JP2014176400A - 便蓋 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂組成物の射出成形にて成形される便蓋において、反りの発生および流れムラの発生を抑制し、外観良好性の低下を抑制することを目的とする。
【解決手段】樹脂組成物の射出成形にて成形される便蓋であって、縦方向の両端部である先端部および基端部、並びに、これら両端部をつなぐ一対の側部を有する蓋本体と、前記先端部および両方の前記側部の外周に連続的に設けられ、前記蓋本体の表面から前記蓋本体の裏面側に向かって立ち上がる形状となっている側壁部と、を備え、前記蓋本体の前記基端部の中央に、前記射出成形時における前記樹脂組成物の注入口が設定され、さらに、前記蓋本体は、前記蓋本体の他の部分よりも厚みが厚くなっている厚肉部が設けられており、前記厚肉部の中心が前記蓋本体における横方向の中央かつ縦方向の中央より前記先端部側に位置することを特徴とする便蓋。
【選択図】 図1
【解決手段】樹脂組成物の射出成形にて成形される便蓋であって、縦方向の両端部である先端部および基端部、並びに、これら両端部をつなぐ一対の側部を有する蓋本体と、前記先端部および両方の前記側部の外周に連続的に設けられ、前記蓋本体の表面から前記蓋本体の裏面側に向かって立ち上がる形状となっている側壁部と、を備え、前記蓋本体の前記基端部の中央に、前記射出成形時における前記樹脂組成物の注入口が設定され、さらに、前記蓋本体は、前記蓋本体の他の部分よりも厚みが厚くなっている厚肉部が設けられており、前記厚肉部の中心が前記蓋本体における横方向の中央かつ縦方向の中央より前記先端部側に位置することを特徴とする便蓋。
【選択図】 図1
Description
本発明は、便器に取り付けられた便座を覆うために設けられる便蓋に関する。
腰掛式便器(以下、単に「便器」と略す。)または当該便器に設置された衛生洗浄装置、便座装置、局部洗浄装置等(以下、衛生洗浄装置等と称する。)の付属機器には、使用者が着座する便座と、当該便座を覆う便蓋とが設けられている。これら便座および便蓋は、それぞれ起立位置と倒伏位置との間で、それぞれ別個に、または、両者一緒に回動可能となっている。このうち便蓋としては、一般に、樹脂組成物の成形体(以下、適宜「樹脂成形体」と称する。)が広く用いられている。
便蓋は、倒伏位置で便座および便器内部を覆うものであることから、使用者は倒伏位置で便蓋の表面(外面)を目視することになる。したがって、便蓋には、少なくとも表面(外面)の外観が良好(以下、「外観良好性」と称する。)であることが求められる。
従来から、便蓋の外観良好性を得るための種々の成形法・加工法が使用されている。例えば、特許文献1には、便蓋を含む便器付属品において、その着座表面に滑らかさを確保しつつ耐久性に富む装飾を施すことを目的とする技術が開示されている。具体的には、特許文献1に開示の便座付属品は、合成樹脂からなる本体に、透明性を有する基材の裏面に印刷インキからなる印刷層が形成されたシートを、前記基材の表面を前記本体の表面に露出させて一体成形した構成を有している。
また、便蓋等の部材の表面に、各種塗料または被覆材料を塗装する技術が広く知られている。この技術は、特許文献1のように、便蓋等の部材の表面に、シートを積層することで被覆層を形成するのではなく、塗装によって被覆層を形成するものである。
しかしながら、特許文献1に開示されるようなシートを積層する技術、あるいは、各種塗料等を塗装する技術は、いずれも便蓋を製造する上で製造コストの増加を招くことになる。
すなわち、シートを積層する技術では、便蓋本体の材料となる樹脂組成物以外に、シートという「表面材料」を必要とすることに加え、シートを便蓋本体に一体成形するための工程を追加する必要がある。この場合、製造コストの増加だけでなく、製造工程の煩雑化を招くおそれがある。また、各種塗料等を塗装する技術では、塗料または被覆材料が別途必要になることに加え、塗装方法の種類によらず塗装工程が確実に追加される。
そこで、工程を増やさずに、安価に便蓋の外観良好性を向上させるための技術として、加飾目的の顔料・フィラーを添加した樹脂組成物を使って射出成形する技術が知られている(特許文献2)。特許文献2には、便器または衛生洗浄装置等に設けられる樹脂成形体としての便蓋において、ウェルドラインの発生による外観良好性の低下を有効に回避する技術が開示されている。具体的には、蓋本体の基端部の中央部には、射出成形時における樹脂組成物の注入口が設定され、さらに、前記蓋本体における横方向の中央部には、前記基端部から先端部の手前まで縦方向に沿って帯状に延伸している部位であって、前記蓋本体の他の部位よりも厚みが厚くなっている部位である、厚肉部が設けられている構成を有している。特許文献1に開示されるようなシートを積層する技術や、各種塗料等を塗装する技術では、形状の制約事項が生じるが、この技術では、形状の制約も生じない。
しかしながら、特許文献2に開示される技術では、注入口付近にも厚肉部が設けられており、注入された樹脂組成物が金型内で固化する際に、収縮による残留応力が生じやすく、且つ、射出成形時に注入時に加わる充填圧力がかかりやすくなるため、蓋本体の基端部および基端部側の側壁部において、反りが大きく発生してしまうという問題があった。すなわち、厚肉部の成形収縮および注入圧力の影響を受けやすく、成形体に残留歪みが生じやすくなった結果、反りが大きく発生する。
また、蓋本体における横方向の中央部には、基端部から先端部の手前まで縦方向に沿って帯状に延伸して厚肉部が設けられているため、射出成形時において、蓋本体では注入される樹脂組成物に流動速度の差が生じやすい。その結果、充填される樹脂組成物にせん断応力が発生するため、フィラー配向による流れムラが発生してしまうという問題があった。
また、蓋本体における横方向の中央部には、基端部から先端部の手前まで縦方向に沿って帯状に延伸して厚肉部が設けられているため、射出成形時において、蓋本体では注入される樹脂組成物に流動速度の差が生じやすい。その結果、充填される樹脂組成物にせん断応力が発生するため、フィラー配向による流れムラが発生してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、樹脂組成物の射出成形にて成形される便蓋において、反りの発生および流れムラの発生を抑制し、外観良好性の低下を抑制することを目的とする。
