JP2014220033A - 液体金属ターゲット、中性子発生装置及びその制御方法 - Google Patents

液体金属ターゲット、中性子発生装置及びその制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液体金属の沸騰を抑制し、かつ耐久性が高い液体金属ターゲットを得る。【解決手段】この液体金属ターゲット100においては、第1構造体10の発射ノズル12の後方側において下向きに突出する第1強磁性体リブ15が設けられている。また、これと上下対称に、 第2構造体20の受容ノズル22の後方側において上向きに突出する第2強磁性体リブ25が設けられている。この構成においては、水平方向において、第1強磁性体リブ15、第2強磁性体リブ25が設けられた箇所において磁力線が鉛直方向を向くように、磁力線の形状が変化する。このため、この箇所よりも前方となる発射ノズル12下の磁力線を前方に湾曲させることができる。これにより、液体リチウム流路Cを前方に湾曲させることができる。【選択図】図7

Description

本発明は、液体金属に荷電粒子線を照射する構成を具備する液体金属ターゲット、及びこれを用いた中性子発生装置、中性子発生装置の制御方法に関する。
中性子源(中性子発生装置)で発生した中性子線を各種の対象に照射することは、様々な科学技術分野で行われている。このような中性子源としては、例えば実験用の原子炉が知られている。こうした中性子線の用途としては、癌の治療方法の1種であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)が知られている。
癌細胞を破壊するためには、高エネルギーの粒子線(重粒子線)を癌細胞に対して照射する粒子線治療が知られている。通常の粒子線治療においては、粒子線を患部に対して照射し、この粒子線によって癌細胞を破壊する。これに対して、BNCTにおいては、まず、体内の癌細胞に集まりやすいホウ素(10B)化合物を患者に投与する。その後、患部に中性子線を照射する。10Bは中性子の吸収断面積が大きいため、この中性子によって10B(n、α)Li反応が生ずる。すなわち、中性子ビームの照射によってα粒子とLi原子核が生成される。このα粒子とLi原子核が前記の粒子線(重粒子線)として機能する。すなわち、10Bと中性子との間の反応によって生じたα粒子やLi原子核によって癌細胞が破壊される。
この治療方法においては、(1)10Bが癌細胞近傍に集まりやすいこと、(2)体内におけるα粒子やLi原子核の飛程は短いこと、のために、特に患部に集中的にα粒子やLi原子核を照射することができる。すなわち、高い選択性をもって癌細胞にこれらの粒子を照射することができる。また、この治療方法において癌細胞に直接影響を及ぼすのは、照射された中性子線ではなく、核反応によって生成されたα粒子やLi原子核である。粒子線で癌細胞を破壊するに際しては、軽い粒子よりも重い粒子の方がより大きなエネルギーを癌細胞に吸収させることが可能であり、癌細胞における2重螺旋構造のDNAを2本とも破壊できる確率が高い。このため、陽子線等を用いた場合と比べて、癌細胞を破壊する効果が大きい。すなわち、BNCTを用いて、正常な細胞との間の高い選択性をもって、体内の癌細胞を破壊することができる。
こうした用途においては、実験用の原子炉は、施設への設置が容易でないこと、中性子線のオン・オフの制御が容易でないこと、等のために、適していない。液体リチウムに荷電粒子(陽子、重水素イオン)ビームを照射して中性子線を発生させる方式の中性子発生装置は、これらの点において優れているため、有効である。また、この方式においては、中性子線のビーム強度を例えば1015/cm/s以上に高めることも可能である。このため、この中性子発生装置を、高線量の中性子線照射による核融合炉材料の評価(国際核融合材料照射施設:International Fusion Material Irradiation Facility)に用いることもできる。
一般に、BNCT用の中性子源として用いる場合にはエネルギーが2〜3MeV程度の陽子が、IFMIF用の中性子源として用いる場合にはエネルギーが40MeV程度の重水素イオンが照射される。これらの荷電粒子ビームの液体リチウムへの照射は真空中で行われ、例えば10−3Pa程度の真空中における液体リチウムの沸点は344℃程度であり、低い。このため、荷電粒子ビームの照射に際して、液体リチウムが沸騰する場合がある。このため、安定して中性子線を発生させるためには、液体リチウムの沸騰を抑制することが必要になる。沸騰を抑制するためには、液体リチウムの静圧を高めてその沸点を高めることが有効である。この目的のために、非特許文献1には、上側のノズルから下向きに噴出された流速15m/s程度の高速の液体リチウムを、湾曲した金属壁(背面壁)に沿って流すことによって、液体リチウムの流路を湾曲させ、液体リチウム中に生じた遠心力によってその静圧を高める技術が記載されている。この装置においては、背面壁の表面を通過した液体リチウムは、その下側で回収され、装置内部で循環され、上側のノズルから再び噴出されるため、液体リチウム流が安定して生成され、安定して中性子線を発生させることができる。ここで、液体リチウム流路を安定させ、中性子線を効率的に発生させるためには、背面壁の湾曲した形状は、荷電粒子ビーム側から見て凹形状となるように設定され、この凹形状の内面を液体リチウムが通過する。この場合、背面壁は荷電粒子ビーム側から見て液体リチウム流の後方に設けられるため、背面壁によって荷電粒子ビームが減衰することもない。
この技術によって、液体リチウムの沸騰を抑制し、中性子線を安定して発生させることができる。
