JP2014218687A - 高Mnオーステナイト系ステンレス鋼とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐へたり性に優れ、スケールの溶着や剥離を起こし難い、高Mnオーステナイト系ステンレス鋼を提供するとともに、その製造方法を提案する。【解決手段】mass%で、C:0.03〜0.12%、Si:0.5〜2.0%、Mn:10〜25%、P:0.035%以下、S:0.001%以下、Ni:1.2〜7%、Cr:14〜25%、Cu:0.05〜1.0%、N:0.25〜0.50%、Al:0.05%以下およびV:0.03〜0.5%を含有し、かつ、MoおよびWのうちから選ばれる1種または2種を合計で0.5〜4%の範囲で含有し、Ni当量(=Ni+0.38Mn+22C+13N+0.43Cu−0.077Cr−0.5Si−0.14(Mo+W)−1.5V)が14.0%以上である鋼素材を熱間圧延し、一次冷間圧延し、中間焼鈍し、圧下率20%以上の二次冷間圧延し、300〜600℃で時効処理を施す。【選択図】図2
Description
本発明は、高Mnオーステナイト系ステンレス鋼に関し、具体的には、主として乗用車やトラックなどの高温燃焼ガスが流れる排気系や、化学プラントの高温高圧配管等の固定用シール材(ガスケット)に用いられる高Mnオーステナイト系ステンレス鋼とその製造方法に関するものである。
近年、地球環境問題やエネルギー問題への注目度は極めて高く、いずれの分野においても、環境負荷の低減やエネルギー効率の向上が強く求められている。自動車分野においても、排気ガスの清浄化や燃費向上を図るため、排気ガスの高温化が進められている。同様に、化学プラントなどにおいても、反応効率を高めるため、反応温度や圧力を高める傾向にある。そのため、上記分野に用いられているシール材は、既存の材料では耐久性(耐へたり性)が不足し、交換頻度を高めたり、メンテナンス回数を増やしたりせざるを得ない状況となってきており、これに対応できる新しい材料が求められている。
従来、上記分野に用いられる材料としては、Ni基合金であるインコネルX−750や、Fe基合金であるSUH660などが用いられていた。これらは、NiやMoなどの固溶強化元素や、Ti,Nb,Alなどの析出硬化元素を多量に含有している。しかし、NiやMoは高価な元素であり、多量の添加は原料コストが高くなる。また、優れた耐へたり性を発現させるためには、690℃を超える高温度での時効処理が必須であるため、製造コストが高くなるという問題もある。
そこで、安価な材料の開発が進められている。例えば、同じ析出強化を利用し、高温での耐へたり性を改善する方法として、特許文献1には、Ti,AlおよびNbの添加量を適正化し、かつ、基地のγ相内に析出するγ’相に対する粒界に析出するη相の重量比率を適正範囲に制御することによって、600℃での熱間引張強さが800N/mm2以上とした耐熱ステンレス鋼が開示されている。しかし、この技術は、熱処理条件については簡素化しているものの、発明例の鋼はNi含有量が25mass%と高く、かつ、Al,TiおよびNbを多量に含有しているため、必然的に真空溶解法での製造となり、製造コストが依然として高いという問題がある。
そこで、高価なNiの添加量を低減する技術が提案されている。例えば、特許文献2には、Ni添加量を7.0〜15.0mass%とし、代わりに耐熱性を高める元素として窒素を添加し、これに冷間加工と時効処理を組み合わせることで、高温強度を得る技術が開示されている。また、Ni添加量をさらに低減する技術として、特許文献3には、高マンガンオーステナイト系ステンレス鋼にW,Moを添加し、有価元素であるNiをMnで置き換え、さらに、耐熱性を高める元素としてNを添加し、加工強化により導入した歪を利用することによって高温強度特性を改善する技術が開示されている。この技術は、Ni添加量が8mass%以下に低減でき、他の有価元素であるWやMoの添加量も少なくて済むことから、高温強度特性が良好な鋼を安価に提供することができる。
しかしながら、上記特許文献2に開示の鋼は、Nの添加量が0.4mass%以上であるため、ブローホールが発生し易く、表面品質や内部品質は必ずしも良好とは言えない。また、特許文献3に開示の鋼は、近年における長寿命化への要求、すなわち、耐へたり性向上の要求に対しては十分な特性を有するものではない。
さらに、材料のへたり以外の要因で寿命となることがあり、これについても改善を求められている。それは、高温で使用中に生じたスケールが、他の部材と溶着を起こし、その後の温度変化によってスケール剥離へと至り、最終的にはシール性の低下を招くと問題である。上記温度変化としては、自動車の場合は、エンジンの稼動や停止に伴う温度変化が、また、化学プラントの場合は、定期点検や修理などで運転を一時停止したり、再稼動したりすることがある。特に、この問題は、自動車の燃費向上のためにアイドリングストップ技術が導入され、温度の上昇・降下がより激しくなってきたことに伴い、顕在化してきている。