JP2014201821A - 複合体を用いた貴金属の回収方法 - Google Patents

複合体を用いた貴金属の回収方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014201821A
JP2014201821A JP2013081337A JP2013081337A JP2014201821A JP 2014201821 A JP2014201821 A JP 2014201821A JP 2013081337 A JP2013081337 A JP 2013081337A JP 2013081337 A JP2013081337 A JP 2013081337A JP 2014201821 A JP2014201821 A JP 2014201821A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
complex
composite
noble metal
solution
nanoparticles
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2013081337A
Other languages
English (en)
Inventor
功 大坪
Isao Otsubo
功 大坪
康裕 小西
Yasuhiro Konishi
康裕 小西
範三 斎藤
Norizo Saito
範三 斎藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka University NUC
Osaka Prefecture University PUC
Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
Osaka University NUC
Osaka Prefecture University PUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aisin Seiki Co Ltd, Osaka University NUC, Osaka Prefecture University PUC filed Critical Aisin Seiki Co Ltd
Priority to JP2013081337A priority Critical patent/JP2014201821A/ja
Publication of JP2014201821A publication Critical patent/JP2014201821A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Landscapes

  • Treatment Of Water By Oxidation Or Reduction (AREA)
  • Water Treatment By Sorption (AREA)
  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】産業利用可能な形態で貴金属を回収する方法を提供する。【解決手段】ナノ粒子として貴金属を回収する貴金属の回収方法であって、貴金属が溶解した試料溶液中で、還元細菌の培養過程で生産される金属還元物質と培地成分との複合体を接触させ、前記試料溶液中に存在する貴金属を前記複合体に吸着させ、前記貴金属が吸着した複合体を、無機酸によりpH1.5以下の水素イオン指数下に調整することにより、前記複合体を溶解させて前記貴金属をナノ粒子として脱離させ、前記貴金属ナノ粒子と前記複合体の溶解液とを固液分離して貴金属ナノ粒子を回収する回収方法。前記還元細菌が鉄還元菌のシワネラ属の細菌である。前記複合体が1〜20nmの空隙を有する構子状構造体であり、前記貴金属ナノ粒子が、粒径1〜20nmである。【選択図】図2

Description

本願発明は、還元細胞の培養過程で生産される金属還元物質と培地成分との複合体を用いた貴金属の回収方法に関するものである。
電子工業における半導体材料、液晶ディスプレイ、燃料電池等の電子機器、医薬や化学工業や自動車工業における触媒等、様々な産業分野において、微量の金、銀、白金、パラジウム等の貴金属が使用されている。また、これらの貴金属は、電子機器や触媒等の製造工程から発生する廃水やめっき液、スクラップ等にも含有されている。
貴金属は、白金族金属のように資源的に希少な金属であったり、また、鉱脈が存在したとしても採掘や精錬に困難を極めるものが多い。また、白金族金属のイリジウム等のように、固有の含有鉱物はなく、他の鉱物中に含まれる副産物として生産される微量成分であったりする場合も多い。このため、貴金属を効率よく回収する技術の構築が望まれており、特に、廃水やめっき液、スクラップ等から、貴金属を回収するリサイクル技術の構築が望まれていた。また、環境汚染の観点からも、工場廃水から貴金属を回収し除去した後に環境中に排水する必要もあった。
従来において、貴金属を回収するためには、イオン交換樹脂、キレート樹脂等の合成樹脂製吸着剤を用いる方法などが知られていた。しかし、イオン交換樹脂等の合成樹脂製吸着剤は、高価であり、再生等の煩雑な処理を要求する。したがって、処理が簡単で貴金属を還元して回収できる技術の構築が依然として望まれていた。
かかる要望に応えるべく、本願発明者らは、鉄還元細菌を用い、貴金属イオンから貴金属を還元して回収する方法を開発した(例えば、特許文献1参照)。また、本願発明者らは、鉄還元細菌を用い、インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物からインジウム、ガリウムまたはスズを回収する、金属の回収方法をも提案していた(例えば、特許文献2参照)。しかし、鉄還元細菌を用いる場合、その回収率などは培養条件などに影響される。このため、保存性を有し、安定して供給する金属回収技術の構築がさらに好ましいと考えた。
そこで、本願発明者らは、還元細菌の培養過程で得られる金属還元物質と培地成分が化合した複合体が、溶液中に存在するイオン性を有する物質を、迅速かつ効率よく吸着する吸着剤として機能することを報告した(例えば特許文献3)。更に、当該特許文献3には、当該複合体が、金、白金、パラジウム等の貴金属イオンを吸着させる機能を有し、かつ、これらを還元する機能をも有することを確認したことが記載されている。
特開2007−113116号公報 特開2011−26701号公報 特開2013−5794号公報
しかしながら、特許文献3の技術は、還元細菌の培養過程で得られる金属還元物質と培地成分とが化合した複合体の有する機能のうち、貴金属に対する吸着剤及び還元剤としての機能に関する解明が焦点になっている。一方、特許文献3の技術を、鉱物資源からの製錬やリサイクル用途等の産業利用に供するためには、上記複合体に吸着した貴金属イオンを還元粒子として当該複合体から脱離させて回収することが必要である。しかしながら、特許文献3には、上記複合体からの貴金属の脱離、及びそれに続く回収手法に関しての詳細な記載はなかった。実施例において、pH条件を酸性側にすることでジスプロシウムを複合体から脱離及び回収できたことが記載されているが、回収されたジスプロシウムは再び酸化され再溶出した状態にあると考えられる。そのため、産業利用に供するためには、ジスプロシウムの溶出液の濃縮や再還元等、煩雑な処理を必要とした。したがって、貴金属を還元し固形物として、直接産業利用可能な形態で回収することができる技術の構築が依然として望まれていた。
そこで、本願の発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した。そして、本願発明者らの上述の先行特許出願を改良すべく、還元細菌の培養過程で形成される金属還元物質と培地成分とが化合して得られた複合体からの貴金属の脱離及び回収条件について検討を重ねた結果、貴金属イオンを吸着及び還元した複合体に、無機酸を特定条件下で作用させることにより当該複合体から貴金属を還元粒子として脱離、及び回収できることを見出した。更に、回収される貴金属がナノサイズの粒子であることを見出し、これらの知見に基づいて本願発明を完成するに至った。
すなわち、以下の〔1〕〜〔10〕に示す発明を提供する。
〔1〕ナノ粒子として貴金属を回収する貴金属の回収方法であって、
貴金属が溶解した試料溶液を、還元細菌の培養過程で生産される金属還元物質と培地成分との複合体に接触させ、前記試料溶液中に存在する貴金属イオンを前記複合体に吸着還元させることで貴金属ナノ粒子として析出させる工程、
前記複合体を無機酸によりpH 1.5以下に調整された条件下で溶解させて、前記貴金属ナノ粒子を前記複合体から脱離させる工程、