また、中性子線を発生させる場合に限らず、真空中で液体金属に粒子線や光等を照射する構成の液体金属ターゲットについては、同様に液体金属の沸騰の問題が発生する。こうした場合に沸騰を抑制するためには、同様に液体金属の静圧を高めることが有効であるため、上記の構成は、一般的な液体金属ターゲット全般において有効である。
「Design of Contraction Nozzle and Concave Back−Wall for IFMIF Target」、Mizuho Ida、Hideo Nakamura、Niroo Nakamura and Hiroshi Takeuchi、Fusion Engineering Design、vol.70、p95(2004年)
しかしながら、非特許文献1に記載の技術においては、背面壁は液体リチウムと直接接するため、液体リチウムから発生した中性子線に常に曝される。このため、背面壁を定期的、例えば年1回程度の頻度で交換することが必要となる。これは、BNCT用、IFMIF用、どちらの場合においても同様であるが、発生線量が大きなIFMIF用の場合に特に顕著である。また、発生する中性子線によるだけでなく、高速の液体リチウムが表面を流れることによる背面壁の劣化が生じることも明らかである。
また、前記の通り、特にBNCT用の場合には、照射される荷電粒子(陽子)のエネルギーは、IFMIF用の場合と比べて低くなる。このため、この陽子線の吸収による発熱は、照射された液体リチウムの前方(陽子線によって照射される側)表面から0.25mm程度の浅い領域で特に顕著となる。すなわち、BNCT用の場合には、液体リチウムにおける前方表面近くの極浅い領域における発熱が特に問題になる。
一方、上記の背面壁によって発生する遠心力は、湾曲した液体リチウム流路における曲率中心から遠い側で大きく、近い側で小さくなる。上記の構成における背面壁は荷電粒子ビームの側から見て凹形状であるため、この曲率中心は前方(陽子線で照射される側)にある。この場合、液体リチウムの表面から深い領域における遠心力は大きくなるが、表面から浅い領域における遠心力は小さくなる。このため、この浅い領域における静圧を充分に高めることは困難であった。この場合において、液体リチウムの温度上昇を抑えるためには、液体リチウムの流速を高めることが必要となるが、この場合には、液体リチウム流を安定させることが困難となる。このため、非特許文献1に記載の技術においては、沸騰を最も抑制すべき領域における液体リチウムの静圧を充分に高めることは困難であった。
このため、液体リチウムの沸騰を抑制し、かつ耐久性が高い液体リチウムターゲットを得ることは困難であった。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の液体金属ターゲットは、真空中において液体金属が発射ノズルから噴射されて受容ノズルで回収され、前記発射ノズルと前記受容ノズルの間における前記液体金属の流路に粒子線が照射される構成を具備する液体金属ターゲットであって、強磁性体で構成され前記発射ノズルが設けられた第1構造体と、前記受容ノズルが形成され、前記発射ノズルと前記受容ノズルとが対向するように前記第1構造体と対向して配置され、強磁性体で構成された第2構造体と、が用いられ、前記発射ノズル側と前記受容ノズル側とを連結する形態の磁力線を形成するコイルを具備し、前記粒子線が前記液体金属を照射する側から見て、前記発射ノズル及び前記受容ノズルの前方又は後方に、前記第1構造体から前記第2構造体側に向かって前記発射ノズルよりも突出し強磁性体で構成された第1強磁性体リブ、及び前記第2構造体から前記第1構造体側に向かって前記受容ノズルよりも突出し強磁性体で構成された第2強磁性体リブ、がそれぞれ設けられたことを特徴とする。
本発明の液体金属ターゲットは、前記第1構造体において、前記発射ノズルを前記受容ノズル側に向かって突出させた形状とし、前記第2構造体において、前記受容ノズルを前記発射ノズル側に向かって突出させた形状としたことを特徴とする。
本発明の液体金属ターゲットは、前記発射ノズルと前記受容ノズルとを結ぶ線の中点から見て、前記第2構造体、前記第2強磁性体リブの外形は、それぞれ前記第1構造体、前記第1強磁性体リブと対称となるように構成されたことを特徴とする。
本発明の液体金属ターゲットにおいて、前記液体金属は、前記受容ノズルから前記第2構造体の内部、前記第1構造体の内部を経由して前記発射ノズルから噴射され、循環する構成とされたことを特徴とする。
本発明の中性子発生装置は、前記液体金属ターゲットが使用され、前記液体金属を液体リチウム、前記粒子線を陽子ビーム又は重水素イオンビームとし、前記粒子線で照射された前記液体金属から中性子線を発生させることを特徴とする。
本発明の中性子発生装置において、前記コイルは、前記第1構造体を巻回する第1のコイルと、前記第2構造体を巻回する第2のコイルとで構成されることを特徴とする。
本発明の中性子発生装置において、前記第1のコイルは前記第1構造体における前記第2構造体から離れた側に、前記第2のコイルは前記第2構造体における前記第1構造体から離れた側にそれぞれ設置され、前記第1のコイルよりも前記粒子線側、及び前記第2のコイルよりも前記粒子線側に、それぞれ放射線を遮蔽する遮蔽体が設けられたことを特徴とする。
本発明の中性子発生装置の制御方法は、前記中性子発生装置の制御方法であって、前記第1強磁性体リブ及び前記第2強磁性体リブを、前記粒子線が前記液体金属に照射される側から見て前記発射ノズル及び前記受容ノズルよりも前方に設置し、前記中性子線が照射される被照射試料を、前記粒子線が前記液体金属に照射される側から見て前記発射ノズル及び前記受容ノズルよりも後方に設置し、前記コイルに流れる電流を制御することによって、前記発射ノズルから前記受容ノズルに至る前記液体金属の流路と前記被照射試料との間の間隔を制御することを特徴とする。
