以下、本発明の一実施形態を、図1〜図10(B)に基づいて説明する。
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
露光装置100は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、局所液浸装置8、ウエハステージWSTを有するステージ装置55、及びこれらの制御系等を備えている。図1において、ウエハステージWST上には、ウエハWが載置されている。
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図3参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)13によって、レチクルステージRSTに固定された移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計13の計測値は、主制御装置50(図1では不図示、図3参照)に送られる。なお、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書などに開示されているように、エンコーダシステムによってレチクルステージRSTの位置情報を計測しても良い。
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方(−Z側)に配置されている。投影ユニットPUは、不図示の支持部材によって水平に支持されたメインフレーム(メトロロジーフレームとも呼ばれる)BDによってその外周部に設けられたフランジ部を介して支持されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する屈折光学系が用いられている。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上で前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWST(より正確には後述する微動ステージWFS)との同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。ここで、投影ユニットPUはメインフレームBDに保持され、本実施形態では、メインフレームBDが、それぞれ防振機構を介して設置面(床面など)に配置される複数(例えば3つ又は4つ)の支持部材によってほぼ水平に支持されている。なお、その防振機構は各支持部材とメインフレームBDとの間に配置しても良い。また、例えば国際公開第2006/038952号に開示されているように、投影ユニットPUの上方に配置される不図示のメインフレーム部材、あるいはレチクルベースなどに対して投影ユニットPUを吊り下げ支持しても良い。
局所液浸装置8は、液体供給装置5、液体回収装置6(いずれも図1では不図示、図3参照)、及びノズルユニット32等を含む。ノズルユニット32は、図1に示されるように、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように不図示の支持部材を介して、投影ユニットPU等を支持するメインフレームBDに吊り下げ支持されている。本実施形態では、主制御装置50が液体供給装置5(図3参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体Lq(図1参照)を供給するとともに、液体回収装置6(図3参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間から液体Lqを回収する。このとき、主制御装置50は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5と液体回収装置6を制御する。従って、先端レンズ191とウエハWとの間には、一定量の液体Lq(図1参照)が常に入れ替わって保持される。本実施形態では、上記の液体Lqとして、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水を用いるものとする。
ステージ装置55は、図1に示されるように、床面上に防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたベース盤12、ウエハWを保持してベース盤12上で移動するウエハステージWST、ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系53(図3参照)及び各種計測系(16、70(図3参照)等)等を備えている。
ベース盤12は、平板状の外形を有する部材から成り、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、ウエハステージWSTの移動の際のガイド面とされている。
ウエハステージWSTは、図1及び図2(A)等に示されるように、その底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(図示省略))によりベース盤12上に浮上支持され、ウエハステージ駆動系53の一部を構成する粗動ステージ駆動系51(図3参照)により、XY二次元方向に駆動されるウエハ粗動ステージ(以下、粗動ステージと略記する)WCSと、粗動ステージWCSに非接触状態で支持され、粗動ステージWCSに対して相対移動可能なウエハ微動ステージ(以下、微動ステージと略記する)WFSとを有している。微動ステージWFSは、ウエハステージ駆動系53の一部を構成する微動ステージ駆動系52(図3参照)によって粗動ステージWCSに対してX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向(以下、6自由度方向、又は6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)と記述する)に駆動される。本実施形態では、粗動ステージ駆動系51と微動ステージ駆動系52とを含んで、ウエハステージ駆動系53が構成されている。
ウエハステージWST(粗動ステージWCS)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、ウエハステージ位置計測系16によって計測される。また、微動ステージWFSの6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)の位置情報は微動ステージ位置計測系70(図3参照)によって計測される。ウエハステージ位置計測系16及び微動ステージ位置計測系70の計測結果(計測情報)は、粗動ステージWCS及び微動ステージWFSの位置制御のため、主制御装置50(図3参照)に供給される。
上記各種計測系を含めて、ステージ装置55の構成等については、後に詳述する。
露光装置100では、投影ユニットPUの中心から+Y側に所定距離隔てた位置にウエハアライメント系ALG(図1では不図示、図3参照)が配置されている。ウエハアライメント系ALGとしては、例えば画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられる。ウエハアライメント系ALGは、主制御装置50により、ウエハアライメント(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA))の際に、後述する微動ステージWFS上の計測プレートに形成された第2基準マーク、又はウエハW上のアライメントマークの検出に用いられる。ウエハアライメント系ALGの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置50に供給される。主制御装置50は、ウエハアライメント系ALGの検出結果(撮像結果)と、検出時の微動ステージWFS(ウエハW)の位置情報とに基づいて、対象マークのアライメント時座標系におけるX,Y座標を算出する。
この他、本実施形態における露光装置100には、投影ユニットPUの近傍に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(図1では不図示、図3参照)が設けられている。多点AF系AFの検出信号は、不図示のAF信号処理系を介して主制御装置50に供給される(図3参照)。主制御装置50は、多点AF系AFの検出信号に基づいて、多点AF系AFの複数の検出点それぞれにおけるウエハW表面のZ軸方向の位置情報(面位置情報)を検出し、その検出結果に基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、ウエハアライメント系ALGの近傍に多点AF系を設けて、ウエハアライメント(EGA)時にウエハW表面の面位置情報(凹凸情報)を事前に取得し、露光時には、その面位置情報と、後述する微動ステージ位置計測系70の一部を構成するレーザ干渉計システム75(図3参照)の計測値とを用いて、ウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。なお、微動ステージ位置計測系70を構成する後述のエンコーダシステム73を、Z軸方向の位置計測も可能に構成する場合には、レーザ干渉計システム75ではなく、そのエンコーダシステム73の計測値を、フォーカス・レベリング制御で用いても良い。