本発明に係る便蓋は、樹脂組成物の射出成形にて成形される便蓋であって、縦方向の両端部である先端部および基端部、並びに、これら両端部をつなぐ一対の側部を有する蓋本体と、前記先端部および両方の前記側部の外周に連続的に設けられ、前記蓋本体の表面から前記蓋本体の裏面側に向かって立ち上がる形状となっている側壁部と、を備え、前記蓋本体の前記基端部の中央に、前記射出成形時における前記樹脂組成物の注入口が設定され、さらに、前記蓋本体は、前記蓋本体の他の部分よりも厚みが厚くなっている厚肉部が設けられており、前記厚肉部の中心が前記蓋本体における横方向の中央かつ縦方向の中央より前記先端部側に位置する。
このような構成によると、蓋本体の基端部の中央に樹脂組成物の注入口が設定されており、さらに、蓋本体は、蓋本体の他の部分よりも厚みが厚くなっている厚肉部が設けられており、厚肉部の中心が蓋本体における横方向の中央かつ縦方向の中央より先端部側に位置する。
これにより、厚肉部は、注入口が設定されている蓋本体の基端部には設けられていないため、蓋本体の基端部および蓋本体の基端部側における側壁部に反りが発生するのを抑制することができるとともに、蓋本体において、樹脂組成物の流動速度の差である流れムラによって発生する外観良好性の低下を抑制することができる。
これにより、厚肉部は、注入口が設定されている蓋本体の基端部には設けられていないため、蓋本体の基端部および蓋本体の基端部側における側壁部に反りが発生するのを抑制することができるとともに、蓋本体において、樹脂組成物の流動速度の差である流れムラによって発生する外観良好性の低下を抑制することができる。
また、本発明に係る便蓋においては、好ましくは、前記厚肉部の外周の少なくとも一部には、徐々に厚みが小さくなるテーパ部が設けられている。
これにより、厚肉部から便蓋本体の他の部分への樹脂組成物の流れの広がりをより円滑なものとすることができる。また、厚肉部と便蓋本体の他の部分との間に大きな段差が生じることを回避できる。
これにより、厚肉部から便蓋本体の他の部分への樹脂組成物の流れの広がりをより円滑なものとすることができる。また、厚肉部と便蓋本体の他の部分との間に大きな段差が生じることを回避できる。
また、本発明に係る便蓋においては、好ましくは、前記側壁部において、前記先端部側の前記側壁部の厚みは、前記側壁部の他の部分の厚みよりも薄い。
これにより、先端部側の側壁部に対応する領域において、溶融した樹脂組成物の流れを側壁部の他の部分に対応する領域よりも遅れらせることができる。そのため、溶融した樹脂組成物の流れのうち、樹脂組成物の注入口から、先端部側の側壁部および先端部側の側壁部以外の側壁部に対応する領域を通って、先端部に対応する領域へと流れるタイミングが、樹脂組成物の注入口から、厚肉部に対応する領域を通って、先端部に対応する領域へと流れるタイミングに近づく。よって、先端部において溶融した樹脂組成物が会合する流れムラによって発生する外観良好性の低下を抑制することができる。また、全体的に側壁部の厚みが同等な構成に比べて樹脂組成物の量が少なくなるため、厚肉部の存在による樹脂組成物の増量を回避し、便蓋の重量の増加を抑制することが可能となる。
これにより、先端部側の側壁部に対応する領域において、溶融した樹脂組成物の流れを側壁部の他の部分に対応する領域よりも遅れらせることができる。そのため、溶融した樹脂組成物の流れのうち、樹脂組成物の注入口から、先端部側の側壁部および先端部側の側壁部以外の側壁部に対応する領域を通って、先端部に対応する領域へと流れるタイミングが、樹脂組成物の注入口から、厚肉部に対応する領域を通って、先端部に対応する領域へと流れるタイミングに近づく。よって、先端部において溶融した樹脂組成物が会合する流れムラによって発生する外観良好性の低下を抑制することができる。また、全体的に側壁部の厚みが同等な構成に比べて樹脂組成物の量が少なくなるため、厚肉部の存在による樹脂組成物の増量を回避し、便蓋の重量の増加を抑制することが可能となる。
また、本発明に係る便蓋においては、好ましくは、前記先端部側の前記側壁部における前記蓋本体につながる部分は、前記先端部側の前記側壁部における前記蓋本体と離れている先縁よりも厚みが厚い。
これにより、蓋本体の先端部において樹脂組成物が会合する流れムラによって発生する外観良好性の低下を抑制することができる。
これにより、蓋本体の先端部において樹脂組成物が会合する流れムラによって発生する外観良好性の低下を抑制することができる。
また、本発明に係る便蓋においては、好ましくは、前記樹脂組成物には、フィラーが含まれており、前記フィラーが成形体に光輝感を与えるものである。
これにより、便蓋の表面を塗装したり、シートを積層したりせずに、便蓋の表面に光輝感を与えることができる。また、光輝感を与えるフィラーが含まれている便蓋において、流れムラが発生した場合この流れを目視で認識しやすいが、厚肉部を有することにより、蓋本体において樹脂組成物を流動する際に流動速度の差である流れムラの発生が低減されるので、流れムラによって光輝感を有する便蓋の外観良好性が低下するおそれを回避することができる。
これにより、便蓋の表面を塗装したり、シートを積層したりせずに、便蓋の表面に光輝感を与えることができる。また、光輝感を与えるフィラーが含まれている便蓋において、流れムラが発生した場合この流れを目視で認識しやすいが、厚肉部を有することにより、蓋本体において樹脂組成物を流動する際に流動速度の差である流れムラの発生が低減されるので、流れムラによって光輝感を有する便蓋の外観良好性が低下するおそれを回避することができる。
本発明によれば、樹脂組成物の射出成形にて成形される便蓋において、反りの発生および流れムラの発生を抑制し、外観良好性の低下を抑制することができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
[便蓋の基本構成]
