JP2014162683A - グラフェンの作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水素原子でSiC表面を終端した表面上にグラフェンが形成された構造において、本来のグラフェンの優れた特性が得られるようにする。
【解決手段】ステップS101で、SiC基板を加熱してSiC基板の表面に6√3×6√3構造の炭素バッファー層を形成する(第1工程)。次に、ステップS102で、SiC基板を加熱した状態で炭素バッファー層が形成されているSiC基板の表面に水素を供給し、炭素バッファー層と基板側のSiとの結合を切断してグラフェンとし、グラフェンとSiC基板との間に存在するSiのダングリングボンドを水素で終端する(第2工程)。以上のようにしてグラフェンを形成した後、ステップS103で、グラフェンを形成したSiC基板を真空中で加熱してグラフェンの基板側に存在する炭化水素を除去する(第3工程)。
【選択図】 図1

Description

本発明は、SiC基板の表面にグラフェンを作製するグラフェンの作製方法に関する。
グラファイトは黒鉛とも呼ばれ、電気を良く通す物質として古くから知られており、炭素の同素体のひとつで、層状の物質である。グラフェンは、厳密にはグラファイトを構成する1原子層分の層状の膜を示している。グラフェンは、炭素原子がsp2結合で同じ面内に結合を作って六角形を形成し、これが蜂の巣状に平面状に広がったシート状の物質である。
グラフェンが2〜3原子層以下(1原子層も含む)で構成される物質を用いて電界効果トランジスタを作製することにより、非常に高い移動度を観測したことが発表されて以来、グラファイトとは異なる物理的な特性が次々に発見されて非常に注目を集めることとなった(非特許文献1参照)。このような状況において、グラフェンが10層以下で構成される物質の場合に、グラファイトとは異なって2次元的な特性を示すため、広義でグラフェンと呼ばれるようになってきた。一方で、狭義の1原子層のグラフェンと区別するため、少数層グラフェンという呼び方も広まっている。
ここで、SiC基板を用いた熱分解法によるグラフェンの作製では、SiCの(0001)指数面において、グラフェンが形成されるよりも少し低い温度領域では、6√3×6√3という表面超構造が形成される。なお、SiCの(0001)指数面は、Siで終端されるためSi面と呼ばれる。上述した6√3×6√3という超構造は、炭素原子が蜂の巣状に配列してグラフェンと同じ原子配列構造をもつが、一部の原子が表面から第2層のSi原子と結合をもつ。このため、6√3×6√3超構造は、炭素原子がグラフェンと同じ原子配列構造をもつものの、電子構造はグラフェンとは異なる。
このような6√3×6√3という超構造の表面を、更に高温に加熱すると、この層の下に新たに6√3×6√3超構造が形成され、新たに形成された6√3×6√3超構造の上層では、炭素原子とSiとの結合が解消してグラフェンとなる(非特許文献3参照)。このため、6√3×6√3超構造の層はバッファー層(炭素バッファー層)と呼ばれる。
また、6√3×6√3超構造は、最初の形成時に表面を覆い尽くすため、このような形成機構から形成後のグラフェンは、カーペット状に基板表面を覆い尽くし、結果的にウエハスケールで大面積のグラフェンの形成が可能になる。このような形成過程のため、大面積のグラフェンを形成してデバイス応用に展開しようという研究では、主表面がSi面とされているSiC基板を用いる方法が、最も盛んに行われている。しかしながら、グラフェン層の下に6√3×6√3超構造が存在し、ここからグラフェン層に電荷が移動するため、グラフェンの電荷中性点が動いて大きくn型にドープされてしまうという欠点があった。
上述した問題を解消するために、炭素バッファー層とSiの結合を切って炭素バッファー層をグラフェンとし、SiCとグラフェン間のSi原子のダングリングボンドを水素原子で終端する水素処理が提案されている(非特許文献4参照)。この技術では、Si面のSiC基板を用いたグラフェンの作製において、水素雰囲気で高温に加熱する、または真空中で高温に保った基板へ原子状の水素を照射することで、炭素バッファー層とSiの結合を切断し、ダングリングボンドを水素終端している。
この状態では、炭素バッファー層とSiC基板構成原子との化学的な結合が無くなり、SiC基板との相互作用が著しく低下するので、形成されるグラフェンは、図12に示すように、擬似自立状態(Quasi-Free-Standing)になっていると言われている。なお、図12において、符号1201は、Si原子を示し、1202は、水素原子を示し、1203は、炭素原子を示している。
