JP2014212273A - 太陽光発電モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】太陽光発電モジュールにおける受光部の可視光線透過率を低下させることなく、太陽電池素子の温度を下げて発電効率を向上させうる、簡便な構造の太陽光発電モジュールおよびその発電効率を向上させる方法を提供する。
【解決手段】受光部として、受光部用ガラス基板と該受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜とからなる受光部用複合ガラス板であって、前記被膜の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれより大きく、受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに受光部用ガラス基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれより小さいことを特徴とする受光部用複合ガラス板を用いて太陽光発電モジュールを構成し、前記被膜面に冷却流体を接触させて放熱する。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池の発電効率を向上させ得るガラス基板を受光面に用いた太陽光発電モジュール、及びその発電効率を向上させる方法に関する。
近年、地球温暖化防止及び持続可能なエネルギーへの要求や環境問題に対する意識の高まりから太陽光発電が注目され、これまでに種々の形態からなる太陽光発電モジュ−ルが提案されている。
通常、太陽光発電モジュールは、複数の太陽電池素子を平面的に並べてインターコネクタにより電気的に接続し、透明な樹脂等の封止材中に埋設することによって形成されており、さらにその太陽光入射側(受光面)に透明ガラス(カバーガラス)を配置し、背面側にプラスチックスフィルム等からなる基板(バックシート)を配置してパネル状に一体化されている。
太陽光発電モジュールは、発電による太陽電池素子の温度上昇と太陽光などの放射熱による2次的な加熱によって、発電効率の低下を招くという問題がある。
すなわち、太陽電池は光電効果により発電させるため、太陽光線を多く吸収させる必要がある。よって、最も効率よく太陽光を受光できるように受光面を調整し、建物の屋上や壁面あるいは地上に直接または架台を設けて設置される。その結果、太陽光発電モジュールは、直達の太陽光を多く取得し、さらに反射された太陽光や再放射された赤外線も取得することとなり、その表面温度は50℃以上に達することがある。
その発電効率の低下の度合いは太陽電池素子の基材(シリコン系あるいはガリウムヒ素系)の違いによって多少異なるが、例えば単結晶シリコンセルの場合では、25℃における発電効率を100%とすると、素子温度が25℃より1℃上昇する毎に約0.5%ずつ発電効率が低下することが知られている。
従来、温度上昇による発電効率の低減を阻止させるための種々の方法が提案されている。例えば、太陽電池パネルの受光面に、全光線透過率に優れ赤外線遮熱効果のある材料を塗布する方法(特許文献1;特開2011−181636)、赤外線反射層を用いて不要な赤外線(熱線)のみを選択的に反射させて発電効率を維持する方法(特許文献2;特開2012−107133)など、赤外線遮熱効果のある材料などを塗布して温度上昇を抑えようとする技術が考案されている。しかしながら、これらの方法は可視光線透過率の減少を招き、必ずしも効率的とは言えない。
また、高温となった素子の熱対策として、高い熱伝導率は有しているが、半導体的な固有抵抗をもつ炭化ケイ素粒子の表面に高固有抵抗層を設け、炭化ケイ素粒子を絶縁物化し、樹脂中に最稠蜜充填したとき、炭化ケイ素同士が接触しても絶縁性が保たれ、接触により熱伝導率が増大するようにし、それを充填剤に分散させて太陽電池素子の熱を背面材に伝え、太陽電池の温度を低下させる方法(特許文献3;特開2012−9523)などが提案されている。しかしながら、この方法は熱を背面基板に伝えるだけで外気への放熱は従来と変わらず、素子温度の低下効果は十分とはいえない。
また、太陽電池素子の背面側に熱伝導率の高い伝熱部材を設けてそれに放熱フィンを取り付けたヒートパイプを用いて冷却し、熱を外部に放熱させる方法(特許文献4;特開平9−18635)、集光方式により温度上昇したセルを冷却させるために該モジュール表面に向けて集光させると同時にセルの温度制御を行う方法および太陽電池を用いて同様の集光を行いその反射板自体で空気に放熱して太陽電池セルの冷却を行う方法(反射光利用型太陽光モジュールシステム)(特許文献5;特開2011−129626)などが挙げられ、さらに効率を上げた反射光利用冷却型太陽光モジュールシステムを用いる方法(特許文献6;特開2012−69720)などが挙げられている。しかしながら、これらの方法で冷却すると装置が大きくなり経済的にも不利になるという欠点を有している。
太陽光発電の効率を向上させるには、受光部から太陽光線を多く取り入れること、そして太陽電池素子の温度を下げることが必要となる。
特開2011−181636 特開2012−107133 特開2012−009523 特開平09−018635 特開2011−129626 特開2012−069720
本発明は、太陽光発電モジュールにおける受光部の可視光線透過率を低下させることなく、太陽電池素子の温度を下げて発電効率を向上させうる、簡便な構造の太陽光発電モジュールおよびその発電効率を向上させる方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決する手段としては、受光部の可視光線透過率を低下させることなく、受光部及び/又は背面部から外気への放熱を促進させる方法が挙げられる。
本発明者らは、前記受光部ガラスの片面に特定の物性を有する皮膜を形成することにより、受光部及び/又は背面部から外気への放熱が促進され、太陽光発電モジュールの発電効率が格段に向上することを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示す太陽光発電モジュールに関する。
(1)受光部が、受光部用ガラス基板と該受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜とからなる受光部用複合ガラス板であって、前記被膜の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれより大きく、受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに受光部用ガラス基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれより小さいことを特徴とする受光部用複合ガラス板からなる、太陽光発電モジュール。
(2)背面板(バックシート)が、背面基板と該背面基板の少なくとも片面に形成された被膜とからなる複合背面板であって、前記被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに背面基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が背面基板のそれより小さいことを特徴とする複合背面板からなる、太陽光発電モジュール。
(3)受光部が、受光部用ガラス基板と該受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜とからなる受光部用複合ガラス板であって、前記被膜の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれより大きく、受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに受光部用ガラス基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれより小さいことを特徴とする受光部用複合ガラス板からなり、
背面板(バックシート)が背面基板と該背面基板の少なくとも片面に形成された被膜とからなる複合板であって、前記被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに背面基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が背面基板のそれより小さいことを特徴とする背面板からなる、太陽光発電モジュール。
