JP2014214375A - シリンダブロック、シリンダブロックのめっき処理装置、およびシリンダブロックのめっき処理方法 - Google Patents

シリンダブロック、シリンダブロックのめっき処理装置、およびシリンダブロックのめっき処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ピストンの上死点近傍および下死点近傍に対応する部位におけるめっき皮膜中の炭化ケイ素含有量を充実して当該部位の耐摩耗性の高いシリンダブロック、シリンダブロックのめっき処理装置、およびシリンダブロックのめっき処理方法を提案する。
【解決手段】シリンダブロック101は、シリンダボア102を区画する円筒形状のシリンダ内周面103と、シリンダ内周面103を覆い、かつシリンダボア102を往復するピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位での炭化ケイ素含有量が0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度であるめっき皮膜と、を備える。
【選択図】 図13

Description

本発明は、シリンダブロック、シリンダブロックのシリンダ内周面をめっき処理するシリンダブロックのめっき処理装置、およびシリンダブロックのめっき処理方法に関する。
アルミニウム合金製のシリンダブロックでは、シリンダボア内周面にNi−P合金めっき皮膜中に炭化ケイ素(SiC)を分散させたNi−P−SiC複合めっき皮膜が適用さられている。硬質粒子である炭化ケイ素の粒子をNi−P合金めっき皮膜中に分散させることによって、めっき皮膜の耐摩耗性が向上し、さらにピストンの摩耗が低減する。
Ni−P−SiC複合めっき皮膜は、被めっき材であるシリンダブロックを脱脂し、シリンダ内周面に電解エッチング処理を施し、シリンダ内周面にめっき皮膜を成膜する3つの工程で形成される。
電解エッチング処理では、シリンダボア内周面に沿ってエッチング液を流動させながら、シリンダブロックと電極との間に電気を流す。これにより、シリンダボア内周面は溶解反応を引き起こす。この溶解反応によって、シリンダボア内周面のアルミニウムが溶解する一方で、共晶シリコンは溶解せずに留まる。そして、電解エッチング処理後のシリンダ内周面は共晶シリコンが突出した状態になる。電解エッチング処理後のシリンダ内周面にめっき皮膜を成膜すると、突出した共晶シリコンのアンカー効果によって被めっき材であるシリンダブロックとめっき皮膜との密着性が高まる。
また、めっき皮膜の成膜に使用する電極の全面に穴を開け、シリンダボアと電極との間の処理液流路におけるめっき処理液の流速を均一にしたシリンダブロックのめっき処理方法が知られている。この方法によって、めっき皮膜中の炭化ケイ素含有量がシリンダボア全面で均一なシリンダブロックが得られる(例えば、特許文献1を参照。)。
特開平11−350197号公報
従来のシリンダブロックのめっき処理方法では、シリンダ内周面を覆うめっき皮膜中の炭化ケイ素含有量がその全面で均一になる。しかしながら、従来のめっき処理方法では、めっき皮膜中の炭化ケイ素含有量が制御されていないため、炭化ケイ素含有量が低下すれば耐摩耗性が不十分になる。
ところで、ピストンの速度は上死点の近傍および下死点の近傍でほぼゼロになる。このため、シリンダ内周面のうちピストンの上死点および下死点に対応する部位では、潤滑油の供給が不足して油膜切れが発生しやすい。
つまり、シリンダ内周面の全面で炭化ケイ素含有量が均一なめっき皮膜では、シリンダ内周面のうちピストンの上死点から下死点の間に対応する部位における炭化ケイ素含有量が十分な一方で、シリンダ内周面のうちピストンの上死点および下死点に対応する部位における炭化ケイ素含有量が不足する場合がある。
そこで、本発明は、ピストンの上死点近傍および下死点近傍に対応する部位におけるめっき皮膜中の炭化ケイ素含有量を充実して当該部位の耐摩耗性の高いシリンダブロック、シリンダブロックのめっき処理装置、およびシリンダブロックのめっき処理方法を提案する。
前記の課題を解決するため本発明に係るシリンダブロックは、シリンダボアを区画する円筒形状のシリンダ内周面と、前記シリンダ内周面を覆い、かつ前記シリンダボアを往復するピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位での炭化ケイ素含有量が0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度、好ましくは前記炭化ケイ素含有量が1.0重量パーセント濃度から1.4重量パーセント濃度であるめっき皮膜と、を備える。
また、前記の課題を解決するため本発明に係るシリンダブロックのめっき処理装置は、シリンダボアを区画する円筒形状のシリンダ内周面を有するシリンダブロックを載置自在な載置台と、前記シリンダボアの一方側の開口から前記シリンダボア内に挿入されて前記シリンダ内周面との間に環状の処理液流路を区画する電極と、を備え、前記電極は、前記シリンダボアの一方側から前記処理液流路に流入する処理液を前記シリンダボアの他方側へ導いて前記処理液流路へ再度流入させる迂回流路と、前記シリンダボアの他方側から前記処理液流路に再度流入する処理液を前記シリンダボアの中心線方向における中央部の位置で前記処理液流路から処理液を流出させる出口流路と、を備える。
さらに、前記の課題を解決するため本発明に係るシリンダブロックのめっき処理方法は、シリンダボアを区画する円筒形状のシリンダ内周面を有するシリンダブロックを準備し、前記シリンダボア内に電極を配置して環状の処理液流路を区画し、前記シリンダボアの一方側から前記処理液流路に処理液を流し込み、前記処理液流路に流れ込んだ処理液を前記電極内に迂回させて前記シリンダボアの他方側から前記処理液流路へ再度流し込み、前記シリンダボアの他方側から前記処理液流路に再度流れ込んだ処理液を前記シリンダボアの中心線方向における中央部の位置で前記処理液流路から流出させる。
本発明によれば、ピストンの上死点近傍および下死点近傍に対応する部位におけるめっき皮膜中の炭化ケイ素含有量を充実させて当該部位の耐摩耗性の高いシリンダブロック、シリンダブロックのめっき処理装置、およびシリンダブロックのめっき処理方法を提供できる。