前記貴金属ナノ粒子と前記複合体の溶解液とを固液分離して、前記貴金属ナノ粒子を回収する工程、とを有する回収方法。
〔2〕前記還元細菌が、少なくとも1種類の生物鉱物化機能を有する細菌である。
〔3〕前記培地成分が、電子供与体と電子受容体を含む。
〔4〕前記還元細菌が、鉄還元細菌である。
〔5〕前記鉄還元菌は、シワネラ属細菌である。
〔6〕前記複合体が、1〜20 nmの空隙を有する格子状構造体である。
〔7〕前記貴金属ナノ粒子が、粒径1〜20 nmである。
〔8〕前記無機酸が、塩酸又は硫酸である。
〔9〕前記貴金属が、金又は白金である。
〔10〕前記無機酸が硫酸であり、前記貴金属がパラジウムである。
上記〔1〕〜〔10〕の構成によれば、試料溶液から貴金属のナノ粒子を回収する方法を提供することができる。貴金属をナノ粒子として回収することができるため、電子機器や触媒への利用等、直接、産業利用に供することができる高付加価値技術を提供することができる。そして、回収に際して、複合体及び無機酸以外の化学物質を使用しないことから、回収コストの削減に貢献することができる。また、回収に要する時間は、複合体による貴金属イオン吸着反応から固液分離による貴金属のナノ粒子の回収までを短時間に行うことができる。特に、高濃度(数千ppm)〜低濃度(数ppm)までの広範な濃度の試料溶液に適用することができ、従来の回収技術に比べて大幅に工程、及び回収に要する時間を短縮することができる。したがって、迅速かつ簡便な貴金属の回収方法を提供することができる。そして、貴金属及び無機酸の種類にもよるが、収率90%以上であり、試料溶液から効率よく貴金属を回収することができる。
特に、上記〔10〕の構成によれば、パラジウム等、貴金属の中でイオン傾向が高いものに対しても溶出を抑制し、産業上利用価値の高いナノ粒子として回収可能な技術を提供できる。
図1は、複合体をミクロトームにより断片化しTEM観察した電顕写真であり、複合体は、繊維状物質又はこの繊維状物質の集合体であることを示す。 図2は、複合体の作製と溶解条件の検証を行った実施例1の結果を示すグラフであり、複合体が溶解するpH条件の検討結果を示し、横軸は塩酸(HCL)により調整したpH条件を、縦軸は鉄(Fe)及びリン(P)濃度(ppm)を表す。 図3は、複合体により吸着還元された金粒子の回収方法の検証を行った実施例2の結果を示すグラフであり、複合体と塩化金(AuCl3)溶液との反応後に、反応溶液中に残存した金(Au)の濃度を示し、横軸は反応経過時間(分)を、縦軸は金(Au)の濃度(ppm)を表す。 図4は、複合体により吸着還元された金粒子の回収方法の検証を行った実施例3の結果を示す写真であり、複合体から脱離及び回収した沈殿物の電子顕微鏡写真である。 図5は、複合体により吸着還元された白金粒子の回収方法の検証を行った実施例4の結果を示すグラフであり、複合体とヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)溶液との反応後に、反応溶液中に残存した白金(Pt)の濃度を示し、横軸は反応経過時間(分)を、縦軸は白金(Pt)の濃度(ppm)を表す。 図6は、複合体により吸着還元された白金粒子の回収方法の検証を行った実施例5の結果を示す写真であり、複合体から脱離及び回収した沈殿物の電子顕微鏡写真である。 図7は、複合体により吸着還元されたパラジウム粒子の回収方法の検証を行った実施例6の結果を示すグラフであり、複合体とパラジウム塩酸(PdCl2)溶液との反応後に、反応溶液中に残存したパラジウム(Pd)の濃度を示し、横軸は反応経過時間(分)を、縦軸はパラジウム(Pd)の濃度(ppm)を表す。 図8は、複合体により吸着還元されたパラジウム粒子の回収方法の検証を行った実施例7の結果を示すグラフであり、複合体と無機酸との反応後の溶解液中のパラジウム(Pd)濃度を示し、横軸は反応pH条件を、縦軸はパラジウム(Pd)濃度(ppm)を表し、無機酸として塩酸(HCl)と硫酸(H2SO4)とを比較する。 図9は、複合体により吸着還元されたパラジウム粒子の回収方法の検証を行った実施例7の結果を示す写真であり、複合体から脱離及び回収した沈殿物の電子顕微鏡写真である。 図10は、複合体を用いた金めっき液からの金粒子の回収について検証した実施例8の結果を示すグラフであり、複合体と金めっき液との反応後に、反応溶液中に残存した金(Au)の濃度を示し、横軸は反応経過時間(分)を、縦軸は金(Au)の濃度(ppm)を表す。 図11は、複合体を用いた金めっき液からの金粒子の回収について検証した実施例8の結果を示す写真であり、複合体から脱離及び回収した沈殿物の電子顕微鏡写真である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
〔貴金属の回収方法〕
本願発明の貴金属の回収方法は、還元細菌の培養過程で生産される金属還元物質と培地成分との複合体を利用するものである。そして、当該複合体は、イオン性を有する物質を吸着する性質を有し、かかる性質を利用して貴金属を回収するものである。
本願発明の貴金属の回収方法は、以下の工程を有する。
1.貴金属が溶解した試料溶液を、還元細菌の培養過程で生産される金属還元物質と培地成分との複合体に接触させ、前記試料溶液中に存在する貴金属イオンを前記複合体に吸着還元させることで貴金属ナノ粒子として析出させる工程(吸着還元工程)。
2.前記複合体を無機酸によりpH 1.5以下に調整された条件下で溶解させて、前記貴金属ナノ粒子を前記複合体から脱離させる工程(脱離工程)。
3.前記貴金属ナノ粒子と前記複合体の溶解液とを固液分離して、前記貴金属ナノ粒子を回収する工程(固液分離工程)。
ここで、本願発明の方法の対象となる貴金属としては、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムが例示される。そして、貴金属には、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金の白金族金属が含まれる。回収の対象とする貴金属は、一種類であってもよく、複数種であってもよい。
そして、試料溶液は、上記貴金属を含み得るpH2.5〜10.0程度の範囲である溶液である限り何れをも試料溶液とすることができる。ここで、貴金属を含み得る溶液とは、貴金属が含有していることが予め判明しているか、貴金属が含有していると考えられる試料のことである。例えば、貴金属を含み得る工業廃水やめっき液等が挙げられる。また、回収対象となる貴金属が電子材料、電子機器、鉱物等に含まれる場合であっても、適当な溶媒に溶解させて当該貴金属を溶液状態にすることにより、これを試料溶液とすることができる。つまり、試料溶液中に、貴金属がイオンとして存在しているものが対象となる。
また、試料溶液中に含まれる貴金属イオンの濃度についても特に制限はない。本願発明の貴金属の回収方法は、高濃度(数千ppm)〜低濃度(数ppm)まで広範な濃度の試料溶液に同一工程で適用することができるため、広範な用途に使用することができる。
以下、本願発明の貴金属の回収方法の各工程について詳述する。
(吸着還元工程)
本願発明の貴金属の回収方法は、貴金属が溶解した試料溶液を、還元細菌の培養過程で生産される金属還元物質と培地成分との複合体に接触させ、前記試料溶液中に存在する貴金属イオンを前記複合体に吸着還元させることで貴金属ナノ粒子として析出させる工程を有する。
本願発明の方法で、試料溶液中の貴金属を吸着するために利用される複合体は、還元細菌の培養過程で生産される金属還元物質と培地成分との化合物である。複合体に関しては、先行技術の項で説明した特許文献3(特開2013−5794号公報)に詳述されており、これは本願発明者らの先行特許出願発明である。
ここで、還元細菌としては、生物鉱物化機能を有する細菌であればよい。生物鉱物化機能とは、生物が無機鉱物をつくる機能をいう。生物鉱物化機能を有する還元細菌としては、鉄還元細菌、セレン還元細菌など公知の金属イオン還元菌が挙げられる。本発明の複合体は、還元細菌が作り出した金属還元物質と培地成分との化合物であると考えられる。したがって、金属還元物質を作り出せる還元細菌であれば、使用することができる。これらの還元細菌のうち、好ましい還元細菌は鉄還元細菌である。使用することができる鉄還元細菌としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。還元細菌は、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。均一な金属還元物質を作るには、還元細菌を単独で用いるのが好ましい。
