JP2014206497A - 分析システム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、イオンモビリティー装置において、高スループットに分析する技術を提供することにある。
【解決手段】分析システムは、質量分析結果情報とイオン移動度分離に関する分析条件とが関連付けられている第1の情報を格納する記憶部と、ある測定対象イオンの質量分析結果情報に対応する前記第1の情報の前記質量分析結果情報に関連付けられた前記分析条件を、前記測定対象イオンの第1の分析条件として決定する制御部と、を備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、イオンを移動度分離する技術および質量分析する技術に関する。
質量分析は、真空中で分子イオンの質量電荷比(m/z)により分離する方法であり、イオンを高感度かつ高精度に分離検出できる方法である。この質量分析の技術が、液体クロマトグラフ(liquid chromatograph、以下「LC」)やガスクロマトグラフ(gas chromatograph、以下「GC」)の検出器として一般的に用いられ、液体クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography/mass spectrometry、以下「LC/MS」)やガスクロマトグラフィー質量分析(gas chromatography/mass spectrometry、以下「GC/MS」)と呼ばれる分析手法がよく用いられている。近年では、測定対象のイオンを分解し、分解されたイオンを計測するタンデム質量分析法と、飛行時間型質量分析計やフーリエ変換型質量分析計などの高分解能質量分析計の開発が進展し、バイオや医用分野を中心に広く普及が進みつつある。
一方で、イオンモビリティー(ion mobility spectrometry、以下「IMS」)は、大気圧下の気相中においてイオンを分離する方法である。イオンモビリティーは、イオン毎にイオンの構造が異なるために気相中でのイオンの移動速度が異なることを利用してイオンを分離している。そのため、イオンモビリティーでは、m/zが同じ異種のイオンであっても原理的に分離が可能となる。このようにイオンモビリティーは、質量分析と異なる分離方法であることから、質量分析とイオンモビリティーを組み合わせた計測方法も報告されてきている。イオンモビリティーの1つの方法として、非対称電界印加型イオン移動度分離装置(field asymmetric waveform ion mobility spectrometry、以下「FAIMS」)がある。
特開2005−513414号公報
イオン移動度によりイオンを分離検出するイオン移動度分離装置において、イオン源で発生したイオンを高スループットに検出する技術は重要である。特許文献1には、非対称電界印加型イオン移動度分離装置(FAIMS)において、2つ以上の異なる電界状態における検出結果から、イオン種を同定する方法が記載されている。
特許文献1の手法では、1種類の測定対象イオンに対して、例えば分離電圧と補償電圧の2つのパラメータを複数点に設定して測定する。そのため、1種類のイオンに対して複数条件で測定するため多くの測定時間を要する。結果として、LC/MS分析のように、測定対象イオンが次々とFAIMSに移動してくる場合には、ある1つのイオン種に時間を取られている間は、別のイオン種の測定ができなくなり、測定のスループットが低下する。この手法では、細かい電圧ピッチで細かく測定するまたは広範囲の電圧を幅広く測定する(すなわち、広範囲の分析条件で測定を行う)ことで、より精密な測定が可能となるが、さらに多くの測定時間が必要となる問題がある。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、イオンモビリティー装置において分析処理をより効率的に行うための分析条件の決定技術を提供する。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、質量分析結果情報とイオン移動度分離に関する分析条件とが関連付けられている第1の情報を格納する記憶部と、ある測定対象イオンの質量分析結果情報に対応する前記第1の情報の前記質量分析結果情報に関連付けられた前記分析条件を、前記測定対象イオンの第1の分析条件として決定する制御部と、を備える分析システムが提供される。
本発明によれば、イオンモビリティー装置において、測定対象イオンに適した分析条件を短い時間で決定でき、分析処理をより効率的に行うことができる。
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
FAIMSの一般的な構成を示す図である。 FAIMSにおける分離電圧の波形を示す図である。 質量分析システムの構成を説明する図である。 LC/MS分析で得られる質量分析データを示す図である。 第1実施例における質量分析システムの測定フローの一例である。 図4のステップ402〜406を説明する図である。 質量スペクトルの同位体を説明する図である。 第1実施例における質量分析システムの測定フローの別の例である。 図7のステップ703〜706を説明する図である。 m/zの補正方法を説明する図である。 LCの保持時間の補正方法を説明する図である。 送液溶媒の混合比率とクロマトグラムとの関係を説明する図である。 第1実施例における質量分析システムの測定フローの別の例である。 図12におけるステップ1208の終了条件を説明する図である。 第1実施例における質量分析システムの測定フローの別の例である。 第2実施例における1回目の分析でのクロマトグラムを説明する図である。 第2実施例における2回目以降の分析でのクロマトグラムを説明する図である。 1回目のLC/MS分析におけるFAIMSの分析条件を作成するためのフローである。 2回目以降のLC/MS分析のフローである。 図16Aのステップ1606における分離電圧の決定方法を説明する図である。 図16Aのステップ1607における補償電圧の決定方法を説明する図である。 第2実施例におけるクロマトグラムを説明する図である。 第3実施例におけるクロマトグラムを説明する図である。 第2実施例における2回目以降のLC/MS分析のフローの別の例である。 第3実施例における質量分析システムの測定フローの一例である。 分離電圧の決定方法の別の例を説明する図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
図1Aに、FAIMSの一般的な構成を示す。FAIMSは、金属からなる2枚の平板電極である第1の電極1及び第2の電極2を備える。また、FAIMSは、交流電圧電源3と、直流電圧電源4とを備える。
FAIMSでは、交流電圧電源3を用いて高周波電圧を重ね合わせた分離電圧(または分散電圧、またはseparation voltage:SV)を第1の電極1に印加することにより、第1の電極1と第2の電極2との間に高周波電場が印加される。図1Bに示すように、分離電圧(SV)は、高電圧(プラス電圧)と低電圧(マイナス電圧)を一定期間ずつ繰り返し印加し、時間平均すれば0になるように、印加される。また、直流電圧電源4により生成される定電圧である補償電圧(または補正電圧、またはcompensation voltage:CV)を第2の電極2に印加することで、イオン5のイオン軌道6が軌道修正されて、特定のイオンのみを透過させることが可能となる。
[第1実施例]
第1実施例について説明する。本実施例では、データベースを用いて非対称電界印加型イオン移動度分離装置(以下、FAIMS)の分離分析条件を決定する方法と、その条件下での分析方法について開示する。
図2は、FAIMSと質量分析計を用いた質量分析システムの構成を説明する図である。
質量分析システム10は、前処理部11と、イオン化部12と、イオンモビリティー分離部(FAIMS)13と、質量分析部14と、イオン検出部15と、データ処理部16と、表示部17と、制御部18と、データベース19と、入力部20とを備える。なお、イオンモビリティー分離部13は、非対称電界印加型イオン移動度分離装置(FAIMS)の例で説明するが、その他のイオンモビリティーであってもよい。
分析の流れを説明すると、まず分析対象の試料21は、前処理部11において前処理される。ここで、前処理とは、例えば、除タンパク処理、脱塩、遠心分離、酵素消化処理、固相抽出処理、LCを用いた液体分離デバイス(以下LC)、及びGCによる気体分離デバイスなどの組み合わせからなる処理のことである。