まず、本実施の形態に係る便蓋の基本構成について図1〜図3を用いて具体的に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る便蓋54は、板状の蓋本体41と、この蓋本体41の外周に設けられる側壁部42とを備えている。便蓋54は、便座およびボール内部を覆うために用いられるので、少なくとも便座に対応した形状を有している。一般的に便座は、便器内につながる中空部を有する略半楕円状の環状構造であるため、便蓋54(蓋本体41)の形状も略半楕円状となっている。図1においては、便蓋54は、裏面が図中上側を向き、表面は図中下側を向いており図示されていない。
まず、本実施の形態に係る便蓋の基本構成について図1〜図3を用いて具体的に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る便蓋54は、板状の蓋本体41と、この蓋本体41の外周に設けられる側壁部42とを備えている。便蓋54は、便座およびボール内部を覆うために用いられるので、少なくとも便座に対応した形状を有している。一般的に便座は、便器内につながる中空部を有する略半楕円状の環状構造であるため、便蓋54(蓋本体41)の形状も略半楕円状となっている。図1においては、便蓋54は、裏面が図中上側を向き、表面は図中下側を向いており図示されていない。
ここで、便蓋54は、衛生洗浄装置または便器に開閉可能に取り付けられるが、便蓋54が倒伏位置にある状態は、便蓋54が閉じた状態であり、便蓋54が起立位置にある状態が、便蓋54が全開した状態である。それゆえ、便蓋54の裏面とは、便蓋54が閉じた状態にあるときに、便器に向いた側となる面を指す。また、便蓋54の表面とは、裏面の反対側の面であり、便蓋54が閉じた状態にあるときに使用者からみえる面を指す。なお、便蓋54が倒伏位置から起立位置へ向かって回動することを「開く」と称し、起立位置から倒伏位置へ向かって回動することを「閉じる」と称する。
蓋本体41は、その長手方向を縦方向と定義し、縦方向に直交する方向を横方向と定義すると、縦方向の両端部の一方が先端部41a、他方が基端部41bとなるとともに、これら先端部41aおよび基端部41bをつなぐ両側の部位が側部41cとなる。先端部41aは、その外周形状が放物線状または弧状に突出する形状(突出形状)となっており、基端部41bは、その外周形状が横方向に広がる形状(平坦形状)となっている。先端部41aおよび基端部41bがこのような形状を有していることで、蓋本体41は略半楕円形状となっている。
なお、図1において破線で囲んだ部位Pgは、基端部41bの中央部である。この部位Pgが射出成形時における樹脂組成物の注入口(射出ゲート)となる。
なお、図1において破線で囲んだ部位Pgは、基端部41bの中央部である。この部位Pgが射出成形時における樹脂組成物の注入口(射出ゲート)となる。
側壁部42は、図1に示すように、先端部41aおよび両側の側部41cの外周に連続的に設けられ、図2(a)および図3に示すように、蓋本体41の表面側から裏面側に向かって立ち上がる壁状の部分となっている。なお、側壁部42の内面は蓋本体41の裏面に向いている面であり、側壁部42の外面は、その反対側の面である。側壁部42の外面は、蓋本体41の表面と連続して便蓋54全体の表面(外面)を形成している。
なお、図2(a)は、図1に示す便蓋54の縦方向の断面図、具体的には、図1におけるX−X矢視断面図に相当する。また、図3は、図1に示す便蓋54の横方向の断面図、具体的には、図1におけるY−Y矢視断面図に相当する。
蓋本体41および側壁部42の具体的な構成は特に限定されず、例えば、長方形状であってもよいし、楕円形の長手方向(長径に沿った方向)の端部の一方を切り欠いたような形状であってもよい。また、基端部41bの平坦形状は、図1に示すように、横方向に直線状となっている必要はなく、先端部41aに向かってゆるやかに凹むように湾曲する形状であってもよいし、逆に、先端部41aの側からゆるやかに突出するように湾曲する形状であってもよいし、段差等を含んでいてもよい。
また、蓋本体41は、本実施例においては、図1に示すように、部分的に湾曲した部分を有している。これは、便蓋54が衛生洗浄装置または便器に取り付けられた状態で便座を覆う目的で用いられることから、便蓋54を取り付ける構造体(衛生洗浄装置の本体部または便座および便蓋の開閉機構)の種類、便座の形状等の条件に合わせて、当該便蓋54(特に蓋本体41)の形状が決定されるためである。したがって、蓋本体41の形状は、平坦な板状に限定されず、種々の湾曲部位、凹凸部位、段差部位等を含んでもよい。また、本実施の形態では、蓋本体41が、前記湾曲部位、凹凸部位、または段差部位等を含んでいても、便座を覆う二次元に広がる形状を有していることから、「板状」と称するものとする。
側壁部42の具体的な構成は、図4に示すように、先端部41a側の側壁部42aの厚みは、側壁部42の他の部分42bの厚みよりも薄く形成されている。そのため、先端部41a側の側壁部42aに対応する領域では、先端部41a側の側壁部42aに対応する領域以外の側壁部42bに対応する領域よりも溶融した樹脂組成物の流れを遅れらせることができる。そのため、溶融した樹脂組成物の流れのうち、樹脂組成物の注入口Pgから、先端部41a側の側壁部42aおよび先端部41a側の側壁部42a以外の側壁部42bに対応する領域を通って、先端部41aに対応する領域へと流れるタイミングが、樹脂組成物の注入口Pgから、厚肉部412に対応する領域を通って、先端部41aに対応する領域へと流れるタイミングに近づく。よって、先端部41aにおいて溶融した樹脂組成物が会合する流れムラによって発生する外観良好性の低下を抑制することができる。また、全体的に側壁部42の厚みが略均一な構成と比較して、樹脂組成物の量を低減することができる。そのため、便蓋54の軽量化を図ることが可能となる。特に、後述するように、蓋本体41には厚肉部412が設けられているが、この厚肉部412の存在による樹脂組成物の増量を回避し、便蓋54の重量の増加を抑制することが可能となる。
なお、図4(a)、(b)は、それぞれ図1におけるZ1−Z1矢視断面図、Z2−Z2矢視断面図に相当する。また、図4(a)、(b)に示す側壁部42は、蓋本体41につながる部分から蓋本体41aと離れている先縁42sにかけて厚みがほぼ等しい構成となっている。
なお、図4(a)、(b)は、それぞれ図1におけるZ1−Z1矢視断面図、Z2−Z2矢視断面図に相当する。また、図4(a)、(b)に示す側壁部42は、蓋本体41につながる部分から蓋本体41aと離れている先縁42sにかけて厚みがほぼ等しい構成となっている。
