JP2014205148A - レーザー溶接装置およびレーザー溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】被溶接物全体を減圧チャンバーに収納することなく、大型製品に対して容易に減圧環境でのレーザー溶接を実施できるレーザー溶接装置およびレーザー溶接方法を提供する。
【解決手段】一端部が閉鎖され他端部が開放された筒形状の筐体30で溶接施工部51を覆うことにより局部的な減圧環境を形成し、筐体30の下側端部側に設けたレーザー加工ヘッドから溶接施工部51へレーザーを照射してレーザー溶接を行う。筐体30の下部には所定の丈尺の細い金属の素線41を束ねて構成したブラシ状のシール部材40を取り付け、このシール部材40によって大気圧環境と筐体30内部の圧力差を保持する。溶接に際しては、被溶接物50の表面をレーザー加工ヘッドと一体となった筐体を移動させ、相対移動中にレーザー光線を被溶接物50に照射して減圧環境でレーザー溶接施工を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は減圧環境で行なうレーザー溶接装置およびレーザー溶接方法に関する。
レーザー溶接工法はアーク溶接工法と比べて被溶接物に対して非接触での溶接施工が可能であることや、高エネルギー密度のビームを集中させることができることから、深い溶け込みが得られるという利点や、アーク溶接に比べて低入熱量で深い溶け込みが得られるために被溶接物の変形量が小さく、被溶接物に与える熱影響も小さいという利点がある。
レーザー溶接工法はこのような利点を有するために、産業機器の製造現場で採用されており、たとえば、電力機器、造船、自動車等の分野や、それ以外の数多くの分野で採用されている。
ところで、レーザー溶接はその施工雰囲気によって常圧環境下(大気圧環境下ともいう)で行われる工法と、減圧環境下で行われる工法とに大別することができる。通常は、常圧環境下で溶接部にシールドガスを吹きつけながら行う溶接工法が一般的である。これに対して、減圧環境下での溶接工法は、常圧環境下で行う溶接工法よりも金属の沸点が低下して金属蒸気の発生が活発となるため、溶け込み深さが増加して溶接工程の効率化が図れるという利点がある。
この減圧環境下でのレーザー溶接施工に関して、以下のように幾つかの技術が提案されている。
先ず一つ目の技術は、低真空雰囲気を形成する真空溶接チャンバー内に被溶接物とこの被溶接物を載置して移動させる移送手段とを収納し、真空溶接チャンバーの上部に位置するレーザー光線照射窓から被溶接物にレーザー光線を照射するようにした溶接施工法である。
次に二つ目の技術は、被溶接物全体を大気圧環境下に置き、被照射部であるレーザー加工部のみをレーザー加工ヘッドで覆って被溶接物に対して相対的に移動可能な状態にし、さらに、レーザー加工ヘッドの被溶接物に接する部分にゴムなどのシール部材を取り付けて、レーザー加工ヘッドと被溶接物との間に形成された空間部を真空引きにして局部的に減圧空間部を形成した溶接施工法である。
特開2011−240365号公報 特開平07−68397号公報
川人洋介ほか3名「高出力・高輝度レーザーを用いた低真空溶接」第74回レーザー加工学会講演論文集(2010,12)、第19頁−23頁。
まず、上記したチャンバー技術の場合、減圧環境を形成するチャンバー内に被溶接物および移送手段を収納する必要があるため、減圧チャンバーの寸法によっては被溶接物の寸法が制限される。
たとえば、電力機器、船体、鉄道車両などの大型構造物などに減圧レーザー溶接を適用すれば、深い溶け込み深さが得られるため溶接工程の効率化を図る上で有効であるが、上述した制約から現状においては実製品への適用が困難である。
仮に減圧チャンバー内に被溶接物を収納できた場合でも、減圧チャンバーの寸法が巨大となるため溶接装置が高価となるほか、減圧チャンバー内の真空引きに多大な時間を要する。さらに、減圧チャンバー内への被溶接物の搬入と搬出にも多大な時間を要するため、減圧レーザー溶接の利点を存分に生かすことができないといえる。
次に、上記した二つ目の技術の場合、レーザー加工ヘッド内部を大気からシールするために、ゴムなどのシール部材を被溶接物に押しつけて変形させた状態でレーザー加工ヘッド全体の荷重を支えるように構成されているため、減圧チャンバー内の負圧状態を維持する機能については良好であるが、シール部材を構成するゴム材は静止摩擦係数が大きいため、変形した状態でレーザー加工ヘッドを任意の方向へ摺動させるうえで支障をきたすおそれがある。
