JP2014208650A - 新規悪性中皮腫治療剤及び免疫賦活化剤 - Google Patents

新規悪性中皮腫治療剤及び免疫賦活化剤 Download PDF

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Abstract

【課題】REIC/Dkk-3を用いた中皮腫治療における抗腫瘍免疫賦活化剤及びREIC/Dkk-3を含む悪性中皮腫治療剤の提供。【解決手段】以下のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含む中皮腫治療における抗腫瘍免疫賦活化剤:(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促進活性を有するタンパク質をコードするDNA。【選択図】なし

Description

本発明は、悪性中皮腫治療剤及び免疫賦活化剤に関する。
胸部の肺、胃腸・肝臓などの腹部臓器、心臓は、それぞれ、胸膜・腹膜・心膜などの膜に包まれており、これらの膜の表面をおおっているものを中皮という。この中皮から発生した腫瘍を中皮腫という。中皮腫には、その発生部位によって、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫などがある。
中皮腫には、悪性中皮種と良性中皮種があり、悪性中皮腫は限局性のものとびまん性のものがある。胸膜および腹膜中皮腫はアスベスト曝露との関連性が証明されている。近年中皮腫は増加傾向にある。
従来の悪性中皮腫治療は手術療法、化学療法、放射線療法を併用するtrimodality治療
が中心であるが、依然として5年生存率が10%以下であり、悪性中皮腫は難治性固形癌である。
手術療法としては胸膜切除剥離術と胸膜肺全摘術があるが前者では根治性に問題があり、また後者には合併症が多い。化学療法としてはpemetrexed+CDDPの組み合わせをはじめとして多種多様なregimeが試みられているが、必ずしも劇的に効果のあるものではなく、また副作用も多い。放射線療法はあくまでも補助的役割を担うのみである。近年、サイトカイン治療としてIL-2やIFN-γ全身投与などが試みられているが、副作用が強く、また期待されていたほどの腫瘍縮小効果も得られていない。つまり、どの治療法も確実な効果が期待できるものではなく、更に強力な悪性中皮腫治療戦略の創出が急務となっている。
REIC/Dkk-3は、岡山大学でヒト正常線維芽細胞の不死化に伴って発現が低下する遺伝子として同定され、後にXenopusの頭部形成に関わるDkk (dickkopf) 遺伝子ファミリーの哺乳類メンバーと相同であることが明らかになったものである(特許文献1及び非特許文献1を参照)。ヒト前立腺癌由来株で行った検討ではREIC/Dkk-3アデノウイルス(以下Ad-REIC)を感染させると、何らかの細胞内ストレスを生じc-jun N末端Kinase(JNK)を活性化
してアポトーシスを誘導することが分かっている(非特許文献2を参照)。
国際公開第WO01/038523号パンフレット
Tsuji, T. et al., BiochemBiophys Res Commun 268, 20-4 (2000) Abarzua et al., Cancer Res. 65, 1617-22 (2005)
本発明は、REIC/Dkk-3を用いて悪性中皮腫を治療する方法及びREIC/Dkk-3を含む悪性中皮腫治療剤の提供を目的とする。本発明は、さらにREIC/Dkk-3を用いて免疫を賦活化する方法及びREIC/Dkk-3を含む免疫賦活化剤の提供を目的とする。
本発明者は、新規な画期的な悪性中皮腫治療法について検討を行った。すなわち、in vitroにおいて悪性中皮腫細胞(211H, H28, H2052)にREIC-Dkk-3遺伝子を含むアデノウイルスベクター(Ad-REIC)を感染させるとJNK依存性アポトーシスを起こし、そのJNK依存
性アポトーシスが細胞増殖などに深く関わっているinhibition of differentiation-1 (Id-1) の発現低下によるものであることが証明された。このId-1の関与は同所性悪性中皮
腫モデルマウスにおいても確認された。一方でin vivoにおいて腫瘍細胞への遺伝子導入
が100%ではないにもかかわらず劇的な抗腫瘍効果を呈することから、Ad-REIC胸腔内投与が何らかの免疫活性化作用を惹起することが考えられたため、正常細胞(線維芽細胞)を用いて解析したところ、in vitroでAd-REICが正常線維芽細胞へ感染するとその線維芽細
胞からIL-7(NK/Natural Killer 細胞の活性化に寄与するサイトカイン)が産生亢進することを見出した。また、そのIL-7産生亢進がJNK活性化→p38活性化→STAT-1活性化→IRF-1活性化によるものであることも明らかにした。本発明者が行ったウイルスベクター胸腔
内投与法は胸膜への遺伝子導入効率も非常に優れていることから、正常胸膜細胞においても同様の機序でIL-7の産生が亢進しNK細胞を中心とする抗腫瘍免疫が賦活化されたものと考えられる。
以上の知見より、悪性中皮腫に対するAd-REIC胸腔内投与法は、腫瘍細胞にアポトーシ
スを誘導するだけではなく、正常胸膜細胞にも抗腫瘍免疫賦活化能を誘導することにより、他の治療法にはない劇的な治療効果をもたらすことが判明した。