また、レチクルステージRSTの上方には、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されるように、露光波長の光(本実施形態では照明光IL)をアライメント用照明光として、後述する微動ステージWFS上の計測プレートに形成された一対の第1基準マークを検出する画像処理方式の一対のレチクルアライメント系RA1,RA2(図1においてはレチクルアライメント系RA2は、レチクルアライメント系RA1の紙面奥側に隠れている)が配置されている。レチクルアライメント系RA1,RA2の検出信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置50に供給される(図3参照)。なお、レチクルアライメント系RA1,RA2は設けなくても良い。この場合、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示されるように、微動ステージWFSに光透過部(受光部)が設けられる検出系を搭載して、レチクルアライメントマークの投影像を検出することが好ましい。
図3には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。制御系は、主制御装置50を中心として構成されている。主制御装置50は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、前述の局所液浸装置8、粗動ステージ駆動系51、微動ステージ駆動系52など、露光装置100の構成各部を統括制御する。
ここで、ステージ装置55の構成等について詳述する。粗動ステージWCSは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、平面視で(+Z方向から見て)X軸方向を長手方向とする長方形板状の粗動スライダ部91と、粗動スライダ部91の長手方向の一端部と他端部の上面にYZ平面に平行な状態でそれぞれ固定され、かつY軸方向を長手方向とする長方形板状の一対の側壁部92a,92bと、側壁部92a,92bそれぞれの上面に固定された一対の固定子部93a、93bと、を備えている。粗動ステージWCSは、全体として、上面のX軸方向中央部及びY軸方向の両側面が開口した高さの低い箱形の形状を有している。すなわち、粗動ステージWCSには、その内部にY軸方向に貫通した空間が形成されている。
粗動ステージWCSの底面(粗動スライダ部91の底面)には、図2(A)に示されるように、マトリックス状に配置された複数の永久磁石91aから成る磁石ユニットが固定されている。磁石ユニットに対応して、ベース盤12の内部には、図1に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル14を含む、コイルユニットが収容されている。磁石ユニットは、ベース盤12のコイルユニットと共に、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示される電磁力(ローレンツ力)駆動方式の平面モータから成る粗動ステージ駆動系51(図3参照)を構成している。コイルユニットを構成する各コイル14に供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置50によって制御される(図3参照)。粗動ステージWCSは、上記磁石ユニットが設けられた粗動スライダ部91の底面の周囲に固定された前述のエアベアリングによって、ベース盤12上に例えば数μm程度の隙間(ギャップ又はクリアランス)を介して浮上支持され、粗動ステージ駆動系51によって、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に駆動される。なお、粗動ステージ駆動系51としては、電磁力(ローレンツ力)駆動方式の平面モータに限らず、例えば可変磁気抵抗駆動方式の平面モータを用いることもできる。なお、電磁力駆動方式における電磁力はローレンツ力に限られない。この他、粗動ステージ駆動系51を、磁気浮上型の平面モータによって構成しても良い。この場合、粗動スライダ部91の底面にエアベアリングを設けなくても良くなる。
一対の固定子部93a、93bそれぞれは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、外形が板状の部材から成り、その内部に微動ステージWFSを駆動するためのコイルユニットCUa、CUbが収容されている。コイルユニットCUa、CUbを構成する各コイルに供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置50によって制御される。
一対の固定子部93a,93bそれぞれは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向を長手方向とする矩形板状の形状を有する。固定子部93aは、+X側の端部が側壁部92a上面に固定され、固定子部93bは、−X側の端部が側壁部92b上面に固定されている。
微動ステージWFSは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、平面視でX軸方向を長手方向とする八角形板状の部材から成る本体部81と、本体部81の長手方向の一端部と他端部にそれぞれ固定された一対の可動子部82a、82bと、を備えている。
本体部81は、その内部を後述するエンコーダシステムの計測ビーム(レーザ光)が進行可能とする必要があることから、光が透過可能な透明な素材で形成されている。また、本体部81は、その内部におけるレーザ光に対する空気揺らぎの影響を低減するため、中実に形成されている(内部に空間を有しない)。なお、透明な素材は、低熱膨張率であることが好ましく、本実施形態では一例として合成石英(ガラス)などが用いられる。なお、本体部81は、その全体が透明な素材で構成されていても良いが、エンコーダシステムの計測ビームが透過する部分のみが透明な素材で構成されていても良く、この計測ビームが透過する部分のみが中実に形成されていても良い。
微動ステージWFSの本体部81(より正確には、後述するカバーガラス)の上面中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。本実施形態では、例えば環状の凸部(リム部)内に、ウエハWを支持する複数の支持部(ピン部材)が形成される、いわゆるピンチャック方式のウエハホルダが用いられ、一面(表面)がウエハ載置面となるウエハホルダの他面(裏面)側に後述するグレーティングRGなどが設けられる。なお、ウエハホルダは、微動ステージWFSと一体に形成されていても良いし、本体部81に対して、例えば静電チャック機構あるいはクランプ機構等を介して、又は接着等により固定されていても良い。
さらに、本体部81の上面には、ウエハホルダ(ウエハWの載置領域)の外側に、図2(A)及び図2(B)に示されるように、ウエハW(ウエハホルダ)よりも一回り大きな円形の開口が中央に形成され、かつ本体部81に対応する八角形状の外形(輪郭)を有するプレート(撥液板)83が取り付けられている。プレート83の表面は、液体Lqに対して撥液化処理されている(撥液面が形成されている)。プレート83は、その表面の全部(あるいは一部)がウエハWの表面と同一面となるように本体部81の上面に固定されている。また、プレート83には、図2(B)に示されるように、一端部に円形の開口が形成され、この開口内にその表面がプレート83の表面と、すなわちウエハWの表面とほぼ同一面となる状態で計測プレート86が埋め込まれている。計測プレート86の表面には、前述した一対の第1基準マークと、ウエハアライメント系ALGにより検出される第2基準マークとが少なくとも形成されている(第1及び第2基準マークはいずれも図示省略)。なお、プレート83を本体部81に取り付ける代わりに、例えばウエハホルダを微動ステージWFSと一体に形成し、微動ステージWFSの、ウエハホルダを囲む周囲領域(プレート83と同一の領域(計測プレート86の表面を含んでも良い))の上面に撥液化処理を施して、撥液面を形成しても良い。
図2(A)に示されるように、本体部81の上面には、2次元グレーティング(以下、単にグレーティングと呼ぶ)RGが水平(ウエハW表面と平行)に配置されている。グレーティングRGは、透明な素材から成る本体部81の上面に、固定(あるいは形成)されている。グレーティングRGは、X軸方向を周期方向とする反射型の回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む。本実施形態では、本体部81上で2次元グレーティングが固定あるいは形成される領域(以下、形成領域)は、一例として、ウエハWよりも一回り大きな円形となっている。
グレーティングRGは、保護部材、例えばカバーガラス84によって覆われて、保護されている。本実施形態では、カバーガラス84の上面に、ウエハホルダを吸着保持する前述の静電チャック機構が設けられている。なお、本実施形態では、カバーガラス84は、本体部81の上面のほぼ全面を覆うように設けられているが、グレーティングRGを含む本体部81の上面の一部のみを覆うように設けても良い。また、保護部材(カバーガラス84)は、本体部81と同一の素材によって形成しても良いが、これに限らず、保護部材を、例えば金属、セラミックスで形成しても良い。また、グレーティングRGを保護するのに十分な厚みを要するため板状の保護部材が望ましいが、素材に応じて薄膜状の保護部材を用いても良い。
