JP2014176300A - 糖の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セルロース原料から糖を効率よく製造することができる、生産性に優れる糖の製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程(1)及び工程(2)を有する糖の製造方法である。
工程(1):セルロース原料を、塩基性化合物の存在下、該セルロース原料の乾燥重量に対する水分量が40質量%以下の条件下で粉砕し、セルロース粉砕物を得る工程
工程(2):前記セルロース粉砕物を、β−キシロシダーゼを総タンパク質量中0.01質量%以上、30質量%以下の割合で含む酵素配合剤で糖化する工程
【選択図】なし

Description

本発明は、糖の製造方法に関する。
近年、環境問題への取り組みなどから、セルロースを含有するバイオマス材料から糖を製造し、それを発酵法などでエタノールや乳酸などへ変換する試みがなされている。セルロースを含有するバイオマス材料をセルラーゼなどの酵素により処理し、該セルロースを糖化して糖を製造する方法においては、その前処理工程として、該セルロースの結晶構造を非晶化させる処理を行うことが有用である。例えば、前処理工程として、塩化リチウム/ジメチルアセトアミドなどのセルロース溶剤を用いてセルロースを非晶化することが開示されている(特許文献1)。
一方、セルロースの糖化方法としては、特定のセルラーゼを用いる方法(特許文献2)、過酸化水素を用いてセルロース又はヘミセルロースを熱水処理してから酵素処理する方法(特許文献3及び4)などが知られている。
セルロース原料から糖を製造する方法としては、セルロース原料をロッドを充填した振動ミルで処理して、セルロースI型結晶化度を低減した非晶化セルロースを調製した後に、該非晶化セルロースにセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼを作用させて糖化する方法が知られている(特許文献5)。
特開2006−223152号公報 特開2003−135052号公報 特開2007−74992号公報 特開2007−74993号公報 特開2009−171951号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載の方法は、糖化効率、生産性において満足できるものではない。特許文献5に記載の方法は、優れた糖化効率を達成できるが、更に糖化効率を向上させることが求められている。
本発明は、セルロース原料から糖を効率よく製造することができる、生産性に優れた糖の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、塩基性化合物の存在下、かつ水分量が一定量以下の条件下でセルロース原料を粉砕し、得られたセルロース粉砕物を、特定の酵素配合剤で糖化することにより、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、下記工程(1)及び工程(2)を有する、糖の製造方法を提供する。
工程(1):セルロース原料を、塩基性化合物の存在下、該セルロース原料の乾燥重量に対する水分量が40質量%以下の条件下で粉砕し、セルロース粉砕物を得る工程
工程(2):前記セルロース粉砕物を、β−キシロシダーゼを総タンパク質量中0.01質量%以上、30質量%以下の割合で含む酵素配合剤で糖化する工程
本発明の糖の製造方法によれば、セルロース原料を特定条件下で粉砕してから特定の酵素配合剤で糖化することで、該酵素処理によるセルロースの糖化効率が向上し、セルロース原料から糖を効率よく製造することができる。
[糖の製造方法]
本発明の糖の製造方法は、下記工程(1)及び工程(2)を有する。
工程(1):セルロース原料を、塩基性化合物の存在下、該セルロース原料の乾燥重量に対する水分量が40質量%以下の条件下で粉砕し、セルロース粉砕物を得る工程
工程(2):前記セルロース粉砕物を、β−キシロシダーゼを総タンパク質量中0.01質量%以上、30質量%以下の割合で含む酵素配合剤(以下、単に「酵素配合剤」ともいう。)で糖化する工程
なお、本発明において、酵素配合剤とは、2種以上の酵素が配合されてなる酵素混合物をいう。
<工程(1)>
工程(1)は、セルロース原料を、塩基性化合物の存在下、該セルロース原料の乾燥重量に対する水分量が40質量%以下の条件下で粉砕し、セルロース粉砕物を得る工程である。
工程(1)において、水分量が所定量以下の条件下でセルロース原料(以下、「原料セルロース」ともいう。)を塩基性化合物と共に粉砕することにより、該セルロース原料中に塩基性化合物を均一に分散させることができる。また、水分量が所定量以下の条件下で粉砕を行うことで、セルロース原料を効率的に粉砕することができる。その結果、セルロースを非晶化、小粒子径化することができ、更に塩基性化合物の作用により脱リグニン化、脱ヘミセルロース化することができる。
(セルロース原料)
セルロース原料の種類には特に制限はなく、カラマツやヌマスギなどの針葉樹、アブラヤシ、ヒノキなどの広葉樹から得られる各種木材;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプなどのパルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙などの紙類;バガス(サトウキビの搾りかす)、パーム空果房(EFB)、稲わら、とうもろこし茎などの植物茎・葉・果房類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻などの植物殻類;藻類などが挙げられる。
上記のうち、糖化効率の向上の観点、入手容易性及び原料コストの観点から、パルプ類、紙類、針葉樹又は広葉樹から得られる木材、及び植物茎・葉・果房類、藻類から選ばれる1種以上が好ましく、パルプ類、紙類、針葉樹又は広葉樹から得られる木材、植物茎・葉・果房類から選ばれる1種以上がより好ましく、バガス、EFB、及びアブラヤシ(幹部)から選ばれる1種以上が更に好ましく、バガスがより更に好ましい。
本発明に用いられるセルロース原料は、ホロセルロース含有量が20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上がより更に好ましい。なお、本発明において、ホロセルロースの含有量とは、セルロースとヘミセルロースの合計含有量をいう。セルロース原料中のホロセルロース含有量は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
