JP2014188944A - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】透明性が良好で、水蒸気や酸素等の気体に対して優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを与えること。
【解決手段】フィルム基材の少なくとも片面に、体積平均粒子径が200nm以下であるカルシウムアパタイト微粒子、ポリリン酸(塩)、および水溶性ポリマーまたは疎水性ラテックスを含むガスバリア層を有するガスバリア性フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明性が良好で、水蒸気や酸素等の気体に対して優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムに関する。
プラスチックフィルムを利用した包装用途として、最も良く利用されるのが食品や医薬品の包装用途である。包装された食品や医薬品の変質、劣化を出来るだけ長期に亘って抑えるためには、酸素や水蒸気などの気体が包装フィルムを通して透過することを抑制することが望まれ、これにより食品や医薬品の品質、性状を長期間良好に保ち、結果として食品や医薬品の保存期間を長く出来る利点がある。フレキシブルでガスバリア性を有するフィルムとしては、まずアルミ蒸着フィルムが挙げられる。アルミ蒸着フィルムはアルミニウムを高温蒸気にしてフィルム表面に冷却固化させることでアルミ蒸着膜を形成する方法で製造されるが、ピンホールが生じやすく、実際に使用される場合に於いてもピンホール欠陥を多数生じているためにバリア性が不十分である問題や、更には透明性に欠けるため、包装された中身が見えない等の問題があった。
透明性が良好で、かつ高いバリア性を有するフィルムの作製方法として、例えば特許文献1には酸化珪素を蒸着したフィルムが開示され、特許文献2には酸化アルミニウムを蒸着したバリアフィルムが開示されている。これらの無機酸化物を蒸着したフィルムは透明性を有し、高いバリア性を示すものの、やはりピンホール欠陥を生じやすく、また、酸化珪素蒸着膜は黄色みを帯びており、また双方とも堅くて脆い被膜を形成するため、折り曲げ等によりひび割れやピンホール欠陥が生じやすく、結果としてバリア性に劣る問題があった。
他のバリア性の高い透明フィルムとしてポリビニルアルコールやポリエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を用いたフィルムが挙げられるが、これらは湿度の影響を顕著に受け、特に高湿下でのバリア性に顕著に劣る問題があった。また、ポリ塩化ビニリデンをコートしたフィルムも高バリア性フィルムとして使用されるが、ダイオキシン問題を受けてその適用が敬遠される状況が続いている。
特許文献3には、フィルム表面に水ガラスと分子内にアミノ基または水酸基を含む水溶性重合体からなる組成物を塗布して被膜形成したバリア性フィルムが開示されるが、高湿下では種々の気体に対するバリア性が顕著に低下する問題があった。
特許文献4にはヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム化合物を蒸着したバリア性フィルムが開示されるが、該蒸着膜は堅くて脆いため、摩擦や折り曲げによりひび割れやピンホールが容易に発生し、バリア性が顕著に低下する問題があった。
特開昭49−41469号公報 特開昭62−101428号公報 特開2000−103986号公報 特開2010−100916号公報
本発明は、透明性が良好で、水蒸気や酸素等の気体に対して優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを与えることを課題とする。
本発明の課題は、フィルム基材の少なくとも片面に、体積平均粒子径が200nm以下であるカルシウムアパタイト微粒子、ポリリン酸(塩)、および水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスを含むガスバリア層を有するガスバリア性フィルムにより基本的には解決される。
本発明により、透明性が良好で、水蒸気や酸素等の気体に対して優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供することが出来る。
本発明のガスバリア性フィルムを構成する各々の構成要素について説明を行う。
本発明に於いて用いることの出来るカルシウムアパタイト微粒子とは、具体的には、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、フルオロアパタイト(Ca10(PO)、クロロアパタイト(Ca10(POCl)、および、アパタイトに含まれるリン酸基の一部が炭酸イオンに置き換えられた構造を有する、炭酸ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO,CO(OH))、炭酸フルオロアパタイト(Ca10(PO,CO)、およびこれらの混合物からなる微粒子を挙げることが出来る。これらの各種カルシウムアパタイトの元素組成については、各々の元素の比率は必ずしも化学式で表される量論比で特定される訳ではなく、例えばリン酸基6モルに対するカルシウムイオン10モルの比率よりカルシウムイオンの比率が小さく、6〜10モルの間で任意の比率で含まれる場合であっても良い。さらには、炭酸基を含むアパタイトの場合では、リン酸基と炭酸基が1:1〜1:0の間で任意の割合を取り得る場合であっても良い。水酸基とフッ素イオン若しくは塩素イオンについても、これらが1:0〜0:1の範囲で任意の割合で含まれる場合であっても良い。さらには、アパタイトを構成する全元素全体に対する質量%において1質量%以下の範囲に於いて、マグネシウム、ストロンチウム、ナトリウム、カリウム、珪素、鉄、その他の金属イオンが含まれている場合であっても良い。
