JP2014198294A - 油水分離用フィルター部材及びその製造方法 - Google Patents

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陽介 雨宮
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Abstract

【課題】油水分離性能をより長期間安定して維持する油水分離用フィルター部材を提供する。【解決手段】ポリマーを含む基材に、α線と、β線と、γ線と、電子線と、のうちいずれかの放射線を照射することで前記基材にラジカルを生成し、前記ラジカルを生成した基材と親水性基を有する物質とを接触させ、前記基材に親水性基を導入する、ことを特徴とする油水分離用フィルター部材の製造方法。前記親水性基がアミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、またはシアン酸基から選ばれる一種または二種以上の親水性基であることを特徴とする油水分離用フィルター部材の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、油中の水と油を分離するためのフィルターに用いるのに好適な油水分離用フィルター部材に関する。
石油ファンヒーターや、ガソリン・軽油などを使用する内燃機関は、使用する油に水滴が存在すると、該水滴が配管内壁や噴射ノズルの先端に付着して、配管内壁の腐食の発生や噴射ノズル先端の目詰まりの原因になったり、或いは、燃焼効率の低下や出力低下などの問題を引き起こすことが知られている。
小さな水滴は油中では分散しており、油水分離フィルターの親水部で吸着され、吸着された多数の小さな水滴は凝集粗大化していく。凝集粗大化した水分はフィルターの親水部から剥離し、凝集粗大化した水分と油は比重差により分離することが可能となる。
これまで、油中の水と油を分離する方法としては、親水性且つ非親油性高分子からなる多孔質膜を燃料タンクの底に設置する方法(特許文献1)、親水化処理した極細繊維からなるシートを充填したフィルターを利用する方法(特許文献2)、微細孔を有する疎水性多孔質膜をフィルターに用いる方法(特許文献3)、撥水性樹脂繊維と無機繊維とを含有する織布をフィルターに用いる方法(特許文献4)などが提案されている。
特開昭61−216701号公報 特開平04−313312号公報 特開2000−312802号公報 特開2007−181819号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている親水性高分子を燃料タンクの底に設置する方法では、油水分離膜材が機能するには油水分離膜に十分な水分が常に含まれることが必要であり、比較的含水率が低い燃料に使用する場合には、油水分離膜が乾燥しないように注意を払う必要がある。また、特許文献2では、親水化処理した極細繊維を束ねたフィルターを使用することからフィルターの細孔径が細く、そのため、分離した水滴を粗大化することが困難であり、比重差で分離する油水分離システムには適応できない。さらに実施例では親水性物質を繊維状シートに付けたフィルターの効果を示しているが、親水性物質を付けると、吸着力が高く水分以外のもの(塵埃など)も吸着し、時間の経過とともに親水面が付着物で覆われ親水性が低くなり、長期安定性に劣る。さらに、特許文献3では、0.03μm〜5μmの細孔を有した疎水性多孔質膜を使用するため、油に浮遊している微細な塵などが細孔を閉塞し、時間の経過と共に圧力損失が高くなる問題がある。また、特許文献4では、撥水性樹脂繊維と無機繊維とからなる織布をフィルターとして用いることから、撥水性樹脂繊維と無機繊維の構成比率によっては、含水率が変動したときに分離が不十分になるなどの問題があった。
そこで本発明は、上記課題を解決するために、様々な形態で使用されても、油水分離性能をより長期間安定して維持する油水分離用フィルター部材を提供するものである。
すなわち第1の発明は、ポリマーを含む基材と、前記基材に電子線を照射することでラジカルを生成し、前記ラジカルを生成した基材と親水性基を有する物質とを接触させることにより前記基材に導入した、前記基材と直接結合した親水性基と、を有することを特徴とする油水分離用フィルター部材。
第2の発明は、第1の発明において、前記親水性基が結合した前記基材が複数積層された積層構造であることを特徴とする油水分離用フィルター部材。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記親水性基が、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、またはシアン酸基から選ばれた一種または二種以上の親水性基であることを特徴とする油水分離用フィルター部材。