また、図4(a)に示した先端部41a側の側壁部42aの変形例として、図5(a)、(b)、(c)などが挙げられる。図5(a)、(b)、(c)に示すように、先端部41a側の側壁部42a(本実施例では、蓋本体41における縦方向において、蓋本体41に形成された厚肉部412の中心より先端部41a側の側壁部42)は、蓋本体41につながる部分の厚みが、蓋本体41aと離れている先縁42sよりも厚みが厚い構成であると、より好ましい。
図5(a)に示す側壁部45aは、その内面の中腹(蓋本体41につながる部分と蓋本体41aと離れている先縁42sとの中間付近)となる部分に、傾斜部451を有し、傾斜部451よりも蓋本体41につながる部分側の厚みが厚く、傾斜部451よりも先縁42s側の厚みが小さくなる構成となっている。また、図5(b)に示す側壁部45bは、側壁部45aと同様に、その内面の中腹となる部位に、段差部452を有し、段差部452よりも蓋本体41につながる部分側の厚みが厚く、段差部452よりも先縁42s側の厚みが小さくなる構成となっている。あるいは、図5(c)に示す側壁部45cは、傾斜部451または段差部452を有さずに、蓋本体41につながる部分側から先縁42s側に向かって全体的に厚みが徐々に小さくなるテーパ形状の構成となっている。すなわち、端部41a側の側壁部42aにおいて、蓋本体41につながる部分の厚みが、蓋本体41aと離れている先縁42sよりも厚みが厚く構成されていればよい。
上述したいずれの構成においても、先端部41a側の側壁部42aに対応する領域において、蓋本体41につながる部分の厚みが先縁42sの厚みよりも厚いので、溶融した樹脂組成物が、先端部41aにおいて、側壁部42に対応する領域から先端部41aへと流れるタイミングと、蓋本体41に対応する領域から先端部41aへと流れるタイミングをほぼ同程度にすることができる。そのため、蓋本体41の先端部41aにおいて樹脂組成物が会合する流れムラによって発生する外観良好性の低下を抑制することができる。
また、基端部41bの両端に隣接する側壁部42の内面には、それぞれ開閉軸部43が設けられている。これら開閉軸部43は、互いに同軸となるように側壁部42の内面に位置し、便蓋54を衛生洗浄装置または便器に回動可能に取り付けられる。開閉軸部43を衛生洗浄装置等に取り付けた状態では、使用者は、例えば便蓋54の先端部41a近傍を把持して上下させることにより、開閉軸部43が回動軸となって便蓋54が倒伏位置および起立位置の間を移動する。
また、蓋本体41において、先端部41aと側部41cとが接続している箇所のそれぞれの裏面には、脚部枠44が側壁部42の内面に接する形で設けられている。脚部枠44には、図示されない蓋状または台状の脚本体が取り付けられることで、便蓋54の脚部を構成する。この脚部は、便蓋54が閉じた状態で、当該便蓋54によって覆われる下方の便座の表面に当接する。これにより、便蓋54と便座との間に所定の間隔が形成されるので、便蓋54が閉じた状態で過剰に下方に沈み込むことがない。また、便座が暖房機能を有する「暖房便座部」であれば、脚部を除いて便蓋54の裏面が暖房便座部に直接接触しないため、便蓋54に対して暖房便座部からの熱による影響が及ばない状態で、当該暖房便座部からの放熱を抑えることができる。
開閉軸部43および脚部枠44の具体的な構成は特に限定されず、公知の形状を有していればよい。例えば、開閉軸部43は完全な円筒または円管状でなく、便蓋54が全開した状態で停止するためのストッパーとなり得る段差を有してもよい。あるいは、脚部枠44は、図1に示す構成例では、側壁部42の内面から突出する長方形状であるが、略半円状であってもよい。
このように、本実施の形態に係る便蓋54は、蓋本体41、側壁部42、開閉軸部43、および脚部枠44を備えているが、もちろんこれに限定されず、これら以外の構造部位を備えてもよい。また、本実施の形態では、便蓋54は、射出成形により成形される樹脂組成物の成形体(樹脂成形体)であるため、蓋本体41、側壁部42、開閉軸部43および脚部枠44はいずれも一体的に成形されるが、例えば、開閉軸部43または脚部枠44等は、便蓋54の形状または用途に応じて別体として製造されて蓋本体41または側壁部42に取り付けられてもよい。これら以外の構造部位についても同様である。
[厚肉部の構成および射出成形への寄与]
次に、蓋本体41の具体的な構成、特に蓋本体41に含まれる厚肉部412に関して具体的に説明する。
図1、図2(a)および(b)、並びに図3に示すように、蓋本体41は、標準的な厚みを有する薄肉部411と、薄肉部411よりも厚みの厚い厚肉部412と、薄肉部411および厚肉部412の間に位置するテーパ部413とを有している。なお、図2(b)は、図2(a)で破線の円で示す領域Wの拡大図であり、特にテーパ部413の断面構成を示している。
次に、蓋本体41の具体的な構成、特に蓋本体41に含まれる厚肉部412に関して具体的に説明する。
図1、図2(a)および(b)、並びに図3に示すように、蓋本体41は、標準的な厚みを有する薄肉部411と、薄肉部411よりも厚みの厚い厚肉部412と、薄肉部411および厚肉部412の間に位置するテーパ部413とを有している。なお、図2(b)は、図2(a)で破線の円で示す領域Wの拡大図であり、特にテーパ部413の断面構成を示している。
薄肉部411は、図1に示すように、蓋本体41の外周側の大部分を占め、図2(b)に示すように、厚肉部412と比較して相対的に薄い厚みを有している。厚肉部412は、図1に示すように、厚肉部412の中心が蓋本体41の横方向の中央かつ縦方向の中央より先端部側に位置し、円形状に設けられている。したがって、厚肉部412の周囲に薄肉部411が位置することになる。テーパ部413は、図2(b)および図3に示すように、厚肉部412と薄肉部411との間に位置し、その厚みが厚肉部412から薄肉部411に向かって徐々に小さくなっている。
ここで、厚肉部412の中心は、蓋本体41の縦方向における最大幅の中心、かつ、蓋本体41の横方向における最大幅の中心を指している。なお、本発明において、厚肉部の最大幅は、厚肉部412の外周が、蓋本体41の先端部41a、基端部41b、および側部41cの外周とは接しない程度の幅となっている。