本発明に於いて、上記のカルシウムアパタイト微粒子の大きさには好ましい範囲が存在し、体積平均粒子径が200nm以下であることが必要である。本発明における体積平均粒子径の測定は、該微粒子を液中に分散した状態で光散乱および/または回折方式による粒度分布計を用いて測定することが出来、体積平均粒子径としてメジアン径で得ることが出来る。体積平均粒子径が200nmを超えて更に大きい場合には、これを用いてガスバリア性フィルムを作製しようと試みても、所望のガスバリア性能が発揮出来ず、更には透明性に劣る。カルシウムアパタイト微粒子の体積平均粒子径は更に好ましくは150nmより小さい場合の方が透明性が高くなり、フィルムの少なくとも片面にガスバリア層を形成する場合に於いて、層の厚みを増大させてガスバリア性を向上させる場合に於いても、厚みの増加による透明性の低下の程度が小さいことからより好ましく用いることが出来る。
本発明に於いて用いることの出来るカルシウムアパタイト微粒子は結晶性の低いアモルファス性のカルシウムアパタイトを用いても良いが、明確にアパタイト特有の結晶性を示す、具体的には広角X線回折測定において、回折ピークが明確に判別出来る結晶性の高い微粒子を用いた場合がより好ましい。即ち、結晶性の高いカルシウムアパタイト微粒子の方が高いガスバリア性が得られるため好ましい。
本発明に用いることの出来るカルシウムアパタイト微粒子は、粉体の状態で広角X線回折測定を行った場合に、2θが10〜60度の範囲に於いてカルシウムアパタイトが有する特徴的なピークとして、特に26度付近の(002)面からの回折ピーク、32度付近の(211)面からの回折ピーク、33度付近の(300)面からの回折ピークが各々明瞭に観察される場合においてのみ結晶性を有すると称し、ピーク幅がブロードで、(211)面と(300)面からの回折ピークが分離されずにブロードで比較的強度が弱い回折パターンを与える場合には、結晶性を有しないアモルファス状態であるとする。
また、下記文献に示されるような様々なヒドロキシアパタイトの製造方法を用いて作製されたヒドロキシアパタイト微粒子を本発明に於いて用いることも可能である。例えば特開昭63−159207号公報には、炭酸カルシウム粉末と第二リン酸カルシウム(2水和物)粉末を混合して水性スラリーを調製し、次いでこのスラリーを湿式粉砕機により摩砕混合しながら反応させる方法が示されている。特公平7−115850号公報には、リン酸三カルシウムをpH7〜11に調整された無機ハロゲン化物を含有する水溶液中で熱処理を行うことでヒドロキシアパタイトを作製する方法が示されている。特開平5−170413号公報には酸化カルシウム及び/または水酸化カルシウムの水性スラリーとリン酸水溶液をpH7〜12の範囲に於いて混合することでヒドロキシアパタイトとして純度の高い微粒子を得る方法が開示されている。上記の様々な方法で得られたヒドロキシアパタイト微粒子は、更にその結晶性を高めるために、水熱処理や焼結処理を行うことも好ましく行うことが出来る。これら様々な方法はいずれもヒドロキシアパタイト微粒子を得るための方法として有効であり、本発明に於いても好ましく用いることが出来る。
更に前述の通り、ヒドロキシアパタイト以外のカルシウムアパタイトとして、フルオロアパタイト、クロロアパタイト、炭酸ヒドロキシアパタイト、炭酸フルオロアパタイト等の各種のカルシウムアパタイトも好ましく用いることが出来る。フルオロアパタイトの合成方法として例えば特開昭63−256507号公報、特開平5−85709号公報、特開平5−85710号公報、および特開平9−40409号公報等に記載される方法が挙げられる。炭酸ヒドロキシアパタイトについては、例えば、特開平7−61861号公報、特開平8−225312号公報、特開平9−218187号公報、および特開平10−36106号公報等に記載される方法が挙げられる。
本発明に於いて使用する体積平均粒子径が200nm以下であるカルシウムアパタイト微粒子は、前記したような種々の製造方法によって得られたカルシウムアパタイトを微粒化して得ることが好ましい。微粒化の方法として特に好ましい方法は、媒体中に於いてカルシウムアパタイトを湿式分散処理する方法である。こうした湿式分散処理を行うためには、従来から知られている様々な湿式分散処理方法を利用することが出来る。好ましい湿式分散処理方法としては、メディアを利用した分散方式が特に好ましく、具体的には、カルシウムアパタイトを導入した媒体中に於いて、通常ガラスビーズやアルミナビーズ、その他のセラミックビーズ等のメディアを加えて振盪や攪拌を行い、カルシウムアパタイト粒子と該ビーズが機械的に衝突し、微粉砕されることで微粒化を行う処理方法を利用することが出来る。少量をバッチ方式で処理を行う場合には、ペイントコンディショナーを使用して数時間に亘る振盪を行うことで湿式分散処理を行うことが出来る。比較的多量の試料を用いて処理を行う場合には、ボールミル、ダイノミル等のメディア分散機を利用して、湿式分散処理を行うことが出来る。また上記したメディア分散機は、複数台を直列に配置して1パスで湿式分散処理を行っても良く、或いは1台のメディア分散機を用いて複数回処理を繰り返すことも好ましく行うことが出来る。
カルシウムアパタイト微粒子を分散するための媒体としては水が最も好ましいが、水に対して20質量%未満の添加量であれば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類や、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒等、水と混和性のある種々の溶剤を添加して用いることも出来る。