このような構造のため、微細加工技術によって形成された中空に自立して架橋構造を形成したグラフェン(非特許文献5参照)と同様に高移動度を示すものと期待された。しかしながら、移動度の温度依存性が小さいというグラフェン特有の電気的特性を示すことができたものの、起源が不明な電荷不純物によって散乱が起こり、期待される高移動度を示さないという結果が得られている(非特許文献6参照)。
K. S. Novoselov, A. K. Geim, S. V. Morozov, D. Jiang, Y. Zhang, S. V. Dubonos, I. V. Grigorieva, A. A. Firsov, "Electric Field Effect in Atomically Thin Carbon Films", Science, vol.306, pp.666-669, 2004. A. J. van Bommel, J. E. Crombeen, and A. van Tooren, "LEED AND AUGER ELECTORON OBSERVATIONS OF THE SiC(0001) SURFACE",Surface Science, vol.48, pp.463-472, 1975. Hiroyuki Kageshima, Hiroki Hibino, Masao Nagase, and Hiroshi Yamaguchi, "Theoretical Study of Epitaxial Graphene Growth on SiC(0001) Surfaces",Applied Physics Express, vol.2, 065502, 2009. C. Riedl, C. Coletti, T. Iwasaki, A. A. Zakharov, and U. Starke, "Quasi-Free-Standing Epitaxial Graphene on SiC Obtained by Hydrogen Intercalation", PHYSICAL REVIEW LETTERS, vol.103, 246804, 2009. K.I. Bolotin, K.J. Sikes, Z. Jiang, M. Klima, G. Fudenberg, J. Hone, P. Kim, H.L. Stormer, "Ultrahigh electron mobility in suspended graphene", Solid State Communications, vol.146, pp.351-355, 2008. Shinichi Tanabe, Makoto Takamura, Yuichi Harada, Hiroyuki Kageshima, and Hiroki Hibino, "Quantum Hall Effect and Carrier Scattering in Quasi-Free-Standing Monolayer Graphene", Applied Physics Express, vol.5, 125101, 2012. M. Kusunoki, T. Suzuki, T. Hirayama, N. Shibata, and K. Kaneko, "A formation mechanism of carbon nanotube films on SiC(0001)", APPLIED PHYSICS LETTERS, vol.77, no.4, pp.531-533, 2000.
以上に説明したように、炭素バッファー層とSiの結合を切って炭素バッファー層をグラフェンとし、SiCとグラフェン間のSi原子のダングリングボンドを水素原子で終端した擬似自立状態では、想定していた性能が得られていないという問題がある。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、水素原子でSiC表面を終端した表面上にグラフェンが形成された構造において、本来のグラフェンの優れた特性が得られるようにすることを目的とする。
本発明に係るグラフェンの作製方法は、SiC基板を加熱してSiC基板の表面に6√3×6√3構造の炭素バッファー層を形成する第1工程と、SiC基板を加熱した状態で炭素バッファー層が形成されているSiC基板の表面に水素を供給し、炭素バッファー層と基板側のSiとの結合を切断してグラフェンとし、グラフェンとSiC基板との間に存在するSiのダングリングボンドを水素で終端する第2工程と、グラフェンを形成したSiC基板を真空中で加熱してグラフェンの基板側に存在する炭化水素を除去する第3工程とを備える。