ここで、鉄還元細菌とは、電子供与体から電子の供給を受けて、鉄を還元する細菌である。このような鉄還元菌としては、例えば、ゲオバクター属(代表種:Geobacter metallireducens:ゲオバクター メタリレデューセンス:ATCC(American Type Culture Collection)53774株)、デスルフォモナス属(代表種:Desulfuromonas palmitatis:デスルフォモナス パルミタティス:ATCC 51701株)、デスルフォムサ属(代表種:Desulfuromusa kysingii:デスルフォムサ キシンリDSM(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)7343株)、ペロバクター属(代表種:Pelobacter venetianus:ペロバクター ベネティアヌス:ATCC2394株)、シワネラ属(Shewanella algae:シワネラ アルゲ(以下、「S.algae」という):ATCC 51181株、Shewanella oneidensis:シワネラ オネイデンシス(以下、「S.oneidensis」という):ATCC 700550株、シワネラ プトレファシエンス(以下、「S.putrefacience」という):ATCC BAA-453株)、フェリモナス属(Ferrimonas balearica:フェリモナス バレアリカ:DSM 9799株)、エアロモナス属(Aeromonas hydrophila:エアロモナス ヒドロフィラ:ATCC 15467株)、スルフロスピリルム属(代表種:Sulfurospirillum barnesii:スルフロスピリルム バーネシイ:ATCC 700032株)、ウォリネラ属(代表種:ウォリネラ スシノゲネス:Wolinella succinogenes:ATCC 29543株)、デスルフォビブリオ属(代表種:Desulfovibrio desulfuricans:デスルフォビブリオ デスルフリカンス:ATCC 29577株)、ゲオトリクス属(代表種:Geothrix fermentans:ゲオトリクス フェルメンタンス:ATCC 700665株)、デフェリバクター属(代表種:Deferribacter thermophilus:デフェリバクター テルモフィルス:DSM 14813株)、ゲオビブリオ属(代表種:Geovibrio ferrireducens:ゲオビブリオ フェリレデューセンス:ATCC 51996株)、ピロバクルム属(代表種:Pyrobaculum islandicum:テルモプロテウス アイランディカム:DSM 4184株)、テルモトガ属(代表種:Thermotoga maritima:テルモトガ マリティマ:DSM 3109株)、アルカエグロブス属(代表種:Archaeoglobus fulgidus:アルカエグロブス フルギダス:ATCC 49558株)、ピロコックス属(代表種:Pyrococcus furiosus:ピロコックス フリオサス:ATCC 43587株)、ピロディクティウム属(代表種:Pyrodictium abyssi:ピロディクティウム アビーシイ:DSM 6158株)などが挙げられる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、上記性質を有する限り何れの細菌をも利用することができる。これらの鉄還元細菌は、嫌気性細菌である。
鉄還元細菌のうち、好ましいのはシワネラ属の鉄還元細菌である。特に、S.algae、S.oneidensis、S.putrefacienceが好ましい。
鉄還元細菌は、当該細菌に適した培地を用いて、増殖及び維持を行えばよい。例えばS.algaeは、例えば、pH7.0で、電子供与体として乳酸ナトリウム(32mol/m3)が、電子受容体としてFe(III)イオン(56mol/m3)が含まれている、クエン酸第二鉄培地(ATCC No.1931)を用いて、回分培養して増殖させ、維持する。鉄イオンの塩は、この例では、クエン酸塩であるが、使用する培地、使用する鉄還元細菌の種類により、適宜選択すればよい。例えば、電子供与体として、ギ酸塩、水素ガス、乳酸塩、ピルビン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、エタノール、エチレングリコール、フルクトース、フマル酸塩、グルコース、グリセロール、リンゴ酸塩、フェノール、コハク酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。電子受容体としては、Mn(III)、Mn(IV)、Fe(III)、Cr(VI)、U(VI)などが挙げられる。
そして、還元細菌が金属還元反応を起こす培地で培養することにより、本願発明の方法で利用される複合体を構成する金属還元物質が得られる。金属還元物質は、例えば以下のようにして生産する。以下の例では、鉄還元菌を用いて、複合体を製造する場合について説明する。他の還元細菌を用いる場合であっても、同様である。
鉄還元細菌が金属還元反応を起こす培地で、通常の温度、環境で細菌培養及び増殖を行う。この培地には、通常電子受容体としてFe(III)イオンが含まれている。鉄還元細菌は、培地に含まれる乳酸やクエン酸などを酸化して電子を取り出し、細胞増殖する。取り出した電子は、Fe(III)イオンを還元して、Fe(II)イオンにする。この結果、培養後24〜36時間経過し、増殖末期になると、前記鉄培地中の培地が黒色から褐色に変色する。その後さらに1週間程度そのまま培養を続けると細菌によるFe(III)イオン還元量が増大する。培地には、リン酸塩が含まれる。還元反応により得られたFe(II)イオンとリン酸のリンとが化合物を形成する。また、培地中に微量成分が含まれる。この微量成分を複合体に取り込むこととしてもよい。例えば、培地中に、マンガン、カリウムなど他の成分を加えておく、あるいは培地の添加成分量を増やすことで、鉄とリン以外の成分が含まれる複合体を得ることができる。複合体は、培地の底層に沈殿する。この結果、前記培地が褐色から肌色へ変色する。
複合体は、リンを質量比で全体の約1/4を含む。鉄とリンを主成分とする複合物の場合は、鉄とリンの含有量は、質量比で略3:1である。複合体がカリウム、マンガンなどの他の成分をさらに含む場合は、鉄の含有率が低下する。培地に含ませる他の成分の含有量や種類を変えることで、吸着剤や還元剤の機能を変えることができる。吸着剤や還元剤の機能とは、例えば吸着されるあるいは還元される物の種類や量である。また、培地に含ませる他の成分の含有量や種類を変えることで、吸着や還元以外の新たな機能を得ることができる。培地に含ませる他の成分には、上記する電子受容体やカリウムなど複合体に取り込まれる成分を用いることができる。カリウムは、塩化カリウムなどのようにpHに影響を与えないもの、あるいは水酸化カリウム、炭酸カリウムのようにpH調整剤として加えるものであってもよい。このように、複合体の構成成分として、鉄とリン以外を含ませることにより、吸着する物質と吸着量を適宜変更することができる。
そして、複合体は、繊維状物質またはこの繊維状物質のサブミクロン径の略球形集合体である。実施例で説明するように、金属還元物質と培地中のリンや他の成分との化合物は、初期には繊維状である。培養を続けると複合体は、繊維状物質のサブミクロン径の略球形集合体となる。本発明の複合体は、繊維状物質であっても、この繊維状物質の略球形集合体であっても、同様の機能を有する。したがって、使用する目的に応じて、形状を選択して使用すればよい。また、本発明の複合体は、繊維状物質またはこの繊維状物質のサブミクロン径の略球形集合体であることから、反応表面積が非常に広い。この結果、吸着剤や還元剤として用いる場合に、処理効率に優れる。そして、複合体は、繊維状物質又はこの繊維状物質の集合体が格子状構造(図1)を形成し、その立体構造の表面又は内部には、1〜20 nm四方程度の微細な空隙を多数有する。
複合体は、培養した培地を遠心分離等の公知の分離方法を用いて、固液分離することで得られる。分離した固体分は、イオン交換水、蒸留水などを加えて攪拌、混合して洗浄し、再度遠心分離などで、固体分を回収し、状態保持のために少量のイオン交換水や蒸留水などを注入し、静置しておく。 上記固体分は、複合体と細菌との混合物である。少量のイオン交換水や蒸留水などを注入した状態で、室温で、数日間放置すると、上記固体分は、細菌層(上澄)と複合体層(下層)に分離する。上澄みの細菌層を廃棄することで、複合体を得ることができる。これらの処理は、使用する鉄還元細菌が、嫌気性細菌であっても、好気性条件下で行うことができる。また、得られた複合体は、水分の蒸発を防ぐ状態(例えば、蓋付ビンに入れるなど)におけば、室温で保管することができる。また、この状態で、数週間おいても、吸着能力や還元能力を維持することができる。