上記したメディアを利用してカルシウムアパタイトの湿式分散処理を行う場合に、使用するメディアはセラミックビーズを用いることが好ましい。特にカルシウムアパタイトを分散する場合に、ビーズとカルシウムアパタイトが接触してビーズが研磨されるなどしてビーズ由来の不純物がカルシウムアパタイト分散物に混入することを防止することが好ましい。こうした目的で利用出来るセラミックビーズとして、具体的にはZrO、立方晶ジルコニア、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナなどのジルコニアを含有するセラミックビーズや合成ダイヤモンド、窒化珪素ビーズなどを最も好ましく用いることが出来る。また、メディアの平均直径は0.01〜10mmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜5mmである。こうしたメディアを使用したメディア分散機を用いる湿式分散処理の条件は、通常行われる室温での処理であり、特に処理時間や温度等に関する制限はない。また、パス回数については1回で十分である場合もあるが、2〜7回程度のパス回数で処理を行うことで、より粒子径分布が狭く、かつ分散安定性に優れたカルシウムアパタイト微粒子の分散物が得られることから好ましく行うことが出来る。
上記の湿式分散処理を行う場合の、媒体中におけるカルシウムアパタイトの濃度に関しては好ましい範囲が存在し、媒体中における質量%として5〜30%の範囲で湿式分散処理を行うことが好ましく、これよりカルシウムアパタイトの濃度が高い場合、分散処理を進めると分散液の粘度が高くなり、分散処理が効率的に進まない場合がある。或いは、カルシウムアパタイトの濃度が5%を下回る場合、メディアとカルシウムアパタイト粒子との衝突する効率が低下するため分散処理が効率的に進まない場合がある。
次に、本発明で用いることの出来るポリリン酸(塩)について説明を行う。本発明においてポリリン酸(塩)とはポリリン酸或いはポリリン酸塩を表し、更に詳しくは、リン原子に酸素原子が結合した一般式(1)で示される繰り返し単位を分子内に少なくとも2個以上有する化合物を意味する。
Figure 2014188944
一般式(1)においてnは2以上の整数を表し、Xは水素原子あるいはアルカリ金属イオンを表す。
上記一般式(1)で表される繰り返し単位を分子内に少なくとも2個以上有する化合物の例として、例えばXがナトリウムイオンである場合には、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、およびnが5以上である直鎖状のポリリン酸ナトリウムのような直鎖状のポリリン酸塩が挙げられ、或いは環状化合物であるヘキサメタリン酸ナトリウムなどを含み、実際には高分子化合物であるメタリン酸ナトリウムや、或いは、直鎖状骨格のみならず、分岐構造を含むウルトラリン酸ナトリウムなどを挙げることが出来る。これらの種々のポリリン酸(塩)は複数の種類を任意の割合で混合して用いても良い。
ポリリン酸(塩)はカルシウムアパタイトと共にガスバリア層に用いることでガスバリア性フィルムが作製されるが、その添加方法に関して好ましい方法が存在する。即ち、前記のカルシウムアパタイトの湿式分散処理の際に、予めポリリン酸(塩)を加えた状態でカルシウムアパタイトの湿式分散処理を行う方法がより好ましい。この場合、ポリリン酸(塩)の存在によりカルシウムアパタイトがより微細な微粒子に分割され、このようにして作製したカルシウムアパタイトとポリリン酸(塩)の混合物を含むガスバリア層を形成したガスバリア性フィルムを用いた場合、フィルムの透明性が向上し、加えて水蒸気や酸素等の気体の透過性が更に低下することでより良好なガスバリア性フィルムを与えることが出来る。
また、上記一般式(1)におけるnの値の上限としては特に制限がないが、nが5000を超える場合には水溶液の粘度が高くなり、これを用いてフィルム基材上にバリア層を形成した場合、均一な厚みの層が形成出来ず、得られるガスバリア性フィルムの透明性が低下する場合があることから、nは5000未満である場合が特に好ましい。また、nが1の場合にはヒドロキシアパタイトに添加して湿式分散処理を行っても、添加しない場合と同様の結果であり、効果が認められない。
上記一般式(1)で示される繰り返し単位を分子内に有するポリリン酸(塩)については、後述するように分散物を作製する際の液のpHによって分子内に含まれるXの種類が異なる場合がある。即ち、ポリリン酸はアルカリで段階的に中和すると、含まれるリン酸基が順番に中和されてゆくため、ポリリン酸(塩)を含む分散物のpHによってXが水素原子であるかアルカリ金属イオンであるか、それらの比率が異なることになる。また、中和するアルカリ金属イオンの種類としてはナトリウムイオン以外にカリウムイオンやリチウムイオンなども用いることが出来、これらが混合して用いられる場合であっても良い。
カルシウムアパタイト微粒子と共に用いるポリリン酸(塩)の比率については好ましい範囲が存在する。カルシウムアパタイト微粒子100質量部に対して、用いられるポリリン酸(塩)の量は、5〜100質量部の範囲で添加してガスバリア層を作製することが好ましく、更に5〜50質量部である場合が特に好ましい。ポリリン酸(塩)の比率が上記の割合より少ない場合には、添加した効果が認められない場合がある。また、上記の割合を超えてポリリン酸(塩)が添加された場合には、ガスバリア層に微細なクラックやピンホールが発生し、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性が低下する場合がある。
次に、本発明に於いて上記のカルシウムアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)に加えて更にバインダー成分として使用する水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスについて説明する。本発明に於いて水溶性ポリマーとして用いることの出来る好ましい例はポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、リン酸変性デンプンなどの各種変性デンプンなどが挙げられるが、これらの内で更に好ましく用いることの出来る水溶性ポリマーとして、水酸基を側鎖に有するポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。最も好ましく用いることの出来る水溶性ポリマーはポリビニルアルコールであり、これを用いて作製されるバリア性フィルムのバリア性と透明性が最も優れる場合があることから極めて好ましく用いることが出来る。
