ繊維の間に分散
させることができる。その結果、炭素繊維とパルプ繊維とを混合した水溶液を攪拌する時
間を大幅に短縮でき、炭素繊維の折損等も防止できる。また、炭素繊維を綿状に絡み合っ
た状態のままパルプ繊維の間に分散させているので、炭素繊維混抄シートの面全体で温度
上昇させて、発熱効率を高めることができる。ここで、炭素繊維とパルプ繊維との混合比
率は、炭素繊維が20〜30重量%で、パルプ繊維が70〜80重量%であることが好ま
しい。なお、炭素繊維は、長さ5〜10cm程度に切断した炭素繊維原料から綿状に開繊
して積層した炭素繊維マットを、長さ5〜10mm程度の綿状繊維に加工したものでも良
い。炭素繊維マットの端材を切断して、再利用することで、炭素繊維原料の有効活用を行
うことができる。
また、炭素繊維混抄シートの片面全体又は両面全体には、カーボン被膜を形成したので
、炭素繊維の抵抗発熱を受けて、炭素繊維のみならずカーボン被膜からも遠赤外線を放射
することができる。すなわち、炭素繊維の抵抗発熱に伴う炭素繊維混抄シートの温度上昇
に応じて、カーボン被膜は加熱され、炭素繊維混抄シートの炭素繊維及び炭素繊維混抄シ
ートの片面全体又は両面全体に形成されたカーボン被膜から、それぞれ遠赤外線を重畳的
に放射することができる。その結果、発熱効率に加えて、遠赤外線の放射効率をも高める
ことができる。
よって、本発明によれば、発熱効率と遠赤外線の放射効率とを同時に高めた面状発熱体
を提供することができる。
(2)炭素繊維とパルプ繊維とを所定の割合で混抄した炭素繊維混抄シートの両側端にそ
れぞれ電極を形成した面状発熱体であって、
前記炭素繊維は、短繊維状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状繊維であること

前記炭素繊維混抄シートの一方の片面全体には、カーボン被膜を形成し、前記炭素繊維
混抄シートの他方の片面全体には、遠赤外線放射物被膜を形成したことを特徴とする。
本発明においては、炭素繊維は、短繊維状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状
繊維であるので、1本1本の短尺状の炭素繊維同士が互いに綿状に交絡している。そのた
め、炭素繊維とパルプ繊維とを混抄する紙抄き時に、炭素繊維同士が綿状に絡み合った状
態で、パルプ繊維と混ざり合うことができる。したがって、略同一方向を向いた炭素繊維
が束状に集合してパルプ繊維の一部に偏析する恐れが少ない。よって、炭素繊維混抄シー
トの面全体には、短尺状の炭素繊維を綿状に絡み合った状態のままパルプ繊維の間に分散
させることができる。その結果、炭素繊維とパルプ繊維とを混合した水溶液を攪拌する時
間を大幅に短縮でき、炭素繊維の折損等も防止できる。また、炭素繊維を綿状に絡み合っ
た状態のままパルプ繊維の間に分散させているので、炭素繊維混抄シートの面全体で温度
上昇させて、発熱効率を高めることができる。ここで、炭素繊維とパルプ繊維との混合比
率は、炭素繊維が20〜30重量%で、パルプ繊維が70〜80重量%であることが好ま
しい。なお、炭素繊維TFは、長さ5〜10cm程度に切断した炭素繊維原料から綿状に
開繊して積層した炭素繊維マットを、長さ5〜10mm程度の綿状繊維に加工したもので
も良い。炭素繊維マットの端材を切断して、再利用することで、炭素繊維原料の有効活用
を行うことができる。
また、炭素繊維混抄シートの一方の片面全体には、カーボン被膜を形成し、炭素繊維混
抄シートの他方の片面全体には、遠赤外線放射物被膜を形成したので、炭素繊維の発熱を
受けて、炭素繊維のみならずカーボン被膜及び遠赤外線放射物被膜からも遠赤外線を放射
することができる。炭素繊維混抄シートの温度上昇に応じてカーボン被膜及び遠赤外線放
射物被膜は加熱され、炭素繊維混抄シートの炭素繊維、炭素繊維混抄シートの一方の片面
全体に形成されたカーボン被膜、及び炭素繊維混抄シートの他方の片面全体に形成された
遠赤外線放射物被膜から、それぞれ遠赤外線を重畳的に放射することができる。その結果
、発熱効率に加えて、遠赤外線の放射効率をも高めることができる。
よって、本発明によれば、発熱効率と遠赤外線の放射効率とを同時に高めた面状発熱体
を提供することができる。
(3)(1)又は(2)に記載された面状発熱体において、
前記炭素繊維混抄シートには、抵抗発熱が相対的に低い低発熱部と抵抗発熱が相対的に
高い高発熱部とを備え、
前記高発熱部と前記低発熱部とが、面全体で互いに分散して形成されたことを特徴とす
る。
本発明においては、炭素繊維混抄シートには、抵抗発熱が相対的に低い低発熱部と抵抗
発熱が相対的に高い高発熱部とを備えたので、電極間に所定の電源を接続したとき、抵抗
発熱が相対的に低い低発熱部は消費電力の少ない導通帯を形成し、抵抗発熱が相対的に高
い高発熱部は消費電力の多い抵抗帯を形成する。
また、高発熱部と低発熱部とが、面全体で互いに分散して形成されたので、電極間に所
定の電源を接続したとき、各高発熱部には消費電力の少ない低発熱部(導通帯)を経由し
て多くの電流が印加される。そのため、面全体で分散して形成された各高発熱部には、そ
れぞれ隣接する低発熱部(導通帯)を経由して発熱に必要な多くの電流が略均等に印加さ