本発明の治療剤を用いた悪性中皮腫の治療は以下の特徴を有する。
1 REIC/Dkk-3 アデノウイルスを直接胸腔内投与する。
2 投与されたREIC/Dkk-3が癌細胞のアポトーシスを誘導する。
3 投与されたREIC/Dkk-3が正常胸膜細胞からのIL-7産生能を高めることでNK細胞を活性化し、抗腫瘍免疫を賦活化する。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 以下のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含む中皮腫治療
剤:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[2] ベクターがアデノウイルスベクターである[1]の中皮腫治療剤。
[3] 中皮腫が胸膜中皮腫である[1]又は[2]の中皮腫治療剤。
[4] 胸腔内投与用である[3]の中皮腫治療剤。
[5] 腫瘍細胞にアポトーシスを誘導し、正常細胞の抗腫瘍免疫を賦活化する、[1]〜[
4]のいずれかの中皮腫治療剤。
[6] 以下のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含む免疫賦活化
剤:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[7] ベクターがアデノウイルスベクターである[6]の免疫賦活化剤。
[8] 以下のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを中皮腫患者に投与することを含
む、中皮腫治療法:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[9] ベクターがアデノウイルスベクターである[8]の中皮腫治療法。
[10] 中皮腫が胸膜中皮腫である[9]の中皮腫治療剤。
[11] REIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを胸腔内に投与する、[10]の中皮腫
治療法。
[12] 腫瘍細胞にアポトーシスを誘導し、かつ正常細胞の抗腫瘍免疫を賦活化する[8]の中皮腫治療法。
[13] 以下のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを動物に投与することを含む、
動物の抗腫瘍免疫賦活化法:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[14] ベクターがアデノウイルスベクターである[13]の抗腫瘍免疫賦活化法。
[15] 中皮腫治療剤の製造における、以下のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクター
の使用:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[16] ベクターがアデノウイルスベクターである[15]の使用。
[17] 中皮腫が胸膜中皮腫である[15]又は[16]の使用。
[18] REIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターが胸腔内に投与される、[17]の使用

[19] 中皮腫治療剤が、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導し、かつ正常細胞の抗腫瘍免疫を賦活化する、[15]〜[18]のいずれかの使用。
[20] 動物における免疫賦活化剤の製造における、以下のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを
含むベクターの使用:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[21] ベクターがアデノウイルスベクターである[20]の使用。
[22] 中皮腫の治療に用いる、以下のREIC/Dkk-3 DNA:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[23] 中皮腫が胸膜中皮腫である[22]のREIC/Dkk-3 DNA。
[24] 胸腔内に投与される、[23]のREIC/Dkk-3 DNA。
[25] 腫瘍細胞にアポトーシスを誘導し、かつ正常細胞の抗腫瘍免疫を賦活化する、[
22]〜[24]のいずれかのREIC/Dkk-3 DNA。
[26] 中皮腫の治療に用いる、[22]のREIC/Dkk-3 DNAを含むベクター。
[27] ベクターがアデノウイルスベクターである[26]のREIC/Dkk-3 DNAを含むベクター。
[28] 中皮腫が胸膜中皮腫である[26]又は[27]のREIC/Dkk-3 DNAを含むベクター。
[29] 胸腔内に投与される、[28]のREIC/Dkk-3 DNAを含むベクター。
[30] 腫瘍細胞にアポトーシスを誘導し、かつ正常細胞の抗腫瘍免疫を賦活化する、[
26]〜[29]のいずれかのREIC/Dkk-3 DNAを含むベクター。
[31] 動物の免疫賦活化に用いる、以下のREIC/Dkk-3 DNA:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[32] 動物の免疫賦活化に用いる、[31]のREIC/Dkk-3 DNAを含むベクター。