また、被溶接物が鉄鋼材料である場合、溶接施工部周辺は溶接直後に1千℃以上の高温に達し、シール部材の近傍も数百℃の高温環境に晒される。従って、シール部材にゴム材を適用した場合、ゴム材の溶融や蒸発が生じてシール性能に支障を及ぼすだけでなく、摺動性能に対しても更なる支障を及ぼす恐れがある。
そこで本発明の目的は、被溶接物の溶接施工部の表面を、レーザー加工ヘッドを取り付けた筐体で覆って真空引きすることによって筐体と被溶接物との間に局部的な減圧空間の溶接チャンバーを形成し、かつ、筐体の下部開口縁部にシール性能、摺動性能および耐熱性能に優れた材料のシール部材を取り付けるようにしたレーザー溶接装置およびその溶接方法を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明のレーザー溶接装置は、一端部を蓋部によって閉塞してレーザー加工ヘッドを固定し、他端部の開放端部を被溶接物の上に載置することにより溶接チャンバーを形成する筒形状の筐体と、前記筐体の開放端部に取り付けたシール部材と、前記溶接チャンバー内を大気圧に対して減圧環境状態にする減圧装置と、前記筐体および前記被溶接物を相対的に移動させる駆動装置と、を備えたレーザー溶接装置において、前記シール部材は、所定の丈尺の細い素線を多数束ねて所定の厚みのブラシ状に形成され、かつ、シール性能、摺動性能および耐熱性能を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、溶接施工部周辺が溶接直後に1千℃以上の高温に達したとしても、溶接チャンバー内部の圧力を安定した所定の減圧環境状態に保持することができる。
本発明の実施形態1に係わるレーザー溶接装置を示す図であり、図1(a)は図1(b)をa−a線で切断し、矢視方向に見た平面図、図1(b)は図1(a)をb−b線で切断し、矢視方向に見た断面図である。 図1に示したシール部材の一例を示す拡大図。 図1のレーザー溶接装置を用いて曲面状の表面を有する被溶接物を減圧環境で溶接する様子を示す図。 本発明の実施形態2に係わるレーザー溶接装置を示す図であり、図4(a)は図4(b)をa−a線で切断し、矢視方向に見た断面図、図4(b)は図4(a)をb−b線で切断し、矢視方向に見た側断面図である。 図4のレーザー溶接装置を用いて曲面状の表面を有する被溶接物を減圧環境で溶接する様子を示す図。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図を通して共通する部分には同一符号を付けて説明する。
[実施形態1]
図1は本実施形態に係わるレーザー溶接装置を示す図であり、図1(a)は図1(b)をa−a線で切断し、矢視方向に見た断面図であり、図1(b)は図1(a)をb−b線で切断し、矢視方向に見た側断面図である。そして、図2はシール部材の一例を示す拡大図である。また、図3は図1のレーザー溶接装置で曲面状の表面を有する被溶接物を減圧環境で溶接する様子を示す図である。
(構成)
通常、レーザー溶接装置は、レーザー光線を発生させるレーザー発振器、レーザー光線を導く光路、伝送されてきたレーザー光線を適切なサイズに集光し焦点を調整する集光光学系で構成されたレーザー加工ヘッド、このレーザー加工ヘッドあるいは被溶接物を駆動する駆動系、溶接チャンバー、シールドガス配管系統などで構成されるが、本発明ではレーザー発振器、光路および駆動系については対象外なので、図1(a)、(b)ではこれらの図示を省略している。
また、実施形態1のレーザー溶接装置には、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ファイバレーザーなどを適用することができる。
図1(a)および(b)において、本実施形態に係るレーザー溶接装置には、部分的な減圧環境下でレーザー溶接の施工が行なえるように、空力窓生成装置20を一体的に設けた筐体30の上部に適当な支持部材11を介してレーザー加工ヘッド(溶接トーチともいう)10が取り付けられている。
以下、筐体30に取り付けられた空力窓生成装置20から説明する。
空力窓生成装置20は、後述するノズルからディフューザーに向って円弧状に超音速ガス流JSを流すことによって自由渦式の空力窓20-1を作り、この空力窓20-1によって筐体30の内部空間を大気側から仕切るように構成されている。
空力窓20-1の開口面積は、レーザー溶接時にレーザー光線LBとの干渉が生じないように多少余裕をもって製作されており、たとえば、10×10mm〜40×40mm程度の矩形または円形に形成されている。