上記グラフェンの作製方法において、第3工程では、炭化水素に加えてグラフェンの基板側に存在する水素分子を除去するようにしてもよい。
上記グラフェンの作製方法において、炭素バッファー層の上に形成されたグラフェンを備える場合、第3工程では、SiC基板を250〜950℃の範囲のいずれかの温度で加熱すればよい。また、SiC基板の上には炭素バッファー層のみが形成されている場合、第3工程では、SiC基板を250〜650℃の範囲のいずれかの温度で加熱すればよい。
上記グラフェンの作製方法において、第3工程では、真空度が1.33×10-2Pa以下の状態で加熱を行うようにすればよい。
以上説明したことにより、本発明によれば、水素原子でSiC表面を終端した表面上にグラフェンが形成された構造において、本来のグラフェンの優れた特性が得られるようになるという優れた効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態におけるグラフェンの作製方法を説明するフローチャートである。 図2は、SiC基板を加熱して2層のグラフェンを形成した表面についてX線光電子分光測定を行った結果を示す特性図である。 図3Aは、SiC基板を加熱して2層のグラフェンを形成した表面に対するX線光電子分光測定により得られた炭素1sの光電子ピークのピークフィッティングによって詳細に解析した結果を示す特性図である。 図3Bは、SiC基板を加熱して2層のグラフェンを形成した表面に対するX線光電子分光測定により得られたSi2sの光電子ピークのピークフィッティングによって詳細に解析した結果を示す特性図である。 図4は、SiC基板を加熱して2層のグラフェンを形成した試料を、2×10-6Pa以下の真空中において550℃で10分間加熱し、この後、XPSで測定した結果得られたC1sスペクトルを示す特性図である。 図5は、炭化水素503および水素分子504が、グラフェン502とSiC基板501の間に存在している状態を示す構成図である。 図6は、水素処理のみのグラフェン/SiC構造と、水素処理後に前述同様の550℃の真空中加熱処理を行ったグラフェン/SiC構造とを用いて各々ホールバー構造を作製し、両者の電気的特性の評価を行った結果を示す特性図である。 図7は、実施例1の試料における炭素1s内殻準位の光電子スペクトルの加熱温度に対する変化を示す特性図である。 図8は、実施例1の試料における炭素1s内殻準位の光電子スペクトルの加熱温度に対する強度比を示す特性図である。 図9は、実施例2の試料における炭素1s内殻準位の光電子スペクトルの加熱温度に対する変化を示す特性図である。 図10は、実施例2の試料における炭素1s内殻準位の光電子スペクトルの加熱温度に対する強度比を示す特性図である。 図11は、実施例3の試料における炭素1s内殻準位の光電子スペクトルの加熱温度に対する強度比を示す特性図である。 図12は、SiC基板上におけるグラフェンの擬似自立状態を説明するための説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるグラフェンの作製方法を説明するフローチャートである。この作製方法は、まず、ステップS101で、SiC基板を加熱してSiC基板の表面に6√3×6√3構造の炭素バッファー層を形成する(第1工程)。
次に、ステップS102で、SiC基板を加熱した状態で炭素バッファー層が形成されているSiC基板の表面に水素を供給し、炭素バッファー層と基板側のSiとの結合を切断してグラフェンとし、グラフェンとSiC基板との間に存在するSiのダングリングボンドを水素で終端する(第2工程)。このシリコンのダングリングボンドは、主に上述した切断により生じたものである。
例えば、SiC基板を用いた熱分解法によるグラフェンの作製において、SiCの(0001)指数面(Si面)において、グラフェンが形成されるよりも少し低い温度領域では、6√3×6√3という表面超構造の炭素バッファー層が形成される。また、この状態より更に高温に加熱すると、既に形成されている炭素バッファー層の下に新たに炭素バッファー層が形成され、既に形成されていた炭素バッファー層は、炭素原子とSiとの結合が切れてグラフェンとなる。
以上のように形成した単層の炭素バッファー層や上層にグラフェンが形成されている炭素バッファー層を、水素雰囲気で高温に加熱する、または真空中で高温に保った基板へ原子状の水素を照射することで、炭素バッファー層とSiの結合を切断し、ダングリングボンドを水素終端することができる。Siとの結合が切断されることで、炭素バッファー層はグラフェンとなる。炭素バッファー層のみが形成されていた場合、SiC基板の上には、1層のグラフェンが形成された状態となる(グラフェン/SiC構造)。また、炭素バッファー層の上にグラフェンが形成されていた場合、SiC基板の上には、複数層のグラフェンが形成された状態となる。