なお、グレーティングRGの形成領域のうち、ウエハホルダの周囲にはみ出す領域に対応するカバーガラス84の一面には、グレーティングRGに照射されるエンコーダシステムの計測ビームがカバーガラス84を透過しないように、すなわち、ウエハホルダ裏面の領域の内外で計測ビームの強度が大きく変動しないように、例えばその形成領域を覆う反射部材(例えば薄膜など)を設けることが望ましい。
本体部81は、図2(A)からもわかるように、長手方向の一端部と他端部との下端部に外側に突出した張り出し部が形成された全体として八角形板状部材から成り、その底面の、グレーティングRGに対向する部分に凹部が形成されている。本体部81は、グレーティングRGが配置された中央の領域は、その厚さが実質的に均一な板状に形成されている。
本体部81の+X側、−X側の張り出し部それぞれの上面には、断面凸形状のスペーサ85a、85bが、それぞれの凸部89a、89bを、外側に向けてY軸方向に延設されている。
可動子部82aは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向寸法(長さ)及びX軸方向寸法(幅)が、共に固定子部93aよりも短い(半分程度の)2枚の平面視矩形状の板状部材82a1、82a2を含む。板状部材82a1、82a2は、本体部81の+X側の端部に対し、前述したスペーサ85aの凸部89aを介して、Z軸方向(上下)に所定の距離だけ離間した状態でともにXY平面に平行に固定されている。この場合、板状部材82a2は、スペーサ85aと本体部81の+X側の張り出し部とによって、その−X側端部が挟持されている。2枚の板状部材82a1、82a2の間には、固定子部93aの−X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82a1、82a2の内部には、磁石ユニットMUa1、MUa2が、収容されている。
可動子部82bは、スペーサ85bにZ軸方向(上下)に所定の間隔が維持された2枚の板状部材82b1、82b2を含み、可動子部82aと左右対称ではあるが同様に構成されている。2枚の板状部材82b1、82b2の間には、固定子部93bの+X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82b1、82b2の内部には、磁石ユニットMUa1、MUa2と同様に構成された磁石ユニットMUb1、MUb2が、収容されている。
ここで、前述したように、粗動ステージWCSは、Y軸方向の両側面が開口しているので、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに装着する際には、板状部材82a1、82a2、及び82b1、82b2間に固定子部93a、93bがそれぞれ位置するように、微動ステージのWFSのZ軸方向の位置決めを行い、この後に微動ステージWFSをY軸方向に移動(スライド)させれば良い。
微動ステージ駆動系52は、前述した可動子部82aが有する一対の磁石ユニットMUa1、MUa2と、固定子部93aが有するコイルユニットCUaと、可動子部82bが有する一対の磁石ユニットMUb1、MUb2と、固定子部93bが有するコイルユニットCUbと、を含む。
可動子部82aが有する一対の磁石ユニットMUa1、MUa2及び固定子部93aが有するコイルユニットCUa、並びに可動子部82bが有する一対の磁石ユニットMUb1、MUb2及び固定子部93bが有するコイルユニットCUbは、前述した米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されているものと同様に構成されている。従って、本実施形態では、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されている露光装置と同様に、主制御装置50は、微動ステージ駆動系52が有する各コイルに対する電流の供給を制御する(電流の方向及び大きさの少なくとも一方を制御する)ことで、微動ステージWFSを、粗動ステージWCSに対して非接触状態で浮上支持するとともに、粗動ステージWCSに対して、非接触で6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)へ駆動することができるようになっている。
本実施形態の露光装置100では、ウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時には、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報(θz方向の位置情報を含む)は、主制御装置50により、後述する微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73(図3参照)を用いて計測される。微動ステージWFSの位置情報は、主制御装置50に送られ、主制御装置50は、この位置情報に基づいて微動ステージWFSの位置を制御する。
これに対し、ウエハステージWST(微動ステージWFS)が微動ステージ位置計測系70の計測領域外にあるときには、ウエハステージWSTの位置情報は、主制御装置50により、ウエハステージ位置計測系16(図3参照)を用いて計測される。ウエハステージ位置計測系16は、図1に示されるように、粗動ステージWCS側面に鏡面加工により形成された反射面に測長ビームを照射してウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)を計測するレーザ干渉計を含んでいる。なお、ウエハステージWSTのXY平面内での位置情報は、上述のウエハステージ位置計測系16に代えて、その他の計測装置、例えばエンコーダシステムによって計測しても良い。この場合、例えばベース盤12の上面に2次元スケールを配置し、粗動ステージWCSの底面にエンコーダヘッドを取り付けることができる。
微動ステージ位置計測系70は、図1に示されるように、ウエハステージWSTが投影ユニットPUの下方に配置された状態で粗動ステージWCSの前述の空間内に挿入される計測アーム71を備えている。計測アーム71は、メインフレームBDに支持部材72を介して片持ち支持されている(一側(−Y側)の端部のみが支持部材72に支持(固定)されている)。
計測アーム71は、図4の斜視図、図5(A)の縦断面図、及び図5(B)の一部省略した横断面図に示されるように、アーム本体71a、カバー71b、ヘッドユニット77、参照アーム20、及び変位センサ21等を備えている。図4は、カバー71bを、アーム本体71aから取り外した状態を示す。図5(A)は、図5(B)のA−A線断面図に相当する。
アーム本体71aは、Y軸方向を長手方向とし、上方が開口した空間710がほぼ全長に渡って形成された中空の部材から成る。アーム本体71aは、XZ断面が長方形(矩形)の所定長さの部材から成る。アーム本体71aは、図4及び図5(B)に示されるように、幅方向(X軸方向)の寸法が異なる3つの部分、すなわち先端(+Y側端)から長手方向(Y軸方向)の中央より幾分基端(−Y側端)寄りの位置まで一定幅で延びるアーム部71a1と、−Y側の端部に位置し一定の幅を有し、Y軸方向の寸法が支持部材72のY軸方向の寸法とほぼ等しい基端部71a3と、アーム部71a1と基端部71a3との間に位置する中間部71a2とを有する。このうち、基端部71a3の幅が最も広く、中間部71a2はその幅が基端部71a3からアーム部71a1側に行くにつれて徐々に細くなっている。一例として、アーム部71a1は、アーム本体71aの約2/3の長さを有し、中間部71a2と基端部71a3とが、それぞれアーム部71a1の約1/4の長さを有している。基端部71a3の上面(+Z側の面)が支持部材72の下面(−Z側の面)に固定されている。
アーム本体71a(アーム部71a1、中間部71a2、及び基端部71a3)は、例えばショット社のゼロデュア(商品名)など低熱膨張率(ゼロ熱膨張率)の素材により一体成形されている。アーム部71a1は、底壁と該底壁とともに空間710を区画する一対の側壁とを有する。アーム部71a1の底壁及び一対の側壁は、図5(A)に示されるように、その先端側(+Y側)の約3分の2がその基端側(−Y側)の約3分の1に比べて肉厚が薄く形成され、これにより、アーム本体71a(アーム部71a1)には、その内部に段部711が設けられている。空間710は、図5(A)及び図5(B)からわかるように、段部711から基端部71a3までの空間部分が、高さ寸法及び幅寸法が先端部に比べて小さく、基端部71a3の内部では、幅が基端側に行くに連れて徐々に広くなっている。
中間部71a2及び基端部71a3には肉抜きが施され、肉抜きされなかった残りの部分がリブ部とされている。これにより、アーム本体71a(計測アーム71)は、軽量であるが高い剛性を備えた構造となっている。
カバー71bは、先端部(+Y側端部)の一部を除くアーム部71a1、及び中間部71a2を上方から覆う状態で、アーム本体71aに取付けられている。カバー71bも、アーム本体71aと同様、低熱膨張率(ゼロ熱膨張率)の素材から成る。カバー71bは、アーム本体71aに対応して、その先端部(+Y側端部)の下面(−Z側の面)に所定深さの凹部が、アーム部71a1の底壁に設けられた段部711に対応する位置までY軸方向に沿って形成されている。すなわち、カバー71bの先端部は、X軸方向の両端部を除き、他の部分に比べて薄く形成されている。
