JP2014174128A - 海溝型地震の予知情報発信システム、および予知情報発信方法 - Google Patents

海溝型地震の予知情報発信システム、および予知情報発信方法 Download PDF

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Abstract

【課題】海溝型地震の発生前に、震源位置と地震マグニチュードを予測し、10分オーダーの余裕をもって想定される震源と地震マグニチュードおよび発生予測時刻等の地震予知情報を発信するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】海溝型地震が想定される震源域Xの複数の観測点と、これと遠く離れた観測点の海底にそれぞれ地磁気検出手段6を設け、地磁気変動値を観測する。想定震源域Xと遠方の地磁気変動値を比較照合して、地磁気の永年変化や電離層電流等による地磁気の日変化等の外的影響を、想定震源域の各地磁気変動値から除く。想定震源域Xの地磁気全磁力変動値が予め定めた基準値を超えた場合に、その変動を異常と判断する。想定震源域Xの各観測点の全磁力変動値は、磁気変動を生じさせる震源と各観測点までの距離と逆比例することから、予測される震源と地震マグニチュード等を求め、海底型地震の予知情報を知らせる。
【選択図】図1

Description

本発明は、海溝型地震の想定震源域の海底観測点に設置した複数の地磁気検出手段を用いて震源域の各全磁力変動値を検出し、その変動値から震源の位置と地震マグニチュード等を求め、地震予知情報を発する発信システムと発信方法に関するものである。
現在、気象庁において実用化されている地震発生の警報として、地震による地殻変動に伴って発生した弾性波のうち、伝達速度の速いP波(縦波)を利用して、その後に続くS波(横波)の到来を知らせる緊急地震速報がある。しかし、震源が警報を受ける場所に近いと、P波とS波の到達時間にほとんど差がないため、地震警報を受けてからの震災対応に必要な時間的な限界があった。また、この地震警報は地震が発生した後の速報であり、地震の直前予知ではない。現状では、地震の前兆現象を捉えて、そのデータから導かれる震源や地震マグニチュード、発生時刻を予測する地震の予知は行われていない。
地震は、プレート同士の衝突によって発生するテクトニック応力によって蓄積されてきた震源核の歪みエネルギーが限界を超え、一気に解放されることによって発生する現象と考えられている。地震発生直前に、解放される歪エネルギーの一部が電磁気エネルギーに変換され、低周波の電磁波や誘起伝導電流が生じ、その電磁気的な変動が地上に伝播し、それが地震前兆としての異常現象(宏観異常現象)として観測されるのではないかと考えられている。実際に、過去に起きた大地震の観測データのなかで、大気や空の宏観異常(地震発光、帯電エアロゾルなど)や電子機器の変調や異常、また動物の異常行動など、これまで多くの異常現象が報告されている。
一方、地震の短期予知は、諸現象が複雑に関わっているために難しいというのが、学界での一般的な見方になっている。現在、地震に伴う電離層の擾乱で、地上電波が異常に反射される現象を利用した地震短期予知が、試験的に始まっている。ただ、この方法による予知情報は、震源域や地震の規模である地震マグニチュード、発生時刻の予測に曖昧さがある(例えば地震発生の予測時刻に数日間、数週間程度あるいはそれ以上の幅がある)。そのため、その間に経済活動を停止させるような震災緊急避難対応は、経済的、社会的な影響が極めて大きいとの意見がある。
2011年の東北地方太平洋沖地震では、地震発生の約40分前から震源上空周辺の電離層(F層)の電子密度が約8%増加していたことを、北海道大学の日置教授がGPS衛星の電波を利用した電離層全電子数の観測値から発見している(非特許文献1参照)。また同教授は、2004年スマトラ沖地震等M8以上クラスの海溝型地震の約40分〜90分前には、必ず電離層の電子密度の増加現象が発生していたことを確認しており、地震の直前予知技術への応用が可能であるとしている。電離層電子密度の日変化に比べて、この電子密度増加量が小さいため、電子密度の変化を観測した際に、当該増加量が地震前兆現象によるものであると明瞭に識別できることの確認が必要である。
また、同じく2011年東北地方太平洋沖地震では、震源から約210km離れたいわき市の地磁気観測点で、地震発生直前に7nT程度の地磁気変動が観測されたとの報告(非特許文献2参照)がある。しかし、この変動量も小さい値なので、地震発生予知のためには、この地磁気変動値が、地磁気の永年変化や電離層攪乱による地磁気変動の日変化など広域的な影響を受けた地磁気変動値か、または地震前兆現象によるものかを明瞭に識別できることの判別確認が必要である。
地震前兆の電磁気信号を直流から高周波帯域の広範囲に観測して、震源、地震マグニチュードおよび発生時期を推定する予知方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この提案は地震の発生メカニズムが不明であるため、地震前兆に伴う変動か、あるいは外界の電磁的ノイズ源によるものかを識別して判断することは、上記の識別と同様に難しい。外部ノイズを除去する方法や、閾値を超えた信号から震源や地震マグニチュードを予測するための根拠もあいまいである。そのために、外部からの電磁気的ノイズの影響による磁気変動により地震予測を誤って行い、地震警報を誤発信する可能性があった。一方、地震直前に発生するピエゾ磁気効果による地磁気変動を利用して、P波の到達より数秒早く検知して緊急地震警報を発する方法が提案されているが(特許文献2参照)、地震発生までの数秒間程度の短時間では、震災の被害を回避するための時間的余裕としては十分ではなかった。
これまで地震発生に先行する電磁気現象のメカニズムに関して、ピエゾ圧電効果、界面動電効果等さまざまな説が提案されてきた。現在は、これらの説は否定的に考えられている。結局のところ、観測された地震前兆過程での地震電磁気現象と地震パラメータ(地震マグニチュードや震源深さなど)との関連性を明確に説明できる発生メカニズムのモデルがないのが現状であった。すなわち、震源核で発生する準静的破壊から不安定破壊にいたるまでの力学的作用や、流体との物理化学的作用が、どのようにして電磁気現象をもたらすのかという発生メカニズム、そしてそれらが地表や上空の電離層まで影響を及ぼす伝播のメカニズムについて、一貫性のあるモデルが未確立であった。このため現在にいたるまで、地震直前予知の可否をめぐって議論が続いている。
特開2003−43153号公報 特開2010−85294号公報
Heki K.、 2011. Ionospheric electron enhancement preceding the 2011 Tohoku-Oki earthquake、 Geophys. Res. Lett.、 38、 L17312 -L17316. 源ほか、2011. 東北地方太平洋沖地震によって誘起されたと考えられる全磁力毎分値の変動、Japan Geoscience Union Meeting 2011、Chiba、MIS036-P88.
