JP2014226603A - 高分子ナノ微多孔膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本願の高分子ナノ微多孔膜の製造方法は、高分子溶液から作られる高分子ナノ微多孔膜の製造方法である。当該方法は、高分子を溶解した高分子溶液を用いて高分子ナノ微多孔膜を形成する工程と;沸点が前記高分子の結晶化温度以上の高沸点溶液を、前記高分子の結晶化温度以上、溶融温度未満の温度に加熱する工程と;加熱された前記高沸点溶液中で、形成された前記高分子ナノ微多孔膜を結晶化温度以上の温度に加熱する工程と;加熱後の前記高分子ナノ微多孔膜を洗浄する工程と;洗浄後の前記高分子ナノ微多孔膜を乾燥する工程とを備える。その結果、乾燥工程を経ても膜の流束が著しく低下することを防ぐことができる。
【選択図】なし
Description
このように構成すると、高分子ナノ微多孔膜を乾燥する前に、高分子の結晶化温度以上に加熱しているため、乾燥工程を経ても、膜の流束がゼロになるまたは濾過膜等として使用できないほどに著しく低下することを防ぐことができる。
このように構成すると、良溶媒に溶かした高分子を貧溶媒に混合または接触させることで、容易に相分離構造を誘起できるため、高分子ナノ微多孔膜を製造することが容易である。
このように構成すると、ポリフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニリデンを含む共重合体から形成された膜は、比較的やわらかく乾燥時にナノスケールの細孔がつぶれやすいため、前記結晶化温度以上に加熱する工程が特に有効である。
このように構成すると、適切な温度の高沸点溶液を大気圧下(標準気圧)で得ることができるため好ましい。
このように構成すると、分子量の大きい高沸点溶液は、高分子ナノ微多孔膜の流束の低下をより効果的に防止することができるため好ましい。
このように構成すると、製造された高分子ナノ微多孔膜は、細孔径が1ナノメートル〜100ナノメートルであり、細孔径分布が小さくなるため好ましい。
高分子ナノ微多孔膜の製造方法は、(1)高分子ナノ微多孔膜を形成する工程と、(2)沸点が高分子の結晶化温度以上の高沸点溶液を高分子の結晶化温度以上、融点温度未満に加熱する工程と、(3)加熱された高沸点溶液中で(1)で形成された高分子ナノ微多孔膜を高分子の結晶化温度以上に加熱する工程と、(4)加熱後の高分子ナノ微多孔膜を洗浄する工程と、(5)洗浄後の高分子ナノ微多孔膜を乾燥する工程を備える。
高分子ナノ微多孔膜を形成する工程は、ナノスケールの細孔を持つ膜を形成する工程である。膜の形成には、種々の製法があるが、ここでは一例として、高分子を溶解した高分子溶液から、ナノ粒子状ファイバーが高度に分散したナノ粒子状ファイバー分散液(単に分散液と呼ぶことがある)を製造した後、分散したナノ粒子状ファイバーを凝集させて膜を形成する製法を用いて説明する。
なお、高分子溶液とは、高分子を良溶媒に溶解した溶液である。
貧溶媒は、水、アルコールやこれらの混合溶媒を選択することができ、水またはアルコールが好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を用いることができる。また、アセトニトリルやアセトンなど、アルコールと同等の極性溶媒を単独、または混合溶媒として用いることもできる。
製造されるナノ粒子状ファイバー分散液は、ゲル化や沈殿、バルクにおける相分離を生じず、透明な分散液である。
高分子溶液を貧溶媒中に分散する際、混合した溶液を攪拌することが好ましい。これにより、高分子溶液をより短時間に貧溶媒中に分散させることができる。
各ナノ粒子の表面の高分子の間に取り込まれた貧溶媒の分子は、隣接する高分子の高分子鎖の間に空間を形成するとともに、隣接するナノ粒子の表面の高分子をその空間内に引き込み、隣接するナノ粒子の高分子同士を互いに絡み合わせることができ、ナノ粒子を強固に連結する。これにより、力学的強度の高い1ナノメートル〜100ナノメートルの太さのナノ粒子状ファイバーが形成される。
混合により、ナノ粒子状ファイバーが高度に分散したナノ粒子状ファイバー分散液が製造される。
高沸点溶液を加熱する工程は、沸点が高分子の結晶化温度以上の高沸点溶液を、高分子の結晶化温度以上、融点温度未満に加熱する工程である。沸点は、溶液が置かれる環境の圧力によって定まる。本実施の形態では、加熱は大気圧下(標準気圧)で行う。