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、前記ポリマーが、ポリオレフィン系の樹脂であることを特徴とする油水分離用フィルター部材。
第5の発明は、ポリマーを含む基材に、α線と、β線と、γ線と、電子線と、のうちいずれかの放射線を照射することで前記基材にラジカルを生成し、前記ラジカルを生成した基材と親水性基を有する物質とを接触させ、前記基材に親水性基を導入する、ことを特徴とする油水分離用フィルター部材の製造方法。
第6の発明は、第5の発明において、前記親水性基がアミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、またはシアン酸基から選ばれる一種または二種以上の親水性基であることを特徴とする油水分離用フィルター部材の製造方法。
第7の発明は、第5または第6の発明において、前記ポリマーが、ポリオレフィン系の樹脂であることを特徴とする請求項5または6に記載の油水分離用フィルター部材の製造方法。
本発明によれば、電子線照射によるラジカルの生成は、基材内部(厚み方向)までラジカルを生成することが可能となり、基材内部にも生成されたラジカルによって基材内部まで親水性基が導入されることから、油に含まれる水滴は基材表面に吸着し、内部にも浸透して拡散するため、効率良く油から水滴を分離することが可能となる。
また、酸化アルミニウムなどの吸着力の高い親水性物質を基材表面に付着させる方法では、塵や油中の雑物質などで親水面が覆われ、継時的に親水性が低くなる傾向があるが、本発明では、親水性基を基材表面から内部にかけて導入することで、親水性が長期に保持される。そのため、水に対する濡れ性が良好に長期に維持され、より長期間安定して分離処理が可能なフィルターを提供することができる。
油水分離利用フィルター部材の親水性基と基材との結合を模式的に表した図である。 従来の化学的な処理によって親水性物質を基材に付着させた状態を模式的に表わす図である。 センターフロー式の燃料フィルターユニットの模式図である。 サイドフロー式の燃料フィルターユニットの模式図である。
以下に、本発明の実施形態である油水分離用フィルター部材とその製造方法について詳細に説明する。
本実施形態は、ポリマーを構成材料に含む基材にラジカルを生成させ、親水性基を有する物質と接触させることにより、親水性基を基材に導入する、油水分離用フィルター部材である。
本発明の実施形態に用いられるフィルター用部材の基材を構成する材料としては、ポリマーであれば特に限定されるものではないが、耐油性の面から例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系の樹脂が好適に用いられる。
一般に、ポリエチレンには、高密度PE(HD)、低密度PE(LD)、線状低密度PE(LLD)、超高分子量PE(UHMW)などがある。本実施形態のごとくラジカルを生成する場合には、ポリエチレンの結晶部のラジカルが非晶部に移動してきてポリマーラジカルとして反応に寄与するので、ポリエチレンの結晶化度と非晶部の構造がポリマーラジカルの生成に影響を与える。したがって、本実施形態で用いるポリエチレンとしては、HDとLDを比較すれば、非晶部が多く(つまり結晶化度が低く)ラジカルが生成しやすいLDが好適である。
また、本実施形態では、フィルターの形態は通液性を有する限り特に限定されず、使用目的や処理対象となる油の種類などに応じて変更可能であるが、例えば樹脂からなる繊維状材料から構成される織物・編物・不織布などを含む繊維構造体とすることができる。さらに、種々の形状及びサイズ等についても、使用目的に合ったものとすることができる。
本発明の実施形態において、基材にラジカルを生成させる方法としては、窒素、アルゴン、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で、基材へ、α線や、β線や、γ線や、電子線を照射する方法(放射線照射法)や、紫外線を照射する方法(紫外線(UV)法)、または、コロナ放電を照射する方法(コロナ放電法)や、グロー放電により発生するプラズマを照射する方法(プラズマ法)、あるいは、これらを組み合わせた方法などを挙げることができる。本実施形態では、特に、基材の内部(深さ方向)にラジカルを生成することが可能な電子線を照射する放射線照射法が適している。
また、基材にラジカルを生成させる方法として、基材をイソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール類に含浸させた状態で、α線や、β線や、γ線や、電子線や、紫外線を基材へ照射する方法、または、コロナ放電を照射する方法や、グロー放電により発生するプラズマを照射する方法を用いても良い。