本発明に於いて上記のカルシウムアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)に加えて更にバインダー成分として用いることの出来る疎水性ラテックスを挙げることが出来る。本発明に於いて疎水性ラテックスとは、水不溶性の高分子化合物の水分散体を意味する。疎水性ラテックスとして好ましく用いることの出来る例として、例えば塩化ビニリデンラテックス、スチレン−アクリルラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス、ウレタンラテックス、ポリエステルラテックス、および生分解性ポリマーとしてポリ乳酸を水中で乳化分散したポリ乳酸ラテックス等が挙げられる。本発明に於いてこうした疎水性ラテックスは前記のカルシウムアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)とともに加えてバリア層を形成し、バリア性フィルムを作製しても良いが、前記した水溶性ポリマーと併せて用いることでバリア性フィルムを作製することも好ましく行うことが出来る。これら水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスを含まないでバリア層を形成した場合、良好なバリア性が得られない。尚、本発明に於いて疎水性ラテックスとは、前記した水不溶性の高分子化合物の水分散体を意味するが、ガスバリア層内においては、該疎水性ラテックスは水分が取り除かれた状態で含有される。
上記の疎水性ラテックスの例の中で、特に好ましく用いることの出来る疎水性ラテックスとして、ウレタンラテックスとポリ乳酸ラテックスを挙げることが出来る。ウレタンラテックスとしては、水分散型ポリウレタンラテックスが好ましく、例えば自己乳化型ポリウレタン樹脂が挙げられる。水分散型ポリウレタンラテックスは、水中に安定に分散したポリウレタン樹脂であり、ポリウレタン樹脂を水中に安定に分散した形で形成するためには種々の製法がとられるが、本発明に好ましく用いることの出来る水分散型ポリウレタンラテックスとしては、その製法に依るものではなく、ポリウレタン構造を有する樹脂ラテックスであれば本質的に使用することが可能である。ここでいうポリウレタン構造としては有機ジまたはポリイソシアネートと有機ジまたはポリオールを付加重合して得られるポリウレタン構造を有するものであり、有機ジまたはポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネートとして、例えばトルエンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等や、炭素数2〜12の脂肪族ジイソシアネートとして、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートや、炭素数4〜18の脂環式ジイソシアネートとして、例えば1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート等が挙げられ、さらにこれら全てのジイソシアネートの変性物として、カーボジイミド、ウレチジオン、ビューレット及び/またはイソシアヌレート変性物等が挙げられる。さらに、形成されるポリウレタン樹脂を水中に安定に分散するために、自己乳化性イソシアネートとしてアルキレンオキシ基を結合したポリイソシアネート類を使用して水分散型ポリウレタンラテックスを得る方法が好ましい例として挙げられる。
上記の有機ジまたはポリオールとしては、脂肪族ジオールとして、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、芳香族ジオールとして例えばビスフェノールA、あるいはポリエーテルポリオールとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレン(ブロックまたはランダム)グリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。或いは、ポリオールの他の例として、ポリエステルポリオールを挙げることが出来る。具体的には、例えば脂肪族ジオールとして、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、芳香族ジオールとして例えばビスフェノールA等とジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)とを縮合させて得られるポリエステルポリオールや、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール等のポリラクトンポリオール等が挙げられる。更には、ポリブチレンカーボネートジオール、ポリエキサメチレンカーボネートジオール等のようなポリカーボネートジオール等も好ましい例として挙げられる。さらに、形成されるポリウレタン樹脂を水中に安定に分散するためにポリオール成分としてポリアルキレンオキシ基を有する有機ジオールを使用することも好ましい(例えば米国特許第3,905,929号公報、米国特許第5,043,381号公報)。
上記のような有機ジまたはポリイソシアネートと有機ジまたはポリオールを付加重合して得られるポリウレタン樹脂を水に安定に分散するためには、特公昭53−38760号公報、特公昭63−8141号公報に記載されるような分子内にカルボキシル基等のアニオン性基を有する末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを使用し、第三級アミンで中和することで水中に乳化可能な状態にし、これを鎖伸長して水分散型ポリウレタンラテックスを製造する方法や、特願平3−327393号公報、特開平6−93068号公報等に記載されるような、分子内にカルボキシ基等のアニオン性基を有するポリウレタン樹脂を合成し、これをアミン類で中和することで水に乳化分散可能にして水分散型ポリウレタンラテックスを得る方法等が挙げられる。