本発明は以上のように構成されているので、液体金属の沸騰を抑制し、かつ耐久性が高い液体金属ターゲットを得ることができる。
参考例となる液体金属ターゲットの構成を示す図である。 参考例となる液体金属ターゲットにおける等ベクトルポテンシャル面の形状を算出した結果である。 参考例となる液体金属ターゲットにおける磁力線の形状と液体リチウム流路の形状を算出した結果である。 参考例となる液体金属ターゲットにおける液体リチウム流路上における磁束密度(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。 参考例となる液体金属ターゲットにおける液体リチウムの速度分布(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。 参考例となる液体金属ターゲットにおける、液体リチウム流路と強磁性体板の前面との間隔xgapの、コイル電流I依存性を算出した結果である。 本発明の実施の形態に係る液体金属ターゲットの構成を示す図である。 本発明の実施の形態に係る液体金属ターゲットにおける等ベクトルポテンシャル面の形状を算出した結果である。 本発明の実施の形態に係る液体金属ターゲットにおける磁力線の形状と液体リチウム流路の形状を算出した結果である。 本発明の実施の形態に係る液体金属ターゲットにおける液体リチウム流路上における磁束密度(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。 本発明の実施の形態に係る液体金属ターゲットにおける液体リチウムの速度分布(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。 液体リチウムの沸点の流速依存性を、湾曲型、逆湾曲型について算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットの構成を示す図である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が磁力線の形状に影響を与えない場合の等ベクトルポテンシャル面の形状を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が磁力線の形状に影響を与えない場合の磁力線の形状と液体リチウム流路の形状を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が磁力線の形状に影響を与えない場合の液体リチウム流路上における磁束密度(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が磁力線の形状に影響を与えない場合の液体リチウムの速度分布(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が強磁性体である場合の等ベクトルポテンシャル面の形状を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が強磁性体である場合の磁力線の形状と液体リチウム流路の形状を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が強磁性体である場合の液体リチウム流路上における磁束密度(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が強磁性体である場合の液体リチウムの速度分布(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が強磁性体である場合に、液体リチウム流路と強磁性体板の前面との間隔xgapの、I依存性を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第1の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、液体リチウム流路の曲率半径Rのコイル電流I依存性を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第2の変形例となる液体金属ターゲットの構成を示す図である。 本発明の実施の形態の第2の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が強磁性体である場合の等ベクトルポテンシャル面の形状を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第2の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が強磁性体である場合の磁力線の形状と液体リチウム流路の形状を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第2の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が強磁性体である場合の液体リチウム流路上における磁束密度(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。 本発明の実施の形態の第2の変形例となる液体金属ターゲットにおいて、被照射試料が強磁性体である場合の液体リチウムの速度分布(x成分、z成分、絶対値)を算出した結果である。