地震現象は複雑であり震源、地震の大きさ、地震発生時刻等を予知することは難しいとする考え方が、専門家のあいだで大勢であった。本発明は、これまで不分明であった地震に伴う電磁気現象の発生原因の新たなモデルを提案して、特に海溝型地震の直前予知(震源、地震マグニチュード、地震発生予測時刻等の予知)を具体化することにある。
本発明の課題は、海溝型地震が予測される周辺の海底観測点とそれより遠方の地磁気変動を捉えて、地震前兆に由来する地磁気変動分を明らかにして、その数値から震源の位置と地震マグニチュード(M)を求め、地震発生の兆候開始から地震発生までの間、地震予知の予測演算ループを繰り返すことで、誤差の少ない地震発生前の予知を行い、かつ地震発生前の少なくとも10分程度以上の時間的余裕をもって海溝型地震発生の予知情報を発信するシステムと予知情報の発信方法を提供することにある。
本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段をとったものである。
本発明の1番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信システムは、以下の手段からなる。
本発明による海溝型地震の警報を発信するシステムは、想定震源域の海底に設置された地磁気検出手段と、前記想定震源域から数百km以上遠方に離れた地震による地磁気変動を受けない観測点(i)の地磁気検出手段とを設け、前記想定震源域の地磁気値から前記遠方の地磁気値とを比較照合し、前記遠方の地磁気値を除いた当該想定震源域における各観測点(i)の地震前兆に由来する全磁力変動値(dFi)を求める。求めた当該各観測点の全磁力変動値(dFi)が震源と各観測点(i)の距離に逆比例することを利用して各観測点から震源までの位置を求める。すなわち3箇所以上の観測点の震源位置の交りから震源位置を予測する。また、各観測点の全磁力変動値からビオ・サバールの法則の式をもとにした関係式から震源における地震マグニチュード(M)を求める演算手段を設ける。さらに、求めた前記震源と地震マグニチュード(M)と地磁気を観測した時刻等の地震前兆データを記録する手段を設ける。この記録手段には、この地域の過去地震前兆データの他、他所の地震前兆データを蓄積してもよい。前記全磁力変動値(dFi)の1っが予め設定してある基準値(dFx)を少なくとも超えたときには、震源と地震マグニチュード(M)とを含む地震予知情報を表示する表示手段と、前記地震マグニチュード(M)が危険閾値(Mx)を超えた時に震源と地震マグニチュード(M)と過去の地震前兆データから地震発生の予測時刻を前記地震予知情報として推定して発する警報手段を具備することを特徴とする海溝型地震の予知情報発信システムである。地磁気検出手段としては、海底に設置された観測点での地磁気(磁力)を検出できるものであればよい。上記の観測時刻は、演算して震源や地震マグニチュードの数値を求めた時刻としても良い。この構成により、外部からの電磁的ノイズの影響が少ない海溝型地震の前記予知情報が、地震発生まで数分〜十分程度刻みで修正でき、より正確な地震予知情報を発することができる。
本発明の2番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信システムは、以下の手段からなる。
前記信号伝達手段は、前記磁気検出手段と接続する海底ケーブルと、当該海底ケーブルと前記監視ステーションへ繋がる通信ネットワークからなる海溝型地震の予知情報発信システムである。この構成から地震予知が地震発生地から離れた監視ステーションで集中的に行える。監視ステーションを、遠方に離れた複数箇所に設けた場合には、地震の影響を避けてデータのバックアップや監視機能の保全を図ることができる。
本発明の3番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信システムは、以下の手段からなる。
前記演算手段は、前記想定震源域における各観測点(i)の前記各全磁力変動値(dFi)が震源から各観測点(i)までの距離(ri)に逆比例することを利用して、3箇所以上の観測点(i)の前記距離(ri)と各全磁力変動値(dFi)との比例式から震源を求める演算手段である海溝型地震の予知情報発信システムである。この構成から震源の位置の予測が地震発生前に数値的に求めることが可能となる。また観測点の組み合わせを変更または多くすることで震源の位置の精度を高めることができる。
本発明の4番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信システムは、以下の手段からなる。
前記演算手段は、前記想定震源域における各観測点(i)の前記各全磁力変動値(dFi)と、震源と観測点(i)までの距離(ri)から震源における電流強度(I)を、ビオ・サバールの法則の式から求め、当該電流強度(I)から震源のマグニチュード(M)を求めることが可能な演算手段である海溝型地震の予知情報発信システムである。この構成から各観測点の全磁力変動値(dF)を使って震源のマグニチュード(M)を数値的に予測することができる。
本発明の5番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信システムは、以下の手段からなる。
前記演算手段は、前記想定震源域における各観測点(i)の全磁力変動値(dFi)が予め設定してある基準値(dFx)を超えた後、所定の時間間隔で前記震源と地震マグニチュード(M)の計算を繰り返し求めて補正する海溝型地震の予知情報発信システムである。このことから海溝型地震発生まで震源と地震マグニチュード(M)の値をより正確に予測することができる。
本発明の6番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信システムは、以下の手段からなる。
地震予知情報を発する前記警報手段は、前記震源および地震マグニチュード(M)と共に、当該震源および地震マグニチュード(M)と過去の前記地震前兆データを比較照合して求めた地震発生の予測時刻を警報する海溝型地震の予知情報発信システムである。このことから過去地震前兆データを参照して海溝型地震の予知情報、特に発生の予測時刻を上記計算の繰り返しにより修正し精度の高い情報を警報として知らせることができる。
