JP2014209635A - 永久磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】Feを含むSm−Co系磁石の高い磁化や保磁力を保ちつつ、角型性を向上させた永久磁石を提供する。
【解決手段】実施形態の永久磁石は、組成式:R(FepqCurCo1-p-q-rz(R:希土類元素、M:Ti、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種、0.3<p≦0.45、0.01≦q≦0.05、0.01≦r≦0.1、5.6≦z≦9)で表される組成を有し、Th2Zn17型結晶相と粒界相とプレートレット相とを含む金属組織を備え、かつ角型比が87%以上である。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、永久磁石に関する。
高性能な永久磁石としては、Sm−Co系磁石やNd−Fe−B系磁石等の希土類磁石が知られている。ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)のモータに永久磁石を使用する場合、永久磁石には耐熱性が求められる。HEVやEV用モータには、Nd−Fe−B系磁石のNdの一部をDyで置換して耐熱性を高めた永久磁石が用いられている。Dyは希少元素の一つであるため、Dyを使用しない永久磁石が求められている。Sm−Co系磁石は、Dyを使用しない系で優れた耐熱性を示すことが知られているものの、Nd−Fe−B系磁石に比べて(BH)maxが小さいという難点を有している。
永久磁石の(BH)maxの値を決める要因としては、残留磁化と保磁力に加えて、ヒステリシスループの角型性が挙げられる。残留磁化が大きい磁石であっても、角型性が悪い場合には、(BH)max値は残留磁化の大きさから期待される理論値より低くなる。高い(BH)max値を実現するためには、磁化が大きいことに加えて、角型性が良いことが求められる。Sm−Co系磁石の磁化を高めるためには、Coの一部をFeで置換すると共に、Fe濃度を高めることが有効である。しかし、Fe濃度が高い組成領域ではSm−Co系磁石の角型性が悪化する傾向にある。そこで、高Fe濃度のSm−Co系磁石において、高い磁化や保磁力を保ちつつ、角型性を高める技術が求められている。
特開2010−121167号公報 特開2011−114236号公報
本発明が解決しようとする課題は、Feを含むSm−Co系磁石の高い磁化や保磁力を保ちつつ、角型性を向上させることを可能にした永久磁石とそれを用いたモータおよび発電機を提供することにある。
実施形態の永久磁石は、
組成式:R(FepqCurCo1-p-q-rz
(式中、RはSm、Ce、Nd、PrおよびYから選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi、ZrおよびHfから選ばれ、50原子%以上がZrである少なくとも1種の元素を示し、p、q、rおよびzはそれぞれ原子比で、0.3<p≦0.45、0.01≦q≦0.05、0.01≦r≦0.1、5.6≦z≦9を満足する数である)
で表される組成を有する。実施形態の永久磁石は、Th2Zn17型結晶相と粒界相とプレートレット相とを含む金属組織を備え、かつ角型比が87%以上である。
実施形態による永久磁石の金属組織を拡大して示すTEM像である。 実施形態による永久磁石の磁化曲線の一例を示す図である。 実施形態の永久磁石モータを示す図である。 実施形態の可変磁束モータを示す図である。 実施形態の発電機を示す図である。
以下、実施形態の永久磁石について説明する。この実施形態の永久磁石は、
組成式:R(FepqCurCo1-p-q-rz …(1)
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、p、q、rおよびzはそれぞれ原子比で、0.3<p≦0.45、0.01≦q≦0.05、0.01≦r≦0.1、5.6≦z≦9を満足する数である)
で表される組成を有する。実施形態の永久磁石は、Th2Zn17型結晶相と粒界相とプレートレット相とを含む金属組織を備え、かつ粒界相におけるCu濃度の空間分布が標準偏差で5以下とされている。
組成式(1)において、元素Rとしてはイットリウム(Y)を含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素が使用される。元素Rはいずれも磁石材料に大きな磁気異方性をもたらし、高い保磁力を付与するものである。元素Rとしてはサマリウム(Sm)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)およびプラセオジム(Pr)から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、特にSmを使用することが望ましい。元素Rの50原子%以上をSmとすることで、永久磁石の性能、とりわけ保磁力を再現性よく高めることができる。さらに、元素Rの70原子%以上がSmであることが望ましい。
