JP2014227368A - 糖尿病および高血糖状態の処置のためのグルカゴンアナログ - Google Patents

糖尿病および高血糖状態の処置のためのグルカゴンアナログ Download PDF

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Abstract

【課題】エキセンジン-4と同等の機能をもち、ヒトの配列に由来しており長期に渡り使用可能であると見込まれる新規ペプチドの提供。【解決手段】P1-P2-Xで表され、インスリンの分泌を促進し、かつ血糖値の上昇を抑制するペプチド(式中、P1は、特定な配列からなるアミノ酸配列のペプチドであり、P2は、10個以下のアミノ酸からなるペプチドであるかまたは結合であり、Xは、-Hまたは-NH2である。)好ましい例は、グルカゴンの2位と3位のアミノ酸をSQからGEに変えたグルカゴン-4およびオキシントモジュリンの2位と3位のアミノ酸をSQからGEに変えたオキシントモジュリン-4である。【選択図】なし

Description

本発明は、糖尿病の処置のための、医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、グルカゴンアナログを有効成分とする。
食物に含まれるグルコースは体内に取り込まれるとエネルギーとして利用されるが、インスリンの作用が弱いとグルコースを十分に利用できず、血糖値(血液中のグルコース濃度)が高くなる。糖尿病は、血糖値が病的に高い状態をさす病名であり、このような状態が続くと様々な合併症を発症する。
糖代謝は、腸管ホルモンのうち、特にグルカゴン関連ペプチドに深く関連する。158個のアミノ酸からなるプレ-プログルカゴンが、種々の組織で処理されて、いくつかの異なるグルカゴン関連ペプチド、例えば、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、およびオキシントモジュリンとなる。グルカゴンは、プレ-プログルカゴンのアミノ酸33〜61に相当する29アミノ酸からなるペプチドであり、GLP-1は、プレ-プログルカゴンのアミノ酸72〜108に相当する37アミノ酸からなるペプチドである。オキシントモジュリンは、N末端部にグルカゴン構造を含むアミノ酸37個からなる。グルカゴンとオキシントモジュリンとには、血糖値上昇作用とインスリン分泌促進作用が知られている。他方GLP-1は、グルカゴン等とは異なる様々の生物学的活性を有する。その作用としては、例えば、インスリン合成および分泌の刺激、グルカゴン分泌の抑制、食物摂取の抑制などが挙げられる。GLP-1は生体において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とともに、栄養素摂取により消化管から分泌され、膵臓からのインスリンの分泌を促進する作用、すなわちインクレチン作用の大部分を担っていると言われる。
我が国で2011年より糖尿病治療に用いられる特効薬エキセナチド(39個のアミノ酸からなるペプチド、エキセンジン-4)は、アメリカ毒トカゲの唾液毒から同定された。エキセンジン-4はGLP-1受容体作動薬であり、インスリンを分泌させる働きがある。グルカゴンとオキシントモジュリンのインスリン分泌促進作用を、GLP-1とエキセンジン-4が阻害したという報告がある(非特許文献1および2)。
オキシントモジュリンに関しては、細胞表面ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)による切断に対し、耐性を与える改変がされた類似体が提供されている。より詳細には、オキシントモジュリンの2位のSerの、Val、Ile、Asp、Glu、Met、Trp、Asn、D-Ala、D-Serまたはα-アミノイソ酪酸による置換により得られる誘導体は、DP-IVに対し野生型オキシントモジュリンよりもさらに抵抗性であるとして、オキシントモジュリンの2位における置換をもつペプチド類が提案されている(特許文献1)。
特表2009-527558公報
ThanThan, S, T. Saito, S. Yannaing, H. Zhao, K. Nakashima and H. Kuwayama; Glucagon-like peptide-1 inhibits insulinotropic effects of oxyntomodulin and glucagon in cattle; Domestic Animal Endocrinology 2012;42(3):155-164 ThanThan S, Zhao H, Yannaing S, Kuwayama H.; GLP-1 and Exendin-4 Inhibit Insulinotropic Effects of Glucagon and Oxyntomodulin in Cattle [abstract]. Diabetes 2012;61 (suppl 1): A689
エキセンジン-4は、ヒトのGLP-1とはアミノ酸配列が大きく異なるため、抗体生成により薬効が失われる恐れがある。薬剤として安全であり、エキセンジン-4と同等の機能をもち、しかもヒトの配列に由来しており長期に渡り使用可能であると見込まれる新規ペプチドがあれば、望ましい。
本発明者は、脳・消化管のペプチドホルモンについて鋭意研究してきた。その中で、エキセンジン-4の作用のためにはC末端側(29-39)配列ではなく、N末端の2および3位が重要であろうと推測した。そして天然のグルカゴンやオキシントモジュリンのアミノ酸配列において、N末端に近い2つのアミノ酸を置換した配列からなるペプチドが血糖値を下げる機能を有すること等を見出し、本発明を完成した。
[1] P1-P2-Xで表される、インスリンの分泌を促進し、かつ血糖値の上昇を抑制するペプチド
(式中、
P1は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドであり、