本発明の7番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信方法は、以下の手段からなる。
想定震源域の海底に設置された地磁気検出手段からの信号と、前記想定震源域から数百km以上遠方に設置された複数箇所の観測点(i)の地磁気検出手段からの地磁気信号を比較照合し、前記遠方の地磁気値を除いた当該想定震源域における各観測点(i)の全磁力変動値(dFi)を求め、少なくとも1箇所の全磁力変動値(dFi)が予め設定してある基準値(dFx)を上回ったときに地磁気変動を異常と判断するステップと、前記想定震源域の観測点(i)の複数の全磁力変動値(dFi)が類似の増減変動傾向を示すときに、前記全磁力変動値(dFi)は地震前兆に由来する全磁力変動値(dF)と仮定するステップと、各観測点の全磁力変動値(dFi)が各観測点と震源までの距離(r)に逆比例することから、少なくとも3箇所以上の各観測点(i)の前記全磁力変動値(dFi)から震源を求めるステップと、前記観測点(i)の全磁力変動値(dFi)と前記距離(r)と前記震源の深さ(Dc)から、震源における地震マグニチュード(M)を求めるステップと、前記震源と地震マグニチュード(M)と地磁気を観測した時刻を記録する地震前兆データの記録ステップと、前記地震マグニチュード(M)が危険閾値(Mx)を超えたときに海溝型地震の予知情報(少なくとも震源、地震マグニチュードおよび過去地震前兆データを参照した地震発生予測時刻を含む)を発信するステップとからなる予知情報発信方法である。この方法から、観測点の地磁気の異常変動から地震発生までの間、地震予知情報を10分以内の時間刻みで修正し、より正確な地震予知情報を発信することができる。
本発明の8番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信方法は、以下の手段からなる。
前記磁気変動が異常と判断するステップにおいて、各観測点(i)における前記地磁気検出手段が示す3方向(水平Xi、水平Yi、縦Zi)の地磁力値を合成した全磁力値(Fi)を求め、次に当該想定震源域における各観測点(i)の全磁力値(Fi)から前記遠方の全磁力値分を除いて前記全磁力変動値(dFi)を求める海溝型地震の予知情報を発信する方法である。この方法によれば、想定震源域の地震前兆に由来する磁気変動を、遠方の地震前兆に影響されない広域の磁気変動分を除くことが可能となり、また外部からの周波数の高いノイズの影響が少ない海底の各観測点の全磁力変動値を用いることで、正確な地震予知情報を得ることができる。
本発明の9番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信方法は、以下の手段からなる。
前記全磁力変動値(dF)は地震前兆に由来する全磁力変動値(dF)であると仮定するステップにおいて、前記想定震源域の観測点(i)で抽出した全磁力変動値(dFi)が予め設定してある基準値(dFx)を超えた後は、地震発生にいたるまでの間、10分以内の時間間隔で前記各ステップを繰り返して前記震源と地震マグニチュード(M)と地震発生の予測時刻の値を繰り返し修正する海溝型地震の予知情報を発信する方法である。この方法によれば、地震発生までの間、震源と地震マグニチュード(M)と地震発生の予測時刻を過去地震前兆データを繰り返し求め、より正確な地震予知情報として警報を発することができる。
本発明の10番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信方法は、以下の手段からなる。
前記全磁力変動値(dFi)は地震前兆に由来する全磁力変動値(dFi)と仮定するステップにおいて、前記想定震源域の各観測点(i)における全磁力変動値(dFi)の変動を比較して、複数の各観測点の全磁力変動値(dFi)の変動が類似の増減変動傾向を示す場合に全磁力変動は同時性があると判断する海溝型地震の予知情報を発信する方法である。この方法によれば、観測点周辺の地磁気変動が海溝型地震の前兆過程による影響を受けて変動していると判断することができる。
本発明の11番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信方法は、以下の手段からなる。
前記震源を求めるステップにおいて、前記想定震源域の少なくとも3箇所以上の観測点(i)における全磁力変動値(dFi)について、前記観測点(i)のうち2点A、Bで観測された前記全磁力変動値(dF)をそれぞれdFa、 dFbとするとき、点Pと点Aならびに点Pと点Bとの距離APとBPがAP:BP=dFb: dFa(ただしAP≠BP)となる仮想点Pの軌跡(アポロニウスの円)を描き、さらに他の2点、例えばAとC点でAP’:CP’=dFc:dFa(ただしAP’≠CP’)となる仮想点P’の軌跡を描き、前記仮想点PとP’の軌跡が交わる地殻側の地域を震源と仮定する海溝型地震の予知情報を発信する方法。この方法によれば、2箇所の観測点から求めるアポロニウスの円を求める場合に、観測点の組み合わせを変えるか多く設けることで、震源の予測がより正確な位置として求めることが可能となる。
本発明の12番目の特徴である海溝型地震発生の予知情報発信方法は、以下の手段からなる。
前記地震マグニチュード(M)を求めるステップにおいて、前記観測点(i)の全磁力変動値(dFi)と前記距離(r)から震源における電流強度(Ii)を仮に求め、前記電流強度(I)と前記震源の深さ(Dc)から震源における地震マグニチュード(M)を求める海溝型地震の予知情報を発信する方法である。この方法によれば、地震マグニチュード(M)をビオ・サバールの式を使って数値的に予測することができる。
本発明は、これまで不分明であった地震前兆に伴う電磁気発生現象の原因を提供することにより、海溝型地震の予知(震源、地震マグニチュード、地震発生予測時刻等)が可能となった。地震発生までの少なくとも10分間程度の余裕をもって発生位置、地震マグニチュードおよび発生予測時刻の予知情報の発信ができることで、地震災害の拡大を未然に防ぐことができる効果がある。
