JP2014184346A - 歯周病の検査方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】患者に苦痛を与えることなしに歯周病の状態を客観的に示す指標を簡易かつ高精度で得ることが可能な検査方法を提供する。
【解決手段】人又は動物の歯を歯科用X線によって撮像して複数の歯科用X線CT画像を得、得られた複数の歯科用X線CT画像をボリュームレンダリングして3次元画像を得、得られた3次元画像を表示し、表示された2次元画面上で歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータを検出し、検出された歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータに基づいて、歯根体積指標、歯根表面積指標及び歯根重心指標のうちの少なくとも1つの指標を算出し、かつ算出された前記少なくとも1つの指標に基づいて歯周病の進行状態を検査することから構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は歯周病の検査方法に関する。さらに詳しくは、歯科用X線CT画像をボリュームレンダリングして、得られた3次元画像に基づいて歯周病の進行状態を検査する方法に関する。
歯周病とは、歯の周囲、即ち、歯茎(歯肉)、歯槽骨、歯根膜、歯茎の下のセメント質部分に起こる病気をいう。しかし、一般的には歯の回りに起こる炎症性の病気を指し、これが患者の9割以上を占めている。従って、一般的な歯周病はプロフィロモナス・ギンジバリス等の細菌によって引き起こされる。本発明も主に一般的な歯周病を対象としている。以下では、一般的な歯周病を「歯周病」と呼び、それ以外の歯周病については「特別な歯周病」と呼ぶことにする。
以下、歯周病の進行状態に関し、根尖が下にある下顎の歯の場合について説明するが、上顎の歯についても同様である。図3は健康な歯を模式的に示す断面図であり、図4は歯周病の歯を模式的に示す断面図である。図3に示すように、健康な歯30は、歯根31が歯根膜32a、歯槽骨35及び歯茎(歯肉)32に支えられおり、また、歯根31と歯茎32との間は歯周ポケット(又は単にポケット(歯肉溝))45と呼ばれる。歯周病に罹患すると、歯茎(歯肉)32が赤く腫れ、歯根膜32aが破れ、図4に示すように、歯周ポケット45から血及び膿48が出て、歯槽骨35が溶け始めることになる。歯茎頂部46からポケット下端47までのポケット45の深さは、健康な歯では0〜1mm程度であるが、歯周病に罹患した歯30の場合、その深さは、歯周病の進行に伴い深くなる。
歯周病の治療を開始するに当たっては、先ず現在の症状がどの程度進んでいるか検査し、その後にどのような症状に至るかを診断しなければならない。現在までに種々の方法の開発が行われてきた。現在の主な検査方法としては、プロービングによる方法、デンタルX線を利用した検査方法、細菌検査を利用した検査方法等がある。更に、検査に当たっては、歯根と歯槽骨の形態の個人的差異や歯の咬み合わせの個人的差異等も考慮する必要がある。
プロービング検査方法は、上述のポケット45にプローブ(検査用針)を挿入し、ポケット45の深さを測定しながら症状の状況を探る方法で、最も簡便な方法であり、症状の全ての段階に適用できる点で優れている。しかし、検査結果が術者の技術レベルにより異なるものとなり、また、特に重症の場合は、プローブが神経を刺激して患者に苦痛を与えるという問題がある。即ち、ポケット45の深さの測定は、プローブ(検査用針、詳しくは、ポケット探針という目盛り付き針)をポケット下端に達するまで挿入して測定するが、1本の歯30について6箇所程度測定しており、出血を伴うこともあり患者に苦痛を与え、手間もかかる。また、後述するように、歯周病の客観的指標として十分とはいえないという問題がある。即ち、ポケット45の深さが同じでも、ポケット45より下の歯30の体積は、歯30によって、また、人によって異なることから、歯30を支える力は、ポケット45の深さだけで判断することはできない。