得られる複合体は、使用する還元細菌の種類により異なる。ただし、例えば鉄のように還元細菌が還元する対象が共通し、還元状態(還元された価数が同じなど)が共通し、近似した培地を用いた場合は、近似した複合体が得られる。例えば、S. algae、S. oneidensis、S. putrefacienceを用いた場合、同様の繊維状物質またはこの繊維状物質のサブミクロン径の略球形集合体を得ることができる。また、複合体の組成が、鉄とリンを含むことも、共通する。本明細書中で、略球形集合体とは、球形であってもよく、球形の一部に欠損があってもよいということを意味する。シワネラ族の鉄還元細菌を用いる場合、複合体は繊維状物質またはこの繊維状物質のサブミクロン径の略球形集合体である。略球状集合体の多くは、液中で粒径100nm〜1μmであり、粒径2μm程度の物も存在し、平均粒径は、サブミクロン程度である。また、この複合体の外周部は、内部よりもリンが比較的多く存在し、吸着機能を有する。
そして、複合体は、吸着性であり、試料溶液中に存在している貴金属を吸着する。この複合体による貴金属の吸着は、イオン交換反応で行われる。したがって、試料溶液として、貴金属がイオンとして存在しているものが対象となる。そして、複合体による貴金属イオンの吸着は、複合体の格子状構造の空隙内に貴金属イオンを取り込むことによって行われる。
複合体による貴金属イオンの吸着は、酸性〜アルカリ性条件の広いpH範囲で行うことができる。例えば、pH 2.5〜10.0程度の範囲である。つまり、複合体は、強酸性条件〜中性条件〜強アルカリ条件下まで、広範なpH領域で試料溶液中に存在する貴金属イオンを吸着することができる。したがって、貴金属イオンの価数や試料溶液のpH等に関係なく、効果的に貴金属イオンを吸着することができる。
そして、複合体は、試料溶液に存在する貴金属イオンをイオン交換により吸着させるだけなく、貴金属イオンを還元することができる。つまり、鉄とリンを主成分とする複合体は、貴金属イオンを還元し貴金属として析出させることができる。また、複合体の構成成分を上述の通り、鉄とリン以外の成分を含ませることで、還元する貴金属の還元量等を適宜変更することができる。
そして、複合体による貴金属イオンの還元は、貴金属イオンを取り込んだ複合体の格子状構造の空隙内で行われる。つまり、試料溶液中の貴金属イオンは複合体内部及び表面に形成された微細な空隙に吸着し、そこで還元されて貴金属粒子として析出する。このように、貴金属粒子のサイズは複合体の立体構造に起因することとなる。したがって、貴金属粒子のサイズは、複合体に形成された空隙内に収容可能なサイズの粒子であり、粒径1〜20 nm程度のナノ粒子となる。
(脱離工程)
本願発明の貴金属の回収方法は、上記吸着還元工程の後、前記複合体を無機酸によりpH 1.5以下に調整された条件下で溶解させて、前記貴金属ナノ粒子を前記複合体から脱離させる工程を有する。
脱離工程では、複合体を無機酸によりpH 1.5以下に調整された条件下におく。このとき、複合体は、還元された貴金属ナノ粒子を担持した状態にある。そして、複合体と無機酸の反応により、前記複合体本体が溶解する一方で、貴金属はナノ粒子として複合体から脱離する。
複合体と無機酸との反応は、複合体に無機酸を添加、若しくは両者を混合してもよい。このとき、複合体は、吸着工程後の反応溶液中に分散させた状態であってもよく、また複合体のみを固液分離した後、適当な液体に分散させた状態であってもよい。また、固液分離後の複合体に直接、無機酸を接触させてもよい。
本願発明の方法において、pH 1.5以下に調整するために用いる無機酸は、無機化合物の酸である。無機酸は、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、リン、硫黄、塩素、臭素、ヨウ素等の非金属元素を含む酸基が水素と結合してできた酸である。複合体の溶解及び貴金属の還元に影響を与えない限り、これらの無機酸の塩を使用することもできる。具体的には、塩酸、硫酸、ホウ酸、硝酸等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
ここで使用される無機酸の種類は、pHを1.5以下の強酸性条件に溶液を調整できるものであれば特に制限はなく、貴金属の種類に応じて選択することが好ましい。好適な無機酸と貴金属の種類を例示すると、金や白金等の場合には無機酸として塩酸又は硫酸の使用が好ましく、パラジウムの場合には無機酸として硫酸の使用が好ましい。このように構成することにより貴金属を再溶出することなく、還元された貴金属の粒子として回収することができる。
なお、無機酸の濃度や量は適宜設定され、酸の種類や複合体の状態等に依存する。そして、pHを1.5以下に調整できる限り特に制限はない。また、pHを1.5以下の強酸性条件に溶液を調製できるものであれば、有機酸およびその塩であってもよい。このようにpHを1.5以下に調整することで複合体を溶解することができ、これにより貴金属を固体のナノ粒子として複合体から脱離させることができる。そして、pHは1.5以下の強酸性であり、好ましくは1.0〜1.5程度であるが、複合体を溶解し貴金属を複合体から脱離させることができる限り特に制限はない。
(固液分離工程)
本願発明の貴金属の回収方法は、上記脱離工程の後、前記貴金属ナノ粒子と前記複合体の溶解液とを固液分離して、前記貴金属ナノ粒子を回収する工程を有する。
固液分離工程は、複合体から脱離した貴金属と、複合体の溶解液とを分離できる手段であれば、公知の手段を用いて行うことができる。例えば、遠心分離、濾過、沈降濃縮等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ここで、遠心分離とは、遠心力により、混合状態にある液体と固体を分離することであり、超遠心分離機等の遠心分離機を利用することにより行うことができる。濾過とは、液体中に分散混合している固体を、多孔質の層や膜等の濾材によって捕集分離ことである。濾過機構は、加圧、減圧、重力、遠位力等の何れを利用するものであってもよい。ナノ粒子は微細な粒子であるため、ナノ粒子を捕集できるよう濾材の濾過孔の孔径を選択する。濾材として、アセチルセルロース、ニトロセルロース、塩化ビニル等のフィルターが例示されるが、これらに限定されるものではない。沈降濃縮とは、液体中に分散混合している固体を重力の作用による自然沈降現象を利用して、高濃度のスラッジとして液体から分離するものである。沈降濃縮を利用する場合には、回収対象の貴金属がナノ粒子化して一部拡散状態であるため、充分な沈降時間が必要である。
また、複合体由来成分の除去を確実にするため、固液分離後の貴金属粒子をイオン交換水等で洗浄することもできる。このとき、洗浄は、複合体溶出成分の水酸化物沈殿を予防するため、pH3程度の条件下で行うことが好ましい。そして、回収された金属粒子が凝集している場合には、乳鉢や超音波ホモジナイザー等の粉砕機を利用して分散化させることもできる。
〔ナノ粒子〕
本願発明の貴金属の回収方法は、貴金属をナノ粒子として回収するものである。ナノ粒子とは、平均粒径が1μm未満、一般には、粒子の直径が1〜100nm程度の超微粒子を指すが、ここでは、特に好ましくは1〜20 nmのナノ粒子として貴金属を回収するものである。上記したように、回収されるナノ粒子の粒径は、複合体の立体構造に起因する。
ナノ粒子は、通常の大きさの固体や当該固体を溶解させた溶液と比べて、その高表面積によって拡散性及び溶解性等が増大し、更に活性や反応性等の機能を向上し得るとして、医療、農薬、化粧品、環境、電子デバイス、化学反応触媒等、幅広い技術分野への応用が期待されている。本願発明の貴金属の回収方法により、貴金属をナノ粒子として回収することができるため、直接、産業利用に供することができるため、高付加価値技術を提供することができる。
〔回収時間〕
また、本願発明の貴金属の回収方法は、複合体の吸着還元反応からナノ粒子としての回収までに要する時間は2時間以下であり、従来法に比べて回収に要する時間を大幅に短縮することができる。上述の通り、本願発明の貴金属の回収方法は、高濃度(数千ppm)〜低濃度(数ppm)まで広範な濃度の試料溶液に同一工程で適用することができる点が、回収時間の短縮に貢献している。従来においては、めっき液を例にとって説明すると、〜数百ppmは電解回収、〜数十ppmはイオン交換樹脂回収、〜数ppmは活性炭回収と、濃度に応じて回収方法を選択し組み合わせていたことから、回収に数十〜200時間程度必要であった。したがって、本願発明の貴金属の回収方法により、工程の簡略化、及び大幅な回収時間の短縮を図ることができる。
〔有用性〕
