JP2014196296A - バイオマス由来の有機化合物の製造方法 - Google Patents

バイオマス由来の有機化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】バイオマスから有価物を回収する過程において、最小限の工程でかつ高い選択比でバイオマス由来の有機化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】バイオマスを粉砕してバイオマス由来原料を製造する工程(1)と、前記バイオマス由来原料と、触媒成分と、pH調整成分と、を混合して水素圧0.1〜10MPa、373〜673K、pH7〜14の条件下で0.1〜10時間反応する工程(2)と、前記工程(2)により得られた反応液からバイオマス由来の有機化合物を回収する工程(3)と、を有するバイオマス由来の有機化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、バイオマス由来の有機化合物の製造方法に関し、特に低コストで選択性の高いバイオマス由来の有機化合物の製造方法に関する。
現代の産業や社会生活に必要なエネルギーおよび化学製品は、大きく石油に依存している。しかし、石油資源の有限性の問題が取り沙汰されるだけでなく、石油価格が上昇してくると、石油以外を利用して、エネルギーおよび化学製品を合成するプロセスの開発が重要な課題となる。このような石油に代替する炭素資源としては、石炭、オイルシェール、オイルサンド、バイオマスなどが挙げられる。なかでも、一定量集積した動植物由来の有機性資源であるバイオマスは、COを増加させない非枯渇性(再生可能)という大きな特徴を持っていることから、バイオマスの有効利用に関心が集まっている。このようなバイオマスの有効利用方法としては、(1)石油を原料として作られているがバイオマスを原料とすることで製造プロセスが簡略化され、または製造コスト削減につながるもの、(2)石油枯渇による価格高騰の懸念からバイオマス代替が望ましいもの、(3)バイオマスの構造を生かした新規物質の合成するものの3つが考えられる。なかでも製造プロセスの簡略化や製造コスト削減に注目した技術として、バイオマス資源から種々の化学製品を合成する方法が挙げられる。
このようなバイオマス資源から種々の有価物を回収して化学製品を合成する技術としては、例えば特許文献1、特許文献2、および特許文献3の技術が挙げられる。
当該特許文献1の技術は、リグノセルロース系バイオマスとして針葉樹のヒノキ材を原料として、フェノール誘導体(例えば、p−クレゾール)と酸と混合し所定時間反応させ遠心分離した後、水相、有機相、および中間相に分離し、当該有機相に対して3段階の抽出工程を得ることでフェノール誘導体を合成する方法や、さらに当該フェノール誘導体をアシル化することで目的のリグニン系ポリマーを合成する方法などが記載されている。
また、当該特許文献2の技術は、原料の木チップを圧力釜からなる反応槽内で、アルカリ存在下で高圧下蒸煮による230〜300℃で熱分解した後、塩酸で中和して濾過により固液分離し、液体側にエチルエーテルを加えてエーテル抽出相と水相に分けた後、前記エーテル抽出相を蒸留したものを油分1、前記水相に酢酸エチルを加えて分離した相を油分2、固体側をアセトン抽出したものを油分3として、それぞれの油分からフェノール誘導体を回収する方法が記載されている。
さらに、当該特許文献3の技術は、オキソ酸存在下で、必要によりラジカル補足剤(低級アルコール)や遷移金属触媒を添加して酸素または窒素雰囲気下170℃で反応させた後、試料を採取してバニリン酸誘導体を合成する方法が記載されている。
特開2011−256381号公報 特開2006−76979号公報 特開2012−514590号公報
例えば、特許文献1では耐熱性のリグニン系ポリマーを製造する過程でフェノール誘導体を、特許文献2では原料の木チップからフェノール誘導体を、特許文献3ではリグニン系化合物を含む原料から香料であるバニリン系化合物を、それぞれ合成している。石油以外の資源としてバイオマスに着目し、当該バイオマスから様々な種類の有機化合物を回収して、化成品の原料を製造する方法が特許文献1〜3に開示されている。また、上記特許文献2で製造されるフェノール類のうち、例えばグアイアコール(2−メトキシフェノール)は、特許文献3の目的物である香料バニリンの原料やバイオプラスティック原料になる。このようなグアイアコールはこれまで(1)石油製品であるフェノールと過酸化水素水からカテコールを合成する工程と、(2)カテコールとジメチルサルフェートからメチレーション工程と、による2段階プロセスで合成していた。しかしながら、上記の特許文献2や3のように石油や石炭由来ではなくバイオマス資源からフェノール類などの化学製品を合成するプロセスは非枯渇性という観点からも有用な技術として期待される。
しかしながら、上記の特許文献1は、リグノフェノール誘導体の水酸基をアシル化することで可変性を維持しつつ熱安定性に優れたポリマーを提供することを目的とするものである(段落「0003」〜「0011」)。そのため、特許文献1の発明では、反応効率自体も考慮されておらず、また、遠心分離で3相に分けてそのうちの一つの相に対して3段階もの抽出工程をおこなうため、中間体であるグアイアコールなどのフェノール誘導体の収率が低下、フェノール誘導体を製造する工程を複雑化する問題がある。
一方、上記の特許文献2は、段落「0009」に記載されているように、水溶液中ではなく、高温、高圧、アルカリ存在下での蒸煮による反応で製造しており、かつ反応終了から抽出までの間の多段階の抽出工程を必要とするためどうしてもフェノール誘導体の収率が低下する。さらに、上記の特許文献3の段落「0041」に、2−メトキシフェノールが生成し分解して1,2ベンゼンジオールが生成していると考えられると記載されており、反応生成物が分解するという問題がある。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、バイオマスから有価物を回収する過程において、最小限の工程でかつ高い選択比でバイオマス由来の有機化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った。その結果、本発明に係る製造方法によれば、バイオマス由来の有機化合物を最小限の工程でかつ高い選択比で製造することができることを見出した。
本発明の製造方法によれば、バイオマスから1段階の化学合成によりバイオマス由来の有価物である有機化合物を製造することができる。
本発明の製造方法によれば、緩やかな反応条件下でバイオマスからバイオマス由来の有価物である有機化合物を製造することができる。
本発明の製造方法によれば、選択的にバイオマス由来の有価物である有機化合物を製造することができる。
図1は、実施例1において、反応生成物の質量分析結果を示す図である。 図2は、実施例3において、反応生成物の質量分析結果を示す図である。 図3は、実施例3の抽出液成分およびp,m,o−メトキシフェノールのH−NMRチャートである。 図4は、参考例1において、反応生成物の質量分析結果を示す図である。 図5は、実施例4の反応生成物の質量分析結果を示す図である。 図6は、実施例5の結果を示す図である。