デンタルX線を利用する検査方法は、歯30と歯周組織(3次元)のX線写真から骨レベルと歯槽骨35の外形を把握し、検査する方法である。骨レベルと歯槽骨35の外形から動揺に対する抵抗がプロービング法に比べてより正確に読みとれる点では優れている。しかし、ポケット45のできた初期の段階では利用できず、頻繁に利用できず、また、デンタルX線画像が不鮮明な場合、精度が低下する場合があるという問題がある。
また、細菌検査を利用する検査方法は、歯周炎の原因菌を検査して歯周疾患の活動性・進行性を検査する方法である。即ち、菌種の違いによって病原性の強さが異なると考えられており、菌種を特定して活動性を判断するが、菌種の特定には時間及び費用が掛かり、それほど簡易ではないという問題がある。
このような問題に対応するため、現総有効歯根表面積より総有効歯根表面積の減少度を求め、その結果より残存歯数減少度の予測を行う残存歯予測システムが提案されている(特許文献1)。この技術は、総有効歯根表面積の減少曲線や減少直線を出力することによって、残存歯数という理解し易いものを予測することができ、長期的な歯の予防、治療及び指導を行うための資料として用いることができるという利点を有するものの、歯根表面積をプロービングによるアタッチメントレベル(歯肉が歯に付着している部分の割合)から計算しており、高い精度を得ることは困難であり、歯槽骨の吸収は考慮されていない点で必ずしも十分に満足し得るものではなかった。
また、プラークスコア、歯周ポケットの深さ及び歯の動揺度を、過去のデータと比較して、歯周病の進行度を算出し、この進行度に基いて、歯周病の進行予測の情報を表示する電子医療補助装置が提案されている(特許文献2)。この技術は、患者に対する動機づけを行なって歯周病治療の重要性を患者に認識させることができるという利点を有するものの、歯槽骨の吸収は考慮されていない点で必ずしも十分に満足し得るものではなかった。
特開2001−061873号公報 特開平11−047095号公報
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、患者に苦痛を与えることなしに歯周病の状態を客観的に示す指標を簡易かつ高精度で得ることが可能な検査方法を提供することを目的とする。さらに詳しくは、患者の歯周病の進行状態を示す指標を、患者に苦痛を与えず、手間を掛けずに採取すること、客観的な指標を得るための歯根体積計算法を実際に運用する際に簡易かつ高精度な指示を実現すること、及び自動検出測定の精度を向上させることが可能な検査方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の歯周病の検査方法が提供される。
[1]人又は動物の歯を歯科用X線によって撮像して複数の歯科用X線CT画像を得、
得られた複数の歯科用X線CT画像をボリュームレンダリングして3次元画像を得、
得られた3次元画像を表示し、表示された3次元画像上で歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータを検出し、検出された歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータに基づいて、歯根体積指標、歯根表面積指標及び歯根重心指標のうちの少なくとも1つの指標を算出し、かつ算出された前記少なくとも1つの指標に基づいて歯周病の進行状態を検査することを含む歯周病の検査方法。
[2]前記歯根体積指標は、前記歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータに基づいて、健康な歯を支持する歯根体積(V)及び現在の歯を支持する歯根体積(V)を算出し、算出された前記健康な歯を支持する歯根体積(V)に対する前記現在の歯を支持する歯根体積(V)の割合(V/V)として算出された値である前記[1]に記載の歯周病の検査方法。
[3]前記歯根表面積指標は、前記歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータに基づいて、健康な歯を支持する歯根表面積(S)及び現在の歯を支持する歯根表面積(S)を算出し、算出された前記健康な歯を支持する歯根表面積(S)に対する前記現在の歯を支持する歯根表面積(S)の割合(S/S)として算出された値である前記[1]又は[2]に記載の歯周病の検査方法。
