以下に添付図面を参照して、この発明に係る有価媒体処理装置の好適な実施形態を詳細に説明する。有価媒体処理装置は、未使用状態の紙幣である新券、市場流通可能な紙幣等の他に、市場流通に適さない損券、破れや汚れにより通常の紙幣処理装置では処理できないような損傷券、小切手や手形等の有価証券を処理することができる。
まず、本実施形態に係る有価媒体の処理方法概要について説明する。図1は、有価媒体処理装置1を利用して行われる有価媒体の処理方法概要を説明する模式図である。有価媒体処理装置1は、有価媒体の投入及び投出を行うための入出金口6と、有価媒体を一時保留するための一時保留部2と、有価媒体を収納する有価媒体収納部5、7と、有価媒体の識別、枚数計数及び画像取得を行うための識別部3と、各部の間で有価媒体を搬送する搬送部4とを有している。図1では、有価媒体を積み重ねるように収納する集積方式の有価媒体収納部5と、2枚のテープの間に有価媒体を挟んでドラムに巻き取って収納するテープ式の有価媒体収納部7との2つの収納部を示しているが、有価媒体処理装置1では、収納する有価媒体の種類に応じて複数の収納部が利用される。また、図1には図示していないが、有価媒体処理装置1は、識別部3で取得された有価媒体の画像や識別結果を確認したり装置外へ投出する有価媒体を選択したりするための操作表示部9と、入金データを管理するための制御部11とを有している(図3参照)。以下では、有価媒体として小切手を入金する場合を例に説明を続ける。
図1(a)に示すように、有価媒体処理装置1を操作する操作員が、入金処理対象となる一取引分の小切手100aを入出金口6に投入する(A−1)。入出金口6に投入された複数の小切手100aは、搬送部4によって1枚ずつ搬送されて識別部3によって画像が取得される(A−2)。画像が取得された小切手100aは、一時保留部2に搬送されて一時保留される(A−3)。
小切手100aの画像は、操作員によって、入金内容を確認するために利用される。具体的には、各小切手100aの画像や該画像から取得された小切手金額等のデータが操作表示部9に表示されるので、操作員は、表示された画像やデータに問題がないことを確認する。このとき、例えば、小切手画像が鮮明でないとか、大きく傾いているとか、画像品質に問題がある場合には、操作員はこの小切手を装置外への投出対象として指定する返却指定操作を行う。また、小切手金額等のデータに問題があれば操作表示部上で修正するが、操作員が、小切手を一旦装置外へ投出させて現物を目視確認すると判断した場合には、この小切手を返却対象として指定する。
操作員が、一時保留部2に収納されている全ての小切手100aについて、画像及びデータの確認を終えて入金処理を確定する操作を行うと、図1(b)に示すように、一時保留部2内の小切手100aが繰り出される(B−1)。そして、操作員が画像やデータに問題がないと判断して返却指定されなかった小切手100aは、対応する有価媒体収納部5に搬送されて収納される(B−2)。有価媒体収納部5では、既に収納されていた小切手110の上に新たに入金された小切手100aが収納される。一方、操作員によって返却指定された小切手100bは、再処理分の小切手100bとして、入出金口6へ投出される(B−3)。装置内では、制御部が、再処理分として投出された小切手100bのデータのみを消去して、有価媒体収納部5へ収納した小切手100aに係るデータを確定済入金データとして管理する。確定済み入金データには、例えば、小切手画像、小切手金額、口座番号等が含まれる。
再処理分の小切手100bが投出されると、操作員は、小切手100b現物を確認した後、この小切手100bを装置へ再投入する。このとき、操作員は、再投入した小切手100bが、有価媒体収納部5に収納済みの小切手100aと一取引分として処理されるべき小切手100bであることを示す情報を操作表示部9に入力する。これを受けた制御部11は、再投入された小切手100bのデータが、先に登録された確定済入金データに関連するデータであることを認識する。
小切手100bが入出金口6へ再投入されると、図1(a)に示したように、再び、識別部3によって画像が取得されて一時保留部2へ収納された状態で、操作員により、画像やデータに問題がないことが確認される。画像及びデータに問題がないことが確認されると、図1(c)に示すように、一時保留部2に一時保留されていた再処理分の小切手100bが繰り出される(C−1)。そして、対応する有価媒体収納部5へ収納されて、先に収納された小切手100aの上に収納される(C−2)。装置内では、制御部11が、再処理分として再投入された小切手100bのデータを、先に収納された小切手100aのデータと関連付けて一取引分のデータとして登録する。こうして、最初に入出金口6へ投入された一取引分全ての小切手100aを収納して入金処理を完了する。
図1(b)では、入金処理を確定してから、再処理が不要な小切手100aを先に有価媒体収納部5へ収納して、再処理が必要な小切手100bだけを装置外へ投出する態様を示したが、有価媒体処理装置1では、設定によって、入金処理を確定することなく同様の処理を行えるようになっている。
一取引分として扱われるべき小切手100aのうち一部の小切手100bのみが装置外へ投出された状態で装置の障害等の問題が発生すると、処理が混乱する可能性がある。このため、全ての小切手100aを、対応する有価媒体収納部5に収納可能な状態としてから入金確定することが望ましいとの考え方がある。これに対応するため、有価媒体処理装置1は、利用者の運用に応じて、入金処理を確定せずに一部の小切手を装置外へ投出できるようになっている。