水分散型ポリウレタンラテックスの合成は上記のように水中で乳化状態において合成することも可能であり、あるいは水と混和性を有するケトン類、エーテル類等の有機溶剤を使用して重合を行い、その後水を添加し、有機溶剤を溜去することで水分散型ポリウレタンラテックスに転換することも好ましく行われる。
本発明において使用出来るウレタンラテックスとしては、上記のような種々の方法、原料を使用した水分散型ポリウレタンラテックスが好ましく使用出来るが、特に好ましい水分散型ポリウレタンラテックスとしては、例えばDIC株式会社から入手可能なハイドランの商品名で表されるポリウレタンラテックスや、三洋化成工業株式会社から入手可能なパーマリン、ユープレン、ユーコート等の商品名で表されるウレタンラテックス等が極めて好ましく使用される。
疎水性ラテックスの他の好ましい例としてポリ乳酸ラテックスを挙げることが出来る。これは生分解性で生体に対する安全性が確認されているポリ乳酸を水中に於いてラテックスとして分散した素材である。従って、本発明のガスバリア性フィルムを構成する素材として用いた場合、より生物学的に安全性が高いため、特に食品包装用途や医薬品包装用途に対して極めて好ましく用いることが出来る。市販されるポリ乳酸ラテックスとしては、例えばミヨシ油脂株式会社から製造販売される「ランディPLシリーズ」や、第一工業製薬株式会社の「プラセマL110」等の各種ポリ乳酸ラテックスが入手可能である。
本発明において用いられる水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスと先のカルシウムアパタイト微粒子の比率については好ましい範囲が存在する。カルシウムアパタイト微粒子100質量部に対して、水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスは乾燥固形分質量で20〜200質量部の範囲で含まれるガスバリア層を用いることが好ましい。水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスの乾燥固形分質量が20質量部を下回る場合、ガスバリア層にひび割れが生じる場合があり、ガスバリア性が低下する場合がある。また水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスの乾燥固形分質量が200質量部を上回る場合、フィルムのガスバリア性が不十分である場合がある。
上記の水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスは、カルシウムアパタイト微粒子およびポリリン酸(塩)と併せて用いて、後述するフィルム基材表面に塗布を行いバリア層を形成するものであるが、水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスは、カルシウムアパタイト微粒子同士の隙間を充填し、バリア性を高める役割を果たすものである。ガスバリア層中の水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスに架橋構造を付与することでガスバリア性を一層高めることも好ましく行うことが出来る。こうした目的で用いることの出来る方法として、上記ガスバリア層に更に自己乳化性イソシアネート化合物を併せて用いる方法を挙げることが出来る。本発明で用いる自己乳化性イソシアネート化合物とは、エチレンオキサイドの繰り返し単位を有し、更に2個以上のイソシアネート基を結合した化合物を意味し、例えば、特公昭55−7472号公報(米国特許第3,996,154号)、特開平5−222150号公報(米国特許第5,252,696号)、特開平9−71720号公報、特開平9−328654号公報、特開平10−60073号公報等に記載されるような自己乳化性イソシアネートを指す。具体的には、例えば、脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネートから形成される環状三量体骨格のイソシアヌレート構造を分子内に有するポリイソシアネートや、ビューレット構造、ウレタン構造等を分子内に有するポリイソシアネートをベースポリイソシアネートとし、これに片末端エーテル化したポリエチレングリコール等をポリイソシアネート基の内一部のみに付加させて得られる構造のポリイソシアネート化合物が極めて好ましい例として挙げられる。こうした構造のイソシアネート化合物の合成法については上記の各種公報中に記載されている。こうしたイソシアネート化合物の具体的な例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート等を出発原料とした環状三量化によるポリイソシアネートをベースポリイソシアネートとしたものが市販されており、例えば、旭化成工業株式会社からデュラネートの名称で各種のタイプの自己乳化性イソシアネート化合物が入手可能である。
ガスバリア層中に自己乳化性イソシアネート化合物を併せて用いる場合には、その割合については好ましい範囲が存在し、使用する水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスの乾燥固形分100質量部に対して1〜50質量部の範囲であることが好ましく、更に5〜30質量部の範囲で用いる場合が更に好ましい。
本発明においてガスバリア層には必要に応じて種々の界面活性剤を添加して用いることも出来る。本発明において用いることの出来るアニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることが出来る。
本発明において用いることの出来るノニオン性界面活性剤としては、種々の鎖長のポリエチレンオキサイドに、アルキル基やフェニル基およびアルキル置換フェニル基が結合したポリエチレンオキサイドアルキルエーテル、ポリエチレンオキサイドアルキルフェニルエーテルが好ましく用いることが出来る。
