JP2014178859A - 樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物の選別方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂化合物に導電性を与える導電助剤としてのイオン性化合物を精度良く効率的に選別する。
【解決手段】樹脂化合物に候補となる複数のイオン性化合物を個別に添加混合して前記樹脂に導電性を与えるイオン性化合物を前記複数のイオン性化合物の中から選別する方法である。前記イオン性化合物を前記樹脂化合物に混合した状態で前記イオン性化合物のフリーなアニオンとフリーなカチオンの和(A)を前記イオン性化合物のアニオンとカチオンの和(B)で除したA/Bをフリーイオン率とするとき、前記フリーイオン率を用いて前記複数のイオン性化合物中から前記樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物を選別する。
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂化合物中に混合させることで同樹脂化合物に導電性を与えるための導電助剤であるイオン性化合物を選別する方法に関する。
樹脂化合物に導電性を与える要求は多く、金属やカーボン等の導電性フィラー、界面活性剤等が樹脂化合物の導電助剤として広く用いられている。その中で、イオン性化合物は導電性付与に加えて、長期安定性等の利点を有しており、例えば粘着剤の帯電防止化等の目的で用いられており、様々な導電助剤が開発され利用されている。
イオン性化合物は、アニオンとカチオンの組合せであることから、混合する樹脂化合物に対して最適な組合せを選択することができるが、アニオンとカチオンの選択はこれまでの経験と知見をベースに行われていた。従来の性能を超える新規なイオン性化合物を開発のターゲットとした場合、その合成には時間、労力が多大にかかる。未合成のイオン性化合物を樹脂化合物に加えた際の導電性を事前に評価し選別することができれば、無駄な時間と労力を省くことができる。樹脂化合物の導電助剤には、例えば粘着剤用途であれば相溶性や耐ブリード性など、用途に応じていくつかの要求性能があるが、導電性の評価が最も基本的な要求性能であり重要視される。
新規な化合物の合成前の導電性の評価手法として、シミュレーションを用いる方法が広く行われている。例えば、分子動力学(MolecularDynamics、 以下、MDという。)計算により原子や分子、イオンのミクロな動きを計算し、そこから導電率を推算する方法がある。このMD計算を用いて精度よく樹脂中のイオン性化合物の導電率を算出するには、一般に多くの計算時間が必要となる。導電性評価の手法に適した方法として、このMD計算を用いたイオン伝導性のシミュレーション方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、MD計算を行う際に、前記固体電解質層に含まれる前記イオン以外の特定原子を拘束し、かつ電場を印加することで、固体電解質層におけるイオンの挙動を把握する。またシミュレーションを用いた他の方法として、実験により得られた導電率から、推算式を得る方法がある(例えば、非特許文献1参照。)。
特開2011−232805号公報(要約、請求項1)
Ramesh L. Gardas et al. "Group Contribution Methods for the Prediction of Thermophysical and Transport Properties of Ionic Liquids", AIChE journal, Vol.55, No.5, p.1274-1290, 2009
樹脂化合物の導電助剤では樹脂化合物の動きが重要であるにもかかわらず、固体電解質層に含まれるイオン以外の特定原子を拘束する特許文献1の方法は適切ではない。また帯電防止等の目的で樹脂へ添加されるイオン性化合物の濃度は数質量%程度(1〜10質量%)であり、特許文献1の方法も含め、MD計算をこの濃度で実施しようとすると、特に候補となるイオン性化合物の式量が大きい場合、計算対象が極端に大きくなり、計算時間が膨大となる。また導電率を求める際にMD計算の計算時間を短くするだけでは、精度が悪くなるだけでなく、計算の初期構造によって値が大きくばらつくなど、安定して評価することができない。
また非特許文献1に示される方法では、新たな化合物の場合は推算結果の精度が不明であり、場合によってはパラメータが存在しないために推算できない場合がある。また、イオン液体など単体の評価は行われるが、樹脂化合物に添加する助剤の事例は示されていない。以上のことから、樹脂化合物の導電助剤として導電性に優れるイオン性化合物を精度良く効率的に選別する方法が求められていた。
本発明の目的は、樹脂化合物に導電性を与える導電助剤としてのイオン性化合物を精度良く効率的に選別する方法を提供することにある。