具体的には、図1(a)に示すように、全ての小切手100aを一時保留部2に一時保留した状態で、一部の小切手が返却対象として指定されると、図1(d)に示すように、一時保留部2に一時保留されていた小切手100aが繰り出される(D−1)。そして、操作員が画像やデータに問題がないと判断して返却指定されなかった小切手100aは、有価媒体収納部7に退避収納される(D−2)。有価媒体収納部7では、既に収納されている小切手111の後に新たに入金された小切手100aが巻き取られて収納される。このとき、テープ式の有価媒体収納部7では、既に収納されている小切手111の巻取時の間隔よりも、広い間隔をあけてから、退避する小切手111の巻き取りを開始する。
一方、返却指定された小切手100bは、再処理分として入出金口6へ投出される(D−3)。こうして、再処理分の小切手100bが全て投出されると、装置内では、制御部11が、再処理分として投出された小切手100bのデータのみを消去して、有価媒体収納部7に退避収納した小切手100aに関するデータを未確定入金データとして管理する。未確定入金データには、小切手画像、小切手金額、口座番号等が含まれる。
テープ式の収納部は、形状や状態によらず有価媒体を確実に収納、繰り出しできるという利点を有している。また、巻き取る際に収納済の小切手111と大きく間隔をあけてから入金未確定状態にある小切手100aを収納することで、装置に障害が発生した場合でも、繰り出される際の間隔から、収納済の小切手111と、退避収納された小切手100aとを容易に区別することができる。このため、有価媒体処理装置1では、入金処理が未確定の状態にある小切手100aはテープ式の有価媒体収納部7へ収納する。
再処理分の小切手100bの投出を完了すると、図1(e)に示すように、有価媒体収納部7へ退避収納した小切手100aを一時保留部2へ戻し入れる処理が開始される。具体的には、有価媒体収納部7へ収納された小切手100aが順次繰り出されて(E−1)、一時保留部2へ収納される(E−2)。こうして、入金処理が未確定状態にある小切手100aが一時保留部2へ収納された状態で、再処理分の小切手100bの処理が開始される。
そして、再処理分の小切手100bが問題なく処理されて、一取引分の全ての小切手100a、100bが一時保留部2へ収納された状態で、操作員が入金処理を確定すると、図1(c)に示すように、全ての小切手100a、100bが一時保留部2から繰り出されて(C−1)、対応する有価媒体収納部5へ収納される(C−2)。
入金処理が確定すると、制御部11は、装置内に維持されていた小切手100aのデータと再処理分の小切手100bのデータとを合わせた一取引分の入金データを、確定済入金データとして登録する。こうして、最初に入出金口6へ投入された一取引分全ての小切手100aを収納して入金処理を完了する。
図1(e)では、有価媒体収納部7へ退避収納した小切手100aを一時保留部2へ戻し入れる態様を示したが、有価媒体処理装置1では、退避収納した小切手100aを有価媒体収納部7内に収納したまま、装置外へ投出した小切手100bの再処理を行うこともできる。具体的には、有価媒体処理装置1では、入金未確定のまま装置内に維持される小切手100aを一時保留する第2の一時保留部を選択設定できるようになっている。有価媒体収納部7を第2の一時保留部として利用する設定を行うと、有価媒体収納部7に退避収納された未確定分の小切手100aは一時保留されたとみなされる。このため、図1(e)のように一時保留部2への戻し入れは行われず、入金が確定するまで、有価媒体収納部7内に維持される。この場合は、再処理分の小切手100bの処理を終えて入金が確定すると、有価媒体収納部7に収納された小切手100aと一時保留部2に収納された小切手100bとが、対応する有価媒体収納部5へ収納されることになる。
このように、有価媒体処理装置1では、入金処理中に、取得した有価媒体の画像の品質に問題がある場合や誤って入金対象外の有価媒体が混入した場合等、一部の有価媒体のみを装置外へ投出させたい場合に、これらの有価媒体をのみを装置外へ投出させて、他の有価媒体を装置内に維持した状態とすることができる。装置内では、装置外へ投出して再処理される有価媒体のデータのみが削除されて他のデータは維持されるので、再処理分の有価媒体のみを再投入してデータ取得やデータ確認等の処理を行って、入金処理を完了することができる。
また、有価媒体処理装置1では、入金される有価媒体のうち一部の有価媒体のみを返却する処理を、入金処理を確定してから行うこともできるし、入金処理を未確定の状態で行うこともできるので、処理内容、処理対象とする有価媒体の種類、有価媒体処理装置1が設置された金融機関の運用等に応じた設定で利用することができる。
なお、有価媒体の返却前に入金処理を確定するか否かについては、常に入金確定する又は常に入金確定しない設定で利用する態様の他、処理時に手動で選択するよう設定することもできる。また、処理や有価媒体の種類等に応じて、入金確定の可否が自動選択されるよう設定することもできる。自動選択とは、例えば、小切手入金であるか紙幣入金であるかによって又は投入された有価媒体の枚数や入金金額が所定値を越えるか否かによって、入金確定するか否かを自動的に選択させるものである。
次に、図1に示す有価媒体処理を実現する有価媒体処理装置1の詳細について説明する。図2は、本実施形態に係る有価媒体処理装置1の構成を説明するための断面模式図である。なお、図2では、図面左側の側面が有価媒体処理装置1の前面となっており、図面右側の側面が有価媒体処理装置1の背面となっている。