[33] ベクターがアデノウイルスベクターである[32]のREIC/Dkk-3 DNAを含むベクター。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2008-196857号の明細書および/
または図面に記載される内容を包含する。
実施例に示すように、REIC/Dkk-3 DNAを含むアデノウイルスベクター(Ad-REIC)を同
所性悪性中皮腫モデルマウスにおいて(単回)胸腔内投与することにより有意に腫瘍容量が縮小しまた生存率の改善がみられる。同所性悪性中皮腫モデルマウスにおいて、Ad-REIC(単回)胸腔内投与により有意に腫瘍容量が縮小し、また生存率の改善がみられた。ま
た、明らかな副作用は認められなかった。このように、Ad-REIC胸腔内投与法は悪性中皮
腫に対する極めて有効な治療法である。また、実施例に示すようにJNK依存性アポトーシ
スが細胞増殖などに深く関わっているinhibition of differentiation-1(Id-1)の発現低
下によるものであることが示された。Id-1は多くの癌で強発現し細胞増殖や薬剤抵抗性に深く関与していることから、Ad-REICは幅広い癌種への抗腫瘍効果を発揮し得る。Ad-REICを胸腔内に投与することにより、正常胸膜におけるIL-7の産生亢進につながりNK細胞を中心とする抗腫瘍免疫を活性化し、Ad-REIC自体の腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導効果
と相まって非常に優れた治療効果を発揮する。
図1は、REIC/Dkk-3による211H細胞のアポトーシス誘導を示す図である。 図2は、REIC/Dkk-3による211H細胞でのpJNK、pc-jun、活性化カスペース3の発現促進を示す図である。 図3は、JNKインヒビターによる211H細胞でのREIC/Dkk-3のアポトーシス誘導の抑制を示す図である。 図4は、REIC/Dkk-3により211H細胞でのId-1の発現の抑制を示す図である。 図5は、Id-1の強制発現による211H細胞でのREIC/Dkk-3により誘導されるアポトーシスの減少を示す図である。 図6は、Id-1の強制発現による211H細胞でのREIC/Dkk-3により促進されるpJNK、pc-jun、活性化カスペース3の発現の抑制を示す図である。 図7は、REIC/Dkk-3によるH28細胞及びH2052細胞のアポトーシス誘導を示す図である。 図8は、Id-1の強制発現によるH28細胞及びH2052細胞でのREIC/Dkk-3により誘導されるアポトーシスの減少を示す図である。 図9aは、211H/Luc細胞を移植したヌードマウスにおけるREIC/Dkk-3の抗腫瘍効果を示す図である。 図9bは、211H/Luc細胞を移植したヌードマウスにおけるREIC/Dkk-3の抗腫瘍効果を示すIVIS画像を示す図である。 図9cは、211H/Luc細胞を移植したヌードマウスにREIC/Dkk-3を投与した場合のマウスの生存率を示す図である。 図10aは、腫瘍内に導入したREIC/Dkk-3の発現を示す図である。 図10bは、正常胸膜におけるREIC/Dkk-3の発現を示す図である。 図11は、正常細胞におけるREIC/Dkk-3の抗腫瘍免疫作用を示す図である。 図12は、正常細胞におけるREIC/Dkk-3のIL-7産生亢進作用を示す図である(サイトカインアレイ解析)。 図13は、正常細胞におけるREIC/Dkk-3のIL-7産生亢進作用を示す図である(ノーザンブロット解析)。 図14は、REIC/Dkk-3のIL-7産生亢進の機序を示す図である。 図15は、REIC/Dkk-3により惹起される抗悪性中皮腫作用の分子生物学的メカニズムを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の中皮腫治療剤は、REIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として
含む。
REIC/Dkk-3 DNAの塩基配列は、配列番号1に表される。また、REIC/Dkk-3 DNAがコードするREIC/Dkk-3タンパク質のアミノ酸配列は配列番号2に表される。
本発明の中皮腫治療剤に含まれるREIC/Dkk-3 DNAをコードするタンパク質は、配列番号2に表されるアミノ酸配列又は配列番号2に表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導活性及び細胞のインターロイキン7(IL-7)産生促進活性を有するタンパク質である。ここで、実質的に同一のアミノ酸配列としては、当該アミノ酸配列に対して1又は複数若しくは数個(1〜10個、好ましくは1〜5
個、さらに好ましくは1個若しくは2個)のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたア
ミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを用いて)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の同一性を有しているものが挙げられる。