本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置を示す正面図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置を示す断面図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置を示す断面図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置の電極を示す斜視図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置の電極を示す断面図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置の電極を示す断面図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置の電極を示す断面図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置のシール治具および電極を示す断面図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックの往復摺動摩耗試験を示す概念図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理方法において、めっき皮膜の炭化ケイ素含有量と摩耗量との関係を示す図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理方法において、シリンダ内周面のエッチング量とめっき皮膜の炭化ケイ素含有量との関係を示す図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理方法において、シリンダ内周面の温度とエッチング量との関係を示す図。 本発明の実施形態に係るシリンダブロックを示す断面図。
以下、本発明に係るシリンダブロックのめっき処理装置の実施の形態について、図1から図13を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置を示す正面図である。
図2および図3は、図1のII−II線において、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置を示す断面図である。
なお、図2は、シリンダブロック101のめっき処理装置1(以下、単に「めっき処理装置1」と呼ぶ。)のめっき処理最中の状態を示す図であり、図3は、めっき処理装置1の準備最中の状態を示す図である。
図1から図3に示すように、めっき処理装置1は、シリンダボア102を区画する円筒形状のシリンダ内周面103を有するシリンダブロック101を載置自在な載置台3と、シリンダボア102の一方側(ここではシリンダヘッド側)の開口102aからシリンダボア102内に挿入されてシリンダ内周面103との間に環状の処理液流路4を区画する筒状の電極6と、電極6の自由端部に設けられてシリンダボア102の他方側(ここではクランクケース側)の開口102b近傍に配置されるシール治具7と、載置台3と協働してシリンダブロック101を挟み込み保持する上治具8と、シール治具7へ作動流体を供給するエアジョイント9と、処理液流路4に処理液11を供給する処理液供給装置12と、シリンダブロック101と電極6との間に電位差を発生させる電源装置13と、を備える。
めっき処理装置1は、シリンダ内周面103と電極外周面6aとの隙間に区画される処理液流路4に、処理液11を流通させ、かつシリンダブロック101と電極6との間に電位差を生じさせてシリンダ内周面103のめっき前処理、具体的には電解エッチング処理と、めっき皮膜(めっき層)の成膜を施す。
シリンダブロック101は、例えばアルミニウム合金を素材とする鋳物製であり、例えば、並列多気筒エンジンの内燃機関(図示省略)を構成する部材のひとつである。シリンダブロック101は、中空なシリンダボア102を形成する円筒形状のシリンダ内周面103と、シリンダヘッド(図示省略)との合わせ面105と、クランクケース(図示省略)との合わせ面106と、を有する。シリンダブロック101は、めっき処理装置1によって、シリンダ内周面103の電解エッチング処理、およびシリンダ内周面103のめっき皮膜の成膜を施される。それぞれの工程で流通される処理液11は異なり、電解エッチング処理では、エッチング液である高濃度・高温のリン酸が流通される。
なお、図2および図3は、シリンダブロック101が有する複数、例えば3つのシリンダボア102のうち1つのシリンダボア102におけるめっき処理装置1を示したものである。めっき処理装置1は、他のシリンダボア102についても同様な構成を並列に備える。
めっき処理装置1の載置台3は、装置全体の自重を支える下治具15と、下治具15の上面に配置される着脱自在な厚板状の絶縁部材16と、絶縁部材16の上面に設けられる厚板状の導電板17と、絶縁部材16を貫通する筒状のシール受け台18と、シール受け台18の上部に設けられる環状のシール部材21と、を備える。
下治具15は、シリンダボア102と略同径な下治具孔23を有する。また、下治具15は下治具孔23内に配置される管状の長尺な電極支持台24を備える。
導電板17は、複数のステンレス鋼製の平板を層状に組み合わせたものであり、平坦な載置面25を有する。シリンダブロック101は、シリンダボア102を下治具孔23に対して略同心にして、シリンダボア102のシリンダヘッド側開口縁を除く合わせ面105を載置面25に当接させて載置台3に載置される。導電板17およびシリンダブロック101は、互いに接する載置面25および合わせ面105によって導通する。また、導電板17は、油圧シリンダ等の昇降装置(図示省略)によってシリンダボア102の中心線に沿って移動する。導電板17は層状に組み合わされた複数のステンレス鋼製の平板で挟み込んでシール受け台18およびシール部材21を保持する。