図2に示すように、有価媒体処理装置1には、有価媒体を機体内に投入するための投入部10、及び機体内に収納された新券等を機体外に投出するための投出部60が設けられている。処理対象とする有価媒体には、損券、旧券、損傷券等を含む紙幣と、紙幣以外の特定の有価証券とが含まれる。特定の有価証券とは、小切手や手形等、予め設定された種類の有価証券のことをいう。投入部10や投出部60は、有価媒体処理装置1の機体前面(図2における左側の側面)に設けられている。投入部10には繰出機構12が設けられており、操作員によって投入部10に束状態で投入された有価媒体は、繰出機構12により1枚ずつ機体内に繰り出されるようになっている。また、図2に示すように、有価媒体処理装置1の機体内には有価媒体搬送部14が設けられており、投入部10から繰出機構12により1枚ずつ繰り出された有価媒体は、有価媒体搬送部14により1枚ずつ搬送されるようになっている。
また、繰出機構12下流の有価媒体搬送部14には有価媒体識別部16が設けられている。有価媒体識別部16は、有価媒体処理装置1の機体内で有価媒体を撮像して画像を取得する画像取得部としての機能を有している。また、有価媒体識別部16は、取得した画像に基づいて、紙幣の金種、真偽及び正損の識別、紙幣記番号の文字認識、小切手の種類の識別、小切手番号及び小切手金額の文字認識等を行う機能も有している。
有価媒体処理装置1内には一時保留部20が設けられており、入金処理時には、有価媒体処理装置1の機体内に投入された有価媒体が一時保留部20に一時的に保留されるようになっている。一時保留部20は、有価媒体をテープに挟んで巻き取るテープ巻取方式のものである。より具体的には、一時保留部20は、正逆両方向に回転可能なドラム20aを有しており、このドラム20aによって一対のテープを巻き取ったり送り出したりすることができる。有価媒体搬送部14から一時保留部20に送られた有価媒体は、一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつ順次ドラム20aに巻き取られて収納される。また、ドラム20aを逆転させると、巻き取られた有価媒体が1枚ずつ繰り出されて、有価媒体搬送部14に送り出される。
有価媒体処理装置1の機体内には、小切手や手形等の特定の有価証券を収納する特定有価証券収納部30と、損券や旧券等の収納する損券収納部40、42とがそれぞれ設けられている。より具体的には、特定有価証券収納部30は、第1の収納部30a、第2の収納部30b及び第3の収納部30cの3つの収納部から構成されており、有価証券の種類に応じて分類収納できるようになっている。特定有価証券収納部30の各収納部30a、30b及び30cは集積方式の収納部であり、有価媒体搬送部14からこれらの収納部30a、30b及び30cに送られた小切手等は、既に収納部30a、30b、30cに収納されている小切手等の上に積み重ねられるようにして収納される。
損券収納部40、42には、損券、旧券及び損傷券が収納される。損券収納部40は集積方式の収納部であり、有価媒体搬送部14から損券収納部40に送られた損券等は、既に損券収納部40に収納されている損券等の上に積み重ねられるようにして収納される。一方、損券収納部42はテープ巻取方式の収納部である。損券収納部42は、一時保留部20と同様に、正逆両方向に回転可能なドラム42aを有している。そして、有価媒体搬送部14から損券収納部42に送られた損券等は、この一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつ順次ドラム42aに巻き取られて収納される。また、ドラム42aを逆転させると、巻き取られた損券等が1枚ずつ繰り出されて、有価媒体搬送部14に送出される。
また、有価媒体処理装置1の機体内には、新券100を収納する新券収納部50が設けられている。より具体的には、新券収納部50は、第1の収納部50a、第2の収納部50b、第3の収納部50c及び第4の収納部50dからなる4つの収納部から構成されている。例えば、第1の収納部50aには1万円札の新券100が、第2の収納部50bには千円札の新券100が、第3の収納部50cには五千円札の新券100がそれぞれ収納される。また、第4の収納部50dに収納される新券100の金種については操作員が選択できるようになっている。これらの各収納部50a、50b、50c、50dにはそれぞれ収納繰出機構52a、52b、52c、52dが設けられており、収納部50a、50b、50c、50dに収納されている新券100を有価媒体搬送部14に1枚ずつ繰り出したり、有価媒体搬送部14によって搬送された新券100を内部に収納したりすることができる。
投出部60は有価媒体搬送部14に接続されており、有価媒体搬送部14によって搬送された新券等の有価媒体は、搬送路14cから、当該投出部60に積み重ねるようにして投出される。具体的には、投出部60には羽根車62が設けられており、搬送路14cから羽根車62に送られた新券等の有価媒体は、羽根車62を形成する一対の羽根の間に挟まれた状態で当該羽根車62が図2で反時計回りの方向に回転することにより、投出部60に送られる。羽根車62が設けられていることにより、投出部60に集積される新券等の有価媒体を整列させることができる。一方、搬送方向に長い小切手等の有価媒体は、羽根車62へと向かう搬送路14cの上側に設けられた別の搬送路14dから投出部60へ投出される。搬送方向のサイズが大きいために、有価媒体の後端が搬送路14cのローラの間に挟まれた状態で、先端が羽根車62に挟まれて回転すると、有価媒体が破れてしまう。このため、搬送方向に長い有価媒体は、羽根車62からの距離が離れた搬送路14dを経て投出部60に投出される。なお、投入部10に投入された媒体が小切手等の所定以上の長さを有する有価媒体であり、これらの有価媒体が有価媒体識別部16にてリジェクト判定された場合も、同様に搬送路14dから投出部60へリジェクトされる。また、投出部60にはシャッタ61aが設けられており、操作員は、このシャッタ61aが開放状態となったときに、投出部60に集積された新券等の有価媒体を取り出すことができる。また、投出部60には抜き取り検知部61bが設けられており、投出部60に集積された新券等の有価媒体が当該投出部60から抜き取られたことを検知できるようになっている。