元素Rは、元素Rとそれ以外の元素(Fe、M、Cu、Co)との原子比が1:5.6〜1:9の範囲(z値として5.6〜9の範囲/元素Rの含有量として10〜15原子%の範囲)となるように配合される。元素Rの含有量が10原子%未満であると、多量のα−Fe相が析出して十分な保磁力が得られない。一方、元素Rの含有量が15原子%を超えると、飽和磁化の低下が著しくなる。元素Rの含有量は10.2〜14原子%の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは10.5〜12.5原子%の範囲である。
元素Mとしては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)から選ばれる少なくとも1種の元素が用いられる。元素Mを配合することによって、高いFe濃度の組成で大きな保磁力を発現させることができる。元素Mの含有量は元素R以外の元素(Fe、Co、Cu、M)の総量の1〜5原子%(0.01≦q≦0.05)の範囲とする。q値が0.05を超えると磁化の低下が著しく、またq値が0.01未満であるとFe濃度を高める効果が小さい。元素Mの含有量は0.012≦q≦0.04であることがより好ましく、さらに好ましくは0.015≦q≦0.03である。
元素MはTi、Zr、Hfのいずれであってもよいが、少なくともZrを含むことが好ましい。特に、元素Mの50原子%以上をZrとすることによって、永久磁石の保磁力を高める効果をさらに向上させることができる。一方、元素Mの中でHfはとりわけ高価であるため、Hfを使用する場合においても、その使用量は少なくすることが好ましい。Hfの含有量は元素Mの20原子%未満とすることが好ましい。
銅(Cu)は永久磁石に高い保磁力を発現させるための元素である。Cuの配合量は元素R以外の元素(Fe、Co、Cu、M)の総量の1〜10原子%(0.01≦r≦0.1)の範囲とする。r値が0.1を超えると磁化の低下が著しく、またr値が0.01未満であると高い保磁力を得ることが困難となる。Cuの配合量は0.02≦r≦0.1とすることがより好ましく、さらに好ましくは0.03≦r≦0.08である。
鉄(Fe)は主として永久磁石の磁化を担うものである。Feを多量に配合することによって、永久磁石の飽和磁化を高めることができる。ただし、Feの含有量が過剰になりすぎると、α−Fe相の析出等により保磁力が低下する。Feの配合量は元素R以外の元素(Fe、Co、Cu、M)の総量の30原子%を超えて45原子%以下(0.3<p≦0.45)の範囲とする。Feの配合量は0.31≦p≦0.44であることがより好ましく、さらに好ましくは0.32≦p≦0.43である。
コバルト(Co)は永久磁石の磁化を担うと共に、高い保磁力を発現させるために必要な元素である。さらに、Coを多く含有するとキュリー温度が高くなり、永久磁石の熱安定性も向上する。Coの配合量が少ないとこれらの効果が小さくなる。しかし、永久磁石に過剰にCoを含有させると相対的にFeの含有量が減るため、磁化の低下を招くおそれがある。Coの含有量はp、q、rで規定される範囲(1−p−q−r)とする。
Coの一部はニッケル(Ni)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、およびタングステン(W)から選ばれる少なくとも1種の元素Aで置換してもよい。これらの置換元素は磁石特性、例えば保磁力の向上に寄与する。ただし、元素AによるCoの過剰な置換は磁化の低下を招くおそれがあるため、元素Aによる置換量はCoの20原子%以下(0≦s≦0.2)の範囲とする。なお、実施形態の磁石材料は酸化物等の不可避的不純物を含有することを許容する。
この実施形態のSmCo系磁石は、高温相であるTbCu7型結晶相(TbCu7型構造を有する結晶相/1−7相)を前駆体とし、これに時効処理等を施して形成した相分離組織、すなわち主相としてのTh2Zn17型結晶相(Th2Zn17型構造を有する相/2−17相)とCaCu5型結晶相(CaCu5型構造を有する結晶相/1−5相)等からなる粒界相とプレートレット相とを含む金属組織を備えている。相分離後の金属組織は、セル構造と呼ばれる二次構造となる。
上述した金属組織は、時効処理後の試料の磁化容易軸方向(結晶のc軸方向)に垂直な方向から見たTEM像(透過電子顕微鏡像)によって観察される。図1は実施形態のSmCo系型磁石のTEM像の一例である。図1に示すように、時効処理後のTEM像で主に観察される組織は、主相である1−7相(セル相)と粒界相である1−5相(セル壁相)とプレートレット相である。セル相は粒径が50〜200nm程度の結晶粒である。セル相は金属組織を構成する相(全構成相)の大部分を占めるものであり、SmCo系型磁石の主相である。ここで、主相とは全構成相のうち体積比が最大の相を意味し、その体積比は50%以上であることが好ましく、さらに好ましくは70%以上である。
セル壁相はセル相の粒界に板状に存在する相であり、相の幅は数nm〜10nm程度である。プレートレット相は複数の結晶粒を横断するように存在する板状の相であり、セル相のc軸方向と垂直に存在する。このため、1つのドメイン内ではプレートレット相同士は並行に観察される。各相は組成面でも特徴があり、セル壁相はセル相(主相)に対してCu濃度が数倍高く、プレートレット相はセル相(主相)に対してZr等の元素Mの濃度が数倍高い。具体例を挙げると、セル相のCu濃度が3原子%程度で、Zr濃度が1.5原子%程度である試料において、セル壁相のCu濃度は20原子%程度で、プレートレット相のZr濃度は4.5原子%程度である。