本発明の第一は、バイオマスを粉砕してバイオマス由来原料を製造する工程(1)と、前記バイオマス由来原料と、触媒成分と、pH調整成分と、を混合して水素圧0.1〜10MPa、373〜673K、pH7〜14の条件下で0.1〜10時間反応する工程(2)と、前記工程(2)により得られた反応液からバイオマス由来の有機化合物を回収する工程(3)と、を有するバイオマス由来の有機化合物の製造方法である。
これにより、最小限の工程でかつ高い選択比でバイオマス由来の有機化合物を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、「%」は、「重量%」または「質量%」であると解する。特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
当該バイオマス由来の有機化合物としては、2−メトキシフェノール(グアイアコール)、フェノール、2,3,4−メチルフェノール、2,3,4−エチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、4−エチル−2−メトキシフェノール、2−メトキシー4−メチルフェノール、2−メトキシー4−プロピルフェノール、2,6−ジエトキシフェノールなどのフェノール類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンなどのベンゼン類、2−メチルナフタレンなどのナフタレン類を含む芳香族化合物;フルフラールなどのフラン類を含む芳香族複素環式化合物;(テトラヒドロキシフラン−2−イル)メタノール、テトラヒドロ−2H−ピラン、2−ビニルフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの脂肪族複素環化合物;ヘキサン、プロパンなどの鎖状炭化水素化合物;およびこれらの混合物、ならびにナフサの代替品となりうるバイオマス由来のナフサ代替組成物などが挙げられる。
本発明に係るバイオマス由来の有機化合物の製造方法について工程毎に以下に説明する。
「工程(1)」
本発明に係るバイオマス由来の有機化合物の製造方法は、バイオマスを粉砕してバイオマス由来原料を製造する工程(1)を含む。
本発明に係る工程(1)の主な目的は、バイオマス自体を工程(2)の化学合成するために使用する反応器に収納可能な大きさに調節するためのものであることが好ましい。すなわち、バイオマスからバイオマス由来原料への変化は、バイオマスに含まれる成分とバイオマス由来原料に含まれる成分とは実質的に化学反応を伴わないものである。また、バイオマス由来の有機化合物を最小限の工程で製造するという観点から、バイオマス(出発原料)は、何ら処理されていない天然由来のバイオマスであることが好ましい。
そのため、バイオマスを粉砕してバイオマス由来原料を製造する工程(1)は、バイオマスを粉砕した後、そのまま粉砕したバイオマスをバイオマス由来原料としてもよく、または必要により、バイオマスを粉砕する前もしくは粉砕した後に乾燥工程を設けてもよい。特に粉砕時のバイオマス中の水分が多い場合には、乾燥工程を行うことが好ましい。これにより、粉砕をより短時間でかつ容易に行うことができる。なお、粉砕時のバイオマス中の水分が多い場合であっても、バイオマス粉砕時に発生する熱を乾燥に利用できる粉砕機を用いてバイオマスの粉砕を行う場合には、乾燥及び粉砕を同時に行うことができるため、バイオマス粉砕前後に乾燥工程を行う必要が必ずしもない。
乾燥工程を設ける場合、乾燥工程としては、70〜120℃、1〜24時間乾燥させることが好ましい。当該乾燥したバイオマスを粉砕してバイオマス由来原料を製造すると、バイオマスを所望の大きさに粉砕しやすく、乾燥工程は複数回行ってもよい。例えば絶乾状態のバイオマス由来原料を製造する場合は、100℃〜120℃、1〜2時間の条件下で第1の乾燥工程を行った後、70℃〜100℃、5〜24時間の条件下で第2の乾燥工程を行うことが好ましい。また、通常の乾燥工程としては、100〜120℃、1〜2時間の条件で乾燥させることが好ましい。
本発明に用いられうるバイオマスの大きさ・形状・形態にも特に制限されることはないが、本発明に係るバイオマスを粉砕したバイオマス由来原料は、微細化(タブレット状、チップ状、または粒子状などの微細化)とされたものであると、反応速度、触媒との接触効率などの観点から好ましい。なお、なるべく細かな形状の方が、反応速度、触媒との接触効率などの観点からより好ましい。当該バイオマス由来原料の大きさ(粒子状と仮定した場合の平均粒子径)は、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは10〜500μmである。また、当該大きさが10〜1000μmであればエネルギーコストとの兼ね合いの点でも好ましい。
本発明に係るバイオマス由来原料の大きさ(粉砕したバイオマス由来の原料を粒子状と仮定した場合の平均粒子径)は、光散乱法、粒子径分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック9320HRA)、または顕微鏡写真の画像解析から算出する方法、金属製篩の目開きを表示するメッシュ数などで測定することができるが、本発明においては、10〜1000μmの範囲の金属製篩の目開きを表示するメッシュ数で規定している。具体的には、100〜300μmの範囲の目開きを有する金属製篩にかけたものを使用している。
本発明に用いられうるバイオマスを粉砕する方法には特に制限はなく、従来公知の方法を適宜参照して、あるいは組み合わせて適用することができる。一例を挙げると、ミル、ボールミル、またはジェットミルなどを用いた機械的に粉砕する方法(木材破砕機、クロスシュレッターなどを用いて粉砕する方法)が挙げられる。
本発明に用いられうるバイオマスは、植物系バイオマスであることが好ましく、木質系バイオマス、デンプン質系バイオマス、糖質系バイオマスなど、如何なるものであってもよく特に制限はない。また、本発明に係るバイオマスは、目的とする有機化合物の構造によって適宜選択されるものであり、本発明に係るバイオマスは、セルロース(C6糖類に分類される)、ヘミセルロース(C5糖類に分類される)およびリグニンからなる群から選択される少なくとも1種を含めばよいが、例えば、フェノール類、またはナフタレン類を含む芳香族化合物を目的とする場合は、リグニンを含むバイオマスが好ましい。
木質系バイオマスの多くは、セルロース(C6糖類に分類される)、ヘミセルロース(C5糖類に分類される)およびリグニンを含み、その木質系バイオマスの組成は、一般的には、セルロース30〜32%程度、ヘミセルロース23〜25%程度、リグニン18〜20%程度、およびその他からなる。
木質系バイオマス中、セルロース含有量の下限は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である。また、木質系バイオマス中、セルロース含有量の上限は、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。
木質系バイオマス中、ヘミセルロース含有量の下限は、好ましくは16%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。また、木質系バイオマス中、ヘミセルロース含有量の上限は、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。
木質系バイオマス中、リグニン含有量は、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。ただ、一般的には、20%〜25%は含まれている。