れることになる。したがって、仮に低電圧の電源を使用しても、低発熱部の間に分散した
それぞれの高発熱部において略均等な高い発熱を確保でき、炭素繊維混抄シートの面全体
でより高い発熱効果を得ることができる。
よって、本発明によれば、より少ない消費電力で発熱効率と遠赤外線の放射効率を高め
た面状発熱体を提供することができる。
(4)(3)に記載された面状発熱体において、
前記低発熱部における炭素繊維の混合比率が20重量%以上40重量%以下で、前記高
発熱部における炭素繊維の混合比率が10重量%以上20重量%未満であることを特徴と
する。
本発明においては、低発熱部における炭素繊維の混合比率が20重量%以上40重量%
以下であるので、互いに絡み合った炭素繊維同士の繊維接触が密になり炭素繊維間の電気
抵抗を減少させて、電気伝導性を向上させることができる。また、高発熱部の炭素繊維の
混合比率が10重量%以上20重量%未満であるので、互いに絡み合った炭素繊維同士の
繊維接触が粗になり炭素繊維間の電気抵抗を増加させて、抵抗発熱を向上させることがで
きる。なお、低発熱部における炭素繊維の混合比率を40重量%以下としたのは、炭素繊
維の混合比率が40重量%を超えると、パルプ繊維の混合比率が相対的に低下して繊維の
結合強度が低下するので、炭素繊維混抄シートの強度上好ましくないからである。また、
高発熱部における炭素繊維の混合比率を10重量%以上としたのは、炭素繊維の混合比率
が10重量%を下回ると、パルプ繊維の混合比率が相対的に増加して炭素繊維同士が互い
に分離する割合が高くなるので、抵抗発熱しない炭素繊維が増加して発熱効果を得にくく
なるからである。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された面状発熱体の製造方法において、
前記炭素繊維を短繊維状に切断した炭素繊維原料から綿状繊維に開繊する炭素繊維開繊
工程と、
前記炭素繊維開繊工程にて綿状繊維に開繊した炭素繊維と前記パルプ繊維とを所定の粘
着剤を含む水溶液で混抄する紙抄き工程と、
前記紙抄き工程にて混抄した炭素繊維混抄シートにカーボン樹脂液を塗工してカーボン
被膜を形成するカーボン被膜形成工程と、を備えることを特徴とする。
本発明においては、炭素繊維を短繊維状に切断した炭素繊維原料から綿状繊維に開繊す
る炭素繊維開繊工程と、炭素繊維開繊工程にて綿状繊維に開繊した炭素繊維とパルプ繊維
とを所定の粘着剤を含む水溶液で混抄する紙抄き工程とを備えるので、炭素繊維を短繊維
状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状繊維とし、炭素繊維同士を互いに綿状に絡
み合わせた状態で、紙抄き工程において、炭素繊維とパルプ繊維とを混抄させることがで
きる。そのため、紙抄き工程において、略同一方向を向いた炭素繊維が束状に集合してパ
ルプ繊維の一部に偏析する恐れが大幅に減少する。また、炭素繊維が偏析する恐れが大幅
に減少するので、炭素繊維とパルプ繊維とを混合した水溶液を攪拌する時間を大幅に短縮
でき、炭素繊維の折損等も防止できる。その結果、炭素繊維混抄シートの面全体に綿状に
絡み合った短尺状の炭素繊維をパルプ繊維の間に分散させることができ、面全体で温度上
昇させて発熱効率の高い炭素繊維混抄シートを製造することができる。
また、紙抄き工程にて混抄した炭素繊維混抄シートにカーボン樹脂液を塗工してカーボ
ン被膜を形成するカーボン被膜形成工程を備えるので、炭素繊維の発熱を受けて、遠赤外
線を放射するカーボン被膜を炭素繊維混抄シートの全面に形成することができる。そのた
め、カーボン被膜は、炭素繊維混抄シートの温度上昇に応じて加熱されると、遠赤外線を
放射することができる。したがって、炭素繊維及びカーボン被膜から、それぞれ遠赤外線
を重畳的に放射する面状発熱体を製造することができる。
よって、本発明によれば、発熱効率と遠赤外線の放射効率とを同時に高めた面状発熱体
の製造方法を提供することができる。
本発明によれば、発熱効率と遠赤外線の放射効率とを同時に高めた面状発熱体及びその
製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る面状発熱体の平面図である。 図1に示す面状発熱体におけるA−A断面図である。 図1に示す炭素繊維混抄シートの顕微鏡写真である。 図1に示す炭素繊維混抄シートに塗工したカーボン被膜の顕微鏡写真である。 図1に示す面状発熱体の変形例におけるA−A断面図である。 図5に示す炭素繊維混抄シートに塗工した遠赤外線放射物被膜の顕微鏡写真である。 図1に示す面状発熱体における炭素繊維混抄シートのB部模式的拡大図である。 図1に示す面状発熱体におけるC部の模式的拡大図である。 図1に示す面状発熱体の製造工程を示すフローチャートである。 図1に示す面状発熱体の試験結果(放射発散度)である。 図1に示す面状発熱体の試験結果(放射率)である。 図1に示す面状発熱体の試験結果(温度差)である。
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
はじめに、本実施形態の面状発熱体の基本構造を説明した後、その変形例について説明
する。次に、本実施形態の炭素繊維混抄シートにおける低消費電力型発熱部について詳細