セルロース原料中の水分量は、粉砕効率の向上、及び結晶化度低減などの観点から、原料セルロースの乾燥重量に対して40質量%以下であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。水分量の下限は原料セルロースに対して0質量%であるが、セルロース原料中の水分量を0質量%にすることは困難であるため、該水分量は原料セルロースの乾燥重量に対して好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。また、該水分量は、原料セルロースの乾燥重量に対して0.01〜40質量%であることが好ましく、0.1〜35質量%であることがより好ましく、1〜30質量%であることが更に好ましい。
なお、セルロース原料中の水分量が40質量%を超える場合には、該セルロース原料を公知の方法で乾燥させ(以下、「乾燥処理」ともいう。)、その水分量がセルロース原料の乾燥重量に対し40質量%以下となるように調整することによって用いることができる。
セルロース原料中の水分量は市販の赤外線水分計などを用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
(塩基性化合物)
工程(1)において用いられる塩基性化合物としては、無機塩基性化合物が好ましく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物及び硫化物から選ばれる1種以上が挙げられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物としては、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどが挙げられ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫化物としては、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化マグネシウム、硫化カルシウムなどが挙げられる。
上記の塩基性化合物のうち、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を用いることがより好ましく、アルカリ金属水酸化物を用いることが更に好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いることがより更に好ましい。これらの塩基性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
工程(1)において用いられる塩基性化合物の量は、セルロース原料中のホロセルロースをすべてセルロースとして仮定した場合に、該セルロースを構成するアンヒドログルコース単位(以下「AGU」ともいう。)に対し、好ましくは0.01倍モル以上、より好ましくは0.05倍モル以上、更に好ましくは0.1倍モル以上であり、また、好ましくは10倍モル以下、より好ましくは8倍モル以下、更に好ましくは5倍モル以下、より更に好ましくは1.5倍モル以下である。また、該塩基性化合物の量は、セルロース原料中のホロセルロースを構成するアンヒドログルコース単位に対し、0.01〜10倍モルであることが好ましく、0.05〜8倍モルであることがより好ましく、0.1〜5倍モルであることが更に好ましく、0.1〜1.5倍モルであることがより更に好ましい。塩基性化合物の使用量が0.01倍モル以上であれば、後述する工程(2)において糖化効率が向上する。また、該使用量が10倍モル以下であれば、塩基性化合物の中和及び/又は洗浄容易性の観点、及び塩基性化合物のコストの観点から好ましい。
セルロース原料への塩基性化合物の添加方法に特に限定はなく、セルロース原料中に塩基性化合物を一括添加してもよく、分割添加してもよい。塩基性化合物を一括添加する場合は、セルロース原料中に該塩基性化合物を均一に分散させる観点から、セルロース原料に塩基性化合物を添加した後に撹拌混合するか、セルロース原料を撹拌しながら塩基性化合物を添加して混合することが好ましい。
塩基性化合物の添加は、後述する粉砕処理を行う装置の中で行ってもよいし、別途撹拌及び混合を行う装置で行ってもよい。
上記撹拌及び混合を行う装置は、塩基性化合物を原料セルロース中に分散可能な装置であれば特に限定はない。例えば、リボン型混合機、パドル型混合機、円錐遊星スクリュー型混合機、粉体、高粘度物質、樹脂などの混錬に用いられるニーダーなどの混合機が挙げられる。これらの中では、水平軸型パドル型混合機がより好ましく、具体的には、チョッパー翼を有する水平軸型のパドル型混合機であるレディゲミキサー(中央機工株式会社製;特徴的なスキ状ショベルを用いる混合機、チョッパー翼を設置可能)、プロシェアミキサー(太平洋機工株式会社製;独自形状のショベル翼による浮遊拡散混合と多段式チョッパー翼による高速剪断分散の2つの機能を備えた混合機)が更に好ましい。
塩基性化合物を添加する際の形態には特に制限はないが、粉砕効率の観点から、原料セルロース中に固体状態で添加することが好ましい。塩基性化合物を固体状態で添加する場合、製造時の取り扱い性の観点、及び塩基性化合物をセルロース原料中に均一に分散させる観点から、塩基性化合物はペレット状、粒状又は粉末状であることが好ましい。なお、塩基性化合物が固体状態であることは、水分を含有しないことを意味するものではなく、空気中の水分の吸湿などにより水分を含有していてもよい。
(水分量)
工程(1)は、原料セルロースの乾燥重量に対する水分量が40質量%以下の条件下で行われる。該水分量が原料セルロースの乾燥重量に対して40質量%以下であれば、セルロース原料の粉砕効率、及びセルロース原料と塩基性化合物との混合・浸透・拡散性が向上し、工程(2)の糖化処理が効率よく進行する。水分量の下限は0質量%である。
セルロースの結晶化度の低減、生産性及び糖化効率の向上の観点から、工程(1)における水分量は、原料セルロースの乾燥重量に対し好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。また、工程(1)における水分量は、原料セルロースの乾燥重量に対し0.1〜35質量%であることが好ましく、0.5〜35質量%であることがより好ましく、1〜30質量%であることが更に好ましく、1〜25質量%であることがより更に好ましく、1〜20質量%であることがより更に好ましく、1〜15質量%であることがより更に好ましい。
工程(1)の粉砕処理時の水分量は、原料セルロースの乾燥重量に対する水分量を意味し、乾燥処理などにより原料セルロースならびに塩基性化合物に含まれる水分量を低減することや、粉砕時に水を添加することなどにより、所定の水分量に調整することができる。
(粉砕)
セルロース原料の粉砕は、セルロース原料を小粒径化し、かつ該セルロース原料中に塩基性化合物を可及的に均一に分散させる操作である。固体状態の塩基性化合物を用いた場合には、粉砕によって、同時に塩基性化合物の粉末化も進行する。