P2は、10個以下のアミノ酸からなるペプチドであるかまたは結合であり、
Xは、-Hまたは-NH2である。)
[2] P2が、結合であるかまたは下記のいずれかである、[1]に記載のペプチド:
配列番号4の30〜37位のアミノ酸の配列からなるペプチド(-KRNRNNIA)またはそのC末端に1若しくは2個のアミノ酸が付加したペプチド、
配列番号9の30〜38のアミノ酸の配列からなるペプチド(-GPSSGAPPP)またはそのC末端に1個のアミノ酸が付加したペプチド、もしくは
配列番号9の30〜39位のアミノ酸の配列からなるペプチド(-GPSSGAPPPS)。
[3] 下記のいずれかである、[2]に記載のペプチド:
P2が結合であり、Xが-Hであるペプチド、すなわち配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド; もしくは
配列番号3または5のアミノ酸配列からなるペプチド。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のペプチドを含む、医薬組成物。
[5] 高血糖状態または糖尿病を処置するための、[4]に記載の医薬組成物。
[6] 2型糖尿病の処置のための、[5]に記載の医薬組成物。
[7] 食後高血糖状態を処置するための、[5]に記載の医薬組成物。
[8] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のペプチドを含む、血糖値の上昇を抑制するための、医薬組成物。
[9] 経口または皮下投与するための、[1]〜[8]のいずれか一に記載の医薬組成物。
[10] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のペプチドを含む、グルカゴン受容体拮抗薬。
[11] グルカゴン過剰分泌による高血糖状態の処置のための、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のペプチドを含む、医薬組成物。
新規ペプチドglucagon -4およびoxyntomodulin-4が血糖値に与える影響。天然glucagonを投与すると、投与後60分にわたって血糖値が上昇するが、glucagonの2位と3位のアミノ酸をSQからGEに変えたglucagon-4の投与では、天然glucagonの生理作用に劇的な変化が起こり、図1に示したように投与後30分間は、逆に血糖値の減少が起こることが発見された。また、天然oxyntomodulinは、投与後弱い血糖値低下作用を示すが、天然oxyntomodulinの2位と3位のアミノ酸をSQからGEに変えたところ、投与後120分にわたって強いglucose濃度減少化活性を示すことが発見された。 新規ペプチドglucagon -4およびoxyntomodulin-4がinsulin分泌に与える影響。天然配列のglucagonの投与では、投与後10分でinsulin濃度が最大を示し、さらにglucose濃度上昇に伴って、投与後60分までなだらかに減少するinsulin分泌刺激が認められるが、glucagon-4では、insulin濃度は投与後2分で最大となり、exendin-4のインクレチン作用と類似の生理活性を示した。さらにoxyntomodulin-4では、インクレチン作用がさらに強く示された。 糖尿病モデルマウスへのoxyntomodulin-4の投与と血糖値変化。ヒト型oxyntomodulin-4またはウシ型oxyntomodulin-4を腹腔内に投与した1時間後、血中glucose濃度は約40%減少した。このglucose濃度減少は、対照として実施した天然配列のヒトoxyntomodulin腹腔内投与(1μg/g 体重)による11%減少または生理的食塩水投与による15%減少の、2〜3倍の効果である。 膵島培養によるinsulin分泌実験。実験培地中のマウスinsulin濃度は、125I標識ウシinsulinとguinea-pig anti-bovine insulin antiserumの反応に加える標準曲線insulinとして、ラットinsulinを用いたラジオイムノアッセイによる2抗体法で測定した。 膵島培養によるinsulin分泌実験。Glucose濃度に依存したinsulin分泌増強作用をマウス膵島で調べると、2.8 mMから8.3 mMにglucose濃度を上昇させた場合のインクレチン作用は、10 nM GLP-1の存在下では、insulin放出が1.6倍に、また10 nMヒト型oxyntomodulin-4の存在下では、insulin放出が2.4倍に増加している。これらの結果は、動物へのoxyntomodulin-4の投与によるinsulin濃度の増加は、oxyntomodulin-4が膵蔵ランゲルハンス島にインクレチンとして作用した結果であること、また、その作用は同じ濃度条件であれば、GLP-1よりもoxyntomodulin-4の方が強いことを示している。 Glucandinがinsulin分泌に与える影響。Glucandinは、oxyntomodulinと類似の作用を示した。 Glucandin-4がinsulin分泌に与える影響。Glucandin-4は、exendin-4およびGLP-1と同じインクレチン作用を示した。 Glucandin-4がinsulin分泌に与える影響。Glucandin-4は、exendin-4およびGLP-1と同じインクレチン作用を示した。投与量を増すと、類似の結果が得られた。
本発明において数値範囲を「n〜m」を用いて表すときは、特に記載した場合を除き、その範囲は両端の値nおよびmを含む。本発明で「アミノ酸」というときは、特に記載した場合を除き、L-アミノ酸を指す。また本発明では「アミノ酸」を、アミノ酸残基を指す意味で用いている場合がある。また本発明で「ペプチド」というときは、特に記載した場合を除き、複数のアミノ酸がアミド結合(ペプチド結合)したものをいい、アミノ酸の個数は限定されない。また本発明では「ペプチド」を、ペプチド基(ペプチドから誘導される基)を指す意味で用いている場合がある。