また本発明は、震源核において地震発生の直前まで発生する震源核電流による地磁気変動を利用して地震を予測することで、地震発生時に付随したP波による警報に比べ、少なくとも10分間程度以上余裕のある直前予知が可能となる。そのため、その間にさまざまな震災避難予防措置ができる。特に、大きな震災が予測される人の密集する施設や交通機関等、より早い緊急地震速報が必要なところでは、震災軽減に有効な予知手段となる。数日間や数週間のうちに、といった日または週単位の予知情報では、避難対応が長期間にわたるために経済活動に多大な支障をきたすことになるが、10分程度であれば、経済活動への影響は少ない。
震源核形成過程で発生する震源核電流による磁場変動を、想定震源域の海底に配置した複数の海底地磁気検出器(磁力計等)で捉える地磁気観測体制を示す図である。 海溝想定震源域に設置した地磁気観測ネットワーク例を示す図である。 臨界に達してアスペリティーの震源核内に準静的な破壊(クラック)が発生し、アスペリティー下部に貯留されている高圧の深層ガスがクラック隙間に急速に流れ込み、ガスが負帯電することにより震源核に電流が発生することを示した本発明の詳細モデル図である。同図(a):岩石の深さ方向と流体と岩石の圧力分布を示す図、同図(b):震源核の構造モデル図、同図(c):準静的破壊過程におけるクラックの発生とクラック隙間への深層ガスの流入による負帯電ガス流れと逆方向の震源核電流の発生を示すモデル図である。 本発明による震源核での電流値(I)、地震マグニチュード(M)および電流周波数fの関係を示す図。各黒丸(イ)〜(ニ)は、過去の大地震における数値との検証事例を示している。 観測点(磁力計6の設置地点)と震央までの水平直線距離R(km)と全磁力変動値dF(nT)と地震マグニチュード(M)について、断層傾斜角を変えた本発明モデルによる演算数値グラフを示す図である。 本発明の監視ステーションに設けられた地震予知システムの構成ブロック図である。 地震の予知情報の演算と発信までの処理フローチャートである。 想定震源域のある観測点の地磁気値と遠方の地磁気値とを比較照合して、その差分をとって全磁力変動値(dF)を抽出した概念図である。 想定震源域の3観測点A、B、Cの全磁力変動値(dF)から、アポロニウス円の演算手法を使って震源を求める例を示した図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、地震の発生が予測される想定震源域Xにおける、海底S下部に位置する地殻Cの震源核1周辺の断面図を示す。震源核形成過程での準静的破壊によって発生する震源核電流3による磁場変動を、海底Sに配置した複数の海底地磁気検出器6(例えば磁力計)で捉える地磁気観測体制を示す図である。図1においては、海底ケーブル4に接続された3個の海底地磁気検出器6の信号が、陸上に設けられた中継局5から通信ネットワークNを介して監視ステーション7に伝達される。プレート移動により蓄積された歪が臨界に達した震源核(アスペリテイー)内には準静的な破壊(クラック)が発生し、アスペリティー下部に貯留されている高圧の深層ガスがクラックの隙間に急速に流れ込み、ガスが負帯電することにより震源核1には誘起電流3が発生する。図1は、この誘起電流の発生現象を示した本発明のモデル図の1つである。
図2は、2箇所の想定震源域X1とX2の海底に設置した複数の海底地磁気検出器6を地磁気観測ネットワークNを介して監視ステーション7に伝達する観測網の例を示す図である。本発明において、巨大な海溝型地震の発生が懸念される想定震源域X1とX2の海底を中心に、各震源想定地域に少なくとも3個以上の海底地磁気検出器6を海底Sに設置して、常時その海底の地磁気の変動を観測する。また、この想定震源域X1とX2から数百km遠方の地震の影響を受けない地磁気観測地点の地磁気変動や、陸域における地磁気や電界・電流変動の観測情報も同時にネットワークNを介して監視ステーション7に集めて監視している。観測データや監視体制の安全のために、離れた複数箇所に監視ステーションやデータを同時に保管する。この地磁気の信号を送る場合、各観測点で検出された地磁気の値をそれぞれ監視ステーション7に直接送って、各方向(X,Y,Z)の磁力を合成して合成磁力値を求めても良い。また中継局5で各観測点の地磁気を合成して全磁力値を求めて監視ステーション7に送っても良い。あるいは、海底地磁気検出器6から直接合成磁力値を検出しても良い。
図3は、プレート同士の衝突によって発生するテクトニック応力によって蓄積されてきた震源核1の歪みエネルギーが限界に達し、震源核内に準静的な破壊(クラック8)が発生する。このときアスペリティー下部の深層ガス溜り2に貯留されている深層ガスがクラック8の隙間に急速に流れ込み、ガスが負帯電することにより震源核1に震源核電流3が発生することを示した本発明の地震モデル詳細図である。図3(a)は、地殻Cの深さ方向と、流体と岩石の圧力分布図の関係を示した図である。図3(b)は、震源核1の構造モデル図、図3(c)は、準静的破壊過程におけるクラック8の発生と深層ガス4の上方流出による逆方向の電流流れが発生する原理を概念的に示したモデル図である。
本発明の地震前兆時に発生する電磁気発生モデルは、以下のような発生メカニズムに基づいている。地震発生源となる震源核1、いわゆる断層アスペリティーの岩石は、高い地殻圧力のため岩石に含まれる流体を含む空隙が潰されて高密度になっている。このため地殻Cの深部から拡散・上昇してくる流体を封止し、アスペリティー下部の深層ガス溜り2には深層ガス4を含む流体が滞留している。地殻プレート運動に伴う応力や震源核1の下部に貯留される深層ガス4の圧力作用により、震源核1に応力が集中して臨界を超えると、準静的な破壊が始まる。すなわち、震源核1(断層アスペリティー)内にクラック8が生じ始め、そのクラック8が僅か開口すると断層アスペリティーの深部に閉じ込められていた深層ガス4は直ちにクラック8の隙間に流れ込む。