以下、本発明の実施の形態に係る液体金属ターゲットについて説明する。この液体金属ターゲットにおいては、鉛直方向上側から下側に向かって液体リチウム(液体金属)が噴射され、噴射された液体リチウムに、前方から荷電粒子ビーム(陽子、重水素イオン)が照射される。これによって、照射された液体リチウムの後方に中性子線が発せられる。この中性子線を、BNCT、IFMIF等に使用することができる。このため、この液体金属ターゲットを中性子発生装置に用いることができる。非特許文献1に記載の技術と同様に、照射される液体リチウム流路は湾曲するが、背面壁は使用されない。このため、背面壁の使用に起因する問題点が解消される。
図1(a)は、この液体金属ターゲットの原理を説明するための参考となる液体金属ターゲットの断面図であり、本発明の実施の形態に係る液体金属ターゲットは、この構成に変更を加えたものとなっている。ここで、液体リチウムは、強磁性体で構成された第1構造体10の中に設けられた発射側ダクト11中を上から下に向かって流れ、その下側において発射側ダクト11よりも狭く形成された発射ノズル12から下側に高速で噴出される。発射側ダクト11を巻回するように、第1構造体10の内側に第1コイル13が設置されており、ここでは、発射側ダクト11に垂直な断面が示されている。また、図1(b)は、図1(a)におけるA−A方向の断面図であり、第1コイル13の平面形状が示されている。
発射ノズル12と受容ノズル22の中点から見て、上記の第1構造体10、第1コイル13と上下対称の外形で、第2構造体20、第2コイル23が、下側に設けられる。ここで、発射ノズル12と受容ノズル22とが対向するようこれらは配置される。発射ノズル12から下側に噴出した液体リチウムは、第2構造体20の上端部に設けられた受容ノズル22に進入し、受容側ダクト21中を下側に流れる。液体リチウムは、発射ノズル12と受容ノズル22の中間点付近において前方から荷電粒子ビーム(粒子線)50に照射される。実際には図1(a)における受容側ダクト21の下側と発射側ダクト11の上側は接続され、液体リチウムはこれらの中を循環して安定して流れる構成とされる。なお、図1の構成全体は例えば10−3Pa程度の真空中に設置される。
第1構造体10、第2構造体20の材料としては、放射線環境下での使用に適した強磁性体、例えば低放射化フェライト鋼であるF82H鋼を用いることができる。第1コイル13、第2コイル23としては、例えば耐放射線性常伝導コイルを用いることができる。発射側ダクト11、受容側ダクト21の図1(a)における左右方向の幅は0.2m程度、図1(a)における紙面と垂直方向の幅は0.26m程度とすることができる。発射ノズル12、受容ノズル22の図1(a)における紙面と垂直方向の幅は発射側ダクト11等と同等とし、図1(a)における左右方向の幅は、発射側ダクト11等よりも小さく、発射ノズル12で0.025m、受容ノズル22で0.06m程度とすることができる。発射ノズル12の図1(a)における左右方向の幅は、照射される液体リチウムの厚さに対応する。発射ノズル12と受容ノズル22の上下方向の間隔は0.5m程度とされる。
上記の構成において、第1コイル13、第2コイル23は、発射側ダクト11、発射ノズル12、受容ノズル22、受容側ダクト21の中心軸(図1中の上下方向)に強い磁場が形成されるように設けられる。このため、下側コイル23による励磁方向は上側コイル13による励磁方向と同一とされる。また、第1構造体10における発射ノズル12の周囲は受容ノズル22側に、第2構造体20における受容ノズル22の周囲は発射ノズル12側に向かって徐々に細くされた形状とされる。更に、この磁場強度を特に大きくするために、図1(c)にその拡大図を示すように、発射ノズル12の周囲には受容ノズル22に向かって突出した突起部14が設けられており、同様に受容ノズル22の周囲にも発射ノズル12に向かって突出した突起部24が設けられている。突起部14、24の図1(c)における上下方向の高さは例えば0.025m、左右方向の幅は例えば0.02m、紙面と垂直な方向における幅は0.26mとすることができる。また、第1構造体10における発射側ダクト11の周囲、第2構造体20における受容側ダクト21の周囲は、強磁性体による磁気シールド効果によりダクト内の磁場を相対的に弱くするように充分厚く形成される。
一方、水平方向(図1中の左右方向)における磁場は弱くなるように設定される。また、荷電粒子ビーム50の進行方向における荷電粒子ビーム50と液体リチウム流路との交点以外においては、荷電粒子ビーム50と鎖交する磁場が弱くなるように設定される。このため、第1構造体10における発射ノズル12から見た外側(図1における左右両端側)、第2構造体20における受容ノズル22から見た外側は、それぞれ荷電粒子ビーム50の進行方向となる直線から離間するような形状とされる。このため、発射ノズル12、受容ノズル22の外側においては、第1構造体10と第2構造体20とは離間する。
ここで、強磁性体板200が、発射ノズル12と受容ノズル22の間における中心よりも右側に配置される。液体リチウムが荷電粒子ビーム50に照射されることによって発生した中性子線は図中右側に放射されるため、この中性子線は強磁性体板200を照射する。
この構成における等ベクトルポテンシャル面の形状を計算した結果を図2に示す。図2においては、左側に全体図が、右側に発射ノズル12と受容ノズル22周辺を拡大した図が示されている。ここで、x軸は図中の左右方向、z軸は図中の上下方向に対応しており、x=z=0の点が発射ノズル12と受容ノズル22の中点であるものとし、x<0が前方(図中左側)、z<0が上方(図中上側)となるものとする。等ベクトルポテンシャル面の形状は、概ね磁力線の形状に対応する。また、第1構造体10等と第2構造体20等の構造は上下で対称となっているため、磁力線の形状も上下で対称となっている。