(4)前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜の可視光線透過率が98%以上、日射熱吸収率が0.01〜4.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.26〜6.9%であって、前記受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、且つ該被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれに対し0.023〜6.49%であることを特徴とする、(1)又は(3)記載の太陽光発電モジュール。
(5)前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜の日射熱吸収率が0.03〜11.5%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.26〜15.2%であって、且つ該被膜の熱容量が背面基板のそれに対し0.016〜7.76%であることを特徴とする、(2)又は(3)記載の太陽光発電モジュール。
(6)前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜がSiO又はシリコン系化合物からなり、厚みが50nm〜5μmであることを特徴とする、(1)又は(3)に記載の太陽光発電モジュール。
(7)前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜がシリコン系化合物からなり、厚みが0.11〜10.3μmであることを特徴とする、(2)又は(3)に記載の太陽光発電モジュール。
(8)(1)記載の太陽光発電モジュールの発電効率を向上させる方法であって、前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜の表面に冷却流体を接触させ、前記受光部用複合ガラス板を放熱する工程を含むことを特徴とする、太陽光発電モジュールの発電効率向上方法。
(9)(2)記載の太陽光発電モジュールの発電効率を向上させる方法であって、前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜の表面に冷却流体を接触させ、前記複合背面板を放熱する工程を含むことを特徴とする、太陽光発電モジュールの発電効率向上方法。
(10)(3)記載の太陽光発電モジュールの発電効率を向上させる方法であって、前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜及び/又は前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜の表面に冷却流体を接触させ、前記受光部用複合ガラス板及び/又は複合背面板を放熱する工程を含むことを特徴とする、太陽光発電モジュールの発電効率向上方法。
(11)前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜の可視光線透過率が98%以上、日射熱吸収率が0.01〜4.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.26〜6.9%であって、前記受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、且つ該被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれに対し0.023〜6.49%であることを特徴とする、(8)又は(10)記載の発電効率向上方法。
(12)前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜の日射熱吸収率が0.03〜11.5%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.26〜15.2%であって、且つ該被膜の熱容量が背面基板のそれに対し0.016〜7.76%であることを特徴とする、(9)又は(10)記載の発電効率向上方法。
放熱性を向上させるための受光部は、ガラス基板と、該ガラス基板の片面に形成された被膜からなる複合ガラスであって、前記被膜の可視光線透過率がガラス基板のそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともにガラス基板のそれより小さく、且つ熱容量がガラス基板のそれより小さいことを特徴とする。
一般に、光を吸収しない平滑基板の場合、屈折率nの媒体1から屈折率nの媒体に光が垂直入射するときの反射率Rは下記フレネルの式で表される。
R=[(n−n)/(n+n)]
上記から明らかなように、例えば媒体1が空気層(n=1.00)の場合、媒体2の屈折率nは1.00に近いほうが反射率は小さくなり、光の透過量も増大する。
また、基板に反射防止層を設けた場合、反射光の強度は基本的には、上記フレネルの式を各境界面に適用し、光の干渉効果を考慮すると主に以下の2つの条件によって求められる。
1:位相条件;d=(1/4)・(λ/n
2:振幅条件;n=(n・n1/2
(n:空気の屈折率、n:被膜の屈折率、n:基板の屈折率、d:膜厚(nm)、λ:入射光の波長(nm))
上記から入射光の波長と被膜の屈折率が分かると、反射率が低減する膜厚を求めることができる。原理としては、膜表面からの反射光と膜−基板界面からの反射光が互いに相殺的に干渉させ、振幅を打ち消しあって反射率が低減する。
上記から、ガラス基板の可視光線透過率を向上させるには屈折率の小さい物質を所定の厚みで積層させれば良いことがわかる。しかし、受光部ガラスの可視光線透過率向上のため反射防止だけを考えた前記の条件で被膜を積層させると、ガラス基板の熱容量と被膜の熱容量の割合が合わず、可視光線透過率は向上するが放熱効果の低減により発電効率が低下してしまう。
本発明は、可視光線透過率が上がるガラス基板と被膜の屈折率と厚みの割合ならびにガラス基板と被膜の熱容量の割合、さらに被膜の日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率の関係を実験により見いだしものであり、これにより発電効率の高い受光部用ガラス基板を取得することができる。
太陽光発電モジュールの背面基板は、受光部と異なり可視光線透過率が発電効率に直接影響することはない。よって、日射および外部からの再放射による2次加熱が問題となる。本発明は、被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率および基板に対する被膜の熱容量の割合を実験により見出したものであり、発電効率の高い背面基板を取得することができる。
1.太陽光発電モジュール
太陽光発電モジュールは通常、複数の太陽電池素子を平面的に並べてインターコネクタにより電気的に接続して封止材中に埋設し、その太陽光入射側(受光部)に透明ガラス(カバーガラス)を配置し、背面側にプラスチックスフィルム等からなる背面板(バックシート)を配置してパネル状に一体化されている(片面受光型太陽光発電モジュール)。また、背面側もバックシートではなく透明ガラスを配置し、両面で受光できるようにしたものもある(両面受光型太陽光発電モジュール)。本発明の太陽光発電モジュールはいずれであってもよい。
太陽電池は大きく分けてシリコン系、化合物系、有機系がある。シリコン系には単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜シリコン(アモルファスシリコン)、HIT(ヘテロ接合型))があり、化合物系にはCIGS、CdTe、III-V多接合(CdAsなど)があり、有機系には色素増感、有機半導体などがある。これらの形態は各々異なるが、いずれも太陽光を吸収して発電し、その際に熱を発生して素子温度が高くなり、発電効率が低下するおそれがある。
本発明はこれらのいずれの太陽電池にも適用することができる。これらのうち、特に好ましいもの(あるいは本発明の効果が顕著に現れるもの)は、シリコン系の単結晶シリコン又は多結晶シリコンである。
2.受光部
本発明の受光部は、受光部用ガラス基板の少なくとも片面に特定の被膜を設けた受光部用複合ガラス板からなる。
(1)受光部用ガラス基板
本発明の受光部に用いられるガラスの種類には特に制限はなく、ソーダガラス、サファイヤガラス、水晶ガラスなどで太陽光線を吸収して温度が上昇しうる性質を有するものであれば、いずれも本発明の効果を十分発揮することができる。