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高価な元素を多量に添加することなく、耐へたり性に優れ、かつ、使用時に繰り返しの温度変化を受ける場合でも、スケールの溶着や剥離を起こし難い、高Mnオーステナイト系ステンレス鋼を提供するとともに、その有利な製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて、鋼の成分組成が耐へたり性およびスケールの耐溶着・剥離性に及ぼす影響に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、耐へたり性は、Moおよび/またはWを添加して、Crを主体とする析出物中に固溶させ、高温での使用中においても析出物の粒径を小さいままとすることによって改善されること、一方、スケールの耐溶着・剥離性は、SiとCuを適正量添加することによって改善されることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.03〜0.12mass%、Si:0.5〜2.0mass%、Mn:10〜25mass%、P:0.035mass%以下、S:0.001mass%以下、Ni:1.2〜7mass%、Cr:14〜25mass%、Cu:0.05〜1.0mass%、N:0.25〜0.50mass%、Al:0.05mass%以下およびV:0.03〜0.5mass%を含有し、かつ、MoおよびWのうちから選ばれる1種または2種を合計で0.5〜4mass%の範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、下記式;
Ni当量(mass%)=Ni+0.38Mn+22C+13N+0.43Cu−0.077Cr−0.5Si−0.14(Mo+W)−1.5V
ただし、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を表す。
で表されるNi当量が14.0mass%以上である高Mnオーステナイト系ステンレス鋼である。
Ni当量(mass%)=Ni+0.38Mn+22C+13N+0.43Cu−0.077Cr−0.5Si−0.14(Mo+W)−1.5V
ただし、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を表す。
で表されるNi当量が14.0mass%以上である高Mnオーステナイト系ステンレス鋼である。
本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼は、金属組織中のCrを主体とした析出物が、Mo,Wのうちの少なくとも1種を含有し、平均粒径が100nm以下であることを特徴とする。
また、本発明は、上記の成分組成を有するスラブを熱間圧延し、一次冷間圧延し、中間焼鈍し、圧下率20%以上の二次冷間圧延した後、300〜600℃の温度で時効処理を施すことを特徴とする高Mnオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法を提案する。
本発明によれば、耐へたり性に優れるだけでなく、スケールの耐溶着・剥離性にも優れる高Mnオーステナイト系ステンレス鋼を安価に提供することができるので、高温高圧下で使用されるシール材として好適である。
本発明を開発する契機となった実験について説明する。
発明者らは、シール材の寿命に及ぼす化学組成、ミクロ組織の影響を調査するに当り、繰り返しの温度変化が材料寿命に大きく影響していると考え、耐へたり性の評価試験方法の見直しを行った。すなわち、従来は、シール部品形状に加工した試験片を圧縮した状態で、高温に一定時間保持することで耐へたり性を評価していたが、これを、室温から高温の試験温度まで加熱し、一定時間保持した後、室温まで冷却するヒートサイクルの熱処理を、複数回繰り返して付与する試験方法に変更して、耐へたり性を評価した。
発明者らは、シール材の寿命に及ぼす化学組成、ミクロ組織の影響を調査するに当り、繰り返しの温度変化が材料寿命に大きく影響していると考え、耐へたり性の評価試験方法の見直しを行った。すなわち、従来は、シール部品形状に加工した試験片を圧縮した状態で、高温に一定時間保持することで耐へたり性を評価していたが、これを、室温から高温の試験温度まで加熱し、一定時間保持した後、室温まで冷却するヒートサイクルの熱処理を、複数回繰り返して付与する試験方法に変更して、耐へたり性を評価した。
具体的には、C:0.08mass%、Si:0.8mass%、Mn:15.5mass%、P:0.0028mass%、S:0.0005mass%、Ni:4.5mass%、Cr:20.0mass%、Cu:0.35mass%、N:0.39mass%、Al:0.01mass%およびV:0.25mass%を含有する成分組成をベースとし、これに、Moを0.03〜4.5mass%の範囲で種々に変化させて添加した鋼を10kgの大気溶解炉で実験室的に溶解し、鋳造して鋼塊とした後、熱間圧延し、一次冷間圧延し、中間焼鈍し、圧下率40%の二次冷間圧延して、最終板厚0.36mmの冷延板とした。
次いで、上記冷延板から、打ち抜き加工で、外径が140mmφ、内径が100mmφのリング材(リング幅:20mm)を採取した後、プレス加工で、該リング幅の中央部に幅5mm×高さ4mmのビードを形成して、図1(a)に示した形状のへたり試験片を作製した後、450℃×2minの時効処理を施した。