絶縁部材16は、例えばシリコンゴムで形成された絶縁体である。絶縁部材16は下治具15と導電板17との間からの処理液11の漏洩を防ぐ。また、絶縁部材16は下治具15とシリンダブロック101との間を電気的に絶縁する。めっき処理装置1は、処理液11を処理液流路4に流通させ、電極6とシリンダブロック101とを通電させてシリンダ内周面103の電解エッチング処理およびめっき皮膜の成膜を効率よく施す。
シール受け台18は、例えばシリコンゴムで形成された絶縁体であり、シリンダボア102のシリンダヘッド側開口縁にシール部材21を位置させる。
シール部材21は、例えばシリコンゴムで形成された絶縁体であり、シール受け台18の自由端部に設けられる。また、シール部材21は、シリンダブロック101が導電板17に載置されると、シリンダボア102のシリンダヘッド側開口縁に当接して合わせ面105とシール受け台18との間に挟み込まれる。シール部材21は、シリンダボア102とシール受け台18の内周面との間からの処理液11の漏洩を防ぐ。
導電板17、絶縁部材16、シール受け台18およびシール部材21は、下治具15から一体的に着脱できる。めっき処理装置1は、先ず、導電板17の載置面25にシリンダブロック101を位置決めし、次いで、シリンダブロック101と導電板17と絶縁部材16とを一体的に下治具15へ載置することによって載置台3にシリンダブロック101を載置する。
電極6は、下治具15の電極支持台24の自由端部に支持されて載置台3の上方に向けて突出される。また、電極6は、電極支持台24を介して電源装置13に導通される。さらに、電極6は、シリンダブロック101が載置台3に載置されたとき、シリンダボア102内に配置されて電極外周面6aとシリンダ内周面103との間に環状の処理液流路4を区画する。
シール治具7は、シリンダボア102のクランクケース側の開口102b近傍を塞いで処理液流路4を区画する。シール治具7は、シリンダブロック101が載置台3に載置されたとき、電極6とともにシリンダボア102内に配置される。シール治具7は、駆動装置としてのエアジョイント9から供給される空気によって作動する。シール治具7は、シリンダボア102のクランクケース側の開口102b近傍からの処理液11の漏洩を防ぐ拡張シール部材31を備える。
上治具8は、シリンダブロック101の合わせ面106に当接され、載置台3との間にシリンダブロック101を挟み込んで保持する。また、上治具8は、油圧シリンダ等の昇降装置(図示省略)によって載置台3に接近してシリンダブロック101の合わせ面106を押さえつける。さらに、上治具8は、エアジョイント9を上治具8の移動方向に沿って摺動自在に保持する筒状のエアジョイント保持部材32と、上治具8に対してエアジョイント9を移動自在に保持してエアジョイント9とシール治具7とが連結される際にエアジョイント9の位置調整を担うコイルスプリング33と、を備える。
エアジョイント9は、拡張シール部材31の作動流体である空気をシール治具7に供給する作動流体供給路34を備える。また、エアジョイント9は、上治具8がシリンダブロック101の合わせ面106を押さえつける動作にともなってシール治具7に連結され、作動流体を供給可能な状態になる。
コイルスプリング33はエアジョイント9を載置台3の方向へ押し付ける役割も担う。
処理液供給装置12は、処理液11を蓄えるタンク36と、タンク36から載置台3に処理液11を案内する供給路37と、供給路37に設けられたポンプ38と、載置台3からタンク36に処理液11を回収する回収路39と、回収路39に設けられた流量計41と、を備える。また、処理液供給装置12は、流量計41の測定値からフィードバック制御によってポンプ38の運転出力を調整し、処理液11の流速を制御する。
タンク36は処理液11の種類毎に複数用意される。
電源装置13は、電極支持台24および導電板17にそれぞれ電気的に接続されてシリンダブロック101と電極6との間に電位差を生じさせる。また、電源装置13は、シリンダ内周面103をめっき処理するとき、電極6を陽極に、シリンダブロック101を陰極になるよう電気を流す。
このような構成によって、電解エッチング処理では、めっき処理装置1は、タンク36から処理液供給装置12の供給路37、下治具15の下治具孔23と電極支持台24との隙間、シール受け台18の内周面と電極6との隙間を順次に経て処理液流路4に処理液11を送給し、処理液流路4から電極6内の流路、電極支持台24の管内、処理液供給装置12の回収路39を順次に経てタンク36に処理液11を回収する。なお、めっき皮膜の成膜では、処理液11は、電解エッチング処理における流れの逆経路で流通される。
図4は、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置の電極を示す斜視図である。
図5は、図4のV−V線において、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置の電極を示す断面図である。
図6は、図4のVI−VI線において、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置の電極を示す断面図である。
図7は、図4のVII−VII線において、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置の電極を示す断面図である。
図4から図7に示すように、本実施形態に係るめっき処理装置1の電極6は、シリンダボア102の一方側(ここではシリンダヘッド側)から処理液流路4に流入する処理液11をシリンダボア102の他方側(ここではクランクケース側)へ導いて処理液流路4へ再度流入させる迂回流路43と、シリンダボア102の他方側から処理液流路4に再度流入する処理液11をシリンダボア102の中心線方向における中央部の位置で処理液流路4から処理液11を流出させる出口流路45と、を備える。
また、電極6はステンレス鋼、またはチタン合金など導電性のある金属の成形品である。