木質系バイオマスの具体例としては、特に制限はないが、木質系、草本系などの如何なるものであってもよく、ネピアグラス、ベージグラス、ササ、タケ、綿、トウヒ、カバ、稲わらなど;バガス、籾殻などを含む農業廃棄物;製材残材、林地残材、間伐材、廃建材、木くずなどを含む産業廃棄物;古紙などを含む生活系廃棄物などが挙げられる。リグニンの含有量が多い点から、本発明に係るバイオマス由来の有機化合物の製造方法において、芳香族有機化合物を製造する場合は、木質系バイオマスが好ましく使用される。
デンプン質系バイオマスや糖質系バイオマス(デンプン質系等バイオマス)の多くは、デンプン(アミロース、アミロペクチン、グリコーゲンなど)およびヘミセルロースを含み、少なくともデンプンを含む。
デンプン質系等バイオマスは、一般的には、デンプン70%程度、ヘミセルロース9%程度およびその他からなる。
デンプン質系等バイオマス中、デンプン含有量の下限は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。また、木質系等バイオマス中、デンプン含有量の上限は、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下である。
デンプン質系等バイオマス中、ヘミセルロース含有量の下限は、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上、さらに好ましくは7%以上である。また、木質系等バイオマス中、ヘミセルロース含有量の上限は、好ましくは14%以下、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下である。
なお、デンプン質系バイオマスや糖質系バイオマスの具体例としては、特に制限はないが、サトウキビ、モラセス、トウモロコシ、小麦、タピオカ、ビート、ソルガム、芋、米、麦などが挙げられるだけでなく、市販の結晶性セルロースを含む食品添加剤(セオラス(登録商標)、アビセル(登録商標))などでもよい。
本発明において、バイオマスを粉砕してバイオマス由来原料を製造する工程(1)は、粉砕したバイオマスをそのままバイオマス由来原料として使用する代わりに、別工程をさらに行ってもよい。別工程としては、バイオマスを粉砕した後、粉砕したバイオマスを有機溶媒と混合して不要な成分(例えば、バイオマスに含まれる油脂分)を低減・除去するための抽出工程;バイオマスを粉砕した後、粉砕したバイオマスを酸、アルカリを含む有機溶媒を用いて不要な成分(例えば、バイオマスに含まれる灰分)を低減・除去する工程などがある。
本発明に係る抽出工程は、特に制限されることは無く公知の抽出方法を使用することができ、例えば、室温又は加温下に溶媒により抽出する方法、ソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出する方法などが挙げられる。また抽出工程で使用する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、もしくはプロパノールなどの炭素数1〜4の低級アルコール、アセトン、またはTHFなどの極性溶媒;ベンゼン、トルエン、もしくはキシレン等の芳香族溶媒;および当該極性溶媒と当該芳香族溶媒との混合溶媒などが挙げられる。
また、本発明に係る抽出工程は、バイオマスを60〜120℃の温度で有機溶媒で抽出する加熱抽出工程であることが好ましい。なお、加熱は、加圧下で行うこともできるが、好ましくは、常圧下において行う。有機溶媒を用いた場合、例えば、常圧下で沸騰状態を維持することにより、好ましい温度にて加熱抽出することができる。
さらに、抽出時間は、抽出温度によって適宜調整することができる。有機溶媒を常圧下で沸騰状態を維持してバイオマスを加熱抽出する場合には、好ましくは0.5時間以上30時間以下である。0.5時間より短いと、抽出が不充分になりがちであり、30時間を超えると、必要とされる成分以外の成分も抽出されてくることが予測されるとの観点で好ましくない。
当該抽出工程において、バイオマスに対する有機溶媒の添加量は、バイオマス100重量部に対して、有機溶媒100重量部以上500重量部以下であることが好ましい。
本発明に係る工程(1)において、バイオマスを粉砕した後、粉砕したバイオマスを有機溶媒と混合して不要な成分を除去するための抽出工程を行った後、前記バイオマスからの抽出成分を含む抽出溶液と、前記バイオマス由来の抽出残渣とに分離することが好ましい。この後、抽出液は破棄しても、廃棄しなくてもよい。また、変形例としては、当該抽出工程は、バイオマスの前処理工程として行うのではなく、最終的に残渣として取り除いてもよい。
当該分離方法としては、公知の乾燥方法(抽出溶媒の除去)、公知の固液分離方法(濾過、沈殿、遠心分離)を使用することができる。例えば、乾燥方法の場合の乾燥条件は、抽出溶媒を除去できれば特に制限されず、使用される抽出溶媒の種類によって適宜選択できる。濾過方法で分離する場合は、濾過網、濾過布等による濾過によって抽出残渣と抽出溶液とを分離し、この際、濾過法としては、メッシュフィルター、ペーパーフィルター、ステンレスフィルターやネル布、ストレーナーを使用した濾過法を挙げることができ、これらを適宜採用することができる。
また、本発明に係る工程(1)において、前記バイオマスからの抽出成分を含む抽出溶液と、前記バイオマス由来の抽出残渣とに分離した後、前記前記バイオマス由来の抽出残渣を必要により乾燥工程を行ってもよい。この場合の前記乾燥工程は、上述した乾燥工程と同一であるのでここでは省略する。
以上のことから、本発明に係る工程(1)は、バイオマスを粉砕してバイオマス由来原料を製造する工程(1)である。当該工程(1)の好ましい実施形態は、バイオマスを粉砕してバイオマス由来原料を製造する工程であって、バイオマスを粉砕する前、またはバイオマスを粉砕した後、前記バイオマスまたは粉砕されたバイオマスを70〜120℃、1〜24時間の条件で乾燥する乾燥工程を含むことが好ましい。
当該工程(1)の他の好ましい実施形態は、バイオマスを粉砕した後、粉砕したバイオマスを有機溶媒で抽出する抽出工程と、当該抽出工程の後、前記バイオマスからの抽出成分を含む抽出溶液と、前記バイオマス由来の抽出残渣とに分離して、前記バイオマス由来の抽出残渣を乾燥することにより得られたバイオマス由来原料を製造する工程であることが好ましい。
「工程(2)」
本発明に係るバイオマス由来の有機化合物の製造方法は、前記バイオマス由来原料と、触媒成分と、pH調整成分と、を混合して水素圧0.1〜10MPa、373〜673K、pH7〜14の条件下で0.1〜10時間反応する工程(2)を含む。
これにより、バイオマスから直接1段階の化学合成でバイオマス由来の有機化合物を製造することができる。すなわち、上述したように工程(1)は、バイオマスが所定の大きさになるように当該バイオマスを粉砕したものをバイオマス由来原料とする処理であるため、バイオマスを化学変化することによりバイオマス由来の有機化合物に転化する工程は、本工程(2)だけである。そのため、バイオマスから1段階の化学合成によりバイオマス由来の有機化合物を、高い選択比で製造することができる。また、本発明に係る製造法では高い装置コストおよびエネルギーコストを低減できると考えられる。また、工程(2)における反応は全体としてバイオマス由来原料(バイオマス)の水素化分解反応によりバイオマス由来の有機化合物を生成しているものであると現段階では考えている。
