JP2014156284A - 貯液袋 - Google Patents

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徹哉 石井
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Abstract

【課題】海水などの環境液中に淡水等の被貯蔵液を貯える貯液袋において、当該貯液袋を所望の設計形状に維持できるようにする。
【解決手段】設計貯液量の被貯蔵液2が蓄えられるとともに環境液3中に浮かべられた設計浮遊状態の貯液袋1における水平軸Lと直交する断面形状は、水平軸Lに沿う方向の端部を含むほぼ全域において、短径を上下に向け、かつ長径が最大になる位置が上下方向の中央部よりも上側に偏った変形楕円形である。
【選択図】図1

Description

本発明は、海水等の環境液中に淡水等の被貯蔵液を貯蔵する貯液袋に関し、特に被貯蔵液が環境液よりも軽比重であり、環境液中に浮いた状態で設置される貯液袋に関する。
特許文献1には、海に浮かべられた貯液袋が記載されている。この貯液袋は、可撓性の膜によって構成され、海面に沿ってほぼ水平に延びる筒状になっている。その延び方向と直交する断面形状は、2つの円を上下にくっ付けた「8」の字状になっている。貯液袋の内部は、上下に2つの室に仕切られている。例えば上側の室に淡水が貯められ、下側の室に海水が貯められている。
特開2012−153425号公報
この種の貯液袋に水等の被貯蔵液を溜めるとともに該貯液袋を海の海水等の環境液中に浮かべた状態では、貯液袋を構成する膜に張力が作用する。この張力は、貯液袋の表面上において互いに直交する2つの主軸に沿う成分に分解できる。主軸は、貯液袋の形状に応じて設定される。通常、上記2つの張力成分の大きさは、貯液袋の表面上の位置によって異なる。さらに、膜は剪断的な力に抵抗することができないから、このような力がかかろうとすると変形を来し、所望の形状を維持できない。例えば長方形の膜において、これを平行四辺形にするような剪断的な力がかかろうとすると、膜は膜面に垂直な曲げ(うねり、シワ等)を伴なう変形を来す。このような膜からなる貯液袋においては、例えば特許文献1の貯液袋のように長手方向の端部が半円球面状になっていると、該半円球面状端部における内外圧力差の分布状態等によって、該半円球面状端部に剪断的な力がかかろうとして、該半円球面状端部が変形するおそれがある。
この発明は、貯液袋に所定量の被貯蔵液を溜めるとともに該貯液袋を海等の環境液中に浮かべた状態で、貯液袋をできるだけ所望の形状に維持することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、環境液中に被貯蔵液を貯える可撓性の貯液袋であって、設計貯液量の前記被貯蔵液が蓄えられるとともに前記環境液中に浮かべられた設計浮遊状態における水平軸と直交する断面形状が、前記水平軸に沿う方向の中央部及び端部において、好ましくは前記端部を含むほぼ全域において、短径を上下に向け、かつ長径が最大になる位置が上下方向の中央部よりも上側に偏った変形楕円形であることを第1の特徴とする。
これによって、環境液中で貯液袋に設計貯液量の被貯蔵液を注入したとき、貯液袋内の被貯蔵液の位置エネルギーを小さくでき、貯液袋の変形を抑制又は防止して、貯液袋をできるだけ所望の設状に保つことができる。前記第1の特徴のような形状として、一般的な丸い饅頭ないしは鏡餅を逆さにしたような逆さ饅頭形状や、一般的なコッペパンを逆さにしたような逆さコッペパン形状等が挙げられる。
ここで、前記水平軸は、貯液袋が該水平軸を含む鉛直面に関して略対称になるような軸であることが好ましく、前記貯液袋の平面視における直径方向又は長手方向に沿う軸であることが好ましい。また、前記水平軸は、貯液袋を環境液に浮かべた状態で概略水平を向いていればよく、完全な水平に対して数度程度傾いていてもよい。
設計貯液量とは、設計浮遊状態において貯液袋がほぼ完全(全体的)に張った状態ないしは膨らんだ状態における貯液袋の内容積に相当するものであり、貯液袋を構成する膜が伸び縮みしない非伸縮性である場合、貯液袋の形状から一義的に定まる。
一般に貯液袋は前記設計浮遊状態で設計される。
前記設計浮遊状態における外形状の上側部分における経線方向に沿う曲率半径が、下側部分における前記経線方向に沿う曲率半径よりも大きいことが好ましい。
これによって、前記長径が最大になる位置(平面視における外周部(赤道部))を中央よりも上側に確実に偏らせることができる。
ここで、貯液袋の「経線」とは、当該貯液袋の上端中央(北極点)及び下端中央(南極点)を通る鉛直面と当該貯液袋の表面とが交わる曲線を言う。
前記設計浮遊状態における外形状が、鉛直軸に関して実質的に回転対称形であることが好ましい。これによって、特許文献1のような筒形状にするよりも貯液袋に作用する最大張力を確実に小さくできる。なお、特許文献1では述べられていないが、特許文献1のような筒形状の袋は、延び方向の端部の解析が困難であり、該端部においてシワ等が出来やすく構造上も弱くなりやすい。これに対し、回転対称形状の貯液袋においては、上記のような端部が存在せず、端部をどのように構成するかを考慮する必要がない。
鉛直軸に関して実質的に回転対称な形状として、一般的な丸い饅頭ないしは鏡餅を逆さにしたような逆さ饅頭形状が挙げられる。
実質的に回転対称とは、厳密な回転対称に限られず、貯液袋の安定性を損なわない範囲で回転対称性が若干崩れている形状も含まれることを意味している。例えば、貯液袋の周方向の一箇所に被貯蔵液の注入用又は取り出し用の管との接続部や、繋留ロープの係着部や、凹凸模様が設けられているために回転対称性が崩れていてもよい。
貯液袋が、ある角度置きに回転対称であってもよい。例えば、貯液袋が、周方向にN個の膜部材に分割されており、2π/N(rad)ごとに回転対称であってもよい。ここで、Nは、2以上の整数であり、好ましくはN≧8である。
前記鉛直軸は、貯液袋を環境液に浮かべた状態で概略鉛直(上下方向)を向いていればよく、完全な鉛直に対して数度程度傾いていてもよい。
本発明に係る貯液袋は、環境液中に被貯蔵液を貯える可撓性の貯液袋であって、設計貯液量の前記被貯蔵液が蓄えられるとともに前記環境液中に浮かべられた設計浮遊状態における外形状が、平面視で円形かつ側面視で長軸及び短軸を有する変形楕円形であり、前記短軸が上下に向けられ、かつ平面視における外周部が、前記短軸方向の中央よりも上側に偏っていることを第2の特徴とする。
これによって、環境液中で貯液袋に設計貯液量の被貯蔵液を注入したとき、内部の被貯蔵液の表面積が当該貯液袋の表面積と実質的に等しいとの条件下において、貯液袋内の被貯蔵液の位置エネルギーを十分に小さくでき、好ましくは最小化できる。したがって、貯液袋の変形を確実に抑制又は防止でき、貯液袋を所望の形状に安定的に保つことができる。また、貯液袋の表面に沿う2方向の張力成分の大きさをなるべく等しくでき、かつ張力が貯液袋の表面上の位置に応じて変化するのを抑えることができる。好ましくは、貯液袋の全域にわたって2方向の張力成分をそれぞれ略一様かつ互いに略等大にすることができる。この貯液袋は、概略球形状であるから、特許文献1のような筒形状にするよりも張力を小さくできる。前記第2の特徴のような形状として、一般的な丸い饅頭ないしは鏡餅を逆さにしたような逆さ饅頭形状等が挙げられる。
前記設計浮遊状態における外形状が、平面視における外周部での内外圧力差(内圧−外圧)が、前記外周部での経線方向の張力と前記経線方向の曲率との積よりも大きくなる形状であることが好ましい。