高沸点溶液は、(1)で形成された高分子ナノ微多孔膜を加熱するための溶液であり、その沸点が高分子の結晶化温度以上である溶液であればよい。高沸点溶液は、純物質であってもよいし、複数の成分を混合したものでもよい。例えば、ポリエチレングリコール、グリセリンから選ばれる少なくとも1種の溶液を挙げることができる。特に、重量平均分子量が200以上のポリエチレングリコールが好ましい。複数の成分を混合したものとしては、例えばポリエチレングリコールとグリセリンを混合した液が挙げられる。あるいは、本願の効果を妨げない範囲で水等の、沸点が高分子の結晶化温度未満の低沸点溶液を少量混合してもよい。本願の方法を連続して行う場合、処理する高分子ナノ微多孔膜に付着していた水分等が混入する場合があるが、少量であれば本願の効果を失うものではない。処理効果のばらつきを無くすために、高分子ナノ微多孔膜中の低沸点溶液濃度が一定になるように、意図的に少量の低沸点溶液を混入して液を調整しても良い。しかし、大量に混ぜることは、加熱中にその液が沸騰するため好ましくない。
高沸点溶液を加熱する方法は特に限定されない。しかし、高分子は、分子構造や重合度、組成などにより多様な結晶化温度を示し、高分子ナノ微多孔膜を一様に加熱するには、100℃以上に加熱可能なオイルバス等を用いて、さらに間接的に加熱することが好ましい。あるいは、高分子ナノ微多孔膜を高沸点溶液に一旦浸漬した後、熱ロール等と接触させて加熱することも可能である。
高分子ナノ微多孔膜を結晶化温度以上に加熱する工程は、(1)で形成された高分子ナノ微多孔膜を構成する高分子の結晶化温度以上に加熱した高沸点溶液中に、高分子ナノ微多孔膜を浸して、膜を高分子の結晶化温度以上に加熱する工程である。浸漬時間は、膜が結晶化温度以上に加熱されるのに要する時間以上であればよい。例えば3分以上20分未満が好ましい。この時間を3分以上にすることにより本発明の効果が顕著に得られ、20分未満とすることで無駄な時間を省くことができる。
なお、加熱温度は、典型的には高分子の結晶化温度以上、融点温度未満である。結晶化温度以上であると、乾燥工程により膜の細孔がつぶれるのを防ぐことができる。これは、結晶化温度以上に加熱された高分子は、ある程度動くことが可能になり、結晶構造の配向が変化し、結晶化度が上がり、さらに結晶構造が再配向することにより硬質の膜を形成するためと推測される。融点温度未満であると、高分子自身が溶融するのを防ぐことができる。しかし、ここでいう加熱温度は、あくまでも高分子ナノ微多孔膜自身の加熱温度であるため、高分子の溶融より結晶化が速く起こる場合には、高沸点溶液の温度を高分子の融点以上とし、高分子自身が溶融しない程度の短時間だけ浸漬することも可能である。
このように、高分子ナノ微多孔膜を高分子の結晶化温度以上に加熱することにより、その後の洗浄及び乾燥工程を経ても膜の流束がゼロになる、または、濾過膜等として使用できないほどに著しく低下することがない高分子ナノ微多孔膜が得られる。
加熱後の高分子ナノ微多孔膜を、例えば自然放冷して除熱した後、残存する高沸点溶液を除去するために、洗浄液、典型的には水を用いて洗浄する。洗浄方法は特に限定されないが、ヒートショックを考慮して、ゆっくり冷やした後に洗浄することが好ましい。または、100℃の水のような高温の熱湯で洗浄した後、徐冷してもよい。
高分子ナノ微多孔膜を乾燥する工程により乾燥させる。乾燥方法は、特に限定されない。洗浄に用いた洗浄液(水等)が除去できる方法であればよい。乾燥により余分な溶液が取り除かれ軽量化するため、製膜後の輸送に適し好ましい。
<ナノ粒子状ファイバー分散液>
ナノ粒子状ファイバー分散液は、貧溶媒中にナノ粒子状ファイバーが分散したものである。ナノ粒子状ファイバーは、複数のナノ粒子が連結されてなる。
延伸部は分岐部で分岐されている。分岐部を有することにより、ナノ粒子状ファイバーは、網目状の形態を有し、平面視10マイクロメートル程度の広がりをもつものが含まれる。
ナノ粒子の径は、1ナノメートル〜100ナノメートルである。
ナノ粒子状ファイバーは、それを構成する高分子の間に貧溶媒の分子が挟持されている。
「高度に」とは、一定の濃度以上で、均一に、かつ、安定して分散させた状態である。一定の濃度は、高分子の種類等にもよるが、0.001mg/mL以上である。これにより、濾過法により所定の濾過膜を容易に形成することができる。