このとき断層アスペリティーの岩石破壊(クラック8の発生)により出来た新生面から、比較的低いエネルギーのエキソ電子が大量に放射される。このとき直ちに地殻Cの深層部に閉じ込められていた高圧のガス4が流入するため、エキソ電子はこのガス分子に付着して負帯電ガス分子の急激な流れを生成する。エキソ電子の放射現象は一過性であるため、背後の高圧のガス4は帯電することなく負帯電ガスを押して、破壊の伝播を追いかけるように負帯電ガスの上方の流れが形成される。そして震源核電流3は、負帯電ガス4の流れとは逆方向になる。すなわち本モデルでは、震源核1の準静的破壊から不安定破壊(地震)にいたる地震前駆過程で巨大な電流源が発生することを示している。
次に、本モデルでは地震発生直前の震源核1で発生する震源核電流3の電流量Iは、以下の式で表される。







図4は、本発明の地震による電磁気発生モデルを用いた計算結果のグラフと過去の地震の値をプロットして比較した図である。図4で示す直線グラフは、上記式(10)のken=9.92/100000・C/立方メートル、h=100マイクロメートルとしたときの震源核1で発生する震源核電流(I)と、その周波数(f)および地震マグニチュード(M)との関係を示した図である。震源核電流(I)は地震マグニチュード(M)が大きくなるほど指数的に増加し、反対に周波数は指数的に小さくなる。すなわち、電磁気擾乱は地震マグニチュード(M)が大きいほど、より遠方まで影響を及ぼすことを示している。
震源核1の準静的破壊過程で生じたクラック8の隙間を流れる負帯電ガス流れによる電流が直線的であると仮定すると、ビオ・サバールの法則に従って誘導される磁場は直線電流に対して鉛直の方向が大きい。海溝型地震は、断層傾斜角が小さいため、海底Sの震央近くに誘導された磁場変動値(dF)は最大になり、震央から遠ざかると急に減衰する。
図5は、本磁気発生モデルによる海底Sにおける誘導磁場と海底震央からの海底磁気観測点までの距離(R)の関係について、断層傾斜角を変えた計算結果(震源深さDcを24Kmとした計算結果:2011年東北地方太平洋沖地震に相当)を示している。すなわち、地震マグニチュード(M)が7以上の海溝型地震では、震央周辺の磁場変動は20nT以上であり、外部環境ノイズの影響による磁気変動に対しても十分検知可能な大きさであるため、想定震源域Xにおける地震前兆観測にとって識別が可能である。また地磁気変動は、地震マグニチュード(M)に強く依存しているので、地磁力変動値(dF)から地震マグニチュード(M)の予測が可能である。
本発明では、地震前駆過程で震源核1に流れる震源核電流3によって誘起される磁場を観測するために、想定震源域内の海底に海底地磁気検出器6(例えば磁力計)を設置している。陸部で発生する周波数が高い電磁気ノイズは、海中において急激に減衰する。すなわち、周波数f [Hz]の電磁波が海中に侵入できる深さh [m]は、下記の式(11)で表される。海水の比抵抗を0.3オーム・メートル、磁力計が設置される想定震源域の深さを例えば1000mとすると、0.08Hz以上の海面上からくる電磁波ノイズは、ほとんどが減衰するために、海底Sでの地磁気観測に極めて有利である。海底地磁気検出器6の設置された位置は、適宜GPSや他の位置検出器等を利用して校正できるように構成した場合は、例え設置位置が大きく移動しても震源位置の演算に支障がない。
図6は、各観測点で検出された地磁気の観測値、例えば三方向(X,Y,Z)を合成した全磁力値(F)を観測網の通信ネットワークNを介して監視ステーヨン7に集め、想定震源域Xの震源、地震マグニチュード(M)および地震発生の予測時刻を求める地震予知情報システムの一部を構成する地震予知演算装置9の構成ブロックを示した図である。この演算装置9のデータベース部に記録された地震前兆データべースには、過去の地震前兆データや他所の地震前兆データが記録されている。また現在刻々と演算している最新の地震前兆データも記録される。すなわち、現在と過去の地震データの両方が蓄積されているので、現在求めている想定震源および地震マグニチュード(M)と、その求めた値や変動に近い過去の地震前兆データを比較照合して、地震発生の確率や地震発生の予測時刻等を推定することができる。以上の演算は、観測点の地磁気が異常値(dF≧dFx)となったと判断され、地震マグニチュード(M)が危険閾値(Mx)を超えて、地震発生までの間繰り返し修正演算されるので、地震予知情報の精度は高くなる。
図7は、地震発生予知のための地震予知情報演算と予知情報発信までの処理フローチャートである。この図を使って、想定震源域と遠方の地磁気検出から地震予知情報を求めて警報を発するまでの流れを説明する。まず、海溝型地震の発生が想定される想定震源域Xの海底Sと、例えばこの位置から数百km以上以遠に設置された海底には地磁気検出器6がそれぞれ複数個設置されている。それらの検出器から検出された地磁気値は、海底ケーブル4と通信ネットワークNを介して監視ステーション7に送られて地震予知の監視が行われる。すなわち各観測点の地磁気値は常時監視ステーション7に送られている。なお、各観測点に設置されている海底地磁気検出器6の位置情報(経度、緯度、水深等)は予め記録されている。なお、GPSや他の位置検出器等を利用して随時校正されるように構成した場合、検出器の位置が大きく移動しても震源等の演算に支障はない。
図7に示す地震発生の予知情報処理フローのステップ1(S1)において、まず地震想定域Xの海底Sに設置された各観測点から送られてくる海底地磁気検出器6の値、例えば水平分力(H)、鉛直分力(Z)、偏角(D)や、さらに各分力を合成した全磁力値(F)の1分値等を海底ケーブル4と通信ネットワークNを介して監視ステーション7に送られる。一方、想定震源域Xの地震の影響が少ない数百km以遠に離れた観測点の地磁気値も同様に監視ステーション7に送られ、それらのデータを集約して監視する。この監視ステーション7には、その他各地の地上における電磁波等の値は、想定震源域Xの全磁力値から外部ノイズ分の広域的な磁気変動分の影響を除くために送られる。