これによって、貯液袋に設計貯液量の被貯蔵液を充填したとき、貯液袋の経線方向へ正の張力が作用するようにできるだけでなく、平面視における外周部(赤道部)においても緯線方向への正の張力が作用するようにでき、前記外周部(赤道部)が弛まないようにでき、ひいては、前記外周部(赤道部)に抉れ(内側へ断面V字状に折れ曲がった凹み)が発生しないようにできる。
なお、貯液袋の「緯線」とは、当該貯液袋の表面上をある高さにおいて水平に辿った曲線を言う。
設計浮遊状態の前記貯液袋の平面視における外周部が上下方向の中央部よりも上に位置していることが好ましい。これによって、被貯蔵液を充填したとき、前記外周部(赤道部)の内外圧力差が前記張力と曲率との積よりも確実に大きくなるようにでき、前記外周部(赤道部)が確実に弛まないようにできる。
前記設計浮遊状態における外形状の平面視における外周部の経線方向の曲率半径が、前記環境液の液面から前記貯液袋の底部までの距離の1/4より大きく、かつ前記貯液袋の上下方向の高さの1/2より小さいことが好ましい。
これによって、被貯蔵液を充填したとき、前記外周部(赤道部)に弛みひいては抉れが形成されるのを確実に防止でき、貯液袋の形状を所望に維持することができる。加えて、貯液袋内の被貯蔵液の位置エネルギーを確実に小さくでき、貯液袋を環境液中に安定的に浮遊させておくことができる。
なお、本発明の貯液袋においても、設計貯液量を越えて被貯蔵液を注入した場合、貯液袋が過度の張力によって変形し、場所によっては弛み、座屈等の変形を来すことが考えられる。たとえば、貯液袋が扁平かつ鉛直軸に関して回転対称(逆さ饅頭形状等)である場合に、設計貯液量を越えて貯液すると、貯液袋は球形に近づこうとして鉛直方向に膨らむが、貯液袋の赤道部(平面視における外周部)は縮もうとして弛み、更には抉れが出来るおそれがある。抉れの最奥部では膜が屈曲することで特異的なストレスが作用し、破損の原因になりやすい。一方、貯液量が設計貯液量を下回るときは、貯液袋が弛んで皺が出来たり折れ曲がったりしやすい。そうすると、貯液袋に局部的に過大な、かつ貯液袋を構成する膜の厚み方向に不均一な応力が作用し、ピンホールが形成される原因にもなる。
したがって、貯液袋の貯液量は、できるだけ設計貯液量またはそれに近い量に維持されるように管理することが好ましい。
また、設計貯液量が所要の貯液量より大きな1つの貯液袋に、設計貯液量未満の被貯蔵液を貯液するよりも、設計貯液量が所要の貯液量より小さな貯液袋を複数用意し、各貯液袋に設計貯液量まで被貯蔵液を溜めることが好ましい。或いは、上記複数の貯液袋のうち一部の貯液袋にはその貯液袋の設計貯液量まで被貯蔵液を溜め、他の貯液袋については完全に被貯蔵液を抜くことにしてもよい。被貯蔵液を完全に抜くことで、波浪による皺の開閉を抑え、ひいては膜の破損を抑えることができる。
前記設計浮遊状態における外形状が、当該貯液袋の表面上の全域において、互いに直交する2方向の張力が共に引っ張り方向に正になる形状であることが好ましい。
これによって、貯液袋に弛みが生じるのを確実に防止できる。このような形状として、平面視で円形かつ側面視で長軸及び短軸を有する変形楕円形であり、前記短軸が上下に向けられ、かつ平面視における外周部が、前記短軸方向の中央よりも上側に偏っている形状(第2の特徴)が挙げられ、好ましくは、平面視における外周部での内外圧力差(内圧−外圧)が、前記外周部での経線方向の張力と前記経線方向の曲率との積よりも大きくなる形状が挙げられ、更に好ましくは、外周部の経線方向の曲率半径が、前記環境液の液面から前記貯液袋の底部までの距離の1/4より大きく、かつ前記貯液袋の上下方向の高さの1/2より小さい形状が挙げられ、一層好ましくは、後記の式1を満たす形状が挙げられる。
前記設計浮遊状態における外形状が、当該貯液袋の表面上の全域において、互いに直交する2方向の張力がそれぞれ略一様かつ互いに略等大になる形状であることが好ましい。
これによって、貯液袋内の被貯蔵液の位置エネルギーを最小化でき、貯液袋を環境液中に確実に安定的に浮遊させておくことができる。このような形状として、平面視で円形かつ側面視で長軸及び短軸を有する変形楕円形であり、前記短軸が上下に向けられ、かつ平面視における外周部が、前記短軸方向の中央よりも上側に偏っている形状(第2の特徴)が挙げられ、好ましくは、平面視における外周部での内外圧力差(内圧−外圧)が、前記外周部での経線方向の張力と前記経線方向の曲率との積よりも大きくなる形状が挙げられ、更に好ましくは、外周部の経線方向の曲率半径が、前記環境液の液面から前記貯液袋の底部までの距離の1/4より大きく、かつ前記貯液袋の上下方向の高さの1/2より小さい形状が挙げられ、一層好ましくは、後記の式1を満たす形状が挙げられる。
前記設計浮遊状態における外形状が、概略下記の式1で表される形状であることが好ましい。
Figure 2014156284
ここで、λは、当該貯液袋の下端中央から貯液袋の表面上の任意の位置まで経線方向に辿った距離、
前記経線方向とは、当該貯液袋の上端中央と下端中央とを通る鉛直面と貯液袋の表面とが交わる曲線に沿う方向、
rは、前記短軸から前記位置までの、前記短軸と直交する半径方向の距離、
zは、前記環境液の液面を基準とする前記位置の高さ(前記液面より下側ではz<0、前記液面より上側ではz>0)、
,C,Cは、それぞれ正の定数である。
これによって、被貯蔵液の位置エネルギーを確実に最小化でき、貯液袋の形状を確実に安定化できる。そして、貯液袋に作用する2方向の張力成分を確実にそれぞれ略一様かつ互いに略等大にすることができる。したがって、貯液袋の形状を一層確実に安定化させることができる。
前記設計浮遊状態における外形状が、当該貯液袋を剛性曲面体であると仮定したときに前記剛性曲面体に剪断応力が実質的に発現しない非剪断応力発現形状であることが好ましい。
これによって、実際に環境液中で貯液袋に設計貯液量の被貯蔵液を注入した場合、貯液袋を構成する膜が膜面に垂直な曲げを伴なう変形等を来すのを防止でき、貯液袋にうねりやシワや折れ等が形成されるのを防止できる。ひいては、貯液袋をできるだけ設計通りの形状に維持することができる。
ここで、剪断応力とは、前記剛性曲面体の内外圧力差の分布状態等によって前記剛性曲面体に作用する剪断的な力に対する抵抗力を言い、主として前記剛性曲面体の表面に沿う剪断的な力に対する抵抗力を言う。
前記剛性曲面体ひいては貯液袋が非剪断応力発現形状であるか否かは、貯液袋の設計図等に基づいて有限要素法や境界要素法によって解析することができる。前記貯液袋を剛性曲面体であると仮定することによって、剪断応力が発現するか否かを確実に解析できる。
剪断応力が実質的に発現しないとは、剪断応力が全く発現しない形状のみならず、貯液袋の安定性を損なわない範囲で若干の剪断応力が発現する形状も含まれることを意味する。
前記非剪断応力発現形状としては、設計浮遊状態における水平軸と直交する断面形状が、前記水平軸に沿う方向の端部を含むほぼ全域において短径を上下に向け、かつ長径が最大になる位置が上下方向の中央部よりも上側に偏った変形楕円形である形状(第1の特徴)や、平面視で円形かつ側面視で長軸及び短軸を有する変形楕円形であり、前記短軸が上下に向けられ、かつ平面視における外周部が、前記短軸方向の中央よりも上側に偏っている形状(第2の特徴)が挙げられ、好ましくは前記第2の特徴のように鉛直軸に関して回転対称な形状が挙げられる。つまり、鉛直軸回転対称形状においては経線方向が常に張力の主軸となり、任意の経線を挟んでその両側が対称であるために、剪断応力は生じない。詳しく説明すると、剪断応力は、例えばある経線の一方側では上向きの力を受け、上記経線の他方側では下向きの力を受ける状態等のときに発現するが、回転対称形状においては上記経線に関して対称性を有しているからこのような状態にはならない。また、貯液袋を鉛直軸まわりに回転対称な形にすることで、特許文献1のような筒形状にするよりも貯液袋に作用する最大張力を確実に小さくできる。