[4]前記歯根重心指標は、前記歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータに基づいて、健康な歯を支持する歯根重心(M)及び現在の歯を支持する歯根重心(M)を算出し、算出された前記健康な歯を支持する歯根重心(M)に対する前記現在の歯を支持する歯根重心(M)の割合(M/M)として算出された値である前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の歯周病の検査方法。
本発明によれば、患者に苦痛を与えることなしに歯周病の状態を客観的に示す指標を簡易かつ高精度で得ることが可能な検査方法を提供することができる。また、患者の歯周病の進行状態を示す指標を、患者に苦痛を与えず、手間を掛けずに採取すること、客観的な指標を得るための歯根体積計算法を実際に運用する際に簡易かつ高精度な指示を実現すること、及び自動検出測定の精度を向上させることが可能な検査方法を提供することができる。
本発明の実施の形態に係る歯周病の検査方法を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係る歯周病の検査方法に用いられる、X線撮影装置、計算機及び画像表示装置(モニタ)が接続されたシステムを模式的に示す説明図である。 健康な歯を模式的に示す断面図である。 歯周病の歯を模式的に示す断面図である。 歯槽骨を模式的に示す説明図である。 歯槽骨を模式的に示すX線CT画像である。 a〜hは、患者の歯の複数のX線CT画像であり、aからh側に向かう程、上方側の画像であることを示す。 図6a〜hに示す複数のX線CT画像をボリュームレンダリングした画像である。 歯槽骨頂部を指示するボリュームレンダリング画像の一部である。 図8Aで指示された場所に対応するX線CT画像の番号のX線CT画像であり、歯槽骨頂部に対応する場所が十字線の交点で示される。 歯頚部を指示するボリュームレンダリング画像の一部である。 図9Aで指示された場所に対応するX線CT画像の番号のX線CT画像であり、歯頚部に対応する場所が十字線の交点で示される。 根尖を指示するボリュームレンダリング画像の一部である。 図10Aで指示された場所に対応するX線CT画像の番号のX線CT画像であり、根尖に対応する場所が十字線の交点で示される。 所定番号のX線CT画像での輪郭を示す図である。 所定番号のX線CT画像での輪郭を示す図である。 所定番号のX線CT画像での輪郭を示す図である。 所定番号のX線CT画像での輪郭を示す図である。 所定番号のX線CT画像での輪郭を示す図である。
[実施の形態に係る歯周病の検査方法]
以下、本発明の実施の形態を付図に基いて説明する。ここで、図1は、本発明の実施の形態に係る歯周病の検査方法を示すフローチャートである。図2は、本発明の実施の形態に係る歯周病の検査方法に用いられる、X線撮影装置、計算機及び画像表示装置(モニタ)が接続されたシステムを模式的に示す説明図である。
図1に示すように、本発明の歯周病の検査方法は、人又は動物の歯を歯科用X線によって撮像して複数の歯科用X線CT画像を得、得られた複数の歯科用X線CT画像をボリュームレンダリングして3次元画像を得、得られた3次元画像を表示し(S−1工程)、表示された3次元画像上で歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータを検出し(S−2工程、S−3工程、S−4工程)、検出された歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータに基づいて、歯根体積指標、歯根表面積指標及び歯根重心指標のうちの少なくとも1つの指標を算出し(S−5工程、S−6工程、S−7工程)、かつ算出された少なくとも1つの指標に基づいて歯周病の進行状態を検査することを含むものである。また、図2に示すように、本発明の歯周病の検査方法においては、例えば、X線撮影装置20、計算機(PC)21及び画像表示装置(モニタ)22、23が接続されたシステムが用いられる。X線撮影装置20は歯周病患者の患部を撮影する。計算機(PC)21は撮影されたX線CT画像を取り込んでボリュームレンダリングして得た3次元画像を画像表示装置(モニタ)22、23に表示させる。画像表示装置(モニタ)22、23で表示された3次元画像上で歯頸部、根尖、歯槽骨頂部を決定し、例えば、ライトペン24によって3次元画像上で指示する。ライトペン24の代わりにカーソルで指示してもよい。