本実施形態の上述の放射線照射法としては、同時照射法や前照射法を利用すればよい。同時照射法はポリマーの基材と反応物質の共存下で照射する方法である。前照射法は捕捉ラジカル法ともいわれ、放射線照射によるラジカル生成後にラジカルと反応物質とを接触させる方法である。放射線照射法の特徴としては、シート状、フィルム状に限らず3次元形状の成形体などあらゆる形状の基材に活用できること、基材内部までラジカルを生成させることができること、開始剤等の残存がないこと、大量生産できること、等が挙げられる。基材内部にまでラジカルを生成できることで、基材内部にまで容易に親水性基を導入できる。そして基材を繊維構造体とした場合には、油に含まれる水滴はその繊維構造体の基材内部に拡散することから、基材内部に導入された親水性基により効率良く油から水滴を分離することが可能となる。
本実施形態の放射線照射法において、電離放射線の照射線量は、親水性基を導入させるのに十分なラジカルの生成量が得られ、不必要な架橋や部分的な分解が起こらない経済的な照射線量であれば特に制限はないが、ラジカルが均一に生成し、油水分離用フィルター部材を構成する基材の剛性や耐薬品性に及ぼす影響も少ないことから、1kGy〜1000kGyの範囲にあることが好ましく、5kGy〜500kGyの範囲にあることがより好ましく、10kGy〜300kGyの範囲にあることが特に好ましい。
上記ラジカル生成方法により生成されるラジカルについてはポリエチレンでは多くの報告があり、電子線の照射によってアルキル、アリル、ポリエニル、過酸化ラジカルが生成する。ラジカルは結晶部と非晶部に生成するが、分子鎖の運動が激しい非晶部では、ただちに再結合等の反応で消滅する。観察されるのは結晶部内のラジカルである。アルキルラジカルは反応性がきわめて高く、水素を引き抜きながら結晶部を移動し、非晶部で再結合(橋かけ)や酸化反応、グラフト反応で消費される。
ポリマーラジカルは放射線の直接一次作用と、入射した放射線ではじき出された電子による二次作用で生成するので、入射放射線の飛跡に沿ってラジカルが群をなして生成する。一つの群の大きさは数nm程度であり、この群の中でラジカルの再結合が起こる。また、生成したラジカルは水素による付加と引き抜き反応によって、分子間あるいは分子内を移動し結合相手のラジカルを探す。結晶部内ではポリマーの運動が制限されているため反応は起きにくいが、結晶部内に生成したラジカルは分子鎖が自由に運動できる非晶部に移動して反応に参画する。
本発明の実施形態において、基材への放射線照射直後、例えば1〜2分以内に、親水性基を導入するような場合には、放射線を照射する際の温度および、照射後に基材を保存する温度については特に制限はない。しかし、ラジカルを生成した後、時間をおいて親水性基を導入する場合などにはラジカルを保存するために、照射も保存も低温で行うことが望ましい。−5℃程度に低温保存すれば、照射20日経過後でも支障なくポリマーラジカルを用いた反応が可能である。
上述したラジカル生成方法により基材にラジカルを生成した後に、親水性基を有する物質と接触させることで基材に親水性基を導入する。接触時間は特に限定されず、接触方法にもよるが、5分以上30分以下が好ましい。5分未満の場合、親水性基の導入量が少なく親水化が充分に行われず、30分より長い場合基材が変色したり、強度が極端に低下する。
そして、本実施形態の方法で基材に親水性基を導入した場合、親水性基は基材に直接結合して導入される。ここで、図1に基づいて、本実施形態の油水分離フィルターにおいて基材と親水性基との結合状態を説明する。図1は、本実施形態に係る親水性基が導入された、繊維構造体の基材で構成される油水分離用フィルター部材における、繊維10と親水性基11との結合状態を模式的に表わした図である。
図1に示すように、本実施形態の油水分離用フィルター部材では、基材を構成する繊維に直接ラジカルを生成して、その生成したラジカルと親水性基とが反応することで、繊維であるポリマーに直接親水性基が結合した構造となっている。そして、上述のようにラジカルは基材の表面だけでなく基材の内部までバラつきなく形成され、そのラジカルと親水性基が反応して親水性基が結合する。従って、基材の表面から内部まで基材を構成するポリマー(繊維構造体であれば各繊維)に親水性基がバラつきなく直接結合した油水分離用フィルター部材が得られる。