そして、本実施形態で採用する空力窓生成装置20は、一例として次のように構成されている。すなわち、レーザー光線LBが透り抜けるレーザー光線通過路20-2の両側にノズル構成体20-3およびディフューザ構成体20-4を所定距離だけ離間して配置するとともに、これらノズル構成体20-3およびディフューザ構成体20-4の両側面を閉塞板20-5、20-6で挟持して閉塞してシールするように構成されている。そして、ノズル構成体20-3、ディフューザ構成体20-4、閉塞板20-5、20-6で囲まれた空間をレーザー光線通過路20-2として構成している。なお、ノズル構成体20-3およびディフューザ構成体20-4が離間する所定距離とは、レーザー光線通過路20-2の開口面積に対応する寸法分である。
ノズル構成体20-3は、レーザー光線通過路20-2の開口面積に対応した10〜40mm程度の厚み(紙面の前後方法)と、この厚みの2〜3倍程度寸法の幅(紙面の左右方法)および高さ(紙面の上下方法)を有する四角いブロック状の金属材料で形成されている。
そして、このノズル構成体20-3は前記閉塞板20-5、20-6に面する平面部のほぼ中央部に溜気槽20-3aを刳り貫いて形成するとともに、この溜気槽20-3aから上部隅部に向かってスロート部20-3bと、ノズル20-3cとを刳り貫いて形成している。
ノズル20-3cはスロート部20-3bに連通する入口側から出口側に向かって幅が徐々に拡がる非対称形状に形成されている。さらにノズル構成体20-3は、溜気槽20-3aを外部と連通する連通孔20-3dを設けている。この連通孔20-3dはガス供給管21を介して窒素ガスや乾燥空気等の高圧ガス供給源(ガスボンベ)22に接続されるように構成されている。
一方、ディフューザ構成体20-4は、前述したノズル構成体20-3と同じ厚みの四角いブロック状の金属材料で形成されており、前記ノズル20-3cの出口に対向した位置にディフューザ20-4aの入口を形成している。このディフューザ20-4aの出口は下向きに形成されている。なお、このディフューザ20-4aの内側壁は、超音速ガス流JSの剥離を防ぐように機械加工されている。
次に筐体30について説明する。
筐体30は、たとえば茶筒の蓋を伏せたような形状、すなわち円筒形に形成された筒状部30-1の一端を円板状の蓋部30-2で閉塞した形状をしており、その蓋部30-2の外側には支持部材11を介して前述した空力窓生成装置20を一体的に取り付けている。この蓋部30-2の中央部にはレーザー光線通過路20-2と同心状にレーザー光線照射窓30-3を設けている。なお、筐体30の形状は円筒形状に限らず、矩形状の筒であってもよい。
そして、筒状部30-1の他端部である下部開口縁部30−4の全周には後述するシール部材40を取り付けている。このように構成された筐体30を被溶接物50上に載置すると、筐体30、シール部材40および被溶接物50との間に溶接チャンバー30-5が形成される。
また、筐体30の筒状部30-1には、シールドガス供給配管31と、真空引き配管32とを接続している(図1(b))。レーザー溶接の際は、シールドガス供給管31から溶接チャンバー30-5内にアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等のシールドガスを供給している状態で真空引き配管32に接続された真空ポンプ33を運転することにより、溶接チャンバー30-5内を所定の減圧環境状態にする。なお、シールドガス供給管31および吸引管32の本数あるいは真空ポンプ33の個数や位置は、施工条件や施工対象物によって適切に選択することは勿論である。
一般的に、減圧レーザー溶接時に要求されるレーザー照射部の雰囲気は10kPa以下であり、このため、筐体30はこの10kPa以下の減圧環境と、1千℃程度の高温に十分に耐えられる強度および耐熱性を備えた鉄やその合金等金属材料で製作される。なお、筐体30に設ける観察用窓には耐熱性に優れた石英ガラスを利用してもよい。
次にシール部材40について説明する。
シール部材40は、図1(b)のように筐体30を被溶接物50上に載置した状態でレーザー溶接を施工するとき、溶接チャンバー30-5内が大気に対して10kPa程度の減圧環境を維持しながら筐体30と被溶接物50との相対的な移動を円滑に行なえるようにするための部材であり、筐体30の下部開口縁部30-4の全周に1段(一重)取り付けられる。このシール部材40には、上述した摺動性能およびシール性能が良好なことは勿論、溶接施工部の高温にも十分耐えるものでなければならない。