ここで、厚肉部412の中心は、蓋本体41の縦方向における最大幅の中心、かつ、蓋本体41の横方向における最大幅の中心を指している。なお、本発明において、厚肉部の最大幅は、厚肉部412の外周が、蓋本体41の先端部41a、基端部41b、および側部41cの外周とは接しない程度の幅となっている。
厚肉部412は、蓋本体41において単に厚みが厚いだけのものではなく、便蓋54を射出成形する際に、便蓋54の表面側に流れムラの発生を生じにくくするために寄与する有用なものとなっている。
射出成形においては、金型等の成形型に設けられる注入口(射出ゲート、図1においては部位Pgの位置に相当)から溶融した樹脂組成物を成形型内部の内部空間(キャビティ)に注入する。図6(a)は、従来の便蓋154を射出成形する際に、当該便蓋154を前記内部空間に見立てた模式図であり、従来の便蓋154の基端部141bの中央部にゲート残り140が位置していることから明らかなように、基端部141bの中央部に前記注入口が設定されている。便蓋154を成形するための樹脂組成物は、加熱等によって溶融しているので流動性を有している。そこで、基端部141bの中央部の注入口(ゲート残り140の位置)から図中矢印Inで示す方向に溶融した樹脂組成物が注入されることで、前記内部空間内に樹脂組成物が流動して充填されていく。
ここで、従来の便蓋154の蓋本体141は、蓋本体141の縦方向の中央となる部位に帯状に、基端部41bから先端部41aの手前まで延伸している厚肉部12が設けられるように、成形型の内部空間を設計している。
この場合、基端部141b側の1点(注入口、図1においては部位Pgの位置に相当)から樹脂組成物が注入されると、樹脂組成物は、注入口の位置(ゲート残り140の位置)を中心とする同心円状に流動せず、厚肉部12に対応する領域において、薄肉部11に対応する領域よりも相対的に高速で流動する。そのため、樹脂組成物は、先に厚肉部12に対応する領域を優先して流れ、その後、側部141cに向かって広がるように流動する。言い換えれば、樹脂組成物は、同心円状に均等に広がるように流れるのではなく、厚肉部12に対応する領域を優先して流れることになる。
この場合、基端部141b側の1点(注入口、図1においては部位Pgの位置に相当)から樹脂組成物が注入されると、樹脂組成物は、注入口の位置(ゲート残り140の位置)を中心とする同心円状に流動せず、厚肉部12に対応する領域において、薄肉部11に対応する領域よりも相対的に高速で流動する。そのため、樹脂組成物は、先に厚肉部12に対応する領域を優先して流れ、その後、側部141cに向かって広がるように流動する。言い換えれば、樹脂組成物は、同心円状に均等に広がるように流れるのではなく、厚肉部12に対応する領域を優先して流れることになる。
しかしながら、蓋本体141の基端部141bの中央、すなわち、注入口の位置(ゲート残り140の位置)付近にも厚肉部12に対応する領域が設けられているため、射出成形時に注入口の位置(ゲート残り140の位置)付近は、厚肉により、注入された樹脂組成物が金型内で固化する際に、収縮による残留応力が生じやすく、且つ、射出成形時に注入時に加わる充填圧力がかかりやすくなっている。その結果、蓋本体141の基端部141bでは、図6(a)における紙面奥側に向けて反りが大きく発生してしまう。蓋本体141の基端部141bに、図6(a)における紙面奥側に向けて反りが大きく発生すると、成形品形状が保持できなくなり、基端部141b側の側壁部(図示なし)にも、側部141cよりも外側に向けて反りが大きく発生してしまう。
また、射出成形時において、蓋本体141では、前述したとおり、樹脂組成物は、厚肉部12に対応する領域に優先して流れていく。そのため、注入口から注入された樹脂組成物は、蓋本体141の先端部141aに向かうにつれて、樹脂組成物が注入口から、厚肉部12に対応する領域を通って先端部141aへ流れる速さと、薄肉部11を通って先端部141aへ流れる速さとの間に差が生じる。このように速度の差が生じると、速度差が生じる領域(特に、図中点線で囲んだ領域Aw)では、樹脂組成物の流動速度差が生じやすい。その結果、充填される樹脂組成物にせん断応力が発生するため、フィラーが一定の向きに配向する現象が起こり、フィラー配向による流れムラが発生してしまう。
また、射出成形時において、蓋本体141では、前述したとおり、樹脂組成物は、厚肉部12に対応する領域に優先して流れていく。そのため、注入口から注入された樹脂組成物は、蓋本体141の先端部141aに向かうにつれて、樹脂組成物が注入口から、厚肉部12に対応する領域を通って先端部141aへ流れる速さと、薄肉部11を通って先端部141aへ流れる速さとの間に差が生じる。このように速度の差が生じると、速度差が生じる領域(特に、図中点線で囲んだ領域Aw)では、樹脂組成物の流動速度差が生じやすい。その結果、充填される樹脂組成物にせん断応力が発生するため、フィラーが一定の向きに配向する現象が起こり、フィラー配向による流れムラが発生してしまう。
流れムラは、ウェルドラインなどの樹脂組成物の会合の発生や樹脂組成物が流動する際の速度差が原因となって発生する。いずれの場合も、樹脂組成物にフィラーが含まれていると、流れムラがより目視で確認しやすくなる。
そこで、本実施の形態では、図6(b)に示すように、蓋本体41には、厚肉部412が設けられるように成形型の内部空間を設計している。厚肉部412は、その中心が蓋本体41の横方向の中央かつ縦方向の中央より先端部41a側に位置し、円形状である。これにより、基端部41b側の1点(注入口、図1においては部位Pgの位置に相当)から樹脂組成物が注入されると、厚肉部412に対応する領域までの間では、樹脂組成物は、注入口の位置(ゲート残り40の位置)を中心とする同心円状に流動し、その後、厚肉部412に対応する領域において、薄肉部411に対応する領域よりも相対的に高速で流動する。