粉砕は、公知の粉砕機を用いて行うことができる。用いられる粉砕機に特に制限はなく、セルロース原料を小粒子化することができ、塩基性化合物をセルロース原料中に可及的に分散できる装置であればよい。
粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミルなどのロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミルなどの竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミルなどの容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミルなどの媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミルなどの圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミルなどが挙げられる。これらの中では、セルロース原料の粉砕効率、及び生産性の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル及び振動チューブミルから選ばれる振動ミルが更に好ましく、振動ロッドミルがより更に好ましい。
粉砕方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
粉砕に用いる装置や媒体の材質としては特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、ガラスなどが挙げられるが、セルロースの結晶化度低下効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的利用の観点から、鉄又はステンレスが好ましい。
用いる装置が振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、セルロース原料の粉砕効率の観点から、ロッドの外径は好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。また、セルロース原料の粉砕効率の観点から、ロッドの外径は好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mmの範囲である。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、セルロース原料を効率的に小粒子化させることができるとともに、ロッドのかけらなどが混入してセルロースが汚染されるおそれが少ない。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、好ましくは97%以下、より好ましくは95%以下、更に好ましくは90%以下、より更に好ましくは80%以下である。また、ロッドの充填率は、好ましくは10〜97%、より好ましくは10〜95%、更に好ましくは15〜90%、より更に好ましくは15〜80%である。充填率がこの範囲内であれば、セルロースとロッドとの接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、原料セルロースの粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、振動ミルの攪拌部の容積に対するロッドの見かけの体積をいう。
粉砕時の温度に特に限定はないが、操作コスト及び原料セルロースの劣化抑制の観点から、−100℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、5℃以上が更に好ましく、また、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。また、上記と同様の観点から、−100〜200℃が好ましく、0〜150℃がより好ましく、5〜100℃が更に好ましい。
粉砕時間は、粉砕後のセルロース原料が小粒子化されるよう適宜調整すればよい。用いる粉砕機や使用するエネルギー量などによって変わるが、通常1分以上、12時間以下であり、セルロース原料の粒子径の低下の観点、及びエネルギーコストの観点から、2分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、また、6時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましく、2時間以下が更に好ましい。また、上記と同様の観点から、2分〜6時間が好ましく、5分〜3時間がより好ましく、5分〜2時間が更に好ましい。
以上のようにして工程(1)を行うことにより、セルロース粉砕物が得られる。
(熟成工程)
また、工程(1)を行った後に、塩基性化合物の作用によるリグニンやヘミセルロースの結合の加水分解、すなわちリグニンの脱離、ヘミセルロースの脱離をより促進させて糖化効率を向上させる観点から、工程(2)の前、好ましくは後述する中和工程及び洗浄工程を行う場合にはその前に、工程(1)で得られたセルロース粉砕物を熟成する工程(以下「熟成工程」ということがある。)を有することが好ましい。塩基性化合物を含むセルロース粉砕物を所定の水分条件下で熟成させることにより、塩基性化合物の作用によるリグニンの脱離、ヘミセルロースの脱離が促進されて、糖化効率が更に向上すると考えられる。
本発明の製造方法において、熟成工程は、例えば、工程(1)で得られたセルロース粉砕物に水を添加して混合し、所望により加熱しながら、一定時間の間撹拌又は静置することにより行うことができる。
水をセルロース粉砕物中に均一に分散させる観点から、水をセルロース粉砕物中に添加した後、撹拌混合するか、又はセルロース粉砕物を撹拌しながら、水を添加し混合することが好ましい。
水の添加方法に特に限定はなく、一括添加でも、分割添加でもよい。
熟成工程における水分量は、塩基性化合物の作用によるリグニンやヘミセルロースの結合の加水分解、すなわちリグニンの脱離、ヘミセルロースの脱離をより促進させて糖化効率を向上させる観点から、セルロース粉砕物に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは100質量%以上、更に好ましくは200質量%以上、より更に好ましくは230質量%以上であり、また製造コストの低減の観点から、好ましくは10000質量%以下、より好ましくは8000質量%以下、更に好ましくは5000質量%以下、より更に好ましくは4000質量%以下、より更に好ましくは3500質量%以下である。また、上記観点から、熟成工程における水分量は、セルロース粉砕物に対して好ましくは50〜10000質量%、より好ましくは100〜8000質量%、更に好ましくは200〜5000質量%、より更に好ましくは230〜3500質量%である。