受光部用ガラス基板の厚さについても特に制限はないが、好ましくは0.1〜20mm、より好ましくは0.2〜10mmである。
(2)被膜
本発明で受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成される被膜は、その可視光線透過率が該受光部用ガラス基板のそれより大きく、受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに受光部用ガラス基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれより小さいものである。この条件を満たす限り、被膜の素材、厚み、受光部用ガラス基板上への形成方法は特に制限されない。好ましい被膜の素材、厚み、受光部用ガラス基板上への形成方法は後述する。
前記被膜は、受光部用ガラス基板の片面のみに設けられていても両面に設けられていてもよいが、好ましくは受光部用ガラス基板の片面のみに設ける。
3.背面板
本発明の背面板(バックシート)は、背面基板の少なくとも片面に特定の被膜を設けた複合背面板からなる。
(1)背面基板
本発明の背面基板の種類には、特に制限はなく、各種プラスチックスならびに金属およびその合金などを用いることができる。赤外線を吸収して温度が上昇しうる性質を有するものであれば、いずれも本発明の効果を十分発揮することができる。
プラスチックスの具体例としては、PETフィルム、EVAフィルム、及びこれらを貼り合わせたものが挙げられる。金属及び合金の具体例としては、アルミニウム及びその合金が挙げられる。
背面基板の厚さについても特に制限はないが、好ましくは0.1〜20mm、より好ましくは0.2〜10mmである。
(2)被膜
本発明で背面基板の少なくとも片面に形成される被膜は、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに放熱基板のそれより小さく、且つ熱容量が放熱基板より小さいものである。この条件を満たす限り、被膜の素材、厚み、背面基板上への形成方法は特に制限されない。好ましい被膜の素材、厚み、背面基板上への形成方法は後述する。
4.可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率、熱容量
上述したように、本発明は、次のような知見に基づくものである。すなわち、受光部および背面板からの放熱性を促進させて素子温度を低減し、それによって発電効率を向上させるものである。
物体の放熱性を向上させるには、放射熱伝達を大きくさせる方法、例えば構造体表面に放射率の大きい被膜を形成させる方法や、ブラスト加工やフィンの増設などで表面積を大きくさせる方法がある。しかしこのような方法では、受光部におけるガラス本来の可視光線帯域の透明度を損ない発電効率を低下させる原因となってしまう。
そして、背面板の表面積を大きくさせる方法を用いると隙間に埃が入り放熱性が低減されることがあり、また構造体表面に放射率の大きい被膜を形成させると日射や外部からの再放射を多く吸収して逆に素子温度の上昇が大きくなることがあるなど、実用的ではない。
これに対し本発明では逆に、放射率(放射熱吸収率)を大きくさせずに、構造体の熱容量を冷却流体に対し相対的に小さくさせ、対流熱伝達を大きくさせることで、冷却効果を格段に高めることができ発電効率の向上につながる、というものである。この点について、以下に説明する。
<放射熱伝達>
通常、金属のような物体は、放射熱の一部を吸収して、他をすべて反射するので吸収率α、反射率ρの間に次の関係式「α+ρ=1」が成り立ち、可視光線、赤外線帯域において透過しないことが分かる。しかし、ガラスやプラスチックスなどの物体は、放射熱を一部吸収し、一部反射し、一部透過する灰色体である。このような灰色体の場合は、吸収率α、反射率ρ及び透過率τの間に次の関係式「α+ρ+τ=1」が成り立ち、可視光線、赤外線帯域において透過することが分かる。
また、放射熱伝達における放射熱Qは、次の式で表わされ、これは真空中においても伝達可能である。
(数1)
Q=σ・ε・(T/100)
ただし、σはステファン・ボルツマン定数、εは物体の放射率、Tは物体の絶対温度である。この式から明らかなように、放射率を大きくすればその物体から放射される熱量は多くなる。
また、放射による熱伝達Q2は、物体表面から低温帯域の物体及び流体に伝達される。これを式で表わすと次のようになる。
(数2)
=σ×f(ε)×[(T/100)−(T/100)
ただし、σはステファン・ボルツマン定数、f(ε)は物体間の放射伝熱の放射係数、Trは物体の表面温度(K)、Tは低温帯域の物体の表面温度(K)である。この式から明らかなように、物体表面間の放射伝熱の放射係数を大きくすればその物体間の放射熱伝達量は増大する。
なお、キルヒホッフの法則によると、熱の吸収率と放射率とは等しいので、放射熱吸収率の大きい物質を選択すれば、その物体から放射される熱量は大きくなる。
通常、ガラスは可視光線や2.5μm以上の近赤外線を透過させ、2.5μmより長い波長の赤外線はほとんど吸収する。すなわち、ガラスからの放射熱伝達を大きくするには、可視光線や2.5μm以上の近赤外線を吸収させて放射率を大きくさせなければならない。
また、ガラスの温度を上昇させないためには、反射をさせればよいが、一般的には、近赤外線帯域で反射率の大きい金属やセラミックスなどの物質は、可視光線などの各波長域でも同じように反射する。つまり、反射率の大きい金属を用いて反射率を大きくさせると可視光線帯域まで反射し、太陽光発電モジュールの受光部用ガラスとしての機能まで損なってしまう。また、その反射した光が隔壁などで反射が起こるという欠点がある。
そして、近赤外線帯域を吸収させる赤外線吸収剤なども同様であり、赤外線帯域における放射熱吸収率を大きくさせようとすると、可視光帯域における吸収率まで大きくなり可視光帯域の透明度まで低くなってしまう。したがって、可視光線帯域から2.5μmまでの近赤外線だけを選択的に吸収したり反射したりすれば可視光線の透明度や透過性を損なうことはないが、現在の技術においては非常に難しい。
また、密閉された領域と外気の隔壁としてガラスを用いる場合、ガラスの放射熱吸収率すなわち放射率が大きいと、放射熱を多く吸収して内部や外部の温度より高くなる。そして、ガラス表面から密閉された内部と外部へ対流熱伝達と放射熱伝達により熱は伝達される。そして、密閉された内部の温度は上昇し素子温度も高くなる。
したがって、ガラスからの放熱を向上させるには、ガラス表面に放射率の大きい被膜を形成させたり、可視光線の透明度や透過性を損なうブラスト加工やフィンなどで表面積を大きくさせたりする方法を用いて放熱性を向上させることは実用的ではないため、対流熱伝達を大きくさせる方法が必要である。
<対流熱伝達>
次に、対流熱伝達について述べる。
物体に冷却流体を接触させて冷却を行う場合は、通常、冷却効果を大きくさせるために、冷却流体の流速を上げている。すなわち、流体の熱輸送能力を大きくさせて冷却効果を大きくさせている。
流体の熱輸送能力は、A(断面積:cm)×u(速度:cm/s)×D(密度:g/cm)×C(比熱:cal/g・℃)で与えられる流体の体積、密度、比熱の関数である。すなわち、熱輸送能力とは、時間当たりの熱容量(cal/℃)と同じであるといえる。
通常、空気の冷却効果は水に対し小さい。これは、空気の熱容量が水の熱容量に対し小さいためである。
空気による冷却効果を高めるために基板に送風することは、基板周辺の高温となった空気を除去し、低温の空気を接触させて放熱させることであるが、これは、基板に接する空気の風量を増加させることでもある。つまり、送風することは、空気の熱容量を大きくさせることと同じといえる。
冷却効果を高めるために基板の熱容量を小さくさせる方法があるが、これは空気と接する基板の熱容量を小さくさせることにより、空気の量が同じでも空気の熱容量が基板の熱容量に対し相対的に大きくなり、放熱効果を向上させる技術である。
また、熱は温度が高い物体から対流、放射により低温の外気へ伝達される。そして、同一面積の場合、放射により伝達される熱は、その物体の放射率により決まるが、対流による熱伝達は、その物体に接する流体の状態に大きく影響される。
高温の物体から低温の流体への熱伝達は、次式で表される。
(数3)
q=λ/L(T1−T2)=α(T2−T0)
ただし、q=熱流(kcal/h・m)、λ=物体の熱伝導率(kcal/℃・h・m)、L=物体の厚さ(m)、T1=物体の温度(℃)、T2=低温側の物体の表面温度(℃)、T0=流体の温度(℃)、α=流体の熱伝達率(kcal/℃・h・m)。