REIC/Dkk-3 DNAをコードするタンパク質は、配列番号1又は配列番号2の配列情報に基づいて、化学合成により得ることができる。また、遺伝子工学的手法により組換えREIC/Dkk-3タンパク質として得ることができる。さらに、WO01/038523号公報の記載に従って得
ることも可能である。
本発明の中皮腫治療剤に含まれるREIC/Dkk-3 DNAは、配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、配列番号1に表される塩基配列と、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを用いて)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の同一性を有しているDNA、又は前記DNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1又は複数若しくは数個(1〜10個、
好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1個若しくは2個)のアミノ酸が置換、欠失及び/又
は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAなどのうち、腫瘍細胞に
対するアポトーシス誘導活性及び細胞のインターロイキン7(IL-7)産生促進活性を有するタンパクをコードするものである。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、「1XSSC、0.1% SDS、37℃」程度の条件であり、より厳しい条件としては「0.5XSSC、0.1% SDS、42℃」程度の条件であり、さらに厳しい条件としては「0.2XSSC、0.1% SDS
、65℃」程度の条件である。さらに、本発明の中皮腫治療剤に含まれるREIC/Dkk-3 DNAは、配列番号2に表されるタンパク質をコードするDNAである。
REIC/Dkk-3 DNAは、配列番号1の配列情報に基づいて、ヒト細胞、ヒト組織等から得ることができる。また、WO01/038523号公報の記載に従って得ることも可能である。
さらに、本発明はREIC/Dkk-3 DNAを含むベクターをも包含する。該ベクターを被験体に導入することにより、被験体体内でREIC/Dkk-3タンパク質が発現し中皮腫に対する治療効果を発揮し得る。
遺伝子治療における目的の遺伝子(DNA)の被験体への導入は公知の方法により行うことができる。遺伝子を被験体へ導入する方法として、ウイルスベクターを用いる方法及び非ウイルスベクターを用いる方法があり、種々の方法が公知である(別冊実験医学、遺伝子
治療の基礎技術、羊土社、1996;別冊実験医学、遺伝子導入&発現解析実験法、羊土社、1997;日本遺伝子治療学会編、遺伝子治療開発研究ハンドブック、エヌ・ティー・エス、1999)。
遺伝子導入のためのウイルスベクターとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス等のウイルスベクターを用いた方法が代表的なものである。無毒
化したレトロウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)
等のDNAウイルス又はRNAウイルスに目的とする遺伝子を導入し、細胞に組換えウイルスを感染させることによって、細胞内に遺伝子を導入することが可能である。
本発明に係る遺伝子をウイルスを用いた遺伝子治療に使用するとき、アデノウイルスベクターが好ましく用いられる。アデノウイルスベクターの特徴として、(1)多くの種類の細胞に遺伝子導入ができる、(2)増殖停止期の細胞に対しても効率よく遺伝子導入ができる、(3)遠心により濃縮が可能であり、高タイター(10〜11PFU/ml以上)のウイルスが得られる、(4)in vivoの組織細胞への直接の遺伝子導入に適している、といった
点が挙げられる。遺伝子治療用のアデノウイルスとしては、E1/E3領域を欠失させた第1
世代のアデノウイルスベクター(Miyake,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,93,1320,1996)から、E1/E3領域に加え、E2若しくはE4領域を欠失させた第2世代のアデノウイルスベクター(Lieber,A.,et al.,J.Virol.,70,8944,1996;Mizuguchi,H.&Kay,M.A.,Hum.Gene Ther.,10,2013,1999)、アデノウイルスゲノムをほぼ完全に欠失させた(GUTLESS)第3世代の
アデノウイルスベクター(Steinwaerder,D.S.,et al.,J.Virol.,73,9303,1999)が開発されているが、本発明に係る遺伝子を導入するには、特に限定されず、いずれのアデノウイルスベクターでも使用可能である。さらに、AAVの染色体に組み込み能を付与したアデノ-AAVハイブリッドベクター(Recchia,A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,96,2615,1999)や
、トランスポゾンの遺伝子を用いることにより染色体に組み込む能力を有したアデノウイルスベクターなどを利用すれば、長期的な遺伝子発現にも応用が可能である。また、アデノウイルスファイバーのH1ループに組織特異的な移行性を示すペプチド配列を挿入することにより、アデノウイルスベクターに組織特異性を付与することも可能である(Mizuguchi,H.&Hayakawa,T.,Nippon Rinsho,7,1544,2000)。