ステップ2(S2)では、想定震源域Xの各観測点における地磁気値を、数百km以上離れた遠方の観測点の地磁気値と比較照合して、広域的に変動する地磁気の永年変化や日変化、また太陽嵐等による電離層電流の影響を除くために差分処理して、想定震源域X周辺に大きく現れる地震前兆による全磁力変動値(dF)として求める。すなわち想定震源域Xの地磁気値を遠方の地磁気値と比較照合して、地震前兆による全磁力変動値(dF)を差分法などにより抽出する。想定震源域Xに位置する観測点の全磁力変動値(dF)と、予め定めてある時間間隔前(例えば5分〜10分前)の同じ観測点の全磁力変動値(dF)とを比較して、所定の基準以上の値(Fx)になった場合に、その全磁気変動(dF)は異常と判断して次のステップに移行する。
ステップ3(S3)では、同じく想定震源域Xあるいはその周辺(5kmから50km以内)に設置されている別の観測点の全磁力変動値(dF)の変動が、上記ステップ2で異常と判断された後、同域の観測点で地磁気変動が類似の増減変動傾向を示すか否か(本発明では地震前兆の同時性があるとする。)を判断する。この比較方法としては、例えば各観測点の全磁力変動の微分係数を比較して、増減変動傾向が同一または類似の傾向を示す場合に同時性があると判断してよい。この場合には、この地磁気変動を地震前兆の影響による地磁気変動と推定して、次のステップに移行する。
ステップ4(S4)では、想定震源域Xとその周辺における少なくとも3箇所以上の各観測点での全磁力変動の大きさ(dF)から、予測される震源地を求める。図9で示す、3観測点のうち例えば2点A、Bで観測された全磁力変動値をそれぞれdFa、 dFbとする。このとき、仮想点Pと点Aおよび点Bの距離APとBPが、AP:BP=dFb:dFa(ただしAP≠BPでない組み合わせを選択)となる点Pの軌跡(アポロニウスの円または球)を求め。次に別の2点の組合せ、例えばAとC点で、AP’:CP’=dFc:dFa(ただしAP’≠CP’)なる仮想点P’の軌跡(円または球)を求める。点Pの軌跡と点P’の軌跡との地殻内の交点(又は交わり面)の位置を、推定される震源の位置と仮定する。もし交わらない場合は、上記2円(または2球面)を、それぞれの中心(A、B、C)から各円の大きさを各円の大きさで比例拡大して、その結果交わった交点を想定震源とする。以上の震源を求める方法において、想定震源域Xの各観測点の組み合わせを変えて(例えばBとCの組み合わせや、他の観測点D・・・等との組み合わせ等)、上記の方法で求めた震源と比較照合すれば、震源や震源域の予測精度はさらに高くなる。
ステップ4では、ステップ3で求めた地震前兆の全磁力変動値(dF)から、ビオ・サバールの法則の次式を用いて、まず想定震源の電流強度Iを仮に求める。
次に、求めた予測震源での電流値I*と上記式(9)を使って、予測される地震マグニチュード(M)を求める次のステップに移行する。
ステップ5(S5)では、求められた震源の予測位置と地震マグニチュード(M)を、地磁気を観測した時刻と共に図6に示す地震予知システムの地震データベースに記憶する。また過去地震前兆データベースには、過去の地震前兆データが記録されており、現在求めている震源、地震マグニチュード(M)や地震発生の予測時刻を過去の類似の数値と比較照合して求めることができる。すなわち、過去の他地域の地震予知データも記録されているので、求めた震源と地震マグニチュード(M)と、他地域で、かつ予め類似の傾向を示している過去地震前兆データとを比較照合して、地震発生予測時刻を推定することが可能である。
ステップ6(S6)では、海底地震の想定域で実際に地震が発生したか否かを判断して、地震発生に至るまで上記の地震予測の数値演算ステップ(S1〜S5 )を繰り返し求めて推定値を修正する。
ステップ7(S7)では、上記演算ステップを繰り返す間に、求めた地震マグニチュード(M)が、予め設定されている地震マグニチュードの危険閾値(Mx)例えばMx=5以上になった場合は、過去の地震前兆データベースを参考に,例えば10分オーダー程度の時間後に地震発生の可能性が高いと推定され、次のステップに移行する。
ステップ8(S8)では、S7で地震発生の可能性が高いと判断された後、求めた震源と地震マグニチュード(M)の予測値と共に、前記の地震予知演算装置9の過去地震前兆データベースを比較照合して地震発生の予測時刻を求める。図8で示した例は、想定震源域の観測点のある地磁気の全磁力値と、この地から遠方の地磁気の全磁力値を併記したものであり、この2値の差分の値がグラフの下部に記載したものである。上記ステップ2における全磁力変動(dF)の異常判断基準値(dFx)を7nTと設定しているケースである。磁気変動が異常と判断された時刻(Ta)から全磁力変動値(dF)は上昇を続け、時刻Tbで示す約28分後に地震が発生している。この間、各観測点から送られてくる地磁気の値から全磁力変動値を求めて震源、地震マグニチュード(M)および地震発生予測時刻の演算ループを繰り返すとともに、海底地震予知情報として関係機関に警報を発信する。
海溝型の巨大地震の前兆現象として、地震発生前の約40分から約90分の間で電離層の電子密度の上昇がこれまで確認されている。本モデルに基づく磁気誘導効果による説明と調和的であることから、地震前兆由来の地磁気の異常が検知されてから地震発生までの前兆時間は、約40分ないし約90分程度と推定される。そのため、上記の情報処理ステップは数分から10分程度の間隔で上記の予測演算を繰り返し、想定震源域の観測点から送られて来る地磁気データから地震予知の予測値を修正して、より確度の高い地震予知情報を発信することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々な変更例が可能である
次に、図4を使って本発明による震源核電流(I)と地震マグニチュード(M)の関係を、過去の大地震で観測された電磁気データと比較し検証する。
(検証1) ギリシャでは1981年からVAN法により地電位を継続観測し、地震予知に実績をあげていると主張している。典型的な事例として、地震マグニチュードM=6に対してVAN法は、100km以上離れた地点で0.0001V/m程度の電場を観測している。このような電場が観測されるためには、震源核1で4kA程度の電流発生が必要であるとの報告がある。この報告が出た当時、この電流の大きさを説明できる理論モデルがないため、VAN法の観測に疑問が投げかけられていた。しかし本発明で示したモデルを採用した場合では、図4の黒丸(イ)に示すように、十分説明が可能である。