それゆえ、樹脂組成物は、先に注入口の位置(ゲート残り40の位置)を中心とする同心円状に流動してから、蓋本体41の中央部に対応する領域を流動し、その後、側部41cに対応する領域に向かって広がるように流動する。言い換えれば、樹脂組成物の流動速度差が生じやすい先端部41a側に対応する領域のみを厚肉にして樹脂組成物の流動速度差を抑制したうえで、樹脂組成物は厚肉部412に対応する領域を優先して流れることになる。樹脂組成物の流動速度差が生じやすい先端部41a側に対応する領域のみを厚肉にしているため、樹脂組成物の流動速度差が生じやすい先端部41a側の蓋本体41に対応する領域において、樹脂組成物が、厚肉部412に対応する領域を流れる速度とそれ以外の領域を流れる速度がほぼ同程度の速度となる。その結果、樹脂組成物の流動速度差が生じやすい先端部41a側の蓋本体41に対応する領域において、樹脂組成物の流動速度差の発生が抑制され、特に、図6(a)における領域Awに相当する箇所であっても、流れムラの発生を低減することができる。また、樹脂組成物は厚肉部412に対応する領域を優先して流れることにより、先端部41aに対応する領域で樹脂組成物の流れが会合するようなことがなく、樹脂組成物の流れは、ほぼ同程度の速度で先端部41aに対応する領域の全体に渡って到達することになる。その結果、先端部41aに対応する領域において複数の樹脂組成物の流れが会合することが有効に抑制され、樹脂組成物の会合する流れムラの発生を有効に低減することができる。
また、厚肉部412は、注入口が設定されている蓋本体41の基端部41bには設けられていないため、蓋本体41の基端部41bおよび蓋本体41の基端部41b側における側壁部41cに反りが発生するのを抑制することができる。
ここで、厚肉部412の具体的な構成は特に限定されない。例えば、厚肉部412の寸法(縦方向および横方向の長さ)は、成形型の内部空間において厚肉部412に対応する空間が、前述したように樹脂組成物を有効に流動させることができるように設定されていればよい。例えば、樹脂組成物の流動性が良好で、先端部41aに向かって良好に流動する場合には、厚肉部412の縦方向の寸法は相対的に短くてよいし、先端部41aに向かって流動しにくいのであれば相対的に長くてもよい。厚肉部412の横方向の寸法についても同様である。
さらに、厚肉部412の具体的な形状も特に限定されず、厚肉部412は、その中心が蓋本体41の横方向の中央かつ縦方向の中央より先端部41a側に位置していればよい。具体的には、図1に示す厚肉部412のように、円形状状であってもよいし、図7(a)に示す厚肉部414のように、その先端部41a側の端部が蓋本体41の外周形状に略相似する放物線状または弧状となっており、その基端部41b側の端部が略平坦となった形状でもよい。あるいは、図7(b)に示す厚肉部415のように、略四角形状であってもよい。もちろんこれら以外の形状であってもよいことは言うまでもない。
また、厚肉部412および薄肉部411の間に設けられるテーパ部413の具体的な構成も特に限定されない。テーパ部413が設けられることで、樹脂成形体である蓋本体41において、薄肉部411に対する厚肉部412の段差が急なものとならないようにできるとともに、射出成形時においては、厚肉部412に対応する空間と薄肉部411に対応する空間との間にも急な段差が形成されない。それゆえ、樹脂組成物の流れに乱れが生じるおそれを一層低減することができ、流れムラの発生を有効に低減することができる。
テーパ部413は、厚肉部412および薄肉部411の間で、徐々に厚みが変わるように構成されていればよいが、その寸法(間隔)も特に限定されない。前記のとおり、樹脂成形体である蓋本体41の外観良好性を向上したり、射出成形時に樹脂組成物の流動性を良好なものとしたりできる範囲内であれば、蓋本体41の構成に応じて、所望の間隔を設定することができる。
さらに、テーパ部413は、厚肉部412の全ての外周に設けられている必要はなく、部分的に設けられてもよい。例えば、樹脂組成物の流動性を向上するために設けた方が好ましい箇所のみにテーパ部413を設け、流動性が低下しない箇所にはテーパ部413を設けなくてもよい。
また、図5に示すように、先端部41a側の側壁部45a、45b、45cの厚みが側壁部42の先縁42sに向けて徐々に変化する部分、または、その厚みが段差により側壁部42の先縁42sに向けて変化する部分が、先端部41a側の側壁部45a、45b、45cの内面に設けられている。さらに、図3に示すように、蓋本体41の裏面に、厚肉部412およびテーパ部413が設けられており、かつ、側壁部42の外面および蓋本体41の裏面は、凹凸のない平坦面である。そのため、便蓋54全体の表面および外面は円滑な面とした上で、先端部41a側の側壁部42aおよび蓋本体41の厚みを変化させることが可能となる。よって、外観良好性を向上させることができる。なお、側壁部42の内面とは、蓋本体41の裏面に向いている面をさし、側壁部42の外面とは、側壁部42の内面の反対の面をさしている。
[樹脂組成物の構成]
次に、本実施の形態に係る便蓋54を成形するために用いられる樹脂組成物の構成の一例について具体的に説明する。
次に、本実施の形態に係る便蓋54を成形するために用いられる樹脂組成物の構成の一例について具体的に説明する。
本実施の形態で用いられる樹脂組成物は、樹脂成分として熱可塑性樹脂を含んでいればよい。当該熱可塑性樹脂の具体的な種類は特に限定されず、便蓋54を含む衛生洗浄装置の分野で広く用いられている各種の樹脂材料を好適に用いることができる。
前記熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フッ素樹脂等が挙げられるが特に限定されない。これら樹脂は単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせてポリマーアロイとして用いることもできる。あるいは、アロイ化も含めた種々の変性処理を行ってもよいし、前記以外の公知の樹脂を組み合わせてもよい。
前記熱可塑性樹脂のいずれを選択するかについては、製造コスト、外観良好性、機械的物性等の諸条件を考慮した上で、適切なものを選択すればよい。一般的には、耐薬品性に優れ、成形性も良好であり、安価であることから、ポリプロピレン樹脂が特に好ましく用いられる。
本実施の形態で用いられる樹脂組成物には、前記熱可塑性樹脂に加えて、種々の添加剤が含まれてよい。具体的には、充填剤、可塑剤、内部離型剤、加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、無機顔料、有機顔料、無機抗菌剤、有機抗菌剤等を挙げることができる。