図2に示すように、有価媒体処理装置1の機体内で新券等を搬送する有価媒体搬送部14は、接続箇所14pで接続された第1の搬送路14a及び第2の搬送路14bを含む構成となっている。第1の搬送路14aは、投入部10から機体内に投入された有価媒体を、一時保留部20、特定有価証券収納部30、損券収納部40に向けて搬送するものである。一方、第2の搬送路14bは、新券収納部50に収納された新券100を投出部60に向けて搬送するものである。第1の搬送路14aと第2の搬送路14bとは互いに独立して設けられている。すなわち、第1の搬送路14aは図2に示す仮想線Lの右側に設けられており、第2の搬送路14bは仮想線Lの左側に設けられている。
第2の搬送路14bには簡易識別部64が設けられている。簡易識別部64は、新券収納部50から第2の搬送路14bに繰り出された新券100を計数すると共に搬送エラーの発生を検出する機能を有している。
図3は、有価媒体処理装置1の機能を説明するためのブロック図である。有価媒体処理装置1は、図2で説明した以外に、制御部11と、入金処理に関する各種データを含む媒体管理データ8aが保存された記憶部8と、制御部11への指示操作を行う操作部としての機能及び制御部11による各種情報を表示する表示部としての機能を有する操作表示部9とを有している。
有価媒体処理装置1が有する複数の収納部は、図3に示すように、有価媒体を一時保留するためのテープ式の一時保留部20と、図1のテープ式の有価媒体収納部7に相当する損傷券収納部42と、図1の集積式の有価媒体収納部5に相当する特定有価証券収納部30、損券収納部40及び新券収納部50とに分類される。また、図3に示す有価媒体識別部16及び一時保留部20が、それぞれ図1の識別部3及び一時保留部2に相当する。また、図2に示す投入部10及び投出部60が、図1に示す入出金口6に相当する。
図2及び図3に示す有価媒体処理装置1で、制御部11が、有価媒体搬送部14、有価媒体識別部16、一時保留部20、テープ式有価媒体収納部42、集積式有価媒体収納部30、40、50の各部の機能及び動作を制御することによって、図1に示した有価媒体処理を実現することができる。
なお、有価媒体処理装置1に、損傷券等、損傷した有価媒体100を投入する際には、損傷度合いによって、専用のキャリアシートが利用される。図4は、キャリアシート900の構成を説明する図である。図4では、キャリアシート900を投入部10に載置した状態で上方から見た図を上側に示し側方から見た図を下側に示している。図4の矢印200は、キャリアシート900が投入部10から繰り出されて装置内に取り込まれる搬送方向を示している。
キャリアシート900は、短辺側の接合部906で接合された一対の透明なシート902、904から構成されている。図4上図に破線で示したように、有価媒体100を、一対のシート902、904の間に挟んだ状態で、このキャリアシート900を装置に投入することにより、そのままでは正常に搬送できないほど損傷した有価媒体100であっても、装置内を搬送して画像を取得したり、収納したりすることが可能となる。
キャリアシート900が、逆向き(図4矢印200と反対向き)に搬送されてテープ式の一時保留部20に巻き取られると、2枚のシート902、904がずれた状態で巻き取られるために一方のシート902又は904が接合部906側で膨らんだ状態となってドラム20aの外周に沿った形で正常に巻き取ることができなくなる。
このため、キャリアシート900が逆向きに搬送されて一時保留部20に巻き取られることがないように、接合部分906、すなわち投入部10に正しく載置された際に最初に装置内に取り込まれる側の両端2箇所に、光を透過しないマーク908a、908bが設けられている。操作員が、このマーク908a、908bを目印としてキャリアシート900を投入部10へ載置することで、キャリアシート900が逆向きに搬送されないようになっている。
投入部10には、キャリアシート900の向きを監視するため、キャリアシート900が正しく載置された際にマーク908a、908bを検出するように2つの透過型センサが設けられている。具体的には、キャリアシート900を正しく載置した際に、各透過型センサの投光部と受光部との間にマーク908a、908bが挿入された状態となり、2つの透過型センサが遮光された状態となる。一方、キャリアシート900が逆向きに載置された場合には、透過型センサの投光部と受光部との間に透明なシート902、904が挿入された状態となるため透過型センサは遮光されない。有価媒体処理装置1は、透過型センサの遮光状態からキャリアシート900が誤って逆向きに載置されたことを認識すると、音、光、情報表示等によって逆向きであることを利用者に報知するようになっている。