(CT画像ボリュームレンダリング表示工程:S−1工程)
本発明の歯周病の検査方法は、まず、人又は動物の歯を歯科用X線によって撮像して歯科用X線CT画像を得、得られた歯科用X線CT画像をボリュームレンダリングして3次元画像を得、得られた3次元画像を表示する。
人又は動物の歯を歯科用X線によって撮像して複数の歯科用X線CT画像を得るためには、上述のシステムが用いられるが、X線CT画像では、図3、4に示すように、歯槽骨35は撮影されるが、歯茎32はほとんど撮影されない。歯30は歯槽骨35と歯茎(歯肉)32で支持されており、健康な歯30では歯頸部33と歯茎頂部46が一致し、歯茎32は歯頸部33まで密着し、歯30を支持している。歯周病の歯30では、歯茎が歯から剥離し、ポケット45が生成されるとともに重症の場合は血とウミ48が滲出し、歯茎頂部46からポケット45の底部までは歯30を支持することができない。同時に歯茎頂部46は歯頸部歯33よりも低下し、歯周病が進行すると歯槽骨35も溶け出し、歯槽骨35、歯茎32ともに歯30の支持力が低下していく。
次に、得られた複数の歯科用X線CT画像をボリュームレンダリングして3次元画像を得るが、図6a〜hに、得られた患者の歯の複数のX線CT画像を示し、aからh側に向かう程、上方側の画像であることを示す。図7に、図6a〜hに示す複数のX線CT画像をボリュームレンダリングした画像を示す。図6a〜h及び図7に示すように、S−1工程の場合、例えば、患者の歯の複数のX線CT画像61からボリュームレンダリングした3次元画像71を画像表示装置22に表示する。この場合、画像71のもとになったX線CT画像61も画像表示装置23に表示する。1台の画像表示装置22に両画像を同時又は切替え表示してもよい。なお、図6a〜hは、0.5mm間隔で撮影したおよそ500枚のX線CT画像のうち、100枚目〜450枚目までの50枚ごとの画像の例を示す。全部のX線CT画像61からボリュームレンダリングしたものが3次元画像71である。
ここで、X線CT画像について説明する。X線CT画像とは、コンピュータを利用してデータを取得し、画像の再構成によって得られた断層写真画像をいい、特に歯科用X線CTの場合は、短時間のX線照射による、歪みの少ない繊細な画像を断面で観察できるようになっている。顎、歯、口腔領域など頭頚部の硬組織、またその周辺組織の3次元画像による精密な診断・検査が可能となったため、インプラント治療、顎関節、根尖病巣等の診断・検査・治療に効果を発揮し、さらに短時間のX線照射であるので、従来のCTよりも被爆量も少なくなり、より安全で確実な治療を行うことができるようになっている。その装置の分解能は、ほぼ0.1mm〜0.5mmである。
次に、ボリュームレンダリングについて説明する。通常、3次元画像を表示する場合は、ポリゴンを土台とし表面にテキスチャを貼付け、物体表面の様子を描画する。ボリュームレンダリングはこの手法とは異なり、空間の3次元格子(ボクセル)の密度データ(ボリュームデータ)を色、濃度等で表現し、直接3次元グラフィックス化して表現する。3次元モデルは作成することなく、密度を色、濃度等で表現する。このように視点を変えてボリュームレンダリングすることにより、視点を横にしたり、斜め上方、下方等とした画像を表示することができる。即ち、横から見たり、斜め方向から見た画像が見えることになる。図5Bに示す2次元X線画像52上で指示するのに比べ、視点を変えて確認することにより、所望の場所を正確に検知し指示することができるという利点がある。ただし、視点を変えるたびにレンダリング計算を行う必要があり、処理負荷が重くなるという問題がある。従って、ボリュームレンダリングは、ハードウェアの進歩により、実時間で視点を変更することが可能になったことによって普及してきた方法であるといえる。
(歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部検出(指示)工程:(S−2、S−3、S−4工程)