さらに、電極6は、その外周面からシリンダ内周面103へ向かって延びて処理液流路4をシリンダボア102の一方側と他方側とに仕切る環状の仕切部材46と、仕切部材46よりもシリンダボア102の一方側に設けられて処理液流路4と迂回流路43とを流体的に繋げる第一開口47と、仕切部材46よりもシリンダボア102の他方側に設けられて処理液流路4と出口流路45とを流体的に繋げる第二開口48と、を備える。
仕切部材46はシリンダボア102の中心線方向において中央部に配置される。仕切部材46は、処理液11、例えばエッチング液である高濃度・高温のリン酸に接触するため、フッ素ゴムやユニレートなどの耐薬品性に優れる素材の成形品である。仕切部材46は、シリンダボア102の一方側から処理液流路4に流れ込む処理液11を第一開口47から電極6内の迂回流路43へ導く役割と、シリンダボア102の他方側から再び処理液流路4に流れ込む処理液11を第二開口48から電極6内の出口流路45へ導く役割と、を兼務する。
第一開口47は迂回流路43の入口であり、第三開口49は迂回流路43の出口である。第一開口47が仕切部材46に隣接される一方、第三開口49はシリンダボア102の他方側(ここではクランクケース側)、つまり電極6の先端部に配置される。迂回流路43は第三開口49の近傍で流路断面積を拡大されて第三開口49から吐出する以前の処理液11を整流する。
第一開口47、第二開口48および第三開口49はいずれも電極6を周方向へ等間隔に囲む4つの位置に開口しているが、これに限られない。
第一開口47の開口面積は、シリンダボア102を往復するピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCにおける処理液流路4の流路面積よりも小さい。
処理液11は、図4および図5中の矢印faに示すように、シリンダボア102の一方側から処理液流路4へ流れ込み仕切部材46へ向かう。仕切部材46へ到達した処理液11は、図4および図5中の矢印fbに示すように、第一開口47から迂回流路43へ流れ込みシリンダボア102の他方側へ向かう。シリンダボア102の他方側へ到達した処理液11は、図4および図5中の矢印fcに示すように、第三開口49から再度処理液流路4へ流れ込み仕切部材46へ向かう。仕切部材46へ到達した処理液11は、図4および図6中の矢印fdに示すように、第二開口48から出口流路45へ流れ込みタンク36へ戻る。
つまり、電極6は、処理液流路4において、シリンダボア102を往復するピストン(図示省略)の上死点に対応する部位TDCを通過した処理液11を下死点に対応する部位BDCへと迂回させ、下死点に対応する部位BDCを通過した処理液11をピストンストロークの中央部に対応する部位から流出させる。
図8は、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理装置のシール治具および電極を示す断面図である。
図8に示すように、めっき処理装置1のシール治具7は、伸縮する拡張シール部材31と、拡張シール部材31を挟み込んで保持するシール下板52およびシールベース53と、シール下板52およびシールベース53を電極6の自由端部に固定するボルト54と、を備える。
拡張シール部材31は、浮き輪形状を呈する伸縮自在な材料(例えばシリコンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材)の成形品である。拡張シール部材31は、シリンダボア102内に挿入可能な収納状態と、シリンダ内周面103のクランクケース側の開口端を塞ぐ拡張状態との間で伸縮する。拡張シール部材31の内周側部分は、開口31aを有するとともに、開口31a近傍の両側に形成された突起56を備える。拡張シール部材31の外周側部分は、シリンダ内周面103に接触するシール面31bである。拡張シール部材31の外径寸法は、その内部に作動流体が供給されていない状態(収納状態)においてシリンダ内周面103の内径寸法よりも若干小さい。
シール下板52は、円板形状の下円板部57と、シールベース53側へ突出させて下円板部57の中央に一体形成される下膨出部58と、電極6側へ突出して下円板部57の中央に一体形成される円錐台状膨出部59と、を備える。また、シール下板52は、絶縁体の成形品であり、金属製のシールベース53を電極6に対して絶縁する。
下円板部57は、下膨出部58との境界部分にリング形状に凹没する溝62を有する。
円錐台状膨出部59は、電極6の自由端部に嵌め込まれる凹部63を有する。
シールベース53は、円板状に形成される上円板部65と、上円板部65の中央に一体形成される上膨出部66と、を備える。
上円板部65は、シール下板52の下膨出部58が嵌合される凹部68と、凹部68の外縁にリング形状に凹没する溝69と、を有する。
シール下板52およびシールベース53は、溝62および溝69のそれぞれに突起56を引っ掛からせて拡張シール部材31の内周側を拘束する。また、シール下板52およびシールベース53は、上円板部65および下円板部57によって拡張シール部材31を挟み込み、作動流体が流れ込んだ際に外径寸法が大きくなるようシリンダボア102の中心線方向に向かう拡張シール部材31の拡張を拘束する。
また、シール治具7は、拡張シール部材31の内側に挿入されて下膨出部58の外周面に接するリング部材74を備える。リング部材74は、その内周面に設けられる環状の溝76と、溝76と拡張シール部材31の内側とを流体的に繋げる作動流体噴出孔77と、を有する。作動流体噴出孔77は、リング部材74の周方向複数箇所(例えば3箇所)に開口される。
さらに、シール治具7は、シールベース53の上膨出部66を貫通しシール下板52の下膨出部58に至る作動流体導入路78を有する。作動流体導入路78はエアジョイント9の作動流体供給路34に連結される。作動流体導入路78はリング部材74の溝76を経て拡張シール部材31の内部に繋がる。
そして、本実施形態に係るめっき処理方法は、脱脂工程、電解エッチング処理工程、およびめっき皮膜の成膜工程を経る。
先ず脱脂工程では、中性またはアルカリ性の脱脂剤を用いて、被めっき材であるシリンダブロック101、特にシリンダ内周面103に付着した切削油などの油分を除去する。脱脂によって、エッチング液(処理液11)への油分混入が防止され、電解エッチング処理工程における反応性が向上する。