この実施形態のSm−Co系磁石は、2−17相からなる主相(セル相)と1−5相等からなる粒界相(セル壁相)とプレートレット相以外の結晶相や非晶質相を含んでいてもよい。その他の相としては、元素Mの濃度がセル相より高いMリッチ相や元素RとFeを主成分とする化合物相等が考えられるが、その量は不純物相程度の量であることが好ましい。実施形態の永久磁石を構成する金属組織は、実質的にセル相とセル壁相とプレートレット相とからなることが好ましい。
なお、この実施形態の永久磁石の組成は、ICP(Inductively Coupled Plasma:高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析法により測定することができる。また、各相の体積比率は電子顕微鏡や光学顕微鏡による観察、X線回折等を併用して総合的に判断されるが、永久磁石断面(磁化困難軸面)を撮影した透過型電子顕微鏡写真の面積分析法により求めることができる。永久磁石の断面は、製品の表面の最大面積を有する面の実質的に中央部の断面を用いるものとする。
2−17相(セル相)の粒界に析出した1−5相(セル壁相)の磁壁エネルギーは、2−17相の磁壁エネルギーに比べて大きく、この磁壁エネルギーの差が磁壁移動の障壁となる。Sm2Co17型磁石においては、磁壁エネルギーの大きい1−5相等がピンニングサイトとして働くことによって、磁壁ピニング型の保磁力が発現するものと考えられる。ここで、磁壁エネルギーの差は主にCuの濃度差により生じているものと考えられる。セル壁相のCu濃度がセル相内のCu濃度より高ければ、保磁力が発現するものと考えられる。このため、セル壁相はセル相のCu濃度の1.2倍以上のCu濃度を有していることが好ましい。これによって、セル壁相を磁壁のピンニングサイトとして十分に機能させることができ、十分な保磁力を得ることが可能となる。
セル相の粒界に存在するセル壁相(粒界相)の代表例としては、上述した1−5相が挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。セル壁相がセル相のCu濃度の1.2倍以上のCu濃度を有している場合に、セル壁相を磁壁のピンニングサイトとして十分に機能させることができ、これによって高保磁力を得ることが可能となる。従って、セル壁相は上記したようなCuリッチな相であればよい。1−5相以外のセル壁相としては、高温相(相分離前の組織)である1−7相や、1−7相の相分離の初期段階に生じる1−5相の前駆体相等が挙げられる。
上述したように、CuはSmCo系磁石に高い保磁力を発現させるために必須の元素である。Cuは時効処理等により生成するセル壁相に富化され、これによりセル壁相が磁壁のピンニングサイトとして働くことで、保磁力が発現すると考えられる。Sm−Co系磁石には、磁化や保磁力に加えて(BH)maxを高めることが求められている。前述したように、永久磁石の(BH)maxの値を決める要因としては、残留磁化と保磁力に加えて、ヒステリシスループの角型性が挙げられる。残留磁化が大きい磁石であっても、角型性が悪い場合には、(BH)max値は残留磁化の大きさから期待される理論値より低くなる。
Sm−Co系磁石の磁化を高めるためには、Coの一部をFeで置換すると共に、Fe濃度を高めることが有効である。このため、実施形態のSm−Co系はFeの配合量を元素R以外の元素(Fe、Co、Cu、M)の総量の30原子%を超えて45原子%以下の範囲(0.3<p≦0.45)としている。しかし、Fe濃度が高い組成領域ではSm−Co系磁石のヒステリシスループの角型性が悪化する傾向にある。このような角型性の悪化は、Sm−Co系磁石の(BH)maxを低下させる要因となる。
本発明者らは、上記した角型性を悪化させる原因について鋭意検討した結果、Fe濃度が高い組成域においてはセル壁相のCu濃度にばらつきが発生しやすくなり、これによって磁壁のピンニングポテンシャルが大きいセル壁相とピンニングポテンシャルが小さいセル壁相とが生じることを見出した。上述したように、セル壁相はCu濃度によって磁壁エネルギーが変化するため、Cu濃度の大きく異なるセル壁相同士では、磁壁のピンニングポテンシャルの大きさも異なることになる。
磁壁のピニングポテンシャルがセル壁相によって異なる場合には、磁壁移動の容易な領域と困難な領域とが存在することになる。このため、外部磁場を加えた際の磁壁移動が、Cu濃度が低いセル壁相で囲われたセル相からCu濃度が高いセル壁相で囲われたセル相に向けて段階的に起こるようになる。従って、Fe濃度が高い組成を有するSm−Co系磁石においては、ヒステリシスループの角型性が悪くなるものと考えられる。このようなセル壁相のCu濃度の分布に影響される角型性を高めるためには、セル壁相のCu濃度の空間分布を均一化することが有効である。
そこで、この実施形態のSm−Co系磁石においては、セル壁相(粒界相)におけるCu濃度の空間分布を標準偏差で5以下としている。このようなCu濃度の空間分布を有するセル壁相を適用することで、高Fe濃度を有するSm−Co系磁石のヒステリシスループの角型性を良好にすることが可能となる。すなわち、高Fe濃度に基づいてSm−Co系磁石に付与した高い磁化や、相分離組織やセル相とセル壁相とのCu濃度差等に基づくSm−Co系磁石の高保磁力を維持しつつ、Sm−Co系磁石のヒステリシスループの角型性を良好にすることによって、Sm−Co系磁石の(BH)maxの値を向上させることができる。従って、高性能なSm−Co系磁石を提供することが可能となる。