高分子ナノ微多孔膜の一例として、上記ナノ粒子状ファイバー分散液を用いて製造されたナノ粒子状ファイバー製濾過フィルターについて説明する。
しかし、ナノ粒子状ファイバー製濾過フィルターは、フィルターとの積層型に限られるものではなく、また、ナノ粒子状ファイバー製濾過フィルターは、単層膜として形成しても、多層膜として形成してもよい。
ナノ粒子状ファイバー分散液をフィルターで濾過することにより、フィルター上にナノ粒子状ファイバー製濾過フィルター(シート状の濾過ケーキ、不織布、濾過膜と呼称する場合もある。)を形成できる。
ナノ粒子の径は1ナノメートル〜100ナノメートル、好ましくは10ナノメートル〜50ナノメートルである。前記細孔の径は1ナノメートル〜100ナノメートルであり、細孔径分布が小さい。このため、細孔により、1ナノメートル〜100ナノメートルの範囲の、任意の径の物質の濾過フィルターとして利用できる。
1mg/mLのポリフッ化ビニリデン(PVDF、GPCによる重量平均分子量:180000)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液1mLを19mLのエタノールに撹拌しながら混合し、さらに室温で5分間放置した。ここで、微量のエタノールを加えて混合による溶媒体積の減少を補正し、20mLとした。得られた溶液は、透明であり、室温で2週間以上保存することができた。溶液の中に約25〜30ナノメートルのナノ粒子が連結したナノ粒子状ファイバーが形成されていることを走査透過電子顕微鏡(STEM)観察より確認した。但し、PVDFは、電子線により分解する傾向があり、高解像度のナノファイバーのイメージを撮影することは困難であった。
PTFEフィルターは、細孔孔径が200ナノメートルであり、その表面には、数マイクロメートルの多数の穴が空いている。このような穴をもつフィルターの表面に約25〜30ナノメートルのナノ粒子が膜を形成できるのは、ナノ粒子が連結されてファイバーが形成され、そのファイバーが力学的な安定性を有するためである。
表1のM−6の膜は表面にPVDFのナノ粒子状ファイバーの膜を形成させたPTFEフィルターである。表1のM−7の膜は、表面にPVDFのナノ粒子状ファイバーの膜を形成させたPTFEフィルター(M−6の膜)に対し、さらに10%のグリセリン水溶液を透過させ、室温で3日間放置させることで調製したものである。該グリセリン水溶液(1mL)の透過は、80kPaの減圧下で行われた。
〔使用した部材等〕
エタノール、メタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコール(重量平均分子量200、PEG200)、グリセリンは和光純薬工業(株)製の試薬特級をそのまま用いた。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)にはアルドリッチ製ポリフッ化ビニリデン(GPCによる重量平均分子量18万、DSCによる溶融温度167℃、結晶化温度137℃)を用いた。
基材層としての微多孔膜には、孔径0.2マイクロメートルのポリフッ化ビニリデン製微多孔膜を用いた。
水は、ミリポア製「DirectQ UV」(商品名)で製造した比抵抗値18MΩ・cm以上の超純水を用いた。
金ナノコロイド液は、BBInternational社製の金コロイドCRL EMGC5を用いた。
実施例および比較例で得られた高分子ナノ微多孔膜の物性値は下記の方法にて測定した。
1.ポリマーの平均分子量
重量平均分子量は、ポリマーをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、カラムとしてShodex Asahipak KF−805Lを用いて、DMFを展開剤としてゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。
2.流束と粒子阻止率
高分子ナノ微多孔膜を、エタノールに浸漬して親水化処理した。その後、超純水に浸漬してエタノールを除去した(超純水は3回交換した)。そのナノ微多孔膜を濡れたまま、有効濾過面積2.1cm2の減圧濾過装置にセットし、真空ポンプで吸引して(減圧0.08MPa)、5mLの金ナノコロイド液が通過する時間を測定した。流束を下記式(A)により求めた。
流束(L/m2h)=
通水量(L)÷有効濾過面積(m2)÷時間(h) ・・・(A)
また、濾過前後の金ナノコロイド液の吸光度(波長520nm)を測定し、粒子阻止率を下記式(B)により求めた。