本発明は、グルカゴンアナログを有効成分として含む、医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物の有効成分として用いるグルカゴンアナログの好ましい例は、P1-P2-Xで表され、インスリンの分泌を促進し、かつ血糖値の上昇を抑制するペプチドである。式中、P1は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドであり、P2は、10個以下のアミノ酸からなるペプチドであるかまたは結合であり、Xは、-Hまたは-NH2である。Xが、-Hである場合とは、そのペプチドのC末端が、一般的なペプチドのC末端と同様、-COOHであることを示す。
より好ましい例においては、P2は、結合であるかまたは下記のいずれかである。
(1)配列番号4の30〜37位のアミノ酸の配列からなるペプチド(-KRNRNNIA)またはそのC末端に1若しくは2個のアミノ酸が付加したペプチド。
(2)(1)のペプチドのアミノ酸配列において、 1〜数個のアミノ酸を欠失、置換または付加した配列からなるペプチド。
(3)配列番号9の30〜38のアミノ酸の配列からなるペプチド(-GPSSGAPPP)またはそのC末端に1個のアミノ酸が付加したペプチド。
(4)(2)のペプチドのアミノ酸配列において、 1〜数個のアミノ酸を欠失、置換または付加した配列からなるペプチド。
(5)配列番号9の30〜39位のアミノ酸の配列からなるペプチド(-GPSSGAPPPS)。
(6)(5)のペプチドのアミノ酸配列において、 1〜数個のアミノ酸を欠失、置換または付加した配列からなるペプチド。
あるいは、本発明の医薬組成物の有効成分として用いるグルカゴンアナログの別の好ましい例は、下記のペプチドである。
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド;または
(b)配列番号1のアミノ酸配列において、2位と3位以外の1〜数個のアミノ酸を欠失、置換または付加した配列からなり、インスリンの分泌を促進し、かつ血糖値の上昇を抑制するペプチド。
(c)配列番号3または5のアミノ酸配列からなるペプチド;または
(d)配列番号3または5のアミノ酸配列において、2位と3位以外の1〜数個のアミノ酸を欠失、置換または付加した配列からなり、インスリンの分泌を促進し、かつ血糖値の上昇を抑制するペプチド。
本明細書の一部である配列表には、配列番号1としてグルカゴン-4のアミノ酸配列が、配列番号2としてグルカゴンのアミノ酸配列が、配列番号3としてヒト型オキシントモジュリン-4のアミノ酸配列が、配列番号4としてヒトオキシントモジュリンアミノ酸配列が、配列番号5としてウシ型オキシントモジュリン-4のアミノ酸配列が、配列番号6としてウシオキシントモジュリンアミノ酸配列が示されている。
糖代謝は、腸管ホルモンのうち特にグルカゴン関連ペプチドに深く関連している。グルカゴン関連ペプチドの配列を、下記に示す。
糖尿病薬の有効成分として用いられているエキセンジン-4 は39 個のアミノ酸からなり(下図)、GLP-1 とアミノ酸配列で53 %の同一性を有している。N 端から2番目のアミノ酸がグリシン(GLP-1 はアラニン)であるためにdipeptydil-peptidase-4(DPP-4) 抵抗性であり,皮下注射後の半減期が長い。
本発明により提供されるグルカゴン-4、ヒト型オキシントモジュリン-4、ウシ型オキシントモジュリン-4は、天然のグルカゴンまたはオキシントモジュリンのアミノ酸配列において、2位および3位の配列(SQ)をエキセンジン-4と同じ(GE)にしたペプチドである。
本発明により提供されるペプチドは、天然型よりもインビボでの安定性が期待できるほか、種々の新規な機能を有する。天然グルカゴンを投与すると、投与後60分にわたって血糖値が上昇するのに対し、本発明者の検討によると、グルカゴン-4の投与では、天然グルカゴンの生理作用に劇的な変化が起こり、投与後約30分間は、逆に血糖値の減少が起こることが発見された。また、天然オキシントモジュリンは、投与後弱い血糖値低下作用を示すが、オキシントモジュリン-4は、投与後120分にわたって強いグルコース濃度減少化活性を示すことが発見された。さらに天然のグルカゴンの投与では、投与後10分でインスリン濃度が最大を示し、さらにグルコース濃度上昇に伴って、投与後60分までなだらかに減少するインスリン分泌促進が認められるが、本発明者の検討によると、グルカゴン-4では、インスリン濃度は投与後2分で最大となり、エキセンジン-4のインクレチン作用と類似の生理活性を示した。さらにオキシントモジュリン-4では、インスリン分泌促進作用がさらに強く示された。
本発明者のさらなる検討によると、糖尿病モデルマウスへヒト型オキシントモジュリン-4またはウシ型オキシントモジュリン-4を腹腔内に投与した1時間後、血中グルコース濃度は約40%減少した。またGlucose濃度に依存したインスリン分泌増強作用をマウス膵島で調べると、GLP-1よりもオキシントモジュリン-4の方が強いことを示した。
本発明は、グルカゴン-4、ヒト型オキシントモジュリン-4、ウシ型オキシントモジュリン-4のほか、目的の効果を有する限り、その配列において、一または数個のアミノ酸が欠失(削除を含む。)、置換または付加(挿入を含む。)された配列からなる変異体も提供する。例えば、グルカゴン-4のC端側は、10個以下(例えば、4〜10個、より特定すると8〜10個)のアミノ酸配列からなるペプチドを付加することができるであろう。またオキシントモジュリン-4のC末端側の8個のアミノ酸配列からなるペプチド部分は、1〜数個のアミノ酸を欠失、置換または付加した配列からなるペプチドとすることができるであろう。本発明は、下記の配列からなるペプチドの活性について種々検討した結果、エキセンジン-4の作用は、C末端側の配列(29-39位)にあるのではなく、N端側の(2および3位)の配列が重要であると推定している。具体的には、グルカゴン-4のC末端側にアミノ酸8〜10個からなるペプチドが結合しているような構造を有するものは、グルカゴン-4と同様の活性が期待される。