例えば、図1(b)における第1コイル13、第2コイル23の外径を2m程度、図1(a)の上下方向における第1コイル13と第2コイル23の間隔をこれと同程度とした場合、コイル電流値1.25 MATとした場合に発射ノズル12と受容ノズル22の間におけるz軸方向の磁場を0.5T程度とすることができる。一方、発射ノズル12と受容ノズル22の間からx方向において離れた箇所におけるz方向の磁場は0.2T程度、発射側ダクト11、発射ノズル12、受容側ダクト21、受容ノズル22内におけるx方向の磁場は0.16T程度と、これよりも小さくすることができる。
仮に強磁性体板200が存在しない場合には、x=0の両側で磁力線の形状も対称となることは明らかである。しかしながら、ここでは、強磁性体板200がx>0の箇所に設置されているために、磁力線は前後方向では対称とはならず、上記の磁力線の形状は強磁性体板200の影響を大きく受ける。図2右側には、この状況が示されている。強磁性体板200が存在しない場合には、x=0においては、中心線(図中一点鎖線)に沿った形状の磁場が形成されることは明らかである。しかしながら、強磁性体板200が存在した場合には、磁場は強磁性体板200の側に引き寄せられるため、図2右側に示されるように、強磁性体板200の前面では、磁力線は強磁性体板200の側に向かって湾曲する。
このように図1の構成においては、強磁性体板200を設置することによって、発射ノズル12と受容ノズル22の間における磁力線を、荷電粒子ビーム50側(前方)から見て凹型に湾曲させることができる。一方、導体である液体リチウムは、磁場に引きずられるため、発射ノズル12と受容ノズル22の間における液体リチウムの経路も、この磁力線の形状に従って湾曲する。正確には、液体リチウムの挙動は、電磁気力、重力、表面張力、荷電粒子ビームによる圧力、経路の湾曲に伴う遠心力を考慮して計算することができる。
図3は、この場合における磁力線の形状(破線)と、これに対応した液体リチウム流路の形状(実線)を算出した結果である。ここで、発射ノズル12先端はz=−0.25m(x=0)の点であるものとし、x=−0.0275mの点から発せられた初速は15m/sの液体リチウムの流路が算出されている。これは、液体リチウム流路の中心線に対応する。図示されるように、背面壁を用いることなしに、液体リチウム流路の形状を湾曲させることができる。この場合の曲率半径は1.2m程度となる。
図4は、液体リチウム流路上における磁束密度B(x成分:B、z成分:B、Bの絶対値)の分布を示し、図5は、液体リチウムの流速U(x成分:U、z成分:U、Uの絶対値)の分布を示す。液体リチウムが発射ノズル12から噴出される際の速度(初期値)は15m/sとした。図4より、磁束密度の鉛直方向の成分Bは発射ノズル12先端から急激に増加し、かつ水平方向の成分Bは小さく保たれる。また、図5より、鉛直方向の速度Uは一様に初期値に近く高く保たれている。
液体リチウムは、図3に示された形状の流路を、図5に示された速度で通過する。この際、曲率半径が1.2m程度となった部分で特に強く遠心力が働き、その静圧が高められる。このため、液体リチウムの沸点を上昇させ、沸騰を抑制することができる。ここで、例えばIFMIFの場合には、中性子線が照射されるべき試料(被評価試料)を、強磁性体材料とする場合が多い。この場合には、強磁性体板200自身が被照射試料となるため、この被照射試料の配置によって、図1の構成を実現することができ、上記の状況を実現することができる。この場合、背面壁を用いた場合と同様の効果によって液体リチウムの沸騰を抑制することができる。
図1の構成において、高強度の中性子線を強磁性体板200に照射させたい場合には、湾曲した液体リチウム流路Cを強磁性体板200に近接させることが必要である。図1における強磁性体板200の前後方向の位置を調整することによって、この調整が可能であることは明らかである。しかしながら、この調整は、第1コイル13、第2コイル23のコイル電流(起磁力)Iを調整することによっても、行うことができる。図6は、強磁性体板200の前面をx=0.055mとした場合における、液体リチウム流路Cと強磁性体板200の前面との間隔xgapのI依存性を計算した結果である。Iを小さくしてBの絶対値を小さくした方が、強磁性体板200に向かう湾曲を大きくし、xgapを小さくすることができる。このように、Iを調整することによって高い精度でxgapを調整することが可能であるため、例えばxgapを2〜3mmに設定することができる。また、xgapの粗調整は強磁性体板200の前後方向の位置で行い、微調整はIで行うことができる。xgapと同様に、液体リチウム流路の曲率半径もIで調整することができる。
本発明の実施の形態に係る液体金属ターゲットにおいては、図1の構成における液体リチウム(液体金属)流路が更に最適化される。図7(a)は、この液体金属ターゲット100の構成を示す図である。この液体金属ターゲット100においては、第1構造体10の発射ノズル12の後方側において下向きに突出する第1強磁性体リブ15が設けられている。また、これと上下対称に、 第2構造体20の受容ノズル22の後方側において上向きに突出する第2強磁性体リブ25が設けられている。図7(b)は、この液体金属ターゲット100における発射ノズル12、受容ノズル22周辺を拡大した図である。中性子線60は、液体リチウムが荷電粒子ビーム50に照射されることによって生成され、後方に発せられた中性子線60に照射される被照射試料は、後方(図7中右側)の図示の範囲外に設置される。このため、人体を被照射対象とすることもできる。この場合には、図7の液体金属ターゲットを、BNCT用の中性子発生装置に用いることができる。