本発明において界面活性剤を用いる場合には、これがガスバリア層中に含有される量については好ましい範囲が存在する。ガスバリア層中に含まれるカルシウムアパタイト微粒子100質量部に対する割合で5質量部以下の範囲が好ましく、更に3質量部以下の範囲で含まれる場合が最も好ましい。
本発明においてガスバリア性フィルムが有するフィルム基材としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エバール等の従来からガスバリア性フィルム基材として使用されているフィルム基材が好ましく用いられる。本発明によりガスバリア層はこれらのフィルム基材に強固に接着する性質を有することから、これらフィルム基材に対して特に好ましく用いることが出来る。また、得られたガスバリア性フィルムは、これを単独で用いても良いが、これと他のフィルム基材や他のフィルム基材を用いて作製されたガスバリア性フィルムとを張り合わせて使用することも好ましく行うことが出来る。フィルム基材の厚みに関しては特に制限はないが、実際の使用状況に応じて通常は5〜150μmの範囲から選択される。また、フィルム基材の全光線透過率は60%以上であることが好ましい。
上記のフィルム基材は様々な方法で表面を親水化加工したフィルムを使用しても良い。具体的な親水化処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。さらなる親水化加工としてガスバリア性被膜形成用組成物との接着性を高めるためフィルム基材上に各種下引き層を設けても良い。
塗布方法に関しては、フィルム基材の種類に応じて最適の塗布方法を選択することが出来、具体的には、スプレー塗布やファウンテン塗布、スライド塗布、カーテン塗布、スロットダイ塗布方式などの塗布装置とフィルム基材が機械的に直接接触せず、塗布液のみがフィルム基材上に送液される方法が好ましく、或いは、グラビア塗布方式、或いはキスコート方式、ブレードコート方式なども使用することが出来る。更には、フィルム基材を塗布液中に含浸する含浸加工(ディップ塗布方式)も好ましく行うことが出来る。
ガスバリア層をフィルム基材表面に形成したガスバリア性フィルムを作製する際の乾燥条件としては少なくとも30℃以上の温度で加熱乾燥を行うことが好ましく、更に70℃以上の温度で乾燥を行うことで、ガスバリア層とフィルム基材との接着性を一層高め、ガスバリア層のガスバリア性をさらに高めることも好ましく行われる。更に、塗布乾燥に引き続いて、30〜70℃の範囲の温度に於いて数時間〜数日間の範囲で加熱処理を行うことも好ましく行うことが出来る。
フィルム基材表面にガスバリア層を形成させてガスバリア性フィルムを作製する場合に、該ガスバリア層の厚みに対しては特に制限はなく、目的、用途に応じて最適の厚みが選択される。さらに1回の塗布工程で必要な厚みが得られない場合には、複数回に分けて塗布、乾燥工程を繰り返してガスバリア性フィルムを作製することも行うことが出来る。このようにして作製されるガスバリア性フィルムにおける被膜の厚みは通常、0.01〜100μmの範囲にある場合が好ましい。被膜の厚みが0.01μm未満の場合は、本発明の効果が認められない場合があり、また、厚みが100μmを超える場合は塗布および乾燥の際に厚みが不均一になり、さらにガスバリア層表面にひび割れが生じる場合がある。
以下に実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の百分率は断りのない限り質量基準である。
(実施例1〜8)
カルシウムアパタイトとして、チセリウス等による合成方法(Tiselius A.et.al.,Archives of Biochemistry and Biophysics,vol.65,No.1,132−155,(1956).に記載される方法)に従って、リン酸水素カルシウム二水和物(和光純薬工業株式会社製試薬、食品添加物グレード)に当モルの水酸化ナトリウムを加えて、水中に於いて70℃で3時間加熱攪拌を行い、室温で静置後沈殿した生成物を濾過、水洗および乾燥して結晶性を有するヒドロキシアパタイトの粉末を得た。該ヒドロキシアパタイト粉末の結晶性の確認は広角X線回折測定を行い、2θが10〜60度の範囲に於いてカルシウムアパタイトが有する特徴的なピークとして、26度付近の(002)面からの回折ピーク、32度付近の(211)面からの回折ピーク、33度付近の(300)面からの回折ピークが各々明瞭に観察されたことから、結晶性であることを確認した。これを用いて以下のようにしてビーズミル方式による湿式分散処理を行った。即ち、ヒドロキシアパタイト20グラムおよびポリリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製試薬)2グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、これにイオン交換水100グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを200グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間振盪処理を行った。その後、濾布を使用して分散液からジルコニアビーズを分離した。得られた分散液のpHは10.8であり、ヒドロキシアパタイトの固形分濃度は16.7質量%であった。これを用いて以下のように評価を行った。
上記で得られた分散液を用いて、分散しているヒドロキシアパタイト微粒子の大きさを測定するために、光散乱回折式粒度分布計(株式会社堀場製作所製粒度分布測定装置LA−920)を使用して測定した。得られた体積平均粒子径は、メジアン径で95nmであり、95質量%の粒子が60〜120μmの範囲に含まれており、比較的狭い粒子径分布を示した。