アーム部71a1の先端の部分には、矩形の開口を有する固定カバー71cが、上方から取付けられている。固定カバー71cは、その−Y端が、カバー71bの+Y端に接し、その+Y端が、アーム部71a1の先端部上面に形成された段部に接する状態で、固定されている。固定カバー71cの開口内にヘッドユニット77が隙間なく挿入され、上端部を除く残りの部分が、空間710内に配置されている。固定カバー71cは、厚さがカバー71bの薄肉部を除く部分と同程度の厚さを有し、その上面がカバー71bの上面と同一面を形成している。また、ヘッドユニット77の上面も、固定カバー71c及びカバー71bと同一面を形成している。ヘッドユニット77は、後に詳述するエンコーダヘッドを含む。
参照アーム20は、例えば外形が四角柱状の部材から成り、Y軸方向を長手方向として、アーム本体71aの空間710内に、配置されている。参照アーム20の−Y側端部の下面(−Z側の面)には、図5(A)に示されるように、他の部分に比べて下方に僅かに突出する凸部20aが設けられている。参照アーム20は、凸部20aが、アーム本体71aの基端部71a3の近傍、一例として中間部71a2の底壁の上面及び基端部71a3の底壁の+Y側端部の上面に固定されている。参照アーム20は、凸部20aの下面を除いて、アーム本体71a及びカバー71bに非接触状態となっている。すなわち、参照アーム20は、計測アーム71の空間710内に配置され、アーム本体71aに片持ち支持されている。
参照アーム20の長さは、本実施形態では、一例として計測アーム71のY軸方向の長さの約2分の1とされている。このため、参照アーム20の先端(+Y側端)は、空間710内の段部711より先端側(+Y側)に位置している。参照アーム20の先端(自由端、ここでは+Y側端)には、変位センサ21が設けられている。変位センサ21は、参照アーム20(厳密には、凸部20aを除く部分)を基準にして、計測アーム71(アーム部71a1)の胴部(すなわち固定端と自由端との間の部分)のX軸方向及びZ軸方向の変位を測定するためのものである。
参照アーム20は、ヘッドユニット77が設けられた計測アーム71の先端のX軸方向及びZ軸方向の変位を測定に用いられるものであり、その変位の基準になるものであることから、変位センサ21が設けられた参照アーム20の先端が変位し難い(又は変位しない)よう、計測アーム71より十分に高い剛性を有している必要がある。このため、参照アーム20は、長さが計測アーム71より短く、その固定端(凸部20a)が、アーム本体71aの基端部71a3近傍に固定され、変位センサ21が設けられるその先端の位置は、計測アーム71の長手方向の中央より先端側であることが望ましい。また、参照アーム20(特にその先端)を、支持部材等を用いて支持しても良い。この場合、支持部材は、計測アーム71のアーム部71a1を除く部分、例えば基端部71a3又は基端部71a3の近傍に固定することとする。
本実施形態では、参照アーム20として中空部材が用いられ、その内部空間に変位センサ21を構成する後述する光学ヘッド22A,23A,22B,23Bに対する送光用及び受光用の光ファイバ等が配設されている。ただし、これに限らず、光ファイバ等が配設される空間がその一部に形成された中実部材から成る参照アーム20を用いても良い。
参照アーム20は、アーム本体71aと同様の低熱膨張率(ゼロ熱膨張率)で特に非磁性の素材を用いて構成されている。これにより、参照アーム20は、例えば変位センサ21、後述するエンコーダヘッド等により用いられる光を吸収することで発する熱、その他計測アーム71に設けられる電子素子が発する熱等による変形、ウエハステージ駆動系53(粗動ステージ駆動系51)が発する磁場による変形等の影響を、変位センサ21が、要求される測定精度の範囲内で、殆ど受けることがないようになっている。
変位センサ21は、図6(A)及び図6(B)に示されるように、光学ヘッド22A,23A,22B,23B、光学ブロック24、及び参照ブロック25等を備えている。
光学ヘッド22A、23A、22B、23Bは、参照アーム20の+Y側の壁にそれぞれ形成された4つの貫通孔に個別に挿入され、固定されている。光学ヘッド22A,22Bは光源(不図示)から光ファイバを介して供給されるプローブ光IB1、IB2を光学ブロック24及び参照ブロック25に対して送光する送光用のヘッドである。残りの光学ヘッド23A、23Bは、光学ブロック24及び参照ブロック25からの戻り光を受光する受光用のヘッドである。
光学ブロック24は、参照アーム20の先端面(+Y側の壁の+Y側面)に固定された側面視(−X方向から見て)台形状を有する四角柱状の光学部材26と、光学部材26の−X側面に上下に並んで固定された一対のコーナーキューブ27A,27Bとを含む。光学部材26は、直方体状の偏光ビームスプリッタ26aと、偏光ビームスプリッタ26aの上面に固定されたYZ断面が直角三角形のプリズム部材26bと、を有している。偏光ビームスプリッタ26aは、それぞれの斜面を対向させた一対の直角プリズムから成り、その対向面に偏光分離膜が設けられ、これによって偏光分離面BSが形成されている。プリズム部材26bは、斜面以外の一側面が、偏光ビームスプリッタ26aの上面に固定されている。そして、上記偏光分離面BSがXY平面及びYZ平面に対して45度を成す状態で、光学ブロック24(光学部材26)は、参照アーム20の先端面に固定されている。偏光ビームスプリッタ26aの+X側面の上半部には、反射部材28Aが固定され、−Z側面の+X半部には、反射部材28Bが、固定されている。反射部材28A、28Bは、外面に反射膜が形成された1/4波長板から成る。
参照ブロック25は、XZ断面がL字状のブロック部材から成り、光学部材26の下面(−Z側の面)及び側面(+X側の面)のそれぞれに対して、僅かな間隙を介して、対向する2つの反射面を有し、アーム部71a1の底壁の上面に固定されている。参照ブロック25は、その2つの反射面に1/4波長板29A、及び29Bが固定されている。
ここで、上述のようにして構成された変位センサ21の測定原理について説明する。変位センサ21は、光源としてゼーマン効果を利用した2周波レーザを用いたヘテロダイン方式の干渉計である。光源は、周波数安定化されたもので、ゼーマン効果を用いて2〜3MHzだけ周波数が異なり(従って波長が異なり)、かつ、偏光が互いに直交する2成分を含むレーザ光束を出力する。ここでは、光源は、2つの直交する偏光成分(P偏光成分とS偏光成分)で波長が異なり、ガウス分布の円形ビームを出力するものとする。後述するように、P偏光成分及びS偏光成分の一方が測定ビームになり、他方が参照ビームになる。
光源から光ファイバ(図6(A)に光学ヘッド22Aに接続された光ファイバのみが示されている)をそれぞれ介して送られたレーザ光束が、光学ヘッド22A、22Bからプローブ光IB1、IB2として、それぞれ+Y方向に向けて射出される。
光学ヘッド22Aからのプローブ光IB1は、プリズム部材26bの斜面(反射面)RSで反射されて偏光ビームスプリッタ26aに入射し、偏光分離面BSで2つのビームに偏光分離される。この偏光分離により、偏光分離面BSを透過したP偏光成分(測定ビーム)は1/4波長板29Aに向かって進み、偏光分離面BSで反射されたS偏光成分(参照ビーム)は反射部材28Aに向かって進む。
P偏光成分は、1/4波長板29Aを通過後、参照ブロック25の+Z側の反射面で反射された後、再度1/4波長板29Aを通過する。これにより、P偏光成分は、偏光方向が90度回転されてS偏光成分になり、その後、偏光分離面BS、コーナーキューブ27Aの2つの反射面、偏光分離面BSで順次反射された後、再び1/4波長板29Aに向かう。そして、そのS偏光成分は、1/4波長板29Aを通過後、参照ブロック25の+Z側の反射面で反射され、1/4波長板29Aを通過してP偏光成分になる。これにより、そのP偏光成分は、偏光分離面BSを透過する。
一方、偏光分離面BSで反射されたS偏光成分(参照ビーム)は、外面に反射面が形成された1/4波長板から成る反射部材28Aで反射されて(すなわち1/4波長板を2回通過して)P偏光成分になり、偏光分離面BSを透過し、コーナーキューブ27Aの2つの反射面により反射された後、偏光分離面BSを透過する。そして、このP偏光成分は、再度、反射部材28Aにより反射されてS偏光成分になり、偏光分離面BSにより反射される。この偏光分離面BSにより反射されたS偏光成分(参照ビーム)は、上述した偏光分離面BSを透過したP偏光成分(参照ブロック25の+Z側の反射面で反射され、1/4波長板29Aを通過した測定ビーム)と同軸に合成されて光学ヘッド23Aにより受光される。
光学ヘッド23Aは、偏光分離面BSからの同軸に合成された上述のプローブ光IB1の戻り光(検出光)を受光し、不図示の光ファイバを介して検出器(不図示)に送る。検出器(不図示)は、検出光に含まれる2つの偏光成分をそれらの偏光方向を揃えて干渉させ、その干渉光の強度(2つの偏光成分の位相差)を検出する。すなわち、検出器では、干渉信号(干渉光の強度信号)に基づいて、測定ビームの位相が参照ビームの位相に対してドップラーシフトし、位相変化が生じることを利用して、その位相変化で生じた干渉信号の変化をヘテロダイン検出する。検出器では、このようにして、2つの偏光成分の光路差、すなわち参照アーム20を基準とする計測アーム71(アーム部71a1)の胴部のZ軸方向の変位dzを検出する。