図5(a)に示すように、2つのマーク908a、908bの両端部に達する大きさの有価媒体100がその短辺を接合部分906と逆側のシート902、904端面と一致するような形でキャリアシート900にセットされると、投入部10でキャリアシート900の向きを監視する透過型センサが、有価媒体100をマーク908a、908bと誤検知する可能性がある。有価媒体処理装置1では、このような場合でも、キャリアシート900が逆向きに搬送されていることを検知するために、搬送路14a上に、反射型センサ301と、2つの透過型センサ302a、302bとが設けられている。これらのセンサ301、302a、302bは、搬送方向200と垂直な方向に配設されている。
搬送路14aに何も存在しない状態では、透過型センサ302a、302bは透光状態となり反射型センサは反射光を検出しない状態となる。これに対して、透明なキャリアシート900が存在する場合には、透過型センサ302a、302bは透光状態となり反射型センサ301は反射光を検出する状態となる。また、有価媒体100が存在する場合には、透過型センサ302a、302bは遮光状態となり反射型センサ301は反射光を検出する状態となる。このように、何も存在しない場合、キャリアシート900が存在する場合、有価媒体100が存在する場合のそれぞれで異なる信号が出力されるため、有価媒体処理装置1では、図5(a)に示すようにキャリアシート900が逆向きに搬送されていることを認識することができる。有価媒体処理装置1は、キャリアシート900が逆向きに搬送されていることを認識すると、これを一時保留部20に収納することなく投出部60へリジェクトする。
また、図5(b)に示すように、キャリアシート900から有価媒体100がはみ出した状態で搬送されているような場合も、有価媒体処理装置1は、検知した媒体の長さから異常な状態にあることを認識して、キャリアシート900を投出部60へリジェクトする。
有価媒体処理装置1では、各収納部30、40、42(以下単に「収納部」と記載する)に収納された各有価媒体100が管理されている。具体的には、制御部11が、各収納部に収納された有価媒体100の順序に基づいて管理番号を付して、有価媒体100を撮像した画像、有価媒体100の種類、処理日等の各種データを管理番号と関連付けて管理している。これらのデータは、記憶部8で、媒体管理データ8aとして管理される。媒体管理データ8aには、有価媒体識別部16によって取得された画像とデータが含まれる。
例えば、ジャム等の障害が発生して、これを解除した際に、収納部に実際に収納されている有価媒体100の順序と、記憶部8で媒体管理データ8aとして管理されているデータとの間に不整合が生じる場合がある。有価媒体処理装置1では、このような場合に、有価媒体100の現物とデータとの整合をとる処理を行うことができる。
図6〜図9は、各収納部に収納されている有価媒体100と媒体管理データ8aとの間に不整合が生じた際に、これを解消するために行われる処理を説明するための図である。図6〜図8では、左側に収納部に実際に収納されている有価媒体100の順序を示し、右側に媒体管理データ8aで管理されているデータを示している。図中の各番号が、有価媒体100の管理番号を示しており、一番上の管理番号が、収納部から最初に繰り出される有価媒体100を示している。例えば、図6(a)のデータは、収納部から最初に繰り出される有価媒体100から順に「0003」、「0004」、「0005」…の順で管理番号が付されており、媒体管理データ8aでもこれと一致する形でデータが管理されている状態を示している。
ジャム解除等を行った後、収納部に実際に収納されている有価媒体100と媒体管理データ8aで管理されているデータとの整合を確認する際には、収納部から少なくとも1枚の有価媒体100を投出部60へ投出させる。例えば、図6(a)に示す状態から有価媒体100を1枚投出させると、管理番号0003の有価媒体100が収納部から投出部60に投出されて、収納部には同図(b)左図に示すように、管理番号0004以降の有価媒体100が収納された状態となる。
整合確認の処理が開始されると、操作表示部9には、媒体管理データ8aとして管理されているデータが表示される。図9は、整合確認処理時に操作表示部9に表示される画面の例を示す図である。このように、画面上には、複数の有価媒体100の画像120と管理番号401とが表示される。また、関連する情報402として、有価媒体100が紙幣である場合には記番号が表示され、有価媒体100が小切手である場合には小切手番号が表示される。なお、図9では図示を省略しているが、実際の画面上では、媒体管理データ8aとして管理されている管理番号0003〜0007の各媒体の画像120が表示される。
操作員は、投出部60に投出された有価媒体100の現物を目視確認しながら、画面上の画像120及び情報402に基づいて、投出された有価媒体100に対応する管理番号を特定して選択する。図6(b)の例では、管理番号0003の有価媒体100が投出されているので、操作員は、画面上で管理番号0003の有価媒体100を選択する。
有価媒体処理装置1では、管理番号0003の有価媒体100が選択されると、制御部11が、実際に収納部に収納されているのは、投出された管理番号0003の有価媒体100の後に続く管理番号0004以降の有価媒体100であることを認識する。そして、媒体管理データ8aから、投出された管理番号0003のデータを消去して、図6(c)に示すように、収納部に収納されている実際の有価媒体100と媒体管理データ8aで管理されているデータとの整合をとる。こうして、有価媒体100の現物とデータとの整合がとれると、整合確認処理を完了する。