上記のヒドロキシアパタイト微粒子の分散液を用いて、表1に示す固形分質量部の配合で塗布液を作製し、これらをガスバリア層の形成に用いた。実施例1〜6に用いた塗布液は、上記のヒドロキシアパタイト微粒子の分散液を用いて、これに表1に示す固形分質量部配合で水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスを添加して塗布液を作製した。実施例7,8については前記した湿式分散処理時に用いたポリリン酸ナトリウムとは別に、更にポリリン酸ナトリウムを塗布液に追加して塗布液を作製した。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製、n=1500〜1800)を使用し、疎水性ラテックスとしては水分散型ポリウレタンラテックスとしてDIC株式会社製「ハイドランAP−40F」(固形分濃度22.5質量%の水分散物)またはミヨシ油脂株式会社製ポリ乳酸ラテックス「ランディPL−3000」(固形分濃度40質量%の水分散物)をそれぞれ表1に示す固形分質量部で用いた。また、比較例1として、ガスバリア層を形成しない元のポリエステルフィルムを比較に用いた。比較例2としては、水溶性ポリマーおよび疎水性ラテックスの双方とも使用しないで塗布液を形成した試料を作製した。比較例3として、ヒドロキシアパタイトの湿式分散処理に於いてポリリン酸塩を添加しないで分散処理を行った分散液を使用して塗布液を作製した。この場合のヒドロキシアパタイト微粒子の体積平均粒子径はメジアン径で1.6μmであり、5μm付近の粒子径を有する成分を含む比較的ブロードな粒子径分布を示した。比較例4として、比較例3にてガスバリア層の形成に用いた塗布液に対して、表1の固形分質量部配合でポリリン酸ナトリウムを追加して塗布液を作製した。比較例5として、ポリリン酸ナトリウムとポリビニルアルコールを表1の固形分質量部配合で用い、塗布液を作製した。
Figure 2014188944
フィルム基材として厚み25μmのポリエステルフィルム(東レ株式会社製ルミラー)を選び、比較例1を除いて、これに上記の組成でガスバリア層を形成した。ガスバリア層の形成には、塗布液を、ガスバリア層の乾燥後の厚みが1μmになるようドクターバーを用いて塗布を行い、70℃の乾燥器内で乾燥させた。作製したガスバリア性フィルムは、さらに40℃に調節した乾燥器内で24時間加熱を行い、本実施例1〜8および比較例1〜5のガスバリア性フィルムを作製した。
上記のガスバリア性フィルムの評価を以下のようにして行った。まず、ガスバリア性フィルムの透明性に関しては、ヘイズメーターにより測定を行ったところ、白濁した比較例3および4を除く全ての試料でヘイズ値が5〜8%の範囲で透明性に関しては概ね良好である結果を得た。
次に上記で作製したガスバリア性フィルムを用いて以下に示すように酸素透過度および水蒸気透過度の測定を行った。酸素透過度測定はMocon社のOXTRAN 2/20を使用して、20℃相対湿度80%の雰囲気下で同圧法により測定を行った。結果を表2に示した。表2から明らかなように、いずれの実施例に於いても比較例1〜5と比べ明確に酸素透過性が低下しており、ガスバリア性フィルムとしての効果が確認出来た。
Figure 2014188944
さらに、上記のガスバリア性フィルムを用いて、水蒸気透過性の測定を行った。測定は、カップ法を用いて行い、アルミカップ内に乾燥した塩化カルシウム粉体を導入し、O−リングを介して上記のガスバリアフィルムで密閉したカップを、40℃相対湿度90%の雰囲気下で2週間保存し、フィルムを通してカップ内に透過し塩化カルシウムによって吸収された水蒸気の量を重量法で測定することで水蒸気透過度を求めた。尚、ガスバリア性フィルムのガスバリア層側をカップの内面に向けて評価を行った。結果を表3に示した。表3から明らかなように、いずれの実施例に於いても比較例1〜5と比べ明確に水蒸気透過性が低下しており、ガスバリア性フィルムとしての効果が確認出来た。
Figure 2014188944
(実施例9〜11)
カルシウムアパタイトとして、太平化学産業株式会社から入手した化粧品原料グレードのヒドロキシアパタイトを用いた。該カルシウムアパタイトの広角X線回折測定を行った結果、ヒドロキシアパタイトに特徴的な26度付近の(002)面からの回折ピーク、32度付近の(211)面からの回折ピーク、33度付近の(300)面からの回折ピーク等が鋭く明確に観察されたことから、該カルシウムアパタイトが結晶性を有することが確認された。これを用いて以下のようにしてビーズミル方式による湿式分散処理を行った。即ち、ヒドロキシアパタイト20グラムとポリリン酸塩としてトリポリリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)2グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、これにイオン交換水100グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを200グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間振盪処理を行った。その後、濾布を使用して分散液からジルコニアビーズを分離した。得られた分散液を用いて、分散しているヒドロキシアパタイト微粒子の大きさを測定するために、光散乱回折式粒度分布計(堀場製作所製粒度分布測定装置LA−920)を使用して測定した。得られた体積平均粒子径は、メジアン径で200nmであった。
上記で作製したヒドロキシアパタイト微粒子の分散液を用いて、先の実施例1〜3と同様にして、表4に示す固形分質量部の配合で塗布液を作製した。先の実施例1〜3と同様にして、水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製、n=1500〜1800)を使用し、疎水性ラテックスとしては水分散型ポリウレタンラテックスとしてDIC株式会社製「ハイドランAP−40F」(固形分濃度22.5質量%の水分散物)またはミヨシ油脂株式会社製ポリ乳酸ラテックス「ランディPL−3000」(固形分濃度40質量%の水分散物)をそれぞれ表4に示す固形分質量部で用いた。