次いで電解エッチング処理工程では、処理液流路4にエッチング液(処理液11)を流通させながらシリンダブロック101と電極6との間に通電して、シリンダ内周面103を溶解させる。シリンダブロック101がアルミニウム合金、特に鋳造用のアルミニウム合金(JIS H 5302:ADC12)である場合、シリンダ内周面103ではアルミニウムが溶解する一方で、共晶シリコンが溶解せずに残る。そして、電解エッチング処理後のシリンダ内周面103には共晶シリコンが突出する。共晶シリコンが突出したシリンダ内周面103にめっき皮膜を成膜することで、突出した共晶シリコンのアンカー効果によりシリンダ内周面103の基材とめっき皮膜との密着性が確保される。
最後にめっき皮膜の成膜工程では、ニッケルイオンを含むめっき処理液(処理液11)を処理液流路4に流通させながらシリンダブロック101と電極6との間に通電して、ニッケルをシリンダ内周面103に析出させてめっき皮膜を成膜する。シリンダブロック101を陰極に、電極6を陽極にして通電する。
そして、めっき皮膜の炭化ケイ素含有量は、めっき処理液の炭化ケイ素濃度、めっき処理液の流速、通電量、シリンダ内周面103における共晶シリコンの突出量によって調整される。すなわち、共晶シリコンを突出させる電解エッチング処理工程は、めっき皮膜の炭化ケイ素含有量を制御する重要な要素である。
本実施形態に係るめっき処理方法は、シリンダ内周面103における共晶シリコンの突出量、つまり電解エッチング量に着目して炭化ケイ素含有量を制御する。めっき処理方法は、シリンダブロック101を準備し、シリンダボア102内に電極を配置して環状の処理液流路4を区画し、シリンダボア102の一方側から処理液流路4に処理液11を流し込み、処理液流路4に流れ込んだ処理液11を電極6内に迂回させてシリンダボア102の他方側から処理液流路4へ再度流し込み、シリンダボア102の他方側から処理液流路4に再度流れ込んだ処理液11をシリンダボア102の中心線方向における中央部の位置で処理液流路4から流出させる。
ここで、比較のためにシリンダボア102の一方側から他方側へ向かって処理液流路4に処理液11を流通させる電解エッチング処理の問題点を説明する。
一般に、電解エッチング処理では、シリンダ内周面103の溶解反応の進行にともなって反応熱が生じる。エッチング液の流速が遅いほど、反応熱はシリンダブロック101の温度を上げる。そして、シリンダブロック101の温度が高いほど、溶解反応が促進される。他方、エッチング液の流速が早くなると、シリンダブロック101の温度は低下して、溶解反応は抑制される。
また、エッチング液の流速と流路断面積は、流速=体積流量÷流路断面積で表される質量保存則(連続の式)が成り立つ。エッチング液の流速と流路断面積は反比例の関係にある。
そして、シリンダボア102の一方側(ここではシリンダヘッド側)から他方側(ここではクランクケース側)へ向かって処理液11を一方向に流通させる場合、処理液流路4の出口における流路断面積が小さければ、シリンダボア102の他方側(ここではクランクケース側)の流速が早くなり、シリンダボア102の他方側(ここではクランクケース側)の温度が低下する。他方、処理液流路4の入口における流路断面積が大きければ、シリンダボア102の一方側(ここではシリンダヘッド側)の流速が遅くなり、シリンダボア102の一方側(ここではシリンダヘッド側)の温度が上昇する。この温度差は、シリンダボア102の一方側(ここではシリンダヘッド側)と他方側(ここではクランクケース側)との間で溶解反応に差を生じさせ、上死点近傍にあたるシリンダボア102の一方側(ここではシリンダヘッド側)ではエッチング量が大きくなり、下死点近傍にあたる他方側(ここではクランクケース側)ではエッチング量が小さくなる。このエッチング量の差は、上死点近傍と下死点近傍におけるめっき皮膜中の炭化ケイ素含有量の差、つまり下死点側のめっき皮膜における炭化ケイ素含有量の相対的な低下を生んで耐摩耗性を損なわせる。
そこで、本実施形態に係るめっき処理方法は、相対的な流速が早くなる処理液流路4の最下流をシリンダボア102の中心線方向における中央部の位置に移動させることで、上死点近傍にあたるシリンダボア102の一方側(ここではシリンダヘッド側)および下死点近傍にあたる他方側(ここではクランクケース側)でのエッチング量を高めている。
これにより、本実施形態に係るめっき処理方法は、シリンダボア102の一方側から他方側へ向かって処理液流路4に処理液11を流通させる電解エッチング処理では低下してしまう下死点近傍のシリンダブロック温度を上昇させ、エッチング量を増加させてめっき皮膜の炭化ケイ素含有量を増加させる。
そして、発明者は、めっき皮膜の炭化ケイ素含有量を適切な範囲に制御することによって耐摩耗性が向上することを見出した。
炭化ケイ素含有量とめっき皮膜の摩耗量との関係を説明する
図9は、本発明の実施形態に係るシリンダブロックの往復摺動摩耗試験を示す概念図である。
図9に示すように、往復摺動摩耗試験201は、試験片202の表面に往復摺動子203を押し付けたまま試験片202または往復摺動子203を往復動させて試験片202の表面の摩耗量を評価する。試験片202の表面には給油管205から潤滑油206を滴下した。潤滑油206には軽油相当の粘度の軸受油を使用した。
試験片202は、シリンダブロック101から切り出した小片であり、評価対象となる表面としてシリンダ内周面103にめっき皮膜208を施してある。試験片202におけるめっき皮膜208の炭化ケイ素含有量は、0.0重量パーセント濃度から4.0重量パーセント濃度である。
往復摺動子203はピストンリングを模擬している。試験片202の表面、つまりめっき面に触れる往復摺動子203の先端部分は球面形状を呈し、窒化処理によって硬化されている。
試験片202の表面はシリンダボア102のホーニング加工で発生する微細な凹凸、所謂バリがあるため、ならしをしてから試験を実施した。
ならしは、往復摺動子203に2kgfの荷重Fを負荷し、往復速度100rpm(つまり、毎分100往復)で5分間実施した。ならしによって、試験片202の表面の微細な凹凸は除去できた。