前処理された試料21は、イオン化部12においてイオン化される。その後、試料イオンは、イオンモビリティー分離部(本実施例ではFAIMS)13において分離されて通過する。その後、試料イオンは、質量分析部14においてイオンの質量電荷比(m/z)に応じて質量分離される。ここで、mはイオンの質量、zはイオンの電荷量または帯電価数である。
質量分離されたイオンは、イオン検出部15で検出され、データ処理部16でデータ処理される。データ処理部16での処理結果である質量分析スペクトルなどの質量分析データが、表示部17に表示される。また、入力部20を用いて、様々なパラメータ、例えば前処理部11、イオンモビリティー分離部13、及び質量分析部14での分析条件(電圧、ガス流量、時間など)の入力が可能である。
制御部18は、質量分析システム10の各構成要素を制御するものであり、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置によって構成されている。制御部18は、中央演算処理装置と、補助記憶装置と、主記憶装置と、上述した表示部17及び入力部20とを備えている。例えば、中央演算処理装置は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ(又は演算部ともいう)で構成されている。例えば、補助記憶装置はハードディスクであり、主記憶装置はメモリである。表示部17は、ディスプレイなどであり、入力部20は、キーボード、ポインティングデバイス(マウスなど)などである。
データベース19は、上述した記憶装置に格納されている。データベース19は、質量分析結果情報とイオン移動度分離に関する分析条件とが関連付けられたテーブル(第1の情報)を格納している。以下の例において、データベース19における質量分析結果情報は、質量電荷比(m/z)及びイオンの電荷量(z)である。また、イオン移動度分離に関する分析条件は、分離電圧(SV)及び補償電圧(CV)である。なお、これらの情報は、以下では、データベースのテーブル構造として表現されているが、必ずしもテーブルによるデータ構造で表現されていなくても良い。例えば、リスト、キュー等のデータ構造やそれ以外で表現されていても良い。そのため、データ構造に依存しないことを示すために「テーブル」、「リスト」、「キュー」等について単に「情報」と呼ぶことがある。
ある時間における質量分析測定では、横軸がm/zであり、縦軸が信号強度からなる質量スペクトルが得られる。LC/MS分析の場合では、さらにLCの保持時間の軸がプラスされて、図3のように、各LCの保持時間毎に質量スペクトルが得られる。
図3では、イオンクロマトグラム(LCの保持時間とイオンの信号強度の平面)上にピークがある所にのみ、質量スペクトル(横軸がm/z、縦軸が信号強度)を記載しているが、常に質量スペクトルは取得されており、ピークが無いところでも質量スペクトルのデータは取得されている。図3は1回のLC/MS分析であり、1回試料21が注入されて、LCの送液ポンプによる試料送液が開始するタイミングがstart(開始)であり、LCの送液ポンプによる試料送液が終了するタイミングがend(終了)である。
前処理部11にあるLCでは、試料21が吸着可能なカラム内を通過することで、試料(分子種)を時間分離することが可能となる。試料21は化学的性質の違いにより、LCに用いられるカラムに対する保持力が異なるため、時間分離が可能となる。例えば、2種類の分子種であるが、たまたま同じm/zのイオンが存在した場合に、その2つの分子種はまとめて一緒に質量分析される。したがって、LCを用いなければ、それぞれの分子種を分離して計測することはできず、よって、分子種のそれぞれを定量することは困難である。
しかしながら、LCを用いることにより、m/zが同じ2つの分子種のイオンであっても、化学的性質が異なることで保持時間が異なるため、時間分離され別々に測定できる。「LCの保持時間」とは、LCのカラムから試料が溶出される時間のことであり、すなわちLCのカラムを通過して試料が質量分析される時間のことである(図3参照)。図3における、LC保持時間とイオン信号強度の2軸からなる平面のクロマトグラムには、全イオンの信号強度がプロットされている。先述のように試料21の化学的性質によって保持時間は異なるため、保持時間が異なれば分子種は異なる。このためクロマトグラム上には、複数のピークが存在するが、ピーク毎に別のイオン種である。
図4は、第1実施例における質量分析システムの測定フローの一例である。図4の測定フローは、主にイオンモビリティー分離部13と質量分析部14とイオン検出部15の部分におけるフローである。また、図5は、図4のフローを説明する図である。以下、図4及び図5を用いて本実施例の分析のフローを説明する。なお、以下の処理の主体は、制御部18である。制御部18は、イオンモビリティー分離部13と質量分析部14とイオン検出部15を制御しながら、以下の処理を実行する。
先述のように、フローチャートのstart(開始)は、試料がインジェクションされて、LCの送液ポンプによる試料送液が開始されるタイミングであり、end(終了)はLCの送液ポンプによる試料送液が終了するタイミングである(図3参照)。
ステップ401において、イオンモビリティー分離部13であるFAIMSの分析条件として、分離電圧と補償電圧を0Vにセットする。これにより、様々な質量電荷比(m/z)のイオンがFAIMSを通過することが可能になる。そのため、後段の質量分析部14において広範囲のm/zの質量スペクトルを取得することが可能となる。
次に、ステップ402において、本測定を行う測定対象イオンを探索するため、広範囲のm/zの質量スペクトルを取得する。この質量スペクトルは先述のように、LCの保持時間毎に得られ、1回のLC/MS分析では、図3に示すように、多くの質量スペクトルを得る。図5(A)は、ステップ402において質量スペクトルを取得した例である。
次に、ステップ403において、ステップ402で取得した質量スペクトルデータのピークを判定し、ピークリスト一覧を作成する。分析中にごく短時間(100ms以内)にリアルタイムに観測されたピークの抽出を行い、ピークリストを作成することで、リアルタイムに分析を進めることができる。本例では、図5(B)のように、質量スペクトルからピーク抽出し、質量電荷比(m/z)、電荷量(z)、イオンの信号強度(I)からなるピークリストを作成する。
ピーク抽出の条件として、イオンの信号強度があらかじめ決められた閾値以上である場合にピークとして抽出してもよい。また、入力部20を介してユーザによって設定された閾値以上の信号強度のみをピークとして抽出してもよい。これにより、ノイズピークなど小さい信号強度のピークを排除することが可能である。または別の方法としては、イオンの信号強度とノイズの比(信号対雑音比:S/N)がある閾値以上の場合にピークとして抽出することも可能である。さらに、ピークの抽出方法は、その他の既知の方法でもかまわない。
次に、ステップ404において、作成したピークリストから、測定対象イオンを決定する。決定方法の1つの例は、イオンの信号強度(I)が最大のイオンを選ぶ方法である。すなわち、ピークリストにおけるイオンの信号強度(I)の欄の中で、最大値であるイオンが測定対象イオンとして決定される。図5(B)の例では、信号強度Lが最大値であったため、ピークリストの中で(J,K,L)の情報を持つイオンが測定対象イオンとなる。なお、測定対象イオンを決定した後は、イオンの信号強度の情報(L)は必要ないために、この時点で測定対象イオンの情報から削除することが可能である。すなわち測定対象イオンの情報は、(J,K,L)→(J,K)となる。
次に、ステップ405において、ステップ404で決定された1つの測定対象イオン(J,K)が、データベース19に登録されているかを照合及び判定する。すなわち、測定対象イオン(J,K)が、データベース19の格納値と一致しているかを確認する。データベース19には、質量電荷比(m/z)、電荷量(z)、FAIMSの分離電圧(SV)、補償電圧(CV)のセットが格納されている。この4つのパラメータのうち、(m/z,z)のセットの列の中に、決定された測定対象イオンの情報である(J,K)というセットが格納されているかを判定する。