このため、シール部材40としては細い金属製の素線を所定の厚みに多数束ねて構成したブラシ状が好ましい。以下、シール部材40として金属性のブラシ40を例に挙げて説明する。
ブラシ40は、図1(b)および図2で示すように、可撓性および耐熱性に富む金属の多数の細い素線41を、金属あるいはセラミックス等の耐熱性に富む束ね部材42で束ねて構成され、素線41が被溶接物50の表面に対して鉛直状に接触するように、筐体30の下部開口縁部30-4に取り付けられる。
素線41の材質は、被溶接物50の材料が鉄鋼材料である場合、鉄鋼材料の融点に近い温度に対する耐熱性が求められ、耐食性を配慮してステンレス鋼またはニッケル基合金であることが望ましい。
減圧環境でのレーザー溶接に求められる10kPa以下の減圧環境状態を維持するためには、ブラシ40の素線41の直径は0.1mm以下、素線41の密度は90%以上であることが望ましい。ブラシ40の素線41が太い場合、必然的に素線41の密度が小さくなり、シール性能は低下すると同時に、溶接施工面51へ接触したときにブラシ40の素線41への反力も大きくなり、摺動性に支障をきたす恐れがある。
また、ブラシ40の丈尺(L)については、被溶接物50の形状に合わせて選定する必要があるが、摺動性能およびシール性能を考慮すると長い方が望ましい。たとえば、ブラシ40の丈尺(L)が短い場合、減圧部が負圧環境となりブラシ40全体に圧縮方向の力が作用しブラシ40の素線41が過度に撓むため、シール性と摺動性の両立が困難となる。このようなことから、10kPaの減圧環境をシールするためのブラシ40の丈尺(L)は30mm以上であることが望ましい。
なお、このように丈尺(L)が30mm以上のブラシ40の場合は、図3のように溶接施工面51が曲面である場合や、被溶接物の表面に大きな凹凸がある場合(図示せず)であっても、ブラシ40が溶接を終えたビードを乗り越えて移動する際にシール性を十分確保することができる。
また、ブラシ40の厚さ(D)に関しては、減圧時に加わる圧縮力に対する剛性、シール性能を考慮すると、できるだけ厚い方が望ましく、10kPaの減圧環境をシールするためには40mm以上の厚さ(D)であることが望ましい。
(作用)
次に、図1〜図3を参照して本実施形態の作用を説明する。
レーザー発振器の稼働に先立ち、まず空力窓生成装置20を稼働させる。すなわち、非対称型ノズル20−3cから超音速ガス流JSを噴出させてディフューザ20-4aに送り込む。これにより、レーザー光線通過路20-2の上部に空力窓20-1が生成され、これによって溶接チャンバー30-5内部は大気側から圧力的に隔離される。
空力窓20-1が生成された後、溶接チャンバー30-5内にシールドガス供給管31からシールドガスを供給し、溶接施工部51に吹付ける。これとほぼ同時期に真空ポンプ33を稼働させて真空引きし、溶接チャンバー30-5内を10kPa以下の減圧環境にする。
その後、図示しないレーザー発振器の稼働により、レーザー加工ヘッド(溶接トーチ)から照射されたレーザー光線LBは、空力窓20-1を通過したのちレーザー光線通過路20-2およびレーザー光線照射窓30-3を経て溶接チャンバー30-5内に入り、被溶接材50の溶接施工部51に照射されてレーザー溶接を行う。
このレーザー溶接時に溶接施工部51から真上方向に溶接プルーム(溶接ヒュームあるいはスパッタ)Pが急速に上昇するが、上昇した溶接プルーム(溶接ヒュームあるいはスパッタ)Pは、空力窓20-1を生成する超音速ガス流JSによってディフューザ20-4aへ排出されるために、空力窓生成装置20のさらに上方に位置するレーザー加工ヘッド10への損傷を回避することができる。この結果、減圧環境下で連続的に長時間のレーザー溶接施工を行なうことが可能となる。
図1に示す実施形態では、筐体30の下部開口縁部30−4の全周に設けたシール部材として機能するブラシ40は、耐熱性に優れた金属材料の素線を多数束ねて構成してあるので、大気側から溶接チャンバー30-5内への空気の侵入を防いで所定の差圧(10kPa)を保持しながら筐体30と一体的に被溶接材50の表面上を円滑に摺動することができる。しかも、溶接施工部51周辺の温度が数百℃になっても、熱的に劣化することはない。
(効果)