置換等されるアミノ酸の個数は、そのアミノ酸配列からなるペプチドが所望の機能を有する限り特に限定されないが、例えば1〜10個、または1〜4個程度である。立体的な配置、空間的な動きやすさ、または性質(電荷および/または極性)の似たアミノ酸への置換等であれば、多数のアミノ酸が置換されていても、所望の機能を消失しないであろう。
アミノ酸の置換等は、静電的な変化をもたらさないような置換等、例えば、電荷および/または極性の似たアミノ酸への置換であってもよい。このような置換には、例えば、生理的pH(7.0)付近で側鎖(R基と表現されることもある。)が非極性の脂肪族側鎖を有するアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびプロリン等)どうしの置換、極性の非電荷型側鎖を有するアミノ酸(セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギンおよびグルタミン等)どうしの置換、生理的pH付近で側鎖が正電荷を有するアミノ酸(リシン、アルギニン、およびヒスチジン等)どうしの置換、極性アミノ酸どうしの置換、非極性アミノ酸どうしの置換がある。
変異体の一の態様においては、置換等は、本発明の特徴である、2位および3位の配列(GE)は維持するように行われることが好ましい。
一方、変異体の他の態様においては、2位および3位の配列(GE)もまた、ペプチドが目的の作用を失わない限り、置換等が行われていてもよい。このような置換等においては、立体的な形と空間的な動きやすさが重要であると推定される。
本発明で、あるペプチドが血糖値の上昇抑制作用を有するかどうかは、本明細書の実施例に記載したいずれかの方法により評価した際に、ペプチド投与後、数分(例えば約30分)までの間、天然グルカゴンを投与した場合または対照よりも、血液中のグルコース濃度が低いことをいう。
本発明で、あるペプチドが投与後比較的長期間にわたる血糖値の低減化を有するかどうかは、本明細書の実施例に記載したいずれかの方法により評価した際に、ペプチド投与後、数十分にわたって(例えば30分以上にわたって、好ましくは60分以上にわたって、より好ましくは90分以上にわたって)、天然オキシントモジュリンを投与した場合または対照よりも、血液中のグルコース濃度が低くなることをいう。
本発明で、あるペプチドが、インスリンの分泌を促進するかどうかは、本明細書の実施例に記載したいずれかの方法により評価した際に、ペプチド投与後、約10分までの間に、対照よりも血液中のインスリン濃度の上昇が見られることをいう。
本発明で「ペプチド」というとき、そのN末端および/C末端は、特に記載した場合を除き、製薬上許容される修飾が施されているものも含む。N末端は、例えば、Hisであるほか、イミダゾール-乳酸(ImiH);デスアミノ-His(ΔNH2-H);アセチルHis;ピログルタミルHis;N-メチル-His(Me-H);N,N-ジメチル-His(Me2-H);ベンゾイルHis(Bz-H)またはベンジルHis(Bzl-H)とすることができる。またC末端は、例えば、カルボン酸(-COOH)であるほか、製薬上許容されるその塩、カルボキサミド、第二級アミド、mPEGまたはコレステロールが化学結合により結合したものとすることができる。製薬上許容されるその塩には、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩)、アンモニウム塩、モノ-、ジ-またはトリ-低級(アルキルまたはヒドロキシアルキル)アンモニウム塩(例えばエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、トロメタミン塩)、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、アスパラギン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メシチレンスルホン酸塩およびナフタレンスルホン酸塩を挙げることができる。また、本発明化合物またはその塩についていうときは、無水物または溶媒和物であってよく、溶媒和物には、水和物、メタノール和物、エタノール和物、プロパノール和物、および2-プロパノール和物が含まれる。
本発明のペプチドは、ペプチド合成のための一般的な方法により、製造することができる。また本発明のペプチドは、必要に応じアルゴン置換しておけば、中性の水溶液状態または粉末状態で-30℃で、活性を失うことなく長期間保存することができる。
本発明のペプチドおよびその改変体は、グルカゴンおよびオキシントモジュリンが元来有するインスリンの分泌促進作用を有する。また本発明者の検討によると、本発明のペプチドおよびその改変体は、さらに血糖値の上昇抑制作用または長期の血糖値減少化作用を有する。したがって、本発明のペプチドおよびその改変体を有効成分とする医薬組成物は、高血糖状態または糖尿病の処置のために有用である。また本発明のペプチドおよびその改変体を有効成分とする医薬組成物は、2型糖尿病、食後高血糖状態、血糖値の上昇を抑制することが特に好ましい疾患または状態(例えば、動脈硬化等)の処置のために、用いうる。また本発明の医薬組成物は、摂食の低減処置および体重の低減処置のために用いることができ、また膵島からのグルコース刺激インスリン分泌を仲介し得、それにより例えば肥満症、糖尿病、メタボリックシンドローム、高血糖状態、空腹時グルコース障害、および他の前糖尿病状態のような代謝障害にかかっている対象(ヒトを含む哺乳動物)の処置のために、用いうる。