本発明において、REIC/Dkk-3 DNAを含むアデノウイルスベクターをAd-REICと呼ぶ。
また、上記ウイルスを用いることなく、プラスミドベクター等の遺伝子発現ベクターが組み込まれた組換え発現ベクターを用いて、目的遺伝子を細胞や組織に導入することができる。例えば、リポフェクション法、リン酸-カルシウム共沈法、DEAE-デキストラン法、微小ガラス管を用いたDNAの直接注入法などにより細胞内へ遺伝子を導入することができ
る。また、内包型リポソーム(internal liposome)による遺伝子導入法、静電気型リポソ
ーム(electorostatic type liposome)による遺伝子導入法、HVJ-リポソーム法、改良型HVJ-リポソーム法(HVJ-AVEリポソーム法)、HVJ-E(エンベロープ)ベクターを用いた方法、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクル銃で担体(金属粒子)とともにDNA分子を細胞
に移入する方法、naked-DNAの直接導入法、種々のポリマーによる導入法等によっても、
組換え発現ベクターを細胞内に取り込ませることが可能である。この場合に用いる発現ベクターとしては、生体内で目的遺伝子を発現させることのできるベクターであれば如何なる発現ベクターも用いることができるが、例えばpCAGGS(Gene 108, 193-200(1991))や
、pBK-CMV、pcDNA3、1、pZeoSV(インビトロゲン社、ストラタジーン社)、pVAX1などの発
現ベクターが挙げられる。
REIC/Dkk-3 DNAを含むベクターは、適宜遺伝子を転写するためのプロモーターやエンハンサー、ポリAシグナル、遺伝子が導入された細胞の標識及び/又は選別のためのマーカ
ー遺伝子等を含んでいてもよい。この際のプロモーターとしては、公知のプロモーターを用いることができる。
本発明のREIC/Dkk-3 DNAを含むベクターを被験体へ導入するには、遺伝子治療剤を直接体内に導入するin vivo法、及び、ヒトからある種の細胞を取り出して体外で遺伝子治療
剤を該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すex vivo法等を用いればよい(日経サイエンス、1994年4月号、20-45頁;月刊薬事、36(1), 23-48 (1994); 実験医学増刊、12(15)、(1994); 日本遺伝子治療学会編、遺伝子治療開発研究ハンドブック、エヌ・ティー・エス、1999)。
本発明において、中皮腫は悪性中皮腫をいい、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫を含む。この中でも悪性の胸膜中皮腫が好ましい。
本発明の中皮腫治療剤は、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するとともに、正常細胞のIL-7産生能を高め、NK細胞を活性化し、その結果抗腫瘍免疫を賦活化する。この結果、REIC/Dkk-3による腫瘍細胞へのアポトーシス誘導と正常細胞による抗腫瘍免疫という2つの作用により悪性中皮腫に対する相乗的治療効果を発揮する。本発明の中皮腫治療剤による治療は腫瘍細胞及び正常細胞を標的とする悪性中皮腫遺伝子治療法と言える。
本発明は、上記のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを含む細胞のIL-7産生促進
剤を含む。さらに、本発明は、上記のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを含む抗
腫瘍免疫賦活化剤を含む。
本発明の中皮腫治療剤、IL-7産生促進剤及び抗腫瘍免疫賦活化剤は、種々の形態で投与することができ、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、あるいは注射剤、点滴剤、座薬、スプレー剤、点眼剤、経鼻投与剤、貼付剤などによる非経口投与を挙げることができる。
本発明の中皮腫治療剤、IL-7産生促進剤及び抗腫瘍免疫賦活化剤は、局所投与することも可能であり、例えば胸膜中皮腫に対しては、胸腔内にカテーテルや注射器等により投与することによりその効果を発揮し得る。
好ましくは、胸腔内に1回又は複数回、胸腔内変全体に本剤が行き渡るように直接注入を行う。
本発明の中皮腫治療剤、IL-7産生促進剤及び抗腫瘍免疫賦活化剤は、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤、賦形剤を含む。たとえば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、ステアリン酸マグネシウムなどが使用される。注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが使用され、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、プロピレングリコールなどのポリアルコール、非イオン界面活性剤などと併用してもよい。油性液としては、ゴマ油、大豆油などが使用され、溶解補助剤としては安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。