また、本発明に係る工程(2)においては、バイオマス由来原料と、触媒成分と、pH調整成分とを液相(溶液状態で)で混合して溶液反応することが好ましい。当該液相に用いる溶媒としては水や公知の緩衝溶液等の水溶液などが挙げられる。また、この場合、pH調整成分自体が水溶液の形態であっても、溶媒に添加することによって所定のpH領域を示すものであってもよい。そのため、pH調整成分自体が水溶液の形態である場合は、必ずしも溶媒を必要としない。
本発明の目的は上述したように、バイオマス由来の有機化合物の製造方法であるため、水溶液中で反応を行うと生成したバイオマス由来の有機化合物と水とは液分離しやすいためバイオマス由来の有機化合物を回収しやすい。
「触媒成分」
本発明に係る触媒成分は、触媒金属成分を含むことが好ましい。当該触媒金属成分は、触媒金属粒子、または担体表面に担持した触媒金属粒子であることが好ましく、担体表面に担持した触媒金属粒子であることがより好ましい。また、当該触媒金属成分と、無機多孔質体とを併用して触媒成分に用いてもよい。すなわち、前記工程(2)において、前記バイオマス由来原料と、触媒成分と、pH調整成分と、無機多孔質体と、を混合して、水素圧0.1〜10MPa、373〜673K、pH7〜14の条件下で0.1〜10時間反応してもよい。
さらにここでいう触媒金属粒子は単数種類または複数種類の組み合わせであってもよく、触媒金属粒子自体の組み合わせは特に制限されることは無い。そのため、例えば、触媒金属粒子として、触媒金属と合金触媒金属との組み合わせ、ある触媒金属とその他の触媒金属との組み合わせ、ある合金触媒金属とその他の合金金属触媒との組み合わせでもよい。同様に、無機多孔質体も単数種類または複数種類の組み合わせであってもよい。
当該触媒成分として、触媒金属粒子を表面に担持した担体を選択すると、担体自体の表面積と、触媒金属粒子の表面積とを稼ぐことができるため、バイオマス由来原料と接触する界面を増大できると考えられる。さらに、触媒成分として無機多孔質体を触媒金属成分と併用して用いると、原料のバイオマスの成分が高分子状態のままでは多孔質内を通過できない分子ふるい作用により、化学結合が分離され、単純な分子に分解されると考えられる。
本発明に係る工程(2)における触媒成分の混合量は、バイオマス由来原料1gに対して、0.5〜1g混合することが好ましく、0.7〜1.0g混合することがより好ましい。触媒成分の量が0.5〜1gであれば触媒コストや生成有機化合物の特性両面で好ましい。
工程(2)において無機多孔質体存在化で反応すると、当該無機多孔質体は、触媒成分により水素化分解した炭化水素をさらにクラッキングにより分解し、芳香族成分を開環しやすくなると考えられる。
また、本発明に係る無機多孔質体は、疎水性無機多孔質体であることがより好ましい。無機多孔質体として疎水性無機多孔質体を選択すると、クラッキング触媒の作用・効果を有するだけでなく、上述したように本発明で製造される有機化合物は、比較的疎水性成分であるため、耐水性の高い疎水性の無機多孔質体を用いると、当該多孔質体の表面や細孔内に生成した比較的疎水性の有機化合物を吸着あるいは吸収させることができるため、後の工程において水との分離を容易にすることができると考えられる。
そのため、本発明に係る無機多孔質体は、クラッキング触媒および被吸着成分であることが好ましい。
当該無機多孔質体としては、ゼオライトまたはメソポーラスシリカが好ましく、疎水性ゼオライトまたは疎水性メソポーラスシリカがより好ましい。
当該ゼオライトとしては、細孔を構成する環員数が8〜16程度のものを例示できる。これらの8〜16員環のゼオライトとしては、国際ゼオライト学会(IZA)により認められている構造コードで示すと、ANA、CHA、ERI、GIS、KFI、LTA、NAT、PAU、YUG、DDR、AEL、EUO、FER、HEU、MEL、MFI、NES、TON、WEI等といったゼオライトが挙げられ、より詳細には、フェリエライト、ヒューランダイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、NU−87、シーター1、ウェイネベアイト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USY型ゼオライト、モルデナイト、脱アルミニウムモルデナイト、β−ゼオライト、MCM−22、MCM−36、MCM−56などが挙げられる。これらの中でも、ZSM−5が特に好ましい。ゼオライトは、反応温度を低くし、過分解を避けるために酸触媒(クラッキング触媒)として作用する。
また、本発明に係るゼオライトにおけるケイ素とアルミニウムとの組成比(ケイ素/アルミニウム)は、100/1〜20/80の範囲にあることが好ましく、活性および熱安定性の面から100/1〜40/60の範囲にあることが特に好ましい。さらに、ゼオライト骨格に含まれるアルミニウムを、Ga、Ti、Fe、Mn、Bなどのアルミニウム以外の金属で置換した、いわゆる同型置換したゼオライトを用いることもできる。また、ゼオライトとしては、自身を金属イオンで修飾したものを用いることもできる。
また、本発明に係るメソポーラスシリカとしては、Ti−HMS、MCM−41、またはFSM−16などの公知のメソポーラスシリカを使用することができる。
本発明に係る無機多孔質体の形状は特に制限は無く、球状・円柱状・押し出し状・破砕状の何れでもよい。また、その粒子の大きさも特に制限は無く、平均粒径0.1μm〜10000μmの範囲のものを反応器の大きさに応じて選定すればよい。また、当該無機多孔質体は、一種単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る無機多孔質体のBET比表面積は1〜1000m/gであることが好ましく、10〜500m/gであることがより好ましい。
当該BET比表面積の測定方法としては、公知のBET比表面積測定方法に従って測定した値を用いることができる。例えば、ヨウ素吸着量はヨウ素を吸着媒に用いた触媒表面物性の測定法であり、ヨウ素吸着量はJIS規格K1474(2007年)に準じた方法を用いることが好ましい。
本発明に係る触媒金属粒子の材料としては、遷移金属を含むことが好ましく、水素化触媒、脱酸素触媒、クラッキング反応触媒、水溶性Mo触媒などがより好ましく、水素化触媒であることがさらに好ましい。当該触媒金属粒子の元素としては、Pd、Pt、Ru、Ni、Co、Mo、W、およびRhからなる群から選択される少なくとも一つの金属およびその合金を有することが好ましく、Pd、Pt、Ru、Ni、Ni−Mo合金、Co−Mo合金、Ni−W合金,NiMoP合金、Ru、およびRhからなる群から選択される少なくとも一つが特に好ましい。バイオマスは、一般にグルコース(C12)で表せるように高い酸素含有比率を有するため、脱酸素触媒を利用することも好ましい。一方で、脱酸素触媒は均一系で利用されている触媒が主で、安定な不均一系触媒では公知な触媒はあまり存在していない。このため、バイオマスには周期律表では酸素と同じ族に存在する硫黄成分が含まれていることから、Ni−Mo合金、Co−Mo合金等の水素化脱硫触媒が水素化脱酸素触媒として好ましく使用される。これらの触媒は、脱硫機能及び脱酸素機能を共に発揮できる。これらのうち、触媒活性などを向上させるために、少なくともPd、Pt、Ni、RuおよびRhからなる群より選択される少なくとも一種を含むものが好ましく用いられる。ここで、バイオマスを構成するリグニン化合物としては、グアイアシルタイプとシリンギルタイプそれぞれにプロパノール基が結合したものをその代表とし、これらの化合物がそれぞれエーテル結合、エステル結合等で結合し、大きな分子を形成する。このため、メトキシフェノール、ジメトキシフェノールを製造しようとする場合には、これらの結合を加水分解、水素化分解、酸分解などにより分解する必要がある。このため、基本的な単一の化合物を作るために水素化触媒および水素を工程(2)に存在させることが好ましい。また、一般的に芳香族等の石油製品の水素化には水素化触媒の反応温度は水素分子を活性な原子状に解離するためにかなりの高温(例えば、400℃以上)が必要であるため、水素を解離吸着する能力が高いPdを触媒成分(水素化触媒)として使用することが好ましい。Pdを触媒金属粒子として使用する場合には、Pdの粒子径を小さくするためには、担体として高い表面積を有する活性炭を使用することが好ましい。また、Ptは、優れた炭化水素間の結合解離能力を有する。Ni,Rhは水素化分解能力の高い;Rhは低温活性が高い;Ruは水素化能は高い;およびNiは低価格である点で好ましい。