一方、親水化処理剤等を用いて化学的な処理で親水性物質を基材に付着させた場合は、基材に親水性基を有する物質が付着することで親水性を向上させるため、基材を構成するポリマーに直接親水性基が導入されるわけではない。たとえば、後述する実施例の比較例で用いられる親水性基を有する樹脂系の親水化処理剤で親水化処理した繊維構造体の断面模式図を図2に示す。図2に示すように、繊維の表面に親水性基を有する親水性物質が付着するので、親水性基が基材に直接結合するわけではなく、親水化処理剤を構成する樹脂などのベース材料を介して親水性基が導入される。そして、親水化処理剤での処理の場合、基材の表面部の繊維は比較的親水化処理されやすいが、繊維構造体の内部までは十分に親水化処理されにくい。そのため、たとえば親水化された表面が塵埃などで覆われてしまうと、親水性が低下し、長期間安定して油水分離性能を維持することができない。
本発明の実施形態において用いられる親水性基としては、アミノ基や、カルボン酸基や、スルホン酸基や、シアン酸基や、これらの親水性基の組み合わせでもよく、特に限定されるものではないが、アミノ基や、スルホン酸基などが好適に用いられる。
ラジカルを生成した基材と接触させる物質(親水性基を有する物質)としては、前記の親水性基を有する物質であれば特に限定されるものではないが、アミノ基を有する物質としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ピペリジン、モルホリンジエチルアミンやこれらを組み合わせてもよく、特に限定されるものではないが、アンモニア、エチルアミンなどが好適に用いられる。
スルホン酸基を有する物質としては、無水硫酸、濃硫酸、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、スルファミン酸、亜硫酸ナトリウムやこれらを組み合わせてもよく、特に限定されるものではないが、発煙硫酸、亜硫酸ナトリウムなどが好適に用いられる。
親水性基を有する物質においてカルボン酸基を有する物質としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、酒石、アクリル酸やこれらを組み合わせてもよく、特に限定されるものではないが、アクリル酸などが好適に用いられる。
本発明の実施形態において、親水性基を導入する際の温度は、基材の融点未満であれば特に制限はないが、0〜100℃の範囲にあることが望ましく、5〜90℃の範囲にあることがより好ましく、10〜80℃の範囲にあることが特に望ましい。親水性基を導入する際の温度が0℃より低い場合には、反応速度が遅く、反応が不均一に進行することがある。親水性基を導入する際の温度が100℃よりも高い場合には、ポリオレフィン系の基材では物性が大きく変化したり、変形する恐れがある。
本発明の実施形態において、親水性基を導入する際の湿度は、制限はないが、相対湿度が低い方が望ましく、30%以下の範囲にあることがより好ましい。親水性基を導入する際の湿度が高い場合には、乾燥した不活性ガスで高湿度の空気をパージすることで、多くの親水性基を基材へ導入することができる。
本発明の実施形態において、基材への親水性基の導入方法は、ラジカルが生成された基材を気体状あるいは液体状の親水性基を有する物質と接触させることにより行う。均一に反応させるためには、例えば、親水性基を有する物質が気体状発煙硫酸の場合には、基材を容器の中に入れ回転させながら気体状発煙硫酸を導入する回転法、あるいは、カラムに充填し気体状発煙硫酸を導入するカラム法を用いることができる。また、基材が不織布、フェルト、編物、織物などの布帛である場合には、布帛を反応容器中に連続して送りながら、気体状発煙硫酸の導入方向を布帛の進行方向に対して向流または並流にする連続反応法、さらには前記布帛を攪拌棒に均一に巻いてこれを回転させながら気体状発煙硫酸を導入する方法を用いることができる。
以上説明したように親水性基を導入した基材を、反応に関与せず基材に残った親水性基を有する物質(例えば硫酸)を洗浄処理することで親水性基を有する物質を除去することができる。上記のようにして作られた油水分離用フィルター部材は、基材の変色が少なく、強度低下なども抑えられ、さらに効率良く油から水滴を分離することが可能となる。
以上の本実施形態によれば、電子線の照射により基材内部にラジカルを生成し、そのラジカルによって親水性基を基材を構成するポリマーに直接結合させて導入できるため、基材内部までバラつきなく親水性基が結合した油水分離用フィルターを提供することができる。基材内部まで親水性基を有することで、より効率よく油から水分を分離することができる。特に、自動車用燃料のように、油中に僅かに存在する微小な水滴を分離するのに好適である。
また、酸化アルミニウムなどの吸着力の高い親水性物質を基材表面に付着させた油水分離フィルターの場合では、吸着力が高く水分以外のもの(塵埃など)も吸着し、その結果親水面が付着物で覆われて親水性が低くなり、長期安定性に劣る。しかし、本実施形態では、親水性基が基材内部にも形成されるので、親水性が長期に維持される。親水性が長期に維持されることで、より長期間安定して油水分離が可能な油水分離用フィルター部材を提供することができ、自動車用などフィルターを交換しにくい用途に用いることができる。さらに、より長期間親水性が維持され水に対する濡れ性が良好に長期に維持されるため、フィルターの孔径を用途から想定される孔径よりも極端に小さくする必要がなく、自由な設計の油水分離用フィルター部材を提供することができる。