図5Cの例では、データベース19の格納情報の中に(J,K)という一致する情報があるため、ステップ405からステップ406へ進む(ステップ405のYes)。なお、この測定対象イオン(J,K)と、データベース19の格納値との差は、あらかじめ決められた許容範囲内であれば一致とする判定してもよい。一方、一致する情報がデータベース19に無かった場合は、ステップ402に戻り(ステップ405のNo)、再度、ステップ403、404、405を実施する。
次に、ステップ406において、データベース19からFAIMSの分析条件を読み出す。図5Cの例では、(J,K)に関連付けられている分離電圧(SV)と補償電圧(CV)のセットである(X,Y)が読み出される。そして、FAIMSの第1の電極1及び第2の電極2に分離電圧(X)と補償電圧(Y)を印加する。分離電圧と補償電圧を同じ電極に印加することも可能である。また、第1の電極1に補償電圧、第2の電極2に分離電圧を印加することも可能である。補償電圧の正負は逆転する場合もあるが、同様のイオン透過が実現可能である。
次に、ステップ407において、本測定を行う。FAIMSの第1の電極1及び第2の電極2に電圧が印加された状態、つまりFAIMSでは測定対象イオンは透過するが、その他の移動度をもつイオンは透過しない条件に設定した状態で、測定対象イオンの質量分析測定を行う。
本測定における質量分析測定は、以下のような既知の分析/測定方法が用いられる。m/zをスキャン(走査)することにより質量スペクトルを取得する質量分析、測定対象イオンのみをモニターするシングルイオンモニタリング(single ion monitoring:SIM)、測定対象イオンを分解(解離)してフラグメントイオンの質量スペクトルを取得するというタンデム質量分析(MS/MS)、測定対象イオンを分解(解離)してある特定のフラグメントイオンのみをモニターするマルチリアクションモニタリング(multi reaction monitoring:MRM)、などさまざまな質量分析が可能である。本測定は、測定対象イオン1つに対して、あらかじめユーザが指定した時間(数ミリ秒〜数10秒)の間実施される。ステップ407が終了した後はステップ408へ進む。
ステップ408では、フロー終了を判定する。保持時間(測定時間)が、あらかじめ決められた設定値に達した場合、分析フローは終了となる。一方、保持時間が設定値に達していなければ、再度ステップ401へ戻り、分析フローが繰り返し実行される。本例では、設定値とは、LCでの試料分離が終了して試料の測定が終了する時間である。
図6は、イオン検出後に表示される質量分析データである質量スペクトルと、ある1つのイオン種のピークの拡大図を示す。拡大図に示すように、ピークPは、等間隔に並んだ複数本のピーク(Q,R,S)からなることがある。これらは同位体ピークと呼ばれる。H(D)や13Cなどの同位体が含まれているイオンは、図6のようにm/zで大きい側に同位体ピークとして現れる。ステップ403のピークリスト作成時には、これら3つのピークは1つのイオン種として扱うことが望ましい。つまり、リストには、これら3つのイオンが1行で表示されることになる。m/zは、一番左のピークQまたは最大信号強度となるピークの値を用いる。また、イオンの信号強度は、一番左のピークQまたは最大強度となるピークのみの信号強度を用いるか、または3つの信号強度の和を用いるか、どちらかを信号強度として用いる。
続いて、質量スペクトルのピークから、イオンの電荷量(価数)を判定する方法を説明する。この価数判定には同位体ピークを用いる。すなわち、隣り合うピークのピーク間隔(U,V)から数式1を用いて算出される。ピーク間隔が1であれば、1価であり、0.5であれば、2価となる。
Figure 2014206497
なお、イオン化部12において実施されるイオン化方法は、例えばエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization: ESI)、大気圧化学イオン化(atmospheric pressure chemical ionization: APCI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(matrix-assisted laser desorption ionization: MALDI)、脱離エレクトロスプレー(desorption electrospray ionization: DESI)、大気圧光イオン化(atmospheric pressure photoionization: APPI)など質量分析計で通常用いられるイオン化法である。
また、本実施例では、イオンモビリティー分離部13と質量分析部14とを組み合わせた構成が用いられる。イオンモビリティー分離部13は、FAIMS、またはFAIMSと同様な分離が可能な既知のイオンモビリティー分離部であればよい。また、このイオンモビリティーは大気圧下または真空中の場合もある。
一方、質量分析部14は、質量分析計で構成され、通常は真空中で検出が行われる。質量分析計は、以下のような公知の分析計であればよく、例えば、3次元イオントラップやリニアイオントラップなどのイオントラップ質量分析計(ion trap mass spectrometer)、四重極フィルター質量分析計(quadrupole mass spectrometer:Q filter)、3連四重極質量分析計(triple quarupole mass spectrometer)、飛行時間型質量分析計(time of flight mass spectrometer:TOF/MS)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(fourier transform ion cyclotron resonance mass spectrometer:FTICR)、オービトラップ質量分析計(orbitrap mass spectrometer)、磁場型質量分析計(magnetic sector mass spectrometer)などである。また、上記に示した質量分析計以外の既知の質量分析計でもかまわない。
ステップ407の本測定の詳細について説明する。上述した質量分析計を用いて、測定対象イオンをモニターする。質量分析では、FAIMSで透過させるイオンのm/zを固定し、質量分析計で透過させるイオンのm/zを走査(スキャン)することで、質量スペクトルを取得することができる。特に上述した全ての質量分析計では、m/zを走査などすることにより、質量スペクトルを取得することが可能である。あるいは、FAIMSで透過させるイオンのm/zを固定し、さらに質量分析計でも透過させるm/zを固定することで、ある特定のイオンのみを計測することが可能である。この結果としてS/Nの良い測定が可能となる。例えば、四重極フィルターや三連四重極質量分析計を用いたシングルイオンモニタリング(single ion monitoring:SIM)分析などがその例である。
一方、測定対象イオンを分解して、フラグメントイオンをモニターするタンデム質量分析(MS/MS)の場合には、イオン解離を行うためのデバイスが必要となる。タンデム質量分析をするメリットは、たまたまイオンのm/zが同じであったとしても、イオンの構造の違いからイオン種の見分けがつくということである。すなわち、元のイオンを分解、断片化すれば、そのパターンは分子イオンの構造により異なるため、元のイオンが区別できる。このタンデム質量分析により、似たようなm/zのイオンを分離でき、またS/Nの向上も可能となる。イオントラップであれば、イオントラップ内で解離、分析が可能となる。つまり、イオンをトラップした後に、解離及び質量スペクトル取得を実施することが可能である。
また、三連四重極質量分析計であれば、FAIMSとQ filter(Q1)によって、あるm/zのイオンを透過させ、その後、コリジョンセル(Q2)でイオン解離し、Qfilter(Q3)で透過m/zを固定して透過させる、あるいは、m/zをスキャンする。これにより、マルチリアクションモニタリングまたはプロダクトスキャンが可能となる。また別の解離方法として、FAIMSと質量分析計の間に配置した差動排気部でイオン解離することも可能である。数10V程度のエネルギーをイオンに与えて、イオンを差動排気部に突入させることにより、イオン解離が可能となる。