に説明し、本実施形態の炭素繊維混抄シートに塗工したカーボン被膜における遠赤外線の
放射メカニズムを詳細に説明する。最後に、本実施形態の面状発熱体の製造工程、試験結
果、及び主な用途について説明する。
<面状発熱体の基本構造>
まず、本実施形態に係る面状発熱体の基本構造について、図1〜図4を用いて説明する
。図1に、本実施形態に係る面状発熱体の平面図を示す。図2に、図1に示す面状発熱体
におけるA−A断面図を示す。図3に、図1に示す炭素繊維混抄シートの顕微鏡写真を示
す。図4に、図1に示す炭素繊維混抄シートに塗工したカーボン被膜の顕微鏡写真を示す
図1、図2に示すように、面状発熱体10は、炭素繊維混抄シート1と、電極2と、カ
ーボン被膜3とを備える。
炭素繊維混抄シート1は、炭素繊維とパルプ繊維とを所定の割合で混抄した矩形状の発
熱シートである。炭素繊維混抄シート1の厚さは、0.1〜0.3mm程度である。炭素
繊維は、PAN系炭素繊維又は、ピッチ系炭素繊維のいずれでもよい。パルプ繊維は、針
葉樹、広葉樹等の木材繊維又は、楮、三椏等の靱皮繊維などが該当する。木材繊維又は靱
皮繊維等に、繊維強化材としてマニラ麻、ザイル麻等の葉繊維を混入しても良い。炭素繊
維とパルプ繊維との混合比率は、炭素繊維が20〜30重量%程度で、パルプ繊維が70
〜80重量%程度である。炭素繊維は、長さ5〜10mm程度の短繊維状に切断した炭素
繊維原料から開繊された綿状繊維である。炭素繊維同士は、互いに綿状に絡み合っている
。互いに綿状に絡み合った炭素繊維が、パルプ繊維と粘着剤とを含む水溶液に混入されて
、紙抄きによって炭素繊維混抄シート1を製造するので、炭素繊維混抄シート1には、面
全体に綿状に絡み合った短尺状の炭素繊維が分散している(図3を参照)。
図1、図2に示すように、電極2は、炭素繊維混抄シート1の両側端に銀ペースト等の
導電性接着剤を介して接合された金属箔である。電極2は、銅箔等の電気伝導率の高い金
属が好ましい。電極2には、図示しない接続端子が形成され、外部電源に接続されている
また、カーボン被膜3は、カーボン粒子が分散された水溶性樹脂液を炭素繊維混抄シー
ト1の一方の面全体に塗工された発熱兼遠赤外線放射被膜である。炭素繊維混抄シート1
には、カーボン粒子が分散された樹脂膜が形成されている(図4を参照)。なお、カーボ
ン皮膜3は、炭素繊維混抄シート1の両面全体に塗工しても良い。
水溶性樹脂液は、ウレタン系樹脂に水系架橋剤、増粘剤、界面活性剤等を配合した水溶
液である。カーボン粒子は、例えば、粒径が3〜500nm程度のカーボンブラックやア
セチレンブラック等が該当する。カーボン粒子は、粒径が数μm程度の黒鉛粒子にカーボ
ンブラックやアセチレンブラック等を混合したものでもよい。カーボン被膜の厚さは、数
十μm程度である。黒鉛粒子は、例えば、備長炭を粉末状に加工したものでもよい。
カーボン皮膜は、主に炭素繊維混抄シートに含まれる炭素繊維の発熱を受けて温度上昇
し、遠赤外線を放射する。また、カーボン皮膜は、電極2又は炭素繊維混抄シート1の炭
素繊維から分流される電流によって、自ら抵抗発熱することもできる。この抵抗発熱によ
ってカーボン被膜自身が温度上昇し、遠赤外線を放射する。
<面状発熱体の変形例>
次に、本実施形態に係る面状発熱体の変形例の構造について、図5、図6を用いて説明
する。図5に、図1に示す面状発熱体の変形例におけるA−A断面図を示す。図6に、図
5に示す炭素繊維混抄シートに塗工した遠赤外線放射物被膜の顕微鏡写真を示す。
図5に示すように、面状発熱体20は、炭素繊維混抄シート1と、電極2と、カーボン
被膜3と、遠赤外線放射物皮膜4とを備える。
面状発熱体20における、炭素繊維混抄シート1、電極2、カーボン被膜3は、上述し
た面状発熱体10の基本構造と共通している。そのため、炭素繊維混抄シート1、電極2
、カーボン被膜3については、共通の符号を付して詳細の説明を割愛する。
遠赤外線放射物皮膜4は、遠赤外線放射物粒子が分散された水溶性樹脂液を炭素繊維混
抄シート1の他方の面全体に塗工された遠赤外線放射被膜である。炭素繊維混抄シート1
には、遠赤外線放射物粒子が結合された粒子状薄膜が形成されている(図6を参照)。な
お、遠赤外線放射物4は、炭素繊維混抄シート1の両面全体に塗工しても良い。
遠赤外線放射物被膜を構成する遠赤外線放射物粒子には、例えば、上述した黒鉛粒子、
カーボンブラック、アセチレンブラックの他に、アルミナ(Al)や窒化珪素(S
)等のセラミックス粒子が該当する。遠赤外線放射物粒子は、黒鉛粒子、カーボ
ンブラック、アセチレンブラック等のカーボンと、アルミナ(Al)や窒化珪素(
Si)等のセラミックス粒子を混合してもよい。また、遠赤外線放射物粒子には、
ラジウム粉末やイオウ粉末を用いることもできる。遠赤外線放射物被膜の厚さは、数
十μm程度である。
なお、アルミナ(Al)や窒化珪素(Si)等のセラミックスは絶縁体で
あるため、カーボン粒子と異なり自ら抵抗発熱はしない。したがって、遠赤外線を放射す
るときの消費電力を低減することができる。また、遠赤外線の波長を用途に合わせて、変
更することができる。
<炭素繊維混抄シートにおける低消費電力型発熱部>
次に、本実施形態の炭素繊維混抄シート1における高発熱部12と低発熱部11からな