なお、本明細書における合金とは、主成分の金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称をいう。また、上記合金の組織は、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどが挙げられ、本発明ではいずれであってもよい。
本発明に係る合金の組成は、例えば、10Co−90Mo〜90Co−10Mo、10Ni−90Mo〜90Ni−10Mo、10Ni−90W〜90Ni−10W、40Ni50Mo10P〜30Ni40Mo30P(各数値はいすれもモル%、合計は100モル%である)が好ましい。
本発明に係る触媒金属粒子の平均粒径は、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは10〜100nm、さらにより好ましくは10〜50nmの粒状であることが好ましい。
本発明に係る触媒金属粒子の平均粒径の測定方法は、透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡またはXRDにより求められる結晶子径を用いて測定するものであり、本発明においては、走査型電子顕微鏡の画像解析から算出している。具体的には、走査型電子顕微鏡観察により得られた写真から視野内で測長可能な粒子を10個について任意に選別して、それぞれの粒子に対して3点測長しそのうち最大長さを当該粒子の最大粒径とした後、当該計測した値の10個平均値をとっている。
また、本発明に係る触媒金属粒子を担持する担体の材料としては、炭素材料または無機材料のいずれであってもよく、さらには無機材料と炭素材料との組み合わせでもよい。
当該炭素材料としては、活性炭素、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン材料が挙げられ、当該カーボン材料としては、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ブラックパール、黒鉛化アセチレンブラック、黒鉛化バルカン、黒鉛化ケッチェンブラック、黒鉛化カーボン、黒鉛化ブラックパール、カーボンナノチューブ、またはカーボンナノファイバーが好ましい。
また、無機材料としては、ゼオライト、シリカ、ジルコニア、チタニア、シリカ−アル
ミナ、酸化マグネシウムなどの金属酸化物を含むことが好ましく、Al、ゼオライト、MgO,TiO、SiO−Al、およびSiOからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
さらに、触媒の中には組み合わせにより互いの効果を打ち消し合う組み合わせもあると考えられ、それと同時に担体と触媒金属粒子との最適な組み合わせもあると考えられ、本発明に係る触媒金属粒子を担持した担体の好ましい形態としては、水素化触媒(Pd/C、Pt/C、Ru/C、Ni/Al)、クラッキング触媒(ゼオライト、Ni触媒、ナノポーラスシリカ)、脱酸素触媒(Ni−MoおよびCo−Mo/Al、Ni−W/Al、Co−Mo、Co−Mo/MgO、NiMoP/Al、水溶性Mo触媒、Pt/TiOおよびSiO−Al、Ru/C、TiOおよびAl、PdおよびRh/SiO)などが挙げられ、Pd/C、Ni/Al、Pt/C、Co−Mo/Al、Co−Mo、Co−Mo/MgO、ゼオライトが特に好ましい。
また、触媒金属粒子の好ましい組み合わせとしては、水素化触媒とCo−Mo/Al、Co−Mo、またはCo−Mo/MgOとの組み合わせ、水素化触媒とクラッキング触媒との組み合わせ、水素化触媒とクラッキング触媒とCo−Mo/Al、Co−Mo、またはCo−Mo/MgOとの組み合わせ、クラッキング触媒とCo−Mo/Al、Co−Mo、またはCo−Mo/MgOとの組み合わせなどが挙げられる。
また、本発明に係る製造方法おいて、製造する目的の有機化合物によって、適宜触媒成分を選択するものであり、例えば、アルカリ条件下で得られた有機化合物として、2−メトキシフェノール(グアイアコール)、フェノール、2,3,4−メチルフェノール、2,3,4−エチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、4−エチル−2−メトキシフェノール、2−メトキシー4−メチルフェノール、2−メトキシー4−プロピルフェノール、2,6−ジエトキシフェノールなどのようにフェノール類を含む芳香族化合物を目的と製造する場合には、水素化触媒、脱酸素触媒、およびクラッキング触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、特にフェノール類を合成する場合は水素化触媒を必須要件に含むことが好ましい。また、単環式芳香族複素環式化合物を目的とする場合は、クラッキング触媒を含むことが好ましい。
本発明に係る担体の形状は、触媒金属粒子を担持できる形状であれば特に制限されることはなく、粒子状、フィラー状、タブレット状、ロッド状など公知の形状を採用することができる。また、当該担体が粒子状の場合において、本発明に係る担体の平均粒径は、好ましくは100〜10000μm、より好ましくは100〜1000μm、さらにより好ましくは500〜1000μmであることが好ましい。
本発明に係る触媒金属粒子を担持する担体において、触媒金属粒子と担体との質量比は、担体に対する触媒金属粒子の担持量は、通常、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%である。
本発明に係る触媒金属粒子を表面に担持した担体は、市販の物を購入しても、または公知の製造法より作製してもよい。当該担体としては、アセチレンブラック、活性炭、ケッチェンブラックなどの炭素材料や、活性アルミナ、シリカ、ベーマイト、ゼオライトなどの無機担体などが挙げられる。
さらに、本発明に係る触媒金属粒子を表面に担持した担体を製造する方法としては、使用する触媒金属塩や触媒金属錯体が溶解した触媒金属前駆体溶液をゼオライト、シリカ、または活性炭素(カーボンブラック)、ケッチェンブラックといった微粒子状の担体に加えて分散させた後、還元担持させ、次いで、加熱および乾燥工程を行った後、150℃〜1000℃程度で焼結を行って作製する溶液化学還元法や、当該溶液化学還元法に界面活性剤を使用した逆ミセル法、金属塩もしくは金属錯体を用いた含浸法などの湿式担持法、スプレー熱分解法を利用するような乾式担持法などの公知の方法が挙げられる。