イオン解離方法は、衝突誘起解離(collision induced dissociation:CID)、衝突活性化解離(collision activated dissociation:CAD)、赤外多光子解離(infrared multiphoton dissociation:IRMPD)、電子捕獲解離(electron capture dissociation:ECD)、電子移動解離(electron transfer dissociation:ETD)など既知のイオン解離方法で実施可能である。
ステップ404では、次に述べる方法で測定対象イオンを決定することも可能である。上述した例では、1つのピークを選ぶ方法であったが、信号強度順に並べて、上位何個かのイオンを複数個選択する方法もある。この方法により、ステップ402の質量スペクトル取得の頻度を減らし、本測定(ステップ407)の時間を長く確保することができる。また、すでに所定の秒数以上測定したイオンに関しては、測定対象イオンの候補から除外する方法も有効である。この方法により、同じイオンを重複して測定することを防ぎ、別のイオンの測定を行うことで、効率の良い測定が可能となる。
さらに、あらかじめユーザが入力部20より指定したm/zまたは電荷量(z)をデータベース19に登録しておき、その指定したイオンを優先的に測定対象イオンとして選択するという方法もある。測定対象イオンのm/zがあらかじめ分かっている場合には、それをターゲットとして測定すればよいため、有効な方法である。
また、あらかじめ指定されたm/zまたは電荷量(z)のイオンを測定対象イオンから除外する方法もある。この方法により、常に質量スペクトル上に出続けているノイズピークがあった場合にそのノイズを排除することが可能となる。これらの方法により、より効率よく、すなわち単位時間当たりに多くのイオンの測定が可能となり、高スループットの分析を実現する。
なお、本実施例では、質量電荷比(m/z)と電荷量(z)を用いているが、m/zとzから質量mを算出することができるため、質量mと電荷量zとの組み合わせを用いる方法でも構わない。
以上、本実施例によれば、制御部18の記憶装置には、質量分析結果情報(m/z,z)とイオン移動度分離に関する分析条件(分離電圧及び補償電圧)とが関連付けられているテーブルが格納されており、測定対象イオンの質量分析結果情報(m/z,z)に対応する分析条件をテーブルから読み出し、測定対象イオンの分析条件として決定する。この構成によれば、測定対象イオンに適した分析条件を短い時間で決定でき、分析処理をより効率的に行うことができる。また、データベース19には、測定対象イオンに対して適した分析条件があらかじめ格納されているため、その分析条件によって高精度の分析が可能である。
特に、本実施例では、測定対象イオンの質量分析結果情報から対応する分析条件を決定できるため、従来のように細かい電圧ピッチで細かく測定する、または広範囲の電圧を幅広く測定する必要がなく、より短い測定時間で測定対象イオンの分析を行うことが可能となる。したがって、高スループットの分析処理を実現できる。
次に、第1実施例の第2の例について説明する。図5の例では、質量電荷比(m/z)と電荷量(z)の2つを用いて、データベース19を探索する方法であった。本実施例では、さらにLCの保持時間(溶出時間)をデータベース19との照合に利用する方法を説明する。
m/zが同じ2種類の異なる分子種のイオンがあった場合に、分子の構造が違うためにイオン移動度も異なり、したがって、FAIMSの分析条件が異なることが十分にあり得る。上述の例では、その2種類のイオンが同じ分析条件で測定されることになる。一方、本実施例では、m/zが同じ2種類の分子種をLCの保持時間を用いて分離する。これは、化学的性質が異なることで、LCの保持時間が異なることを利用する。そのため、FAIMSの分析条件を探索する条件としてLCの保持時間を追加することにより、m/zが同じイオンであっても、それぞれのイオンにとって最適なFAIMSの分析条件で動作可能となる。
図7が、本実施例の第2の例における分析のフローを示す図である。分析の流れは、図4のフローと同様である。また、図8は、図7のフローを説明する図である。以下、図7及び図8を用いて例の分析のフローを説明し、特に、図4と異なる部分について説明する。
本例の特徴として、ステップ703では、質量スペクトル上のイオンのピークを判定してピークリスト作成する際に、LC保持時間(T)の情報が加わる。図8Aに示すように、LCの保持時間、m/z、及びzの3つの情報からなるピークリストを作成する。なお、LCの保持時間毎に質量スペクトルは取得されるため、ピークリストはLCの保持時間毎に作成される。
ステップ704では、上述のように、1つの例としては、信号強度の最も強いものを、測定対象イオンとして選択する。測定対象イオンの情報としてLC保持時間が加わるので、測定対象イオンの情報は、LC保持時間、m/z、z、及び信号強度であり、すわなち(T,J,K,L)となる。以後、イオンの信号強度の情報(L)は以後必要ないのでこの時点で削除して、測定対象イオンの情報は、(LC保持時間,m/z,z)すなわち(T,J,K)となる。
ステップ705では、質量スペクトルから得た測定対象イオンの値(T,J,K)がデータベース19に登録されているかを照合及び判定する。なお、測定対象イオン(T,J,K)と、データベース19の格納値との差は、あらかじめ決められた許容範囲内であれば一致と判定する。LCの保持時間の許容値は、数msecから数秒程度、m/zの許容値は0.001Da〜1Da程度であればよく、各質量分析装置の各分析方法に適した許容値とすることが望ましい。
本例によれば、制御部18の記憶装置には、質量分析結果情報(LCの保持時間,m/z,z)とイオン移動度分離に関する分析条件(分離電圧及び補償電圧)とが関連付けられているテーブルが格納されており、測定対象イオンの質量分析結果情報(LCの保持時間,m/z,z)に対応する分析条件をテーブルから読み出し、測定対象イオンの分析条件として決定する。この構成によれば、LCの保持時間を追加することにより、m/zが同じイオンであっても、それぞれのイオンにとって最適なFAIMSの分析条件を決定すすることが可能となる。
次に、第1実施例の第3の例について説明する。長い日数にわたり、質量スペクトルデータを取得していると、温度などの環境の変化により若干ではあるが、質量スペクトルの質量軸(m/z)が変化して(ずれて)しまうことがある。その結果、同じ分子種でも異なるm/zの分子としてデータが取得されてしまう場合がある。この場合、データベース19にその分子種の分析条件が格納されていたとしても、格納されていないと誤判定されてしまう可能性がある。このようなケースでは、分析で得られた実測のm/zの値を補正する必要がある。本例では、m/zを補正する方法について説明する。なお、以下の補正処理の主体は、制御部18である。
質量軸(m/z)の補正の方法は、例えば以下のような方法で補正可能である。すなわち、分析試料またはLCの送液溶媒にm/zがわかっている既知の補正用試料をあらかじめ混ぜておき、その補正用試料のピークのm/zを用いて質量軸を補正する方法である。補正用試料は1種類でもよいが、2種類以上入れておくことで、より正確に質量補正が可能となる。例えば、小さいm/zと大きなm/zの補正用試料を入れておけば、広いm/zの範囲の質量軸が正確に補正することが可能となる。
図9は、m/zを補正する方法を説明する図である。図9(A)は、混ぜた2種類の補正用試料の理論値を質量スペクトル上に描いたものである。実際には、図9(B)のような、補正用試料のピークを含む、様々な試料のピークが現れる。この中で補正用試料のピークを見つけ、そのピーク(a,b)の実測値を理論値のm/zに補正する。本例の補正方法では、補正用試料の実測のm/zに対する理論値のm/zの関数(直線、曲線など)を求め、その関数に従って、試料由来のピークを全て補正する。図9(C)は、求めた関数に従って、(B)で示されたピークの実測値を補正した図を示す。上記の他に、既知の知られている補正方法であってもよい。
本例の補正処理によれば、温度などの環境の変化により質量スペクトルの質量軸(m/z)が変化した場合でも、同一のデータベース19を用いて分析条件の決定が可能となる。
次に、第1実施例の第4の例について説明する。LCの保持時間についてもm/zと同様に、経時的に変化することや、環境によって変化する可能性がある。そのため、測定で得られたLCの保持時間を補正する必要がある。本例では、LCの保持時間を補正する方法について説明する。なお、以下の補正処理の主体は、制御部18である。