更に前記剛性曲面体に曲げモーメントが実質的に発現しない非曲げモーメント発現形状であることが好ましい。
これによって、実際に環境液中で貯液袋に設計貯液量の被貯蔵液を注入したとき、貯液袋が曲げ変形を来すのを一層確実に防止でき、貯液袋を設計通りの形状に確実に維持することができる。
ここで、曲げモーメントとは、前記剛性曲面体の内外圧力差の分布状態等によって前記剛性曲面体を折り曲げようとする力に対する抵抗力を言う。
曲げモーメントが発現しない形状であるか否かは、貯液袋の設計図等に基づいて有限要素法や境界要素法によって解析することができる。前記貯液袋を剛性曲面体であると仮定することによって、曲げモーメントが発現するか否かを確実に解析できる。
曲げモーメントが実質的に発現しないとは、曲げモーメントが全く発現しない形状のみならず、貯液袋の安定性を損なわない範囲で若干の曲げモーメントが発現する形状も含まれることを意味する。
非曲げモーメント発現形状としては、設計浮遊状態における水平軸と直交する断面形状が、前記水平軸に沿う方向の端部を含むほぼ全域において短径を上下に向け、かつ長径が最大になる位置が上下方向の中央部よりも上側に偏った変形楕円形である形状(第1の特徴)や、平面視で円形かつ側面視で長軸及び短軸を有する変形楕円形であり、前記短軸が上下に向けられ、かつ平面視における外周部が、前記短軸方向の中央よりも上側に偏っている形状(第2の特徴)が挙げられ、好ましくは、平面視における外周部での内外圧力差(内圧−外圧)が、前記外周部での経線方向の張力と前記経線方向の曲率との積よりも大きくなる形状が挙げられ、更に好ましくは外周部の経線方向の曲率半径が、前記環境液の液面から前記貯液袋の底部までの距離の1/4より大きく、かつ前記貯液袋の上下方向の高さの1/2より小さい形状が挙げられ、一層好ましくは、前記式1を満たす形状が挙げられる。
上下に延び、かつ上下両端に向かうにしたがって幅が小さくなる複数の膜部材を含み、これら膜部材が、全体として環状になるように前記幅方向に並べられるとともに、隣接する膜部材の互いに対向する縁どうしが接合されていることことが好ましい。
これによって、非剪断応力発現形状の貯液袋を簡易に作製できる。また、貯液袋の形状を平面視で円形かつ側面視で変形楕円形にしたり、前記短軸に関して、膜部材の配置角度間隔置きに回転対称にしたりできる。
前記膜部材における前記短手方向の幅が最大である最大幅部が、当該膜部材の長手方向の中央よりも上側に偏っていることが好ましい。これによって、張力が貯液袋の表面上の位置に応じ変化するのを確実に抑えることができる。つまりは、貯液袋の全域にわたって張力を確実に一様化(均一化)できる。この結果、貯液袋の一部にシワが形成されるのを防止又は抑制できる。
前記膜部材が、可撓性かつ不透液性のゴム又は樹脂からなる膜本体と、前記膜本体に埋め込まれた基布とを含み、前記基布の経繊維が前記膜本体の長手方向に対して斜めに延びていることが好ましい。
基布によって膜部材を補強できる。長尺帯状の膜母材から複数の膜部材を切り出す場合、各膜部材として切り出される部分の長手方向を前記膜母材の長手方向に対して傾けることによって、前記複数の膜部材として切り出される部分における隣り合うものどうしを、前記切り出される部分の長手方向を膜母材の長手方向に対して平行にするよりも、膜母材の長手方向に大きく重ね合わせることができる。したがって、膜母材における廃棄される部分の面積を、前記切り出される部分の長手方向を膜母材の長手方向に対して平行にするよりも小さくできる。前記膜母材の長手方向と前記基布の経繊維の延び方向とは通常一致しているから、上記のようにして切り出された膜部材における基布の経繊維は、膜部材の長手方向に対して斜めになる。
本発明によれば、被貯蔵液を溜めた貯液袋を環境液中でできるだけ所望の形状に保つことができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る貯液袋を、海に浮かべ、かつ内部の貯液室に設計貯液量の水を充填した設計浮遊状態で示す正面図である。 図2は、上記貯液袋の平面図である。 図3は、上記貯液袋の内袋を正姿状態で示す正面図である。 図4は、図3のIV−IV線に沿う、上記内袋の断面図である。 図5は、上記貯液袋の外袋の膜部材の正面図である。 図6は、図5のVI−VI線に沿う、上記膜部材の断面図である。 図7は、内袋の各袋体のシワ部分を示す斜視図である。 図8は、本発明の第2実施形態に係る貯液袋を、海に浮かべ、かつ内部の貯液室に水を充填した状態で示す正面図である。 図9は、第2実施形態の貯液袋の一部を円柱座標系上で示す斜視図である。 図10は、本発明の第3実施形態に係る貯液袋を設計浮遊状態で示す正面図である。 図11は、上記第3実施形態における貯液袋の上下方向に沿う内外圧力差の分布を示すグラフである。 図12は、本発明の第4実施形態に係る貯液袋を設計浮遊状態で示す平面図である。 図13は、上記第4実施形態の貯液袋を設計浮遊状態で示す側面図である。 図14は、図13のXIV−XIV線に沿う、上記第4実施形態の貯液袋の正面断面図である。 図15は、本発明の第5実施形態に係る膜部材を、部分的に内部を断面にして示す平面図である。 図16は、図15の膜部材の元となる膜母材を、部分的に内部を断面にして示す平面図である。
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示したものである。海に可撓性の貯液袋1が設置されている。貯液袋1は、淡水2(被貯蔵液)を海水3(環境液)中に蓄えるのに用いられる。貯液袋1の内部に貯液室19が設けられており、この貯液室19に淡水2が充填されている。淡水2が海水3よりも軽比重であるために、貯液袋1が海面近くに浮かんでいる。貯液袋1の上部がわずかに海面から突出している。例えば、貯液袋1の下端から上端までの高さが1mとすると、貯液袋1の上部が約25mmだけ海面から出る。
図1及び図2に示すように、貯液袋1は、内袋10と、外袋20を備えている。外袋20の内部に内袋10が収容されている。内袋10は、密封された可撓性の袋であり、外袋20よりも液密性が高い。内袋10の内部が貯液室19になっている。貯液室19は密封されている。図3に示すように、正姿状態(膨らんだり折れ曲がったり等の変形をしていない状態)における内袋10は、正方形のシート状になっている。図1に示すように、使用状態(外袋20に収容され、かつ貯液室29には淡水2が充填された状態)における内袋10は、液圧によって外袋20の内面形状に倣うように変形されて外袋20と相似形になっている。
図3及び図4に示すように、内袋10は、複数の袋体11,11…からなる多重袋である。これら袋体11,11…が入れ子状に積層されることによって、内袋10が構成されている。袋体11の数は、例えば2〜100程度であり、好ましくは5〜20程度であるが、これに限定されるものではない。内袋10が、単層(1つの袋体11)になっていてもよい。各袋体11は可撓性を有している。ひいては内袋10が可撓性を有している。内袋10は、外袋20よりも軟らかい。最も内側の袋体11の内部空間が貯液室19を構成している。
複数の袋体11,11…は、互いに実質同一の構造(同一の形状及び同一の大きさ、並びに同一の材質)になっている。図3に示すように、各袋体11は、2枚の可撓性シートを重ね、周縁部を全周にわたって融着(ヒートシール)することによって構成され、平面視で正方形のシート状になっている。袋体11の周縁部には、ヒートシール部13が形成されている。(図3において、最も外側の袋体11のヒートシール部を斜線部にて示す。)或いは、袋体11は、1枚の可撓性シートを2ツ折りにし、折り目以外の3つの縁部を融着することによって構成されていてもよい。融着に代えて、接着剤を用いてもよい。可撓性シートは、ポリエチレン等の樹脂にて構成されている。ここでは、各袋体11ひいては内袋10の一辺の長さは例えば5m程度であり、したがって、内袋10の緯線方向DRφの周長は例えば10mであり、かつ内袋10の経線方向DRλの周長は例えば10mであるが、これに限られるものではない。