その投与量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、数日又は数週間又は数ヶ月おきに1回あたり、DNAとして0.001mg〜100mgを投与すればよい。
また、REIC/Dkk-3 DNAを含むベクターを用いる場合、例えば107〜109pfu(plaque forming unitのベクターを投与すればよい。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 REIC/Dkk-3の抗腫瘍効果
本実施例においては、Hela細胞並びに悪性中皮腫細胞である211H細胞、H28細胞及びH2052細胞を用いた。これらの細胞は、ATCC(American Type Cell Culture Collection)より入手した。細胞は、10%透析ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミン、100ユニット/mlペニ
シリン、100μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI1640培地(GIBCO社)を用い37℃、5%CO2条件下で維持した。
REIC/Dkk-3 DNAを含むアデノウイルスベクター(Ad-REIC)は、以下の方法で作製した
。すなわち、全長REIC/Dkk-3 cDNAをコスミドベクターpAxCAwtに導入し、COS-TPC法(Takara Bio)によりアデノウイルスベクターにトランスファーした(Abarzua F et al. Cancer Res 2005; 65: 9617-9622)。LacZ遺伝子を含むアデノウイルスベクター(Ad-LacZ)
を対照として用いた。
ルシフェラーゼ遺伝子を安定に発現する211Hトランスフェクタント細胞(211H/Luc)をKashiwakura Y. et al., Circulation 1003; 107:1078-81の記載に従って、211H細胞にpIRES-piro3-luciferase plasmidを導入し作製した。
(1)REIC/Dkk-3による中皮腫細胞のJNK依存性のアポトーシス誘導
Tunnel[細胞死(アポトーシス)]アッセイは以下の方法で行った。すなわち、in vitroにおける細胞死誘導を調べるために、細胞を平底6ウェルプレートに播き24時間培養した。細胞をAd-LacZ及びAd-REICで種々のMOI(multiplicity of infection)で無血清培地中にて2時間処理した後、新鮮完全培地に交換した。48時間のインキュベーション後、in situ Cell Death Detection Fluorescein kit(Roche Diagnostics )を用いてTUNEL(terminal deoxynucleotidyltransferase-mediated UTP end labeling)アッセイを行いアポトーシスを評価した。具体的にはGFP陽性の核を持つ細胞をアポトーシス細胞とし、100個の細胞(DAPI陽性核)におけるアポトーシス陽性細胞の割合を解析した。細胞死が認められた細胞は、顕微鏡下で3〜5の異なる視野において計数した。
in vivoで細胞死が認められた細胞を検出するために、In situ Cell Detection Kit, Fluorescein(Roche)を用いてTUNELアッセイを行った。すなわち、腫瘍組織を切断し、OCT
化合物中に入れ、液体窒素中で急速凍結した。凍結切片(10μm)サンプルをメタノール
を用いて30分室温で固定し洗浄し、0.1%Triton X-100を含むPBSを浸透させ、TUNEL反応
混合液で染色した。
ウエスタンブロット分析は、抗ヒトREIC/Dkk-3抗体等図2に示すタンパク質に対する抗体を用いて行った。
211H細胞(ヒト悪性中皮腫細胞)にAd-LacZ又はAd-REIC(20MOI)を感染させ48時間後にア
ポトーシスを評価した。図1に結果を示す。GFP陽性の核を持つものがアポトーシス細胞
である。図1に示すように、Ad-REIC感染細胞にて明らかにアポトーシス細胞が多かった
図2に用いた細胞のウエスタンブロット分析の結果を示す。図2に示すように、Ad-REIC感染細胞で明らかにpJNK、pc-jun、 active caspase-3の発現が上昇していた。すなわち、Ad-REIC感染でJNK活性を介するアポトーシスが起こっていることが証明された。
さらに、アポトーシスアッセイにおいて、JNK inhibitorを添加して行った。結果を図
3に示す。JNK inhibitorでAd-REIC誘導性アポトーシスが有意に抑制された。従って、211H細胞におけるAd-REIC誘導性アポトーシスはJNK依存性であることが証明された。
(2)REIC/Dkk-3によるId-1の発現低下
in vitroでAd-REIC感染による種々のタンパク質の発現変化を調べるために以下の感染
実験を行った。まず細胞を平底6ウェルプレートに播き24時間培養し、細胞をAd-LacZ及
びAd-REICで20MOI(multiplicity of infection)で無血清培地中にて2時間処理した後