なお、ここでは角型性を表す指標として、便宜上角型比を以下のように定義する。すなわち、角型比は式(2)で表される(BH)maxの理論値に対する(BH)maxの実測値の比率を示すものとする。(BH)maxの理論値は、測定された残留磁化(Br)の値から式(3)により計算される値を示すものとする。
角型比=(BH)maxの実測値/(BH)maxの理論値×100(%) …(2)
(BH)maxの理論値=Br×Br/16π×104 …(3)
図2は実施形態のSm−Co系磁石の磁化曲線の一例を従来のSm−Co系磁石と比較して示す図である。図2に磁化曲線を示す実施形態のSm−Co系磁石と従来のSm−Co系磁石とは、それぞれ同一組成を有しており、さらにそれぞれ2−17相からなる主相(セル相)と粒界相(セル壁相)とプレートレット相とを含む金属組織を備えているものの、実施形態のSm−Co系磁石は粒界相におけるCu濃度の空間分布が標準偏差で5以下であるのに対して、従来のSm−Co系磁石は粒界相におけるCu濃度の空間分布が標準偏差で5を超えている。図2から明らかなように、実施形態のSm−Co系磁石はヒステリシスループの角型性が良好であることが分かる。
セル壁相(粒界相)におけるCu濃度の空間分布は、溶体化処理や時効処理等の熱処理条件によって変化する。セル壁相のCu濃度の空間分布を均一化するためには、後に詳述するように、溶体化処理の処理温度や処理時間を制御することが有効である。時効処理に関しては、本時効処理の前にその温度より低い温度で予備時効処理を行うことが有効である。さらに、予備時効処理や本時効処理の処理温度、処理時間、処理後の冷却速度を厳密に制御すること等が有効である。
さらに、Sm−Co系磁石のヒステリシスループの角型性は、粒界相のM濃度(α)に対するプレートレット相のM濃度(β)の比(β/α)によっても影響される。すなわち、粒界相とプレートレット相のM濃度比(β/α)が高すぎるということは、Zrに代表される元素Mの拡散が十分に進行していないことを意味する。このような場合には、元素Mの組成均一性のみならず、Cuの組成均一性も低くなりやすい。このため、Cu濃度の空間分布の均一性を高める上で、粒界相とプレートレット相のM濃度比(β/α)は3未満とすることが好ましい。ただし、粒界相とプレートレット相のM濃度比(β/α)が1以下になると、本来M濃度が高いプレートレット相と粒界相のM濃度が逆転し、プレートレット相が拡散パスとして機能しなくなるため、粒界相とプレートレット相のM濃度比(β/α)は1を超えることが好ましい。
上述した各構成相の元素濃度は、透過電子顕微鏡によるエネルギー分散型X線分析によって測定される。透過電子顕微鏡像およびエネルギー分散型X線分析の具体的な測定方法を以下に示す。まず、時効処理を施した焼結体あるいは合金で、消磁状態にあるものを磁化容易軸に平行に切断して板状試料とする。その際、試料は焼結体あるいは合金の表面から1mm以上内側から採取する。その後、FIB(集束イオンビーム)にて薄板化し、透過電子顕微鏡用観察試料を得る。測定は透過電子顕微鏡にて加速電圧200kV、倍率10万倍で行い、セル状構造がはっきり見えるように調整する。エネルギー分散型X線分析は、上記視野にて各構成相の元素濃度の分析を行う。
粒界相におけるCu濃度の空間分布は、以下のようにして測定する。まず、セル壁相部分のCu濃度(原子%)の分析を行う。その際、測定箇所としてセル壁相厚さの中心を選び、10箇所以上を測定する。ただし、それぞれの測定点はお互い150nm以上離れているように選択する。上記測定データからCu濃度の標準偏差(σ)を算出する。
粒界相のM濃度(α)とプレートレット相のM濃度(β)の比(β/α)は、以下のようにして測定する。まず、セル壁相部分のM濃度(原子%)の分析を行う。その際、測定箇所としてセル壁相の厚さの中心を選び、10箇所以上を測定する。ただし、それぞれの測定点はお互い150nm以上離れているように選択する。次いで、プレートレット相部分のM濃度(原子%)の分析を行う。その際、測定箇所としてプレートレット相の厚さの中心を選び、平行に観察されるプレートレット相の10本以上で測定する。セル壁相およびプレートレット相のそれぞれの測定データからM濃度の平均値を算出し、これら平均値をそれぞれ粒界相のM濃度(α)とプレートレット相のM濃度(β)とし、これらの比(β/α)を算出する。
この実施形態の永久磁石は、例えば以下のようにして作製される。まず、所定量の元素を含む合金粉末を作製する。合金粉末は、例えばストリップキャスト法でフレーク状の合金薄帯を作製した後に粉砕して調製される。ストリップキャスト法では、合金溶湯を周速0.1〜20m/秒で回転する冷却ロールに傾注し、連続的に厚さ1mm以下に凝固させた薄帯を得ることが好ましい。冷却ロールの周速が0.1m/秒未満であると薄帯中に組成のばらつきが生じやすく、周速が20m/秒を超えると結晶粒が単磁区サイズ以下に微細化し、良好な磁気特性が得られない。冷却ロールの周速は0.3〜15m/秒の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5〜12m/秒の範囲である。