同様に、光学ヘッド22Bからのプローブ光IB2は、プリズム部材26bの斜面(反射面)RSで反射されて偏光ビームスプリッタ26aに入射し、偏光分離面BSで2つのビームに偏光分離される。この偏光分離により、偏光分離面BSを透過したP偏光成分(参照ビーム)は反射部材28Bに向かって進み、偏光分離面BSで反射されたS偏光成分(測定ビーム)は1/4波長板29Bに向かって進む。
P偏光成分(参照ビーム)は、外面に反射面が形成された1/4波長板から成る反射部材28Bで反射されてS偏光成分になり、偏光分離面BS、コーナーキューブ27Bの2つの反射面、偏光分離面BSで順次反射された後、反射部材28Bに再度向かう。そして、そのS偏光成分は、反射部材28Bで反射されてP偏光成分になる。これにより、そのP偏光成分(参照ビーム)は、偏光分離面BSを透過する。
一方、偏光分離面BSで反射されたS偏光成分(測定ビーム)は、1/4波長板29Bを通過後、参照ブロック25の−X側の反射面で反射された後、再度1/4波長板29Bを透過する。これにより、S偏光成分は、偏光方向が90度回転されてP偏光成分になり、偏光分離面BSを透過後、コーナーキューブ27Bの2つの反射面で反射された後、偏光分離面BSを透過して1/4波長板29Bに再度向かう。そして、そのP偏光成分は、参照ブロック25の−X側の反射面で反射された後、再度1/4波長板29Bを透過してS偏光成分になる。これにより、そのS偏光成分(測定ビーム)は、偏光分離面BSで反射され、上述のP偏光成分(反射部材28Bで反射された参照ビーム)と同軸に合成されて光学ヘッド23Bにより受光される。
光学ヘッド23Bは、偏光分離面BSからの同軸に合成された上述のプローブ光IB2の戻り光(検出光)を受光し、不図示の光ファイバを介して検出器(不図示)に送る。検出器(不図示)は、検出光に含まれる2つの偏光成分をそれらの偏光方向を揃えて干渉させ、その干渉光の強度(2つの偏光成分の位相差)を前述のようにして検出することで、2つの偏光成分の光路差、すなわち参照アーム20を基準とする計測アーム71(アーム部71a1)の胴部のX軸方向の変位dxを検出する。
変位センサ21の検出結果は、主制御装置50に供給される(図3参照)。主制御装置50は、変位センサ21の検出結果dx,dzを用いて、微動ステージ位置計測系70(後述するエンコーダシステム73及びレーザ干渉計システム75)の計測値(微動ステージWFSの6自由度方向の位置、特にX軸方向及びZ軸方向の位置の計測結果)を補正する。この補正については後述する。
本実施形態では、計測アーム71が上述のようにして構成されていることから、ウエハステージWSTが投影光学系PLの下方に位置する場合、計測アーム71(先端部)は粗動ステージWCSの空間内に位置する。このとき、図1に示されるように、計測アーム71の上面が、例えば数mm程度の隙間(ギャップ又はクリアランス)を介して、微動ステージWFSの下面(より正確には、本体部81(図1では不図示、図2(A)等参照)の下面)に対向する。これにより、計測アーム71に干渉することなく、ウエハステージWSTが移動することができる。
なお、計測アーム71(アーム本体71a)内に、例えば100Hz程度の固有の共振周波数を有するマスダンパ(ダイナミックダンパとも呼ばれる)を設けても良い。ここで、マスダンパとは、弾性部材、例えばバネと重りとから構成された振り子を含み、その重りが共振することで計測アーム71の振動(マスダンパーの共振周波数の振動)を減衰する振動減衰部材である。
微動ステージ位置計測系70は、図3に示されるように、エンコーダシステム73と、レーザ干渉計システム75とを備えている。
本実施形態のエンコーダシステム73では、例えば米国特許第7,238,931号明細書及び米国特許出願公開第2007/0288121号明細書などに開示されるエンコーダヘッド(以下、適宜、ヘッドと呼ぶ。)と同様の構成の回折干渉型のヘッドが用いられている。ただし、本実施形態では、ヘッドは、後述するように光源及び受光系(光検出器を含む)が、計測アーム71の外部に配置され、光学系のみが計測アーム71の内部に配置されている。以下、特に必要な場合を除いて、計測アーム71の内部に配置された光学系をヘッドと呼ぶ。
エンコーダシステム73は、微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測するXリニアエンコーダ73xと、微動ステージWFSのY軸方向の位置を計測する一対のYリニアエンコーダ73ya,73ybとを含む。Xリニアエンコーダ73xは、グレーティングRGのX回折格子を用いて微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測する1つのXヘッド77x(図7(A)及び図7(B)参照)を有し、一対のYリニアエンコーダ73ya,73ybはグレーティングRGのY回折格子を用いてそのY軸方向の位置を計測する一対のYヘッド77ya,77yb(図7(B)参照)を、それぞれ有している。
ここで、エンコーダシステム73を構成する3つのヘッド77x、77ya、77ybの構成について説明する。図7(A)には、3つのヘッド77x、77ya、77ybを代表して、Xヘッド77xの概略構成が示されている。また、図7(B)には、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム71(ヘッドユニット77)内での配置が示されている。
図7(A)に示されるように、Xヘッド77xは、その分離面がYZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と表記する)WP1a,WP1b、反射ミラーR2a,R2b、及び反射ミラーR3a,R3b等を有し、これらの光学素子が所定の位置関係で配置されている。Yヘッド77ya、77ybも同様の構成の光学系を有している。Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれは、図7(A)及び図7(B)に示されるように、ユニット化されて計測アーム71(ヘッドユニット77)の内部に固定されている。
Xヘッド77x(Xリニアエンコーダ73x)では、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられた光源LDx(図7(B)参照)から射出されたレーザビームLBx0が、計測アーム71(前述の空間710)内に配設された送光用光ファイバ76aを介して反射ミラーR3a(図7(A)参照)に導かれる。そして、レーザビームLBx0は、反射ミラーR3aによりその光路が折り曲げられて、偏光ビームスプリッタPBSに入射する。レーザビームLBx0は、偏光ビームスプリッタPBSで偏光分離されて2つの計測ビームLBx1,LBx2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1は反射ミラーR1aを介して微動ステージWFSに形成されたグレーティングRGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2は反射ミラーR1bを介してグレーティングRGに到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
計測ビームLBx1,LBx2の照射によってグレーティングRGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームそれぞれは、レンズL2a,L2bを介して、λ/4板WP1a,WP1bにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2a,R2bにより反射されて再度λ/4板WP1a,WP1bを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つの1次回折ビームは、各々その偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射される。また、先に偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過する。これにより、計測ビームLBx1,LBx2それぞれの1次回折ビームは同軸上に合成ビームLBx12として合成される。合成ビームLBx12は、反射ミラーR3bで反射され、計測アーム71(前述の空間710)内に配設された受光用光ファイバ76bを介して、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられたX受光系74xに送光される。
X受光系74xでは、合成ビームLBx12として合成された計測ビームLBx1,LBx2の1次回折ビームが不図示の偏光子(検光子)によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。ここで、微動ステージWFSが計測方向(この場合、X軸方向)に移動すると、2つのビーム間の位相差が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化は、微動ステージWFSのX軸方向に関する位置情報として主制御装置50(図3参照)に供給される。