る省電力型発熱部について、図7を用いて説明する。図7に、図1に示す面状発熱体にお
ける炭素繊維混抄シートのB部模式的拡大図を示す。
前述したように、本実施形態の炭素繊維混抄シート1においては、炭素繊維は、短繊維
状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状繊維であるので、短尺状の炭素繊維同士が
互いに綿状に絡み合っている。
そのため、紙抄き工程において、炭素繊維とパルプ繊維の混合した水溶液を攪拌する初
期段階では、互いの繊維密度のバラつきによって、炭素繊維の混合比率が相対的に高い領
域と、炭素繊維の混合比率が相対的に低い領域とが、互いに分散して形成される。
図7に、炭素繊維の混合比率が相対的に高い領域(低発熱部11)と、炭素繊維の混合
比率が相対的に低い領域(高発熱部12)とが、互いに分散して形成された炭素繊維混抄
シート1の模式的拡大図を示す。
炭素繊維の混合比率が相対的に高い領域(低発熱部11)は、炭素繊維の混合比率が2
0〜40重量%程度である。この領域は、互いに絡み合った炭素繊維同士の繊維接触が密
になり電気抵抗が減少するので、抵抗発熱が相対的に低下する低発熱部11を構成する。
一方、炭素繊維の混合比率が相対的に低い領域(高発熱部12)は、炭素繊維の混合比
率が10〜20重量%程度である。この領域は、互いに絡み合った炭素繊維同士の繊維接
触が粗になり電気抵抗が増加するので、抵抗発熱が相対的に増大する高発熱部12を構成
する。
その結果、電極間に所定の電源を接続したとき、抵抗発熱が相対的に低い低発熱部11
は消費電力の少ない導通帯を形成し、抵抗発熱が相対的に高い高発熱部12は消費電力の
多い抵抗帯を形成する。
ここで、高発熱部12と低発熱部11とは、面全体で互いに分散して形成されるので、
電極間に所定の電源を接続したとき、各高発熱部12には消費電力の少ない低発熱部11
(導通帯)を経由して電流が多く印加される。
そのため、分散した各高発熱部12には、それぞれ隣接する低発熱部から多くの電流が
供給されることになる。したがって、仮に低電圧の電源を使用しても、分散したそれぞれ
の高発熱部12において略均等な高い発熱を確保でき、炭素繊維混抄シート1の面全体で
より高い発熱効果を得ることができる。
よって、炭素繊維混抄シート1において、互いに絡み合った炭素繊維の混合比率が相対
的に高い領域(低発熱部11)と、炭素繊維の混合比率が相対的に低い領域(高発熱部1
2)とを、面全体で互いに分散して形成することによって、低消費電力型発熱部を備える
炭素繊維混抄シート1を形成することができる。
<カーボン被膜における遠赤外線の放射メカニズム>
次に、本実施形態に係る炭素繊維混抄シート1に塗工したカーボン被膜3における遠赤
外線の放射メカニズムについて、図8を用いて説明する。図8に、図1に示す面状発熱体
におけるC部の模式的拡大図を示す。
図8に示すように、カーボン被膜3は、炭素繊維混抄シート1の上に形成されている。
カーボン被膜3には、カーボン粒子CBがウレタン系樹脂JMの中に略均等に分散されて
いる。ウレタン系樹脂JMは、炭素繊維混抄シート1の繊維中に含浸している。
炭素繊維混抄シート1は、綿状に絡み合った炭素繊維TFがパルプ繊維PFに混抄され
て形成されている。炭素繊維TF同士は、パルプ繊維PFと交差しながら互いに絡み合っ
ている。炭素繊維TF同士が絡み合って、繊維接触することによって、電子eの移動回路
v1が形成される。炭素繊維TFの混合比率が10〜20重量%程度では、繊維接触が粗
になり電気抵抗が増加し、抵抗発熱が増大する。炭素繊維TFの抵抗発熱は、塗工された
カーボン被膜3に分散されたカーボン粒子CBに伝達される。
カーボン粒子CB同士は、基本的にそれぞれ分離してウレタン系樹脂JMに分散されて
いるので、面方向の電気伝導性は低い。したがって、カーボン被膜3は、主に炭素繊維混
抄シート1の発熱を受けて温度上昇する。
しかし、カーボン粒子CBを微細化することによって、炭素繊維混抄シート1内にカー
ボン粒子CBが侵入して、直接炭素繊維TFと接触することができる。また、カーボン粒
子CBを微細化することによって、カーボン粒子CB同士の接触も増加する。カーボン粒
子CBが炭素繊維TFと接触し、カーボン粒子CB同士が接触することによって、カーボ
ン被膜3内で電子eの移動回路v2が形成される。これによって、カーボン被膜3自身の
抵抗発熱が生じて温度上昇する。
以上のように、カーボン被膜3は、主に炭素繊維混抄シート1の発熱を受けて温度上昇
することによって、遠赤外線を放射する。また、カーボン被膜3は、カーボン粒子CBを
微細化することによって、自己の抵抗発熱が生じて温度上昇し、遠赤外線を放射する。し
たがって、例えば黒鉛等の粒径が大きいカーボン粒子に、例えばカーボンブラックやアセ
チレンブラック等の粒径の小さいカーボン粒子を混合すると、発熱効率と遠赤外線の放射
効率をより一層高めることができる。
<面状発熱体の製造方法>
次に、本実施形態に係る面状発熱体の製造方法について、図9を用いて説明する。図9
に、図1に示す面状発熱体の製造工程を示すフローチャートを示す。
図9に示すように、本実施形態に係る面状発熱体の製造工程S0には、炭素繊維開繊工