図8は、図7の構成における、等ベクトルポテンシャル面を図2右側と同様に示した図である。この構成においては、水平方向において、第1強磁性体リブ15、第2強磁性体リブ25が設けられた箇所(発射ノズル12、受容ノズル22よりも後方)において磁力線が鉛直方向を向くように、磁力線の形状が変化する。このため、この箇所よりも前方となる発射ノズル12下(x=0近辺)の磁力線を前方に湾曲させることができる。これにより、液体リチウム流路Cを前方に湾曲させることができる。なお、この場合には、被照射試料は後方の図示の範囲外に設置されるため、被照射試料の磁気特性(例えば強磁性体であるか否か等)が図8における磁力線の形状に与える影響は無視できる。
図9は、この場合における磁力線の形状(破線)と、これに対応した液体リチウム流路Cの形状(実線)を、図3と同様に算出した結果である。ここで、液体リチウムの初速は7.5m/s、厚さは5mmとしている。液体リチウムの流路が、図3と逆方向に湾曲することが確認できる。この際、受容ノズル22側における液体リチウムの位置のずれは0.2mm以下であるため、発射ノズル12(第1構造体10)と受容ノズル22(第2構造体20)を上下対称とした場合においても、液体リチウムを受容ノズル22で収容することが充分可能である。この場合の曲率半径は、0.36m程度である。
また、図10は、この場合の液体リチウム流路上における磁束密度を図4と同様に示し、図11は、液体リチウムの流速分布を図5と同様に示す。図10より、鉛直方向の成分Bは発射ノズル12先端から急激に増加し、かつ水平方向の成分Bは小さく保たれる。また、図11より、鉛直方向の速度Uは一様に高く、ほぼ初速(7.5m/s)に保たれている。なお、曲率半径は液体リチウムの初速には大きく依存せず、初速が3〜15m/sの範囲で0.35〜0.37m程度である。
この液体金属ターゲット100においては、液体リチウム流路Cを前方側に湾曲させることができ、液体リチウムの静圧を高め、沸点を上昇させ、沸騰を抑制することができる。この際、この液体金属ターゲット100においては、液体リチウム流路Cが試料200の前方側に湾曲するために、液体リチウム流路Cの前方側が、その曲率中心(後方側)から見て遠い側となるため、液体リチウム流路Cの前方側における遠心力が特に大きくなる。すなわち、液体リチウム流路Bの特に前方側における静圧を高めることができる。この点について、以下に検討する。
真空中を高速で流れる液体リチウムの沸点と静圧の関係は、非特許文献2に記載されている。静圧Pは、近似的には、(1)式で与えられる。ここで、ρは液体リチウムの密度(509kg/m)、Pは真空容器圧力(例えば10−3Pa)、Rは液体リチウム流路の曲率半径、rは液体リチウム流路表面の法線上における位置(湾曲面の内側表面ではr=0、外側表面ではr=d(流路の厚み)である。
ここで、図3のように液体リチウム流路Cの形状が後方に凸形状(前方から見て凹形状)となる場合を湾曲型、図9のようにこの形状が後方に凹形状(前方から見て凸形状)となる場合を逆湾曲型と定義する。リチウム流路Cの厚さをdとすると、単純化したモデルにおいては、湾曲型の場合にはr=0となり、逆湾曲型の場合にはr=dとなる。液体リチウムのベース温度を250℃とし、流速が30m/sの場合の液体リチウムの表面温度は340℃と仮定し、単位幅当たりの流量(=U×d)を一定とした場合における、湾曲型の場合の液体リチウムの沸点(沸騰点)、逆湾曲型の場合の液体リチウムの沸点(沸騰点)を流速Uの関数として算出した結果を図12に示す。ここで、液体リチウムの前方表面の温度も同時に示している。
図12において、沸騰を抑制するためには、沸騰点曲線と温度曲線の交点よりも大きな流速が必要となる。この点において、(1)式より、湾曲型では流速を制御しても沸点は変化(上昇)せず、逆湾曲型の場合に、より小さな流速で沸騰を抑制することができることが明らかである。あるいは、同じ流速であれば、逆湾曲型の方が湾曲型よりも沸騰しにくい。
こうした特性は、荷電粒子ビームのエネルギーが低いBNCT用の中性子源として特に好適である。この場合、背面壁が用いられないため、背面壁の耐久性に起因する問題が解消される。また、背面壁が用いられた場合には、発生した中性子線が背面壁で散乱、吸収されるために、被照射試料に照射される中性子線の強度が損なわれることがあるのに対して、この液体金属ターゲット100においては、発生した中性子線60を遮る構造物は存在しないため、高強度の中性子線60を後方の被照射試料に対して照射することができる。
また、この液体金属ターゲット100では、背面壁が用いられないために、背面壁の耐久性に起因する問題も解消される。更に、背面壁が用いられないために、真空中における液体リチウム流を例えば図7(a)における紙面と垂直方向から容易に観察することができる。このため、I等による液体リチウム流路の湾曲の制御も容易である。
IFMIFで使用される場合のように、特に高いドーズ量の中性子線照射を行う場合には、上記の構成において、液体リチウム流路を後方に向かって湾曲させる(荷電粒子ビーム側から見て凹形状とする)ことによって、被照射試料を中性子の発生箇所に近接させることが有効である。こうした場合には、第1強磁性体リブ15、第2強磁性体リブ25を、図7とは逆に、第1構造体10の発射ノズル12、第2構造体20の受容ノズル22の前方に設けることが有効である。図13は、こうした用途に適した上記の液体金属ターゲット100の第1の変形例の構成を図7と同様に示す。この場合には、第1強磁性体リブ15、第2強磁性体リブ25は、第1構造体10の発射ノズル12、第2構造体20の受容ノズル22の前方に設けられる。被照射試料300は、発射ノズル12、受容ノズル22の後方に近接して設置される。