ここで、図1及び図2に示すように、緯線方向DRφは、貯液袋1を鉛直軸Lz(短軸)まわりに水平に巡る方向である。経線方向DRλは、緯線方向DRφと直交(交差)して、貯液袋1の上端中央及び下端中央を通るように貯液袋1のまわりを上下に巡る方向である。
図4に示すように、隣接する内外2つの袋体11,11どうしはぴったり接している。これら2つの袋体11,11どうし間には、水等の液体は勿論のこと、空気等のガスも殆ど入っていない。外側の袋体11に内側の袋体11を収容した後、これら内外の袋体11,11どうし間の空気を吸引機にて吸引して除去することで、これら内外の袋体11,11どうしをぴったりと重ね合わせることができる。
なお、これら2つの袋体11,11どうし間に多少の空気があってもよい。ただし、後述するように、ピンホールが形成されるのを防止するために、各袋体11のシワ状の折り目15(図7)が開閉しない程度に袋体11,11…どうしが密着し、かつ最も外側の袋体11が外袋20に密着していることが望ましい。
次に、外袋20の構造を説明する。
外袋20は、内袋10よりも耐張力性が高い可撓性の袋である。図1及び図2に示すように、外袋20の外形が、貯液袋1の外形になっている。外袋20ひいては貯液袋1は、設計浮遊状態又は使用状態において、貯液袋1を剛性曲面体であると仮定したときに剪断応力が発現しない非剪断応力発現形状になるように設計され、製造されている。
ここで、設計浮遊状態とは、貯液袋1に設計貯液量の淡水2が蓄えられるとともに該貯液袋1が海に浮かべられた状態を言う。
設計貯液量とは、全体的に弛み無く膨らんだときの貯液袋1の内容積に対応する水量である。通常、貯液袋1は設計浮遊状態で設計される。
上記剛性曲面体が非剪断応力発現形状であるか否かは、貯液袋1の設計図等に基づいて有限要素法や境界要素法によって解析できる。
なお、貯液袋1を構成する可撓性の膜は剪断力を支持しないために、剪断力が作用しようとすると曲げ等の変形を来す。逆に言うと、本発明に係る貯液袋においては、設計浮遊状態において剪断力を惹き起こすような力が作用しないために、曲げなどの変形を来すのを回避又は抑制できる。これによって、貯液袋1の形状を設計形状に保つことができる。
詳しくは、設計浮遊状態の貯液袋1は、鉛直軸Lzに関して回転対称形になっている。ここで、剪断応力は、ある軸を挟んで両側における上記軸と平行な力の向きが互いに逆向きになるときに発現するが、回転対称体においてはその対称性からして逆向きになることはない。したがって、設計浮遊状態の貯液袋1は非剪断応力発現形状である。
さらに、設計浮遊状態の貯液袋1の任意の水平軸と直交する鉛直な断面形状は、上記水平軸に沿う方向の端部を含む全域において、短軸を上下に向け、かつ長径が最大になる位置が上下方向の中央部よりも上側に偏った変形楕円形になっている。具体的には、外袋20の形状ひいては貯液袋1の形状は、球を上下に圧縮したような、或いは一般的な丸い餅や饅頭を逆さにしたような変形球形状(逆さ饅頭形状)になっている。この逆さ饅頭形状は、鉛直軸Lzに関して回転対称であり、したがって、非剪断応力発現形状である。
更に詳細には、外袋20ひいては貯液袋1は、平面視(図2)では円形状(真円状)になっており、かつ側面視ないしは正面視(図1)では変形楕円形状すなわち楕円に類似した形状になっている。図1に示すように、外袋20の側面視ないしは正面視における長軸はほぼ水平に向けられ、この長軸と直交(交差)する短軸Lzは上下(ほぼ鉛直)に向けられている。
貯液袋1の平面視における外周部25(以下、適宜「赤道部25」と称す)は、袋1の上下方向のちょうど中央よりも少し上側に偏っている。つまり、貯液袋1の上端部(以下、適宜「北極点27」と称す)から赤道部25までの上下方向の距離Lは、貯液袋1の赤道部25から下端部(以下、適宜「南極点28」と称す)までの上下方向の距離Lよりも小さい(L<L)。これら距離L,Lどうしの比は、L:L=1:1.1〜1:10程度が好ましい。
なお、赤道部25は、外袋20の短軸(鉛直軸)Lz周りの周長すなわち緯線方向DRφの周長が最大になる最大周長部である。
外袋20の経線方向DRλに沿う曲率半径は、赤道部25において最小になっている。言い換えると、外袋20の上下方向の両側部分における経線方向DRλに沿う曲率半径は、外袋20の上記赤道部25を含む中央部分における経線方向DRλに沿う曲率半径よりも大きい。更に、外袋20ひいては貯液袋1の上側部分における経線方向DRλに沿う曲率半径は、外袋20ひいては貯液袋1の下側部分における経線方向DRλに沿う曲率半径よりも大きい。
上記赤道部25の周長(すなわち外袋20の緯線方向DRφの最大周長)は、外袋20の経線方向DRλの周長よりも大きい。
さらに、貯液袋1の外袋20は、上記設計浮遊状態において赤道部25での内外圧力差Δpeが赤道部25での経線方向DRλの張力Tλと経線方向DRλの曲率κλとの積よりも大きい形状になるように、設計され製造されている。つまり、下式が成り立つ。
Δpe>Tλ・κλ (式A)
ここで、κλは、貯液袋1の内部から見た経線方向DRλの曲率(>0)である。これによって、赤道部25においては、緯線方向DRφ(測地線に沿う方向)に引っ張ろうとする力(正の張力)が作用する。つまり、以下に考察する通り、赤道部25における緯線方向の張力Tφが正の値になる。
φ>0 (式B)
すなわち、貯液袋1の赤道部25における内外圧力差Δpe(>0)による押圧力と張力Tλ,Tφとのバランスから
Δpe=Tλ・κλ+Tφ・κφ (式C)
が成り立つ。ここで、κφは、貯液袋1の内部から見た緯線方向DRφの曲率(>0)であり、赤道部25においては半径r(鉛直軸Lzまでの直線距離)の逆数と等しい(κφ=1/r)。なお、赤道部25においては、経線方向DRλと直交する測地線が緯線方向DRφと一致するため、経線方向張力Tλと緯線方向張力Tφとが直交する。貯液袋1に水を充填していくと、貯液袋1は上下に膨らもうとするから、赤道部25における経線方向の張力Tλ及び曲率κλは、それぞれ正の値(Tλ>0、κλ>0)を取る。したがって、式Cの右辺第1項は、Tλκλ>0である。よって、式Aを満たす場合、式Cの右辺第2項は、Tφκφ>0となり、Tφ>0が導かれる。要するに、貯液袋1においては、赤道部25での内外圧力差Δpeが経線方向張力Tλと経線方向曲率κλとの積よりも大きくなるように形成されることで、赤道部25が経線方向DRλには勿論のこと、緯線方向DRφにも引っ張られる。
貯液袋1における赤道部25よりも上下に離れた部分上の各位置では、貯液袋1の内部から見た曲率は正であるから、上述した赤道部25と同様に、経線方向DRλに正の張力(引っ張り力)が作用するとともに、上記経線方向DRλと直交する測地線に沿う方向(緯線方向とは不一致)にも正の張力(引っ張り力)が作用する。したがって、貯液袋1の全域において互いに直交する2方向の張力が共に引っ張り方向に正になっている。
外袋20の構造を更に説明する。
図1及び図2に示すように、外袋20は、複数の膜部材(殻部材)21と、上蓋部材22と、底部材23を含む。膜部材21の数は、貯液袋1の大きさ等によって増減し、例えば数十〜数百であるが、これに限定されるものではない。外袋20を平面視で概略円形状とするためには、膜部材21の数は8以上が好ましい。外袋20の製作にかかる負担を考えると、膜部材21の数は50以下が好ましい。図1及び図2における膜部材21の数は、作図の便宜を考慮したものである。図6に示すように、膜部材21は、ゴム材21a(膜本体)と、基布21bを有している。ゴム材21aの内部に基布21bが埋め込まれている。このため、膜部材21は、張力を加えても殆ど伸び縮みしない。