次に、評価試験は、往復摺動子203に2kgfの荷重Fを負荷し、往復速度400rpmで90分間実施し、往復摺動の前後でめっき皮膜208の摩耗量を評価した。
図10は、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理方法において、めっき皮膜の炭化ケイ素含有量と摩耗量との関係を示す図である。
図10に示すように、炭化ケイ素含有量が0.0重量パーセント濃度から高まるとめっき皮膜の摩耗量は減少する。めっき皮膜208の摩耗量の減少は炭化ケイ素含有量が1.1重量パーセント濃度から1.2重量パーセント濃度で最小になる。そして、炭化ケイ素含有量が1.3重量パーセント濃度より高まるとめっき皮膜の摩耗量は増加する。炭化ケイ素含有量が3.3重量パーセント濃度から4.0重量パーセント濃度ではめっき皮膜の摩耗量はほとんど変化しない。
図10の結果から、本実施形態に係るシリンダブロック101のめっき皮膜では、炭化ケイ素含有量が0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度であれば摩耗量を良好に抑制できる。また、炭化ケイ素含有量が1.0重量パーセント濃度から1.4重量パーセント濃度であればより好ましい。
炭化ケイ素含有量が0.8重量パーセント濃度より低ければ、めっき表面に露出している炭化ケイ素が極端に少なくなり、炭化ケイ素が本来もつ耐摩耗性を充分に発揮できず、めっき皮膜の摩耗量が大幅に増大するものと考えられる。これでは、ピストンの上死点近傍および下死点近傍における耐摩耗性を充分に保証できなくなる可能性がある。そこで、炭化ケイ素含有量は0.8重量パーセント濃度以上、より好ましくは1.0重量パーセント濃度以上とした。
他方、炭化ケイ素含有量が1.6重量パーセント濃度より高ければ、ピストンリングの摺動によってめっき皮膜から炭化ケイ素が脱粒し、この脱粒した炭化ケイ素が研磨剤のような役割を果たしてアブレシブ摩耗を引き起こし、めっき皮膜を摩耗させるものと考えられる。そこで、炭化ケイ素含有量は1.6重量パーセント濃度以下、より好ましくは1.4重量パーセント濃度以下とした。
また、発明者は、シリンダ内周面103のエッチング量によってめっき皮膜の炭化ケイ素含有量を制御できることを見出した。
図11は、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理方法において、シリンダ内周面のエッチング量とめっき皮膜の炭化ケイ素含有量との関係を示す図である。
図11に示すように、本実施形態に係るシリンダブロック101のめっき処理方法では、シリンダ内周面103のエッチング量が20マイクロメートルから40マイクロメートルの範囲において、エッチング量が大きくなるほどめっき皮膜の炭化ケイ素含有量も大きくなる。この傾向は、エッチング量が多いほど、シリンダ内周面103が凸凹の大きい荒れた表面になり、そこから成長するめっき初期結晶粒が大きくなって炭化ケイ素粒子が補足されやすいために起きる。
そして、炭化ケイ素含有量を0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度に制御するために、シリンダ内周面103のエッチング量を25マイクロメートルから35マイクロメートル、好ましくは28マイクロメートルから32マイクロメートルに制御することにした。
また、発明者は、電解エッチング処理において、シリンダ内周面103の温度によってエッチング量を制御できることを見出した。
図12は、本発明の実施形態に係るシリンダブロックのめっき処理方法において、シリンダ内周面の温度とエッチング量との関係を示す図である。
図12は、シリンダ内周面103のエッチング量を25マイクロメートルから35マイクロメートル、好ましくは28マイクロメートルから32マイクロメートルに制御するために、処理液11である電解エッチング処理液を100グラム/リットルから100グラム/リットルの範囲に調整し、処理液11の流速を0.2メートル/秒から1.0メートル/秒、電解エッチング処理時間1分間から10分間の範囲で電解エッチング処理を行い取得した。
図12に示すように、本実施形態に係るシリンダブロック101のめっき処理方法では、シリンダブロック101の温度が摂氏60度から摂氏85度の範囲において、温度が高くなるほど、エッチング量も大きくなる。この傾向は、シリンダブロック101の温度が高いほど、アルミニウムの溶解反応が促進されてエッチング量が拡大するためである。
そして、シリンダ内周面103のエッチング量を25マイクロメートルから35マイクロメートルに制御するために、シリンダブロック101の温度を摂氏75度から摂氏85度、好ましくは摂氏78度から摂氏82度に制御することにした。
以下、シリンダブロック101のめっき処理方法の具体的な例を説明する。めっき処理方法は、脱脂工程、電解エッチング処理工程、めっき皮膜の成膜工程の順に進む。
先ず、脱脂工程では、シリンダブロック101をキザイ社製の中性脱脂剤マックスクリーンNG−30を濃度20g/Lから40g/L、摂氏40度から摂氏80度に調整した処理液11を使用し、脱脂処理時間0.5分間から3分間の超音波洗浄を行った。そして、処理液11を洗浄するため、摂氏60度の水中で2分間、洗浄した。
次いでめっき皮膜中の炭化ケイ素含有量を制御するうえで重要な電解エッチング処理工程では、300グラム/リットルに調整した摂氏75度のリン酸水溶液を処理液11とし、電解エッチング処理時間5分間、シリンダブロック101と電極との間の通電条件を35アンペア/平方デシメートルでエッチングを行った。
また、ピストンの上死点近傍および下死点近傍におけるめっき皮膜の炭化ケイ素含有量を1.2重量パーセント濃度に調整するため、ピストン(図示省略)の上死点および下死点それぞれに対応する部位におけるシリンダブロック101の温度が摂氏80度になるよう、処理液流路4の流路断面積、および処理液11の流速を調整した。