上式から明らかなように、同じ条件の流体中に置かれた物体の熱伝達は、熱伝導率が大きく、厚さが薄いほど外気中に放熱される量が多くなる。
また、熱容量を含む系の熱平衡は、次式で表される。
(数4)
q=C・ΔT/Δh+W(T1−T0)/Δh
ここで、q=供給熱量(kcal/h)、T1=内部温度(℃)、T0=外気温度(℃)、h=時間(h)、W=比例定数(kcal/℃)、C=熱容量(kcal/℃)。
熱容量は、C(熱容量:kcal/℃)=Q(熱量:kcal)/ΔT(温度差:℃)と定義される。そして、ΔT=q/Cの関係式で表される。
上式から、供給熱量が一定であると、熱容量が小さいほど外気への放熱は増加することが分かる。したがって、熱容量の小さい基板を使用すると、内部の蓄熱が小さくなり、外気への放熱量が増加できる。
また、熱容量の異なる物体が接触したときの平衡温度は、下記の式で表される。ここで、下記式中のC1とC2は各々異なる物体の熱容量を表す。
(数5)
Te(平衡温度)=(C1・T1+C2・T2)/C1+C2
この式を検討すると、平衡温度Teは、高温側の温度T1と低温側の温度T2が一定とすると、熱容量の大きい物体の温度に近くなることが分かる。つまり、低温流体の熱容量が大きいと、基板と空気の平衡温度は、空気の温度に近い温度で平衡になることが分かる。
そして、熱容量は、C(熱容量:cal/℃)=V(体積:cm3)×D(密度:g/cm3)×C(比熱:cal/g・℃)の式で表される。すなわち、同量の水と空気を冷媒として用いた場合、水の比熱、密度が空気に対し大きいため熱容量が大きくなり、水−基板間の熱コンダクタンスが空気−基板間の熱コンダクタンスに対し大きくなる。したがって、冷却効果を向上させるには、冷却流体として熱容量の大きい物質を用いればよい。また、冷却流体が熱容量の小さい物質でもその冷却流体の量を多くすれば熱容量を大きくさせることができ、冷却効果を高めることができる。
つまり、ファンを用いて送風し基板に接する空気の量を多くして基板に対して空気の熱容量を大きくすることができる。ファンを用いて強制冷却することは、基板付近に滞留している高温の空気を除去して、低温の空気を基板に接触させることにより基板の熱を奪うことであるが、空気の熱輸送能力を熱容量と同じと考えると、強制冷却することは、基板に対し空気の熱容量を大きくさせて基板からの熱を多く奪うことと同じといえる。
<熱容量>
次に、空気に対し基板の熱容量を小さくさせる方法を考える。つまり、基板の表面に薄膜を形成させたときの熱の流れについて考える。
第一に、冷却流体としての空気と薄膜についてマクロ的に考えると、薄膜の熱容量は空気の熱容量に対して圧倒的に小さいため薄膜の温度は空気の温度に近い温度で熱力学的に平衡になる。
第二に、薄膜と基板について考えると、薄膜の熱容量は基板の熱容量に対して圧倒的に小さいため、薄膜の温度は基板の温度に近い温度で平衡になる。
前記で示したように、熱容量を含む系の熱平衡は、「q=C・ΔT/Δh+W(T1−T0)/Δh」の式で表され、そのときの平衡温度は、熱容量の大きい物質の温度に近くなる。
第三に、空気と薄膜と基板について考えると、薄膜は空気と基板の間に位置して平衡になるので空気の熱輸送能力すなわち空気が奪う熱量は同じであるから、薄膜の分だけ熱抵抗が大きくなり放熱効果が減少すると考えられる。
しかし、基板にファンを用いて、直接送風したときの空気の熱輸送能力すなわち空気の熱容量は、基板の熱容量に対し圧倒的に大きくなると考えられる。すなわち、これは空気の熱輸送能力が大きくても基板から空気中への熱伝達が小さいことが原因と考えられる。
次に、ミクロ的に考えると、通常、空気中における物体には、空気中の成分が物体表面にファンデル・ファールス力などの物理的な力で付着している。そして、伝熱工学においては、伝熱面のごく近傍では温度境界層が存在し、熱伝導による熱移動が境界面に対し垂直に行われることが確認されている。
つまり、この伝熱面のごく近傍に付着している空気層は、非常に少なく、その熱容量も非常に小さい数値を示す。この空気層と基板の熱容量を比較すると、空気層の熱容量は基板の熱容量に対し非常に小さくなり、その平衡温度は基板の温度に近い温度になると考えられる。すなわち、基板に付着している薄い空気層の温度は高くなる。つまり、熱流の式における空気のλ(熱伝導率)/L(厚み)だけ放熱性が低減すると考えられる。
次に、薄膜を形成したときの薄膜に付着している空気層と薄膜の熱容量を比較すると、基板に付着している空気層の熱容量よりも薄膜に付着している空気層の熱容量のほうが相対的に大きくなり、薄膜に付着している空気層の平衡温度は流動している空気層の温度に近い温度になると考えられ、基板に直接、付着していたときの空気層の温度よりは低くなると考えられる。
次に、固体中を移動する熱伝導は、次式で表される。
(数6)
q=λ/L(T1−T2)
そして、複層体の熱伝導は、q=(λ/L+λ’/L’)(T1−T2)で表される。薄膜の厚さを物体の厚さに対して無視できる程度の厚さにすると、固体中の温度勾配は、薄膜を形成しても同じになる。(ここで、λ’とL’は各々異なる物体の熱伝導率及び長さを意味する。)
また、固体の熱伝導率が大きくても、固体に熱伝導率の非常に小さい空気層が付着していると、この固体中央部から空気中への熱伝達は大きく阻害される。一般的に、流動している空気の熱輸送能力に対して固体中を移動する熱量、すなわち対流による熱伝達より伝導による熱伝達の方が大きいが、固体に付着している熱伝導率の小さい空気層により、固体中を移動する熱量の方が小さくなると考えた。したがって、空気の熱輸送能力が大きいとすると、固体表面(正確には、固体に付着している空気層表面)から空気中へ移動する熱量は同じである。
次に、薄膜に付着している空気層の温度が低下すると薄膜の温度も低下する。そして、固体中央部と薄膜に付着している空気層の温度差が大きくなり、固体中央部から表面への熱流は増加して固体中央部の温度も低下する。
次に、固体中央部の温度が低下すると、熱源と固体中央部の温度差も大きくなり、放熱効果を向上できると考えた。
また、固体に付着している空気層を無視して考えると、結果として、対流熱伝達の式「q=α(T2−T0)で表される対流熱伝達率αが大きくなったと同じことになる。
これらの考えから、基板の表面に熱容量が小さくなるように被膜を形成し、その被膜を空気に接触させることにより相対的に空気の熱容量を大きくさせ、放熱効果の向上を図り発電効率を向上させることができた。
したがって、本発明の太陽光発電モジュールの受光部用ガラス基板における被膜は、その熱容量が受光部用ガラス基板の熱容量より小さいものであることが必要である。好ましくは、該被膜の熱容量は受光部用ガラス基板のそれに対し6.49%以下であり、さらに好ましくは0.023〜6.49%である。熱容量がこの範囲を超えると、放熱性が小さくなり発電効率の向上があまり得られない場合がある。
また、本発明の太陽光発電モジュールの背面板(バックシート)における被膜は、その熱容量が背面基板の熱容量より小さいものであることが必要である。好ましくは、該被膜の熱容量は背面基板のそれに対し7.76%以下であり、さらに好ましくは0.016〜7.76%、特に好ましくは0.75〜1.56%である。被膜の熱容量の割合がこの範囲を超えると、放熱性が小さくなり発電効率の向上があまり得られない場合がある。
なお、受光部用複合ガラス板の場合は可視光線透過率が発電効率に大きな影響を与えるが、背面板(バックシート)の場合は熱容量の割合が発電効果に大きく影響し、結果として発電効率に影響すると考えられる。
<日射熱吸収率、放射熱吸収率>
また、ガラスの表面に、放射熱吸収率が小さい物質で被膜を形成させると、放射率は非常に小さくなり放射による放熱は低減するので、放熱性の向上には放射熱吸収率の大きい物質が一見望ましいように思われる。しかし、ファンを用いて送風させながら冷却を行うと、放射による冷却効果は、対流熱伝達による冷却効果に比較してほとんど無視できるほど小さいものとなる。したがって、ファンを用いて送風させながら冷却を行う場合、たとえ放射率の大きい被膜例えば真っ黒な被膜を形成させても、放熱性の向上にはほとんど貢献しない。逆に、放射率の大きい物質すなわち可視光線帯域と赤外線帯域の吸収、反射が大きい物質は、可視光線帯域と赤外線帯域の透過が小さい物質であるから、ガラス本来の透明度や透過性が劣るものとなる。
したがって、ガラス本来の可視光線帯域の透明度や透過性を損なわずにガラスからの放熱性を向上させるには、むしろ放射熱吸収率の小さい被膜をガラス表面に形成させることが望ましい。