導電助剤としてイオン性化合物を添加された樹脂化合物の導電率は、添加されたイオン性化合物のイオン伝導に寄与するイオンの割合とイオンの動きやすさ(拡散係数)によって得られる値である。本発明者らは、このことから、樹脂化合物の導電性評価においては、添加されたイオン性化合物のイオン伝導に寄与するイオンの割合が、重要なパラメータであり、フリーイオン率がその割合を表すのに適当な指標であることを知見し、本発明に到達した。
本発明の第1の観点は、樹脂化合物に候補となる複数のイオン性化合物を個別に添加、混合して前記樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物を前記複数のイオン性化合物の中から選別する方法である。その特徴ある点は、前記イオン性化合物を前記樹脂化合物に混合した状態で、前記イオン性化合物のフリーなアニオンとフリーなカチオンの和(A)を前記イオン性化合物のアニオンとカチオンの和(B)で除したA/Bをフリーイオン率とするとき、前記フリーイオン率を用いて前記複数のイオン性化合物中から前記樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物を選別することにある。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記フリーイオン率は、前記樹脂化合物の分子と前記候補となるイオン性化合物のアニオン、カチオンを配置した計算セルに対して、MD計算による分子シミュレーションを実施して平衡構造を得た後、前記計算結果に基づいて算出する方法である。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記フリーイオン率を前記イオン性化合物の式量の二乗の値で除して求められる値をスクリーニングパラメータとするとき、前記スクリーニングパラメータの値が少なくとも1×10−5であるイオン性化合物を前記樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物として選別する方法である。ここで、スクリーニングパラメータの値が「少なくとも1×10−5である」とは、スクリーニングパラメータの値が「1×10−5以上である」ことを意味する。
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点のいずれかの観点に基づく発明であって、前記イオン性化合物を前記樹脂化合物に混合した状態で測定した、前記イオン性化合物のアニオンの重心のまわりにおける前記イオン性化合物のカチオンの重心の存在確率の重心間距離による変化をチャートで表すとき、前記チャートの第1のピークの後に現れる極小値における重心間距離を、フリーイオン率を算出するための閾値とする方法である。
本発明の第1の観点の発明によれば、フリーイオン率を用いた選別方法は、厳密な導電率の評価とは異なるが、候補となる複数のイオン性化合物から樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物を選別するには十分に機能する。また未だかつて合成されたことのないイオン性化合物や、市場で入手困難なイオン性化合物に対して事前に評価を行うことができるので、イオン性化合物を選別するまでの労力を省くことができ、かつ効率的に所望のイオン性化合物を選別することができる。
本発明の第2の観点の発明によれば、MD計算を用いて所望のイオン性化合物を選別するのに、従来の導電率を算出する評価方法より計算時間を短縮することができ、しかも平衡構造が得られれば安定した評価を行うことができる。また樹脂化合物の導電助剤を実際に使用する際に、樹脂化合物に対して導電助剤は数質量%添加されるが、その条件でMD計算を行おうとすると、式量が大きな導電助剤では必要な計算セルが大きくなり、計算時間が増加する。これに対して、本発明を用いると、同モル濃度で計算することができ、比較的高濃度な領域の計算に置き換えることができるため、MD計算の計算時間を短くすることができる場合がある。
本発明の第3の観点の発明によれば、スクリーニングパラメータを、導電性を与えるイオン性化合物の選別基準とすることにより、精度良く所望のイオン性化合物を選別することができる。
本発明の第4の観点の発明によれば、MD計算の動径分布関数から求められるチャートからフリーイオン率を算出するための閾値を求めるので、より効率的に所望のイオン性化合物を選別することができる。