なお、セルロース粉砕物に対する水分量とは、セルロース粉砕物から塩基性化合物を除いた乾燥原料に対する質量%である。
熟成を行う装置に特に限定はない。その具体例としては、前記塩基性化合物の撹拌及び混合に用いられる装置が挙げられる。
熟成温度は、リグニン及びヘミセルロースの脱離を促進して糖化効率を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、ヘミセルロースに由来する成分の過分解の抑制、及び製造コスト低減の観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下、より更に好ましくは100℃以下である。
上記と同様の観点から、熟成温度は、好ましくは0℃以上250℃以下、より好ましくは20℃以上200℃以下、更に好ましくは50℃以上150℃以下、更に好ましくは80℃以上100℃以下である。また、製造設備の簡素化、製造コスト低減の観点から、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜100℃、更に好ましくは50〜100℃、より更に好ましくは80〜100℃である。
なお、後述する工程(2)に供する溶液中のセルロース粉砕物が適度な濃度となるように、熟成工程時に余剰の水分を蒸発させる操作を行ってもよい。例えば、熟成時に開放系にすることにより水分の蒸発を同時に行うことなどが挙げられる。
熟成時間は、リグニン及びヘミセルロースの脱離を促進して糖化効率を向上させる観点から、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.1時間以上、更に好ましくは0.5時間以上、より更に好ましくは1時間以上であり、ヘミセルロースに由来する成分の過分解の抑制、及び製造コストの低減の観点から、好ましくは24時間以下、より好ましくは18時間以下、更に好ましくは12時間以下、より更に好ましくは6時間以下である。上記観点から、熟成時間は、好ましくは0.01〜24時間、より好ましくは0.1〜18時間、更に好ましくは0.5〜12時間、より更に好ましくは1〜6時間である。
また、工程(1)で用いた塩基性化合物や、セルロース原料中に含まれる夾雑物を除去するために、工程(2)の前、かつ熟成工程を行う場合は好ましくはその後に、以下のような中和工程や洗浄工程を有していてもよい。
(中和工程)
本発明の製造方法において、後述する工程(2)における糖化効率を向上させる観点から、工程(2)の前に、工程(1)で得られたセルロース粉砕物を酸で中和する工程を有することが好ましい(以下、これを「中和工程」ともいう)。
用いられる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸や、酢酸、クエン酸などの有機酸が挙げられるが、生産性、糖化効率並びに糖の収率の向上の観点から、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸及びリン酸から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、塩酸、酢酸及び硫酸から選ばれる1種以上を用いることが更に好ましい。
また塩酸、硫酸などの無機酸を用いた場合には、中和工程において生成する塩の糖化反応に対する悪影響が少ないため、糖の収率向上の観点からもより更に好ましい。
中和工程は、セルロース粉砕物に適量の酸を添加して撹拌することにより行うことができる。中和工程は、例えば、セルロース粉砕物を0.1質量%以上、50質量%以下の濃度となるように水に分散した後に、中和熱による過度の発熱に注意しながら、0.01〜37%の塩酸や0.01〜75%の硫酸などの酸を、pHが中性付近、好ましくはpH4以上8以下、より好ましくはpH4以上7以下になるまで適量添加することにより行うことができる。その際、懸濁液を適度に攪拌し、均一化させることが好ましい。
(洗浄工程)
工程(1)で用いた塩基性化合物やセルロース原料中に含まれる夾雑物を除去し、工程(2)における糖化効率を向上させる観点から、工程(2)の前に、工程(1)で得られた前記セルロース粉砕物を水で洗浄する工程を有していてもよい(以下、これを「洗浄工程」ともいう)。
セルロース粉砕物の洗浄は、例えば、セルロース粉砕物を0.1質量%以上、50質量%以下の濃度となるようにイオン交換水に分散し、遠心分離器により固形分を沈殿させ分離し、再度イオン交換水に同程度の濃度となるように分散させ、遠心分離するという操作をpHが中性付近、好ましくはpH4以上8以下、より好ましくはpH4以上7以下になるまで洗浄を繰り返す方法などにより行うことができる。
上記中和工程及び洗浄工程は、いずれか一方の工程のみを行ってもよく、中和工程を行った後に更に洗浄工程を行ってもよい。また工程(2)で得られる糖の収率向上の観点から、無機酸を用いた中和工程のみを行うことも可能である。
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得られた前記セルロース粉砕物を、β−キシロシダーゼを総タンパク質量中0.01質量%以上、30質量%以下の割合で含む酵素配合剤で糖化する工程である。
工程(1)で得られたセルロース粉砕物は、非晶化・小粒径化され、また脱リグニン化・脱ヘミセルロース化されているため、酵素配合剤で糖化することにより、グルコースもしくはキシロースといった単糖や、セロビオース、セロトリオース、キシロビオース、キシロトリオースといったオリゴ糖などの混合物を効率よく得ることができる。糖化後にエタノール発酵や乳酸発酵に使用する場合などを考慮すると、単糖まで分解することが好ましい。
また、上記特定の酵素配合剤を用いることにより、セルロース原料の糖化効率を更に向上させることができる。特に、上記酵素配合剤は、キシロース生成量の向上の観点から好ましい。
(酵素配合剤)
工程(2)において用いられる酵素配合剤は、糖化効率を向上させる観点から、β−キシロシダーゼ(以下、「BXL」ということがある。)を含む。好ましいBXLの具体例としては、セレノモラス ルミナンティウム(Selenomonas ruminantium)由来のGlycoside Hydrolase family(GH)43に属するBXLが挙げられる。前記BXLは、市販のBXLや、動物、植物、微生物由来のBXLを精製したものを用いてもよい。
精製BXLの具体例としては、セレノモラス ルミナンティウム(Selenomonas ruminantium)、トリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、あるいはバチルス プミラス(Bacillus pumilus)、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)、サーモアナエロバクテリアム スピーシーズ(Thermoanaerobacterium sp.)由来の精製BXLが挙げられる。