次に、本実施形態の油水分離用フィルター部材を用いた製品の一例として、燃料フィルターを例に挙げて説明する。本実施形態の油水分離用フィルター部材は、自動車等の燃料フィルターなどへ用いることができる。燃料フィルターとして用いる場合には、たとえば、親水性基が基材に導入された油水分離用フィルター部材を複数積層させた積層構造のフィルターとすることで、必要な厚みを有する燃料フィルターを提供することができる。燃料フィルターは大きくセンターフロー式とサイドフロー式に分けられる。
図3にセンターフロー式フィルターユニットの模式図を示す。図3のフィルターユニットの場合、燃料はフィルターユニット100の中心にある燃料供給管1を通って(矢印(11))、フィルターユニット下部にある水溜室2に行く。水溜室2で燃料中の大きな水滴は、比重が大きいため下方へ沈み分離される。水溜室2の燃料はフィルター3へ押し上げられ(矢印(12))、フィルター3で微小な水滴を分離する。フィルター3を通過した燃料は、燃料排出管4を通って(矢印(13)、(14))、フィルターユニット100から排出される。
図4にサイドフロー式フィルターユニットの模式図を示す。図4のフィルターユニットの場合、燃料はフィルターユニット100の上部にある燃料供給管1を通ってフィルターユニット内に入り(矢印(21))、フィルターケース5の上部で細分されて(矢印(22)、(23))、フィルターケース5の外周面とフィルターユニットケース6の内周面の隙間を通り(矢印(24))水溜室2に行く。水溜室2でセンターフロー式と同様に大きな水滴は下方へ沈み分離され、燃料はフィルター3へ押し上げられる(矢印(25))。フィルター3で微小な水滴を分離し、フィルター3を通過した燃料は、燃料排出管4を通って(矢印(26)、(27))、フィルターユニット100から排出される。
サイドフロー式はセンターフロー式と比べ、部品点数が少なく組み立て工数も少なくなり、生産コスト低減に有利であるが、燃料供給管1から導入された燃料と燃料に含まれる水は、略円筒形のフィルターケース5の上部で360度の範囲にほぼ均一に細分されるため、水滴が微粒化する。本発明の油水分離用フィルターは微小な水滴を分離するのに適しており、サイドフロー式に好適である。
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
本発明方法による実施例1〜3の油水分離フィルターの製造にあたっては、エレクトロカーテン型電子線照射装置CB250/15/180L(岩崎電気株式会社製)を用い、電子線照射によって実施した。
(実施例1)
線径173μmのポリエチレン製のモノフィラメントを経糸とし、170デニールのポリプロピレン製のマルチフィラメントを緯糸として用い、公知の製織機を用いて織成して、経緯のメッシュ数がそれぞれ164本/吋、45本/吋のメッシュ織物を得た。この織物を用いて、窒素雰囲気下で電子線を50kGy照射した後に、発煙硫酸(和光純薬工業株式会社製)を10g導入した反応容器に移し、25℃で気体状発煙硫酸と5分間接触させた。その後、反応容器から取り出し、純水に浸漬し超音波を30分間照射後、乾燥させ親水性基のスルホン酸基を導入した油水分離用メッシュフィルターを得た。
(実施例2)
気体状発煙硫酸との接触時間を15分とした以外は、実施例1と同様の条件で実施しスルホン酸基を導入した油水分離用メッシュフィルターを得た。
(実施例3)
目付が40g/mのポリプロピレン製不織布ELTAS P03040(旭化成せんい株式会社製)を用い、気体状発煙硫酸との接触時間を15分間にした以外は実施例1の方法と同様の条件で、スルホン酸基を導入したポリプロピレン不織布製油水分離フィルターを得た。
(比較例1)
実施例1で用いた、線径173μmのポリエチレン製のモノフィラメントを経糸とし、170デニールのポリプロピレン製のマルチフィラメントを緯糸として用い、公知の製織機を用いて織成して、経緯のメッシュ数がそれぞれ164本/吋、45本/吋のメッシュ織物を得た。この織物をそのまま油水分離メッシュフィルターとして用いた。
(比較例2)
比較例1で用いたメッシュを用いて、フィルターの表面処理として親水性ウレタン系樹脂ブリアンUS−300(松本油脂株式会社製)3質量%溶液に浸漬後、余剰分を脱液した後、100℃で1分の乾燥後、120℃で5分の熱処理を行って、親水性物質をフィルターの表面に付着させた。これにより、フィルター表面に親水性物質を付着した油水分離メッシュフィルターを得た。