まず、被照射試料300が強磁性体でない場合、すなわち、磁力線の形状に被照射試料300の存在が影響を与えない場合における等ベクトルポテンシャル面の形状を図2右側と同様に算出した結果を、図14に示す。
図15〜17は、この場合における磁力線及び液体リチウム流路の形状、液体リチウム流路及び磁力線、磁束密度、流速を図3〜5と同様に算出して求めた結果である。第1強磁性体リブ14、第2強磁性体リブ24を前方に設けることによって、発射ノズル12、受容ノズル22間(被照射試料210の前方)における磁力線を後方に湾曲させることができる。これによって、液体リチウム流路も後方に湾曲させ、被照射試料300に液体リチウム流路を近接させることができる。この場合には、図6の結果と同様に、これらの間の距離xgapをIによって調整することができる。また、第1強磁性体リブ15、第2強磁性体リブ25の前後方向における位置を調整することによってもxgapを調整することができ、この場合には、Iの調整は、xgapの微調整のために行うことができる。すなわち、この液体リチウムターゲットが用いられた中性子発生装置においては、Iを調整することによってxgapを制御するという制御方法を実行することができる。
次に、図13の構成において、被照射試料300が強磁性体である場合の結果について説明する。この構成における被照射試料300は図1、2における強磁性体板200と実質的に同じであるとみなせるため、この構成における第1強磁性体リブ15、第2強磁性体リブ25が存在しない場合における等ベクトルポテンシャル面の形状は、図2右側と同様となる。図13の構成の場合において被照射試料300が強磁性体である場合の等ベクトルポテンシャル面の形状を図18に示す。この場合においても、後方に向かって磁力線を湾曲させることができる。図19〜21は、この場合における磁力線及び液体リチウム流路の形状、液体リチウム流路及び磁力線、磁束密度、流速を図15〜17と同様に算出して求めた結果である。
この場合における、xgapとIの関係を算出した結果を図22に示す。図22中の実線は、図13の構成におけるこの関係を図6と同様に算出した結果であり、破線は図6の結果である。ここで、被照射試料300の前面の座標をx=0.07mとしている。この場合においても、xgapの調整をIの設定によって高精度で行うことができ、Iの変化に対してxgapがより敏感に変化する。また、液体リチウム流路の曲率半径RのI依存性を算出した結果を図23に示す。この結果より、被照射試料300が強磁性体の場合においては、第1強磁性体リブ15、第2強磁性体リブ25を設けることによって、Rをより小さく、湾曲を強くすることができることがわかる。これにより、第1の変形例においては、液体リチウムの沸騰をより抑制しやすくなる。
上記の通り、上記の液体金属ターゲットにおいては、第1強磁性体リブ15、第2強磁性体リブ15を発射ノズル12、受容ノズル22の前方、後方のどちらに設けるかによって、液体リチウム流路Bの湾曲の方向を設定することができる。特に液体リチウム流路Bを後方に向かって湾曲させた場合(第1強磁性体リブ15、第2強磁性体リブ15を発射ノズル12、受容ノズル22の前方に設けた場合)においては、液体リチウム流路Bと被照射試料300との間の間隔xgapもIによって中性子発生装置運転中に制御することができる。これに対して、従来の背面壁を用いた液体金属ターゲットにおいては、xgapは被照射試料の位置によってしか調整ができない。この調整操作を中性子発生装置の運転中に行うには非常に大きな困難を伴うことは明らかである。
上記の液体金属ターゲットは中性子源(中性子発生装置)に用いられるため、中性子線を被照射試料に高効率で照射することが重要である一方、これ以外の箇所に対する放射線の照射は極力低減することが必要である。第2の変形例においては、被照射試料以外に対する中性子、あるいは中性子と同様に発生する他の放射線の影響を低減することができる。図24は、この液体金属ターゲットの構成を図7(a)に対応させて示す断面図である。この構成においては、図13の構成における第1コイル13、第2コイル23が生成する磁場の方向は同様であるが、これらの間隔が広くとられる。このため、第1コイル13の下側、第2コイル23の上側に、有害な放射線(γ線等)を遮蔽する遮蔽体40を設置することができる。
この場合には、例えば、第1コイル13の外径(図1(b)に対応)を、2.6m程度と前記の場合よりも大きくし、図24における第1コイル13と第2コイル23の間隔を、前記の場合の2倍の4m程度とすることができる。この構成全体における磁力線形状を図25(a)に、発射ノズル12、受容ノズル22周辺の磁力線形状を拡大した図を図25(b)に示す。ここで、遮蔽体40は強磁性体ではないものとしている。こうした場合でも、磁力線は、第1構造体10、第2構造体20の内部を通過するために、上記と同様の磁力線形状を実現することができ、発射ノズル12と受容ノズル22の間で後方に向かって湾曲した磁力線形状を実現することができる。
図26〜28は、この場合における磁力線及び液体リチウム流路の形状、液体リチウム流路及び磁力線、磁束密度、流速を図15〜17と同様に算出して求めた結果である。これらの結果より、第2の変形例においても、液体金属ターゲット100やその第1の変形例と同様に液体リチウムの沸騰を抑制できることは明らかである。更に、この場合には、遮蔽体40によって、液体リチウム等から発生する有害な放射線が遮蔽される。また、これにより、第1コイル13、第2コイル23の信頼性を高めることができ、その保守も容易となる。特に、第1コイル13、第2コイル23等が放射線に曝されにくくなるため、これらが放射化することが抑制され、作業者がこれらの交換や保守管理を容易に行うことができる。