酵素配合剤中のBXLの配合割合は、糖化効率の向上の観点から、酵素配合剤中の総タンパク質量中、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、より更に好ましくは0.3質量%以上であり、糖化効率の低下抑制の観点から、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下である。また、糖化効率の観点から、BXLの配合割合は、酵素配合剤中の総タンパク質量中、0.01〜30質量%であり、好ましくは0.01〜25質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.05〜15質量%、より更に好ましくは0.1〜10質量%、より更に好ましくは0.2〜10質量%、より更に好ましくは0.3〜10質量%である。なお、BXLの配合割合は、実施例に記載の方法により調整することができる。
また、酵素配合剤は、糖化効率の向上の観点から、更にセルラーゼを含むことが好ましく、糖化効率の向上の観点から、セルラーゼのうち、セロビオハイドロラーゼ及びエンドグルカナーゼから選ばれる1種以上のセルラーゼを含むことがより好ましい。
なお、セルラーゼとは、セルロースのβ−1,4−グルカンのグリコシド結合を加水分解する酵素を指し、エンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼ又はセロビオヒドロラーゼ、及びβ−グルコシダーゼなどと称される酵素の総称である。
セロビオハイドロラーゼ及びエンドグルカナーゼから選ばれる1種以上のセルラーゼを含むセルラーゼの具体例としては、セルクラスト1.5L(ノボザイムズ社製、商品名)などのトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼ製剤やバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-N145(FERM P-19727)株由来のセルラーゼ、又はバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-N252(FERM P-17474)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-N115(FERM P-19726)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-N440(FERM P-19728)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-N659(FERM P-19730)などの各株由来のセルラーゼ、更には、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、アスペルギルス アクレアタス(Aspergillus acleatus)、クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム ステルコラリウム(Clostridium stercorarium)、クロストリジウム ジョスイ(Clostridium josui)セルロモナス フィミ(Cellulomonas fimi)、アクレモニウム セルロリティクス(Acremonium celluloriticus)、イルペックス ラクテウス(Irpex lacteus)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼ混合物やパイロコッカス ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)由来の耐熱性セルラーゼなどが挙げられる。これらの中で、糖化効率向上の観点から、好ましくはトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、あるいはフミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼが好ましい。
市販されているセルラーゼ製剤としては、例えば、セルクラスト1.5L(ノボザイムズ社製、商品名)、TP−60(明治製菓株式会社製、商品名)、CellicCTec2(ノボザイムズ社製、商品名)、Accellerase DUET(ジェネンコア社製、商品名)、あるいはウルトラフロL(ノボザイムズ社製、商品名)が挙げられる。このうち、糖化効率向上の観点から、セルクラスト1.5L(ノボザイムズ社製、商品名)、CellicCTec(ノボザイムズ社製、商品名)、CellicCTec2(ノボザイムズ社製、商品名)が好ましく、CellicCTec(ノボザイムズ社製、商品名)、CellicCTec2(ノボザイムズ社製、商品名)がより好ましく、CellicCTec2(ノボザイムズ社製、商品名)が更に好ましい。
また、セルラーゼの1種であるβ−グルコシダーゼの具体例としては、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来のβ−グルコシダーゼ(例えば、ノボザイム188(ノボザイムズ社製、商品名)やメガザイム社製β−グルコシダーゼ)やトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、ペニシリウム エメルソニイ(Penicillium emersonii)由来のβ−グルコシダーゼなどが挙げられる。
酵素配合剤中のセルラーゼの配合割合は、糖化効率の向上及び糖の生成量の増加の観点から、酵素配合剤中の総タンパク質量中、好ましくは25質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.95質量%以下、更に好ましくは99.9質量%以下、より更に好ましくは99.8質量%以下、より更に好ましくは99.7質量%以下である。また、上記と同様の観点から、酵素配合剤中のセルラーゼの配合割合は、酵素配合剤中の総タンパク質量中、好ましくは25〜99.99質量%、より好ましくは40〜99.95質量%、更に好ましくは50〜99.9質量%、より更に好ましくは60〜99.8質量%、より更に好ましくは75〜99.7質量%である。
酵素配合剤がセロビオハイドロラーゼを含む場合、その配合割合は、糖化効率の向上及び糖の生成量の増加の観点から、酵素配合剤中の総タンパク質量中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、より更に好ましくは85質量%以下である。また、上記と同様の観点から、酵素配合剤中のセロビオハイドロラーゼの配合割合は、好ましくは10〜99質量%、より好ましくは30〜95質量%、更に好ましくは60〜90質量%、より更に好ましくは70〜85質量%である。