以上説明したとおり、本願発明の貴金属の回収方法は、試料溶液から貴金属のナノ粒子を回収する方法である。そして、貴金属をナノ粒子として回収することができるため、電子機器や触媒への利用等、直接、産業利用に供することができる高付加価値技術を提供することができる。そして、回収に際して、複合体及び無機酸以外の化学物質を使用しないことから、回収コストの削減に貢献することができる。また、回収に要する時間は、複合体による貴金属イオン吸着反応から固液分離による貴金属のナノ粒子の回収までを短時間に行うことができる。特に、高濃度(数千ppm)〜低濃度(数ppm)までの広範な濃度の試料溶液に適用することができ、従来の回収技術に比べて大幅に工程、及び回収に要する時間を短縮することができる。したがって、迅速かつ簡便な貴金属の回収方法を提供することができる。そして、貴金属及び無機酸の種類にもよるが、収率90%以上であり、試料溶液から効率よく貴金属を回収することができる。
また、複合体からの貴金属の脱離及び回収を行うためのpH調整のための無機酸として硫酸を選択することにより、パラジウム等の貴金属の中でイオン傾向が高いものに対しても溶出を抑制することができ、産業上利用価値の高いナノ粒子として回収可能な技術を提供することができる。
以下、本願発明を実施例によって更に詳細に説明する。しかしながら、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1.複合体の作製と溶解条件の検証
本実施例では、貴金属イオンに対する吸着能を有する複合体を作製すると共に、前記複合体から貴金属を回収するための複合体の溶解条件の検証を行った。
(方法)
貴金属イオンに対する吸着能を有する複合体は、本願発明者らの先行特許出願(特開2013−5794号公報)に準拠した方法にて作製した。具体的には、鉄還元細菌S.algae(ATCC 51181株)をクエン酸第二鉄培地(ATCC No.1931)を用いて培養及び増殖を行った。この培地には、電子受容体として鉄(III)イオン(Fe(III)イオン)が56mol/m3含まれており、細菌の増殖過程で呼吸源として培養液内で排出される。増殖末期になり、前記鉄培地中のFe(III)イオンが細菌により還元され培地が黒色から褐色に変色した。細菌は、通常24〜36時間で増殖末期をむかえる。その後1週間程度そのまま培養を続けると細菌によるFe(III)イオンの還元量が増大し、前記培地が褐色から肌色へ変色した。還元された物質は、培地の低層に沈殿した。この状態まで培養した培養液を、8000rpmでの遠心分離で固液分離して沈殿物を回収した。続いて、沈殿物に、洗浄のためイオン交換水を注入して攪拌し、遠心分離で沈殿物を回収した。状態保護のため、この沈殿物に少量のイオン交換水を注入した。
回収された沈殿物は、還元物と細菌が混合されている状態である。そして、この還元物には、還元細菌の培養過程で生産される金属還元物質と培地成分が化合した複合体が含まれることが上述の本願発明者らの先行特許出願で確認されている。複合体を含み得る還元物のみを採取するため、回収された沈殿物を室温下で数日放置した。沈殿物は、細菌層(上澄)と還元物層(下層)に分離し、上澄みの細菌層を廃棄して還元物層だけを採取した。ここで採取された還元物層に含まれる複合体は、貴金属に対して吸着還元機能を持つことが上述の本願発明者らの先行特許出願において確認されている。そこで、この還元された貴金属を複合体から脱離させる目的で、複合体を溶解させるpH条件についての検討を行った。
ここで、複合体を溶解させるために、無機酸でpH条件を調整した。本実施例では、無機酸として塩酸を使用した。具体的には、予めイオン交換水と5N HCLで調合したpHの異なる溶解液を複数種用意した。そして、上記で採取した複合体の懸濁液0.4mLとpH濃度の異なる各溶解液0.4mLを混合し、攪拌しながら10分間反応させた。反応後のpHを測定すると共に、反応後溶液を2000rpmにて10分間遠心分離し、溶解した上澄み液を抽出した。この上澄み液の成分を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)で濃度測定した。なお、複合体の主成分は鉄(Fe)とリン(P)であり、この2つの元素で99%以上を占めるため、測定対象元素はFeとPとした。
(結果)
結果を図2に示す。図2は、複合体が溶解するpH条件の検討結果を示すグラフであり、横軸はHCLにより調整したpH条件を、縦軸はFe及びP濃度(ppm)を表す。この結果より、反応pHの低下により、複合体の主成分であるFe及びPが比例して溶出され、pH 1.5以下になると飽和状態に達し、その溶出量に変化がほとんどないことが確認できた。また、pH 1.5以下の検体では、上記で得られた上澄み液を2000rpmにて10分間遠心分離した後の状態で沈殿物が見られないことから、この複合体はpH 1.5以下の条件下で全量溶解し、溶液状態になることが判明した。
実施例2.複合体により吸着還元された金粒子の回収方法の検証−1
本実施例では、上記実施例1で作製した複合体による金イオンの吸着及び金粒子への還元、それに続く、複合体からの金粒子の脱離及び回収について検証した。ここでは、特に、複合体による金イオンの吸着及び金粒子への還元について検証した。
(方法)
回収対象となる試料溶液として、初期濃度5000ppmに濃度調整した塩化金(AuCl3)溶液を使用し、試料溶液中に含まれる金(III)イオン(Au(III)イオン)の回収について評価した。20mLのAuCl3溶液に対し、上記実施例1で作製した複合体の懸濁液4mL(複合体乾燥重量0.8g)を添加し、総量24mLで反応させた。反応中、反応溶液は回転子により攪拌し、経過時間毎に500μLずつ採取し、遠心分離にて固液分離して複合体を分離回収した。分離後、反応溶液に残存する金(Au)濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)にて測定した。
また、コントロールとして、複合体と反応させなかったことを除いては、上記と同様に初期濃度5000ppmのAuCl3溶液中のAu濃度を測定した。
(結果)
結果を図3に示す。図3は、複合体とAuCl3溶液との反応後の反応溶液中に残存したAu濃度を示すグラフであり、横軸は反応経過時間(分)を、縦軸はAu濃度(ppm)を表す。初期濃度5000ppmのAuCl3反応溶液中のAu濃度は、15分後には測定下限以下となった。これより反応溶液中のAuイオンの全量が複合体に吸着されていることが理解できる。また、反応溶液は、Auイオンの還元を示す茶系色へと変化していることも確認できた。これらの結果より、複合体との反応によりAuイオンが還元されていることが推測できる。
実施例3.複合体により吸着還元された金粒子の回収方法の検証−2
本実施例では、上記実施例1で作製した複合体による金イオンの吸着及び金粒子への還元、それに続く、複合体からの金粒子の脱離及び回収について検証した。ここでは、特に、上記実施例2における複合体による吸着及び還元の結果、得られた金粒子の複合体からの脱離及び回収について検証した。
(方法)
上記実施例2の誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)による反応溶液中の金(Au)濃度測定により、反応溶液中のAuイオンの全量が複合体に吸着されたことが確認できた。上記実施例2で得られたAuが吸着した複合体10mLを、上記実施例1にて判明した複合体溶解条件を基に、pHを測定しながら5N HClを滴下してpH1.4に調整し、10分間攪拌しながら反応させた。
なお、還元したAu粒子はイオン化傾向が低いため、強酸条件下でも溶解しないためpH 1.5以下であれば、繊細なpH調整は不要である。また、本実施例では、無機酸として塩酸(HCl)を使用したが、硫酸(H2SO4)などの他の無機酸でもよい。
上記pH1.4の条件下での10分間反応後の反応溶液を遠沈管に全量移し、遠心分離機で4800rpmにて10分間の遠心分離により固液分離し、複合体が溶解した上済み液を廃棄した。
なお、本実施例では、固液分離に際して遠心分離機を使用したが、固液分離の方法はフィルターろ過や自然沈降等でもよい。自然沈降を利用する場合には、還元されたAu粒子がナノ粒子化して一部拡散状態であるため、充分な沈降時間が必要である。
続いて、固液分離した沈殿物に、イオン交換水を40mL加え攪拌し、残留する複合体由来の元素成分を希釈及び洗浄した。再度、遠心分離機で4800rpmにて10分間の遠心分離により固液分離し、上済み液を廃棄する。なお、洗浄に用いるイオン交換水は、複合体溶出成分の水酸化物沈殿を予防するため、pH3程度に調整しておくことが望ましい。