Yヘッド77ya,77ybも、Xヘッド77xと同様に構成されている。Yヘッド77ya、77ybには、それぞれの光源LDya、LDyb(図7(B)参照)から射出されたレーザビームLBya0、LByb0が、送光用光ファイバをそれぞれ介して入射し、前述と同様にして、Yヘッド77ya、77ybから、偏向ビームスプリッタで偏光分離された計測ビームそれぞれのグレーティングRG(のY回折格子)による1次回折ビームの合成ビームLBya12、LByb12が、それぞれ出力され、受光用光ファイバをそれぞれ介してY受光系74ya、74yb(図7(B)参照)に戻される。図7(B)中では、光源LDyaとYヘッド77yaとを接続する送光用光ファイバと、Yヘッド77yaとY受光系74yaとを接続する受光用光ファイバとが重なっており、これら両光ファイバが、符号76cで示されている。同様に、図7(B)中では、光源LDybとYヘッド77ybとを接続する送光用光ファイバと、Yヘッド77ybとY受光系74ybとを接続する受光用光ファイバとが重なっており、これら両光ファイバが、符号76dで示されている。
図8(A)には、計測アーム71の先端部が斜視図にて示されており、図8(B)には、計測アーム71の先端部の上面を+Z方向から見た平面図が示されている。図8(A)及び図8(B)に示されるように、Xヘッド77xは、X軸に平行な直線LX上で計測アーム71のセンターラインCLから等距離にある2点(図8(B)の白丸参照)から、計測ビームLBx1、LBx2(図8(A)中に実線で示されている)を、グレーティングRG上の同一の照射点に照射する(図7(A)参照)。計測ビームLBx1、LBx2の照射点、すなわちXヘッド77xの検出点(図8(B)中の符号DP参照)は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致している(図1参照)。なお、計測ビームLBx1、LBx2は、実際には、本体部81と空気層との境界面などで屈折するが、図7(A)等では、簡略化して図示されている。
図7(B)に示されるように、一対のYヘッド77ya、77ybそれぞれは、センターラインCLの+X側、−X側に配置されている。
Yヘッド77yaは、Y軸に平行な直線LYa上で直線LXからの距離が等しい2点(図8(B)の白丸参照)から、グレーティングRG上の共通の照射点に図8(A)においてそれぞれ破線で示される計測ビームLBya1,LBya2を照射する。計測ビームLBya1,LBya2の照射点、すなわちYヘッド77yaの検出点が、図8(B)に符号DPyaで示されている。
Yヘッド77ybは、センターラインCLに関して、Yヘッド77yaの計測ビームLBya1,LBya2の射出点に対称な2点(図8(B)の白丸参照)から、計測ビームLByb1,LByb2を、グレーティングRG上の共通の照射点DPybに照射する。図8(B)に示されるように、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの検出点DPya、DPybは、X軸に平行な直線LX上に配置される。
ここで、主制御装置50は、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、2つのYヘッド77ya、77ybの計測値の平均に基づいて決定する。従って、本実施形態では、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、検出点DPya、DPybの中点DPを実質的な計測点として計測される。中点DPは、計測ビームLBx1,LBX2のグレーティングRG上の照射点と一致する。
すなわち、本実施形態では、微動ステージWFSのX軸方向及びY軸方向の位置情報の計測に関して、共通の検出点を有し、この検出点は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する。従って、本実施形態では、主制御装置50は、エンコーダシステム73を用いることで、微動ステージWFS上に載置されたウエハWの所定のショット領域にレチクルRのパターンを転写する際、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報の計測を、常に露光位置の直下(微動ステージWFSの裏面側)で行うことができる。また、主制御装置50は、一対のYヘッド77ya、77ybの計測値の差に基づいて、微動ステージWFSのθz方向の回転量を計測する。
レーザ干渉計システム75は、図8(A)に示されるように、3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3を計測アーム71の先端部(ヘッドユニット77)から、微動ステージWFSの下面に入射させる。レーザ干渉計システム75は、これら3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3それぞれを照射する3つのレーザ干渉計75a〜75c(図3参照)を備えている。
レーザ干渉計システム75では、3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3は、図8(A)及び図8(B)に示されるように、計測アーム71の上面上の同一直線上に無い3点それぞれから、Z軸に平行に射出される。ここで、3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3は、図8(B)に示されるように、その重心が、照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する、二等辺三角形(又は正三角形)の各頂点に相当する3点から、それぞれ射出される。この場合、測長ビームLBz3の射出点(照射点)はセンターラインCL上に位置し、残りの測長ビームLBz1、LBz2の射出点(照射点)は、センターラインCLから等距離にある。本実施形態では、主制御装置50は、レーザ干渉計システム75を用いて、微動ステージWFSのZ軸方向の位置、θx方向及びθy方向の回転量の情報を計測する。なお、レーザ干渉計75a〜75cは、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられている。レーザ干渉計75a〜75cから−Z方向に射出された測長ビームLBz1、LBz2、LBz3は、送受光用の光ファイバ(不図示)を介してヘッドユニット77に導かれ、上述の3点から射出される。
本実施形態では、微動ステージWFSの下面に、エンコーダシステム73からの各計測ビームを透過させ、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの透過を阻止する、波長選択フィルタ(図示省略)が設けられている。この場合、波長選択フィルタは、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの反射面をも兼ねる。波長選択フィルタとして、波長選択性を有する薄膜などが用いられ、本実施形態では、波長選択フィルタは、例えば透明板(本体部81)の一面に設けられ、グレーティングRGはその一面に対してウエハホルダ側に配置される。
以上の説明からわかるように、主制御装置50は、微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73及びレーザ干渉計システム75を用いることで、微動ステージWFSの6自由度方向の位置を計測することができる。この場合、エンコーダシステム73では、計測ビームの空気中での光路長が極短くかつほぼ等しいため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。従って、エンコーダシステム73により、微動ステージWFSのXY平面内(θz方向も含む)の位置情報を高精度に計測できる。また、エンコーダシステム73によるX軸方向、及びY軸方向の実質的なグレーティング上の検出点、及びレーザ干渉計システム75によるZ軸方向の微動ステージWFS下面上の検出点は、それぞれ露光領域IAの中心(露光位置)にXY平面内で一致するので、検出点と露光位置とのXY平面内のずれに起因するいわゆるアッベ誤差の発生が実質的に無視できる程度に抑制される。従って、主制御装置50は、微動ステージ位置計測系70を用いることで、検出点と露光位置とのXY平面内のずれに起因するアッベ誤差なく、微動ステージWFSのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置を高精度に計測できる。
本実施形態に係る露光装置100では、計測アーム71の曲がりに伴う先端の変位による微動ステージ位置計測系70(エンコーダシステム73及びレーザ干渉計システム75)の計測誤差の補正(先端変位補償)が行われる。先端変位補償では、前述の変位センサ21の検出結果(参照アーム20を基準とする計測アーム71(アーム部71a1)の胴部のX軸方向及びZ軸方向の変位)dx,dzを用いて、微動ステージWFSの6自由度方向の位置、特にX軸方向及びZ軸方向の位置(X,Z)の計測値を補正する。
計測アーム71の先端に設けられたヘッドユニット77の中心(検出点DP)のX軸方向及びZ軸方向の変位ΔX,ΔZと計測アーム71(アーム部71a1)の胴部のX軸方向及びZ軸方向の変位dx,dzとの間には、X軸方向を取り上げて図9に模式的に示されるように、比例関係ΔX=kxdx,ΔZ=kzdzが成り立つものとする。ここで、変位ΔX、ΔZと変位dx、dzは、片持ち梁(カンチレバー)のX軸方向、Z軸方向の撓み量である。従って、比例係数(比例定数)kx,kzは、計測アーム71の先端部と参照アーム20の先端部との長さの関係(差)において定まり、予め実測又はシミュレーションにより求められる。主制御装置50は、比例係数kx,kzを用いて、変位センサ21の検出結果dx,dzから検出点DPの変位ΔX,ΔZを求め、これらを微動ステージ位置計測系70の計測結果X,Zにオフセットとして加算する。