なお、現物とデータとの整合をとる処理は、収納部毎に行われる。このとき、装置外へ投出された有価媒体100は装置へ再入金して、対応する収納部へ収納する。また、図6では、1枚の有価媒体100のみを投出させる例を示したが、有価媒体100を投出する枚数はジャム発生時の状況に応じて設定されている。具体的には、ジャム発生時には、その前後に行われた処理内容から収納部に収納されている有価媒体100とデータとの不整合が疑われる管理番号を予測することができる。収納部に収納されている1枚目の有価媒体100を確認すれば、その後に収納されている有価媒体100の現物とデータの整合をとることができる場合には、図6に示すように、有価媒体100が1枚だけ投出される。これに対して、複数枚の有価媒体100を確認する必要がある場合には、必要な枚数の有価媒体100が1枚ずつ自動的に投出される。この場合には、図9の画面上部に表示される枚数表示が投出枚数に合わせて変更され、必要な枚数分の確認を終えたところで整合確認処理を完了するようになっている。
図6の例は、整合確認処理を行う前から整合性に問題がなかった状態の例であるが、実際に現物とデータに不整合があった場合には、図7及び図8に示すように整合確認処理が進められる。
図7(a)に示すように、収納部には管理番号0004以降の有価媒体100が収納されているにも拘わらず媒体管理データ8aには管理番号0003以降のデータが登録されている場合に整合確認処理を開始すると、収納部から管理番号0004の有価媒体100が投出される。この結果、図7(b)に示すように、収納部には管理番号0005以降の有価媒体100が収納された状態となる。
操作員が、投出された有価媒体100を確認して、画面上で管理番号0004の有価媒体100を選択すると、制御部11が、収納部には管理番号0005以降の有価媒体100が収納されていることを認識して、図7(c)に示すように、媒体管理データ8aを管理番号0005以降のデータとして整合確認処理を完了する。
また、図8(a)に示すように、収納部には管理番号0002以降の有価媒体100が収納されているにも拘わらず、媒体管理データ8aには0003以降のデータが登録されている場合に整合確認処理を開始すると、収納部から管理番号0002の有価媒体100が投出される。この結果、図8(b)に示すように、収納部には管理番号0003以降の有価媒体100が収納された状態となる。
操作表示部9には媒体管理データ8aとして管理されているデータが表示されるので、画面上には、管理番号0002のデータは表示されない。操作員が、投出された有価媒体100に関するデータが表示されていないことを確認して、図9に示す画面上で該当媒体無しのボタンを選択すると、収納部から次の有価媒体100、すなわち管理番号0003の有価媒体100が投出される。この結果、図8(c)に示すように、収納部には管理番号0004以降の有価媒体100が収納された状態となる。
操作員が、投出された有価媒体100を確認して、画面上で管理番号0003の有価媒体100を選択すると、制御部11が、収納部には管理番号0004以降の有価媒体100が収納されていることを認識して、図8(d)に示すように、媒体管理データ8aを管理番号0004以降のデータとして整合確認処理を完了する。
このように、有価媒体処理装置1では、整合確認処理によって、収納部に実際に収納されている有価媒体100と、記憶部8の媒体管理データ8aに登録されている有価媒体100のデータとの整合をとることができる。
次に、有価媒体処理装置1によって図1に示す有価媒体100の処理を行う際の処理の流れについて説明する。図10は、有価媒体処理の流れを示すフローチャートである。なお、以下では、入金対象とする有価媒体100は、損券収納部40(以下単に「収納部40」と記載する)に収納される紙幣であるものとして説明する。
操作員が、操作表示部9を操作して、それぞれの入金処理に割り当てられる入金番号に基づいて、処理を開始する有価媒体100に対応する入金番号を入力した後、有価媒体処理装置1の投入部10に有価媒体100を投入すると(ステップS11)、投入部10から1枚ずつ装置内に繰り出された有価媒体100が有価媒体搬送部14によって搬送される。そして、有価媒体識別部16によって、有価媒体100の画像が取得される(ステップS12)。画像が取得された後、有価媒体100はさらに搬送されて、一時保留部20へ収納される(ステップS13)。有価媒体識別部16によって取得された画像や有価媒体100の種類等のデータは、記憶部8の媒体管理データ8aに保存される。
有価媒体100が紙幣である場合には、媒体管理データ8aに金種や正損等の識別結果が含まれることになる。また、有価媒体100が、一部が欠損した損傷券である場合には、券種情報、修復の必要性を示す情報、日本銀行による鑑定の必要性を示す情報等が媒体管理データ8aに登録される。
なお、券種情報とは紙幣の金種及び新旧に関する種類のことをいい、具体的には、例えば日本の紙幣では、紙幣の発行時期(A券〜E券)及び金種を組み合わせて「E一万円券」のように券種情報が登録される。また、価値とは、紙幣の残存面積に応じて変動する紙幣の価値である。また、紙幣の価値を決めるために日本銀行による鑑定が必要である場合にはこれを示す情報が登録され、日本銀行へ鑑定依頼するために紙幣の欠損部の修復が必要である場合にもこれを示す情報が登録される。これら、券種情報、価値、修復要否、鑑定要否に関する情報は、例えば、操作表示部9上で、操作員によって入力される。