本発明の医薬組成物は単独で用いることができる。また、エキセンジン-4と同様、メトホルミンおよび/またはスルホニル尿素薬での治療効果が不十分な2型糖尿病患者のための併用療法に用いることができる。また、チアゾリジン薬での治療効果が不十分な2 型糖尿病患者のための併用療法においても用いることができる。
本発明者の検討によると、グルカゴン-4はグルカゴン受容体の弱いアンタゴニスト活性を有する。またオキシントモジュリンは天然の弱いグルカゴン受容体アンタゴニスト(拮抗薬)である一方で、オキシントモジュリン-4は、強力なグルカゴン受容体アンタゴニストに変化することが示された。また、本発明者の検討によると、ヨード標識オキシントモジュリン-4はウシ肝細胞膜分画に結合するが、ヨード標識エキセンジン-4はウシ肝細胞膜分画に結合しなかった。この結果はエキセンジン-4には肝グルカゴン受容体アンタゴニスト活性が無いことを示している。Glucagon過剰分泌による高血糖症状の治療においては、グルカゴン-4またはオキシントモジュリン-4の投与は、エキセンジン-4の投与より、有効であることが期待できる。すなわち、本発明の医薬組成物は、グルカゴン受容体拮抗薬として用いることができ、またグルカゴン過剰分泌による高血糖状態の処置のために用いることができる。なお本発明において「受容体拮抗薬」というときは、特に記載した場合を除き、受容体(例えばグルカゴン受容体)と相互作用し、受容体活性化による作用を阻害するものをいう。
本発明で「処置」というときは、特に記載した場合を除き、予防および治療を含む。予防は、発症リスクの低減を含む。本発明のペプチド及び医薬組成物は、治療のために用いうる。
本発明の医薬組成物においては、有効成分は1つであってもよく、複数のペプチドの組み合わせであってもよい。有効成分の含有量は(複数の有効成分を用いる場合は総量として)、0.0001〜5%、好ましくは0.001〜3%、より好ましくは0.05〜3%、特に好ましくは0.1〜1%程度である。また、0.001mg/kg〜10mg/kg、好ましくは1μg/kg〜200mg/kgの用量範囲でありうる。投与は、必要時に、数時間ごとに、または1〜数回/日、1回/1週間〜10日等の間隔で行うことができる。
本発明の医薬組成物の投与経路は、経口、注射(皮下、皮内、筋肉、静脈等)、口腔、または経皮とすることができる。本発明の医薬組成物は、投与経路に応じ、種々の剤形とすることができる。例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーゼ剤、懸濁剤、乳剤、注射剤、トローチ剤、舌下錠等とすることができる。
本発明の医薬組成物は、製薬上許容される種々の添加剤を含んでもよい。添加剤の例としては、例えば、賦形剤、コーティング剤、崩壊剤、安定剤、懸濁化剤・乳化剤、保存剤、殺菌剤または抗菌剤、香料または清涼化剤、糖類などの各種添加剤を挙げることができる。
本発明の医薬組成物は、他の有効成分を含むか、または他の有効成分を含む医薬組成物と併用してもよく、そのような有効成分には、シンバスタチン、メバスタチン、エゼチミブ、アトロバスタチン、シタグリプチン、メトホルミン、シブトラミン、オルリスタット、Qnexa、トピラマート、ナルトレキソン、ブプリオピオン、フェンテルミン、ロサルタン、ヒドロクロロチアジド、CB1アンタゴニスト/インバースアゴニスト、ACC−1/2阻害剤、MCH1Rアンタゴニスト、DP−IV阻害剤、他のペプチド類似体およびGLP-1の模倣薬がある。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施例1: 新規ペプチドによる血糖値減少作用〕
[実験方法]
Glucagon-4およびoxyntomodulin-4の合成
下記のアミノ酸配列からなるペプチドを合成した。
Glucagon-4
HGEGTFTSDY SKYLDSRRAQ DFVQWLMNT(配列番号1)
天然glucagon
HSQGTFTSDY SKYLDSRRAQ DFVQWLMNT(配列番号2)
ヒト/マウス型oxyntomodulin(OXM)-4のアミノ酸配列
HGEGTFTSDY SKYLDSRRAQ DFVQWLMNTK RNRNNIA(配列番号3)
天然ヒト/マウスoxyntomodulinアミノ酸配列
HSQGTFTSDY SKYLDSRRAQ DFVQWLMNTK RNRNNIA(配列番号4)
ウシ型oxyntomodulin(OXM)-4のアミノ酸配列
HGEGTFTSDY SKYLDSRRAQ DFVQWLMNTK RNKNNIA(配列番号5)
天然ウシoxyntomodulinアミノ酸配列
HSQGTFTSDY SKYLDSRRAQ DFVQWLMNTK RNKNNIA(配列番号6)
Wang Resin (1%DVD), 38〜75μm (200〜400mesh, 0.61mmol水酸基/g) は和光純薬(大阪)を購入。2.2当量のFmocアミノ酸をdichloromethane中で酸無水物とし、0.1当量のdimethylaminopyridine触媒下、dimethylformamide中で最初のFmocアミノ酸 (TまたはA) を樹脂に導入した。未反応水酸基はpyridine中でベンゾイル化cappingした。C末端から2位以降は、通常のFmocアミノ酸利用の固相ペプチド合成を実施した。合成ペプチドの樹脂からの取り出しは、94% trifuluoroacetic acid (TFA)/2.5% water/2.5% 2-ethandithiol/1% triisopropylsilaneの混合溶液中、室温で4時間分解した後、diethyl etherを加えてペプチドを沈殿させた。沈殿した粗ペプチドは、C18逆相カラム(TSKgel ODS-120A, 7.8mm x 30cm, TOSOH)に負荷し、0.1% TFA存在下で0〜60% CH3CNの直線濃度勾配により溶出精製し、遠心真空凍結乾燥により粉末とし、アルゴン下で-30℃保存した。天然glucagon、天然ウシおよびヒトoxyntomodulinも同様の方法で合成・精製し、対照区の実験で利用した。