LCの保持時間の補正方法もm/zの補正と同様に、LCの保持時間が既知の補正用試料をあらかじめ試料に混ぜておき、その補正用試料のピークの保持時間を用いて質量軸(m/z)を補正する方法である。すなわち、分析試料またはLCの送液溶媒に保持時間が既知の補正用試料をあらかじめ混ぜておき、その補正用試料のピークの保持時間を用いて質量軸を補正する方法である。補正用試料は1種類でもよいが、2種類以上入れておくことでより正確に補正が可能となる。例えば小さい保持時間と大きな保持時間の補正用試料を入れておけば、広い範囲の保持時間が正確に補正することが可能となる。
図10は、LCの保持時間の補正方法を説明する図である。図10(A)は、混ぜた2種類の補正用試料の理論値をクロマトグラム上に描いたものである。実際には、図10(B)のような、補正用試料のピークを含む、様々な試料のピークが現れた全イオンのクロマトグラムが描かれる。この中で補正用試料のピークを見つけ、そのピーク(c,d)の実測値を理論値の保持時間に補正する。本実施例の補正方法では、補正用試料の実測の保持時間に対する理論値の保持時間の関数(直線、曲線など)を求め、その関数に従って、試料由来のピークを全て補正する。図10(C)は、求めた関数に従って、(B)で示されたピークの実測値を補正した図を示す。上記の他に、既知の知られている補正方法であってもよい。
上記の温度などの環境の変化によるずれとは別に、LCに用いるカラム(分子試料を吸着あるいはトラップするカラム)の種類が変わることにより、同じ分子種でもLCの保持時間が変わる。このように、カラムの種類毎にLC保持時間が変わるため、データベース19に格納されている情報と一致しなくなる可能性がある。しかし、カラムの長さが変わった場合であれば、LCの保持時間が、単純にカラムの長さに比例する、あるいはカラムの長さの関数で描けるのであれば、同じFAIMSの分析条件のデータベース19を用いることが可能である。例えば、LCの保持時間をカラムの長さの関数に従って補正することができる。
本例の構成によれば、カラムの種類が変わった場合でも、データベース19を共通化することができ、カラム毎に複数のデータベースを持つ必要が無く、制御部18でのリソースの使用を減らすことができる。
また、LCを用いた液体分離において、2種類の送液溶媒の比率を時間変化させながらLC/MS分析を行うことがある。溶媒の組成を変えることで、試料がカラムに保持される保持力が変化し、試料が溶出されるためである。溶出されれば、試料はイオン化され、質量分析される。
図11(A)は、時間に対するLCで用いる送液溶媒の混合比率の変化を示す。時間0では、水(+緩衝剤)を主とするA液が80%、メタノールやアセトニトリルを主とするB液が20%である。時間毎に徐々にB液の比率を上げていき、直線aでは時間tで、直線bでは時間2tでB液比率が100%になり、分析が終了する。ここで、時間tは、図4や図7のフローにおけるステップ408、708の設定値である。
図11(B)及び図11(C)は、それぞれ、図11(A)内の溶媒(B液)の混合比率の変化a,bに対応して得られるクロマトグラムを示す。直線aのように時間tだけかけて溶媒の混合比率を変化させれば、クロマトグラムaのように試料が検出される(図11(B))。
一方、直線bのように時間2tだけかけて溶媒の混合比率を変化させれば、クロマトグラムbのように2倍の時間をかけてピークが検出される。この時、図11(B)の「c1」のピークと図11(C)の「c2」のピークは、同じ分子種である。このように溶媒の混合比率を変えることで、LC保持時間は異なる。このため、LCの保持時間がデータベース19に含まれている場合は、混合比率が変われば、異なるデータベースを使用する必要がある。以下では、混合比率を変えた場合でも同じデータベースを利用可能な方法について説明する。
本例では、図11(A)のように、時間に対する溶媒の混合比率が直線で示され、かつそれらの傾きが異なる場合に、LCの保持時間を補正する方法を説明する。データベース19には、aの直線で取得した時のLCの保持時間が登録されているとする。この場合に、今回新たに直線bでデータ取得したクロマトグラムbのLCの保持時間を補正する。図11(A)の例の場合、直線aと直線bの傾きを算出する。直線aは傾き2Nであり、直線bは傾きNである。このため、クロマトグラムbのデータのLC保持時間は、傾きの比率分すなわち1/2倍だけ補正される。この補正処理は、混合比率ラインが同じタイプの関数であれば補正可能であり、例えば上述の直線(一次関数)以外にも、2次関数などの多項式関数、指数関数、対数関数などでも同様に補正が可能である。
本例の構成によれば、2種類の送液溶媒の比率を時間変化させながらLC/MS分析を行う場合でも、LCの保持時間を補正することにより、データベース19を共通化することができる。複数のデータベースを持つ必要が無く、制御部18でのリソースの使用を減らすことができる。
次に、第1実施例の第5の例について説明する。図4の例において、ステップ407での本測定の質量分析時間は、あらかじめ決められた時間である。以下の例では、本測定の質量分析時間を、取得した質量スペクトルデータに基づいてリアルタイムに決定する方法を説明する。
図12は、第1実施例の第5の例における分析のフローを示す図である。分析の流れは、図4のフローと同様である。図12のステップ1201〜1207、1209は、図4のステップ401〜408と同じ処理であるため、説明を省略する。図4との違いは、ステップ1208が追加されていることである。ステップ1208では、測定対象イオンの信号強度がある規定値以下かどうかを判定する。
イオンの信号強度がある規定値以下になった場合に、ステップ1209へ進み(ステップ1209のYes)、その測定対象イオンの測定を終了する。一方、測定対象イオンの信号強度が規定値以上の場合、つまり測定対象イオンが検出され続けている場合には、ステップ1207へ戻り(ステップ1208のNo)、本測定を継続する。
図13は、ステップ1208での判定を説明する図である。例えば、図13に示すように、測定対象イオンの信号強度と分析時間のデータとして、ピークの信号強度がOとなるようなマスクロマトグラムが測定に得られたとする。この場合に、信号強度が規定値(P)のライン以下になったら、本測定を終了する。規定値Pは、あらかじめ設定された値、またはユーザが入力部20から指定した値である。規定値Pは、典型的には、ピークの信号強度Oの1%から80%の範囲内の値(P/O=0.01〜0.8)であればよい。
この構成によれば、本測定の質量分析時間を、取得した質量スペクトルデータに基づいてリアルタイムに決定することができる。このように質量分析時間をリアルタイムに決定することにより、ある測定対象イオンの分析が終わった後、すぐに次の測定対象イオンに分析を移行できる。例えば、実際の分析においては測定対象イオン同士が重なる場合などがあるが、このような場合でも、次の測定対象イオンの分析時間が短くなることを防ぎ、複数の測定対象イオンの分析を効率良く行うことができる。
次に、第1実施例の第6の例について説明する。上述した例では、質量スペクトルから測定対象イオンを1つ選ぶ方法であったが、2つ以上の複数個(N個)の測定対象イオンを選択及び決定する方法もある。
図14は、本実施例における分析のフローを示す図である。分析の流れは、図4のフローと同様である。図14のステップ1401〜1403、1406〜1408、1410は、図4のステップ401〜403、405〜408と同じ処理であるため、説明を省略する。以下では、特に、図4と異なる部分(ステップ1404、1405、1409)について説明する。
ステップ1404において、一度にN個の測定対象イオンを決定する(以下の例では、選択数N=3とする)。3つの測定対象イオンを選択する例で説明するが、選択するイオン数は2以上であれば同様の測定方法が可能である。選択したイオン数(選択数N)はあらかじめ設定された値、またはユーザが入力部20から指定した値である。