Figure 2014188944
フィルム基材として厚み25μmのポリエステルフィルム(東レ株式会社製ルミラー)を選び、先の実施例1〜3と同様にして上記の組成でガスバリア層を形成した。ガスバリア層の形成には、塗布液を、ガスバリア層の乾燥後の厚みが1μmになるようドクターバーを用いて塗布を行い、70℃の乾燥器内で乾燥させた。作製したガスバリア性フィルムは、さらに40℃に調節した乾燥器内で24時間加熱を行い、本実施例9〜11のガスバリア性フィルムを作製した。
上記のガスバリア性フィルムの評価は先の実施例1〜3と同様にして行い、酸素透過性についての評価結果として表5に示す結果を得た。さらに、水蒸気透過性についても先の実施例1〜3と同様にして評価を行い、表6に示す結果を得た。また、ガスバリア性フィルムの透明性に関しては、ヘイズメーターにより測定を行ったところ、実施例9〜11の試料でヘイズ値が約10%であり、透明性に関しては概ね良好である結果を得た。これらの結果より、いずれの実施例に於いてもガスバリア性フィルムとしての効果が確認出来た。
Figure 2014188944
Figure 2014188944
(実施例12〜14)
カルシウムアパタイト微粒子分散物として、先の実施例1〜8で使用したヒドロキシアパタイト微粒子の分散物を使用し、該分散物中に含まれるヒドロキシアパタイト固形分100質量部に対して表7に示す配合で水溶性ポリマーとして、ポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製、n=1500〜1800)を使用し、疎水性ラテックスとしては水分散型ポリウレタンラテックスとしてDIC株式会社製「ハイドランAP−40F」(固形分濃度22.5質量%)またはミヨシ油脂株式会社製ポリ乳酸ラテックス「ランディPL−3000」(固形分濃度40質量%)をそれぞれ表7に示す固形分質量部で用いた。更に、各々の液に自己乳化性イソシアネート化合物として、旭化成工業株式会社のデュラネートWB40−80(固形分濃度80質量%)を水溶性ポリマーまたは疎水性ラテックスの乾燥固形分100質量部に対して10質量部加えてガスバリア層の形成用塗布液に用いた。尚、各々の塗布液には、ヒドロキシアパタイトの分散液を作製する際に用いたポリリン酸塩としてのトリポリリン酸ナトリウムがヒドロキシアパタイト固形分100質量部に対して10質量部含まれている。
先の実施例と同様にして厚み25μmのポリエステルフィルムに本発明のガスバリア層を形成した。ガスバリア層の形成には、塗布液を、ガスバリア層の乾燥後の厚みが1μmになるようドクターバーを用いて塗布を行い、70℃に調節した乾燥器内で乾燥させた。作製したガスバリア性フィルムは、さらに40℃に調節した乾燥器内で24時間加熱を行い、本実施例12〜14のガスバリア性フィルムを作製した。ガスバリア性フィルムの透明性に関しては、ヘイズメーターにより測定を行ったところ、全ての試料でヘイズ値が5%未満で透明性に関して極めて良好である結果を得た。これらを用いて、先の実施例と同様にして酸素透過度と水蒸気透過度を測定し、表8及び表9に示す結果を得た。表から明らかなように、いずれの実施例に於いても先のいずれの実施例よりさらに酸素透過性および水蒸気透過性が低下しており、ガスバリア性フィルムとしての効果が確認出来た。
Figure 2014188944
Figure 2014188944
Figure 2014188944
(実施例15〜17)
カルシウムアパタイトとして、太平化学産業株式会社から入手したフッ素アパタイト(商品名「FAP」)を用いた。該カルシウムアパタイトの広角X線回折測定を行った結果、フッ素アパタイトに特徴的な26度付近の(002)面からの回折ピーク、32度付近の(211)面からの回折ピーク、33度付近の(300)面からの回折ピーク等が鋭く明確に観察されたことから、該フッ素アパタイトが結晶性を有することが確認された。これを用いて先の実施例9〜11と同様にしてポリリン酸塩としてトリポリリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を添加してビーズミル方式による湿式分散処理を行った。得られた分散液に含まれるフッ素アパタイト微粒子の大きさを先の実施例と同様に測定した結果、得られた体積平均粒子径は、メジアン径で190nmであった。
上記で作製したフッ素アパタイト微粒子の分散液を用いて、先の実施例9〜11と同様にして塗布液を作製した。得られた塗布液を先の実施例9〜11と同様にして厚み25μmのポリエステルフィルム上に、ガスバリア層の乾燥後の厚みが1μmになるようドクターバーを用いて塗布を行い、70℃に調節した乾燥器内で乾燥させた。作製したガスバリア性フィルムは、さらに40℃に調節した乾燥器内で24時間加熱を行い、本実施例15〜17のガスバリア性フィルムを作製した。実施例9〜11と同様にしてガスバリア性フィルムの評価を行った結果、いずれの試料もヘイズ値は約10%であり、酸素透過度および水蒸気透過度の値も実施例9〜11と同様の値を示した。
以上の結果から明らかなように、本発明により透明性が良好で、水蒸気や酸素等の気体に対して優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムが得られることが判る。

Claims (2)

  1. フィルム基材の少なくとも片面に、体積平均粒子径が200nm以下であるカルシウムアパタイト微粒子、ポリリン酸(塩)、および水溶性ポリマーおよび/または疎水性ラテックスを含むガスバリア層を有するガスバリア性フィルム。
  2. 前記ガスバリア層が、さらに自己乳化性イソシアネート化合物を含む請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
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