程S1と、紙抄き工程S2と、カーボン被膜形成工程S3と、電極形成工程S4と、ラミ
ネート工程S5と、を備えている。
炭素繊維開繊工程S1は、炭素繊維を短繊維状に切断した炭素繊維原料から綿状繊維に
開繊する工程である。本工程S1では、長さ5〜10mm程度の短繊維に切断した炭素繊
維原料から開繊された炭素繊維を開繊シリンダと吸引ケージとの間に設けた空気室にて浮
遊させてから、吸引ケージに吸引して綿状に積層させる。そのため、開繊された炭素繊維
を空気室の中で1本1本バラバラに分離させることができる。また、綿状繊維を空気室に
て浮遊させてから、吸引ケージに吸引して積層させるので、1本1本の炭素繊維がバラバ
ラの向きで、互いに絡ませながら積層させることができる。さらに、綿状繊維は、空気中
に浮遊して分散するので、絡み合った炭素繊維が折損することもない。なお、長さ5〜1
0cm程度に切断した炭素繊維原料から綿状に開繊して積層した炭素繊維マットを切断し
て、長さ5〜10mm程度の綿状繊維に加工しても良い。炭素繊維マットの端材を切断し
て、再利用することで、炭素繊維原料の有効活用を行うことができる。
紙抄き工程S2は、炭素繊維開繊工程S1にて綿状繊維に開繊した炭素繊維とパルプ繊
維とを所定の粘着剤を含む水溶液で混抄して、炭素繊維混抄シート製造する工程である。
炭素繊維とパルプ繊維との混合比率は、炭素繊維が20〜30重量%程度で、パルプ繊維
が70〜80重量%程度である。粘着剤には、SBR(Styrene-Butadiene Rubber)な
どを用いることができる。粘度やぬれ性を調整するために、増粘剤や界面活性剤を含んで
もよい。増粘剤や界面活性剤としては、公知のものを使用することができる。本工程S2
では、炭素繊維同士を互いに綿状に絡み合わせた状態で、炭素繊維とパルプ繊維とを混合
させる。そのため、紙抄き時に、略同一方向を向いた炭素繊維が束状に集合してパルプ繊
維の一部に偏析する恐れが少ない。したがって、炭素繊維とパルプ繊維とを混合した水溶
液を攪拌する時間を大幅に短縮でき、炭素繊維の折損等も防止できる。
カーボン被膜形成工程S3は、紙抄き工程S2にて混抄した炭素繊維混抄シートにカー
ボン樹脂液を塗工してカーボン被膜を形成する工程である。カーボン樹脂液は、カーボン
粒子が分散された水溶性樹脂液である。水溶性樹脂液は、ウレタン系樹脂に水系架橋剤、
増粘剤、界面活性剤等を配合した水溶液である。カーボン粒子は、例えば、粒径が3〜5
00nm程度のカーボンブラックやアセチレンブラック等が該当する。カーボン粒子は、
粒径が数μm程度の黒鉛粒子にカーボンブラックやアセチレンブラック等を混合したもの
が好ましい。カーボン被膜の厚さは、数十μm程度である。本工程S3では、ロール状に
巻き取った炭素繊維混抄シートをテンションロールに導き、ガイド部材で位置規制しなが
ら、カーボン樹脂液を貯蔵する液パンに浸漬する塗工ロールを回転して炭素繊維混抄シー
トの面全体に塗工、乾燥してカーボン被膜を形成する。炭素繊維混抄シートへの塗工速度
は、3〜6m/分程度である。
電極形成工程S4は、カーボン被膜形成工程S3にてカーボン被膜を形成した炭素繊維
混抄シート1の対向する両側端に銅箔等の電極を接合する工程である。電極を接合する炭
素繊維混抄シート1の両面には、銀ペースト等の導電性ペーストを塗布すると、電極の発
熱を抑制できるので好ましい。電極には、外部電源に接続される接続端子が形成されてい
る。
ラミネート工程S5は、電極形成工程S4にて電極を形成した炭素繊維混抄シートの両
面全体を耐熱性、絶縁性を有する樹脂フィルムで被覆する工程である。樹脂フィルムには
、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等が該当する。
<遠赤外線の放射量及び放射率の試験結果>
次に、本実施形態に係る面状発熱体10における遠赤外線の放射量及び放射率の試験結
果について、図10、図11を用いて説明する。図10に、図1に示す面状発熱体の試験
結果(放射発散度)を示す。図11に、図1に示す面状発熱体の試験結果(放射率)を示
す。
日本工業規格JIS Z 8117では、放射率とは、「放射体の放射発散度とその放射体と同温
度の黒体の放射発散度との比」として定義されている。また、日本工業規格JIS R 1801に
は、FTIR(Fourier transform infrared spectrophotometer:フーリエ変換赤外分光
光度計)を用いた放射率測定方法が規定されている。ここでは、日本工業規格JIS R 1801
に準じて、FTIRを用いて、波長2.5μmから波長25μmの範囲で、遠赤外線の放
射率を測定した。放射体の測定温度は、160℃程度である。
図10において、縦軸は、放射体の放射発散度(W/m/μm)を示し、横軸は、遠
赤外線の波長(μm)を示す。測定データg1は、カーボン被膜が未塗工の炭素繊維混抄
シート1の放射発散度であり、測定データg2は、片面全体にカーボン被膜を塗工した炭
素繊維混抄シート1(本実施形態に係る面状発熱体10)の放射発散度であり、測定デー
タg3は、黒体の放射発散度である。
図10に示すように、測定データg1の最大値は、波長6〜7μm程度のとき、0.1
32(W/m)であり、測定データg2の最大値は、波長6〜7μm程度のとき、0.