次いで、上記時効処理後のへたり試験片を、図1(b)に示したように、SUH409L製の板厚10mmの圧縮治具2枚の間に挟んで、圧縮率70%で圧縮した状態(圧縮後リング高さ1.2mm)とし、これを、600℃の温度に加熱された加熱炉(大気雰囲気)に装入し、16hr保持した後、炉から取り出してブロアーで冷却するヒートサイクルの熱処理を、高温での保持時間の合計が640hrとなる40サイクル繰り返して施した後、上記繰り返し熱処理後の試験片について、残留ビード高さを測定した。
次いで、上記時効処理後のへたり試験片を、図1(b)に示したように、SUH409L製の板厚10mmの圧縮治具2枚の間に挟んで、圧縮率70%で圧縮した状態(圧縮後リング高さ1.2mm)とし、これを、600℃の温度に加熱された加熱炉(大気雰囲気)に装入し、16hr保持した後、炉から取り出してブロアーで冷却するヒートサイクルの熱処理を、高温での保持時間の合計が640hrとなる40サイクル繰り返して施した後、上記繰り返し熱処理後の試験片について、残留ビード高さを測定した。
その結果、Moおよび/またはWの添加によって、耐へたり性が向上することが確認されたが、C添加量が多い場合には、耐へたり性が低下する傾向があることがわかった。そこで、上記繰り返し熱処理後の試験片について、電解放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて鋼中に析出したCrを主体とする析出物の大きさを調べたところ、図2に示したように、Crを主体とした炭化物の大きさが、試験後の残留ビード高さに大きく影響しており、析出物の粒径が大きくなるほど、残留ビード高さが小さくなる、すなわち、へたり量が大きくなることがわかった。そして、上記繰り返し熱処理後の試験片の残留ビード高さを0.8mm以上(へたり量0.4mm以下)とするためには、析出物の粒径を100nm以下にする必要があることがわかった。なお、上記析出物の粒径は、電解放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて1500倍で析出物の長径と短径を測定し、その平均をその析出物の粒径としたときの、100個の析出物の平均粒径である。
次いで、上記の実験の結果、Moを添加した、へたり量が小さかった試験片について、透過型電子顕微鏡TEMに付属したEDSでCrを主体とする析出物の成分分析を行った。その結果、へたり量が小さい試験片の析出物中には、図3に示すように、Moが含まれていることがわかった。そして、上記析出物中のMoの分布はほぼ均一であることから、Moは析出物中に固溶しているものと推定された。
そこで、Moの添加量と析出物の大きさとの関係について調査したところ、図4に示すように、Mo添加量が多いものほど析出物の粒径が小さくなる傾向があることがわかった。なお、同様の調査を、Wを添加した試験片についても行った結果、Moと同様の結果が得られた。これらの結果から、MoやWを添加すると、Crを主体とした析出物が微細化し、繰り返しの熱処理を受ける場合でも、Crを主体とした析出物の高温での使用中における成長が抑制され、耐へたり性が大きく改善されることがわかった。
ここで、MoやWを添加することによってCrを主体とする析出物の使用中における成長が抑制され、微細のまま保持される理由は、まだ十分に明らかになっていないが、Crを主体とする析出物が成長(粗大化)するためには、小さな析出物が消失して大きな析出物に吸収・併合される必要があるが、MoやWの拡散速度が遅いため、これが律速となって析出物の成長が抑制されるためであると考えている。
また、上記実験では、一部の試験片において、析出物の大きさから予想されるよりも大きな寿命低下が生じているものが幾つか認められた。そこで、それらの試験片について、その原因を詳細に調査したところ、試験片と圧縮治具との接触部でスケールの溶着や剥離が発生していること、したがって、スケールの溶着や剥離も、材料寿命に大きな影響を及ぼすことがわかった。
そこで、さらにスケールの溶着・剥離に及ぼす鋼成分の影響について調査した。その結果、図5に示したように、Siを0.5mass%以上添加することに加えてさらに、Cuを0.05mass%以上添加することによって、スケールの耐溶着・剥離性が格段に改善されることがわかった。このようにSiとCuの複合添加でスケールの耐溶着・剥離性が大きく改善される理由は、現時点では十分に解明されていないが、スケールの密着性が向上した結果、あるいは、スケール組成が変化した結果によるものと推定している。
本発明は、上記の新規な知見に基いて開発したものである。
本発明は、上記の新規な知見に基いて開発したものである。
次に、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼の成分組成について説明する。
C:0.03〜0.12mass%