次に、画像表示装置22,23に表示された2次元画面上で歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータを検出(指示)する。この場合、検出は半自動で行う。即ち、操作者がカーソルで指示することによって、計算機21上のソフトウェアが歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のデータを自動検出し、操作者が検出結果の承認、修正をする。以下、さらに具体的に説明する。
まず、指示すべき場所について説明する。図3に示すように、歯頚部33は歯の側面の曲線の曲率変化点を指示する(S−2工程の場合)。健康な歯では歯槽骨の頂部35a付近を歯頚部33とするが、歯周病が進んで歯茎が低下している場合には、歯の側面の曲線を見て曲率変化点を探しそこを歯頚部33とする。根尖34は歯根31の最下点を指示する(S−3工程の場合)。また、図5Aに示すように、歯槽骨頂部51は歯と歯の中間の、白い部分の頂部を指示する(S−4工程の場合)。なお、図3において、歯槽骨頂部は、歯槽骨頂部35aとして示されている。
次に、X線CT画像のボリュームレンダリング画像を使った実際の指示のしかたを図7、図8A、図8B及び図9A、図9Bを用いて説明する。なお、図7は、図6a〜hに示す複数のX線CT画像をボリュームレンダリングした3次元画像である。図8Aは、歯槽骨頂部を指示するボリュームレンダリング画像の一部である。図8Bは、図8Aで指示された場所に対応するX線CT画像の番号のX線CT画像であり、歯槽骨頂部に対応する場所が十字線の交点で示される。図9Aは、歯頚部を指示するボリュームレンダリング画像の一部である。図9Bは、図9Aで指示された場所に対応するX線CT画像の番号のX線CT画像であり、歯頚部に対応する場所が十字線の交点で示される。
上述のように、1台の画像表示装置22は、ボリュームレンダリングした3次元画像71及びもとのX線CT画像61の両方を同時又は切替え等により表示することができる。また、ボリュームレンダリングした3次元画像71は複数のX線CT画像から構成されるもので、視点を変えて表示することができ、ある方向からでは見にくい場所も、視点を変えることにより見やすくすることができる。
以下、画像71上で歯槽骨頂部35a、51を指示する場合を例にとって説明する。図8Aは画像71の一部を表示したもので、歯槽骨頂部81を指示する。指示された場所に対応するX線CT画像は220番であった。220番のX線CT画像である図8Bが表示され、歯槽骨頂部81に対応する場所が十字線91の交点で表示される。同様にして、図9Aで歯頚部82を指示すると、対応するX線CT画像の239番が表示され(図9B)、また、図10Aで根尖83を指示すると、対応するX線CT画像155番が表示される(図10B)。
(歯根体積、歯根表面積、歯根1次モーメントの指標算出工程:(S−5、S−6、S−7工程)
次に、検出(指示)された歯頚部、根尖、歯槽骨頂部、及び必要に応じて歯周ポケット下端のデータに基づいて、歯根体積指標、歯根表面積指標及び歯根1次モーメント指標等のうちの少なくとも1つの指標を算出する。即ち、検出(指示)された歯頚部、根尖、歯茎頂部及び必要に応じて歯周ポケット下部等の各位置を用い、X線CT画像を利用して、歯根体積、歯根表面積及び歯根1次モーメントのうちの少なくとも1つを計算し、かつ対応する指標を算出する。以下、各指標算出工程ごとに、順に説明する。
(歯根体積指標の算出工程:(S−5工程)
まず、健康な状態の歯根体積(V)を以下のように計算する。即ち、歯は歯槽骨35によって支持されているものと考え、歯が健康な状態であった頃の歯槽骨頂部35aから根尖34までの健康部分36の歯根体積を健康な状態の歯根体積(V)とし、これを計算する。例えば、X線CT画像239番からCT画像155番まで、輪郭を自動検出し面積を計算する。これを根尖まで続け、全部の和を実単位に換算し体積(V)とする。面積は輪郭に囲まれた画素の数である。図11Aから図11Eに、X線CT画像239、227、220、190、157番までのそれぞれの輪郭111を示す。図11Eは図11Dの3個の輪郭のうち最大のものが残ったものである。輪郭(歯根)の位置はX線CTスキャンの位置が移動するにつれ、一般に斜めに移動して行くため、最初の位置とは異なることになる。この輪郭に囲まれた内部の画素数を積算する。座標軸は図11Aに示すようにxy軸をとり、z軸を紙面に垂直で向こう向きにとる。この場合、歯根体積(V)は、下記式1で計算することができる。輪郭は輪郭追跡処理等により自動で検出することができる。