152(W/m)であった。放射発散度は、単位面積当たりのエネルギー量を示すので
、波長6〜7μmにおいて放射量が最大となることを意味する。
また、カーボン被膜を塗工した場合(g2)には、カーボン被膜を塗工しなかった場合
(g1)に比較して、遠赤外線の放射量が、最大となる波長領域で、15%程度増加して
いることが分かる。
なお、野菜乾燥等において、対象物体を構成する分子の固有振動と共振させることので
きる波長は、6〜12μm程度であることが知られている。したがって、本実施形態に係
る面状発熱体10は、遠赤外線の波長領域の選定においても、野菜乾燥等に有効に作用す
る。
図11において、縦軸は、放射体の放射率(%T)を示し、横軸は、遠赤外線の波長(
μm)を示す。測定データh1は、カーボン被膜が未塗工の炭素繊維混抄シート1の放射
率であり、測定データh2は、片面全体にカーボン被膜を塗工した炭素繊維混抄シート1
(本実施形態に係る面状発熱体10)の放射発率である。
図11に示すように、測定データh1は、波長6〜12μmの範囲において、70%T
程度で略均一に推移し、波長12〜24μmの範囲において、70%T程度から75%T
程度まで僅かに増加しながら推移した。
測定データh2は、波長6〜12μmの範囲において、80%T程度から85%Tまで
増加しながら推移し、波長12〜24μmの範囲において、85%T程度から95%T程
度まで増加しながら推移した。
したがって、カーボン被膜を塗工した場合(h2)には、カーボン被膜を塗工しなかっ
た場合(h1)に比較して、遠赤外線の放射率が、波長6〜12μmの範囲(野菜乾燥等
において有効に作用する波長領域)で、10〜15%程度増加していることが分かる。な
お、波長12〜24μmの範囲においても、10%以上増加している。
以上の試験結果から分かるように、本実施形態に係る面状発熱体10は、片面全体にカ
ーボン被膜を形成することによって、遠赤外線の放射量及び放射率を、10%以上増加さ
せることができた。特に、野菜乾燥等に有効に作用する遠赤外線の波長域において、放射
量及び放射率を、最大で15%程度増加させることができた。
<面状発熱体の温度変化の試験結果>
次に、本実施形態に係る面状発熱体10、20における環境温度に追従する温度変化の
試験結果について、図12を用いて説明する。図12に、図1に示す面状発熱体の試験結
果(温度差)を示す。
図12は、試験紙を水槽に浮かべたステンレスバット上に載せて、水槽の温度を35℃
から40℃まで1℃ずつ増加させたとき、試験紙の表面温度をサーモグラフィー撮影によ
って測定したデータ表である。
ここで、NO.1の試験紙AAは、炭素繊維混抄シート1でカーボン被膜未塗工の試料であ
る。また、NO.2の試験紙BBは、炭素繊維混抄シート1でカーボン被膜裏面塗工(本実施
形態の面状発熱体10)の試料である。また、NO.3の試験紙CCは、炭素繊維混抄シート
1でカーボン被膜裏塗工かつセラミック皮膜表面塗工(本実施形態の面状発熱体20)の
試料である。
図12に示すように、試験紙AA、BB、CCは、いずれも水槽の温度上昇に追従して
温度上昇し、温度上昇量は、試験紙CC>試験紙BB>試験紙AAの順であることが分か
った。
したがって、炭素繊維混抄シート1にカーボン被膜を形成することによって、発熱しや
すくなり、また、セラミック皮膜を形成することによって、更に発熱しやすくなることが
言える。
以上の試験結果から分かるように、本実施形態に係る面状発熱体10は、片面全体又は
両面全体にカーボン被膜を形成することによって、発熱効率が向上し、本実施形態に係る
面状発熱体20は、一方の片面全体にカーボン被膜を形成し、他方の片面全体にセラミッ
ク皮膜を形成することによって、更に発熱効率が向上することが言える。
<主な用途>
次に、本実施形態に係る面状発熱体10、20の主な用途を説明する。
(1)融雪関連の用途
例えば、一般道路、駐車場コンクリート、玄関先通路等に埋設して融雪マットに利用す
ることができる。また、屋根の融雪ヒータとしても利用することができる。
(2)住宅関連の用途
例えば、床暖房マット、台所敷きマット、便座の温熱マットに利用することができる。
(3)農業関連の用途
例えば、野菜乾燥機、温室での育苗・苗床用ヒーター、動物用飼育マット等に利用する
ことができる。
(4)医療関係の用途
例えば、電気パット加湿装置(管理医療機器)、家庭用電位温熱治療マット等に利用す
ることができる。
(5)衣料関連の用途
例えば、寒冷地用の野外作業用衣料製品に内蔵して利用することができる。
(6)産業設備関連の用途
例えば、寒冷地送油管・パイプラインの凍結防止シート、寒中コンクリート養生シート
、各種タンク保温シート、養殖・家畜飼育場保温シート、岩盤浴の加熱シート等に利用す
ることができる。
<本実施形態の作用効果>
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る面状発熱体10、20によれば、炭素繊