合金粉末はアーク溶解法や高周波溶解法による溶湯を鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して調製してもよい。合金粉末の他の調製方法としては、メカニカルアロイング法やメカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法、還元拡散法等が挙げられ、これらの方法で調製した合金粉末を用いてもよい。このようにして得られた合金粉末または粉砕前の合金に対し、必要に応じて熱処理を施して均質化してもよい。フレークやインゴットの粉砕はジェットミルやボールミル等を用いて実施される。粉砕は合金粉末の酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気中や有機溶媒中で行うことが好ましい。
次に、電磁石等の中に設置した金型内に合金粉末を充填し、磁場を印加しながら加圧成形することによって、結晶軸を配向させた圧粉体を作製する。この圧粉体を1100〜1300℃の温度で0.5〜15時間焼結して緻密な焼結体を得る。焼結温度が1100℃未満であると焼結体の密度が不十分となり、1300℃を超えるとSm等の希土類元素が蒸発して良好な磁気特性が得られない。焼結温度は1150〜1250℃の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは1180〜1230℃の範囲である。
また、焼結時間が0.5時間未満の場合には、焼結体の密度が不均一になるおそれがある。一方、焼結時間が15時間を超えると、Sm等の希土類元素が蒸発して良好な磁気特性が得られない。焼結時間は1〜10時間の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは1〜4時間の範囲である。圧粉体の焼結は酸化を防止するために、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
得られた焼結体に対して、溶体化処理および時効処理を施して結晶組織を制御する。溶体化処理は相分離組織の前駆体である1−7相を得るために、1110〜1200℃の範囲の温度で0.5〜24時間熱処理することが好ましい。1110℃未満の温度および1200℃を超える温度では、溶体化処理後の試料中の1−7相の割合が小さく、良好な磁気特性が得られない。また、1−7相内の各元素の濃度分布を十分に均一化することができないおそれがある。溶体化処理温度は1120〜1180℃の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1120℃〜1170℃の範囲である。
溶体化処理時間が0.5時間未満の場合には、構成相が不均一になりやすく、さらに1−7相内の各元素の濃度分布を十分に均一化することができないおそれがある。また、24時間を超えて溶体化処理を行うと、焼結体中のSm等の希土類元素が蒸発する等して、良好な磁気特性が得られないおそれがある。溶体化処理時間は1〜12時間の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは1〜8時間の範囲である。溶体化処理は酸化防止のために、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
次に、溶体化処理後の焼結体に時効処理を施す。時効処理は結晶組織を制御し、磁石の保磁力を高める処理である。さらに、粒界相のCu濃度の空間分布を均一化する上で、本時効処理(第2時効処理)の前に、それより低温で予備時効処理(第1時効処理)を行うことが好ましい。第1時効処理は、500〜900℃の温度で0.5〜10時間保持した後、0.1〜5℃/分の冷却速度で20〜450℃の温度まで徐冷することが好ましい。このような条件下で第1時効処理を実施することによって、粒界相のCu濃度の空間分布を均一化することができる。また、粒界相とプレートレット相のM濃度比(β/α)も良好な範囲に制御することができる。
第2時効処理は、700〜900℃の温度で10〜100時間保持した後、0.1〜5℃/分の冷却速度で20〜600℃の温度まで徐冷し、引き続いて室温まで冷却することが好ましい。このような条件下で第2時効処理を実施することによって、相分離組織を有するSm−Co系磁石の保磁力等を向上させることが可能となる。第2時効処理の処理温度T2は、第1時効処理の処理温度T1より高く設定する(T2>T1)することが好ましく、これにより粒界相のCu濃度の空間分布を均一化ことができる。時効処理は酸化防止のために、真空中やアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
第1時効処理温度が500℃未満または900℃を超える場合には、保磁力の低下や角型性の悪化を招くおそれがある。第1時効処理温度は600〜850℃であることがより好ましく、さらに好ましくは700〜850である。第1時効処理時間が0.5時間未満の場合には、保磁力の低下や角型性の悪化を招くおそれがある。一方、第1時効処理時間が10時間を超える場合には、生産性が低下してコストが増大する。第1時効処理時間は1〜5時間であることがより好ましい。
また、第1時効熱処理後の冷却速度が0.1℃/分未満の場合には、生産性が低下してコストが増大する。第1時効熱処理後の冷却速度が5℃/分を超えると、角型性の悪化を招くおそれがある。第1時効熱処理後の冷却速度は0.5〜4℃/分の範囲とすることより好ましく、さらに好ましくは1〜3℃/分の範囲である。