なお、外袋20の材質は上記に限られず、樹脂等にて構成されていてもよい。
図5に示すように、各膜部材21は、長手方向を上下に向けた細長シート状になっている。膜部材21の長手方向の長さは、上記内袋11の一辺の長さよりも小さい。ここでは、膜部材21の長手方向の長さは、例えば4.8mであり、したがって内袋11の一辺の長さよりも4%程度短いが、本発明はこれに限られるものではない。膜部材21の短手方向の幅は、長手方向の中央部近くの最大幅部21cにおいて最も大きく、長手方向の両端に向かうにしたがって小さくなっている。最大幅部21cの幅寸法は、例えば数十cm〜1m程度であるが、本発明はこれに限られるものではない。
なお、図5において、最大幅部21cの横幅は、当該膜部材21の長手方向の大きさに対して誇張されている。
上記最大幅部21cは、膜部材21の長手方向のちょうど中央よりも僅かな量だけに上側に偏っている。言い換えると、膜部材21の上端から最大幅部21cまでの長さLは、膜部材21の下端から最大幅部21cまでの長さLよりも僅かに短い(L<L)。これら長さL,Lどうしの比は、L:L=1:1.001〜1:(π/2)程度が好ましい。
なお、図5においては、上記2つの長さL,Lどうしの差、すなわち上記最大幅部21cの上側への偏り量は誇張されている。
図1に示すように、各膜部材21が、長手方向に沿ってU字状に曲げられている。そして、複数の膜部材21どうしが、全体として環状ひいては球状になるように各膜部材21の短手方向すなわち緯線方向DRφに並べられ、隣接する膜部材21の互いに対向する縁どうしが接合されている。これによって、概略球形状の外袋20が構成されている。ひいては、貯液袋1の形状が、該貯液袋1の短軸Lzに関して、膜部材21の配置角度間隔置きに回転対称になっている。膜部材21,21どうしの接合手段としては接着剤が用いられている。接着剤の材質は、例えばノントルエン・非塩素系加硫接着剤等の溶剤型加硫接着剤(ゴム糊)である。また、隣接する2つの膜部材21,21の端部どうしを重ね合わせ、かつこれら端部どうしの間に未加硫ゴム(架橋剤入り)を挟んだうえで、例えば150℃程度に加熱することにしてもよい。すると、上記未加硫ゴムが架橋反応を起こして膜部材21を構成する加硫ゴムの分子と結びつくことで、2つの膜部材21,21の端部どうしが接着される。
外袋20の緯線方向DRφの周長は、内袋10の緯線方向DRφの周長よりも短く、かつ外袋20の経線方向DRλの周長は、内袋10の経線方向DRλの周長よりも短い。好ましくは、貯液袋1の上下方向のどの位置においても、外袋20の緯線方向DRφの周長が内袋10の緯線方向DRφの周長よりも短く、貯液袋1の鉛直軸まわりのどの角度においても、外袋20の経線方向DRλの周長が内袋10の経線方向DRλの周長よりも短い。ここでは、外袋20の周長は、内袋10の周長よりも例えば4%程度短く、9.6m程度であるが、本発明はこれに限られるものではない。
図7に示すように、上記の寸法関係のために、外袋20内における内袋10の各袋体11には、部分的又は全体的に多数のシワ状の折り目15が形成されている。そして、貯液室19に淡水2が充填されることで、内袋10が、液圧によって外袋20の形状に倣うように変形されて外袋20に押し当てられている。これによって、内袋10に作用する張力が低減されている。外袋20は、ゴム材21a及び基布21bからなる耐張力構造になっているから、張力を十分に担うことができる。さらに、上記の押し当てによって、内袋10を外袋20に対して拘束(位置固定)でき、折り目15が波浪等の外力で開いたり閉じたり(図7の実線の状態と二点鎖線の状態との間で変位)するのを防止又は抑制できる。これによって、折り目15における疲労劣化を抑制でき、折り目15の特に交点15pにピンホールが形成されるのを防止できる。
外袋20の上端部には上蓋部材22が設けられている。上蓋部材22は、円板形状になっている。上蓋部材22の材質は、ポリ塩化ビニル等の樹脂であるが、これに限定されるものではなく、金属又はゴムにて構成されていてもよい。上蓋部材22は、複数の膜部材21の上端部に被さっている。
外袋20の下端部には底部材23が設けられている。底部材23は、円板形状になっている。底部材23の材質は、膜部材21と同じであるが、これに限定されるものではなく、樹脂や金属にて構成されていてもよい。底部材23は、複数の膜部材21の下端部に被さっている。
なお、図示は省略するが、貯液袋1は、漂流しないように繋留ロープにて繋留されている。
図1に示すように、貯液袋1には送液管4が接続されている。送液管4を介して淡水2を貯液室19に出し入れすることができる。
なお、図1においては、送液管4は貯液袋1の上端部に接続されているが、これに限られず、貯液袋1の周側部や底部に送液管4との接続部が設けられていてもよい。また、淡水2を貯液室19に入れるための管と、淡水2を貯液室19から出すための管とを別々に設けてもよい。
上記構成の貯液袋1によれば、剛性曲面体であると仮定したときに、剪断応力が発現しない非剪断応力発現形状になっているために、実際に海中で貯液袋1に設計貯液量の被貯蔵水2を充填した場合、貯液袋1が部分的に折れ曲がったり、うねりやシワが出来たりする等の変形を来すのを防止できる。これによって、貯液袋1を所望の形状に維持することができる。
また、貯液袋1は、赤道部25での内外圧力差Δpeが赤道部25での経線方向DRλの張力Tλと経線方向DRλの曲率κλとの積よりも大きくなるように形成されているために、赤道部25が緯線方向に引っ張られるようにすることができる。したがって、赤道部25の周辺が弛まないようにでき、ひいては赤道部25の周辺に抉れ(断面V字状に折れ曲がった凹み)が発生するのを防止できる。よって、抉れの最奥の屈曲部等に起因するピンホール等の損傷が生じるのを回避できる。さらに、貯液袋1の全域において2方向の張力Tφ,Tλが共に引っ張り方向に正になっているために、貯液袋1の全域にわたって弛みが生じないようにすることができる。
さらに、貯液袋1は、その外形状が上下に圧縮された変形球形状(一般的な丸い餅ないしは饅頭を逆さにしたような逆さ饅頭形状)になっているために、剛性曲面体であると仮定したときに、確実に剪断応力が発現しないようにでき、ひいては貯液袋1を確実に所望の設計形状に維持することができる。加えて、貯液袋1によれば、内部の淡水2の表面積が貯液袋1の表面積と実質的に等しいとの条件下において、淡水2の位置エネルギーをなるべく小さくでき、ひいては最小化できる。したがって、貯液袋1の形状を安定化でき、張力が貯液袋1の表面上の位置に応じて変化するのを抑制できる。更には、貯液袋1の全域にわたって2方向の張力Tφ,Tλをそれぞれ略一様かつ互いに略等大にすることができる。しかも、この貯液袋1は、概略球形状であるから、特許文献1のような筒形状にするよりも貯液袋の各部位における張力を小さくできる。
なお、上記淡水2の位置エネルギーは、Z<0が海水及び淡水、Z>0が大気としたときの位置エネルギーを基準とする。つまり、海に貯液室19に相当する凹部空間が形成されていると仮定したとき、海面高さ(海抜0m)から上記凹部空間内に淡水を海面高さまで注入するときに仕事として取り出せるエネルギーEを基準とする。海に上記凹部空間を形成するのに要するエネルギーすなわち上記凹部空間の海水を汲み出すエネルギーをEとし、貯液室19における海面より上に突出した部分に淡水を海面高さから揚げ入れるのに要するエネルギーをEとすると、淡水2の位置エネルギーEは、
E=(E+E)−E
となる。
また、貯液袋1によれば、外袋20を複数の膜部材21にて構成することによって、貯液袋1の外形状を確実に平面視で円形かつ側面視で変形楕円形にすることができる。