次に、現在の歯根体積(V)を以下のように計算する。即ち、歯槽骨頂部35aから根尖34までの健康部分36の歯根体積を現在の歯根体積(V)として計算する。X線CT画像220からCT画像155まで、それぞれの輪郭を自動検出し面積を計算する。この場合、現在の歯根体積(V)は、下記式2で計算することができる。
以上から得られたデータ、健康な状態の歯根体積(V)、現在の歯根体積(V)から歯の状態の指標(歯根体積指標)(K)、即ち、健康な歯を支持する歯根体積(V)に対する現在の歯を支持する歯根体積(V)の割合(V/V)、を下記式3で計算することができる。
歯根体積指標の値は、0から1までの値になり、健康な状態で1に近い値になる。健康な状態の歯でも歯頚部と歯槽骨頂部との高さは一致しないため、健康でも1.0にはならない。従って、例えば、Kが0.8程度までは健康とする。この0.8という値は暫定値であり、今後、多くの実例によって検証し、決定されることになる。このようにして算出された指標に基づいて歯周病の進行状態を検査することができる。
(歯根表面積指標の算出工程:(S−6工程)
歯根表面積は、X線CT画像の輪郭の長さを積算したもので代用することができる。厳密には輪郭の長さではないが、厳密に計算してもほとんど変わらないことから、これで代用することができる。歯根表面積は、下記式4で計算することができる。
健康な状態の歯根表面積(S)、現在の歯根表面積(S)、から、歯の状態の表面積指標(K)、即ち、健康な歯を支持する歯根表面積(S)に対する現在の歯を支持する歯根表面積(S)の割合(S/S)、を下記式5で算出することができる。
も、0から約1.0までの値をとり、1.0に近いほど健康である。このようにして算出された指標に基づいて歯周病の進行状態を検査することができる。
(歯根1次モーメント指標の算出工程:(S−7工程)
1次モーメントは、X線CT画像の面積に根尖からの長さを掛け、積算することによって算出することができる。即ち、下記式6で計算することができる。
健康な状態の歯根1次モーメントM、現在の歯根1次モーメントMから、歯の状態の1次モーメント指標(K)、即ち、健康な歯を支持する歯根重心(M)に対する現在の歯を支持する歯根重心(M)の割合(M/M)を、下記式7で算出することができる。
も0から約1.0までの値をとり、1.0に近いほど健康である。このようにして算出された指標に基づいて歯周病の進行状態を検査することができる。
本発明においては、上述の指標のうち、少なくとも1以上の指標を用いて歯周病の進行状態を検査するが、その組み合わせは、検査時間、検査精度等を種々勘案することによって決定することが好ましい。また、歯周ポケットの深さに基づく指標等の他の指標や他の方法を組み合わせて用いてもよい。
20 X線撮影機
21 計算機(PC)
22 画像表示装置(モニタ)
23 画像表示装置(モニタ)
24 ペンライト
30 歯
31 歯根
32 歯茎(歯肉)
32a 歯根膜
33 歯頸部(曲率変化点)
34 根尖
35 歯槽骨
35a 歯槽骨頂部
36 健康部分
45 ポケット(歯肉溝)
46 歯茎頂部
47 ポケット下端
48 血及び膿
51 歯槽骨頂部
52 2次元X線画像
61 X線CT画像
71 ボリュームレンダリングした3次元画像
81 歯槽骨頂部
82 歯頚部
83 根尖
91 歯槽骨頂部に対応する場所の十字線
111 輪郭

Claims (8)

  1. 計算機が、人又は動物の歯をX線撮影装置によって撮像して複数の歯科用X線CT画像を得たのち、
    前記複数の歯科用X線CT画像を画像表示装置に表示する工程と、
    前記計算機が、前記画像表示装置の2次元画面上に表示された歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のそれぞれの位置データを検出する工程と、