具体的には、上死点に対応する位置においてシリンダブロック101の温度が摂氏80度になるよう、当該箇所の流速を決める第三開口49の流路断面積を0.1平方メートルに設定し、流速を0.3メートル/秒に設定した。上死点に対応する位置においてシリンダ内周面103のエッチング量は30マイクロメートルになり、後述するめっき処理条件によって炭化ケイ素含有量は1.2重量パーセント濃度になった。
下死点に対応する位置においてシリンダブロック101の温度が摂氏80度になるよう、当該箇所の流速を決める処理液流路4の流路断面積を0.1平方メートルに設定し、流速を0.3メートル/秒に設定した。下死点に対応する位置においてシリンダ内周面103のエッチング量は30マイクロメートルになり、後述するめっき処理条件によって炭化ケイ素含有量は1.2重量パーセント濃度になった。
上死点と下死点との間、つまり中央部に対応する位置においてシリンダブロック101の温度が摂氏75度になるよう、当該箇所の流速を決める第二開口48の流路断面積を0.06平方メートルに設定し、流速を0.5メートル/秒に設定した。中央部に対応する位置においてシリンダ内周面103のエッチング量は25マイクロメートルになり、後述するめっき処理条件によって炭化ケイ素含有量は0.8重量パーセント濃度になった。
次いでめっき皮膜の成膜工程では、500グラム/リットルの硫酸ニッケル水溶液を液温度摂氏80度に調整した処理液11を使用し、めっき成膜処理時間6分間、シリンダブロック101と電極との間の通電条件を10アンペア/平方デシメートルで1分間、続いて50アンペア/平方デシメートルで1分間、さらに100アンペア/平方デシメートルで4分間の条件でめっき処理を行った。
図13は、本発明の実施形態に係るシリンダブロックを示す断面図である。
図13に示すように、本実施形態に係るめっき処理方法によって、シリンダボア102を往復するピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCでの炭化ケイ素含有量が1.2重量パーセント濃度であるめっき皮膜108を備えるシリンダブロック101を製造できた。なお、シリンダブロック101のめっき皮膜108では、ピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCでの炭化ケイ素含有量が0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度であれば良い。炭化ケイ素含有量が1.0重量パーセント濃度から1.4重量パーセント濃度であればより好ましい。
このように構成された本実施形態に係るシリンダブロック101は、ピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCでの炭化ケイ素含有量が0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度であるめっき皮膜108を備えるため、当該部位の耐摩耗性を高められる。
また、本実施形態に係るシリンダブロック101は、ピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCでの炭化ケイ素含有量を1.0重量パーセント濃度から1.4重量パーセント濃度にすることで、当該部位の耐摩耗性をより確実に高められる。
他方、本実施形態に係るめっき処理装置1は、迂回流路43および出口流路45を備えることによって、ピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCにおける炭化ケイ素含有量をピストンの中央部よりも高めることができる。
また、本実施形態に係るめっき処理装置1は、仕切部材46によって、処理液流路4をピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCごと、確実にエッチング量を制御して炭化ケイ素含有量をピストンの中央部よりも高めることができる。
さらに、本実施形態に係るめっき処理装置1は、第一開口47の流路断面積を調整することによって、ピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCにおける処理液11の流速を制御し、ひいてはエッチング量を介して炭化ケイ素含有量を制御して当該箇所の耐摩耗性を確実に向上させることができる。
そして、本実施形態に係るめっき処理方法は、処理液流路4に流れ込んだ処理液11を電極6内に迂回させてシリンダボア102の他方側から処理液流路4へ再度流し込み、シリンダボア102の他方側から処理液流路4に再度流れ込んだ処理液をシリンダボア102の中心線方向における中央部の位置で処理液流路4から流出させることによって、ピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCにおける炭化ケイ素含有量をピストンの中央部よりも高めることができる。
また、本実施形態に係るめっき処理方法は、シリンダ内周面103のエッチング量を25マイクロメートルから35マイクロメートルの範囲にし、好ましくは28マイクロメートルから32マイクロメートルの範囲にすることによって、めっき皮膜108中の炭化ケイ素含有量を0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度、好ましくは1.0重量パーセント濃度から1.4重量パーセント濃度に調整して、ピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCにおける耐摩耗性を高めることができる。
さらに、本実施形態に係るめっき処理方法は、ピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCにおけるシリンダブロック101の温度範囲を摂氏75度から摂氏85度、好ましくは摂氏78度から摂氏82度に制御することによって、めっき皮膜108中の炭化ケイ素含有量を0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度、好ましくは1.0重量パーセント濃度から1.4重量パーセント濃度に調整して、ピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位TDC、BDCにおける耐摩耗性を高めることができる。