さらに、最大幅部21cを膜部材21の長手方向の中央よりも上側に偏らせたことによって、外袋20に作用する張力をより確実に均一化でき、外袋20ひいては貯液袋1の一部にシワが形成されるのを防止又は抑制できる。
また、外袋20によって、漂流物や海中構造物等に対する衝突強度を確保できる。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。 図8は、本発明の第2実施形態を示したものである。同図に示すように、第2実施形態の貯液袋1は、第1実施形態の形状要件に加えて、設計浮遊状態において概略下記の式1で表される形状になるように設計され、製造される。
Figure 2014156284
ここで、λは、貯液袋1の下端中央すなわち南極点28(z=a)から貯液袋1の表面上の任意の位置1pまで貯液袋1の表面に沿って経線方向DRλに辿った距離である。
rは、短軸Lzから位置1pまでの短軸Lzと直交する半径方向の距離である。
zは、海面を基準とする位置1pの高さである。つまり、海面高さをz=0として短軸Lzと同軸にz軸を取ったときにおける位置1pのz座標である。
,C,C2は、それぞれ正の定数である。
第2実施形態によれば、貯液袋1内の淡水2の表面積が一定との条件のもとで、貯液袋1の表面上の全域において、2方向DRλ,DRφの張力Tλ,Tφをそれぞれ略一様(場所に依らず略一定)かつ互いに略等大(Tλ=Tφ)にすることができる。これによって、淡水2の位置エネルギーEをほぼ最小化でき、貯液袋1の形状を確実に安定化でき、貯液袋1を海中に安定的に浮遊させておくことができる。また、貯液袋1を確実に非剪断応力発現形状にできる。
式1の導出過程の一例を説明する。
図8に示すように、静止海面をz=0とし、貯液袋1の下端中央(短軸Lzとの下側の交点、南極点28)のz座標をz=−aとし、貯液袋1の上端中央(短軸Lzとの上側の交点、北極点27)のz座標をz=bとする。
貯液袋1ひいては淡水2の表面積S及び体積Vは、それぞれ下式にて表される。
Figure 2014156284
Figure 2014156284
淡水2の位置エネルギーEは、第1実施形態にて説明した基準位置エネルギーEを基準として、下式にて表される。
Figure 2014156284
ここで、gは重力加速度である。Δρ(z)は、高さzにおける貯液袋1の内部の流体の密度から貯液袋1の外部の流体の密度を差し引いた量である。したがって、z>0では、Δρ(z)=淡水の密度−空気の密度>0である。z<0では、Δρ(z)=淡水の密度−海水の密度<0である。設計体積V及び表面積Sに対して位置エネルギーEが最小になるように貯液袋1の形状を決定すれば(rをzの関数として求めれば)、それが貯液袋1の最も安定した形状になる。
貯液袋1の上記安定形状は、ラグランジュの未定乗数法によって求めることができる。すなわち、ラグランジュの未定乗数p,Tを導入して、積分Fを下式のように定義し、与えられたp,TのもとでFを最小とする。
Figure 2014156284
ここで、
Figure 2014156284
である。
積分Fを最小にするには、下記のオイラーラグランジュの方程式を以下の境界条件のもとに解けばよい。
Figure 2014156284
なお、
Figure 2014156284
である。
境界条件は、
Figure 2014156284
である。
具体的に、式7を計算することで、下式が得られる。
Figure 2014156284
半径方向距離rと高さzと経線方向距離λとの関係は、
Figure 2014156284
であるから、式10及び式11から下式が得られる。
Figure 2014156284
=p/T、C=g・(海水の密度−淡水の密度)/T、C=g・(淡水の密度−空気の密度)/Tとすることで、式12から下式が得られる。
Figure 2014156284
次に、貯液袋1の表面形状が式11ひいては式1を満たすときの張力分布について考察する。
図9に示すように、円柱座標系(r,φ,z)において貯液袋1の表面上の微小面素s(図9の斜線部)を考える。円柱座標系を採用したのは、貯液袋1がz軸に関して回転対称だからである。なお、図9において、面素sの大きさは誇張されている。面素sは、φ=0つまり経度0上にある任意の位置1p|φ=0を中心とし、経度−(φ/2)〜+(φ/2)、高さz−(dz/2)〜z+(dz/2)の台形状領域である。面素sが受ける力Fsは、2次以上の微分成分を無視して、円柱座標系で下式のようになる。
Figure 2014156284
貯液袋1の表面上の点における経線方向DRλに沿って南極点28側から北極点27側へ向かう接線ベクトルと上記点を通るr軸方向とのなす角度をとすると、
Figure 2014156284
であるから、式13の第二項のベクトルは、
Figure 2014156284
であり、位置1p|φ=0における単位法線ベクトル
Figure 2014156284
と平行である。
したがって、力Fs(式13)と、位置1p|φ=0における単位法線ベクトル(式16)との外積を取ると、式13の第二項のベクトルと式16の法線ベクトルとの外積の各成分が0になることから、下式が導かれる。
Figure 2014156284
式17において、Tλがλに依らない(経線方向DRλに一様)とすると、式17の左辺第一項は0であり、かつ貯液袋1は鉛直軸Lまわりに回転対称であるからTλはφにも依らない。したがって、Tλは、DRλ及びDRφの両方向に一様(一定)である。また、rはλの関数であるから、式17より、Tλ―Tφ=0となる。すなわち、2方向の張力成分Tλ,Tφは、それぞれ一様であれば互いに等大(Tλ=Tφ)であり、逆に、互いに等大であればそれぞれ一様である。要するに、貯液袋1の設計形状が式1を満たす場合、2方向の張力成分Tλ,Tφは、それぞれ一様かつ互いに等大である。
次に、式5及び式12における未定乗数p,Tの物理的意味付けを説明する。
面素sにおいて貯液袋1の内外の圧力差と力Fsとは、中心位置1p|φ=0での法線上でバランスすることから、「式13のベクトルと式16の法線ベクトルとの内積」+「面素sの面積と内外圧力差(内圧−外圧)との積」=0より、下式が導かれる。
Figure 2014156284
ここで、pは、海面高さ(z=0)における貯液袋1内の淡水2の圧力(ゲージ圧)である。高さzにおける貯液袋1の内外圧力差Δpは、Δp=p−gΔρzとなる。貯液袋1に作用する張力は等方性を有しているから(Tλ=Tφ)、式18は下記のようになる。
Figure 2014156284
この式19と、上述した式10すなわち
Figure 2014156284
とを対比することで、ラグランジュの未定乗数T,pは、それぞれT=Tλ=Tφ、p=pと意味付けされる。すなわち、未定乗数Tは、貯液袋1の設定張力Tλ=Tφに相当し、未定乗数pは、海面高さ(z=0)における貯液袋1内の淡水2の設定圧力pに相当する。
したがって、所望の貯水量V,表面積S,張力Tλ=Tφ,圧力p等を設定することによって、式1に基づき貯液袋1の好適形状ひいては最適形状を求めることができる。
図8の貯液袋1の形状は、式1及び式12に以下のパラメータを当てはめて数値実験した結果を示したものである。
淡水2の密度 1000kg/m
海水3の密度 1025kg/m
貯液袋1の上端中央の高さb=0.02575m
貯液袋1の下端中央の高さ−a=−1m
張力Tλ=Tφ=57.39125N/m
海面高さ(z=0)での貯液袋1の内圧p=252.35Pa
経線方向DRλの周長 9.7m
緯線方向DRφの最大周長 13.7m
表面積S=36.1m
体積V=12.2m