発明者は、計測アーム71の設計データを基に、比例係数を、シミュレーションにより2つの場合について求めた。第1の場合として、計測アーム71(アーム部71a1)の側面(又は上面)の全長に渡って、当分布荷重を加える場合を想定し、第2の場合として、計測アーム71(アーム部71a1)の側面(又は上面)の先端側半部に同じ大きさの当分布荷重を加える場合を想定した。等分布荷重を1Paの圧力として、シミュレーションを行った結果、第1の場合と第2の場合とで、kxとして3.44、3.47が、Kzとして4.07、4,04がそれぞれ得られた。このように、得られたkx同士、及びkz同士は、殆ど同じ大きさ(両者の差は、1%程度又はそれ以下)となることが確認された。これより、上記の比例関係を用いて、ヘッドユニット77の中心(検出点DP)のX軸方向及びZ軸方向の変位ΔX,ΔZを求める取り扱いが実用上有効であることが分かる。
なお、参照アーム20はその構成より十分高い剛性を有し、その固有振動数は十分に高くなることから、計測アーム71の例えば200Hz以下の低周波帯域の振動に対して十分な計測精度(0.01nmあるいはそれ以下)が得られることが期待される。また、先端変位補償における比例係数kx,kzが、十分な計測精度を得るために必要な例えばシミュレーション等により求められた範囲の値(例えば3〜4程度の値)になるよう、参照アーム20の構成、配置を調整することとすれば良い。
上述のようにして構成された本実施形態に係る露光装置100では、デバイスの製造に際し、まず、主制御装置50により、ウエハアライメント系ALGを用いて、微動ステージWFSの計測プレート86上の第2基準マークが検出される。次いで、主制御装置50により、ウエハアライメント系ALGを用いてウエハアライメント(例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示されるエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)など)などが行われる。なお、本実施形態の露光装置100では、ウエハアライメント系ALGは、投影ユニットPUからY軸方向に離間して配置されているので、ウエハアライメントを行う際、微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム(計測アーム)による微動ステージWFSの位置計測ができない。そこで、前述したウエハステージ位置計測系16と同様のレーザ干渉計システム(不図示)を介してウエハW(微動ステージWFS)の位置を計測しながらウエハのアライメントを行うものとする。また、ウエハアライメント系ALGと投影ユニットPUとが離間しているので、主制御装置50は、ウエハアライメントの結果得られたウエハW上の各ショット領域の配列座標を、第2基準マークを基準とする配列座標に変換する。
そして、主制御装置50は、露光開始に先立って、前述の一対のレチクルアライメント系RA1,RA2、及び微動ステージWFSの計測プレート86上の一対の第1基準マークなどを用いて、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順(例えば、米国特許第5,646,413号明細書などに開示される手順)で、レチクルアライメントを行う。そして、主制御装置50は、レチクルアライメントの結果と、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の各ショット領域の第2基準マークを基準とする配列座標)とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を行い、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンをそれぞれ転写する。この露光動作は、前述したレチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期移動を行う走査露光動作と、ウエハステージWSTをショット領域の露光のための加速開始位置に移動するショット間移動(ステッピング)動作とを交互に繰り返すことで行われる。この場合、液浸露光による走査露光が行われる。本実施形態に係る露光装置100では、上述の一連の露光動作中、主制御装置50により、微動ステージ位置計測系70を用いて、微動ステージWFS(ウエハW)の位置が計測され、エンコーダシステム73の各エンコーダの計測値が、上述したようにして補正され、その補正後のエンコーダシステム73の各エンコーダの計測値に基づいてウエハWのXY平面内の位置が制御される。また、露光中のウエハWのフォーカス・レベリング制御は、前述の如く、主制御装置50により、多点AF系AFの計測結果に基づいて行われる。
なお、上述の走査露光動作時は、ウエハWをY軸方向に高加速度で走査する必要があるが、本実施形態の露光装置100では、主制御装置50は、走査露光動作時には、図10(A)に示されるように、原則的に粗動ステージWCSを駆動せず、微動ステージWFSのみをY軸方向に(必要に応じて他の5自由度方向にも併せて)駆動する(図10(A)の黒塗り矢印参照)ことで、ウエハWをY軸方向に走査する。これは、粗動ステージWCSを駆動する場合に比べ、微動ステージWFSのみを動かす方が駆動対象の重量が軽い分、高加速度でウエハWを駆動できて有利だからである。また、前述のように、微動ステージ位置計測系70は、その位置計測精度がウエハステージ位置計測系16よりも高いので、走査露光時には微動ステージWFSを駆動した方が有利である。なお、この走査露光時には、微動ステージWFSの駆動による反力(図10(A)の白抜き矢印参照)の作用により、粗動ステージWCSが微動ステージWFSと反対側に駆動される。すなわち、粗動ステージWCSがカウンタマスとして機能し、ウエハステージWSTの全体から成る系の運動量が保存され、重心移動が生じないので、微動ステージWFSの走査駆動によってベース盤12に偏荷重が作用するなどの不都合が生じることがない。
一方、X軸方向にショット間移動(ステッピング)動作を行う際には、微動ステージWFSのX軸方向への移動可能量が少ないことから、主制御装置50は、図10(B)に示されるように、粗動ステージWCSをX軸方向に駆動することによって、ウエハWをX軸方向に移動させる。
以上説明したように、本実施形態に係る露光装置100によると、計測アーム71の内部に配置された参照アーム20の先端に設けられた変位センサ21により計測アーム71の胴部の変位が測定され、主制御装置50によってその測定結果を用いて微動ステージ位置計測系70による微動ステージWFSの位置(特に、X軸及びZ軸方向の位置)の計測値が補正される。これにより、片持ち梁状の計測アーム71に空気圧等が外力(計測アーム71を曲げる又は撓ませる力)として作用し、ヘッドユニット77が設けられた計測アーム71の先端が微小変位しても、それに伴う計測誤差の無い高精度な微動ステージWFS(ウエハテーブルWTB)の位置情報の計測、及びその計測結果に基づく、高精度な位置の制御が可能となり、ひいては微動ステージWFSに保持されたウエハWに対する高精度な露光が可能になる。
なお、上記実施形態では、ウエハステージWSTの移動に伴う空気圧等が外部から加わらないように参照アーム20を計測アーム71内に配置したが、外圧が加わらない又は無視できる程度である場合には参照アーム20を計測アーム71の外側に配置することとしても良い。例えば、参照アーム20を筒状に構成し、その内側に計測アーム71を配置することとしても良い。あるいは、参照アーム20を計測アーム71の外部に計測アーム71と平行に配置することとしても良い。
なお、参照アーム20が計測アーム71の外側に配置される場合、参照アーム20は計測アームの胴部の外側面、上面、下面等を計測しても良く、また、計測アームの両サイドに2つの参照アーム20を配置しても良い。後者の場合、いずれか一方の参照アーム20に設けられた変位センサ21の計測値、又は2つの参照アーム20にそれぞれ設けられた変位センサ21で計測される変位の絶対値の平均値に基づいて、微動ステージ位置計測系70による微動ステージWFSの位置(特に、X軸及びZ軸方向の位置)の計測値を補正することとしても良い。
また、上記実施形態では、変位センサ21として干渉計を採用したが、これに限らず、静電容量センサ、エンコーダ等、計測アーム71の変位を測定することのできるセンサを採用することができる。ただし、熱の発生が少ないことが期待できる光学センサが望ましい。
また、上記実施形態では、変位センサ21を構成する光学ヘッド22A,23A,22B,23B及び光学ブロック24を参照アーム20の先端に、参照ブロック25を計測アーム71の胴部(アーム部71a1)に設けることとしたが、逆に、光学ヘッド22A,23A,22B,23B及び光学ブロック24を計測アーム71の胴部に、参照ブロック25を参照アーム20の先端に設けることとしても良い。
なお、上記実施形態では、エンコーダシステム73が、Xヘッドと一対のYヘッドを備える場合について例示したが、これに限らず、例えばX軸方向及びY軸方向の2方向を計測方向とする2次元ヘッド(2Dヘッド)を、1つ又は2つ設けても良い。2Dヘッドを2つ設ける場合には、それらの検出点がグレーティング上で露光位置を中心として、X軸方向に同一距離離れた2点になるようにしても良い。