    検出された前記歯頚部の位置データ、前記根尖の位置データ及び前記歯槽骨頂部の位置データに基づいて、前記計算機が、歯根体積指標、歯根表面積指標及び歯根1次モーメント指標のうちの少なくとも1つの指標を算出し、かつ算出された前記少なくとも1つの指標に基づいて歯周病の進行状態を数値化して表示する工程を有することを特徴とする歯周病の検査方法。
  2. 前記歯根体積指標は、前記歯頚部の位置データ、前記根尖の位置データ及び前記歯槽骨頂部の位置データに基づいて、前記計算機が、健康な歯を支持する歯根体積(V)及び現在の歯を支持する歯根体積(V)を算出し、さらに前記健康な歯を支持する歯根体積(V)に対する前記現在の歯を支持する歯根体積(V)の割合(V/V)として算出した値であることを特徴とする請求項1に記載の歯周病の検査方法。
  3. 前記歯根表面積指標は、前記歯頚部の位置データ、前記根尖の位置データ及び前記歯槽骨頂部の位置データに基づいて、前記計算機が、健康な歯を支持する歯根表面積(S)及び現在の歯を支持する歯根表面積(S)を算出し、さらに前記健康な歯を支持する歯根表面積(S)に対する前記現在の歯を支持する歯根表面積(S)の割合(S/S)として算出した値であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歯周病の検査方法。
  4. 前記歯根1次モーメント指標は、前記歯頚部の位置データ、前記根尖の位置データ及び前記歯槽骨頂部の位置データに基づいて、前記計算機が、健康な歯を支持する歯根1次モーメント(M)及び現在の歯を支持する歯根1次モーメント(M)を算出し、さらに前記健康な歯を支持する歯根1次モーメント(M)に対する前記現在の歯を支持する歯根1次モーメント(M)の割合(M/M)として算出した値であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の歯周病の検査方法。
  5. 人又は動物の歯を撮像して複数の歯科用X線CT画像を得るX線撮影装置と、
    前記X線撮影装置によって得られる複数の歯科用X線CT画像を表示するための画像表示装置と、
    前記画像表示装置に表示された前記歯科用X線CT画像上で指示されることによって歯頚部、根尖及び歯槽骨頂部のそれぞれの位置データを検出するためのPC内第1手段と、
    前記検出された前記歯頚部の位置データ、前記根尖の位置データ及び前記歯槽骨頂部の位置データに基づいて、歯根体積指標、歯根表面積指標及び歯根1次モーメント指標のうちの少なくとも1つの指標を算出するためのPC内第2手段と、
    前記算出された前記少なくとも1つの指標に基づいて歯周病の進行状態を数値化して表示するPC内第3手段と
    を有することを特徴とする歯周病の検査装置。
  6. 前記歯根体積指標は、前記歯頚部の位置データ、前記根尖の位置データ及び前記歯槽骨頂部の位置データに基づいて、前記PC内第2手段が、健康な歯を支持する歯根体積(V)及び現在の歯を支持する歯根体積(V)を算出し、さらに前記健康な歯を支持する歯根体積(V)に対する前記現在の歯を支持する歯根体積(V)の割合(V/V)として算出した値であることを特徴とする請求項5に記載の歯周病の検査装置。
  7. 前記歯根表面積指標は、前記歯頚部の位置データ、前記根尖の位置データ及び前記歯槽骨頂部の位置データに基づいて、前記PC内第2手段が、健康な歯を支持する歯根表面積(S)及び現在の歯を支持する歯根表面積(S)を算出し、さらに前記健康な歯を支持する歯根表面積(S)に対する前記現在の歯を支持する歯根表面積(S)の割合(S/S)として算出した値であることを特徴とする請求項5又は6に記載の歯周病の検査装置。
  8. 前記歯根1次モーメント指標は、前記歯頚部の位置データ、前記根尖の位置データ及び前記歯槽骨頂部の位置データに基づいて、前記PC内第2手段が、健康な歯を支持する歯根1次モーメント(M)及び現在の歯を支持する歯根1次モーメント(M)を算出し、さらに前記健康な歯を支持する歯根1次モーメント(M)に対する前記現在の歯を支持する歯根1次モーメント(M)の割合(M/M)として算出した値であることを特徴とする請求項5ないし7の何れか1項に記載の歯周病の検査装置。
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