以上のようにしてグラフェンを形成した後、ステップS103で、グラフェンを形成したSiC基板を真空中で加熱してグラフェンの基板側に存在する炭化水素を除去する(第3工程)。例えば、単層の炭素バッファー層を形成した場合、250〜650℃の範囲のいずれかの温度で加熱すればよい。また、上層にグラフェンが形成されている炭素バッファー層の場合、250〜950℃の範囲のいずれかの温度で加熱すればよい。
以上のことにより、ステップS102の水素処理により発生した問題が解消され、本来のグラフェンの優れた特性が得られるようになる。
以下、本発明の経緯について説明する。まず、水素処理によって形成したグラフェンが、期待される高移動度を示さない原因について調査した。原因を調べるため、133322PaのAr雰囲気で1750℃に加熱してSiC(0001)面に炭素バッファー層の上に1層のグラフェンを形成した構造の試料を作製し、大気圧の水素雰囲気において1000℃で3時間加熱し、SiC基板の上に炭素バッファー層のない2層のグラフェンの構造を作製した。
上述した2層のグラフェンを形成した表面についてX線光電子分光(XPS)測定を行った。この結果、図2に示すように、ノイズレベルのごく少量の酸素のピークが検出されたが、表面にはこの構造の構成元素である炭素と珪素のピークのみしか検出されなかった。次いで、各々の光電子ピークを測定し、ピークフィッティングによって詳細に解析したところ、図3A,図3Bに示すように、上述した表面で期待されるグラフェンとSiCのバルクおよびSi−H結合の状態に加え、炭化水素の存在を示す状態が確認された。
確認された炭化水素は、水素処理中にグラフェンやSiC中の炭素原子と雰囲気にある水素とが反応して生成され、炭素バッファー層であったグラフェンとSiC基板との間に留まったものと予測される。この炭化水素は、理想的な水素終端SiC上のグラフェンの構造には必要のないものであり、不純物である。また、後述するXPS測定のC1sスペクトルにおけるグラフェンとSiC基板との間からは、光電子分光では検出が困難な水素分子の残留も示唆され、これも不純物である。このため、これらが、前述した散乱の原因となっている不純物である可能性がある。
発明者らの、上述した鋭意検討の結果により判明した不純物と思われる炭化水素を除去する目的で、真空中における加熱処理を検討した。上述した測定を行った試料を、2×10-6Pa以下の真空中において550℃で10分間加熱し、この後、XPSで測定した。このXPS測定により得られたC1sスペクトルを図4に示す。加熱後に炭化水素由来のピークが消失していることが分かる。
また、図3Aと図4とのC1s光電子スペクトルを比較すると、グラフェンのピーク強度はほとんど変化していないのに対し、SiCバルクに対応する炭素原子の状態のピーク強度は増加している。これらのことは、図5に示すように、炭化水素503が、グラフェン502とSiC基板501の間に存在していたことを示している。このように、水素処理直後と、これを加熱処理した後との両者の結果を比較することによって、水素処理後には存在していたグラフェンとSiC基板の間にあった不純物である炭化水素が、加熱処理によって消失したことが判明した。さらに、図5に示すように、水素分子504がグラフェン502とSiC基板501の間に侵入して初めてSiのダングリングボンドを終端することができるので、ここに水素分子504が残留していたと考えられ、これも消失すると考えられる。
以上の詳細な検討より、水素処理したグラフェンの電気特性の改善に真空中における加熱処理が有効であると考え、本発明に至った。本発明は、発明者らの鋭意検討によるXPSによる専門的な表面分析法と、測定結果の詳細な解析による水素処理後の界面状態と加熱処理による現象の解明という高度な解析によって初めて成し得たものであり、従来の技術の単純な延長による推測により達成できるものではない。
水素処理のみのグラフェン/SiC構造と、水素処理後に前述同様の550℃の真空中加熱処理を行ったグラフェン/SiC構造とを用いて各々ホールバー構造を作製し、両者の電気的特性の評価を行った。図6に、評価の結果を示す。図6において(a)が、真空中の加熱処理を行った後の状態を示し、(b)が真空中加熱処理前の状態を示している。