本発明の樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物の選別方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の実施例及び比較例の動径分布関数チャートである。よこ軸はイオン性化合物のあるアニオンの重心からの距離rを示し、たて軸はそのrにある動径分布関数で求められる前記イオン性化合物のカチオンの重心の存在確率を示す。(a)は実施例1のチャートであり、(b)は実施例2のチャートであり、(c)は比較例のチャートである。 本発明の実施例と比較例のスクリーニングパラメータの値を示す図である。 実施例及び比較例で用いたイオン性化合物を実際に添加した樹脂化合物で形成した膜の交流インピーダンス法による測定データから導電率を求めるためのフィッティングに用いた等価回路である。 図4に示す等価回路中の抵抗値R及びRを用いて求めた実施例及び比較例の導電率を示す図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
本発明の分子シミュレーションの手法としては、MD計算を利用することができる。
図1に示すように、次のステップに基づいて、フリーイオン率を算出した。
〔候補化合物を含む初期構造の入力〕
先ず、樹脂化合物に相当する分子(以下、樹脂モデルという。)と、この樹脂化合物の導電助剤の候補となるイオン性化合物(以下、候補化合物という。)を構成するアニオンとカチオンを含んだ計算セルを用意する。計算セルを用意する場合には、次の点に留意する。樹脂モデルは、実際に使用する樹脂化合物の分子量が数万以上の場合には、重合度を小さくした分子を用いるとよい。具体的には、重合度が40〜100程度となるようにする。例えば、アクリル樹脂等の導電性付与剤として用いられる、ポリエーテルにイオン性化合物を混合した材料は、非常に類似した構造であるポリエチレンオキシド樹脂(poly(ethylene oxide)、以下、PEOという。)で置き換えて評価することができる。なお、繰り返し構造が複雑な場合で、導電性に寄与する構造部位が分かっている場合は、その部位のみを繰り返し構造とする樹脂モデルを用いることもできる。比較する候補化合物の濃度は揃える必要が有り、樹脂化合物の繰り返し構造と候補化合物のモル比(繰り返し構造/候補化合物)が50〜150の間となるようにする。このようにして初期構造を入力する。
〔NPT条件での平衡構造の計算からNVE条件での本計算の実施〕
計算セルの準備ができた後、MD計算を実施する。MD計算の計算手順は種々の方法がある。初めにMD計算で使われる統計集団について説明する。Nを粒子数、Vを体積、Tを温度、Pを圧力とするとき、N,V,Eが一定の場合を小正準集団(microcanonical ensemble)又はNVEアンサンブルといい、N,V,Tが一定の場合を正準集団(canonical ensemble)又はNVTアンサンブルといい、N,P,Tが一定の場合を定温−定圧集団(isothermal-isobaric ensemble)又はNPTアンサンブルという。
初期構造を入力した後、NPTアンサンブルで構造の平衡化を行う(以下、平衡計算という。)。ここで平衡計算が収束した否かを見極める。収束しなければ、再度NPTアンサンブルで平衡構造の計算を行う。平衡計算が収束すれば、NVEアンサンブルでスクリーニング時に指標となるパラメータを求めるための計算(以下、本計算という。)を行う。本計算は最低でも10ns(nano second、以下同じ。)程度の計算がシミュレーションでは必要である。NVEアンサンブルの代わりにNVTアンサンブルで行ってもよい。
〔フリーイオン率の算出〕
次に、本計算の計算結果を用いて、フリーイオン率を算出する。フリーイオン率とは、前述したように、イオン性化合物を樹脂化合物に混合した状態で、このイオン性化合物のフリーなアニオンとフリーなカチオンの和(A)をこのイオン性化合物のアニオンとカチオンの和(B)で除したA/Bをいう。フリーイオン率は、後述するように本計算内のあるステップにおいて、アニオンとカチオンの距離を調べ、その距離が閾値以上にあるアニオンとカチオンの数を求めることにより算出することができる。
〔フリーイオン率が安定した値を示しているか否かの確認〕
フリーイオン率の値は、時間とともに変動するので、時間とフリーイオン率の関係を描き、シミュレーションにおける計算の最後の5ns以上において値が一定か、若しくはある値を基準に上下に振動していることを確認しておく。即ち、フリーイオン率が変動する場合は、その変動が±10%以下であることを確認する。
〔5nsでのフリーイオン率の平均値の算出〕
次に、上記5nsの間のフリーイオン率の平均値を算出する。このとき、値が時間とともに増大、又は減少している傾向が見られる場合は、安定した値を示すまで計算を進める。結果が安定したところで、5nsの間のフリーイオン率の平均値を算出する。
〔スクリーニングパラメータの値の算出〕
続いて、そのフリーイオン率を候補化合物の式量の二乗の数字で除することで得られるスクリーニングパラメータの値を算出する。
〔上記値が基準値以上であるかの確認〕