第2時効処理温度が700℃未満または900℃を超える場合には、均質なセル相とセル壁相との混合組織を得ることができず、永久磁石の磁気特性が低下するおそれがある。時効処理温度は750〜880℃であることがより好ましく、さらに好ましくは780〜850℃である。第2時効処理時間が10時間未満の場合には、1−7相からセル壁相の析出が十分に完了しないおそれがある。一方、保持時間が100時間を超える場合には、セル壁相の厚さが厚くなることでセル相の体積分率が低下したり、また結晶粒が粗大化することで、良好な磁石特性が得られないおそれがある。第2時効処理時間は10〜90時間であることがより好ましく、さらに好ましくは20〜80時間である。
また、第2時効熱処理後の冷却速度が0.1℃/分未満の場合には、生産性が低下してコストが増大する。第2時効熱処理後の冷却速度が5℃/分を超えると、均質なセル相とセル壁相との混合組織を得ることができず、永久磁石の磁気特性が低下するおそれがある。第2時効熱処理後の冷却速度は0.3〜4℃/分の範囲とすることより好ましく、さらに好ましくは0.5〜3℃/分の範囲である。
この実施形態の永久磁石は、各種モータや発電機に使用することができる。また、可変磁束モータや可変磁束発電機の固定磁石や可変磁石として使用することも可能である。この実施形態の永久磁石を用いることによって、各種のモータや発電機が構成される。この実施形態の永久磁石を可変磁束モータに適用する場合、可変磁束モータの構成やドライブシステムには、特開2008−29148号公報や特開2008−43172号公報に開示されている技術を適用することができる。
次に、実施形態のモータと発電機について、図面を参照して説明する。図3は実施形態による永久磁石モータを示している。図3に示す永久磁石モータ1において、ステータ(固定子)2内にはロータ(回転子)3が配置されている。ロータ3の鉄心4中には、実施形態の永久磁石5が配置されている。実施形態の永久磁石の特性等に基づいて、永久磁石モータ1の高効率化、小型化、低コスト化等を図ることができる。
図4は実施形態による可変磁束モータを示している。図4に示す可変磁束モータ11において、ステータ(固定子)12内にはロータ(回転子)13が配置されている。ロータ13の鉄心14中には、実施形態の永久磁石が固定磁石15および可変磁石16として配置されている。可変磁石16の磁束密度(磁束量)は可変することが可能とされている。可変磁石16はその磁化方向がQ軸方向と直交するため、Q軸電流の影響を受けず、D軸電流により磁化することができる。ロータ13には磁化巻線(図示せず)が設けられている。この磁化巻線に磁化回路から電流を流すことによって、その磁界が直接に可変磁石16に作用する構造となっている。
実施形態の永久磁石によれば、前述した製造方法の各種条件を変更することによって、例えば保磁力が500kA/mを超える固定磁石15と保磁力が500kA/m以下の可変磁石16とを得ることができる。なお、図4に示す可変磁束モータ11においては、固定磁石15および可変磁石16のいずれにも実施形態の永久磁石を用いることが可能であるが、いずれか一方の磁石に実施形態の永久磁石を用いてもよい。可変磁束モータ11は、大きなトルクを小さい装置サイズで出力可能であるため、モータの高出力・小型化が求められるハイブリッド車や電気自動車等のモータに好適である。
図5は実施形態による発電機を示している。図5に示す発電機21は、実施形態の永久磁石を用いたステータ(固定子)22を備えている。ステータ(固定子)22の内側に配置されたロータ(回転子)23は、発電機21の一端に設けられたタービン24とシャフト25を介して接続されている。タービン24は、例えば外部から供給される流体により回転する。なお、流体により回転するタービン24に代えて、自動車の回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト25を回転させることも可能である。ステータ22とロータ23には、各種公知の構成を採用することができる。
シャフト25はロータ23に対してタービン24とは反対側に配置された整流子(図示せず)と接触しており、ロータ23の回転により発生した起電力が発電機21の出力として相分離母線および主変圧器(図示せず)を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。発電機21は、通常の発電機および可変磁束発電機のいずれであってもよい。なお、ロータ23にはタービン2からの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機21はロータ23の帯電を放電させるためのブラシ26を備えている。
次に、実施例およびその評価結果について述べる。
(実施例1)
各原料を表1に示す組成となるように秤量した後、Arガス雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットを乳鉢粉砕により粗粉砕した後、ジェットミルで微粉砕して平均粒径が5μmの合金粉末を調製した。合金粉末を1.5Tの磁界中でプレス圧1tにてプレスして圧粉体とした後、Ar雰囲気中にて1200℃で3時間保持して焼結し、引き続いて1170℃で3時間の溶体化処理を実施して焼結体を作製した。