したがって、本発明に係るシリンダブロック101、シリンダブロック101のめっき処理装置1およびシリンダブロック101のめっき処理方法によれば、ピストンの上死点近傍および下死点近傍に対応する部位におけるめっき皮膜108中の炭化ケイ素含有量を充実させて当該部位の耐摩耗性を高められる。
1 めっき処理装置
3 載置台
4 処理液流路
6 電極
6a 電極外周面
7 シール治具
8 上治具
9 エアジョイント
11 処理液
12 処理液供給装置
13 電源装置
15 下治具
16 絶縁部材
17 導電板
18 シール受け台
21 シール部材
23 下治具孔
24 電極支持台
25 載置面
31 拡張シール部材
31a 開口
31b シール面
32 エアジョイント保持部材
33 コイルスプリング
34 作動流体供給路
36 タンク
37 供給路
38 ポンプ
39 回収路
41 流量計
43 迂回流路
45 出口流路
46 仕切部材
47 第一開口
48 第二開口
49 第三開口
52 シール下板
53 シールベース
54 ボルト
56 突起
57 下円板部
58 下膨出部
59 円錐台状膨出部
62 溝
63 凹部
65 上円板部
66 上膨出部
68 凹部
69 溝
74 リング部材
76 溝
77 作動流体噴出孔
78 作動流体導入路
101 シリンダブロック
102 シリンダボア
102a 開口
102b 開口
103 シリンダ内周面
105 合わせ面
106 合わせ面
108 めっき皮膜
201 往復摺動摩耗試験
202 試験片
203 往復摺動子
205 給油管
206 潤滑油
208 めっき皮膜

Claims (9)

  1. シリンダボアを区画する円筒形状のシリンダ内周面と、
    前記シリンダ内周面を覆い、かつ前記シリンダボアを往復するピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位での炭化ケイ素含有量が0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度、好ましくは前記炭化ケイ素含有量が1.0重量パーセント濃度から1.4重量パーセント濃度であるめっき皮膜と、を備えるシリンダブロック。
  2. シリンダボアを区画する円筒形状のシリンダ内周面を有するシリンダブロックを載置自在な載置台と、
    前記シリンダボアの一方側の開口から前記シリンダボア内に挿入されて前記シリンダ内周面との間に環状の処理液流路を区画する電極と、を備え、
    前記電極は、前記シリンダボアの一方側から前記処理液流路に流入する処理液を前記シリンダボアの他方側へ導いて前記処理液流路へ再度流入させる迂回流路と、前記シリンダボアの他方側から前記処理液流路に再度流入する処理液を前記シリンダボアの中心線方向における中央部の位置で前記処理液流路から処理液を流出させる出口流路と、を備えるシリンダブロックのめっき処理装置。
  3. 前記電極の外周面から前記シリンダ内周面へ向かって延びて前記処理液流路を前記シリンダボアの一方側と他方側とに仕切る環状の仕切部材を備える請求項2に記載のシリンダブロックのめっき処理装置。
  4. 前記電極は、前記仕切部材よりも前記シリンダボアの一方側に設けられて前記処理液流路と前記迂回流路とを流体的に繋げる第一開口と、前記仕切部材よりも前記シリンダボアの他方側に設けられて前記処理液流路と前記出口流路とを流体的に繋げる第二開口と、を備える請求項3に記載のめっき処理装置。
  5. 前記第一開口の開口面積は、前記シリンダボアを往復するピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位における前記処理液流路の流路面積よりも小さい請求項2から4のいずれか1項に記載のシリンダブロックのめっき処理装置。
  6. シリンダボアを区画する円筒形状のシリンダ内周面を有するシリンダブロックを準備し、
    前記シリンダボア内に電極を配置して環状の処理液流路を区画し、
    前記シリンダボアの一方側から前記処理液流路に処理液を流し込み、
    前記処理液流路に流れ込んだ処理液を前記電極内に迂回させて前記シリンダボアの他方側から前記処理液流路へ再度流し込み、
    前記シリンダボアの他方側から前記処理液流路に再度流れ込んだ処理液を前記シリンダボアの中心線方向における中央部の位置で前記処理液流路から流出させるシリンダブロックのめっき処理方法。
  7. 前記シリンダブロックはアルミニウム合金の成形品であり、
    めっき皮膜形成の前処理において前記シリンダ内周面を25マイクロメートルから35マイクロメートルの範囲、好ましくは前記シリンダ内周面を28マイクロメートルから32マイクロメートルの範囲でエッチングする請求項6に記載のシリンダブロックのめっき処理方法。
  8. めっき皮膜形成の前処理において、前記シリンダボアを往復するピストンの上死点および下死点それぞれに対応する部位の前記シリンダブロック温度が摂氏75度から摂氏85度、好ましくは前記上死点および前記下死点それぞれに対応する部位の前記シリンダブロック温度が摂氏78度から摂氏82度である請求項6または7に記載のシリンダブロックのめっき処理方法。
  9. 前記シリンダ内周面を覆い、かつ前記上死点および前記下死点それぞれに対応する部位での炭化ケイ素含有量が0.8重量パーセント濃度から1.6重量パーセント濃度、好ましくは前記炭化ケイ素含有量が1.0重量パーセント濃度から1.4重量パーセント濃度であるめっき皮膜を形成する請求項6から8のいずれか1項に記載のシリンダブロックのめっき処理方法。
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CN105200501A (zh) * 2015-10-08 2015-12-30 江苏宏联环保科技有限公司 内衬滤液压条的电镀滚筒
CN110484948A (zh) * 2019-09-27 2019-11-22 江苏澳光电子有限公司 一种柱形体电镀工艺及其电镀结构

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