ステップ1404では、イオンの信号強度が強いものから3つ測定対象イオンを選ぶ方法を用いて説明する(N=3)。その他にも、S/N(シグナルノイズ比)の高い3つのピークを選択する方法もある。また、測定対処イオンを選ぶ際の制約条件として、ある電荷量zのイオンのみ、またはあるm/zの範囲のイオンのみを測定対象とする方法もある。さらに、ターゲットイオンのm/zが分かっている場合には、ターゲットイオンのm/zの周辺のみに制約することで、効率よくターゲットイオンの測定が可能となる。さらに、すでに測定済みのイオンは測定対象から排除する方法も用いることができる。これにより、重複して同じイオンの測定をしてしまうことを回避することが可能となる。上述の404や704と、イオンの選択数は異なるが、決定方法は同様で構わない。
ステップ1405では、まずはじめに3つの測定対象イオンのうちの1つ目の測定対象イオンが設定される。すなわちn=1として次のステップへ進む。その後、ステップ1406において、1つ目の測定対象イオンの情報が、データベース19の格納値と一致しているか確認する。データベース19の格納値と一致しない場合、すなわち、データベース19に分析条件の情報が存在しない場合には、本測定を行わず、ステップ1409へ進む。
一方、ステップ1406において、1つ目の測定対象イオンの情報が、データベース19と一致していれば、すなわち、データベース19に分析条件の情報が存在する場合には、ステップ1407、1408へ進み、本測定が行われる。本測定の後、ステップ1409へ進む。
ステップ1409では、ステップ1406〜1408を繰り返すか、または終了するかの判定を行う。本例では、N=3すなわち3つの測定対象イオンの測定が終了した時点で(ステップ1409のYes)、ステップ1410へ進む。一方、1つ目のイオン(n=1)、2つめのイオン(n=2)の測定が終了した段階であれば(ステップ1409のNo)、ステップ1406へ戻る。すなわち、nが3になり、選択された3つのイオンの測定が終了するまで、フローが繰り返される。
本例の構成によれば、ステップ1402において質量分析データ取得の頻度が減るため、本測定を行う時間が増加することで分析のスループットが向上し、効率の良い分析が可能となる。
[第2実施例]
第2実施例について説明する。本実施例では、測定対象イオンの情報がデータベース19に格納されて無かった場合に、すなわち、FAIMSの分析条件がデータベース19に無い場合に、そのイオンのFAIMSの分析条件を作成する方法について説明する。
本実施例では、1回目のLC/MS分析で分析条件の条件作成とデータベース19への格納を行い、2回目以降のLC/MS分析で本測定を行う方法を開示する。図15Aは、1回目のLC/MS分析における、ある測定対象のイオンiのクロマトグラムを示す。1回目のLC/MS分析では図15Aのようにイオンiが検出されている間にFAIMSの分析条件の作成のみを行う。
図15Bは、2回目以降のLC/MS分析における、ある測定対象のイオンiのクロマトグラムを示す。2回目以降のLC/MS分析では、全ての分析時間を本測定に使用することができる。2回目以降のLC/MS分析では、このように、イオンiのほぼ全イオン量を本測定で計測することができる。したがって、本実施例は、イオン量を正確に測定可能なため、定量分析に適している。
図16Aは、1回目のLC/MS分析におけるFAIMSの分析条件を作成するためのフローである。なお、以下の処理の主体は、制御部18である。制御部18は、イオンモビリティー分離部13と質量分析部14とイオン検出部15を制御しながら、以下の処理を実行する。ステップ1601〜1604は、図4の401〜404と同様であるため説明を省略する。
ステップ1605では、測定対象イオンが、データベース19に登録されているかを照合及び判定する。ここで、測定対象イオンが、データベース19の格納値と一致した場合、すなわちデータベース19にすでにFAIMS分析条件が登録されている場合は、Yesとなり、ステップ1602へ戻る。そして、再び質量分析スペクトルを取得して、そこから別の測定対象イオンを探索する。
ステップ1605において、測定対象イオンが、データベース19の格納値と一致しない場合、すなわちデータベース19にFAIMS分析条件が登録されていない場合はNoとなり、ステップ1606へ進む。以下のステップ1606〜1608において、FAIMSの分析条件の探索及び決定と、データベース19への格納を行う。
ステップ1606では、測定対象イオンの情報(m/z,z)からFAIMSの分離電圧(SV)を決定する。高周波電圧である分離電圧は、イオンの重さやイオンのm/zに依存する。一般に、一定の強度の電界強度の中をイオンが通過する場合、電界によってイオンにかかる加速度aは、質量mと電荷量zを用いて以下の関係式のように表わされる。
Figure 2014206497
このように、加速度aは質量mに反比例するため、一定の電界下では、質量が大きいイオンは電界により受ける加速度は小さく、質量が小さいイオンでは加速度は大きくなる。例えば、小さい質量のイオンは、電界の影響を受けて電極に衝突してしまい、質量分析が困難となる場合がある。このためFAIMSにおいてもイオンの質量毎に、つまりはm/z毎に電界すなわち分離電圧を変えて最適化する必要がある。分離電圧の決定方法は、あらかじめデータベース19に格納されているm/zと分離電圧の関係が記載された分離電圧テーブル(第2の情報)を用いる。
図17Aは、分離電圧テーブルの内容を説明する図である。分離電圧テーブルには、質量電荷比(m/z)と分離電圧とが関連付けられた情報が格納されている。先述のように、電界強度、つまり分離電圧がm/zに応じて電圧を印加することが望ましい。例えば、数式2の加速度を一定にする場合には、m/zと電界(分離電圧)を線形にする必要がある。すなわち、図17Aのように、m/zと分離電圧との関係(分離電圧テーブル)は、一次関数で描かれる。この分離電圧テーブルは、m/zと分離電圧との関係があらかじめ記載されており、測定対象イオンのm/zから、最適な分離電圧を一意的に決定する。図17Aの例では、測定対象イオンの分離電圧は、m/zに関連付けられた分離電圧SVに決定される。
本例では、分離電圧テーブルは直線で示されているが、m/zと分離電圧との関係が、m/zの範囲毎に異なる2本の傾きをもつ直線から構成される場合もある。また、m/zと分離電圧との関係が、曲線、多次関数、指数関数などの関数である場合もある。
なお、分離電圧テーブルは、イオンの電荷量(z)に依存するため、電荷量毎に別のテーブルが存在する場合もありうる。これは数式2で示されるように、イオンが受ける加速度aは、質量mに反比例し、電荷zに比例するためである。
また分離電圧テーブルを作成することも可能である。分離電圧テーブルの作成方法は、分離電圧を数点設定して、それぞれの分離電圧毎に補償電圧を走査して信号強度のデータを取得する。補償電圧は、信号強度が最大となるところを使用する。このように、分離電圧毎に、イオンの信号強度を取得して、信号強度とFAIMSの分離能(=補償電圧値/半値幅)の2つから、最適な分離電圧を決定することも可能である。信号強度が高く、また分離能が高い方が分離電圧として最適である。さらに、イオンモビリティー分離部13の温度に応じて分離電圧テーブルを変えることが望ましい。これは、FAIMSの温度により、イオン軌道上のガスの温度も変わり、イオン移動度が変化するためである。例えば、100℃、200℃、300℃で、異なる分離電圧テーブルを用いる。温度以外にも、圧力、FAIMSを流れるガス流速などの環境により、分離電圧テーブルを変えることも可能である。
ステップ1607では、ステップ1606で決められた分離電圧の条件下で、補償電圧(CV)を決定する。具体的には、制御部18は、ステップ1606で決められた分離電圧を印加しながら、測定対象イオンに対する複数の補償電圧を走査し、それら複数の補償電圧におけるイオンの信号強度に基づいて補償電圧を決定する。
補償電圧は、広い範囲で走査して、最適値として決定する。補償電圧の走査範囲は、例えば、−10V〜10V、−50V〜50V、または−100V〜100Vである。電圧の走査(スキャン)ピッチは、例えば、0.01V、0.05V、0.1V、0.2V、0.3V、0.5Vのいずれか、あるいは、他のピッチでもよい。補償電圧の最適値を決める1つの方法は、測定対象イオンの信号強度が最大になる補償電圧に決定することである。
図17Bは、補償電圧の決定を説明するための図である。図17Bに示すように、所定の補償電圧の走査範囲において、あるピッチで測定対象イオンの信号強度を測定する。図17Bの例では、測定対象イオンの信号強度が最大になる補償電圧CVに決定される。