両者を比べると、真空中で加熱処理を施した構造を用いた場合(a)は、加熱処理の無い場合(b)に比べて移動度が約3倍になっている。このように、真空中加熱処理によって特性が改善されることが分かった。以上の結果から明らかなように、本発明によれば、水素処理によって特性が劣化したグラフェン/SiC構造について、電気的特性の改善が図れ、本来のグラフェンの優れた特性が得られるようになるという効果があることが示された。
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。
[実施例1]
はじめに、実施例1について説明する。まず、1層のグラフェンをSiC基板のSi面に形成し、次いで、30分間水素処理することで2層グラフェン/水素終端SiC構造を形成した。この水素処理によって2層グラフェンとなった構造を形成した試料を真空槽中に導入し、試料(SiC基板)背面に設置したヒータの輻射熱で加熱した。残留ガスとの反応を避けるため、試料加熱中の真空槽内の真空度を2×10-6Pa以下に保った。
ここで、グラフェンが形成されていないSiC基板では、1.33×10-2Pa程度の真空度でカーボンナノチューブが表面に形成されると報告されている(非特許文献7参照)。この報告の現象は、超高真空中ではグラフェンが形成されるところが、残留ガスによる表面劣化のためグラフェンがナノチューブ化していることによるものと推測されている。上述した報告は、C面[(000−1)指数面]における結果ではあるが、SiCの表面がこの程度の真空度の残留ガスと反応することを示しており、Si面においても基板表面が劣化することが推察される。これらのことから、加熱中の真空度は1.33×10-2Pa以下の真空度とすることが重要となる。
このような条件の下で真空中において試料を加熱し、加熱温度を段階的に100℃ずつ上昇させ、所定の温度に到達した後で一定時間保持し、この後、室温(25℃程度)近くまで冷却した後、XPSによって表面状態を分析した。この分析結果を図7に示す、図7は、実施例1の試料における炭素1s内殻準位の光電子スペクトルの加熱温度に対する変化を示す特性図である。283eV付近のSiCバルクのピークに対する284.5eV付近のグラフェンのピークの強度比が、真空状態とした直後から加熱するに従って大きくなっているのが分かる。
上述した状態を明確に示すため、加熱温度に対する強度比を図8に示す。図8に示すように、550℃までこの強度比が上昇し、この後ほぼ一定の値をとっている。このことは、前述の炭素1sスペクトルの詳細な解析から、グラフェン/水素終端SiC界面からの炭化水素分子の脱離が550℃で完了したことを示す。
また、図7に示すSiCバルクに対応するピークは、975℃の加熱で結合エネルギーが高い方へシフトしている。これは、表面付近のバンド湾曲が減少していることを示している。このバンド湾曲の減少は、終端していた水素原子の脱離が始まり、グラフェンが一部炭素バッファー層に戻り、グラフェン2層の状態から炭素バッファー層上にグラフェン1層が存在する状態に変化している現象に対応し、水素終端面が一部消失しはじめていることに対応する。
以上の結果より、2層グラフェン/水素終端SiC構造の場合には、真空中で550℃から950℃の間で加熱する工程によって、水素終端面を維持しつつ炭化水素を界面から除去できることが分かる。この処理により、図12を用いて説明した理想的なグラフェン/水素終端SiC界面を得ることができる。
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。実施例2では、SiC基板を加熱処理し、表面に炭素バッファー層のみが形成され、グラフェン層が表面に形成されていない状態の試料を作製した。この試料について、水素処理を施し、SiC基板の上に、1層のグラフェンが形成され、また、この下のSiが水素終端された状態とした。この試料について、前述した実施例1と同様の実験を行った。
実験では、2×10-6Pa程度の真空度の真空槽内で試料を加熱し、加熱温度を段階的に100℃ずつ上昇させ、所定の温度に到達した後で一定時間保持し、この後、室温(25℃程度)近くまで冷却した後、XPSによって表面状態を分析した。この分析結果を図9に示す。図9は、実施例2の試料における炭素1s内殻準位の光電子スペクトルの加熱温度に対する変化を示す特性図である。実施例1の結果と同様に、282.3eV付近のSiCバルクのピークに対する284.1eV付近のグラフェンのピークの強度比が、真空状態とした直後から加熱するに従って、大きくなっている。