なお、上記の例では、鉛直方向において、発射ノズルを上方、受容ノズルを下方に設けた。しかしながら、実際にはこれらの間において高速で移動する液体リチウムの挙動に与える重力の影響は小さいため、発射ノズル、受容ノズルの配置は、噴射された液体リチウムを受容ノズルが受容できる限りにおいて任意である。例えば、発射ノズル、受容ノズルが水平方向に並ぶように、第1構造体、第2構造体等を配置することもできる。
また、第1構造体、第2構造体、第1コイル、第2コイルの構成も、上記と同様の磁力線形状を実現できる限りにおいて、適宜設定することができる。例えば、第1構造体と第2構造体とが一体化された構造、あるいは第1コイルと第2コイルとが一体化された構造とすることもできる。
また、上記の例では、この液体金属ターゲットが中性子発生装置に用いられるものとした。しかしながら、真空中において液体金属に粒子線が照射される構成を具備する液体金属ターゲットであれば、液体金属の沸騰の問題が同様に発生し、この沸騰を抑制することは重要である。このため、中性子発生装置だけでなく、同様の構成を具備する液体金属ターゲットが使用される全ての装置に関して、上記の構成が有効であることは明らかである。
10 第1構造体
11 発射側ダクト
12 発射ノズル
13 第1コイル
14、24 突起部
15 第1強磁性体リブ
20 第2構造体
21 受容側ダクト
22 受容ノズル
23 第2コイル
25 第2強磁性体リブ
40 遮蔽体
50 荷電粒子ビーム(粒子線)
60 中性子線
100 液体金属ターゲット
200 強磁性体板
300 被照射試料

Claims (8)

  1. 真空中において液体金属が発射ノズルから噴射されて受容ノズルで回収され、前記発射ノズルと前記受容ノズルの間における前記液体金属の流路に粒子線が照射される構成を具備する液体金属ターゲットであって、
    強磁性体で構成され前記発射ノズルが設けられた第1構造体と、
    前記受容ノズルが形成され、前記発射ノズルと前記受容ノズルとが対向するように前記第1構造体と対向して配置され、強磁性体で構成された第2構造体と、が用いられ、
    前記発射ノズル側と前記受容ノズル側とを連結する形態の磁力線を形成するコイルを具備し、
    前記粒子線が前記液体金属を照射する側から見て、前記発射ノズル及び前記受容ノズルの前方又は後方に、前記第1構造体から前記第2構造体側に向かって前記発射ノズルよりも突出し強磁性体で構成された第1強磁性体リブ、及び前記第2構造体から前記第1構造体側に向かって前記受容ノズルよりも突出し強磁性体で構成された第2強磁性体リブ、がそれぞれ設けられたことを特徴とする液体金属ターゲット。
  2. 前記第1構造体において、前記発射ノズルを前記受容ノズル側に向かって突出させた形状とし、
    前記第2構造体において、前記受容ノズルを前記発射ノズル側に向かって突出
    させた形状としたことを特徴とする請求項1に記載の液体金属ターゲット。
  3. 前記発射ノズルと前記受容ノズルとを結ぶ線の中点から見て、前記第2構造体、前記第2強磁性体リブの外形は、それぞれ前記第1構造体、前記第1強磁性体リブと対称となるように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体金属ターゲット
  4. 前記液体金属は、前記受容ノズルから前記第2構造体の内部、前記第1構造体の内部を経由して前記発射ノズルから噴射され、循環する構成とされたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体金属ターゲット。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の液体金属ターゲットが使用され、
    前記液体金属を液体リチウム、前記粒子線を陽子ビーム又は重水素イオンビームとし、前記粒子線で照射された前記液体金属から中性子線を発生させることを特徴とする中性子発生装置。
  6. 前記コイルは、前記第1構造体を巻回する第1のコイルと、前記第2構造体を巻回する第2のコイルとで構成されることを特徴とする請求項5に記載の中性子発生装置。
  7. 前記第1のコイルは前記第1構造体における前記第2構造体から離れた側に、前記第2のコイルは前記第2構造体における前記第1構造体から離れた側にそれぞれ設置され、前記第1のコイルよりも前記粒子線側、及び前記第2のコイルよりも前記粒子線側に、それぞれ放射線を遮蔽する遮蔽体が設けられたことを特徴とする請求項6に記載の中性子発生装置。
  8. 請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の中性子発生装置の制御方法であって、
    前記第1強磁性体リブ及び前記第2強磁性体リブを、前記粒子線が前記液体金属に照射される側から見て前記発射ノズル及び前記受容ノズルよりも前方に設置し、
    前記中性子線が照射される被照射試料を、前記粒子線が前記液体金属に照射される側から見て前記発射ノズル及び前記受容ノズルよりも後方に設置し、
    前記コイルに流れる電流を制御することによって、前記発射ノズルから前記受容ノズルに至る前記液体金属の流路と前記被照射試料との間の間隔を制御することを特徴とする中性子発生装置の制御方法。
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