上記で得られた沈殿物を乾燥させた後、乳鉢で粉砕した。そして、走査型蛍光X線分析装置(ZSX PrimusII、理学電機工業製)を用いた蛍光X線分析法で定性分析を行って沈殿物中の元素成分を解析した。
(結果)
結果を表1に示す。表1は、蛍光X線分析法での上記沈殿物の元素成分の解析結果を示す。この結果より、沈殿物の成分はAuが99%以上を占めており、上記の方法により複合体成分が除去され、複合体からAu成分を脱離及び回収できたことが確認できた。
また、上記方法で複合体から脱離及び回収した沈殿物を、電子顕微鏡(JEOL JEM2010Fat 200kV)で観察した結果を図4に示す。図4は、複合体から脱離及び回収した沈殿物の電子顕微鏡写真である。この結果より、沈殿物は、数10nmサイズの異型ナノ粒子が凝集した状態であることが確認できた。表1の元素成分の解析結果と併せて、このナノ粒子はAuイオンが還元されたAuナノ粒子であることが理解でき、上記方法によりナノサイズのAu粒子を回収することができることが判明した。
また、上記実施例2における複合体とAuCl3溶液との反応溶液を10mL採取し、反応溶液中のAu濃度を測定した。そして、本実施例の上記沈殿物について減圧乾燥させ重量測定した。その結果、上記表1の元素成分解析での純度を考慮すると、Auの回収量は95%以上であると推定できた。
実施例2及び3の結果から、試料溶液から効率よくAuを回収でき、しかもナノ粒子として回収できることから極めて実用的価値の高い技術であることが理解される。そして、この複合体を利用したAuの回収方法は、複合体と試料溶液の反応時間が15分、その後のAu粒子と複合体溶解液との固液分離処理が約40分と、全工程が約1時間以内で実施可能であることから、迅速で簡便な回収方法であることも判明した。
実施例4.複合体により吸着還元された白金粒子の回収方法の検証−1
本実施例では、上記実施例1で作製した複合体による白金イオンの吸着及び白金粒子への還元、それに続く、複合体からの白金粒子の脱離及び回収について検証した。ここでは、特に、複合体による白金イオンの吸着及び白金粒子への還元について検証した。
(方法)
回収対象となる試料溶液として、初期濃度2000ppmに濃度調整したヘキサクロロ白金(IV)酸(H2PtCl6)溶液を使用し、白金(Pt)イオンの回収について評価
した。20mLのH2PtCl6溶液に対し、上記実施例1で作製した複合体の懸濁液4mL(複合体乾燥重量0.8g)を添加し、総量24mLで反応させた。反応中、反応溶液は回転子により攪拌し、経過時間毎に500μLずつ採取し、遠心分離にて固液分離して複合体を分離回収した。分離後、反応溶液中に残存するPt濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)にて測定した。
また、コントロールとして、複合体と反応させなかったことを除いては、上記と同様に初期濃度2000ppmのH2PtCl6溶液中のPt濃度を測定した。
(結果)
結果を図5に示す。図5は、複合体とH2PtCl6溶液との反応後に反応溶液中に残存したPt濃度を示すグラフであり、横軸は反応経過時間(分)を、縦軸はPt濃度(ppm)を表す。初期濃度2000ppmのH2PtCl6溶液中のPt濃度は、60分後には測定下限以下となった。これより反応溶液中のPtイオンの全量が複合体に吸着されていることが理解できる。また、反応溶液は、Ptイオンの還元を示す黒色へと変化していることも確認できた。これらの結果より、複合体との反応によりPtイオンが還元されていることが推測できる。
実施例5.複合体により吸着還元された白金粒子の回収方法の検証−2
本実施例では、上記実施例1で作製した複合体による白金イオンの吸着及び白金粒子への還元、それに続く、複合体からの白金粒子の脱離及び回収について検証した。ここでは、特に、上記実施例4における複合体による吸着及び還元の結果、得られた白金粒子の複合体からの脱離及び回収について検証した。
(方法)
実施例4の誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)による反応溶液中の白金(Pt)の濃度の測定により、反応溶液中の白金イオンPtイオンが全量複合体に吸着されたことが確認できた。上記実施例2で得られたPtが吸着した複合体10mLを、上記実施例1にて判明した複合体溶解条件を基に、pHを測定しながら5N HClを滴下してpH 1.4に調整し、10分間攪拌しながら反応させた。
なお、還元したPt粒子は、実施例2、3で検討したAu粒子と同様、イオン化傾向が低いため、強酸条件下でも溶解しないためpH 1.5以下であれば、繊細なpH調整は不要である。また、本実施例では、無機酸として塩酸(HCl)を使用したが、硫酸(H2SO4)等の他の無機酸でもよい。
そして、実施例3の方法と同様にして、Pt粒子と溶解した複合体とを固液分離した。
得られた沈殿物を乾燥させた後、乳鉢で粉砕した。そして、走査型蛍光X線分析装置(ZSX PrimusII、理学電機工業製)を用いた蛍光X線分析で定性分析を行って、沈殿物中の元素成分を解析した。
(結果)
結果を表2に示す。表2は、蛍光X線分析法での上記沈殿物の元素成分の解析結果を示す。この結果より、沈殿物の成分はPtが96%であった。その他の複合体由来の元素等の他の元素が僅かに残存するものの、上記の方法により複合体成分が除去され、Pt成分の濃縮及び粗精製ができていることが判明した。
また、上記方法で複合体から脱離及び回収した沈殿物を、電子顕微鏡(JEOL JEM2010Fat 200kV)で観察した結果を図6に示す。図6は、複合体から脱離及び回収した沈殿物の電子顕微鏡写真である。この結果より、沈殿物は、数nmサイズの比較的粒径が揃ったナノ粒子が凝集した状態であることが確認できた。表2の元素分析の解析結果と併せて、このナノ粒子はPtイオンが還元されたPtナノ還元粒子であることが理解でき、上記方法によりナノサイズのPt粒子を回収することができることが判明した。
また、上記実施例4における複合体とH2PtCl6溶液との反応溶液を10mL採取し、反応溶液中のPt濃度を測定した。そして、本実施例の上記沈殿物について減圧乾燥させ重量測定した。その結果、上記表2の元素成分解析での純度を考慮するとPtの回収量は90%以上と推定できた。
実施例4及び5の結果から、試料溶液から効率よくPtを回収でき、しかもナノ粒子として回収できることから極めて実用的価値の高い技術であることが理解される。そして、この複合体を利用したPtの回収方法は、複合体と試料溶液の反応時間が60分、その後のPt粒子と複合体溶解液との固液分離処理が約40分と、全工程約2時間以内で実施可能であることから、迅速で簡便な回収方法であることも判明した。
実施例6.複合体により吸着還元されたパラジウム粒子の回収方法の検証−1
本実施例では、上記実施例1で作製した複合体によるパラジウムイオンの吸着及びパラジウム粒子への還元、それに続く、複合体からのパラジウム粒子の脱離及び回収について検証した。ここでは、特に、複合体によるパラジウムイオンの吸着及びパラジウム粒子への還元について検証した。
(方法)
回収対象となる試料溶液として、初期濃度5000ppmに濃度調整した塩化パラジウム(PdCl2)溶液を使用し、試料溶液中に含まれるパラジウム(Pd)イオンの回収について評価した。20mLのPdCl2溶液に対し、上記実施例1で作製した複合体の懸濁液4mL(複合体乾燥重量0.8g)を添加し、総量24mLで反応させた。反応中、反応溶液は回転子により攪拌し、経過時間毎に500μLずつ採取し、遠心分離にて固液分離して複合体を分離回収した。分離後、溶液中のPd濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)にて測定した。
また、コントロールとして、複合体と反応させなかったことを除いては、上記と同様に初期濃度5000ppmのPdCl2溶液中のPd濃度を測定した。
(結果)
結果を図7に示す。図7は、複合体とPdCl2溶液との反応後の反応溶液中に残存したPd濃度を示すグラフであり、横軸は反応経過時間(分)を、縦軸はPd濃度(ppm)を表す。初期濃度5000ppmのPdCl2溶液中のPd濃度は、15分後には測定下限以下となった。これよりPdイオンの全量が複合体に吸着されていることが理解できる。また、反応溶液は、Pdイオンの還元を示す黒色へと変化していることも確認できた。これらの結果より、複合体との反応によりPdイオンが還元されていることが推測できる。
実施例7.複合体により吸着還元されたパラジウム粒子の回収方法の検証−2
本実施例では、上記実施例1で作製した複合体によるパラジウムイオンの吸着及びパラジウム粒子への還元、それに続く複合体からのパラジウム粒子の脱離及び回収について検証した。ここでは、特に上記実施例6における複合体による吸着及び還元の結果、得られたパラジウム粒子の複合体からの脱離及び回収について検証した。