動物実験開始2時間前、ウシの実験ではglucagonおよびglucagon-4は20mM NaOHに溶解し、oxyntomodulinおよびoxyntomodulin-4は10mM HClに溶解し(10mg/mL)、投与量を0.1% BSAを含む生理的食塩水5mlで希釈した。一方、マウスの実験では、oxyntomodulin-4 またはoxyntomodulinを生理的食塩水に溶かした(1 mg/mL)。また、膵島の実験では、ペプチドを純水に溶かした (1 mg/mL)。
新規ペプチドによる血糖値減少(ウシ)
帯広畜産大学肥育牛舎に2週齢ホルスタイン雄子牛を十勝中央家畜市場から8頭導入し、2ヶ月齢で去勢した後、自然明暗条件で群飼して飼育・馴化させた (5ヶ月齢、平均体重140kg±4.6kg)。実験前1月間および実験中は、配合飼料 (粗タンパク質16%,粗脂肪2%, 粗繊維9%, 粗灰分9%, 可消化養分総量73%、日清丸紅印配合飼料「ヘルシー育成/T」) を1日2回 (1kg/頭) 9:00および16:00に給餌し、チモシー乾草、鉱塩 (NaCl> 97%, Na 38.2%, Mg 0.2%, Zn 500mg/kg, Mn 500 mg/kg, Cu 150 mg/kg, Fe 300 mg/kg, Co 100 mg/kg, I 100 mg/kg, Se-yeast 0.3mg/kg, KNZ Japan Salt Licks)および水は自由採取とした。
実験の1日前に、ポリエチレンカテーテルを頸静脈に装着、ヘパリン入り生理食塩水(10 IU heprin/mL)で血液凝固を防止し、カテーテルはペプチドの投与と血液試料採取に利用した。実験中は、牛の寝起きを妨げない程度の緩い鎖でつなぎ、乾草と水は自由採取とした。配合給餌の影響を受けない12:00を0分として11:45から開始し、-15、0、2、5、10、15、20、30、45、60、75、90、105、120分に採血した。glucagon-4、またはウシoxyntomodulin-4 を体重kg当たり4.5μg、対照区にはvehicle (0.1% BSAを含む 生理食塩水)を投与し、血漿中のinsulinとglucose濃度の変化を調べた。供試全頭(N=8)に条件の異なる3種の試料を平等条件でランダムに3回の投与するラテン方格法で実験した。投与実験は2日間隔でおこない3回目の投与実験終了後にカテーテルを除去した。
[結果]
広く知られている生理現象であるが、天然glucagonを投与すると、投与後60分にわたって血糖値が上昇する(ThanThan, S, Y. Asada, T. Saito, K. Ochiiwa, H. Zhao, S. Yannaing and H. Kuwayama Oxyntomodulin attenuates exendin-4-induced hypoglycemia in cattle. Domestic Animal Endocrinology 2013; 44(2):70-80)。ところがglucagonの2位と3位のアミノ酸をSQからGEに変えたglucagon-4の投与では、天然glucagonの生理作用に劇的な変化が起こり、図1に示したように投与後30分間は、逆に血糖値の減少が起こることが発見された。
一方、天然oxyntomodulinは、投与後弱い血糖値低下作用を示すが、天然oxyntomodulinの2位と3位のアミノ酸をSQからGEに変えたところ、図1に示したように投与後120分にわたって強いglucose濃度減少化活性を示すことが発見された。この減少は、exendin-4と類似した長期のglucose濃度減少作用であり、oxyntomodulin-4がexendin-4と同様に糖尿病および高血糖の治療に使える可能性を強く示唆している。
glucagon受容体に対する天然の強力なアゴニストであるglucagonは、2位および3位のアミノ酸をSQからGEに改変させるとglucagon受容体の弱いアンタゴニスト活性に変化し、また天然の弱いglucagon受容体アンタゴニストであるoxyntomodulinにおいて、2位と3位のアミノ酸をSQからGEに改変することで、強力なglucagon受容体アンタゴニストに変化することが示された。生化学実験によれば(未発表データ)、ヨード標識oxyntomodulin-4はウシ肝細胞膜分画に結合するが、ヨード標識exendin-4はウシ肝細胞膜分画に結合しなかった。この結果はexendin-4には肝glucagon受容体アンタゴニスト活性が無いことを示している。Glucagon過剰分泌による高血糖症状の治療において、glucagon-4またはoxyntomodulin-4の投与は、exendin-4の投与より、有効であることを示唆している。
〔実施例2: 新規ペプチドによるinsulin分泌〕
[実験方法]
血液は、実施例1の試料を用いた。125I-insulinはbovine insulin (28.5 USP unit/mg, code I-5500, Sigma) をchloramine Tでヨード標識し、逆相HPLCで精製した。血漿insulin濃度は、guinea-pig anti-bovine insulin antiserum (code I-6136, Sigma)を用いるラジオイムノアッセイによる2抗体法で測定した (測定感度0.05ng/ml、測定精度4.0%)。
[結果]