図13は、損傷券に関する情報入力を行う際に操作表示部9に表示される画面の例を示している。このように、画面下側に、有価媒体識別部16によって取得された損傷券の表面及び裏面の画像が表示される。また、損傷券画像の上側には価値を判断するための補助情報が表示され、画面右側には券種等を判断するための補助情報としてサンプル画像が表示される。サンプル画像では、特徴部分が二重丸等で囲んで表示されるので、操作員は、これらの情報を確認しながら画面に表示された券種ボタンや価値ボタン等を選択して損傷券に関する情報入力を行うことができる。
投入部10に投入された全ての有価媒体100が一時保留部20へ収納されると、操作表示部9に、一時保留部20に収納された有価媒体100の画像及び情報が表示される。操作員は、操作表示部9の表示を確認して、一旦装置外へ投出させたい有価媒体100がある場合には、画面上で有価媒体100を選択する返却指定操作を行う(ステップS14)。なお、有価媒体100が損傷券である場合には、各損傷券で、上述したように情報入力を行った後に、引き続き返却指定操作が行われることになる。
図12は、返却指定操作を行う際に操作表示部9に表示される画面の例を示している。例えば、有価媒体100が損傷券であった場合には、図12に示すように、左側に表面及び裏面の画像が表示され、右側に関連する情報が表示される。図12の例は、右上の表示にあるように、一時保留部20に18枚の有価媒体100が収納された状態にあり、このうち2枚目の有価媒体100の画像及び情報が表示されていることを示している。このように、画面上には、取引番号、取引日、有価媒体100の種類や価値に関する情報が表示され、画面上の矢印のボタンを押すことにより、表示する有価媒体100を手動切り換えできるようになっている。
操作員は、画面上で、有価媒体100の画像にノイズ、歪、傾き等がないことを確認する。ここで、画像品質に問題がある場合には、画面上で、返却指定ボタンを押して返却指定する。
また、操作員は、画面上で、有価媒体100に関する情報に誤りがないことを確認する。そして、画面上で修正可能な情報は画面上で修正する。例えば、画面上で、下線が付されている券種、価値、修復作業の要否、鑑定の要否を選択すると、損傷券に関する情報入力を行った図13に示す画面に戻って、画面上で各情報を修正することができる。なお、操作員が、有価媒体100の現物を確認してから情報修正を行うべきであると判断した場合には、返却指定ボタンを押して返却指定する。
画面上で、画像や情報に問題があるために有価媒体100を一旦装置外へ投出させたい場合には返却指定ボタンを押して、画像及び情報に問題がない場合には完了ボタンを押す。返却指定ボタン又は完了ボタンが押されると、次に確認すべき有価媒体100の確認画面に自動的に切り替わるので、操作員は、順次表示される画面上で各有価媒体100の画像及び情報を確認する。
こうして、一時保留部20に収納された全ての有価媒体100について、画像及び情報の確認を終えると、返却指定された有価媒体100、すなわち再処理を必要とする有価媒体100があるか否かの判定が行われる(ステップS15)。返却指定された有価媒体100が存在しない場合には(ステップS15;No)、これを示す情報と共に入金処理の確定を促す情報が操作表示部9に表示される。操作員が入金処理を確定する操作を行うと(ステップS16)、入金処理が完了する。
一方、返却指定された有価媒体100が存在する場合には(ステップS15;Yes)、入金処理が確定されたか否かが判定される(ステップS17)。なお、入金処理の確定処理は、設定に応じて手動又は自動で行われる。
入金確定を手動で行う設定となっている場合には、操作員が返却指定操作を終えた後、操作表示部9に、返却指定された有価媒体100の枚数等の情報と共に入金確定するか否かを尋ねる情報が表示される。操作員は、処理内容や運用に応じて、この段階で入金を確定するか否かを選択する。
また、入金確定を自動で行う設定となっている場合には、有価媒体100の種類や処理内容に応じて、入金確定するか否かが自動的に選択される。例えば、小切手入金であるか紙幣入金であるかによって、又は投入された有価媒体の枚数や入金金額が所定値を越えるか否かによって、入金確定するか否かが自動的に選択される。
入金処理が確定された場合には(ステップS17;Yes)、一時保留部20に収納された有価媒体100の繰り出しを開始して(ステップS20)、返却指定されなかった有価媒体100を対応する収納部40へ収納しながら、返却指定された有価媒体100のみが投出部60へ投出される(ステップS21)。この段階で、制御部11は、収納部40へ収納した有価媒体100に関するデータを入金確定分として、入金番号と関連付けて記憶部8に登録する。
操作員は、投出部60へ投出された有価媒体100を取り出して、操作表示部9で、この有価媒体100に対応する入金番号を入力する。制御部11は、この入金番号に関するデータが記憶部8に登録済みであることから、再処理であることを認識する。
操作員が、再処理分の有価媒体100を投入部10へ再投入すると(ステップS22)、有価媒体100の画像や情報取得が行われた後、再び一時保留部20へ収納される(ステップS23)。そして、再処理に問題がないか、すなわち画像やデータに問題がないことの確認が行われる(ステップS24)。画像やデータに問題があった場合には、再び投出部60へ繰り出されて、問題がないことが確認されるまでステップS20〜S24の処理が繰り返される。
操作員が、再投入した有価媒体100について行われた再処理に問題がないことを確認すると(ステップS24;Yes)、この有価媒体100の入金を確定する操作を行う。この結果、一時保留部20に収納された再処理分の有価媒体100が繰り出されて対応する収納部40に収納される(ステップS25)。そして、再処理分の有価媒体100に関するデータが、先に記憶部8に保存されていた確定済分の有価媒体100のデータと統合されて一取引分の入金データとして登録された後、入金処理が完了する。