(方法)
実施例6の誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)による反応溶液中のパラジウム(Pd)濃度測定により、反応溶液中のPdイオンの全量が複合体に吸着されたことが確認できた。まず、上記実施例6で得られたPdが吸着した複合体からのPdの回収条件についての事前検討を行った。Pdは、実施例2〜3で検討した金(Au)、実施例4〜5で検討した白金(Pt)に比べイオン化傾向が若干高い。したがって、Pdの複合体からの脱離及び回収のための好適条件はAu及びPtとは異なることが予想された。そこで、上記実施例1にて判明した複合体溶解条件を基に、塩酸(HCl)及び硫酸(H2SO4)の2種類の無機酸によるpH調整により、Pdの脱離及び回収条件を検討した。具体的には、上記実施例6で得られたPdが吸着した複合体10mLに、pHを測定しながらHCl又はH2SO4を滴下し、10分間攪拌しながら反応をさせた。反応後、溶解液のPd濃度をICP-AESにて測定した。
(結果)
結果を図8に示す。図8は、複合体と無機酸との反応後の溶解液中のPd濃度を示すグラフであり、横軸は反応pH条件を、縦軸はPd濃度(ppm)を表し、無機酸としてHClとH2SO4とを比較する。この結果、塩酸でpHを調整した場合、pH 1.7付近からPdの溶出が始まった。そして、複合体が完全に溶出するpH 1.5以下では、多くのPdが溶出し、回収ロスが大きいことが確認された。それに対して、硫酸を用いてpH調整した場合には、少なくともpH 1.2までの範囲でパラジウムの溶出傾向が抑えられることが判明した。この結果から、Pdの複合体からの脱離及び回収のための試薬として硫酸が好ましいことが確認された。したがって、以下の実験では、硫酸を使用した。
上記の事前検討の結果をうけ、上記実施例6で得られたPdが吸着した複合体10mL採取し、pHを測定しながら2N H2SO4を滴下してpH 1.4に調整し、10分間攪拌しながら反応させた。
そして、実施例3、5の方法と同様にして、Pd粒子と溶解した複合体とを固液分離した。
上記の方法で抽出した沈殿物を乾燥させた後、乳鉢で粉砕した。そして、走査型蛍光X線分析装置(ZSX PrimusII、理学電機工業製)を用いた蛍光X線分析法で定性分析を行って沈殿物中の元素成分を解析した。
(結果)
結果を表3に示す。表3は、蛍光X線分析法での上記沈殿物の元素成分の解析結果を示す。この結果より、沈殿物の成分はPdが約97%であった。その他の複合体由来の元素等の他の元素が僅かに残存するものの、上記の方法により複合体成分が除去され、Pd成分の濃縮及び粗精製ができていることが判明した。
また、上記方法で複合体から脱離及び回収した沈殿物を、電子顕微鏡(JEOL JEM2010Fat 200kV)で観察した結果を図9に示す。図9は、複合体から脱離及び回収した沈殿物の電子顕微鏡写真である。この結果より、沈殿物は、約10nmサイズの比較的粒径の揃ったナノ粒子が凝集した状態であることが確認できた。表3の元素成分の解析結果と併せて、このナノ粒子はPdイオンが還元されたPd粒子であることが理解でき、上記方法によりナノサイズのPd粒子回収することができることが判明した。
また、上記実施例6における複合体とPdCl2溶液との反応溶液を10mL採取し、反応溶液中のPd濃度を測定した。そして、本実施例の沈殿物について減圧乾燥させ重量測定した。その結果、Pdの回収量は、上記表3の元素成分解析での純度を考慮すると90%以上であると推定できた。
実施例6及び7の結果から、試料溶液から効率よくPdを回収でき、しかもナノ粒子として回収できることから極めて実用的価値の高い技術であることが理解される。そして、この複合体を利用したPdの回収方法は、複合体と試料溶液の反応時間が15分、その後のPd粒子と複合体溶解液との固液分離処理が約40分と、全工程が約1時間以内で実施可能であることから、迅速で簡便な回収方法であることも判明した。
実施例8.複合体を用いた金めっき液からの金粒子の回収
本実施例では、複合体を用いた貴金属粒子の回収方法の産業的利用性を検証するために、金めっき液からの金粒子の回収を試みた。
(方法)
被検試料として、市販の金めっき液(無電解めっき液「プレシャスファブIG7901」(EEJA社製))の新液を使用し、金(Au)濃度5000ppm/Lの原液 50mLにイオン交換水130mLを添加した後、実施例1で作製した複合体の懸濁液20mL(複合体乾燥重量約2g)を添加し、総量200mL、Au濃度1250ppm/Lで反応させた。反応中、反応溶液は回転子により攪拌し、経過時間毎に500μLずつ採取し、遠心分離にて固液分離して複合体を分離回収した。分離後、反応溶液に残存するAu濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)にて測定した。
また、コントロールとして、複合体を反応させなかったことを除いては、上記と同様に濃度調整した初期濃度1250ppmのAuめっき液中のAu濃度を測定した。
(結果)
結果を図10に示す。図10は、複合体とAuめっき液との反応後の反応溶液に残存したAu濃度を示すグラフであり、横軸は反応経過時間(分)、縦軸はAu濃度(ppm)を表す。実施例2と同様に、初期濃度1250ppmの反応溶液中のAu濃度は、15分後には測定下限以下となった。これにより反応溶液中のAuイオン全量が複合体に吸着されていることが確認できた。また、反応溶液は、Auイオンの還元を示す茶系色へと変化していることも確認できた。これらの結果より、複合体との反応によりAuイオンが還元されていることが推測できた。
上記ICP-AES(発光分析装置)による反応溶液中のAu濃度測定により、反応溶液中のAuイオンが全量複合体に吸着されたことが確認できた。そこで、上記複合体に対し、5N-HCLを滴下し、pH1.4に調整、10分間攪拌しながら反応させた。
そして、実施例3の手順と同様に、Au粒子と溶解した複合体とを固液分離し、実施例3の手順と同様に、得られた沈殿物を電子顕微鏡(JEOL JEM2010Fat 200kV)で観察した。観察結果を図11に示す。図11は、複合体から脱離及び回収した沈殿物の電子顕微鏡写真である。この結果より、沈殿物は、数十nmサイズの比較的粒径の揃ったナノ粒子が凝集した状態であることが判った。このように、現在、産業的利用されている金めっき液に対しても本願発明の方法が適応できることが確認できた。
本願発明は、貴金属、特には貴金属のナノ粒子を利用する技術分野に利用可能であり、例えば、電子工業における半導体材料、液晶ディスプレイ、燃料電池等の電子機器、医薬や化学工業や自動車工業における触媒等を製造する様々な産業分野に利用することができる。

Claims (10)

  1. ナノ粒子として貴金属を回収する貴金属の回収方法であって、
    貴金属が溶解した試料溶液を、還元細菌の培養過程で生産される金属還元物質と培地成分との複合体に接触させ、前記試料溶液中に存在する貴金属イオンを前記複合体に吸着還元させることで貴金属ナノ粒子として析出させる工程、
    前記複合体を無機酸によりpH 1.5以下に調整された条件下で溶解させて、前記貴金属ナノ粒子を前記複合体から脱離させる工程、
    前記貴金属ナノ粒子と前記複合体の溶解液とを固液分離して、前記貴金属ナノ粒子を回収する工程、とを有する回収方法。
  2. 前記還元細菌は、少なくとも1種類の生物鉱物化機能を有する細菌である請求項1に記載の回収方法。
  3. 前記培地成分は、電子供与体と電子受容体を含む請求項1又は2に記載の回収方法。
  4. 前記還元細菌は、鉄還元細菌である請求項1〜3の何れか一項に記載の回収方法。
  5. 前記鉄還元菌は、シワネラ属細菌である請求項4に記載の回収方法。
  6. 前記複合体が、1〜20 nmの空隙を有する格子状構造体である請求項1〜5の何れか一項に記載の回収方法。
  7. 前記貴金属ナノ粒子が、粒径1〜20 nmである請求項1〜6の何れか一項に記載の回収方法。
  8. 前記無機酸が、塩酸又は硫酸である請求項1〜7の何れか一項に記載の回収方法。
  9. 前記貴金属が、金又は白金である請求項1〜8の何れか一項に記載の回収方法。
  10. 前記無機酸が硫酸であり、前記貴金属がパラジウムである請求項8に記載の回収方法。