酵素配合剤がエンドグルカナーゼを含む場合、その配合割合は、糖化効率の向上及び糖の生成量の増加の観点から、酵素配合剤中の総タンパク質量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは8質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下である。また、上記と同様の観点から、酵素配合剤中のエンドグルカナーゼの配合割合は、酵素配合剤中の総タンパク質量中、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは2.5〜45質量%、更に好ましくは5〜30質量%、より更に好ましくは8〜10質量%である。
また、酵素配合剤は、更に、β−キシロシダーゼ以外のヘミセルラーゼを含むことが好ましく、糖化効率の向上の観点から、β−キシロシダーゼ以外のヘミセルラーゼのうち、キシラナーゼを含むことがより好ましい。
ここで、へミセルラーゼとは、へミセルロースを加水分解する酵素を指し、キシラナーゼ、ガラクタナーゼなどと称される酵素の総称である。本発明に使用されるヘミセルラーゼとしては、市販のヘミセルラーゼ製剤や、動物、植物、微生物由来のものが含まれる。
ヘミセルラーゼの具体例としては、市販のヘミセルラーゼ製剤やバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-N546(FERM P-19729)由来のキシラナーゼのほか、トリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)、バチルス アルカロフィルス(Bacillus alcalophilus)由来のキシラナーゼ、更には、サーモマイセス(Thermomyces)、オウレオバシジウム(Aureobasidium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、クロストリジウム(Clostridium)、サーモトガ(Thermotoga)、サーモアスクス(Thermoascus)、カルドセラム(Caldocellum)、サーモモノスポラ(Thermomonospora)属由来のキシラナーゼなどが挙げられる。
市販されているヘミセルラーゼ製剤としては、例えば、CellicHTec(ノボザイムズ社製、商品名)、CellicHTec2(ノボザイムズ社製、商品名)、スクラーゼ(三菱化学フーズ株式会社製、商品名)、Shearzyme500L(ノボザイムズ社製、商品名)が挙げられる。このうち、糖化効率向上の観点から、CellicHTec、又はCellicHTec2が好ましい。
なお、前述した市販のセルラーゼ製剤のうちヘミセルラーゼを含むものも酵素配合剤として好ましく用いられる。
酵素配合剤中の、β−キシロシダーゼ以外のヘミセルラーゼの配合割合は、糖化効率の向上及び還元糖量の増加の観点から、酵素配合剤中の総タンパク質量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。また、上記配合割合は、酵素配合剤中の総タンパク質量中、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜10質量%である。
工程(2)において、セルロース粉砕物を酵素配合剤で糖化する際の処理条件は、該粉砕物中のセルロースの結晶化度や、使用する酵素の種類により適宜選択することができる。
例えば、0.5%以上40%以下(w/v)、好ましくは0.5%以上20%以下(w/v)のセルロース原料の懸濁液に対して、酵素配合剤を、セルロース原料に対し総タンパク質量が0.04質量%以上600質量%以下、あるいは0.001%以上15%以下(v/v)となるように添加し、pH2以上10以下の緩衝液中、反応温度10℃以上90℃以下で、反応時間30分以上5日間以下、好ましくは0.5日以上3日間以下、反応させることにより糖を製造することができる。
上記緩衝液のpHは、用いる酵素の種類により適宜選択することが好ましく、好ましくはpH3以上、より好ましくはpH4以上であり、好ましくはpH7以下、より好ましくはpH6以下である。また、上記反応温度は、用いる酵素の種類により適宜選択することが好ましく、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上であり、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。
上述した実施の形態に関し、本発明は以下の製造方法を開示する。
<1>下記工程(1)及び工程(2)を有する、糖の製造方法。
工程(1):セルロース原料を、塩基性化合物の存在下、該セルロース原料の乾燥重量に対する水分量が40質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは0.1〜35質量%、より好ましくは0.5〜35質量%、更に好ましくは1〜30質量%、より更に好ましくは1〜25質量%、より更に好ましくは1〜20質量%、より更に好ましくは1〜15質量%の条件下で粉砕し、セルロース粉砕物を得る工程
工程(2):前記セルロース粉砕物を、β−キシロシダーゼを総タンパク質量中0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、より更に好ましくは0.3質量%以上であり、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下であり、また、0.01〜30質量%、好ましくは0.01〜25質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.05〜15質量%、より更に好ましくは0.1〜10質量%、より更に好ましくは0.2〜10質量%、より更に好ましくは0.3〜10質量%の割合で含む酵素配合剤で糖化する工程
<2>塩基性化合物を固体状態、好ましくはペレット状、粒状又は粉末状で添加する、前記<1>に記載の糖の製造方法。
<3>塩基性化合物の量が、セルロース原料中のホロセルロースを構成するアンヒドログルコース単位に対して0.01倍モル以上、好ましくは0.05倍モル以上、より好ましくは0.1倍モル以上であり、10倍モル以下、好ましくは8倍モル以下、より好ましくは5倍モル以下、更に好ましくは1.5倍モル以下であり、0.01〜10倍モル、好ましくは0.05〜8倍モル、より好ましくは0.1〜5倍モル、更に好ましくは0.1〜1.5倍モルである、前記<1>又は<2>に記載の糖の製造方法。