すなわち、本発明の太陽光発電モジュールにおいて、受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成させる被膜としては、放射率の小さいものが選択される。具体的には、その日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が、受光部用ガラス基板の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率より小さい被膜を形成させるのがよい。
前記被膜の好ましい日射熱吸収率は0.01〜4.9%、より好ましくは0.03〜4.9%であり、好ましい常温熱放射の波長域における放射熱吸収率は0.26〜6.9%である。日射熱吸収率及び放射熱吸収率が大きすぎると、ガラス自体の温度が上昇し素子温度も高くなり発電効率が低下されることがある。
本発明の太陽光発電モジュールの背面板(バックシート)の少なくとも片面に形成させる被膜に関しては、可視光線帯域における透明度は必要ないが、日射熱吸収率や放射熱吸収率が大きいと背面基板自体の温度が上昇し素子温度も上げてしまう。
したがって、上述した受光部用ガラス基板の場合と同様に、その日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が、背面基板の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率より小さい被膜を形成させるのがよい。
前記被膜の好ましい日射熱吸収率は0.03〜11.5%であり、好ましい常温熱放射の波長域における放射熱吸収率は0.26〜15.2%である。日射熱吸収率及び放射熱吸収率が大きすぎると、背面基板自体の温度が上昇し素子温度も高くなり発電効率が低下されることがある。なお、このときの常温熱放射の波長域は5〜50μmの範囲である。
<可視光線透過率>
本発明の太陽光発電モジュールのガラス構造体(受光部用複合ガラス板)は、受光部用ガラス基板本来の可視光線帯域の透明度や透過性を損なわずに受光部用ガラス基板からの放熱性を向上させ発電効率を向上させたものである。
したがって、受光部用ガラス基板の片面に形成させる被膜の可視光線透過率は、受光部用ガラス基板の可視光線透過率より大きいものである。具体的には、前記被膜の可視光線透過率の値が98%以上であることが望ましい。
また、受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きくなるようにすることが必要である。
可視光線透過率が低すぎると太陽光発電素子が十分太陽光を吸収できず発電効率が低下され、発電効率を高めるという本発明の目的を十分達成できない場合がある。
なお、受光部用複合ガラス板の場合は可視光線透過率が発電効率に大きな影響を与えるが、背面板(バックシート)の可視光線透過率は、一般的に発電効率に影響を与えない。
<測定方法>
次に、ここでいう被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率の測定方法を示す。
常温熱放射の波長域における吸収率の測定方法は、JIS−R−3106の板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率における測定に準拠して、まず一般の化学分析用の赤外分光光度計を用い、アルミニウム板の上に被膜を形成してJIS−R−3106の標準反射率の値を用いて反射率を測定し、次いで灰色体の吸収率αと反射率ρと透過率τの間に成り立つ関係式「α+ρ+τ=1」に基づき、吸収率αを、「吸収率α=1−(反射率ρ+透過率τ)」により求めた。
また、アルミニウム板の上に形成されたときの被膜の放射熱吸収は、放射熱の入射したときと反射して出るときの2回生じるので、吸収率αは、測定値の1/2とした。この数値を理論値として用い、ガラス表面および背面基板表面に形成した被膜の常温熱放射の波長域における吸収率とした。また、被膜の表面に生じる反射は0として計算した数値を用いた。
可視光線透過率及び日射熱吸収率は、JIS−R−3106によりガラスとガラスに被膜を形成した状態で測定し、その差を被膜の可視光線透過率及び日射熱吸収率とした。
次に、熱容量は、C(熱容量:cal/℃)=V(体積:cm)×D(密度:g/cm)×C(比熱:cal/g・℃)の式で表される。そして、V(体積:cm)×D(密度:g/cm)=W(全重量:g)であるから、被膜の全重量と比熱とから熱容量を求めた。ここで、被膜の全重量は、溶剤を用いて規定の濃度に薄めた液剤を重量測定済のガラスに流し塗りの方法で塗布し乾燥後の重量を測定してその差を求めガラスに付着した重量を求めた。また、比熱:(cal/g・℃)は、各材料に固有のもので、その数値は、温度により変化するが、本発明においては、常温で通常の比熱測定装置を用いて得た測定値を使用した。
5.被膜の材質
(1)受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成する被膜
本発明において受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成する被膜の材質は、上述した可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率並びに熱容量が本発明の条件を満たすものであれば特に制限はないが、一般的に、有機系のフッ素樹脂やシリコーン樹脂、シリコーンオイル、フッ素シリコーン樹脂等は屈折率が小さく、可視光帯域や常温熱放射における波長域の透過率が大きく、吸収率の小さい物質であるから、受光部用ガラス基板に形成させる被膜の材料物質として好適と考えられる。
また、フッ素系化合物やケイ素系化合物で常温熱放射における波長域の透過率が小さい場合は、被膜の厚さを薄くするとランバートベールの法則により可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率が小さくなるので、被膜の厚さを薄くすると各波長域において透明になる各種ケイ素酸化物(シリカ、ケイ酸ナトリウムなど)や窒化ケイ素、炭化ケイ素などのセラミックスも、被膜の形成材料として用いることができる。
受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成する被膜の素材として特に好ましい材質としては、比熱の大きいケイ酸ソーダ(Na2SiO3、Na4SiO4、Na2Si2O5、Na2Si4O9)などが挙げられる。被膜の好ましい厚みは50nm〜30μm、より好ましくは50nm〜10μm、特に好ましくは50nm〜5μmである。
被膜の形成方法は特に制限されないが、物理的な方法(ドライタイプ、材料;SiO2)や化学的方法(ウエットタイプ)を用いることができる。
物理的な方法(ドライタイプ)としては、スパッタリング、蒸着、イオンプレーティングなど慣用されている方法が挙げられる。
化学的方法(ウエットタイプ)としては、被膜材料としてケイ酸ソーダやシリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などを用い、これらを適当な溶剤に溶かして慣用されている方法により塗布し、乾燥、固化させる方法や、あらかじめフィルム状又はシート状に形成した被膜材料を熱融着や接着、粘着などによりガラス基板に貼着する方法などが挙げられる。このように他の材料に積層するのに慣用されている方法の中から任意に選択してガラス基板に被覆することができる。また、所定の材料を分散、溶解などのこれまで慣用されている方法により処理した後、上記と同様の方法を用いて被覆することもできる。
(2)背面基板の少なくとも片面に形成する被膜
本発明において背面基板の少なくとも片面に形成する被膜の材質は、上述した可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率並びに熱容量が本発明の条件を満たすものであれば特に制限はないが、一般的に、有機系のフッ素樹脂やシリコーン樹脂、シリコーンオイル、フッ素シリコーン樹脂は屈折率が小さく、可視光帯域や常温熱放射における波長域の透過率が大きく、吸収率の小さい物質であるから、背面基板に形成させる被膜の材料物質として好適と考えられる。