JP2013081337A 2013-04-09 2013-04-09 複合体を用いた貴金属の回収方法 Pending JP2014201821A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013081337A JP2014201821A (ja) 2013-04-09 2013-04-09 複合体を用いた貴金属の回収方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013081337A JP2014201821A (ja) 2013-04-09 2013-04-09 複合体を用いた貴金属の回収方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014201821A true JP2014201821A (ja) 2014-10-27

Family

ID=52352540

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013081337A Pending JP2014201821A (ja) 2013-04-09 2013-04-09 複合体を用いた貴金属の回収方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014201821A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104588677A (zh) * 2014-12-04 2015-05-06 华南理工大学 一种鲍希瓦氏菌合成金纳米的方法及金纳米的应用
JP2015227474A (ja) * 2014-05-30 2015-12-17 公立大学法人大阪府立大学 白金族金属の分離回収方法
CN111115841A (zh) * 2019-12-17 2020-05-08 上海大学 一种强化铁还原菌耦合钝化纳米零价铁体系的方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015227474A (ja) * 2014-05-30 2015-12-17 公立大学法人大阪府立大学 白金族金属の分離回収方法
CN104588677A (zh) * 2014-12-04 2015-05-06 华南理工大学 一种鲍希瓦氏菌合成金纳米的方法及金纳米的应用
CN111115841A (zh) * 2019-12-17 2020-05-08 上海大学 一种强化铁还原菌耦合钝化纳米零价铁体系的方法
CN111115841B (zh) * 2019-12-17 2021-07-30 上海大学 一种强化铁还原菌耦合钝化纳米零价铁体系的方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Tan et al. Early stage adsorption behaviour of Acidithiobacillus ferrooxidans on minerals I: An experimental approach
Mal et al. Continuous removal and recovery of tellurium in an upflow anaerobic granular sludge bed reactor
Wang et al. Electrodeposition of hierarchically amorphous FeOOH nanosheets on carbonized bamboo as an efficient filter membrane for As (III) removal
US11370022B2 (en) Method for the synthesis of a zero-valent metal micro- and nanoparticles in the presence of a noble metal
WO2012161216A1 (ja) 複合体およびその用途
Jia et al. Magnetically separable Au-TiO2/nanocube ZnFe2O4 composite for chlortetracycline removal in wastewater under visible light
Li et al. Thiol-functionalized metal–organic frameworks embedded with chelator-modified magnetite for high-efficiency and recyclable mercury removal in aqueous solutions
TWI599544B (zh) 金屬濃縮方法及金屬回收方法以及金屬濃縮裝置及金屬回收裝置
Bulin et al. Magnetic graphene oxide nanocomposite: One-pot preparation, adsorption performance and mechanism for aqueous Mn (Ⅱ) and Zn (Ⅱ)
JP2005263615A (ja) 酸化マンガン担持マンガン化合物粉末、酸化マンガンナノ微粒子凝集体粉末及びその製造方法、並びに金属吸着酸化マンガン担持マンガン化合物粉末及び金属吸着酸化マンガンナノ微粒子凝集体粉末
Saitoh et al. Microbial recovery of gold from neutral and acidic solutions by the baker's yeast Saccharomyces cerevisiae
Ye et al. Simultaneous separation and recovery of gold and copper from electronic waste enabled by an asymmetric electrochemical system
BRPI0910776B1 (pt) A cyanide-free process for isolation of precious gold metal of a particulate material containing particles of the precious metal method, in the elementary form, and use of biomass selected within eubacteria and archaeea
CA2911097A1 (en) A microorganism of the family teratosphaeriaceae and methods of using the microorganism to solidify rare earth elements
KR102114995B1 (ko) 나노영가철이 담지된 커피찌꺼기로 이루어진 중금속 흡착제 및 그 제조방법
JP2014201821A (ja) 複合体を用いた貴金属の回収方法
Ghazitabar et al. Graphene aerogel/cellulose fibers/magnetite nanoparticles (GCM) composite as an effective Au adsorbent from cyanide solution with favorable electrochemical property
CN113332988A (zh) 一种多孔磁性导电自掺杂铜的铜锌铁氧体催化剂及其制备方法和应用
Peng et al. Enrichment of ferric iron on mineral surface during bioleaching of chalcopyrite
Xia et al. Sustainable technologies for the recycling and upcycling of precious metals from e-waste
JP2013001964A (ja) レアアースの回収方法
US11370683B2 (en) Process for producing zero-valent iron nanoparticles and treating acid mine drainage
Dai et al. Recovery of platinum group metals from aqueous solution by iron-electrocoagulation
CN112774625A (zh) 氧化锆掺杂磁性高表面活性炭复合材料、制备方法及应用
Li et al. Carbon cloth supported nano-Mg (OH) 2 for the enrichment and recovery of rare earth element Eu (III) from aqueous solution