中でも、本実施の形態においては、便蓋54に光輝感を与える観点から、充填剤として、樹脂成形体に光輝性を与えるフィラー(光輝性フィラー)を好ましく用いることができる。前述したように、光輝性フィラーを含んだ樹脂組成物で樹脂成形体を成形すれば、部分的に流れムラが発生しやすくなるが、本実施の形態では、便蓋54が厚肉部412を有しているため、先端部41a、特に先端部41a近傍の側壁部42において、流れムラの発生を有効に低減し、外観良好性を向上させることができる。
前記光輝性フィラーとしては、光の反射、透過、屈折等の作用により樹脂成形体に光輝感(メタリック感、パール感等)を与えるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属顔料;マイカ、着色マイカ、アルミナ等のパール顔料;ガラスフレーク等の他の無機フィラー;等を挙げることができる。これらフィラーは、単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。あるいは、これら光輝性フィラーに対して公知の顔料または染料等を組み合わせて用いることで、色調の異なる光輝感を実現することもできる。顔料としては、カーボンブラック(黒)、二酸化チタン(白)、酸化鉄(茶・赤)、紺青(青)、クロム酸亜鉛(黄)等の公知のものを挙げることができるが特に限定されない。
前記光輝性フィラーのいずれを選択するかについては、製造コスト、外観良好性、機械的物性等の諸条件を考慮した上で、適切なものを選択すればよい。一般的な光輝感を実現するのであれば、アルミニウム粉およびマイカの少なくとも一方が好ましく用いられる。これら光輝性フィラーであれば、良好な外観を与えることができるだけでなく、安価であるためコスト面からも好ましい。
また、前記光輝性フィラーにおけるアスペクト比、粒径(平均粒径、粒径の範囲)、その他の特性も特に限定されない。光輝性フィラーの場合、アスペクト比または粒径等の条件が大きく影響する。
例えば、光輝性フィラーのアスペクト比が大きいほど高い光輝感が得られる。これは、光輝性フィラーの平面部分の面積が大きいため、便蓋54に添加した場合、当該便蓋54の表皮面に対して平行に配向されやすいためである。ただし、アスペクト比の高い光輝性フィラーの配向が乱れると、光輝感の減少も大きく、かつ、流れムラが発生しやすい傾向がある。一方、アスペクト比が小さいほど流れムラは目立ちにくくなるが、光輝感はあまり向上しない。
あるいは、光輝性フィラーの単位重量当たりの含有量が同等であれば、当該光輝性フィラーの平均粒径が小さいほど重量当たりの粒子数が多いことになる。それゆえ、粒径が小さい光輝性フィラーであれば、光輝感を高めることができる。しかも、一般に光輝性の光輝性フィラーは、同じ色合いのものであれば、粒径が小さいほど、淡い色調表現が可能となる。ただし、粒径が小さく粒子数が多ければ、流れムラが目立ちやすくなる。
本実施の形態に係る便蓋54は、前述のとおり厚肉部412を有するため、射出成形時に流れムラの出現を抑制することが可能となる。それゆえ、添加する光輝性フィラーとしてアスペクト比が大きいもの、または、粒径が小さいもの、もしくは、両方の特性を有するものを選択することができる。これによって、より高い光輝感を有し、かつ、外観良好性の優れた便蓋54を得ることができる。
また、前記光輝性フィラーには、一般的な他の充填剤(フィラー)を組み合わせて用いることもできる。例えば、公知のガラスフィラー、カーボンフィラー等を挙げることができるが、特に限定されない。
本実施の形態で用いられる樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂および光輝性フィラーを含んでいることが好ましいが、当該樹脂組成物の具体的な組成は特に限定されない。得られる便蓋54に光輝感を与える点、光輝性フィラーの過剰な添加により機械的物性等が低下する点、または、添加量に見合う光輝感が得られない点等を考慮して、熱可塑性樹脂の種類、光輝性フィラーの種類、他の添加剤の種類等の条件に応じて適切な組成とすればよい。一例として、熱可塑性樹脂100重量部に対して、光輝性フィラーが0.2〜30重量部の範囲内を挙げることができ、好ましくは、0.2〜10重量部の範囲内を挙げることができる。また、他の成分の添加量も特に限定されず、公知の比率で添加すればよい。
本実施の形態で用いられる樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、前記熱可塑性樹脂および光輝性フィラー、並びにその他の添加剤を、前記組成となるように混合し、射出成形機に供給すればよい。このとき、光輝性フィラー(および他の添加剤)は、熱可塑性樹脂に着色ペレットの形態で混合してもよいし、熱可塑性樹脂の種類に合わせて製造されたマスターバッチの形態として混合してもよい。
本実施の形態における樹脂成形体の製造方法、すなわち、本実施の形態に係る便蓋54の製造方法も特に限定されず、成形型(金型等)として、蓋本体41となる内部空間に、厚肉部412および薄肉部411(好ましくはテーパ部413)を有するものを用いる以外は、公知の構成の射出成形機を用い、公知の成形条件等を適用することができる。一例として、熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であり、光輝性フィラーとしてアルミニウム粉およびマイカを用いる場合には、シリンダ径φ=70mmであれば、シリンダ温度は180〜220℃の範囲内、射出圧力は60〜120MPaの範囲内、射出速度は20〜60mm/sの範囲内の条件を好ましく挙げることができる。
このように、金型等の成形型を用いて前述した樹脂組成物を樹脂成形することで便蓋54が製造される。得られた便蓋54においては、注入口の痕跡であるゲート残り40は適宜切断すればよく、必要に応じて、ゲート残り40の切断痕が目立たないように研磨等の処理を施してもよい。このような後処理がなされた便蓋54は、完成品として便座に取り付けられ、衛生洗浄装置または便器に組み込まれることになる。つまり、本発明に係る便蓋54は、基本的には、注入口の痕跡(ゲート残り40等)が目立たないように加工された状態で完成品となる。
次に、本実施例に係る便蓋54を備える衛生洗浄装置の一例について具体的に説明する。