粒子阻止率(%)=
{1−(濾過後の液の吸光度)÷(濾過前の液の吸光度)}×100% ・・・(B)
(1)高分子ナノ微多孔膜を形成する工程
まず、PVDFを精秤し、そこにNMPを加え、攪拌し、高分子溶液としての0.1wt%のPVDF溶液を作製した。
次に、95mLの貧溶媒をビーカーに入れる。そして、ビーカー中の貧溶媒を激しく攪拌し、攪拌した状態でその中にPVDF溶液5gを一気に加える。30秒攪拌して、ナノ粒子状ファイバー分散液を得る。得られた分散液は、肉眼でわずかに懸濁が認められるものであった。
次に、有効濾過面積110cm2の加圧濾過装置に、基材層としての微多孔膜をセットする。その上に、ナノ粒子状ファイバー懸濁液を全量入れ、1.0MPaで加圧して基材層の上にナノ粒子状ファイバーを積層して、ナノ微多孔膜を形成する。
(2)高沸点溶液を加熱する工程、及び(3)高分子ナノ微多孔膜を結晶化温度以上に加熱する工程
オイルバスに高沸点溶液としての加熱媒体を入れ、それを所定の温度に加熱した。その中に高分子ナノ微多孔膜を所定時間入れて加熱した。加熱媒体ならびに温度の条件は、表2に示した。
(4)高分子ナノ微多孔膜を洗浄する工程、及び(5)高分子ナノ微多孔膜を乾燥する工程
その後、自然放冷し、水洗した。水洗においては、超純水を3回交換した。それを1日間自然乾燥し、乾燥した高分子ナノ微多孔膜を得た。
実施例1と実施例2は、参考例2と参考例3の膜(結晶化温度以上の加熱あり)を乾燥させた後の流束値と粒子阻止率を示す。表2を見て分かるように、150℃の熱処理をしたナノ微多孔膜は、乾燥しても、元の流束をほぼ全て、あるいはある程度、保っている。
比較例1〜3は、参考例4〜6の膜(結晶化温度以上の加熱なし)を乾燥させた後の流束値と粒子阻止率を示す。乾燥前に熱処理をしない膜は、乾燥でほぼ完全に流束が無くなっている。
さらに、比較例4は、乾燥前に熱処理をした膜ではあるが、処理温度が高分子の結晶化温度よりも低い膜である。実施例2と比較すると、流束が著しく低下しているのがわかる。
また、分子量が高いPEG200(実施例2)の方が、分子量が低いグリセリン(実施例1)よりも、流束の低下をより大きく防ぐことができている。
特に、PVDFは水処理膜としての幅広い用途があり、他の高分子にはない化学的安定性、耐溶媒性、低タンパク質吸着性等を有し、メンブランバイオリアクター等の膜として広く応用が期待できる。
Claims (6)
- 高分子溶液から作られる高分子ナノ微多孔膜の製造方法であって、
高分子を溶解した高分子溶液を用いて高分子ナノ微多孔膜を形成する工程と;
沸点が前記高分子の結晶化温度以上の高沸点溶液を、前記高分子の結晶化温度以上、溶融温度未満の温度に加熱する工程と;
加熱された前記高沸点溶液中で、形成された前記高分子ナノ微多孔膜を結晶化温度以上の温度に加熱する工程と;
加熱後の前記高分子ナノ微多孔膜を洗浄する工程と;
洗浄後の前記高分子ナノ微多孔膜を乾燥する工程とを備える;
高分子ナノ微多孔膜の製造方法。 - 前記高分子がフルオロ基を有する高分子である、
請求項1に記載の高分子ナノ微多孔膜の製造方法。 - 前記高分子がポリフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニリデンを含む共重合体である、
請求項1または請求項2に記載の高分子ナノ微多孔膜の製造方法。 - 前記高沸点溶液がポリエチレングリコール、グリセリンから選ばれる少なくとも1種の液である、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の高分子ナノ微多孔膜の製造方法。 - 前記高沸点溶液が重量平均分子量200以上のポリエチレングリコールである、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の高分子ナノ微多孔膜の製造方法。 - 前記高分子ナノ微多孔膜は、直径1ナノメートル〜100ナノメートルの高分子のナノ粒子が網目状に連結し、ナノ粒子状ファイバーとなって分散している分散液を濾過することで、50ナノメートル〜1000ナノメートルの厚さに積層されている、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の高分子ナノ微多孔膜の製造方法。
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