更に続いて、上記で得られた値が基準値以上であるか否か判断する。この実施の形態では、1×10−5を基準値とする。この基準値は、PEOなどのポリエーテルに対してイオン性化合物を実用的な範囲で添加したとき、23℃での導電率が2×10−7S/cm以上となるような目安として設定した。基準値以上であれば、この候補化合物は樹脂化合物に導電性を与える化合物として選別しフローを終了する。基準値以上のイオン性化合物でなければ、この候補化合物は樹脂化合物に導電性を与える化合物でないと判断し、別の候補化合物について、上記最初のステップから行う。
〔フリーイオン率を算出するための閾値〕
前述した、フリーイオン率を求めるための距離の閾値は、本計算の結果から動径分布関数(RadialDistribution Function、以下、RDF(g(r))という。)から次の方法により求める。候補化合物であるイオン性化合物を樹脂化合物に混合した状態でRDFにより測定した、イオン性化合物のアニオンの重心のまわりにおける同イオン性化合物のカチオンの重心の存在確率の重心間距離による変化をチャートに描く。このとき、たて軸はg(r)であり、よこ軸は上記重心間距離rである。このチャートの第1ピーク後の変曲点の値Gがイオン対の第一近接距離の最大値であり、Gより近い領域ではイオンは解離しておらず、導電に寄与しないと考えられ、G以遠ではイオンは解離しており、導電に寄与すると考えられる。このことからGを閾値とするのが好ましい。アニオン若しくはカチオンが単純な構造である場合、その酸性基、塩基性基の中心の元素同士の距離でRDFを描き、閾値を決定しても良い。酸性基、塩基性基の中心の元素とは、より具体的には、スルホン酸であればS(硫黄)、カルボン酸であればC(炭素)、イミドであればN(窒素)、メチドであればC(炭素)である。この実施の形態では、RDF(g(r))の第1ピーク後の変曲点の値が7Åを超える場合は、7Åを閾値とする。
MD法では計算時に用いられるパラメータ(力場)も種々のものを利用することができる。一方で、イオン性化合物の解離や移動現象を評価、例えば、電池電解質中でのイオンの挙動の評価を行うことを目的としたプログラムや力場を用いることで、スクリーニングの精度を格段に高めることができる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1、実施例2及び比較例>
樹脂化合物であるPEOに対して導電性を与える次の3つの候補化合物のスクリーニング(選別)を実施した。
実施例1:CF3SO3Li
実施例2:(CF3SO2)2NLi
比較例:(C49SO2)2NLi
〔MD計算によるスクリーニング〕
先ず、上記3つの候補化合物のスクリーニングを行うためにMD計算をそれぞれ実施した。MD計算にはWMI−MDプログラムとAPPLE&P力場 (Wasatch Molecular社製)を用いた。なお1ステップあたり最小の刻み幅は0.5fs(femto second)として計算を実施した。ここでは、計算を簡素化するためにエチレンオキシド基(−CH2CH2O−)の繰り返し構造が54である樹脂モデルを用いた。
計算セルとして、樹脂モデルを12個、候補化合物のアニオンとカチオンを8個ずつ導入したセルを用意した。初期構造を作るために、一辺180Åのセルとした。その後NVTアンサンブルにて0.3nsかけて徐々にセル定数を強制的に小さくし、PEO樹脂の実密度(1.2g/cm)となるセル定数まで小さくした。この時の温度は750Kとした。得られた結果を初期構造として、NPTアンサンブルで、296Kで0.6ns計算を実施し、セル定数が一定の値に安定していることを確認して、平衡状態に達したと判断した。更に上記の平衡構造を用いてNVTアンサンブルで、296Kにて10〜15nsの本計算を実施した。
本計算を実施した後、アニオンとカチオンの重心間距離について、動径分布関数を記載して、第1ピーク後の変曲点の位置を調べ、フリーイオン率を算出するための閾値を得た。その結果、図2(a)に示すように、実施例1については4.8Åの閾値が得られ、図2(b)に示すように、実施例2については5.3Åの閾値が得られ、図2(c)に示すように、比較例については6.2Åが得られた。
次に候補化合物のフリーイオン率を調べた。上記で得られた基準を基にアニオン、カチオンがフリーであるかを判断した。より具体的には、実施例1であれば、各ステップ毎に、全てのアニオンとカチオンについて重心間距離を調べ、基準値以下か以上かを調べた。基準値以下の値が一つでもあればフリーではないと判断し、そうでなければフリーと判断した。その後、フリーな個数を全イオン数で割ることで、あるステップにおけるフリーイオン率を算出した。