また、微動ステージ位置計測系70は、レーザ干渉計システム75を備えることなく、エンコーダシステム73のみで微動ステージの6自由度方向に関する位置情報を計測できるようにしても良い。この場合、例えばX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダを用いることができる。この場合のエンコーダとしては、例えば米国特許第7,561,280号明細書に開示される変異計測センサヘッドシステムを用いることができる。そして、例えば、2次元のグレーティングRG上の同一直線上に無い3つの計測点に、X軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダ(上記変異計測センサヘッドシステムなど)と、Y軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダ(上記変異計測センサヘッドシステムなど)とを含む合計3つのエンコーダから計測ビームを照射し、グレーティングRGからのそれぞれの戻り光を受光することで、グレーティングRGが設けられた移動体の6自由度方向の位置情報を計測することとすることができる。かかる場合、レーザ干渉計システム75は不要となる。また、エンコーダシステム73の構成は上記実施形態に限られない。例えばX軸、Y軸及びZ軸の各方向に関する位置情報を計測可能な3次元ヘッド(3Dヘッド)を用いても良い。3Dヘッドとしては、例えば、X軸方向及びZ軸方向を計測方向とする上記変異計測センサヘッドシステムと、Y軸方向及びZ軸方向を計測方向とする上記変異計測センサヘッドシステムとを、それぞれの計測点(検出点)が同一点となり、かつX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の計測が可能となるように組み合わせて構成した3Dヘッドを用いることができる。この場合において、3Dヘッドの検出点は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置の真下に位置させることが好ましい。
また、上記実施形態では、微動ステージの上面、すなわちウエハに対向する面にグレーティングが配置されているものとしたが、これに限らず、グレーティングRGは、ウエハWを保持するウエハホルダWHの下面に形成されていても良い。この場合、露光中にウエハホルダWHが膨張したり、微動ステージWFSに対する装着位置がずれたりした場合であっても、これに追従してウエハホルダ(ウエハ)の位置を計測することができる。グレーティングRGは、ウエハホルダWHの下面に固定されていても良い。この場合、グレーティングRGが固定又は形成される透明板の一面をウエハホルダの裏面に接触又は近接して配置しても良い。
また、グレーティングRGは、微動ステージの下面に配置されていても良く、この場合、セラミックスなどの不透明な部材にグレーティングRGを固定又は形成しても良い。また、この場合、エンコーダヘッドから照射される計測ビームが微動ステージの内部を進行しないので、微動ステージを光が透過可能な中実部材とする必要がなく、微動ステージを中空構造にして内部に配管、配線等を配置することができ、微動ステージを軽量化できる。この場合、グレーティングRGの表面に保護部材(カバーガラス)を設けても良い。あるいは、従来の微動ステージにウエハホルダとグレーティングRGを保持するだけでも良い。また、ウエハホルダを、中実のガラス部材によって形成し、該ガラス部材の上面(ウエハ載置面)にグレーティングRGを配置しても良い。
また、上記実施形態では、微動ステージ位置計測系70が、内部に送光用の光ファイバ、受光用の光ファイバ、及び送受光用の光ファイバなどが配設された中空の計測アーム71を備える場合を説明したが、これに限らず、計測アーム71は、少なくとも前述の各レーザビームが進行する部分が、光を透過可能であれば、その構成は特に問わない。
また、例えば計測アームとしては、グレーティングに対向する部分から計測ビームを照射できれば、例えば計測アームの先端部(ヘッドユニット77)に光源や光検出器等を内蔵していても良い。この場合、計測アーム71の内部に光ファイバ等を配置したり、計測アーム71の内部をエンコーダの計測ビームを進行させたりする必要は無い。さらに、計測アームは、その形状は特に問わない。
なお、上記実施形態において、微動ステージ位置計測系70に加えて、微動ステージWFSの位置情報を計測する干渉計システムを備えることとしても良い。また、ウエハテーブル(ウエハステージ)上にグレーティングを設け、これに対向してエンコーダヘッドをウエハステージの上方に配置する構成のエンコーダシステム、又は例えば米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されるように、ウエハテーブル(ウエハステージ)にエンコーダヘッドを設け、これに対向してウエハステージの上方にグレーティングを配置する構成のエンコーダシステムを備えることとしても良い。
なお、上記実施形態では、レーザ干渉計システム(不図示)を介してウエハW(微動ステージWFS)の位置を計測しながらウエハのアライメントを行うものとしたが、これに限らず、上述した微動ステージ位置計測系70の計測アーム71と同様の構成の計測アームを含む第2の微動ステージ位置計測系をウエハアライメント系ALGの近傍に設け、これを用いてウエハアライメント時における微動ステージのXY平面内の位置計測を行うものとしても良い。
なお、上記実施形態では、微動ステージを、粗動ステージに対して移動可能に支持すると共に、6自由度方向に駆動する微動ステージ駆動系52を構成する一対の駆動部として、コイルユニットを一対の磁石ユニットで上下から挟み込むサンドイッチ構造が採用される場合について例示した。しかし、これに限らず、一対の駆動部は、磁石ユニットを一対のコイルユニットで上下から挟み込む構造であっても良いし、サンドイッチ構造でなくても良い。また、コイルユニットを微動ステージに配置し、磁石ユニットを粗動ステージに配置しても良い。
また、上記実施形態では、微動ステージ駆動系52により、微動ステージを、6自由度方向に駆動するものとしたが、必ずしも6自由度に駆動できなくても良い。
なお、上記実施形態では、微動ステージWFSは、ローレンツ力(電磁力)の作用により粗動ステージWCSに非接触支持されたが、これに限らず、例えば微動ステージWFSに真空予圧空気静圧軸受等を設けて、粗動ステージWCSに対して浮上支持しても良い。また、微動ステージ駆動系52は、上述したムービングマグネット型のものに限らず、ムービングコイル型のものであっても良い。さらに微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに接触支持されていても良い。従って、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して駆動する微動ステージ駆動系52としては、例えばロータリモータとボールねじ(又は送りねじ)とを組み合わせたものであっても良い。
また、上記実施形態では、露光装置が液浸型の露光装置である場合について説明したが、これに限られるものではなく、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置にも上記実施形態は好適に適用することができる。
また、上記実施形態では、露光装置が、スキャニング・ステッパである場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に上記実施形態を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてこのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置制御することが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも上記実施形態は適用することができる。
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光として、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に上記実施形態を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態は適用できる。
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、このステージの位置をエンコーダシステム及びレーザ干渉計システムを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記実施形態を適用することができる。
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
なお、本発明に係る計測システムは、露光装置に限らず、その他の基板の処理装置(例えば、レーザリペア装置、基板検査装置その他)、あるいはその他の精密機械における試料の位置決め装置、ワイヤーボンディング装置等の移動ステージを備えた装置にも広く適用できる。
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。