Cは、オーステナイト相を安定化する元素であり、また、マトリックスへ固溶し、鋼の強度を高めるのに有効な元素である。さらに、炭化物を形成して高温での耐へたり性を改善する元素でもある。このような効果を得るには、少なくとも0.03mass%を含有させる必要がある。一方、多量に含有させると、炭化物の粗大化を招き、耐食性も著しく低下するので、上限は0.12mass%とする。好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。
C:0.03〜0.12mass%
Cは、オーステナイト相を安定化する元素であり、また、マトリックスへ固溶し、鋼の強度を高めるのに有効な元素である。さらに、炭化物を形成して高温での耐へたり性を改善する元素でもある。このような効果を得るには、少なくとも0.03mass%を含有させる必要がある。一方、多量に含有させると、炭化物の粗大化を招き、耐食性も著しく低下するので、上限は0.12mass%とする。好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。
Si:0.5〜2.0mass%
Siは、鋼を溶製する際の脱酸材として、また、使用時に生成するスケールの耐溶着・剥離性を改善するために添加する重要な元素である。特に、微量のCuと共存させたときのスケールの耐溶着・剥離性向上効果は顕著である。これらの効果を得るためには、少なくとも0.5mass%の添加が必要である。一方、多量に含有させると、オーステナイト相を不安定化したり、冷間加工性に悪影響を及ぼしたりするため、上限は2.0mass%とする。好ましくは0.6〜1.4mass%の範囲である。
Siは、鋼を溶製する際の脱酸材として、また、使用時に生成するスケールの耐溶着・剥離性を改善するために添加する重要な元素である。特に、微量のCuと共存させたときのスケールの耐溶着・剥離性向上効果は顕著である。これらの効果を得るためには、少なくとも0.5mass%の添加が必要である。一方、多量に含有させると、オーステナイト相を不安定化したり、冷間加工性に悪影響を及ぼしたりするため、上限は2.0mass%とする。好ましくは0.6〜1.4mass%の範囲である。
Mn:10〜25mass%
Mnは、オーステナイト相を安定化する元素である。また、Nの固溶量を拡大するので、鋼の高強度化にも有効な元素である。上記効果を得るためには、少なくとも10mass%の添加が必要である。しかし、過剰に添加すると、大量のヒューム(Mnの蒸気)が発生して溶製することを困難としたり、δフェライトの生成量が多くなり過ぎて、熱間圧延することが困難となったりするため、上限は25mass%とする。好ましくは10〜16mass%の範囲である。
Mnは、オーステナイト相を安定化する元素である。また、Nの固溶量を拡大するので、鋼の高強度化にも有効な元素である。上記効果を得るためには、少なくとも10mass%の添加が必要である。しかし、過剰に添加すると、大量のヒューム(Mnの蒸気)が発生して溶製することを困難としたり、δフェライトの生成量が多くなり過ぎて、熱間圧延することが困難となったりするため、上限は25mass%とする。好ましくは10〜16mass%の範囲である。
P:0.035mass%以下、S:0.001mass%以下
PおよびSは、粒界に偏析して低融点化合物を形成し、熱間加工性を低下させるため、少ないほど望ましい。よって、Pは0.035mass%以下、Sは0.001mass%以下に制限する。好ましくは、Pは0.030mass%以下、Sは0.0008mass%以下である。
PおよびSは、粒界に偏析して低融点化合物を形成し、熱間加工性を低下させるため、少ないほど望ましい。よって、Pは0.035mass%以下、Sは0.001mass%以下に制限する。好ましくは、Pは0.030mass%以下、Sは0.0008mass%以下である。
Ni:1.2〜7mass%
Niは、オーステナイト相を安定化する元素であり、高温強度を確保したり、耐食性、冷間加工性を高めたりする観点から、必須の元素であり、1.2mass%以上の添加を必要とする。一方、多量に添加すると、原料コストが上昇する他、加工硬化能が低下し、冷間加工後の硬さを小さくする。よって、Niは1.2〜7mass%の範囲とする。好ましくは1.2〜5mass%の範囲である。
Niは、オーステナイト相を安定化する元素であり、高温強度を確保したり、耐食性、冷間加工性を高めたりする観点から、必須の元素であり、1.2mass%以上の添加を必要とする。一方、多量に添加すると、原料コストが上昇する他、加工硬化能が低下し、冷間加工後の硬さを小さくする。よって、Niは1.2〜7mass%の範囲とする。好ましくは1.2〜5mass%の範囲である。
Cr:14〜25mass%
Crは、耐食性、耐酸化性の向上に有効な元素であり、少なくとも14mass%の添加が必要である。しかし、Cr含有量が多くなると、オーステナイト相の安定性が低下し、これを補うために、Ni等の高価なオーステナイト安定化元素を添加する必要が生じるため、上限は25mass%とする。好ましくは15〜18mass%の範囲である。
Crは、耐食性、耐酸化性の向上に有効な元素であり、少なくとも14mass%の添加が必要である。しかし、Cr含有量が多くなると、オーステナイト相の安定性が低下し、これを補うために、Ni等の高価なオーステナイト安定化元素を添加する必要が生じるため、上限は25mass%とする。好ましくは15〜18mass%の範囲である。