また別の方法は、得られた補償電圧に対する信号強度の曲線を、例えばガウス関数またはポアソン分布またはその他の関数に近似して、その関数の最大値となる補償電圧を決定し、最適値とする方法も用いることができる。
次に、ステップ1608において、分離電圧SVと補償電圧CVの情報をデータベース19に格納する。例えば、(m/z,z,SV,CV)の情報のセットが、データベース19に格納される。LCの保持時間を含めることも可能である。この格納されたデータは、2回目以降のLC/MS分析の本測定に使用する。
次に、2回目以降のLC分析について説明する。図16Bは、2回目以降のLC/MS分析のフローである。2回目以降のLC/MS分析では、1回目で作成したデータベース19における1つあるいは複数のイオンについて本測定を行う。
ステップ1611において、ある測定対象イオンに関してデータベース19からFAIMSの分析条件を読み出す。そして、データベース19から取得した分析条件下で、FAIMSの第1の電極1及び第2の電極2に電圧を印加して、本測定を行う。例えば、1回目のLC/MS分析において測定対象イオンのLCの保持時間の情報を記録しておき、その測定対象イオンのLCの保持時間が来たら、そのイオンの本測定を繰り返し行う。そのある規定値以下の信号強度になるか、あるいは、別の測定対象イオンのLCの保持時間が来るまで、繰り返しそのイオンの本測定を行う。
そして、ステップ1612において、分析フローの終了を判定する。保持時間(測定時間)が、あらかじめ決められた設定値に達した場合、分析フローは終了となる。
本実施例によれば、測定対象イオンの質量分析結果情報(m/z,z)が、データベース19の質量分析結果情報(m/z,z)と一致しない場合、すなわち、データベース19に測定対象イオンの分析条件(分離電圧及び補償電圧)が格納されていない場合に、その測定対象イオンの分析条件を決定し、データベース19に格納することができる。特に、1回目のLC/MS分析でデータベース19に分析条件を格納し、2回目以降のLC/MC分析で本測定を行うため、2回目以降のLC/MS分析では、測定対象イオンのほぼ全イオン量を計測することができる。
また、質量電荷比(m/z)と分離電圧とが関連付けられた分離電圧テーブルを用いることにより、測定対象イオンに対して最適な分離電圧を一意的に決定することができる。また、その分離電圧を印加した状態で補償電圧を広範囲に走査するため、測定対象イオンに対して最適な補償電圧を決定することができる。
図19は、2回目以降のLC/MS分析の別のフローである。この例では、質量スペクトルのデータを取得し、測定対象イオンが検出されたら、本測定を行う。図19のステップ1901〜1903、1905〜1908は、図4の401〜403、405〜408とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。
ステップ1904では、ステップ1902、1903で取得した質量スペクトルのデータを用いて測定対象イオンが検出されたかを判定する。ステップ1905では、その測定対象イオンの分析条件がデータベースに存在すれば、そのイオンの本測定を行うため、ステップ1905に進む(1905のYes)。一方、存在しなければ、再び1901からフローが行われる。この例では、イオンの検出を確認した後に、本測定を行うので、ある測定対象イオンが検出されなかった場合に、別の測定対象イオンの測定に移行できる。したがって、効率良く多くのイオンの分析を行うことができる。
[第3実施例]
次に、第3実施例について説明する。本実施例では、FAIMSの分析条件の作成とその分析条件による本測定を、1回のLC/MS分析内で同時に実施する方法について説明する。
第1及び第2実施例の2回目以降のLC/MS分析では、図18Aに示すように、ある測定対象のイオンiのクロマトグラムを全て本測定に使用していた。本実施例では、図18Bに示すように、イオンiが検出されている間に、分析条件の作成と本測定の両方を行う方法について説明する。
本方法では、分析条件の作成とデータベース19への登録と本測定が、1回のLC/MS分析で行うことができるため、時間の制約で1回のLC/MS分析しか行えない場合、または試料の量が少なく1回のLC/MS分析しか行えない場合などに適している。また、未知の試料の分子イオン種の探索といった定性分析に向いている。
図20は、本実施例の分析のフローを示す図である。ステップ2001〜2004は、図4のステップ401〜404と内容は同じであるため、説明を省略する。本実施例の特徴は、ステップ2005の後に経路1と経路2に分かれる点である。
ステップ2005において、測定対象イオンの情報が、データベース19の格納値と一致した場合、ステップ2006(経路1)に進む。ステップ2006〜ステップ2008は、データベース19からFAIMSの分析条件の情報を読み出し、その分析条件を設定し、本測定を行うフローである。ステップ2006〜ステップ2008は、図4のステップ406〜408と内容は同じであるため、詳細説明を省略する。
ステップ2005において、測定対象イオンの情報が、データベース19におけるFAIMSの分析条件の情報と一致しない場合、ステップ2009(経路2)に進む。ステップ2009〜2011は、FAIMSの分析条件を新たに作成し、データベース19に格納するフローである。ステップ2009〜2011は、図16Aのステップ1606〜1608と内容が同じであるため、詳細説明を省略する。経路2で作成したFAIMSの分析条件である分離電圧と補償電圧は、ステップ2011でデータベース19に格納される。分析条件をデータベース19に格納することにより、次に同じ測定対象イオンの本測定を行う時に、直ちに分析条件をデータベース19から読み出して、本測定を行うことができる。
本実施例の構成では、データベース19に格納されるイオンの情報(分析条件)が増えるほど、経路1のフローを通過する頻度が増え、経路2のフローを通過する頻度が減る。経路2の方では、ステップ2009〜2011は1秒程度の時間がかかり、一方、経路1は直ちにステップ2006へ進むので、すぐに本測定に入れる。したがって、データベース19の情報が増えれば増えるほど、分析時間の短縮につながり、多くの質量スペクトルを取得可能になり、高スループット分析が可能になる。
本実施例における分析の流れを、図18A及び図18Bのクロマトグラムを用いて説明する。ある1種類のイオンiからなるクロマトグラムの例である。経路1では、図18Aに示すように、直ちに本測定を開始するため、イオンが検出されるほとんどすべての時間を本測定に用いることができる。一方、経路2では、図18Bに示すように、最初の数100マイクロ秒から数秒は、FAIMSの分析条件の探索、作成に用いられ、その後、本測定が行われる。本測定は、図のようにイオンiが検出されなくなるまで行う。または先述のように、ある信号強度以下になるまで、本測定を行う方法を用いる。
先の実施例のように、m/zと電荷量z以外にLCの保持時間の情報を、データベース19の情報として用いることも可能である。詳細は、第1実施例で説明した方法と同様である。
本例では、図20のクロマトグラムのように、分析条件の作成と本分析が行われるため、分析条件の作成の時間が長くなれば、本測定の時間が短くなってしまう。そのため、分析条件の作成の時間をできるだけ短くすることで、本測定の時間が長くなり、より高精度なデータが取得可能になる。第2実施例に書かれているFAIMSの分析条件の作成方法は、この分析条件作成の時間の短縮化を狙うものである。これにより、本測定に時間を充てることができるために、より高精度な測定が可能となる。
このように、分析条件の作成している時間は本測定を行うことができないため、すべてのイオン量を測定することができないという課題がある。つまり、図18Bのように、クロマトグラムの後半のみ本測定が行われており、前半はデータが取得されていない。このため、前半部分である分析条件作成の時間のクロマトグラムを、後半部分の本測定のデータから予測して、補完する方法を用いることも可能である。
イオンのクロマトグラムの形状は、ある関数で近似することが可能である。例えば、ガウス関数や、指数関数、べき乗関数、多項式およびこれらの組み合わせからなる。この関数により、図18Bの本測定の結果から、分析条件の作成時間のイオン量も予想して、データとする。これにより、イオンのクロマトグラムを完全に描くことができ、全イオン量を見積もることができるため、イオン量を正確に計測可能となり、定量精度が向上することが期待される。