、新鮮完全培地に交換した。48時間のインキュベーション後、タンパク質を回収しウエスタンブロットを行った。
図4にinhibition of differentiation-1 (Id-1)のウエスタンブロット分析の結果を示す。図4に示すようにAd-REIC感染48時間後において211H細胞で明らかにId-1の発現が低
下していた。
次にId-1の再発現がAd-REIC誘導性アポトーシスに及ぼす影響を検討するために以下の
感染実験を行いアポトーシスを解析した。平底6ウェルプレートに播き24時間培養し、細胞をAd-LacZ、Ad-REIC、Ad-Id-1(Id-1 adenovirus)で以下のMOIの条件で無血清培地中に
て2時間処理した。
well1-Ad-REIC 20MOI, well2-Ad-REIC 20MOI+Ad-LacZ 10MOI, well3-Ad-REIC 20MOI+Ad-Id-1 10MOI。
新鮮完全培地に交換した後、48時間インキュベーションを行い、TUNELアッセイにてア
ポトーシスを評価した。図5に示すように、感染48時間後においてId-1の強制発現で明らかにAd-REIC誘導性アポトーシスが減少していた。このことはAd-REIC誘導性アポトーシスがId-1の減少に依存していることを証明している。
図6に、parental(何も処理していない211H細胞)及び図5で用いた細胞におけるウエスタンブロット分析の結果を示す。図6に示すように、Id-1強制発現によりAd-REIC誘導
性のpJNK、pc-jun、active caspase-3の発現上昇が抑制された。すなわち、Ad-REIC誘導
性アポトーシスの根本的メカニズムであるJNK活性化がId-1強制発現により阻害されたこ
とが証明された。つまり「Ad-REIC感染によるId-1の発現低下はAd-REIC誘導性アポトーシスを促進している」ことが考えられた。
(3)H28細胞及びH2052細胞を用いた検討
悪性中皮腫細胞(H28及びH2052)を用いて上記(1)及び(2)と同様にAd-REIC誘導
性アポトーシスを検討した。図7に示すように、H28及びH2052においても211Hと同様にAd-REICの感染によりId-1低下及びJNKのリン酸化(活性化)が認められた。さらに、図8に示すように、Id-1強制発現によりAd-REIC誘導性アポトーシスが抑制された。つまりAd-REIC感染→ Id-1低下→ JNKのリン酸化(活性化)→アポトーシスという機序は他の悪性中
皮腫細胞においても認められた。
(4)悪性中皮腫モデルマウスを用いた検討(その1)
100μL PBS中の2.0×106の211H/Lucを8週齢のBALB/Cヌードマウス(SLCより入手)の
右胸壁投与し、同所性悪性中皮腫モデルマウスを作製した。投与1週間後、4.0×108 plaque-forming unitの100μL PBS中のAd-REIC及びAd-lacZを細胞を投与した部位と同じ部位から胸腔内へ投与した。陰性コントロールとして同量のPBSを投与した。IVIS(in vivoルシフェラーゼイメージングシステム)システムにより5日ごとに投与後20日間にわたって発光を測定し、さらにマウスの死をモニターした。腫瘍のサイズ及び下部は別の処理群を用いて10日目に評価した。
図9aに、IVISによる211H/Luc細胞数(=腫瘍容量)の定量化(単位:Photon/sec)を示す。
治療前(Day 0)に比較しDay 10においてAd-REIC治療群で有意に腫瘍容量が低下した。図9bは、図9aに対応するIVIS画像を示す。
図9cは、生存率曲線を示す。図9cに示すように、対照群に比較しAd-REIC治療群で明らかに生存率が改善していた。以上の結果より、Ad-REIC胸腔内投与は悪性中皮腫に対して
劇的な治療効果があると考えられた。
(5)悪性中皮腫モデルマウスを用いた検討(その2)
上記(4)にて使用したAd-LacZ感染マウスを感染7日後に解剖し、腫瘍と正常組織とに分別した後LacZ染色にて腫瘍内及び正常胸膜における導入遺伝子LacZの発現を解析した。
LacZ染色の方法は以下の通り。固定液PBS pH8.0(1%ホルムアルデヒド 37% 2.7ml、0.2%グルタールアルデヒド 25% 0.8ml、2mM MgCl2 1M 0.2ml、5mM EGTA 200mM 2.5ml)で18時間37℃にて固定後、lacZ染色液(PBS50ml中5mMフェリシアン化カリウム 100mM 2.5ml
、5mMフェロシアン化カリウム 100mM 2.5ml、2mM MgCl2 1M 0.1ml、0.01% Sodium Deoxycholate 10% 0.05ml、0.02% NP40 10% 0.1ml、1mg/ml X-gal 50mg/ml 1ml)で室温遮光にて12時間インキュベーションしLacZの発現を解析した。
図10aに、Ad-LacZ群におけるLacZ染色による腫瘍内導入遺伝子発現解析の結果を示す。図10aに示すように、腫瘍内の約50%の細胞に遺伝子は導入されているが、残りの細胞に遺伝子導入は見られなかった。それにもかかわらず劇的な抗腫瘍効果が見られることから、Ad-REIC胸腔内投与には何らかの抗腫瘍免疫作用があると考えられた。
図10bに、Ad-LacZ群におけるLacZ染色による正常胸膜での導入遺伝子発現解析の結果を示す。正常臓側胸膜にしっかりとした遺伝子発現が認められた(黒矢印)。この所見より正常胸膜におけるREICの強発現が何らかの抗腫瘍免疫作用を惹起していることが強く示唆された。