天然配列のglucagonの投与では、投与後10分でinsulin濃度が最大を示し、さらにglucose濃度上昇に伴って、投与後60分までなだらかに減少するinsulin分泌刺激が認められる(ThanThan S, Zhao H, Yannaing S, Kuwayama H. GLP-1 and Exendin-4 Inhibit Insulinotropic Effects of Glucagon and Oxyntomodulin in Cattle [abstract]. Diabetes 2012;61 (suppl 1): A689)。ところが、天然glucagonにおいて2位と3位のアミノ酸をSQからGEに改変したglucagon-4では、図2のように、insulin濃度は投与後2分で最大となり、exendin-4のインクレチン作用と類似の生理活性を示した。さらに、天然oxyntomodulinにおいて、2位と3位のアミノ酸をSQからGEに改変したoxyntomodulin-4では、インクレチン作用がさらに強く示された。
これらの結果は、glucagon-4およびoxyntomodulin-4がインクレチン作用を有する物質として、糖尿病および高血糖症状の治療に利用できることを強く示唆している。また、天然glucagonと天然oxyntomodulinが元々持っているGLP-1受容体アゴニスト活性であるインクレチン作用は、それぞれの配列において2位と3位のアミノ酸をSQからGEに改変しても、大きな変化はないと解釈できる。
〔実施例3: 糖尿病モデルマウスへの投与と血糖値変化〕
[実験方法]
db/dbマウス (BKS.Cg-+Leprdb/ Leprdb/Jc1、14週齢、日本クレア)、雄6頭 (平均体重52.33g±0.11g)を4時間絶食させた。尾静脈より血液5μLを採取し、ヘパリン(0.05 IU)を含む生理的食塩水0.5μLと混合し、冷蔵保存した (この時をtime=0とする)。この採血直後に生理的食塩水に溶かしたヒトoxyntomodulin-4 (h.OXM-4)、ヒトoxyntomodulin (h.OXM)、またはウシoxyntomodulin-4 (b.OXM-4)を腹腔内に投与した(0.1mL/100g体重)。さらに60分後、尾静脈より血液5μLを採取し0.5μLのヘパリン(0.05 IU)と混合した。Glucose濃度は、冷却遠心して得られた血漿2μLをグルコースCII-テストワコー(和光純薬、大阪)の緩衝液20μLで希釈発色後 (37℃で20分) 、Nanodrop (Thermo Scientific)で測定した。
[結果]
結果を図3に示した。ヒトoxyntomodulin-4またはウシoxyntomodulin-4を腹腔内に投与(1μg/g 体重)して1時間後、glucose濃度は約40%減少した。このglucose濃度減少は、対照として実施した天然配列のヒトoxyntomodulin腹腔内投与(1μg/g 体重)による11%減少または生理的食塩水投与による15%減少の、2〜3倍の効果である。これらの高血糖モデルマウスへの投与実験は、天然oxyntomodulinにおいて2位と3位のアミノ酸をSQからGEに変えたoxyntomodulin-4が、糖尿病および高血糖動物の治療に有効であることを示している。
〔実施例4: 膵島培養(ICRマウス、♂、8〜9週齢)の実験〕
[実験方法]
マウス膵島は、ランゲルハンス島培養キット(PNI13、Lot No. MB2P-1、株式会社プライマリーセル、札幌)を利用し、Damdindorjら(Damdindorj B, Dezaki K, Kurashina T, Sone H, Rita R, Kakei M, Yada T. Exogenous and endogenous ghrelin counteracts GLP-1 action to stimulate cAMP signaling and insulin secretion in islet β-cells. FEBS Lett. 2012 ;586(16):2555-62.)の記述に従って0.5mM 3-isobutyl-1-methylxanthine (IBMX)を含むLHKRB培地 (129mM NaCl、5mM NaHCO3、4.7mM KCl、1.2mM KH2PO4、2mM CaCl2・2H2O、1.2mM MgSO4、10 mM HEPES、NaOHでpH 7.4とし、2mg/mL BSAを加えて、生じた沈殿物は0.45μfilterで濾過滅菌)を用いてインクレチン作用を調べた。膵島(約100個)は到着直後、キット付属の11 mM glucoseを含むRPMI1640血清培地10mLで37℃・5%CO2で1時間培養した。これを実体顕微鏡下で膵島5個ずつに分け、最終容量500μLのRPMI1640血清培地を加えた。遠心上清450μLを除去した膵島懸濁液に2.8mM glucoseを含むLHKRB培地450μLを加え、37℃・5%CO2で1時間培養した。もう一度遠心上清450μLを除去し、同じLHKRB培地450μLを加え37℃・5%CO2で1時間培養を繰り返した。遠心上清450μLを除去し、インクレチン効果を測定する最終条件の成分を含むLHKRB培地450μLを加え37℃・5%CO2で1時間培養し、遠心上清中に放出されたinsulinをラジオイムノアッセイで測定した。インクレチン効果を測定する最終条件は、1)2.8 mM glucose、2)8.3 mM glucose、3)8.3 mM glucose+10 nM GLP-1、4)8.3 mM glucose+10 nM ヒトoxyntomojyurin-4とした。培地中のマウスinsulin濃度は、125I標識ウシinsulinとguinea-pig anti-bovine insulin antiserum (code I-6136, Sigma)の反応に加える標準曲線insulinとして、ラットinsulinを用いたラジオイムノアッセイによる2抗体法で測定した。
[結果]