Cu:0.05〜1.0mass%
Cuは、オーステナイト相を安定化する元素である。また、Siと共存することで、スケールの耐溶着・剥離性を向上する優れた効果を発現するので、本発明における重要な元素である。上記効果を得るためには、少なくとも0.05mass%の添加を必要とする。一方、1.0mass%を超える過剰の添加は、熱間加工性の低下や、固溶化熱処理後の酸洗性の低下を招くので、上限は1.0mass%とする。好ましくは0.08〜0.5mass%の範囲である。
Cuは、オーステナイト相を安定化する元素である。また、Siと共存することで、スケールの耐溶着・剥離性を向上する優れた効果を発現するので、本発明における重要な元素である。上記効果を得るためには、少なくとも0.05mass%の添加を必要とする。一方、1.0mass%を超える過剰の添加は、熱間加工性の低下や、固溶化熱処理後の酸洗性の低下を招くので、上限は1.0mass%とする。好ましくは0.08〜0.5mass%の範囲である。
N:0.25〜0.50mass%
Nは、オーステナイト相を安定化する元素であり、室温強度および高温強度を確保するのに必要な元素である。また、高温における耐へたり性を確保するためにも必要な元素である。これらの効果を得るためには、少なくとも0.25mass%の添加が必要である。しかし、0.50mass%を超える過剰の添加は、鋼塊や鋳片等の鋼素材中に気泡を生じ、内部品質や表面品質の低下を招く。よって、Nは0.25〜0.50mass%の範囲とする。好ましくは0.25〜0.40mass%の範囲である。
Nは、オーステナイト相を安定化する元素であり、室温強度および高温強度を確保するのに必要な元素である。また、高温における耐へたり性を確保するためにも必要な元素である。これらの効果を得るためには、少なくとも0.25mass%の添加が必要である。しかし、0.50mass%を超える過剰の添加は、鋼塊や鋳片等の鋼素材中に気泡を生じ、内部品質や表面品質の低下を招く。よって、Nは0.25〜0.50mass%の範囲とする。好ましくは0.25〜0.40mass%の範囲である。
Al:0.05mass%以下
Alは、鋼の溶製時に脱酸剤として添加されるのが一般的であるが、本発明鋼のように、Nを多量に含有する鋼に添加すると、Al窒化物を生成し、有効なN量を減じてしまう。また、Alを過剰に添加すると、中間焼鈍後に未固溶のAl窒化物が残存し、これに隣接してCrを主体とする析出物が析出するため、上記析出物が粗大化してしまう。よって、本発明においては、Alは0.05mass%以下に制限する。好ましくは0.01mass%以下である。
Alは、鋼の溶製時に脱酸剤として添加されるのが一般的であるが、本発明鋼のように、Nを多量に含有する鋼に添加すると、Al窒化物を生成し、有効なN量を減じてしまう。また、Alを過剰に添加すると、中間焼鈍後に未固溶のAl窒化物が残存し、これに隣接してCrを主体とする析出物が析出するため、上記析出物が粗大化してしまう。よって、本発明においては、Alは0.05mass%以下に制限する。好ましくは0.01mass%以下である。
V:0.1〜0.5mass%
Vは、窒化物を形成して結晶粒を微細化し、ガスケットなどに加工する時に発生する割れを効果的に防止する効果を有する元素である。また、鋼の高温強度を高める元素でもある。これらの効果を得るためには、少なくとも0.1mass%の添加が必要である。しかし、0.5mass%を超える過剰の添加は、Alと同様、有効窒素量を減じたり、Crを主体とする析出物の粗大化を招いたりする。よって、Vは0.1〜0.5mass%の範囲とする。好ましくは0.1〜0.4mass%の範囲である。
Vは、窒化物を形成して結晶粒を微細化し、ガスケットなどに加工する時に発生する割れを効果的に防止する効果を有する元素である。また、鋼の高温強度を高める元素でもある。これらの効果を得るためには、少なくとも0.1mass%の添加が必要である。しかし、0.5mass%を超える過剰の添加は、Alと同様、有効窒素量を減じたり、Crを主体とする析出物の粗大化を招いたりする。よって、Vは0.1〜0.5mass%の範囲とする。好ましくは0.1〜0.4mass%の範囲である。
WおよびMo:合計で0.5〜4mass%
WおよびMoは、Crを主体とする析出物中に含まれることで、該粒子の成長を抑制し、粒径を小さくする効果があるので、鋼の高温強度を高めて、耐へたり性を改善するのに有効な元素である。上記効果を得るためには、WおよびMoのうちの少なくとも1種を、少なくとも0.5mass%添加する必要がある。しかし、4mass%を超える過剰な添加は、オーステナイト相の安定性を低下させる他、原料コストの上昇を招く。よって、ためWおよびMoは合計で0.5〜4mass%とする。好ましくは合計で1.0〜3.0mass%の範囲である。