上述した状態を明確にするために、加熱温度に対する強度比を図10に示す。図10に示すように、250℃の加熱で既に最大強度比に達し、950℃から強度比が下がり始めているのが分かる。このことから、250℃の加熱で既に炭化水素の脱離が完了し、理想的なグラフェン/水素終端SiC構造が形成されていることが分かる。次に、図9に示す炭素1sスペクトルのSiCバルクピークの位置に注目すると、650℃からピークの位置が、結合エネルギーが高い方へシフトしている。これは、実施例1の結果と同様に、グラフェンが炭素バッファー層に戻り、バンド湾曲が減少している現象に対応しており、水素終端面が一部消失しはじめていることに対応する。
以上の結果より、1層グラフェン/水素終端SiC構造の場合には、真空中で250℃から650℃の間で加熱する工程によって水素終端面を維持しつつ炭化水素を界面から除去できることが分かる。この処理により、図12を用いて説明した理想的なグラフェン/水素終端SiC界面を得ることができる。
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。実施例3では、前述した実施例1と同様な構造を作製した後、水素処理を1時間行って試料を作製し、実施例1と同様な実験を行った。この結果得られた加熱温度に対するSiCバルクのピークとグラフェンのピークの強度比を図11に示す。この場合は、強度比は250℃で一度増加するものの、350℃および450℃では小さくなり、650℃の加熱で再度増加する。
この350℃と450℃における強度比の減少は、グラフェンとSiC基板との間隔の増加を示しており、250℃でグラフェンとSiC基板との間に存在していた炭化水素と水素分子が脱離した後に、さらなる加熱で基板に拡散していた水素分子がこの空間に再度侵入してきたことを示唆している。さらに650℃まで加熱すると、この水素分子が脱離すると伴に、SiC基板からの水素分子の供給も無くなる。
以上の結果より、2層グラフェン/水素終端SiC構造の場合で水素処理時間が長い場合には、SiC基板に吸蔵される水素分子が多くなるため、複雑な変化を示すが、250℃の加熱からグラフェンとSiC基板との間に存在していた炭化水素と水素分子の脱離が開始し、水素終端面を維持しつつ界面から除去できることがわかる。また、上述した加熱処理により炭化水素に加えてグラフェンの基板側に存在する水素分子を除去することで、図12を用いて説明した理想的なグラフェン水素終端SiC界面を得ることができる。
以上に説明したように、本発明によれば、SiC基板を加熱した後で水素処理してグラフェンを形成した後、真空中で加熱するようにしたので、水素原子でSiC表面を終端した表面上にグラフェンが形成された構造において、本来のグラフェンの優れた特性が得られるようになる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
501…SiC基板、502…グラフェン、503…炭化水素、504…水素分子。

Claims (5)

  1. SiC基板を加熱して前記SiC基板の表面に6√3×6√3構造の炭素バッファー層を形成する第1工程と、
    前記SiC基板を加熱した状態で前記炭素バッファー層が形成されている前記SiC基板の表面に水素を供給し、前記炭素バッファー層と基板側のSiとの結合を切断してグラフェンとし、前記グラフェンと前記SiC基板との間に存在するSiのダングリングボンドを水素で終端する第2工程と、
    前記グラフェンを形成した前記SiC基板を真空中で加熱して前記グラフェンの前記基板側に存在する炭化水素を除去する第3工程と
    を備えることを特徴とするグラフェンの作製方法。
  2. 請求項1記載のグラフェンの作製方法において、
    前記第3工程では、前記炭化水素に加えて前記グラフェンの前記基板側に存在する水素分子を除去することを特徴とするグラフェンの作製方法。
  3. 請求項1または2記載のグラフェンの作製方法において、
    前記炭素バッファー層の上に形成されたグラフェンを備え、
    前記第3工程では、前記SiC基板を250〜950℃の範囲のいずれかの温度で加熱することを特徴とするグラフェンの作製方法。
  4. 請求項1または2記載のグラフェンの作製方法において、
    前記SiC基板の上には前記炭素バッファー層のみが形成され、
    前記第3工程では、前記SiC基板を250〜650℃の範囲のいずれかの温度で加熱することを特徴とするグラフェンの作製方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のグラフェンの作製方法において、
    前記第3工程では、真空度が1.33×10-2Pa以下の状態で前記加熱を行うことを特徴とするグラフェンの作製方法。
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