結果を図4および5に示した。Glucose濃度に依存したinsulin分泌増強作用をマウス膵島で調べると、図5に示すように2.8 mM から8.3 mMにglucose濃度を上昇させた場合のインクレチン作用は、10 nM GLP-1の存在下では、insulin放出が1.6倍に、また10 nMヒト型oxyntomodulin-4の存在下では、insulin放出が2.4倍に増加している。これらの結果は、動物へのoxyntomodulin-4の投与によるinsulin濃度の増加は、oxyntomodulin-4が膵蔵ランゲルハンス島にインクレチンとして作用した結果であること、また、その作用は同じ濃度条件であれば、GLP-1よりもoxyntomodulin-4の方が強いことを示している。
〔参考例〕
実施例の方法に準じて、下記のペプチドを牛(N=8)に投与して血糖値とインスリン変化を調べた。なお下記のペプチドの合成には、Rink-Amide-MBHA Resin(ペプチド研究所(大阪))を用いた (200-400mesh, 1%DVD, 200〜400 mesh, 0.37 mmol NH2/g) 。
Glucandin [glucagon-exendin(30-39)]
HSQGTFTSDY SKYLDSRRAQ DFVQWLMNTG PSSGAPPPS-NH2(配列番号17)
Glucandin-4 [glucagon-4-exendin(30-39)]
HGEGTFTSDY SKYLDSRRAQ DFVQWLMNTG PSSGAPPPS-NH2(配列番号18)
Glucandinは、oxyntomodulinと類似の作用を示した(図6)。またGlucandin-4は、exendin-4およびGLP-1と同じ作用を示したが(図7)、期待に反し、ウシ肝細胞膜分画への結合は弱いものであった。Glucandinの結果から、exendin-4の作用はC末端側(29-39)配列ではなく、N末端の2および3位が重要であろうと推測した。
Glucandinは、glucagonやoxyntomojyulinと似ており、ペプチド投与により血糖値が上昇し(データは示さず)、血糖上昇によりインスリンが分泌した。Glucandin-4は、exendin-4およびGLP-1と同じインクレチン作用を示した。投与量を増すと、類似の結果が得られた(図8)。
配列番号1:glucagon-4のアミノ酸配列
配列番号2:glucagonのアミノ酸配列
配列番号3:ヒト型oxyntomodulin-4のアミノ酸配列
配列番号4:ヒトoxyntomodulinのアミノ酸配列
配列番号5:ウシ型oxyntomodulin-4のアミノ酸配列
配列番号6:ウシoxyntomodulinのアミノ酸配列
配列番号7:GLP-1のアミノ酸配列
配列番号8:ウシGLP-2 のアミノ酸配列
配列番号9:exendin-3のアミノ酸配列
配列番号10:exendin-4のアミノ酸配列
配列番号11:exendin(1-26) のアミノ酸配列
配列番号12:exendin(4-39) のアミノ酸配列
配列番号13:exendin(5-39) のアミノ酸配列
配列番号14:exendin(9-39) のアミノ酸配列
配列番号15:exendin(30-39) のアミノ酸配列
配列番号16:glucagon antagonist のアミノ酸配列
配列番号17:glucagon-exendin(30-39) のアミノ酸配列
配列番号18:glucagon-4-exendin(30-39) のアミノ酸配列

Claims (11)

  1. P1-P2-Xで表され、インスリンの分泌を促進し、かつ血糖値の上昇を抑制するペプチド
    (式中、
    P1は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドであり、
    P2は、10個以下のアミノ酸からなるペプチドであるかまたは結合であり、
    Xは、-Hまたは-NH2である。)
  2. P2が、結合であるかまたは下記のいずれかである、請求項1に記載のペプチド:
    配列番号4の30〜37位のアミノ酸の配列からなるペプチド(-KRNRNNIA)またはそのC末端に1若しくは2個のアミノ酸が付加したペプチド、
    配列番号9の30〜38のアミノ酸の配列からなるペプチド(-GPSSGAPPP)またはそのC末端に1個のアミノ酸が付加したペプチド、もしくは
    配列番号9の30〜39位のアミノ酸の配列からなるペプチド(-GPSSGAPPPS)。
  3. 下記のいずれかである、請求項2に記載のペプチド:
    P2が結合であり、Xが-Hであるペプチド、すなわち配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド;もしくは
    配列番号3または5のアミノ酸配列からなるペプチド。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチドを含む、医薬組成物。
  5. 高血糖状態または糖尿病を処置するための、請求項4に記載の医薬組成物。
  6. 2型糖尿病の処置のための、請求項5に記載の医薬組成物。
  7. 食後高血糖状態を処置するための、請求項5に記載の医薬組成物。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチドを含む、血糖値の上昇を抑制するための、医薬組成物。
  9. 経口剤または注射剤である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  10. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチドを含む、グルカゴン受容体拮抗薬。
  11. グルカゴン過剰分泌による高血糖状態の処置のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチドを含む、医薬組成物。
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