実施例2 REIC/Dkk-3によるIL-7の発現促進
正常ヒト繊維芽細胞を用いてAd-REICの抗腫瘍免疫解析を行った。正常ヒト線維芽細胞
としてはOUMS24を用いた。これらは本発明者等が確立した(Bai L et al. Int J Cancer 1993; 53: 451-456)。
上記細胞をAd-REICを20MOIで48時間処理し、Ad-REICを感染させた。図11にAd-REICを正常線維芽細胞に感染させたときの免疫染色の結果を示す。強制発現されたREICが細胞内(小胞体)にあることが確認された。
Ad-REICを正常線維芽細胞に感染させたときの培養上清中のサイトカインをサイトカイ
ンアレイを用いて測定した。サイトカインアレイは、RayBio Human Cytokine Antibody Array VI & 6.1 (RayBiotech, Norcross, GA)を用いた。図12に結果を示す。図12に示すように、IL-7の濃度上昇が確認された(図中の四角内)。
さらに、Ad-REIC感染正常繊維芽細胞を用いたノーザンブロット解析を行った。トータ
ルRNAをグアニジン酸チオシアネート/フェノール・クロロホルム抽出法により単離した。
20μgのRNAを1.0%アガロースゲル中で分画し、ナイロン膜(Nytran plus nylon membrane, GE Healthcare Bio-Sciencs)に転写した。ヒトIL-7遺伝子断片をプローブとして用いた。
図13にAd-REIC感染正常線維芽細胞でのノーザンブロット解析の結果を示す。図13
中、exREICは添加リコンビナントREICタンパク質を示す。図13に示すように、Ad-REIC
感染正常線維芽細胞で明らかにIL-7 mRNAの発現が亢進していることが確認された。
さらに、図14に示すタンパク質に対する抗体を用いてウエスタンブロット解析を行い、REIC/Dkk-3によるIL-7発現亢進の機序を解析した。IL-7はIRF-1及びIRF-2により転写が活性化するが、Ad-REIC感染により線維芽細胞においてIRF-1発現が亢進していることが確認された(IRF-2は常時発現していた)。そのIRF-1発現亢進の機序としてJNK活性化→p38活性化→STAT-1活性化が証明された。
本実施例の結果より、Ad-REICを正常細胞に感染させるとIL-7産生が亢進することが確
認された。IL-7はNK (Natual Killer)細胞を活性化し抗腫瘍免疫を賦活化することが知られており、正常胸膜細胞においてもAd-REICの感染によりIL-7の産生が亢進しNK細胞を介
する抗腫瘍免疫を賦活化していると考えられる。
図15にAd-REIC胸腔投与により惹起される抗悪性中皮腫作用の分子生物学的メカニズ
ムを示す。図15に示すようにId-1発現抑制とp38活性化の2つの経路があると考えられ
る。前者は腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こし、後者は正常胸膜細胞からのIL-7産生亢進を引き起こし、その結果NK細胞活性化を誘導する。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

Claims (6)

  1. 以下のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含む、中皮腫治療に
    おける抗腫瘍免疫賦活化剤:
    (a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
    (b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
    進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  2. ベクターがアデノウイルスベクターである、請求項1記載の抗腫瘍免疫賦活化剤。
  3. 中皮腫が悪性胸膜中皮腫である、請求項1又は2に記載の抗腫瘍免疫賦活化剤。
  4. 胸腔内投与用である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗腫瘍免疫賦活化剤。
  5. REIC/Dkk-3が正常胸膜細胞で発現し、正常胸膜細胞におけるIL-7産生を促進し抗腫瘍免疫を賦活化する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗腫瘍免疫賦活化剤。
  6. 以下のREIC/Dkk-3 DNA又は該DNAを含むベクターを有効成分として含む中皮腫治療剤で
    あって、中皮腫が悪性胸膜中皮腫であって、胸腔内に投与され、腫瘍内の全ての細胞に遺伝子が導入されなくても、治療効果が得られる悪性中皮腫治療剤:
    (a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA;又は
    (b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、アポトーシス誘導活性及び細胞のIL-7産生促
    進活性を有するタンパク質をコードするDNA。
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