「pH調整成分」
本発明に係るpH調整成分は、系のpHを所定の領域に維持できるものであればよく、緩衝溶液成分またはアルカリ成分などが挙げられ、アルカリ成分であることが好ましい。本発明に係るバイオマス由来の有機化合物は、製造する目的の有機化合物に応じて適宜選択されるものである。例えば、フェノール類を製造する場合は、pH7〜14、より好ましくは7を超えて14以下、さらにより好ましくは8〜13、特に好ましくは9〜13の条件が好ましい。
当該緩衝溶液成分としては、炭酸バッファー(pH9〜10)、TRISバッファー(pH7〜9)、CHESバッファー(pH8.5〜10)、CAPS−NaOH(pH9.5〜11)などが挙げられる。
当該アルカリ成分としては、単一物質の水溶液でアルカリ性を示すものであっても、また中性水溶液であってかつアルカリ成分を添加した水溶液が安定なアルカリ性水溶液となるものも含む。本発明に使用できるアルカリ成分としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム,炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウムからなる無機塩基、またはアンモニア、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アニリン、ピリジンからなる有機塩基を挙げることができる。これらのアルカリ成分のうち、回収の容易なアルカリ、アルカリ土類金属種を含む化合物であればよい。
工程(2)の反応がアルカリ成分存在下で進行すると、バイオマス由来原料(またはバイオマス)に含まれる結晶性分子を加水分解等できると考えられる。
また、本発明に係るpH調整成分が水溶液形態の場合、当該水溶液においてpH調整成分が水に対して0.1〜5.0質量%含まれていることが好ましく、0.3〜3.0質量%含まれていることがより好ましい。例えば、本発明に係るpH調整成分自体を水溶液形態のものを使用する場合、バイオマス由来原料1gに対して、水溶液10〜200g混合することが好ましい。
また、本発明に係るpH調整成分を固形または液体状のものを使用する場合は、工程(2)において溶媒を添加することが好ましい。この場合の溶媒の量は、上記の水溶液形態と同様の範囲になるように調整すればよい。
本発明に係る工程(2)において、さらに無機多孔質体を混合してもよい。換言すると、本発明に係る工程(2)において、バイオマス由来原料と、触媒成分と、アルカリ成分と、無機多孔質体と、溶媒と、を混合して水素圧0.1〜10MPa、373〜673K、pH7〜14の条件下で0.1〜10時間反応することが好ましい。
当該溶媒としては、水、緩衝溶液、アルカリ水溶液(アルカリ成分が水に溶解した溶液)が好ましい。
工程(2)において、バイオマス由来原料と、触媒成分と、アルカリ成分と、必要により添加される無機多孔質体および/または溶媒と、を混合した混合溶液は、アルカリ成分を混合する場合は常温(25℃)でpH7〜14程度の範囲であることが好ましい。反応(仕込みの混合溶液)のpHは、好ましくは7を超えて14以下、より好ましくは8〜13、特に好ましくは9〜13の条件が好ましい。
また、工程(2)において、バイオマス由来原料と、触媒成分と、アルカリ成分と、必要により添加される無機多孔質体および/または溶媒と、を混合した後の反応条件としては、水素圧0.1〜10MPa、373〜673K、pH7〜14の条件下で0.1〜10時間反応することが好ましく、水素圧0.1〜5MPa、573〜673K、pH7〜14の条件下で0.5〜10時間反応することがより好ましい。
反応系を水素圧0.1〜10MPaの範囲の水素存在下にすることにより、生成物の脱芳香族化およびセルロース結晶の水素化分解を促す作用を発揮できると考えられる。
また、当該反応は水素圧0.1〜5MPa、373〜673K、pH7〜14の条件下
密閉系で行うことが好ましい。
反応容器としては、上記条件下で使用可能なものであれば特に制限されることはないが、安全性を考えハステロイのような耐アルカリ性強度の高い合金または石英ガラス製を内壁に被覆しているオートクレーブなどが好ましい。
また、工程(2)において、バイオマス由来原料と、触媒成分と、pH調整成分と、必要により添加される溶媒と、を混合した混合溶液を公知の撹拌手段で攪拌しながら反応することが好ましい。
「工程(3)」
本発明に係る有機化合物の製造方法は、前記工程(2)の後、前記工程(2)により得られた反応溶液からバイオマス由来の有機化合物を回収する工程(3)を含む。
より詳細には、反応終了後の反応溶液を遠心分離し残渣または上澄み溶液を回収して、必要により抽出操作を行った後、抽出溶媒を留去して有機化合物を回収することが好ましい。
すなわち、本発明に係る製造工程では水溶液中で反応を行うが、生成された目的物であるバイオマス由来の有機化合物は上述したように比較的疎水性であるため、遠心分離により当該有機化合物の含む残渣を含む有機相と、液相とを分離する。また水との分離を考えると、透析膜を利用するなど公知の膜分離方法を採用してもよい。
前記工程(2)において、触媒成分として触媒金属成分が反応溶液内に存在する場合は、水相以外の触媒金属成分と未反応のバイオマスとを含む残渣の主な成分(有機相)になり、触媒成分として触媒金属成分および無機多孔質体が反応溶液内に存在する場合は、水相以外の触媒金属成分および無機多孔質体と未反応のバイオマスとを含む残渣の主な成分(有機相)になる。そのため、バイオマス由来の有機化合物を回収する工程(3)は、反応終了後の反応溶液を遠心分離し、水相と有機相とに分離した後、水相および/または有機相を抽出操作、エバポレート操作、および凍結乾燥操作からなる群から選択される少なくとも一つの操作を行うことでバイオマス由来の有機化合物を回収することが好ましい。
また、前記工程(1)において、触媒成分として無機多孔質体が反応溶液内に存在する場合は、無機多孔質体を取り出して、当該無機多孔質体を所望の抽出溶媒で抽出し、当該抽出溶媒を留去することで当該無機多孔質体に吸着した生成物であるバイオマス由来の有機化合物を回収することが好ましい。無機多孔質体は吸着剤としての作用も奏するため、当該無機多孔質体に吸着されている有機化合物を容易に回収できる。
当該遠心分離工程の条件は特に制限されることは無く、2500〜4000rpmを10〜30分程度であればよい。さらに、必要により遠心分離した後、公知の濾過方法で残渣を回収してもよい。遠心分離工程は複数回行ってもよい。
また、生成した有機化合物を含む抽出相に、シリカ等の乾燥剤を加えて0.5〜10時間静置する方法、または抽出相を採取した後、飽和食塩水などを混合して当該抽出相中の水分などを水相に分配させた後、再度抽出相を回収する方法などを適宜組み合わせて行うことができる。
上記抽出溶媒としては、公知の有機溶媒(ジエチルエーテル、アセトン、ヘキサン、THFなどを使用することができる。また、抽出溶媒を留去する方法としては、公知の方法であるロータリーエバノレーターなどにより溶媒を留去する方法が挙げられる。
反応(工程(2))終了後または工程(3)後に回収された残渣は、必要であれば、焼却し、熱量を回収してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