WおよびMoは、Crを主体とする析出物中に含まれることで、該粒子の成長を抑制し、粒径を小さくする効果があるので、鋼の高温強度を高めて、耐へたり性を改善するのに有効な元素である。上記効果を得るためには、WおよびMoのうちの少なくとも1種を、少なくとも0.5mass%添加する必要がある。しかし、4mass%を超える過剰な添加は、オーステナイト相の安定性を低下させる他、原料コストの上昇を招く。よって、ためWおよびMoは合計で0.5〜4mass%とする。好ましくは合計で1.0〜3.0mass%の範囲である。
Ni当量:14.0mass%以上
本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼は、上記成分組成を満たすことに加えてさらに、冷間圧延後でも鋼組織がオーステナイト相を安定して保持するため、下記式;
Ni当量(mass%)=Ni+0.38Mn+22C+13N+0.43Cu−0.077Cr−0.5Si−0.14(Mo+W)−1.5V
(ただし、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を表す。)
で定義されるNi当量が14.0mass%以上であることを必要とする。
本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼は、上記成分組成を満たすことに加えてさらに、冷間圧延後でも鋼組織がオーステナイト相を安定して保持するため、下記式;
Ni当量(mass%)=Ni+0.38Mn+22C+13N+0.43Cu−0.077Cr−0.5Si−0.14(Mo+W)−1.5V
(ただし、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を表す。)
で定義されるNi当量が14.0mass%以上であることを必要とする。
上記式で表されるNi当量は、一般には、冷間圧延に対するオーステナイト組織の安定性を示す指数として用いられており、この値が14.0(mass%)以上であれば、圧下率が60%の冷間圧延後もオーステナイト単相とすることができる。なお、上記式は、従来から用いられているNi当量を求める式に、本発明において重要な元素であるCuの係数を実験より求めて追加しているところに特徴がある。この式を用いることで、Cuを添加した場合においても、安定してオーステナイト単相とすることができる。なお、Ni等量は14.5mass%以上が好ましく、16.0mass%以上がより好ましい。
本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、本発明の作用効果を害さない範囲であれば、他の元素の含有を拒むものではない。
次に、本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼中に析出したCrを主体とした析出物について説明する。
本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼は、良好な耐へたり性を有するためには、上記に説明した成分組成を満たし、かつ、冷間圧延で歪が導入された後でもオーステナイト単相組織であることに加え、さらに、鋼中に析出したCrを主体とした析出物の大きさを平均粒径で100nm以下に制限するのが好ましい。というのは、良好な耐へたり性を得るためには、図2に示したように、析出物の平均粒径を100nm以下とするのが好ましいからである。なお、析出物の平均粒径は、より好ましくは65nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼は、良好な耐へたり性を有するためには、上記に説明した成分組成を満たし、かつ、冷間圧延で歪が導入された後でもオーステナイト単相組織であることに加え、さらに、鋼中に析出したCrを主体とした析出物の大きさを平均粒径で100nm以下に制限するのが好ましい。というのは、良好な耐へたり性を得るためには、図2に示したように、析出物の平均粒径を100nm以下とするのが好ましいからである。なお、析出物の平均粒径は、より好ましくは65nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
そこで、本発明においては、析出物の上記平均粒径を安定して実現するため、Moおよび/またはWを必須の元素として含有させる。というのは、図3や図4に示したように、Moおよび/またはWを含有させることによって、Crを主体とする析出物中にMoおよび/またはWが固溶し、析出物の粒径を小さくして、へたりを抑制することができるからである。
次に、本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法は、上記に説明した成分組成とNi当量を満たすように調整したステンレス鋼を溶製し、鋳造して鋼素材(スラブ)とした後、熱間圧延し、一次冷間圧延し、中間焼鈍した後、圧下率が20%以上の二次冷間圧延(最終冷間圧延)し、その後、時効処理を施す一連の工程からなるが、上記製造工程において、一次冷間圧延後の中間焼鈍までは、常法に従って製造すればよく、特に制限はない。したがって、二次冷間圧延および時効処理条件について以下に説明する。