実施例1,2、比較例の全ての計算ステップにおいてこれを実施し、時間とフリーイオン率の関係を調べた。計算の最後の5nsで値が安定していることを確認した。そこで最後の5ns間のフリーイオン率を時間に対して平均化した値を得た。更にそのフリーイオン率を各イオン性化合物の式量の二乗で除し、スクリーニングパラメータの値を得た。図3に、得られたスクリーニングパラメータの結果を示す。図3から明らかなように、比較例のスクリーニングパラメータは2×10−6であり、基準値を下回り、その候補化合物である(CSO)NLiは選択すべきでないと判断できる。その一方、実施例1及び2のスクリーニングパラメータはともに基準値の1×10-5を超えており、その候補化合物であるCFSOLi及び(CFSO)NLiはPEOに対して導電性を与えるイオン性化合物として選択すべきであると判断できる。
<スクリーニング結果の検証>
上記スクリーニング結果を検証するために、実施例1、2及び比較例と同じPEOに上記3つの候補化合物を添加剤として実際にそれぞれ添加することにより、PEO膜を作製した。ここで、添加量はそれぞれ2質量%とした。以下、PEO(分子量200万、和光純薬製)は60℃、候補化合物(三菱マテリアル電子化成社製)は100℃でそれぞれ1日加熱乾燥を行ったものを使用した。先ず、乾燥窒素で満たしたグローブボックス内でPEO5.00gに対し添加剤0.01gを加え、20分間乳鉢で混合した。続いて2枚の厚さ500μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートの間に混合した粉末試料を挟みこみ、ホットプレス法によりPEO膜を作製した。具体的には、ホットプレスの上プレスと下プレスの間に試料を配置し、空気中で85℃で10分間無加圧で試料を加熱することによりPEOを溶融させた後、溶融したPEOを85℃、10MPaで1時間熱圧プレスした。そして冷却プレスに移し、5分10MPaで冷圧プレスすることでPEO膜を作製した。作製した3つのPEO膜は真空デシケータに保管した。
作製した3つのPEO膜の導電率を乾燥窒素雰囲気において交流インピーダンス法により測定した。まずクイックコーター(サンユー電子社製、製品名:SC-701MCY)でPEO膜の表面に厚さ0.35μmの金電極を蒸着した後、およそ1.5cm角の膜片を切り出し、測定を行った。装置は、ポテンショ/ガルバノスタット(東陽テクニカ社製、製品名:Versa STAT 4)を用い、0.3Hz〜1MHzの範囲でデータを得た。得られたデータに対して図4に示す等価回路(R,Rは抵抗を表し、C,C,Cはコンデンサを表す。)でフィッティングを行い、体積抵抗率R(=R+R)[Ωcm]を得て、その逆数である導電率[S/cm]の値を得た。図5に実施例1、実施例2及び比較例の上記実験で求めた結果を示す。
実施例1、実施例2は比較例に比較して5倍程度の導電率を有しており、前述した実施例のスクリーニング方法で選別されたイオン性化合物を添加した樹脂化合物が、高い導電性を有することが示された。以上のことから、MD計算を用いたシミュレーションにより、精度良く効率的に樹脂化合物に優れた導電性を与えるイオン性化合物をスクリーニングできることが判った。

Claims (4)

  1. 樹脂化合物に候補となる複数のイオン性化合物を個別に添加、混合して前記樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物を前記複数のイオン性化合物の中から選別する方法であって、前記イオン性化合物を前記樹脂化合物に混合した状態で、前記イオン性化合物のフリーなアニオンとフリーなカチオンの和(A)を前記イオン性化合物のアニオンとカチオンの和(B)で除したA/Bをフリーイオン率とするとき、前記フリーイオン率を用いて前記複数のイオン性化合物中から前記樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物を選別する方法。
  2. 前記フリーイオン率は、前記樹脂化合物の分子と前記候補となるイオン性化合物のアニオン、カチオンを配置した計算セルに対して、分子動力学計算による分子シミュレーションを実施して平衡構造を得た後、前記計算結果に基づいて算出する請求項1記載の方法。
  3. 前記フリーイオン率を前記イオン性化合物の式量の二乗の値で除して求められる値をスクリーニングパラメータとするとき、前記スクリーニングパラメータの値が少なくとも1×10−5であるイオン性化合物を前記樹脂化合物に導電性を与えるイオン性化合物として選別する請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記イオン性化合物を前記樹脂化合物に混合した状態で測定した、前記イオン性化合物のアニオンの重心のまわりにおける前記イオン性化合物のカチオンの重心の存在確率の重心間距離による変化をチャートで表すとき、前記チャートの第1のピークの後に現れる極小値における重心間距離を、フリーイオン率を算出するための閾値とする請求項1ないし3いずれか1項に記載の方法。
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