また、フッ素系化合物やケイ素系化合物で常温熱放射における波長域の透過率が小さい場合は、被膜の厚さを薄くするとランバートベールの法則により可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率が小さくなるので、被膜の厚さを薄くすると各波長域において透明になる各種ケイ素酸化物(シリカ、ケイ酸ナトリウムなど)や窒化ケイ素、炭化ケイ素などのセラミックスも、被膜の形成材料として用いることができる。
背面基板の少なくとも片面に形成する被膜の素材として特に好ましい材質としては、比熱の大きいケイ酸ソーダ(Na2SiO3、Na4SiO4、Na2Si2O5、Na2Si4O9)などが挙げられる。被膜の好ましい厚みは0.11〜50μm、より好ましくは0.11〜30μm、特に好ましくは0.11〜10.3μmである。
被膜の形成方法は特に制限されないが、化学的方法(ウエットタイプ)を用いることができる。化学的方法(ウエットタイプ)としては、被膜材料としてケイ酸ソーダやシリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などを用い、これらを適当な溶剤に溶かして慣用されている方法により塗布し、乾燥、固化させる方法や、あらかじめフィルム状又はシート状に形成した被膜材料を熱融着や接着、粘着などによりガラス基板に貼着する方法などが挙げられる。このように他の材料に積層するのに慣用されている方法の中から任意に選択してガラス基板に被覆することができる。また、所定の材料を分散、溶解などのこれまで慣用されている方法により処理した後、上記と同様の方法を用いて被覆することもできる。
(3)調整方法
所望の可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率並びに熱容量を有する被膜を得る方法は特に制限されないが、被膜の厚みを上記範囲に調整するほか、屈折率の小さい物質を溶解させた被膜形成用の溶液に着色剤及び近赤外線吸収剤を適宜混合して可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率並びに熱容量を調整することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
<実施例1>
0.2w%のケイ酸ソーダ溶液(富士化学株式会社製;3号ケイ酸ソーダ)を作成し、酢酸を用いてpHを6.8〜7.3に調整した。そして、市販の着色剤(三木染料株式会社製、「メチレンブルーBH」0.1%溶液)および近赤外線吸収剤(日本化薬株式会社製;商品名「KP Deeper NR Paste」1.0%溶液)を適宜混合して可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率の異なる溶液(試料1〜5)を調整した。試料1〜5における着色剤と近赤外線吸収剤の混合量は以下の通りである。
試料1;着色剤 なし/近赤外線吸収剤 なし
試料2;着色剤0.3mg/近赤外線吸収剤0.2mg
試料3;着色剤0.5mg/近赤外線吸収剤0.3mg
試料4;着色剤0.8mg/近赤外線吸収剤0.5mg
試料5;着色剤1.0mg/近赤外線吸収剤0.9mg
この溶液を流し塗りの方法で縦33mm、横30mm、厚さ0.5mmの同一のガラス板の上に可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率の異なる被膜(厚みはすべて同じで0.11μm)を形成した。
次に、厚さ5mmの発泡スチロール板に縦30mm、横27mmの穴を2ヶ所開け、その開口部に被覆していないソーダガラス板及び片面に被覆したソーダガラス板を被膜面が光源側になるように配置して取り付けた。
被覆したガラス板及び被覆していないガラス板を取り付けた発泡スチロール製の板を垂直に立てて、20℃に設定された室内に置き、100W−赤外線ランプを発泡スチロール製の板から50cm離れた位置に、ガラスと同じ高さにして平行に配置した。そして、被覆したガラス板及び被覆していないガラス板に均等に光線が照射されるように調整して配置した。
次に、100W−赤外線ランプを照射してガラスの温度が平衡になるまで加熱して、そのときのソーダガラスの光源側の表面温度を測定し、被膜の日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率、被膜の可視光線透過率および被膜を形成したガラスの可視光線透過率がガラスの温度に及ぼす影響を確認した。その結果を表1に示す。
Figure 2014212273
赤外線ランプにより加熱したときのガラスの平衡温度は、日射熱吸収率が0.03〜11.5%で常温熱放射の波長域における吸収率が0.26〜15.2%のときにガラスより0.4〜2.7℃低くなり、赤外線ランプにより加熱されて高温となったガラス表面からの放熱が増加したことが分かる。
<実施例2>
1m×1.5mの多結晶型シリコン太陽光発電モジュール(モジュールテスター;(株)デンケン製)を6台用意し、5台に前記の実施例1で用いた試料1,2,3,4,5を、厚みが0.5mmのガラス受光面の外気側にコーティングして被膜を形成し(厚みはすべて同じで0.11μm)、1台はコーティングしなかった。測定は、日射の直接反射がない6階建てのビルの屋上に受光面を水平にして高さ15cmの架台に配置し、JIS C 8919の結晶系太陽電池セル・モジュール屋外出力測定方法により測定した。測定器は太陽電池ストリングチェッカ(IVH−500Z);新栄電子計測器株式会社製を用いて行った。
Figure 2014212273
被膜を形成したガラスの可視光線透過率がガラス単体の90.1%より大きく、日射熱吸収率が0.03〜4.9%で常温熱放射の波長域における吸収率が0.26〜6.9%のときに発電量がガラス単体より2.5〜4.1W多くなった。受光面の可視光線透過率がガラス単体のときより低下すると、ガラスの温度が低下しても発電量が低下されることが分かる。
<実施例3>
コーティング後の被膜の厚さが異なるように濃度の異なるケイ酸ソーダ溶液(0.2w%、1.0w%、3.0w%、4.0w%、6.0w%、8.0w%)を作成し、その溶液を実施例1と同じ流し塗りの方法で縦33mm、横30mm、厚さ0.5mmの同一のガラス板の上に塗布し、被膜の厚み及びガラス板に対する熱容量の割合が異なる被膜(試料1〜6)を形成した。ガラス基板に対する被膜の熱容量の割合を、{X2(被膜の熱容量)/X1(ガラスの熱容量)×100(%)}として求めた。各試料の被膜の厚みと熱容量は、以下の通りである。
試料1;被膜の厚み0.11μm/熱容量の割合0.023%
試料2;被膜の厚み5.0μm/熱容量の割合1.05%
試料3;被膜の厚み10.3μm/熱容量の割合2.17%
試料4;被膜の厚み30.9μm/熱容量の割合6.49%
試料5;被膜の厚み51.4μm/熱容量の割合10.79%
試料6;被膜の厚み60.8μm/熱容量の割合12.76%
実施例1で用いた厚さ5mmの発泡スチロール板に、実施例1と同様の方法でガラスを取り付け、100W−赤外線ランプを照射してガラスの温度が平衡になったときの温度を測定し、熱容量の比がガラスの温度に及ぼす影響を確認した。
なお、被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率は、実施例1と同じく理論値を用い、熱容量は前記の方法で測定した。この結果を表2に示す。
Figure 2014212273
赤外線ランプにより加熱したときのガラスの平衡温度は、日射熱吸収率が0.03〜6.98%、常温熱放射の波長域における吸収率が0.26〜7.98%、ガラス基板に対する被膜の熱容量の割合が6.49%以下のときにガラス単体より0.6〜2.7℃低くなり高温となったガラス表面からの放熱が促進されることが分かった。
<実施例4>
1m×1.5mの多結晶型シリコン太陽光発電モジュール(モジュールテスター;(株)デンケン製)を7台用意し、6台に前記の実施例2で用いた試料1,2,3,4,5,6を、厚みが0.5mmの受光面ガラスの外気側表面にコーティングし、1台はコーティングしなかった。測定は、日射の直接反射がない6階建てのビルの屋上に受光面を水平にして高さ15cmの架台に配置し、JIS C 8919の結晶系太陽電池セル・モジュール屋外出力測定方法により測定した。測定器は太陽電池ストリングチェッカ(IVH−500Z);新栄電子計測器株式会社製を用いて行った。
Figure 2014212273
日射熱吸収率が0.03〜6.98%で常温熱放射の波長域における吸収率が0.26〜7.98%、ガラス基板に対する被膜の熱容量の割合が6.49%以下のときに発電量がガラス単体より1.7〜4.1W多くなった。受光面の可視光線透過率がガラス単体と同じならば放熱効果により発電量は増加することが分かった。