図8に示すように、貯液袋1の好適形状若しくは最適形状は、ちょうど一般的な丸い餅又は饅頭を逆さにしたような形状になった。また、赤道部25は、貯液袋1の上下方向のちょうど中央よりも少し上側に偏り、L<Lになった。
図10及び図11は、本発明の第3実施形態を示したものである。図10に示すように、第3実施形態に係る貯液袋1は、第1実施形態の形状要件に加えて、好ましくは第1実施形態及び第2実施形態の形状要件に加えて、設計貯液量の水2が蓄えられるとともに海3に浮かべられた設計浮遊状態において、式20が満たされる形状になるように設計され、製造される。
Figure 2014156284
つまりは、貯液袋1は、設計浮遊状態において、赤道部25での経線方向DRλの曲率半径Rλ(=1/κλ)が、海面から貯液袋1の底部つまりは南極点28(z=−a)までの距離|a|の1/4より大きく、かつ貯液袋1の上下方向の高さ(|a|+|b|)の1/2より小さくなるように形成されている。これによって、以下に述べる通り、貯液袋1の赤道部25等における弛みを確実に防止できるとともに、被貯蔵水2の位置エネルギーを確実に小さくでき、貯液袋1の形状を確実に安定化できる。さらに、2方向の張力成分Tλ,Tφを確実に一様かつ等大にできる。
すなわち、貯液袋1における南極点28(z=−a)及び北極点27(z=b)を通る任意の鉛直な断面の全周に働く張力の積分値Fは、圧力と張力のバランスにより次式にて表される。
Figure 2014156284
ここで、pは、貯液袋1の海面での内圧(海面での内外圧力差と等大)である。Δρは、貯液袋1の内部の液(水)の密度と外部の流体(z>0では空気、z≦0では海水)の密度との差である。p−gΔρzは、高さzにおける貯液袋1の内外圧力差Δp(内圧−外圧)である。r(z)は、高さzにおける貯液袋1の半径である。
貯液袋1の上下方向の任意の高さzにおける半径r(z)は、赤道部25の半径re以下であるから、
Figure 2014156284
となる。式24の右辺の積分の値は、図11に示す点−a,p−a,p,p,bにて作る五角形の面積Sに近似する。この五角形の面積Sは、点−a’,p,b’にて作る三角形の面積Sより小さい(S<S)。ここで、a’=(p/|gΔρ|)、b’=(p/|gΔρ|)である。Δρは、水と海水の密度差である。Δρは、水と空気の密度差(実質的には水の密度)である。したがって、次式の関係が導かれる。
Figure 2014156284
さらに、α=|Δρ|/|Δρ|とおくと、次式が導かれる。
Figure 2014156284
一方、貯液袋1における上記鉛直な断面の周長をLλとすると、Lλ>4reであり、かつTλλ=Fであるから、
Figure 2014156284
である。式24及び式25より、
Figure 2014156284
との関係が導かれる。
さらに、貯液袋1の赤道部25(z=Ze)における内外圧力差(Δpe=p−g|Δρ||Ze|)は、赤道部25における経線方向の曲率κλ(=1/Rλ)と経線方向の張力Tλとの積より大きいから(式A)、式A及び式26より下式が導かれる。
Figure 2014156284
が導かれる。赤道部25における内外圧力差(Δpe=p−g|Δρ||Ze|)は、海面における内外圧力差pより小さいから、式27より下式が導かれる。
Figure 2014156284
さらに、p>(p−p−a)=g|Δρ|aであるから、式28より下式が導かれる。
Figure 2014156284
さらに、α=|Δρ|/|Δρ|≒1/40>0であるから、式29より下式が導かれる。
Figure 2014156284
したがって、κλ=1/Rλより、下記の関係が導かれる。
Figure 2014156284
また、貯液袋1を安定させるうえで、貯液袋1の赤道部25における水平方向の直径は、貯液袋1の上下方向の高さ(a+b)より小さいことが好ましいから、下記の関係が導かれる。
Figure 2014156284
第3実施形態の貯液袋1によれば、式20(式31及び式32)を満たすことで、設計浮遊状態において赤道部25の周辺に弛みひいては抉れが発生するのを確実に防止できるとともに、被貯蔵水2の表面積が貯液袋1の表面積と実質的に等しいとの条件下において、被貯蔵水2の位置エネルギーを確実に小さくでき、貯液袋1の形状を確実に安定化できる。また、貯液袋1の全域にわたって2方向の張力成分Tλ、Tφをそれぞれ略一様かつ互いに略等大にすることができる。
さらに、第3実施形態の貯液袋1は、設計浮遊状態において該貯液袋1を剛性曲面体であると仮定したときに該剛性曲面体に曲げモーメントが発現しない非曲げモーメント発現形状になるように設計され、製造されている。第3実施形態の貯液袋1によれば、式A及び式20等を満たすことで、確実に非曲げモーメント発現形状にできる。上記剛性曲面体が非曲げモーメント発現形状であるか否かは、貯液袋1の設計図等に基づいて有限要素法や境界要素法によって解析することができる。
なお、貯液袋1を構成する膜は、曲げようとする力が作用すると、これに抵抗できないために、曲げ等の変形を来す。逆に言うと、本発明に係る貯液袋1においては、設計浮遊状態において曲げようとする力が作用しないために、曲げなどの変形を来すのを回避又は抑制できる。これによって、貯液袋の形状を設計形状に保つことができる。
図12〜図14は、本発明の第4施形態を示したものである。第4実施形態に係る貯液袋1Cは、設計浮遊状態において、一般的なコッペパンを逆さにしたような逆さコッペパン形状になっている。すなわち、図12に示すように、貯液袋1Cは、1つの水平軸Lに沿って長く延びている。図12及び図13に示すように、貯液袋1Cの平面視における外周部25(赤道部)は、貯液袋1Cの上下方向の中央部よりも上側に偏っている。図14に示すように、貯液袋1Cの長手方向Lと直交する断面形状は、長手方向Lの全域すなわち長手方向Lの端部においても長手方向Lの中央部においても、短軸を上下に向け、かつ長径が最大になる位置が上下方向の中央部よりも上側に偏った変形楕円形になっている。
第4実施形態の貯液袋1Cによれば、設計浮遊状態において、該貯液袋1を剛性曲面体であると仮定したときに該剛性曲面体に曲げモーメントが発現しない非曲げモーメント発現形状にすることができる。したがって、貯液袋1Cに曲げ等の変形が生じるのを防止でき、貯液袋1Cの形状を維持することができる。また、赤道部25が緯線方向に引っ張られるようにでき、赤道部25の周辺に弛み、ひいては抉れが発生するのを防止できる。
図15及び図16は、本発明の第5実施形態を示したものである。第5実施形態は、膜部材21の変形例に係る。図15に示すように、膜部材21は、膜本体21aと、基布21bを含む。膜本体21aは、ゴムにて構成され、可撓性かつ不透液性を有している。なお、膜本体21aの材質として、可撓性かつ不透液性を有する樹脂を用いてもよい。
膜本体21aに基布21bが埋まっている。基布21bは、経繊維32aと緯繊維32bを含む。経繊維32aの延び方向(繊維方向)は、膜部材21の長手方向に対して斜めになっている。好ましくは、膜部材21の長手方向と経繊維32aの延び方向とのなす角度θは、貯液袋1における膜部材21の個数をNとすると、θ=π/N(rad)であり、かつ膜部材21の両端部の角度θ=2π/Nの2分の1である(θ=(1/2)θ)。
図16に示すように、膜母材30から複数の膜部材21が切り出される。これら膜部材21を幅方向に環状に連ねることによって貯液袋1が構成される。膜母材30は、各膜部材21の長さより十分に長い長尺帯状ないしは反物状になっている。膜母材30の幅寸法は、膜部材21の幅寸法より少し大きい。膜母材30は、膜本体21aとなるべき膜本体31と、基布21bとなるべき基布32とを含む。膜本体31は、膜本体21aと同一素材(可撓性かつ不透液性のゴム又は樹脂)にて構成されている。