本発明の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法は、上記に説明した成分組成とNi当量を満たすように調整したステンレス鋼を溶製し、鋳造して鋼素材(スラブ)とした後、熱間圧延し、一次冷間圧延し、中間焼鈍した後、圧下率が20%以上の二次冷間圧延(最終冷間圧延)し、その後、時効処理を施す一連の工程からなるが、上記製造工程において、一次冷間圧延後の中間焼鈍までは、常法に従って製造すればよく、特に制限はない。したがって、二次冷間圧延および時効処理条件について以下に説明する。
二次冷間圧延
二次冷間圧延における圧下率は20%以上とする必要がある。圧下率を20%以上とする理由は、圧延で十分に加工硬化させることによって弾性限を高め、「バネ性」を向上するとともに、圧延で十分な量の転位を導入して時効処理時におけるSi,Cuの表面への拡散を促進し、耐溶着・剥離性を向上させるためである。しかし、圧下率が60%を超えると、冷間圧延機の圧延負荷が増大して、圧延することが難しくなるため、上限は60%とするのが好ましい。より好ましい圧下率は35〜60%の範囲である。
二次冷間圧延における圧下率は20%以上とする必要がある。圧下率を20%以上とする理由は、圧延で十分に加工硬化させることによって弾性限を高め、「バネ性」を向上するとともに、圧延で十分な量の転位を導入して時効処理時におけるSi,Cuの表面への拡散を促進し、耐溶着・剥離性を向上させるためである。しかし、圧下率が60%を超えると、冷間圧延機の圧延負荷が増大して、圧延することが難しくなるため、上限は60%とするのが好ましい。より好ましい圧下率は35〜60%の範囲である。
時効処理
二次冷間圧延に続く時効処理は、圧延で導入した転位を、CやNで固着することによって弾性限を高めるとともに、Crを主体とした析出物による析出硬化によって、鋼の高温強度を高めて、高温での使用中におけるへたり量を低減し、優れたシール性を確保するために必要な工程である。上記効果を得るためには、時効処理の温度は300〜600℃の範囲とすることが必要である。300℃未満では、時効処理の効果が十分ではなく、必要とする強度が得られず、一方、600℃を超えると、却って軟化を起こすようになるからである。好ましくは400〜600℃の範囲である。なお、上記温度での処理時間は、1min以上24hr以下の範囲内で、要求特性に応じて適宜選択すればよい。1min未満では、時効効果が十分に得られず、一方、24hrを超えると、時効効果が飽和するだけでなく、経済的にも不利となるからである。
二次冷間圧延に続く時効処理は、圧延で導入した転位を、CやNで固着することによって弾性限を高めるとともに、Crを主体とした析出物による析出硬化によって、鋼の高温強度を高めて、高温での使用中におけるへたり量を低減し、優れたシール性を確保するために必要な工程である。上記効果を得るためには、時効処理の温度は300〜600℃の範囲とすることが必要である。300℃未満では、時効処理の効果が十分ではなく、必要とする強度が得られず、一方、600℃を超えると、却って軟化を起こすようになるからである。好ましくは400〜600℃の範囲である。なお、上記温度での処理時間は、1min以上24hr以下の範囲内で、要求特性に応じて適宜選択すればよい。1min未満では、時効効果が十分に得られず、一方、24hrを超えると、時効効果が飽和するだけでなく、経済的にも不利となるからである。
表1に示す成分組成の有するNo.1〜18の鋼を電気炉で大気溶解し、連続鋳造して厚さ200mm×幅1000mm幅のスラブとした後、熱間圧延し、一次冷間圧延して板厚0.6mmとし、中間焼鈍した後、圧下率40%の二次冷間圧延して、最終板厚0.36mmの冷延板とした。
次いで、上記冷延板から、打ち抜き加工で、外径が140mmφ、内径が100mmφのリング材(リング幅:20mm)を採取した後、プレス加工で、該リング幅の中央部に幅5mm×高さ4mmのビードを形成して、図1(a)に示した形状の、へたり試験片を作製した後、450℃×2minの時効処理を施した。
次いで、上記時効処理後のへたり試験片を、図1(b)に示したように、SUH409L製の板厚10mmの圧縮治具2枚の間に挟んで、圧縮率70%で圧縮してビード高さ1.2mmとし、これを、600℃の温度に加熱された加熱炉(大気雰囲気)に装入し、16hr保持した後、炉から取り出してブロアーで冷却するヒートサイクルの熱処理を、高温での保持時間の合計が160hr、320hrおよび640hrとなる回数、すなわち、10サイクル、20サイクルおよび40サイクル、繰り返して施した。
次いで、上記時効処理後のへたり試験片を、図1(b)に示したように、SUH409L製の板厚10mmの圧縮治具2枚の間に挟んで、圧縮率70%で圧縮してビード高さ1.2mmとし、これを、600℃の温度に加熱された加熱炉(大気雰囲気)に装入し、16hr保持した後、炉から取り出してブロアーで冷却するヒートサイクルの熱処理を、高温での保持時間の合計が160hr、320hrおよび640hrとなる回数、すなわち、10サイクル、20サイクルおよび40サイクル、繰り返して施した。
上記繰り返し熱処理後の試験片について、残留ビード高さを測定し、へたり量を求めるとともに、圧縮冶具へのスケール付着の有無を目視にて観察した。