次に、第2及び第3実施例における別の例について説明する。第2及び第3実施例では、分離電圧テーブルを用いて分離電圧を一義的に決定した。本例では、一義的に決定せずに、ある分離電圧を含む所定の範囲から最適な分離電圧を決定する方法を提示する。これにより、高感度、高S/Nでデータ取得が可能となる。
図21は、分離電圧テーブルの別の例を説明する図である。図16のステップ1606あるいは図20のステップ2009において、測定対象イオンの(m/z、z)から、分離電圧テーブルを用いて分離電圧を決めるときに、分離電圧テーブルから得られた分離電圧の他に、あらかじめ決められた±ΔSVだけずれた分離電圧でも測定する。すなわち、図16のステップ1606あるいは図20のステップ2009において、分離電圧は、SV、SV+ΔSV、SV−ΔSVの3点を決定する。
図16のステップ1607あるいは図20のステップ2010では、3つの分離電圧それぞれについて補償電圧を走査して、補償電圧とイオン信号強度の関係をプロットする。この処理によって、図17Bのようなデータが3つ作成される。この3つのデータそれぞれについて、信号強度が最大となるときの信号強度を抽出し、その3点の信号強度のうちの最大となる時の条件を測定対象の分析条件として決定する。すなわち、分離電圧テーブルから所定の範囲の分離電圧をまず決定し、その所定の範囲における補償電圧を走査することによって、最終的に最適な分離電圧及び補償電圧を決定する。決定した分離電圧と補償電圧は、データベース19に格納される。この方法により、分離電圧の最適化がより精度良く可能となる。また、図17Bのような補償電圧依存性の3つのデータの信号強度だけでなく、先述のように分離能を考慮して最適条件を決める方法もある。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることがあり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、測定対象イオンに適した分析条件を短い時間で決定できるという点においては、例えば、分析システムは、質量分析結果情報とイオン移動度分離に関する分析条件とが関連付けられているデータベース19を格納する記憶部と、ある測定対象イオンの質量分析結果情報に対応するデータベース19の質量分析結果情報に関連付けられた分析条件を、測定対象イオンの分析条件として決定する制御部と、を少なくとも備えればよい。
また、図面における制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。
1 :第1の電極
2 :第2の電極
3 :交流電圧電源
4 :直流電圧電源
5 :イオン
6 :イオン軌道
10 :質量分析システム
11 :前処理部
12 :イオン化部
13 :イオンモビリティー分離部
14 :質量分析部
15 :イオン検出部
16 :データ処理部
17 :表示部
18 :制御部
19 :データベース
20 :入力部
21 :試料

Claims (15)

  1. 質量分析結果情報とイオン移動度分離に関する分析条件とが関連付けられている第1の情報を格納する記憶部と、
    ある測定対象イオンの質量分析結果情報に対応する前記第1の情報の前記質量分析結果情報に関連付けられた前記分析条件を、前記測定対象イオンの第1の分析条件として決定する制御部と、
    を備えることを特徴とする分析システム。
  2. 請求項1に記載の分析システムにおいて、
    前記測定対象イオンの質量分析結果情報は、質量電荷比と電荷とを含み、
    前記記憶部は、質量電荷比と分離電圧とが関連付けられている第2の情報を格納しており、
    前記制御部は、前記測定対象イオンの質量電荷比に対応する前記第2の情報の前記質量電荷比に関連付けられた第1の分離電圧を、前記第1の分析条件として決定することを特徴とする分析システム。
  3. 請求項2に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、前記測定対象イオンの前記質量分析結果情報に対応する前記第1の情報の前記質量分析結果情報が無い場合、前記第2の情報における前記第1の分離電圧を、前記第1の分析条件として決定し、
    前記制御部は、前記第1の分析条件を前記第1の情報として前記記憶部に格納することを特徴とする分析システム。
  4. 請求項2に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、前記第1の分離電圧を印加しながら前記測定対象イオンに対する複数の補償電圧を走査し、前記複数の補償電圧におけるイオンの信号強度に基づいて第1の補償電圧を決定し、前記第1の補償電圧を前記第1の分析条件として決定することを特徴とする分析システム。
  5. 請求項2に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、前記第1の分離電圧を含む所定の分離電圧範囲を印加しながら前記測定対象イオンに対する複数の補償電圧を走査し、前記複数の補償電圧における前記測定対象イオンの信号強度に基づいて第1の補償電圧を決定し、前記第1の補償電圧を前記第1の分析条件として決定することを特徴とする分析システム。
  6. 請求項1に記載の分析システムにおいて、
    前記第1の情報の前記質量分析結果情報及び前記測定対象イオンの前記質量分析結果情報は、質量電荷比及び電荷量の情報、あるいは、質量電荷比、電荷量、及び、液体クロマトグラフのカラムから試料が溶出される時間(LCの保持時間)の情報を含むことを特徴とする分析システム。
  7. 請求項6に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、前記質量電荷比、あるいは、前記LCの保持時間を補正することを特徴とする分析システム。
  8. 請求項7に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、質量スペクトルにおける少なくとも1つの補正試料のピークを用いて、質量電荷比あるいは前記LCの保持時間を補正することを特徴とする分析システム。
  9. 請求項7に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、前記LCの保持時間と溶媒の混合比率との関係を用いて、前記LCの保持時間を補正することを特徴とする分析システム。
  10. 請求項1に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、質量スペクトルにおけるイオンの信号強度あるいは信号対雑音比を用いて、複数のイオンから少なくとも1つの測定対象イオンを決定することを特徴とする分析システム。
  11. 請求項1に記載の分析システムにおいて、
    イオンをイオン移動度分離するイオン移動度分離部と、
    前記イオン移動度分離されたイオンを質量分離する質量分析部と、
    前記質量分離されたイオンを検出するイオン検出部と、
    をさらに備え、
    前記制御部が、前記第1の分析条件によって前記測定対象イオンに対する分析処理を実行することを特徴とする分析システム。
  12. 請求項11に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、予め定められた終了条件を満たした場合に、前記測定対象イオンに対する分析処理を終了することを特徴とする分析システム。
  13. 請求項12に記載の分析システムにおいて、
    前記予め定められた終了条件は、前記測定対象イオンの質量スペクトルにおける信号強度に関する条件であることを特徴とする分析システム。
  14. 請求項11に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、1回目の液体クロマトグラフ測定(LC測定)において前記第1の分析条件を決定し、2回目以降のLC測定において前記測定対象イオンに対する分析処理を実行することを特徴とする分析システム。
  15. 請求項11に記載の分析システムにおいて、
    前記制御部は、1回目の液体クロマトグラフ測定(LC測定)の間に、前記第1の分析条件を決定し、かつ、前記測定対象イオンに対する分析処理を実行することを特徴とする分析システム。
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