一方、入金処理が未確定の場合には(ステップS17;No)、入金確定時と同様に、一時保留部20の有価媒体100が繰り出される(ステップS30)。繰り出された有価媒体100のうち、返却指定されなかった有価媒体100をテープ式の損券収納部42(以下単に「収納部42」と記載する)に退避しながら、返却指定された有価媒体100のみが投出部60へ投出される(ステップS31)。この段階で、制御部11は、収納部42へ収納した有価媒体100に関するデータを入金未確定分として、入金番号と関連付けて記憶部8に保存する。
収納部42では、既に収納部42に収納されている有価媒体100と区別できるように再処理分の有価媒体100が収納される。図11は、既に収納部42に収納されている入金確定済の有価媒体100と、入金未確定の有価媒体100とを区別する方法を説明する図である。2枚のテープ142a、142bの間に有価媒体100を挟み込んで収納する収納部42では、入金確定されて収納済の有価媒体111が、間隔L1をあけて収納されている。入金未確定の有価媒体100を収納する際には、先にテープ142a、142bをドラム42aに巻き取って、入金確定された収納済分の最後の有価媒体111から間隔L2(L2>L1)をあけてから、収納を開始する。そして、入金未確定分の有価媒体100を収納する間は、再び、間隔L1をあけながら各媒体を収納する。入金確定済の有価媒体111と入金未確定の有価媒体100との間隔L2は設定可能であるが、例えば通常の間隔L1の数倍以上とする。例えば、処理中に装置に障害が発生したような場合でも、収納部42に収納された有価媒体100を順次繰り出して、同じ間隔L1で繰り出されていた有価媒体100が途切れた所で、入金未確定分の有価媒体100全てが繰り出されたことを認識することができる。これにより、入金確定済の有価媒体111が収納されている収納部42を利用しながら、入金未確定の有価媒体100と明確に区別して、処理に混乱が生ずることを回避できる。
返却指定された全ての有価媒体100が投出部60へ投出されると、収納部42へ収納された有価媒体100を一時保留部20へ戻し入れる処理が開始される(ステップS32)。
操作員は、投出部60へ投出された有価媒体100を取り出して、操作表示部9で入金番号を入力する。制御部11は、この入金番号から、記憶部8に保存しておいたデータに関連する再処理であることを認識する。
操作員が、再処理分の有価媒体100を投入部10へ再投入すると(ステップS33)、有価媒体100の画像や情報取得が行われた後、再び一時保留部20へ収納される(ステップS34)。そして、再処理に問題がないことの確認が行われる(ステップS35)。再処理の内容に問題がある場合には再び投出部60へ繰り出されて、問題がないことが確認されるまで、ステップS30〜S35の処理が繰り返される。
操作員が、再投入した有価媒体100について行われた再処理に問題がないことを確認すると(ステップS35;Yes)、ここで入金を確定する操作を行う。このとき、一時保留部20には、一取引分の全ての有価媒体100が収納された状態にある。入金が確定されると、一時保留部20の有価媒体100が繰り出されて、対応する収納部40に収納される(ステップS36)。そして、先に記憶部8に保存されていたデータと再処理分のデータとを統合したデータが一取引分の入金データとして登録されて、入金処理が完了する。
なお、本実施形態では、有価媒体100として紙幣や小切手を例に説明を行ったが、有価媒体処理装置1が処理対象とする有価媒体には硬貨も含まれており、硬貨についても同様に処理を行うことができる。例えば、硬貨を収納する有価媒体処理装置1に硬貨を入金する際に、変形硬貨、摩耗の激しい硬貨、汚れのひどい硬貨、記念硬貨等の硬貨等を、該硬貨を撮像した画像を見ながら指定して、返却指定した一部の硬貨のみを装置外へ投出させる処理を上述した機能及び動作により実現することができる。
また、本実施形態では、操作表示部9に画像を表示して有価媒体100の返却指定を行う態様を示したが、返却指定の方法がこれに限定されるものではない。例えば、操作表示部9に、有価媒体100の画像は表示されず、「斜行した媒体」等の文字が表示されて、この文字を指定すると、これに該当する有価媒体100の返却指定が自動的になされる態様であっても構わない。
上述してきたように、本実施形態に係る有価媒体処理装置1によれば、入金処理中に、取得した有価媒体100の画像品質に問題がある場合、誤って入金対象外の有価媒体100が混入されていた場合等、一部の有価媒体100を一旦装置外へ投出させて現物を確認したい場合に、これらの有価媒体100のみを返却指定して装置外へ投出させて、他の有価媒体100を装置内に維持した状態とすることができる。
装置内では、装置外へ投出されて再処理される有価媒体100のデータのみが削除されて他のデータは維持されるので、再処理分の有価媒体100のみを再投入して、この有価媒体100に関するデータ確認の処理を行うだけで入金処理を完了することができる。
また、有価媒体処理装置1では、入金される有価媒体100のうち一部の有価媒体100のみを返却する処理を、設定により、入金処理を確定してから行うこともできるし入金処理を未確定の状態で行うこともできるので、処理内容、処理対象とする有価媒体の種類、有価媒体処理装置1が設置された金融機関の運用等に応じた設定で利用することができる。