また、上記繰り返し熱処理後の試験片を電解研磨した後、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いてCrを主体とした析出物100個の粒径を測定し、それらの平均粒径を求めた。上記の測定結果を表2に示した。
また、上記繰り返し熱処理後の試験片を電解研磨した後、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いてCrを主体とした析出物100個の粒径を測定し、それらの平均粒径を求めた。上記の測定結果を表2に示した。
表2から、本発明に適合するNo.1〜9の鋼は、いずれも600℃×16hrの熱処理を40サイクル施した後でも、鋼中に析出した析出物の粒径が100nm以下と微細で、へたり量も0.35mm以下と小さくなっている。また、スケールの溶着や剥離の問題も、すべての鋼で確認されていない。
これに対して、SiまたはCuの含有量が少ないNo.10,11の鋼は、20サイクル後で、既に軽度のスケールの溶着が認められ、40サイクル後では剥離が発生しており、それに伴ってへたり量も急激に増大している。
また、C量の多いNo.12,13の鋼は、析出物の粒径が100nmを超えて大きくなっているため、へたり量が大きい傾向にある。
また、V量が多いNo.14の鋼およびAl量が多いNo.17の鋼は、これら元素の窒化物の影響で析出物の粒径が大きくなるため、やはり、へたり量が大きい傾向にある。
また、MoおよびWを含有しない、または、含有量が少ないNo.15,18の鋼は、600℃の温度に保持されたことで再結晶が生じて軟化し、また、Ni当量が14.0よりも小さいNo.16の鋼は、冷間加工によりマルテンサイト変態が生じ、熱処理時に逆変態によって軟化し、いずれも大きなへたりが生じている。
これに対して、SiまたはCuの含有量が少ないNo.10,11の鋼は、20サイクル後で、既に軽度のスケールの溶着が認められ、40サイクル後では剥離が発生しており、それに伴ってへたり量も急激に増大している。
また、C量の多いNo.12,13の鋼は、析出物の粒径が100nmを超えて大きくなっているため、へたり量が大きい傾向にある。
また、V量が多いNo.14の鋼およびAl量が多いNo.17の鋼は、これら元素の窒化物の影響で析出物の粒径が大きくなるため、やはり、へたり量が大きい傾向にある。
また、MoおよびWを含有しない、または、含有量が少ないNo.15,18の鋼は、600℃の温度に保持されたことで再結晶が生じて軟化し、また、Ni当量が14.0よりも小さいNo.16の鋼は、冷間加工によりマルテンサイト変態が生じ、熱処理時に逆変態によって軟化し、いずれも大きなへたりが生じている。
1:へたり試験片
2:ビード
3:圧縮治具
2:ビード
3:圧縮治具
Claims (3)
- C:0.03〜0.12mass%、Si:0.5〜2.0mass%、Mn:10〜25mass%、P:0.035mass%以下、S:0.001mass%以下、Ni:1.2〜7mass%、Cr:14〜25mass%、Cu:0.05〜1.0mass%、N:0.25〜0.50mass%、Al:0.05mass%以下およびV:0.03〜0.5mass%を含有し、かつ、MoおよびWのうちから選ばれる1種または2種を合計で0.5〜4mass%の範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、下記式で表されるNi当量が14.0mass%以上である高Mnオーステナイト系ステンレス鋼。
記
Ni当量(mass%)=Ni+0.38Mn+22C+13N+0.43Cu−0.077Cr−0.5Si−0.14(Mo+W)−1.5V
ただし、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を表す。 - 金属組織中のCrを主体とした析出物が、Mo,Wのうちの少なくとも1種を含有し、平均粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼。
- 請求項1に記載の成分組成を有するスラブを熱間圧延し、一次冷間圧延し、中間焼鈍し、圧下率20%以上の二次冷間圧延した後、300〜600℃の温度で時効処理を施すことを特徴とする高Mnオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法。
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JP2017066470A (ja) * | 2015-09-30 | 2017-04-06 | 新日鐵住金株式会社 | オーステナイト系ステンレス鋼 |
CN107523748A (zh) * | 2017-09-22 | 2017-12-29 | 河钢股份有限公司 | 超低温环境用高锰钢板及其生产方法 |
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- 2013-05-02 JP JP2013096757A patent/JP2014218687A/ja active Pending
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