膜本体31に基布32が埋め込まれている。基布32は、経繊維32aと緯繊維32bを例えば平織りすることによって構成されている。経繊維32aの延び方向(繊維方向)は、基布32の延び方向と一致している。緯繊維32bは、基布32の幅方向に延びている。
膜母材30における膜部材21,21…として切り出される部分38,38…は、膜母材30の長手方向に一列に並んでいる。各切り出し部分38の長手方向は、膜母材30の延び方向ひいては経繊維32aの延び方向に対して斜めになっている。複数の切り出し部分38,38…どうしの長手方向は互いに平行になっている。切り出し部分38の長手方向と膜母材30の延び方向とのなす角度θは、好ましくはθ=π/N(rad)である。
これによって、切り出し部分38の長手方向を膜母材30の延び方向と平行にした場合(θ=0)よりも、隣り合う2つの切り出し部分38,38どうしを膜母材30の長手方向に大きく重複させることができる。したがって、膜母材30における膜部材21とならずに廃棄される部分39の面積を、上記平行(θ=0)にした場合よりも小さくできる。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
例えば、内袋10が、内部に淡水2が充填された場合、該内袋10単独で(外袋20に収容されていなくても)、外袋20と相似形の変形球形状になるようにしてもよい。
貯液袋1が、単一の袋で構成されていてもよい。内袋10だけでなく外袋20をも複数の袋体を重ねた多重袋にて構成してもよく、外袋20を多重袋にて構成し、かつ内袋10を単一の袋にて構成してもよい。外袋20及び内袋10をそれぞれ単一の袋にて構成してもよい。
貯液袋1が、外袋20と同じ形状の膜体からなる多重袋であってもよい。
貯液袋は、設計図レベルで非剪断応力発現形状、非曲げモーメント発現形状、変形球形ないしは側面視変形楕円形等であればよく、実際の貯液袋には、全体の形状に影響を与えない程度の大きさの剪断応力発現部や曲げモーメント発現部が有ってもよい。例えば、実際の貯液袋が、上記剪断応力発現部又は曲げモーメント発現部として、膜どうしの貼り合わせ等による段差や、膜の素材自体による凹凸等を有していてもよい。
前記設計浮遊状態の前記貯液袋の好適態様において、2方向の張力Tφ,Tλは、厳密に一様かつ等大である必要は無く、概略一様かつ等大であればよい。また、貯液袋の形状は、厳密に式1を満たす必要はなく、式1を概略満たす形状であればよい。
被貯蔵液は、淡水2に限られず、石油やアルコール等であってもよい。
環境液は、海水3に限られず、貯水池の水や石油タンク内の石油等でもよい。
貯液袋1の設置場所は、海に限られず、貯水池や石油タンク等でもよい。
第2実施形態の貯液袋1の形状を表す式1において、定数C,C,Cは、第2実施形態で述べた物理的意義を有するものに限られず、任意に設定可能である。
本発明は、例えば海中に淡水を貯蔵するシステムに適用可能である。
1,1C 貯液袋
2 淡水(被貯蔵液)
3 海水(環境液)
4 送液管
10 内袋
11 袋体
13 ヒートシール部
19 貯液室
20 外袋
21 膜部材
21a ゴム材(膜本体)
21b 基布
21c 最大幅部
22 上蓋部材
23 底部材
25 赤道部(最大周長部、平面視における外周部)
30 膜母材
31 膜本体
32 基布
32a 経繊維
32b 緯繊維
38 切り出される部分
39 廃棄される部分
DRφ 緯線方向(第1周方向)
DRλ 経線方向(第2周方向)
水平軸

Claims (14)

  1. 環境液中に被貯蔵液を貯える可撓性の貯液袋であって、
    設計貯液量の前記被貯蔵液が蓄えられるとともに前記環境液中に浮かべられた設計浮遊状態における水平軸と直交する断面形状が、前記水平軸に沿う方向の中央部及び端部において、短径を上下に向け、かつ長径が最大になる位置が上下方向の中央部よりも上側に偏った変形楕円形であることを特徴とする貯液袋。
  2. 前記設計浮遊状態における外形状の上側部分における経線方向に沿う曲率半径が、下側部分における前記経線方向に沿う曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の貯液袋。
  3. 前記設計浮遊状態における外形状が、鉛直軸に関して実質的に回転対称形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯液袋。
  4. 環境液中に被貯蔵液を貯える可撓性の貯液袋であって、
    設計貯液量の前記被貯蔵液が蓄えられるとともに前記環境液中に浮かべられた設計浮遊状態における外形状が、平面視で円形かつ側面視で長軸及び短軸を有する変形楕円形であり、前記短軸が上下に向けられ、かつ平面視における外周部が、前記短軸方向の中央よりも上側に偏っていることを特徴とする貯液袋。
  5. 前記設計浮遊状態における外形状が、平面視における外周部での内外圧力差が、前記外周部での経線方向の張力と前記経線方向の曲率との積よりも大きくなる形状であることを特徴とする請求項3又は4に記載の貯液袋。
  6. 前記設計浮遊状態における外形状の平面視における外周部の経線方向の曲率半径が、前記環境液の液面から前記貯液袋の底部までの距離の1/4より大きく、かつ前記貯液袋の上下方向の高さの1/2より小さいことを特徴とする請求項5に記載の貯液袋。
  7. 前記設計浮遊状態における外形状が、当該貯液袋の表面上の全域において、互いに直交する2方向の張力が共に引っ張り方向に正になる形状であることを特徴とする請求項5又は6に記載の貯液袋。
  8. 前記設計浮遊状態における外形状が、当該貯液袋の表面上の全域において、互いに直交する2方向の張力がそれぞれ略一様かつ互いに略等大になる形状であることを特徴とする請求項7に記載の貯液袋。
  9. 前記設計浮遊状態における外形状が、概略下記の式1で表される形状であることを特徴とする請求項3〜8の何れか1項に記載の貯液袋。
    Figure 2014156284
    ここで、λは、当該貯液袋の下端中央から貯液袋の表面上の任意の位置まで経線方向に辿った距離、
    前記経線方向とは、当該貯液袋の上端中央と下端中央とを通る鉛直面と貯液袋の表面とが交わる曲線に沿う方向、
    rは、前記短軸から前記位置までの、前記短軸と直交する半径方向の距離、
    zは、前記環境液の液面を基準とする前記位置の高さ、
    ,C,Cは、それぞれ正の定数である。
  10. 前記設計浮遊状態における外形状が、当該貯液袋を剛性曲面体であると仮定したときに前記剛性曲面体に剪断応力が実質的に発現しない形状であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の貯液袋。
  11. 更に前記剛性曲面体に曲げモーメントが実質的に発現しない形状であることを特徴とする請求項10に記載の貯液袋。
  12. 上下に延び、かつ上下両端に向かうにしたがって幅が小さくなる複数の膜部材を含み、これら膜部材が、全体として環状になるように前記幅方向に並べられるとともに、隣接する膜部材の互いに対向する縁どうしが接合されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の貯液袋。
  13. 前記膜部材における前記短手方向の幅が最大である最大幅部が、当該膜部材の長手方向の中央よりも上側に偏っていることを特徴とする請求項12に記載の貯液袋。
  14. 前記膜部材が、可撓性かつ不透液性のゴム又は樹脂からなる膜本体と、前記膜本体に埋め込まれた基布とを含み、前記基布の経繊維が前記膜部材の長手方向に対して斜めに延びていることを特徴とする請求項12又は13に記載の貯水袋。
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