以上述べたように、本実施形態のレーザー溶接装置は、溶接チャンバー30-5を構成する筐体30の下部開口縁部30-4にシール性能、摺動性能および耐熱性能に優れた材料で構成したシール部材40を取り付けるようにしたので、溶接施工部51周辺が溶接後に1千℃以上の高温に達してシール部材の近傍も数百℃の高温環境に晒されたとしてもシール部材のシール性能、摺動性能および耐熱性能に支障をきたすことはなく、筐体内部圧力を安定して減圧環境に保持することができる。
[実施形態2]
図4は本発明の実施形態に係わるレーザー溶接装置を示す図であり、図4(a)は図4(b)をa−a線で切断し、矢視方向に見た平面図、図4(b)は図4(a)をb−b線で切断し、矢視方向に見た側断面図である。また、図5は、実施形態2に係わるレーザー溶接装置を用いて曲面状の表面を有する被溶接物を減圧環境で溶接する様子を示す図である。
本実施形態のレーザー溶接装置は、実施形態1で説明した空力窓生成装置20に替えて光学ガラスによる固体材窓20Aを適用したものであり、溶接プルームや溶接ヒューム、スパッタPの発生量が比較的少ない入熱量の小さい溶接条件で採用される。
本実施形態の場合も筐体30、および筐体30に取り付けられるシールドガス供給配管31や真空引き配管32、シール部材40に関しては実施形態1の場合と変わらない。
また、本実施形態の場合も実施形態1同様にシール部材40として、素線41の直径が0.1mm以下、素線41の密度が90%以上、丈尺(L)が30mm以上、厚さが40mm以上のブラシ40を採用するので、図5のように溶接施工面51が曲面である場合や、被溶接物50の表面に大きな凹凸がある場合(図示せず)であっても、ブラシ40が溶接を終えたビードを乗り越えて移動する際にシール性を十分確保することができ、大気圧環境に比べて深い溶け込み深さが得られる減圧環境でのレーザー溶接を行うことが可能であり、大型製品を効率的な溶接することが可能である。
(変形例)
以上説明した実施形態1および2では、筐体30の下部開口縁部30-4にシール材40を1段(一重)だけ取り付けるようにしたが、シール性能を高めるためにシール材40は下部開口縁部30-4の厚さ方向に沿って2段(二重)以上取り付けるようにしてもよい。
なお、以上説明の実施形態は例として提示したものであって発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10…レーザー加工ヘッド(溶接トーチ)、20…空力窓生成装置、20-1…空力窓、20-2…レーザー光線通過路、20-3…ノズル構成体、20-3a…溜気槽、20-3b…スロート部、20-3c…ノズル、20-4…ディフューザ構成体、20-4a…ディフューザ、20A…固体材窓、30…筐体、30-1…筒状部、30-2…蓋部、30-3…レーザー光線照射窓、30-4…下部開口縁部、30-5…溶接チャンバー、31…シールドガス供給配管、32…真空引き配管、33…真空ポンプ、40…シール部材(ブラシ)、40-1…素線、40-2…束ね部材、50…被溶接物、51…溶接施工部、LB…レーザー光線、P…溶接プルーム、溶接ヒューム、スパッタ。

Claims (5)

  1. 一端部を蓋部によって閉塞してレーザー加工ヘッドを固定し、他端部の開放端部を被溶接物の上に載置することにより溶接チャンバーを形成する筒形状の筐体と、
    前記筐体の開放端部に取り付けたシール部材と、
    前記溶接チャンバー内を大気圧に対して減圧環境状態にする減圧装置と、
    前記筐体および前記被溶接物を相対的に移動させる駆動装置と、を備えたレーザー溶接装置において、
    前記シール部材は、所定の丈尺の細い金属の素線を多数束ねて所定の厚みのブラシ状に形成され、かつ、シール性能、摺動性能および耐熱性能を備ていることを特徴とするレーザー溶接装置。
  2. 前記筐体の下部開口縁部にシール部材を前記開放端部の厚さ方向に沿って2段以上取付けたことを特徴とする請求項1記載のレーザー溶接装置。
  3. 前記シール部材は、素線の直径を0.1mm以下、素線密度を90%以上のステンレス鋼またはニッケル基合金で構成したことを特徴とする請求項1または2記載のレーザー溶接装置。
  4. 前記シール部材は、素線の丈尺が30mm以上、厚みが40mm以上であることを特徴とする請求項3記載のレーザー溶接装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザー溶接装置を用いて溶接をおこなうことを特徴とするレーザー溶接方法。
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