<実施例5>
50cm×50cm×6mmの透明ガラス6枚を用意し,その内の5枚にイオンプレーティング装置(東邦化研(株))を用いて、SiOを、厚みがそれぞれ50nm、100nm、200nm、400nm、600nmとなるようにコーティングさせた。
次に、被覆したガラス板及び被覆していないガラス板を垂直に立てて、20℃に設定された室内に置き、500W1個・100W4個−赤外線ランプをガラス板から150cm離れた位置に、ガラスと同じ高さにして平行に配置した。そして、被覆したガラス板及び被覆していないガラス板に均等に光線が照射されるように調整して配置した。
次に、赤外線ランプを照射してガラスの温度が平衡になるまで加熱して、そのときのソーダガラスの光源側の表面温度を測定し、被膜の日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率、被膜の可視光線透過率および被膜を形成したガラスの可視光線透過率がガラスの温度に及ぼす影響を確認した。その結果を表5に示す。
なお、被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率は、実施例1と同じく理論値を用い熱容量は前記の方法で測定した。
試料1;被膜の厚み50nm/熱容量の割合0.001%
試料2;被膜の厚み100nm/熱容量の割合0.002%
試料3;被膜の厚み200nm/熱容量の割合0.003%
試料4;被膜の厚み400nm/熱容量の割合0.007%
試料5;被膜の厚み600nm/熱容量の割合0.01%
Figure 2014212273
ガラスと被膜の屈折率および厚みの関係で可視光線透過率が変化するが可視光線透過率はガラス単体より高いため赤外線ランプにより加熱したときのガラスの平衡温度は、日射熱吸収率が0.02〜0.11%、常温熱放射の波長域における吸収率が0.23〜0.49%、ガラス基板に対する被膜の熱容量の割合が0.01%以下のときにガラス単体より1.7〜2.6℃低くなり高温となったガラス表面からの放熱が促進されることが分かった。
<実施例6>
1m×1.5mの多結晶型シリコン太陽光発電モジュール(モジュールテスター;(株)デンケン製)を6台用意し、そのうちの5台にイオンプレーティング装置(東邦化研(株))を用いて前記実施例5と同様に、厚みが0.5mmの受光面ガラスの外気側表面に、SiOを、それぞれ厚みが50nm、100nm、200nm、400nm、600nmとなるようにコーティングさせた。1台はコーティングさせずガラス単体とした。
測定は、日射の直接反射がない6階建てのビルの屋上に受光面を水平にして高さ15cmの架台に配置し、JIS C 8919の結晶系太陽電池セル・モジュール屋外出力測定方法により測定した。測定器は太陽電池ストリングチェッカ(IVH−500Z);新栄電子計測器株式会社製を用いて行った。
試料1;被膜の厚み50nm/熱容量の割合0.001%
試料2;被膜の厚み100nm/熱容量の割合0.002%
試料3;被膜の厚み200nm/熱容量の割合0.003%
試料4;被膜の厚み400nm/熱容量の割合0.007%
試料5;被膜の厚み600nm/熱容量の割合0.01%
Figure 2014212273
ガラスと被膜の屈折率および厚みの関係で可視光線透過率が変化するが可視光線透過率はガラス単体より高いため日射熱吸収率が0.02〜0.11%、常温熱放射の波長域における吸収率が0.23〜0.49%、ガラス基板に対する被膜の熱容量の割合が0.01%以下のときにガラス単体より3.5〜4.2W多くなった。
<実施例7>
縦33mm、横30mm、厚さ1.0mmのPETフィルムとEVAフィルムを貼りあわせたシートを6枚用意して片面にライトグレーの塗料(関西ペイント製・エスコNBマイルドH)を塗り不透明にし、このものをバックシートとした。なお、以下の実施例で用いたバックシートはすべてライトグレーの塗料(関西ペイント製・エスコNBマイルドH)を塗装したものである。
次に、実施例1で用いた溶液(試料1〜5)を実施例1と同じ方法で前記バックシートに塗布し、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率の異なる被膜を形成した(厚みはすべて同じで0.11μm)。
次に、厚さ5mmの発泡スチロール板に縦30mm、横27mmの穴を2ヶ所開け、その開口部に被膜を形成していないバックシート及び片面に被膜を形成したバックシートの被膜面が光源側になるように配置して取り付けた。被膜を形成したバックシート及び被膜を形成していないバックシートを取り付けた発泡スチロール製の板を垂直に立てて、20℃に設定された室内に置き、100W−赤外線ランプを発泡スチロール製の板から50cm離れた位置に、バックシートと同じ高さにして平行に配置した。そして、被膜を形成したバックシート及び被膜を形成していないバックシートに均等に光線が照射されるように調整して配置した。
次に、100W−赤外線ランプを照射してバックシートの温度が平衡になるまで加熱して、そのときのバックシートの光源側の表面温度を測定し、被膜の日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率、被膜の可視光線透過率と温度の関係を確認した。その結果を表7に示す。
Figure 2014212273
被膜の日射熱吸収率が0.03〜11.5%で常温熱放射の波長域における吸収率が0.26〜15.2%のときに被膜を形成したバックシートの温度が被膜を形成していないバックシートの温度より1.2〜4.7℃低くなった。
<実施例8>
実施例7と同じ厚さ1.0mmのPETフィルムとEVAフィルムを貼りあわせたバックシートに、実施例3で用いた溶液を、実施例3と同じ方法で厚みを変えて被膜の熱容量が異なるように塗布した。バックシートに対する被膜の熱容量の割合を、{X2(被膜の熱容量)/X1(バックシートの熱容量)×100(%)}として求めた。各資料の被膜の厚みと熱容量は、以下の通りである。
試料1;被膜の厚み0.11μm/熱容量の割合0.016%
試料2;被膜の厚み5.0μm/熱容量の割合0.75%
試料3;被膜の厚み10.3μm/熱容量の割合1.56%
試料4;被膜の厚み30.9μm/熱容量の割合4.67%
試料5;被膜の厚み51.4μm/熱容量の割合7.76%
試料6;被膜の厚み60.8μm/熱容量の割合9.18%
Figure 2014212273
赤外線ランプにより加熱したときの平衡温度は、バックシートに対し被膜の熱容量が7.76%以下のときにバックシート単体より0.6〜4.7℃低くなった。
<実施例9>
1m×1.5mの多結晶型シリコン太陽光発電モジュール(モジュールテスター;(株)デンケン製)を6台用意し、5台に前記の実施例1で用いた試料1,2,3,4,5を、厚さ1.0mmのPETフィルムとEVAフィルムを貼りあわせたバックシートの外気側表面にコーティングし(厚みはすべて同じで0.11μm)、1台はコーティングしなかった。
測定は、日射の直接反射がない6階建てのビルの屋上に受光面を水平に配置し、JIS C 8919の結晶系太陽電池セル・モジュール屋外出力測定方法により測定した。測定器は太陽電池ストリングチェッカ(IVH−500Z);新栄電子計測器株式会社製を用いて行った。
Figure 2014212273
被膜の日射熱吸収率が0.03〜11.5%で常温熱放射の波長域における吸収率が0.26〜15.2%のときに、被膜を形成していないバックシートより発電量が1.7〜3.5W多くなった。
<実施例10>
1m×1.5mの多結晶型シリコン太陽光発電モジュール(モジュールテスター;(株)デンケン製)を7台用意し、6台に前記実施例3で用いた試料1,2,3,4,5,6を、厚さ1.0mmのPETフィルムとEVAフィルムを貼りあわせたバックシートの外気側表面にコーティングし、1台はコーティングしなかった。測定は、日射の直接反射がない6階建てのビルの屋上に受光面を水平にして高さ15cmの架台に配置し、JIS C 8919の結晶系太陽電池セル・モジュール屋外出力測定方法により測定した。測定器は太陽電池ストリングチェッカ(IVH−500Z);新栄電子計測器株式会社製を用いて行った。
Figure 2014212273
被膜の日射熱吸収率が0.03〜7.65%で常温熱放射の波長域における吸収率が0.26〜8.76%、バックシートに対する被膜の熱容量の割合が7.76%の以下のときに発電量がバックシート単体より1.9〜6.9W多くなった。