原料となるバイオマスは、宮崎大学の農場で栽培した矮性晩生ネピアグラスを用いた。当該バイオマスを粉砕機により150〜300μmの大きさまで粉砕した後、ソックスレー抽出器でエタノール−ベンゼン混合溶液(エタノールーベンゼン容量比:1:1)を90℃、24時間抽出後、105℃で乾燥後取り出した。さらに反応試験前に80℃で1晩乾燥した(絶乾状態)ものを用いた(ネピアグラス絶乾粉末試料)。
水素化の装置は耐圧硝子工業株式会社製オートクレーブ(品番TVS−N2−120−100型)を用いた。反応装置は酸による腐食を防ぐためハステロイ製(アロイ22製)で作製されている。反応機内部に同じくハステロイ合金性の筒形反応容器(容量100ml)が搭載されている(実施例において反応容器は全て同じものを使用した)。
上記バイオマス原料であるネピアグラス絶乾粉末試料0.5gと、0.5wt%NaOH水溶液10g(粒状のNaOH(和光純薬株式会社製 特級 純度97%)を純水に溶かして0.5wt%NaOH水溶液から10g秤取ったもの)と、5wt%Pd/C0.5g(活性炭にパラジウムを5wt%担持した水素化触媒(和光純薬株式会社製:エボニックデグサタイプE101 NE/W5%Pd,100μm程度)とを混合して、これら3つを前記反応容器内に入れ密封した。この際、仕込みの混合溶液のpHは12.4であった。
反応容器に搭載されている攪拌機で約10分間攪拌(回転数:500rpm)後、真空ポンプで0.1Pa程度まで減圧し、内部にある空気を排出した。その後、反応装置とつながっているヘリウムボンベからヘリウムガスを5.0MPaまで導入し、漏れ等がないかの確認を行った後排気した。この行為を2回行うことで、僅かに残っている空気を追い出した。
ヘリウムガスを排気後、同じく反応装置とつながっている水素ボンベから水素ガスを反応装置内に0.5MPaまで導入した後、ストップバルブを用いて、水素ボンベと反応装置の間を遮断した。攪拌機を用いて850rpmで内部の試料と水素ガスを攪拌しながら、外部ヒーター(仕様:100V,900W)で350℃(約623K)まで加温した。この間の所要時間は1〜2時間であった。温度到達後2時間の反応を行った。
反応終了後、反応容器内温度が室温近辺になるまで放冷した。その後、容器内を常圧に戻したのち、容器を空け反応生成物を全量回収した。反応容器各部に付着した反応生成物も蒸留水にて共洗いをして回収した。
収集した反応生成物は3,500rpm(2150×g)にて10分間の遠心分離を2回行った後、デカンテーションを行い固相と液相に分離した。当該固相である残渣にジエチルエーテルを添加し、当該ジエチルエーテルで抽出した抽出液をカラム(Rtx(登録商標)−5MS 0.25mm ID X 30m 100℃−5min 10℃/min 250℃−15min)を備えたガスクロマトグラフを直結した質量分析計(島津製作所社製 商品名QP−2010)により当該抽出液中の成分を分析した。その結果を図1に示す。
当該図1から、2−メトキシフェノール(通称:グアイアコールまたはグアヤコール)のピークが強くできていることが確認される。
反応後のバイオマス由来の原料の乾燥重量に対する仕込みのバイオマス由来の原料の乾
燥重量の減少率は66.8%であった。
<実施例2>
原料となるバイオマスは、宮崎大学の農場で栽培した矮性晩生ネピアグラスを用いる。当該バイオマスを粉砕機により150〜300μmの大きさまで粉砕した後、反応試験前に80℃で1晩乾燥したものをバイオマス由来原料とする。
上記バイオマス原料であるネピアグラス絶乾粉末試料0.5gと、0.5wt%NaOH水溶液10g(粒状のNaOH(和光純薬株式会社製 特級 純度97%)を純水に溶かして0.5wt%NaOH水溶液から10g秤取ったもの)と、5wt%Pd/C水素化触媒(活性炭に5wt%パラジウムを担持した水素化触媒(和光純薬株式会社製:エボニックデグサタイプE101 NE/W5%Pd,100μm程度)0.5gとを混合して、これら3つを前記反応容器内に入れ密封する。この際、仕込みの混合溶液のpHは12.4であった。
反応容器に搭載されている攪拌機で約10分間攪拌(回転数:850rpm)後、真空ポンプで0.1Pa程度まで減圧し、内部にある空気を排出する。その後、反応装置とつながっているヘリウムボンベからヘリウムガスを5.0MPaまで導入し、漏れ等がないかの確認を行った後排気する。この行為を2回行うことで、僅かに残っている空気を追い出す。
ヘリウムガスを排気後、同じく反応装置とつながっている水素ボンベから水素ガスを反応装置内に0.5MPaまで導入した後、ストップバルブを用いて、水素ボンベと反応装置の間を遮断する。攪拌機を用いて850rpmで内部の試料と水素ガスを攪拌しながら、外部ヒーター(仕様:100V,900W)で350℃(約623K)まで加温する。
この間の所要時間は1〜2時間である。温度到達後2時間の反応を行う。
反応終了後、反応容器内温度が室温近辺になるまで放冷する。その後、容器内を常圧に戻したのち、容器を空け反応生成物を全量回収する。反応容器各部に付着した反応生成物も蒸留水にて共洗いをして回収する。
収集した反応生成物は3,500rpm(2150×g)にて10分間の遠心分離を2回行った後、デカンテーションを行い固相と液相に分離する。当該固相である残渣にジエチルエーテルを添加し、当該ジエチルエーテルで抽出した抽出液をカラム(Rtx(登録商標)−5MS 0.25mm ID X 30m 100℃−5min 10℃/min 250℃−15min)を備えたガスクロマトグラフを直結した質量分析計(島津製作所社製 商品名QP−2010)により当該抽出液中の成分を分析する。
<実施例3>
バイオマスとしてネピアグラス(茎及び葉)0.5gをミルにより乾燥条件で粉砕し、粒子径150〜300ミクロン程度のバイオマス由来の原料を得た。
また、水素化触媒として、Pt/C(Pt微粒子担持活性炭素粒子 5質量%Pt微粒子含有)(シグマアルドリッチ社製 商品名Pt−carbon 炭素の平均粒径1μm、Pt微粒子の平均粒径10〜100nm程度)0.5gと、無機多孔質体(クラッキング触媒)としてゼオライトZSM−5(クラリアント社製 構造コード:MFI 平均粒径1μm Si/Al比 45/55)1.0gと、0.5wt%のNaOH水溶液10gと、前記バイオマス由来の原料0.5gと、をそれぞれ反応装置(耐圧ガラス工業社製)に入れ、攪拌子で攪拌しながら、反応温度350℃(約623K)、水素圧(0.5MPa)の条件下で2時間反応を行った。この際、仕込みの混合溶液のpHは12.4であった。
反応後のバイオマス由来の原料の乾燥重量に対する仕込みのバイオマス由来の原料の乾燥重量の減少率は40%であった。
その後、遠心分離後の残渣にジエチルエーテルを添加し、当該ジエチルエーテルで抽出した抽出液をカラム(Rtx(登録商標)−5MS 0.25mm ID X 30m 100℃−5min 10℃/min 250℃−15min)を備えたガスクロマトグラフを直結した質量分析計(島津製作所社製 商品名QP−2010)により当該抽出液中の成分を分析した。その結果を図2に示す。
当該図2から、2−メトキシフェノール(グアイアコール)のピークが強くできていることが確認される。当該ピーク位置は4−メトキシフェノールのピーク位置とも重複するため、H−NMR測定により当該ピーク位置の化学構造を特定した。その結果を図3に示す。当該図3は、上から、サンプル(実施例3の抽出液成分)のH−NMRチャートであり、4−メトキシフェノール(p−メトキシフェノール)のH−NMRチャートであり、3−メトキシフェノール(m−メトキシフェノール)のH−NMRチャートであり、2−メトキシフェノール(o−メトキシフェノール)のH−NMRチャートである。このNMRチャートから実施例3で得られた生成物が2−メトキシフェノール(o−メトキシフェノール)であることが確認される。