維TFは、短繊維状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状繊維であるので、1本1
本の短尺状の炭素繊維同士が互いに綿状に交絡している。そのため、炭素繊維TFとパル
プ繊維PFとを混抄する紙抄き時に、炭素繊維TF同士が綿状に絡み合った状態で、パル
プ繊維PFと混ざり合うことができる。したがって、略同一方向を向いた炭素繊維TFが
束状に集合してパルプ繊維PFの一部に偏析する恐れが少ない。よって、炭素繊維混抄シ
ート1の面全体には、短尺状の炭素繊維TFを綿状に絡み合った状態のままパルプ繊維P
Fの間に分散させることができる。その結果、炭素繊維TFとパルプ繊維PFとを混合し
た水溶液を攪拌する時間を大幅に短縮でき、炭素繊維TFの折損等も防止できる。また、
炭素繊維混抄シート1の面全体で温度上昇させて、発熱効率を高めることができる。なお
、炭素繊維TFは、長さ5〜10cm程度に切断した炭素繊維原料から綿状に開繊して積
層した炭素繊維マットを、長さ5〜10mm程度の綿状繊維に加工したものでも良い。炭
素繊維マットの端材を切断して、再利用することで、炭素繊維原料の有効活用を行うこと
ができる。
また、本実施形態に係る面状発熱体10によれば、炭素繊維混抄シート1の片面全体又
は両面全体には、カーボン被膜3を形成したので、炭素繊維TFの抵抗発熱を受けて、炭
素繊維TFのみならずカーボン被膜3からも遠赤外線を放射することができる。炭素繊維
混抄シート1の温度上昇に応じてカーボン被膜3は加熱され、炭素繊維混抄シート1の炭
素繊維TF及び炭素繊維混抄シート1の片面全体又は両面全体に形成されたカーボン被膜
3から、それぞれ遠赤外線を重畳的に放射することができる。その結果、発熱効率に加え
て、遠赤外線の放射効率をも高めることができる。
また、本実施形態に係る面状発熱体20によれば、炭素繊維混抄シート1の一方の片面
全体には、カーボン被膜3を形成し、炭素繊維混抄シート1の他方の片面全体には、遠赤
外線放射物被膜4を形成したので、炭素繊維TFの発熱を受けて、炭素繊維TFのみなら
ずカーボン被膜3及び遠赤外線放射物被膜4からも遠赤外線を放射することができる。炭
素繊維混抄シート1の温度上昇に応じてカーボン被膜3及び遠赤外線放射物被膜4は加熱
され、炭素繊維混抄シート1の炭素繊維TF、炭素繊維混抄シート1の一方の片面全体に
形成されたカーボン被膜3、及び炭素繊維混抄シート1の他方の片面全体に形成された遠
赤外線放射物被膜4から、それぞれ遠赤外線を重畳的に放射することができる。その結果
、発熱効率に加えて、遠赤外線の放射効率をも高めることができる。
また、本実施形態に係る面状発熱体10、20によれば、炭素繊維混抄シート1には、
抵抗発熱が相対的に低い低発熱部11と抵抗発熱が相対的に高い高発熱部12とを備えた
ので、電極2間に所定の電源を接続したとき、抵抗発熱が相対的に低い低発熱部11は消
費電力の少ない導通帯を形成し、抵抗発熱が相対的に高い高発熱部12は消費電力の多い
抵抗帯を形成する。
また、高発熱部12と低発熱部11とが、面全体で互いに分散して形成されたので、電
極間に所定の電源を接続したとき、各高発熱部12には消費電力の少ない低発熱部11(
導通帯)を経由して多くの電流が印加される。そのため、面全体で分散して形成された各
高発熱部12には、それぞれ隣接する低発熱部11(導通帯)を経由して発熱に必要な多
くの電流が略均等に印加されることになる。したがって、仮に低電圧の電源を使用しても
、低発熱部11の間に分散したそれぞれの高発熱部12において略均等な高い発熱を確保
でき、炭素繊維混抄シート1の面全体でより高い発熱効果を得ることができる。
よって、より少ない消費電力で発熱効率と遠赤外線の放射効率を高めることができる。
また、本実施形態に係る面状発熱体10、20によれば、低発熱部11における炭素繊
維TFの混合比率が20重量%以上40重量%以下であるので、互いに絡み合った炭素繊
維TF間の電気抵抗を減少させて、電気伝導性を向上させることができる。また、高発熱
部12の炭素繊維TFの混合比率が10重量%以上20重量%未満であるので、互いに絡
み合った炭素繊維TF間の電気抵抗を増加させて、抵抗発熱を向上させることができる。
なお、低発熱部11における炭素繊維TFの混合比率を40重量%以下としたのは、炭素
繊維TFの混合比率が40重量%を超えると、パルプ繊維PFの混合比率が相対的に低下
して繊維の結合強度が低下するので、炭素繊維混抄シート1の強度上好ましくないからで
ある。また、高発熱部12における炭素繊維TFの混合比率を10重量%以上としたのは
、炭素繊維TFの混合比率が10重量%を下回ると、パルプ繊維PFの混合比率が相対的
に増加して炭素繊維TF同士が互いに分離する割合が高くなるので、抵抗発熱しない炭素
繊維TFが増加して発熱効果を得にくくなるからである。