(比較例3)
目付が40g/mのポリプロピレン製不織布ELTAS P03040(旭化成せんい株式会社製)を用いた以外は比較例2と同様の条件で親水化処理を実施し、親水性物質をフィルター表面に付着させた。これにより、フィルター表面に親水性物質を付着した不織布状油水分離フィルターを得た。
(親水性の評価)
親水性の評価は接触角計DropMaster300(共和界面科学株式会社製)を用いて、実施例、比較例それぞれのフィルター表面に蒸留水を1μL滴下し、フィルター表面に形成した水滴の接触角を測定した。
(油水分離性の評価)
分離する水分成分として、イオン交換水に直接染料(日本化薬株式会社製、SuPra Brown GL 125)を加えて褐色に着色した。次にこの着色した水分成分を灯油に3質量%となるように加え、ホモジナイザーで3分間分散処理し、水分成分を懸濁させた試験用の灯油を調整した。実施例1〜3の油水分離フィルター部材および比較例1〜3を、それぞれ厚みが2.7mmとなるように重ね、ガラス製の焼結フィルター上に設置し、その上にガラス製ファンネルを固定した。水分成分を懸濁させた試験用の灯油を固定したファンネルに注ぎ、減圧下で200mL/分の流量で吸引し、ろ過後の着色水分成分の分離性を目視にて観察し油水分離性能を評価した。完全分離した場合を◎、一部分離した場合を○、分離しなかったものを×とした。
(油水分離性能の経時変化評価)
油水分離性能の経時変化は、灯油中に1か月間浸漬した後に、実施例1〜3と比較例2,3について油水分離性能の評価を実施した。
各実施例と比較例の構成と評価結果を表1に示す。
Figure 2014198294
親水性の評価において、親水化処理した実施例1から3と比較例2と3では、浸透し親水性が確認された。一方、未処理の比較例1では接触角が106.1度と高く親水化できていないことが確認された。
初期の油水分離性は親水化処理した実施例1から3と比較例2と3について確認された。1ヵ月後の油水分離性では、本発明の方法で親水性基を基材に導入した実施例1から3では、分離できていることが確認された。一方、親水化処理剤でフィルター表面に親水性物質を付着させて親水化した比較例2と3では、油水分離できておらず、経時的安定性が低いことが確認できた。
以上のとおり、本発明の油水分離用フィルター部材は、油水分離性に優れ、かつ経時的に安定しているため、有用な油水分離フィルター部材であることが確認できた。
100:フィルターユニット
1:燃料供給管
2:水溜室
3:フィルター
4:燃料排出管
5:フィルターケース
6:フィルターユニットケース
10:基材
11:親水性基
12:親水性物質
21:本実施形態の油水分離フィルター
22:親水性物質を基材に付着させた油水分離フィルター

Claims (7)

  1. ポリマーを含む基材と、
    前記基材に電子線を照射することでラジカルを生成し、前記ラジカルを生成した基材と親水性基を有する物質とを接触させることにより前記基材に導入した、前記基材と直接結合した親水性基と、
    を有することを特徴とする油水分離用フィルター部材。
  2. 前記親水性基が結合した前記基材が複数積層された積層構造であることを特徴とする請求項1に記載の油水分離用フィルター部材。
  3. 前記親水性基が、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、またはシアン酸基から選ばれた一種または二種以上の親水性基であることを特徴とする請求項1または2に記載の油水分離用フィルター部材。
  4. 前記ポリマーが、ポリオレフィン系の樹脂であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の油水分離用フィルター部材。
  5. ポリマーを含む基材に、α線と、β線と、γ線と、電子線と、のうちいずれかの放射線を照射することで前記基材にラジカルを生成し、
    前記ラジカルを生成した基材と親水性基を有する物質とを接触させ、前記基材に親水性基を導入する、ことを特徴とする油水分離用フィルター部材の製造方法。
  6. 前記親水性基がアミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、またはシアン酸基から選ばれる一種または二種以上の親水性基であることを特徴とする請求項5に記載の油水分離用フィルター部材の製造方法。
  7. 前記ポリマーが、ポリオレフィン系の樹脂であることを特徴とする請求項5または6に記載の油水分離用フィルター部材の製造方法。
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