次いで、溶体化処理後の焼結体に第1時効処理として780℃×3時間の条件で熱処理を施した後、1℃/分の冷却速度で200℃まで徐冷した。引き続いて、第2時効処理として850℃×10時間の条件で熱処理を施した後、1℃/分の冷却速度で300℃まで徐冷し、さらに室温まで冷却した。第1および第2時効処理はいずれもAr雰囲気中で実施した。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。
(実施例2)
実施例1と同一組成となるように各原料を秤量した後、Arガス雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットを乳鉢粉砕により粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕して平均粒径が4μmの合金粉末を調製した。合金粉末を1.5Tの磁界中でプレス圧1tにてプレスして圧粉体とした後、Ar雰囲気中にて1190℃で3時間保持して焼結し、引き続いて1150℃で5時間の溶体化処理を実施して焼結体を作製した。
次いで、溶体化処理後の焼結体に第1時効処理として730℃×1.5時間の条件で熱処理を施した後、1.5℃/分の冷却速度で300℃まで徐冷した。引き続いて、第2時効処理として850℃×15時間の条件で熱処理を施した後、1.5℃/分の冷却速度で500℃まで徐冷し、さらに室温まで冷却した。第1および第2時効処理はいずれもAr雰囲気中で実施した。得られた焼結磁石を後述する特性評価に供した。
(実施例3〜6)
各原料を表1に示す組成となるように秤量した後、Arガス雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットを作製した。得られた合金インゴットをAr雰囲気中にて1170℃で1時間熱処理した後、合金インゴットを乳鉢粉砕により粗粉砕し、さらにボールミルで微粉砕して平均粒径が4μmの合金粉末を調製した。合金粉末を1.5Tの磁界中でプレス圧1tにてプレスして圧粉体とした。圧粉体をAr雰囲気中にて1190℃で3時間保持して焼結し、引き続いて1150℃で3時間の溶体化処理を実施して焼結体を作製した。
次いで、溶体化処理後の焼結体に第1時効処理として720℃×2時間の条件で熱処理を施した後、1.5℃/分の冷却速度で200℃まで徐冷した。引き続いて、第2時効処理として810℃×50時間の条件で熱処理を施した後、1℃/分の冷却速度で400℃まで徐冷し、さらに室温まで冷却した。第1および第2時効処理はいずれもAr雰囲気中で実施した。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。
(実施例7〜9)
各原料を表1に示す組成となるように秤量した後、Arガス雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットを石英製のノズルに装填し、高周波誘導加熱で溶融した後、溶湯を周速0.6m/秒で回転する冷却ロールに傾注し、連続的に凝固させて合金薄帯を作製した。この合金薄帯を粗粉砕した後、ジェットミルにより微粉砕して平均粒径が4μmの合金粉末を調製した。合金粉末を1.5Tの磁界中でプレス圧1tにてプレスして圧粉体とした。圧粉体をAr雰囲気中にて1200℃で1時間保持して焼結し、引き続いて1170℃で10時間の溶体化処理を実施して焼結体を作製した。
次いで、溶体化処理後の焼結体に第1時効処理として750℃×2時間の条件で熱処理を施した後、1.5℃/分の冷却速度で200℃まで徐冷した。引き続いて、第2時効処理として850℃×10時間の条件で熱処理を施した後、1℃/分の冷却速度で600℃まで徐冷し、さらに室温まで冷却した。第1および第2時効処理はいずれもAr雰囲気中で実施した。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。
(比較例1)
実施例1と同一組成の合金粉末を用いて、実施例1と同一条件下で圧粉体を作製した。この圧粉体をAr雰囲気中にて1220℃で3時間保持して焼結し、引き続いて1180℃で8時間の溶体化処理を実施して焼結体を作製した。次いで、溶体化処理後の焼結体に第1時効処理として780℃×10時間の条件で熱処理を施した後、7℃/分の冷却速度で300℃まで徐冷した。引き続いて、第2時効処理として850℃×5時間の条件で熱処理を施した後、0.5℃/分の冷却速度で400℃まで徐冷し、さらに室温まで冷却した。第1および第2時効処理はいずれもAr雰囲気中で実施した。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。
(比較例2)
実施例2と同一組成の合金粉末を用いて、実施例1と同一条件下で圧粉体を作製した。この圧粉体をAr雰囲気中にて1220℃で1時間保持して焼結し、引き続いて1210℃で8時間の溶体化処理を実施して焼結体を作製した。次いで、溶体化処理後の焼結体に第1時効処理として800℃×8時間の条件で熱処理を施した後、7℃/分の冷却速度で200℃まで徐冷した。引き続いて、第2時効処理として840℃×3時間の条件で熱処理を施した後、5℃/分の冷却速度で400℃まで徐冷し、さらに室温まで冷却した。第1および第2時効処理はいずれもAr雰囲気中で実施した。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。