図8に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50は、本体部51、便座部53、便蓋54、着座センサ56、およびリモートコントローラ(図示なし)を備えている。衛生洗浄装置50の本体部51、便座部53および便蓋54は、一体的に組み付けられて便器60の上面に設置される。以下、便座部53に着座した使用者から見て前方を前、後方を後ろ、左右側方を左右として説明する。
本体部51には、便座便蓋開閉部を介して便座部53の後部が回動可能に支持されており、便座部53の後部には、同じく便座便蓋開閉部を介して便蓋54の後部が回動可能に支持されている。便座部53は、図示されないが、内部にヒータを備える暖房便座として構成されている。
本体部51の筐体は中空の箱状に形成されており、本体部51の前部には着座センサ56が設けられている。
また、本体部51には、何れも図示されないが、便座部53に着座した使用者の局部へ洗浄水を噴出する洗浄ノズル、洗浄ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給機構、洗浄ノズルに供給される洗浄水を温める温水ヒータ、使用者の局部等を洗浄後に乾燥する乾燥ヒータ、衛生洗浄装置50の全体動作を制御する制御部等が内蔵されている。着座センサ56は、便座部53に使用者が着座したことを検出するものであり、本体部51の前部に設けられている。
リモートコントローラ(図示なし)は、トイレットルーム内において便座部53に着座した使用者が操作可能な位置に設置される。このリモートコントローラ(図示なし)には、衛生洗浄装置50に備えられた機能を操作するための無線操作部が設けられている。リモートコントローラ(図示なし)は、本体部51の制御部と無線通信可能に構成されており、リモートコントローラ(図示なし)の無線操作部にて入力された操作信号は本体部51の制御部へ送信され、制御部では受信した操作信号に応じた衛生洗浄装置50の全体動作の制御を行う。
ここで、本体部51および便座部53の外装部(筐体)は、便蓋54と同様に光輝性フィラーが添加されて射出成形されたものである。それゆえ、衛生洗浄装置50は、その表面を塗装することなく、メタリック感またはパール感等の光輝感を有するものとなっている。しかも、本実施の形態では、便蓋54が、図8に示すように、蓋本体41に厚肉部412、薄肉部411およびテーパ部413を有する構成となっている。それゆえ、便蓋54の前方(先端部41a)においては、流れムラが現れることなく便蓋54全体の外観良好性が優れたものとなっている。
なお、本実施の形態では、暖房便座機能および局部洗浄機能を有する衛生洗浄装置50を例示したが、本発明はこれに限定されず、便蓋54は、暖房便座機能のみを有する便座装置に設けられてもよいし、局部洗浄機能のみを有する局部洗浄装置に設けられてもよいし、他の構成のトイレ装置に設けられてもよいし、トイレ装置等ではなく、便器60に便座とともに取り付けられてもよい。
また、一般的な便器60は陶器製であるが、便器60を樹脂成形体で製造することもできる。この場合、少なくとも便器60の外装部を便蓋54と同様に光輝感を有する構成とすれば、衛生洗浄装置50および便器60の全体に光輝感を与えることができ、外観良好性をさらに一層向上させることができる。
40 ゲート残り
41 蓋本体
41a 先端部
41b 基端部
41c 側部
42 側壁部
45a,45b,45c 側壁部
50 衛生洗浄装置
53 便座部
54 便蓋
140 ゲート残り
411 薄肉部
412 厚肉部
413 テーパ部
414 厚肉部
415 厚肉部
451 傾斜部
452 段差部
141 蓋本体
141a 先端部
141b 基端部
141c 側部
11 薄肉部
12 厚肉部
154 便蓋
41 蓋本体
41a 先端部
41b 基端部
41c 側部
42 側壁部
45a,45b,45c 側壁部
50 衛生洗浄装置
53 便座部
54 便蓋
140 ゲート残り
411 薄肉部
412 厚肉部
413 テーパ部
414 厚肉部
415 厚肉部
451 傾斜部
452 段差部
141 蓋本体
141a 先端部
141b 基端部
141c 側部
11 薄肉部
12 厚肉部
154 便蓋
Claims (5)
- 樹脂組成物の射出成形にて成形される便蓋であって、
縦方向の両端部である先端部および基端部、並びに、これら両端部をつなぐ一対の側部を有する蓋本体と、
前記先端部および両方の前記側部の外周に連続的に設けられ、前記蓋本体の表面から前記蓋本体の裏面側に向かって立ち上がる形状となっている側壁部と、を備え、
前記蓋本体の前記基端部の中央に、前記射出成形時における前記樹脂組成物の注入口が設定され、
さらに、前記蓋本体は、前記蓋本体の他の部分よりも厚みが厚くなっている厚肉部が設けられており、前記厚肉部の中心が前記蓋本体における横方向の中央かつ縦方向の中央より前記先端部側に位置することを特徴とする便蓋。 - 前記厚肉部の外周の少なくとも一部には、徐々に厚みが小さくなるテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の便蓋。
- 前記側壁部において、前記先端部側の前記側壁部の厚みは、前記側壁部の他の部分の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の便蓋。
- 前記先端部側の前記側壁部における前記蓋本体につながる部分は、前記先端部側の前記側壁部における前記蓋本体と離れている先縁よりも厚みが厚いことを特徴とする請求項3に記載の便蓋。
- 前記樹脂組成物には、フィラーが含まれており、前記フィラーが成形体に光輝感を与えるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の便蓋。
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Cited By (2)
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-
2013
- 2013-03-13 JP JP2013050355A patent/JP2014176400A/ja active Pending
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