また、他の実施形態に係る面状発熱体10、20の製造方法によれば、炭素繊維TFを
短繊維状に切断した炭素繊維原料から綿状繊維に開繊する炭素繊維開繊工程S1と、炭素
繊維開繊工程S1にて綿状繊維に開繊した炭素繊維TFとパルプ繊維PFとを所定の粘着
剤を含む水溶液で混抄する紙抄き工程S2とを備えるので、炭素繊維TFを短繊維状に切
断した炭素繊維原料から開繊された綿状繊維とし、炭素繊維TF同士を互いに綿状に絡み
合わせた状態で、紙抄き工程S2において、炭素繊維TFとパルプ繊維PFとを混抄させ
ることができる。そのため、紙抄き工程S2において、略同一方向を向いた炭素繊維TF
が束状に集合してパルプ繊維PFの一部に偏析する恐れが大幅に減少する。また、炭素繊
維TFが偏析する恐れが大幅に減少するので、炭素繊維TFとパルプ繊維PFとを混合し
た水溶液を攪拌する時間を大幅に短縮でき、炭素繊維TFの折損等も防止できる。その結
果、炭素繊維混抄シート1の面全体に綿状に絡み合った短尺の炭素繊維TFを略均一に分
散させることができ、面全体で温度上昇させて発熱効率の高い炭素繊維混抄シート1を製
造することができる。なお、炭素繊維開繊工程S1においては、長さ5〜10cm程度に
切断した炭素繊維原料から綿状に開繊して積層した炭素繊維マットを、長さ5〜10mm
程度の綿状繊維に加工しても良い。炭素繊維マットの端材を切断して、再利用することで
、炭素繊維原料の有効活用を行うことができる。
また、他の実施形態に係る面状発熱体10、20の製造方法によれば、紙抄き工程S2
にて混抄した炭素繊維混抄シート1にカーボン樹脂液を塗工してカーボン被膜3を形成す
るカーボン被膜形成工程S3を備えるので、炭素繊維TFの発熱を受けて、遠赤外線を放
射するカーボン被膜3を炭素繊維混抄シート1の全面に形成することができる。そのため
、カーボン被膜3は、炭素繊維混抄シート1の温度上昇に応じて加熱されると、遠赤外線
を放射することができる。したがって、炭素繊維TF及びカーボン被膜3から、それぞれ
遠赤外線を重畳的に放射する面状発熱体10、20を製造することができる。
本発明は、融雪、暖房、乾燥等に使用される面状発熱体及びその製造方法として利用す
ることができる。特に、炭素繊維混抄シートの表面にカーボン被膜等を形成して、発熱効
率と遠赤外線の放射効率を高めた面状発熱体及びその製造方法として利用できる。
1 炭素繊維混抄シート
2 電極
3 カーボン被膜
4 遠赤外線放射物皮膜
10 面状発熱体
11 低発熱部
12 高発熱部

Claims (5)

  1. 炭素繊維とパルプ繊維とを所定の割合で混抄した炭素繊維混抄シートの両側端にそれぞ
    れ電極を形成した面状発熱体であって、
    前記炭素繊維は、短繊維状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状繊維であること

    前記炭素繊維混抄シートの片面全体又は両面全体には、カーボン被膜を形成したことを
    特徴とする面状発熱体。
  2. 炭素繊維とパルプ繊維とを所定の割合で混抄した炭素繊維混抄シートの両側端にそれぞ
    れ電極を形成した面状発熱体であって、
    前記炭素繊維は、短繊維状に切断した炭素繊維原料から開繊された綿状繊維であること

    前記炭素繊維混抄シートの一方の片面全体には、カーボン被膜を形成し、前記炭素繊維
    混抄シートの他方の片面全体には、遠赤外線放射物被膜を形成したことを特徴とする面状
    発熱体。
  3. 請求項1又は請求項2に記載された面状発熱体において、
    前記炭素繊維混抄シートには、抵抗発熱が相対的に低い低発熱部と抵抗発熱が相対的に
    高い高発熱部とを備え、
    前記高発熱部と前記低発熱部とが、面全体で互いに分散して形成されたことを特徴とす
    る面状発熱体。
  4. 請求項3に記載された面状発熱体において、
    前記低発熱部における炭素繊維の混合比率が20重量%以上40重量%以下で、前記高
    発熱部における炭素繊維の混合比率が10重量%以上20重量%未満であることを特徴と
    する面状発熱体。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された面状発熱体の製造方法において、
    前記炭素繊維を短繊維状に切断した炭素繊維原料から綿状繊維に開繊する炭素繊維開繊
    工程と、
    前記炭素繊維開繊工程にて綿状繊維に開繊した炭素繊維と前記パルプ繊維とを所定の粘
    着剤を含む水溶液で混抄する紙抄き工程と、
    前記紙抄き工程にて混抄した炭素繊維混抄シートにカーボン樹脂液を塗工してカーボン
    被膜を形成するカーボン被膜形成工程と、を備えることを特徴とする面状発熱体の製造方
    法。
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