<4>工程(2)の前に、工程(1)で得られたセルロース粉砕物を酸で中和する工程を有する、前記<1>〜<3>のいずれかに記載の糖の製造方法。
<5>酸が無機酸又は有機酸、好ましくは塩酸、酢酸、硫酸、硝酸及びリン酸から選ばれる1種以上、より好ましくは塩酸、酢酸及び硫酸から選ばれる1種以上である、前記<4>に記載の糖の製造方法。
<6>酸が無機酸である、前記<4>又は<5>に記載の糖の製造方法。
<7>酵素配合剤が、セルラーゼを含み、好ましくはセロビオハイドロラーゼ及びエンドグルカナーゼから選ばれる1種以上のセルラーゼを含む、前記<1>〜<6>のいずれかに記載の糖の製造方法。
<8>酵素配合剤中のセルラーゼの配合割合が、酵素配合剤中の総タンパク質量中、25質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、99.99質量%以下、好ましくは99.95質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは99.8質量%以下、より更に好ましくは99.7質量%以下であり、25〜99.99質量%、好ましくは40〜99.95質量%、より好ましくは50〜99.9質量%、更に好ましくは60〜99.8質量%、より更に好ましくは75〜99.7質量%である、前記<7>に記載の糖の製造方法。
<9>酵素配合剤が、β−キシロシダーゼ以外のヘミセルラーゼを含む、前記<1>〜<8>のいずれかに記載の糖の製造方法。
<10>前記β−キシロシダーゼ以外のヘミセルラーゼがキシラナーゼである、前記<9>に記載の糖の製造方法。
<11>酵素配合剤中の前記β−キシロシダーゼ以外のヘミセルラーゼの配合割合が、酵素配合剤中の総タンパク質量中、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜10質量%である、前記<9>又は<10>に記載の糖の製造方法。
<12>セルロース原料が、パルプ類、紙類、針葉樹又は広葉樹から得られる木材、植物茎・葉・果房類、及び藻類から選ばれる1種以上、好ましくはパルプ類、紙類、針葉樹又は広葉樹から得られる木材、植物茎・葉・果房類から選ばれる1種以上、より好ましくはバガス、EFB、及びアブラヤシ(幹部)から選ばれる1種以上、更に好ましくはバガスである、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の糖の製造方法。
<13>セルロース原料が、ホロセルロース含有量が20質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である、前記<1>〜<10>のいずれかに記載の糖の製造方法。
<14>塩基性化合物が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物及び硫化物から選ばれる1種以上、好ましくはアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、より好ましくはアルカリ金属水酸化物、更に好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、前記<1>〜<13>のいずれかに記載の糖の製造方法。
<15>工程(1)における粉砕を、振動ボールミル、振動ロッドミル、及び振動チューブミルから選ばれる振動ミル、好ましくは振動ロッドミルを用いて行う、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の糖の製造方法。
<16>工程(1)における粉砕を、ロッドの充填率が10%以上、好ましくは15%以上であり、97%以下、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下であり、10〜97%、好ましくは10〜95%、より好ましくは15〜90%、更に好ましくは15〜80%の振動ロッドミルを用いて行う、前記<15>に記載の糖の製造方法。
<17>工程(2)の前に、工程(1)で得られたセルロース粉砕物を水で洗浄する工程を有する、前記<1>〜<16>のいずれかに記載の糖の製造方法。
以下の実施例において、「%」は特に断りのない場合、及び結晶化度(%)を除き、「質量%」を意味する。セルロース原料(原料セルロース)中のセルロース含有量として、ホロセルロース含有量を用いた。
(1)セルロース原料中のホロセルロース含有量の算出
粉砕したセルロース原料を、エタノール−ジクロロエタン混合溶剤(1:1)で6時間ソックスレー抽出を行い、抽出後のサンプルを60℃で真空乾燥した。得られた試料2.5gに水150mL、亜塩素酸ナトリウム1.0g及び酢酸0.2mLを添加し、70〜80℃で1時間加温した。引き続き亜塩素酸ナトリウム及び酢酸を添加して加温する操作を、試料が白く脱色するまで3〜4回繰り返し行った。白色の残渣をグラスフィルター(1G−3)でろ過し、冷水及びアセトンで洗浄した後、105℃で恒量になるまで乾燥し、残渣重量を求めた。下記式によりホロセルロース含有量を算出し、これをセルロース含有量とした。
セルロース含有量(質量%)=[残渣重量(g)/セルロース原料の採取量(g:塩基性化合物を除いた乾燥原料換算)]×100
(2)アンヒドログルコース単位(AGU)モル数の算出
AGUモル数は、セルロース原料中のホロセルロースをすべてセルロースと仮定して、以下の式に基づき算出した。
AGUモル数=ホロセルロース重量(g)/162
(3)セルロース原料の水分量の測定
セルロース原料の水分量の測定には、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、製品名「FD−610」)を使用した。150℃にて測定を行い、30秒間の重量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。測定された水分量の値を、セルロース原料の乾燥重量に対する質量%に換算した。
(4)糖化率の測定
実施例及び比較例において、DNS法(「生物化学実験法 還元糖の定量法」学会出版センター)に基づき、以下の手順で糖の定量を行った。
工程(2)の糖化終了後、遠心分離によって沈殿物と上清液を分離した。DNS溶液(0.5%−3,5−ジニトロサリチル酸、30%−酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、1.6%−水酸化ナトリウム)1mLに適量の上清液を加え、100℃で5分間加熱発色させ、冷却後、波長535nmで比色定量した。グルコースを標準糖とした検量線より、上清液中の還元糖量を定量した。
得られた還元糖量の値から、糖化率を求めた。糖化率は下記の計算式により算出した。
糖化率(%)=上清中の還元糖量濃度(g/ml)/(セルロース粉砕物濃度(g/ml(塩基性化合物を除いた乾燥原料換算))×ホロセルロース含有量(g/g−セルロース原料)/0.9(還元糖量の分子量/AGUの分子量))×100