(比較例3〜9)
実施例3〜9と同一組成の合金粉末を用いて、実施例3〜9と同一条件下で圧粉体を作製した。この圧粉体をAr雰囲気中にて1220℃で3時間保持して焼結し、引き続いて1210℃で2時間の溶体化処理を実施して焼結体を作製した。次いで、溶体化処理後の焼結体に第1時効処理として400℃×7時間の条件で熱処理を施した後、3℃/分の冷却速度で200℃まで徐冷した。引き続いて、第2時効処理として850℃×5時間の条件で熱処理を施した後、5℃/分の冷却速度で600℃まで徐冷し、さらに室温まで冷却した。第1および第2時効処理はいずれもAr雰囲気中で実施した。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。
Figure 2014209635
上述した実施例1〜9および比較例1〜9の焼結磁石の金属組織をTEMで観察した。その結果、いずれも2−17相(セル相)と粒界相(セル壁相)とプレートレット相とを有していることが確認された。また、粒界相は2−17相に対して1.2倍以上のCu濃度を有していることが確認された。前述した方法に基づいて粒界相におけるCu濃度の空間分布の標準偏差と粒界相とプレートレット相のM濃度比(β/α)を求めた。これらの結果を表2に示す。次に、各焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価し、残留磁化と保磁力と(BH)maxを測定した。さらに、測定した残留磁化と(BH)maxの実測値とから前述した方法に基づいて角型比を求めた。各例の角型比を表2に示す。
Figure 2014209635
表2から明らかなように、実施例1〜9の焼結磁石はいずれも角型比が高いことが分かる。これに対して、比較例1〜9の永久磁石は粒界相におけるCu濃度の空間分布の標準偏差が低いため、十分な角型比が得られていない。また、残留磁化は実施例1〜5および比較例1〜5では1.14〜1.20T、実施例6〜9および比較例6〜9では1.16〜1.23Tであった。保磁力は実施例1〜5が1100〜2000kA/m、実施例6〜9が800〜1500kA/m、比較例1〜5が800〜2000kA/m、比較例6〜9が500〜1500kA/mであった。比較例1〜9の永久磁石の(BH)max値は、残留磁化の大きさから期待される理論値より低いことが確認された。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…永久磁石モータ、2…ステータ、3…ロータ、4…鉄心、5…永久磁石、11…可変磁束モータ、12…ステータ、13…ロータ、14…鉄心、15…固定磁石、16…可変磁石、21…可変磁束発電機、22…ステータ、23…ロータ、24…タービン、25…シャフト、26…ブラシ。

Claims (7)

  1. 組成式:R(FepqCurCo1-p-q-rz
    (式中、RはSm、Ce、Nd、PrおよびYから選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi、ZrおよびHfから選ばれ、50原子%以上がZrである少なくとも1種の元素を示し、p、q、rおよびzはそれぞれ原子比で、0.3<p≦0.45、0.01≦q≦0.05、0.01≦r≦0.1、5.6≦z≦9を満足する数である)
    で表される組成を有する永久磁石であって、
    Th2Zn17型結晶相と粒界相とプレートレット相とを含む金属組織を備え、かつ角型比が87%以上である永久磁石。
  2. 請求項1記載の永久磁石において、
    前記粒界相におけるCu濃度の空間分布が標準偏差で5以下である永久磁石。
  3. 請求項1または請求項2記載の永久磁石において、
    前記粒界相は、前記Th2Zn17型結晶相のCu濃度の1.2倍以上のCu濃度を有する永久磁石。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の永久磁石において、
    前記粒界相の元素Mの濃度(α)に対する前記プレートレット相の元素M(β)の濃度の比(β/α)が1を超えて3未満の範囲である永久磁石。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の永久磁石において、
    前記組成式における元素Rは、SmとCe、Nd、PrおよびYから選ばれる少なくとも1種の元素とからなる永久磁石。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の永久磁石において、
    前記組成式における元素Rの50原子%以上がサマリウムである永久磁石。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の永久磁石において、
    前記組成式におけるCoの20原子%以下が、Ni、V、Cr、Mn、Al、Ga、Nb、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素Aで置換されている永久磁石。
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