(検証2) 1989年米国カリフオルニア州で起きたロマ・プリエータ地震(M=6.9)の時の震央に比較的近い観測点において地震発生の直前に5nTの磁気変動が観測された。この磁気変動には、震央周辺で250Aの地電流の発生が必要となる。地電流iと震源核電流Iはi≒I/(Rc/Ri+1) と近似できる。Riは震源核の電気抵抗、 Rcは地殻の電気抵抗を表す。ロマ・プリエータ地震で動いたサン・アンドレアス断層は比抵抗が低い(100オーム・メートル程度)ことで知られている。この場合Rc/Ri ≒6と見積もられ、図4の黒丸(ロ)に示すように1700Aとなり、他の地震に対する検証例が示しているクラック隙間h=100(マイクロメートル)の理論値と比較しうる値である。
(検証3)1995年兵庫県南部地震(M=7.3、Dc=16Km)では、地震直前あるいは地震時に電子機器の異常や発光現象、電子層(E層)異常等さまざまな電磁気現象が観測された。この地震で生じた野島断層のガウジは、残留磁化測定から約1,000Aの放電により硬化したと考えられている。本発明で示した地震モデルによる震源核電流は2.4kAであり、図4の黒丸(ハ)に示す。この震源核電流源(内部抵抗Riとする)による地電流iは、上記式のRc/Ri=1.42と見積もられ、 i=992Aを得る。この値は、上記の放電電流にほぼ一致している。
(検証4) 2011年の東北地方太平洋沖地震(モーメントマグニチュード、M=9)において、地震発生40分前から、震源域上空の電離層で全電子数の増加が見られ、電子密度が最も高くなる高度約300kmで最大約8%になっていることが全地球測位システム(GPS)により観測された。本発明のモデル計算では、M=9の震源央では25kA(図4の黒丸(ニ)に示す)の発生が見込まれ、300kmの高度で17nTの磁場が生じることになる。300km高度での平均磁場強さ200nTとすると、8.5%の変化に相当する。磁場と電流、さらに電子密度がほぼ比例関係にあることを考慮すると、計算結果は観測データと整合する。
(検証5) 2011年の東北地方太平洋沖地震(M=9)のいわき市における地磁気変動において、気象庁地磁気観測所は、地震発生の約7分前に、いわき市で、7.2nTの地磁気変動を観測した。この観測点と震源を結ぶ直線に垂直な震源核の電流成分が地磁気変動に寄与すると仮定すると、震源央から観測点までの直線距離rを関数として地磁力変動値dF(nT)は図5のように表せる。すなわち震央の周辺で地磁気変動値は最大を示し、距離rが大きくなるほど急速に小さくなる。M=9の東北地方太平洋沖地震では、震源央から約210kmにあるいわき観測点での地磁気変動の計算値は8.4nTであり、ほぼ観測値と一致する。しかし、この値は外部ノイズの影響と区別できる程の大きさではない。このため、実際に地震の発生前に、この変動が地震に由来するものであると判断して確定することは難しい。図5の全磁力変動値のカーブから明らかなように、震源(震央)により近いところで地磁気観測を行うことにより、明瞭な地震前兆による地磁気変動として観測することができる。
以上、本発明の地震予知方法は、従来から行われている地震発生後に生じた地殻変動によるP波検知の方法よりも10分程度以上先行して地震予知警報を発することが出来る。また、本発明の地震予知演算フローを繰り返すことにより、刻々変わる地震予測値の変動を補正することにより、地震発生の予測時刻をより正確に求めることができるようになる。そのため従来の地震発生後の現象を捉えた地震警報と異なり、10分以上の時間的な余裕を持って震災軽減のための対応ができる。また想定震源域や各地のデータを蓄積することにより、正確な地震予知が可能となる。
C 地殻
S 海底
N 通信ネットワーク
X 想定震源域
1 震源核
2 深層ガス溜り
3 震源核電流
4 海底ケーブル
5 中継局
6 海底地磁気検出器(例えば磁力計)
7 監視ステーション
8 クラック
9 地震予知演算装置
10 表示装置

Claims (12)

  1. 想定震源域の海底で相互に5km以上50km以内離れた3箇所以上の観測点(i)に設置された地磁気検出手段と、
    前記各観測点(i)の地磁気検出手段で検出した地磁気値を監視ステーションへ伝達する信号伝達手段と、
    前記想定震源域から数百km以上遠方に設置された複数箇所の観測点(i)の地磁気検出手段と、
    前記遠方の各地磁気検出手段で検出した地磁気値を前記監視ステーションへ伝達する信号伝達手段と、
    前記各観測点(i)の緯度、経度および水深を含む位置情報を記憶する位置情報記憶手段と、
    前記想定震源域の地磁気値と前記遠方の地磁気値とを比較照合し、前記想定震源域の地磁気値分から前記遠方の地磁気値分を除いた想定震源域における各観測点(i)の地磁気変動が類似である地震前兆に由来する全磁力変動値(dFi)を求め、当該想定震源域の3箇所以上の当該各全磁力変動値(dFi)と各観測点(i)の前記位置情報から震源および地震マグニチュード(M)を求める演算手段と、
    少なくとも前記震源と地震マグニチュード(M)を地震発生に至るまで繰り返し求め、当該震源と地震マグニチュード(M)と地磁気を観測した時刻を記録する地震前兆データ記録手段と、
    前記観測点(i)の1箇所以上の前記全磁力変動値(dFi)が予め設定してある基準値(dFx)を超えたときには、少なくとも前記震源と地震マグニチュード(M)を含む地震予知情報を表示する表示手段と、
    前記観測点(i)の1箇所以上の前記地震マグニチュード(M)が危険閾値(Mx)を超えた時に、前記震源と地震マグニチュード(M)を含む地震予知情報を発する警報手段とを具備することを特徴とする海溝型地震の予知情報発信システム。
  2. 前記信号伝達手段は、前記地磁気検出手段と接続する海底ケーブルと、当該海底ケーブルと前記監視ステーションへ繋がる通信ネットワークからなることを特徴とする請求項1記載の海溝型地震の予知情報発信システム。