(5)HPLCによるキシロース生成量の定量
本発明の方法により生成した糖の組成分析を以下の方法により行い、キシロース生成量を求めた。
Dionex社製のDX500クロマトグラフィーシステム;カラム:CarboPac PA1(Dionex社製、4×250mm)、検出器:ED40パルスドアンペロメトリー検出器、溶離液:A液;100mM水酸化ナトリウム溶液、B液;1M酢酸ナトリウムを含む100mM水酸化ナトリウム溶液、C液;超純水を用いた。注入から初期濃度A液10%:C液90%、0〜15分A液95%:B液5%のリニアグラジエントにより糖を分析した。
標準としてキシロース(和光純薬工業株式会社製)、キシロビオース(和光純薬工業株式会社製),キシロトリオース(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
実施例1
(乾燥処理)
バガス〔サトウキビの搾りかす、ホロセルロース含有量68.3質量%、結晶化度29%、水分量7.0質量%〕を減圧乾燥機(アドバンテック東洋株式会社製「VO−320」)の中に入れ、窒素流通下の条件で2時間減圧乾燥し、ホロセルロース含有量68.3質量%、結晶化度29%、水分量2.0質量%の乾燥バガスを得た。
(工程(1))
得られた乾燥バガス100gと粒径0.7mmの粒状の水酸化ナトリウム(東ソー株式会社製「トーソーパール」)8.8g(ホロセルロースを構成するAGU1モルに対し0.5モル相当量)を、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、媒体としてφ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッドを13本使用、ロッド充填率57%)に投入し、2時間粉砕してセルロース粉砕物を得た。
(中和工程)
工程(1)で得られたセルロース粉砕物150mg(塩基性化合物を除いた乾燥原料換算)を、蓋つきスクリュー管(株式会社マルエム製、No.5,φ27×55mm)に投入し、1M硫酸で中和した。さらに水と100mM酢酸緩衝液0.3mlを添加して3mlスケールとし、pHが5.0となるように調整した。
(工程(2))
中和後のセルロース粉砕物(塩基性化合物を除いた乾燥原料換算で150mg相当)に対して、酵素タンパク量が1.5mg(酵素使用量:3mg/g−セルロース原料)となるように酵素配合剤を加えて、振とう攪拌しながら50℃で24時間糖化を行った。酵素配合剤には、セロビオハイドロラーゼ及びエンドグルカナーゼを含むセルラーゼ製剤である「セルクラスト1.5L」(ノボザイムズ社製)、及びBXL(メガザイム社製)を用いた。酵素配合剤は、BXLの割合が、酵素配合剤中の総タンパク質量中0.03質量%となるようにセルクラスト1.5Lと混合して調製し、酵素使用量が3mg/g−セルロース原料となるように添加した。その際、BXLのタンパク質量は4.2g/L(カタログ記載値)、セルクラスト1.5Lのタンパク質量は160g/L(Lowry法による測定)として計算した。
反応終了後、遠心分離によって沈殿物と上清液を分離し、上清液に遊離した還元糖量を上述したDNS法によって定量して、糖化率、及びセルロース粉砕物1gを糖化した際に生成した還元糖量を求めた。結果を表1に示す。
実施例2〜8
酵素配合剤中のBXLの配合割合を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で糖の製造を行った。結果を表1に示す。
比較例1
塩基性化合物及びBXLを添加せずに工程(1)を行い、また中和処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で糖の製造を行った。結果を表1に示す。
比較例2
酵素配合剤中のBXLの配合割合を、酵素配合剤中の総タンパク質量中66.67質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で糖の製造を行った。結果を表1に示す。
Figure 2014176300
表1に示すように、工程(2)で使用した酵素配合剤中の総タンパク質量中のBXLの配合割合が特定範囲である場合、キシロースの生成量が増加し、かつ糖化率が顕著に向上することがわかる。
本発明の糖の製造方法は、生産性に優れ、セルロース原料から糖を効率的に得ることができる。得られた糖はエタノールや乳酸などの発酵生産などに有用である。

Claims (9)

  1. 下記工程(1)及び工程(2)を有する、糖の製造方法。
    工程(1):セルロース原料を、塩基性化合物の存在下、該セルロース原料の乾燥重量に対する水分量が40質量%以下の条件下で粉砕し、セルロース粉砕物を得る工程
    工程(2):前記セルロース粉砕物を、β−キシロシダーゼを総タンパク質量中0.01質量%以上、30質量%以下の割合で含む酵素配合剤で糖化する工程
  2. 工程(1)において、塩基性化合物を固体状態で添加する、請求項1に記載の糖の製造方法。
  3. 塩基性化合物の量が、セルロース原料中のホロセルロースを構成するアンヒドログルコース単位に対して0.01倍モル以上、10倍モル以下である、請求項1又は2に記載の糖の製造方法。
  4. 工程(2)の前に、工程(1)で得られたセルロース粉砕物を酸で中和する工程を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の糖の製造方法。
  5. 酵素配合剤が、セロビオハイドロラーゼ及びエンドグルカナーゼから選ばれる1種以上のセルラーゼを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の糖の製造方法。
  6. 酵素配合剤が、β−キシロシダーゼ以外のヘミセルラーゼを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の糖の製造方法。
  7. 前記β−キシロシダーゼ以外のヘミセルラーゼがキシラナーゼである、請求項6に記載の糖の製造方法。
  8. セルロース原料が、パルプ類、紙類、針葉樹又は広葉樹から得られる木材、及び植物茎・葉・果房類から選ばれる1種以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の糖の製造方法。
  9. 塩基性化合物が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物及び硫化物から選ばれる1種以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の糖の製造方法。
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