なお、上記ガスクロマトグラフを直結した質量分析計とNMRとの測定結果から、2−メトキシフェノールはネピアグラスに含まれるリグニンに対して約60%の収率を占めていることが確認された。
<比較例1>
バイオマスとしてネピアグラス(茎及び葉)0.5gをミルにより乾燥条件で粉砕し、粒子径150〜300μm程度のバイオマス由来の原料を得た。
また、0.5wt%のNaOH水溶液10gと、前記バイオマス由来の原料0.5gと、をそれぞれ反応装置(耐圧ガラス工業社製)に入れ、攪拌子で攪拌しながら、反応温度350℃、水素圧(5MPa)の条件下で2時間反応を行った。この際、仕込みの混合溶液のpHは12.5であった。
反応後のバイオマス由来の原料の乾燥重量に対する仕込みのバイオマス由来の原料の乾燥重量の減少率(ネピアグラス減少率)は97.1%であった。
その後、遠心分離(3500rpm 10分 2回)をし、遠心分離後の残渣にジエチルエーテルを添加し、当該ジエチルエーテルで抽出した抽出液をカラム(Rtx(登録商標)−5MS 0.25mm ID X 30m 100℃−5min 10℃/min 250℃−15min)を備えたガスクロマトグラフを直結した質量分析計(島津製作所社製 商品名QP−2010)により当該抽出液中の成分を分析した。その結果、残渣からの液からはグアイアコールのピークは得られなかった。
<参考例1>
合成原料としてアビセル(登録商標)(MERCK社製 パルプを硫酸等で加水分解処
理し、非結晶領域を取り除いたもの)、粒子径20〜160μmを使用した。
また、水素化触媒として、Pd/C(Pd微粒子担持活性炭素粒子 5質量%Pd微粒子含有)(シグマアルドリッチ社製 商品名Pd−carbon 炭素の平均粒径1μm、Pd微粒子の平均粒径10〜100nm程度)0.5gと、無機多孔質体(クラッキング触媒)としてゼオライトZSM−5(クラリアント社製 構造コード:MFI 平均粒径1μm Si/Al比 45/55)2.0gと、0.5wt%のNaOH水溶液10gと、アビセル0.5gをそれぞれ反応装置(耐圧ガラス工業社製)に入れ、攪拌子で攪拌しながら、反応温度350℃、水素圧(5MPa)の条件下で2時間反応を行った。この際、仕込みの混合溶液のpHは12.4であった。
反応後のバイオマス由来の原料の乾燥重量に対する仕込みのバイオマス由来の原料の乾燥重量が0.417gとかなり減少したが、これは、アルカリ(NaOH)水溶液によりアビセル及び触媒の重量が減少したためと推測される。
その後、遠心分離後の残渣にジエチルエーテルを添加し、当該ジエチルエーテルで抽出した抽出液をカラム(Rtx(登録商標)−5MS 0.25mm ID X 30m 100℃−5min 10℃/min 250℃−15min)を備えたガスクロマトグラフを直結した質量分析計(島津製作所社製 商品名QP−2010)により当該抽出液中の成分を分析した。その結果を図4に示す。当該図4から、グアイアコール由来のピークが確認されていない。
以上の実施例1〜3により、バイオマスから1段の反応でグアイアコールがほぼ選択的に生成していることが確認された。そのため、従来の石油からの生成に比較すると製造プロセス、製造コスト的にも有利な合成法であると考えられる。
<実施例4>
バイオマスとしてネピアグラス(茎及び葉)0.5gをミルにより乾燥条件で粉砕し、粒子径150〜300ミクロン程度のバイオマス由来の原料を得た。
また、水素化触媒として、Pt/C(Pt微粒子担持活性炭素粒子 5質量%Pt微粒子含有)(シグマアルドリッチ社製 商品名Pt−carbon 炭素の平均粒径1μm、Pt微粒子の平均粒径10〜100nm程度)0.5gと、無機多孔質体(クラッキング触媒)としてゼオライトZSM−5(クラリアント社製 構造コード:MFI 平均粒径1μm Si/Al比 45/55)1.0gと、0.5wt%のNaOH水溶液10gと、前記バイオマス由来の原料0.5gと、をそれぞれ反応装置(耐圧ガラス工業社製)に入れ、攪拌子で攪拌しながら、反応温度350℃(約623K)、水素圧(0.5MPa)の条件下で2時間反応を行った。この際、仕込みの混合溶液のpHは12.4であった。
反応後のバイオマス由来の原料の乾燥重量に対する仕込みのバイオマス由来の原料の乾燥重量の減少率は40%であった。その後、遠心分離後の残渣にジエチルエーテルを添加し、当該ジエチルエーテルで抽出した抽出液をカラム(Rtx(登録商標)−5MS 0.25mm ID X 30m 100℃−5min 10℃/min 250℃−15min)を備えたガスクロマトグラフを直結した質量分析計(島津製作所社製 商品名QP−2010)により当該抽出液中の成分を分析した。その結果を図5に示す。
当該図5から、2−メトキシフェノール(グアイアコール)のピークが強くできていることが確認される。
<実施例5>
反応管に、粉砕したネピアグラス0.5gと、0.5wt%水酸化ナトリウム水溶液10mLと;5wt%Pd/C 0.5gあるいは 5wt%Pd/C 0.5gおよびゼオライト1gと;を充填し(この際、pHは、それぞれ、12.4、である)、反応温度350℃、反応時間120分、水素圧0.5MPaで反応させた(工程(2))。また、触媒を添加しないものも準備した。
この反応により生成した生成物を固液分離した(触媒と溶液の分離)。具体的には、この処理生成物を25℃で遠心分離しグアイアコールを回収した(工程(3))結果を図6に示す。なお、図6の凡例には、上から、2,6−ジメトキシフェノール、4−エチルフェノール、フェノール、グアイアコールとあり、図中の棒グラフもその順番で対応しているが、「2,6−ジメトキシフェノール」についてはいずれも殆んど見られず、ゼオライトを使用しない「5wt%Pd/C」のみ使用した形態で、「4−エチルフェノール」が若干見られるものの、いずれも、「フェノール」と、「グアイアコール」とで殆んど占められていることが分かる。

Claims (5)

  1. バイオマスを粉砕してバイオマス由来原料を製造する工程(1)と、
    前記バイオマス由来原料と、触媒成分と、pH調整成分と、を混合して水素圧0.1〜10MPa、373〜673K、pH7〜14の条件下で0.1〜10時間反応する工程(2)と、
    前記工程(2)により得られた反応液からバイオマス由来の有機化合物を回収する工程(3)と、
    を有するバイオマス由来の有機化合物の製造方法。
  2. 前記工程(2)において、前記触媒成分は、触媒金属成分を含む、請求項1に記載のバイオマス由来の有機化合物の製造方法。
  3. 前記pH調整成分は、アルカリ成分である、請求項1または2に記載のバイオマス由来の有機化合物の製造方法。
  4. 前記触媒金属成分は、触媒金属粒子を担持した担体である、請求項2または3に記載のバイオマス由来の有機化合物の製造方法。
  5. 前記工程(2)において、前記バイオマス由来原料と、触媒成分と、pH調整成分と、無機多孔質体と、を混合して、水素圧0.1〜10MPa、373〜673K、pH7〜14の条件下で0.1〜10時間反応する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイオマス由来の有機化合物の製造方法。
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