  3. 前記演算手段は、前記想定震源域における各観測点(i)の前記各全磁力変動値(dFi)が前記震源から各観測点(i)までの距離(r)に逆比例することを利用して、前記各観測点(i)の前記距離(r)と各全磁力変動値(dFi)との関係式から震源を求める演算手段であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の海溝型地震の予知情報発信システム。
  4. 前記演算手段は、前記想定震源域における各観測点(i)の前記各全磁力変動値(dFi)と、前記震源と各観測点(i)までの距離(r)から震源における電流強度(I)を求め、当該電流強度(I)から地震マグニチュード(M)を求める演算手段であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の海溝型地震の予知情報発信システム。
  5. 前記演算手段は、前記想定震源域における各観測点(i)の全磁力変動値(dFi)が前記基準値(dFx)を超えた後、所定の時間間隔で前記震源と地震マグニチュード(M)を繰り返し求めて補正することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の海溝型地震の予知情報発信システム。
  6. 地震予知情報を発する前記警報手段は、前記震源および地震マグニチュード(M)と共に、当該震源および地震マグニチュード(M)と過去の前記地震前兆データを比較照合して求めた地震発生の予測時刻を警報することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の海溝型地震の予知情報発信システム。
  7. 想定震源域の海底で相互に5km以上50km以内離れた3箇所以上の観測点(i)に設置された地磁気検出手段からの信号と、前記想定震源域から数百km以上遠方に設置された複数箇所の観測点(i)の地磁気検出手段からの信号を比較照合し、前記遠方の地磁気値分を除いた当該想定震源域における各観測点(i)の全磁力変動値(dFi)を求め、少なくとも1箇所の全磁力変動値(dFi)が予め定められた基準値(dFx)を上回ったときに地磁気変動を異常と判断するステップと、
    前記想定震源域の観測点(i)の地磁気変動が異常と判断された後、当該想定震源域の複数の全磁力変動値(dFi)が類似の増減変動傾向を示すときに、前記全磁力変動値(dFi)は地震前兆に由来する全磁力変動値(dF)と仮定するステップと、
    各観測点の全磁力変動値(dFi)は震源から各観測点(i)までの距離(ri)に逆比例することから、少なくとも3箇所以上の各観測点(ri)の前記全磁力変動値(dFi)から震源を求めるステップと、
    前記観測点(i)の全磁力変動値(dFi)と前記距離(ri)と前記震源の深さ(Dc)から震源における地震マグニチュード(M)を求めるステップと、
    前記各ステップを地震発生に至るまで繰り返すことで少なくとも前記震源と地震マグニチュード(M)と地磁気を観測した時刻からなる地震前兆データを記録するステップと、
    少なくとも1箇所以上の観測点の前記地震マグニチュード(M)が予め設定された危険閾値(Mx)を超えたときに前記震源および地震マグニチュード(M)と過去の地震前兆データとを比較照合して求めた地震発生の予測時刻を含む予知情報を発信するステップとからなることを特徴とする海溝型地震の予知情報発信方法。
  8. 前記磁気変動が異常と判断するステップにおいて、各観測点(i)における前記地磁気検出手段が示す3方向(水平Xi、水平Yi、縦Zi)の地磁力値を合成した全磁力値(Fi)を求め、次に当該想定震源域における各観測点(i)の全磁力値(Fi)から前記遠方の全磁力値分を除いて前記全磁力変動値(dFi)を求めることを特徴とする請求項7記載の海溝型地震の予知情報発信方法。
  9. 前記全磁力変動値(dFi)は地震前兆に由来する全磁力変動値(dFi)と仮定するステップにおいて、前記想定震源域の観測点(i)で抽出した全磁力変動値(dFi)が予め設定してある前記基準値(dFx)を超えた後は、地震発生に至るまでの間、10分以内の時間間隔で前記各ステップを繰り返して前記震源と地震マグニチュード(M)と地震発生の予測時刻の値を繰り返し求めて修正することを特徴とする請求項7または請求項8記載の海溝型地震の予知情報発信方法。
  10. 前記全磁力変動値(dFi)は地震前兆に由来する全磁力変動値(dFi)と仮定するステップにおいて、前記想定震源域の各観測点(i)における全磁力変動値(dFi)の変動を比較して、複数の各観測点の全磁力変動値(dFi)の変動が類似の増減変動傾向を示す場合に全磁力変動は同時性があると判断することを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の海溝型地震の予知情報発信方法。
  11. 前記震源を求めるステップにおいて、前記想定震源域の少なくとも3箇所以上の各観測点(i)における全磁力変動値(dFi)において、前記観測点(i)のうち2点A、Bで観測された前記全磁力変動値(dFi)をそれぞれdFa、 dFbとするとき、点Pと点Aならびに点Bとの距離APとBPがAP:BP=dFb:dFa(ただしAP≠BP)となる点Pの軌跡を描き、さらに他の2点の組み合わせ、例えばAとC点でAP’:CP’=dFc:dFa(ただしAP’≠CP’)となる点P’の軌跡を求め、前記点PとP’の軌跡が交わる地殻側の地域を震源と仮定することを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれかに記載の海溝型地震の予知情報発信方法。
  12. 前記地震マグニチュード(M)を求めるステップにおいて、前記観測点(i)の全磁力変動値(dFi)と前記距離(r)から震源における電流強度(I)を求め、前記電流強度(I)と前記震源の深さ(Dc)から震源における地震マグニチュード(M)を求めることを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれかに記載の海溝型地震の予知情報発信方法。
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