<実施例11>
1m×1.5mの多結晶型シリコン太陽光発電モジュール(モジュールテスター;(株)デンケン製)を5台用意し、そのうちの2台の受光面ガラスの外気側に、前記実施例1で用いた塗料(試料1)をコーティングし(厚み0.11μm)、試料A−1を2台作成した。別の2台の受光面ガラスの外気側に、前記実施例1で用いた塗料(試料2)をコーティングし(厚み0.11μm)、試料A−2を2台作成した。残りの1台はコーティングしなかった。
一方、厚さ1.0mmのPETフィルムとEVAフィルムを貼りあわせたバックシートに、実施例3で用いた試料1と試料5をコーティングし(厚み;試料1:0.11μm、試料5:51.4μm)、各々試料B−1及び試料B−5とした。
さらに、上記試料A−1及び試料A−2と試料B−1及び試料B−5とを、以下のように組み合わせて、太陽電池の受光部と背面基板の両面に被覆を形成させたときの発電量を測定した。
・試料A−1と試料B−1
・試料A−1と試料B−5
・試料A−2と試料B−1
・試料A−2と試料B−5
測定は、日射の直接反射がない6階建てのビルの屋上に受光面を水平にして高さ15cmの架台に配置し、JIS C 8919の結晶系太陽電池セル・モジュール屋外出力測定方法により行った。測定器は太陽電池ストリングチェッカ(IVH−500Z);新栄電子計測器株式会社製を用いて行った。なお1台は加工せず基準とした。結果を表11〜13に示す。
Figure 2014212273
Figure 2014212273
Figure 2014212273
受光部と背面基板の両面を放熱基板にすると発電量が4.9W〜11.9W多くなり、受光部および背面基板だけのときより発電量は多くなった。
本発明によれば、太陽光発電モジュールの受光部の可視光線透過率を低下させることなく、受光部から外気への放熱を促進させることができる。また、背面部からも外気への放熱を促進させることができる。よって、太陽光発電モジュールの発電効率を格段に向上させることができる。

Claims (12)

  1. 受光部が、受光部用ガラス基板と該受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜とからなる受光部用複合ガラス板であって、前記被膜の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれより大きく、受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに受光部用ガラス基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれより小さいことを特徴とする受光部用複合ガラス板からなる、太陽光発電モジュール。
  2. 背面板(バックシート)が、背面基板と該背面基板の少なくとも片面に形成された被膜とからなる複合背面板であって、前記被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに背面基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が背面基板のそれより小さいことを特徴とする複合背面板からなる、太陽光発電モジュール。
  3. 受光部が、受光部用ガラス基板と該受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜とからなる受光部用複合ガラス板であって、前記被膜の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれより大きく、受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに受光部用ガラス基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれより小さいことを特徴とする受光部用複合ガラス板からなり、
    背面板(バックシート)が背面基板と該背面基板の少なくとも片面に形成された被膜とからなる複合板であって、前記被膜の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに背面基板のそれより小さく、且つ被膜の熱容量が背面基板のそれより小さいことを特徴とする背面板からなる、太陽光発電モジュール。
  4. 前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜の可視光線透過率が98%以上、日射熱吸収率が0.01〜4.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.26〜6.9%であって、前記受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、且つ該被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれに対し0.023〜6.49%であることを特徴とする、請求項1又は3記載の太陽光発電モジュール。
  5. 前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜の日射熱吸収率が0.03〜11.5%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.26〜15.2%であって、且つ該被膜の熱容量が背面基板のそれに対し0.016〜7.76%であることを特徴とする、請求項2又は3記載の太陽光発電モジュール。
  6. 前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜がSiO又はシリコン系化合物からなり、厚みが50nm〜5μmであることを特徴とする、請求項1又は3に記載の太陽光発電モジュール。
  7. 前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜がシリコン系化合物からなり、厚みが0.11〜10.3μmであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の太陽光発電モジュール。
  8. 請求項1記載の太陽光発電モジュールの発電効率を向上させる方法であって、前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜の表面に冷却流体を接触させ、前記受光部用複合ガラス板を放熱する工程を含むことを特徴とする、太陽光発電モジュールの発電効率向上方法。
  9. 請求項2記載の太陽光発電モジュールの発電効率を向上させる方法であって、前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜の表面に冷却流体を接触させ、前記複合背面板を放熱する工程を含むことを特徴とする、太陽光発電モジュールの発電効率向上方法。
  10. 請求項3記載の太陽光発電モジュールの発電効率を向上させる方法であって、前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜及び/又は前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜の表面に冷却流体を接触させ、前記受光部用複合ガラス板及び/又は複合背面板を放熱する工程を含むことを特徴とする、太陽光発電モジュールの発電効率向上方法。
  11. 前記受光部用ガラス基板の少なくとも片面に形成された被膜の可視光線透過率が98%以上、日射熱吸収率が0.01〜4.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.26〜6.9%であって、前記受光部用複合ガラス板の可視光線透過率が受光部用ガラス基板のそれと同じかそれより大きく、且つ該被膜の熱容量が受光部用ガラス基板のそれに対し0.023〜6.49%であることを特徴とする、請求項8又は10記載の発電効率向上方法。
  12. 前記背面基板の少なくとも片面に形成された被膜の日射熱吸収率が0.03〜11.5%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.26〜15.2%であって、且つ該被膜の熱容量が背面基板のそれに対し0.016〜7.76%であることを特徴とする、請求項9又は10記載の発電効率向上方法。

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